タレントの辻希美が25日に自身のアメブロを更新。水着姿で自宅のプールを満喫する様子を公開した。この日、辻は「今宵は暑すぎる為プールdayです」と述べ、水着姿で自宅のプールを満喫する様子を公開。「大きいプール出して大人も子どももみんなでプール」「最高やぁぁぁぁぁ」とコメントした。その後に更新したブログでは「プールなぅ」「最近プールに入りたがらなかったセイも今日は入って遊んでます」と夫で俳優の杉浦太陽や子ども達がプールで遊ぶ姿を公開。「小腹が空いたらポテト食べてかき氷食べて」「子ども達は大満喫??しております」と報告し「明日もきっとプールだな笑」とお茶目につづり、ブログを締めくくった。
2022年06月26日明治大学文学部は、高校生と社会人を対象とした「第14回読書感想文コンクール」を開催します。課題図書10冊の中から1冊を選んで書かれた、1,200字以内の読書感想文を募集します。応募締め切りは8月1日(月)(消印有効)。優秀賞100名の感想文は作品集として単行本化され、受賞者ならびに全国の高等学校や図書館に寄贈されます。同学部は2009年より、より多くの人に新たな書物との出会いと自らの言葉で想いを表現する喜びを感じてもらおうと、読書感想文コンクールを開催しています。13回目の開催となった2021年度は、過去最高の1264作品の応募がありました。課題図書は毎年、国内外の文学、歴史、心理、社会など幅広い分野の書物の中から10冊が選ばれます。優秀賞に選ばれた100名には、賞状、作品集および副賞の図書カード3,000円分を贈呈します。表1: 詳細はこちら プレスリリース提供元:@Press
2022年06月14日”眠れないホテル”をテーマにした新しいカプセルホテル〈MANGA ART HOTEL, TOKYO(マンガアートホテルトーキョー)〉。これまで国内外問わず数多くの漫画ラヴァーを夢中にさせてきた同ホテルが、より漫画に没頭できる快適空間にリニューアル!マットレス業界に革命をもたらした「コアラブランド」のマットレスとピローを導入し、”眠ってしまう”ホテルへと変貌したと噂の“新・漫泊”を体験してきました!チェックインは非接触型でスマートに。チェックインカウンターには、アメニティとチェックイン用のタブレットが。必要事項を記入したあと、ホテルのスタッフとビデオ通話でやりとりするという、いまどきな仕組み。入り口からすでに漫画が何冊か置かれており、流行る気持ちをおさえきれずに早々とチェックイン。5000冊以上の漫画に囲まれた夢の空間!ドアを開けるとそこには、漫画、漫画、漫画!所狭しと並ぶさまざまなジャンルの数々に圧倒されます。並んでいる漫画はほとんど全て、オーナー自ら読んでおすすめしているものというのも驚き。一つひとつのシリーズにオリジナルのおすすめコメントが添えられている丁寧さに脱帽です。フロアは女性が4階、男性が5階と分かれているのですが、12時〜19時までは自由に行き来ができるので、お目当ての漫画を探しに、少し早めにチェックインするのがおすすめ。入り口にはアメニティボックスがあり、歯ブラシや耳栓など必要に応じて使用できます。シャワールームにもシャンプー・コンディショナー・ボディーソープを完備。ベッドユニットには、ハンガー・コンセント・調光できるライト・貴重品ボックスのほか、フリーWi-Fiもあるので、宿泊という観点でも困ることはありません。コアラマットレスを体験できるホテルって実は貴重なんです!そして今回リニューアルした寝具は、オーストラリア発のライフスタイルブランドとして有名なコアラのマットレス&ピロー。日本でもお家への導入を検討している方は多いのではないでしょうか。ただ海外発ということもあり、日本には常設のショールームがないため、気軽に寝心地を試せる場所は実は多くありません。そんな話題のマットレスが、カプセルホテルに導入されるのは前代未聞!各ベッドユニットにぴったりはまったマットレスは、人気No.1の「New コアラマットレス(シングルサイズ)」。通気性が良く、厚みもしっかりとしているので、縁に座って長時間漫画を読み耽ってもお尻が痛くなりません。また、マットレスカバーの中にあるリバーシブルのトッパーレイヤーをひっくり返すだけで、気分や寝姿勢に合わせていつでも「ふつう」「かため」の寝心地に変えることができるというのも嬉しい。「コアラピロー」の素材には「ポリウレタンゲルフォーム」を使用。快適な睡眠の鍵となる頭部を適温に保つことを重視し、寝ている間にも通気性を良くするため穴を無数に開けた構造。少しひんやりとした感触と、弾力のあるもっちもちの手触りがたまりません・・・!こうなるともう「漫画を夢中で読む自分」と「極上のマットレスで寝落ちする自分」とのせめぎ合い。思う存分漫画に溺れて、快適な睡眠をとる、これ以上嬉しいひとり時間はありません。リピート率が多いのも納得。梅雨時期は連泊したくなるような中毒性がありました(50泊以上している常連のお客様もいるんだとか!)。期間限定で変わるおすすめコーナーには、コアラマットレス・ピローの導入を記念して「睡眠」にまつわるおすすめ選書も行っています。(このジャンルだけでもかなりの数があって驚きました・・・!)外出するのが億劫になってしまうこの季節。せっかくならホテルにこもって、自分だけのとっておき時間を満喫してみてはいかがでしょうか?〈MANGA ART HOTEL, TOKYO〉東京都千代田区神田錦町1-14-13 LANDPOOL KANDA TERRACE 4・5F室数:35室(女性専用 16室、男性専用 19室、男女別フロア)価格:平日4,800円〜、祝前日5,800円〜公式サイトコアラマットレスの公式サイトはこちら
2022年06月13日さまざまな業界で活躍する「働く女性」に寄り添う一冊を処方するこちらの連載。今回のゲストは、モデルやフォトグラファーなど、肩書きに縛られない活躍を見せる柴田ひかりさん。彼女の人柄が滲み出たような、やさしくゆる~いお喋りにご注目!今回のゲストは、柴田ひかりさん。原宿でのスカウトをきっかけに15歳から芸能活動をスタート。メンズのアイテムをさらりと着こなすファッションセンスが同性から人気。この日は、パーカーにジーンズという、ゆるっとした姿で現れた彼女。撮影の直前まで、メガネをかけるかかけないかで悩んでいた姿が可愛かった…!まずは気になる、柴田さんの肩書きについて。木村綾子(以下、木村)「柴田さんのことは、担当編集から名前が挙がってから、ずっと気になっていたんです。モデルなの?フォトグラファーなの?肩書きが分からない感じが面白いなと思っていて」柴田ひかり(以下、柴田)「確かに、何してる人?っていうのは昔からよく聞かれます。肩書きらしい肩書きもないんですよね」木村「Instagramなどを見ても、プロフィールのところに何も書かれていないじゃないですか。YouTube や写真アカウントのリンクだけが貼られているけど、そっちに飛んでもそこまでの情報にヒットしなくて。あれはあえてやっていることなんですか?」柴田「いえ、単純に書くことがないんです(笑)」木村「え!(笑) てっきり狙ってやっていることだと思っていました」柴田「モデルだって思ってくれたらそれでいいですし、フォトグラファーだって思ってくれたらそれでいいかなって」木村「なるほど、どうぞ自由に捉えてください!ってスタンスですね。なんだかゆるくて、いいですね。個人的には、柴田さんのお名前でググろうとしたら、検索予測のところに「何者」って出てきたのが面白かったです」柴田「ジャンルを問わず、色々なことに挑戦していきたいので、人によって何者か解釈が違うのはそれはそれでいいかもですね(笑)」エピソードその1「“新しい町の日常” を切り取る」木村「カメラはどういうきっかけで始めたんですか?」柴田「高校の友人がカメラをやっていて、『写ルンです』を使って撮り始めたのがきっかけです」木村「柴田さんの年齢だと、再ブーム世代ですよね。ちなみに私はもちろん初代ブーム世代。再ブーム世代に「現像するまで何が写ってるか分からないのが楽しい!」と聞いたとき、ジェネレーションギャップとはこのことか!と痛感しました(笑)。ちなみに何を撮ってる時が、一番楽しいですか?」柴田「旅の様子を写すのが好きですね。“新しい町の日常”とでもいうんでしょうか」木村「旅は、一人で行く派?」柴田「はい。知らない場所にも、結構一人で行っちゃうんですよ。電車やバスに乗って、知らない駅で降りて、散歩しながら撮るみたいなスタイルです」木村「観光地ではなくて、自分でそこの良さを探していくイメージですね」柴田「そうです。ひょっとすると、現地の生活を感じられる場所が好きなのかもしれませんね」木村「この街へ行こうって決め手になるのは、どんなことですか?」柴田「海外に行く時も、向こうに着いてからの予定は特段決めずに行くことが多いです。スウェーデンでは面白うな住宅街を見つけて入って行ったんですけど、アジアの女性って若く見られることが多いじゃないですか。「こんなところで女の子がひとり、何をしてるんだ?!」って現地の人から心配されたりして。きっと変な人に思われていたと思います」処方した本は…『田辺のたのしみ(甲斐みのり)』サンクチュアリ・パブリッシング出版/2022年4月初版刊行木村「著者の甲斐さんは暮らしの中から楽しみを見つけるプロだと思っていて。街の魅力や建築、お菓子、雑貨など、ステキなものを自分の足で稼ぐっていう感じに好感が持てるんです。彼女は私と同郷、静岡出身なんですけど、そんな田辺さんが、“第二の故郷”と呼ぶ和歌山県田辺市にスポットを当てた一冊です」柴田「田辺ですか。初めて聞いた地名です」木村「初めて訪れたときからなぜか懐かしさを感じていたと田辺さんは書いていて、実際紹介される町並みを眺めてみると、「わかる!」って直感で思えたんですよね。静岡の人ってよく、“のん気だねぇ”って言われるんですけど、おおらかに人を受け止めてくれそうな気配が、そこここに漂っているような気がしたんです」柴田「“パンダの電車” 可愛いですね(笑)これなんですか?」木村「かわいいですよね!特急「パンダくろしお号」ですね。新大阪からこれに乗り込んで2時間ほどで田辺に着くんだそうです。個人商店が軒を連ねる街が目の前に現れる描写があるのですが、なんだか彼女の目線で街歩きを追体験できるようで。普通、知らない街の観光案内って、どうやって楽しんだらいいか分からないものですけど、こうやって信頼のおける人の目線があると行ってみたくなるなって。初めて行く街の日常に触れるのが好きな柴田さんには是非読んでいただきたい一冊です」エピソードその2「何か取っ掛かりが欲しいな」木村「私、Instagramで柴田さんのプロフィールのところから飛べる写真のアカウントを見ていて、ああ、好きだなあと思って。決して専門の知識もなければ、写真集や写真展を積極的に見るタイプでないんですけど、感覚的に私いいなって感じたんです」柴田「わ、嬉しいです。どういうことを意識して撮っていますか?って聞かれることがあるんですけど、正直すごく感覚的に撮ってしまってるところがあるんですよね。だから、そう感覚的に捉えていただけるのが私も嬉しいなって」木村「好きな写真家はいますか?」柴田「「ニューカラー世代」と呼ばれる写真家たちが好きですね。モノクロ写真が主流だった時代にカラー写真を撮り始めた先駆者的な人たちなんですが、スティーブン・ショアやウィリアム・エグルストンの作風には、私も無意識に寄せていってるところがあると思います」木村「柴田さんの撮る写真って、小説のワンシーンみたいにも見えるんです。物語性を感じるというか。小説とかもよく読まれますか?」柴田「映画を見るのは好きなんですが、小説はあまり読んだことがなくて…。でも、何か取っ掛かりが欲しいなとは思っていました」処方した本は…『百年と一日(柴崎友香)』筑摩書房出版/2020年7月初版刊行木村「著者の柴崎さんは学生時代から写真を撮っている方で、新刊を出すと写真展も開いたりするので、柴田さんにとってまさに取っ掛かりになるような小説家だと思います」柴田「あ!映画化された『寝ても覚めても』の方なんですね」木村「そうです。『きょうのできごと』とかも映画化されているので、映画からもアプローチできますね。他には、パノラマ写真が写す景色の歪みをヒントにした『パノララ』や、場所や時間や写真をモチーフにした『春の庭』などオススメは沢山あるんですが、この本には一編が短い小説が33編入っています」柴田「入口としてはぴったりですね。写真家の紡ぐ物語、気になってきました…!」木村「柴田さんのお写真って、断片的に切り取った人や景色が多いじゃないですか。私はその断片に物語を想像したので、柴田さんには、『百年と一年』で切り取られた時間や記憶の断片に、景色を想像していただきたいなと。気負うことなく小説世界に入っていけるとも思いますよ」エピソードその3「ほんと、何でも食べますよ」木村「柴田さんは、お料理はされるんですか?」柴田「う~ん、オシャレなものとかは自分ではあんまりです。けど、“腹を満たすためのもの”くらいでしたら…!」木村「(笑)。旅好きとのことでしたが、外食はどうでしょう?」柴田「外でご飯を食べるのはすごい好きです。非公開ですが、こっそりとグルメアカウントを作ったりしながら楽しんでいます」木村「グルメアカウントいいですね。何がお好きなんですか?」柴田「ほんと、何でも食べますよ。カレーも好きだし、中華も好きだし…!あ、最近、ナチュール系のお店を巡るのにもハマっています」処方した本は…『おいしいもので できている(稲田俊輔)』リトル・モア出版/2021年3月初版刊行木村「カレーが好きで、何でも食べるという頼もしい発言から、最後にこの一冊を紹介します。〈ERICK SOUTH〉っていう南インドカレー店のオーナーでもある稲田さんは、どんな食べ物にも喰いついて、「おいしさ」をトコトン暴きだす天才なんです。この本には、ご飯が好きな人がご飯について思うときの偏愛と執着、忙しさや面倒くさい頭の中が描かれているんです」柴田「頭の中の、面倒くささですか?」木村「幕の内弁当を食べる時の、手を付ける順番どうしようとか、配分どうしようとか。 それが「幕の内大作戦」というタイトルのもと、熱く、暑苦しいくらいに描かれています。あとは、カツカレーがどうしてみんなに愛されているのかが分からない、とか」柴田「カツカレーを敵に回す人、初めて聞きました(笑)」木村「でもね、すごい熱量で訴えてくるから「分かった分かった」ってなっちゃうんですよね(笑)食にまつわる“こじらせエッセイ” って言ったらわかりやすいかな?」柴田「『孤独のグルメ』の、あの感じですか?」木村「そう!頭の中がダダ漏れになってる、あの感じ!」柴田「ふふふ。「ホワイトアスパラガスの所存」っていうタイトルを見つけました」木村「ご飯食べてる人の頭の中を覗くという意味では面白いと思います。あと、これを踏まえて、〈ERICK SOUTH〉に行けば、なるほど彼の究極のこだわりはこの味なんだ!と舌で確かめられると思いますよ」話題は、「今後のやってみたいこと」へ。木村「今後はどういったことに挑戦していきたいですか?」柴田「う〜ん、そうですね。とりあえず、現状の維持を!」木村「いいですね、すごくいいです(笑)」柴田「最近、低速化し始めているんですよ。二十歳前後の頃は自分でもアグレッシブだったと思うんですけど、最近はちょっと落ち着きすぎてしまって…(笑)」木村「25歳でそれを口にする柴田さんは、やっぱり只者じゃないですね。今、私の中での柴田さんに対する高感度が爆上がりしています(笑)」柴田「あ、でも写真やお洋服作りなど、ものを作ることが好きなので、今やってることはちょっとずつ良くしていければいいなとは思っています。写真展も近々できたらいいなと思っています」木村「写真展は過去何度開催を?」柴田「4回です」木村「ってことは、学生の頃から?!」柴田「高校生の頃からです」木村「今日、柴田さんとお話をしてみて、その飾らない感じや等身大の姿勢が人を集める魅力なんだろうなと感じました。たぶん、今までで一番ゆるいお喋りでしたけど、不思議と気持ちはほくほくしています」対談を終えて。対談後、『田辺のたのしみ』と『百年と一日』を購入してくれた柴田さん。「普段、自分では探し出せない本を処方していただいて、楽しい時間でした」と話してくれました。YouTubeで公開しているVlog『Peep inside head #29』には、今回の取材の様子もちらりと。是非チェックを~!YouTube(Peep inside head)撮影協力:〈二子玉川 蔦屋家電〉
2022年05月27日タレントの辻希美が4日に自身のアメブロを更新。新居のバルコニーでバーベキューを満喫した様子を公開した。この日、辻は「良い天気なのでばっしー家族と家でBBQ」とマネージャーの家族らと新居のバルコニーでバーベキューを満喫したことを報告。「いい季節到来」と述べ、バーベキュー中の様子や夫で俳優の杉浦太陽らが肉を焼く様子を公開した。また、杉浦も同日にブログを更新し「ゴールデンウィークの子ども祭り!!」とバルコニーで遊ぶ子ども達の写真を公開。「子ども用のプールを温水で」「マットでアレンジして遊んどるwww」と説明し、ブログを締めくくった。
2022年05月05日タレントの堀ちえみが21日に自身のアメブロを更新。コスプレをして東京ディズニーランドを満喫したことを報告した。この日、堀は「今日の出掛けるスタイル!」と切り出し「あるコンセプトを決めたので、コスプレっぽい感じ(というかコスプレ!)」と自身の全身ショットを公開。「大人のストライププリーツワンピース」「夜寒くなるとといけないので、上からパーカーを」などと着用しているアイテムについて説明した。続けて更新したブログでは「東京ディズニーランドに到着」と東京ディズニーランドを訪れたことを報告。「雨上がってよかった」「風もやさしくて暖かいです」と天候について言及し「春休みも終わり平日ということもあり。比較的空いてます」と明かした。また「先ずは予約を入れていたワッフル屋さんで」とワッフルを堪能したことを報告。「大人気だそうです」と説明し「可愛いミッキーのワッフル」と写真とともに紹介した。さらに「今回は、101匹わんちゃんを意識した、そんな白黒コーデで楽しんでます」とコーディネートについて説明。ワッフルを手にした自撮りショットも公開した。最後に「ワッフル食べていたら、プーさんのキャラクターの御一行様が、やってきました!」と写真とともに明かし「テンション上がりました」と嬉しそうにコメント。「夢の国を満喫しています」とつづり、ブログを締めくくった。
2022年04月22日さまざまな業界で活躍する「働く女性」に寄り添う一冊を処方するこちらの連載。今回のゲストは、モデルやキュレーターなど、さまざまな顔を持つ前田エマさん。6月には自身初となる小説の発売を控える彼女に、社会問題との向き合い方や、ライフワークとして続けている飲食店でのお仕事の魅力を語ってもらいました。今回のゲストは、前田エマさん。モデルのほかに、エッセイの執筆や写真、ペインティング、ラジオパーソナリティ、キュレーションなどで活躍をする、肩書き不詳のカルチャーガール最近では、文学・映画・音楽から世界を学ぶ “勉強会” の主宰も。飲食店でのお仕事に生きがいを感じ、芸能活動の傍ら、現在もお店に立たれているというから驚き…!まずは気になる、エマさんの今の活動。木村綾子(以下、木村)「エマさんとは先日an・anの官能特集でご一緒させていただきました。本を通して自分の話をするという対談だったので、初対面で「性」について語り合った不思議な関係です(笑)」前田エマ(以下、エマ)「仲良くなってもなかなか踏み込まないような結構ディープなお話もしましたね。なんだかぐっと距離が縮まった気がして私も楽しかったです」木村「エマさんは、モデル業や執筆業など幅広い活動をされていますが、自分を軸にして、本や服、お店など興味のあるものを発信するスタイルが素敵だなと感じていました。可能性がまだまだ未知数だな、とも。いま力を入れていることなどはありますか?」エマ「キュレーションのお仕事をしたり、最近は、「文学・映画・音楽から世界を知っていこう」というテーマの “勉強会” を企画したりしています」木村「勉強会!?」エマ「私、BTSを好きになってから、韓国文学にハマったんです。いずれも社会問題と向き合う内容が多く、私自身も差別やジェンダーなどの社会問題を身近に感じるようになりました。本や映画、アーティストをきっかけに学びを広げ、考え続ける場を作りたいと思い、専門家をお呼びして、勉強会を開いているんです」木村「素晴らしいですね。ちなみに、これまでどんな講義を企画したんですか?」エマ「初回は、「なぜ韓国の人は声を上げるの?」というテーマのもと、一橋大学の権容奭(クォン・ヨンソク)准教授をお招きしました。 2回目はフォトジャーナリストの安田菜津紀さんをお招きして、難民問題を取り上げました」木村「エマさんがそういう場を作って、人が集まって、社会問題への興味関心が広がっていく。“蜘蛛の巣の中心”のような、そんな存在になりつつありますね」エマ「ふふふ。私は「自分の興味があることを、自分を通して人に伝えたい」という思いでこのお仕事を始めたんですが、30歳を目前に、「社会で生きる人間として、どう振る舞えるんだろう?」 ということを考えるようになったんです。仕事をするときは“誰かのために”とかは思ったことはなくて、いつも“自分のため!自分が楽しいからやる!”という感じだったので、よくも悪くも自己中心的な人間なんです。でも最近は、自分が幸せなら良いという考えだけじゃ、自分自身も幸せになれないんだなと思い始めて。こういう感情が自分の中に生まれたことが面白いです」話題は、来月発売される小説について。木村「そういえばエマさん、6月に本を出されるとお伺いしました!」エマ「そうなんです。ミシマ社から『動物になる日』という小説を出すことになりまして。今、絶賛校了中です…!」木村「小説なんですね!エッセイや書評はよく書かれている印象ですが、初書籍が小説ということに意表を突かれました。実は書き溜めていたとか?」エマ「すべて書き下ろしです。私も、まさか自分が小説を書くとは思っていませんでした。「エッセイの連載をしませんか?」と出版社の方に声をかけてもらったのがきっかけでした。「テーマは何にしよう?」と考えていた時に最初に思いついたのが、私自身がモデルのお仕事を始めてからも並行して続けている飲食店でのアルバイト。飲食店で仕事をすることの感動を、ずっと書いてみたいなと思っていて。昔、ファッション誌で一度だけ、エッセイではなく創作を書いたことがあって、その時に“本当のことに手が届く”と感じたんです。なので、このテーマを書くなら小説でしか書けないなと思いました」木村「エッセイより小説の方が、自分が出てしまう場合がある。というのは、作家の方からもよく聞きますね。今回の小説は、飲食店で働く女の子が主人公だと伺いました。もしかして自伝的な要素も入っているんでしょうか?」エマ「入っていると思います。もしかすると、半分くらい入っているかも。2作品を収録しているんですが、一編は飲食店を舞台にした人間観察的な物語で、もう一編は、その主人公の幼少期を描いています。主人公が大人になってから見つめる世界を描いていたら、主人公自身の人格がどうしてそんな風に形成されたのかを書きたいと思いました。書き始めた最初の頃は、主人公と私が重なる部分も多かったけれど、書き進めるに連れ、主人公の声がはっきり聞こえるようになり、途中からは主人公に導かれるようにして書いていました」エピソードその1「いろんな家族を肯定してくれる作家さん」木村「そうしたエマさんの感性は、豊かな読書経験が礎になっていると思うのですが、どんな本を読んできたのか、改めて伺ってみたいです」エマ「私は両親が結婚というカタチをとっていない家庭で育っているので、 いろんな家族のカタチがあるということを、自然に理解しながら大人になりました。だからなのか、家族や愛のカタチを多様に描く作品を多く読んできたような気がします。中学生の頃に瀬尾まいこさんの作品に出会ってから、瀬尾さんの作品は全て読んでいますね」木村「瀬尾さんは、以前は小学校で先生をする傍らで執筆業をされていますよね」エマ「そうなんです。瀬尾さんには仕事をする生き方への多様性も教えていただきました。「ひとつの物事に突き進むことこそが素晴らしい」という考えを持たずに生きてこられたのは、瀬尾さんのおかげです。働くことにはいろんな選択肢があり、どんな仕事にも尊さがあるんだなあと、視界がぐっと広がりました」木村「他にはどんな作家作品に影響を受けてきましたか?」エマ「高校時代は桜庭一樹さんがすごく好きでした。 大学生になってからは、村田沙耶香さん。変則的な家族関係や自分の性の部分を無かったことにしないで書く作家さんに惹かれているんだと思います。 あまり意識していた訳ではないですが、こうして話すと、女性作家さんが多いですね」処方した本は…『家族じまい(桜木紫乃)』集英社出版/2020年6月初版刊行木村「エマさんの家族関係や好みの作家さんに関するお話を伺いながら浮かんだのがこの本。桜木さんは現在も北海道に住んでいて、この小説も北海道が舞台。家族構成や人間関係も限りなく桜木さんご自身のそれを元にしていて、母親が痴呆症になったことをきっかけに、それぞれに家族をしまっていく、つまり片付けていく物語が、それぞれの視点から描かれていきます」エマ「桜木さんの小説は、ご実家が経営するラブホテルを舞台にした『ホテルローヤル』を読んだことがあります」木村「それならすっと物語に入っていけると思います。この物語が生まれたきっかけというのがまさに、「『ホテルローヤル』の、その後を書きませんか?」という編集者のひとことだったそうです」エマ「母親の痴呆症をきっかけに、家族が再団結するんじゃなくて、片付けていくという発想にはびっくりしました」木村「家族だからって寄り添い続けなくてもいい、一度離れてみることで乗り切れる問題もあるということを、悲壮感なく提示してくれます。多種多様な家族の在り方に興味があるというエマさんには、ぜひ読んでもらいたいです」エピソードその2「名づけることのできない大切な気持ち」木村「さっき、「自分の性の部分を無かったことにしないで書く方に惹かれる」というお話をしてくださいましたが、もう少し詳しく伺ってもいいですか?」エマ「これは今度の小説でも触れていることなのですが、私は、同性愛者でも異性愛者でも、女の子が最初に誰かに惹かれる相手は女の子なのではないかと思っています。 恋愛感情を抱くか、そうじゃないかはさておき、最初はみんな女の子に惹かれるのではと」木村「an・anの対談でもおっしゃっていましたね」エマ「今って「LGBTQ」や「フェミニスト」などの言葉を多くの人が知るようになり、それによって救われている人がきっといると思うんです。 確実にいい世の中に向かっているなと思う一方で、そのように名付ける言葉によって、生き辛さを感じている人もいるんじゃないかなと思うんです」木村「言葉なんてなくても世の中の当たり前になるのが、本当は一番目指すべきところですもんね」エマ「名づけることのできない大切な気持ちがあるということが、もっと当たり前になってほしいなっていう思いがあります。特にこれから成長していく若い世代の子たちには、そういう境界線がなかったらいいなっていうのを感じています」処方した本は…『すきっていわなきゃだめ?(辻村深月・作、今日マチ子・絵)』岩崎書店出版/2019年5月初版刊行木村「「女の子が最初に好きになるのはきっと女の子だと思う」という感覚や、「誰もが恋愛ってしなきゃだめなものなの?」という疑問に応答するような絵本を紹介します。これは「恋の絵本」として刊行されたうちの一冊。子どもの頃、抱いていても誰にも相談できなかった「好き」をめぐる悩みや疑問って、誰にでもあったと思うんですが、そんな過去を肯定しながら、新しい世代の自由を思う祈りのようなものが、物語に込められているように感じます」エマ「イラストは今日マチ子さんが描かれているんですね。辻村さんと今日さんの世界観を一冊で楽しめるなんて、本当に贅沢です」木村「もしよかったら今、この場で読んでみませんか?」エマ「(しばし絵本を熟読…)ああ!なるほどそういうこと…!」木村「恋愛観や結婚観、ジェンダー観が変わりつつある今の世の中で、子どもがすぐ手を伸ばせる場所にこんな物語があることを思うと、胸に込み上げてくるものがありますよね。私はこれを “希望の絵本” だと思っています」エピソードその3「ごはんの前では誰もが同じ」木村「モデル業と飲食店でのアルバイトを現在も兼業しているって話してくれたとき、エマさんがすごく生き生きとしていたのが印象に残っています。続けるワケは、どんな点にあるんですか?」エマ「あの場所にいると、「ちゃんと人間をやっている」感覚を持てるんです。私、ごはんの前では誰もが同じだと思っていて。肩書きとか、そういうものが存在しなくなるじゃないですか。名前も職業も性格も知らないし、知っていたとしても関係ない。ひとりひとりの“人間”としての本性が出る気がするんです。食べ方の美しさや注文の仕方、店員や周りのお客さんへの態度を見ていると、その人の“人間”の部分にタッチできる気がして、興奮するんです。“お客さんと店員”という関係性だけど、「人間対人間」であるような気がするんです。大げさじゃなく、あの場所があるから表現活動をやっていられるってくらいに、私には大事なんです」木村「食べることと生きることは直結しているから、「人間」が浮き彫りになりますもんね。エマさん自身、食べることや作ることも好きなんですか?」エマ「料理は一応しますが…、好きではないです(笑)両親が共働きなので、幼い頃から弟にごはんを作っていましたし、調理師免許も持っているんですけど、料理に対するモチベーションはゼロです」木村「え、そうなんですか!(笑)」エマ「食べたり作ったりすることよりも、「食」がある場やそこに集まる人に興味があるんだと思います」処方した本は…『土を編む日々(寿木けい)』集英社出版/2021年10月初版刊行木村「食を通して触れられる「人間」の部分に興味があるというエマさんにぜひ紹介したいエッセイストが、寿木けいさんです。彼女はもともと出版社に勤務して編集の仕事をされていたんですが、Twitterではじめた「きょうの140字ごはん」の反響がきっかけで、「寿木けい」名義で文筆業を始められました。〈人生のいくつもの思い出に、食が寄り添うことを願います〉と書いているように、けいさんのレシピとエッセイには、それを共にする人の気配が色濃く感じられるんです」エマ「レシピといっても、エッセイに溶け込むように調理手順が綴られているんですね」木村「そうなんです。単なるレシピだけじゃなくて、食材を受け取って料理にするまでの、けいさんの所作や感情の機微も同時に受け取れるんです。なんといってもその清洌な、研ぎ澄まされた文章の美しさたるや!私はひそかに、彼女のことを「令和の向田邦子」と呼んでいます(笑)」エマ「向田邦子さん!私、向田さんのエッセイが大好きで、寄稿させていただいたり、イベントに出たこともあります」木村「繋がりましたね。「食」のある場所で働き、それを書くエマさんなら、もっと深く感じ取るものがあると思います。読んだら感想聞かせてくださいね」対談を終えて。対談後、3冊すべてを購入してくれたエマさん。「小説・絵本・エッセイとさまざまなジャンルをぐるぐる回ることができて楽しかったです。木村さんがきらめく想いと熱い気持ちを持って本を紹介してくださり、全部読みたくなりました!」と話してくれました。たくさんカルチャーにまみれたInstagramはこちらから。6月10日発売の『動物になる日』も楽しみです!Instagram(emma_maeda)撮影協力:〈二子玉川 蔦屋家電〉
2022年04月20日タレントの布川敏和が24日に自身のアメブロを更新。青春を満喫している次女・花音さんについてつづった。この日、布川は「今日は娘と同伴出勤~」と切り出し、助手席に座る花音さんの写真を公開。「今日のトークテーマはスノボー」と花音さんとスノーボードについて話していたことを明かした。続けて、花音さんについて「僕が行ってとても良かった野沢温泉スキー場を勧め,先週末に行って来た」と説明。スキー場での様子については「一度ゴンドラに乗って上まで行ったら一気に40分くらい滑りっぱなし」と明かし「その後の温泉も良かったとの事~」と嬉しそうにつづった。また「勧めて良かった!良かった!っと思った親父で御座いやしたぁ~」とコメント。最後に「青春を満喫している娘の話しを聞くのも嬉しい親父で御座いやすぅ」とつづり、ブログを締めくくった。
2022年03月25日さまざまな業界で活躍する「働く女性」に寄り添う一冊を処方するこちらの連載。今回のゲストは、モデルや俳優、イラストレーターなど、さまざまな顔を持つ田中シェンさん。表情豊か & ジェスチャー大きめ な彼女に連られて、いつもに増して楽しげな回となりました。今回のゲストは、田中シェンさん。モデル、イラストレーター、俳優などの肩書きを行き来するマルチプレイヤー。聞けば、アパレル企業にデザイナーとして就職していた期間もあるのだとか。現在は、憧れだった “ビデオディレクター” としての活動をスタートすべく、カメラやスタンドなどの機材を揃える日々まずは、シェンさんの生まれや育ちについて。田中シェン(以下、シェン)「木村さん、実は私『Zipper』の頃すごく見ていました…!」木村綾子(以下、木村)「え、そんな頃から知ってくれていたんですか!もう20年近く前のことですよ。シェンさん生まれてなかったんじゃないかってくらい昔(笑)」シェン「いやいや、全然生まれていましたよ(笑)。なんて言うか、“絶対的な存在” だったじゃないですか。お名前を見た瞬間に、あ!って思って」木村「嬉しいなぁ・・。でも、今日は私がシェンさんを知る番です!…シェンさんは、14歳の頃にアメリカに渡ったと伺いました。その頃から英語はペラペラだったんですか?」シェン「いえ、それが本当に喋れなくて。私の武器は「This is a pen.」だけでした。そんな状態で白人ばかりの現地校に放り込まれたものだから、それはそれは大変で…!」木村「まさにペン一本勝負(笑)。言語もそうですが、初めての海外で過ごす思春期には、カルチャーショックになる出来事も多かったと思います」シェン「向こうでの歴史の授業は正直ビックリしましたね。当たり前ですけど、“目線” がまるで違うじゃないですか。「真珠湾攻撃」みたいな、センシティブなテーマの時はなおさら…!」木村「そうか。攻めた国の人、になるから」シェン「日本だと「1941年、日本とアメリカが真珠湾沖で〜」っていうのを覚えて、テストで答えたら終わりですけど、向こうの授業って、ディベートが中心なんですよね。もうね、“1対100” な訳ですよ。後にも先にもあんなに冷や汗をかいた瞬間はないと思います」木村「幼いながらに、国を背負って戦っていた訳ですね。なんだか、泣けてきます」シェン「けど、おかげで「情に訴える」という日本人らしい手法も手に入れました。「私たち、同じ人間でしょう?」みたいな。まあ、結局は負けるんですけどね(笑)」木村「さっきから気になっていたシェンさんの独特な言語感覚であったり、内から溢れ出るハッピーな感じは、そういう荒波に揉まれて培われたものだったんですね。育った環境やバックグラウンドのせいか、シェンさんのお話は言葉の重みが違うなと思って感心しています」エピソードその1「“私” について考えてみた」シェン「私、木村さんに会ったら、相談したいなと思っていたことがあるんですけど、いいですか?」木村「もちろんです!どんどん来てください!」シェン「さっき「言葉の重みが」って言ってくださったのが嬉しかったんですが、一方で、自分では、人の意見に流されやすいなとも思っているんです。仕事柄、たくさんの方からアドバイスをいただく機会が多いんですけど、その精査の仕方が難しくて。自分に近しい人の意見ばかりを聞いていても違うなと思うし、だからといって、魅力の分からない人の意見を取り入れる余裕もないじゃないですか。木村さんは、人からのアドバイスをどうやって選び取って来ましたか?」木村「モデルのお仕事って、行く先々が一期一会ですし、カメラマンや編集者、ブランドの担当者に「いい!」と思ってもらえないと、次が来ない世界ですもんね。私も20代までは表に立つ仕事をメインでしてきたから、シェンさんの葛藤がすごく分かります。そう考えると30代は、「私という個」からどんどん解放されていった10年でした」シェン「それは、ひょっとして、“いい意味で” ですか!?」木村「はい。しかもそれはある本との出合いがきっかけだったんです」処方した本は…『私とは何か「個人」から「分人」へ(平野啓一郎)』講談社出版/2012年初版刊行木村「「分人」という考え方を、シェンさんは聞いたことありますか?」シェン「はじめて聞きました。「個人」から「分人」へって、どういうことですか?」木村「人を分ける最小単位である「個人」の下に、さらに小さな単位「分人」をつくることによって、ひとりの人間を「分けられる」存在と見なす考え方です。つまり、たった一つの「本当の自分」なんて存在せず、対人関係ごとに見せる複数の顔が、すべて「本当の自分」である、と」シェン「すごい!いまの説明で、霧がさーっと晴れていく音が聞こえました!笑」木村「私も「分人主義」に救われたひとりです。Aさんに見せる“私”とBさんに見せる“私”が、あるいはCさんが思う“私”とDさんが思う“私”が、ぜんぶ違っても別にいいんだ!と思えるようになったら、ときには否定的な意見さえ興味深く受け取れるようになったんです。だってそれは、私の知らなかった「分人」だから」シェン「自分から解放されることで、自分が増えていく。それって自分が豊かになっていくことでもありますよね」エピソードその2「心とか感情、身体のお話」シェン「お話めちゃくちゃおもしろくて興奮してきました!笑その勢いでもうひとつ聞いちゃいますが、木村さんは、私たちの身体に心は存在するって思いますか?」木村「ドキっとする質問ですね。うーん。感情をひとくくりに「心」とするなら存在すると思いますが、「身体」のどこに位置するか、みたいなことを問われたら、指をさすことはたしかに難しいですよね」シェン「私は最近、心は “危機察知能力” なんじゃないかと思うようになって。人の感情って、どうやら無意識な “反射” から生まれるものらしいんですよ。記憶は筋肉が覚えているもので、これは論文でも証明されている科学的なことなんだとか…!」木村「“危機察知能力”!おもしろい切り口ですね。それは、どなたかが教えてくれたんですか?」シェン「演技の指導をしてくれる韓国の先生がいるんですけど、最近、彼女のお話を聞くのが大好きで。彼女は「一度経験したことは、筋肉が “刺激” として覚えている。だから、それを利用するのが役者なんだ」って言うんです」木村「すごい、科学と哲学が行ったり来たりしてる(笑)」シェン「しかも彼女は、「感情」って言葉を使わずに、すべて「状態」って言うんですよね。「感情を考えるな、身体の状態を考えなさい。そしたらあとは筋肉が勝手に動いてくれるから」って。はじめは私もびっくりしたけど、最近は「ああ、なるほどな」って」木村「人に何かを説明する時に、自然と身振り手振りが大きくなってしまったり、緊張するとギュッと食いしばってしまったりするのも、ひょっとすると同じような原理なのかもしれませんね」シェン「私、それまで、心は当たり前にあると思っていたんですけど、ああ、全部身体なんだなって思うようになったんです。気持ちが高ぶったときに胸の辺りがうずいてるような感じもするけど、それもきっと、脈拍が高くなっているだけで」木村「私たちの身体って実はすごく単純な ”機械” なのかもしれないですね」シェン「私もそう思うんです。例えば、トボトボと下を向いて歩き続けると、すぐにどんよりとした気持ちになっていって、実際にネガティブな思考になってくるんですって。よかったら試してみてください。あまりおすすめはしないですけど(笑)」木村「確かに、楽しいことは思い浮かばなそうですね」シェン「逆に、元気になる方法っていったら、これに尽きます。上を向きながら「死にたい!」って叫んだって、きっと本当に死にたいとは思えないはずですよ」木村「ほんとだ、叫んでみても笑えてきちゃう…!笑」シェン「だから私、本当はもっとデジタルに触れてる時間を減らしたいなとも思っているんです。自然に目を向けたい。“インスタ中毒” なので(笑)デジタルに触れすぎると、どんどんと五感が鈍っていくんですって」処方した本は…『雨の島(呉明益)』河出書房新社出版/2021年10月初版刊行木村「「記憶」「デジタル」「自然」といったキーワードからオススメしたいのが、こちら。自然環境と人間の対話や交流、共生をテーマに、ノンフィクションとフィクションを見事に融合させた短編集です。収録されている6編は単独でも楽しめるんですが、長編としても楽しめる仕掛けがあって。その鍵のひとつに、“クラウドの裂け目”という架空のコンピューターウイルスがあるんです。クラウドの情報から人の記憶にアクセスすることができる世界で、さぁ、人はどう行動するか」シェン「ちょうど私、『ブラック・ミラー』という海外ドラマにハマっていて、怖いなぁと思いながら観ていたところなんです。近い将来現れるテクノロジーが、トラブルを引き起こすのですが、それがかなりダークに描かれていて」木村「シェンさんの記憶とシンクロしましたね。しかもこの作品は、人の感情の揺れとともに描かれる自然の描写が素晴らしく、挿絵のイラストも想像力をさらに掻き立ててくれるんです」シェン「あ、このイラスト、著者が描かれているんですね!」木村「素敵ですよね。そして最初に話したように、じっくり読んでいくと、各編に響き合っているものがじわじわと感じ取れてくると思います。こういう物語を、それこそ五感を使って時間をかけて読むことが、デジタルデトックスにもなると思いますよ」エピソードその3「言語のこと、国民性のこと」木村「最後は、言葉や国柄についてお聞きしてみたいなと思います。シェンさんは現在、日本語のほかに英語と中国語が話せるトリリンガルとのことですが、言語から国民性みたいなものは感じとれたりするものですか?」シェン「日本語って言葉が豊かじゃないですか。英語と比べて、同じような意味を持たせた言葉がいくつかある。それゆえ「空気を読む」みたいな文化が発達したのかなっていう気はします」木村「間(ま)を空けたり、行間に含みを持たせたりすることが、良しとされている風習ってありますもんね」シェン「役者として台本を読む時は、「この言葉の真意は…」と考え、突き詰めないといけないのでとても苦労してます」木村「なるほど、幼少期をアメリカで過ごしたシェンさんにとっては、そこが引っかかる訳ですね」シェン「思っていることと裏腹なことを喋っているからこそ、感動するセリフって生まれるのかなって。でね、私、お芝居の仕事を始めてから、もともと生まれながらに持っているようなものなんてほとんどないとも思うようになったんです。ほら、アメリカでの話とも被りますけど、与えられた環境や教育が異なると、結局、全部違ってくるじゃないですか」木村「たしかに。シェンさんは、本当にいろんなところから何かを吸収して、自分のものにしていきますね」シェン「幼い頃は、人と関わるのがあまり好きではなかったんですけど、最近では「その価値観って何?教えて!」ってスタイルになりました。どうしたら “あなたみたいな人” が出来上がるのか気になるし、なんて言うか、その人のレシピが知りたい。「何があなたのこだわりなの?」って聞いて、「あ、そこを見てるんだ!私には無い発想だ!」ってなったら最高ですよね」処方した本は…『東京の生活史(岸政彦)』筑摩書房出版/2021年9月初版刊行木村「レシピが知りたいと言うのなら、最後に打ってつけの一冊を。社会学者の岸政彦さんは、都市や生活史をメインに研究されている方なんですが、岸さんが編集された『東京の生活史』には、150人が語り、150人が聞いた東京の人生がインタビュー形式でまとめられています。まさに東京を生きる人のレシピ集と言ってもいい。それに見てください、この厚さ…!」シェン「すごい、これは、もはや辞書ですね。150人分の東京を集めたら、この厚みになるのかという迫力ですね。ぜんぶドラマにできそう」木村「たとえば同じ日に同じ場所で同じ経験をしたとしても、人によって語る言葉は変わるわけですから。それこそ、そのとき心が、じゃなくて筋肉がどう動いたかも違うんですよね。役作りとかにも役立ちそうですね」シェン「タイトルを眺めているだけですでに面白いですね。どれもすごく強い言葉です。…木村さん、これ見てください。〈英語のアイデンティティーがそれこそ大きすぎて〉ってこれ、まさに私じゃないですか(笑)」木村「すごい偶然!(笑)いまのように占い感覚で開いたページに、役作りのヒントになるような人の生きざまが記されているかもしれませんね」対談を終えて。対談後、3冊すべてを購入してくれたシェンさん。「綾子さんに処方された本は、綾子さんの優しさも含まれているようで、どれも宝物になりそうです」と話してくれました。映画のワンシーンの様な写真や動画で溢れたInstagramはこちらから。ビデオディレクターとしての作品の公開も楽しみです!Instagram(shen_tanaka)撮影協力:〈二子玉川 蔦屋家電〉
2022年03月16日ギフトセット/読書記録カードとアルバム株式会社テイ・デイ・エスのオリジナル文具雑貨ブランド「リプラグ」(会社名:株式会社テイ・デイ・エス、所在地:東京都新宿区)から、読書記録カード「your Log」と、カードアルバムになる名刺ファイル「Log book」をセットにしたギフトセットが発売中です。ギフトセット/Log bookとyour Logのセット(読書記録カードとアルバム) | リプラグ公式オンラインショップ : おうち時間が増えたことで本を読む時間が増えたという方たちに向けて、気軽に心地よく読書ログを残してもらえたらという思いから、読書記録カードとアルバムのセットをリプラグオンラインショップ限定で販売しています。体験しただけで終わらせるのではなく、読書ログとして残すことで知識を蓄えていくことができます。読書ログが増えていくことで、「もっと読みたい」という意欲も高まります。新しいことを始めたくなる新年度のこの時期、友人・知人・ご家族へのプレゼントにもおすすめです。読書記録カード「your Log」と名刺ファイル「Log book」読書記録カード「your Log」とは「your Log」は体験を記録できる名刺サイズのカードです。読書記録はもちろん、お酒、レストラン、映画などの体験を、テンプレートに沿って簡単にメモ書きできます。手で書くことで記憶にも残りやすく、カードが増えていくことで様々な体験を実感することができます。メモ帳型になっているので、持ち運んで外出先でさっと書くことができます。一枚ずつ切り離してファイルに保存すれば、オリジナルの体験アルバムを作ることもできます。名刺ファイル「Log book」とは名刺の横にメモ書きができる、紙製のファイルです。スリットに名刺を差し込むだけの、シンプルでアナログな構造が人気の、リプラグのロングセラーアイテムです。ゴムバンドを外せば、ページの入れ替えも可能です。名刺サイズのカードならスリットに差し込むことができるので、「your Log」を切り離してカードアルバムとしてご使用ください。温かみのある、手書きの読書記録アルバムになります。読書記録カードとアルバム<旅をテーマにした読書>おうち時間におすすめの読書記録カードとアルバムのセット読書記録カードとアルバムのセット<ブラックセット>読書記録カードとアルバムのセット<ホワイトセット>読書記録カードとアルバムのセット<レッドセット>商品概要ギフトセット/Log bookとyour Logのセット(読書記録カードとアルバム)・ブラックセット・ホワイトセット・レッドセット各2,585円税込<セット内容>・Log book ×1(1,540円税込)・your Log ×1(1,045円税込)商品詳細【Log book】サイズ:W148mm×H210mm(A5サイズ)素材:本体・台紙/紙留め具/ライクラカラーゴム、ハト目(真鍮)仕様:表紙+表4+中面(120ポケット/20ページ/10シート)登録新案 第3180843号登録意匠 第1462720号【your Log】サイズ:W91mm×H55mm素材:紙仕様:1冊30枚入り、2冊セットLog bookとyour Logのセット(読書記録カードとアルバム)リプラグとはリプラグは、広告・SPなどのデザイン制作を手がける株式会社テイ・デイ・エスのクリエイターたちによって発足したブランド。身近にあるステーショナリーやインテリア雑貨を、クリエイティブな感性を通して新たな切り口で開発しています。デザイナー自らが使いたいと思うデザイン、シンプルだけどどこか温かさを感じられるものなど、デザインの心地よさをお届けいたします。リプラグ公式オンラインショップ : 会社概要名称: 株式会社テイ・デイ・エス本社所在地: 東京都新宿区新小川町8-30 山京ビル2F代表者: 代表取締役社長加藤 勲設立: 1979年10月6日資本金: 50,000,000円ホームページ: (株式会社テイ・デイ・エス) (リプラグオンラインショップ)instagram投稿 : Twitter投稿 : 詳細はこちら プレスリリース提供元:NEWSCAST
2022年02月28日さまざまな業界で活躍する「働く女性」に、今のその人に寄り添う一冊を処方していくこちらの連載。今回のゲストは、衣装デザイナーのしげたまやこさん。今を時めくアーティストのステージ衣装から、下北沢の非公認キャラクターにいたるまで。たくさんの作品を手掛ける彼女に、これまでのキャリアやお仕事の進め方などを伺いました。途中、私たちが愛してやまないみうらじゅんさんの話で盛り上がる一幕も。今回のゲストは、衣装デザイナーのしげたまやこさん。しげたまやこ(1984年8月14日)は、日本の衣装デザイナー、着ぐるみ・パペット制作者。京都府東山区出身。本名は非公開。主な作品は、CHAI、私立恵比寿中学のステージ用衣装や、野性爆弾・くっきー!の「皮膚タード」など。尊敬する人物に、みうらじゅんを挙げている。※唐突なWikipedia 形式の紹介文が気になった人は、この記事の「エピソードその1」をご覧くださいまずは、しげたさんの自由な創作スタイルについて。木村綾子(以下、木村)「しげたさんとは、前回ここに来てくれたCHAIのユウキちゃんと、漫画家のマキヒロチさんと一緒に、焼肉を食べた仲なんですよね」しげたまやこ(以下、しげた)「あれって2年くらい前でしたっけ?下北沢でいっぱいお肉を食べましたね(笑)」木村「あの時は “衣装を作っている” とだけ聞いて、私はてっきりスタイリストさんなのかなと思い込んでいたのですが、実際はもっと職人に近いお仕事をされているということを後から知りました。普段はどんなものを作られているんですか?」しげた「ひと言でいうと、“モリモリ”としたものが多いですね」木村「え、モリモリ!?オノマトペで自分の職業を表現する人、初めて会いました(笑)」しげた「アハハハ!えーっと、着ぐるみやパペットみたいにモリモリしたものをよく作ってます。主に布物全般が守備範囲ですね。美術とかでも「いけそう?」って聞かれて、いけそうだったら「やれ…ます!やります!」みたいな」木村「いけそうだったらやる(笑)。なんだかすごく頼もしい存在ですね。実は編集さんから聞いたんですが、下北沢の「しもっきー」も、しげたさんが手掛けたんですって!?」しげた「え、しもっきーご存知なんですか!?あれ、私にとっての “初着ぐるみ” だったんですよ」木村「すごい!!!もちろん知ってますよ。私がまだ下北沢で働いていた頃、駅前でお披露目会がおこなわれて。その現場にも遭遇してました(笑)。あれはどうやって舞い込んできたお仕事だったんですか?」しげた「しもっきーって、下北沢に本社がある音楽レーベル「UK.PROJECT」に所属しているんですけど、社長さんと飲み屋でよくご一緒していたこともあって、それまでも何度かお仕事をいただいていたことがあったんです。「バンドのグッズ、手作りで1,000個つくれる~?」とか、「うちのカフェの椅子、全部貼り替えられる~?」みたいな具合に」木村「なんだか、愛のある無茶ぶりでいいですね。すごくフリーランスっぽいです」しげた「そしたら、ある日、別の方から「しげたさん、着ぐるみ作りたくないですか?」って電話がかかってきたんです。「私、作ったことないですよ?」って答えたら、「あれ、お家以外は作れるって聞いたんですけど…」って言われて!」木村「すごいやりとり(笑)。きっと社長さんが「しげたさんは何でも作れるから」って、社内で宣伝してくれていたんですね」しげた「そうなんです。私、UKの中でどうなってるの!?とか思いながら、どうにかこうにかカタチにしたのが、“あの子” なんです」木村「“どうにかこうにか” で完成させてしまうあたりが、聞いていてさすがだなと思いました。ちなみに、着ぐるみって量販店で売ってる材料で作れるんですか?〈オカダヤ〉とかで」しげた「はい、買えますよ。ただ、当時は今ほど情報がオープンじゃなかった時代なので、なかなか簡単には調べにくくて。「着ぐるみ業者制作風景」とかで検索して、WEBサイトの小っちゃい写真を拡大しながら、手探りで見つけ出していましたね。「この容器はあそこの糊っぽい」とか言いながら」木村「すっごい!我らがしもっきーは、そんな謎解きみたいな方法で仕上げられた、大作だったわけですね」エピソードその1「私、〈風とロック〉箭内道彦さんのところで働いていたんですよ」木村「しげたさんのお仕事での初制作って、どんな作品だったんですか?」しげた「たしか「グループ魂」の“台”だったと思います」木村「グループ魂の台!?また突拍子もないワードが出てきました(笑)」しげた「港カヲルさんの“ジンギスカンの兜”があったんですよね。「それを美しく飾りたいから、綺麗なものを作って」って言われて。スパンコール生地とかを使いながら装飾したのが、入社して1週間ぐらいの出来事だったかと」木村「入社?しげたさんって、会社に属されていたこともあるんですか?」しげた「私、元々は〈風とロック〉って会社で、箭内道彦さんのところで働いていたんですよ」木村「え!またしてもついていけない展開…」しげた「新卒で入った〈風とロック〉は、ちょうど会社が初めて新人を取るタイミングだったようで、私は、いわゆる何でも屋さんとして採用されました。雑誌の取材に行ったり、デザインまわりをやったり。当時は、原宿にお店もあったので、そこの店長も兼任していました」木村「予想外の経歴でした。どういった経緯で受けてみようと思ったんですか!?」しげた「大学は美大のデザイン科に行ってたんですが、完全に就活に乗り遅れていたんです。大学4年生になっても、やりたいことが見つからなくて…。でもその夏に東京にライブを見に出て来ていて、タワレコでたまたま『月刊 風とロック』を捲っていたら、募集が出ていて。「あ、私、ついに行きたい会社を見つけたかもしれない!」ってひとり盛り上がって。それが初めて書いた履歴書だったんです」木村「まさに〈風とロック〉との出合いにふさわしいロックなエピソードですね。ちなみに、なんのライブを見に来ていたんですか?」しげた「ZAZEN BOYSです!」木村「一貫してる!(笑) ZAZENきっかけで風とロックに入社して、初制作がグループ魂の台って!美しいほどなんにもブレてないです」処方した本は…『ジャップ・ン・ロール・ヒーロー(鴻池留衣)』新潮社出版/2019年1月初版刊行木村「バンドの存在が人生を変えるきっかけになってきたしげたさんには、まずこの本を。これは「ダンチュラ・デオ」というバンドの顛末を描いた小説なんですが・・・。しげたさん、最初の数ページを捲ってみてください」しげた「え!何ですか、これ。ひょっとして、ウィキですか!?」木村「そうなんです。前代未聞の“Wikipedia 小説”。まず、出身地やジャンル、活動期間、レーベルなどの基本情報が載っていて、続いて「1来歴」「2キャラクター設定」「3音楽性」「4事件」「5著作権」・・・というように、ウィキペディアの形式に則ってバンドの歴史が語られていくんです」しげた「面白い!私、ウィキ読むのめっちゃ好きなんですよ。すっごい長いのとか、虚実入り乱れている感じとか、「あ、作者変わったな!」みたいなことを察しながら読んでくと面白いですよね」木村「まさにまさに、その感覚も味わえますよ。そもそも〈僕〉たちが組んだダンチュラ・デオってバンド自体、過去に存在していた同名バンドを模倣したという設定なんですが、果たしてそんなバンド本当に存在してたのかってことすら疑わしくなっていくという展開で」しげた「・・どうしよう本当に好きになっちゃったら。音源も聴けない、写真も見れない。辛くなるかもしれない(笑)」木村「さらに面白いのは、ダンチュラ・デオのボーカル、つまり語り手が〈僕〉というアーティスト名だというところ。つまり、本来客観的に綴られるはずのウィキペディアが、〈僕〉という一人称で読める。「そのとき僕は〜〜〜」みたいな」しげた「仕掛けが張り巡らされていますね。こんな小説初めて知りました!ワクワクします」エピソードその2「CHAI、くっきー!、コムアイ…。衣装製作秘話」木村「次は、アーティストの衣装製作が、どのように進んでいくのかをお聞きしてみたいです」しげた「たとえばCHAIの場合は、直接メンバーと話すんですよ。楽曲はもちろん、CDのジャケットを含めたアートワークまでを自分たちで作っているグループなので、既に頭の中にもイメージがあるんです。「今回はピンクの、濃いやつで!」っていう風に、いっぱいリクエストをしてくれます」木村「イメージの断片を聞き取ってカタチに起こしていくんですね」しげた「はい。1聞くと、4返してくれるので、「ちょっと待って〜」とか言いながら必死にメモってます(笑)」木村「誰かがイメージのラフを描いたりすることもあるんですか?」しげた「私やユウキが描くこともあるのですが、資料の写真を指差しながら、「丈はこれくらいかな」、「ボリュームはこんなもんかな」って言いながら決まっていくことが多いですね。CHAIはデザインが決まるのがいつもすごく早いですね」木村「なるほど。他の方はどうですか?」しげた「例えばくっきー!さんからは、手描きのイラストやイメージ画像がポンッと届いたり、コムちゃんとは初対面の挨拶が「私ね、サナギから蝶になりたいんです。作れますか?」だったり。きゃりーぱみゅぱみゅさんのバックダンサーさんの紅白の衣装を作ったときは、「どんなに激しく踊っても、着ぐるみの羊の執事の頭が飛んでいかないようにお願いします!」でした(笑)。みなさん忘れられない発注の台詞が多くて、最高です」処方した本は…『伝わるノートマジック(西寺郷太)』スモール出版出版/2019年7月初版刊行木村「アーティストのイメージの断片を、カタチに。その工程にはメモが必須だと思います。この本は、ノーナ・リーヴス西寺郷太さんの頭の中を覗ける一冊。西寺さんはご自身のバンドをはじめ、アーティストへの楽曲提供や、マイケル・ジャクソンやプリンスの研究家としても有名ですが、西寺さんって、アイデアをまとめる時やラジオ出演時に必ずレジュメを作ってるんです。それらが元となっているんですが、これまた中を見てみてください」しげた「うわ、すごい!手書きのノートがそのまま載ってるんですね!」木村「そうなんです。見開き1ページに収まるように、思考が整理されているんです」しげた「西寺さんのラジオを聴いていると、きっとマメな方なんだろうなとは思っていましたが、あの流暢なおしゃべりの手元にはいつもこれがあったわけですね」木村「まずはこんな風に愛着を持ってノートを作り、一度身体に染み込ませることで、いざ本番!というときにアイデアを取り出しやすくするそうなんですさらにこの本では、ノート作りのメソッドも記されているので、しげたさんも倣ってみたらいかがですか?」しげた「ぜひ真似したいですね。私はいつもうにょうにょ文字だから、こんな風に、人に見せられるメモを取れたことがないです(笑)いやほんと、眺めているだけでも見惚れてしまいますね」エピソードその3「ゆるキャラ生みの親として意識せざるを得ない存在」木村「しもっきーというゆるキャラの生みの親として、さらに着ぐるみ製作者として、やっぱり意識せざるを得ない存在、ありますよね…?」しげた「あ、もしかして・・・みうらじゅんさんですか?」木村「ですです!(笑)もうお会いしました?」しげた「まだ、ないんです!!でもみうらさんのことは昔から本当にすごく大好きです。それこそ、〈風とロック〉に入社した時に、先輩のデスクを引き継いだんですけど、引き出しを開けたら、取材で撮ったみうらさんのポラが入っていて・・・。入社以来、それをずっとデスクに飾っていました」木村「またしてもエモい(笑)。でも間違いなく、しもっきーのことは伝わってますよね」しげた「ひー!怖いけど、でも知ってくださっていたら嬉しいですね。実は私、みうらさんの口から「しもっきー」ってフレーズが出るのをずっと待っているんですよ(笑)もし、何かの拍子に奇跡的にご本人とお会いできたとしても、私から名乗り出るんじゃなくて、どうしても、みうらさんに言ってもらいたいんです。「きみのことは知っていましたよ」って(笑)」処方した本は…『ない仕事の作り方(みうらじゅん)』文藝春秋出版/2015年11月初版刊行木村「今日しげたさんと話している時間のなかで、実はみうらじゅんさんのことが頭をよぎる瞬間が何度もあったんです」しげた「畏れ多いです・・・!」木村「いや本当に。いちおう肩書きはあるけど、「いったいどうやって生きてきたの!?」と思わせる存在の魅力とか、「あの人なら面白くしてくれそう」と人に思わせる才能とか・・・。その意味では、それこそこの本のように、しげたさんも『ない仕事の作り方』を地でやってきた方だなぁって」しげた「めちゃくちゃ嬉しいです。確かに、何でも面白がる性格なのと、そういう素質を見抜いてなのか、「なにその仕事!(笑)」っていう仕事をくれた方のおかげで、今の私があるなと思ってます」木村「私見たいですもん。みうらじゅん展ならぬ、しげたまやこ展。しげたさんの歴代作品を集めたら、最高に面白い展覧会になると思いますよ!」しげた「実は歴代作品ってほとんどが一点物でお渡ししちゃうので、あちこちに散り散りになってしまっているんです」木村「絶対やるべきですよ。歴代作品が一堂に会したとき、しげたまやこという存在がどう立ち上がるか・・・」しげた「怖いもの見たさはありますね(笑)」対談を終えて。対談後、3冊すべてを購入してくれたしげたさん。「今後も仕事をしていく上で教科書になるような2冊と、スーパー最高な小説をありがとうございました。木村さんだいすき」と話してくれました。彼女の個性的な作品んが並ぶInstagramはこちらから。さっとスワイプするだけで、きっと見たことある何かが目に入るはず!Instagram(___shigeta___)撮影協力:〈二子玉川 蔦屋家電〉
2022年02月16日さまざまな業界で活躍する「働く女性」に、今のその人に寄り添う一冊を処方していくこちらの連載。新年一発目!そして、記念すべき30回目のゲストは、アーティストのYUUKI(ユウキ)さん。音楽や洋服、アートの制作に奮闘する彼女に、影響を受けるエッセンスや悩みの吐き出し方などを伺いました。今回のゲストは、アーティストのYUUKIさん。ガールズバンド「CHAI(チャイ)」で、ベースや作詞、アートワークを担当。昨年の春からは、洋服や陶芸作品を展開するプロジェクト『YMYM(ワイエムワイエム)』をスタートさせるなど、今は、“つくること” に夢中。私が思うに、世界でいちばん、タメ口が心地いい女の子ですまずは、去年発足した『YMYM』のお話から。木村綾子(以下、木村)「ユウキちゃんとは、私がまだ〈本屋B&B〉にいた頃、漫画家のマキヒロチさんが『いつかティファニーで朝食を』の最終巻を出されたときにトークショーでご一緒したことがあるんだよね。あのときは、マキさんとCHAIでコラボグッズも作っていたよね!」YUUKI「そう!マキさんには「CHAIの理想の朝食」をテーマにメンバー4人のイラストを描いてもらって、「相思相愛アイテム」として売っていたの。トークショーの後、みんなで焼き肉も食べに行って、楽しい女子会だったねー!」木村「夜通しおしゃべりしていられるくらいだったよね!あのときのワイワイも楽しかったけど、今日は腰を据えて、ユウキちゃん自身のことをいっぱい聞かせてください」YUUKI「もちろん、何でも聞いて!」木村「今の活動のメインはもちろんCHAIだと思うんだけど、絵を描いたり、お洋服を作ったりもしてるんだよね?それはどんな形でやっているの?」YUUKI「もともとは、好きなときに絵を書いたりものを作ったり、気ままにSNSに上げたりしてたんだけどね。それを見た人から「ブランドとかやってみたら?」って言ってもらえるようになって、「やるならこんなお手伝いができるよ!」って仲間になってくれる人が増えてきて…。それで去年の4月に、『YMYM(ワイエムワイエム)』っていう名前をつけて正式にブランド化したの」木村「立ち上げからして、ユウキちゃんのお人柄がにじみ出てるエピソードだ!『YMYM』には、どんな意味が込められてるの?」YUUKI「実はね、ブランドの名前に意味ってつけてないの。YとMは私の名前の頭文字ではあるんだけど、なんだか、意味をつけちゃうと、できる範囲が狭まっちゃうような気がして」木村「「意味はあなたが自由に決めてね」ってこと?!」YUUKI「そう、フリーダム!受け取る側にも、「このブランドは私にとってこんな存在」みたいに、好き好きに感じてほしいんだよね。ひとりひとり解釈が違えば、その数だけ私も楽しめるなって思ったの。作る私と、受け取る人とのイメージがごちゃまぜになったものを、また私が受け取って循環して…っていう流れが気持ちいいなって」木村「CHAIでは、「NEOカワイイ」や「コンプレックスはアートなり」っていう明確なコンセプトを掲げて、その世界観を言葉と音楽で表現しているじゃない?一人の人間が同時進行で全く違ったコンセプトの表現活動をしてるってのも、すごく面白い!」YUUKI「あ、そうかも!CHAIがあるから、『YMYM』はこういう形でやろうって思ったのかもしれない。何を作っていくかってことさえ、実ははっきり決めてないの。そのとき興味のあるものを、どんな形で表現しようかなってことから考えていく場所にしたいなって」木村「ユウキちゃんの頭の中がそのまま具現化されていくのね」YUUKI「そうだね。私、どうやら興味の幅が人より広いみたいで、何かひとつを突き詰めるより、いろんなことを一斉に考えていく方が合ってるタイプみたいなんだ。今は、生活のすべてが創作につながっていく感じがして、毎日がすごく楽しいよ」エピソードその1「何かを作っている人が好きみたい」木村「ユウキちゃんは、歌詞を書くとき、絵を描くとき、陶芸を作るとき、何かインスパイアされるものってあるの?」YUUKI「うーん、そうだなぁ…。たとえば歌詞だったら、言葉は生活のいろんなところから耳に入ってくるじゃない?本もそうだけど、町の看板もそうだし、誰かが口にした言葉もそうだし。だから、フィーリングだけど、いいなと思ったものは、できるだけ全部メモして。海外に行ったときは海外の言葉で。 いろんなところから持ってきたものを広げてごちゃまぜにして組み合わせていく感じかな」木村「CHAIの歌の、耳に楽しい言葉並びはそういう所以があったのね。」YUUKI「他には、Instagramもよくチェックしているよ。いろんな国や文化や価値基準のもとで生きてる人の感性って面白いんだよね。私からしたら「え!」って驚くようなことが、その人にとっては日常だったりして。それがタイムラインにわーって並ぶのも、脳が揺れる感じで楽しくて。素人玄人関わらず、ものを作ってる人をインスタで探すのがすっごく楽しいよ!」処方した本は…『アウトサイドで生きている(櫛野展正)』タバブックス出版/2017年4月初版刊行木村「この本は、アウトサイダー・キュレーターとして活動されている櫛野展正さんが、日本各地からアウトサイダー・アーティストを発掘して、そのアートと、アーティストの人となりを紹介している一冊なんだけどね。百聞は一見にしかず。まずは見てみてください」YUUKI「表紙からしてインパクトがすごいね。…わぁ、すご!何これ!!カブトムシだけで兜を作ってる!!(笑)」」木村「「昆虫メモリアル」の稲村米治さんね!2017年に97歳で永眠してしまったんだけど、畢生の大作として、20万匹の昆虫の死骸を使って180cmの昆虫千手観音像を完成させた方でもあるよ」YUUKI「凄まじいね。作らずにはいられなかったんだろうってことが伝わってくるよ」木村「そこなんだよね。武装ラブライバーも、仮面だらけの謎の館も、河川敷の草刈りアートも、ガムの包み紙の裏に描かれた絵も…、ここに紹介されてる18のアートは、いわゆる美術の「正史」には残らないし、他人には無意味に見えることかもしれない。でも、その人が生きるためには必要な表現活動なんだってことが、これでもかと伝わってくるんだよね」YUUKI「こういうのを見ちゃうとさ、アートって執念だなってつくづく思うよ。あと、見せるために作ってない感があるじゃない?人を意識してないっていうかさ」木村「世間とか評価とかお金とかからは切り離された世界だよね。信じるままに作る、生きる強さ。「いいね!」の数にとらわれない生き方」YUUKI「それだ!あとは、Instagramだと、作品は見れても、作り手の声ってなかなか聞けないじゃない? 私は、どんな人がどんな作品を作ってるかも含めて初めてインスピレーションになるから、アートと人とがセットで紹介されてるこの本からは、いろんな刺激をもらえる気がするよ」エピソードその2「相談の仕方が分からない」木村「突然変なこと聞くけど、ユウキちゃんって、失敗したり嫌なことがあったらどうなるの?」YUUKI「え、急にどうしたの!?(笑)」木村「だってほら、絶対に暗い顔を見せない印象だから。むしろ、泣いてる人でも「あれ、気づいたら笑ってる…」ってなるくらい、人を元気にさせる力のある方だよね」YUUKI「わ、そう言ってもらえるの、めちゃくちゃ嬉しい。でも落ち込むことはもちろんあって、そうなるとね、すごーく、暗いよ!」木村「すごーく、暗いんだ(笑)」YUUKI「どこまでも”落ちる”から、何もしていなくても涙が出ちゃう!でもその姿は絶対に人には見せないって決めてるの。一人で、底の底まで落ちてって、底に足が付いたら、「ぴょーん!」って飛ぶの(笑)」木村「すごい回復法…(笑)。悩みごとも人に相談しないで、完全に自分で解決しちゃうタイプ?」YUUKI「昔から相談って苦手でね。相談って、どうやってしたらいいの!? 人からの相談はよく乗ったりするんだけど、自分だと全然できないんだよね」処方した本は…『ひとまず上出来(ジェーン・スー)』文藝春秋出版/2021年12月初版刊行木村「”相談下手”なユウキちゃんには、タイトルから背中を押してもらえそうな2冊を紹介しようと思います。まず1冊目は、ジェーン・スーさんの最新エッセイ集『ひとまず上出来』!」YUUKI「ジェーン・スーさんって、ラジオパーソナリティーもやっている方だよね?えっと、Podcastの…」木村「『OVER THE SUN』ね!」YUUKI「そうそう、「ご自愛ください」「オ〜バ〜!」ってやつ、私、あれ、めちゃくちゃ好きなんだ!」木村「スーさんといえば、人生相談のプロ。TBSラジオでは8年近くも、毎週リスナーからのお悩み相談に乗っているんだけど、相手に寄り添うような真摯な姿勢で言葉を選んで語りかける姿が素晴らしくてね。他人の悩みなのに、自分まで、心の交通整理をしてもらってる気持ちになるんだよね」YUUKI「わかるわかる。あの心地よさってどこから来るんだろうね」木村「この本には、スーさん自身の生活と、そこにある小さなモヤモヤやイライラやヤレヤレが書かれてあるの。大きな事件や大失敗、人生の転機…そういうことは起こらないけど、連綿と続いていく生活ってこういうことだよねって、しみじみと了解させられるというか」YUUKI「帯の「明けない夜はないはずだ」とかもいいね。なんか、背伸びしない感じが伝わってくる」木村「CHAIが「コンプレックスはアートなり」なら、スーさんは「コンプレックスはエネルギーなり」って感じなんだよね。いくつになっても変わらない性格も、加齢とともに変わっていく価値観や体型も、いまの自分にちょうどよく馴染ませたらこっちのもんだ!って。…あ、あとね、ラジオファンなら、巻末の“推しエッセイ”も必読だよ」YUUKI「あの、決して誰かを明かしてはくれない推しのことが書かれてるの!?それも楽しみ!!」処方した本は…『猫は、うれしかったことしか覚えていない(石黒由紀子)』幻冬舎出版/2017年7月初版刊行木村「2冊目は、愛猫との生活を綴ったエッセイ集。『猫は、うれしかったことしか覚えていない』っていうタイトルで、各章のタイトルも「猫は、〜〜〜」と一貫して猫の生態を捉えていて面白いよ」YUUKI「〈猫は、自分で癒す〉〈猫は、好きをおさえない〉〈猫は、当たり前に忘れる〉…。こう見てると、私にも猫的な部分と、猫に学びたい部分の両方があるのがわかるよ」木村「綴られるのはもちろん猫のことなんだけど、ふとした一文に、人間を省みてしまうんだよね。〈猫は余計な力みが抜けています。めげないし、落ち込まない。そして前向きに明るくあきらめるのです〉とか」YUUKI「わ〜、猫になりたい…!」木村「なんかさ、ユウキちゃんと猫って相性良さそうだよね!一人家で落ち込んでるユウキちゃんの膝の上に、猫が気まぐれに乗ってくる絵が、いま私の頭の中に浮かんだ」YUUKI「あ、なんかすごくいいねそれ!新たに必要なパートナーは猫なのかもしれない!(笑)」木村「「CHAIやYMYMで活躍するユウキのクリエイティブを支える存在は、猫だった!」的な(笑)。まずはエッセイを読んで、猫との相性を確かめてみてください(笑)」対談を終えて。対談後、3冊すべてを購入してくれたYUUKIさん。「自分に合う本を紹介してもらうのは初めてで、めちゃくちゃ嬉しかった!本からのインプットでまた新しい何かが生まれそう。たのしみっ!」と話してくれました。そして、彼女のブランド『YMYM』が、〈代官山 蔦屋書店〉でポップアップを開催中。1月23日(日)までだから、みんな急げ~!Instagram(ymym.tokyo)撮影協力:〈二子玉川 蔦屋家電〉
2022年01月12日さまざまな業界で活躍する「働く女性」に、今のその人に寄り添う一冊を処方していくこちらの連載。今回のゲストは、編集者、コピーライター、そして詩人の肩書きを持つ若尾真実さん。フリーランスとしてのびのびと働く彼女に、詩との出合いやこれまでのキャリアのこと、今後の展望についてを伺いました。途中、彼女にとっての原点となった大切な作品に遭遇する一幕も。今回のゲストは、詩人の若尾真実さん。元は、担当編集のお友だち。「お店、友人、イベント。どれをとってもセンスがいい。私にとってのインフルエンサーです!」という熱い推薦を受け、会ってみたくなったのが、今回お招きした経緯。この春、独立から1年のタイミングで、写真詩集『汽水(きすい)』を出版されています。詩との出合いと詩人への憧れ、ちょっとした絶望も。木村綾子(以下、木村)「若尾さんは今、フリーランスとして活動されていると伺いました。きっといろいろな顔を持たれているとは思うのですが、肩書きは何と名乗られているんですか?」若尾真実(以下、若尾)「「編集者」であったり、「コピーライター」であったり。最近では「詩人」としての活動も始めました。この春に、写真家の友人と共に写真詩集を出版したんです」木村「『汽水』ですよね。私も読ませていただきました。せっかくなのでまずは、詩についてのお話から伺いたいです。…昔から詩がお好きだったんですか?」若尾「はい。小学校4年生の国語の教科書に、まど・みちおさんの詩が載っていたんです。「なんて少ない言葉で、宇宙の真理を説いているんだろう」って感動したのがきっかけで」木村「子どもの頃から豊かな感性をお持ちだったんですね。その感動が、「詩人になりたい!」に直結していったんですか?」若尾「そうですね。でも、町の図書館にも学校の図書館にも、本は山ほどある中で詩集はたった棚1段ほど、詩人も両手で数えられるくらい。このうちの一人になるなんて到底無理…なんて最初から半ば諦めていました」木村「なるほど。小学生ながらに、プチ絶望みたいなものを味わったわけですね。それでも抑えきれない詩への情熱、みたいなものはどう発露していったんですか?」若尾「中学生くらいまでは、まど・みちおさんの真似をして、日記のような感じで書いていました。宿題でもないのに書いた詩を国語の先生に読んでもらったりして、時には、“はなまる” をつけてもらったりしながら」木村「わ、いい話!」若尾「今思えば、本当に変な生徒だったと思います。先生もよく相手をしてくれたなって」木村「小説はページをめくるごとに時間が流れていく感じがありますけど、詩って、時間を止めてページの奥に深く入っていく印象があります。その時間を一緒に過ごしてくれる人が身近にいたのは幸福な環境でしたね」若尾「本当にそう思います。あとは、母も昔から応援してくれていて。身近な人が、才能を信じてくれたおかげで、今の自分があるのかもしれません。ちなみに、さっきの国語の先生に見てもらっていたノートは、今でも大切に持っていて、時々見返したりしています」木村「めちゃくちゃいい話!」エピソードその1「死ぬ前に本の1冊は作っておきたい」木村「私にとって、『汽水』との出会いも印象的でした。ある日、この連載の担当編集からLINEがきて、「突然ですが綾子さんにプレゼントしたいものがありまして、今ご自宅の郵便受けに入れておきました!」って。それで封を開けてみたら『汽水』が入っていて、編集者の推しページには付箋まで貼られていて…(笑)。人の心が動いた軌跡ごと本を受け取るという貴重な体験をしたんです」若尾「ありがとうございます!そんな風に出会っていただけたなんて、この本は幸せものです」木村「若尾さんにとっての初めての作品、いわゆる名刺代わりになる一冊は、なぜこういう形になったんですか?」若尾「自粛期間で毎日家で過ごしていたある朝、ふと、シンプルに自分が心からやらなきゃと思ったんです。「死ぬ前に本の1冊は作っておきたい」って(笑)」木村「言葉と写真が呼応するような構成になっていて、生活にすーっと馴染んでいく印象を受けました」若尾「それは嬉しい感想です。普段、詩を読まない人にも、自然と詩に触れる機会をつくれないだろうか、というのは以前からずっと考えていました。言葉が挟まっている写真集くらいの温度感で、手に取りやすくて、ずっと家に置いておきたくなるような本をつくれたらいいなと思って、友人の写真家・田野英知くんに声をかけました」木村「装丁も素敵ですよね。手にした瞬間、これは棚差ししておくのはもったいない!って、飾る場所を探して家の中をウロウロしました(笑)」若尾「まさに、眺めたくなるような本を目指して、同世代の装丁家・古本実加さんに装丁をデザインしていただきました。部屋のインテリアにしたり、目が合ったときにパッと開いたところを眺めたり。それぞれ自由に受け取ってもらえたら嬉しいです」処方した本は…『カキフライが無いなら来なかった(せきしろ・又吉直樹)』木村「景色のように言葉を眺める時間を楽しめるのが詩だとするなら、景色を切り取る文学として、俳句がありますよね。とりわけ自由なのが、名の通り「自由律俳句」。この本は、せきしろさんと又吉直樹さんの共著で、ふたりの自由律俳句にエッセイが添えられているという構成です」若尾「せきしろさんという方は、何をされている方なんですか?」木村「エッセイも書くし、小説も書くし、脚本やコントだって書いちゃう。もともとは「文筆家」と名乗っていたんですが、たしか数年前に肩書きをやめられたんです」若尾「肩書きをやめた、って素敵ですね。私もそういう生き方を目指したい。…自由律俳句っていうのは、どんな俳句なんですか?」木村「五・七・五の定形にも縛られず、季語を入れなくてもOK。何でもありの自由演技だからこそ、長さやリズム、何をどう切り取るかのセンスが問われます」若尾「〈喧嘩しながら二人乗りしている〉とか、〈まだ眠れる可能性を探している朝〉とか、ふと目にしたものやぼんやり思っていることを言葉にすることで、こんなにも景色が鮮やかに色づくから不思議ですね。自由律俳句、作ってみようかな」木村「〈手羽先をそこまでしか食べないのか〉とか、〈よく解らないが取り敢えず笑っている状態〉とか、飲み会に居合わせた無口な男性像が浮かびますよね(笑)。…ちなみにこの句集は、又吉さんがピースでブレイクする直前の29歳、初の著作として出版した本なんです。今の若尾さんと同じ年のときに、又吉さんがどんな感性を持たれていたかにも触れられると思いますよ」エピソードその2「小説を読まなくなってしまいました」木村「次は若尾さんのお仕事について、お聞きしてみたいです。昨年、独立をされるまでは、どういったキャリアを歩んでこられましたか?」若尾「大学卒業後は、PR会社に入社しました。詩のような短い言葉から本質を考える仕事がしたいと考えた時に、広告や広報の仕事が近いんじゃないかと思ったんです」木村「具体的にはどんなお仕事をされていたんですか?」若尾「PR会社では、幅広い業界の企業の広報をお手伝いしていました。その後、ファッション系のスタートアップ企業で、5年くらいオウンドメディアやブランディングなどに携わっていました」木村「なるほど。「詩人」として立つ前に、仕事として誰かの想いを言葉にするPRを経験されていた訳ですね。さっきからすごくバランスが取れた方だなという印象を受けていたのですが、このためだったのかと府に落ちました」若尾「ありがとうございます。嬉しいです」木村「ところで、小学生の頃に詩と出会い、言葉に惹かれた後は、やはり本や詩集がずっと身近にあったのでしょうか?『汽水』に出てくるような言葉の感覚は、どうやって育まれてきたものなのかが気になりました 」若尾「中学生の頃までは、図書館に毎週通っていました。ミステリーやファンタジーなどの小説が好きで。でも、大人になるに連れ小説を読まなくなってしまいました」木村「遠ざかってしまった理由は何だったんですか?」若尾「社会人になってからは仕事中心で一日が回っているから、小説に流れている時間にうまく乗ることができなくなってしまったのかもしれないです。本を読む目的も情報収集メインに変わってしまって…。無邪気に物語を楽しめていた頃の感覚を取り戻したいですね」処方した本は…『月の客(山下澄人 )』木村「「久しぶりに小説を読みたい!」という単純なお悩みに対してなら恐らく紹介しないと思うんですが、若尾さんは、言葉を知っていて、言葉を自由にとらえる楽しさも知っている方だからこそオススメしたい一冊があります!」若尾「〈書かれたとおりに読まなくていい。どこから読んでもかまわない。〉って、すごいですね。帯文からもう惹かれてしまいました!」木村「背表紙には、〈「通読」の呪いを解く書〉とまである。長編小説としてストーリーラインはしっかりあるのですが、今回は野暮なのでそれも説明しないことにします(笑)。ぜひ、ページを開いてみて下さい。何かに気づきませんか?」若尾「書き方が自由!改行の感じが詩集っぽくもあって、こんな風に小説を書くこともできるんですね」木村「冒頭から結末まで、一度も「。」が打たれていないのも特徴的です。それに、読んでいると「これはいま誰視点で語られていることなんだ?」って、登場人物や時間までが溶け合って、そこに読み手の私まで絡め取られていくような不思議な感覚も味わえるんです」若尾「言葉でできることってまだまだたくさんあるんですね。創作のインスピレーションも得られそうです」エピソードその3「いつか絵本を作ってみたい」若尾「木村さん!さっき話していた、まど・みちおさんのコーナーがありました!」木村「ほんとですか!若尾さんの一番好きな詩を教えてください」若尾「ちょっと待ってくださいね。…ありました!「どうして いつも」という詩です」木村「〈一ばんふるいものばかりがどうしていつもこんなに一ばんあたらしいのだろう〉と締められる。これに小学生の若尾さんが宇宙を見たと。…凄まじい感性です!」若尾「誰にでも分かるシンプルな言葉で、本質を突いているんですよね。私もこんな言葉を世に残したいです」木村「そんなことを聞いてしまうと、第二詩集、第三詩集も楽しみになってしまいますが、目下、何か実現させたい目標はありますか?」若尾「少ない言葉で物事を伝えるというのはずっとやっていきたいことなので、コピーライティングの仕事はもっと力を入れていきたいと思っています。あ、でも私、いつか絵本を作ってみたいなっていう思いもあるんですよ」処方した本は…『ぼくを探しに(シェル・シルヴァスタイン)』木村「今日お話をしてきて、「少ない言葉で宇宙の真理をつく」というのが、若尾さんが詩に魅了されたきっかけでもあり、若尾さんの生き様をあらわす言葉にもなっていると感じました。この作品は、限りなく少ないタッチで、いわば人生のなんたるかを描いています」若尾「絵本の絵が「線画」なんですね!まさに、シンプルな表現にこそ訴える力がありそうです」木村「完全な円になれないマル(ぼく)が、自分に欠けているピース(相棒)を探す旅が描かれるのですが、「あれでもない、これでもない」と出会っては別れ、自分とは何なのかを知っていくんです」若尾「絵本って深いですよね。子どもの頃にはそこまで人生を重ねた読み方をしなかった物語でも、大人になるにつれて、「あぁあの物語は、こういうことを伝えようとしていたのかなぁ」なんて気づくことがたくさんあって」木村「この絵本が私にとってまさにそうでした!子どもの頃は、「ぼくがんばれー!」みたいに無邪気に応援しながら読んだりしていたんです。でも一緒に歳を重ねていく中で、自分自身が辛い別れを経験した後とかは、開くこともできなかったりしましたね」若尾「いいお話。私もいつか、子供から大人まで、人の生涯に寄り添うような作品を世に残したい。今回処方していただいた本たちの存在を知って、より言葉の可能性を広く捉えられるようになりました」対談を終えて。対談後、処方した3冊すべてを購入してくれた若尾さん。「どの本も、言葉の選び方や使い方が独特で、自分の仕事や表現にも刺激になりそうです」と話してくれました。若尾さんがつくった写真詩集『汽水』はこちらから。若尾さんが紡ぐ言葉に触れてみてください!kisuiwater.thebase.in/撮影協力:〈二子玉川 蔦屋家電〉
2021年12月15日男性のなかには、女性が本を読んでいる姿を好む人もいます。もしも気になる彼がそうだとしたら、デートの待ち合わせでは読書をして過ごすといいかもしれません。なぜ男性は、女性の読書姿に惹かれるのでしょうか?■ 好みや共通点が分かると親しみやすい「僕が見たばかりの映画の原作本を手にしていて、気が合うなと思いました。その後は、感想を言い合いながら楽しくデート。『私まだ全部読んでないんだからネタバレ注意!』なんて口をとがらせて、かわいかったなぁ」(33歳/飲食店経営)「彼女が読んでいた本が渋い時代モノでギャップ萌え(笑)。僕も時代小説が好きなので、おおっ!と思いましたね」(35歳/医師)もしも気になる彼に読書姿をアピールしたいなら、彼が好きな作家の本を選ぶのがおすすめです。自分と同じことに関心があるということを、自然に勘づかせると、男性も意識せずにはいられないはずです。■ 読書姿は知的で美しい「スマホをいじって待つ人が多い中、僕の彼女は文庫本を読んでいました。本のページをめくる女性の横顔っていいですよね」(36歳/経営コンサルサント)女性が読書をしている姿に、知的なオーラを感じる人が多いようです。少し立ち止まる時間があると、すぐにスマホを見始める人が多い時代。気になる彼と待ち合わせするときは、スマホよりも読書をしながら待っていると好感度が上がるかもしれませんよ。■ アピールしすぎはNGしかし、わざとらしく背表紙を見せて、読書姿をアピールするのはNGです。彼が待ち合わせ場所に現れたら、本をさっと閉じて、挨拶をしましょう。「何を読んでたの?」と彼に興味を持たせることがポイントです。知的な大人の男性を手に入れたいのなら、待ち合わせ場所でのスマホいじりをやめて、本を読みながら待ってみましょう。(麻生アサ/ライター)(恋愛メディア・愛カツ編集部)presented by愛カツ ()
2021年12月06日さまざまな業界で活躍する「働く女性」に、今のその人に寄り添う一冊を処方していくこちらの連載。今回のゲストは、絵描きのLee Izumida(リー・イズミダ)さん。元“BEAMS店員” という異色の経歴を持つ彼女に、独立のきっかけや絵描きならではの作品の楽しみ方、今後の展望などを伺いました。今回のゲストは、絵描きのLee Izumidaさん。北海道の田舎町出身。2019年に〈BEAMS〉を退社後、絵描きとしての活動を本格的にスタート。アクリル画を得意とし、ショップのウィンドウ装飾などを手掛ける。デジタルを一切使わない “アナログ派” で、いつもスケッチブックを持ち歩いているのだとか。“BEAMS店員” から “絵描き” が誕生した経緯。木村綾子(以下、木村)「はじめまして。この連載のゲストはいつも担当の編集さんとふたりで「次、誰と会いたい?」みたいに話しながら決めていくんですが、今回は先月来てくださったMICHELLE(ミシェル)さんに紹介していただいて。これまでいろんな人に会ってきましたけど、絵描きさんとお話しするのは初めてかもしれないです」Lee Izumida(以下、Lee)「お招きいただいてありがとうございます。MICHELLEとはBEAMSで働いていた頃の館(やかた)が同じでした。彼女はレディース、私は「Pilgrim Surf+Supply(ピルグリム サーフ+サプライ)」と店舗は違ったのですが、当時から仲が良くて…!」木村「Leeさんは現在、絵画一本で生計を立てられていると伺いました。肩書きが、イラストレーターじゃなくて絵描きを名乗っていることにまず興味が湧いて。何かこだわりがあってそうしているんですか?」Lee「実は、イラストレーターを名乗っていた時期もあったんですよ。当時は相手の話をよく聞いて、柔軟に動かないといけない仕事の依頼が多かったのですが、私、どうやらあまり人の話を聞けないみたいで、やめにしたんです(笑)」木村「なるほど!確かにイラストレーターは、オーダーの意図を汲み取ってイラストを描くイメージです。「これに合うイラストを描いて下さい」みたいな。でも、それができなかったゆえの、アーティスト路線への転向だったんですね」Lee「私、すぐに “自分” を出しちゃうから、これは違うなって。絵描きを名乗り始めてからは、伸び伸びと活動ができるようになりました」木村「絵を売って生計を立てるって難しいことだと思うのですが、絵描きとしてのお仕事が軌道に乗り始めたきっかけって何だったんですか?」Lee「やっぱり、BEAMS時代に描かせてもらったウィンドウが大きかったのかなと思います。お店のディレクターがいつも自由に描かせてくれたのですが、それが徐々に、ファッション感度の高い人たちへと届くようになったんです」木村「Leeさんがいらっしゃったのって、神南にある、あの大きなお店ですもんね。確かに、あそこを自由演技で任されるなんて、聞いているだけでワクワクします」Lee「最初は結構ビビっていましたよ。「え、いいんですか!」とか言いながらも、内心「どうしよう?」って(笑)」木村「でも続けるうちに、評価が伴っていったんですね。ちなみにいつ頃から、「これは絵描き一本でいけるぞ!」という手応えを感じ始めたんですか?独立のきっかけなんかもお聞きしたいです」Lee「私、毎年個展をやっているんですよ。人が来ようが来なかろうが、それだけは昔から続けてきたことだったんですが、3年前に『スニーカー展』をやった時に、絵がたくさん売れたんです。そんなこと初めてだったので、「今のタイミングならいけるかもしれない!」って直感で」木村「毎年必ず個展を…!簡単に言いましたけど、凄いことです。BEAMSのウインドウという華やかなスポットの一方で、地道に続けていた個展という存在が、何よりも大きな自信材料になったわけですね」エピソードその1「個展は “研究結果” みたいな位置づけ」木村「毎年の個展のテーマはどうやって決めているんですか?」Lee「う~ん、「今発信したいもの」というか、それこそ直感ですね。私はいつもその時に興味があることをとことん調べて描くので、個展はある意味、“研究結果” みたない位置づけになるんですよ。今までは、『スニーカー展』 のほかに、『魚展』 や 『花展』 なんかをやりました」木村「『魚展』 が気になります。ギャラリーの中をお魚でいっぱいに?」Lee「はい、38匹で埋めました。でもね木村さん、聞いてください。『魚展』 ね、1匹しか売れなかったですよ…」木村「え、1匹だけ!?」Lee「“1回目の緊急事態宣言 in 京都”!条件が最悪だったんです。結局、37匹が自宅に戻ってきました(涙)」木村「えー!でもそっか。売れなければ手元に残るのが個展ですもんね。芸術の世界はシビアだ…。ところで、今年の個展のテーマは何だったんですか?」Lee「『実家』です。学生の頃からずっといつか描きたいと持っていたテーマだったんですが、コロナ禍で奥に秘めていたものを発信したいなって思えたんです」木村「たしかに、コロナ禍では誰もが「場所」について見つめ直すきっかけを得ましたもんね。実家はいわばその原点ですね」Lee「そうなんです。なんというか、コロナって私たちに、「死」をものすごく身近なものとして突きつけてきたじゃないですか。いつ訪れるか分からない「死」と直面した時に、今自分の絵を誰に見せたいかを考えたら、やっぱり両親で。北海道で過ごした幼少期の思い出や自然、家族や友人に思いを馳せながら描きましたね」処方した本は…『白いしるし(西加奈子)』新潮社出版/2013年6月初版刊行木村「Leeさんはこれまで絵を通じて多くの人を惹き付けてきたと思うのですが、逆に、誰かの絵を見て無性に心が惹き付けられたり、圧倒されたり、なんならそこから恋愛に発展したりした経験はありましたか?いわゆる“才能惚れ”というか」Lee「ないです!一度もない!(笑)もちろん、作品を見て「かっこいいことやっているな!」って思う人はいますよ。でも、だからって「好き」みたいな感情が湧くことはないですね。画家同士の恋愛なんて、絶対めんどくさいことになりますもん。今もこれからも「付き合いたくない職業No.1」は画家です(笑)」木村「そこまでハッキリと(笑)。…でも、ますますオススメしたくなってきた本が、こちらです。『白いしるし』は、まさに画家が画家を好きになる物語。お金にならない絵を描き続けている女性主人公が、真島という画家の絵に惚れこむところから始まる恋愛小説なんですが…」Lee「げぇ!画家同士の恋愛ですか?!絶対にうまくいかないですよ」木村「え、どうして分かるの!(笑)…その通りなんです。“極上の失恋小説”ってコピーがついてるくらいに、読んでいて苦しくなるほどうまくいかないんですよ。狂おしい恋心に捕らわれながらもどうすることもできない、“才能惚れの行く末” みたいなものが描かれています」Lee「想像するだけでゾッとしますが、自分には絶対に訪れないだろう出来事なので、逆に興味がわいてきました」木村「西さんって小説だけじゃなく絵も描く方で、ほとんどの単行本では装丁もご自身で描かれているんですよ。小説執筆と並行してダンボールに絵を描いて、本が出るタイミングで個展を開くというスタイルなんです。商業的な活動をしながらも、自分の個展が常にあるLeeさんのスタイルと近しいものを感じたので、ぜひ「画家通しの難しい恋」を疑似体験してもらえたらなと思います」エピソードその2「勝手に物語を作っていく様子が楽しい」Lee「私、最近、4枚セットの絵を描き始めたんですよ。お花が枯れていく様子や、家が完成していく様子を4コマで表現しているんですけど、みんないろいろ深読みしてくれるのが面白くて」木村「シンプルな絵こそイメージを喚起しやすいのかもしれませんね。本でいう“行間を読む”的な」Lee「そうそう。シンプルだったり、下手したら意味さえなかったりする4コマなのに、見た人それぞれが自分の物語を付けてくれるんだから、人の想像力って凄いですよね。…ところで木村さんは絵本も読みますか?」木村「絵本はすごく好きで、自分のお店でもよく取り扱っています。子どもの頃に好きで読んでたものも、今読むと感じ方が変わっていたりするから面白くて」Lee「そうなんですよね。昔、お母さんに読んでもらっていた絵本も、もしかしたら親子で感じ取っていたものが違っていたのかな、なんてことも最近よく考えていて。実は私、いつか絵本を作ってみたいなと思っているんです。意味のない、最高にナンセンスな絵本を」処方した本は…『絵本ジョン・レノンセンス(ジョン・レノン)』晶文社出版/2013年初版刊行木村「あのジョン・レノンが、絵本も描いてたことはご存知でしたか?」Lee「知らなかったです。『絵本ジョン・レノンセンス』って、すごいタイトルですね(笑)」木村「「ジョン・レノンのセンスを絵本でどうぞ」的な感じなんですかね。ただこの絵本、ポール・マッカートニーが「序文」で、訳者の片岡義男さんが巻末の「解説」でも書いてるように、どの話もまったく意味をなしてない超ナンセンスな一冊なんです」Lee「ナンセンスな物語っていいですね。こういう訳が分かんないの、好きです」木村「意味なんて必要ない。なんとなく面白いな、おかしいなと思えればそれで充分じゃない?って感覚もかっこいいですよね。愛と平和を歌ってきたジョンレノンが、「こんなふざけこともできるんだぜ」っていうのを見せつけてくる感じ」Lee「絵も超わけわかんなくて最高ですね!」木村「言葉と絵も全然脈絡がなくて、やりたい放題なんですよ。でもファンは、「ジョン・レノンの描くものだからきっと強いメッセージがあるはずだ!」とかって解釈に勤しんでいたのかな、なんてことも想像すると面白いですよね」Lee「ふふふ。絵画も実はそんな感じですよ。みんなすぐに「あれはこうだ!」とか意味をつけたがりますが、描いた本人はそんなに深く考えてないことのほうが多かったり(笑)」木村「とにかくとことん自由な本なので、Leeさんが絵本を作る際にはこういうものを目指してほしいなと思って紹介させていただきました」エピソードその3「描いている時が楽しくて」木村「現在35歳で、独立2年。いよいよ油の乗っていく時期だと思いますが、今後の目標や展望はありますか?」Lee「「おばあちゃんになるまで描き続けること」です!これは、昔からずっと変わっていない、私の目標です」木村「おおお!(拍手)「あのブランドのウィンドウをやりたい」とかではないんですね」Lee「私、もともとそういう欲みたいなものが無いんですよ。自分の作品が貼り出されても、「これ描いてるとき楽しかったなー!」って気持ちでいっぱいになっちゃう」木村「達成感で満たされるみたいな感覚はないんですか?」Lee「ないんですよ。描いてるときの高揚感がMAXで、評判がいいとか、多くの人に見てもらえたとか、いくらの値が付いたとかっていう評価が自分の中での大きな自信に直結する感覚はあまりなくて。だから請求書をよく出し忘れるんです(笑)」木村「きっとそういう姿勢が良いんでしょうね。“商業っ気”がしないというか、純粋に絵が好きという姿勢が絵に表れている感じが。さっきおっしゃっていた「相手の意図が汲みとれない」とも実は繋がっていて、たとえ大きい仕事であっても、ブランドの世界観に引っ張られないのがLeeさんのアーティストとしての魅力であり強みである気がします」処方した本は…『東山道エンジェル紀行(町田康)』左右社出版/2021年9月初版刊行木村「最後に紹介したいのは、天才同士のコラボレーションが形になった一冊です。これは、画家の寺門孝之さんと小説家の町田康さんが、構想期間20年をかけて完結させた絵本なんですが、まずは中を開いてみてください」Lee 「え、なんですかこの本!こんな本見たことないっていうか、つくりがすごいですね」木村「物語が前半後半で2つに綴じられていて、紙質も色も違って、間に大判のポスターが挟み込まれていて…。他にも細かな仕掛けが詰め込まれているのでぜひ時間をかけて楽しんでほしいのですが、実はこの本、すべて手製本なんです。…というかこれを印刷機で刷るのは無理ですよね(笑)」Lee 「クラフトだからこそ遊べるワザですね。っていうか、遊びたい放題ですね(笑)」木村「寺門さんは、薄い麻の布をキャンバスに、表と裏両面から絵の具を染み込ませて一枚の絵を仕上げる方なんですが、その絵を見た町田さんが、そこに夢と現、あの世とこの世の境目を感じて、行き場のない〈追放者〉の物語が生まれたんだそうです」Lee 「すごい感性ですね。才能が連なってく感じ、かっこいいです」木村「関わった人全員がいっさいの妥協せず、純粋に作りたいものを作り上げたことも伝わってくるんですよね。これぞデジタルではなし得ない作品」Lee 「実は私も紙にこだわっていて、デジタルでは描かないんです。いつどこで閃いてもいいように、毎日画材を持ち歩くオールドスタイルなんですが、これは今後も変えたくないなと思っていて。こういう本と出会うと、クラフトでできることってまだまだたくさんあるなってワクワクしますね」対談を終えて。対談後、『絵本ジョン・レノンセンス』を購入してくれたLeeさん。「ナンセンスな本って、その時の気分や状況で解釈が結構変わるので、読むのが楽しみ。勝手に深掘りしたいです!」と話してくれました。一度見たら忘れられないLeeさんの絵はこちらのWEBサイトから。次の個展の開催が楽しみだな〜!IZUMIDALEE.COM撮影協力:〈二子玉川 蔦屋家電〉
2021年11月10日さまざまな業界で活躍する「働く女性」に、今のその人に寄り添う一冊を処方していくこちらの連載。今回のゲストは、ファッションディレクターのMICHELLE(ミシェル)さん。スポーツマンだった高校時代から一転、ファッションの世界へと飛び込んだ彼女に、今月からスタートさせる新しいブランドや最近関心があるという社会問題について伺いました。今回のゲストは、ファッションディレクターのMICHELLEさん。京都府出身。2018年に〈BEAMS〉を退社後は、友人とスタートさせた移動式の古着ショップ「Blanche Market(ブロンシュ マーケット)」のディレクターに。愛称 “MICHELLE” の由来は、アメリカのドラマ『フルハウス』に出てくる双子の赤ちゃんに似ていたことから。憧れの女性は陸上選手のアリソン・フェリックスで、ピンクの襟は片方だけ出すのが彼女流“武井壮の女版” だった高校時代。引退後はファッションの道へ。木村綾子(以下、木村)「はじめまして。MICHELLEさんは元々〈BEAMS〉にいらっしゃったと伺いました。昔からお洋服に囲まれて育ってきたんですか?」MICHELLE(以下、MIC)「いえ、実はそうでもないんです。私、もとがめちゃくちゃ “スポーツマン” で、高校生までは陸上部で「走り高跳び」と「七種競技」をやっていたんです」木村「そうなんですね!…えっと、ななしゅきょうぎ、って、なんですか!?」MIC「「七種競技」っていうのは、ハードルと走り高跳び、砲丸投げ、200m、走り幅跳び、やり投げ、800mの7種目で、合計ポイントを競う競技です。“武井壮さんの女版” だと思っていただければ…!」木村「分かりやすい。分かりやすすぎて聞いてるだけで息切れました(笑)。スポーツ畑のど真ん中にいたMICHELLEさんがファッションのお仕事を志すようになったのには、どんな経緯があったんですか?」MIC「昔の陸上競技の格好ってね、めちゃくちゃダサかったんですよ。今でこそ「ナイキ」なんかが可愛いウェアを展開するようになっているんですけど、当時はまだまだ古参のブランドの方が良しとされていて。海外の選手は、可愛いウェアに派手な髪をなびかせて走っているのに、どうして自分はこんなにも機能性を重視した服装しかできないんだって…!」木村「いちばんオシャレを楽しみたかった時期にため込んだフラストレーションが、引退後に爆発したわけですね」MIC「専門学校の卒業後は〈BEAMS〉に入って、渋谷の店舗に配属となりました。もともと東京に興味があった訳でもないのですが、人事の方に「こっちにおいでよ」って誘ってもらって。よし、行ってみるか!って」木村「渋谷のお店って、神南にある、めちゃくちゃ大きなお店ですよね?なんだか、すごい勢いで駆け抜けましたね。陸上からファッションへとフィールドを変えて、住む場所も変えて、BEAMSの中でもきっと人気が高いだろう大きな店舗を勝ち取るなんて。BEAMSって誰もが知っている大きなブランドですけど、MICHELLEさんにとってはどんな会社でしたか?」MIC「とにかくレーベルがいっぱいあるんですよ。ジャパンメイドやサーフ系といったジャンルに分けたものから、T シャツ・鞄・レコードといったアイテムに分けたものまで…!」木村「たしか、本も出していましたよね?」MIC「さすが、よくご存じで!それぞれの分野に特化した専門家がたくさん在籍していたので“動物園みたいな会社”と呼ばれていました。先輩からも「ここにはいろんな人がいて、その気になったら何でもできるから、自分から発信していくことで繋がるよ」って」木村「いい会社!いい先輩!何でもできるという視点では、会社の体質自体に「七種競技」と通じるものも感じますね」MIC「確かにそうかもしれませんね。私も入社するまでは「自分は一生、洋服だ!」っていう偏った決意を持っていたんですけど、BEAMSのおかげでむしろ世界が広がったと言いますか。洋服を軸にしながら、もっとできることがあるんじゃないかって自然に考えられるようになりましたね」エピソードその1「実店舗を持たず、オンラインとポップアップで」木村「今は、ご友人と古着屋さんをされているんでしたっけ?」MIC「少し前までデザイナーの友人とふたりで「Blanche Market(ブロンシュ マーケット)」という古着屋さんをやっていました。オンラインをベースに、リアルなポップアップストアを併用して営業していたんです。実店舗は持たずに、お店やギャラリーの空きスペースを借りながら」木村「私もオンラインで本屋を始めたばかりで、ポップアップに興味があるので教えてください!!ポップアップって、どうやったらできるんですか?」MIC「初めのうちは直接売り込みに行ったりしてましたよ。青山の国連大学前で開催している「ファーマーズマーケット」に古着がばーっと並ぶタイミングがあって、開催日に行って運営の人に直談判して、その後メールで改めてお願いして…。そういうことを重ねていくうちに、TSUTAYA やPARCO、阪急などの担当の方から、「次、うちでやりませんか?」って声をかけて貰るようになった感じです」木村「すごく勉強になります!着実なステップアップが、まるで華麗な三段跳びを見てるようでした(笑)。…でも、古着ってすべて一点ものなので、同じものはふたつとないじゃないですか。セレクトもその時々で変わって、さらに場所まで変わるとなったら、「Blanche Marketなら間違いない!」と思っていただくには相当な信頼とセンスが必要なんじゃないかと。そこを勝ち取ってきたってのが改めてすごい!」MIC「お洋服も、その時の自分たちがいいなと思ったものを買い付けているので、最初から世界観を作り込むというよりは、感性の延長で楽しみながらやってきた部分が大きいんです。場所に合わせて置くものを変えて、ブランドの表情を変えながらやっていくのも楽しくて。あ、木村さん!実は私、今月から独立をして、新たにひとりでお店を構えることになったんですよ」木村「それは大きな人生の転機だ!どうりで「Blanche Market」の説明が過去形だったわけですね(笑)新しいお店については、どんなビジョンを描かれているんですか?」MIC「ブランド名は「BÉBÉ(べべ)」で、フランス語で “赤ちゃん” を意味する言葉です。心機一転始めるぞっていう思いと、誰からにも愛されるブランドでありたいっていう願いが込められています。今まででやってきた古着の販売に加えて、オリジナルの展開も増やしていけたらなと考えているところです。アーティストの人たちとコラボして、一緒にお洋服を作るのが夢だったんですよね」処方した本は…『AとZ アンリアレイジのファッション(森永邦彦)』早稲田大学出版部出版/2020年12月初版刊行木村「これからいよいよオリジナルの服も作っていくというMICHELLEさんにぜひ紹介したいのが、アンリアレイジのデザイナー・森永邦彦さんの哲学です」MIC「アンリアレイジ知っています!体つき関係なく着れる『〇(2009年)』のコレクションを通して、体型の概念を覆すみたいな挑戦をしたりだとか」木村「そうです!私にとって森永さんは、洋服を作っているようで実はもっと違うものを作っているように思えることがあるんです。一着の洋服で世界を変えるってことがもしできるとしたら、成し遂げるのは彼なんじゃないかとさえ期待しているほどに。…そしてまさにこの本は、森永さんが、服作りを通して世の中をどうみつめているか、その全てがご自身によって書き下ろされた一冊です」MIC「ブランドは知っていても、その服が出来上がるまでの背景を知る機会はなかなかなかったので、まさに今の私にとって参考書になりそうです」木村「アンリアレイジのコレクションでは、サカナクションの山口さんやRhizomatiksの真鍋さんなどと毎回新しい世界を見せてくれてますよね。映画やステージ衣装などで異ジャンルの人とのコラボも積極的だし…。それぞれが先鋭的なことをやっているのに、それを上手いバランスでひとつのステージや作品に作り上げる姿からは、これからオリジナルの展開に力を注ぐMICHELLEさんにも感じ取ってもらえる何かがあるとも思います」MIC「私、根が”体育会”ということもあって、今まで人に甘えるのが苦手だったのですが、できないことは人に頼るっていう姿勢も感じ取れるといいなと思います」木村「この本の中には、“神は細部に宿る”というアンリアレイジの思想を体現するパッチワークについて書かれた章もあるんですが、実はあのパッチワークって、たった一人の人が続けてきたことご存知でしたか?」MIC「え!あんな繊細な作業をたった一人で!?」木村「そうなんです。〈真木くん〉という森永さんの親友なんですが、もともとファッションにまったく興味がなかったそうなんです。大学を中退しても将来に何の見通しも立てていなかった彼に、試しにパッチワークをお願いしてみたところ…そこに彼の天性の才能があり、人生の仕事を見出す結果になったという。人に頼る、つまり何かを預けるっていうのは、期せずして、その人の新たな才能を開花させることにもなるんですよね」MIC「しかも結果的に、唯一無二のパートナーを森永さんは得たという…。私も「BÉBÉ」を通して、そんな仲間を増やしていきたいです!」エピソードその2「知らないことって罪だなって」MIC「古着の買い付けにヨーロッパへ行った時のことなのですが、私、見た目が高身長で派手だからか、ものすごいお金を持ってるように思われるみたいで、スリの対象になることが多かったんですよ。ポケットの中に手を入れられたり、男の人に囲まれたりしたこともあって…」木村「怖い!外国では未だに当たり前のようにそういうことがあるんですね」MIC「そういう体験をした直後に、黒人に対する暴力や差別の反対運動「Black Lives Matter」が本格化したこともあったので、最近、人種をめぐる問題が、どうも人ごととは思えなくなりました。改めて、知らないことって罪だなって思うようになったというか…。知った上での行動だったら私は何を選択してもいいと思っているんですけど、やっぱり無知と無自覚。知らない上で堂々としていたり、誰かを傷つけてしまうのって私はもうしたくないなって」木村「たしかに。お洋服はTPOで取り替えられても、皮膚って脱いだり変えたりできないですもんね。異文化の地に出ていって、自らが「他者」であることを突きつけられるその感覚、聞いていてすごくしっくりきました。実際に経験したことで、興味の矛先が社会問題だったり「私って何だろう?」みたいな方向へと向いていくのは自然なことですね」MIC「あとは「フェミニズム」についても、もっともっと知識を得たいと思っていて、最近はそういう本をよく読んでます。これまで洋服を売ってきて、さらにこれからは自分でも作るとなると、ルッキズムの問題を考えずにはいられないんですよね。背が高い、低い、太ってる、痩せてる…、あとは顔のタイプなんかでも、着れる服って制限がかかるじゃないですか。お洋服ってサイズの問題があるから、残酷な側面があるとも思っていて。似合う服、似合わない服、自分や他人がそう決めつけてるだけかもしれない“呪い”を、どうしたら解放できるのかって」処方した本は…『ファットガールをめぐる13の物語(モナ・アワド)』書肆侃侃房出版/2021年5月初版刊行木村「まずは、フェミニズム文学と体をめぐることで一冊紹介できればと思います。この本の主人公は自分の体型に悩みを抱えている女の子なんですが、着飾るものやセックスに対するコンプレックスを払拭しようとダイエットで理想の体型に近付けていくんです。理想の体型を手に入れた時に、果たして幸せを手に入れたかという物語」MIC「私、お洋服ってサイズの問題があるから、残酷な側面があるとも思っていて」木村「同感です。私も背が低いから、デザイン性の高いものを着こなせなかったりした経験があるんですけど。それに見合うように自分の体を変えたとして、果たしてそれは幸せなのか。結局自分の内面と向き合うことであるし 」MIC「自分の身体って心にも影響しますものね」木村「さっき話してくれた、「皮膚は着替えることができない」という問題であったり、実際に海外に出て自分が他者であることを突きつけられることで改めて自分とは何かみたいなことを考えるきっかけになったミシェルさんにお勧めしたい。最後にちょっとニッチな紹介をを付け加えると、この「書肆侃侃房(しょしかんかんぼう)」という出版社は、個人的に是非注目してもらいたい出版社のひとつなんです。ミシェルさんのお好きな韓国文学なんかも積極的に刊行しているほか、「刺繍」や「短歌・俳句」、「雑貨」の本なんかにも力を入れられていて。フックアップしてカルチャーを届けている出版社で私にとっては 「BEAMS 」みたいなイメージもあるんですよね」処方した本は…『天才たちの日課 女性編(メイソン・カリー)』フィルムアート社出版/2019年9月出版木村「もう一冊は、体育会系で根が真面目なMICHELLEさんの人柄を踏まえて、この本を。ここには、作家や女優、歌手、写真家、画家、衣装デザイナーなど、世界に名を馳せる143人の女性たちの、一日の活動パターンがまとめられています」MIC「天才たちの “日常” は、きっと私たちにとっての “非日常” でしょうから、すごく興味があります」木村「そう思いがちですが、実際読んでみると、彼女たちの抱える悩みや葛藤や、人生における課題って、“天才だから”と別枠にできるものなんかじゃなくて、極めて普遍的で、人間的で、根っこの部分は私たちと繋がってるんだ!と感じられるんです。才能に秀でてる一方で、家事が全然ダメだったり、ものすごーく偏屈な一面があったり…」MIC「それはなんだか頼もしいです!目次に並ぶ錚々たる名前を見てるだけでもワクワクしますね。草間彌生にココ・シャネル、え…!フリーダ・カーロの日課まで知れちゃうんですか!?」木村「知れちゃうんです(笑)。さらに一冊まるごと〈女性編〉と括っているだけあって、彼女たちが女性としての性をどう生きたかにも、多くの注意が払われています。ミシェルさんもきっと、これから先、女性として社会からいろんな課題を突きつけられると思うんです。結婚や出産、家庭と仕事の両立について悩んだとき、百科事典的に気になる人へアクセスしてもらいたいですね」MIC「百科事典的に!今までになかった本の楽しみ方です。「この人もこんな風に頑張ってきたんだから」って慰められたり、元気をもらえたりできそうですね」対談を終えて。対談後、『ファットガールをめぐる13の物語』を購入してくれたMICHELLEさん。「木村さんにじっくりと話を聞いてもらった時間はとても贅沢なひと時でした。選んでもらった本は今後の仕事に活かしていきたいです!」と話してくれました。時折、見せる “いたずら” っぽい表情が可愛いMICHELLEさんのInstagramはこちらから。新ブランド「BÉBÉ」の動向にも要注目です!Instagram(2228michel)撮影協力:〈二子玉川 蔦屋家電〉
2021年10月13日日暮れの時間が早くなり、いよいよ本格的な秋。食欲の秋、読書の秋、スポーツの秋。皆様はどんな秋の過ごし方がお好きですか?なかなか外出できない今年の秋は、読書と食欲にスポットを当てて、のんびりゆったり深めのコーヒーを淹れて巷でブームのふわふわ系のショコラのお菓子と一緒に過ごす贅沢タイムはいかがでしょうか。そこで今回は、簡単に作れてコーヒーに合う、秋の夜長を満喫できる「フワフワショコラ菓子」レシピをご紹介したいと思います。●溶けるチョコレートの魅惑の香り「フワフワチョコ」ふわふわなマシュマロをチョコに乗せた魅惑のスイーツは、コーヒーと長編小説と相性抜群!口の中でチョコとマシュマロをコロコロ溶かしながらゆっくり頂いてみてくださいね。読書とコーヒーとスイーツの至福の時間を過ごすことが出来ますよ。●電子レンジで手軽にできる「チョコプリン」電子レンジで簡単に作れちゃうチョコレート仕立てのプリンは、フワトロの優しくてコーヒーにもぴったりのスイーツです。●熱々でふわふわ!「スフレ・オ・ショコラ」ふわふわを頂くために出来立てをフーフー言いながら頂きたいスフレオショコラ。読書スイッチを入れる前にパクッと頂いちゃいましょう!日頃の疲れをトロトロ解きほぐしてくれる優しい甘さのとろける美味しさです。●甘い恋愛小説のお供に「ムース・オ・ショコラ」材料少しでチョコレートが濃厚で贅沢なムースが完成します。小さめのカップに淹れたエスプレッソにも合いますよ。ムースオショコラと濃いコーヒーには、甘めな恋愛小説がぴったりかも。●大人のビターな「チョコケーキ」オレンジピール入りのちょっぴり大人なチョコケーキは深煎りコーヒーにぴったりあいます。このチョコケーキは焼き時間で食感が変わるんですよ。固め、柔らかめ等々お好みの食感を探してみてくださいね。10月1日はコーヒーの日。美味しく淹れたコーヒーと、ショコラのスイーツ、そこにはどんな小説を合わせますか?読書をゆっくりできる時間は何とも言えない贅沢気分になりますよね。ワクワクドキドキの秋の読書タイム今回ご紹介したショコラスイーツと共に是非満喫してみてくださいね。
2021年10月01日おうち時間が長い今だからこそ“読書”をしませんか。今回はSDGsをわかりやすく学べる入門書的な本をピックアップ。本の中には今すぐ実践できるSDGs生活のヒントが満載です。1.【エシカル】(NHK出版/2,000円)(山川出版社/1,400円)『プラスチック・フリー生活 今すぐできる小さな革命』/シャンタル・プラモンドン、ジェイ・シンハ 訳:服部雄一郎暮らしを見つめ直すと、私たち人間がいかに便利なプラスチックに頼ってきたかがわかります。そのプラスチックが自然環境や生き物にとって脅威であることは、最近ニュースでもよく目にするように。では、生活からプラスチックをなくすことは可能なのか?そもそもなぜ、プラスチックはよくないのか?プラスチックに代わるものはあるのか?色々な悩みを解決してくれる一冊。『はじめてのエシカル』/末吉里花2016年に出版した拙著です。エシカルについて学ぶための初心者向け入門書として書きました。私自身がどう関心を持ち、変わっていったのかというパーソナルストーリーとともに、なぜエシカルな考えが大切なのか、暮らしに取り入れる実践方法なども。巻末にはエシカル・ショッピングガイドも掲載。一歩踏み出せなかった方たちから「実践する勇気をもらった」とうれしい感想をいただいています。(Hanako1185号掲載/photo:Natsumi Kakuto styling:YuiOtani illustration:SANDER STUDIO text:Tomoko Yanagisawa edit:NaoYoshida)2.【食】『あるものでまかなう生活』/井出留美私たちのまわりはまだ食べられるもの、もっと使えるものであふれている。再利用したり、リメイクしたり、長持ちするように工夫することでそこに新たな命が宿る。捨てない幸せ、使い切る満足を知ることで、食も暮らしも新しいスタンダードにすっきりとシフトしてみたらいかがだろう。(日本経済新聞出版/1,540円)『コーヒーで読み解くSDGs』/Jose、川島良彰、池本幸生、山下加夏SDGsは17の目標を掲げているが、それらの目標は、コーヒー業界が以前から取り組んできた課題の縮図でもあった。三人の著者がコーヒーを通してSDGsを紐解き、解説していくことで、誰もがコーヒーを通じてSDGsに貢献できることに気づく。コーヒーの価値観を変え、SDGsを理解できる一冊。(ポプラ社/1,870円)3.【ジェンダー】『男らしさの終焉』 /グレイソン・ペリー 、訳:小磯 洋光ターナー賞アーティストであり異性装者として知られる著者が、新時代のジェンダーと男性のあり方を模索する一冊。権力、暴力、パフォーマンス、感情の4つのエリアに分けて、男性性の支配について言及。さまざまな分野を横断して男性について分析し、男性のための未来のマニフェストを提示する。(フィルムアート社/2,000円)『LGBTを読みとく-クィア・スタディーズ入門』/森山至貴最近よく見かける「LGBT」という言葉にはレズビアンやゲイの頭文字が含まれているが、実はそれはセクシュアルマイノリティのほんの一部に過ぎない。「LGBT」を手がかりに、バイセクシュアルやトランスジェンダー、言葉で括ることができない多様な性のあり方について正しく学ぶための教科書。(筑摩書房/800円)(Hanako1190号掲載/photo:Natsumi Kakuto text:Momoka Oba)
2021年09月26日さまざまな業界で活躍する「働く女性」に、今のその人に寄り添う一冊を処方していくこちらの連載。今回のゲストは、モデルの柴田紗希さん。ハッピーオーラ満載!まるで、ひまわりのような彼女に、発信することへの思いや、最近ハマってるという「畑」の魅力を語ってもらいました。途中、自作の歌を披露してくれるユニークな一幕も…!?今回のゲストは、モデルの柴田紗希さん。個性的なファッションやライフスタイルの発信を通じて、同性からの人気を集めるハッピーガール。古着やジュエリー、コスメと同じくらいに「自然」が好きで、最近はもっぱら「畑」に夢中。本はあまり読まないようで、原田マハさんのことを、“原田ハマ”さんと間違えていたのが可愛かった(晒しちゃう!)。根本にあるのは「人を助けたい」という思い。木村綾子(以下、木村)「はじめまして。今日は柴田さんの人となりや、過去のどんな経験が今の柴田さんに繋がっているのかをご本人の口からお聞きしたくて。あえて経歴やバックグラウンドについては、ほとんど調べずに来ちゃいました。検索したら出てきそうなことも含めて、いっぱい聞かせてください」柴田紗希(以下、柴田)「うふふ。何でも聞いてください」木村「今でこそ、たくさんファンに愛されている柴田さんですが、モデル業を始められる以前は何をされていたんですか?」柴田「もともとは名古屋の古着屋さんで働いていました。当時は、今の事務所の先輩でもある武智志穂(たけち・しほ)さんに憧れていたんです」木村「武智志穂さん憧れ世代なんですね!私も同じ系統の雑誌出身なので、誰に憧れていたかを聞けば世代がなんとなくわかります(笑)」柴田「私もその感覚、分かります!(笑)彼女のきらきら発信する姿を見て、ああ、私もこんな風になりたいなってオシャレを磨いていました。そしたらある日、雑誌の『mer(メル)』のスナップ撮影に声をかけていただいて…。翌月には8ページの特集を組むので出てくれませんかって、連絡をいただいたんです」木村「すごい!スナップからいきなり特集ページだなんて、スター街道ですね。滅多にあることじゃないです!」柴田「当時の『mer』には、それこそ志穂さんとかがいて、私は高校生の頃から「いつか必ずこの雑誌のモデルになるんだ!」って思いを抱いていたので、実際夢が叶ったときは嬉しい反面、正直不安もあったんです。「私、本当に務まるのかな…」って」木村「古着屋さんで働かれていた当時は、学校にも通われていたんですよね?」柴田「はい。大学では福祉の勉強をしていました。なんとなくですが、人を助けたいなっていう思いがありまして」木村「“人助け”という壮大なテーマが出てきましたね!でも、柴田さんの根っこにある部分がこの言葉に隠れている気がします。もう少し深掘りさせてください!」柴田「昔から、将来の夢を聞かれてもなかなかうまく答えられなかったんですが、「人を助ける仕事がしたい」ってイメージはあって。ただ、それも漠然としたものだったので、進路指導のときには先生から「どういう方法で!?」なんて問い詰められたりもしてたんです(笑)結局、“助ける=福祉”というストレートな道に一度は進んでみたんですが、モデルになって、「これだ!!」って」木村「なるほど。たしかに、誰かの憧れになるようなモデル業や、自分の好きを発信する行為も、見方を変えると人を勇気づけることへと繋がりますもんね。人を助けたいという根本の部分が、大学で学ばれていたことと今のお仕事とでリンクしている部分があるように私には思えました」柴田「そんな風に言っていただけると、あの時間も私の一部になっているんだって自信がわきます。モデルやプロデュース業など、何をしてても「女の子の心の支えになるぞ」っていうのを心がけるようにはしてるんです」エピソードその1「読める本に出会いたい」柴田「木村さん、この連載に招いてもらっていながらこんなことを言うのもあれなんですけど、実は私、あまり読書が得意ではなくて…」木村「そうなんですね。でも大丈夫ですよ!本との出会いも人との出会いと同じで、巡りあわせですから。いまの柴田さんが出会うにふさわしい本を選んで見せましょう!(笑)」柴田「よかった、そう言っていただけてホッとしました。私、昔は本当に本が読めなかったんですけど、最近になって、これだったら読める!っていうのに何冊か出会ったんです。だから今日は、木村さんに、そういう本を見つけていただきたいな~って(笑)」木村「任せてください!ちなみに、それはなんて本だったんですか?」柴田「今村夏子さんの『アヒル』っていう本です。ご存じですか?」木村「わー!大好きな作家、大好きな作品です!!あの物語は、当たり前のように受け入れてた景色が一気に歪む瞬間が訪れるので、なんというか読む前の価値観には戻れなくなってしまう感じがあって、ゾワっとしますよね」柴田「そうなんです。「意味分かんない!」ってなりながらも、それがなんだか心地よくて。不思議とぶわーっと読むことができました」処方した本は…『ドレス(藤野可織)』河出書房新社出版/2020年5月初版刊行表題作の『ドレス』と『マイ・ハート・イズ・ユアーズ』がおすすめ。木村「これは、可愛らしさとグロテスクさの両方を持ち合わせた奇想の詰まった短編集です。表題作の『ドレス』は、アクセサリーが重要なモチーフにもなっているので柴田さんには特におススメ。アクセサリーを通して、いわゆる男女の分かり合えなさを描いていて、一辺倒にはいかない恋愛小説とも読めます」柴田「男女の分かり合えなさ!最近深掘りしたい分野でもありました(笑)」木村「自分のランクに釣り合う女性を選んで付き合うような男性の前で、恋人の女性は、ある日出会ったアクセサリーによってみるみる変化していくんです。他人からの評価も格段上がっていくのに、張本人の彼氏にはその魅力がちっとも理解できなくて…。それでも「わからない」ことがバレて自分の評価が下がることを恐れるあまり、恋人に調子を合わせてしまうんです。でも結果的にそのことによって、さらに恐ろしい展開が・・・」柴田「わぁあ!聞いてるだけでホラーだ!」木村「柴田さんにとってお洋服やアクセサリーってきっと人一倍思い入れのある存在だと思うので、この小説をどう読んだか、ぜひ聞きたいですね。あとは、オスがメスの体に一体化することで子どもを宿す“チョウチンアンコウ”の生態を、人間の生殖に置き換えた『マイ・ハート・イズ・ユアーズ』とかも、柴田さんがどう感じるか興味があります!」柴田「な、なんですかその設定!でも私、年齢的にちょうど自分の女性性を見つめる時期でもあるので、話を聞いていて、「今の私が出会うべき本かもしれない!」って素直に思いました」エピソードその2「畑の魅力に気づいてしまった」木村「そういえば最近、畑仕事にハマっているというのをお聞きしまして。お野菜つくられているんですか?」柴田「そうなんですよ。畑の魅力に気づいてしまって…!友達と一緒に横浜の方で土地を借りて、毎週末、耕しに通っています。木村さんも自然とかお好きですか?」木村「私、実家が静岡の田舎で、田んぼに囲まれてるどころか家の裏には山があるようなところで育ったんです。子どもの頃の遊びといえば、秘密基地ごっことか、木にロープを吊るした“ターザンごっこ”とかでしたね…野生児です(笑)」柴田「わ、めっちゃいいですね!畑とかもありましたか?」木村「はい。近所の農家さんと物々交換をしたり、それこそ食卓に並べるくらいは自分の畑で作ったり。今でも時々、季節の野菜が届いたりもするんです。畑にハマるきっかけは何だったんですか?」柴田「私も名古屋の田舎から出てきたので、上京してしばらくは、心のバランスをうまくとれずにモヤモヤしてしまう時期もあったんです。「東京は自然が少なすぎて、もう…!」って。そんな頃、ファッション関係の友人が「いいとこ連れてってあげるよ!」って誘ってくれたのが、今育ててる畑だったんです。電車に乗ってる時間とか、土をいじってる時間とかが、私を開放してくれてることに気づいて…。今では週に一回、畑で汗を流すのがストレス発散でもあり、自分を保つ秘訣にもなっています」木村「そういう風に自分のバランスを見つけていくのは大事なことですね。ちなみに畑仕事は、どんな格好でされているんですか?」柴田「可愛いお洋服があるんですよ!同じシェア畑に通う男性モデルさんが、農業服のブランドを始めたんです。例えば、真っ白のツナギとかがあって、「どうしてそんな汚れやすい色を?」って思うじゃないですか。そこには、真っ白のお洋服がキャンパスに見立てられていて、「土で汚してアートに」っていう思いが込められているんです…!」木村「畑仕事も楽しくオシャレに快適に、そして自由なアートに。だなんて、素敵なコンセプトですね!あとでなんてブランドか教えてください!(笑)」処方した本は…『発酵文化人類学(小倉ヒラク)』木楽舎出版/2017年4月初版刊行持ち歌を披露してくれた柴田さん。他にも何曲かあるらしい。木村「小倉ヒラクさんは、“発酵デザイナー”という恐らく世界で一人だけの肩書きを名乗って活動されている方です。「見えない菌のはたらきを、デザインをとおして見えるようにする」をコンセプトに、日本の伝統文化でもある“発酵食品”に光をあて、新商品の開発やイベントごとなどで新しく面白く広げていかれていて…」柴田「面白そうな方ですね!」木村「伝える切り口が本当に面白いんですよ!微生物と発酵食の関わりを、恋愛やアートに例えたり…」柴田「えー!それ聞いてみたいです!…小倉さんご本人とはお会いしたことはありますか?」木村「はい。初めてお会いしたのは、下北沢の〈本屋B&B〉で働いていた頃でした。持ち込み企画で、「誰にでもできる味噌づくりを歌と踊りにしたので、披露させてください!」とイベントを持ち込まれて…。その名も「てまえみそのうた」(笑)」柴田「てまえみそのうた!ネーミングセンスもチャーミングですね!」木村「蓋を開けたら満員御礼!遠方から参加される方も多くて、子どもから大人までみんなで踊りながら「手前みその歌」を大合唱!!その姿が本当に生き生きとしていたんですよね。発酵文化って、こんな伝え方もできるんだなーって」柴田「伝え方の新しい道ですね。木村さん、実は私もね、畑の歌をつくったんですよ」木村「え!!」柴田「『まいふぁーむ』っていう歌なんですけど、ちょっとだけいいですか」「心を耕すMy Farm~明日を照らすMy Farm~おいしく体にいただきますまいふぁぁむの、野菜っ!」木村「(拍手)フルコーラス歌い切りましたね!しかも踊りまである!(笑)最高です。最後の「野菜っ!」のところが、特に良かった…!」柴田「そうなんです。「野菜っ!」のところは、こう、語尾をちょっとだけ引っ掛けるように…」木村「柴田さんも、畑にちなんだ唯一無二の肩書き名乗っちゃえばいいのに・・・!小倉さんにも一度会ってみてほしいなぁ。下北沢で〈発酵DEPARTMENT〉というお店もされているので、今度一緒に行きましょう」エピソードその3「やっぱり、海外に行きたい!」木村「さっき、畑のお話をお伺いしているときに、東京と自分との距離感みたいなことも話してくださいましたが、生活はどうですか?」柴田「上京してから今年で6年目になるんですが、最初のうちは正直苦手だったんですよ。やっぱり自然が好きっていう思いが強かったので、どうも街全体が味気ないなって思っていた時期はありました。でも最近は、自分自身がこの街のおかげでポジティブになっている気がするんです。決してネガティブだったわけではないんですけど、なんだかどんどんハッピーへと変わっていっている感じ」木村「街によって自分が変わっていくという感覚は私もすごくよくわかります」柴田「そうなんです。東京ってなんだか異国な感じがあるじゃないですか。会う人会う人が、みんな面白かったり」木村「「優しい」とはちょっと違うんだけど、なんていうか、「許容してくれる」感じはありますね。柴田さんは今後、この街でやっていきたいこととかはありますか?」柴田「う~ん、東京の魅力を語っておいてあれなんですけど、実は海外に行きたいって気持ちがあるんですよね。数年前に青年海外協力隊としてラオスに行ったんですが、今でもその時のことが忘れられなくて。「恵まれない子どもたち」って言い方よく聞くじゃないですか。けど、実際に足を運んでみると、みんな幸せそうな顔をしていたんですよ。自分にできることが何なのかはまだよく分かっていないですけど、ラオスの子供たちにもう一度会いに行かなきゃ!っていう使命感みたいなものは今でもずっと胸に秘めているんです」『東京 ぼくの生まれた街(石川直樹)』エランド・プレス出版/2020年12月初版刊行表紙カバーの仕掛けに喜ぶ私たち。木村「最後に紹介するのは、石川直樹さんの写真家です」柴田「え、ちょっと待ってください!私、半年くらい前にその方の写真集買ったばかりです!」木村「わぁ、すごいシンクロですね!」柴田「古本屋さんでたまたま、名前も見ずに手に取った2冊が両方とも石川さんのものだったんです。風景や子供たちの笑顔に吸い寄せられるように買い求めてしまって…!」木村「石川さんは登山家でもあるので、世界の自然やそこに生きる人々を写した写真集を多く出されています。ただ今回、柴田さんに紹介したいのは、石川さんがまなざす「東京」の街並みです」柴田「“ぼくの生まれた街”ってことは、石川さんは東京出身なんですね。…そっか。東京から、世界のあらゆる土地へ出かけては、またここに帰ってきてるんですね」木村「そうなんです。広い世界を知っている人が、東京をどう捉えているか。それを写真で感じたあと、ぜひ巻末の文章を読んでいただきたいんです。見開きのエッセイなんですが、石川さんは文章もとても魅力的なんですよ」柴田「石川さんの文章には触れたことがなかったです。私、本当に作家さんの名前とかほとんど知らないのに、これは本当にすごいめぐり合わせ…!このカバーもなんだか可愛いですね」木村「広げると東京の地図になっていて、石川さんが写した景色にピンがついてます。柴田さんが過ごしてきた東京と照らし合わせながら見ると、自分にとってのこの街がどういう存在だったのかに気づけるかもしれません」柴田「いつか私が本当に「海外で勝負するぞ!と決めた時には、この写真集を連れていきたいなとも思いました。自己紹介がわりにもなるし、自分の帰る場所の確認にもなるし。頼もしい相棒になってくれそうです」対談を終えて。対談後、『東京 ぼくの生まれた街』を購入してくれた柴田さん。撮影日の夜には、石川さんご出演のドキュメンタリーもテレビで放送されていたようで、「またもや、引き寄せました~!」と連絡をくれたのが嬉しかったな。髪型やお洋服が見るたびに変わる柴田さんのInstagramはこちらから。すくすくと育つ夏野菜にも注目です!Instagram(shibasaaki)撮影協力:〈二子玉川 蔦屋家電〉
2021年09月15日夏休みの宿題。これに頭を悩ませているご家庭は多いのではないでしょうか。計算ドリルと漢字ドリル、それに自由研究。さらに読書もあります。自由研究に関しては、我が家は親の手が必要。毎年、コピーを取ったり、ファイルを用意したり、実験のお手伝いをしたりと、サポート役としてパパか私が出動します。本当は一人で一から十までやらせるべきかと迷います。でも、一方で作業することの楽しさや喜びを一緒に経験するのも貴重だと、前向きに捉えている部分もあり、結局手を貸してしまっているんです。そのうち子どもは親の手を煩わしく思って自然に離れて行くでしょう。今のうちですもの、と。今年はまだ取り組み始めてもいませんが、どの程度関われるのでしょう……。実際、毎年夏休み明けの各学年の作品を見比べてみると、1年生と6年生ではずいぶん差がありました。高学年になるにつれて、綺麗にレイアウトされた親との共同制作ではなく、子どもらしい粗が残っていて自力で仕上げたのが見て取れます。それに段々と、お稽古事、スポーツの合宿や遠征、塾の勉強などそれぞれに忙しくなり、自由研究の力の入れようにも差が出てくるようにも感じました。それも微笑ましい。特に印象的だったのは、とあるスポーツに本格的に専念しているお子さんの作品です。その力の抜きように、どんなに合宿で忙しかったのか、どれほど気合を入れていたのかが伝わり、胸が熱くなったこともあります。力の入れようはそれぞれで全く構わない。完璧でなくて勿論いいですし、仕上がってなくたっていい、とも私は思うのです。大切なのは、こうした機会を与えられて、自分の「好き」を立ち止まって考えたり、それを親が知って、我が子への理解を深めたりすることではないでしょうか。今年はどんな作品が並ぶのでしょう。今から9月が楽しみです。我が家の場合、親の出番が少なくなったと感じるのは、特に「夏休みの読書」です。低学年の頃は、私の最大の趣味である「選書」を存分に堪能させてもらいました。7月早々に図書館や本屋を駆け巡り、ひとまずガッツリ10冊揃えて持ち帰ります。そして、本棚の一番目立つところへ、ボン!絵本やページ数の少ないものが多いこともあり、読書習慣がついてきた息子は、あっという間に10冊読んでしまっていました。そこでまた、8月初旬に10冊選書してきて、ボン! それも読み終えたお盆の頃に、はたまた10冊、ボン!夏休みに計30冊ほど、私が選んだ本を読んでくれていたのです。でも、もうこの頃は、私がいくら「この本面白そう」と手渡しても、「そのうちね」で、そっけない。大概、本棚で眠ったままになっています。読みたい本は、図書室や本屋で自分で決めます。私が差し出さなくても、家にある本の中から、そそられるものを勝手に引っ張り出していることもあれば、すでに読んだものを繰り返し開いたりしていることもあります。もう「選書人」という私の立場は消えつつあるのです。毎度のことながら、こうした成長は嬉しいけれど、ちょっと寂しくもなります。この夏の読書に関しては、もう全く関与していません。と、言い切ろうと思っていたら……。夏休みも終盤になった今、私の出番がまた来たのです。慌ただしさのあまり、好きな歴史ものや推理もの、図鑑や『ざんねんな~』シリーズ(高橋書店)のようなものではなく、宿題のための読書、つまり感想文用のものを、後回しにしていた息子が慌てふためきました。その様子を見兼ねて、選んできてしまいましたよ。「青少年読書感想文全国コンクール」のシールが貼ってある課題図書です。これはもう、こんな風に困った時の駆け込み寺、ならぬ駆け込み本です。どれも年齢に相応しい読みやすくて心に響き、時代に見合ったテーマのものばかりで、感想文の書きやすさは補償付き。その中から一冊、息子に手渡しました。息子が、素直に開き、すぐ夢中になり、あっという間に読み終えたのも、私が、作品を喜んでもらえたことに幸せを感じたのも、久しぶりでした。というわけで、今回は、「青少年読書感想文全国コンクール」の課題図書の中から、始業式も間近で今ちょうど焦っている高学年以上のお子さん向けに、3冊。共通しているのは、構成はどれも、一人の視点から描かれていない点です。ある環境、ある出来事、ある人物をさまざまな方向から見てみると、こんなにも違う。自分とは違う他者の気持ちを理解するのは、多様な世界へと心を開いていくのに必要不可欠です。ぜひ手にとって欲しい。『おいで、アラスカ!』(アンナ・ウォルツ:作/フレーベル館)息子に手渡したのはこれです。中学一年生になったばかりのふたりが交差する物語。一人は家庭に複雑な事情を抱える女の子パーケル。もう一人は一つ年上の、ちょっと偏屈なスフェン。「てんかん」の発症で一年遅れての入学に、彼もまた一言では言い表せない思いを抱えている。何よりも、発作がいつ起こるかわからないという不安。そんなふたりを繋いだのが、介助犬となったゴールデンレトリバーのアラスカです。短くてやさしい文体とさほど長くないページ数で、とても読みやすい。一方で、思いがけない展開が次々と起こり、犯罪心理やSNSなどの問題にも触れていて、読み応えのある作品です。『Wonderワンダー』(R・J・パラシオ:作/ほるぷ出版)2016年の課題図書に選ばれ、映画化もされた作品。主人公のオーガストは、どこにでもいるような普通の男の子。顔以外は。という、インパクトのある出だしから、グイッと引き込まれます。度重なる顔の手術を乗り切り、9歳になって初めて学校に通い出しますが、「見た目」が与える問題が次々と彼を襲います。そんなことをものともしないオーガストのユーモア、周囲の愛情、心に深く刻まれる先生の言葉に心震えないではいられません。さまざまな人の気持ちを疑似体験できる意味でもおすすめです。高校生以上には『水を縫う』(寺地はるな:著/集英社)手芸好きの高校生男子、清澄と、その家族の物語。可愛いものが苦手な姉の水青。「良い母」になれないさつ子。「女なのに」自由に生きたいと思っていた祖母の文枝。よそで暮らす父の全は、「父親らしさ」も「男らしさ」もない。それぞれの思いは、それぞれの視点からつぶやきのように語られています。彼らの、思いやりはあるのに、通じ合えないもどかしさや苛立ちに共感すると同時に、こうあるべきという家族や性別の固定観念から解き放たれ、優しさに包まれる作品です。名言のように響く言葉も多く、とりわけ何度も繰り返される「失敗する権利」は、子育て中の私たち親の心を揺さぶるに違いありません。それでは、読書と共に素敵な晩夏を!(Anne)
2021年08月25日意味が「わずか」というヒントがあっても、なかなか読むのに苦戦するこちらの漢字。「聊か」という難読漢字が読めたあなたは、もしかして読書が日課なのではありませんか?この難読漢字を一発で読めた方は、かなりスゴイです!(1)読み方は「いささか」「聊」という漢字自体、なかなか見ることがないですよね。音読みも訓読みも想像できないのに、「聊か」なんて頭の中ハテナだらけのはず。実は「聊か」は「いささか」と読むのです。この機会にしっかりインプットしておきましょう!(『広辞苑』より)(2)意味は「わずか・少し」ヒントにもあるように、「聊か」には「わずか・少し」という意味があります。「聊かの自信があるんだ!」「聊か言いすぎてしまったよ」という使い方をするのです。日常でアウトプットして使うようにすると、より記憶に定着しやすくなりますよ。(『広辞苑』より)(3)「聊」を使った熟語見慣れない「聊」という漢字……熟語として使われることはあるのでしょうか。「聊業」や「聊事」といった熟語があるのですが、読み方や意味が分かりますか?「聊業」の読み方は「いささけわざ」で、「いささかなわざ・ちょっとしたこと」という意味に。「聊事」は「いささかごと」と読み、「小事・些細な事柄」という意味になります。(『広辞苑』より)(4)「聊か」の対義語「聊か」は「わずか・少し」といった意味になりますから、対義語は明確です。「大層・大変・非常に」といった語句が対義語になります。「甚だ」も「大いに」や「過度に」といった意味がありますので対義語ですね。意味についてお伝えした内容にある例文に当てはめると分かりやすくなります。(『広辞苑』より)謙遜するときにも「聊か」という言葉は使われますよね。お伝えした「聊かの自信があるんだ!」という言葉も、本当はかなり自信があるのです。しかし、謙遜して「少しばかり自信があるんだ!」と伝えているわけですね。(恋愛jp編集部)
2021年08月18日「ツタヤ ブックストア(TSUTAYA BOOKSTORE)藤の木店」が富山県富山市に誕生。コーヒー片手に読書できる「ツタヤ ブックストア」「ツタヤ ブックストア」は"パーク×マルシェ 人が集まり賑わいを生み出す空間"をコンセプトに掲げた、ブック&カフェスタイルの書店。この度、富山県初となる藤の木店をオープンする。書店内にはドトールコーヒーが併設されており、コーヒーを片手に読書を楽しむことが可能。購入前の書籍も読むことができるため、内容をじっくりと吟味することができる。"日々の暮らしが豊かになる"ような視点から選書した書店独自のラインナップから、お気に入りの一冊を見つけてみて。ライフスタイル雑貨、キッズスペースもまた書籍だけでなく、新たに雑貨も展開。例えば食にまつわる本と関連した食雑貨、子供向け絵本と知育玩具など、書籍から広がる豊かなライフスタイルを提案してくれる。なお、店内にはキッズスぺースが設けられており、買い物中も子供が遊んだり休憩することが可能。家族みんなが安心して楽しい時間を一緒に過ごせる空間となっている。【詳細】ツタヤ ブックストア 藤の木店オープン日:2021年8月12日(金)住所:富山県富山市開1325営業時間:9:00~23:00取扱商品:書籍・雑誌、雑貨・文具、CD・DVD・コミック(レンタル、販売)TEL:076-422-0155
2021年08月15日さまざまな業界で活躍する「働く女性」に、今のその人に寄り添う一冊を処方していくこちらの連載。今回のゲストは、ミュージシャンの塩塚モエカさん。可愛いルックスとは裏腹に、どことなく “闇” なオーラを身に纏う彼女に、「羊」のことや「文学」のこと、創作活動に関するあれこれを伺いました。今回のゲストは、ミュージシャンの塩塚モエカさん。ロックバンド「羊文学(ひつじぶんがく)」の ギターヴォーカル。孤独や寂しさ、自分の無力さを噛み締めながら、すべての感情に対して“あってもいい”と肯定するような歌詩が素敵!GINZAやBRUTUSなど、マガハの雑誌での登場率が高く、学生時代にはおもしろいアルバイトの経験も…はじめましての私たち。塩塚さんの意外な経歴が発覚!木村綾子(以下、木村)「はじめまして。塩塚さんのことはこの連載の編集さんとも、いつかお呼びしたいね!という話を時折していたんです。お越しいただきありがとうございます」塩塚モエカさん(以下、塩塚)「こちらこそ、お声がけいただいて嬉しかったです。私のことは何をきっかけに知ってくださっていたんですか?」木村「「羊文学」という存在を知ったのは5年くらい前で、私が雑誌のGINZAでカルチャーページの連載をやっていた頃です。私は本を担当していたのですが、月に一度、映画や音楽、アートの担当者と顔を合わせて、次はこういうものをピックアップしたい!みたいに話し合う時間があったんですよ。そこで、音楽担当の子が「羊文学って知ってる?」って」塩塚「嬉しい、そんなやり取りがGINZAで!ちなみにそれ、5年前っておっしゃいましたよね?実は私、その頃GINZAでバイトをしていました!」木村&スタッフ「えええ!」塩塚「編集部のアシスタントとして、週に何度か受付に座っていたんですよ。中島敏子さんが編集長だった頃です。お客さんにお茶を淹れたり、雑誌の発売に合わせて送本の手配をしたり、粛々と働いてました」木村「そうだったんですね!いや、びっくりです。もしかしたら、私も「プリントアウトお願いします!」なんて、お仕事をお願いしていたかもしれないです(笑)」塩塚「「プリントアウト」でひとつ思い出したことがあるんですけど。私、いつまで経ってもあのコピー機の使い方が分からなくて。全部カラーで出力して怒られちゃったことがありました(笑)」木村「可愛い失敗…!ここ数年、GINZAやBRUTUSなどの誌面でも拝見していましたが、出る前は、中の人だったとは」エピソードその1「自分の生活とクロスした時に、曲になるのかなって」木村「バンド名に「文学」が入っていることも、気になるポイントでした。本はお好きなんですか?」塩塚「好きですね。いっぱい読むってわけではないですけど、父が昔から本だけはたくさん与えてくれていたので、身近な存在ではありました。実家には大きな本棚があって、昔はよく、その前であぐらをかいて詞を書いたりしていたんです。背表紙の言葉をぼーっと眺めながら、目に止まったを本をぱらぱらと捲ったりして」木村「そうだったんですね。楽曲作りのインスピレーションは、本以外だとどんなものから?」塩塚「以前住んでいた家は、前に学校があって、窓を開けるといろんな音が聞こえてきたんですよ。空や木も見えたりしたので、そういった景色を感じながら書くことが多かったです。今は、昔見た映画のワンシーンとか、昔聴いた音楽のフレーズなんかを思い出しながら作ることが多いですね」木村「景色や物語のシーンを創造のスイッチにして、日常や経験と折り重ねて、言葉を立ち上げていくんですね」塩塚「はい。私の場合は、昨日見たものとかは、すぐに曲にはできなくて。1年くらい前のことを思い出しながらやると、うまくいく感じがあるんです。自分の生活とクロスした時に、初めて曲になるのかなって」木村「言葉に体重が乗るまでは、安易に表現に落とし込まない。誠実な姿勢だと思います」処方した本は…『なかなか暮れない夏の夕暮れ(江國香織)』角川春樹事務所出版/2017年2月初版刊行木村「突然ですが、本を読んでいる最中に、こうやって指をページに挟みながら寝ちゃってた!みたいな経験ありませんか?」塩塚「あります、あります!」木村「ああいう時に見る夢ってすごく不思議で甘美なんですよね。物語の続きが夢のなかで進行しているような、自分自身が物語のなかに入ってしまったような、不思議な気持ちになりますよね」塩塚「はっと目覚めて改めて読んでいたところに戻ると、この物語の先を私は既に知っているかのような錯覚に陥ったり…!」木村「そうそう。この作品は、そんなふうに本を読む幸福を描いている一冊なんです。ストーリーは、主人公を取り巻く人物の現実世界と、彼が読んでいる海外ミステリーが切り替わりながら同時進行で進んでいく。いわゆる「小説内小説」が挟み込まれているんですが・・・」塩塚「本を読みながら、本を読んでる人の物語を読めるってことですね。面白い仕掛けですね!」木村「そうなんです。本を読む主人公。主人公が読む本の中の登場人物。それを読む私たち読者。境目がどんどんあいまいになっていって、脳が揺さぶられるような感覚が、なぜだか無性に心地いいんですよ」塩塚「江國さんの描く世界観って本当に美しいですよね。実は私、学生の時に朝の電車で『つめたいよるに』を読んでいて、物語に入り込んでしまった経験があるんですよ。はっと我に返るまで気分はすっかり「夕方」になっていて。だからこのタイトルを見たときはビビっときました」木村「作中には、〈左手の人さし指だけが、まだあの場所にいる〉ってセリフがあります。まさにですね!本や映画、音楽、街の空気から創作のインスピレーションを得ている塩塚さんにとって、現実と小説のあいだを指一本で行き来するような感覚ってすごく大切なんじゃないかなと思って。この小説をおすすめしたくなりました」エピソードその2「どうして辛いことを口に出したらいけないんだろう?」木村「『羊文学』の音楽には、寂しさや不安、別れなどをテーマにしながらも、その状態を歌うのみにとどめていて、安易な救いや癒しを聞き手に抱かせない部分がいいなって思いました。そういう曲を作る塩塚さんの根っこの部分には、どういった人生観があるのかを伺いたいです 」塩塚「う〜ん、昔から、気にしやすい性格ではありました。ちょっとのことで、すぐ「えぇ〜」とか言って、グジグジしていましたし。私、中学・高校と女子校だったんですよ。きっと、そこで根が暗くなっちゃった(笑)」木村「思春期の6年間を女子校で。そこに原点がありそうです。・・・バンドの結成は中学の頃だと伺いましたが、当時から歌詞は自分で書いていたんですか?」塩塚「はい。最初は自分の愚痴をこぼすみたいな感じで、学校に行きたくない気持ちや、女同士の友情のままならなさなんかを歌にしていました。ちょうどその頃に twitter やブログなどのSNSが流行って、ネガティブな発信を良しとしない風潮が生まれ始めたんですよね。日常をポジティブに発信するのが人に歓迎される的な。・・・でも私は、どうして辛いことを口に出したらいけないんだろう?無理して前向きにならなきゃいけない理由って何なんだ?っていうのをずっと考えていたんです」木村「世間が良しとするものへの違和感や反発、自分の中で消化しきれない思いみたいなものが、羊文学の曲づくりの原点になっているんですね」塩塚「そうですね。当時は誰かのためというより、自分のために書いている曲も多かったんです。嫌な感情が湧いてきたりする時って、「本当はそんな感情やって来てほしくないな」っていう、もう一人の自分もいて、そういう状態が苦しくて。「救いたい、でも救えない」「許したい、でも許せない」みたいな・・・。自分を手なづけられるようになりたいと思ったのも曲作りのきっかけでしたね」処方した本は…『ナイルパーチの女子会(柚木麻子)』文藝春秋出版/2018年2月初版刊行木村「私は、兄弟の真ん中で育ち、学校も男女比7:3みたいな、どちらかというと男社会で生きてきたんですが、それでもやっぱり女同士の友情関係に悩むことは時代ごとにあったんです。そういうときに手引きとしていたのは、やっぱり本でした」塩塚「私も、この感情ってなんだろう・・・って思った時、それを本の中に探すことが多いです」木村「この作品は、同性の友だちができない女二人がブログを介して知り合い、友情がやがて愛憎へと変わっていく最果てまでを描いています」塩塚「ブログでの出会い・・・。Twitterのコミュニティーに悩まされていた女子校時代を思い出してしまいそうです」木村「主人公が、ドロドロした感情に冷静さを絡め取られて、狂乱し、社会的なポジションまで失っていくさまは本当にホラーなんですが、自分も何かのスイッチが入ったら、そうなってしまいかねない緊迫感も読んでいて感じてしまうんですよ」塩塚「自分ならどうする?と、合わせ鏡のようにして読めそうですね」木村「柚木さんも中・高と女学園で育ったので、女社会や女同士の問題をテーマにした作品が他にもたくさんあります。過去を思い出すものがあったり、予言書のように読めるものなど、いろいろな読書体験ができるかもしれないですね」塩塚「今はバンドに男の子が一人いるんですが、参考書として、彼にも読んでもらいたいです(笑)」エピソードその3「聖書のなかの“羊”は、私たちのアイコンとしてぴったりだと思って」塩塚「あ、ここは村上春樹コーナーですね!父が好きで、それこそ実家の本棚にはずらっと並んでいました」木村「村上春樹さんの作品って、羊が重要なモチーフになっていますよね。『羊をめぐる冒険』や『ダンス・ダンス・ダンス』など物語を跨いで「羊男」が登場するし…。「羊文学」の由来って、もしかして…!?」塩塚「よく言われるんですが、実は全然関係なくって(笑)でも、なんだか申し訳ないと思って読み始めたら、すっかりハマってしまいました。『スプートニクの恋人』は特に好きで、好きなシーンは誦じられるくらいです」木村「私も春樹作品のなかだと『スプートニクの恋人』が一番好きなんです!は、初めて同じ人に出会いました(笑)。…せっかくなので、「羊文学」の羊の由来も聞いてみたいです」塩塚「羊というモチーフは、聖書から取ったんです。中高とキリスト系の学校に通っていたので、毎日聖書を読む日課があって。聖書の中で羊は、“神様への捧げもの”という意味合いで登場するんです。私たちの目指す音楽もそういうものでありたいと願いを込めて、つけました」木村「聖書とは驚きました! そういえば「1999」には、神様が登場しますね。〈だれもが愛したこの街は 知らない神様が変えてしまう〉 という歌詞で。聖書をキーワードに羊文学の歌詞を読み直すと、あらたな発見がありそうです!・・・このエピソード、ファンの方にぜひ届けたい!」処方した本は…『望むのは(古谷田菜月)』新潮社出版/2017年8月初版刊行木村「「羊文学」は、神様や悪魔、夢、見えないもの…など、人や現実ではないものを登場させて、人や現実を瑞々しく歌い上げている印象も大きいです。そこで今日最後に紹介したいのがこの小説なんですが・・・。主人公の家の隣に暮らすおばさんが、ゴリラなんですよ」塩塚「え、ゴリラ…?」木村「ゴリラです。ゴリラの秋子さん。あと、高校にはハクビシンの先生がいたりもします。普通に暮らす日常に、ゴリラやハクビシンやダチョウが普通にいる。主人公は、秋子さん(ゴリラ)の息子・歩(ゴリラではない)と一緒に高校に通う、その一年間が綴られていくんですが、15歳という感受性と、さまざまな色をモチーフに綴られる表現が、光と影を描く効果にもなっていて…」塩塚「色の表現も出てくるんですね!実は私も、色をイメージしながら曲を作ることが多いんです。それと、15歳っていうと、ちょうど私がバンドを始めた年齢です!」木村「年齢に対する主人公のこんな恐怖から物語は始まります。〈十五歳。若い人間として生きられる、これが最後の一年だ。〉。15という数字は、若さの終わりを告げる刻限だと語るんですよ」塩塚「え!!私も15の頃、まったく同じこと思ってました。漠然と、16になったら人生終わりだ、みたいな(笑)」木村「物語の後半、ある出来事によって世界は色を失ってしまのですが、クライマックスでは再び美しい光景が広がります。そのみずみずしさをぜひ味わっていただきたいですし、この、一見ちょっと不思議と思える世界については、不思議と思ってしまう自分の感覚の出どころは何か?と自問することで、自分が世の中をどう見つめているかのヒントを得られるようにも思います」対談を終えて。対談後、今日の3冊すべて購入してくれた塩塚さん。「自分では選んでこなかった作家さんや本に出会うことができて、とても嬉しかったです。これから読むのがとても楽しみです!」と話してくれました。8月26日(木)には新作のep『you love』が発売予定。柏葉幸子さん原作の映画『岬のマヨイガ』の主題歌も収録されているので是非チェックを〜!Instagram(hiz_s)撮影協力:〈二子玉川 蔦屋家電〉
2021年08月11日秋田市と仙台市にある文庫カフェが、7月27日東京に初出店しました。カフェの名前は〈黒澤文庫〉。"「本と珈琲とインクの匂い」を感じる文庫カフェ"をテーマにしたレトロで落ち着く空間と、豊富なドリンクとフードメニューを体験してきました。一歩足を踏み入れると百貨店の中とは思えない独自の世界観がそこに。〈黒澤文庫〉は、宮城県仙台市にある〈青山文庫〉と秋田県秋田市の〈赤居文庫〉の3号店です。〈黒澤文庫〉がオープンしたのは、日本橋高島屋S.C.新館の中。お店に足を踏み入れる前からレトロとスタイリッシュが組み合わさった独特の雰囲気にワクワクしてしまいます。店内奥にある机は、ついさっきまで誰かが文章をしたためていたよう。ガシャンと音を立てて動きそうなタイプライター。宮沢賢治の直筆原稿。武者小路実篤の絵。自由に持ち帰れる文庫用のブックカバーとしおりは、デザインも洒落ています。お店に入ってまず目に入るのは、タイプライターや黒電話、地球儀、そして使い込まれた机など懐かしい道具たち。壁には、小説家で画家でもあった武者小路実篤の絵や、東北は岩手県出身の作家、宮沢賢治の直筆原稿が掛かっていて、ゆっくり眺めたくなってしまいました。文庫カフェだけあって、たくさんの本も並んでいます。お店にいる間は自由に読んでOK。窓際のカウンター席に並ぶ文庫本は、気に入ったら1冊100円で購入することもできます。オリジナルのしおりと文庫用のブックカバーが用意されていて、自由に持ち帰れるのもうれしいサービスです。氷や水が載ったワゴンカートは、ウイスキーの提供にも活躍。接客も雰囲気たっぷり。席につくと、スタッフさんが水や氷を載せたワゴンカートと一緒にやってきて、お冷を出してくれます。スタッフは皆さん、珈琲農園の作業着をイメージしたつなぎ姿。このつなぎのユニフォームはその日の天気や気温で違う色のものを着ることになっているそうです。こだわりのコーヒーは〈ミカフェート〉とコラボ。インパクトのあるドリンクメニューも。朝昼夜の3種類ある「黒澤文庫ブレンド」は660円。大きめのカップにたっぷり入っています。〈黒澤文庫〉のこだわりは、豊富なメニューにも。オーダーが入ってから豆を挽いて、ハンドドリップしてくれるコーヒーは、コーヒーハンター、Jose 川島良彰さんの〈ミカフェート〉とコラボ。「グッドモーニングブレンド」、「アフタヌーンブレンド」、「ナイトブレンド」と時間や食べ物との相性を考えたブレンドが用意されています。たっぷり入ったコーヒーは、冷めてしまったら温めてもらえるそう。寒い地方のお店らしいサービスにほっこり。ドリンクのメニューもバラエティに飛んでいて、フラッペカプチーノやアイスココア、コーヒーにアルコールを合わせたカクテルなども用意されています。「クリームソーダ」880円。インパクトがあって、写真映えもばっちりなのは、炭酸水が入った背の高いグラスに、たっぷりのソフトクリームとコーンがのった「クリームソーダ」。ソーダの色は、その日の天気や気温によって変わるのでお楽しみに。フランスの「ガレット」と秋田のかき氷「こおり水」が並ぶフードメニュー。「ガレット コンプレット」990円。「ガレット」は客席から見える位置で焼かれます。「焼きカレー」935円。フードメニューのいち押しは、フランス、ブルターニュ地方の郷土料理「ガレット」です。店内が見渡せる場所で1枚ずつ丁寧に薄く伸ばして焼かれていて、香ばしい香りが店内を漂います。「ガレット」は5種類ありますが、チーズと卵、ハムが入った「コンプレット」が代表メニュー。生地が薄くてもサイズが大きなガレットは、なかなかの食べ応えです。ほかにもあつあつの「焼きカレー」や「チーズトースト」など、喫茶店らしい食事メニューも用意されています。「珈琲醤油小豆ロールケーキ」440円。「珈琲醤油小豆ロールケーキ」はふんわりしたロールケーキの生地の中に醤油が混ぜ込まれています。確かに色は醤油を感じさせますが、あまり味は気にならず、むしろ小豆とクリーム、そして外側に巻かれたクレープ生地のおいしさが全体をまとめています。「あずき白玉こおり」825円。このほかスイーツは、トッピングが目を引く6種類の「シフォンケーキ」や、秋田では夏の風物詩として知られる「こおり水」が夏の限定メニューとして用意されるなど、バラエティ豊かです。一歩足を踏み入れると、さまざまなメニューとお店の雰囲気とともに、ほっとする時間を過ごして欲しいというメッセージを感じる〈黒澤文庫〉。お天気や時間によって起きる変化や本のラインナップなど、何度行っても新しい出会いを感じられそうです。〈黒澤文庫〉東京都中央区日本橋2-5-1 日本橋高島屋S.C. 新館 4F03-6225-256010:30~20:00(19:30LO)休は日本橋高島屋S.C. 休館日に準ずる公式サイト
2021年07月29日さまざまな業界で活躍する「働く女性」に、今のその人に寄り添う一冊を処方していくこちらの連載。今回のゲストは、フリーランスPRの白井里奈さん。「どうやってお仕事が舞い込んでくるの?」「そもそもPRってどんなお仕事なの?しかも“フリーのPR”って?」など、長年抱いていた疑問をくまなく伺いました。今回は、いつもに増して笑顔に溢れた回となっています^^今回のゲストは、フリーランスPRの白井里奈さん。スポーツメーカーを “とある理由” で退職後、昨年5月よりフリーランスに。撮影のブッキングやインフルエンサーのキャスティングなど、「人」を介するお仕事を展開。誰とでもすぐに仲良くなってしまう “人たらし” 具合は、まさに天性!交友関係も何やら凄そうです。フリーランスのPRって一体…!?木村綾子(以下、木村)「はじめまして。白井さんはフリーランスでPRのお仕事をされていると伺いました。実は私、“フリーのPR”って肩書きの方と出会う度に、一体どうやってお仕事をされているんだろう?って気になってたんです。なので今日はいっぱい聞こうと楽しみにして来ました!」白井里奈(以下、白井)「わーありがとうございます!たしかに、傍から見ると何やってるか分からないですもんね(笑)。 私は “NGなし” なので、何でも聞いてください!」木村「さっそくですが、PRって、具体的にはどんなお仕事なんですか?」白井「たとえばある新商品が発売されるときに、その商品を売るためにどういう企画を立てて宣伝していったらいいかを考えるのが主な仕事ですね。企業に勤めているPR担当さんなら、その企業が発売する商品を宣伝する、みたいな」木村「なるほど!白井さんのように“フリーの”とついた場合は?」白井「働き方はそれぞれだと思いますが、私の場合は案件ごとに企業や個人からご依頼をいただいて、宣伝用の撮影に関わるスタッフやモデルをアサインしたり、インフルエンサーと呼ばれる人たちを企業やブランドに紹介したりしています」木村「具体的にはどんな依頼が来るんですか?」白井「「この商品の広告つくりたいから〇〇万円で撮影まるっと組んで!」 みたいにお仕事が振られて、スタイリストやヘアメイク、フォトグラファー、ビデオグラファーと言われる職業の人たちに声をかけ、撮影当日のディレクションもする!みたいな感じですね」木村「すごい!そんな責任あるポジションを社外のフリーランスの方に託すと考えたら、白井さんってめちゃくちゃすごい人なんじゃ!?」木村「現在に至るまでにはきっといろんな段階を経てきたと思うんですけど、フリーになる前はどんなお仕事をしてたんですか?」白井「元々は、新卒で入った〈アディダス〉で3年くらい PR をやっていました。けど、去年の5月に “コロナ解雇” されてしまって。あははは!」木村「え!そうだったんですか!」白井「各国の PR のポジションが一斉に切られたんですよ。 しかも、メール一本で!ほんと、外資だな~って感じです。あれはビビりました。あははははは!」木村「こんなに明るく解雇について語る人、初めてです(笑)。そこからどう巻き返したんですか?」白井「「やば、生きなきゃ!」とは焦りつつも、どうしたもんかな〜と。とりあえず開き直って「コロナ解雇されちゃったよー!」って友だちに話したり、「りな、adidasやめました。」ってインスタに投稿したりしていたら、「白井が会社を辞めたらしい!」「暇らしい!」みたいな感じでどんどん広がっていって、「ってことはこれからはフリーで仕事頼めるの!?」と連絡くれる人がぽつりぽつりと出てきて…」木村「図らずも、コロナ解雇を周りがポジティブに受け止めてくれた!」白井「そうなんですよ。「これできる?」って振られたらとにかく「できます!」と答えて、無我夢中に…。やー、なんとか一年は生き延びました!あははは!」木村「…まだ笑ってる(笑)。でも今のお話って、いつどんなパンデミックが起こるか分からない現代を生きている私たちの指標になると思いました。めちゃくちゃ軽やかにピンチを乗り越えるすごいお手本!」白井「わ、嬉しい!軽やかって初めて言われました!」エピソードその1「この人とやりたいから受ける!」木村「白井さんの働き方をもう少し掘り下げたいなとも思うんですけど、仕事をする上でのこだわりや哲学みたいなものってありますか?“白井里奈の、セブンルール” みたいな」白井「う~ん、固定のお付き合いをしない、ってのはありますね。その方がいろいろできるんですよ!」木村「企業と専属で契約をしないで、案件ごとに受けるってことですね。じゃあ次!こういうお仕事だったら受けるとか、逆に断っちゃうみたいな、そういう線引きはありますか?」白井「決め手は人。お金では決めないってことですね。さっき木村さんが“軽やか”って言ってくれて気づいたんですが、私が軽やかでいられるのってきっと、この性格ややり方を良いと思ってくれる人たちと一緒に働けているからなんだろうなって。一度に多くのお金をいただける仕事に目が眩むときも正直ありますけど、一度お仕事をして結果を残せれば、必ずまた依頼をいただけるので」木村「“お金じゃなくて人”。その信念には私もめちゃくちゃ共感します!ちなみに得意なジャンルとかはあるんですか?」白井「得意ジャンルか〜。……あ!それも“人”ですね!」木村「“人”!?てっきり、スポーツとかコスメとか、そういう答えが来ると思っていたんですが(笑)」白井「やー、人ですね(笑)スポーツもアパレルもコスメも、あと飲食なんかもやりますが、どんな分野の仕事が来ても紹介できる人がいるってのが私の強みです」木村「すでに独自のコミューンを持ってるんですね。はやく会社化したらいいのに!」白井「会社化するなら、拠点をニューヨークに移すタイミングですかね!」木村「え、ちょっと待ってちょっと待って。また面白い答えが返ってきたぞ(笑)。どうして突然ニューヨークというワードが?」白井「幼稚園の頃に向こうに住んでいたのと、大学の頃にも1年間留学していたので友達がいっぱいいるんですよ。あと、ちょっとずつ海外のクライアントも増えてきたので、会社にするならニューヨークを拠点にしたほうが、いろんな人とお仕事ができるだろうなって」処方した本は…『ピンヒールははかない(佐久間裕美子)』幻冬社出版/2017年6月初版刊行木村「白井さんのお話を聞けばきくほど、ロールモデルになるんじゃないかと感じたのが、ニューヨークを拠点にフリーライターとして活躍されている佐久間裕美子さんという方です」白井「肩書きの前に付く“ニューヨークを拠点に”ってフレーズ、めっちゃカッコいいです…!どんな方なのか気になります!」木村「佐久間さんは、1998年、イェール大学大学院進学を機にアメリカに渡り、以来20年以上、ニューヨークを拠点に生活している方なんです。はじめての就職も、結婚も離婚も、フリーライターとしての独立も…、全てニューヨークを拠点に経験してきたそう。この本は、40代前半を迎えたタイミングで独身の著者が、女友達とのエピソードを交えながら、生きることについて書いたエッセイ集です」白井「人生の重要な転機をぜんぶニューヨークで経験してる…!」木村「そう。でもね、その人生のサバイブの仕方がものすごく軽やかなんですよ。そしてとにかく人に愛される方で、躓いたり立ち止まったりしてしまったときには、常にそばに人がいて、手を差し伸べ、共に語り合う中で、杖になるような言葉をくれる」白井「めっちゃ素敵ですね!私も、どんだけ人に助けてもらってきたか・・・。あと、この帯にある“めいっぱい生きる。”って言葉にもめちゃくちゃ共感します」木村「その言葉は本当に、佐久間さんご自身や、ともに生きている仲間、この本に書かれてあることを象徴しているんですよ。読んでいると無性に動きたくなるというか、こうしちゃいられない!みたいな気持ちになってくるし」白井「日本人としての視点でアメリカを語ってもいるだろうから、“日本人の自分”を改めて見つめる機会にもなりそうです!こういうパワフルな人が向こうに住んでいるっていうだけでも、私の野望を後押ししてくれますね」エピソードその2「やりたいこと全部やってやる!」木村「ここまででお仕事のナゾは解けましたが、今度は“人間・白井里奈”がどう形成されたのかに俄然興味津々です。いったいどんな人生を歩んできたのか…」白井「わかりやすいエピソードだと、高校生の頃に一回死んで、今の私がいるって感じですかね」木村「ちょっと待って、さらりと言うには濃すぎます!(笑)詳しく聞かせてください」白井「高校の頃、脳の病気を患ってしまい、約2ヶ月、寝たきり状態だった時期があったんです。本当に危ない局面も何度かあったらしく…。お見舞いに来てくれる子が口を揃えて「りなが死んじゃう!」って号泣して帰ってくのをただただ見てました。「いやまだ生きてるから!」って返したくても、動けない喋れない、ツッコミもできない(笑)」木村「そんな壮絶な経験まで、なぜ笑って話せるのアナタ!」白井「いやだって、あれ以上辛い経験はもう二度とないと思ったら、怖いものもなくなっちゃったんですよ。一回死んだ分取り戻さなきゃ!繋がった命を無駄にしちゃダメだ!!やりたいこと全部やってやる!!! って。それ以来ですね、どんなピンチも逆境も、プラスに変えて楽しんじゃえ!って思考になったのは」木村「なるほど。さっき佐久間さんの本の帯“めいっぱい生きる。“に反応したのは、そういった体験があってこそだったんですね」エピソードその3「私、遠回しに断られたんです!」木村「大学時代のお友達には、同じような働き方をされている方が多いんですか?」白井「大学は上智大学で、社会学を専攻していたので、当時の友だちは広告とか商社、銀行などに就職していきました。だから次第に会うことも少なくなっていって。今は業種が近かったり、ライフスタイルが似ている人たちと会うことの方が多くなってきています」木村「私も政治経済学部だったんですけど、同じ4年間を過ごしていても全然違う人生を歩んでいくなっていうのは常々思います。学生時代から、PRの分野に興味があったんですか?」白井「いやいや、就職活動ではそれこそITや商社なんかも受けたんですよ。ただ、証券会社に数日間のインターンに行った時、担当の社員さんから「白井さん、あなたのいるべき場所、ここじゃないよ!」って初日から言われちゃって。私、遠回しに断られたんです(笑)」木村「すごい軽やかに残酷なこと言われましたね(笑)」白井「うそー!ってなりました(笑)。しかも最後の日には「今日までみんなの事盛り上げてくれてありがとう!」とまで言われちゃって。単なる盛り上げ要員だったっていう(笑)。でも今思うと、あの社員さんが言っていたことは本当に正解!」木村「図らずも、その社員さんに導かれるようにして、PR、いわば盛り上げ役という天職に出合っていくわけですね」処方した本は…『すべてを手に入れたってしあわせなわけじゃない(鈴木涼美)』マガジンハウス出版/2019年11月初版刊行木村「天真爛漫な性格に生まれ、PRという天職を手にした白井さんにも、過去には生死を分ける壮絶な体験や、人生の軌道修正があったことがわかりました。他にも、いろんな取捨選択の果てに現在の白井さんがあるんだなぁと思い、この本を紹介させてください」白井「すごいインパクトあるタイトルですね〜!」木村「この本は、人生における岐路において全く別の、あるいは真逆の選択をしてきたA子とB美の話が、並列に語られていくんです。Aに進めばBに進んだ人のことが気になるし、Aを捨てればAを大切にしている人のことが気になる。白井さんが選ばなかった人生に思いを馳せて読むと、疎遠になった友達と久しぶりに語らうような感覚で楽しめるかもしれないです」白井「たしかに!人生のターニングポイントってやつですね。あっちを選択していたら、今頃どういう人生になったていただろうって考えてしまうこと、しょっちゅうあります」木村「A子もB美も架空の存在なのに、とにかくリアリティがすごいんです。フィールドワークを重ねてひとりひとりの人格を形成したであろうことが読んでてわかるし、人や世間をシニカルに描きながらも、絶対に否定しない。著者の涼美さんという方は、人を見る目が本当に優しくて、誠実なんですよ」白井「…実はさっきから、“鈴木涼美”ってお名前にも興味が湧いてました。思わず声に出したくなる名前!(笑)」木村「著者本人にも注目してくれましたね!涼美さんは、人としてもものすごーく面白くって奥深くって、思わず掘り下げたくなる方ですよ! 現在は、社会学者・作家としてご活躍な彼女ですが、翻訳家の両親のもとに生まれ、慶應大学、東京大学大学院、日経新聞記者という華麗な学歴を持ちながらも、高校時代は“ブルセラ少女”、大学時代はキャバ嬢、AV女優という一面も持っていたという…」白井「わぁ!俄然、興味津々!さらにリサーチして、キャスティングリストに加えさせていただきます!」エピソードその4「人と人を繋げるのが好き」木村「今日こうして白井さんとお話をしてきて一番に感じたのは、どんな場所でもどんな環境でも、そこを楽しい場所にする力のある方なんだってことでした。そのためには、そこにいる自分が誰よりも楽しく幸せだと感じる必要がありますよね。自分が楽しむために、楽しめる仲間を集める。その結果、人と人とが繋がっていって、予期せぬ化学反応が起こったりなんかもして…。白井さんという存在そのものが、“企画”になってる」白井「わ、嬉しいです!昔から人と人を繋げたりするのが好きだったので、それをそのまま仕事にしちゃった感じなんですね。究極の ”公私混合” です!」木村「まさに企画って、例えるなら“と”という存在だと思ってるんです。それがあることで何かと何かが繋がる。さらには、繋がることで、自分や誰かの人生が、もっと言えば世の中までが、良くも悪くも変わってしまうもの。俳句の世界には「二物衝撃」って言葉があるんですが、ご存知ですか?」白井「ニブツショウゲキ…?初めて聞きました!」木村「簡単に言うと、イメージの異なる、一見まったく関係ない二つの言葉を意図的に取り合わせることで、1+1以上の豊かな世界観が生まれるということ。私も企画のお仕事を長く続けていますが、「二物衝撃」は、企画と向き合う際の座右の言葉にもしているんです。白井さんは、きっと二物衝撃さえ軽やかにできてしまう方なんだろうなぁ!」白井「PRのお仕事の醍醐味ってまさにそれです! キャスティングひとつとっても、このモノのために誰を集めたらいいだろうとか、あの人とあの人を掛け合わせたら、どんなことが起きちゃうだろう!って想像する時間が楽しくて、描いた景色が現実になった瞬間は最高に幸せで!今日木村さんと話していて再確認しました。私にとってPRは天職です!!」処方した本は…『Neverland Diner(都築響一)』クラーケン出版/2021年初版刊行木村「最後に紹介したいのはこの本。…とその前に、今回オススメした本について、面白い共通点を見つけたので話してもいいですか?」白井「え、なんですかなんですか!?」木村「「この本はどうかな?」って閃くきっかけが、著者つまり人だったんです!本に書かれてある内容がまず浮かぶのではなくて、こんな面白い人がいるから白井さんと繋げたい!が最初にあったんです」白井「それは嬉しい!」木村「それで言うと、白井さんに対するこの本の一番のプレゼンポイントは、編者である都築響一さんの、本という“場”のつくり方。人を集めて編む、編集力です」白井「なるほど。本をひとつの場所と捉える考え方、面白いです」木村「この本には、「もう行けないお店」をテーマに、色々な人にとっての忘れられない味と、味から想起される景色や記憶が短いエッセイで綴られています。100人の方が寄稿しているんですが、まずはそのラインナップをご覧いただきたい」白井「ものすごいバラエティに富んでいる!…あ、さっき紹介してくれた佐久間裕美子さんもいます!!」木村「作家、編集者、歌人、脚本家、ミュージシャン、漫画家、現代美術家…。錚々たる名前がずらり並んでいて、それだけでも圧巻ですよね。読んでいくとわかるんですが、ひとりひとりの記憶がぜんぶ違うように、文体も、漢字や数字の使い方も、人によってバラバラ。都築さんは、それこそが個性や記憶の面白さだととらえて、あえて統一せず残したということを序文でも語っているんです」白井「誰の個性もつぶさない。均さない。…おこがましいけど、私がキャスティングするときに大事にしてることに近いです!」木村「でしょう!?人を掘り起こして、その人の面白さをどう磨いたら輝くかを極めている方なんですよ。都築さんの手がけた作品は本当にたくさんあるので、白井さんには、キャスティングや場づくり目線でも色々な発見をしていただけるような気がします」対談を終えて。対談後、今日の3冊すべてを購入してくれた白井さん。「普段本を買わないから、自分のための本を選んでもらえて嬉しい!どのくらいマッチしているか、今から読むのが楽しみです」と話してくれました。彼女の少し派手めな私生活が垣間見えるInstagramはこちらから。また、どこかでご一緒できますように。Instagram(rina_shirai)撮影協力:〈二子玉川 蔦屋家電〉
2021年07月14日コアラスリープジャパン株式会社(本社:東京都渋谷区、創業者:ダニエル・ミルハム、ミッチ・テイラー)は、快適な睡眠から、読書や仕事などベッドの上での様々なシーンまで居心地の良いベッド空間を実現する「コアラファブリックベッドフレーム」を2021年5月31日から公式ホームページで予約販売を開始いたします。「コアラファブリックベッドフレーム」公式販売サイトコアラファブリックベッドフレームは、組み立てに一切の工具が不要な簡単設計ながら、振動軽減を徹底した頑丈な土台がマットレスをしっかりと支え、上質な睡眠を提供します。また、ヘッドボードは4度の傾きを施し、寄りかかりながら読書や仕事などの作業をする際にも最適です。フレームの下には充実したスペースを備え、収納に利用可能なほか、毎日のお掃除も簡単です。当社は、より快適な住環境だけでなく、自然環境の保護にもつながる製品づくりを通し、全てのいのちと共存し、美しい地球を未来に残すことをブランドミッションとして掲げています。本商品はFSC®ミックス認証を取得、原料である木材は適切に管理された森林から調達されており、全て追跡可能です。また、クッション材の表地にはリサイクルされたペットボトルを含む再生されたポリエステルを含む繊維を採用しています。本商品をお選びいただくことで、気持ちの良い睡眠をお届けするとともに、みなさまのサステナビリティへのニーズにもお応えいたします。■コアラファブリックベッドフレームについて特長1:簡単組み立て&上質な睡眠を追求コアラファブリックベッドフレームは工具を一切使わず、10分以内で簡単に組み立てることができます。ベッドフレームに固定された頑丈な木製パネルがしっかりとマットレスをサポートし、上質な睡眠を実現します。またサイドレールは布張り仕様になっているので、脛をぶつけた衝撃で目を覚ます心配もありません。コアラファブリックベッドフレーム組み立て動画特長2:様々な生活シーンにぴったりの設計ゆったりとしたヘッドボードは、寄りかかるのに最適な角度に設計されており、ソファのような座り心地を実現。ベッドでの朝食や読書、仕事の作業など様々なシーンで快適にお過ごしいただけます。特長3:充実した収納スペースヘッドボード裏には収納棚を備え、枕などの収納や充電中の携帯電話を置いておくなどの様々な使い方が可能です。またベッドフレーム下の空間も、収納スペースとして活躍するほか、普段の掃除も手間がかからず簡単に行えます。特長4:サステナブルな素材を使用コアラファブリックベッドフレームはFSC®ミックス認証(※1)を取得しており、使用される木材は全て追跡可能で、適切に管理された森林から調達されています。サイドレールには、リサイクルペットボトルを含むリサイクルされたポリエステルから製造されたREPREVE®*繊維33%を含むポリエステルを採用。地球環境に配慮した素材を使用し、お客様に質の高い睡眠をお届けします。(※1)森林管理における環境、社会、経済的影響を考慮した10の「PrinciplesandCriteriaforForestManagement:森林管理に関する原則と基準」から成る国際基準です。【商品概要】商品名:コアラファブリックベッドフレームサイズ:シングル幅230cm×奥行115cm×高さ100cm(税込み70,000円)セミダブル幅230cm×奥行134cm×高さ100cm(税込み80,000円)ダブル幅230cm×奥行158cm×高さ100cm(税込み90,000円)クイーン幅230cm×奥行178cm×高さ100cm(税込み100,000円)カラー:ナチュラルアッシュ/シルバーフォックス素材:サイドレールアメリカンアッシュ突板合板、エンジニアードティンバー、ポリエステル(REPREVE®️繊維33%を含む)脚部アメリカンアッシュ無垢材ベースボードバーチ突板合板ネジポリアミドオーバーモールドメタルボルト原産国:設計・開発オーストラリア生産中国保証期間:5年ご購入いただいた商品は6月中旬以降のお届けとなります。■120日間返品返金保証についてコアラ商品は、全て120日間の返金保証が付いています(※2)。ご購入から120日間、ご自宅でゆっくりと使用していただいたうえで、満足いただけない場合には返品、返金に対応いたします。コアラファブリックベッドフレームに5年間の保証が付いていますので、安心して長くお使いいただけます。(※2)東京都、大阪府以外にお住まいのお客様は返品時、1点につき7,500円の手数料をご負担いただいております。コアラについて:コアラは2015年にオーストラリアで創業され、2017年に日本へ上陸いたしました。日本ではいち早く寝具・家具ブランドとしてD2C(メーカー直販)のビジネスモデルを採用し、常に最新のオンラインショッピングの顧客体験を提供しています。主力商品であるコアラマットレスは世界の様々な国で愛用されています。当社は徹底的な市場調査を行い、日本人に最適なかたさのマットレスを実現するとともに、高温多湿な日本の気候に合わせ余計な熱や湿気を逃す設計を施し、最高の眠りを提供しています。2019年12月にコアラピロー、2020年6月にコアラベッドフレームの販売を開始し、快適な睡眠を実現する商品ラインナップを拡充しています。これと同時にコアラソファー、コアラソファーベッドなど日常生活を彩る家具も販売。日本人の座り姿勢や日本の住環境に併せたサイズなど設計にもこだわっています。2017年からは世界自然保護基金(WWF)とのパートナーシップ締結によって、150万豪ドル以上をコアラマットレスやコアラソファーなどの売上のなかから寄付しています。日本では、コアラマットレスの売上の一部は南西諸島に生育する固有種であるアマミノクロウサギ、ミヤコカナヘビの保護にも使われています。コアラは『良質なものを身近に、手軽に、気持ちよく』をミッションに、睡眠から日常の暮らしまで快適なライフスタイルを提供するブランドです。Koalaコアラマットレス-日本の寝室に革命を起こす顧客中心の商品開発にD2C(メーカー直販)を組み合わせることで自宅にいても注文可能。さらに充実のカスタマーサービス、最短翌日配送、120日間まで返品・返金対応で購買体験に変革をもたらしています。*REPREVE®Unifi,Inc企業プレスリリース詳細へ TIMESトップへ
2021年06月09日さまざまな業界で活躍する「働く女性」に、今のその人に寄り添う一冊を処方していくこちらの連載。今回のゲストは、ハナコでお馴染みの小谷実由さん。ずっと会ってみたかった彼女に、本のことやお仕事のこと、今年控えている “BIG プロジェクト” について伺いました。今回のゲストは、モデルの小谷実由さん。モデル業を軸に、執筆活動やモノづくりなど、肩書きにとらわれない活躍を見せる彼女。本が好き、服が好き、Hanako.tokyoでやっていた “趣味探し連載” の初回公開日が一緒 …など共通点も多々。過去には『GINZA』のカルチャーページで少しだけコラボしたことも…“おみゆちゃん”との、念願の初対面…!木村綾子(以下、木村)「はじめまして。やっと会えましたね!おみゆちゃんの存在はずっと知っていて、共通の知り合いも多いことから勝手に“ちゃん”付けで呼ばせていただいていたのですが、いまさらながら失礼じゃなかったですか?(笑)」小谷実由さん(以下、小谷)「全然…!私も“綾子さん”って、呼ばせていただいていいですか?」木村「ぜひ!! はぁ…。なんだかこれで正式に始まった気がしますね」小谷「ですね(笑)。それにしても、年明けにInstagramでフォローをしてくださった時は、思わず声が漏れました。綾子さんが私のことを認識している!という事実が嬉しくて。“いいね”がつくたびに、「この(スマホのタップのこと)お手間かけて、すいません! 」って気持ちになっていました」木村「タップのお手間…(笑)。いやいや、本当に好きなんです、おみゆちゃんのインスタグラム。例えば本を紹介するにしても、手にとった理由や感想だけじゃなくて、読み途中のものには「まだ途中です」としっかり記す。そういう細部に心尽くしのお人柄が表れていて、私もこうありたいと学ばせてもらっていたんですよ」小谷「ありがとうございます。実は、本を定期的に読むようになったのは割と最近のことなんです。世の中の “本好き” に比べたら読書量も少ないし知識も浅いんですが、「この本に出合えてよかった」「救われた」って気持ちをなかったことにしたくなくて、少しずつ書き残すようになりました。私の投稿を見てその本を手に取る人がいると思うと、どうしても丁寧になってしまうんですよね」木村「投稿を見ていて、穂村弘さんあたりの作品がお好きなんだなぁと思っていたのですが、そもそも読書好きになったきっかけって、何だったんですか?」小谷「私の穂村さん好き、バレていましたか(笑)。もともとは本の装丁が好きで、モノとしての本に魅力を感じていたんです。読む癖がつく前は、ただ単に本を集めることも好きでした」木村「本という存在そのものが好きって気持ち、分かります!ちなみによく読むジャンルは?」小谷「エッセイが多いですね。昔から根がマジメで、枠から外れられないところがあったので、こういう考え方があるんだ!って視点や発想と出合うために、いろんな人の頭の中を覗く気持ちで読んでいます」エピソードその1「日常のすべてで勝負したい」木村「さっきの“心尽くし”の姿勢にも繋がる話ですが…。日常的に自分の“好き”を世界に発信できるSNSって本当に素晴らしいツールである一方で、おみゆちゃんのように広く多くに届く立場になると、発信の責任も大きくのしかかってくるだろうなぁとも思うんです。特にお仕事柄、“好きなものは?”“最近ハマっていることは?”とか、常に新鮮な回答を求められることが多いんじゃないですか?」小谷「ですね。でも実は私、本当に好きなものってそんなに多くないんです。だからこそ好きになったものはずっと好きだし、頻繁に変わることもないですし。喫茶店、猫、服、本。以上!みたいな(笑)。でも、発信している全部が自分の大事な生活の一部だってことも本当なんです。だから責任を持っていたいんですが、正直、受け取られ方に戸惑ってしまった経験はあります」木村「身につまされるなぁ。たとえば私だと、10代でファッションモデルやりながら「本が好きです」「好きな作家は太宰治です」「好きな小説は『人間失格』です!」って言っちゃったんですよ。ど真ん中過ぎて逆に避ける回答ですよね(笑)。モデルで本好き? 本好きなのに太宰? 『人間失格』? ほんとに本好きなの!? って失笑されたこともありました。…あの日の発言に説得力を持たせるために、その後の私の人生が決まったと言っても過言ではない(笑)」小谷「あぁ、すごく響きます…! 分かってくれる人はいるんだから、って考え方もあると思うんですけど、やっぱり私は誤解されたくなくて、言葉を尽くしてしまうんですよね」木村「発信することって、いろいろと責任や面倒がつきまとうので、おみゆちゃんがあれだけ生活の多くを発信している背景には、並大抵じゃない覚悟と努力が伴っているんだろうなって尊敬していたんですよ」小谷「痛み入ります…!そういえばこの間、山里亮太さんの『天才はあきらめた』を読んだんです。普段テレビでは見せない泥くさい努力や、今のポジションまで上り詰めるための戦略みたいなことが赤裸々に綴られていて。なんだか、人として尊敬できるなって思ったんですよ。私もあんな風に日常のすべてで勝負したいって気持ちはありますね」処方した本は…『その落とし物は誰かの形見かもしれない(せきしろ)』集英社出版/2021年4月初版刊行木村「おしゃべりを初めてまだ10分ほどですが、おみゆちゃんの人柄として、心尽くし、真面目、モノや人への敬意ってキーワードが浮かびました。そして今、山里亮太さんのお名前が出てきて「これだ!」とひらめいたのが、せきしろさんのエッセイ集です」小谷「せきしろさん!『去年ルノワールで』大好きです」木村「それこそ山里さんも大の信頼を寄せている方で、多くの芸人や作家さんからの人望も厚い方で、とにかく目覚ましいのはその想像力。私も常々、彼の人やモノ、風景に対するまなざしに感心させられているんですが、何より尊敬しているのは優しさなんです。この本は、ひとつの落とし物に思いを馳せて綴られる50の妄想エッセイなんですが、ある落とし物をして“誰かの形見かもしれない”とまで飛躍させる眼差しにクスっと笑ってしまいつつも、そこにはとてつもない優しさを感じますよね」小谷「落とし物っていう、誰かの元からはぐれてしまったものに焦点を当てるって発想にもロマンがありますね」木村「日常の取るに足らない景色にさえこんな“もしも”が潜んでいると思うとワクワクしますし、写真×言葉で記録するインスタグラムに活用したら、最高の遊び場になりそうです」エピソードその2「装丁や文字組みにもこだわりたい」木村「現在初の書籍づくりに挑んでいると伺いました。ズバリ、どんな本を出されるんですか?」小谷「〈NAOT(ナオト)〉っていう革靴ブランドのWEBサイトでやっていた連載をまとめたものなのですが、「隙間時間」をテーマにしたエッセイ集になる予定です」木村「面白いテーマですね。空いた時間で、靴を履いてお出かけしたくなるような内容?」小谷「その逆なんです。“出かけること” ではなく “休むこと” にスポットを当てていて、「はしゃいで走り回ったら、ホッと一息休みたくなる。休んだからこそ、また楽しめる」そんな思いを込めて3年間書き続けました」木村「それは楽しみです!内容はもちろんですけど、モノとしての本に魅力を感じているおみゆちゃんだから、デザインや紙など、こだわりがいっぱい詰まった一冊になりそうですね」小谷「30歳の小谷実由を本の中に刻み残したいという気持ちで取り掛かっています。今まさに編集中なんですが、これまでに書いたものを読み返していると、これ本当に私が書いたの?って気持ちになったり、今日の私が読むために過去の私が書いてくれたみたい!なんて思える部分もあったりして面白いんですよね。…それにお察しの通り、「持っているだけで嬉しくなるような一冊を作りたい」という思いが強いので、装丁や文字組み、フォントにもこだわりたいなと企んでいるところです」処方した本は…『漱石 心(祖父江慎)』岩波書店出版/2014年11月初版刊行木村「夏目漱石の『こころ』に、こんなバージョンがあるのはご存じでしたか?」小谷「ぴかぴかの函入り!知らなかったです。タイトルが漢字の『心』で、“ほぼ原稿そのまま版”とも書いてありますが、他の『こころ』と違うんですか?」木村「この本は、装丁家の祖父江慎さんによってつくられた、『こころ』刊行百年記念版です。漱石の自筆原稿をもとに、明らかな誤記もそのままにしてあって、新聞連載時の掲載日と回数も記してある。漱石の息づかいや筆使いが蘇った21世紀版の『心』に、祖父江さんの遊び心がたっぷり詰まっています。…函表面の「心」の象形文字は漱石直筆。骸骨は祖父江さん描き下ろし。それから、函の内側も見てください!」小谷「内側にもイラストが…!」木村「とにかく仕掛けがすごいんですよ。その全貌は巻末ページにまとめられているので、ぜひじっくり答え合わせをしてもらいたいです。とにかくこれは本として、おみゆちゃんに是非持っていてほしいなと思いました」小谷「「本として持っていてほしい」って言葉に心をグッと掴まれましたし、装丁家が祖父江さんなんだったら、もうそれは間違いないですね!」木村「祖父江さんのこと、ご存知でしたか?」小谷「六本木に〈スヌーピーミュージアム〉がオープンした頃、館内のデザインを担当された彼にナビゲーターとして案内してもらうという贅沢な企画にお呼ばれしたことがありまして。凄い人のはずなのに、私と同じ熱量で「いいよねー!」みたいに接していただいたのが嬉しくて、以降ずっとファンなんです。人柄に惹かれたのがきっかけでしたが、自宅の本を意識して見てみると、「これも祖父江さんだ、あれも祖父江さんだ!」って、彼がデザインした本が身のまわりにいっぱいあったことに気づいて…」木村「なんだかドラマティックですね!祖父江さんは漱石の『こころ』が大好きで、あらゆる版型を持っているそうなんですが、いつか祖父江版を作りたいっていう夢をここに実現されたんです。まさに、祖父江ワークの集大成。あと、本って片手で読んでいると“ノド ” の部分が読みづらいじゃないですか。そんなところまで計算して文字組みされていて、本読みのかゆいところにも手が届く、装丁家の本気が詰まった一冊です」エピソードその3「手に職がある人に対しての憧れが」木村「そういえば、この間〈Aquvii〉とコラボして作っていた、肩から掛けられるブックカバー、最高でした!」小谷「あれは我ながら、いい出来だったなと思っています(笑)。「本の表紙が見えるように透けた素材で作ってくれてありがとう」って、綾子さんメッセージくれましたよね。そこに気づいてくれたのがまた嬉しくて」木村「本読みを代表してお礼を言わなくちゃ!って、居ても立っても居られなかったんです(笑)。モデルのお仕事から広がりが生まれて、現在は書くことやものを作ることなど色んな分野で活躍されていますが、最初のきっかけは何だったんですか?」小谷「文章のお仕事は、『GINZA』で「好きな音楽のレビューを書いてみない?」と声をかけていただいたのが始まりでした。その文章を見た編集の方に「あなたはもっと書いたほうがいい」と言っていただいて…。アンケートや数百字のコメントから始まって、自分の名前で連載を持てるようにまでなるなんて、振り返ってみたら夢のようです」木村「そうそう、実は私も『GINZA』のカルチャーページで、一度おみゆちゃんとコラボしたことがあるんですよ!」小谷「私とですか!?」木村「『みすずと雅輔』という、金子みすゞの評伝を特集したコーナーだったんですが、私が金子みすゞの詩をセレクトして、おみゆちゃんには、その詩に散文で応答していただきました」小谷「あ!覚えています!」木村「そのときの立ちふるまいの軽やかさと誠実さのバランスが本当にお見事で…。なので、こうやって着実にお仕事の幅を広げられているのにも納得です」小谷「改めて、自分が欲しいものをカタチにできて、それを人に喜んでもらえるのは本当に幸せだなって思います。昔から、プロフェッショナルというか、手に職がある人に対してもすごく憧れがあったんですが、今の自分を結構気に入っているんです。肩書きはモデルだけど、なにやら他にもいろんなことしているらしい小谷実由って一体何者!?みたいに存在そのものを面白がってくれる人と、これからも作品を作り続けていきたいなって」処方した本は…『物物(猪熊弦一郎・集)』BOOK PEAK出版/2012年7月初版刊行木村「これは、画家の猪熊弦一郎さんが集めた「物」を、スタイリストの岡尾美代子さんが選び、ホンマタカシさんが写真に撮るというコンセプトの一冊です。さらに巻末には作家・堀江敏幸さんがエッセイを寄せていて…。いろんな業種のプロフェッショナルが集ってひとつの作品を作り上げるというコンセプトと、その洗練された立ちふるまいが、今のおみゆちゃんにピッタリだと思って選んでみました」小谷「好きな人ばかりです!しかも、これもまた存在として美しい」木村「ぜひ中も見てみてください」小谷「わぁ、この索引のページに、すでに目を奪われてしまいました。整然と並べられている物の姿って、好きなんです。自分で “物撮り” とかしちゃうくらい」木村「本編も遊び心が効いているんですよ。写真の対向ページには、撮影中のホンマさん(H)と岡尾さん(O)の会話が添えられているんですが、プロフェッショナルの現場のヌケ感が絶妙で」小谷「〈O ハートです。H ハートに穴が空いている。O ロマンティックな発言。H そういうことにしときましょう。〉」木村「〈H これ何だろう。O 刷毛じゃないですか? H箒?O箒と刷毛の境目は何なんですか?〉とかも…ふふふ」小谷「しかもよく考えたら、本のタイトルが『物物(ぶつぶつ)』…!ハマり過ぎていますね(笑)」木村「なにやらぶつぶつ言いながらも、こんなにも端正な作品が仕上がる。そういうモノ作りの現場こそ最高だなぁって思いますよね。……それにしても絵になるなぁ。この本とおみゆちゃんが、すごく絵になる!」小谷「私、この本をお洋服にしてみたい!いますごく想像力を刺激させられています!!」対談を終えて。対談後、今日の3冊すべて購入してくれた小谷さん。「この連載のファンだったので、こうやって綾子さんとお話しながら本を選んでもらえたことが夢のようでした。この3冊を携えてこれからも精進していきたいと思います!」と話してくれました。私も大好きなInstagramアカウントはこちらから。書籍の発売も待ち遠しい限りです。Instagram(omiyuno)撮影協力:〈二子玉川 蔦屋家電〉
2021年06月09日さまざまな業界で活躍する「働く女性」に、今のその人に寄り添う一冊を処方していくこちらの連載。今回のゲストは、悩みを聞いてほしい!と自らオファーをくれた、女優の佐久間由衣さん。クールな佇まいからは想像できない、彼女の人懐っこい一面へと迫りました。今回のゲストは、女優の佐久間由衣さん。“ViViモデル” として活躍した後、一心発起、女優の道へ。現在は『BARFOUT!』と『VOGUE GIRL+』でふたつの文章を連載中。「趣味は読書で、好きな小説家は太宰治」としながらも、最近の悩みは、“教養がない” ことなのだとか。話題は、佐久間さんからのラブコールと好きな作家さんについて。木村綾子(以下、木村)「今回は逆オファーをくださってありがとうございます。連載をスタートして2年になりますが、初めてのことだったのでめちゃくちゃ嬉しくて…!この連載のことはどうやって知ってくださったんですか?」佐久間由衣(以下、佐久間)「こちらこそ、お招きいただき嬉しい限りです。きっかけは、福本敦子さんのポッドキャストです。木村さんがゲストで出演された回を聴いていて、「この方、一体何者なんだろう」って。私なりにリサーチをしたら、この連載へとたどり着きました」木村「『きくこすめ』を聴いてくださったんですね!彼女と出会ったきっかけも実はこの連載なんですよ。これは敦子ちゃんに報告しなくちゃ…!」佐久間「手先を動かしながら聴いていたんですけど、“太宰”って言葉が出た瞬間に手が止まって。「あ、これは集中して聴くやつだ」と(笑)。とにかく木村さんのひと言ひと言が、あの日の私には強く響いたんですよね。なかでも、本が好きだってことを「自分にはそれしかなかった」って言い方をされていたのが印象的で…。「ああ、分かる」って」木村「佐久間さんも太宰がお好きなんですよね。他にはどんな作家さんの作品を読みますか?」佐久間「中村文則さん、好きですね。あまりに理解できないから憧れます」木村「中村さんの作品って、死や悪といった人間の暗い部分や、倫理観や宗教観などといった、やすやすと踏み込めない世界を描いたものが多いですよね。佐久間さんは、どんな部分に惹かれますか?」佐久間「“悪”ですね。殺人者の目線で描かれる世界って、私にはない景色だと思ってハッとする一方で、どこか他人ごとじゃない気にもさせられて…」木村「主人公が罪を犯した人間だというだけで、読む側も無意識にフィルターをかけてその世界を見てしまう。そんな風に相手や物事を見つめる読者自身の“悪”をも問いかけてくる気迫が、中村さんの作品にはありますよね。そういう感覚を読書から得るのがお好きなら、ノンフィクション系にも読み応えを感じるんじゃないかな?」佐久間「ノンフィクションも好きで読みますね。石井光太さんとか」木村「おぉ、またしてもヘビーな題材を扱う作家さんの名が。そう来たら、私からは森達也さんをおすすめしたいです!・・・って、太宰治に中村文則。石井光太に森達也。冒頭から、なかなかディープな読書談義(笑)」佐久間「作家さんから作家さんへと、こんな風にして話が繋がっていくんですね!実はいますごく興奮しています!」エピソードその1「妄想の中に事実を混ぜ込むと、素直な気持ちが表れてくる」木村「お芝居にモデル業、執筆活動と幅広く活躍されている佐久間さんですが、まずは書くことからお伺いします。お仕事として文章を書くようになったのはいつ頃からですか?」佐久間「約1年前からです。『BARFOUT!』というカルチャー誌で1ページの連載枠を持ったのがきっかけです。好きなことを書いていいよと、贅沢な自由まで与えていただいて」木村「初連載にして自由演技とは確かに贅沢ですね。どんなことを書かれているんですか?」佐久間「自分が書いている文章がどんなジャンルになるのか、実は自分でもよく理解できていないんです。現実と妄想の狭間、のような…。昔から、経験したことをそのまま言葉にするのは苦手だったんですが、妄想の中に事実を混ぜ込んでみると、不思議と素直な気持ちが表れてくるタイプで」木村「その感覚、すごくよく分かります。」佐久間「ほんとですか!?こういう感覚、初めて人と共有できたので嬉しいです。例えば、電車の中で足を踏まれたとするじゃないですか。その時の嫌悪感をそのまま書くことはしないで、その前後に一体何があったんだろうって思いを巡らせるようにして書いています」木村「一度引きのカメラで見る感じですね」佐久間「はい。あとは、思わず声に出して読みたくなるような心地よいリズム感や、文字を目で追ったときにどれだけ美しい連なりを作れるかなどを重視して書いています。…ただ、今少しだけスランプに陥っていて、イメージした景色を言葉でうまく描けないのが悩みです」処方した本は…『意識のリボン(綿矢りさ)』集英社出版/2020年2月初版刊行木村「いま、佐久間さんが描こうとしている文章の世界を聞いていて浮かんだのが、この作品集です。8つの短編が収録されているんですが、どれも完全創作というよりは、端々に綿矢さんご自身の姿がみえて、それこそ小説とエッセイのあわい(間)を読んでいるような楽しみがあります。そこにきて綿矢さんですから、繊細な女性の心の動きをとらえる観察眼と表現力は、それはそれは目覚ましいほどで」佐久間「現実と虚構が入り混じった文章って、私が知らないだけで、たくさんあったんですね」木村「それに綿矢さんは、太宰治を読んで小説家を目指したってエピソードもあるんですよ。そうそう! この本に収録されている「こたつのUFO」は、太宰の「千代女」を下敷きにした作品です」佐久間「「千代女」は、早くに小説家デビューした女の子が、最終的に何も書けなくなって自分の才能の枯れてしまったことを嘆く物語ですよね」木村「はい。それを綿矢さんは、30歳になった自分に置き換えて語り直しているんです。事実、綿矢さんご自身も、芥川賞を受賞して以降数年間、書いても書いても原稿がボツになり続けていた不遇の時代があったそうで…」佐久間「綿矢さんほどの方でも、書きあぐねる経験をされてきたんですね」木村「他にも、マリッジブルーというテーマを、当事者である妹の視点から描く「履歴のない女」と、姉側から見つめる「履歴のない妹」という連作は、ある物事をいちど引いてまなざすという佐久間さんの書き方の参考になるかもしれませんね」佐久間「聞けば聞くほど、今の私の道しるべになってくれそうな一冊です!」エピソードその2「切り口や言葉選びに悩んでしまう」木村「『VOGUE Girl +』でも連載を始められたと伺いました。そこではどんなことを?」佐久間「「本と花と。」というタイトルで、読者におすすめしたい一冊に、その本からインスピレーションを受けた花を添えて、セットで紹介していく連載です」木村「なんてロマンチックな!これも佐久間さん発案ですか?」佐久間「そうなんです。以前から、文章を読んでいると、「この人、百合みたい!」「この人は薔薇だ!」などと感じることがあって。編集部の方にプレゼンしました」木村「面白い感覚ですね。いつか私のエッセイにも、花を添えてほしい(笑)。…ちなみに、こっちの調子はどうですか?」佐久間「先日、3回目が公開させたところなのですが、実はこちらも想像していたよりも大変で(笑)。文章から花を連想するっていう独自の感覚を、独りよがりにならないようにどう表現したらいいのかと、切り口や言葉選びにはいつも悩んでしまいます」処方した本は…『植物たち(朝倉かすみ)』徳間書店出版/2019年3月初版刊行木村「この本は、人間の行動を植物の生態に見立てて描いた短編集です。各章の扉には植物名と、図鑑からの説明書きの引用が書かれてあるので、物語にも入り込みやすい作りになってるんですよ」佐久間「寄生して成長するコウモリラン、いつの間にやら大繁殖するホテイアオイ、暗くてじめじめしたところにいるほど生き生きするコケ…。取り上げている植物からも、どんな人間が描かれるのか想像を掻き立てられます!」木村「温かい話から、不気味でグロテスクな話までバラエティに富んでいるんですが、考えてみたら自然界で生きのびることって、綺麗事ではいかないことばかりですからね。狡猾さや残酷さといった、人間を直視するとどうしても目をそらしたくなってしまう部分を、植物に模すことで暴いていく筆致が、本当に見事だなぁと」佐久間「伺っていたら、この美しい装丁と挿絵の見え方も、また変わってきました。でも、目をそらしたくなる部分も書かなければというのは、本当にそうですよね。すごく難しいことですが…」木村「現実と妄想を混ぜ合わせたり、本と花をかけ合わせたり…。佐久間さんは今、書くことを通していろんなことを“見よう”としてるんだろうなぁと感じます。世界や、相手や、自分自身や、物事の本質や…。解像度が高くなるほどに、見たくないものや気づきたくなかったこととも向き合う必要が出てきて、それを書くのは楽しいばかりじゃいかないけれど、続ける価値があることですから。悩んだときには、こうして本にヒントをもらって、ぜひこれからも書き続けていってほしいです」エピソードその3「自分とは異なる価値観を持っている役を演じる時に、戸惑ってしまう」木村「9月に公開される映画『君は永遠にそいつらより若い』のトレーラーが先日公開されましたよね。原作は津村記久子さん。好きな作家さんなので、佐久間さんがどう演じられるのかすごく楽しみにしてるんです! “演じる” というお仕事に対する思いも、最後にお伺いさせてください。」佐久間「ちょっとだけ楽しくて、だいぶ、大変ですね…」木村「“だいぶ、大変” の内訳、ぜひ聞かせてください(笑)」佐久間「そうですね…。たとえば私には、教養が、…ないので」木村「え!むしろ匂い立つほどに感じ取っている私ですが(笑)」佐久間「いえ。ないんです。私には教養が。共感の幅が狭いんです。なので、自分とは異なる価値観を持っている役を演じるときや、自分の中にはない言葉がセリフとして書かれているときに、すごく戸惑ってしまうんです。表情や声色ひとつとっても、持て余してしまう」木村「なるほど。心の襞を多くするために、教養がほしい。という意味だったんですね」佐久間「はい。昔から自分の感覚はあまり信じていないんです。読書も、芝居のヒントを得るためにすることが多いです」木村「そういうときにはどんな作家さんを読みますか?」佐久間「今は1980年代の作家さんの作品を手に取ることが多いですね。向田邦子さんのエッセイとか。美しい言葉と鋭い視点に惹かれます」処方した本は…『だいちょうことばめぐり(朝吹真理子、花代)』河出書房新社出版/2021年1月初版刊行木村「現代の作家さんにも、うっとりとしてしまうほどに美しく、流麗な文章を綴る女性がいるのでぜひ佐久間さんに知っていただきたいです。『だいちょうことばめぐり』は、朝吹さんの最新エッセイ集なんですが、まずは手にとって、造本の美しさを隅々まで堪能してください!」佐久間「木村さんが棚から引き出した瞬間から、実は目を奪われていました。…すごく滑らかな手触りのカバー紙ですね。控えめな金の箔押しも、書体も、上品ですごく好みです」木村「ですよね!カバー紙を取ると美しい桜色が現れるんですが、まるで上生菓子みたいですよね」佐久間「本当に!折々で挿し込まれる写真も、言葉と通じ合ってるみたいに素敵です」木村「エッセイの中で、朝吹さんが花代さんの写真について書いている文章があるんですが…、その感覚が、私が彼女の作品を読むときに感じるそのものだったので、ちょっと朗読させてください。〈花代さんの写真は、みていると、自分のなかにこういう瞬間があったような気がしてくる。記憶を取り違えてしまいそうな瞬間ばかりがある。なにがうつっているのかわからなかったり、必ずしも幸福な光景だけがおさめられているわけではないのに、みいってしまう。人間のぼんやりとしたすがたと光だけがある。〉」佐久間「・・・ぐっと引き込まれるものがありました。それに、目で文字を追いかけても、耳で音を聞いても、すごく心地がいい」木村「こんな言語感覚で、家族のことやごはんのこと、移ろう季節のなかで感じた徒然などが綴られていくんです。彼女のまなざす景色や、そこに立ち上がる言葉というのは、佐久間さんの生活にもつながって、感覚を刺激して、心の襞を多くしてくれるんじゃないかなと思います。なにより本当に美しい本なので、佐久間さんのように美しい人に持っていてもらいたいなって」対談を終えて。対談後、今日の3冊をすべて購入してくれた佐久間さん。「おすすめの本をいっぱい教えていただいて、幸せな気持ちになりました。演技や執筆活動へと必ず役立てます!」と話してくれました。会話にも出てきた映画『君は永遠にそいつらより若い』は、9月17日(金)より全国で公開予定。赤髪の佐久間さん、必見です!『君は永遠にそいつらより若い』
2021年05月12日さまざまな業界で活躍する「働く女性」に、今のその人に寄り添う一冊を処方していくこちらの連載。今回のゲストはハナコでもお馴染みの竹内ももこさん。パン特集や学び特集など、ジャンルを超えて軽やかに行き来する彼女に、「好き」との関わり方やその原動力となっているものについてを伺いました。今回のゲストは、女優の竹内ももこさん。京都府の舞鶴市出身。特技は剣道(なんと、3段…!)で、趣味はパン屋さん巡り。学び特集(1178号)では袴姿での凛とした表情を披露したほか、パン特集(1182号)では複数ページに渡って出演するなど、Hanako常連の立ち位置を築きつつあります。話題は、竹内さんとHanakoとの馴れ初めについて。木村綾子(以下、木村)「はじめまして。Hanakoをめくっていると、いろんなページでももこさんをお見かけしますが、Hanakoへの出演は何がきっかけだったんですか?」竹内ももこさん(以下、竹内)「きっかけは2017年に出た『今、食べたいのはなつかしいパン。』っていう特集号でした。ピンポイントなテーマに熱量を注ぐ Hanako の姿勢に一目惚れしてしまって、「私、Hanakoに出たいです!」とマネージャーさんに伝えたら、編集部の方にお会いするチャンスを作っていただけたんです」木村「編集部への “売り込み” が実って、今に至るんですね。女優のお仕事を始めたきっかけもお聞きしたいです」竹内「21歳の時に事務所に入りました。自分に何ができるかはまだ全然分からなかったんですが、芸能のお仕事がしたいっていう一心で、えいっと飛び込んだ感じです」木村「モデルやお芝居などのジャンルを決めるより先に、まずは事務所に入る方って珍しいかもしれないですね。ちなみに、事務所へはどういう売り込み方を?」竹内「事務所の方にお会いする直前に、ちょうどテレビ番組に出る機会があったんです。街中でインタビューを受けて実家の母に会いに行くっていう内容で。その放送を、社長が偶然見てくれていたんです。「あれ?あなた、こないだテレビ出てましたよね!?」って(笑)」木村「すごい!絵に描いたような幸運の持ち主!(笑)その番組がももこさんの名刺代わりになったんですね」竹内「そうなんです。最初は、「帰省の新幹線代がトクした!」くらいの動機で受けた番組出演だったのですが、結果的に人生を左右するくらいの大きなターニングポイントになりましたね」木村「『Hanako』に出るきっかけと言い、事務所への入り方と言い、自分の“したい”に純粋無垢で、聞いていて気持ちがいいほどです(笑)」エピソードその1「東京は…好きだけど嫌いな街ですね」木村「京都から東京に出てきて3年ということですが、東京との相性はどうですか?」竹内「東京は…好きだけど嫌いな街ですね(笑)。実は最近、ちょっとだけお休みをいただいて実家に帰っていたんです。帰ったというか、逃げた、って言い方のほうがふさわしい感じの、後ろ向きな帰省だったんですが…」木村「実家に逃げ帰ったこと、私もあったな〜」竹内「え、木村さんも!?」木村「私は大学への進学を機に18歳で静岡から東京に出てきたんですが、上京してわりとすぐ、読者モデルとしてファッション誌に出させていただくようになったんです。当時、同じ雑誌に出ていた友だちは、お洋服やカメラ、音楽、映画…って、夢を掲げて突き進むように生活しているような子ばかりで。でも当時の私にはまだ、「これだ!」っていうものがなかったんです。そういうものを持っていないと、何者かにならないと、東京から弾き飛ばされてしまうような気がして、日々焦ってあれこれ手を付けるんだけど、空回りばっかりで…」竹内「その気持ち、すごく分かります!」木村「それで、24歳のときかな?突然ガソリンが切れてしまって。仕事も学校も全部投げ捨てて、逃げ帰りました(笑)」竹内「え、24歳って、私と同じ歳の時じゃないですか!木村さんはそこから、どうやって気持ちを立て直したんですか?」木村「「あー、なんもなくなっちゃった〜」って、1,2ヶ月は腑抜け状態でしたね。家族はそんな私に対してとくべつ何かを急かすこともなく、「いっそこのままずっとこっちに居たら?」みたいなことも言ってくれてたんですけど、このまま逃げ帰ったままなのも違うなって気持ちにだんだんなってきて。東京のことを嫌いなまま、東京にいた自分のことも嫌いなまま、この先を生きていくのもしんどいなぁ…と。あとね、全部投げ捨てて逃げてきてるから、とにかく暇なんですよ(笑)。そしたらその空っぽを、好きなことから埋め直してる自分に気づいたんです。それである日、「あ、この自分でもう一回東京をやり直してみよう!」と思い立ったんです」竹内「東京をやり直す!私、今まさにそれです。“東京やり直し元年”です(笑)」処方した本は…『東京百景(又吉直樹)』KADOKAWA出版/2020年4月初版刊行木村「これは、又吉直樹さんが18歳で上京してから約10年にわたる東京での生活と、その生活に付随した人や風景との思い出が綴られたエッセイ集です」竹内「“百景”ってことは、東京にまつわるエピソードが100描かれているんですか?」木村「そうなんです。綴られる多くは、貧しくアルバイトの面接にすら受からず、風呂なしアパートで暮らしながら、芸人という夢を叶えられるかもわからない焦燥の日々。たくさんの孤独と傷と寂しさを抱えて、自意識や欲望や怒りや嫉妬を持て余して、それでも、東京に生きることを諦められない姿が、100の景色に立ち上がって胸を突きます」竹内「「武蔵野の夕陽」「下北沢駅前の喧騒」「高田馬場の夜」…、地名にもとづいたエッセイもあれば、「ゴミ箱とゴミ箱の間」「東京のどこかの室外機」「自意識の捨て場所」「昔のノート」…、そこにどんな風景を見ていたんだろうと興味を惹かれるタイトルもあって面白いです」木村「又吉さんの“東京”を見つめるまなざしは、ももこさんがこれから東京で年を重ねていくうえでの心の支えになると思います。もしまた東京が苦しくなったときには、〈死にたくなるほど苦しい夜には、これは次に楽しいことがある時までのフリなのだと信じるようにしている。〉っていう言葉を杖言葉にしてほしいし、…あ!まさに“東京”を言い得ている文章もあるんですよ。〈東京は果てしなく残酷で時折楽しく稀に優しい。ただその気まぐれな優しさが途方も無く深いから嫌いになれない。〉」竹内「わー、まさにまさに!」木村「結局は人って、“何者か”になるのではなくて、自分自身になっていくしかないんだと思うんです。私は又吉さんと同年なので、同じ月日を東京に生きてきたことになりますが、その時間の中で彼は彼になり、私は私になっていったんだと読んでいて感じたんです。ももこさんも、焦らず丁寧に、自分という輪郭を手に入れていってくださいね」エピソードその2「おいしいというより、幸せだなって」木村「ももこさんのご実家はフレンチレストランを経営されているとお伺いしましたが、帰省中はお店のお手伝いもされていたんですか」竹内「お手伝いもしてましたし、そうじゃないときもずっとお店にいました。いつの間にかお店の中に“私の定位置”みたいな席ができて、そこにいると「余ったけど食べるか?」って、父がお料理を小皿に入れて出してくれたんです。気づいたらミニ・フルコースみたいになっていくサマが可笑しくて」木村「素敵なお父様!きっと居場所を作ってくれていたんでしょうね」竹内「毎回泣きそうになりながら食べてましたね。おいしいというより、幸せだなって思いながら。子どもの頃は、ご飯を食べながらその日あったことを家族に全部話すのが習慣になっていたので、自分にとって大切な記憶を取り戻していくような感覚でした」木村「冒頭では、パンが好きでHanakoとのご縁に結ばれた話もしてくれましたけど、ももこさんにとって「食」という存在は人生の要になっているような気がします。人とのコミュニケーションであり、記憶を呼び覚ますスイッチであり、未来を切り開く要素でもある」処方した本は…『cook(坂口恭平)』晶文社出版/2018年12月初版刊行木村「坂口恭平さんのことは何と紹介するのがいいんだろう…。建築家であり、ミュージシャンであり、小説家であり、画家であり…。肩書きにとらわれない表現活動をされている方なんですが、躁鬱病を長く患っていることも公言されていて、同じ病に苦しむ方を救うたえの活動にも勢力的です。躁鬱をテーマにした著作も数多く出版されているんですが、この本は、“料理”というおこないを通して自分の心と向き合っていくさまが綴られた一冊です」竹内「治療のための料理ってことですね」木村「はい。30日間に作った料理日記が、写真+言葉で綴られていくんですが、ページをめくっていくと、最初は土鍋で炊いたご飯だけだったものが、どんどん彩り豊かになっていくのが分かります。目玉焼きにベーコンを添えてみようと“思えた”喜びや、トマトの切り方や器を変えるだけで盛り付けが見違えることに “気づけた”幸福…。ここにあるのは単なる記録ではなくて、それを食べたことでその日を乗り越えたっていう証なんです」竹内「実は料理に関しては、私も似たような経験がありまして。実家に帰る前に一度、深夜に号泣しながらお菓子を作ったことがあるんです。甘いものでも食べたら元気になるかなと思って少し無理して作っていたのですが、材料を混ぜてオーブンに入れて焼き上がる頃には、もうなんだか気持ちもラクになっていて」木村「泣きながら作ったお菓子! ちょっと脱線しちゃいますが、いま、坂元裕二さん脚本のドラマ『カルテット』のセリフを思い出しました。“泣きながらご飯食べたことある人は、生きていけます。”っていう」竹内「またしても名言が!」木村「(笑)。話を戻しますが、苦しみもがきながらも、それでも食べ続けてきた人の証にふれることは、何よりの希望になると思うんです。少し大げさかもしれないですけど、食べるって、明日を生きようとする行為のことでもありますから」エピソードその3「いずれ一緒にできたら面白いだろうな」竹内「突然なんですけど、今、働いてみたいなって思っているお菓子屋さんがあるんです」木村「へぇ!どんなお店なんですか?」竹内「どのスタッフさんも、お客さん一人ひとりが笑顔になるような接客を必ずしてくれるんですよ。嬉しい気持ちで食べるお菓子って、よりおいしくなるなって気付きが毎回あって」木村「素敵ですね。食をコミュニケーションの場と捉えるももこさんにはぴったりな気がします。ももこさんって一見、何事にも軽やかに飛び込んでいってるように見えるけど、すごく芯がありますよね。そういう礎がしっかりしている人の言葉は、きっとお店の人にも届くと思います。ところでももこさんは、将来、何か挑戦したい夢とかはあるんですか?」竹内「兄も飲食をやっているんですけど、ぼんやりとですが、いずれ一緒にお店をできたら面白いだろうなって思いはありますね」木村「本当にご家族がお好きなんですね。今日一日お話を聞いていて、その未来に行き着くことはすごく自然な流れだと感じました」処方した本は…『長いお別れ(中島京子)』文藝春秋出版/2015年5月初版刊行木村「この小説は、認知症に罹患した父の晩年をテーマにした家族の物語です。10年ほど前から認知症を患っている夫、それを支える妻、3人の娘、そして孫…。“連作短編集”といって、一連の物語を、章ごとに異なる人物の視点からみつめているので、ももこさんのように家族ひとりひとりとの距離感が近い人なら、それぞれの立場に立って“家族”をまなざすことができると思います」竹内「私、親とか家族って自分の中で絶対的な存在として捉えているところがあって。ずっと元気だし、関係性がゆらいだり、誰かが欠けてしまうことなんてありえないって思ってしまう幼さが、自分の中にまだあると思います。父の晩年を描く物語かぁ…。向き合えるかなぁ」木村「“人生の終焉”を描いているので確かに軽やかに読めるものではないし、読んでいてつらい場面もあります。でも、父の突拍子もない言動に振り回される家族の姿や、戸惑い、苦労など現実的な部分はしっかり描かれつつも、心和むようなコミカルなシーンやユーモアも散りばめられている。だから読後に残るのは、家族を思う温かさなんです」竹内「辛い状況なのになぜか笑っちゃうって、家族あるあるだったりしますね!」木村「もちろん、家族の誰かが“その時”を迎えることを想像するのは、ももこさんにはまだ早いとは思ってます。お兄さんとのお店もいつか実現させてほしいし…。でも、こういう本が存在していることだけでも覚えておくと、家族という関係性の変化も慈しむことができるんじゃないかなと思って、未来の処方箋としてオススメさせていただきました」竹内「未来の処方箋!この本が、いつかの私の救いになってくれると思うと、“東京やり直し元年”の先に続く毎日も明るく過ごせる気がしてきました!」木村「ふふふ。“東京やり直し元年”って言葉、ももこさんすっかり気に入っちゃいましたね(笑)」対談を終えて。対談後、『cook』を購入してくれた竹内さん。「木村さんからの言葉や、紹介してもらった本はどれも私の心にピッタリで、まさに “処方” そのものでした。ふとした時に立ち止まって、自分だけのために開く本があることはとても心強いです!」と話してくれました。パン好きの友人と一緒に作ったという写真集『パンとキミ ももぱん記録#1 #2 』も絶賛発売中。おいしそうにほおばる姿が見どころです!パンとキミ ももぱん記録
2021年04月14日さまざまな業界で活躍する「働く女性」に、今のその人に寄り添う一冊を処方していくこちらの連載。記念すべき20回目のゲストは女優の入山法子さん。15年来の付き合いとなる彼女に、仕事からプライベート、人生の転機となった出来事を深掘りさせていただきました。今回のゲストは、女優の入山法子さん。高校卒業後に『InRed』や『SPRiNG』などでファッションモデルとして活躍。その後、女優の道へ。料理と音楽、洋服、ベランダ菜園、猫を生活の癒やしとしながらも、趣味らしい趣味がないことが最近の悩みなのだとか。私も頑張らなきゃ!って奮い立たされていた。木村綾子(以下、木村)「久しぶり!ノリちゃんとはもう15年くらいの仲になるけど、こうして会うのはすごく久しぶりな気がするね。前はあんなに頻繁に会ってたのに」入山法子(以下、入山)「うん、月1ペースとかで会ってたんじゃないかな。仲良しグループのなかに、おもてなし上手な子がいて、誰かの誕生日やお祝い事があると、いつも家に招いてくれてね」木村「総勢10人以上いたから、毎月誰かしらをお祝いしてたっていう(笑)。でも考えてみれば、いつも大勢で集まっていたから、こうして二人でじっくり話すのは初めてな気がするの。なので今日は、いまさらだけどノリちゃんがどんなキャリアを歩んできたのかを教えてほしいです!」入山「ふふふ。改まると気恥ずかしいね…。えっとね、高校を卒業した頃から、『InRed』や『SPRiNG』などの、宝島社系のファッション誌のモデルとしてお仕事をさせてもらうようになったのがこの世界に入るきっかけだったの。そこから徐々に女優のお仕事もいただけるようになって、大学卒業をきっかけに、本格的に女優の道に進み始めたという感じです」木村「私たちが出会ったのって、ノリちゃんがモデルを始めたての頃だったんだね。ってことは、入山法子の飛躍をずーっと、アリーナ席で見させてもらってきたってことか(笑)。身近で見てきた者としても、着々とキャリアを重ねていったように思えるんだけど、本人的にはどう?」入山「全然!むしろずっとジタバタしている感じだよ」木村「え、そうなの!?私のなかで印象的なエピソードを挙げるとね、ノリちゃん、大学卒業後に語学留学のためにシドニーに行ったでしょ?当時のノリちゃんっていえば、雑誌はもちろん、CMやドラマでもよく見るようになってて、引く手数多だったと思うの。乗りに乗ってる仕事をすべてお休みして単身海外に行くって、そう簡単にできることじゃない。「いま目の前のこと」だけじゃなくて、「先を見据えた今」を見つめられる子なんだなぁって感心していたんだよね」入山「実は今だから言えるけど、あの留学はむしろ迷走の果ての行動だったの…。当時の私ってコンプレックスの塊で、「何かしなくちゃ!」って焦りの方が大きかったんだ。っていうのも、仲良しグループの子たちみんな、自分の名前と得意分野でお仕事をしていたじゃない?職種はばらばらだけど、好きなことを仕事にしてて、忙しそうなのにすごくキラキラして見えて…。そういう中にいたから、私も頑張らなきゃ!私にはこれがあるってものを見つけなきゃ!って、いつも奮い立たされていたんだ」エピソードその1「自分なりにいっぱい悩んで…」木村「最近は女優業に専念してるってことをさっき話してくれたけど、お芝居一本でやっていこうと思ったきっかけって、何かあったの?」入山「やっぱり『きみはペット』で主演を務めさせてもらったのが大きかったかな」木村「大抜擢をみんなでお祝いしたよね! そこでお芝居の楽しさに目覚めたとか?」入山「じゃなくて…。ある日の現場で、監督から突然背中を叩かれて、「お前、いまのままだとみんなから嫌われるぞ」って言われてしまったことがあって」木村「こわー!」入山「私も、「それは嫌ー!」って食い下がったんだけど、監督がくれたのはその一言きりで、「なぜか」も「どうしたらいいのか」も教えてくれなかったの。その答えを探しながら、お芝居を続けてます」木村「自分ごとに置き換えたら絶対味わいたくないホラーだけど、その言葉で奮い立つところがノリちゃんらしいなぁ。…監督はなんでそんな風に思ったんだろう」入山「最近思うのは、もっとがむしゃらになれってことだったのかなぁって」木村「ノリちゃん真面目だから、「入山法子」っていう枠を自分で作って、そこからはみ出さないような、人の期待に応えられるような演技をしなくちゃって思ってたのかな?」入山「それは結構あったかもしれない。求められる像を一生懸命こなすことが良いことだと思い込んでいたんだけど、この頃から徐々に仕事の向き合い方が変わっていって。自分のことを怖がらずに見せられるようにもなったんだ。芝居が好きだって気持ちもどんどんと増していったし、少なくともいまではもう、自分のイメージを自分で作ってそこに囚われるようなことはなくなったかな」木村「「嫌われるぞ」という一言が、ノリちゃんの人生のターニングポイントになったんだね」処方した本は…『女の節目は両A面(岡田育)』TAC出版出版/2020年11月初版刊行木村「『女の節目は両A面』は、人生におけるターニングポイントをテーマにしたエッセイ集なんだけど、ちょっと手にとって中を見てみて」入山「…ん?縦書きの文章が、途中から横書きになってる。どういうこと?」木村「実はこの本、タイトルにもあるように“両A面”のミラー構造になってるの。表紙から読むと、これから起こるであろう節目に対する考えが綴られていて、裏表紙から読むと、いままで経験してきた節目を回想できるという仕掛け」入山「ホントだ。“これから”パートには、「まだ見ぬ、マイホーム」「まだ見ぬ、出産」「まだ見ぬ、介護」「まだ見ぬ、閉経」「まだ見ぬ、私の葬式」…。“いままで”パートには、「初めての、恋」「初めての、犯罪」「初めての、肉体関係」「初めての、泥酔」…って。体験談には具体的な年齢も記されててリアルでドキドキしちゃうけど、自分の経験と照らし合わせながらも読めるね」木村「そうなの!例えば今回の私たちみたいに、長く親しくしてる友だちがいても、それぞれの節目や、その節目とどう向き合ってきたかをじっくり話す機会って、実は少なかったりするじゃない?あるいは人によっては、渦中にいるときは、大事な友だちに心配かけたくないという思いから、悩みを打ち明けられず一人で抱えてしまうタイプもいるだろうし…。そういう人に寄り添ってくれる一冊でもあると思うんだ」エピソードその2「改めて、自分と向き合ってみたい」木村「ねね、私ノリちゃんのアメブロが好きだったんだけどね。日々の徒然や仕事のこと、そこから得た気づきなんかが肩肘張らない自然体の文章で綴られていて。いまはインスタでノリちゃんの生活に触れられるけど、インスタの作り上、最初に目に入ってくるのが写真だから、“写真に添えられた文章”って読み方をしてしまうんだよね。ブログはそうじゃなくて、言葉と写真とがフラットに並んであって、なんか良かったんだよなぁ」入山「わー、ありがとう。綾子ちゃんが読んでくれてたの知らなかったから恥ずかしいけど、でも嬉しいなぁ」木村「あとね、言葉でもっとノリちゃんのことを知りたい!とも思っていたんだけど、文章で自分を表現するみたいなことには興味はないの?」入山「それがね!実は一度、本を書いてみませんか?ってオファーを頂いたことがあったの。2年間くらい、書いては消してを繰り返している間に、時間切れになっちゃったんだけど…」木村「そうだったんだ!どんなことを書いてたの?」入山「エッセイで、「入山法子」を惜しみなく書いて欲しいってことを言っていただいて。小さい頃から好きだだったこととか、仕事に対しての思い、生活、恋、家族…とにかくなんでも言葉にしてみる作業を続けていました」木村「文章を通して自分と向き合ってみて、どうだった?」入山「めちゃくちゃ難しかった!私は自分を表現する言葉をまだ全然持ってないんだってことに唖然としてしまったんだけど、嫌いじゃないなとも思ったの。でね、時々思うの。今の私だったら、等身大の言葉を使って書けるんじゃないかって」木村「えーいいじゃない!書こうよエッセイ。出そうよ本!!私、マガジンハウスに企画書書いてみようかな(笑)」処方した本は…『蝶の粉(浜島直子)』mille books出版/2020年10月初版刊行木村「ノリちゃんがエッセイを書くならここを目指してみては?とひらめいた一冊がコレ。我ら思春期時代の憧れモデル、“ハマジ”こと浜島直子さん初のエッセイ集です!ちなみに『mc Sister』とかって読んでた!?」入山「読んでた読んでた!私もハマジさん好きだったなぁ。飾らないキャラクターで、モデルさんなのにどこか身近な存在に思えて。この表紙の女性も、どことなくハマジさんっぽく見えるね」木村「この黒のタートルニットのエピソードもエッセイに綴られてるんだよ。ハマジさんがまだ札幌の田舎に住んでた高校2年生のある日、憧れていたドゥファミリィのニットを買いに一人でデパートに行くっていうエピソード」入山「ドゥファミリィ懐かしい!そんな宝物みたいなエピソードに「初恋の手ざわり」ってタイトルをつけるのも、素敵だなぁ」木村「ページをめくっていくと分かるように、モデルさんの本=スタイルブックではなくて、活字のみの骨太のエッセイ集なんだよね。自分という実体ありきで仕事してきた人が、活字だけで自分を伝えるって、相当な覚悟が要ったと思うんだけど、読んでみるとね、文章から読み取れる生き方の軸だけじゃなくて、言葉の選び方や表現ひとつひとつに彼女の輪郭が立ち上がってくる素晴らしい内容だったの」入山「それってすごいことだよね!先を行く先輩がいつまでもカッコいいのは、生きる指針になるなぁ」木村「ナチュラルだけど、好き嫌いはしっかり言う。お砂糖とピリリと効いたスパイス。自然体になったノリちゃんが今、目指すべきはここじゃないかなって思ったんだ」エピソードその3「良き理解者としてやっていけると思う」入山「綾子ちゃんには個別にご報告もしてたんだけど、私、昨年、離婚をしまして…」木村「うん。伝えてくれてありがとうね。あの時久しぶりに、仲良しグループのLINEで長くやりとりしたよね。ノリちゃんの人生の転機を受け取って、それぞれどう思ったかとか、会ってない期間に自分にはこういうことがあって、こういうことを考えていたよとか…。ノリちゃんの決断をきっかけに、みんな改めて自分の立っている場所を見つめるきっかけを得たような気がしたんだ」入山「みんながくれた言葉、あの後も何度も読み返したなぁ。離婚って言葉にするとネガティブに響いてしまうかもしれないけど、お互いがお互いの生き方や大切なものを尊重した結果の選択だったんだよね。相手をこの先もずっと尊敬できるように、自分の人生を自分で好きだと思い続けられるようにって」木村「恋人同士から結婚、離婚という過程を知っている者として感じたのは、社会の制度で名付けられたもの以上の家族的関係を、二人はすでに築いているなぁってことだったの。その特別な関係性は、結婚という契約が解消されたからといって、ほどけてしまうものじゃないだろうし。だから勝手に、これからの二人と、それぞれの人生を期待してるんだ」入山「私もね、この先どうしよう…って不安よりも、この変化が私をどう変えていくんだろうっていうワクワクのほうが、実は大きいんだ」処方した本は…『私の家(青山七海)』集英社出版/2019年10月初版刊行木村「ちょうど「家族」っていうワードが出てきたから、私も思い切って話してみようと思うんだけど。家族と暮らした年月より東京暮らしの方が長くなった、30代後半くらいかな。「家族」とか「家」って、いったい何なんだろうってことをずっと考えていたの」入山「家族、家、かぁ。人それぞれに、イメージするものが違いそうだよね」木村「私はまだ独身だから、「家族」といえば生まれたときすでにあったものになるんだろうけど、彼ら以上に長い時間や多くを分かち合ってきた人たちを「家族」と感じることもあるの。さらに「家」となると、それはもはや故郷の家ではなく、一人暮らしの家がパっと浮かぶんだよね。だからといって仮住まいだから、いつまで経っても根無し草みたいな気持ちもあって…」入山「わぁ、わかるなぁ。一般的な言葉の意味と、自分にとってしっくりする意味合いがズレていく感覚」木村「そんなときに出会ったのがこの小説だったの。恋人と別れて住む家を失い実家に帰ってきた娘を軸に、年の離れたシングルマザーに娘以上に親身になる母や、幼い頃に住んでた家に似た家に、家族の目を盗んで通い続ける父、何年も音信不通の伯父、孤独を愛して生涯独身を貫いているのに、他者から生活を乱される大叔母など、三世代からなる一族一人一人と「家」との関わりを、それぞれの視点からすくい上げて紡がれていくのね」入山「へぇ、面白そう!ひとくくりに「家族」とされていても、みんなそれぞれ違う価値基準で生きてるところがリアルだね」木村「そうなの。そのすれ違う様に、どこかホッとしたんだよね。家族だからって分かり合えるとも分かち合えるとも限らないし、それを悲観する必要もないんだって。家にしても、その場所があることで安心する人がいたり、逆にそこから逃げることで自由になれる人がいたり、幻影を追い求める人がいたりと様々で面白いなって。一本の木に成るりんごみたいに、形も色も味も異なってていい。ほんとは柿に生まれたかったのになぁとか思ったっていいんだって(笑)」入山「柿になりたかったりんご(笑)。でも、うん。家族や家に対しても、「こうでなくちゃ」とか決め込まないほうが自由に生きられるんだろうね」木村「その考え方って、さっきノリちゃんが話してくれた、仕事に対する向き合い方にも通じるものがあるね!」入山「ほんとうだ!改めて「家族」について考えている私にとって、いま必要な本に出合えたような気がしてきたよ。綾子ちゃんありがとう!」対談を終えて。対談後、『私の家』と『蝶の粉』を購入してくれた入山さん。 「しばらく会えていなかった時間の空白を、本が埋めてくれたような気がして満たされました」と話してくれました。私も大好きな入山さんのInstagramアカウントはこちらから。愛猫マタがとにかく可愛いので、みんなで愛しましょう。Instagram(iriyamanoriko_official)
2021年03月10日