Windows 10の「設定」には「更新とセキュリティ\開発者向け」があり、Windows 10の使用状況に応じて変更可能。通常は標準設定のまま使うことになるが、どのような機能なのか気にならなくもない。今回はエンドユーザー向けの「開発者向け」の各項目について解説する。○Windows 10上でアプリ開発を行うユーザー向け「開発者向け」の画面には、「Windowsストアアプリ」「サイドロードアプリ」「開発者モード」という3つの選択肢が用意されている。ちなみにWindows 10の英語版では、「Windowsストアアプリ」は「Don’t use developer features(開発者向け機能を使用しない)」という項目名だ。Windows上でアプリケーション開発を行わないユーザーには、ピンと来ないのではないだろうか。既定値の「Windowsストアアプリ」は、文字どおり、「Windowsストアから署名済みのアプリケーションのみ」、ダウンロード可能にする設定だ。例えば「サイドロードアプリ」を選択すると、確認メッセージとともにモードが切り替わる。まず「サイドローディング」とは、Windowsストアを経由せずに、デバイスにアプリケーションをインストールする機能をいう。Windows 8時代からLOB(基幹業務)アプリケーションなどの配布に用いられてきた。Visual Studioという開発ツールでユニバーサルWindowsアプリを作るとき、生成される証明書のインストールを必要とするため、セキュリティ保護を残しているのが特徴といえよう。3つめの「開発者モード」は、任意のアプリケーションをサイドローディング(インストール)可能にする。これにより、LAN上のWindows 10およびWindows 10 Mobileデバイスに対して、アプリケーションを展開できるようになる。つまり、セキュリティ保護が大幅に緩まるのだ。このように、「開発者向け」機能はソフトウェア開発を容易にするものだが、一般的なエンドユーザーにとってはセキュリティリスクにもなり得る。BYODや会社支給のデバイスだと、業務内容によって「サイドロードアプリ」が選択済みの場合もあるが、開発に携わらないユーザーは既定値の「Windowsストアアプリ」のまま使うことを強くおすすめする。阿久津良和(Cactus)
2015年11月27日米Microsoftは11月17日「Enterprise security for our mobile-first, cloud-first world」と題したブログ記事を公開した。「モバイルファースト、クラウドファーストにおけるエンタープライズセキュリティ」と、一見するとエンドユーザーには関係がない話に見える。だが、水に色がついていないように、我々が普段から使用するインフラにコンシューマーもエンタープライズもない。そこで同記事から今後のMicrosoftが目指すセキュリティ分野の将来を読み解く。記事を投稿したMicrosoft Chief Information Security OfficerのBret Arsenault氏は、「(CEOの)Satyaは、各種ツールを連係した新たなセキュリティ手法を確立させようとしている。そのためセキュリティ関連の研究機関に10億ドル以上を毎年投資してきた」と自社の取り組みを明らかにした。この10億ドルという金額は、Microsoftにとってどの程度の比重を占めているのだろうか。同社は2015年6月期決算の純利益を122億ドルと発表しているため、その約12%をセキュリティ分野の研究に投資していることになる。さらに他分野の研究にも投資しているため、ソフトウェア企業というよりもPaaSやIaaSと主軸としたインフラ企業的なアプローチだ。先のブログ記事では新たなセキュリティ対策として、「あらゆるエンドポイントを適切に保護するため、クラウドや機械学習、行動モニタリングなどを活用して、セキュリティ脅威の検知を迅速化しなければならない。我々が持つさまざまなツールを組み合わせて『Intelligent Security Graph』を構築し、全エンドポイントの保護やサイバー攻撃の検知、対応の加速化に努める」と述べている。セキュリティ対策活動の中心となるのは新設した「Cyber Defense Operations Center」が担う。同施設には自社のセキュリティ専門家やデータアナリスト、エンジニアなどが集結し、24時間体制でセキュリティ対策にあたるという。ボットネットのように民間企業だけでは対策が難しい場合、DCU(Digital Crimes Unit)と連係してサイバー犯罪に対抗する予定だ。さらにエンタープライズセキュリティを専門に扱う「ECG(Enterprise Cybersecurity Group)」も合わせて発表。こちらは、ITプラットフォームの刷新を図りたい顧客に対するサービスだ。Microsoftがセキュリティ分野で他社の後塵を拝しているという見方は、"過去の印象"として忘れた方がいいだろう。同社が"Trustworthy Computing(信頼できるコンピューティング)"を提唱した2002年から10年以上を数える。その間、Microsoftのセキュリティ対策に取り組む姿勢は前向きだ。2004年9月リリースのWindows XP Service Pack 2では"セキュリティ強化機能搭載"というサブタイトルを付けた。2009年9月にはクライアントOS向けに「Microsoft Security Essentials」の無償提供を行い、そのサポート体制はWindows 10のWindows Defenderにも受け継がれている。サイバー犯罪対策拠点となる「Cybercrime Center」を日本を含む各国に設立し、法的機関との連携は前述したDCUが担いつつ、GSSD(Global Security Strategy and Diplomacy)チームは各国政府と連係して、ワールドワイドのセキュリティレベル向上に努めてきた。もちろん営利企業であるMicrosoftは、ビジネスの中核にある"モバイルファースト、クラウドファースト"を妨げるサイバー犯罪を排除しなければ利益につながらない。他方で大企業の責務である社会貢献という意味でセキュリティ対策に投資しているという側面もあるだろう。だが、重要なのは我々がICT社会で恩恵を受けるインフラ構築の安全性に同社が寄与している点だ。"安全なインターネット"という未来を望む筆者は、同社の活動を素直に応援したい。阿久津良和(Cactus)
2015年11月24日11月16日~11月22日までの1週間に発表された、PC関連の注目ニュースをダイジェストでお届けする。先週は米国時間19日、米AMDがデスクトップ向けGPUの新モデル「Radeon R9 380X」を発表。「Radeon R9 390」と「Radeon R9 380」の間に位置する製品で、編集部でのファーストインプレッションでも、実際にR9 390とR9 380の中間程度のパフォーマンスが得られている。「フルHD以上、4K未満」のゲーム需要に応えた製品といえそうだ。実勢価格は税別3万円台半ばから4万円台前半程度。レポート・レビュー関連では、ライター阿久津良和氏の連載「Windows Weekly Report」のSurface Pro 4試用レビューが注目された。また、QualcommのSoC「Snapdragon」を搭載したシングルボードコンピュータ「Dragon Board 410c」の発売に先駆けた、ライター海上忍氏による分析レポートも、読者からの関心度が高かった。
2015年11月24日既にWindows 10 ビルド10586.3へのアップデートが始まっているが、一部の環境ではWindows Updateに更新プログラムが現れないという。そこで頼りにするのが、Microsoftがリリースしている「メディアクリエイションツール(MediaCreationTool.exe)」だ。今回はメディアクリエイションツールを使ったアップデート方法を紹介する。■2015年11月23日(月)・編集部追記2015年11月22日(日)の時点で、最新の「メディアクリエイションツール(MediaCreationTool.exe)」を用いた「Windows 10 バージョン 1511 (OSビルド 10586.x)」へのアップデートができなくなっている模様。英語のダウンロードページには「These downloads cannot be used to update Windows 10 PCs to the November update (Version 1511).」という記述が見られる。この先は分からないが少なくとも現時点では、Windows 10 バージョン 1511へアップデートするには、Windows Updateに出現するのを待つしかないようだ。以下の内容はトラブルシューティングにも応用できるため、知識の一助にしていただきたい。○メディアクリエイションツールメディアクリエイションツールは本来、USBメモリーやDVD-Rなどでインストールメディアを作成するツールだが、Windows 10を最新版にアップデートする目的でも利用可能だ。ダウンロードページから入手した「MediaCreationTool.exe」を実行すれば、ほぼ自動的にダウンロードからインストールメディアの作成、そして最新版へのアップデートが始まる。各図をご覧になると分かるように、Windows 7やWindows 8.xからWindows 10へのアップグレードと同じプロセスで進んでいく。Windows 10 ビルド10240からビルド10586.3へのアップデートは、Windows.oldフォルダーを作成して、新たなWindows 10環境の作成やユーザーデータの移行を行っているため、その内容に大差はない。また、Windows 10にアップグレードしたが、どうにもPC環境が不安定な場合は、ここでユーザーデータ(ユーザーフォルダーやAppDataフォルダーなど)をバックアップし、「何も引き継がない」を選択すれば、ほぼ新規インストールになる。どうしても修正できない問題が発生している場合の選択肢として覚えておくといいだろう。阿久津良和(Cactus)
2015年11月21日通知領域に常駐するWindows 10のOneDriveクライアントは、OneDriveフォルダー(通常は「%USERPROFILE%\OneDrive」フォルダー)上のファイルをバックグラウンドで同期している。クラウド側であるOneDriveの仕様に合わせてクライアントも更新されるが、最近、新たな機能が加わった。今回はクライアントの自動保存機能について紹介する。○常にバージョンアップするOneDriveクライアントOneDriveクライアントは「%LOCALAPPDATA%\Microsoft\OneDrive」フォルダーに格納され、必要に応じて自動更新する仕組みだ。2015年7月にWindows 10へアップグレードした際も、「最新のOneDriveにアップデートしています~」といったメッセージを目にしたことがある方も少なくないだろう。上図は前述したフォルダーの内容だが、フォルダーのタイムスタンプを確認すると、Windows 10無償アップグレード開始後に3回もバージョンアップしたことに気づかされる。このようにWindows 10本体に限らず、周辺のアプリケーションもシームレスにバージョンアップするのだ。○文書ファイルや写真はOneDrive上に自動保存執筆時点の最新版クライアントでは(バージョン17.3.6201.1019)、「自動保存」タブを設けて、ドキュメントや画像ファイルの保存先としてローカルストレージ、もしくはOneDriveを選択できるようになった。「ドキュメント」「写真」の保存先を「このPC」から「OneDrive」に変更すると、クイックアクセスに並ぶ各項目のリンク先がOneDriveフォルダー内に切り替わる。もちろん既存のドキュメントやピクチャフォルダーは残されており、ファイルが移動することもない。だが、各アプリケーションの動作は変化する。例えばメモ帳の既定保存先はOneDrive上のドキュメントフォルダーに変化し、「Win」+「PrtSc」キーで作成する画面キャプチャーファイルもOneDrive上の画像\Screenshotsに切り替わる動作だ。このように設定を変更すれば、複数のPCを併用する場合はスムーズなファイル操作が実現可能になる。ただし、OneDriveの容量無制限は撤回されているので、空き容量に関しては注意が必要だ。阿久津良和(Cactus)
2015年11月20日●200以上の機能が加わった「Windows 10 November Update」11月18日、日本マイクロソフトは、11月12日にリリースした「Windows 10 November Update」や日本独自で行った開発への取り組みについて記者説明会を開催。米MicrosoftからはWindows&Devices Group Cortana担当パートナーグループプログラムマネージャーのMarcus Ash(マーカス・アッシュ)氏も来日し、Windows 10 November Updateから使用可能になったパーソナルアシスタント「Cortana(コルタナ)」の概要について説明した。○200以上の機能が加わった「Windows 10 November Update」最初に登壇した日本マイクロソフト Windows本部本部長 三上智子氏は、Windows 10 November Updateがコンシューマー向けと法人向けで異なるアプローチを持ち、「200以上の機能追加を行った」と説明している。Windows 10は「WaaS(Windows as a Service)」として2015年7月29日に無償アップグレードが始まったが、今回のWindows 10 November Updateは初めてのメジャーアップデートにあたる。無償アップグレード開始時点では、法人向けの機能はあまり多く備えておらず、今回のメジャーアップデートでも実装数はそれほど多くない。これはMicrosoft Azureの一部サービスがローンチに至っていないため、歩調を合わせているからだろう。まずはコンシューマー向け機能に注目したい。三上氏はWindows 10 November Updateの特徴として、まもなく登場するスマートフォン向けOSのWindows 10 MobileやXbox One向けWindows 10のリリース決定について「クロスプラットフォームの強化」とアピールした。また、法人・開発向けの話題となるが、組み込みデバイス向け「Windows 10 IoT」各エディションの国内発表も相まって、"One Windows"の勢いはますます高まっている。Windows 10 November Update自身に関しても「1,000万を越えるフィードバックに耳を傾けて、改良を加えてきた」という。そのWindows 10 November Updateが備える特徴として三上氏は4つのポイントを掲げた。1つめは各国の文化や生活を反映させた「Cortanaの初公開」。2つめはリーディングリストやお気に入りの同期機能、タブプレビュー機能を備えた「Microsoft Edge」。3つめはSkypeビデオやメッセージング、Swayなどを新搭載し、メールやフォト、カレンダーを改良した「標準搭載アプリの改善」。4つめは遊ゴシックや遊明朝ファミリーの品質向上を図った「日本語フォントの改善」だ。特に日本語フォントの改善は、日本からのフィードバックがもっとも多かったという。三上氏は「国内に開発拠点(=マイクロソフト ディベロップメント)があるため、比較的迅速な対応ができた」と述べる。無償アップグレード前のWindows 10 Insider Previewでも日本語フォントに対するフィードバックは多く、無償アップグレード前に改善が加わったように記憶している。詳しい変更点は後述するが、Windows 10 November Updateはさらに日本語フォントが見やすくなったようだ。法人向け機能としては、Windows Update for Businessやビジネス向けWindowsストアのサポートを筆頭に、モバイルデバイス管理の強化やAzure Active Directory Joinの強化、各セキュリティ機能を組み合わせた企業の安全性を確保した5つのポイントが大きいという。やはり注目すべきは前半の2つだ。Windows Update for Businessはアップデートや新機能のインストール時期などを制御できる機能だが、現時点(ビルド10586.3)では、グループポリシー設定で時期を選択し、今後は既存の管理ツールからの制御方法も加わる予定だ。任意のアプリケーションを企業内で配信するビジネス向けWindowsストアも既に利用できる。使用するにはMicrosoft Azure Active Directoryや企業向けOffice 365のアカウントなどが必要になるものの、LOB(基幹業務)アプリケーションの配布などは、今まで以上に簡素化するという。なお、企業が制御できないアプリケーションなどを通じてデータが漏洩するリスクを軽減するEDP(Enterprise Data Protection)は、今後のWindows 10 Insider Previewで提供を予定していると説明した。●日本語版Cortanaのポイント○日本語版Cortana初披露を本社担当者が解説次に、マイクロソフトディベロップメント(MSD)代表取締役社長 安達理氏が登壇すると、自社が各製品の多言語化ではなく、WindowsやOffice、Bingなどの製品開発に取り組んでいることを説明。先ごろリリースした「Office Lens」もMSDが開発したことをアピールした。安達氏は「WaaSの"Service"は、Outlook.comやOneDriveと同じSaaS(Software as a Service)と同じ意味を持つ。従来のWindowsは数年の間、開発したコードをサーバーに蓄積し、ビルドやパッケージングといったプロセスを必要としていたが、(昨今は標準化しつつある)アジャイル開発にそぐわない。Windowsという巨大なソフトウェアのアジャイル開発を行うのが我々の目標である」と、Microsoft全体の開発スタンスが変化したという。さらに、新規開発した機能を全体の0.01%(のユーザー)に提供して、その結果をフィードバックや使用頻度などを踏まえて判断し、うまく行けば0.1%、1%、10%……と段階的な展開を行う仕組みで開発や機能提供を行っていくと説明した。現時点のWindows 10 Insider Previewに同様の仕組みは備わっていないように見受けられるが、2016年リリース予定の「RedStone(開発コード名)」完成までには、段階的な展開が加わるのだろう。Windows 10 November Updateでは、一般ユーザーが初めてCortanaを使えるようになったため、ここでMicrosoftのMarcus Ash氏が登壇した。Ash氏は「ユーザーが複数のデバイスを所有し、異なるUIで操作が煩雑なる将来を予測していた。2012年から始めたCortanaへの取り組みは、最適なUX(ユーザーエクスペリエンス)を提供することを念頭に開発した」と、パーソナルアシスタントの成り立ちを説明した。続けて「Cortanaはユーザー個人を理解し、好みや行動を学んでいく。長く使えばスマートになり、ユーザーの先を見越した助言や手助けを行う。我々は"コンピューティングの正しい姿"として、このような行動をCortanaで実現しようとしている」と語る。Ash氏はWindows 10やWindows 10 Mobileなど、"One Windows"プラットフォームすべてで動作するCortanaの未来を語り、現時点で10億以上の質問がCortanaに対して寄せられていることを明らかにした。米国と日本で提供するCortanaの違いについては、「Cortanaはグローバルな製品だが、各国で異なる文化にフィットしたスタイルを身につけなければならない。日本であれば『丁寧さ』を表現するため、アイコンが挨拶するが、これは日本独自のスタイルだ」と、国ごとにCortanaが異なるスタイルを持つことを説明。スライドでTwitterのフィードバックを紹介し、「日本でも期待を集めていることを感じる。より多くのフィードバックを得て、Cortanaを成長させていく」と締めくくった。なお、Cortanaに関しては、Ash氏およびMSDの開発メンバーに詳しい話を伺ったので、後日その内容をご報告する。●November Updateで変わった日本語フォントとCortanaさて、本発表会で注目すべきは、Windows 10 November Updateに対するMSDのコミット領域である。安達氏の説明によると、フォントの描画品質の改善や語類の拡充、そして前述した日本語版Cortanaの開発など、日本語に携わる部分を主に行った。MSDの渡邊飛雄馬氏はデモンストレーションを交えながら、具体的な変更点として、「レンダリングエンジンを改良し、文字の見栄えがよくなった」と説明。下図で示したように「で」のジャギーが発生していた部分を修正したり、「饗」という漢字がつぶれずに正しく表示されるようになったりしている。また、標準UIフォント「Yu Gothic UI」のヒンティング(アウトラインフォントを表示する際の最適化技術)を修正して、文字間のバランスを調整し直したという。こちらも下図で示したように、「かつては『デ』が小さくアンバランスに見えていた部分を調整している。漢字とカタカナやひらがなとのバランスも再調整した」そうだ。語類の拡充は、Bingのオートサジェスト機能を利用したMS-IMEの「クラウド候補」によって、使用できる語彙(ごい)を増やしたというものである。検索エンジンのデータベースを使っている関係から、語類が拡充するのは自明の理だ。筆者が以前MSD関係者に尋ねたところ、「一定のしきい値を使って採用する語句は取捨選択している」と説明されたが、芸能人の名前や新作アニメ、ニュースなどで話題になった医療用語など、ビルド10240時点よりも語類を増やしたようだ。Cortanaに対するアプローチとしては、サードパーティー向けAPIの公開と日本独自の機能を披露。前者はCortanaからサードパーティー製アプリケーションの操作を可能にする機能だが、今回は「ジョルテ カレンダー&ダイアリー」のベータ版を用いて、Cortanaから表示モードの切り替えや配色変更を行うデモンストレーションを見せた。後者は「最近の地震は?」とCortanaに話しかけ、直近の地震情報をカードおよび音声で示す機能を紹介した。こちらはMSDが企画・開発し、世界に先駆けての提供となる。再び登壇した安達氏は「日本語版Cortanaパブリックになってから約1週間。まだまだ成長の余地が大きい。ユーザーの皆さんに使って頂き、一緒に成長させてほしい」とした。その後の質疑応答で、多くのユーザーが気にしている「フィードバックの重視具合」について質問が上がると、Vote(投票。Windowsフィードバックの「そのコメントに一票」という部分)の数を重視していることを明らかに。「残念ながら日本からのフィードバック、投票は少ない。グローバルで見ると全体に埋もれてしまう。日本人的な特性かもしれないが、ぜひ多くの意見を寄せてほしい」と、安達氏はWindowsフィードバックの活用を求めていた。筆者も意識的に投稿&投票するようにしているが、多くの場面で後回しにしてしまうことも少なくない。だが、次期アップデートとして名が上がっているRedStoneの使い勝手を、自らの意見で左右できることを踏まえると、能動的に意見を発信した方が、自分たちの利益につながるのではないだろうか。そんな考えが頭の片隅をよぎった発表会だった。阿久津良和(Cactus)
2015年11月19日11月9日~11月15日までの1週間に発表された、PC関連の注目ニュースをダイジェストでお届けする。先週は10日にアップルの12.9型タブレット「iPad Pro」、12日に日本マイクロソフトの12.3型タブレット「Surface Pro 4」が発売。2大タブレットの同時期発売とあって両記事ともに注目された結果となった。Surface Pro 4の発売に続き、米Microsoftは13日、Windows 10初となるメジャーアップデートを実施した。「TH2(Threshold 2)」という開発コード名で提供されたこのアップデートには、従来Insider Preview向けだったデジタルアシスタント「Cortana」も搭載。詳細が気になる方は、ライター阿久津良和氏による特集をぜひチェックされたい。このほか、セキュリティ関連のニュースとして、百度(Baidu)のソフトウェア開発キット「Moplus SDK」にバックドア機能が備わっていることが6日に判明。トレンドマイクロの調査によると、Moplus SDKが組み込まれたアプリは、バージョン違いなどを含め14,112が存在するといい、Google Play側の対応も注目される。○注目ニュース
2015年11月16日筆者が予約注文した「Surface Pro 4」のCore m3モデルが、予定どおり11月12日に某大手量販店から送られてきた。同日深夜には、Windows 10 ビルド10586へのメジャーアップデートも公開され、早速仕事用のツールをあれこれとインストールし、必要最小限の環境を整えたばかりである。翌日にちょうどイベントの取材が入っていたため、今まで使っていた8インチタブレット dynabook Tab VT484とThinkPad Bluetoothキーボードの組み合わせから、Surface Pro 4とタイプカバーという構成に変更して1日中持ち歩いてみた。その所感を報告する。まずはバッテリー面。公式には最長約9時間の連続ビデオ再生が可能であるという。100%まで充電し、そのままシャットダウンして移動。その後、取材先のホテルで起動して30分後には91%まで消費していた。Wi-Fiなどには接続していなかったが、バッテリー節約機能を使わず、ディスプレイの輝度も調整しなかったため、一気に消費したと思われる。ここからディスプレイの輝度を最も暗くし、バッテリー節約機能を有効にして約3時間、テキストエディターでキー入力を行った。スリープ状態にしてから移動して、スマートフォン経由のテザリングでインターネットに接続し、本稿に着手している。10分ほど経過してから確認すると、バッテリー残量は60%まで低下した。この時点で残り時間は約6時間半とWindows 10は示している。ここで注目してほしいのは、バッテリー残量は減っているが、残り時間を示すメッセージがあまり変わっていない点だ。察するにWindows 10のバッテリー節約機能は、Powercfg.exeの「/Energy」オプションで確認できるシステム分析から使用状況を計算しつつ、残り時間を示しているのだろう。Surface Pro 4はバッテリーだけで半日フル稼働させるのは難しいものの、バッテリー節約機能などを活用すれば、7時間程度なら十分使えそうだ。欲を言えば、Surface 3のようにUSB充電ができればよかったが、従来のSurface Proシリーズと同様にその仕組みは備えていない。次は一番気になっていたキーボードである。Surface Pro 4 タイプカバーは、キーの間を空けることで打ちやすくなったとMicrosoftはアピールしていたが、その言葉に偽りはなかった。実際に原稿を書いてみると、ほぼノンストレスのキータイピングできるのだ。筆者は初代Surface RTのタイプカバーに閉口して、タッチカバー、タッチカバー2と買い替えてみたものの、ストロークの浅さが気になって使用を控えてきた。だが今回は、「これなら十分使える」というのが筆者の素直な感想である。マグネットによる角度調整時(ディスプレイ側に一段階折りたたんだ状態)では相変わらず、ポコポコした感覚が指に残るものの、机やテーブルの上で広げてしまえば、そのような違和感を覚えることはない。筆者はタッチパッドに馴染まず、マウスやThinkPadのトラックポイントを好んで使っている。そのためSurface Pro 4 タイプカバーのタッチパッドも上手に使えず四苦八苦してしまう。これはあくまで個人的な慣れの問題なので、しばらくの間は我慢して使ってみよう。最後は重量である。これまで筆者が持ち運んでいた8インチタブレットとBTキーボードの総重量は905g。一方、Surface Pro 4とタイプカバーの合計は1,077gと大きくは増えていない。だが、鞄の紐が肩に掛かる感覚は重く感じてしまう。体力に余裕のある若い方なら誤差の範囲かもしれないが、不惑の年代にあると同時に運動不足の筆者には少々厳しい状況だ。それでも筆者は今回Surface Pro 4を購入したことに満足している。以前の環境ではフォトレタッチなど込み入った作業を行うのが難しかったものの、このデバイスであれば十分にこなせるからだ。今回は試していないが、PDFファイルの校正作業では付属するペンでコメントを入れ、差し替えテキストをキーボードで入力することも可能なはず。Windows Helloによるロック解除も快適なため、しばらくの間はモバイルマシンのメインとして活躍してくれそうだ。阿久津良和(Cactus)
2015年11月16日●AI分野に関するMicrosoftの大志は3つのキーワード以前からMicrosoftは、AI(人工知能)に関する研究や開発に取り組んできた。その結果として、近年はWindows 10のパーソナルアシスタントシステム「Cortana(コルタナ)」や、会話のリアルタイム翻訳を実現する「Skype Translator」、変わったところでは女子高生AIチャットシステム「りんな」などを提供している。日本マイクロソフトは11月9日、Microsoft CVP兼MSRA(Microsoft Research Asia)のマネージングディレクターを務める洪小文(Hsiao-Wuen Hon)氏の来日に合わせて、AI分野での研究・開発の取り組みをプレス向けに公開する機会を設けた。今回はそこで聞き及んだ、我々エンドユーザーにも興味深い内容をご報告する。○Microsoftが注力するインテリジェンスクラウド洪氏はMicrosoftの自社AI分野に関する大きな志として、「Reinvent productivity & Business processes」「Create more personal computing」「Build the intelligent cloud platform」と3つのキーワードを並べた。順に、「生産性とビジネスプロセスの改革」「より多くのパーソナルコンピューティング」「インテリジェントなクラウドプラットフォームの構築」と訳される言葉だ。共通するポイントとして洪氏は、Cortanaのマルチプラットフォーム化を強調している。「(SiriやGoogle Nowなどの)ライバル企業は1つのデバイスのみ紐付けされているが、Cortanaは(同じMicrosoftアカウントを使えば)異なるデバイスで利用できる」と語った。Microsoftは2015年5月26日(現地時間)に、CortanaのiOSおよびAndroid向けアプリケーションの開発を表明し、11月8日から米中ユーザー向けの一般向けベータテスト受け付けを始めたばかりである。洪氏はさらに、Windows 10のリリースや、まもなく登場するWindows 10 Mobile、Xbox Oneのアップデートに触れ、「すべてのデバイスで同一の環境を提供する」と"One Windows"ビジョンを語った。続けて、Microsoft CEOのSatya Nadella氏が今夏のイベントで強調した「インテリジェントクラウドの実現」についても、詳しい説明を行っている。現時点ではクラウド市場のトップとは言い切れないMicrosoftだが、「AmazonやGoogleと同じクラウド的リーダーに位置する」と自負した。その自信の裏付けとして同社のクラウドビジネスが好調(関連記事)であると同時に、2018年に向けて200億ドルの目標設定を行ったことが大きい。その結果としてMicrosoft全体の目標が、"クラウドプロバイダーのトップ"にあると洪氏は語る。話題がMSRAに移ると、同じく研究所における3つのミッション「Advance the state of the art of computing」「Rapidly transfer innovative technologies into Microsoft products」「Next Big Thing - Incubate for the future」について説明した。現在世界10カ所に設置した研究所では、「コンピューティング最先端技術を前進させる」「迅速にMicrosoft製品へ革新的な技術を移転させる」「将来に向けた(アイディアを)生み出す」を目標に、日本を含めた世界各国の大学などと連動した研究を日々行っているという。●女子高生AI「りんな」は、こうして生まれた○MSRAが大きく寄与して生まれた「りんな」先頃、女子高生AI「りんな」が話題になったが、洪氏はMSRAが中心となって開発したことを明らかにした。MSRAの活動を3つのキーワード「Agglomerative」「Adaptive」「Ambient」に分けて説明を始めた同氏は、「りんな(中国名:Xiaoice)」が複数の理知的領域を組み合わせたAgglomerative(=凝集)に含まれる研究の成果物だという。一般的なチャットボットは会話数も1.5~2往復で終えてしまうが、りんなも中国での導入当初、5往復程度にとどまっていた。だが、直後から18往復、そして23往復と増加傾向にあるという。また、Alan Turing氏が考案した、対象が人工知能であるか否かを判定するチューリングテストを引き合いに、洪氏は「3人のジャッジに対して1人でもOKすればパスするため、評価方式としてはぜい弱だが、先の23往復という数字を見てもテストは優にクリアしたといる」と自社製品に対しての自信を見せた。りんなは2015年8月(中国では1年前)にローンチしたばかりだが、画像チャットや占いなど多数の機能を実装予定だという。「りんなに朝の活動を手伝ってもらう」ことを意図して、モーニングコール機能も予定リストには並んでいた。興味深いのは、りんなとCortanaの立ち位置である。洪氏は「Cortanaはタスクを処理するため『生産性の効率化』を目指すものだが、りんなは感情的なつながりを目的としている」と説明した。りんなによる会話はクエリ検索に似た構造を持ち、データベース上のデータとマッチングさせた結果を返している。もちろんそこには蓄積したデータや履歴、機械学習によって回答は変化し、既にユーザー数は160万人を超えたそうだ。りんなに関してもう1つ興味深いのが統計データである。下図はその情報をまとめたスライドだが、日本と中国を合わせた4,000万ユーザーを対象に調査したところ、CPS(セッションあたりのチャット数)は日本が19往復、中国が23往復。もっとも多く使われる時間帯は、真夜中もしくは朝に集中し、曜日で区別すると水曜と土曜日が最多という。洪氏は「人々は週の真ん中や週末に人と話したくなる傾向が強い。ブログやSNSは有名人でない限り、多くのレスポンスを得るのは難しい。そのことから孤独を感じて、りんなを使うのでは」と分析している。さらに、年齢層は18歳から30歳、男女比は日本がほぼ同等だが中国は4対1で女性が多いなど、数々のデータを紹介した。今後のりんなに導入予定の画像投稿システムなどにも触れながら、洪氏は「中国では業界第2位のEコマースと提携し、ショッピングアドバイザー的な役割を持たせている。このようにりんなの可能性は無限大であり、現在(のりんな)は表層に触れた程度。さらに掘り下げて行ける」と、りんなが持つ可能性をアピールした。●音声会話の自動翻訳「Skype Translator」、日本語対応への期待○日本語対応の期待が集まる「Skype Translator」続いて音声会話を自動翻訳する「Skype Translator」について説明が行われた。現在は英語・スペイン語・フランス語・ドイツ語・イタリア語・中国語(北京語)のみに対応し、日本語には未対応だが(テキストメッセージの翻訳は日本語を始めとする50種類以上の言語をサポート)、今後多くの場面で期待が持てるアプリケーションだ。Skype Translatorは自動的に音声通話を録音し、その結果を校正する仕組みが最初に行われる。洪氏は「話した内容をそのまま翻訳エンジンに渡しても正常に動作しない。そのため文章の終わりや始まりの不要な部分を校正する処理を経て、翻訳エンジンにデータを渡している。変換したテキストデータを音声化し、実際の音声会話として発している」と内部構造を説明した。また近い将来、日本語への対応を表明した。この他にも画像の分析や分類を行う「Image Classification」や、AIがIQテストにチャレンジする「Word2Vec for IQ Tests」、ピクセルレベルで動画のリアルタイム認識を行う「Video Analysis」に関する取り組みを説明したが、筆者は「AIvs機械学習vsビックデータ」というテーマに注目したい。洪氏は「これらの領域は95%が重なっている。AIが活動するにはさまざまなデータが必要であり、集めたデータを分析する上で機械学習が必要。さらにそのデータを収集するビッグデータも欠かせない」と、それぞれが密接な関係であることを示した。さらに人々と共通するプロセスとして、「フィードバックループ」というキーワードを用いている。一般的な回路理論上の変化など、さまざまな分野で用いられているが、洪氏は人々が「仮説をもとに実験して、その結果から学んでいる」ように、「AIも『展開したデータを分析して、理解して証明する』というフィードバックループと同じ。科学者も開発者も皆、同じようにフィードバックループを完結しながら成長を目指している」と語っている。続けて1950年代の米ニュース雑誌「TIME」をスライドで取り上げ、「AIは危険だ」という声に反証した。「当時の記事で、コンピューターは超人的な存在として人々と競合するといわれていた。だが、コンピューターはルーチンワーク的な役割であり、アルゴリズムも人々が考えなければならず、科学的な証拠も示されていない」と語り、AIの進化を楽観的に考える理由だとした。洪氏はAIの「Artificial Intelligence」は「Augmented Intelligence(増幅知能)」であるべきと語りつつ、「人とコンピューターがつながることでスーパーマン(超人)になる我々が目指す未来だ」とAI分野の発展を説明した。スマートフォンやウェアラブルデバイスに代表されるITデバイスを普段から身に付け、インターネットを介したビッグデータ社会が具現化しつつある我々の近未来に、Microsoftがどのようにコミットするのか実に興味深い。阿久津良和(Cactus)
2015年11月10日Microsoftが11月2日(米国時間)に発表したOneDriveの容量削減は、ユーザーに多くの混乱を招く結果となった。筆者も今回の方策には疑問が残り、ユーザーの一人として不安を覚えている。今回は改めてOneDriveの容量削減問題について整理したい。ことの起こりはOneDrive Blogの記事からだ。OneDriveチームは突然、Office 365ユーザーに提供していた「OneDriveの容量無制限」を撤回し、無償使用可能な容量も15GBから5GBに縮小することを発表した。その詳細はYamashita氏の記事を参照していただきたいが、ユーザーにとっては寝耳に水の話である。エンドユーザーが参加するコミュニティーでは、「オンラインストレージを信用するのは間違いだ」など多くの意見や感想が並んでいた。MicrosoftがOneDriveの容量無制限を発表したのは2014年10月。個人向けのOffice 365購入者に対してOneDriveの容量を1TBから無制限に拡大した。そこから約1年で元の1TBに戻したのである。変更理由としてMicrosoftは「一部のユーザーが過大に容量を消費している」ことを挙げた。中には、75TBもの容量(平均的なユーザーの14,000倍!)を使用しているユーザーもいるという。筆者はOffice 365ユーザーのため、1TBの容量を使うライセンスを保持しているが、実際に使用しているのは20GB前後だ。これは日本のISPが月々のアップロード容量を制限しているため、いくらオンラインストレージ側が無制限をうたっても現実的に使えないからである。そのため今回の変更は日本のユーザーにとっては迷惑千万な話なのだ。また、「一部の迷惑なユーザーを制限すれば済むのでは」という疑問も持ち上がってくる。日本の大手携帯通信キャリアがトラフィック量を制限するため、通信速度を低下させる措置を行ってきたようにだ。そもそも「容量無制限」をうたったオンラインストレージは、どこも成功していない。先頃もEvernoteがプレミアユーザーの容量無制限ルールを変更した。他方で「なぜ、Microsoftが容量拡大や無制限という花火を打ち上げたのか?」という疑問も浮かぶことだろう。こちらはGoogle DriveやiCloudなどライバル企業とのシェア争いに勝つための施策だった、の一言に尽きる。穿った見方をすれば、一定のシェアを確保したMicrosoftは、OneDriveおよび周辺事業をマネタイズするため、容量無制限を取りやめると同時に15GBの無償使用可能容量も5GBに削減したとも考えられる。営利企業である以上、収益を優先するのは致し方ないが、Microsoft CEOであるSatya Nadella氏の方針「empower every person and every organization on the planet to achieve more」と相反する施策と述べると言い過ぎだろうか。開発コード名「SkyDrive」から始まり、「Windows Live Folders」「Windows Live SkyDrive」「Microsoft SkyDrive」と名前を変えつつ、Windowsのスタンダードオンラインストレージとして進化してきた経緯を振り返ると、今回の容量削減施策に場当たり的な印象は拭えない。また、Windows 8で実現したプレースホルダー機能を「ユーザーがわかりにくかった」との理由でWindows 10では撤回するなど、機能的な迷いも垣間見える。だが、今回の一件でもっとも重要なのは「オンラインストレージは信用できない」という不安をユーザーに与えたことだ。筆者はOffice 2016リリースと同じタイミングでOffice 365に切り替え、NASやローカルストレージに分散していた数々のドキュメントや家族の写真をOneDriveに保存している。だが、この原稿を書き終えて時間ができたら、以前のようにNASへ戻すつもりだ。MicrosoftはOneDriveを介したPCスタイルを「生活のあらゆるものをまとめて保存」とうたっているが、自らその提言を否定する今回の変更には、「残念」以外の言葉を見付けることができない。阿久津良和(Cactus)
2015年11月09日企業はもちろん個人もセキュリティの脅威に晒されている昨今、WindowsやOfficeをリリースするMicrosoftのセキュリティ対策に興味を持つユーザーは多いだろう。その回答として日本マイクロソフトは、「サイバーセキュリティへのマイクロソフトのコミットメント」と題したプレス向け説明会を2015年11月5日に開催した。そこで語られたサイバースペースを維持するMicrosoftの取り組みを紹介する。Microsoftは以前から、政府と連動したハッキング対策を行うDCU(Digital Crimes Unit)やCybercrime Centerを立ち上げているが、なかでも興味深いのは国際的な連係だ。ワールドワイド企業であるMicrosoftは、各国が定めたルールのなかでしか行動できない一方で、攻撃者は国境を意識せず、自由に活動している。そこでMicrosoftはサイバー攻撃に対抗するため、各国政府と連動したルール作りなどに積極に関わっているという。その中心的存在となるのが、Microsoft GSSD(Global Security Strategy and Diplomacy)チーム サイバーセキュリティポリシー&戦略担当ディレクターのAngela Mckay(アンジェラ・マッケイ)氏である。Mckay氏はサイバーセキュリティの公共政策という自社の取り組みを、「世界各国の政府やIT業界のパートナーとともに政策を策定し、世界的なセキュリティを高める」のが目的だと説明しながら、米国政府や議会はもちろん、日本を含む各国の行政機関とサイバーセキュリティに対する政策に日々携わって来たと語った。Microsoftのサイバーセキュリティに対する歴史は長く、Mckay氏は新しくも古い"クラウド"というキーワードを用いて、その長い歴史を示した。Outlook.comの前身であるHotmail(1996年ローンチ)を引き合いに、「Hotmailを使い始めたのは大学生だった」と語りながら、インターネットの黎明期から現在までの間、我々がインターネットという技術を享受するように、攻撃者もインターネット技術を活用しているため、あらゆる角度からセキュリティ対策を講じる必要があることを強調した。「Trustworthy Computing(信頼できるコンピューティング)」をMicrosoftが提唱し始めたのは2002年だが、その頃から同社はセキュリティ対策に強くコミットし、多くの投資を行ってきた。社員に対しては、例えばソフトウェアの脆弱性を意識するべく教育を施し、学んだ経験、結果を、Office 365やMicrosoft Azureといった製品に反映させているという。だが、重要なのは製品レベルではなく、ワールドワイドレベルの意識変革ではないだろうか。Mckay氏は「IT企業や政府もセキュリティに対する懸念を高めた結果、我々は対話を始めた。IT企業以外にも金融サービスや競合他社とも協力しつつ、国際レベルで標準的なルールを策定している」と説明した。攻撃者の手が緩むことはなく、サイバー攻撃の被害は甚大だ。Mckay氏は、1998年5月に当時の米国政府が発した大統領令を挙げ、政府もセキュリティ対策に乗り出している点を具体例で示した。それでも、現在に至るまで政府内のバランスや、攻撃の巧妙化が相互に絡んで複雑化し、セキュリティ対策の進捗を妨げているという。こうした状況もあってMicrosoftは、官民を越えた形で協力し、既に一部の国では法制化の検討を始めたそうだ。政府との協力関係について"実践的な情報交換"が大事だが、サイバーセキュリティのルールを作成する上で重要なのは、「その国々で文化が異なる点を理解する必要がある」とMckay氏は語る。例えば米国では、IT業界が様々な重要データを保持しているケースが多いものの、欧州は政府がデータを保持したいと考えるケースが多いという。結果、その国の防衛姿勢や方針など多様な要素が絡み合い、Microsoftがガイドラインを作ったり技術的なアドバイスを行ったりしても、セキュリティリスクに気付かない政府関係者が少なくないそうだ。個人的には日本政府がどのような姿勢なのか気になるところだが、Mckay氏は「先日会った経済産業省の関係者は、インフラを保護する上でどのようなアプローチが役立つのか強い興味を持っていた」と述べている。米国と同じように日本政府も省庁によって方針や目的が異なるものの、「セキュリティ対策レベルを高めるという意味では共通の意識を持っている」との説明に(わずかながら)安堵を覚えた。Mckay氏は「"政府"とサイバースペースを比較すると異なるように見えるが、実は共通点が多い」としつつも、ITを中心に置いた民間企業であるMicrosoftと米国政府の意見は必ずしも合致しないという。だからこそ同社は脆弱性を公開し、ベンダーに伝えてパッチ作成やリスク管理を高めるのが重要と考えるのだろう。「我々はグローバルというつながった世界に住んでいる。異なる方針を持つ各国政府同士が国際的な協力を行い、その世界の維持を望みたい」と自信を持って語るMckay氏。セキュリティという我々の日常に潜む重大なリスクに対して、Microsoftのような大企業はもちろん、日本政府の関係者にも積極的な対策、そして行政機関としての施策を期待したい。阿久津良和(Cactus)
2015年11月06日2015年11月5日(以下すべて現地時間)、米MicrosoftはWindows 10 Insider Preview ビルド10586をリリースしている。ご承知のとおり同社はビルド10576を10月29日に出したばかりだが、この拙速ともいえるタイミングは2015年11月10日頃にTH2(Threshold 2)のリリースを予定するという噂を裏付ける結果となった。今回も変更箇所を中心にビルド10586の出来を精査する。MicrosoftはWindows 10の大型アップデート「Windows 10 Fall Update(開発コード名はThreshold 2)」を今秋リリース予定だったが、噂レベルでは開発も完了し、大きなバグが発見されなければ、そのまま11月10日頃のリリースを行うことだろう。もっとも、僅かなバグフィックスといくつかの機能拡張を行ったビルド10576が最終検証版であり、ビルド10586が完成版という見方もある。10日と言えば残すところあと数日である以上、そのままCB(Current Branch)ユーザーに提供されるのが自然だろう。Windows 10 Insider Buildの進捗を報告するMicrosoftのGabriel Aul氏は、今回のビルド10586リリースについても公式ブログで「バグフィックスと一般的な改善に焦点を当てた」と述べている。実際に使ってみると、前ビルドと比べても大きな変化はなく、短時間の確認においては大きな問題は確認できなかった。アップデートを終えて目に留まったのが、デスクトップ右下に浮かんでいたウォーターマーク(電子透かし)がなくなっている点である。Microsoftは慣例的に試用版やベータ版に対してウォーターマークの表示を行い、Windows 10 Insider Previewも同様だった。ビルド10240リリース時はウォーターマークが一瞬消えていたことを思い出す方も少なくないだろう(その後のビルド10525では復活した)。この変化だけを取り上げても、ビルド10586がWindows 10 Fall UpdateのRTMに相当すると断言できるだろう。手早く設定項目などを見比べた限り、ビルド10576との違いは確認できなかったが、Aul氏は公式ブログで以下の改善項目を取り上げている。「Grooveミュージック」や「映画とビデオ」でメディアファイルを再生している際にトースト通知が現れると、オーディオ再生に75パーセントの遅延が発生していたが、この点を改善している。Surface Pro 3の電源ボタンを押すと、スリープではなくシャットダウンを実行する問題を修正した。「Disksnapshot.exe」実行時、希にコマンドプロンプトが点滅する問題を修正した。Windows 10がサインインオプションを忘れる問題を修正した。Microsoft EdgeでWebページの先頭を表示しねいない場合、タブのプレビューが正しく表示されない問題を修正した。以前のビルドで発生していた小型タブレットのアップデートが正しく行われない点や、アップデート後に画面ローテーションが動作しない問題を改善している。気になるのはサインインオプションだ。Aul氏は「サインイン時にPINを使った場合、次回は異なるサインインオプションを求める」と説明しているが、筆者はビルド10576でそのような現象に出くわしていない。一部の環境でAul氏が述べたようなトラブルが発生していたのだろう。このように、ほぼ完成したWindows 10 Fall Updateだが、筆者が試した環境ではCortanaに関する問題が已然と残っている。具体的にはデスクトップPC+Bluetoothマイクの構成でCortanaが動作しないのだ。Surface Pro上のWindows 10 Insider Preview ビルド10586は問題なく動作するため、ハードウェア環境固有の問題と思われる。ちなみに合成音声は若干改善したように感じられるが、日本マイクロソフトが発表会で見せた、すらすらと喋るエンジンには切り替わっていないようだ。また、Aul氏は注意点として「メッセージング&Skype」のメッセージ&履歴消去を挙げていた。筆者環境では前ビルドですべて消えているため動作を検証できないが、デスクトップアプリ版Skypeはそのままのため、現時点では大きな問題とならないだろう。いずれにせよ、多くのユーザーが必要とするデスクトップ周りの改善は落ち着き、安定して使えるようになった。来週の11月10日(日本は11日)頃には、Windows Update経由でWindows 10 Fall Updateの公開が始まるはずなので、本稿の読者には、重要ファイルのバックアップなど事前の準備をお薦めしたい。阿久津良和(Cactus)
2015年11月06日10月28日、本誌でも報じたとおり、ジェネシスホールディングスがWindows 10 Mobile搭載デバイス「WPJ40-10BK/WH」を正式に発表した。Windows 10 Mobileデバイスは法人市場にターゲットを絞っているようだが、少しずつ出揃い始めている。そこで今回は、Windows 10 Mobileデバイスの選び方について考えてみたい。日本マイクロソフトがLumiaシリーズではなくOEMパートナーを優先し、コンシューマー市場よりも法人市場を強く意識する理由の一つに「Windowsとビジネスの親和性」がある。改めて述べるまでもなく、企業で使われるPCの大半はWindowsだ。もちろんOfficeも活用されている。そこに「One Windows」構想が加わると、ユーザーは社内でも社外でも同じUX(ユーザーエクスペリエンス)を得られることになる。このアドバンテージを活かして、日本のモバイル市場に再チャレンジする日本マイクロソフトは10月14日、Windows 10 Mobileデバイスの開発パートナーとして6社が名乗りをあげていることを明らかにした。だがこの時点で、ジェネシスホールディングスやその親会社であるネオスの名前は上がっていなかった。以前、日本マイクロソフトの関係者は「発表した6社以外にも数社と交渉中」と話していたので、ジェネシスホールディングスもその1社なのだろう。気になるのは「WPJ40-10BK/WH」のスペックだ。そのディスプレイは4インチWVGA(800×480ピクセル)。Windows 10 Mobileデバイスのシステム要件では、ディスプレイの解像度をWVGA以上と定めており、WPJ40-10BK/WHは必要最小限のスペックであることがわかる。もちろんエントリーモデルを否定するつもりはない。WPJ40-10BK/WHの市場想定価格は12,800円と企業努力も見られる。ただし同等のスペックを持つアジア向け低価格デバイス「Lumia 430」が、並行輸入品価格で10,000円前後であることを踏まえると、ハイスペックに慣れた国内のユーザーは物足りなく感じるだろう。筆者がWindows 10 Mobileデバイスのスペックにこだわる理由の一つが「Continuum」の存在だ。例えばLumia 950なら、Microsoft Display Dock経由でディスプレイやキーボードなどを接続して、PCのように使用できる。MicrosoftはContinuumのシステム要件を明らかにしていないが、Lumia 950はSnapdragon 810、3GBのメモリーを搭載している機種だ。ContinuumやユニバーサルWindowsアプリによって、ユーザーはPCでもスマートフォンでも同じ作業を実現可能になる。このようにPCとモバイルの境界線が曖昧になる世界は、iPhoneやAndroidデバイスがなし得なかったものだ。それだけにWindows 10 Mobileの成功はContinuumの完成度にかかっているとも言える。日本マイクロソフトには、DOS/Vマシンブームの初期のように玉石混交の製品が並ばないよう、ユーザーがWindows 10 Mobileに落胆するような要素を取り除き、華々しいスタート市場形成に努めてほしい。そして我々エンドユーザーも、Windows 10 Mobileの可能性を引き出せるデバイスを見極める眼を持つようにしたい。阿久津良和(Cactus)
2015年11月02日Windows 10も以前のWindowsと同じく、新たに見つかった問題やセキュリティホールを塞ぐ更新プログラム(セキュリティ更新プログラム)を定期的にリリースしているが、どのような変更が加わったのかを調べにくくなっている。特にWindows 10は過去のメジャーアップグレードスタイルを捨て、常にOSが進化する「Windows as a Service」を提唱しているからなおさらだ。今回は適用された更新プログラムの確認方法を紹介する。○更新プログラムは強制適用?過去のWindowsは第2火曜日(日本は翌日)に、セキュリティ更新プログラムをリリースしてきた。その背景には、頻繁にセキュリティ更新プログラムを適用すると、その度にPCの再起動を要するため、不評だった経緯がある。もちろん緊急を要するセキュリティ更新プログラムは適時リリースしているが、気になるのはその内容だ。Windows 10は基本的に更新プログラムを手動で取捨選択できず、Windows 10 Homeエディションは事実上、強制適用となる。よって、「気付いたら更新プログラムがインストールされていた」という場合が多い(Proエディションはグループポリシーによる動作変更が可能)。だが、厳格にWindows 10の状態を把握する必要はなくとも、自分のPCがどのような状態にあるか知っておくべきだろう。そこでポイントとなるのが更新プログラムの履歴だ。○更新プログラムの概要を知るインストール済み更新プログラムの内容は、更新履歴から簡単に確認できる。スタートメニューや「Win」+「I」キーを押して起動する「設定」の「更新とセキュリティ」からたどると、過去にインストールした更新プログラムの一覧が現れる。こちらの日付(リンク)をクリック/タップすれば、更新プログラムの内容が現れるという仕組みだ。さらに確認してほしいのが「サポート情報」と書かれたリンクである。こちらをクリック/タップするとWebブラウザーが起動し、更新プログラムの詳細な説明を見ることが可能だ。Webページには更新プログラムの入手方法やファイル情報なども詳しく書かれているが、更新プログラムの内容を知るという意味では、主に「概要」だけを確認すればよい。更新プログラムによっては、サポート情報ページを設けていない(もしくは間に合っていない)ものもある。その際は、検索ボックスにナレッジベース番号を入力して検索を実行し、同じ番号を割り振った他のOS用サポート情報ページを確認してほしい。阿久津良和(Cactus)
2015年10月31日●メディア配信機能を備えたMicrosoft EdgeMicrosoftは2015年10月29日(現地時間)、Windows 10 Insider Preview ビルド10576をリリースした。公式ブログで、Gabriel Aul氏が「多くのバグフィックスと全体的なバランスと仕上がり(fit-and-finish)を加えた」と述べていることから、以前から2015年11月公開と噂されているTH2(Threshold 2)の完成に近づいていると推察できる。まずはビルド10576の変更点を中心に、Windows 10のセカンドステージを想見したい。○メディア配信機能を備えたMicrosoft EdgeWindows 10のメインWebブラウザーであるMicrosoft Edgeは、2015年7月29日の無償アップグレード開始時のバージョン20.10240.16384.0では、必要最小限の機能しか備えていなかった。その後、Windows 10 Insider Previewと共に改良を加えてきたが、ビルド10565に付属する25.10576.0.0は、アクションの1つに<他のデバイスに音声、動画、画像を送る>を加えている。こちらは文字どおりWeb上の動画コンテンツなどを、Xbox OneなどWindows 10に対応するデバイスに配信する機能だ。具体的にはDLNAデバイスをサポートし、MicrosoftはYouTubeの動画やFacebookのフォトアルバム、Pandora(米国のインターネットラジオ。好みに応じた自動選曲機能を備える)から受信した音楽をデバイス経由で再生するといったシナリオを想定している。ただし、DRMなどコンテンツ保護を行っているNetflixやHuluなどは未対応だという。実際に試してみたが、リビングに設置したDMP(Digital Media Player)対応テレビは応答しなかったため、他のPC上でWindows Media Player 12をDMP化してYouTubeのメディアキャストを試してみた。結果は特に問題なし。そもそもWindows 7時代にメディアストリーミング機能に関しては完成しており、今回はMicrosoft Edgeに同機能を加えたに過ぎず、トラブルが発生する可能性も少ないはずだ。Microsoft EdgeはDolby Audioのサポートなどメディアコンテンツに関するアプローチを強くしているが、ウィンドウ上部からのリサイズは相変わらず未サポートである。他のユニバーサルWindowsアプリはリサイズできるため、Microsoft Edgeのタブが何らかの影響を及ぼしていると思われるが、この1点に関して改善の兆しが見えないのは疑問だ。ちなみに以前から、Webページ上のテキスト選択時のコンテキストメニューに<Cortanaに質問>が用意されていたが、ビルド10576からPDFファイルのテキスト部分にも対応している。もっとも現時点では、Web検索を実行するに過ぎないため活用場面は多くない。●Xboxアプリの更新とXbox(ベータ)アプリ○Xboxアプリの更新とXbox(ベータ)アプリAul氏はユニバーサルWindowsアプリ「Xbox」の更新にも触れ、Larry Hryb(別名Major Nelson)氏による公式ブログを引用している。友達リストのリアルタイム更新を強化し、アクティビティフィードやゲームの進捗状況を更新して、より多くのユーザー間で楽しめる機能を追加したという。さらにHryb氏は、「Xbox(ベータ)」を用意していることも明らかにした。Xbox(ベータ)はFacebookを経由したコンタクトやパーティへの招待、ゲームの録画機能であるGameDVRや、Xboxタイトルの購入をサポートしている。もっともPCゲームをプレイしないユーザーには興味のない話題であり、PCゲーム好きの筆者でもXbox Oneを所有していないため、ユニバーサルWindowsアプリのXboxを起動する機会は皆無だ。確かにサンドボックスゲームである「Minecraft」は面白いが、「Microsoft Windows 10 Edition Beta」はPE版と同じく、MODが使用できないなど多くの制限があるため、当初からあるPC版を越えるのはしばらく先の話だろう。ちなみにユニバーサルWindowsアプリのXboxは今回のバージョンアップで、Win32ベースのゲーム実行時にメモリーリークが発生していた問題を解決している。いずれにせよ、ライトゲーマーとヘビーゲーマー両者が楽しめるタイトルが増えた頃に改めて言及したい。●コンテキストメニューからスキャン実行が復活○コンテキストメニューからスキャン実行が復活その他の変更点についてもいくつか紹介しよう。Aul氏はMicrosoftが既知の問題として「メッセージング」の送受信履歴や連絡先がリセットされることを認識している。回避策として「%LOCALAPPDATA%\Packages\Microsoft.Messaging_8wekyb3d8bbwe\LocalCache」フォルダーの「PrivateTransportId」ファイルをリネームもしくは削除して、アプリケーションの再起動を提案しているが、筆者の環境ではメッセージ履歴や連絡先は復活しなかった。また、7~8インチの小さなディスプレイを供えるタブレットの場合、アップデート時にBSoDが発生し、以前のビルドへロールバックする問題が認識されている。筆者はWindowsタブレット上でWindows 10 Insider Previewを試していないため詳しく紹介できないが、お使いの方は注意しておくべきだろう。筆者がビルド10576で気付いた変更点の1つに、ファイルやフォルダーのコンテキストメニューに<Windows Defenderでスキャンしています>が加わったことを確認した。メッセージIDがずれているのか違和感を覚える項目名だが、その機能は期待どおり、単独もしくは複数のファイルだけを対象としたスキャンが実行可能になる。Windows 8.x時代はWindows Defenderを内蔵したため、レジストリ操作などが必要だったが、これで気になるファイルの事前チェックが容易になるのは素直に評価したい。また、筆者の環境に限った話かもしれないが、ビルド10565からビルド10576にアップデートし終えると、「互換性アシスタント」によりIntel Smart Connect Technologyがアンインストールされたことを告げられた。トースト通知をクリックすると現れるWebページでは、「アプリケーション正常に動作しない可能性がある。開発者はサポートページでアプリケーションがWindows 10 Insider Previewで利用可能であるか確認してほしい」というメッセージが現れる。このようなプロセスが発生したのは、ビルド10240以前も以降も初めてなので、新たな機能なのか判別するのは難しいものの、安定したOSを目指すという意味では興味深い。最後に、本ビルドが冒頭で述べたTH2になるか考えてみよう。MicrosoftのWindows and Devices担当EVPであるTerry Myerson氏は、Windows 10のアップグレードをさらに推し進める施策を準備していることを、公式ブログで明らかにしている。冒頭で述べた2015年11月にリリースされるという噂のTH2に達するには、Aul氏らWindows開発チームの尽力が必要だ。ビルド10576がそのままSlowリングにも配布されれば、そのままTH2となる可能性が出てくるが、その真偽はMicrosoftしか知り得ない。ビルド10576リリースから数時間程度では安定性まで判断できないが、前ビルドで多発していた、関連付け済みファイルをダブルクリックで開くとエクスプローラーがハングアップするといった症状は再発しないものの、ビルド10565からCortanaが使えなくなった問題は改善されず、まだまだ未完成な部分が見受けられる。TH2に達するまでは、もう1~2ステップの進捗が必要になりそうだ。阿久津良和(Cactus)
2015年10月30日MicrosoftはDOS時代から、ストレージ上に構築したファイルシステムの整合性を確認するチェックディスク(スキャンディスク)機能を用意していた。Windows 10も同様の機能を搭載しているが、GUI上から実行すると簡素なメッセージしか表示されない。今回はチェックディスクの実行結果(ログ)を確認する方法を紹介する。○Windows 8時代で変わったチェックディスクMicrosoftはOSのバージョンアップに伴ってチェックディスクを改良し、Windows Vista時代はパフォーマンスの改善、Windows 8時代は機能自体を見直し、チェック対象となるデバイスが使えなくなる"オフライン"状態を避けるため、破損時の修正方法を変更した。具体的には、NTFSなどファイルシステムの状態を、「正常」「オンラインスポット検証が必要」「オンラインスキャンが必要」「オフラインスポット修正が必要」の4段階に区別している。オンラインスポット検証レベルではユーザー操作を必要とせず、オンラインスキャンやオフラインスポット修正時も、オフラインスポットが必要な状況になるとユーザーにPCの再起動を求め、その際にチェックディスクを実行する仕組みだ。これらの操作を手動で行うのが、ドライブのプロパティダイアログから起動する「エラーチェック」である。本来はこの呼称を用いるべきだが、Windows NT系は「チェックディスク」という呼称を採用してきた経緯があるため、本稿ではチェックディスクで統一する。○チェックディスクを実行するこのチェックディスクは、ドライブのプロパティダイアログにある「エラーチェック」セクションから実行可能だ。こちらからGUI版チェックディスクを起動し、ドライブの状態を容易に確認できる。問題はチェックディスクの結果表示だ。GUI版チェックディスクは簡素なメッセージしか現れないため、経年劣化や初期不良などさまざまな理由から異常をきたしたストレージを使うことに不安がある。そこで確認すべきは「詳細の表示」だ。こちらをクリックすると、イベントビューアーにおいて、GUI版チェックディスクの実行結果を落ち着いて見ることが可能だ。詳しくはお手元のPCでご覧いただくとして、ログを見るとGUI版チェックディスクは、「ファイルシステム構造」を検査し、次に「ファイル名と実データの連係」を検査して、最後に「セキュリティ記述子」と、3段階による整合性チェックを行っていることが分かる。チェックディスクの表示結果は、GUI版もCUI版も同じだ。コマンドライン操作で確認してもいいし、GUI版チェックディスクを実行してイベントビューアーで結果を見てもいい。ただし、基本的にこれらの操作は自動的に行われるため、何らかのトラブル発生が発生したときの問題切り分けに役立ててほしい。阿久津良和(Cactus)
2015年10月30日先週のPC系ニュース記事はSurface一色だったが、多くの読者が気になるのは「どのモデルを購入するか」「Surface Bookまで待つか」「今回は見送るか」といったあたりだろう。今回は、「Surface Pro 4はどのモデルがお得か」という観点から、国内で発売されるモデルを精査する。ここで立ち位置を明らかにするため、筆者はCore m3 / 128GBモデル (税込134,784円) を既に予約したことを最初にお知らせしておこう。Surface Pro 4のラインナップと価格は下表の通りだ。まずはスペック面から考えてみよう。CPUは、Core m3、Core i5、Core i7からの三択となる。発表会の展示機やIntelの資料からモデルナンバーまで特定すると、Core m3-6Y30、Core i5-6300U、Core i7-6650であることが濃厚だ。外出先でもデスクトップPCに相当するパフォーマンスを求めるのであれば、Core i5やCore i7を選択すべきである。だが、生産性もさることながら携帯性を優先する場合、Core m3モデルがもっともコストパフォーマンスが高いモデルだと感じた。メモリ容量は悩ましい。64ビット版のWindows 10を快適に動かすには、4GBでは正直心細いが、出不精な筆者はデスクトップPCで原稿を書くスタイルを常としている。あくまでもSurface Pro 4を「持ち歩けるサブマシン」として考えているので、今回は許容することにした。SSD容量はアプリケーションのインストール領域を考えると、256GB以上が安心だ。しかし、WindowsフォルダーやOffice 365のフォルダーを合計しても20GBを超える程度。日々のデータをすべてOneDrive上に保存するスタイルであれば、128GBでも十分と判断した。もっとも、このあたりはSurface Pro 4をPC利用シーンのコアデバイスとするか否かで判断が分かれるので、「4GBでよし、128GBでよし」と断言するつもりはない。今度は価格について考えたい。日本マイクロソフト 代表執行役社長の平野拓也氏は「新しい製品を出す時は毎回時間をかけて検討している。Surface Pro 4は以前のモデルを引き継いでいるものの、Windows 10の能力をふんだんに引き出す機能を搭載した。その付加価値や為替の影響を鑑みて価格設定を行っている」と筆者に述べていた。例えば、米国のCore m3 / 128GBモデルは899ドルだが、日本の税別価格は12万4,800円である。また、筆者が2013年に購入したSurface Pro 128GBモデルは約100,000円だったが、実質的にそこから数万円アップした形だ。以前よりも高額になるのはSurface Pro 3の価格改訂の時点で明らかだったが、二の足を踏む方も少なくないだろう。さらにSurfaceペンは付属するものの、ペン先を変更する「Surfaceペン先キット」は別売。新たに設計した「Surface Pro 4タイプカバー」もオプションだ。さらに、Surface Pro 4をメインPCとして使う場合は「Surfaceドック」も用意したい。このように、本体に加えてこれらアクセサリーの予算確保も必要となる。だが、冒頭で述べたとおり筆者はSurface Pro 4を購入することにした。他社の2-in-1 PCという選択肢もあるが、約766g(Core m3モデル)という軽量感、12.3インチ/2,736×1,823ピクセルのPixelSenseディスプレイ、Windows Helloによる顔認証、Surfaceペンの改良など総合的に見れば、Surface Pro 4に匹敵する対抗馬を即答するのは難しいだろう。上位モデルを欲するユーザーは12月発売予定のCore i7モデルではなく、「Surface Book」を来年初頭まで待つという選択肢もある。だが、価格はさらに高額になるのではないだろうか。陳腐な言葉だが、"欲しい時が買い時"である。自身の利用シナリオを想定しながら判断してほしい。阿久津良和(Cactus)
2015年10月26日Windows 8.x時代は4桁だったPIN(暗証番号)。Windows 10はその制限を取り払った。我々は銀行のキャッシュカードなどで4桁の暗証番号に慣れ親しんでいるが、「連続した番号」や「誕生日と同じ数字」を禁止しているケースが多いとおり、セキュリティ的には脆弱だ。この点も、Windows 10のPINが4桁以上になった理由のひとつだと思うが、その限界はどこにあるのだろうか。○パスワードは時代遅れ?Microsoftは、Windows 10の新規インストールプロセスに「PINのセットアップ」を組み込んでいる。「PINはパスワードを使用するより速くで安全」と説明しており、PINはローカルデバイスに情報を保存する点が大きい。Microsoftパスワードはサーバー上に保存しているため、MITM(中間者攻撃)の被害に遭う可能性を拭い切れないからだ。さらに、パスワードの入力機会を極力少なくすることで、漏えいの可能性も大幅に減らしている。PINを初めて実装したWindows 8は、PINの桁数を4桁に制限していた。同時に実装したピクチャパスワードの機能などを踏まえると、当時はセキュリティ対策というよりも、タッチ環境における利便性の向上を目的としていたのだろう。だが、世界的なセキュリティ対策の流れとして、"パスワードは過去のモノ"という考え方が浸透し始め、Windows 10はPINの実装を強化したのだと思われる(2013年のRSA Conferenceでも「Password is Dead」がキーワードとなった。それ以前も2004年の同カンファレンスでBill Gates氏がパスワードの終焉を予測している)。○PINの桁数は無限大?PIN桁数の制限撤廃で気になるのは、設定可能な桁数(上限)だ。試しに「0123……」と同じ数値を順に入力していくと、これ以上入力できない旨を示すメッセージは現れない。一見すると無制限のように見える。入力した内容はクリップボードにコピーもできないため、あらかじめ桁数を確認できる文字列を用意して試したところ、入力できるのは「64桁」であることを確認できた。PINはあくまでも自身が記憶できる数字でないと意味をなさないのだが、64桁あればさまざまなニーズに対応できるだろう。大半の読者はWindows 10アップグレード、もしくは新規インストール時にPIN設定を行っていると思われるが、上記手順で自身が記憶できるPINを設定し、パスワードの漏えい機会を極力減らしてほしい。阿久津良和(Cactus)
2015年10月24日●今注目のコンテナ型仮想化とはWindows 10 Insider Preview ビルド10565には「Nested Hyper-V」のプレビュー版を実装している。端的に説明すると、"Hyper-V上でHyper-Vを動かす"というものだ。この背景はMicrosoftがDockerで注目を集めているコンテナ型仮想化を、現在開発中のWindows Server 2016に実装しようとしているからである。将来的にWindows 10のクライアントHyper-VがNested Hyper-Vをサポートするか不明だが、今回はビルド10565上でNested Hyper-Vを試した結果をご報告したい。○今注目のコンテナ型仮想化とはNested Hyper-Vに取りかかる前準備としてコンテナ型仮想化について学んでおこう。そもそも仮想化技術は複数の手法が用いられてきた。例えば「Windows XPモード」で使われていたWindows Virtual PCや、限定的に無償使用可能なVMware Playerなどはホスト型仮想化に類する。物理的には1台のPCをあたかも複数PCのように見せるハイパーバイザー型仮想化に類するのがHyper-Vだ。そして、近年はDockerが持てはやされているようにコンテナ型仮想化に注目が集まっている。こちらはOS機能の一部をホストOSと共有するため仮想マシンが存在しない。ハードウェアリソースの指定は難しいものの、OSのインストールといった手間がかからず、すぐに利用できるという利点を持つ。それでもユーザーから見れば独立したPCであるかのよう振る舞うため、利用者も増加傾向にある。だが、代表的なDockerはLinux上で利用するのが一般的だ。そこでMicrosoftは現在開発中のWindows Server 2016の新機能として、「Windows Server Container」「Hyper-V Container」という2つのコンテナ技術を搭載する予定である。この技術をいち早く試せるのがWindows 10 Insider Preview ビルド10565という訳だ。ただし、Windows 10は既定でクライアントHyper-Vが無効になっている。コントロールパネルの「プログラムと機能」のナビゲーションウィンドウにある<Windowsの機能の有効化または無効化>から各機能を有効にして、PCを一度再起動しなければならない。特に難しい操作ではないが、Hyper-Vを有効にすると次のビルドへアップグレードする際に支障を来す可能性がある。現にビルド10525からビルド10532へアップグレードするとシステムファイルのコピープロセスでロールバックする現象が発生した。今後も同じトラブルが発生する訳ではないが、ビルド10565以降へのアップグレード時はHyper-Vを一度無効にすることをお薦めしたい。また、Hyper-Vを有効にするとホスト型仮想化ソフトウェアは使えなくなるので、使用中の方は注意してほしい。●Nested Hyper-V環境構築を行う○Nested Hyper-V環境構築を行うWindows 10 Insider Preview ビルド10565でNested Hyper-Vを使用する手順は、こちらの公式ブログにまとめられている。こちらでもNested Hyper-Vの仕組みを図で示しているので引用しておこう。ご覧のとおりNested Hyper-Vは入れ子構造で動作する仕組みだが、これは従来のHyper-V上で動作する仮想マシンに、Intel-VTなどに代表されるハードウェア仮想化支援機能を見せることで実現している。最終的にMicrosoftはコンテナ型仮想化機能の実現を目指しているので、その第一歩を踏み出したところだ。そのためWindows 10 Insider Preview ビルド10565のNested Hyper-Vはいくつかの制限がある。先の公式ブログの説明をまとめると「動的メモリーは無効」「動作中のメモリーサイズ変更は不可能」「動作中のチェックポイントは作成不可能」「ライブマイグレーションも不可能」「<保存><復元>も不可能」だ。なお、ネットワーク機能を使うためには<MACアドレスのスプーフィングを有効にする>のチェックを外さなければならない。それでは仮想マシンを作成し、先頃リリースしたWindows 10 Insider Preview ビルド10565をインストールする。続いて仮想マシンを一度終了し、公式ブログからPowerShellスクリプトをダウンロードしたら、先ほど作成した仮想マシン名を指定してスクリプトを実行すればNested Hyper-Vが有効になる仕組みだ。この際確認メッセージが現れた場合は[Y]キーを押して有効化を実行する。なお、執筆中に公式ブログの内容が更新され、Nested Hyper-Vに関する情報はMSDNのページで更新するそうだ。続いて仮想マシンを起動したら、その上でHyper-Vを有効化して仮想スイッチを作成する。こちらもPowerShellで制御できると先のMSDNに書かれていたが、前準備が必要だったため、素直に仮想マシン内で操作した方が簡単だろう。少々煩雑だが上図のように、仮想マシンのWindows 10 Insider Preview ビルド10565上で動作する仮想マシン上で、Windows 10 Insider Preview ビルド10565が動作する環境が完成した。繰り返しになるが、MicrosoftはHyper-V Containerを構成する機能の1つとしてNesting Hyper-Vの完成を目指している。現時点でWindows 10をクライアントOSとして使っているユーザーにとって、大きなメリットにならないものの、Windows 10 Insider Previewの進捗状況として今回紹介することにした。最後に余談だが、一連の検証を終えてHyper-Vを無効にするためPCを再起動したところ、PROCESS1_INITIALIZATION_FAILEDエラーが発生し、セーフモードの起動もできなくなってしまった。現時点で原因は不明だが「Update Windows 10 Insider Preview October Update for x64-based Systems(KB3105208)」を提供するとセキュアブート環境で正しく動作しないようである(筆者の環境だけかもしれない)。一方のWindows 10 Insider Preview 10565 PCはUEFIからセキュアブートを無効にすると、Windows 10が起動することを確認できたため、もう一方のPCは回復ドライブからコマンドプロンプトを起動し、「dism /Image:C:\ /Remove-Package /PackageName:Package_for_KB3105208~31bf3856ad364e35~amd64~~10.0.1.0」でアンインストールを実行。合わせて「dism /Image:C:\ /Disable-Feature /FeatureName:Microsoft-Hyper-V」を実行して、Hyper-Vの削除も行うことで無事起動を確認できた。その後セキュアモードを無効にして起動を確認したPCも、再びセキュアモードを有効にしてKB3105208を再適用してみたが、再び起動しないトラブルに出くわした。redditなど海外のBBSに目を通すと、問題が発生しない環境もあるようだが、当方の環境では再現性を確認したので、万が一トラブルが発生した場合は上記の手順を試してほしい。阿久津良和(Cactus)
2015年10月23日Windows 10は、ディスプレイサイズに制限されていた作業領域を拡張する「仮想デスクトップ」機能を備えている。仮想デスクトップ自体は目新しいものではなく、他のOSも古くから実装し、Windows XP時代もMicrosoft製ツールで仮想デスクトップを実現していた。今回はWindows 10の仮想デスクトップについて、どのような場面で効果的なのかを考えてみよう。○仮想デスクトップの使い方仮想デスクトップは、タスクビューボタンを押すと現れる「新しいデスクトップ」を押せば、新たに追加できる。起動中のアプリケーションは、コンテキストメニューやドラッグ&ドロップ操作で仮想デスクトップ間を移動し、仮想デスクトップのサムネイルにある「×」ボタンを押せば、その仮想デスクトップが閉じる仕組みだ。これらの操作は、ショートカットキーを覚えておくとよい。仮想デスクトップを追加する場合は「Win」+「Ctrl」+「D」キー、仮想デスクトップの切り替えは「Win」+「Ctrl」+「←(→)」キー、アクティブな仮想デスクトップを閉じる場合は「Win」+「Ctrl」+「F4」キーを押す。また、仕様としてデスクトップ上のアイコンは仮想デスクトップで共通。作成した仮想デスクトップ数はサインアウトしても維持される。○マルチディスプレイ環境では?一見すると便利な仮想デスクトップだが、複数のディスプレイを並べている場合、かえって使いにくい。例えば、3枚のディスプレイをPCに接続している場合、すべてのディスプレイ画面が仮想デスクトップとして切り替わるため、特定のディスプレイだけ必要に応じて切り替えるといった融通が利かないのだ。マルチディスプレイはデスクトップの狭さを補う手段のひとつであり、仮想デスクトップとは相反するともいえる。だが、Windowsはこれまで仮想デスクトップを標準サポートしてこなかった結果、マルチディスプレイ環境が発展してきた。いずれ、マルチディスプレイ環境における個別のディスプレイ画面において、別々の仮想デスクトップを使い分けられるようになってほしいものだ。○2-in-1 PCやタブレットに最適基本的に仮想デスクトップは、シングルディスプレイ環境で威力を発揮する。狭いデスクトップでは、複数のアプリケーションを並べて表示して、マルチタスク的に操作を行うことは難しい。筆者の場合だと、テキストエディターで原稿を書きながら、撮影した画像をチェックしつつリネームやレタッチを行うのが普段の作業スタイルだ(もちろんWebブラウザも)。仮想デスクトップを使うときは、「仮想デスクトップ1」をテキストエディター、「仮想デスクトップ2」を画像ビューア、「仮想デスクトップ3」をフォトレタッチアプリケーションと切り替えることで、作業効率は大幅に向上する。仮想デスクトップを使う上で注意したいのが、「設定」の「システム\マルチタスク」だ。「仮想デスクトップ」セクションでは、タスクバー上のボタンや「Alt」+「Tab」キーによるタスク切り替えの動作として、「すべてのデスクトップ」「使用中のデスクトップのみ」の2つから選択できる。既定値は「使用中のデスクトップのみ」だが、「Alt+Tabキーを押したときに次の場所で開いているウィンドウを表示する」-「すべてのデスクトップ」を選ぶと、仮想デスクトップの切り替え操作をスキップしてアプリケーションを選択できるようになる。仮想デスクトップをよく使う場合は、変更しておくとよいだろう。阿久津良和(Cactus)
2015年10月23日●Surface Pro 3からSurface Pro 4、どこが、何が変わった?日本マイクロソフトは10月22日、Windows 10搭載PCの最新モデル「Surface Pro 4」「Surface Book」に関する発表会を開催した。スペックや価格は別記事『日本MS、「Surface Pro 4」を11月12日より国内販売 - 税別124,800円から』で報じているように、参考価格以外は米Microsoftが10月6日(現地時間)に発表した内容に準じている。本稿では発表会で語られた内容を中心にご紹介する。○2015年11月12日から発売する「Surface Pro 4」最初に登壇した日本マイクロソフト代表執行役社長の平野拓也氏は、先日の「Windows 10 Partner Device Media Briefing」を振り返りつつ、「15社のパートナー(協業するOEMベンダー)と共に連係して、自社デバイスおよびパートナーデバイスの相乗効果でWindowsエコシステムを盛り上げて行きたい」と協業姿勢をアピールした。平野氏はSurfaceおよびSurface Proシリーズ(以下、"Pro"を含めてSurfaceシリーズ)の勢いが日本のPC市場に与えた影響として、1つめに「2-in-1デバイス市場の成長」を掲げる。Surface Proが日本市場に投入されたのは約2年半前だが、その間にPCやタブレット市場が鈍化する反面、2-in-1デバイスに代表されるSurface Proシリーズへの期待が高まっていると説明した。Windows 10のリリースにも、2-in-1 PCデバイス市場の加速化にも期待しているという。2つめは「販売パートナーの拡大」。コンシューマー向け販売パートナーが大手量販店を含めて10社、法人向け販売も認定リテーラーが当初の6社から現在は9社と、約2,000社の販売パートナーがSurfaceシリーズを取り扱っている。そして3つめの「ユーザー層の広がり」は、コンシューマー・法人に限らずSurfaceシリーズが持つ可能性が広がりつつある状況を指す。平野氏は、Surfaceシリーズに付属するペンの活用シナリオが好評だと述べ、文書編集や画像編集など多彩な場面でSurfaceシリーズが使われていることを実感するとした。さらに、教育機関でのSurfaceシリーズの採用も顕著だという。教育の現場では鉛筆やペンを使う機会が非常に多いため、Surfaceシリーズのペンやキーボードの組み合わせが受け入れられているそうだ。平野氏は導入事例として、沖縄県の県立中学校を紹介。全生徒にSurface 3、教員にはSurface Pro 3を導入済みという。また、愛知県大府市の全市立小中学校は、2,200台以上のSurface Pro 3を導入してグループ学習に活用しているとアピールした。続いて登壇したのは、Surfaceシリーズの発表ではお馴染みとなったMicrosoft Surface and Windows Hardware担当ジェネラルマネージャーのBrian Hall(ブライアン・ホール)氏。Surface 3発表以来の来日となった同氏は「Surface Pro 3は多くのユーザーから多彩な評価を得た。全世界におけるSurface Pro 3ユーザーの98%は、周りの人々にSurface Pro 3を薦めてくれている」と、Surface Pro 3の成功をアピールした。Hall氏はSurface Pro 3から「Surface Pro 4」への進化ポイントとして、ディスプレイ周りのベゼルを調整し、Surface Pro 3とほぼ同等の12.3インチながらも、約500万ピクセル/267PPI(Surface Pro 3は約300万ピクセル/216PPI)を実現したことに言及(解像度は2,736×1,824ドット)。また「PixelSense」という新たなブランド名を持つディスプレイは、厚さ0.4ミリのGorilla Glass 4や1.1ミリのバックライトといった3層構造に加え、独自のペン&タッチ用チップセット「G5」という組み合わせを持つ。その結果として、Hall氏は「Surface Pro 4で写真を見ると実世界のようだ」「応答性も高まり、紙の上で書いているみたいな感覚を得られる」と、新たなUXの可能性を強調した。Surfaceペンに関してHall氏は「初代Surface Proにペンを付けたとき、『誰も使わないよ』と言われていた。我々はタブレットの利便性を向上させ、現在ではSurface Pro 3ユーザーの50%がSurfaceペンを使っている」と、先見の明があったことを枕詞に、Surface Pro 4に付属するSurfaceペンの説明を始めた。こちらも多くの情報が発表済みだが、Hall氏が語ったポイントを紹介しよう。まずはペントップの消しゴム機能。Surface Pro 3用ペンはボタンを押しながら書くことで消しゴム機能が動作したが、ユーザーフィードバックを得て現在の形に変更したという。次は、SurfaceペンがSurface Pro 4本体側面にマグネットでくっつくようになった点だ。Surfaceシリーズに限らず、ペン対応のタブレットデバイスをお使いの方なら、鞄の中でペンだけ行方不明になった経験をお持ちかもしれない。Hall氏も「Surface Pro 3ユーザーからのフィードバックを受けて改良した」と述べているように、これで本当にSurface Proシリーズを"紙とペン"と同じ感覚で使えるはずだ。なお、ペンを握るとCortanaが起動し、そのままSurface Pro 4に話しかければスムーズにCortanaを利用できるという。ほかにも別売りのSurfaceペン先キット(細いペン先や太いペン先がある)や、Surface Pro 4タイプカバー、Surfaceドックといったアクセサリを紹介した。米国の発表会と同様に、日本でもMacBook Airと比較し、Surface Pro 4の優位性を強調。Hall氏は「Surface Pro 4は、Surface Pro 3と比較して30%高速化。MacBook Airと比較しても50%速い」と語っていた。ただ、MacBook Airは第4世代Intel Core(Haswell)、Surface Pro 4は第6世代Intel Core(Skylake)を搭載しており、間違いではないが、比較広告に慣れていない筆者としては強弁に感じた。●「Surface Book」は、おあずけ?○"究極のラップトップ"を目指した「Surface Book」は2016年初頭に登場続いて話題は13.5型2-in-1 PC「Surface Book」へ。Hall氏は多くの注目を集めた「Surface Book」の開発理由として、「ユーザーフィードバックの中には、純粋にラップトップ(ノートPC)が好きだという声や、Surface Pro 4よりもパワフルなデバイスを切望する声が少なくなかった」と説明し、Microsoft初のノートPCを"究極のラップトップ"と評していた。"究極"の理由として、Surface Pro 4と同じPixelSenseディスプレイの利点を挙げている。Surface Bookの画面は13.5インチと大きく、解像度も600万ピクセル(3,000×2,000ピクセル/267PPI)と、パワフルなデスクトップPCに迫る構成だ。また、Microsoftは25年間キーボードを作り続けているが、そこで得た知識を投入したキーボードはディスプレイ側と着脱する。こちらもMacBook Proと比較していたが、Hall氏は第6世代Intel Coreや内蔵GPU、キーボード側に内蔵したNVIDIA GeForceを理由に「2倍のパフォーマンスを持つSurface Bookを誇りに思う」と"究極"を重ねて強調した。しかし、Surface Bookは米国でも大人気のため、今回の日本市場投入は見送られた。平野氏は「Microsoft Storeによる予約開始から5日間でほぼ予約台数に達し、リテーラーによる予約もその後同じ結果に至った」と理由を説明している。今回披露したSurface Bookも、Hall氏のスタッフが米国から運んで来たという。平野氏は「早く出したい気持ちはあるが、(本社と連係した)生産体制などを確立してから日本市場に投入したい」と、2016年初頭に日本市場に投入することを明らかにした。2015年の年末商戦はSurface Pro 4のみとなるが、日本マイクロソフトは関連プロモーションとして、さまざまな展開を予定している。多様なユーザーに対するアピールとして、日本最大級の壁画アートフェスティバルである「POW! WOW! JAPAN」との取り組みを発表。サプライズ的に登壇した日本マイクロソフト代表執行役会長の樋口泰行氏が「Surfaceには深い思い入れがあるため、思わず参加した(笑)」と、いつもの軽妙なトークで内容を紹介した。平野氏は、OSやソフトウェアの会社だったMicrosoft/日本マイクロソフトが、Surfaceシリーズをリリースする立場として、「パートナーのデバイスと競合するために作ったものではない。他社が注目していない分野を切り開くデバイスを目指している。新たなカテゴリをSurfaceシリーズで作り、Windowsエコシステムを発展させたい」と述べる。一見すると矛盾するSurface Bookの市場投入も、鈍化したノートPC市場を活性化するためだという。Surface Bookに関しては改めてご報告する機会を待ち、まずはSurface Pro 4という第4世代に達したデバイスの今後に注目したい。阿久津良和(Cactus)
2015年10月22日日本マイクロソフトによるWindows 10 Mobileデバイスの紹介イベントは、国内スマートフォン市場におけるiOS/Android独占状態を崩せるのか、と多くの注目を集めたが、肝心のOSは今現在も開発中だ米MicrosoftはWindows 10 Mobile Insider Preview ビルド10549を10月14日にリリースした。さっそく日本マイクロソフトのエバンジェリストである高橋忍氏のブログでも、具体的なアップデート方法を解説している。前バージョンであるビルド10536からのアップデートをサポートせず、一度Windows Phone 8.1に戻してからアップデートを実行しなければならないからだ。さて、ビルド10549の注目ポイントは日本語版Cortanaをサポートした点である。Cortanaを使用するまでにキーボードや音声言語のインストールなど数時間を要したものの、Windows 10 Insider Previewの日本語版Cortanaと同じUIが現れた。PC版と同じくWindows 10 MobileデバイスでもCortanaに話しかけてみたが、天気やスケジュールの確認、他愛ないコメントなどを返してくれるものの、聞き慣れた音声が聞こえてこない。設定を確認したところ「受信テキストメッセージの読み上げ」がBluetoothのみになっていたが、こちらを変更しても結果は一緒だった。開発途中にあるOSの不具合をあれこれ並べても不粋なので、ここで視点を変えてみよう。Windows 10 Mobile Insider Previewの初期ビルドで感じた、もっさりとした動作は雲散霧消し、Snapdragon 400(1.2GHz)程度のデバイスでもスムーズに動作する。筆者は空いた時間を見付けてはWindows 10 Mobileを触っているが、そこで感じるのが、「Windows 10と同じUI」という点だ。何を今さらという声が聞こえてきそうだが、仕事やプライベートで毎日触れているPCと同じUIから得るUXは想像以上に便利だ。これまで日本国内でモバイル系Windows OSは成功に至たらず、Microsoftは「One Windows」という構想を持っていなかった。しかし、日本マイクロソフトが発表した6社のWindows 10 Mobileデバイス開発表明によって、我々はしっくりしない場面から解放されるのだ。既報のとおりMicrosoftは、自社製のLumia 950/950XLを2015年11月から米国を中心にリリースする。Windows 10 Mobileが「ひとまず」完成するのは同時期と決めて構わないだろう。ただし、同社はミドルレンジモデルのLumia 550の欧州市場向けリリースを12月に設定しており、日本市場向けデバイスも同月以降と推測できる。これまでPC向けOSであるWindows 10に留まっていたOne Windowsの世界は、Windows 10 Mobileデバイスの登場で大きく広がり始めるはずだ。阿久津良和(Cactus)
2015年10月20日米Microsoftが現地10月6日に開催した発表会では、SurfaceやLumia新製品のほか、Microsoft HoloLensなどの新デバイスについての情報もアップデートされた。HoloLensについてこれまで、発売時期などを明確にしてこなかったMicrosoftだが、今回の発表会ではHoloLensの「Development Edition」の予約受け付けを開始し、2016年第1四半期に3,000ドルで発売することを明らかにした。ソフトウェア開発者向けのHoloLensとなるため、まだまだ実用レベルではないものの、Apple WatchやOculus Riftなどウェアラブルデバイスが我々のIT生活を一変させることは明らかである。今回の発表会では、HoloLensを実際に使ったデモンストレーションとして、拡張現実ゲーム「Project X-Ray」と名付けたガンシューティングゲームを披露した。HoloLensをかけたMicrosoft社員の手にはハンドガンが現れ、壁からわき出てくるSF風のロボットを撃ち落とすというシンプルなVRゲームである。残念ながらデモンストレーションでは、HoloLensをかけたプレイヤー視点は紹介されなかったものの、その没入感はスマートフォンや据え置き型のゲームとは比べものにならないだろう。個人的に興味を惹いたのは壁やソファーに描かれた映像だ。もちろんこれらはリアルタイム描画されるが、察するに「IllumiRoom(イルミルーム)」に似た技術を用いているのではないだろうか。詳しくは以前の拙著記事を読んでいただきたいが、簡単に述べるとIllumiRoomはプロジェクターとKinectを使って部屋全体をゲーム画面とする視野拡張システムだ。現在もMicrosoft Researchの研究プロジェクトとして残されているが、HoloLensと組み合わせていくと考えるのが自然だろう。MicrosoftはHoloLensをゲーム以外にも教育やデザイン、ヘルスケアなどさまざまな用途に使えるデバイスと位置付けており、その可能性は無限大だ。もちろんHoloLensは自己完結型のWindows 10 PCであるため、今後の拡張性にも期待が持てる。ただし、現時点でHoloLens Development Editionの日本国内の発売時期や不明であり、仮にリリースされてもアプリケーションは出そろっていない。執筆時点ではProject X-Ray以外に、3DモデリングアプリケーションのHoloStudio、SkypeやMineCraftのHoloStudio対応版が予定されている。これらがリリースされてから、自分に必要なデバイスなのか判断しても十分間に合うだろう。○スポーツ向けのウェアラブルデバイス「Microsoft Band 2」もう一つの注目株は、Microsoft製ウェアラブルデバイスの第2世代となる「Microsoft Band 2」である。第1世代は2014年10月にリリースしているが、日本では未発売のため、その存在を知らない方も多いのではないだろうか。初代Microsoft Bandは10種類のセンサーを備え、心拍数や皮膚温度のモニターリングやGPSによる測定などが可能だった。米国では249.99ドルで10月30日に発売されるMicrosoft Band 2は、新たに気圧計(Barometer)を追加して高度変化や最大酸素摂取量(VO2MAX)の測定を可能にしている。計11種類にセンサーを増やして、日常生活を広くサポートするウェアラブルデバイスに成長した。収集したデータは、健康管理プラットフォーム「Microsoft Health」に集約。ユーザーはMicrosoft HealthのWebサイトや、ユニバーサルWindowsアプリ、iOS/Android向けアプリ経由で閲覧できる。もちろんOSはWindows 10のため、Cortanaによる音声コントロールやテキストメッセージへの応答、リマインダーの設定が可能だ。稼働時間はフル充電で約2日間。この点は初代モデルと変わっていない。老人大国になりつつある日本では、ウェアラブルデバイスでメールの着信を知るよりも、健康関連の開発を進めてもらうほうが有益だ。しかし、249ドルを日本円に換算すると約3万円。健康維持は自己責任という考えが浸透している米国ではニーズの高いデバイスと言えるが、妥当な価格なのか筆者には判断できない。それでも筆者はスマートフォンよりも高精度なMicrosoft Band 2で日々の健康管理への意識を高めたいため、国内販売を切望したい。阿久津良和(Cactus)
2015年10月19日Windows 10無償アップグレード開始前、Microsoftは「システムの圧縮機能によって、OS(=システムファイル)の使用領域を大幅に節約する」とアナウンスしていた。弊誌Windows 10大百科の執筆時は具体的な動作を確認できなかったが、調べてみるとコマンドラインからNTFS圧縮を実行する「Compact.exe」に気になるオプションが加わっていた。このコマンドを使ったシステム全体の圧縮手順を紹介しよう。○生まれ変わった「Compact.exe」Microsoftの開発陣は2015年3月の時点で、圧縮済みシステムファイルから直接Windowsを起動する「WIMBOOT」の肥大化を避ける仕組みを加えると、公式ブログで表明している。これらは展開時に組み込む仕組みのため、一般的なスペックを備えるPCでは恩恵を受けることはできないと思われていた。だが、システムファイルの圧縮に対しては後から適用する方法を用意している。それが「Compact.exe」だ。以前から存在するCompact.exeはNTFS上のファイルをコマンドラインから圧縮するものだが、Windows 10では新たなオプションが加わった。例えば「/EXE」は変更頻度が低い実行形式ファイルに対して、XPRESSやLZXといった圧縮アルゴリズムも適用する。この圧縮を一括実行するオプションが、「CompactOs」だ。サブオプションとしては、圧縮状態を確認する「query」、すべてのシステムファイルを圧縮する「always」、すべてのシステムファイルを圧縮解除する「never」がある。これらはWindows 10インストール後でも実行できるため、ストレージの空き容量に悩んでいる多くユーザーにとって有益だろう。ただし、圧縮は伸長(解凍)とペアの存在だ。システムファイルを圧縮するということは、伸長処理もすべてのバイナリファイルに対して加わるため、必然的にパフォーマンスが落ちる。特にCPUパワーが乏しい場合は、体感的な速度低下は小さくないだろう。この点を鑑みて本Tipsを試してほしい。○システムファイルを圧縮する操作自体は簡単だ。管理者権限でコマンドプロンプトを起動し、コマンドラインから「compact /CompactOS:always」と実行するだけでよい。ただし、進捗状況を示すプログレスバーなどは現れず、作業中はI/Oの負荷が大きいため、PCをそのまま放置できるタイミングで実行することをおすすめする。圧縮が完了すると、圧縮対象となったファイル数や全体の圧縮量と圧縮率を示すメッセージが現れる。今回試した環境では圧縮率「1.7対1」で、約3.5Gバイトのストレージ容量を空けることに成功した。前述のとおり、「compact /CompactOS:query」と実行すれば、現在の圧縮状態を確認できる。圧縮はしたものの、全体のパフォーマンスが低下する場合は、「compact /CompactOS:never」で圧縮を解除すればよい。圧縮時と同等の時間を要するが、筆者の環境では問題なく元の状態になることを確認した。阿久津良和(Cactus)
2015年10月18日MicrosoftはWindows 10 Insider Preview ビルド10565でアクティベーション(ライセンス認証)ロジックを変更している。同社のGabriel Aul氏は「Windows 7/8/8.1のプロダクトキーを使用して、Windows 10のアクティベーションを可能にした」と公式ブログで説明していた。だが、肝心のISOファイルをリリースしなければ、アクティベーションの改善も意味をなさないため、前回の記事では大きく取り上げなかったが、2015年10月16日未明にダウンロードサイトを更新し、Windows 10 Insider Previewの各国語版ISOファイル公開に至っている。今回はWindows 10 Insider Preview ビルド10565を使って、実際のアクティベーションを行ってみた。○Windows 7のプロダクトキーでアクティベーションを実行MicrosoftのWindows 10 Insider Preview向けダウンロードサイトにアクセスすると、以前と同じく日本語を始めとする23言語のISOファイルが用意されている。今回の変更は、その内容をビルド10240からビルド10565へ更新した点だ。新規インストールを試してみると、以前とは異なる部分を散見できる。その1つが「Windowsのライセンス認証」だ。下図はビルド10240とビルド10565の同ダイアログを並べたものだが、ご覧のとおりプロダクトキーやデジタルコピー版購入時の対応方法を詳しく説明している。インストール手順やセットアップなどは以前と同じため割愛するが、ビルド10240と異なるのがMicrosoftアカウントではなくローカルアカウントで新規サインインしても、始めからCortanaが有効になる点だ。もちろんMicrosoftアカウントによるサインインが必要になるが、今後CB(Current Branch)に提供するTH(Threshold)2も同様の仕組みに切り替わるのだろう。従来どおりアクティベーションは「設定」の「更新とセキュリティ\ライセンス認証」から実行するが、使用中のデバイスと合致するDigital entitlement(デジタル登録情報)もしくはプロダクトキーが存在しないため、エラーメッセージが現れる。アクティベーションをうながす仕組みを導入するのは至極当然だが、エラーメッセージはPC初心者の誤解を生むのではないだろうか。今回はWindows 7 Ultimate用プロダクトキーが余っていたので、そちらを入力してみたが、Aul氏の説明どおり難なくアクティベーションが完了した。特にWindows 10用プロダクトキーに対する注意やメッセージなどは現れない。アクティベーション方式も、Windows 7/8.1からWindows 10へアップグレードしたデバイスと判断されたのか、デジタル登録情報となっていた。これらの仕組みは前回の記事でも述べたように、Webページで詳しく解説している。以前は英語のみだったものの既に日本化されているため、詳しい説明は割愛するが、Windows 10 Insider Preview ビルド10565は新しいアクティベーションとなるデジタル登録情報が初めて動作するビルドとなった。今回のアクティベーションロジックの変更で注意すべきは、Windows 10無償アップグレード期間終了後の話だ。Microsoftは自社のコミュニティサイトでFAQを公開している。例えば2016年7月29日以降、Windows 7/8.xのプロダクトキーによるアクティベーションが可能かという質問に対しては、「No」と述べつつも「期間中にWindows 10へアップグレードした場合、デバイスが壊れるまで使い続けることができる」そうだ。また、サポートするプロダクトキーの種類として、「OEM版Windows 7/8.x」「リテール版Windows 7/8.x」「Amazonなどのオンライン版Windows 7/8.x」「Windows Anytime UpgradeやGenuine Windows Wizardで購入したプロダクトキー」「Windows 8.1 Pro Pack用プロダクトキー(Windows 10 Proとしてアクティベーション可能)」をサポートする。一方で汎用ボリュームライセンスキーやマルチライセンス認証キーなどのボリュームライセンスプロダクトキー、Windows 7/8.x Enterpriseエディションのプロダクトキーは未サポートだ。このようにMicrosoftや日本マイクロソフトがアナウンスしていた「Windows 10へのアップグレードは1年間無料」という姿勢は何ら変わっていない。Windows 7/8.xのプロダクトキーを余らしているユーザーは、来年夏までにアクティベーションコードとして利用した方がよさそうだ。阿久津良和(Cactus)
2015年10月16日稼働中のプロセスを確認し、パフォーマンスやスタートアッププログラムの管理を行う「タスクマネージャー(taskmgr.exe)」、実は不思議な動作をしている。一般的にタスクマネージャーのコマンドラインオプションは存在しないと言われているが、細かく観察していると違いが見えてくるのだ。今回はその動作を検証してみよう。○呼び出し方法で変わるコマンドライン一般的にタスクマネージャーは「ファイル名を指定して実行」や、「Ctrl」+「Alt」+「Delete」キーで呼び出すセキュリティ画面から起動するが、その結果はすべて一緒。タスクマネージャーが起動する。だが、Sysinternalsの「Process Explorer」で起動時のコマンドラインを確認すると、その結果は異なるのだ。上の図1~図3はファイル名を指定して実行からタスクマネージャーを起動し、下の図4~図5はタスクバーからタスクマネージャーを起動したものだが、Process Explorerで確認するコマンドラインには、オプション「/4」が加わったことが見て取れる(図3、図5)。この他にも直接タスクマネージャーを起動する「Ctrl」+「Shift」+「Esc」キーを押した場合はオプション「/2」、「Ctrl」+「Alt」+「Delete」キーで呼び出すセキュリティ画面から起動するとオプション「/3」。検索ボックスからショートカットファイル経由で起動するとオプション「/7」に変化することを確認できた。○「/Startup」オプションと数値オプションを組み合わせる本件についてMicrosoftの開発者向け資料をあさってみたが、これらの数字を意味する説明は見当たらない。Windowsの技術解説書であるリソースキットも同様だった。何かヒントはないかとtaskmgr.exe内部を調べたところ「/Startup」という、いかにも"オプションとして用意"したような文字列が見つかった。だが、「taskmgr /Startup」と実行しても、そのままタスクマネージャーが起動するだけで特に変化はない。ところが先の数値を用いて「taskmgr /0 /Startup」と実行したところ「スタートアップ」タブがアクティブな状態でタスクマネージャーが起動した。この数値を「1」「2」「3」と変更してみたが結果は一緒。察するにタスクマネージャーの起動をイベントに書き込む際、起動手順を判断するための数値なのかもしれない。昔のプログラムでは、実行結果を数値で示すエラーコードを用いていたが、それに近い動作なのではないだろうか。タスクマネージャーでスタートアッププログラムを整理するときは、「taskmgr /0 /Startup」を直接起動できることを知っておくと、一手間省ける。阿久津良和(Cactus)
2015年10月16日Microsoftは10月7日から「Surface Pro 4」の予約受付を開始し、同月26日に発売する。これは北米市場の話で日本市場については執筆時点で不明だが、過去の例をみれば、日本マイクロソフトが近日中に投入することは明らかだろう。今回は、Windows 10搭載PCを新たに欲するユーザーにとって気になるSurface Pro 4に注目する。○順当なパワーアップは魅力に欠ける?Surface Pro 4はSkylakeこと第6世代のIntel Coreを搭載するなど、Surface Pro 3に比べ多くのハードウェアスペックを向上させた。にもかかわらず、0.7mmの薄型化、14gの軽量化を達成。ディスプレイは0.3インチ拡大して12.3インチに、解像度もQHDから3K相当へと高解像度化を進めた。Microsoft Surface担当CVPのPanos Panay氏は「画質の向上やペン入力の精度など各所を向上させている」と説明している。付属する「Surface Pen」は5月に買収完了したN-trigのスタイラスペン技術を利用。感圧レベルを256段階から1,024段階に高め、入力遅延など書き込む際に発生していた違和感を軽減している。さらにペンのトップボタンを消しゴム機能に変更し、消しゴム付き鉛筆のような使い方を可能にした。Surface Pro 3ではペンのトップボタンにOneNote起動などの機能を割り当て、消しゴムボタンもわざわざ用意していたが、Surface Pro 4の新しい仕組みの方がユーザーも直感的に使用できるだろう。筆者はSurfaceシリーズ発売直後からType CoverやTouch Coverを使ってきたが、キーストロークの浅さと打鍵時の軽さが気になっていた。Surface Pro 4のType Coverはこの点を鑑みてか、Surface Bookと同じくパンタグラフ式に切り替えている。さらに、Surface Pro 4のType CoverはSurface Pro 3でも利用可能だ。Surface Pro 4では「Surface Dock」も大幅にコンパクト化。4K出力をサポートする2基のDisplayPort、4基のUSB 3.0、LANポートなどを備えている。価格はMicrosoft Storeで199.99ドル。Surface Pro 3やSurface Bookにも対応しており、国内発売に期待したいところだ。○Surface Pro 4への期待は大きいがさて、今回の発表を受けて筆者も、初代Surface Proからの有力な乗り換え候補としてSurface Pro 4に期待している。スペックは順当なバージョンアップで満足できる構成であり、個人的にはWindows Helloの顔認証に対応している点も大きい(Surface Bookも同様)。だが、大きな壁となるのはその価格である。上図は北米におけるSurface Pro 4の参考価格だが、これをそのまま現在の為替レートに当てはめると、m3モデルでも10万円を超えることは間違いない。Type Coverなどを加えると、さらなる出費が必要になる。値ごろ感のあった円高のときとは変わって、今は"良いけど高いデバイス"という評価が順当ではないだろうか。ワールドワイドでビジネスを行うMicrosoft曰く、日本はSurface Proシリーズが成功した国の一つだそうだ。Windows 10の無償アップグレードが一段落したMicrosoftは、今後自社やOEM製のWindows 10搭載デバイスをプッシュする局面に移行する。これまでは為替などの追い風に助けられてきた部分があったが、今回はどのような結果になるのか。Surface Pro 4の国内正式発表が待ち遠しい。阿久津良和(Cactus)
2015年10月14日既報のとおり、Microsoftが米国時間10月6日に開催した発表会は新デバイスが中心となり、Windows 10に関して多くは語られなかった。だが、「Surface Pro 4」や「Surface Book」など話題に事欠かない。そこで本レポートでは数回にわたってMicrosoftの新デバイスが持つ可能性を考察する。○デスクトップPCを置き換える「Surface Book」まずは、2-in-1スタイルでありながら、ノートPCとしての性格を色濃く持つ「Surface Book」の特徴を確認していこう。最大の注目ポイントはキーボード周りだ。脱着式のキーボードにはGPUを内蔵しており、ドック的な存在として機能する。公式スペックに「GeForce」という名称を確認できるが、GPUの詳しい性能は明らかにしていない。説明によれば「Adobe PhotoshopやAutoCADが利用できる」とあるが、少なくともIntel HD Graphics 520以上の性能を期待して構わないだろう。なお、キーボード部分の重量は約788gと本体の728gを超える。発表会での説明や動画を見る限り、キーボードの打鍵感もよさそうだ。レイアウトはType Coverと同じ。キーピッチやキーストロークの数値は明らかにされていないため、ハンズオンレビューする機会を得ないと断言できないが、キー入力の快適性はSurfaceシリーズの中でも群を抜いているだろう。ヒンジ部分も興味深い。「Dynamic Fulcrum Hinge」と名付けた独自構造のヒンジは、Panay氏のデモンストレーションを目にする限りスムーズに動作し、意図する角度で固定できそうである。Surface Bookはキーボードを脱着できるが、本体側にロック機能が備わっている。Surface Proシリーズと同じくマグネット装着に加えて、接続を固定するスイッチが動作する仕組みだ。○MicrosoftがノートPCをリリースした理由以前から、Microsoftが"さらに大きなSurface Pro"をリリースするのでは、という噂が流れていた。既存のSurface Proシリーズでは画面が小さく、作業しにくいというビジネスユーザーを対象に、13~14インチクラスのデバイスをラインナップに加えるのでは、というものである。改めて述べるまでもなく、13~15インチクラスのノートPCは各社がしのぎを削る市場だ。初代Surface ProおよびSurface Pro Pro 2は10.6インチだが、Surface Pro 3は12.0インチに、今回のSurface Pro 4は12.3インチとさらに拡大している。これはユーザーニーズとして、大きなディスプレイを持つデバイスが求められていることの裏返しだ。Microsoftは13インチクラスという新たな市場へ果敢にチャレンジする。ARMデバイスでは敗戦したMicrosoftだが、新たなチャレンジはどのような結果を生み出すのだろうか。GPU性能や解像度の高さを踏まえると、ビジネスユーザーやクリエイターなど一定以上のマシンパワーを欲するユーザーのニーズをしっかりと埋めることだろう。阿久津良和(Cactus)
2015年10月13日●Skypeの代わりとなる「メッセージング」をリリースMicrosoftのGabriel Aul氏は2015年9月24日(以下すべて現地時間)の時点で「ビルド10550はまもなく開発を終える」と発言していた。その後Aul氏は「Windows 10は『挑戦的なバグ』を修正するため作業時間が必要だ」と、10月8日に発言している。Windows 10 Mobileの開発に人員を割いて、Windows 10は後回しにするのかと予想していたところ、10月12日に新ビルド「Windows 10 Insider Preview ビルド10565」のリリースを発表した。まずはMicrosoftの公式発表に沿って、ビルド10565の改善点を確認していく。○Skypeの代わりとなる「メッセージング」をリリースWindows 10開発時(ビルド10240以前)のMicrosoftは、アクションセンター経由によるメッセージの送受信が可能になるとアナウンスしていたが、いざ無償アップグレードが始まっても、そのようなアプリケーションは用意されなかった。別ラインで開発を進めているWindows 10 Mobile Insider Preview向けには、新たな標準IM(インスタントメッセージ)としてMessaging Skype Betaを2015年9月にリリースしている(当時の記事はこちら)。だが、Messaging Skype Betaはモバイルデバイス向けアプリのため、Windows 10上では動作しなかった。筆者はMessaging Skype BetaのユニバーサルWindowsアプリ化を推し進めると思っていたが、実際は「Microsoftメッセージング(以下、メッセージング)」という新たなユニバーサルWindowsアプリを「ストア」経由で提供する手段を選択した。メッセージングを起動すると、"Skypeとのメッセージ送受信が可能"であることが示され、Skypeディレクトリ経由でのユーザー登録などが行われる。その設定操作は極めてシンプル。悪く言えば基本的機能しか備えていないが、Aul氏は「Skypeとの音声通話やビデオ通話、メッセージの送受信が3G/4GやWi-Fi上で楽しめる。(中略)初期プレビューのため、いくつかのバグが残っているが今後は毎月更新プログラムを提供し、多くの機能を追加する」と説明している。実際に使ってみると違和感を覚える場面をいくつか体験した。例えばSkype for Windowsが起動している場合、メッセージなどを受信すると"メッセージングとSkypeが同時に反応"するため、戸惑ってしまう。もちろんSkype for Windowsを終了させ、自動起動しなければよいはずだが、メッセージングを起動していない状態では音声通話やビデオ通話の着信が分からないのである。Aul氏は「着信通知はアクションセンターに残るため、アプリケーションを開かずにインライン返信も行える」と説明しているが、筆者が試したバージョン(1.10.11001.0)では未実装なのかもしれない。ちなみにメッセージは後から参照できる。Aul氏も述べているようにメッセージングは初期のプレビュー版のため、今回使用した限りでは、"Skype for Windowsのアンインストールして移行すべき"とは、とても言い難い。少なくともアプリケーションオフライン時の着信通知機能が安定動作するようになってから移行しても遅くはないだろう。●一歩ずつ成長する「Microsoft Edge」○一歩ずつ成長する「Microsoft Edge」ビルド10240時は必要最小限の機能を備えた「Microsoft Edge」は、Insider Previewのビルドを重ねることで1つずつ機能を加えてきた。今回のビルド10565では、4つの機能が加わっている。1つめはタブプレビュー機能。Microsoft Edgeで複数のタブを開いてから、タブにマウスオーバーするとWebページのプレビューが現れるというものだ。色々と試したところ同じドメインのサイトを複数開いている場合、それぞれのプレビューを同時に表示する仕組みのようである。2つめはお気に入りとリーディングリストの同期なのだが、こちらの動作は確認できなかった。Aul氏は「ひと目で分かる」と説明しているが、Microsoft Edgeの設定項目も、「設定」の「アカウント\設定の同期」にも類する項目は用意されていない。念のため複数のPCでWindows 10 Insider Preview ビルド10565をインストールし、同じMicrosoftアカウントで異なるお気に入りやリーディングリストを作成して小一時間放置してみたが、特に変化はなかった。3つめはドラッグ&ドロップのサポート。以前のビルドはエクスプローラーがWin32アプリケーション、Microsoft EdgeがユニバーサルWindowsアプリのため、相互的にドラッグ&ドロップできずに不便を強いられていた。この点を鑑みたのか今回のビルドでは前述の機能を加えて、エクスプローラーからOneDriveなどへのアップロードを可能にしている。4つめはコンテキストメニューに加わった<Save target as>だ。本項目を選択するとコモンダイアログが起動し、HTMLファイルや画像ファイルをそのまま保存可能になる。このように後者2つの新機能は革新的というよりも、"Internet Explorerが供えていた機能をインポートした"と述べるのが正しいだろう。なお、前ビルドでは確認できなかった機能として、<詳細>メニューに<デバイスにメディアをキャスト>が加わっている。Xbox OneなどWindows 10のメディアキャスト機能に対応するデバイスを所有していないため、動作を確認していないが察するに、"Microsoft Edge上のメディアコンテンツをリビングのTVなどで再生する"機能だろう。Microsoft Edge Devの記事によれば、レンダリングエンジンであるEdgeHTMLの改善も加わり、体感レベルだがWebページの表示スピードも速くなったように感じられる。筆者はメインWebブラウザーとして今でもMozilla Firefoxを使っているが、拡張機能の影響で正しく表示されないWebページを閲覧するサブWebブラウザーとして、Microsoft Edgeに信頼を置けるようになってきた。今後の実装予定にある"拡張機能のサポート"に期待したい。●より使いやすくするためUI/UXを改善○より使いやすくするためUI/UXを改善Aul氏はCortanaのリマインダーに「インテリジェントインクノートを追加した」と公式ブログで述べているが、日本語版Windows 10 Insider Previewでは、その動作を確認できなかった。しかし、ノートブックには「配達」という新たな項目が加わっている。試しにゆうパックの追跡コードを入力してみたが未対応のようだ。同氏の説明によれば「Cortanaは映画やイベントなどの開始を知らせる」機能として実装したようだが、残念ながら日本国内で試せるのは先の話になるだろう。さて、各図をご覧になると分かるようにタイトルバーの配色が変わっていることに気付かれたことだろう。「設定」の「パーソナル設定\色」に並ぶ<スタート、タスクバー、アクションセンター、タイトルバーに色を付ける>のスイッチがオンの場合、着色の調整が行われた。このようなUI周りの微調整は各所に施されている。Windows 10 Insider Previewユーザーであれば、以前のビルドから新アイコンに置き換わっていることにお気付きのことだろう。Windows 10のアイコンデザインは紆余曲折があったものの、最終的にはスキューモーフィズム・デザインに先祖返りする道を選択したようである。さらにスタートメニューのコンテキストメニューも変更が加わった。サブメニューを追加したのはビルド10547だが、アクションを示すアイコンを加えている。またUIというよりもUX面の改善だが、「デバイス\プリンターとスキャナー」に"デフォルトプリンター"の選択に関する設定項目が加わった。こちらが有効な状態では、"最後に使ったプリンター=デフォルトプリンター"となる。「設定」を徒然と眺めていると「ライセンス認証」に「プロダクトキー」という項目が新たに加わっていることも確認できた。筆者の検証環境はWindows 8.1からWindows 10にアップグレード後、Windows Insider Programに参加しているが、その場合のアクティベーション方式は「Digital entitlement(デジタル資格)」となる。このロジックに関してはこちらのWebページでまとめられており、Windows 7/Windows 8.1の正規品からの無償アップグレードや、Windowsストア経由のライセンス購入、Windows 10 Proのライセンス購入、前述した筆者の環境はDigital entitlementとなる仕組みだ。また、量販店経由でWindows 10を購入した場合やMSDNサブスクリプション契約などは「Product key」となる。この他にも数多くのバグ修正や既知の問題は多数残っているが、無償アップグレード開始直後のようなトラブルはかなり減ってきた。そろそろCB(Current Branch)として、Windows Insider Program未参加の環境への提供も始まるのではないだろうか。阿久津良和(Cactus)
2015年10月13日自身のユーザーアカウントを明示するユーザーアカウントの画像は、Windowsに限らず多くのOSやアプリケーションで用いられてきた。Windows 10はそれまでの角々しいデザインから円形に変更したが、その動作は不確かな部分が多い。今回はユーザーアカウントの画像を初期状態に戻す手順を紹介する。○アカウントの画像ファイルは二重構造前回述べたように、ユーザーアカウントの画像は「%APPDATA%\Microsoft\Windows\AccountPictures」フォルダーに、「アカウントの画像(拡張子「.accountpicture-ms」)」ファイルとして格納されている。このファイルはシステムに関連付けされているため、ダブルクリックすると現れる「アカウントの画像の変更の確認」メッセージから、ユーザーアカウントの画像を直接変更することが可能だ。アカウントの画像ファイルをバイナリーエディターなどで開いてみると、マジックナンバーに「JFIF」の文字列が確認できるため、JPEG形式であることが分かる。試しにコマンドプロンプトから拡張子を変更したところ、画像ビューアーソフトで閲覧することができた。しかし、その解像度は荒い。上図でも96×96ピクセルと示しているが、「設定」の「アカウント\お使いのアカウント」で示される画像サイズは230×230ピクセルだ。アカウントの画像はWindows 8.xで導入されたファイル形式だが、その構造はWindows 10の場合、ファイルヘッダー、96×96ピクセル、448×448ピクセルのデータという順に格納している。先の画像ビューアーソフトは、最初のデータ(96×96ピクセル)を検知してしまったのだろう。これらのことから、ユーザーアカウントに用いる画像は、448×448ピクセル以上が適切であることが分かる。○アカウントの画像をリセットするユーザーアカウントの初期画像には無味乾燥なものが使われているが、色々な画像ファイルを使った上で「初期状態に戻したい」と思ったときどうするか。Windows 10は、ユーザーアカウントの画像をリセットする機能を用意していないのだ。しかし、初期状態の画像ファイルは「%ProgramData%\Microsoft\User Account Pictures」フォルダーに格納されているため、これらを選択すれば初期状態に戻すことが可能だ。User Account Picturesフォルダーには、ビットマップ形式とPNG形式の画像ファイルが格納されている。それぞれピクセルサイズは異なり、「guest.bmp」「guest.png」および「user.bmp」「user.png」は448×448ピクセルだ。ちなみに「user-192.png」は192×192ピクセル、「user-48.png」は48×48ピクセル、「user-40.png」は40×40ピクセル、「user-32.png」は32×32ピクセルとなる。そのため、ここでは「user.png」を選択すればよい。これでスタートメニューやユニバーサルWindowsアプリの「ストア」などで用いられるユーザーアカウントの画像が初期状態に戻る。阿久津良和(Cactus)
2015年10月11日