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東京・六本木の森美術館で、「建築の日本展:その遺伝子のもたらすもの」が2018年4月25日(〜9月17日まで)にスタートした。前日に行われた内覧会より本展の見どころをレポートしよう。建築家・建築史家の藤本照信が監修する本展では、日本の建築を読み解く鍵と考えられる「可能性としての木造」「超越する美学」「安らかなる屋根」「建築としての工芸」「連なる空間」「開かれた折衷」「集まって生きる形」「発見された日本」「共生する自然」と9つの特質で章を編成し、機能主義の近代建築では見過ごされながらも、古代から現代までその底流に脈々と潜む日本建築の遺伝子を考察する。レポートする上で特筆すべきはなんといっても圧倒的な展示ボリューム。100のプロジェクトに400を超える点数で、古くは縄文時代の住居から、現在進行中の建築物や未来の計画案など現代建築までを一挙に紐解いている。紹介されている建築家の名を挙げれば、フランク・ロイド・ライト(Frank Lloyd Wright)や丹下健三、黒川紀章、安藤忠雄、磯崎新、隈研吾、杉本博司、SANAA......建築プロジェクトには、平等院鳳凰堂(1053年)、厳島神社(1241年)といった世界文化遺産から古代出雲大社本殿や伊勢神宮正殿、東京オリンピック国立屋内総合競技場(1964年)、日本武道館(1964年)から、現代に建てられた豊島美術館(2010年)や、東京スカイスリー(2012年)、ラ コリーナ近江八幡 草屋根(2014年)、台中国家歌劇院(2016年)などの建築まで......といった網羅具合だ。中でも、「建築としての工芸」のセクションで紹介されている、千利休作と伝えられる現存する茶室建築として日本最古の国宝・待庵は必見だ。京都で実物の待庵を見たことがある人も多くいらっしゃるだろうが、ここでは、ものつくり大学が原寸スケールで再現した模型を、間近で見るだけでなく中に入ることができる。本展の監修者である藤本氏の「千利休は、炉の位置、床の間、腰壁に貼られた紙、障子とそこから入る光、たった2畳のスペースにどこをとっても直しどころのない、完璧かつ芸術的な場を作り出した」という語りにもあるように、用の美を秘めた日本建築の遺伝子を実感すれば、普段は無意識的な日本人としての遺伝子が目覚めてくるだろう。「連なる空間」セクションで紹介されている丹下健三自邸(1953年)は、1/3スケールの巨大模型で再現されている。丹下健三は、広島平和記念公園(1954年)、大阪万博記念公園(1970年)など、戦後の国家的プロジェクトを牽引した建築家。1/3とはいえど、宮大工の技術により実物と変わらない高精度で作り上げられた模型はさらに、タブレットPCを通じて当時の様子が伺える写真とともに鑑賞することもできる。デジタル技術とのコラボレーションといえば欠くことのできない、ライゾマティクス・アーキテクチャーが作り上げた日本建築の原寸スケールを3Dで体験できる空間だ。「Power of Scale」と名付けられたこのインスタレーションでは、レーザーファイバーと映像により、桂離宮や中銀カプセルタワーなど日本建築の空間概念が大小様々なスケールで原寸再現され、鑑賞者はその空間の中に入り込んでダイナミズムを体感することができる。あまりにも見応えがあるので、小休憩を兼ねて展示の中間に設けられたブックラウンジにもぜひ注目していただきたい。ここは、戦後のモダニズム建築時代を牽引してきたデザイナーたちの名作家具で構成されており、丹下健三研究室が設計したマガジンラック付ベンチを囲むように、剣持勇や長大作、大江宏のデザインした椅子が並び、それらに腰掛け書籍を閲覧したりして過ごすことができる。現在では美術館に所蔵されているものも多く、普段手に触れることさえできない名作たちだが、今なお現役で使用されている希少な家具を集め、本来の機能のまま使用ができる大変貴重な機会である。過去に類を見ないこの大掛かりな建築をテーマとした展示により、日本の過去と現在だけでなく、未来像が今ここで照らし出される。【展覧会情報】建築の日本展:その遺伝子のもたらすもの会期:2018年4月25日〜9月17日会場:森美術館住所:東京都港区六本木6-10-1 六本木ヒルズ森タワー53階時間:10:00〜22:00(火曜10:00〜17:00、いずれも入館は閉館時間の30分前まで)入館料:一般1,800円 学生(高校・大学生)1,200円 子供(4歳〜中学生)600円 シニア(65歳以上)1,500円最終更新: 5月2日
2017年11月25日森美術館にて「建築の日本展:その遺伝子のもたらすもの」が2018年4月25日(水)から9月17日(月・祝)まで開催される。「建築の日本展:その遺伝子のもたらすもの」では、貴重な建築資料や模型から体験型インスタレーションなど多彩な展示によって、日本建築の本質に迫る。読み解く鍵として、全体で9つの章を編成。丹下健三、谷口吉生、安藤忠雄、妹島和世など、世界が注目する日本建築の独創的な発想や表現の遺伝子を考察している。千利休作の茶室《国宝・待庵》を原寸再現京都・妙喜庵に現存する日本最古の茶室建築である国宝《待庵》は千利休の作と伝えられている建築。「わび」の思想を空間化したもので、日本文化を語る上で欠くことのできないものだ。本展では、《待庵》を原寸スケールで再現。二畳の茶席やにじり口と呼ばれる出入口で良く知られる、極小空間を体感できる。ライゾマティクスの新作映像インスタレーション世界で初めて実用化されたカプセル型の集合住宅「中銀カプセルタワービル」など名建築の数々を、クリエイティブ集団ライゾマティクスがレーザーファイバーで再現する。新作として発表される3次元の建築空間と映像が織り成す体験型インスタレーションは必見だ。丹下健三《自邸》1/3スケールの巨大模型広島平和記念公園や東京オリンピック、大阪万博など、戦後の国家的プロジェクトを牽引した建築家・丹下健三。丹下が、桂離宮など日本の古建築を再解釈し、建築の新たな可能性を拓いた《自邸》を巨大模型で再現する。今は現存しない建築を今一度見る機会、逃さないで。名作家具を展示・体験できるラウンジ他にも、日本建築史における貴重な資料を一挙公開したり、建築を彩る名作家具を展示・体験できるラウンジを設置。日本建築の過去現在未来を見て、体験できる「建築の日本展:その遺伝子のもたらすもの」に是非足を運んでみてはいかがだろうか。開催概要建築の日本展:その遺伝子のもたらすもの会期:2018年4月25日(水)〜9月17日(月・祝)会場:森美術館住所:東京都港区六本木6-10-1 六本木ヒルズ森タワー53F開館時間:10:00〜22:00、火曜日 10:00〜17:00※いずれも入館閉館時間の30分前まで。※会期中無休。入館料:一般 1,800円、学生(高校・大学生) 1,200円、子供(4歳~中学生) 600円、シニア(65歳以上) 1,500円※表示料金は消費税込。※本展のチケットで展望台東京シティビューにも入館可(スカイデッキを除く)。屋上スカイデッキへの入場は、別途料金(500円)が必要。【問い合わせ先】TEL:03-5777-8600(ハローダイヤル)
2017年11月16日近々、サロンのサービスに遺伝子分析を導入することもあり、お客様におすすめする前に、まずは自分で遺伝子分析を受けてみました。こういう「自分のことを知る」サービスというのは、興味のある方も多いのではないでしょうか。これが思った通り面白く、今までやっていたことが逆効果だったと発覚したり、何をすれば結果が出やすいか、というのがわかったりします。まだ調べたことがない方は、何かの機会に調べてみることをおすすめします。■遺伝子分析で「がんばっても痩せない理由」が発覚今回受けたのは、フィジカル遺伝子分析という、代謝や肥満、筋肉のつきやすさなどを調べるもの。これを受けたことで、最近やっていたダイエット法でいまいち痩せなかった理由がわかりました。調べたところ、私は、速筋(短距離走で使うような、いわゆるムキムキの筋肉)のつきやすさは、分析結果のグラフの最大値まで高くて、反対に、遅筋(姿勢を保つ体幹の筋肉や、持久力に関わる筋肉)のグラフは非常に低く、体幹の筋肉はつきにくいという結果が出ました。簡単に言うと、マッチョにはなれるけれど持久力はない、というタイプです。その結果を受けて思い当たったのが、ここ2カ月ほどやっているダイエットの効果が出なかったこと。最近書店でよく見かける『体幹リセットダイエット』を、私も試しているのですが、正直、続けているわりにはほとんど結果が出ていません。というか、痩せる・痩せないという以前に、この運動がうまくできないのです。ラクにできる、と書かれていたのでタカをくくっていたところ、最初はかなりきつくて、思ったほど足が上がらなかったり、よろけたりと、そもそも書かれている動きがうまくできず、「どれだけ運動不足なんだ」と愕然。続けていくにつれて、なんとかまともにできるようにはなりましたが、それでもまだラクにできるというほどにはなっていません。私はトレーニングのプロではないので、もっとフォームに気をつけたりすればまた違ってくるのかもしれませんが、普通の筋トレならちょっと続ければ容易にできるようになるのにおかしいなぁ、と思っていたところでの、この分析結果。ただの運動不足かと思いきや、遺伝子的に体幹の筋肉のつきにくさも、関係しているのかもしれないと思っています。反対に、毎日スクワットを20回やっただけで、私の太ももがサイヤ人みたいなムキムキの太ももに近づき、「20回なんて余裕すぎる」という状態に進化してきているのも、きっと遺伝子のなせる業なのでしょう。同じダイエット法でも、合う人と合わない人がいるという、わかりやすい例ですね。■効率よくキレイになりたいなら、遺伝子分析をしてみて損はない遺伝子は一生変わらないものなので、一度調べてしまえば、その後ずっと参考にできるもの。「遺伝子も個人情報だし」と、抵抗のある方もいらっしゃるかもしれませんが、美容やダイエットの結果を効率よく出したいのであれば、知っておいて損はないと思います。私のような、すぐにマッチョになれるタイプが体を細くしたいと思ったときに、いわゆる筋肉をつけるトレーニングをしてしまっては、かえってがっしりしてしまいます。また、活性酸素を除去しにくい遺伝子を持っている人が、活性酸素の除去を気にせずがむしゃらにジョギングをしてしまうと、痩せたけれど顔にシワが増えた、ということも起こります。自分の目標とする状態を目指すために、何をするのがいいのか・何をしてはダメなのかがわかって効率が上がり、なおかつ結果も出やすくなるのでモチベーションも上がる、と、遺伝子を知っておくことのメリットは多そうです。余談ですが、肥満や代謝に関する遺伝子のリスクはまったくなかったため、私が今太っているのは、100%生活習慣が原因であることも発覚しました。そんな、日頃の生活を省みるきっかけになることも、遺伝子分析のいいところもしれません。ダイエットだけでなく、美容やアンチエイジング面でもより効率を求めるべく、今度は美容系の遺伝子分析も受けてみようと思っています。
2017年09月06日完全会員制オーダーメイドフェイシャルサロン「WIDEAL TOKYO」東京大学のベンチャー企業である遺伝子解析会社と、美容に特化した20項目の肌遺伝子リスクを解析するプログラム「i Manual」を開発した株式会社JNコーポレーション。国際美容コンサルタントが経営する同社では、このプログラムの開発の傍ら、肌遺伝子のリスクタイプ別の化粧品を開発することにも成功。それが化粧品「WIDEAL」。この度、i MANUALとWIDEALを併用して完全オーダーメイドプログラムで施術するサロン「WIDEAL TOKYO」が、7月12日にオープンした。美容もすでに遺伝子解析JNコーポレーションの代表でありサロンのオーナーでもある渡邊純子氏は、数多くの有名化粧品企画開発に携わる傍らエステ店の店長やマネージャーを経験。美容業界の数多ある経験を活かし、国際美容コンサルタントとしてコンサルティング業務などに携わってきた。そんな渡邊氏が、今段階で最終的に行きついた美容の究極的追求の仕方が、遺伝子解析技術。遺伝子レベルで肌のリスクを調べ、一人ひとりに合わせたプログラム、逆をいえばその人にしか合わない肌ケアプログラムを行うことが最も重要だという結論に至ったという。WIDEAL TOKYOでは、まず遺伝子解析プログラムi Manualを用いて遺伝子要因と今の肌をダブル分析。その後、3週間から一ヶ月後を目安に、解析結果をもとにしたオーダーメイドサロン施術の提案を行い、WIDEALと最新美容機器を併用してトリートメントを実施するという。初回カウンセリング自体は誰でも受けられるが、オーダーメイドbの施術を提案してもらうには会員登録が必要。是非あなたも、最新の科学を用いての美肌への道を体験してみてはいかがだろうか。(画像はプレスリリースより)【参考】※WIDEAL TOKYO 公式サイト※WIDEAK TOKYO プレスリリース(Dream News)
2017年07月23日DNAレベルでデータを検証株式会社GACTは、2017年2月6日(月)「遺伝子検査連動型ダイエットアプリGACT」をリリースした。ダイエットを行う上で、遺伝子検査を受けることの有効性が話題になっているが、検査を受けて終わってしまうという実情から、ブームには至っていなかった。この度、株式会社GACTがリリースしたアプリでは、遺伝子検査を行うことで、個々に合ったダイエット方法を知ることができる。食事の際の食べる順番や効果的な運動、太り方など、人それぞれ異なるデータを元に、効果的なダイエット方法を把握することができるのがメリットだ。ダイエット結果と照らし合わせ、自分のDNAに合った理想の体重変化と比較してどうなのかを見ることで、正しいダイエットができているかどうかも知ることができる。こうして、自分に合ったダイエットを理解することで、より効果的にダイエットを行うことができるのだ。検査結果に沿ったエクササイズプログラムを提供GACTアプリの優れているところは、遺伝子検査の結果を閲覧したり、データをグラフ化したりするだけにとどまらず、その人に最適なエクササイズプログラムをタイムリーに届けてくれる点だ。エクササイズは毎週届くため、常に最適なダイエットプログラムを実践することができる。アプリは無料で利用できるため、より手軽に遺伝子検査をダイエットに活用できる。この機会に、ぜひダウンロードして、効果を実感してみてはいかがだろうか。(画像はプレスリリースより)【参考】※株式会社GACTのプレスリリース※GACTのサービスページ
2017年02月18日ある説では日本人は知らず知らずのうちに、大量の遺伝子組み換え(GMO)食品を食べているとか。「え?」と思った方。残念ながら、その説は全くの嘘ではないようだ。遺伝子組み換え食品は、安全の保証のないまま、私たち消費者に気づかれないように、巧みに食卓へ忍び寄る。その危険性に気がついた者たちが上げた声が集まり、今、大きなムーブメントを呼んでいる。私たちは実験台じゃない!
2016年12月14日遺伝子検査「DNA beauty health kit」株式会社フロンティアエンゲージメントは、運営中のヘッドスパに関する情報サイト「頭美人」にて遺伝子検査「DNA beauty health kit」のサービスを開始した。DNA検査をおこなうことによって、体質やかかりやすい病気を知り、適切なからだのケアや、ヘアケアを知ることができる。現在のからだの状況「DNA beauty health kit」は、2016年5月26日(木)より開始。DNA検査による「先天的な体質」と生活習慣チェックシートによる「後天的な体質」をもとに、「現在のからだの状況」を知ることができる。具体的には、「将来なりやすい病気」「薄毛やその頭髪/頭皮トラブルについて」「お肌やからだの健康・美容について」が明らかとなる。リスク回避の方法さらに、これらをもとに、1人1人に対して、オリジナルの最適なケア「リスク回避と改善法」を提案する。管理栄養士監修よる「最適なメニューや食材」、ドクター監修による「リスクに対応した改善方法」、「最適なヘアケアのアドバイスや店の情報」などが届く。キャンペーン中現在、サービス開始を記念して、キャンペーンを開催中。通常19,800円(税込み)が、キャンペーン価格9,900円(税込み)となっている。(画像はプレスリリースより)【参考】※【業界初!】5年後10年後を美しく健康に過ごす為に。遺伝子検査「DNA beauty health kit」のサービス開始
2016年05月28日産業技術総合研究所(産総研)は4月7日、卵白に含まれるアレルゲンであるオボムコイドの遺伝子を欠失したニワトリを開発したと発表した。同成果は産総研バイオメディカル研究部門細胞分子機能研究グループ付の大石勲 総括主幹、農業・食品産業技術総合研究機構畜産研究部門の田上貴寛 上級研究員、信州大学農学部の鏡味裕 教授らによるもの。研究成果は4月6日(英国時間)の「Scientific Reports」に掲載された。オボムコイドは卵白中で最もアレルゲン性が強く、加熱処理や酵素処理にも強いため、除去技術の開発が望まれている。今回の研究では、細菌など原核生物の持つ免疫系を活用して特定の遺伝子配列を切断することで、遺伝子を改変する「クリスパー・キャス9」とういゲノム編集技術をニワトリに適用し、始原生殖細胞に90%以上の高い確率で変異を導入する方法を考案。この細胞を元にオボムコイドの遺伝子を欠失したニワトリを開発した。具体的には、まず雄ニワトリの初期胚の血液から始原生殖細胞を分離・培養し、クリスパー・キャス9法によりオボムコイド遺伝子を欠失させた。この細胞を別の雄ニワトリの初期胚に移植した後に孵化させ、成長させると精子の多くがオボムコイド遺伝子を欠失していた(第0世代)。さらに、第0世代の雄ニワトリを野生型の雌ニワトリと交配して、次の世代(第1世代)では父方由来のオボムコイド遺伝子が欠失したニワトリを得ることができた。第1世代ニワトリ同士を交配させることで、次の世代(第2世代)で父方、母方両方のオボムコイド遺伝子が欠失したニワトリが実現した。オボムコイド遺伝子の欠失による健康異常は認められず、野生型と同様に成長を続けているという。同研究グループは、今回の成果によりオボムコイドの完全除去に目処が立ち、将来的には副作用の少ないワクチンの生産に応用可能な低アレルゲン性卵の生産に道筋をつけるものだとしている。また、オボムコイドを原因とするアレルギー疾患をもつ人が摂取可能な食材への応用可能性もあるが、そのためには安全性の確認とゲノム編集による産物をどのように扱うべきか社会的な取り決めが不可欠となる。
2016年04月07日農業生物資源研究所(生物研)は3月29日、植物の主要な栄養素を含む複数の栄養素をバランスよく吸収し、蓄積を促進させるイネの遺伝子を発見したと発表した。同成果は1月5日に英国の科学雑誌「The Plant Journal」に掲載された。植物の遺伝子機能を利用して肥料に含まれる栄養素の吸収を促進させる試みは、単独の遺伝子の働きを改変することで1~2種類の栄養素の吸収もしくは蓄積を促進させた例が報告されている。しかし、特定の栄養素のみの吸収・蓄積を強化すると栄養素バランスが崩れるため、収量の増加にはつながっていなかった。一方、生物研ではイネの水や栄養素を輸送する維管束という組織にRDD1というタンパク質が局在していることを見い出しており、同タンパク質が栄養素をバランス良く輸送するカギになっているのではないかと考え、これを確かめる研究を行った。研究では、人為的にRDD1遺伝子を強く働かせたイネは、温室での少化成肥料栽培(慣行栽培の半分、特別栽培相当)において、収量(もみ重)が親系統に比べて最大で約2割増加した。さらに、低栄養条件での水耕栽培(各栄養素が通常の半分以下)では、通常のイネと比べて肥料三要素である窒素、リン酸、カリウムに加え、塩素とマグネシウムの吸収と蓄積が促進された。これらの結果から、RDD1遺伝子を強く働かせたイネでは光合成および収量の増加に必要な栄養素の供給が増強されることが示唆された。さらに、RDD1遺伝子を強く働かせたイネでは、低栄養条件での水耕栽培において、光合成で重要な役割を持つクロロフィルの含量が増加し、また光合成産物であるショ糖の輸送に関わる遺伝子の働きも増大していた。これらのことから、RDD1遺伝子を強く働かせたイネでは光合成および光合成産物輸送の能力が増強した結果、収量が増加したものと考えられるという。研究グループは、今後、新たな品種や栽培技術の開発により、RDD1遺伝子の機能を強化することで、少ない肥料で通常と同様の収量を得ることが可能になり、低コスト化に加え、土壌に残った余分な肥料による環境汚染を防ぐなどのメリットが得られるとしている。
2016年03月29日東京大学(東大)は3月29日、B細胞性急性リンパ性白血病(B-ALL)の原因となる新たながん遺伝子を解明したと発表した。同成果は、同大学大学院 医学系研究科 間野博行教授らの研究グループによるもので、3月28日付けの英国科学誌「Nature Genetics」オンライン版に掲載された。B-ALLは、15才から39才までの思春期-若年成人(AYA)世代に最も多いがんのひとつで、その9割以上においてがん遺伝子・発がん機構がわかっておらず、有効な分子標的療法も存在しない。同研究グループは今回、AYA世代のB-ALL患者73例の白血病細胞からメッセンジャーRNAを調整し、それを次世代シーケンサーにより網羅的に解析することで、融合遺伝子の探索を行った。この結果、B-ALLの約65%の症例が何らかの融合型がん遺伝子を有することを発見。このうち、最も多く見られたのはDUX4-IGH融合遺伝子で、2番目に多いものはZNF384融合遺伝子、3番目に多いものは新規MEF2D融合遺伝子となった。DUX4は健常者の体細胞では発現していないが、遺伝性疾患である顔面肩甲上腕型筋ジストロフィーにおいては高発現して細胞死を誘導し、筋細胞の減少によって筋ジストロフィー症状を示すことが知られている。しかし同解析の結果、AYA世代のB-ALLにおいては、DUX4遺伝子が、後ろ側が削れたうえでIGH座に挿入されて融合し、免疫グロブリン遺伝子転写調節領域の強力な作用によって大量のDUX4-IGHの融合タンパクが産生されることが明らかになった。同融合タンパクは筋ジストロフィーで見られた細胞死誘導能を失っており、代わりに強力な発がん能を獲得することが確認されている。さらに、DUX4-IGH融合タンパクをネズミのB細胞で発現させるとネズミは白血病を発症すること、またDUX4-IGHを持っているB-ALL細胞株でDUX4-IGHの発現を低下させると細胞死が誘導されることも明らかになっており、DUX4-IGHはB-ALLの治療標的となることがわかる。またAYA世代B-ALLに認められるZNF384融合遺伝子の多くは既知のEP300-ZNF384遺伝子だが、MEF2D遺伝子の融合パートナーは新規のBCL9とHNRNPUL1だった。EP300-ZNF384、MEF2D-BCL9、MEF2D-HNRNPUL1融合遺伝子のいずれも、がん化能を獲得しており、DUX4-IGHと同様にネズミで白血病を発症させることがわかっている。なおDUX4-IGHは、AYA世代に特異的に存在しており、小児B-ALLには極めてまれにしか存在せず、成人B-ALLでは検出できなかったという。同様にZNF384融合型がん遺伝子もAYA世代特異的な遺伝子融合であった一方、MEF2D融合型がん遺伝子は小児期とAYA世代B-ALLに同じ頻度で見つかり、成人ALLには存在していなかった。さらに今回の研究では、患者の治療反応性を調べた結果、DUX4-IGHあるいはZNF384融合型がん遺伝子を有する白血病は予後良好群に属し、MEF2D融合型がん遺伝子陽性の白血病は予後不良群に属することも明らかになっている。同研究グループは今回の発見について、AYA世代B-ALLに対する新しい分子標的治療法開発や、同疾患の速やかな予後予測診断法の実用化につながることが期待されるとしている。
2016年03月29日山口大学(山口大)と日本医療研究開発機構は3月24日、長寿遺伝子産物「サーチュイン」として知られる脱アセチル化酵素「SIRT1」を脳で活性化させることにより、ストレスを長期間受けてもうつ病になりにくくなる可能性があることをマウスで確認したと発表した。同成果は、山口大学大学院 医学系研究科 渡邉義文教授、内田周作講師、山形弘隆講師、樋口尚子助教らの研究グループによるもので、3月23日付けの米科学誌「Biological Psychiatry」オンライン版に掲載された。同研究グループはこれまでに、うつ病患者末梢白血球におけるSIRT1遺伝子の発現量の減少を報告しており、また、他グループのうつ病患者に対する大規模遺伝子解析結果からもSIRT1遺伝子とうつ病との強固な関連性が示唆されている。しかし、SIRT1の発現・機能異常とストレス誘発性のうつ病との因果関係は明らかになっていなかった。今回、同研究グループは、遺伝的背景の異なるC57BL/6(B6)マウスとBALB/c(BALB)マウスに慢性ストレスを6週間負荷し、うつや不安行動を測る社交性試験を行った。この結果、BALBマウスは相手マウスとの接触を嫌うなど不安・うつ様行動の増加が認められたが、B6マウスは不安・うつ様行動の増加は観察されなかった。そこで、これら2種類のマウスの脳内でどのような違いがあるか調べたところ、ストレスに弱いBALBマウスの海馬では、SIRT1の量が減少していた一方で、ストレスに強いB6マウスの海馬では、SIRT1の量は変化していないことがわかった。さらに、BALBマウスの海馬に対し、野生型のSIRT1および活性を阻害するドミナントネガティブ型SIRT1をそれぞれ過剰発現させたところ、ドミナントネガティブ型SIRT1を過剰発現させたマウスは不安・うつ様行動の増加が観察されたが、野生型SIRT1を過剰発現させたBALBマウスは、慢性ストレス負荷後の不安・うつ様行動が消失した。またSIRT1の阻害剤および活性化剤をBALBマウス海馬内にそれぞれ投与し、マウスの行動を評価した結果、阻害剤を投与したマウスは不安・うつ様行動の増加を示したが、活性化剤を投与したマウスに慢性ストレスを負荷した場合では、対照群に認められた不安・うつ様行動の増加が消失した。この結果により、SIRT1の機能を高める薬は、ストレス抵抗性を誘導することが示唆されたといえる。同研究グループは今回の結果について、今後、SIRT1を標的とした新たな抗うつ薬の開発につながることが期待できると説明している。
2016年03月24日DeNAライフサイエンスはこのほど、東京都と神奈川県に在住・在勤する人を対象に、遺伝子検査サービス「MYCODE(マイコード)」を40%OFFで購入できるキャンペーンを開始した。キャンペーン期間は8月31日まで。遺伝子検査とは、細胞を採取してDNAの情報を読み取り、検査を受けた人の病気のかかりやすさ、体質などの遺伝的傾向を知る検査のこと。同社が提供する遺伝子検査サービス「MYCODE」では、「がん」や「生活習慣病」などの病気の発症リスクがわかるという。同サービスは、2015年度に神奈川県の「未病市場創出促進事業」に採択された。期間中には、多くの人が利用し、大変好評だったとのこと。現在開催しているキャンペーンは、東京都と神奈川県に在住・在勤する人が対象となっている。対象パッケージは「MYCODE ヘルスケア」と「MYCODE がんパック」の2種。「MYCODE ヘルスケア」は、38種類のがん、19種類の生活習慣病を含む150種類の疾病リスクと、肥満や肌質など130種類の体質関連項目の検査を行う。通常価格2万9,800円のところ、1万7,880円の割引価格で受けることができる。「MYCODE がんパック」は、がん38項目の疾病リスクに関する検査を行う。通常価格1万4,800円を、期間中は割引価格8,880円で提供する。なお、同サービス購入者を対象に実施したアンケートでは、購入者が遺伝子検査を受けた理由について知ることができる。※価格はすべて税別
2016年03月15日北海道大学病院(北大病院)は3月2日、「がん遺伝子診断部」を開設したと発表した。同部署は、がん患者のがん遺伝子情報を解析し、患者個々人に最も適した抗がん剤の情報を提供する専門部署で、同部署にて「がん遺伝子診断外来」が開始される。開始時期は4月1日を予定。同外来では、自由診療で、研究ではなく医療サービスとして網羅的ながん遺伝子検査を行う。同院によると、独自の院内がん遺伝子解析システムを利用することで、高い検査精度を担保しつつ、検査結果が得られるまでの期間が2週間にまで短縮されるところが特徴であるとしている。最終的な治療については、遺伝子解析担当医、主治医、腫瘍内科医などからなる専門チームがカンファレンスにて決定し、患者が納得したうえで行うという。
2016年03月03日徳島大学は2月29日、胃がんにおける分子標的治療薬の標的であるHER2遺伝子増幅を高感度・高精度に低侵襲で検出できる方法を開発したと発表した。同成果は、徳島大学大学院 医歯薬学研究部 人類遺伝学分野 井本逸勢 教授、増田清士 准教授、京都府立医科大学 消化器外科 大辻英吾 教授、市川大輔 准教授らの研究グループによるもので、2月13日付けの日本胃癌学会誌「Gastric Cancer」オンライン版に掲載された。HER2遺伝子増幅によるHER2分子の活性化は、乳がんや胃がんの一部の症例で悪性化の原因となっており、現在は手術時のがん組織を用いて、その陽性・陰性が診断されている。特に、胃がんのHER2遺伝子増幅症例では、外科治療後の再発時にこの分子を標的にした分子標的治療薬などを用いた薬剤治療を行うことができる。しかし、HER2陽性胃がんと診断されても、すべてのがん細胞でHER2増幅が起こっているわけではないために、再発したがんのなかでHER2増幅を持った細胞が主に増えていなければ分子標的薬の治療効果は見込めない。また、胃がん組織でHER2陰性と診断されていても、がん中のわずかなHER2増幅細胞が見逃されていた場合には、それが主に増えて再発が起こった場合、分子標的薬の効果が見込めるのにもかかわらず、治療には使えないことになる。今回開発された手法は、血液中に流れるがん由来のDNAから高精度にHER2遺伝子の増幅の有無を判定するもので、採血のみで何度でも行うことが可能。同グループでは、すでにリアルタイムPCR法を用いた検出法を論文報告していたが、今回Droplet digital PCR法を用いることで、より安定で高感度、高精度に検出が可能になり、臨床現場で用いることができる実用性に近づいたとしている。また、手術標本ではHER2陰性で血液でもHER2増幅のなかった症例のなかに、再発後の血液でHER2増幅を示した症例が約半数認められた。繰り返し採血できた症例では、HER2増幅の程度を示す値が再発の進行と共に上がっていくことが確かめられており、このような患者では分子標的薬を用いた薬物治療が有効な可能性がある。また、手術前に血液でHER2増幅があることがわかっていた症例では、手術で一旦値が低下した後、再発と共に再度値が上昇し、分子標的薬を用いた薬物治療開始によって再発腫瘍が小さくなるとまた値が低下するなど、再発のモニターや治療効果のマーカーになることもわかった。同研究グループは今回の成果について、血液で診断できることで、再発の監視や治療効果の予測・判定がリアルタイムに行えることになり、今後の胃がん治療に有用なツールとなる可能性があると説明している。
2016年02月29日東京医科歯科大学(TMDU)は2月24日、運動に応答する腱の遺伝子メカニズムを解明したと発表した。同成果は同大大学院医歯学総合研究科システム発生・再生医学分野の浅原弘嗣 教授と嘉山智大 特別研究生の研究グループと、東京慈恵会医科大学整形外科学講座の共同研究によるもので、2月16日付の国際科学誌「Molecular and Cellular Biolog」オンライン版に掲載された。これまで、腱や靭帯には力学的ストレスが重要であると考えられていたが、腱・靱帯に重要な遺伝子が不明であったことから組織に加わる外力がどのように細胞内を伝達し、腱・靱帯遺伝子の発現へとつながるかはわかっていなかった。浅原教授の研究グループはこれまでの研究で、腱を構成するI型コラーゲンや腱線維をつなぐプロテオグリカンの産生に必須な遺伝子であるMohawk(Mkx)を発見しており、Mkxノックアウトマウスでは腱・靱帯が菲薄化することを確認している。今回の研究では、マウスの適度なトレッドミル運動によりアキレス腱でMkxの発現が上昇することを確認。また、I型コラーゲンの発現上昇、コラーゲン繊維の肥大化も認められた。加えて、コラーゲン線維同士をつなぐ役割を果たすFibromodulinの発現も上昇することでコラーゲン線維密度が増加することもわかった。一方、Mkxノックアウトマウスでは同じ運動でも腱関連遺伝子の明らかな上昇は無く、コラーゲン線維径やコラーゲン線維密度の増加も認められなかったことから、Mkx遺伝子は運動に応答し腱の成熟に必要な遺伝子であると結論付けられた。さらに、Mkxを制御するGTF2IRD1遺伝子を同定することにも成功。GTF2IRD1遺伝子は通常の腱細胞では細胞質に存在するが、物理的に引っ張ると、核内に移行することを確認した。また、Mkxの上流領域にGtf2ird1の結合領域を特定し、この領域においてクロマチンリモデリングが行われることが判明した。これらの結果から、腱細胞では外力刺激を感知し、Gtf2ird1遺伝子が核内移行しMkxを制御することで腱の成熟が促進されることが明らかとなった。同研究グループは今回の成果について「はじめてMkxが機械的刺激に応答する遺伝子であることが明らかとなり、さらにその上流遺伝子まで同定することが出来ました。運動により腱関連遺伝子が上昇し、腱が成熟することは、断裂等の腱疾患の修復にも影響すると考えられることにより、適度なリハビリの重要性が再確認されました。」とコメントしている。
2016年02月24日九州大学は2月19日、大腸がんが多様な遺伝子変異を持つ、不均一な細胞集団から構成されることを明らかにしたと発表した。同成果は九州大学病院別府病院の三森功士 教授と、HPCI 戦略プログラム 分野1「予測する生命科学・医療および創薬基盤」プロジェクトの東京大学医科学研究所の新井田厚司 助教、宮野悟 教授、および大阪大学大学院医学系研究科の森正樹 教授らの研究グループによるもの。2月18日(現地時間)に米国学術誌「PLOS Genetics」に掲載された。大腸がんは1つの正常な大腸粘膜細胞が遺伝子変異を蓄積しながら進化し、異常増殖することで発生すると考えられている。この遺伝子変異の組み合わせは患者ごとに異なり、さらに同じ患者のがんの中でも異なる遺伝子変異の組み合わせを持つ細胞が1つのがんを構成していることが知られ、腫瘍内不均一性と呼ばれている。ある抗がん剤が効く細胞が腫瘍の大部分を占めているときは抗がん剤が有効となるが、その抗がん剤への耐性を引き起こす遺伝子変異を持つ細胞が存在すると、耐性細胞が増えることでがんは再発してしまう。これまで、多くの大腸がんに関わる遺伝子変異が同定されてきたが、実際にどのように遺伝子変異が蓄積されながらがんが進化するか、また大腸がんにどのような腫瘍内不均一性が存在するかは明らかとなっていなかった。がんの進化や不均一性を調べる方法として、1つのがんから複数の部位を採取し解析する方法がある。今回の研究では、9症例の大腸がんから5~21カ所、合計75カ所の検体採取を行い、解析した。その結果、大腸がんには一塩基変異、コピー数異常、DNAメチル化などさまざまなタイプの遺伝子変異について高い腫瘍不均一性が存在することがわかった。さらに、進化の前半にみられる遺伝子変異で、加齢と関連する異常が特徴的にみられたことから、がん化につながる遺伝子変異が正常細胞に徐々に刻まれていると考えられるという。また、スーパーコンピューター「京」によるシミュレーションと、遺伝子変異解析の結果を合わせて考えると、腫瘍内不均一性はがん細胞に有利になるようん遺伝子変異が選択され蓄積するのではなく、がん細胞の生存とは関係のない遺伝子変異の蓄積による「中立進化」によって生み出されていると推測された。今回の研究により、スーパーコンピューターを用いてがんの不均一性が生まれるメカニズムを理解することが可能となったため、がんの多様化を阻害する治療方法や不均一性を持つ細胞集団に効果的な治療戦略を考える重要な基板となることが期待される。
2016年02月19日DeNAライフサイエンスはこのほど、同社が提供する遺伝子検査サービス「MYCODE(マイコード)」の神奈川県民など対象の助成期間を2月末まで延長することを発表した。遺伝子検査とは、細胞を採取してDNAの情報を読み取り、検査を受けた人の病気のかかりやすさ、体質などの遺伝的傾向を知る検査のこと。同社が提供する遺伝子検査サービス「MYCODE(マイコード)」では、「がん」や「生活習慣病」などの病気の発症リスクが手軽にわかるという。同検査は、神奈川県が推進する「平成27年度 未病市場創出促進事業」の販売商品に採択されている。これまで、神奈川県の助成を受け、県民を対象に病気や体質など280項目の遺伝的傾向を知ることができる「MYCODE ヘルスケア」を4割引きの1万7,880円(通常価格2万9,800円)で販売。1月末までの期間限定の予定であったが、好評につき2月29日まで延長する。助成の対象となるのは、神奈川県に在住または同県内の企業に勤務、同県内の学校に通学する20歳以上の者。助成にあたっては事前事後のWebアンケートへの回答が必要となる。同サービスの購入者が検査を受けたきっかけは、過去のアンケート調査で確認できる。※価格はすべて税別
2016年02月05日理化学研究所や東京大学などは1月28日、日本人の2型糖尿病の発症に関わる7つの疾患感受性遺伝子領域を新たに同定したことおよび、同領域内の遺伝子と2型糖尿病治療薬のターゲット遺伝子とのつながりを調べ、新規治療薬候補を同定したことを明らかにした。2型糖尿病は、生活習慣などの環境要因とともに、遺伝要因が発症に関与することが知られている。共同研究チームは、日本人集団のみを用いた2型糖尿病の「ゲノムワイド関連解析」(GWAS)としては最大規模となる約4万人のゲノムの「一塩基多型」(※SNP)を網羅的に解析し、別の日本人集団約1万3,000人のゲノムを用いた検証解析を行った。Biobank Japanに登録されている2型糖尿病患者1万5,463人と非患者2万6,183人の日本人集団のDNAサンプルを用いてGWASを実施。ヒトのゲノム全体をカバーする約580万のSNPを調べたところ、疾患感受性との関連を示す遺伝子領域を新たに17カ所発見した。この遺伝子領域について、患者7,936人と非患者5,539人からなる別の日本人集団で再現解析を行い、GWASと再現解析の結果を統合した結果、疾患感受性との強い関連を示す7つの遺伝子領域(CCDC85A、FAM60A、DMRTA1、ASB3、ATP8B2、MIR4686、INAFM2)を同定した。これらの遺伝子領域に含まれるSNPのうち、発症しやすいタイプのSNP(リスクアレル)を持つ人は、リスクアレルを持たない人に比べ、1.1~1.2倍程度、2型糖尿病にかかりやすかったという。研究チームはさらに、これまでに解明された疾患感受性遺伝子領域の情報と多様な生物学的・創薬データベース上の情報を照合。新たな2型糖尿病治療薬のターゲットとなりうる遺伝子を探索した。2型糖尿病に関連する83の既知の遺伝子領域と、今回新たに同定した7つを合わせた計90の遺伝子領域の遺伝子について、多様な生物学的データベースとの網羅的な照合を行った。その結果、既存の糖尿病治療薬に加え、糖尿病以外の病気に対する治療薬として開発中の薬剤の中にも、2型糖尿病疾患感受性遺伝子をターゲットとしているものが複数存在していることが判明した。その中でもKIF11、GSK3B、JUNはそれぞれがんや白血病などに対する治療薬として、いずれも臨床試験中の薬剤のターゲット遺伝子で、2型糖尿病の治療にも適応できる可能性があることがわかった。理化学研究所は、「2型糖尿病発症のより詳しい機序を解明することで、個人の体質に合わせた治療法の確立につながる可能性があります。また、今後新たに得られるゲノム情報とさまざまな生物学データベースや創薬データベースの情報を総合的に活用することで、より多くの治療薬の開発が期待できます」としている。※一塩基多型(SNP)…ヒトの染色体にある全DNA情報は、30億にもおよぶ文字の並び(塩基配列)で構成されている。この文字の並びは暗号(遺伝情報)となっているが、その99.7%は全人類で共通。0.3%程度に個人差(遺伝子多型)がみられるが、遺伝子多型の違いが病気のなりやすさなどに関係していると考えられている
2016年01月29日理化学研究所(理研)は1月28日、日本人約4万人を対象にゲノムワイド関連解析(GWAS)を行った結果、日本人の2型糖尿病の発症に関わる7つの疾患感受性遺伝子領域を同定したと発表した。同成果は理研統合生命医科学研究センター腎・代謝・内分泌疾患研究チームの前田士郎 チームリーダー(琉球大学医学研究科 教授)、今村美菜子 客員研究員(琉球大学医学研究科 准教授)と東京大学大学院医学系研究科/東京大学医学部附属病院の門脇孝 教授らの共同研究チームによるもの。1月28日に英国科学誌「Nature Communications」に掲載された。2型糖尿病は、生活習慣などの環境要因とともに遺伝要因が発症に関与することが知られている。これまで、疾患感受性遺伝子を見つける代表的な手法であるGWASを使って、数多くの2型糖尿病の疾患感受性遺伝子領域が報告されている。しかし、その多くは欧米人を対象に行われた解析であり、日本人での遺伝要因を解明するためには、日本人を対象としたGWASを行う必要があった。同研究チームは、約4万人の日本人2型糖尿病のGWASを行い、新たに同定された疾患感受性領域を別の約1万3千人の日本人集団を用いて検証した。その結果、2型糖尿病疾患感受性と関連するこれまでに報告されていかった7つの遺伝子領域を同定することに成功した。また、同定した7領域を含む90の疾患感受性遺伝子領域内の遺伝子について、さまざまな遺伝子情報データベースと照合したところ、既存の2型糖尿病治療薬に加え、他の病気の治療薬として開発された薬の中にも2型糖尿病の疾患感受性遺伝子領域をターゲットとしているものが複数あることがわかった。この結果によって、これらの薬が2型糖尿病の治療にも適応できる可能性があることが示された。今後、新たに同定された7つの領域内の遺伝子について、その働きを詳細に解析することで、2型糖尿病患者の個人の体質に合わせた治療法の確立につながることが期待される。
2016年01月29日大阪大学(阪大)と国立遺伝学研究所はこのほど、ゲノム編集技術「CRISPR/Cas システム」と「一本鎖オリゴ(ssODN)」を利用し、マウスやラットの遺伝子改変効率を向上させる新技術を開発したと発表した。同成果は阪大大学院医学系研究科附属動物実験施設の真下知士 准教授、国立遺伝学研究所マウス開発研究室の吉見一人 助教らの研究グループによるもので、英科学誌「Nature Communications」に掲載された。「CRISPR/Casシステム」は、DNAを切断する酵素Cas9と、ゲノム上の編集箇所を見つけ出すgRNAをマウスやラットなど動物の受精卵に注入することで、特定の遺伝子を破壊(ノックアウト)したり、特定の箇所へ導入(ノックイン)することができる技術。Cas9/gRNAと一緒に、ドナーDNA となる「ssODN」を導入すると、1~数十塩基(bp)のDNA配列をノックインすることができる。しかし、これまで動物の受精卵では、遺伝子などの大きなDNA配列の導入効率が低く、ノックイン動物を作製することが困難だった。今回の研究では、受精卵でのCas9タンパク質の発現を上昇させ、ゲノム編集効率を向上することに成功したほか、1~3kbp程度の長い一本鎖オリゴを作製した。これらにより、GFP(緑色蛍光タンパク質)遺伝子の効率的かつ正確なノックインに加え、これまで不可能だった大きなサイズのゲノム領域(約200kbp)の導入、ラット遺伝子のヒト由来遺伝子への置き換え(遺伝子ヒト化動物)に成功した。同研究グループは同成果について「マウスやラットなどのみならずさまざまな生物種における遺伝子改変操作の効率を向上させ、新しい遺伝子組み換え生物の作製に非常に有用な技術になることが期待されます。また、作製された遺伝子改変動物は、創薬研究、トランスレーショナル研究、再生医療研究などへの幅広い利用が期待されます。」とコメントしている。
2016年01月21日東北大学(東北大)と防衛医科大学(防衛医大)は1月18日、騒音性難聴に関する遺伝子を発見したと発表した。同成果は、東北大学 加齢医学研究所 遺伝子発現制御分野 本橋ほづみ 教授と防衛医科大学校 松尾洋孝 講師らの研究グループによるもので、1月18日付けの英科学誌「Scientific Reports」に掲載された。日常生活の中で大音を聞いたことがきっかけとなり生じる騒音性難聴は近年、内耳の酸化ストレスの増大が主要な原因であることが明らかにされてきた。このことから、内耳の抗酸化機能を強めることにより騒音性難聴を治療できると考えられるが、有効な薬はこれまでに開発されていない。今回、同研究グループは、酸化ストレス応答や異物代謝などの生体防御機構で中心的な役割を果たしている転写因子NRF2に着目。NRF2を欠損するマウスに強大音を聞かせたところ、聴力の低下が顕著であり騒音性難聴になりやすいことがわかった。また、正常のマウスにNRF2活性化剤をあらかじめ投与してから強大音を聴かせると、聴力の低下が抑制された。これにより、NRF2の働きを強めることは騒音性難聴の予防に有効であることが明らかになった。一方、強大音を聞かせた後にNRF2活性化剤を投与しても、聴力の低下を防ぐことはできなかったという。つまり、内耳が強大音により障害された後になってしまうと、NRF2の働きを強めても効果は小さいと考えられる。また同研究グループは、NRF2活性化剤を投与することにより、内耳では多くの生体防御に関わる遺伝子が誘導されており、酸化ストレスの指標となる過酸化脂質のレベルが低下することを明らかにした。NRF2は、酸化ストレス障害から内耳を保護することで、騒音性難聴を防いだといえる。さらにこの結果を受けて、NRF2の量と騒音性難聴のなりやすさがヒトでも関連するかどうかを調べるため、自衛隊中央病院で健康診断を受検した602人の陸上自衛隊員の聴力検査の結果とNRF2遺伝子の一塩基多型の相関を検討した。この結果、NRF2が少なめになる一塩基多型を持つ人の方が、騒音性難聴の初期症状である4000Hzの聴力低下が多く見られることがわかった。これにより、NRF2遺伝子の一塩基多型をもつ人は、強大音にさらされる前にあらかじめNRF2活性化剤でNRF2の働きを強めておくことで騒音性難聴を予防できる可能性があると考えられる。今回の研究では騒音性難聴を取りあげたが、もうひとつの主要な感音難聴である加齢性難聴でも、内耳の酸化ストレスがその原因であるとされているため、NRF2の活性化により内耳の抗酸化機能を高めることは加齢性難聴の軽減にもつながると期待されると、同研究グループは説明している。
2016年01月19日カナダ・モントリオールで開催された「2014年ファンタジア国際映画祭」で脚本賞を受賞した、人類の禁忌を描くバイオロジック・ホラー『エリザベス神なき遺伝子』の公開に先駆け、本編映像の一部がどこよりも早くシネマカフェに到着した。遺伝子科学者のヴィクター・リード博士は初めての人間のクローン創出に成功、その実験で生まれた女の子の赤ちゃんにエリザベスと名付ける。博士はエリザベスに様々なテストを行うがしかし、その行為と写真がマスコミに流出してしまい、それによって世界を揺るがす道徳的、宗教的大論争を巻き起こすことになる。やがてその論争の中で、エリザベス誕生に費やされた彼の過去と実験の失敗の数々が明らかになっていく。それは人類が見る究極の悪夢の始まりだった…。本作は、映画が描いてはいけない領域、ヒトクローンの創出というタブーに踏み込んだ最狂マッドバイオロジック・ホラー。その禁断に踏み込んだ監督は、ビリー・セニーズ。また『ラスト・キャッスル』のジェレミー・チャイルズがリード博士を演じながら、製作も兼任している。クローン人間が題材とされた作品は数多く存在していて、マンガやアニメ、SFドラマや映画で度々登場している。羊のドリーなど動物では数多くの成功例はいくつかあり、さらにはiPS細胞の登場によって、技術的にクローン人間が現実味を帯びて来た昨今。かつては空想物語がほとんどであったが、本作では「今もし“クローン人間”がつくられたらどうなるのか」を、リアリティ溢れる描写で描いている。今回到着した映像は、クローン人間“エリザベス”の誕生の発表とともに、遺伝子科学者のヴィクター・リード博士がクローン人間の重要性を語るシーン。「人類の進化だ」と話す一方で、記者からの質問に対し、生みの親も、博士以外のドナーも明かせないなど、曖昧な答えを繰り返す様子に、彼しか知らない公にはできない“何か”の存在を感じさせる映像となっている。幅広い世代に伝わるメッセージ性の高い本作は、ホラー映画だからこそヒトクローンが創出される現実の恐怖を表現することができている。人間の進化か、それとも神への冒涜か――、まずはこの映像で“人間製造”に取り憑かれた科学者の悪夢の一端を目撃して。『エリザベス神なき遺伝子』は1月16日(土)よりヒューマントラストシネマ渋谷にて、1月24日(日)よりシネ・リーブル梅田ほか全国にて公開。(cinemacafe.net)
2016年01月15日国立がん研究センターは1月13日、これまでがん化との関連が解明されていなかった「IER5遺伝子」が、がん細胞の増殖に関与していることを発見したと明らかにした。IER5遺伝子は腎がんや大腸がん、膵(すい)がんなど複数のがんで発現上昇することも示された。これにより、IER5を分子標的として阻害することで、がんを抑制できる可能性が示唆されたという。同研究成果は、国立がん研究センター研究所希少がん研究分野の大木理恵子主任研究員の研究グループが行ったもので、英科学誌・ネイチャー系オンライン科学誌「サイエンティフィック・リポーツ」に掲載された。正常細胞では、「HSF1(Heat Shock Factor 1)」と呼ばれる転写活性化因子(DNA上の特定の塩基配列に結合し、他の遺伝子の発現を強めるタンパク質)の活性が低く保たれている。HSF1は熱ストレスなどにより活性化し、「ヒートショックプロテイン(Heat shock protein: 熱ストレスなどによって構造が壊れた他のタンパク質を修復するタンパク質)」を誘導することによって、ストレスから回復することがこれまでにわかっている。近年はがんの発生や悪性化にHSF1が関わっていることが報告されていたが、そのメカニズムは明らかとなっていなかった。同研究では、「IER5遺伝子」と呼ばれる遺伝子が腎がんや大腸がんなどのがんで発現上昇し、HSF1と結合してHSF1を活性化、後にヒートショックプロテインを誘導し、ストレスを回避することでがん細胞の増殖に寄与することが示された。また、IER5の発現を抑制するとがん細胞の増殖が抑制されること、さらにはHSF1と結合できないIER5はHSF1を活性化できないことも示された。これらの事実から、IER5とHSF1の結合を阻害する化合物の探索によって、がん治療薬の開発につながることが示唆された。同センターは、「現在、ヒートショックプロテイン阻害剤をがん治療薬にする開発が進んでいますが、本研究成果を応用した、その上流にあるIER5を阻害する化合物の開発により、より効果の高いがん治療薬の創出につながることが期待されます」とコメント。そのうえで、今後は「動物モデルを使った研究により、IER5ががんの浸潤転移にどのように関わるかを明らかにする」予定としている。
2016年01月14日国立がん研究センター(国がん)は1月12日、同センターの中央病院にがん診療に網羅的な遺伝子診断に基づく診療の本格導入を目指し、「遺伝子診療部門」を開設したと発表した。これまでも同病院では、遺伝的にがんになりやすい人に向けたゲノム診療である「個別化予防」を遺伝相談外来で行ってきたが、もう一方のゲノム診療である個々のがん患者の遺伝子異常に基づいた「個別化治療」については、検査の品質管理、遺伝子解析情報の臨床的意義付け、患者への伝達方法、情報の取り扱いなどさまざまな課題が残されており、本格的な日常診療への導入には至っていなかった。そこで同病院は2013年より、個々の患者の治療選択における網羅的遺伝子検査の有用性を検証する目的の研究「TOP-GEARプロジェクト」を進めてきており、2015年末には十分な精度管理が担保された網羅的遺伝子検査室を院内に設置するに至り、個別化治療としてのゲノム診療を開始するための体制が整ったことから、今回の開設に至ったとする。同センター中央病院の荒井保明 院長は、「飛行機の進歩は1903年より始まったが、当初は冒険、挑戦という位置づけであった。しかし、数十年を経て、人々が自由に活用し、好きなようにどこでも行きたいところに行くために利用することができるようになった。遺伝子の研究も、長年にわたって進められてきたが、いまだに手軽に自由に診療の現場で活用できるまでには至っていない。今回の取り組みは、すぐに民間で活用できる段階に至ったというわけではないが、がん診断の際に、遺伝的な可能性が生じた場合、がんを専攻してきた医者であっても、現状はその内容を完全に理解できるのは極一部であり、その専門性を診療レベルに翻訳してくれるプロが間に入ることで、遺伝子に関する情報を整理して提供するという仕組みができるようになった。今回の部門開設によって、これからの日本のがん診療の新たな1ページが開かれたことを感じてもらいたい」と語り、ゲノム診療を日常診療に導入する第一歩が始まったことを強調した。具体的には、国がんが中心となって開発した約100遺伝子の異常を1回で網羅的に調べることが可能な検査キット「NCCオンコパネル」を用いて、2015年11月に中央病院内に開設した「SCI-Lab」にて検査を行うことで、実際の診療で活用可能なレベルの速度を実現する。とはいえ、リソースには限りがあるため、すぐに同病院のすべての患者に実施というわけにはいかないともするほか、遺伝子異常に効果がある阻害薬の多くが認証に至っておらず、保険適用ができないこともあり、対象はまずは、治験や臨床試験に参加する患者から、という形になるという。ただし、同センターでは、医師主導治験をセンター外の病院でも実施して、幅広い連携を進め、最終的には薬事承認まで持っていきたいとしており、ゲノム診療に基づく保険適用の実現を目指すとしている。なお同部門は、中央病院のほか、研究所などの各部門におけるゲノム診療や研究に関わるメンバーで構成されており、専門家チームによる最終診断、解析結果レポートの作成、診療コンサルテーション、遺伝相談外来併診など、中央病院の全診療科のサポートする形で運営されるという。
2016年01月13日帝京平成大学はこのほど、不安症に共通する疾患感受性遺伝子2カ所を発見したと発表した。同成果は同大の音羽健司 教授と米国バージニア・コモンウェルス大学のジョン・ヘッテマ 准教授らの国際共同研究グループによるもの。1月12日(現地時間)の米科学誌「Molecular Psychiatry」に掲載された。不安症とは、不安反応が過剰に長期間持続するため日常生活に支障をきたす疾患のことで、これまで神経症と呼ばれていた。同疾患には全般性不安症、パニック症、社交不安症、恐怖症などがあり、比較的頻度の高い疾患として知られている。これまでの研究から遺伝的要因が関与していることが報告されていたが、確立して遺伝部位は発見されていなかった。今回の研究では、米国、欧州、豪州を中心とした研究者によるる国際共同研究グループを結成し、計1万8000人を対象とした全ゲノム関連解析のメタ解析を行い、不安症の発症に関与する遺伝子の探索を行った。解析は患者と健常者を比較する方法と、不安に固有の因子を用いて全対象者を調べる方法の2通りが実施された。解析の結果、患者・健常者を比較する方法では3番染色体に位置する非コードRNA領域上の特定の遺伝子変異が、また全対象者を調べる手法では2番染色体に位置するCAMKMT遺伝子上の特定の遺伝子変異が不安症のなりやすさに関係することがわかった。今後、これらの遺伝領域が不安症の発症に影響を与えるメカニズムを解明することで、新しい診断法や治療薬の開発、予防方法の解明につながることが期待される。
2016年01月12日広島大学は1月8日、不整脈により突然死を起こすブルガダ症候群(ポックリ病)の発症リスクが低減する遺伝子を発見したと発表した。同成果は広島大学病院の中野由紀子 講師、同大大学院医歯薬保健学研究院の木原康樹 教授、越智秀典 講師、茶山一彰 教授と理化学研究所らの研究グループによるもの。米科学誌「Circulation:Arrhythmia and Electrophysiology」に掲載された。ブルガダ症候群は、2000人に1人発症する病気で、普段は全く症状がなく、致死的不整脈により突然死を起こすため、ポックリ病と呼ばれる。近年、検診時の心電図(ブルガダ型心電図)などで症状の無い(無症候性)ブルガダ症候群患者を早期発見できるようになり、無症候性ブルガダ症候群患者の一部に対し、突然死予防のために植え込み型徐細動器というデバイスの埋め込みが行われている。しかし、無症候性ブルガダ症候群の突然死のリスクの予測判断材料が確立されているわけではない。今回の研究では、ブルガダ症候群患者は健康な人に比べHEY2遺伝子多型(rs9388451)の変異型が多いことを確認。中でも無症候のブルガダ症候群に多いことを初めて発見した。また、HEY2遺伝子多型の変異型を有するブルガダ症候群患者は、平均63カ月の観察期間内に致死的不整脈を起こす割合が有意に少なく(変異型有6% vs 変異型無19%)、この遺伝子がブルガダ症候群の発症を抑える役割を果たしている可能性が示唆された。同研究グループは「今回の結果は、突然死を起こすブルガダ症候群のリスクの層別化に有用であり、突然死の予防や不要な治療侵襲の抑止に役立つ可能性があり、患者さんに大きなメリットとなります。」とコメントしている。
2016年01月08日広島大学はこのほど、不整脈により突然死を起こすブルガダ症候群(ポックリ病)の発症リスクを低減させる遺伝子を発見したことを明らかにした。広島大学大学院 医歯薬保健学研究院の木原康樹教授らの研究グループによるもので、突然死の予防や不要な治療による体へのダメージ抑制への期待が持てるという。2,000人に1人が発症するとされるブルガダ症候群は、普段は全く症状がなく、致死的不整脈によって突然死を引き起こすため、「ポックリ病」とも呼ばれる。近年は、検診時の心電図(ブルガダ型心電図)などで症状のない無症候性のブルガダ症候群患者を早期発見できるようになっている。だが、突然死のリスクの予測判断材料として確立されたものはないとのこと。今回、研究グループはブルガダ症候群の患者は、健康な人に比べて「HEY2遺伝子多型(rs9388451)」の変異型が多いことを確認し、特に無症候のブルガダ症候群に多いことを初めて発見したという。研究グループは、ブルガダ症候群の患者(ブルガタ群)95人と健康な人(健常群)1,978人でHEY2遺伝子多型変異型の保有の有無を調査した。その結果、HEY2遺伝子多型変異型の保有率はブルガタ群(69%)が健常群(57%)よりも高かった。しかも、致死的不整脈既往のある有症候ブルガダ症候群(59%)よりも、既往のない無症候ブルガダ症候群(74%)のほうが高かったという。また、ブルガダ症候群の患者を63プラスマイナス28カ月にわたり経過観察したところ、HEY2遺伝子多型変異型を有する患者では、有意に致死的不整脈の発症が少ないことも確認した(変異型有: 6%、変異型無: 19%)。心電図指標では変異型を有する症例の方がQTc時間が長く、HEY2mRNA発現量が少ない点も確認したことから、HEY2遺伝子多型変異型は心臓の活動電位を修飾することで、ブルガダ症候群における致死的不整脈の発症を抑える役割を果たしている可能性が示唆された。これまでブルガダ症候群の発症リスクと考えられていたHEY2遺伝子が、実はブルガダ症候群において心室細動の発症リスクを低減し、予後を改善する役割があるとわかった点が、同研究の大きな意義と研究グループは見ている。今回の発見は突然死予防のための創薬、遺伝子治療につながる可能性があり、今後は心電図指標などと組み合わせて、より精度の高いリスク評価の方法を確立することを目指すとしている。
2016年01月08日東北大学(東北大)は12月14日、遺伝性ミオパチーのひとつである筋変性疾患ジスフェルリン異常症を引き起こす遺伝子群を解明したと発表した。同成果は、同大学大学院医学系研究科 神経内科学分野 青木正志 教授らの研究グループ、および遺伝医療学分野 新堀哲也 准教授、青木洋子 教授らによるもので、12月10日付の米科学誌「Neurology Genetics」オンライン版に掲載された。ミオパチーは病状の進行とともに筋力の低下や筋肉の萎縮が生じる筋疾患の総称。成人で発病する遺伝性ミオパチーのなかで患者数の多いものが、肢帯型筋ジストロフィーと遠位型ミオパチーで、ジスフェルリン異常症は、DYSF遺伝子変異によっておこる肢帯型筋ジストロフィー2B型や三好型遠位型ミオパチーの総称となっている。ジスフェルリンは、筋細胞膜の傷害後の修復過程で重要な役割を持つタンパク質とされており、ジスフェルリン異常症の患者においては、ジスフェルリンの機能が失われることで、筋細胞の炎症や変性が生じると考えられている。先行研究では、ジスフェルリン異常症が疑われる160人のPCR-SSCP法によるDYSF遺伝子検査を行ってきたが、そのうちDYSF遺伝子に変異が確認できたのは約60%で、残りの患者では変異が確認されていなかった。今回の研究では、これらの患者を対象に、次世代シークエンサーを用いて筋疾患と関連することが知られている42遺伝子の翻訳領域を対象に遺伝子の配列決定を行い、原因遺伝子を探索した。この結果、解析した64名のうち新たに38名で症状と関連が疑われる原因遺伝子変異が確認された。骨格筋組織でジスフェルリンの発現の低下が確認されている90名の横断的解析では、その70%にDYSF遺伝子、10%にCAPN3遺伝子、5%にほかの遺伝子の変異が認められ、ジスフェルリン異常症を引き起こす遺伝子の種類やその割合などの具体的な遺伝子背景が明らかとなった。今後は解析を継続することで、ジスフェルリンの機能と密接に関わる新たな分子が明らかとなり、ジスフェルリン異常症の筋細胞膜の修復障害の病的機序が明らかとなる可能性があるという。
2015年12月15日京都大学は12月14日、セロトニン受容体1A遺伝子(HTR1A)の遺伝子型によってサラブレッド馬の扱いやすさに違いがあることがわかったと発表した。同成果は、同大学 文学研究科 堀裕亮 博士、藤田和生 教授および野生動物研究センター 村山美穂 教授らの研究グループによるもので、11月19日付の英科学誌「Animal Genetics」速報版に掲載された。今回の研究は、JRA 日高育成牧場で2011年~2013年に飼育され、乗り馴らしを受けたサラブレッド1歳馬167頭を対象に行われた。研究では「新しい物体・ヒトへの不安」、「新しい環境への慣れにくさ」、「大きな物体への恐怖」、「反抗的な態度」、「体を触られることへの不安」といった5つのカテゴリーの17項目について、3名の牧場職員が評定・得点化。また、これらの馬から血液を採取し、DNAを抽出してHTR1Aのタンパク質をコードする領域の配列を調べた。この結果、標的となった領域のうち、709番目の塩基に一塩基多型(Single Nucleotide Polymorphism:SNP)があり、709番目の塩基がグアニン(G)の場合とアデニン(A)の場合の2種類の対立遺伝子があることがわかった。これについて、扱いやすさとの関連を分析したところ、Aの対立遺伝子をもつ個体はもたない個体に比べて、扱いにくいことがわかった。またこの効果はオスよりもメスでより顕著に見られたという。同研究グループによると、同研究の再現性が確かめられれば、遺伝子型から個体の性質を予測し、それに合わせた飼育管理方法の開発や、乗馬・セラピーホースなどとしての適性の評価などにも応用が期待されるとしている。
2015年12月14日国立がん研究センター(国がん)は11月13日、シスメックスと共同で次世代シークエンサー(NGS)を用いた網羅的遺伝子検査を行う「Sysmex Cancer Innovation Laboratory(SCI-Lab)」を同センター中央病院内に開設し、同検査を実臨床に導入することでがん患者の遺伝子情報を治療選択に活用することを目指す臨床研究「TOP-GEARプロジェクト」第2段(TOPICS-2試験)を2016年1月より開始すると発表した。がん診療における遺伝子解析には、正常な細胞から個人の体質を調べる生殖細胞系列遺伝子検査と、がん細胞の中の変化を調べる体細胞遺伝子検査がある。前者では個人の体質を対象としているため発見された異常が遺伝性のものである場合があるが、後者の場合はがん細胞の中で起こる変化であるため発見される異常は遺伝性ではない。SCI-Labが対象とするのはがん細胞の中の変化を調べる体細胞遺伝子検査で、遺伝子異常を解析することによって最適な治療薬の選択につなげることができる。同研究センター中央病院 病理・臨床検査科の角南久仁子 医員は「遺伝子異常に対する薬剤治療は、比較的副作用が少なく、治療効果が高い」と語り、適切な治療を行うためには正しい遺伝子診断が重要であると説明する。従来の検査法では、一度につき1つの遺伝子しか解析できず、結果が出るまでに2週間かかっていた。これに対し、SCI-Labでは国がんが開発した遺伝子パネルを用いて一度に約100種類の遺伝子を網羅的に調べることができるため、効率的に遺伝子診断を行い各患者の遺伝子情報に基づく個別化医療を実現できると考えられている。同センターは2013年から2014年にかけて同プロジェクトの第1段試験(TOPICS-1)を実施しており、そこで専門チームの設置など体制づくりを含めた網羅的遺伝子検査システムを構築し、有用性を検証した。その結果、網羅的遺伝子検査システムの有用性は確認された一方で、診断結果を患者にフィードバックし治療選択に導入するためには検査の品質保証が必要であることがわかった。来年1月より実施されるTOPICS-2では、TOPICS-1で構築した体制をベースに、実臨床で使える検査としての信頼性を確保するため、国際基準レベルの品質保証のもと、網羅的遺伝子検査システムを運用する。SCI-Labはシスメックスとの共同運営になるが、品質保証の面では、日本で初めて米国臨床検査室改善法(CLIA)を所得した理研ジェネシスの支援を受けるという。同臨床研究は、同センター中央病院と東病院において治療中で、担当医が網羅的遺伝子検査が治療選択に有用と判断した患者を対象に行う。具体的には、標準的な抗がん剤治療が終了、もしくは終了することが予想される患者や希少がん患者、15~39歳を含めた若年の患者などを想定しており、1年間で約200症例の検査を行うことを目標としている。
2015年11月13日