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自治医科大学(自治医科大)は11月11日、小児神経難病の1つである芳香族Lアミノ酸脱炭酸酵素(AADC)欠損症患者2名に対し、遺伝子治療を行い、症状の改善が確認されたと発表した。同成果は同大学小児科学の山形崇倫 教授の研究グループによるもの。AADCは、重要な神経伝達物質であるドパミンやセロトニンの合成に必須な酵素。ドパミンは運動機能を調節し、欠乏すると体をうまく動かすことができなくなる。また、セロトニンは睡眠、食欲、体温などの体のリズムや感情などの調節に関わっているとされる。AADC欠損症は、生まれつきAADC遺伝子の変異により、AADCが働かなくなる疾患で、世界中で100例程度、国内では6例しか診断されていない希少疾病だ。典型例では生後1カ月以内に発症し、眼球が上転する発作や前進を硬直させる発作がみられる。また、自発的な運動は少なく、首もすわらず、ほとんどの患者は生涯寝たきりの生活を送る。今回の治療が行われたのは15歳男子と12歳女子の兄妹で、治療前は手指をわずかに動かせる程度だった。また、眼球を上転させる発作からはじまる全身の強直発作がほぼ毎日、数時間みられていた。治療は脳にヒトAADC遺伝子を組み込んだベクターを注入するというもので、兄へは6月26日に、妹へは7月27日に実施された。その結果、2名とも全身の発作がなくなったほか、治療1カ月後に兄は腕を挙げ、脚の曲げ伸ばしができるようにった。一方、妹は首がすわり、寝返りなどが可能となるなどの効果がみられ、現在では手を伸ばしてものをつかもうとするようになった。また、歩行器を用いながら足を使って前に進もうとする動きもみられるという。今回の成果について研究グループは、AADC欠損症の治療が可能になっただけでなく、多くの難治性小児神経疾患に対する遺伝子治療法開発への第一歩を踏み出すものであるとしている。
2015年11月12日今日、寿命に関する研究が熱心に行われていますが、10年にわたる綿密な研究を経て、アメリカの科学者たちはある大発見をしました。それは、老化に関係のある遺伝子が取り除かれると、細胞の寿命は著しく延びるというもの。今回は、そんな老化防止を期待できる新たな遺伝子に迫ります。■寿命が60%も延びる「LOS1」遺伝子細胞の研究をしている研究機関ザ・バック・インスティテュート・フォー エイジ・リサーチとワシントン大学の共同研究によって明らかにされたのは、ある遺伝子を取り除くだけで寿命が60%も延びるという新事実。内容をまとめた論文は、10月に、セル・メタボリズムという学術雑誌で発表されました。調査は顕微鏡を用いて進められ、回虫も含む、約4,700の酵母細胞から特定の遺伝子を1つずつ取り除いていき、その結果もたらされる細胞への影響を分析していきました。親細胞が分裂を停止する前にどれだけの子細胞が生成されるかが成功の指標となり、238種類の細胞が寿命の延長に関係していることが判明。そのなかでも注目されたのが、寿命を60%延ばす「LOS1」という遺伝子です。論文ではこの研究結果がヒトにも適応できることが強調されています。■カロリー制限と同様の老化防止効果有この論文のおもな著者は、バック・インスティテュートのCEOであるブライアン・ケネディ氏。ケネディ氏はこの論文について、「ゲノムの相互関係を調べ 、加齢が体に与える影響の全体像を整理し、生物の老化に影響する細胞の相互作用のフレームワークを構築しました」と述べています。カロリー制限は寿命を延ばすことが知られていますが、DNAへのダメージも同様の効果があり、「LOS1」の除去は老化防止に大いに役立つとも語っています。*高度な研究技術と、大学在学中の研究生を巻き込んだ長期にわたる研究は、新たな療法を模索する同研究チームにいわせれば、老化を促すすべての遺伝子経路間の関係をマッピングするためのより大きなプロセスの一部に過ぎないそうです。発見された遺伝子のうち、端数は哺乳類も保有しているものであり、理論上では、健康である期間という意味での寿命を延ばすことは可能だと語るブライアン氏。これを実現させるために、今後も研究を進めていく予定だそうです寿命が60%も伸びたら素晴らしいですよね。老化という概念自体が変わっている時代が、すぐそこまで来ているのかもしれません。(文/スケルトンワークス)【参考】※Key to longevity? Blocking over 200 genes boosts lifespan by 60%, study reveals-RT
2015年11月08日熊本大学は11月2日、皮膚がんの一種である血管肉腫のがん細胞では、本来は別々であるはずの遺伝子が融合していて、その融合遺伝子ががんの発生に関わっていることを発見したと発表した。同成果は熊本大学生命科学研究部・皮膚病態治療再建学分野の神人正寿 准教授らの研究グループと、北里大学の共同研究によるもので、11月1日に科学誌「Cancer Research」に掲載された。血管肉腫は血管やリンパ管の細胞から発生し、皮膚上では年配の人の頭部にできることが多い。発見されづらく、リンパ節や内蔵に転移していってしまうが、放射線療法や化学療法などの治療が効きづらいため、新しい診断法と治療法の開発が必要とされている。がんの主な原因としてがん遺伝子の変異があるが、今回の研究では、血管肉腫のがん細胞では通常の遺伝子変異とは異なり、NUP160とSLC43A3という本来とは別々の遺伝子が異常に融合してしまっていることを発見。この「NUP160-SLC43A3融合遺伝子」は染色体の一部が切り取られ、別の染色体にくっついた結果2つの遺伝子が融合して作られると考えられており、融合遺伝子が陰性の患者と比べて、がんの進行が早い可能性があるという。また、NUP160-SLC43A3融合遺伝子をマウスに注射したところ、がん化したため、がんの発生との確認が確認されたほか、NUP160-SLC43A3融合遺伝子を血管肉腫の細胞から除去すると血管肉腫の細胞の数が減少したため、治療につながる可能性も確認された。融合遺伝子はこれまで白血病や悪性リンパ腫などのがんでも発見されており、融合遺伝子を検出することで高精度・高感度の診断が可能となる。肺がんの一部ではすでに遺伝子検査が保険適応となっており、融合遺伝子の働きを阻害する薬剤が高い治療効果を発揮していることから、今回の血管肉腫における融合遺伝子の発見は、皮膚がんの原因の解明だけでなく、簡単な診断や特効薬の開発にもつながることが期待される。
2015年11月02日私たち人間の体は60兆個の細胞からできていて、一つ一つの細胞には30億文字(広辞苑400冊分)の遺伝子情報(ゲノムデータ)が収まっている。いわば、私たちの身体や心を形作る設計図のようなものだ。今いま、この遺伝子情報を読み取ることで、体の特徴や、将来にわたっての体質、病気の傾向やリスクを解析し、健康管理や病気の予防、生活習慣の改善に役立たせる一般消費者向けの遺伝子検査サービスが続々と登場している。自分の身体のことを、遺伝子的角度から眺めることができる時代になったのだ。株式会社DeNAライフサイエンスの遺伝子検査サービス「MYCODE(マイコード)」は、自宅でできる簡単な検査キットで唾液を採取、郵送するだけで、がんや生活習慣病などの病気発症リスクや体質の遺伝的傾向を知ることができる。検査結果はパソコン上のマイページで確認でき、検査結果の内容に関連した病気の予防に役立つ専門家のアドバイスも確認できる。オプションメニューによっては、管理栄養士によるダイエットに特化したアドバイスやTV電話による本格的な指導を受けることなども可能だ。最近、芸能人のがんによる訃報が相次いでいたり、ハリウッドスターのアンジェリーナ・ジョリーが乳がん発症前から手術で乳房切除したというエピソードがニュースになるなど、がんにまつわる話題が多い。がん予防や定期検診への意識が高まっている人も多いが、巷ではさまざまな健康法や予防法の情報であふれかえっている。自分の体質やなりやすい病気について分からないうちは、「がんになりにくい、予防になる」という情報だけで、やみくもにそれらを実践している人も少なくない。そんなとき、「MYCODE」の「がんパック」が役に立つ。自分がどんながんになりやすいのかという遺伝的傾向を知ることにより、より的確な健康法、予防法を選ぶことができるはずだ。「MYCODE」の「がんパック」は、38種類ものがんを対象とした新メニューで、8月27日より提供がスタートした。価格は、15,984円(税込)。筆者も実際にこの検査を体験してみたのだが、自分では思いもよらなかったがんの発症リスクが日本人の平均より2.6倍も高いことが分かったり、逆に平均よりもリスクが低いがんがあることも分かった。もちろん、リスクが示す数値は遺伝子的傾向のみなので、環境要因や生活習慣等の他の要因によっても発症リスクは左右され得るため、数値が高いから必ず発症する、低いから必ず発症しないということではないのだが、生涯発症リスクを具体的なパーセンテージとして数値で目にするインパクトは強い。遺伝子傾向を知ることは、自分を知ることへの第一歩。生まれつき持った体のことを知ることにより、自分に必要なもの、必要でないものが選択しやすくなることは確かだ。検査結果を知って、過剰に心配する必要はないが、毎日の生活の中で、発症リスクの高い疾病については、おのずと意識を向けるようになるかもしれない。傾向を知ることではじめて対策を打つこともできるはずだ。あなたも新時代の健康管理、病気の予防に、遺伝子検査を役立ててみてはいかがだろうか。(text:Miwa Ogata)
2015年10月22日新潟大学はこのほど、国際宇宙ステーション(ISS)の「きぼう」日本実験棟で2カ月間飼育したメダカの遺伝子を解析した結果、地上のメダカと比べて発現が大きく変化する遺伝子が複数見つかったと発表した。同研究成果は同大学大学院医歯学総合研究科の寺井崇二 教授らの共同研究グループによるもので、10月1日に米科学誌「PLOS ONE」に掲載された。今回の研究では、2012年に実施された宇宙飼育実験で用いられたメダカの6種類の臓器(脳、眼、肝臓、腸、精巣、卵巣)の遺伝子を解析した。その結果、宇宙飼育下では成熟までの期間、生殖行動や繁殖には大きな影響は見られなかったが、腸と精巣・卵巣では遺伝子の発現が大きく変化していた。一方、眼や脳では遺伝子の働き方の変化が少ないことがわかったほか、宇宙飼育により多くの臓器に共通して発現が変化する遺伝子が10個発見された。この中にはヒトにおいて免疫や酸化ストレスに関わる遺伝子も含まれていることから、メダカとヒトが宇宙環境に適応する際のストレス応答の共通性を示唆する結果となった。今後、宇宙で生まれたメダカを用いた遺伝子解析研究や、それらが地上に帰還後にその子孫へ何らかの遺伝的影響が生じるのかを検証する実験も計画されており、こうした実験を通じて宇宙環境が生物にどのような生理的ストレスを与え、生物の体がどう反応するのかを解明することで、宇宙飛行士が長期間にわたって健康に宇宙滞在できる技術の実現につながると考えられている。
2015年10月15日東京医科歯科大学はこのほど、運動中に発生する致死的不整脈に関係する新たな遺伝子を同定したと発表した。同成果は東京医科歯科大学難治疾患研究所生体情報薬理学分野の古川哲史 教授、小泉章子氏と保健衛生学研究科生命機能情報解析学分野の笹野哲郎准教授の研究グループらによるもので、10月2日付け(現地時間)の国際科学誌「European Heart Journal」オンライン版に掲載された。マラソンなどの運動中では、約1万人に1人の頻度で突然死が発生し、肥大型心筋症など遺伝性疾患の関与が知られている。しかし、心臓に一見異常が無い人でも運動時の突然死は同程度の頻度でみられ、その原因はほとんどわかっていない。心臓には静脈から血液を受け取る心房と動脈に血液を送り出す心室があり、致死的不整脈は心室で発生する。心房では下方に位置する心室に血液を送るため電気信号が上から下に伝わり、心室は上方にある大動脈・肺動脈に血液を送り出すために電気信号が下から上に伝わる。この電気信号伝達の逆転は、心室に特異的に存在するHis-Purkinje系という細胞集団によって可能となっている。His-Purkinje系は進化の過程で哺乳類になってから初めて出現したシステムで、心機能強化に寄与することが知られている。今回の研究では、His-Purkinje系に特異的に発現し、電気信号の伝達に関与するIRX3という遺伝子と致死的不整脈の関係を検討した。その結果、IRX3の遺伝子異常がマウス・ヒトの両方で一見正常な心臓でみられる致死的不整脈に関与していることがわかった。また、致死的不整脈は運動などによって交感神経の緊張が高まったストレス下で生じることも判明した。同研究グループは、平常時は健常な心臓で運動・ストレスに関連して起こる致死的不整脈に関与する遺伝子としてIRX3を同定できたことで、健常人における運動中の突然死の原因解明に貢献し、その発生に関する予測・予防法の開発が期待できるとしている。
2015年10月05日きっかけは6月、弊誌マーケティングチャンネルにて掲載する事例記事として、消費者向け遺伝子検査サービス「MYCODE」のWebサイトについて取材させてもらったことに遡る。筆者は以前にも、同サービス開始を発表する記者会見に参加し、DNAの解析を行うことを目的に東京大学医科学研究所内に設けられた「MYCODE専用の検査ラボ」を見学。遺伝子検査への興味は高まったものの、なにかしらの病気の発症リスクが高いことが分かった場合、その情報と向き合えるかという不安を感じ、これまで手を出せずにいた。同サービスは、2014年8月の開始当初、すべての検査項目を網羅した「オールインワン280+(現ヘルスケア)」と、がん・生活習慣病・体質から選定された100項目の受検が可能な「ヘルスケア100+(現在は提供終了)」、肥満・肌質・髪質など体質に関する35項目のみの「カラダ30+」という3つのメニューを設けていたが、2015年2月、これらメニューの名称変更や「カラダ30+」の提供を終了したほか、遺伝子で自分の祖先のルーツを知ることができるメニュー「ディスカバリー」を追加した。ちなみに、2015年8月にはがんに特化した「がんパック」がメニューに追加されるなど、サービスの拡充が続けられている。前置きが長くなったが、筆者は6月の取材をきっかけに「ディスカバリー」の存在を知り、「祖先の特徴を知れるなんて面白そうだし、このプランなら気軽にできる」と思い利用することにしたのである。○筆者の祖先は、北海を制した 流氷の民!?「ディスカバリー」では、身長や体重、目の色、毛の太さなど自分の体質の遺伝的な傾向のほか、人類発祥の地から日本に至るまで自分の祖先がどのように移動したかという「祖先のルーツ」を知ることができる。(通常価格は9,800円(税別)で、申込みから検査結果の開示まで、おおよそ1カ月ほどで完了する。サービスの利用フローは「こちら」を参考にされたい。)祖先のルーツは、ハプログループ(ミトコンドリアハプログループ)という、人間の細胞内にあるミトコンドリアと呼ばれる小器官のDNAの多型を用いて遺伝的に分類されるグループに基づいて明らかにされる。このミトコンドリアが、祖母から母、母から自分と母系を伝わって受け継がれるため、そのDNAを調べることにより母系の系譜を辿ることができるというわけだ。日本人の多くは、祖先の系統ごとに大きく10タイプのハプログループに分けられるそうで、どのグループかにより自身の祖先が、約20万年前のアフリカから「どの時代に、どの土地を経由して日本にやってきたのか」が異なってくる。さて、待ちに待った検査結果が届きマイページにアクセスすると、「原田 綾子さんの結果サマリ」という欄に「ハプログループ : N9北海を制した『流氷の民』」との表示が。「寒い地域から海を渡ってきたのか~」くらいのことは想像がつくが、具体的には、「ユーラシア北部が起源とされ、日本人の7%程度を占める。カムチャツカ半島などの北東アジアに分布しており、日本へは比較的古い時代にやってきて縄文人になったグループと、比較的新しい時代にやってきてオホーツク文化を形成したグループとがいると考えられており、遠い昔から魚を食べてきたグループ」ということらしい。また、ユーラシア北部以前については、アフリカから北へと開拓し、今から5~7万年前に中東において洞窟生活をしていたようだ。このころには、いずれ日本に辿り着く他のグループとも行動を共にしており、貝殻を使ったアクセサリーを身につけたり、洞窟の壁に絵を描いたりしていたそう。なんだかワクワクする話しだ。なお、この「自分のルーツ」は、マイページにてアニメーションを用いて分かりやすく解説されるほか、そのほかのグループ、例えば中国中部を起源とし、日本で37%の割合を占める「稲作の民」や、今や海底に沈んだスンダランドと呼ばれる大陸が起源の「日本最古の定住者」、遠い血縁に中国の漢民族をもつ「大陸民族」などの詳細も閲覧することができる。○自分の遺伝子情報と、どう向き合うか「ディスカバリー」では、前述のとおり、自分の祖先だけでなく「遺伝的な体質傾向」も知ることが可能。提示される情報としては以下の19項目で、これらの結果は、他の遺伝子型と比較した場合の傾向を3段階で示したものとなる。実際のところは遺伝的要因のみで決まらないため、異なる場合もあると注意書きがされていた。身長・体重・腹囲のサイズ・胸のサイズ・腰のくびれ・鼻筋の通り・目の色・肌のくすみ・赤外線による肌の光老化・そばかすのできやすさ・男性脱毛症のなりやすさ・髪の太さ・髪色の明るさ・男性ホルモン値・アルコールによる顔の赤くなりやすさ・虫歯のなりやすさ・アスパラガスの代謝産物の臭いを感じ取る能力・麦芽の香りを感じとる能力・85歳以上まで長生きする可能性(任意)MYCODEのメインメニューとなる「病気の疾患リスクを判断するもの」でないため、"悪い結果として受け止めてしまう可能性をもつ"項目は設けられていない。いや、唯一同意のもと閲覧できる「85歳以上まで長生きする可能性」に関しては、実際のところ、結果を見るとき少々緊張してしまった。筆者が小心者であることはもちろんだが、「自分は結果をどのように受け止めるか」という不安にここで直面したのである。これは、サービス提供側に立って言い換えれば「消費者に検査結果が適切に伝わるか」であり、消費者向け遺伝子検査サービスが抱える課題の1つでもある。2月に厚生労働省の厚生科学審議が開催した第14回会議では、「遺伝子検査ビジネス」を今後の課題として整理し、対応策を検討することが確認され、情報提供の方法のほか、検査の質の担保や科学的根拠の適切さ、遺伝子的差別などが問題点となることを指摘している。(これらに対するDeNAライフサイエンスの取り組みは、こちらを参考にされたい。)筆者は、この課題を身を持って実感したように思うが、「疾患リスクが分かるメニューも受けてみたい」とも感じた。それはおそらく、祖先のルーツや体質の傾向を知れたことで「自分のことをもっと知りたい」という気持ちが芽生えたからだと思う。筆者と同様に、例えば「がんの疾患リスクが比較的高かったら、どうしよう」など不安に感じる人は、まずは「ディスカバリー」のような体質を中心としたサービスから利用し、その情報を自分がどのように受け止めるかを見極めてもよいかもしれない。
2015年08月31日ウェアラブル端末が計測する自身の活動量や脈拍データ、遺伝子検査で明らかになる病気リスクや潜在能力レベル、スマートフォンに蓄積される行動ログ・データなど、自分の身体状態に関する大量のデータ「マイビッグデータ」を共有できる相手は「いない」と回答した割合が過半数に上るという実態が、博報堂生活総合研究所が実施した「自分情報に関する意識調査 (第2回)」で浮かび上がった。同調査は、ウェアラブル端末や遺伝子検査などの発展・浸透によって飛躍的に増加が見込まれる、これまで知ることができなかった自分自身の情報(マイビッグデータ)に対する生活者の意識について調査・分析したもの。2015年5月に、首都圏・名古屋圏・阪神地区における20~69歳までの男女各500人の計1,500人を対象に実施した。これによると、「自分のことをすべて包み隠さず話したり共有できたりする存在」として、「異性 (恋人や配偶者)(17.9%)」が最も多く挙がり、「親 (4.7%)」との回答を大きく引き離す結果に。加えて、全体の53.8%と過半数が「そのような存在はいない」と回答し、「パートナーといえども、自分を包み隠さず共有できるほどの信頼関係を築くのは難しいようだ」と同社は分析する。また、自分のプライベートな情報に関する管理意識に関して、69.0%が「特に必要な場合以外は、自分のプライベートな情報はできるだけ秘密にしておきたい」と回答。これらの結果から、「生活者のマイビッグデータに対する高いプライバシー意識がうかがえる」と同社はいう。一方、「もっと
2015年08月28日●病気150種の発症リスクと130体質項目を調べることができる当サイトの読者の中でも、遺伝子検査に興味があるという方は多いのではないだろうか。近年、遺伝子検査にかかる費用が下がり、検査時間も短くなったことで、遺伝子検査をサービスとして提供する事業者が増えており、病気のかかりやすさや体質などの遺伝情報を知ることができるため、病気の予防や効果的なダイエットにつながるとして人気が広がっている。DeNAが提供している遺伝子検査サービス「MYCODE」では、唾液を採取して送付するだけで、最大150種類の病気の発症リスクと130の体質項目を調べ、結果をウェブ上で確認することができる。今回、3種類ある検査コースのうち、最も多くの項目を調べることができる「ヘルスケア」を体験してみたので、その内容と検査の結果をご紹介する。○さあ、遺伝子を採取しよう!こちらがMYCODE「ヘルスケア」のキットである。早速唾液の採取に入る。ちなみに、検査前30分は水以外口にしてはいけない。ここで使用するのがキットに付属してくるレモンの写真だ。人は酸っぱいものを見ると唾液が出やすくなるため、眺めながら唾液を貯めることで採取がスムーズに行くようにというDeNAの配慮である。ただ、筆者の場合体質に合わなかったのか、さほど効果を得られなかったため、ほかの酸っぱそうなものも試してみたところ、冷蔵庫にあった梅干しの香りが一番効果があった。唾液を容器の線まで貯めたら、キャップをして振る。容器内の唾液が青色に変わったことを確認し、指定の封筒に入れて返送すれば、遺伝子の採取が完了したことになる。○結果の見方送付したサンプルに問題がなければおよそ2週間後、件名が「【MYCODE】検査が完了しました」というメールを受信する。マイページにログインして結果を見てみると、ずらーっとさまざまな病名がリストアップされている。各疾患には、日本人平均と比較した時の発症リスクを示す「日本人平均との比較」、公的機関・学会が調査した当該疾患の患者数を示す「患者数」、結果の根拠となる論文を4つの観点から評価した「論文評価レベル」という指標が設定されている。したがって、「日本人平均との比較」で数値が1を超えていれば日本人の平均より発症リスクが高く、逆に1未満であれば発症リスクが低いということを意味する。「論文評価レベル」は3段階あり、レベルが高いほどその結果の信頼性も高いということになる。なお、「患者数」に関してはデータがない場合もある。●発症リスク2位は1型糖尿病 - 1位は脳の血管に関わる疾患○発症リスクトップ5を発表! - 1位はなんと4.03倍さて、ここからは「MYCODE」によって判明した、筆者の疾患発症リスクを発表しよう。全150項目もあるので、ここではリスクの高い順にトップ5をランキング形式でご紹介する。第1位: もやもや病発症リスク: 4.03倍論文評価レベル:3全体を100人とした時、同じ遺伝子型の人数: 100人中13人2位に大差を付けて見事(?)1位になったのは「もやもや病」。「もやもや病」は脳の動脈が何らかの原因で細くなったり詰まったりする疾患で、太い動脈の閉塞を補って血流量を保つために拡張した細い血管の血管網が、煙がもやもやしているように見えることが病名の由来となっている。第2位: 1型糖尿病 末期腎不全発症リスク: 2.62倍論文評価レベル:2全体を100人とした時、同じ遺伝子型の人数: 100人中1人「1型糖尿病」は血液中のリンパ球が、インスリンを作るすい臓のランゲルハンス島にあるβ細胞を攻撃して炎症を起こし、すい臓自らインスリンを分泌できなくなることで発症する自己免疫疾患。第3位: 脳血管性認知症発症リスク: 2.33倍論文評価レベル:2全体を100人とした時、同じ遺伝子型の人数: 100人中13人「もやもや病」と同じ脳血管の疾患が3位に。「脳血管性認知症」は脳梗塞をはじめ脳血管障害によって発症する。記憶、言語、ものごとの認知などに関係する海馬や大脳皮質の神経細胞が脳血管障害により死んでしまうことが原因とされている。根本的な治療はなく、脳血管障害の進行を防ぎながら、症状を抑える治療を実施する。第4位: 心房細動発症リスク: 2.17倍論文評価レベル:3全体を100人とした時、同じ遺伝子型の人数: 100人中9人ここまでが2倍超え。「心房細動」は高齢者に多く見られる疾患で、心臓のリズムを調節する電気信号が何らかの原因で乱れて心臓本来の動きができなくなり発生する不整脈の一種。第5位: 胃がん(噴門部胃がん)発症リスク: 1.98倍論文評価レベル:3全体を100人とした時、同じ遺伝子型の人数: 100人中4人胃の入口にあたる部分(噴門部)にできるがんの一種で、食道胃接合部腺がんとも呼ばれる。噴門部がんはあまり多くはなく、胃がん全体の1~2割程度といわれている。また、胃酸の逆流が発症に関係している可能性がある。○遺伝子検査で疾患の発症リスクを知ることのメリット今回の結果は個人的にかなり意外だった。というのも、筆者はがん家系なので、何かしらのがんが1位にくると予想していたのだ。また、1位に「もやもや病」、3位に「脳血管性認知症」と、脳血管の疾患が上位に入ったことに遺伝子の力を感じた。一方、トップ5には入らなかったが、8位に胃がん(1.62倍)、10位に前立腺がん(1.49倍)が入っていたのでがんに注意しなくてもいいというわけではない。そもそもがんは、日本人の死亡理由1位に長らく君臨しているわけで、この場合「(がんの中では)自分は胃がんのリスクが高いんだな」と認識できたことに価値があるのだ。「脳の血管が弱い」「がんでは胃がんに特に気をつけよう」などは、「MYCODE」を受けて初めて気づいたことだ。唾液を採取するだけというシンプルな作業で、思いもよらなかった疾患への注意が喚起され、結果を生活改善の指針として病気の予防に活用できる点は、遺伝子検査の大きなメリットといえるだろう。●生活改善につなげるための具体的なアドバイスも○アドバイスを見る前にぜひアンケートに回答を遺伝子検査のメリットは、結果を病気の予防に活かせる点だと前頁で述べた。しかし、どのように生活習慣を改善すればよいのか、より具体的に知りたいところだ。MYCODEでは、「運動・生活」「栄養素」「食品・食料」という3つの観点から、検査結果に応じた、生活習慣改善へのアドバイスが提供される。筆者の場合であれば、喫煙が10個の疾患に関わっている(実際、吸っている)。当然、禁煙をしたほうが健康的にはベターなわけだが、そう簡単に禁煙できるものではない。これに対し「コーヒーを控えて紅茶やお茶にする」「熱いお茶や冷たい水を飲む」「禁煙開始から2週間は外での飲酒は控える」など、吸いたい気持ちを抑えるための具体的なメソッドが示される。また、禁煙に準備するための心得や、開始後の禁煙日記の付け方なども提示されるほか、禁煙に関するエピソードを持つ著名人のインタビューを読むことも可能だ。また、生活習慣に関するアンケートに答えておくと、生活改善アドバイスが自分の生活習慣を踏まえたものになるので、より効果的なアドバイスを得るためにアンケートに答えることをおすすめする。このほか、検査結果のページから「発症を予防するもの・促進するもの」をクリックすると、主だった疾患の発症予防や発症促進に関係する要因が色分けされたリストを見ることができるので、そちらも参考にしよう。○麦芽の香りが感じにくい体質だったとは…冒頭でご紹介したように、「MYCODE」では疾患の発症リスクのほかに遺伝的な体質についても知ることができる。尿酸値、骨密度からそばかすのできやすさまで、その内容は多岐にわたるので疾患の発症リスクとともに生活改善に役立てることができる。一方、中にはやけにピンポイントな項目もある。以下では全130の体質項目中から筆者が「こんなこともわかるの?」と驚いた項目をピックアップしてご紹介する。・麦芽の香りを感じとる能力ビールの原料である麦芽の芳しい香りは、麦芽を焙煎したり麦汁を発酵させたりする過程で化学反応が起こり、60種類もの成分が混じり合うことで生み出されているという。この香りを感じ取る能力は、実は遺伝的素因によって、ある程度左右されているのだそうだ。筆者は「麦芽の香りを感じにくいタイプ」と判定され、ほぼ毎日晩酌を楽しんでいる身としては少々ショッキングな結果に…・アスパラガスの代謝産物の臭いを感じ取る能力「アスパラガスを食べると尿が臭う」といわれることがあるが、これは、体内でアスパラガスの成分が消化酵素に分解されるときにできる化学物質メタンチオールが尿中に排出され、臭いを発するためと考えられてる。臭いの元となる成分を尿に排出する能力は、遺伝的に一部の人にしかないと考えられていた。しかし、実際には「一部の人の尿が臭う」のではなく、「一部の人が尿の臭いを嗅ぎ分けることができる」という嗅覚の問題であり、遺伝的な要因によって左右されることが近年明らかになってきた。・頸動脈の血管壁の厚さ頸動脈は心臓につながった大動脈から脳へと血液を送る血管で、気管の両脇を走っている。血管は内膜、中膜、外膜の3層構造になっているが、内膜と外膜を合わせて1.1mm以上だと動脈硬化と診断される。頸動脈の硬化は全身の動脈硬化を反映しているといわれており、動脈硬化になると、脳梗塞や心筋梗塞、大動脈瘤などを引き起こすリスクが高まる。動脈硬化は遺伝的要因も関係しているとされる。・苦味(PROP)の感じやすさ苦味の指標となる「プロピルチオウラシル(PROP)」と呼ばれる物質の感じやすさも、遺伝的な要因の影響を受けるとされており、PROPを感じるタンパク質に関わる遺伝子が苦味の感受性を決めていることが判明している。苦味の感じ方は食生活や健康にも影響することが分かってきている。・乳歯から永久歯への生え変わりの早さ永久歯は6歳頃から徐々に出てきて、初めに乳歯の奥に出てくる第一大臼歯や、中切歯と呼ばれる中央の前歯から生え変わり、12~13歳くらいにかけて28本の永久歯がそろう。一方、第3大臼歯(親知らず)だけは出てくる時期が異なり、通常18~24歳頃に生えてくる。乳歯から永久歯への生え変わりの時期は、遺伝子の影響を受けることが知られている。ちなみに、日本人では約94%の人が「乳歯から永久歯への生え変わりがやや早いタイプ」で、「乳歯から永久歯への生え変わりが遅いタイプ」は0.1%しかいない。○受けるだけでは意味が無い以上が遺伝子検査「MYCODE」の大まかな内容だ。初めての遺伝子検査だったので、検査結果を見るときは若干ドキドキしたが、前述したように自分が今まで知らなかった病気の発症リスクを知ることができて良かったと素直に感じる。ただ、注意しなくてはならないのは、例えば「もやもや病」が平均より4.03倍発症しやすくても、それが必ず発症するわけではないということ。なので、仮に何か重大な疾患の発症リスクが高いと判定されても気落ちせずに、「だったらどうすれば発症する確率を低くできるのか」という思考に切り替えないと、せっかく遺伝子を調べてもその意義が半減してしまう。もちろん、普段の食生活や住環境など、環境要因も病気には大きく関わることも忘れてはならない。自分でさえ知らなかった部分を明らかにしてくれる「MYCODE」は、受けることに意味があるのではなく、検査結果を見て何かを変えるきっかけとし、生活改善の方針を決めるのに役立てることが重要なのだ。
2015年08月05日遺伝子検査キットなどを提供するジェネシスヘルスケアは7月7日、同日より「手塚治虫遺伝子解析プロジェクト」を始動すると発表した。「手塚治虫遺伝子解析プロジェクト」は同社の創立11周年を記念して立ち上げられたプロジェクトで、漫画家・手塚治虫氏が実際に使用していたベレー帽に残されていた遺髪と、血縁者の遺伝情報からDNAを採取し、同社の研究所で遺伝子解析を行うことで、同氏の性格や特徴を解き明かしていくというもの。同発表会では手塚治虫の長男でクリエーターの手塚眞氏、モデルの前田典子氏、メンタリストのDaiGO氏がゲストとして登場し、それぞれの視点から遺伝子検査についてトークを披露した。まず最初は、特殊メイクで治虫氏に扮した眞氏が登壇。眞氏はまず、今回のプロジェクトについて「非常に興味深いプロジェクトだと思う。遺伝子検査と聞くと体や健康のことかと思うが、天才性や心の中まで解析できると聞いたのでびっくりした」と評し、父親と似ているところはどこかという質問に対しては「顔は似ていると言われるが、体の動きとか、言動、ちょっとしたクセなどが似ていると周りの人に言われる。自分ではよくわからないので、その辺も解析できると良いですね。」とプロジェクトへの期待を語った。また、発表会では先行して「記憶力・想起力が強い」「幸福感が高い」「協調性が高い」「情報処理が早い」という治虫氏の遺伝的傾向が公表された。実の息子である眞氏もこの結果には同意するようで、それぞれの結果から思い出されるエピソードを披露した。なお、治虫氏の遺伝子は現在も解析が進められており、8月に特設サイトでその結果の一部が紹介される予定となっている。2人目として登場した前田氏のテーマは「遺伝子検査を活用した美と健康」。自身もジェネシスヘルスケアのキットで330項目の検査を行ったという前田氏は「私は胃がんのリスクが高くてショックだった。でも、リスクが高いから発祥するというわけではなく、そうやって調べて知っておくという事は大事だなと思う」としたほか「どういう運動をした方が良いか、どういう食事を摂れば良いかなども知る事ができる。私は筋肉がつきにくいため、食事はおかずから食べなさいということを教えてもらった。ダイエットするにしても人によって違うので、ダイエットの近道が知れるのは良いですね。」とし、健康維持における遺伝子検査のメリットを語った。さらに、美の秘訣を聞かれた前田氏は「日に当たると肌が赤くなりやすいことから、髪の毛のカール具合までわかるので、そういった情報を美容に役立てる事ができる。『美は1日にしてならず』とはいつも思うが、その第一歩は自分のことを良く知ることだと思う。」と自分を知ることの重要性を強調した。最後に登場したメンタリストのDaiGO氏は自身で受けた遺伝子検査の結果を公表した。DaiGO氏が受けたのは40項目の性格分野と35項目の体質・特徴から、遺伝的にどういう心を持ちやすいのかということがわかる「GeneLife Myself」という検査。同検査についてDaiGO氏は「コミュニケーション能力などもわかるので、普段の生活に役立てやすい。」と述べたほか、遺伝的要素が環境因子によってどのように変わったかがわかる点も注目ポイントに挙げた。発表会ではさらに、360項目の遺伝子検査を実施できる新製品「Genelife GENESIS」の発売も発表された。通常価格は2万9800円で、1万個限定の「手塚治虫遺伝子解析プロジェクト」記念パッケージが1万9800円で発売される(価格は税抜)。
2015年07月07日アジレント・テクノロジーは7月1日、ヒトやマウス向け遺伝子発現マイクロアレイ「SurePrint」の新製品を発表した。同製品ではベルギー・ゲント大学の協力のもと、LNCipedia 2.1データベースを完全網羅し、高い信頼性で長鎖ノンコーディングRNA (lncRNA) のトランスクリプトを分析することが可能となった。lncRNAは、DNA、RNA、タンパク質とやりとりすることで、特定ターゲット遺伝子あるいは系全体の発現を制御することで知られ、がん、心疾患、神経変性疾患と関連がある可能性が指摘されている。また、正確なオリゴヌクレオチド合成を可能とするSurePrint技術を活用することで、高感度(5桁のダイナミックレンジ)、高再現性(アレイ間変動係数5%)、高直線性(ERCCのスパイクコントロールに対しR2<0.95)を実現した。同社は「当社の遺伝子発現マイクロアレイは、LNCipediaのIncRNAなどの専門コンテンツを厳格に網羅するだけでなく、専門ユーザー向けに柔軟なカスタマイズ機能も提供しています。当社の高性能でRNA-Seq結果との高い一致率をほこる遺伝性発現マイクロアレイは、当社のRNA-Seqおよびターゲットエンリッチメント製品との組み合わせにより、マイクロアレイによるスクリーニング アプリケーションと次世代シーケンシングによる詳細解析とを途切れなく行き来できるようにしております」とコメントしている。
2015年07月01日東京医科歯科大学(TMDU)は7月1日、原因不明の炎症を小腸・大腸を中心に引き起こす難病「クローン病」の罹患に関与する感受性遺伝子の1つ「TNFAIP3」が、オートファジー(細胞自己消化)を調節し、免疫応答活性化と炎症亢進に寄与するヘルパーT細胞の生存を制御することをつきとめたと発表した。同成果は、同大 大学院医歯学総合研究科消化器病態学分野の大島茂 助教、同・渡辺守 教授らの研究グループと、米国カリフォルニア大学サンフランシスコ校との共同研究によるもの。詳細は、国際科学誌「Autophagy」の2015年7月号に掲載された。近年の研究からクローン病の感受性遺伝子が多数報告されるようになり、オートファジー関連分子もその中に含まれていたものの、クローン病の病態におけるオートファジーの関与の詳細についてはよくわかっていなかった。これまでの研究から、TNFAIP3はオートファジーを抑制することが報告されていたことから、研究グループでは今回、より生理的な検討に向け、T細胞特異的TNFAIP3欠損マウスおよび誘導性TNFAIP3欠損マウスを樹立し、詳細な調査を実施。その結果、免疫沈降解析にてTNFAIP3が細胞内シグナル伝達に関与するタンパク質キナーゼの1種である「mTOR」のタンパク質修飾(ユビキチン化)を制御することを発見した。また、mTOR抑制剤を用いることでTNFAIP3欠損による細胞減少が回復すること、ならびにmTOR抑制剤の細胞生存における作用がオートファジー欠損にて打ち消されることを確認。この結果、従来、予想されていた機能とは異なり、クローン病感受性遺伝子TNFAIP3はmTORユビキチン化を介してオートファジー誘導をコントロールし、リンパ球の生死を決めていることを突き止めたとする。なお、今回の成果について研究グループでは、クローン病に対する新たな診断・治療法開発への展開が期待できるものと考えられるとコメントしている。
2015年07月01日病気予防や美容に役立つ指標を得られるということで、個人向け遺伝子検査サービスの利用が増えているという。今回、遺伝子検査サービス「MYCODE」を提供するDeNAライフサイエンスに取材して印象的だったことは、同サービスを開始するにあたり「ELSI(エルシィ)」を重視した公式会員サイトの構築が重要であったということだ。○「倫理的、法的、社会的な議論」が不可欠「個人向け遺伝子検査サービス」の認知度は、今や、非常に高いと言えるだろう。同サービスの草分け的存在となる「23andMe(トゥエンティースリー・アンド・ミー)」では、全世界 約100万人が利用したと公表しているほどだ。同サービスが人気を博した要因の1つは、簡単な手続きだけで検査できることだろう。DeNAライフサイエンスが提供する遺伝子検査「MYCODE」では、自分で唾液を採取・郵送し、3週間程度で解析結果をWebサイト上で確認できる。(同サービスの詳細は、こちらの記事を参照されたい。)DeNAグループはこれまで、「インターネットを使ってリアル産業を変革し、人々の生活をもっと楽しくもっと豊かにする」をコンセプトに多彩な事業を拡大してきたが、健康ライフサイエンスも同コンセプトに当てはまるとし、その第一歩として誕生したサービスが「MYCODE」となる。「MYCODEは、学術的基盤がしっかりしていることや、ELSIに十分な配慮をしていることが大きな特徴です」と語るのは、DeNAライフサイエンス システムグループ グループリーダーを務める泉雄介氏。同サービスは、東京大学医科学研究所との共同研究に基づき、アジア人・日本人を対象とした論文を中心に発症リスクモデルを構築した点が差別化のポイントだという。そして、同サービスを運用する上で大切なことが「ELSI」だ。これは、「Ethical, Legal and Social Issues」の略であり、遺伝子研究を進める際に、倫理的・法的・社会的な議論を並行して進める取り組みを指す。「遺伝子情報は非常にセンシティブなものです。使い方次第で有用なものになりますが、一方で差別などに使われる可能性もあります。米国では、従業員の採用にあたって遺伝情報に基づく差別を行ってはならないという『遺伝情報差別禁止法』が2009年から施行されていますが、日本には現在このような法令はありません。こういった背景があり、弊社も遺伝子検査サービスにおけるELSIを十分に議論しながら進めています」(泉氏)○Adobe Experience Managerを使って遺伝子データを守るシステムを短期開発MYCODEがサービスを開始した時期は2014年8月。要となるWebサイトの開発には、アドビ システムズのデジタルマーケティングソリューション「Adobe Marketing Cloud」に含まれるWebコンテンツ管理(WCM)ソリューション「Adobe Experience Manager(以下、Experience Manager)」を採用した。サービス開始時点から約1,500ページもあった膨大なコンテンツを効率よく管理できることや、医師が監修するコンテンツの作成・修正ステップを強力なワークフローで管理できること、そして、コンサルティングの窓口がしっかりある点を評価したという。「トレーニングを3日間受けただけで、既に、シンプルなページは作り始めることができました。ドキュメントやQ&Aなどのサポートもしっかりしていた。つまり、開発にあたってのハードルを取り去ってくれたという印象です」(泉氏)同グループは以前より、モバイルゲームのユーザー行動分析のためにデータ分析ソリューション「Adobe Analytics」を利用しており、Adobe Marketing Cloud内にWCMの機能があることは知っていたため、導入しやすかったという背景もある。また、前述のとおり、遺伝子情報は究極の個人情報となる。必要なセキュリティレベルを、ELSIに沿ってさまざまな角度から調査・検討し、セキュリティポリシーを定めた。「画像や説明文など共通のアセット・コンテンツはExperience Managerで管理し、検査結果を含む個人情報は切り離して管理することで、セキュリティポリシーに忠実な実装が容易に実現できました。Experience ManagerはJavaで構築されており、自由度が高いシステムのため、私たちが設計をする上で制約を課されることはほとんどありませんでした」(泉氏)加えて、開発の柔軟性が高いことは、短期開発の実現にもつながっている。「Experience Managerでは、エンジニアが開発したページを、ノン・エンジニアのスタッフが自分で修正することができます。これを使用しなかった場合、3~4カ月は余分に開発期間が必要となり、サービスのスタートも遅れていただろうと思います」(泉氏)○「研究」という行為そのものがインターネット技術で変革できるDeNAライフサイエンスが掲げる次なる目標は、研究開発という既存の活動自体の変革となる。「研究というと、いままでは少人数で研究室にこもって、結論が出るまで発表もしない、クローズドなイメージでした。しかしこれからは、一般消費者からデータを提供して頂いたり、アンケートで意見を聞くこともできる。インターネットというオープンな技術の力で、研究開発のサイクルを速くしていきたいと考えています」(泉氏)遺伝子検査サービスが潜在的に持つ革新の力は、まだその一端を垣間見せたところにすぎない。今後、多方面にその効果が広がっていくことも予測されるが、あくまでも「ELSI」とのバランスをとりながら、進化させていくことが大切だ。
2015年06月26日基礎生物学研究所は6月12日、メダカを用いた研究で生殖細胞が「精子になるか卵になるか」を決定する遺伝子を同定したと発表した。同成果は基礎生物学研究所の西村俊哉研究員(元総合研究大学院大学)と田中実 准教授らと、九州大学の佐藤哲也 助教、大川恭行 准教授、須山幹太 教授、岡崎統合バイオサイエンスセンターの小林悟 教授(現筑波大学 教授)との共同研究によるもので、米科学誌「Science」に掲載された。精子と卵子は生殖細胞という共通の細胞から作られることが知られている。生殖細胞は体細胞の性が決定した後、その影響を受けて「精子になるか卵になるか」が決定すると考えられているが、その際に細胞内でどのような遺伝子が働いているかはわかっていなかった。同研究グループは、生殖細胞でオスとメスに違いのある遺伝子を探索し、foxl3という遺伝子が、卵が作られる過程のメスの生殖細胞で働いているのに対し、オスではその働きが抑制されていることを発見した。また、foxl3の機能が欠損したメダカのメスは通常のメスと同様に卵巣を作るものの、卵巣の中で受精可能な精子が作られていた。これらの結果から、foxl3はメスの生殖細胞で働き、「精子形成を抑制」する機能を持つことがわかった。foxl3による「精子形成の抑制」を解除すると生殖細胞を取り巻く環境がメスでも精子が形成されるという今回の研究は、体細胞とは独立した性を決めるスイッチが生殖細胞に存在することを示すものとなった。今後は、オスの生殖細胞でfoxl3の発現が抑制されるメカニズム、およびメスの生殖細胞でfoxl3が具体的にどのように精子形成を抑制しているのかについて研究を進めていくという。
2015年06月12日株式会社丸井グループ株式会社丸井グループは遺伝子検査キット「GeneLife」のショップを有楽町マルイにオープン。6月11日~24日の期間限定だ。最近話題の「遺伝子検査キット」。自分の体質を遺伝子レベルで知り、美容対策をおこなおう。さまざまな遺伝子キットショップには、多数の商品が用意されている。「GeneLifeNEO」は体質や遺伝子のリスク、330項目を一度に調べることができるキット。生活習慣病の発症リスク・体質・美容の傾向なども調べることができる。「GeneLife Myself」は、自己分析遺伝子キット。遺伝子から性格や特徴を読み取り、「自分の知らない自分」を発見できるかも。「肥満遺伝子検査キット」は、肥満遺伝子タイプを知ることができるキット。自分にあったダイエット方法や美容対策を知るための新しいアプローチ。「肌老化遺伝子検査キット」も興味深い一品だ。検査結果を閲覧ショップには、検査結果を閲覧することができるブースも設置。検査結果で何がわかるのか、どんなことを調べられるのかといった疑問は、その場で解決できる。検査方法は、採取棒でほおの内側をこする、または唾液を少量採取してポスト投函するだけ。気軽に検査可能だ。(画像はプレスリリースより)【参考】・私っていったいどんな性格なの?遺伝子で知る本当の自分。話題の遺伝子検査キット「GeneLife」が有楽町マルイに初登場!
2015年06月11日京都大学は6月5日、先天性骨髄不全症候群の1つである「ファンコニ貧血」の新たな原因遺伝子を同定したと発表した。同成果は京都大学の医学研究科博士課程の平明日香氏、同 高田穣 教授らの研究グループによるもので、6月5日付の科学誌「The American Journal of Human Genetics」で掲載された。「ファンコニ貧血」は1927年にスイスの小児科医によって報告された小児遺伝性疾患で、ユダヤ人に多いとされている。日本では年間10人前後が発症していると推定され、進行性の骨髄不全、急性骨髄性白血病や固形腫瘍の合併、先天奇形や不妊などの症状が発生する。主に欧米での研究によって17種類の原因遺伝子が知られているが、日本では症例集積の仕組みが存在しなかったことから解析が遅れていた。同研究グループは、近年発達が目覚ましいゲノム解析技術を用いて網羅的に原因遺伝子を検索したところ、UBE2Tの変異のある日本人患者を2名を発見した。患者の細胞を詳細に解析した結果、同疾患の原因遺伝子であることが確認された。アジアおよび日本人からの発見と同定は今回が初めてで、研究グループは「同じ遺伝変異が韓国や中国に存在するかどうか、欧米などには存在しないのか、興味ある点である」とコメントしている。また、同疾患の患者への治療として、iPS細胞やゲノム編集技術を利用した遺伝子細胞治療の可能性を今後検討したいとしている。
2015年06月05日新・食べるダイエット!株式会社ヘルスケア アンド ビューティパートナーは、肥満関連遺伝子を分析し、それぞれの遺伝子タイプに合ったダイエットメニューを提案する『d_diet(dダイエット)』の「10年間ノーリバウンド保証サービス」を開始する。10年間の美ボディを保証dダイエットは遺伝子解析によって、その人に合った食材や食べる順番、効果的なトレーニングなどを提案するダイエット法。それぞれに合わせたオリジナルダイエットメニューを、自宅に定期配送してくれる。また管理栄養士などの資格者が、その日の外食に合わせたメニューを教えてくれるなど細やかなケアをしてくれる。SNSを通じたダイエットサポーターらの叱咤激励も、モチベーションを高めてくれそう。今回発表された「10年間ノーリバウンド保証サービス」は、dダイエットのメソッドに沿ってダイエットを行う10年間、リバウンドした場合の全額返金を保証するという。石田純一、マイナス4キロを目指す新キャンペーン参加者の一人目として俳優の石田純一氏が名乗りを上げており、遺伝子解析によれば脂質を燃焼しにくい「クマ型」なのだそう。このタイプは特に冷えに注意だと聞かされた石田氏は、「靴下を履いた方がいいんですね」と、トレードマークの裸足の封印をにおわせた。また、『dダイエット』では10キロ痩せたいモニターを100人募集し、参加者合計1tのダイエットを目指す「dダイエット1tプロジェクト」もスタートさせている。(画像はプレスリリースより)【参考】・株式会社ヘルスケア アンド ビューティパートナープレスリリース(PR TIMES)
2015年05月18日アドビ システムズは、DeNAライフサイエンスが提供する一般消費者向け遺伝子検査サービス「MYCODE(マイコード)」のWebサイト構築において、同社Adobe Marketing CloudのWebコンテンツ管理システム「Adobe Experience Manager」が採用されたと発表した。DeNAライフサイエンスが提供する「MYCODE」は、検査キットを使い、自宅で唾液採取をして返送するだけの一般消費者向け遺伝子検査サービス。被検者の遺伝子情報を統計的に分析することで、がん・生活習慣病などの発症リスクや、肥満・肌質などの体質の遺伝的傾向を知ることが可能で、生活習慣の改善や美容に役立てることができるという。同サービスの開始にあたっては、顧客ごとに存在する大量の検査結果を各顧客に素早く安全に配信できるWebサイトを短期間で構築する必要があったといい、DeNAライフサイエンスでは、この課題を解決するWebコンテンツ管理システムとして「Adobe Experience Manager」を選択。同ソリューションでは、画像などの"素材"とWebページなどの"コンテンツ"の両方を同一のユーザインターフェース上で管理ができることから、Webサイトを素早く構築し、サービスをローンチできたという。さらに同サービスでは、高度なセキュリティが求められる遺伝子情報を扱うため、顧客の個人情報は別途構築したデータベースで管理し、素材やコンテンツの管理はAdobe Experience Managerで行うというハイブリッドモデルを採用。これにより、検査結果を表示するWebサイトを作成する際は、データベースから個人情報を取り出し、画像や文言などはAdobe Experience Managerから取り出すというシステムが完成したという。今後はAdobe Marketing Cloudの分析ソリューションである「Adobe Analytics」とパーソナライゼーション ソリューションである「Adobe Target」を活用し、顧客体験の最適化、および収益力の向上を目指す予定となっている。
2015年05月13日遺伝子解析による化粧水が登場肌の調子が悪い、自分にあった化粧品が見つからない。そんなあなたの悩みを解決してくれる次世代型化粧水が登場した。4月27日、キャリアウーマンは、遺伝子解析によるオーダーメイド化粧水「美GENE」を発売したと発表した。オーダーメイド化粧水といえば、肌のチェックを行い、カウンセリングなどを経て材料を配合していくのが一般的だ。同商品は遺伝子検査を導入し、より詳細な肌データをそろえることで、それぞれの人に合った最適な化粧水を作り出せるという。遺伝的な肌リスクをチェックできる同商品を注文するには、まずインターネットで検査キットを購入。後日、同社より送られてくる検査キットで遺伝子採取を行い返送する。すると、遺伝子検査の結果とともに、同結果をもとにオーダーメイドされた化粧水が送られてくるというシステムだ。検査は、専用の綿棒を使って、ほおの内側の粘膜を採取するだけ。シワ、シミ、敏感肌に関する遺伝子をチェックでき、遺伝的な肌リスクを知ることができる。日々のスキンケアに最適「美GENE」の監修を行った柳下氏は、同商品のオーダーメイドシステムを絶賛し、「日々のスキンケアには最適です。」とコメント。素肌にあったスキンケアをすることが、美肌作りをするうえで大切であると訴えた。【参考】・キャリアウーマン プレスリリース(Value Press)
2015年05月08日タカラバイオは4月10日、エムティーアイの子会社であるエバージーンが提供する一般消費者向け遺伝子解析サービス「DearGene スターターキット」の遺伝子解析を担当すると発表した。「DearGene」は少量の唾液からDNAを抽出して解析することで、利用者が生活習慣と関連がある病気についての発症リスクを知ることができるサービス。利用する場合はまず「DearGene スターターキット」(税抜き4980円)を購入する。現在は食道がん、胃がんなど計10種類のがんリスクを知ることができ、今後、体質や生活習慣病などのメニューが追加されていく予定だ。タカラバイオは検体サンプルのDNA抽出から遺伝子情報のデータ解析を手がけるとのことで、長年蓄積してきた遺伝子解析技術を駆使し、高品質で高精度な解析情報を提供するとしている。
2015年04月10日九州大学はこのほど、ウイルス感染による糖尿病発症に関わる遺伝子を発見したと発表した。同成果は九州大学大学院医学研究院保健学部門の永淵正法 教授と、生体防御医学研究所、宮崎大学医学部、佐賀大学医学部、大分大学医学部、愛知県衛生研究所、シカゴ大学医学部らの共同研究グループによるもの。4月7日付け(現地時間)の国際学術誌「Nature Communications」に掲載された。ウイスル感染によって糖尿病を発症する可能性はこれまでも指摘されており、糖尿病を誘発する脳心筋炎ウイルスD株(EMC-Dウイルス)が一部の系統のマウスのみに高率に糖尿病を誘発すること、さらにその感受性遺伝子は単一であることが知られていたが、その責任遺伝子はわかっていなかった。一方、近年の研究でEMC-Dウイルスの感染によって糖尿病になるかどうかは、自然免疫が重要であることが明らかとなっていた。今回の研究では、ウイルス感受性の高い系統のマウスでは、ウイルス感染の防御に働くインターフェロンの効果を発揮するために必要なTyk2遺伝子に異変が起きていることがわかった。また、これらTyk2遺伝子異変マウスの通常の細胞では、高濃度インターフェロン刺激によりウイルス抵抗性が回復したが、インスリンを作る膵臓のランゲルハンス島β細胞では回復力が少なかった。このことから、ウイルス感染を受けてもTyk2遺伝子が正常に働かず防御機能が低下し、インスリンを作るランゲルハンス島β細胞が破壊されてしまい糖尿病が発症していたことがわかった。今回の成果は、マウスに比べてよりウイルス感染に感受性が高いヒトにおいてもウイルス感染が糖尿病の危険因子の1つとなり得ることを示すもので、今後、ウイルス糖尿病の病態の解明、糖尿病を起こしやすいウイルスの発見、わらにはそのワクチンの開発につながることが期待される。
2015年04月10日ディー・エヌ・エーはこのほど、DeNAの遺伝子検査サービス「MYCODE(マイコード)」の購入者を対象に実施したアンケート調査の結果を明らかにした。なぜ遺伝子検査を受けたか尋ねたところ、最も多い回答は「将来的な病気への対策などができると思ったから」で、7割が回答した。同社では「病気はなってから治すものではなく、なる前に対策する」という考えが浸透しつつあるため、その有効な手段の一つとして、遺伝子検査を受ける人が増えているのではないかと分析している。2位は「以前から遺伝子検査に興味があった」だった。3位は「検査できる疾患や体質の項目数が多いから」となっている。一般消費者向け遺伝子検査は、すでに100近くの項目が分かるサービスが多く出ている。内容も病気だけではなく、体質や能力、美容など、さまざまな傾向が分かるようになっていることから、項目数の多さが重要視されているようだ。
2015年04月09日サーモフィッシャーサイエンティフィックはこのほど、CE-IVDマーキングを取得した肺がん用の融合遺伝子検出用キット「CE-IVD Oncomine Solid Tumor Fusion Transcript」を欧州連合内で提供開始したと発表した。融合遺伝子の原因となる遺伝子再構成は、がんバイオマーカーとして重要視されている。これまでは、いくつもの変異を検出するために複数の検査を実施していたが、その過程で腫瘍検体が消費されてしまい、対象となる変異が検出できなくなるというリスクが存在した。これに対し、同製品ではわずか10ngのRNAでALK、ROS-1、RET、およびNTRK1遺伝子が関与する融合遺伝子を検出することができる。そのため、より多くの患者に対して治療で標的となり得る突然変異に関する情報を提供するとともに、治療の指針策定のための有益な知見がもたらされることが期待される。同製品は主に肺がんを対象とするが、他の固形がんへの応用できる可能性もあるという。
2015年04月03日メラニン産生に関与する遺伝子に差ポーラ化成工業、国立科学博物館と山梨大学の共同研究で、縄文人のメラニン産生に関与する遺伝子はシミができやすいということが判明した。この研究成果はHuman Genome Meeting(マレーシア:2015年3月14日~17日)で発表予定。研究内容研究者はシミに関する遺伝子と日本人のルールについて研究を行った。メラニン生成に関与するMelanocortin-1 receptorの遺伝子にシミができやすい「シミ型」とそうでない「通常型」が存在することが過去の研究で分かっていた。縄文人のMelanocortin-1 receptorの遺伝子は「シミ型」であることが判明。現代日本人では縄文人の遺伝背景が強くなるにつれて「シミ型」遺伝子を有する比率が大きくなっていた。縄文人と弥生人縄文人と弥生人は異なる起源を持っており、別々に日本に入ってきて、現在の日本人になっているといわれている。日本人は縄文人の遺伝子を受け継いでいる。その比率は人により異なっている。骨格と身体の特徴から、どの程度縄文人の遺伝子を受け継いでいるかを示す縄文スコアが計算できる。シミのリスクには加齢があることはよく知られている。年齢と縄文スコアを用いて、個人のシミのできやすさを予測するモデル式を作成したところ、縄文スコアが最も高いレベルと低いレベルのシミリスクの差は年齢に換算すると18.7歳であった。今後の展開今回の研究対象になったのは、現代人244例、縄文人5例である。今後は、時代や地域の異なるサンプルを追加して、さらに検討する予定。最終的には新たな肌分析の開発を目指すとのこと。(画像はプレスリリースより)
2015年03月14日DeNAライフサイエンスは2月27日、一般消費者向け遺伝子検査サービス「MYCODE」に新たな検査項目の「祖先」を追加した、新メニュー「ディスカバリー」の提供を開始すると発表した。MYCODEはオンラインで検査キットを申し込み、検査キットで自分の唾液を返送することで遺伝子の統計学的特徴や、疾病リスクを低減する可能性のある生活習慣へのアドバイスなどを提供するというもの。調べる検査項目数に応じて複数の検査メニューが設定されている。新メニュー「ディスカバリー」は、「遺伝子で自分のルーツを知る旅へ」をテーマに、自分の体質の遺伝的な傾向のほか、ハプログループと呼ばれるミトコンドリアDNAの遺伝的グループを分析することで、人類発祥の地から日本に至るまで自分の祖先がどのように移動したかを知ることができるという。また、祖先によって判明するハプログループを表現したキャラクターを結果と併せて提供する。通常価格は9800円(税別)で、2月16日以前に「MYCODE」を購入した人は、4月末まで先着1万名に無料で提供されるほか(提供開始は3月後半を予定)、以降は追加料金980円(税別)を支払うことで検査結果を閲覧できるという。また、280項目に対応した「オールインワン280+」と、がん・生活習慣病・体質など100項目を選んだ「ヘルスケア100+」の2つの検査メニューについては、検査内容はそのままに、それぞれの名称が「ヘルスケア」(2万9800円・税別)、「ヘルスケアLite」(1万9800円・税別)に変更された。なお、「カラダ30+」については、2月27日以降の購入ができなくなったほか、「カラダ30+」を受けた人は「ディスカバリー」の無料キャンペーン、有料での閲覧ともに対象外となるの。
2015年02月27日『DIVE!』で様々な映画賞を受賞した気鋭の映画監督かつ、3人の子の父でもあるジェレミー・セイファートがメガホンを取ったドキュメンタリー作品『パパ、遺伝子組み換えってなぁに?』。いま最も関心の集まる“食”をテーマをした本作が4月25日(土)に公開されることが決定した。「どんな食べものを、家族で選択していくのか」――人として、子どもを持つ親として、家族の一員として…生きていくかぎり一生切り離すことのできない、人間と食の問題を描いた本作に登場するのは、映画監督ジェレミー・セイファートとその家族だ。映画監督であり、3人の子どもの父親であるジェレミー。種が大好きな長男の影響もあって「遺伝子組み換え生物=GMO」に興味を持つが、そもそも表示義務すらないアメリカでは、一般の消費者はその実情を知ることが出来ないという現実にぶち当たる。そんな現状に疑問を抱いたジェレミーは、家族と共に遺伝子組み換え食品の謎を解く旅にでる。遺伝子組み換え市場シェア90%を占めるモンサント本社や、ノルウェーにある種を保管する“種子銀行”の巨大な冷凍貯蔵庫、GM食品の長期給餌の実験を行ったフランスのセラリーニ教授など、世界各国への取材を重ねるうちに、徐々に明るみになっていく食産業の実態とは…。近年我々消費者にとっても関心の高いテーマでありながら、とっつきにくい印象も強い「遺伝子組み換え」問題。本作では、家族という身近な切り口から、今までわかりづらかった遺伝子組み換えの世界を分かりやすく描いている。安全性を気にするあまり、何を食べていいのか分からなくなったり、混乱したり、子どものために厳格に取り組みすぎて疲れてしまったり…ジェレミーとその家族が戸惑う姿には「あるある!」と共感してしまうこと間違いなし!本作は、遺伝子組み換え食品の真実を追うドキュメンタリーでありながら「どんな食べものを、家族で選択していくのか」という答えをみつけるまでの、家族の成長物語であり、GMOをめぐるロード・ムービー。「食の問題の理想と現実」という、普遍的であり難しくもあるテーマを追い求めるこの旅の最後に、ジェレミーの家族は何を悟り、何を選択していくのだろうか。本作をきっかけに、家族で “食”について見つめ直してみてはどうだろう。『パパ、遺伝子組み換えってなぁに?』は4月25日(土)より全国にて公開。(text:cinemacafe.net)
2015年02月18日鳥取大学は2月4日、がん抑制遺伝子を制御する因子としてマイクロRNA-19b(miR-19b)の同定に成功したと発表した。同成果は同大学大学院医学系研究科遺伝子機能工学部門の久郷裕之 教授の研究グループによるもので、2月3日の英科学誌「Scientific Reports」に掲載された。遺伝子の集合体である染色体の末端には、染色体を保護するテロメアという部分がある。テロメアは分裂のたびに短くなり、やがて細胞は死滅する。一方、多くのがん細胞では、テロメレースという酵素が活性化されテロメアの短縮が防ぐ形質を持つことが、増殖し続ける原因となっている。久郷教授らはこれまでの研究で、この形質を抑制する遺伝子「PITX1」を発見していたが、そのはたらきについては詳しくわかっていなかった。今回の研究では、PITX1の発現を調節している分子としてmiR-19bがはたらいていることを発見。細胞内でmiR-19bを過剰に発現させると、PITX1のタンパクレベルの低下によるテロメレースの活性化と細胞の増殖能が高まることが確認された。また、miR-19bがPITX1の特定塩基配列を直接標的とし、発現を抑制していることもわかった。さらに、悪性黒色腫では、miR-19bの発現亢進とPITX1の発現低下が見られ、悪性黒色細胞腫株におけるmir-19bの発現消失解析では、PITX1の発現が上昇したのに伴い、テロメレース活性および細胞増殖能の低下が認められた。同研究グループは、マイクロRNAががん抑制遺伝子を調節してテロメレース活性を制御する分子経路が明らかとなったことで、がんを治すための創薬や早期診断薬の開発につながるとしている。さらに、テロメレース制御ネットワーク機構の理解から、幹細胞の維持機構、細胞の老化および不死化、複雑ながん発生の秘密を解き明かす鍵となることが期待される。
2015年02月04日順天堂大学は2月4日、遺伝性パーキンソン病の原因遺伝子を新たに発見したと発表した。同成果は同大学医学部脳神経内科の服部信孝 教授、船山学 准教授らの研究グループによるもので、2月4日付で科学誌「LANCET Neurology」に掲載された。パーキンソン病は手足の震えや動きづらさなどの症状が進行する神経難病で、50~60代に発症することが多く、全国には14万人の患者がいる。根本的な治療法は見つかっておらず、全患者のうち5~10%を締める遺伝性パーキンソン病の原因解明が新規治療法の開発につながると考えられている。研究では、遺伝性パーキンソン病の家系から8人の患者と5人の非発症者に対し、神経学的診察とDNAの採取を行った。8人の患者のうち4人について次世代シークエンサーを用いて遺伝子解析をし遺伝子配列を詳しく調べたところ、CHCHD2遺伝子に変異があることを発見した。この遺伝子異変は8人のパーキンソン病患者に共通していただけでなく、別の家系のパーキンソン病患者にも見られた。また、一般的な弧発型(散発的に発生すること)のパーキンソン病患者と健常対象者のCHCHD2遺伝子配列を比べた結果、特定の遺伝子多型を保有していた場合、保有していない人に比べて2.5~4.7倍パーキンソン病を発症しやすいことがわかった。CHCHD2はミトコンドリアの電子伝達系に係っていることが知られている。弧発型パーキンソン病でもミトコンドリア機能異常が発症原因の1つと考えられており、今回の研究によって遺伝型と弧発型にミトコンドリアに係る共通メカニズムが存在する可能性が明らかにされたこととなった。同研究グループは今後、CHCHD2遺伝子に変異が入ることでミトコンドリア機能異常をはじめとする病的な状態が、どのように神経細胞死につながるかを詳しく調べていくとしている。
2015年02月04日栄研化学は1月27日、独自の遺伝子増幅技術(LAMP法)を利用した次世代の小型全自動遺伝子検査装置および多項目検査チップを開発したと発表した。同装置は、検体前処理(核酸抽出・精製)から増幅・検出までを全自動で行える。従来の高純度な核酸抽出・精製を行う装置と増幅・検出装置で合わせて2時間以上を要していた操作時間を、LAMP法の特徴を生かした独自プロトコルの開発により、30分以内に短縮することに成功した。一方、同検査チップは、LAMP法に必要な増幅試薬(プライマー、酵素など)を含む複数の反応ウエルから構成されている。同装置に設置して使用することで、内部標準を含めて多項目の遺伝子の同時検出を可能とした。さらに、閉鎖構造にすることにより、コンタミネーションに極めて強い特徴を有している。そして、プラスチック製で簡易な構造を追求することにより、量産可能な低価格化を実現した。今後、早期の実用化を目指し、複数の呼吸器感染症原因微生物の同時検出を目的とした臨床性能試験を実施する。また、各種感染症検査チップ、コンパニオン診断用検査チップ、各種がん関連の検査チップなどの開発を進めていくとコメントしている。
2015年01月29日サーモフィッシャーサイエンティフィック(サーモフィッシャー)は1月23日、CE-IVD認証を取得した腫瘍遺伝子パネル「CE-IVD Oncomine Solid Tumor DNA kit」の欧州連合内での提供を開始したと発表した。同製品は、次世代シーケンサーを使って結腸がんと肺がんに関する遺伝子変異をごく少量の検体から一度に検出することを可能とするもの。具体的には、単一塩基による体細胞変異、挿入および欠失を10ngのDNA検体から検出することができる。これにより一部劣化を含む検体や少量しか採取できない腫瘍組織を用いての分析が可能となり、従来よりも幅広いサンプルから検査報告に使用できる結果を得ることができるようになる。「CE-IVD Oncomine Solid Tumor DNA kit」は、米国、欧州、日本にまたがる結腸がんや肺がんを専門とする臨床医によって構成されたOncoNetwork Consortiumのメンバーによる検証が行われ、日本からは近畿大学医学部ゲノム生物学教室の西尾和人 教授が開発に参画した。同社は「CE-IVD Oncology Solid Tumor DNA kitの開発と欧州連合内での商業化は、地域ごとの規制に則しながらお客様のオンコロジー領域での臨床ケアの進歩を支援する、当社の継続的な取り組みを象徴しています。医薬品企業と先進的な臨床検査室からの参画を併せ持つサーモフィッシャーサイエンティフィックのオンコロジー・コンソーシアムとのパートナーシップによって、臨床分野のお客様とその患者さんたちのニーズに応える、規制に即したオンコロジー領域におけるNGS製品とサービスの提供を拡大していきたいと考えています」とコメントしている。
2015年01月26日