ADHD(注意欠陥・多動性障害)とは?出典 : (注意欠陥・多動性障害)は不注意(集中力がない)、多動性(じっとしていられない)、衝動性(考えずに行動してしまう)の3つの症状がみられる発達障害のことです。年齢や発達に不釣り合いな行動が仕事や学業、日常のコミュニケーションに支障をきたすことがあります。人口調査によると、子どもの20人に1人、成人の40人に1人にADHDが生じることが示されています。以前は男性(男の子)に多いと言われていましたが、現在ではADHDの男女比は同程度に近づいていると報告されています。出典:DSM-5 精神疾患の診断・統計マニュアル文部科学省はADHD(注意欠陥・多動性障害)を以下のように定義しています。ADHDとは、年齢あるいは発達に不釣り合いな注意力、及び/又は衝動性、多動性を特徴とする行動の障害で、社会的な活動や学業の機能に支障をきたすものである。また、7歳以前に現れ、その状態が継続し、中枢神経系に何らかの要因による機能不全があると推定される。上記の文部科学省の定義では7歳以前に症状が現れるとされていますが、2013年に出版されたアメリカ精神医学会の『DSM-5』(『精神疾患の診断・統計マニュアル』第5版)では、診断年齢は12歳に引き上げられています。。また、ADHDの日本名については、日本精神神経学会の定めた「注意欠如・多動性障害」が用いられることもありますが、現在でも「注意欠陥・多動性障害」を使う場合が多いので、本記事ではこちらを障害名として使っていきます。近年では、子どもだけではなく大人になってからADHDと診断される人も多く、注目を浴びています。日本精神神経学会「DSM-5病名・用語翻訳ガイドライン」 2014年ADHDの3つの症状ADHDの症状は「不注意」「多動性」「衝動性」の3つに分けることができます。それぞれの具体的な特徴を見ていきましょう。Upload By 発達障害のキホン・忘れ物が多い・何かやりかけでもそのままほったらかしにする・集中しづらい、でも自分がやりたいことや興味のあることに対しては集中しすぎて切り替えができない・片づけや整理整頓が苦手・注意が長続きせず、気が散りやすい・話を聞いていないように見える・忘れっぽく、物をなくしやすいUpload By 発達障害のキホン・落ち着いてじっと座っていられない・そわそわして体が動いてしまう・過度なおしゃべり・公共の場など、静かにすべき場所で静かにできないUpload By 発達障害のキホン・順番が待てない・気に障ることがあったら乱暴になってしまうことがある・会話の流れを気にせず、思いついたらすぐに発言する・他の人の邪魔をしたり、さえぎって自分がやったりするADHDの3つのタイプとそれぞれの特徴出典 : 前の章でADHDには3つの症状があることを説明しましたが、人によってその現れ方の傾向が異なり、大きく3つのタイプに分けることができます。また、性別によっても多いタイプが変わってきます。多動と衝動の症状が強く出ているタイプです。次のような特徴が現れることがあります。・落ち着きがなく、授業中などでも構わず歩き回ったり、体を動かしてしまうなど、落ち着いてじっと座っていることが苦手・衝動が抑えられず、ちょっとしたことでも大声を上げたり、乱暴になったりしてしまい、乱暴な子、反抗的だととらえられやすい・衝動的に不適切な発言をしたり、自分の話ばかりをする・全体的にみるとこのタイプは少ないが、男性(男の子)に現れることが多い不注意の症状が強く出ているタイプです。次のような特徴が現れることがあります・気が散りやすくて、物事に集中することが苦手・やりたいこと、好きなことに対してはとても集中して取り組むが切り替えが苦手・忘れ物や物をなくすことが多く、ぼーっとしているように見えて人の話を聞いているのか分からない・幼い子どもの頃は、ADHDではなくとも忘れ物が多い人が少なくないため、ADHDと気づかれにくい。不注意の特性は女性(女の子)に現れることが多い。多動と衝動、不注意の症状が混ざり合って強くでているタイプです。次のような特徴が現れることがあります・多動性-衝動性優勢型と不注意優勢型のどちらの特徴も併せ持っており、どれが強く出るかは人によって異なる・忘れ物や物をなくすことが多く、じっとしていられず落ち着きがない・ルールを守ることが苦手で順番を守らない、大声を出すなど衝動的に行動をすることがあるこれらの分類はアメリカ精神医学会のDSM-4-TRによって規定されたものです。現在でもADHDの分類はこれらの3つのタイプによって分けられることが多いのですが、2013年に出版されたDSM-5においては、新たな診断基準が規定されています。詳しくはADHDの診断方法の章を参照してください。また、ADHDはアスペルガーや自閉症を含む自閉症スペクトラム(ASD)や学習障害(LD)などのほかの発達障害や睡眠障害などと合併することもあります。その場合は上記に挙げた以外の症状が見られる場合もあります。年齢別に見たADHDの症状の現れ方出典 : ■生後すぐから診断ができるの?ADHDは発達障害のひとつですが、発達障害は、言語・認知・学習といった発達領域が未発達の乳児では、症状が分かりやすくでることはありません。ですから、生後すぐにADHDの診断がでることはありません。また、ADHDの症状は他の発達障害の症状と共通するものもあるので、判断には注意が必要です。しかし、ADHDと診断された人たちは、乳児期に共通して特徴的な行動をとっていることが多くあります。・なかなか寝付かない・寝返りをうつことが多く、落ち着きがない・視線が合わない・抱っこされることを嫌がる乳児のADHDは見分けにくいですが、傾向として、後から振り返るとこのような行動が見られたケースも多いと言われています。■必ずしもADHDということではない上記の行動が共通して見られていますが、このような行動は定型の成長過程でも見られることがあるので、一概にADHDと結びつけることはできません。特に多動に関しては、生後まもなくから多動が気になる場合はごく少数です。気になるような場合には児童センターといった身近な相談機関や小児科などで相談してみましょう。ADHDの症状は小学校に入る頃までに現れる子が多いと言われています。■トラブルの原因となる行動をとることが多いこの時期のADHDの子は、以下のような行動をとることが多いです。ただ、前述の通り、ADHDの症状は他の発達障害の症状と共通するものもあります。必ずしもADHDだとは限らないので、特徴はあくまで参考程度にしましょう。・他の子をたたいたり、乱暴をすることがある・落ち着きがなくてじっとしていることができない・我慢ができないので癇癪(かんしゃく)をおこすことが多くみられる・物を壊すなど乱暴・破壊的な遊びを好むことがあるこれらの行動については、いくら言葉だけで注意しても同じ行動を繰り返してしまいます。■言葉の遅れがみられることも幼児期のADHDの子どもは他の発達障害との合併症状として、言葉の遅れなどの特徴が見られることもあります。■しつけの問題なの?幼児期になると、落ち着きがなかったり癇癪を起こしやすいといった行動から、ADHDに気づくことが多いようです。また、保育園や幼稚園でも他の子どもとトラブルを起こしがちになってしまいます。そのような行動が原因となり誤解され、しつけがされていないなど言われることがありますが、ADHDは先天的な脳の機能障害によるもので、しつけや育て方の問題ではありません。出典 : ■症状が顕著に現れてくるADHDの子どもが小学校に入学する頃には、以下のような症状が顕著に現れてきます。・授業中でもじっと座っていることができず、歩き回ったりする・注意力が散漫になって、興味の対象も次々と変化する・物を忘れたり、なくしてしまうことが多い・突然話しかけて他の人の邪魔をしたり、他の人に話しかけられてもぼーっとしてうわの空に見られる・突発的な行動をおこすことがあり、自分の怒りの感情をコントロールできない・友達と仲良くできずトラブルを引き起こしてしまうことが多い・不器用で何度やってもダンスが上手く踊れない、工作が苦手などがみられる■結果的に周りから問題視される何度も同じことを繰り返し注意されたり、授業態度などから周りからは問題視されたり、怠けていると思われることがあります。しかし、本人からすれば悪気があってしていることでもなければ、怠けているわけでもありません。■ADHDの診断がはっきりと下される時期小学校に上がる頃になると、ADHDの症状が顕著に現れるためADHDの診断が下される場合が多くなります。文部科学省の定義では7歳前、DSM-5によるとADHDは12歳前に症状が現れるとされていますが、必ずしもこの年齢で診断が下されるわけでなく、この年齢以前から症状がはっきりわかる場合には診断が下されます。神尾 陽子 「成人期の発達障害の臨床的問題」 2013年出典 : ■思春期のADHDは、合併症状にも注意思春期にはADHDの症状が治まる代わりに、学習障害(LD)などの発達障害との合併症状が目立ってくることがあります。対人関係がうまく築けない場合、自閉症との合併症状がある疑いもあります。ADHDの症状がみられる人は他の発達障害を合併している可能性もありますので、よくチェックして疑いがある場合には診断を受けてみましょう。例えば、・親・教師への強い反抗・友人とうまく付き合えず、トラブルになることが多い・ルールに従うことができないなどの行動がみられることがあります。■他人と自分を比較する思春期になると、他人と自分を比べて悩みやすくなります。ADHDの子どもも例外ではなく、他人と自分をよく比べるようになります。完璧主義の傾向が強いと“できないこと”に過敏になることもあります。そして、他人にはできて自分ができないことにコンプレックスを感じてしまいがちです。コンプレックスから次の行動をとる場合があります。・勉強への意欲の低下、学力の低下がいちじるしくなる・やる気がなく投げやりな態度・自分の世界に引きこもりがちになる場合もある知的機能に問題がない場合でも、不注意の特性が強いと、集団での学習に集中できず、学力の低下に結びつくこともあります。この結果、不登校やひきこもりなどの二次障害が現れることもあります。■薬の服用を嫌がる自分の障害を受け止めることができず、薬の服用を避けたり量を勝手に変えて服用することがあります。思春期の不安定な気持ちに寄り添いながら、家族が上手にサポートしましょう。出典 : ■大人になるとADHDはどうなるの?子どもの頃にADHDと診断された人の中には、成長につれて症状が目立たなくなったり、軽くなる人もいます。自分の特性を理解し、苦手な場面にもどのように対処するかを学ぶことで、日常生活の困難を乗り越えているひともいると考えられます。ですが、ADHDのある大人は、子どもの頃より困難が多いと感じることも多いようです。・親や教師のフォローがなくなる・やることが多くなる・大人としての行動や責任を求められるなど、周囲の環境の変化が大きいことがその理由と考えられます。そのため、大人になると社会生活を送るのが難しくなった、と感じるADHDの人が多くいます。また、大人になってADHDと診断を受けたり、診断を受けていない人でも同じ症状で困っている人も多くおり、大人の発達障害のなかではADHDの割合がもっとも高いと言われています。■大人のADHDに現れる症状大人の場合、ADHDによる特徴にはどのようなものが多くみられるでしょうか。・計画を立てたり、順序立てて仕事や作業を行うことが苦手・細かいことにまで注意が及ばないので、仕事や家庭でもケアレスミスが多い・約束などを忘れたり、時間に遅れたり、締め切りなどに間に合わない・片づけが苦手で乱雑になってしまう・同時に多くの情報を取り入れるのが苦手なので、一度に多くの指示や長い説明をされると混乱する・手間がかかったり、時間がかかったりして、集中が必要なものは後回しにしがち・何かに「はまる」と、ほどほどで止めることができず、なかなか抜け出せない(読書やネットサービス、ゲームなど)・長時間座っていることが苦手で、手足がむずむずしてくるADHDの診断方法出典 : 以下は、アメリカ精神医学会のDSM-5(『精神障害のための診断と統計のマニュアル』第5版)に載っている診断基準です。該当項目が多い場合には、専門機関に一度相談してみるとよいでしょう。(DSM-5や日本精神神経医学会では「注意欠陥」ではなく「注意欠如」の表記に変更されましたが、前者の方が一般的に使われるため、本記事では前者の言葉を使用しています。)DSM-5における注意欠如・多動性障害(ADHD:Attention Deficit Hyperactivity Disorder)の診断基準A.(1)および/または(2)によって特徴づけられる,不注意および/または多動性-衝動性の持続的な様式で,機能または発達の妨げとなっているもの:(1)不注意:以下の症状のうち6つ(またはそれ以上)が少なくとも6ケ月持続したことがあり,その程度は発達の水準に不相応で,社会的および学業的/職業的活動に直接,悪影響を及ぼすほどである:注:それらの症状は,単なる反抗的行動、挑戦、敵意の表れではなく、課題や指示を理解できないことでもない。青年期後期および成人(17歳以上)では、少なくとも5つ以上の症状が必要である。(a)学業,仕事,または他の活動中に,しばしば綿密に注意することができない,または不注意な間違いをする(例:細部を見過ごしたり,見逃してしまう,作業が不正確である)(b)課題または遊びの作業中に,しばしば注意を持続することが困難である(例:講義,会話,または長時間の読書に集中し続けることが難しい).(c)直接話しかけられたときに,しばしば聞いていないように見える(例:明らかな注意を逸らすものがない状況でさえ,心がどこか他所にあるように見える).(d)しばしば指示に従えず,学業,用事,職場での義務をやり遂げることができない(例:課題を始めるがすぐに集中できなくなる,また容易に脱線する).(e)課題や活動を順序立てることがしばしば困難である(例:一連の課題を遂行することが難しい,資料や持ち物を整理しておくことが難しい,作業が乱雑でまとまりがない,時間の管理が苦手,締め切りを守れない).(f)精神的努力の持続を要する課題(例:学業や宿題,青年期後期および成人では報告書の作成,書類に漏れなく記入すること,長い文書を見直すこと)に従事することをしばしば避ける,嫌う,またはいやいや行う.(g)課題や活動に必要なもの(例:学校教材,鉛筆,本,道具,財布,鍵,書類,眼鏡,携帯電話)をしばしばなくしてしまう.(h)しばしば外的な刺激(青年後記および成人では無関係な考えも含まれる)によってすぐ気が散ってしまう.(i)しばしば日々の活動(例:用事を足すこと,お使いをすること,青年期後記および成人では,電話を折り返しかけること,お金の支払い,会合の約束を守ること)で忘れっぽい.(2)多動性および衝動性:以下の症状のうち6つ(またはそれ以上)が少なくとも6カ月持続したことがあり、その程度は発達の水準に不相応で、社会的および学業的/職業的活動に直接、悪影響を及ぼすほどである。注:それらの症状は、単なる反抗的態度、挑戦、敵意などの表われではなく、課題や指示を理解できないことでもない。成年期後期および成人(17歳以上)では、少なくとも5つ以上の症状が必要である。(a)しばしば手足をそわそわ動かしたりトントン叩いたりする。またはいすの上でもじもじする。(b)席についていることが求められる場面でしばしば席を離れる。(例:教室、職場、その他の作業場所で、またはそこにとどまることを要求される他の場面で、自分の場所を離れる)。(c)不適切な状況でしばしば走り回ったり高いところへ登ったりする(注:青年または成人では、落ち着かない感じのみに限られるかもしれない)。(d)静かに遊んだり、余暇活動につくことがしばしばできない。(e)しばしば”じっとしていない”、またはまるで”エンジンで動かされているように”行動する(例:レストランや会議に長時間とどまることができないかまたは不快に感じる:他の人たちには、落ち着かないとか、一緒にいることが困難と感じられるかもしれない)。(f)しばしばしゃべりすぎる(g)しばしば質問が終わる前に出し抜いて答え始めてしまう(例:他の人たちの言葉の続きを言ってしまう;会話で自分の番を待つことができない)。(h)しばしば自分の順番を待つことが困難である(例:列に並んでいるとき)。(i)しばしば他人を妨害し、邪魔する(例:会話、ゲーム、または活動に干渉する;相手に聞かずにまたは許可を得ずに他人の物を使い始めるかもしれない;青年または成人では、他人のしていることに口出ししたり、横取りすることがあるかもしれない)B.不注意または多動性ー衝動性の症状のうちいくつかが12歳になる前から存在していた。C.不注意または多動性ー衝動性の症状のうちいくつかが2つ以上の状況(例:家庭、学校、職場;友人や親戚といるとき;その他の活動中)において存在する。D.これらの症状が、社会的、学業的、または職業的機能を損なわせているまたはその質を低下させているという明確な証拠がある。E.その症状は、統合失調症、または他の精神病性障害の経過中にのみ起こるものではなく、他の精神疾患(例:気分障害、不安症、解離症、パーソナリティ障害、物質中毒または離脱)ではうまく説明されない。これらの結果から、不注意と衝動性が見られるタイプ、不注意が優位に見られるタイプ、多動性と衝動性が見られるタイプに分類され、さらに重症度が3段階に分かれて診断が下されます。この診断基準は、年齢によって障害の症状の現れ方が変わり、区分も流動的であるということを考慮したものだと考えられます。専門機関での診断は、上で述べたアメリカ精神医学会のDSM-5や世界保健機関(WHO)のICD-10による診断基準によって下されますので、正式に診断を受けたい場合には専門機関でも診断や検査を受けることをおすすめします。ADHDの疑いを感じたらどうすればいい?出典 : もしかしてADHDなのかな?と疑問を持ったら、まずは無料で相談できる身近な専門機関の相談窓口を利用するのがおすすめです。子どもか大人かによって、行くべき機関が違うので、以下を参考にしてみてください。【子どもの場合】・保健センター・子育て支援センター・児童発達支援事業所・発達障害者支援センター【大人の場合】・発達障害者支援センター・障害者就業・生活支援センター・相談支援事業所知能検査や発達検査は児童相談所などで無料で受けられる場合もありますし、障害について相談することも可能です。その他、発達障害者支援センターで障害についての相談ができます。自宅の近くに相談機関がない場合には、電話での相談にものってくれることもあります。以下は小児神経学会が発表している、発達障害診療医師の名簿です。この他にも、児童精神科医師や診断のできる小児科医師もいます。まず身近な相談機関に行って、障害の疑いがあればそこから専門医を紹介してもらいましょう。日本小児神経学会 「発達障害診療医師名簿」ADHDの治療出典 : を根本的に治療することはできません。しかし、ADHDによる困難の乗り越え方を学ぶ教育・療育や、ADHDの症状を緩和する治療薬は存在します。また環境調整をしたり、周囲が普段からの対応法を考えることによって、本人が生きやすい環境を作ることも可能です。療育とは、社会的な自立をめざしてスキルを習得したり、環境を整えるアプローチのことです。この方法ではソーシャルスキルトレーニング、ペアレントトレーニング、環境調整などの手法が用いられ、本人の苦手な行動を調整し、のぞましい適応的な行動や得意な部分を磨いていくことができます。ADHDの治療には薬物療法が用いられることもあります。ADHDの治療薬には不注意・多動性・衝動性の症状を緩和する効果があります。しかし、この効果は服薬している間だけです。薬の効き方は個人によって違いがあり、また副作用の出方もまた同様です。そのため、医師と相談しながら使用する必要がありますADHDで使われる主な治療薬は主に2種類あり、ストラテラ(正式名アトモキセチン)や、コンサータ(正式名メチルフェニデート)などが用いられます■適切なサポートがない場合…ADHDと診断された子どもの経過は、以前は比較的楽観視されていました。しかし、ADHDの人が適切な治療やサポートを受けられない場合、ADHDの主症状とは異なる症状や状態を引き起こしてしまうことがあります。このような合併症を、「二次障害」と言い、下記のような症状・状態が見られることがあります。・うつ病・行為障害・不安障害・反抗挑戦性障害・不登校やひきこもり・アルコールなどの依存症などまた、ADHDの本人を支える人たちへのサポートも重要となります。特にこどものADHDの場合は、親が周囲との対応に追われて疲弊してしまっていることもあるため、心理的なサポートが重要となります。参考:今村明先生に「ADHD」を訊く | 日本精神神経学会,JSPNまとめ昔からADHDの特性がある子どもは多くいましたが、ちょっと変わった子や問題児として扱われていることが多くありました。現在は、ADHD(注意欠陥多動性障害)という名称も広がり、脳の機能障害が原因の発達障害だと広く認識されています。ADHDの子どもの場合、突然道路に飛び出したり、保育所や幼稚園、学校から呼び出されたり、友達とトラブルをおこしてしまったりと。保護者としては、困ってしまうことも少なくないかもしれません。ですが心身の成長や、適切なサポートを受けることによって、すこしずつ改善してゆくこともできます。また、ADHDの症状でいちばん困っているのは「本人自身」ということと「わざとやっている訳ではない」ということを忘れないであげてください。他の発達障害との合併や二次障害に目を配りながら、慎重に見守りサポートしていきましょう。
2017年08月30日知的障害者福祉法とは?出典 : 知的障害者福祉法(旧:精神薄弱福祉法)は、1960年に制定された法律です。知的障害のある人の福祉をはかることを目的とした法律です。2006年の改正前、その目的は「生活支援」という側面だけでしたが、現在は知的障害のある人の自立と社会参加を促進するよう法律で定められています。それでは実際の法律の文言を見てみましょう。(この法律の目的)第一条 この法律は、障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律 (平成十七年法律第百二十三号)と相まつて、知的障害者の自立と社会経済活動への参加を促進するため、知的障害者を援助するとともに必要な保護を行い、もつて知的障害者の福祉を図ることを目的とする。また、この法律は2013年に制定された「障害者の日常及び社会生活を総合的に支援するための法律」、別称「障害者総合支援法」という障害のある人全般に適用される法律とあいまって、その内容が定められています。それまでは、障害種別によって個別の法律に基づき様々なサービスや制度が成り立っていました。その後、総合支援法ができたことにより、「知的・身体・精神」の3つの障害が同じ法律内で扱われることとなりました。そのため、従来の知的障害者福祉法がもっていた独自の法的な意義は希薄化しているのが現状です。それにともない、知的障害のある人へのサービスや制度も、障害者総合支援法に移行しています。知的障害者福祉法の概要出典 : 知的障害者福祉法は以下の4つから構成されています。・総則・実施機関及び更生援護(実施機関等、障害者入所支援施設等の措置)・費用・雑則総則とは、全体を通じて適用される法律のきまりのことです。つまり、法の根幹となる部分です。知的障害者福祉法における総則は、以下の4つの項目から成り立っています。◇目的知的障害のある人の自立と経済活動を促進させるために、知的障害者の福祉をはかることを目的としています。このために、国や自治体、施設などは知的障害のある人を保護し、適切な援助を行うことが定められています。◇自立への努力と機会の確保・知的障害のある人は、そのもっている能力を使って社会活動、経済活動に参加するように努力しなければならないとしています。・社会を構成する一員として、自立し、社会、経済、文化などの活動に参加する機会をもっているとされています。◇国、地方公共団体と国民の責務国や地方公共団体は、上の理念が達成されるために、国民の理解を促し、必要な援助と保護を行うことが定められています。国民は、知的障害のある人の福祉について理解を深め、社会経済活動参加する努力に対して協力することが定められています。◇職員の協力義務知的障害のある人に援助や保護を行う職員は、児童から成人まで一貫して福祉支援を行うことが定められています。このように、知的障害のある人が社会の一員として、社会的、経済的な活動に参加できるように、すべての国民、行政、職員が努めることを義務付けたのが、知的障害者福祉法です。この部分には、知的障害福祉法に関する支援を提供する機関について記載されています。・支援の実施は、市町村が実施の主体となっていること・知的障害者の判定は、知的障害者更生相談所で行うことなどの点が記載されています。この部分はのちの章で詳しく説明します。知的障害者福祉法のこの項では、知的障害のある人のための施設を運営、設立する際の費用を出す義務者が定められています。また、知的障害のある人がサービスを利用するときには、一部または全部の負担が課せられることになっていますが、その負担は、当事者および扶養者の自己負担の能力に応じることが記されています。知的障害者福祉法ができたわけ出典 : 知的障害のある人への総合的な福祉支援は、どのような理由から展開され、本格的に開始したのでしょうか。日本で、最初に知的障害のある人への福祉サービスを規定したのは、1947年の児童福祉法です。ここでは、障害の有無についての言及はなく、すべての児童が等しく、生活を保障されなければならないという理念が述べられています。その後、1953年に「精神薄弱児対策基本法」が策定されました。この法は、のちの1960年に成立する知的障害者福祉法の下敷きとなったものです。この法律の要綱では、成人をも視野に入れており、18歳を過ぎた知的障害のある人にも必要な施策がとられることとなっていました。しかし、この法律には様々な問題点がありました。というのもこの法律では、知的障害のある人の「隔離」と「保護」を前提としていた点です。そのために、具体的にとられた施策は、不良行為を行う知的障害のある人を収用する設備の強化や、優生手術の実施など、知的障害のある人を社会から排除するものでした。また、実際の福祉施策が適用されたのは、18歳未満の知的障害がある子どもだけでした。「隔離」を前提とするような法律の問題点を改善する声があがり、1960年に成立したのが知的障害者福祉法です。この法律でようやく、名実ともに児童から成人までの一貫した支援を提供する事業が整備されました。知的障害者福祉法の改正と障害者総合支援法出典 : 障害者制度は2003年、2006年、2013年と3度の変革を迎えています。これにともない知的障害者福祉法の位置づけや内容も変化してきました。まず2003年には、支援費制度が導入されました。ここでのキーワードは「障害者の選択の尊重」です。この制度の導入により、それまでは行政が定めたサービスしか受けることのできなかった利用者は、自分に合ったサービスを選べるようになりました。そして2006年には、「障害者自立支援法」が成立しました。ここで福祉サービスにおける障害者の位置づけが大きく変わりました。というのも、それまでは障害の種別によって提供されるサービスは分かれていたからです。障害者自立支援法の成立により、障害の種類や年齢にかかわらず、障害のある人たちが必要とするサービスを利用できるように、利用のしくみが一元化されました。そのために、それまで知的障害のある人を対象として提供されていたサービスの多くが障害者自立支援法という共通の制度のもとで一元的に提供されることになりました。2013年には、上記の障害者自立支援法の改正法として、障害者総合支援法が成立しました。ここで、よりよい支援を行うことで施設を退所する障害者が省令で追加されるなど、障害のある人が自立した日常生活、社会生活を営むことが法律の目的として定められいます。障害者総合支援法については以下の記事で詳しくご紹介しています。知的障害者福祉法の中で明確な定義がない「知的障害者」出典 : 「知的障害」という名称は、学校教育法や児童福祉法などの法律で使用されてから、一般的に福祉現場や医療の領域で、日常的に使われるようになりました。一般的には、知的障害とは、金銭管理、読み書き計算など日常生活や学校生活の上で知的機能を使う知的行動に支障があることを指す場合が多いです。しかしながら、肝心な法律においては、どのようなものを知的障害と指すのかを定める規定が見られません。このために、医学、心理学、教育学の領域でそれぞれ定義が定められており、共通した理解が得られていないのが現状です。またその呼び名も、教育分野では「知的発達障害」「知的発達遅滞」、医学関連では「精神遅滞」「精神発達遅滞」などばらばらです。支援の必要性の有無、障害の程度をもって、知的障害者を定義する法令は存在せず、客観的な基準を示していません。厚生労働省においては、知的障害を精神医学の領域における「精神遅滞」と同じものと定めていることから、法令上の用語もその基準にならっていることが多いようです。知的障害(ID: Intellectual Disability)は、医学領域の精神遅滞(MR: Mental Retardation)と同じものを指し、「知的発達の障害」を表します。すなわち「1. 全般的な知的機能が同年齢の子どもと比べて明らかに遅滞し」「2. 適応機能の明らかな制限が」「3. 18歳未満に生じる」と定義されるものです。「知的障害者更生相談所」知的障害のある人がより暮らしやすくなるための機関出典 : 知的障害者福祉法は、知的障害のある人がより暮らしやすくなるためのサポートを行う機関を、都道府県に設置することを定めています。それが知的障害者更生相談所です。主に18歳以上の年齢の人が対象となります。18歳未満の場合には、児童福祉法のもと設置された児童相談所を利用することとなります。知的障害者更生相談所では、以下の3つの取り組みが行われています。この施設では、知的障害に関する高度で専門的な知識や技術を必要とする人のための相談を受け付けています。医師やケースワーカーなどの知的障害者福祉司という専門の知識をもった職員が相談にのってくれます。知的障害者更生相談所では、知的障害の判定と療育手帳の交付を行っています。判定および交付は、医師や心理判定員によるものです。知的障害には、国の法律によって定められている定義が存在しません。そのため、障害の認定区分や基準は自治体により異なっています。おおまかには、知能や生活習慣、行動の特徴などから判定します。その他には、IQ(知能検査などの発達検査の結果でわかる知能指数のこと)や日常生活動作(身辺処理、移動、コミュニケーションなどの能力のこと)などが判定の材料に用いられることもあります。療育手帳の交付の詳しい方法は、以下の記事を参照ください。障害の状況や地理的な理由により、来所相談や定期相談ができない場合もあるかもしれません。そのようなときには、自治体によっては福祉士や心理判定員が、相談受付のため地域の巡回も可能ですので、利用するとよいでしょう。知的障害のある人に関連する制度や利用できる手当て出典 : 知的障害のある人に対する支援の体制にはさまざまなものがあります。現在、障害の種別に関わりなくサービスを一元化する動きのために、本法律を根拠とした知的障害のある人に特化した制度はありませんが、別の法律に準拠やガイドラインに定められた制度や手当をご紹介します。知的障害と判定された人に、一貫した相談や指導を行い、各種の福祉サービスを受けやすくすることを目的とした制度です。交付は、都道府県及び指定都市の長が行います。療育手帳制度は、法律で定められた制度ではなく、「療育手帳制度について(昭和48年9月27日厚生省発児第156号厚生事務次官通知)」というガイドラインに基づいた制度で、都道府県・政令指定都市ごとに要綱などを制定して行われています。療育手帳をもつことで、以下のような支援やサービスを受けることができます。・保育園への入園優待・就労支援・障害者医療費の助成・公共交通機関の割引・各種料金の割引、減免支援費制度とは、障害のある人自らがサービスを選択して、デイサービスや授産施設などの事業者と対等な立場で契約を結び、サービスを受けることのできる制度で、2003年に導入されたものです。当たり前のことだと思われた方もいらっしゃったでしょうが、導入以前は、利用者はサービスを選択することができず、市区町村などの行政が障害のある人の受けるサービスを決定していたのです。支援制度の「支援費」というのは、「利用者が施設を利用するための費用を市区町村が負担しますよ」ということです。ですので利用者は、直接何らかの金銭を受け取ることができるというわけではありません。障害のある人が施設を利用する際には、本来は全額費用を払わなければならないところから、行政がその利用料を負担するために、利用者が支払う費用が軽減されたという意味で「支援費」なのです。支援費制度は、現在障害者総合支援法に移行しています。それまでの支援費制度は、障害種別ごとのものであったり、利用できる施設が障害種別に応じて細分化されているという点から、複数の障害種別のある利用者からするとややこしいものでした。そこで、これらの課題を解決するとともに、障害のある方本人を中心とする個別の支援をより効果的に行っていくために、2005年に障害者自立支援法(のちの障害者総合支援法)への移行が行われました。成年後見制度とは、認知症のある高齢者、精神障害のある人、および知的障害のある人など、判断能力の十分でない人を支援する制度です。1992年に設けられました。この制度では、お金の管理や相続という手続きを、その人に代わって代理人が行うことができます。成年後見制度には二つの種類があります。一つは、法定後見制度といわれ、家庭裁判所が成年後見人などを選任し、すでに判断能力が低下している人に対して行われるものです。もう一つは、任意後見制度といい、あらかじめ本人が任意後見人を選び、近い将来に備え支援者と支援内容を決めておくものです。具体的な利用の方法や手続きについて詳しく知りたい方は、以下の記事を参照ください。「もしも」のときのために、掛け金を積み立てておく制度です。精神、知的、身体に障害のある人の保護者が、亡くなったり、重度の障害になったときに、本人に終身一定額の年金が支給される制度です。対象は、・将来独立することが困難であると認められる、特に知的、身体障害の1~3級の手帳をもつ者の保護者・65歳未満の保護者・特別な疾病、障害がないなどの条件があります。対象となる保護者は、毎月1口~2口の掛け金を納めます。1口あたりの金額は、保護者の年齢により変わります。支給は保護者が亡くなった、重い障害をもった場合に、1口につき、月額2万円が本人に、終身支払われます。詳しくは、お住いの市区町村の保健所、保健局のHPをご覧ください。障害の等級によっては、以下の手当が支給されます。該当する手当をもらうことで経済的、精神的な負担の軽減することができます。・障害基礎年金・障害厚生年金・在宅重度心身障害者手当・特別障害者手当・特別児童扶養手当・障害児福祉手当など赤塚俊治/著『新・知的障害者福祉論序論』2008年/刊/中央法規出版山内一永/著『図解 障害者総合支援法早わかりガイド』2012年/刊/日本実業出版社まとめ出典 : 知的障害のある人のための法律は、刻々と変化しています。歴史的な背景から起こっている、障害のある人への差別や偏見から派生する社会問題を解決するために、国の施策が展開されています。法律の目的である「自立」「社会参加」という理念に向かう途上で、まだまだ課題点は多く残りますが、その達成に向けて私たちは着々と歩を進める途上にあるともいえるでしょう。
2017年08月30日楽しい夏休み、実は困りごとがいっぱい!出典 : 子どもと一緒にいられるのが楽しくて、遊びに行く計画を立てたり、親子の時間を大切にしたり…夏休みにしたいこと、わくわくすることがたくさんある一方で、夏休みは親子にとって楽しいだけじゃなく、お悩みも多いようです。ずっとお家でお世話をするパパママにとっては、結構ストレスがたまりますよね。特に、こだわりが強かったり、発達障害の特性がある子どもと過ごす夏休みは、やっぱり疲れてしまうことやうまくいかなくて悩むことだってきっとあるはず。そこで、発達ナビでは、と題して、親子の夏のお悩みをご紹介しました。今年の夏を振り返って、思い当たることはありませんか?夏は時間がたっぷりある分、家庭での計画と見通しが何より大切です。そしてそれがうまくいくには、ちょっと工夫がいることも。親子のストレスがたまらない方法、生活リズムを保つコツ、子どもの特性に合わせた環境調整と接し方など、具体的な対処法も合わせて取り上げています。普段の生活に活かせることもたくさんあるので、今年の夏休み、終わってみたら「ちょっと反省…」という親子も是非参考にしてくださいね!夏休みの宿題、うまく進めるポイントは?出典 : 夏休みの宿題、トラブルなく終わりましたか?楽しいイベントがたくさんあって、しかも暑くて集中できない夏休み。発達ナビで行ったアンケートでは、ユーザーさん自身も子どもの頃には追い込む派が多かったようですが…Upload By 発達ナビ編集部いつの時代も、子どもにとってイヤな宿題を計画的に、うまく進めるのは難しいですよね。また、子どもの特性によっても、苦手なことがあると、なかなか一人で進めるのは難しいでしょう。がんばっていてもできないと、自己肯定感も下がってしまいます。せっかくの夏が、終わらない宿題で台無しにならないよう、夏休みの宿題に悩む親子の役に立つ、さまざまな工夫を宿題の種類別に集めました!夏休みの宿題がうまくいくポイントは以下の3つ。1. 子どもの特性に合わせた環境調整&構造整理どんな宿題が、どれだけ残っているか、宿題の見える化をします。その後、工程をスモールステップに分解します。また、勉強机からおもちゃなどを片づけるなどの環境調整も効果的です。2. 怒らないで済む方法で親のストレスも軽減宿題がうまくこなせていないと、保護者としては、つい注意したくなりますね。でも、叱ると逆効果になったり、親子の仲が険悪になるだけ、ということもあるでしょう。そんなときには夏休みの宿題にも「北風と太陽」式のコツをご紹介します。3. 学校の先生に合理的配慮を相談するがんばっているのにできない場合、学校の先生へ相談してみましょう。宿題を単なるつらい失敗体験にしないことも大切です。取り組み方や教材、量や難易度の調節をしたり、デジカメや計算機などのツールを使ったりするとうまくいくこともあります。この3つの基本となるポイントを押さえ、自由研究のネタ探し、読書が苦手な子の読書感想文に便利なツール、不器用さんの工作攻略法など、個別のトラブルに応えるヒントもたっぷりご紹介していますよ!夏の体調管理。気をつけたい病気もいろいろ出典 : 厳しい暑さが続く夏。この時期の子どもたちは夏バテに始まり感染症や熱中症、皮膚炎などにかかりやすく、健康管理に気を配る必要があります。発達障害の特性による困りごともあるでしょう。そんな夏に覚えておきたい健康管理法をご紹介したのがこの記事です!夏休みで生活リズムが崩れがちだと抵抗力も落ちてしまいます。また感覚過敏が皮膚トラブルにつながったりするなど夏の健康上の困りごともいろいろ。また、体調不良に無頓着だったり、具合が悪くても自分でSOSが出せないなどといった場合、まわりの家族の健康管理がとても重要になってきます。夏には熱中症や感染症、食中毒など重症化しがちな夏の病気もあります。命にかかわることもあるので、何かある前にしっかり予習して対策をたてることがとても大切ですね。夏休み明けも要注意!新学期前後にできることは?出典 : 子どもにとっても自由に過ごしていた夏休みから一転、毎日学校や園に通う生活に急に戻るのはつらいもの。新学期を前に、生活・環境の変化に戸惑いや不安を感じ、学校や幼稚園などに行くのを嫌がる子どもが増える傾向にあります。生活リズムが崩れていたり、休み前から人間関係がうまくいっていないなどのストレスがあると、体調不良や不登校などに発展してしまう場合もあります。この記事では、発達障害のある子どもが新学期前後でつまずきやすいポイントをご紹介しながら、スムーズに新学期を迎えられるように夏休み中にできることをまとめました。もし、すでに新学期が始まり子どもが行き渋りを見せている場合も学校生活や人間関係に不安がある場合、親と離れることに不安がある場合、学校へ行くことを面倒がっている場合それぞれについてヒントをご紹介しています。夏休み、みんなの体験談出典 : 発達ナビでは「夏休み」をテーマにさまざまなアンケートを行いました。ユーザーのみなさんからは夏休みの様子が垣間見えるコメントがたくさん寄せられました。実際にみんながどんなことに困っているのか、共感できるお悩みもたくさん。また、それぞれのお家で実践している具体的な工夫には、今すぐ使えそうな実践的なものも。アンケートの回答をのぞいてみてはいかがでしょうか?いくつか抜粋してご紹介します。【アンケート】夏休みに感じた「やっぱりわが子が1番カワイイ!」と感じたエピソードを教えて!みんなのアンケート|夏休みに感じた「やっぱりわが子が1番カワイイ!」と感じたエピソードを教えて!夏休み中、私が帰ってくるとみーんな私に集まってゴロゴロ、ベタベタ。うざったいような、可愛いような。笑夏休みに長男が習得した、褒めて欲しいときに頭を下に下げて言う、『褒めて』とナデナデ要求ポーズは最高に可愛いです(^^)ちくしょー!可愛いなこのやろー!そうそう。そのキャンプで冷蔵庫付きロッジに宿泊していたのですが、バーベキューの時に、長男に冷蔵庫の中にあるものを取ってきてもらいました。一生懸命取って来てくれたのですが、その後でロッジを見ると、ドアは開けっ放し、冷蔵庫の扉も開けっ放し。これが家なら、怒ってしまったのかもしれないのですが、キャンプという環境のおかげか、笑ってしまい、長男らしいなと思っていました。その時に、不思議と可愛いなあという感情に近いものを感じました。もしかすると、同じ行動や言動でも環境が違うと、全く別の見え方が出来るのかなあと、ちょっと感慨深かったです。【アンケート】夏休みのゲーム事情、1日に何時間ぐらいやってる?みんなのアンケート|夏休みのゲーム事情、1日に何時間ぐらいやってる?ルールを守らなかった事をきっかけに、思い切って「夏休みの間はゲーム禁止」にしてみました。キレて暴れたりするかなーと思っていましたが、意外に穏やかに過ごしています。もちろん、ゲームを取り上げた私の責任として、ゲームに代わる遊びに付き合ったり、お出掛けしたりしています。大変ですが、お互いイライラせずに済んでいます。【アンケート】家族全員が休みのときの「息抜き」「癒やしの時間」を教えて!みんなどうやって息抜きしてる?みんなのアンケート|家族全員が休みのときの「息抜き」「癒やしの時間」を教えて!みんなどうやって息抜きしてる?息抜きが無いんです!朝一でご飯して、子供起こして、食べさせて、ゴミ出して、仕事行って、帰りに買い物するんです。「あぁ…このまま帰っても、座る事も出来ず怒鳴られながらご飯かぁ~」って、毎日、毎日、玄関が怖くてツラいです(/_;)/。タマの休みも1日中家事!家事!家事!こんなに家事をしてるのに、一つも終わらないし、なんでもポイポイ平気で投げ捨てられる…あードコか遠くに行きたい!もしくは、ドコまでも遠くに行きたい!なかなか難しい!でも意識して癒しタイムを作ろうとしなかったら、きょうだいでけんかばかりだし、旦那はムスコにダメ出しばかり。なので、最近は寝る前のおしゃべりタイムで笑ってから寝るようにしてます。笑えるネタがない時は、こどものいい所、褒めてあげたい所を歌にしてあげるとゲラゲラ笑ってくれます。不登校の子どもたちは、「みんなが学校に通っているのに通えない」学期中は自分を責める気持ちになってしまうことも少なくありません。長い夏休みはそうした気持ちからも少し解放されて、友達と遊んだり、堂々と外出する貴重な機会なのです。「夏休みにためたエネルギーはきっと将来の力になると私は信じています。」というライターのヨーコさんの言葉どおり、思い出をたくさん作り、普段できない体験を積むことで、子どもたちは大きく成長するのだと思います。不登校の子どもに限らず、そんな子どもの姿を見る、パパママの喜びに気づせてくれる素敵な体験談です。「夏休み作品展」で子どもの作品をご紹介!出典 : 【夏休み作品展】この夏つくった子どもの作品をみんなにシェアしよう!夏休み、子どもが作った作品を発達ナビのアンケートで募集しました!とことん好きな物を作る喜びいっぱいの作品、大人が思いつかない自由なイメージやアイデアが光る作品、親子でいっしょにすご過ごした楽しさが伝わる作品…どれも力作ばかりです。発達ナビのコラムでは、集まった作品の中から、発達ナビに関わる3人が選んだ作品を表彰!どれもこれも、お子さんの個性が詰まった素敵な作品たち、ぜひご覧ください♪夏休みイベント情報まとめ出典 : 夏休みは、普段より子どもと一緒に過ごす時間が増えるため、子どもを連れてどこか遊びに行きたい、夏の思い出をつくってあげたいと考えている親御さんも多いのではないでしょうか?この記事では発達障害のある子どもが楽しめるような夏のイベントと、イベント参加時に気をつけたいことを中心にご紹介しています。毎年恒例のイベントなどもありますので、興味のある方は来年チェックしてみてはいかがでしょうか?そのほかに、2017年の夏に開催されたイベント情報のご紹介も合わせてご覧ください。まとめ出典 : 長い休み期間をスムーズに過ごすには、さまざまなトラブルや困りごとが隠れている場合もあります。でも、それらのトラブルはちょっとした工夫やアイデアで、その子にあった解決法が見つかることもあるのです。今回ご紹介したヒントに活用していただけるものはあったでしょうか?うまくいった、楽しかった夏休みの経験は、子どもを成長させてくれます。もし、夏休み中にうまくいかないことがあったとしても、そのつまずきの理由を振り返ってみて、これからの生活に活かせるヒントがないか、ぜひ探してみてください。
2017年08月30日発達支援施設とは?発達が気になるお子さんや、障害のあるお子さんを、ご家庭の中だけでサポートすることは容易なことではありません。そういった子どもたちのためにあるのが「児童発達支援」や「放課後等デイサービス」などの発達支援施設です!児童福祉法では、障害児通所支援と呼ばれ、全国各地にある施設に直接通うことで、必要なサポートを受けることができます。原則的に、小学生未満の未就学の子どもが通うことができるのが児童発達支援、小学生~高校生の就学児童が通うことができるのが放課後デイサービスです。児童発達支援では、小学校就学前の子どもを主に対象とし、支援を受けることができる施設です。日常生活の自立支援や機能訓練を行ったり、保育園や幼稚園のように遊びや学びの場を提供したりといった、多様な支援を目的としています。サービス・利用方法・費用・手続きの流れについては、以下の記事に詳しくまとめられています。放課後等デイサービスとは、障害のある就学児童(小学生・中学生・高校生)が学校の授業終了後や長期休暇中に通うことのできる施設です。放課後等デイサービスでは、生活力向上のためのさまざまなプログラムが行われています。トランポリン、楽器の演奏、パソコン教室、社会科見学、造形など習い事に近い活動を行っている施設もあれば、専門的な療育を受けることができる施設もあります。サービス・利用方法・費用・手続きの流れについては、以下の記事に詳しくまとめられています。どんな支援が受けられるの?児童発達支援や放課後等デイサービスにはさまざまなタイプがありますが、一部の施設では療育的なアプローチによる支援を受けられることもあります。ソーシャルスキルトレーニングをはじめ、さまざまな独自の療育プログラムが組まれている場合もあり、理学療法士・作業療法士・言語聴覚士など専門資格を保有しているスタッフがいる施設もあります。また、障害のある子どもにとって、児童発達支援や放課後等デイサービスは、家庭・学校(園)につぐ3つ目の居場所となります。子どもにあった施設を選ぶことができれば、親子ともども充実した時間を過ごすことができるはずです。発達支援施設を選ぶときのポイントは?お住まいの地域にどんな施設があるかは、保健センター、子育て支援センター、児童発達支援事業所、発達障害者支援センターや、市町村の窓口で確認することができることもあります。これらの窓口で、子どもの特性にあった施設について相談してみることも有効です。公共の相談窓口以外に、インターネット上で施設を探すこともできます。LITALICO発達ナビの「施設情報」では、全国の児童発達支援施設や放課後等デイサービスを、合わせて約15,000施設掲載しています。それぞれの施設の受け入れ状況や、サポートの内容も詳しくまとめられています。また、各施設のスタッフが自分たちで更新している写真付きのブログや、実際の利用者さんからの口コミ情報も合わせて見ることができます。さらに、発達ナビ上から24時間いつでも、空き状況の確認や教室見学などの問い合わせをすることが可能です。利用にかかる費用は?児童発達支援と放課後等デイサービスは障害児給付費の対象となるサービスです。通所受給者証を取得することで国と自治体から利用料の9割が給付され、1割の自己負担でサービスを受けることができます。生活保護受給世帯・市町村民税非課税世帯: 0円市町村民税課税世帯(年間所得がおおむね890万円以下の世帯): 4,600円上記以外(年間所得がおおむね890万円以上の世帯): 37,200円このほかにおやつ代などの食費や教材費などの実費が必要になる場合もあります。また、自治体により独自の助成制度があります。児童発達支援の利用にかかる費用について、詳しくはこちらのコラムの「児童発達支援施設の利用方法」の章にまとめられています。生活保護受給世帯・市町村民税非課税世帯: 0円市町村民税課税世帯(前年度の年間所得がおおむね890万円以下の世帯): 4,600円上記以外(前年度の年間所得がおおむね890万円以上の世帯): 37,200円原則一割負担ですが、前年度の年間所得によっては負担額が0円であったり、1割以上である場合もあります。施設によってはおやつ代や制作物の材料代などがかかるところがあります。これらに加え、自治体により独自の助成制度がある場合もあるので、行政の窓口に問い合わせてみましょう。放課後等デイサービスの利用にかかる費用について、詳しくはこちらのコラムの「放課後等デイサービスの利用方法」の章にまとめられています。施設の利用方法は?発達支援施設に通うためには「通所受給者証」が必要になります。通所受給者証はお住まいの市区町村の福祉担当窓口・障害児相談支援事業所などに申請を行うとで取得することができます。この通所受給者証があることで、自己負担1割でサービスを受けることができるのです。障害者手帳がなくても、通所受給者証があれば、「児童発達支援」や「放課後等デイサービス」を利用できます。詳しい取得法や、申請の方法はこちらを参考にしてください。その他にも受けられるサービスはあるの?また、児童発達支援や放課後等デイサービス以外にも、受けられる支援があります。受けられる支援の詳細や申請方法はこちらにまとめられています。療育手帳・障害者手帳とは?障害者手帳とは、障害のある人が取得することができる手帳です。障害者手帳を取得することで、障害の種類や程度に応じてさまざまな福祉サービスを受けることができます。身体障害者手帳や療育手帳、精神障害者保健福祉手帳などの種類があります。まとめサービス・支援は多岐にわたるため、すべてを把握できず戸惑うこともあるかと思います。そんなときは、早めに相談することで、一歩ずつ疑問を解決してゆきましょう。保健センター、子育て支援センター、児童発達支援事業所、発達障害者支援センターや、市町村の窓口に相談することで、次のステップが見えてくるかもしれません。また、児童発達支援事業所や放課後等デイサービスなどのスタッフも相談に乗ってくれるはずです。一人で抱え込まず、相談できる相手を見つけ、適切な支援につなげていくことが大切です。
2017年08月29日私はアスペルガー症候群、ADHDと診断された、26歳男性です。以前、正社員の登用見込みで採用された企業で、発達障害であることをカミングアウトし、退職せざるを得ない状況に追い込まれる経験をしました。今回このコラムを書いたのは、その企業を批判するためではありません。発達障害のある人自らが、現在の社会の現状や、自分たちを守る法律や制度について知ってほしいと思ったことが執筆の動機です。自分の経験がすこしでも役に立てば幸いです。問題なく過ごしてきた学生時代、仕事を始めて問題が表面化出典 : 私は大学までの学生生活で、表面上のコミュニケーションや、日常生活、勉強という面では、これといった支障はなく、毎日を過ごしてきました。自分が発達障害であることにも気づいていませんでした。しかし、社会人になってから対人関係の困り事などが表出したのです。例えば、空気が読めない発言によって商談の雰囲気が悪くなってしまったことや、声の大きさやトーンをTPOに応じて変更することが難しいために、ちょっとしたぼやきが部署内の全員に聞こえてしまうことがありました。学校生活では、対人関係に多少問題があっても、テストで問題のない点数をとっていれば、目をつむってもらえます。ですが、社会人となるとそうもいきません。行く先々で、「常識がない」「もう少し場をわきまえろ」と言われてしまったのです。そうするうちに私は、就職後半年足らずで転職することをくり返してきました。コミュニケーションスキルの低さから「正社員としての基本的なスキルに欠ける」ということを言われ、辞めざるを得なくなってしまうのです。表面的なコミュニケーションスキルという点では問題がないので、面接は突破出来ても、継続的に働くということが難しいと感じていました。確定診断はまだ。そんな状況で向かった採用面接出典 : 人間関係のつまずきや解雇の原因が、自身の発達障害にあるのではないかと考えていた私は精神科を受診し、発達障害の疑いがあるということを主治医から告げられます。しかしこのときは「疑いがある」と告げられたレベル。確実な診断に必要な検査は数ヶ月先まで予約で埋まっており確定診断は下っていない状態でした。そんな状況で私はある小売店の採用面接に応募します。任される仕事は主に接客。採用面接では聞かれない限り、不利になることは話す必要が無いと考え、発達障害の可能性があるということには触れませんでした。そして面接の結果は採用。まずは6ヶ月の試用期間となり、社会保険付きのフリーターのような形で働くことになったのです。職場で生じた困りごとと気づき出典 : 職場での仕事は多岐に渡りましたが、耳から聞いたことを忘れやすい特性や、聴覚過敏から引き起こされる困り事が特に辛く私にのしかかりました。たとえば、こんなことがありました。1. 業務の指示、シフトの交代、口頭で交わされた指示や約束等を忘れやすい。そのため、シフトを変更して、来なくていい日に会社に行き、「あれ?今日は休みだったよね?」という会話になってしまうことがありました。2. 業務の指示が長かったり、一度にされたりすると理解が追いつかなくなってしまう。その会社には、面倒見の良い先輩が多く、丁寧に説明してくださることが多かったのですが、耳から聞いたことを理解すること、長い話を要約することが苦手だったので、理解が追い付かなくなってしまう場面が多くありました。3. BGMなどの雑音がある場所で、電話などの声が正しく聞き取れない。また、私は切り替えやマルチタスクが苦手です。電話がかかってきたときには、電話に出るモードに切り替えなければいけないのですが、人よりも切り替えに時間がかかります。加えて、聴覚過敏があるため、BGMやマイクやスピーカーを使ったイベントなどが近くであると、部署名や社名を聞き取りづらい感じることが多々ありました。4. 一つの仕事に没頭しやすく、周りを見ることが苦手。アスペルガー症候群である私は、細部に注視しやすく、全体が見ることが難しくなる特徴があります。上司から進捗状況を尋ねられるまで、報告をしなかったこともありましたし、他人の迷惑を顧みず勝手に仕事を進めることもありました。譲れない自分のこだわりのために、他人と摩擦が起きてしまうことも少なくはありませんでした。仕事は仕事という考え方ができなかったのです。5. 突然のスケジュール変更などに弱く、探し物がいつもの場所にないと、イライラしやすい。いつもと変わったこと、配置が換わったりするだけで頭の中がパニックになります。こうした予想外のハプニングに対してどうしていいかわからずパニックになり、それが怒りとして感じられるというステップを踏んでいるのです。逆に、できるとわかったこともあります。一般的にアスペルガー症候群を抱える人には、接客業は向かないと言われることもあります。しかし、私の場合、質疑応答のパターンがある程度定まっており、マニュアルがしっかりしていれさえすれば、さほど不自由なく対応できました。その点、今回の職につく前の事務職では、上司の考えていることを察しながら働くことが多く、困難さを感じていました。そういった働き方が苦手だと感じたため、あえて接客業を選んだ経緯があります。また私にとって、見知らぬ人と短時間雑談をするのは、そんなに難しいことではありません。むしろ、何時間も何週間も誰かと一緒にいる方が難しいのです。社会性の弱さが露呈する瞬間が必ずあり、障害を隠し通すことができなくなるからです。上司に障害があることを、上司に伝えることになった理由ときっかけ出典 : 発達障害の心理検査が近づいてきた日、自分が大きなミスをしてしまった事に気付きます。それは、確定診断のために必要な心理検査の日に休みの希望を入れることを忘れてしまったことでした。そのため、上司に「大事な検査があって、この日はどうしても出社する事ができません」と伝える必要性ができてしまったのです。どうするか悩みましたが、「私は自分が発達障害だと思っていて、半年前から心理検査の予約をしていた」ということを正直に話しました。そして結果として診断日にお休みをもらうことができたのです。適当な言い訳をせず、あえて正直に伝えた理由は、シフトの休み希望などの締め切り自体を忘れることが、1回や2回ではなかったことが関係しています。障害特性による困り事が、そのときから既に仕事にも支障を与えていました。このことから、どうせなら正直に伝えてしまおうと思い、事実をありのままに話したのです。判明した診断名は......?出典 : こうして、発達検査を受けた私には、確定診断が下ることなりました。診断名はアスペルガー症候群と、ADHD。言語性IQは平均以上であるが、処理能力、場面の推察力、ワーキングメモリーのいずれも平均より大きく劣るという結果でした。主治医は比喩として、メモリーが極端に少なく処理速度も速くはないパソコンに例えて説明してくれました。25年間、自分が普通だと思って生きてきた私にとって、自身が発達障害であると突然突きつけられた事実は想像以上に重いものでした。「どうして、もっと早く教えてくれなかったんだ」と両親に対して憤りをぶつけてしまうほど、信じたくない気持ちでいっぱいだったのです。「まさか自分が障害者だなんて...」出典 : 診断を受け止めることができなかった当時の私は、思わず母親に詰めよります。「どうしてくれんだ!?アンタが出来損ないに産んでくれたせいで、俺の人生は台無しだッ!!」家の外にまで聞こえるような怒声で母親を罵った事を今でも覚えています。「出来損ない」を突き付けられたような感覚。健常者と比べて能力が欠けているという感覚は自分を苦しめました。他人と比べては、自分に足りないものを見つけネガティブの思考に陥る。そういうループを繰り返していたのです。この頃を振り返ると、仕事が上手く行かない、余暇を楽しむ余裕がない事から生じた怒りだったと思います。また日頃から見ていたSNSも原因のひとつだったのではないかと考えています。仕事で自分なりの居場所を見つけていたり、結婚という次のライフステージを選ぶ人が、同じ大学を卒業した同期から早くも出ていたりする中で、自分だけが社会の中で居場所を見つけることが出来ず、置いていかれている気がしていたからです。そのような言葉にすることが難しい孤独感や焦燥感が私を追い詰めました。また診断が下ってから主治医の勧めでストラテラを服用し始めたのですが、私の実感ではこれといった効き目の実感がなく、喉の渇き、食欲減退、イライラ感、中途覚醒などの副作用に悩まされます。このときは思うように治療が上手く行かない苛立ちを両親にぶつけることも少なくありませんでした。また、後から知ったことですが、ストラテラには、気分変化や不安、攻撃性を引き出すなどの副作用が出る場合があるそうです。その副作用が苛立ちや、すぐに怒鳴ってしまうことに影響していたかもしれません。結局、私の場合、副作用が強く出てしまったため、続ける事が困難だと判断され、現在は服用を中断することになりました。周囲にカミングアウトするか否か。悩んだ末に出した結論は?出典 : 確定診断を受けたものの、発達障害を職場に本格的にカミングアウトするかどうかは非常に悩みました。休み希望を出す段階で、上司に発達障害かもしれないと告げていたとはいえ、同僚や部内に対してカミングアウトすることはわけが違います。しかし一方で、障害特性による困りごとのため、仕事そのものや職場の人間関係に支障があり「もう隠し通すのは限界だな」という自覚もありました。悩みぬいた私は、試用期間にカミングアウトすることが人事面でのリスクであると知りつつも、「結局は受け入れてくれるだろう」という思いで、カミングアウトをすることを決意したのです。カミングアウトをすると決めた、私が取った行動とは?出典 : 発達障害をカミングアウトすると決めた私は、発達障害のことを全く知らない人でも分かるような説明を考え抜きました。その際に発達ナビのカミングアウトの記事を参考にし、自身の特性と、その障害に対して具体的にどうして欲しいかを簡潔に書いたナビゲーション・ブックを用意しました。ナビゲーションブックには、下記の3点を記入しました。1.アスペルガー症候群まとめアスペルガー症候群とはどのような症状なのか、障害を知らない人にもわかるようにまとめました。2.アスペルガー症候群具体例身体的な特徴や、作業面での特徴などをまとめ、どのようなことが自分の中で起こっているかを説明しました。3.自分が抱えている症状と、その対策そして、自分の困りごとに対する対処法と、その配慮を場面ごとにまとめました。ADD女性の指南書とも言われる『片付けられない女たち』サリ・ソルデン著もカミングアウトする際、参考にしました。片づけられない女たちこの本は、障害の当事者の方に、ぜひ読んでほしいと考えているのですが、障害を抱えたまま、どう自分を受け入れ前向きに生きて行くのかが書かれています。特に参考になったのは、騒がしい場所での仕事は苦手なことを明らかにし、落ち着いた環境で効率化を図ることや業務量を減らす代わりに、丁寧な仕事をすることなどです。さらに、障害があるから配慮してもらって当然という姿勢ではなく、自分で工夫できることは自分でする。自分に出来ないことだけ配慮してもらうというトレードオフを本書では提案しており、カミングアウトをどう行うかの道しるべとなりました。また、ナビゲーションブック作成の際には、下記の発達ナビのコラムを参考にして、私の障害特性を分かりやすく説明することを意識しました。職場でのカミングアウト、そして......出典 : カミングアウトをする順番は、影響する範囲などを考え、上司→人事→部署内の同僚のように進めていきました。Upload By ツーちゃんこうして事前にナビゲーションブックを用意して、自分がどのような障害があり、それに対してどうような配慮を望んでいるかをハッキリさせたことで働きやすくなった一面もありました。引き継ぎの際に、同僚が紙を使って視覚的に説明してくれるようになったり、イレギュラーが生じたときには、それをきちんと説明してくれるようになったのです。しかし、中には良く思わない人もいました。障害があり能力が劣る人と同じ給与で働くことに抵抗があり、良く思わない人も少なくなかったのでしょう。障害があることを、噂話のネタに使われてしまい、公開する予定の範囲が当初の想定以上に広がってしまったということがありました。どんな情報をどこまでに公開するかは、カミングアウトを考えるときに、最も慎重に考えなければならない問題の一つだと思います。発達障害は、脳の特性でもあります。この職場で健常者と共に働くということは、自身の特性を言わば矯正して生活をすることに他ならないものでした。カミングアウト1ヶ月後の、実質的な退職勧奨出典 : カミングアウトからちょうど1ヶ月後のことです。その会社では、直属の上司と定期的に仕事での悩みや日々の業務の改善点などについて、1対1で話し合う定期的なミーティングがありました。その日は半年間の試用期間を振り返る日の予定の日でした。いつもは温和な雰囲気のミーティングが、そのときばかりは暗い雰囲気だった事を覚えています。空気を読むことが苦手ではありますが、重苦しい人事考査を何回か経験していたため、その空気感には覚えがありました。人事が慎重を期して、書記として議事録を取っており、直属の上司が社内規定を読み上げ始めたので、不安は確信に変わりました。そして案の定上司から言われたのは、5ヶ月の間、君を見てきたけれども、正社員としてのスキルに欠けるといった趣旨の言葉でした。仕事を続けるために、突きつけられた条件とは?出典 : そして私には雇用継続に新たな条件を突き付けられます。試用期間を1ヶ月間延長しさらに人事部が示した条件を飲む。その条件とは、ナビゲーションブックに書いた、障害特性上難しいと書いたことをできるようにすること。それが達成できない場合は、引き続き雇用する事は出来ないというものでした。さらに、今の部署の仕事を完璧にこなし、他の部署のサポートにも回れるようにする。そして、その仕事ぶりが直属の上司と人事部の代表者から見て、条件を達成したと判断されたときにに改めて正社員としての採用を決定するという内容だったのです。「それが出来ない場合は、今月末で退職することに同意をしてください」いうなれば、特性を克服するか、辞めるか、どちらかを選ぶことを迫られたのです。このとき、つまりは辞めろと言われているのだと悟り、退職書類ににサインをしました。ナビゲーションブックが、このような形で使われるなんて...本当に悔しくてたまりませんでした。こんなことがあっていいのか。これは、障害者差別ではないのか?そう思った私は、法律相談なども赴き、専門家から知見を集めることにしたのです。退職してから知った、発達障害者を取り巻く現状と法律出典 : このような出来事は、法律用語で退職勧奨と呼ばれ、強制的に退職を迫った場合には法律に違反するそうです。これは、訴訟も視野に入れて法律を調べていたときにわかりました。私が知る限りで発達障害者を守る法律は3つあります。1.障害者雇用促進法2.障害者差別解消法3.発達障害者支援法障害者雇用促進法では、36条に障害者差別の禁止が規定されています。障害者の雇用の促進等に関する法律それに拠れば、「事業主は障害者である労働者に対して、配慮することが必要」という旨が書かれています。しかし、合理的配慮の提供は義務付けられているものの、障害者雇用促進法に違反していても罰則は無いという法律の抜け道が用意されています。現在、発達障害のある人は、手帳を持っていなくても医師の診断書などで障害があることが分かっていれば、上記の法律の対象者にはなります。しかし現状、発達障害者は、障害者であると定義されていながら、手帳を持っていない場合、法定雇用率にカウントされません。つまり、手帳を持っていない発達障害者は、単に法定雇用率をクリアしようとする企業によっては、雇用するメリットがない人材と言えてしまうのです。この退職勧奨があった当時、私は、精神障害者手帳を取得していませんでした。訴訟も視野に入れたが、証拠が無かった......出典 : 私は法律にはついては、何も知らなかったので法テラスという場所の無料法律相談を利用しました。法テラスとは経済的な困難を抱えている人が不利益を被ることがないように設けられており、通常弁護士に相談すると1時間4000円程度かかるところを、無料で相談することが出来ます。そこで相談をすることで、法的な自分の状況がのみ込めてきました。退職のきっかけとなった面談時、会社側は人事部の社員を書記につけていましたが、私にはそこでどのような会話があったかを証明する証拠がありませんでした。訴えを起こそうにも、強制的に退職を迫られたという証拠が自分の側になく、会社側に都合の良い解釈が出来る証拠がたくさん残っていたのです。また、退職届けを自ら書いてしまったことが痛手となりました。一度、退職することに同意をしてしまうと、会社側としては、労働者から退職したいとの申し出があり、会社としては、それを受理したまでという主張が通ってしまいます。また私は、今回、会社の所在地を管轄する労働基準監督署にも行きましたが、労働基準監督署は、労働基準法に違反するかどうかをチェックする公的機関のため、相手にしてもらえませんでした。やきもきしている私に弁護士が勧めてくれたのが、労働局の個別労働紛争解決の制度を利用することでした。労働局の調停(個別労働紛争解決制度)とは?出典 : 労働局の個別労働紛争解決の手段として、あっせんと、調停の2つがあります。どちらも無料で活用できる紛争解決の手段です。今回、利用したのは後者の調停です。調停は障害者差別により不利益が生じたと主張する労働者と、会社間の紛争を解決するために行われます。労働相談における紛争調整委員会によるあっせん | 福岡労働局調停は、民事裁判とは性格が異なります。労働者と会社の双方から言い分を訊き、1日で審理が終わります。所要時間は申し出から平均で3ヶ月と、一般的な裁判と比べると短期間で済ませることが出来ます。そして労働者自らが無料で申請することが出来る制度です。また障害者自身が申請書を1人で書きあげることが難しい場合は、代理人が当事者の承諾を得て申請することも出来ます。調停が成立した場合、そこでの決定は民事裁判と同等の効力を持ちます。しかし、裁判のように参加の法的な拘束力がありません。自由参加だということです。また調停は、非公開で行われます。つまり調停の過程や結果については公表してはならないのです。私も調停の申し出を行いましたが、その結果をここに書くことはできません。退職してからというものの......出典 : 僕にとって、辛かったのは「自分が発達障害であるという事実」と会社が自主退職をするように暗に示してきたことの2つがほぼ同時期に起こったことでした。まさに泣きっ面に蜂のような状況。そのため退職してからは、気分が落ち込み、やり場のない怒りや苦しみを両親にぶつける日々が続きました。うつ病とまではいかないものの、抑うつ状態にもなり、心身ともに辛い日々となったのです。また、私はアスペルガー症候群の症状がADHDよりも強く出ており、視覚優位なタイプでもあります。そのため、目で見て、モノを考えるタイプであると同時に、目で見てモノを思い出すタイプでもあります。その企業のコーポレートカラーや、上司の名前、その企業の商品など、色々な刺激を見たり、聞いたりすることで頻繁にフラッシュバックが起こりました。フラッシュバックの辛さを言葉で説明することは難しいのですが、まるで、その場にいるときと同じように、その当時の感情を思い出してしまうのです。また、切り替えが苦手で、マルチタスクが苦手なため、怒りを感じたときはそのことしか考えられなくなり、感情に長く翻弄されてしまうのです。悔しくて堪らなかった。見かねた父が私に掛けてくれた言葉出典 : 上述したように私は、退職してからずっとその企業の行ったことが許せませんでした。やがて、証拠がなく裁判をして白黒をつけたいと考えるようになった私に、父がかけてくれた一言があります。「過去に囚われて、苦しむお前を見たくない。俺が見たいのは、お前の笑顔だ。嬉しそうに笑うお前を取り戻して欲しい。ただ、笑ってくれていれば、それでいいんだ。仮に裁判をしても、思うような結果は得られない。お前も分かっているはずだ、証拠が無いと。つらいことは忘れられなくても仕方がない。それでも視点を変えれば、見えてくるモノも自ずと変わってくる。早くお前に笑顔が戻ればいいなと思っている」この言葉を聞いたとき、感動して涙が出たことを今もちゃんと覚えています。そしてこの父の言葉が一つのきっかけとなり、前を向いて歩きだす機会になりました。自分を責め続けていた私を救った言葉とは?出典 : 父の言葉だけでなく、カウンセラーの方がかけてくれた言葉にも救われることになります。辛い過去を忘れることができずにいるとき、カウンセラーの方が、こう声をかけてくれました。「許さなくてもいい、許せない自分がいてもいい。」このたった一言が怒りに苛まれる心を楽にしてくれました。日々感じていた怒りの感情の認知を、カウンセリングなどで丁寧に取り除くことに時間をかけ、今現在は怒りの感情に支配されることもなく落ち着いて過ごすことができるようになりました。自分の生い立ちを振り返って出典 : 今振り返ってみると、私は、障害のことを10年くらい前に分かっていたら良かったなぁと考えています。今現在26歳なので、中学生とか高校生くらいのときにあたるでしょうか?たとえ、自分に障害があることを知らなくても、人と上手くなじめない感覚や、ほかの人と自分は何かが違うという違和感を幼い頃から感じながら生きています。だから、自分自身に発達障害があるともっと早く知っていれば、その違和感にも納得することができたし、障害特性を理解して、自分に合った道を選ぶこともできたはずです。また、障害の受容に関しては、信頼できる第三者の大人の存在がとても重要だと考えています。障害を受け入れることが出来なかった頃、両親の声はなかなか届かなかったからです。私の場合は、カウンセラーの方だったのですが、小学生や中学生のお子さんであれば、小学校の先生などが信頼できる大人にあたるでしょうか。そうした関係づくりが後々役に立つのではないかと思いました。私の経験から皆さんに伝えたいこと出典 : これまでのことを振り返ると、職場にはカミングアウトしないことも選択肢の一つだと思います。また個人的な見解ですが、私のように途中でカミングアウトをした場合、周囲からは後出しジャンケンをしたような目で見られます。また入社前に障害の有無を伝えていない場合、障害により生じた人間関係の不和はカミングアウトをしたからといって埋まらないような気がするのです。私は、今現在、この反省を活かし障害者雇用で配慮を得られる企業を探しています。私が使用しているナビゲーションブックを公開します。企業へのカミングアウトを考えている方は、参考にしてみてください。この記事が一人でも読者の皆さんの参考になれば、これほど嬉しいことはありません。Upload By ツーちゃん
2017年08月28日順調にスタートしたように見えた高校生活Upload By 荒木まち子娘・のりには発達障害(広汎性発達障害、自閉症スペクトラム、ADD、LD)があります。特に「初めての事」に対して大きな不安を感じやすく、見通しがたたない状況がとても苦手です。高校入学直後の定期テストや学校行事、学内でのグループ班長としての活動の前などには、不安で体調を崩すこともありました。しかし、辛い思いをしても自分の課題に向き合い、それを一つ一つクリアしていったのです。高校生活に慣れた頃ののりは、今までの学校生活で一番自信に満ちているようにみえました。のりは始業前、放課後と美術部の活動に参加し、今まで以上に趣味の絵画などの"ひとりで創り出す世界"にのめり込んでいきました。また部活動以外でも創作活動に精を出し着実に成功体験を積んでいるようでした。しかしこの成功体験の積み重ねが、後に思いがけない変化をもたらすとは…。母には想像できませんでした。家で常にイライラする娘高校1年生の冬頃になって、のりは徐々にイライラすることが増え、ちょっとしたきっかけで、無言で「キレる」ようになりました。Upload By 荒木まち子その様子は、障害に対する周囲の理解が得られていなかったり、いじめられたりしていた小学校時代のイライラとは全く違う種類のものでした。私の理解を超えたところでの、複雑な怒りをぶつけているように感じられたのです。のりの気持ちがわかるようでわからず、母ももやもやとしたストレスを感じていました。学校の授業などではキレてない…らしい。来る日も来る日も、ささいなことでキレるのり。学校の先生にものりの家庭での様子を伝え、解決方法を探ろうとしましたが、「学校ではキレる様子は見られない」とあっさり返されました。Upload By 荒木まち子成功体験があったからこそ、娘は苦しんでいた!Upload By 荒木まち子どうやらのりは、「理想の自分」と「特性上どんなに努力してもできないことがある自分」とのギャップに悩んでいるようでした。成功体験を積んだのりは自分に対するハードルを上げて苦しみ、「失敗すること」「失敗を認めること」を極度に恐れていたのです。また「嫌だ」という事が素直に言えず、学校では"優等生"を演じている自分自身に対しても嫌悪感が勝っていたようにも見えました。「どうせ私なんていらないんでしょ!」…母にだけ複雑な気持ちをぶつけるのりはイライラしだすと自分の部屋に行ってクールダウンを心がけます。しばらくして落ち着くこともありましたが、時には10分たっても20分経っても落ち着かず、むしろ時間と共に大きな音が部屋から聞こえてくることもありました。「支配しようとしないで!」と言いつつ、放っておけば「どうせ私なんていらないんでしょ!」ともっと構って欲しいという仕草を見せる。思春期独特の気持ちに加え、・同じ女性ならではの感情の衝突・障害の特性・同じ悩みを持つ同世代の友達の不在等々がのりの感情のふり幅をさらに大きくしていたのでしょう。「気持ちを吐き出せるのは母親だけ」ということは理解しても、やはりそれが何ヶ月も続くのはとてもしんどいものでした。そしてある夜。何時間経っても怒りが収まらない娘はついに家を飛び出したのです。~続く~
2017年08月21日子どものことを理解していても、きつく当たってしまう自分に気づいた。出典 : 夏休み、家族や親戚、お友だちと一緒にお出かけする機会も多いと思います。わが家も先日、身内10名ほどでお出かけと食事をしてきました。といっても、慣れない場所へ行くのは子どもたちが不安になるので、馴染みのあるショッピングモールでおもちゃ屋さんをのぞいたり、本屋さんでゆっくり本を選んだり。そうして、空いているお店で食事をとることにしたのです。その時点で、息子はかなり興奮していました。騒ぎ立てたりするということではなく、日常とは違う刺激的な出来事の連続で、感覚がとても過敏になっていたのです。注文した料理が一つひとつ運ばれるたびに、「僕のが来た!」と椅子から腰を浮かして喜んだかと思うと、「僕のじゃなかった」と机に突っ伏してがっくりし、「おじいちゃんのもまだだから大丈夫だよね?」と私に確認します。お腹が空いて早く食べたい気持ちと、「いつ自分の食事が運ばれてくるか分からない」という見通しの立たなさに対する不安、初めて注文したメニューへ不安、いろいろな気持ちが次から次へとあふれかえってきて、処理が追いつかない状態になっていたのだと思います。ようやく運んでもらった自分のご飯を一口食べるごとに、息子は椅子の上でぴょんぴょん跳びはねていました。「美味しい」「みんなと食べられて嬉しい」「たくさん食べて褒めてもらえた」息子の心の中にはそんな喜びがあふれたのでしょう。しかし、次の瞬間には「とんかつが苦手なソースに触れてしまった」ということに絶望し、目に涙を浮かべています。とにかく息子の心の中は上がったり下がったりの大騒動。その興奮を逃すために、ぴょんぴょん跳ねるという行動が息子には必要だったのです。一緒に出かけた身内は息子のことをよく知ってくれているので、、息子の行動を批判したり、顔をしかめられるようなことはありません。でも、もし「これを通りすがりの人が見たら、どう思うんだろう?」と、ふと考えてしまったのです。落ち着いて座って食べられないわが子は、おかしいと思われるんだろうか?それとも、親のしつけがなっていないと非難の目を向けられるんだろうか?やっぱり、私が責められるんだろうか・・・。そんなことを考えているうちに、具体的に誰に責められたわけでもないのに「世間の目」というプレッシャーに負け、「ちゃんとしなさい!」必要以上に息子にきつく当たってしまう私がいました。世間から冷やかな目を向けられている気がして…。出典 : 後になってみると、「どうしてあんな風に感じてしまったんだろう。息子の不安をゆっくりとを取り除いてあげれば良かった」と、反省しきりでした。とはいえ、子どもが幼い頃は「まだ小さいからね」と許してもらえていたことでも、子どもが成長するにつれ厳しいまなざしを向けられるようになることは、この先ますます増えていくような気がします。子どもに強く当たりたくない。しかし、世間から責められている気がしているのも事実。そこで、まず「世間から責められている気がしてつらい」という自分の気持ちを分解して、掘り下げてみることにしたのです。「私は、世間から『きちんと子どもをしつけることのできない母親だ』と思われたくないんだな」と頭の中で唱え、自分自身に問いかけてみます。そして、その裏にどんな気持ちが隠されているのかを考えてみました。「おそらく通常の子育て以上に身も心もすり減らして育てているのに」「ここまで連れてくるだけでも大変だったのに」そんな気持ちが、私史の中に隠れているような気がします。そしてそのさらに奥にある気持ちを考えます。「疲れきった私にまだ努力を強いるの?」「こんなにがんばっているのに認めてもらうどころか責められなきゃいけないの?」そんな気持ちも見えてきました。そこまで自分の気持ちを突き詰めたとき、はたと気づいたことがありました。これは発達障害のある子どもたちの気持ちを似ているんじゃないかなと思ったのです。子どもたちも、日々、自身と社会の接点について、同じように悩んでいます。「感覚刺激を持たない人よりも何倍も身も心もすり減っているのに」「慣れないお店に入るだけでも不安で胸がいっぱいなのに」「がんばっているのに認めてもらえない」「いつまでがんばればいいの?」なんだ、ママと一緒じゃない。すごくがんばってるじゃない。その頑張りを知っている、私だからこそ、必要以上に自分や子どもを追い詰めずにいたい。たとえ、「しつけができていない」と言われたとしても、謝るべきところは謝るけども、同時に精一杯生きている自分たちもきちんと認めて行こう。そんな風に思えたのです。大切なのは、子どもと自分の頑張りを認めてあげること。出典 : 世間では「普通」という枠組みの中にいることをよしとする風潮が強く、発達障害のある子どもたちにとって生きやすい世界とは言えません。だからこそ、親は子どもがいつか自立できるように、なんとかこの世界で生きて行けるように育てていかなければと、プレッシャーを感じながら過ごしています。でも、そのプレッシャーを子どもにきつく当たるという形で解消してはいけないな、と今回のことで強く感じました。いくら子どもにきつく当たって世間体を取り繕っても、一つも前に進んでいないからです。その場しのぎで無理矢理子どもの行動をコントロールしたとしても、それは子どもが親の不機嫌から逃れたいという一心で親の意に沿っているに過ぎません。本質的に行動を改善したいなら、その子にわかりやすい伝え方で、丁寧に何度も繰り返しインプットを続ける必要があるのです。たとえば、不安が高まってパニックを起こしてしまったのであれば、出掛ける前に「この安心グッズを持って行くから、必要になったら使おうね」とあらかじめ話をしておくことで、次はパニックを回避できるかもしれません。また、椅子の上でぴょんぴょん跳びはねていた息子のように、衝動を抑えられなくなったときは、いったんその場を離れて迷惑にならない場所で抱きしめ、乱高下の激しい心を落ち着かせるなどの手立てが取れるかもしれません。そして、落ち着いた日常の中で「ご飯を食べる時には座席にしっかりと腰をおろします」「食事を楽しむための場所でバタバタすると迷惑だと思う人がいます」など、どうすれば良いのか、なにが問題になるのかをゆっくりと伝えていきましょう。自分もがんばっている、子どももがんばっている。そう認めることで、子どもにきつく当たる回数を減らして、少しずつ前に進んでいけるといいですね。
2017年08月20日「ココがズレてる健常者2~障害者100人がモノ申す~」放送決定!Upload By 発達ナビニュース2017年8月18日(金)22:00よりNHKバリバラにて「ココがズレてる健常者2 ~障害者100人がモノ申す~」が放送されます。バリバラとは、「BARRIERFREE VARIETY SHOW」の略。障害者といっしょに笑いあう番組を目指し、2012年4月に障害者による障害者のための情報バラエティーとして放送開始されました。これまでも統合失調症の幻覚症状をモチーフにしたドラマ制作や障害をはじめとするマイノリティの人たちによるお笑いグランプリなど、画期的な企画を打ち出してきたバリバラですが、今回はまた一味違うトークショーを展開!・健常者側から障害者への疑問を素直にぶつける「究極の質問コーナー」。・障害者と接したとき健常者はどう行動するのかを問うシチュエーションクイズ「健常者よ、こんなとき、あなた、どうする?」。などなど、ざっくばらんにお互いの意見をぶつけあえるコーナーを多数用意。対話の中で「バリアフリーな社会のあり方」を考えていきます。第一回目の放送、きっかけは「検証!『障害者×感動』の法則」Upload By 発達ナビニュース実はこのシリーズ企画がはじまったきっかけは、去年の8月28日にバリバラで放送された「検証!『障害者×感動』の法則」。障害者の存在を画一的に描き「感動ポルノ」として扱う番組へ問題提議を起こしたことで、放送終了後には大反響が巻き起こりました。この番組内で、鈴木おさむさんが提案したのが、本番組の企画。第一回目の放送では、100人のさまざまな立場の障害者による「健常者によるありがた迷惑エピソード」や、ドッキリ企画「もし店員が障害者だったら?」など、視聴者をときにハッさせる回答が寄せられスタジオはヒートアップし大盛り上がりのうちに幕を閉じました。今回の見どころは…?Upload By 発達ナビニュースそして今回は第二段。第一回目の放送では伝えきれなかった熱狂を、さらにパワーアップしてお茶の間に伝えます。去年に引き続き番組企画を担当したのは放送作家の鈴木おさむさん。今回の狙いは「飲み屋で話題になれる番組」なのだそう。『スタッフと話し合って、飲み屋でも話題にあがるような番組を作ろうということになったんです。普通のドラマやバラエティを見た後に話すような感覚になれる番組を作ろうと狙いを定めて企画を練りました。』スタジオには再び100人の障害者を集め、本音トークが炸裂します。「障害者への対応、あなたはどうする?」「障害者の恋愛って?」「障害者のモノマネ、できますか?」健常者側のタレントと100人の障害者が、ときに笑いときに声高に双方の意見をストレートにぶつけあい前回の放送を超えて届けられる声に圧巻されること間違いなし。NHK番組史上でも話題性バツグンの企画、華金の夜にみんなでテレビを囲んで視聴しませんか?ぜひお見逃しなく!番組詳細はこちら!Upload By 発達ナビニュースココがズレてる健常者2~障害者100人がモノ申す~8月18日(金)NHK総合22:00〜22:50【出席者】鈴木おさむ有働由美子NHKアナウンサーカンニング竹山FUJIWARA(原西孝幸、藤本敏史)土田晃之千秋岩井勇気(ハライチ)菊地亜美バリバラ
2017年08月18日「発達障害フォーラム2017」が開催!当日の様子をレポートします発達障害のある成人当事者の方々にとって、似た特性のある人同士で繋がり、交流したり、お互いの困りごとを共有・相談したりすることができる「当事者会」の集まり。当事者会の趣旨や活動内容は団体ごとにさまざまですが、これまで数ある当事者会の実情が横断的・網羅的に調査されることはなかなかありませんでした。そうした中、7月17日に、「発達障害当事者会フォーラム2017」※が開催されました。昨年初めて実施された当事者会に関する全国規模の調査結果をもとに、当事者会のこれからを、登壇した方々を含め、その場にいた全員が改めて考える機会となりました。発達障害当事者の方、また発達障害を身近に考える方などで、早い時間から会場は満席に。大人の発達障害への関心の高まりを感じられるフォーラムでもありました。※主催: 一般社団法人発達・精神サポートネットワーク(代表理事・川島美由紀), 発達障害当事者協会(代表・新孝彦)Upload By 秋定美帆第一部は、今回のフォーラムの主催者であり、「Necco カフェ」オーナーで発達障害当事者協会運営委員の金子磨矢子さんの挨拶からスタート。昨年の発達障害者支援法改正により、成人の発達障害の存在が正式に認められたこと、またそのために尽力された方への感謝の言葉を語られました。「発達障害の支援を考える国会議員連盟」事務局長の高木美智代衆議院議員(現: 厚生労働副大臣)もフォーラムに駆けつけ、「幼少期からライフステージに合わせ、切れ目ない支援ができるよう、縦横の連携を深めて支援させていただく」とご挨拶されました。また、一般社団法人日本発達障害ネットワーク市川宏伸理事長からは、「当事者が団結して声をあげる重要性」の話がありました。そして、東京大学社会科学研究所・助教の御旅屋逹先生から「発達障害の当事者同士の活動支援のあり方」の調査報告が行われました。成人の発達障害への関心の高まりや当事者の支援ニーズの掘り起こしの不足などの背景から行われた今回の調査。回答のあった、76箇所の都道府県・政令指定都市の発達障害者支援センターの意見がまとめられました。「手探りで進めてきた初めての調査です。全ての当事者会の一般的な傾向を表したものとは言い切れません」としながらも、調査結果からはさまざまな課題が見えてきました。大きな課題は、利用者間の人間関係と運営に関わる資金だと回答したセンターが多く、また参加者には偏りがあることも分かりました。30代〜40代の男性の参加が多いという結果は、子供の頃には発達障害が知られておらず、働き始めてから特性のせいで孤立してしまうなどの問題が生じることが多いこと、また就労していないことが問題化されやすいのが男性であるということが反映されているようです。詳しい結果については、下記をご覧ください。「発達障害の当事者同士の活動支援のあり方」の調査報告12の当事者団体が一堂に。それぞれの工夫や課題を共有。Upload By 秋定美帆第二部では、12の発達障害当事者会の方々が登壇し、座談会形式のフォーラムが行われました。事前に用意された7つの質問にそれぞれの団体が回答し、それを元に議論が進みました。「当事者会を運営することで、人生のリカバリーができました」「症状を苦に生きる目的をなくしてしまう人などを見てきましたが、そのようなことが起こらないように頑張っていきたいです」など、登壇した方の気持ちのこもった言葉は、そこにいた多くの参加者の胸に響いたようでした。参加団体は以下の通りです。・ほんわかカフェ(Neccoカフェ茶話会)・一般社団法人東京言友会・発達障害ピアサポートサピア・千葉県発達障害当事者の会・DX会・つむぎ 発達障害当事者会・東京・多摩「大人の発達障害」当事者会・NPO法人 日本トゥレット協会・みどる中高年発達障害当事者会・アスペ・発達凸凹の集い「優しい時間」・足利こころのピアサポート「ゆいまーる」・発達障害当事者協会Upload By 秋定美帆「当事者として発達障害支援センターをどのように捉えているか?」という質問には、「当事者会のことを教えてもらえることを期待していたが、当事者会の存在自体を知らないと言われるなど、スタッフによって知識に差がある」などの問題が提起されました。当事者が必要としている情報と、支援者が必要だろうと思う情報に差異があるとの声も上がりました。また、何かトラブルがあったときに専門職の方が中に入ることで冷静に対処できるのではないかという観点から「当事者会として発達障害者支援センターと連携したいか」という質問には、連携したいと語る団体もありました。「地方で受けられる支援が少ない」、「人の役に立ちたい」、「当事者との横の繋がりを作りたい」など様々な回答が出たのが「なぜ当事者会を作ろうと思ったのか」という質問でした。都心と比べると地方では自分に合った支援を受けることが難しく、また当事者向けの研修などはめったにないという課題も挙げられました。ならば自分で当事者会をつくることで、勉強会の実施や、講師を招いての研修会の開催なども可能になるのではないかなど、困難な中でも前向きな意見が多く聞かれました。Upload By 秋定美帆続いて、「専門家は当事者だけでは運営が難しいと言っているが、当事者会としてはどう考えているか」という質問。当事者会を運営することで、いろいろなスキルが身につき人生をリカバリーすることができたという体験から、「専門家が入ることに反対ではないが、そのために当事者の枠がひとつなくなってしまうのなら当事者に残してほしい」という意見や、「当事者だけでも運営可能だとは思うが、特性上事務手続きや事務作業が苦手な方も多いので、そういったことを理解してくれる専門家の方に入ってもらえるとありがたい」などの声がありました。Upload By 秋定美帆「当事者会として困っていることは?」という質問には、薬物療法や対人療法、また薬の副作用など、特に医療の面でピアサポーターの知識にも限界があるといった回答が寄せられました。またDX会(成人ディスレクシアのための当事者会)は、同質問に対して、ディスレクシア(読み書き困難)の特性が人によって大きく異なるため、ふざけているのでは?と思われることがあるなど、あまり理解が得られないことを訴えました。「オンラインも活用してきたが、やはり直接顔を合わせないとうまくいかない」「自分たちのモチベーションを切らさないようにする」「毎月第何○曜日。場所はどこ。と時間や場所を固定するようにしている」「事務的な作業は雛形を作ってそれを継続している」など多くの意見がでたのが、「当事者会を運営していくうえで、どのような工夫をしていますか?」という質問でした。特性に配慮した工夫はもちろんですが、運営者の負担が大きいため、できるだけ個人の負担を減らす工夫がされているようです。最後に「当事者に必要な支援は?」という質問には、相談可能な第三者機関の設立や、当事者会運営者の養成講座の必要性を訴える声が多く上がりました。また、最近成人の発達障害が広く認知され始めており、発達障害と診断される方も増えています。当事者会にも開催する毎に新しい方の参加があることから、都度定番の情報を提供する必要があるといいます。定番の情報をまとめたサイトなどがあれば、当事者会ではそれを踏まえてもっと深い話ができるようになるなどの意見が集まりました。熱い議論が交わされたフォーラムの後には、登壇された2名の方にお話を伺いました。Upload By 秋定美帆■アスペ・発達凸凹の集い「優しい時間」横山さん−他の当事者会の方々とこんな風に集まることは今までなかったので、他の会のお話を聞けて有意義でした。活動については、メンバーには恵まれているのですが、財政的な面では苦労が多いです。参加費の値上げなどを考えましたが、みなさん苦しい中参加してくださっているので、現状維持で頑張っています。Upload By 秋定美帆■つむぎ発達障害当事者会野中さん–このような形で登壇することは今までなかったのでとても緊張しましたが、発表したいと思っていたことは伝えることができたと思います。私は、以前自立神経失調症を発症し、新卒での就職ができず、新人研修の機会を喪失してしまいました。ですが、当事者会の運営に携わることでいろいろなスキルが身につき、一部を補完できました。そのことで、人生をリカバリーすることができたと思っています。Upload By 秋定美帆ロビーには発達障害に関する書籍の販売コーナーも。多くの方が気になる本を手にとっていました。Upload By 秋定美帆■roots石塚さんフォーラムが行われた第一会場のほかに、第二会場には就労支援の相談コーナーが設けられました。出展していた就労移行支援事業所「roots」の石塚さんは、「rootsでは『働きたい、を叶えたい。』というキャッチコピーのもと、web制作などwebに特化した就労支援を行なっています。Webの世界は特にいろいろな働き方があるので、新しい働き方を当事者のみなさんと一緒に模索していきたいです」と語ります。2016年5月に発達障害者支援法が改正され、成人の発達障害に注目が集まるようになりましたが、まだまだその支援が充分であるとは言えません。支援が行き届く社会にするためには、どこに不足があるのかを理解することが重要です。今回のような調査が社会を変えるための大きな一歩であることはもちろん、思いのこもった当事者の言葉は何よりも力があると感じられた今回のフォーラムでした。
2017年08月15日「○○が苦手です」では、発達障害の実情が上手く伝わらないこともある出典 : 発達障害のある子のことを説明する際、よく耳にするセリフに「うちの子は○○が苦手です」というものがありますよね。私も、療育センターでそのように説明することをすすめられていたこともあり、最初は長男の障害名ではなく「〇〇が苦手なのよ」と特性だけを伝えるようにしていました。障害名を言って偏見を持たれるよりは、具体的な得意不得意を話した方が伝わりやすいだろう…そう思っていたからです。実際に、そのように伝える方がコミュニケーションが円滑にいく場合もあるでしょう。ですが、私が直面した現実は真逆だったのです。帰ってきた言葉の多くは「苦手ってことは頑張ったらできるんでしょう?」「甘やかしすぎじゃない?」「しつけの仕方が悪いんじゃない?」といった、息子や私の”がんばり”不足を原因とするかのような反応でした。「トツカさんって、ほんと過保護よねー」知らないところでそんな風に言われることもあり、当時はひどく落ち込みました。しかし、今思えばこちらの伝え方のせいで余計な誤解を招いていたのだと感じます。確かに、「うちの子は○○が苦手です」と突然言われても、それがどの程度苦手かを想像することは難しいですよね。「うちの子だって大変なのに、この人は何を甘えているの?」そう思うのは自然なことだと思います。それが定型発達の世界なのです。こうしたことがあってからは、私はあえて先に「うちの子は自閉症という障害を持っています」と伝えた後に、「障害の特性から○○が苦手なため、ご理解いただけると助かります」というように伝えるようにしました。もちろん「障害があるから迷惑をかけても許してね」という意味ではありません。「本人も家族も努力をしていますが、それでも難しいことが多々あります。そのためご迷惑をおかけすることがあるかと思うので、もし気になったことがあれば遠慮せずお知らせください」という意味です。何かあれば常に対応するという姿勢を示しておくことで、理解し合うための土台作りができることに気がついたのです。発達障害がある子たちにとって“苦手”という感情は生きるか死ぬかのレベルであることも多いです。しかし、ただ“苦手”と伝えるだけでは、その困難の大きさを判断できないのも無理はないですよね。そのために、少しでも相手が抵抗なく受け入れられるようにこちらができる工夫。それが「障害名から伝える」ということではないかと感じました。「障害名を伝える=偏見を持たれる」とは限らない出典 : 障害名を伝えることに関して、多くの保護者の方が悩む問題があります。「障害名を伝えることで障害名が一人歩きして偏見を持たれないだろうか…」ということです。私の結論を言うと、それは違います。悲しい話ですが、発達障害に対して偏見を持っている方は特性に対しても偏見を持っていることが多いため、障害名を伝えても伝えなくても大きく変わらないのです。「子どもが○○をするのは親のしつけのせい」すでにそう思っている方にとって、障害名は重要ではありません。むしろ障害名や詳しい特性を伝えることで「障害があるからそのような行動をすることもある」ということを知ってもらえ、逆に偏見がなくなることの方が多かったのです。そのため、障害名を伝えることでプラスになることはあってもマイナスになることはありませんでした。あえて障害名を伝えることで良い意味で変化が!出典 : とはいえ、実際に障害名を伝えるとなると「お友だちができなくなるのではないか」「偏見を持たれないか」など、どうしてもマイナスのことを考えてしまいがちですよね。ですが、先にお話しました通り、実際はプラスになることも多いのです。なぜならば「正しい知識を伝えられる」からです。恥ずかしながら、私自身も、わが子が自閉症だと知る以前は「自閉症=喋らない障害」だと思っていました。実際はそんな子もいればそうでない子もいますよね。しかし、以前の自分のように誤って認識している方は大勢いらっしゃいます。そのため意図せず傷つけたり傷つけられたりということが起こってしますのです。けっして悪意があるわけではありません。ただ、知らないだけなのです。障害名を伝えた後、そんな方たちによく聞かれることがあります。「自閉症って○○な障害だよね?でも、息子くんはそんな風には見えないよ?」それぞれがイメージしている“自閉症”とギャップがあるのでしょうね。障害のカミングアウトを機にこうした質問をされることが増え、その度に説明をするようになりました。大人が正しい知識を持つことで、子どもにも間接的に障害がある子との関わり方を伝えることができます。逆にこちらは年相応の成長や遊びを教えてもらえ、お互いに知らない情報を知ることができるのです。言わなければ伝わらず歩み寄ることができなかったであろう関係も、こちらから一歩踏み出すことで世界が大きく広がり、この先必要な社会とのつながりを作ることができるのではないでしょうか。また、学校でもある程度オープンでいることで、学級内での配慮が円滑に行えると聞いたことがあります。高学年になると、それまで漠然とゆるされてきた発達障害の子を見て「あの子だけ特別扱いされてずるい!」と感じる子が増えてきます。大人でも理由を聞かされず一人だけ特別に配慮されている状態を快く思うことは難しいですよね?それと同じなのです。なぜその子には配慮が必要なのか、それをある程度示してあげることで、クラスメイトにとっても良い効果があると感じました。伝え方を工夫して否定し合わない関係作りを出典 : 現在長男は特別支援学級と普通学級を行き来しています。特別支援学級に通っている子どもたちは、必ずしも障害の確定診断がある子どもばかりではありません。長男に発達障害があることを知っている親御さんもいれば知らない親御さんもいます。子どもたちも同様です。そのような状況ですが、障害名が足かせになっていると感じる経験をしたことはありません。多くの方は定型発達の子と同様、本人の性格や人間性を見て判断してくれていると私は感じています。見えない障害をカミングアウトすることが正解かどうかはわかりません。しかし、私自身は少なくとも不正解ではないと思っています。障害の有無を問わず、すべての人たちが理解し合って生きることは難しいことです。しかし完全に理解することはできなくても、伝え方一つで否定し合わない関係が築けると思うのです。そんな関係を築いていくことが、将来社会で共存することにつながるのではないでしょうか。障害の種類・子どもの性格・周りの環境などで伝え方は変わってきますが、あえて障害名を伝えるという選択もあるということを知ってもらえたらと思います。
2017年08月14日NHK「あさイチ」シリーズ発達障害“ほかの子と違う?”子育ての悩みNHKが1年を通してさまざまな番組で、発達障害の多様な姿を伝えていく「発達障害プロジェクト」7/24(月)にも「あさイチ」で特集が放送されました。今回のテーマは、「“ほかの子と違う?”子育ての悩み」朝の番組で、発達障害のある子どもの子育てを取り扱ったことから、特に保護者の方々の視聴・感想が多かった様子です。発達ナビ編集部でもTwitterで番組の内容を実況し、視聴していた方々の感想もまとめました。以下の、Twitter「モーメント」機能によるまとめをご覧ください。「あさイチ」シリーズ発達障害“ほかの子と違う?”子育ての悩みワガママと発達障害の境界線は…?番組で投げかけられた問いと、視聴者の声今回の番組では、発達障害のある小学生の子どもが二人いるご家庭が取材されました。小学6年生の女の子が、学校から帰って来た場面。直前までお友達とおしゃべりしていた内容が心に残って、なかなか気持ちや行動の切り替えをすることができない、結果、宿題を始めるまでに50分もかかったという様子が映されます。お子さんの発達に違和感を感じたのは3歳児の頃。癇癪が激しく周囲に相談したが、その時は周囲から「大丈夫だよ」と言われるだけで、お母さんはギャップに苦しんだそうです。その後4歳児になったとき病院を受診、発達障害と診断されました。お子さんが「宿題をなかなかやろうとしない」「学校に行きたがらない」といった状況や悩み自体は、子育てしているご家庭なら大抵、一度は直面することかもしれません。ですが、発達障害のあるお子さんの場合、気持ちや行動の切り替えの難しさ、困りごとが起こる頻度や程度には大きな差があり、なかなか簡単には困りごとは解消されません。番組で映されるお子さんとお母さんのやり取りから、診断されてから今に至るまでの日々、積み重ねて来た工夫や理解、お子さんの成長の足跡も感じられます。それでもやはり、思うようにいかなくて、パニックや癇癪を起こしてしまうこともある。同じく発達障害のあるお子さんを育てる保護者の方や、ご自身も幼少期に似たような状態になっていたと語る、成人の発達障害当事者の方など、視聴者の方々から共感の声が寄せられていました。一方、スタジオゲストの方からは、「これが単なるワガママなのか、発達障害によるものなのか、わからない」という意見も出てきました。ワガママと障害はどう違うのか。そんな疑問に対して、Twitter上でも視聴者のさまざまな声が寄せられます。番組中でも、一見して誰にでも起こるような困りごとでも、発達障害の場合は、生活に支障がでるぐらい、程度や頻度が大きいという説明がなされていました。ですが、程度や頻度は違えど、起こっている症状や困りごと自体は、どんな子どもにも見られうるものであるゆえに、周囲の人からすると一見してその違いはわかりにくいのでしょう。どこまでがワガママで、どこからが障害なのか…発達障害が身近でない人からそのような疑問が呈されること自体は、無理もないことかもしれません。また、性質や程度の違うさまざまな凸凹のある人々が、連続体(スペクトラム)のように存在していると言われる発達障害それ自体の特性からも、明確な線引きをすることは非常に難しいと言えます。目に見えにくい、わかりにくい障害としての発達障害の性質を示すようなエピソードだったように思います。こうしたジレンマに対して、具体的にはどのように対処すれば良いのか。番組のゲストコメンテーターとして出演された、鳥取大学大学院の井上雅彦教授のコメントがヒントとなります。わがままと障害の線引きはどこかと線引きすることは、厳密には難しい。それよりも大切なのは、周りがどういう風に対応して工夫すれば本人が頑張れるようになるのか、という観点だと井上先生は語ります。線引きをすること自体を目的としても、議論にキリをつけることは難しいですが、その子が何に困っていて、周囲の人たちには何ができるのかと、個別具体的な対応・行動をベースに考えることができれば、発達障害かどうかに関わらず、どんな子どもにとっても有効な困りごと解決のアプローチが見つけられるはずです。番組の後半には、下のような声も寄せられました。どんな状況であれ、お子さんも、親御さんも、それぞれのありのままを受け止めて認めて合うことを願う声です。あさイチ出演、古山さんより保護者の方々へのメッセージ最後に、今回の番組のVTRに出演された古山さんからのメッセージをご紹介します。番組終了後、発達ナビ編集部宛にご連絡をいただき、いま、子育てに頑張っている保護者の方々へ伝えたい思いを語ってくださいました。Upload By 発達ナビ編集部「7月24日のあさイチで取り上げて受けていただいた、古山です観ていただいた皆様、本当に本当にありがとうございます井上先生はじめ、スタジオの皆様が沢山協力して下さり、短い時間でしたが、濃い内容になっていたと思います放送後も沢山の反響をいただき驚いています発達障害の子育てをしているママの沢山の方が涙を流しながら共感してくださったメッセージをいただき、勇気を出して良かったと思っています我が子の姿をさらけ出すことに抵抗がなかったわけではありませんその中で取材を受けた理由は、育児に悩んでいるママに伝えたい想いがあったからです毎日毎日、育児に行き詰まり悩んでいるかもしれません発達障害の子育ては育児上級者コースを受講しちゃったと私は捉えていますだから、もう、毎日100点は目指さないでください今日が20点だった日も落ち込んだり自分を責めたりしないで20点だったなら次の日60点以上を目指せばいい一週間で平均60点取れたら、花マルだから、40点が続いたらお休みの日に80点目指せばいいんですそれだって、1人で頑張らないで家族総出でかき集めたっていいんですあ、失敗した、言いすぎたって時は、素直に謝っちゃえばいいんですママが悪かったです、言い直すからさっきの言葉、消しゴムで消して欲しいっていま、悩んでいるママたち毎日、育児に奮闘していると一人で闘っている気持ちになるかもしれません誰にもカミングアウト出来ず誰にも共感してもらえず苦しくて寂しくて辛い毎日を過ごしているかもしれません私もそんな風な光の見えないトンネルの中にいた経験がありますでも少し勇気を出して周りを見てみてくださいあなたには必ず味方がいるはずですあなたは毎日毎日、子供に向き合い悩みながら色々なことを選択していることでしょうもしかしたら世間一般的には間違いかもしれない選択をしていることもあるかもしれません私自身が、子供達に学校以外の場所に行かせることを決めたように…でもあなたが真剣に子供達の幸せを想いながら出した選択ならたとえ、間違いかもしれない選択だとしてもあなたの決めたことなら応援してくれる人がいるはずです私にとっての実母のように味方がいればたとえ一緒に生活していなくても頑張れるチカラになります勇気を出してみてくださいまたもしも味方がみつからなくても覚えていてくださいあなたが真剣に子供達と向き合い孤独と闘いながら子育てしているとき同じ空の下で私も同じように過ごしていますあなたが今日も上手く対応してやれなかったと子供達の寝顔を見ながら涙しているとき同じ空の下で私も同じように涙していますあなたが真剣に子供達の幸せを想いながら頑張っているなら私はあなたの味方ですあなたは一人ではありませんつらいときくるしいとき良かったら私を思い出してくださいあなたとお子様達の幸せを心から願っています」
2017年08月07日先日、NHK 「あさイチ」 で「発達障害の子育て」についての特集が放送された。番組に出演した古山さん一家は、小6の長女と小3の長男が共に発達障害と診断されている。元気にあいさつしてリポーターを出迎える2人の姿は、障害があるとは思えないほどだが、3日間生活に密着しているうちに、「あれ?」と思うことが見えてくる。古山家のお母さんは、子どもとのコミュニケーションに、言葉ではなく筆談でそっと気持ちを伝えたり、タイマーを使って時間をわかりやすく提示するなど、随所に工夫を凝らしていた。また、お母さんは「長女の子育てに悩んだ末、4歳の時に1人で決めて1人で病院に行った」「旦那は診断を受け入れられず、障害者のレッテルを張ったのは私なのか? と悩んだ」とのこと。それから6年、今も整理できない気持ちを抱えながら、夫婦で手探りの子育てが続いているという。じつは筆者にも、8歳になる娘(定型発達)と4歳の息子(自閉症スペクトラム)がいる。決して感情的にならず、子どもの気持ちを受け止めて待つという古山家のお母さんの姿は、とても学ぶところが多かった。■子どもが発達障害と診断。その時、夫は……?しかし、今回の番組を見ていて私が一番気になったのは、子どもでもお母さんでもない。それは、お父さんの存在だ。当事者として出てくるのはほとんどがお母さんで、お母さんの話を通してからも、お父さんの存在があまり見えてこなかったのが気にかかった。個人的には「夫婦や家庭内の葛藤をもっと掘り下げて聞きたい!」と感じた。今回は放送時間の都合上、残念ながら「お父さんの存在」にはあまりフォーカスされていなかったようだ。次回以降のNHK「あさイチ」特集を含む、 NHK「発達障害」プロジェクト で、このテーマが深堀りされることを期待したい。「お父さんの存在」という問題。じつはこれ、療育ママの間では、よく聞く話である。「夫が子どもの障害を認めてくれない」「旦那が『就学先は絶対普通級』と言っている」「旦那が、幼稚園での発表会の様子を見てショックを受けちゃった…」などなど。他に、義理両親や自分の両親から理解してもらえないという話も時々聞く。「義理母に、あなたがちゃんと躾ければなおると言われた」「母親に、『あなたは甘やかしすぎ。このままじゃわがままな子になる』と注意された」などなど。こういう発言にはイラッとくるけれど、百歩譲って、祖父母世代に発達障害の理解は難しいのかもしれない。自分たちが子育てしていた頃には、きっと聞いたことのない話だろう。でも、同居していたらちょっとキツイ問題だけど、別々に住んでいるならうまくわかすこともできるし、子育てにそれほど強い影響もないはずだ。だが、夫の場合はそうはいかない。夫がきちんと向き合ってくれなければ、お母さんのストレスは2倍、いや数倍にも膨れ上がる。日々の小さなことまでフォローする必要はないと思うが、「ここぞ!」という時には、真剣に向き合ってほしい。意見が衝突することもあるかもしれないが、いざという時に一緒に本気で問題に取り組んでくれる同士(夫)がいると感じられれば、それは、お母さんにとって何よりも大きな心の支えになるはずだ。 ■他の子と比べすぎるお母さんと、比べすぎないお父さんまた、一般的に、子育てはお母さんが主役になることが多いので、同世代の友達と関わることも増えるが、お父さんは集団でのわが子の姿を見る機会がほとんどない。なので、年相応の発達状態を把握しにくく、「男の子なんてこんなもんじゃない?」とか「俺も子どもの頃そうだったよ」などと問題を見逃しがちな面がある。でも、これって悪い面もある反面、意外と良い面もあると思うのだ。わが家の場合は、私が他の子と比べてばかりいて、「普通」であることに縛られ、ふさぎ込んでしまっていた時期があった。だが、夫は、他の子と比べることは一切しなかった。「他の子と同じである必要はまったくない」、「比べることには何の意味もない。もし比べるなら、『他の子と』じゃなく『過去の息子と』」「『普通』の定義って何?」と、落ち込んでいる私を容赦なく詰めて(励まして?)くれたものだ。そんな夫に、「あなたは他の子のことを全然知らないからそんなに呑気なの!」と噛みついたこともあった。だが、文句を言いつつも、わが子のことだけをしっかり考えるという夫のブレない姿勢は、どこかで、とても心強い支えになっていたのだ。また、夫と私では子どもについての見方も全然違ったので、多面的に話し合えることもありがたいことだった。お父さんというポジションは、お母さんより、子育てを冷静かつ客観的に見られる位置にいると思う。お父さんには、ぜひそういう強みも活かしてほしいのだ。■「わがまま」と障害の線引きは?最後に、番組を見ていて、もう一つ気になったことがある。「わがまま」と障害の線引きは? ということだ。番組に出演した古山家のお父さんも、「どこまでが発達障害の特性なのか個性なのか切り分けが難しい」と葛藤していたし、スタジオの出演者たちもそのことについては判断つかないようだった。このことは、私も、よく健常児のママから聞かれるのだが、私も答えがわからずに困っている。専門家の井上雅彦さんも、「(線引きは)厳密には難しい」と言っていたので、かなり悩ましいテーマなのだろう。ただ、重要なのは、障害との線引きにこだわることではなく、「どう工夫すれば(生きにくさを感じている)子どもたちの努力が報われるか?周りがどう対応するか?ということの方に目を向けるべき」(井上雅彦さんコメント)とのこと。そう、私たちの目的は、子どもをカテゴリ分けしたり、レッテルを張ることではない。困っている子どもたちが、いかに生きやすくなるかを考えぬくことなのだ。まちとこ出版社N【発達障害についての記事一覧】▼大変だけど、不幸じゃない。発達障害の豊かな世界(全4回)▼「うちの子、発達障害かも!?」と思ったら(全9回)
2017年08月01日我が家の自閉率は100%。でも5人それぞれ特性が違う猫家の家族出典 : 発達ナビの読者の皆さん、はじめまして。猫ママと申します。私はアスペルガー症候群とADHDを併せ持つ発達障害者ですが、我が家の息子3人も同じ障害を持ち、配偶者である猫パパもおそらく同じ障害を持っています。私たち猫一家は自閉症スペクトラムに属する人間が5人集まり、この20年生きて来ました。我が猫家の息子たちには、全員「自閉症スペクトラム+ADHD」という診断名がありますが、子どもたちの担当医は息子たちをこんなふうに表現します。長男は、「高機能自閉症+ADHDの混合型」次男は、「アスペルガー症候群+ADHDの不注意型」三男は、「カナーとの境界線の高機能自閉症+ADHDの多動衝動型」別になんてことない診断名ですが、それぞれの表現には大きな意味があり、子ども達の特性をよく表しているなあ…と思う猫ママ。この表現に象徴されるように、単純な診断名であれば同じ括りのはずの息子たちの印象はまさに3人3様で、その特性もそれぞれで大きく違います。出典 : 長男は、呼んでも呼んでも全く目が合わず、同じことを何時間も続けられる子どもでした。逆に、好きなことに取り組んでいる時に刺激するとパニックになることも珍しくなく、猫ママは毎日長男に振り回されていました。しかし、お箸の持ち方やトイレトレーニングなどの作業的な取得は驚くほど早く、2歳半で「おばけのてんぷら」を全文暗唱する能力を持ち、ひらがなはもちろん、足し算や引き算も入学前にはクリアしていました。なんでもできる…なのにこちらの伝えたいことは全く伝わらないイメージ。幼い頃から多動が強く、足がついた瞬間から走り回って手に負えなかった面もある長男。自転車で川に突っ込んだり、近所の車の屋根に乗って怒鳴りこまれたり…出かけるたびに行方不明になり、パトカーに送られて帰ってきたこともあります。しかし、20歳になった現在の長男は、幼い頃とは別人のように…とてもクールで、自宅にいれば同じ場所に何時間も座って小説を読んでいたりする物静かな男の子になりました。機械を扱うことが好きな彼は、全日制の工業高校を卒業し、一般就職で技術職として就職して今年で3年目。高校時代から現在に至るまで無遅刻無欠席で通っています。出典 : 一方、長男とは対照的にいつもニコニコ笑顔が絶えず、転がしておけばいつの間にか寝ているような「手のかからないイイ子」だった次男くん。彼は、泣くことはほとんどなく、どんなに刺激を与えても反応がほとんどない子どもでした。寝返りもはいはいもせず、1歳までで猫ママが目撃した寝返りは2回だけ。かわいいものが大好きで、大きなぬいぐるみや女の子のおもちゃを欲しがるような子供で、穏やかでのんびり屋さんな印象でした。しかしその反面、3歳から始めた習い事で逸脱した能力を発揮し、現在はその特技を生かして進学した高校で1年生時からチームを引っ張って活躍中。高学年になっても前転も駆け足とびもできず、今でもサッカーボールから逃げることしか頭にない彼が「スポーツ」の分野で全国区での活躍を見せていることに関しては、担当医を含めた療育者全員の長年の謎になっています。明るく朗らかで、クラスのムードメーカーでもある次男。ニックネームを呼ばれては女子に手を振り、級長や委員長を歴任しながら、校内放送で自身のコーナーを持ってお悩み相談なんかを開いてしまう社交的で穏やかな印象ですが、統合失調症を併せ持つ彼の世界観は独特です。芸術面での評価も高く、かわいらしいお花畑で大きな目玉が牙を剥くような独創的な絵を描きます。私立高校に進学したため、障害に対するサポートは珍しくない環境で過ごしており、ルールにこだわる彼らしく、決められたことはこだわりで切り抜けてくれています。出典 : そして、6年生になった三男くんは、いかにも末っ子の天真爛漫な男の子。言葉の発達が遅く、3歳時の発達検査での能力が境界線を下回り、1年生まで言語療法に通いました。感覚過敏が強く、水などの日常生活で発生する匂いでさえ吐いてしまう…。音にも敏感で、炒め物をするときの「ジャー!!」という音でパニックを起こしてしまい、人ごみに出ると耳を塞ぎました。そんな三男くんのお出かけスタイルは、マスクとイヤーマフが必須アイテム。感覚過敏には、長くサポートを必要としました。ものごとに集中することもほとんどなく、幼児向けの番組でも5秒も見ていることができない子どもでしたが、そのわりに模倣は上手で、チラッと見ただけのダンスをフルコンプしたり、バイバイなどの身振りも7ヶ月程度で身に着けてしまう。初めて発達検査を受けた3歳の頃には、文字盤の時計を「形」で理解しており、スケジュールの伝達は時計の絵柄で行え、「見る力」の強い子どもでした。しかし、足し算はできるのに、6歳になる少し前まで自分の年齢が言葉で言えなかったり特定の色だけが言葉にならなかったりと、物事と「言葉」がつながりにくく、ここが発達のポイントになりました。現在は通常級で過ごしており、算数に関しては「文章の意味」をサポートすれば理解は早いようですが、国語は苦痛。書く作業に負担が大きい彼は、書き取り以外の「文字を書く」課題はパソコンでの提出を許可してもらっています。明るく元気で常にどこかが動いている子で、猫パパと長男の影響を大きく受けて、一昨年からバスケットにはまっています。そんな3人の息子に、長年付き合いのある子どもたちの担当医から「恐らくADHDでしょう。只者ではないね笑」と、お墨付きを貰っている猫パパ。そして、某医大で自閉症スペクトラム+ADHDの診断を受けている猫ママ。猫家はそんな5人が集まって暮らしています。「家族全員に障害があってよかった」パパの言葉の真意は……出典 : 人の息子が、全員障害があるとわかった時、猫ママは一時期、言い表せない空虚感に襲われた時期がありました。障害があること…その現実と将来を案じたとき、不安に押しつぶされそうになり、子どもたちが寝た後に泣く日々が続きました。そんな時、猫パパに言われたこと。「3人いて、1人だけ定型だったらそれはそれで辛いよ。何事も少数派というのは辛いものだから。3人なら3人障害児で、俺は良かったと思うよ。」改めて思い返すと、この言葉の意味が良くわかります。今、私は、自分や猫パパ、そして子どもたちのことを「障害者でなければよかったのに」とは思いません。私たち猫家は、5人揃って発達障害者。同じだからこそ、その苦しみに共感し、分かち合い、助け合って生きることができています。でも5人みんな違うからこそ、毎日その違いを発見し、驚き、そして笑い、認め合うことができます。誰かが定型発達だったら、きっとこんなふうではなかったかもしれない。障害があるからおもしろい。だからこそ、できる生き方がある。出典 : 障害があるから辛いこと、障害があるからできないこと。それは沢山あるけれど、私たちは、障害があるから自分であり、それがなかったら別の人間になってしまう。逆に、障害があるからできることもたくさんあります。だからこそできることを大切に…。これからもこのスタイルのまま一家で歩いて…「ゆたかな人生を」それが猫家の目標です。
2017年07月25日意外と知らない社会的な問題について、ジャーナリストの堀潤さんが解説する「堀潤の社会のじかん」。今回のテーマは「発達障害」です。障害も個性。正しい対応を理解すれば、豊かな共存社会に。発達障害とは、自閉症、アスペルガー症候群、学習障害、ADHD(注意欠陥多動性障害)など、脳機能の障害の総称で、「通常低年齢に発現するものとして政令で定めるもの」と定義されています。自閉症は、ある種のものに対して強いこだわりを持つ、相手の気持ちを察するのが困難、ADHDは落ち着きがなく気が散りやすい、衝動を抑えるのが苦手など、それぞれ特徴があります。ただ問題は、それらが障害なのか本人の気質によるものなのかわかりにくいこともあり、周囲の理解がないために集団生活でトラブルが生じるということです。子どもの場合、間違った対応により悪化することもあるので、早期発見・早期治療が大事といわれています。発達障害という概念が日本に入ってきたのは1970年代。2004年に発達障害者支援法ができ、具体的な法整備が始まり、市町村に支援センターが作られました。5年前の文科省の調査によると、知的発達の遅れはないものの、学習面、行動面で著しい困難を有する児童生徒の割合は6.5%。40人学級に2~3人なのだそうです。ただ、発達障害の子を持つお母さんに取材すると、法が整備されても、疎外される風潮がぬぐえないという声が聞かれます。カミングアウトしたとたん、子どもが学校でいじめられたり、近所付き合いが疎遠になったり。「発達障害もひとつの個性と認めてほしい」とその方は言っていました。たとえば、相手が自閉症ならば、「いま、私は怒っているんですよ」とか、はっきりと気持ちを言葉にして伝えるなど、対処の方法を知ればよいのではないでしょうか。エジソンやアインシュタインも発達障害だったといわれ、ある分野で突出した才能を発揮される方も少なくありません。まずは、発達障害に対する正しい知識を持ち、理解を示すことが大事なのではと思います。発達障害に関しては、文科省のHPにも詳しい情報が載っています。また、発達障害の子どものための療育型保育園を運営し、子どもとその親のサポートをしているNPO法人「発達わんぱく会」の活動なども、知識を深める参考になるかもしれません。堀 潤ジャーナリスト。NHKでアナウンサーとして活躍。2012年に市民ニュースサイト「8bitNews」を立ち上げ、その後フリーに。ツイッターは@8bit_HORIJUN※『anan』2017年7月26日号より。イラスト・五月女ケイ子文・黒瀬朋子(by anan編集部)
2017年07月21日7月24日(月)、NHK 「あさイチ」 では、子どもの発達障害についての特集が放送される。「あさイチ」からの事前情報によると、「これまで番組に寄せられたメールやファックスの中でも特に多かった、発達障害の子どもを持つ親の悩みに徹底的に向き合う」とのこと。じつは筆者にも、8歳になる娘(定型発達)と4歳の息子(自閉症スペクトラム)がいる。5月の NHKスペシャルの放送 から、ぜひ次回は、発達障害の子どもや子育て中の親にフォーカスした企画を! と思っていたので放送が楽しみだ。■当事者が語る、発達障害の子育てのリアル今回の放送では、3人(うち2人が発達障害)の子育て真っ最中の家庭を訪問し、発達障害の子育ての大変さや、それに対してどう向き合い、対応しているのかを伺っていくのだそう。子どもが診断された時の気持ちや、夫や祖父母、周囲の反応、子どもの将来への不安など、様々な角度から、当事者たちに発達障害の子育てをリアルに語ってもらうそうだ。さらに、番組では、ペアレントメンターなどの親を支援する仕組みなど、当事者の親に役立つ情報も紹介する予定だという。■娘とは桁違いの大変さだった、息子の子育て筆者のケースをお話しよう。定型発達児(娘)と発達障害児(息子)の両者を育ててみて思ったが、その子育ての大変さは、まさに桁違いだった。もちろん娘だって、成長の過程では、当然大変なこともあった。イライラして頭が沸騰しそうになったことだって、多々ある。でも、娘の怒りや泣きのツボはだいたい理解できたし、コミュニケーションもしっかり通じたので、私の理解の範囲内で対処することができた。ところが、息子の場合はまったく違った。指示が通らない。言葉の説明を理解してくれない。急に走り出したと思ったら、今度はテコでも動かないなど、動きが読めない。保育園ではイベント事が大の苦手で、隙あらば逃走。歯磨きやお医者さんの診察では毎回大暴れ…。何より困ったのは、コミュニケーションが通じないこと。変な言い方だが、言語も思考も違う異星人を相手にしているようで、本当にお手上げ状態であった(4歳過ぎた今では、ずいぶんマシになってくれたが)。■3歳で確定。「だから大変って言ったじゃん!」周囲に相談しても、「男の子なんてそんなもの」「上が女の子で楽だったんだよ~」などと言われ、なかなか理解してもらえなかった。だから、3歳で息子が自閉症スペクトラムと診断された時は、もちろんショックではあったが、同時に、「だから大変って言ったじゃん!」と、周囲にちょっと毒づきたいような気持ちも生まれた。今思うと、周囲は私が思い詰めないように、気を使ってくれていただけだろうに…。不健康な考え方に陥っていた当時は、ひねくれたとらえ方しかできなかった。 ■周囲にガードを張っていのは、私の方?息子は1歳半検診から疑いをかけられていたので、宙ぶらりんの期間が長かった分、私にとって診断は、腹をくくる良いきっかけになった。その頃には、この障害についてしっかり勉強して、一生向き合っていこう! という覚悟もできた。また、さまざまな専門書を読んで勉強するうちに、息子の特徴や対処法が少しずつわかるようになり、突飛な行動にも笑えるような余裕も出てきた。周囲にも、息子のことを説明しやすくなった。仲の良い園ママにはすでに話していたが、診断がおりるまでは、息子のことをクラス全体にどう説明したらいいのかわからなかった。保護者会で息子のことを説明した時はちょっと緊張したが、幸い、クラスのママたちからの理解も得られ、温かい言葉もかけてもらった。私の方も、長年抱えた秘密(?)をやっと言えたような気がしてとてもスッキリした。それまでは、保育園のイベントで息子が突飛な行動をするたびに、「他のお母さんにどう思われてるんだろう…」とビクビクしたり。お迎え時、他の子がお母さんと楽しそうにおしゃべりする姿を見るのが辛くて、園から逃げるように帰ったり。そんな日々の連続だった。だが、今にして思うと、周囲に対して変にガードを張っていたのは私の方で、私は、勝手に傷ついていただけだったのかもしれない。■自分の物差しだけに縛られない。意識して視野を広げることこうして振り返ってみると、一番辛かったのは、息子のことを周囲に話せず、ひとりで抱え込んでいた時期だった。そんな状況を変えてくれたのは、オープンにしたことと、やはり人との関わりであった。家族や両祖父母、療育の先生、取材で会った方々、そして、同じ悩みを持つお母さん仲間と繋がれたことはとても大きかった。発達障害の子育ては、子どもに手がかかる分、心も生活も余裕をなくし、周囲が見えにくくなってしまう。自分の偏った考えだけに浸食されて、それがすべてのように感じてしまいがちだ。でも、自分の物差しだけがすべて、なんてことは決してない。物事は、捉えようによって、どうにでも変わるし、世の中には変わった人(?)がいっぱいいて、いろんな考え方がある。発達障害の子育て中は、特に、自分とは違った考えを持つ人に会ったり、新しい考え方を学んだり、自分の視野を広げるという気持ちを、常に意識してもち続けた方が良いと思うのだ。今回の特集に関して、担当ディレクターからは「外からは『見えにくい障害』と言われる発達障害の子育ての苦労や、当事者のリアルな姿や声を伝えることで、少しでも誤解を解いていきたい」という、力強いメッセージをいただいた。また何か新しい発見があるかもしれないと、私も放送を心待ちにしている。・NHK「あさイチ」 シリーズ発達障害 「“ほかの子と違う?”子育ての悩み」 2017年7月24日(月)放送予定 ※内容は変更になる場合があります文:まちとこ出版社N【発達障害についての連載一覧】大変だけど、不幸じゃない。発達障害の豊かな世界(全4回)「うちの子、発達障害かも!?」と思ったら(全9回)
2017年07月21日放課後等デイサービス。思春期の娘の居場所でした現在、高校3年の発達障害のある娘(広汎性発達障害、自閉症スペクトラム、ADD、LD)は中1の時から放課後等デイサービスを利用しています。放課後等デイサービス(以下、放課後デイ)は、学習支援をメインに行うところや運動を多く取り入れるところ、療育に近い支援を行っているところなど様々な特色がありますが、娘が通っているデイサービスは本人や親の希望を元に、それぞれの子どもの特性を配慮した指導を幅広く行っている施設です。娘はLDの症状があり、私達親子は家庭での学習に限界を感じていました。娘が中1の夏休みから、近所に新教室を開いた放課後デイに通う事にしたのでした。普段学校では知り合えない子たちグチを言い合う仲Upload By 荒木まち子中1の夏休みの前から通っている放課後デイでは、複数の指導の先生達が日々の勉強の方法や、試験前の勉強の仕方、夏休みの課題の取り組み方などを指導してくれました。勉強がマイペースで進められるようフォローしていただいたのと同時に、同世代の子ども同士が友愚痴を言い合う会(通称「グチ会」)にも参加し、学校では普段言えないことも吐き出して、ストレス軽減できる場所として、大いに役立っていたようです。通い始めたきっかけは、初めての定期テストでした。中学のテストは小学校のテストとは全く違い、周りの友達もピリピリし始めます。いつもとは違った雰囲気の中で数日間テストを受け続けるということは、環境の変化に弱い娘にはとても大きなプレッシャーでした。自分で勉強の計画を立てることが出来ない娘は、気持ちばかりが焦ってしまい試験前にはプチパニックを起こしました。テストが終わるとすぐに夏休み。各教科ごとに「夏休みの課題」が出されます。そして夏休み明けには、また定期末テストが控えているという目まぐるしいスケジュール。学校で息が詰まる思いをしていた娘に、居場所をくれたのでした。お腹が痛い…中2のある日突然、学校に行けなくなりましたUpload By 荒木まち子中2になると娘は「学校の友達と自分の違い」や「自分の障害」について色々と考えるようになりました。この頃の娘は皆と同じになりたいと思う強い気持ちと、いくら頑張ってもどうしてもできないことがある自分にとても悩んでいました。自分では気付かないまま無理を重ねるうちに、娘は体調を崩すようになりました。ドクターストップで一時休学…放課後デイは、さあどうする?Upload By 荒木まち子学校に行けなくなったことで、周囲の目が気になりだし、娘はすべてのことに疑心暗鬼になっていました。そんな娘の様子を知った放課後デイの先生は、「好きな教科だけ勉強したらいい」、そして「学校が辛い時には学校を休んで放課後デイで過ごしたらいい」と提案してくれました。それまでの“学校の授業についていくための学習指導”を“苦手な教科の学習ではなく、本人が学びたいと思う教科のみの指導”に変更し、かつ『居場所』としての放課後デイの利用をすすめて下さったのです。当初は学校を休むことに不安が強かった娘ですが、学校の先生や主治医の協力もあり、娘は少しずつ『心や体を休める事の大切さ』を学んでいったのでした。趣味に没頭することで落ち着きを取り戻し、高校生活がスタートして…Upload By 荒木まち子精神的に落ち着くと、娘は自ら英検や漢検、パソコン検定などの資格取得のための学習を希望し始めました。これらの資格取得は娘の自信に、しっかり繋がったようです。高校生になってから娘は放課後デイでピアノや英語、絵画や小説作成など趣味の活動を主に行っていました。でも学年が上がるにつれ同世代のメンバーが徐々に減っていき・同じ趣味を持つ友達がいないこと・悩みを相談できる先輩がいなくなったこと・少・中学生と一緒に活動することに娘は少しずつ違和感を覚え始めました。そして趣味によって自己肯定感が増した反面、大人の言いなりになりたくない!と思うようになってきた娘は、徐々に荒れ始めました。娘に次の波が押し寄せてきたのです。<続く…>
2017年07月19日子どもたちの困りごとの理解に…と見始めたNHKスペシャルの発達障害特集出典 : 月21日(日)に放送されたNHKスペシャルでの特集第1弾「発達障害 ~解明される未知の世界~」。放送からしばらく時間が経ってしまいましたが、以前録画したままになっていたものを、やっと見ることができました。我が家には、9歳の娘、7歳の息子がおり、ともに自閉症スペクトラム障害と診断されています。この番組を見ることで、子供たちへの困りごとの理解に繋がれば…と思い、再生ボタンを押したのですが、見えてきたのはそれだけではありませんでした。スーパーに行くと必ずぐったりとしてしまう息子出典 : 今回の番組の中で私たち家族にとても役に立ったのが、聴覚過敏の方がスーパーやカフェを訪れて、音の聞こえ方を説明してくださっている部分でした。実は、小学1年生の息子も、幼いころからスーパーがとても苦手だったのです。息子と一緒にスーパーに行く機会はとても少ないのですが、何かの折に連れて行くと、数分も経たないうちに疲れ果て、「もう帰りたい」と言い出します。その疲れ方は尋常ではなく、立っているのもやっと。せがまれて抱っこをすると、私の肩に顔を埋め、高熱を出した時のようにぐったりとしているのです。スーパーを出た後も回復するには時間がかかり、その間はじっと顔を伏せて自分の世界に閉じこもってしまいます。以前まで、これは視覚優位の特性から、スーパーの情景や照明が負担になっているものだと、なんとなく考えていました。しかし、番組の中で当事者の方が語ってくれた音の聞こえ方を知り、息子も聴覚過敏の特性から音の情報に圧倒され、苦しんでいたことがわかったのです。番組に出演していらした方と息子がまったく同じように感じているかどうかはわかりません。ですが、ドライヤーや掃除機の音にも耳を塞いでしまうほどの聴覚の過敏性を持つ息子。普通は聞き流してしまうような小さな音であっても、耳に突き刺さるように飛び込んでくることを想像すると、スーパーから帰るときの息子の疲れようにも納得がいくのです。怒りの原因は「脳が上手く指令を出せていない」ことだった!?出典 : そしてもう一つの驚きは、私自身も聴覚過敏を持ち合わせていたことに気づいたことです。本来、脳にはさまざまな音のボリュームをつかさどる司令塔のようなところがあって、その場に応じて必要な音と不要な音を判断し、不要な音に関してはボリュームを下げ、必要な音を聞こえやすくする働きがあるそうです。ところが、自閉症スペクトラムのある人の中には、この司令塔がうまく働かず、自分に向かって目の前で話している相手の声も、後ろのお客さんの話し声も、食器がぶつかる音も、BGMも、すべて同じボリュームで耳に入ってきてしまう人がいるということでした。実際に当事者の方が再現していた喫茶店での音の感じ方は、目の前の席に座って話しかけている人の声でも途切れ途切れにしか聞き取れず、会話を行うことが困難な様子でした。思い返せば、私にも同じような体験がたくさんあったのです。小さなカフェでは集中すれば相手の話が聞き取れるのですが、それ以上の規模の場所になると他の音が耳を覆い尽くしてしまって、ところどころしか聞きたい話を拾えなくなってしまうのです。その“ところどころの話”を拾うのにも結構な労力を費やす必要があり、結果きちんとした会話をするのが難しくなってしまいます。特に子どもの声は笑い声であっても泣き声であっても、大音量で耳に突き刺さってくる感覚があるので、小学生や幼稚園などの集団に遭遇してしまうと、あらゆる方向からあらゆる声がキンキンと耳に攻め込んできて、ただその場にいるだけでもずいぶん我慢をしている状態になっていたのです。そしてその状態で、子どもがふざけて飛び出してきたり、押し合いをしてこちらにぶつかってきたりすると、大人気もなく怒りの感情が湧いてきてしまっていました。自分でも「小さい人間だな......」と思っていたのですが、聴覚過敏で音をコントロールする司令部が弱いのだと分かった今では、とにかくその場から離れることを心がけるようにしました。楽しく盛り上がっている小学生や園児が悪いのではなく、それに怒りを覚えてしまう私が人としておかしいわけでもない。相手を責める必要も、自分を責める必要もない。事実として、自分に関係のない音のボリュームを下げることができないという特性が自らにあることを理解できれば、それに対して工夫をして対策を考えることもできます。そうすれば、余計な怒りを感じる機会がまた一つ減り、穏やかに過ごせる時間が増えるということに気づくことができたのです。「よくわからない」部分を考えることで楽になれることも出典 : わが家はたくさんの特性を持った人間の集まりですので、家族で出かけると全員が「よくわからないけどイライラしている」という状態によく陥ります。家に戻ると、それぞれが自分の殻に閉じこもってしまい、1時間以上誰も口を開かない、ということもよくあります。しかし、発達障害特集を見て以来、この「よくわからないけど」という部分に疲労を回避するためのヒントが隠されているのではないかと思うようになりました。自分では当たり前だと思っている聞こえ方が、実は脳を疲れさせていたり、よくよく考えてみるとこの場所に行くといつもイライラが募るという場所があったり。その原因を突き止めることができれば、疲れ方も大幅に変わってくると思うのです。なので最近では、子どもたちと一緒に「どうしてイライラしたんだろうね?」「どこまでは平気でどの当たりから疲れた?」「あの音がダメだった?」「床が白すぎてまぶしかったかな?」などと原因について具体的に話し合うようにしました。まだ「なんでだろう?」という回答の方が多いですが、「もう一度あのお店に行って疲れるかどうか、疲れるなら原因はなにか確認してみたらどう?」という感じに次のアクションを見据えた返事がかえってくることも増えてきました。「よくわからない」をわからないままにしておくと、いつまでも対処のしようがありません。お子さまがぐったりと疲れてしまったとき、一度ゆっくりとその「わからない」部分を整理してみませんか?そうして、1つずつ原因を突き止め無理なく出かけられる場所が増えれば、子どもたちは必要以上に消耗することなく、いろんなことにチャレンジできる機会が増えるかもしれません。日頃からそう問いかけながら暮らしていくことで、お子さま自身が自分の得手不得手を把握し、快適に過ごせる手段を考える練習にもなるかも知れませんね。
2017年07月16日「知的障害者施設」とはどんな施設?受けられる支援・サービスはどんなものがあるの?出典 : 知的障害のある人を対象とした施設を指す言葉として、「知的障害者施設」という一般名詞がしばしば使われていますが、実は現在、法律や制度上では「知的障害者施設」という公的施設は存在しません。そのため「知的障害者施設」と聞いて、思い浮かべるイメージは人によってばらつきがあります。障害者施設は大きく「通所支援」と「入所支援」の2つに分けられます。前者は、施設に通いながら支援やサービスを受ける施設と、後者は、施設への一定期間の滞在が必要な施設です。また、一つの施設で複数の施設の機能を兼ねている場合もあります。この記事では、知的障害のある方が利用できる施設にはどんなものがあるのか、それぞれの施設で受けられる支援やサービスをご紹介します。まずは、国で障害者に対する支援を定めている法律とのつながりをご紹介します。「障害者総合支援法」の前身である「障害者自立支援法」の施行により、福祉サービスの内容や名称が変わりました。それまでは、障害の種類(身体障害、知的障害、精神障害)ごとに行われていた福祉サービスがひとつの福祉サービスに統一されたのです。現在では、知的障害のある方のみのための施設というものがあるわけではなく、障害者総合支援法で定められている「障害者」の方々のための施設とサービスが運用されています。これらの法律の改正により障害者施設の名称も変更になりましたが、以前からの名称を変更せずに「知的障害者」を施設名に使用している場合もあります。それぞれの施設で受けられるサービスの内容は、障害者総合支援法によって決められています。福祉サービスの詳細や手続きについては以下の記事をご覧ください。また、18歳未満の障害者児童を対象にした支援は児童福祉法によって定められています。児童福祉法では、障害のある子どもたちの健やかな発育を支えるためにさまざまな支援が定められています。どのような施設でどのような福祉サービスが受けられるのか、具体的にご紹介します。子どもを対象とする知的障害者施設出典 : ・児童発達支援センター/児童発達支援事業所主に未就学の障害のある子どもの発達や生活自立などを支援します。ソーシャルスキルトレーニングなどの療育を行う施設や、保育園や幼稚園のように遊びや学びの場としての機能のある施設もあります。お住まいの自治体によっても異なりますが、施設を利用できる条件に障害者手帳の有無は関係ない場合もあります。・放課後等デイサービス放課後等デイサービスとは、児童福祉法の中で定められている障害児通所支援のひとつです。種類は以下の2種類があります。小学生から高校生の就学児童が基本的な対象ですが、支援が継続して必要だと認められた場合は、20歳まで利用することができます。1.学習塾タイプ・・・学習面での支援を中心に行っている事業所もあります。2.預かりタイプ・・・学童保育のように、放課後の子どもに安心して楽しく過ごせる居場所を提供します。最近では、学習支援だけではなく、日常生活で必要になるソーシャルスキルなどを教える施設も増えてきました。放課後等デイサービスの中でも、実際に提供しているサービス内容に差がある場合もあります。お子さんが実際に通うかどうかを検討する際には、ぜひ一緒に施設に足を運んで、子どもの特性に合う施設かどうかを検討しましょう。さまざまな理由で保護が必要な障害児や、日常生活に関する障害児を対象に生活支援を行う施設が障害児入所施設です。知的障害に限らず、身体障害・精神障害・発達障害のある児童が対象になっています。さらに、この対象児童に手帳の有無は関係なく、児童相談所、医師等により療育の必要性が認められた児童が対象になります。障害者児入所施設には、医療型と福祉型の2種類があります。福祉型の施設では、保護、日常生活の指導、知識技能の付与に関する支援が受けることができ、医療型になるとそれらに、医師による治療が加わります。障害児支援について | 厚生労働省障害児入所支援 | 厚生労働省大人を対象とする知的障害者施設出典 : 大人を対象としている知的障害者施設で受けられる支援やサービスは大きく分けて2つです。1つ目は、食事や生活も含め自立した日常生活を送るために必要な訓練をうけることができる「訓練等給付」です。2つ目は施設に入所した際に主に夜間などに日常生活に関する支援や緊急の対応が必要になった場合に対応してもらえる「介護給付」があります。上記の2つの障害者福祉サービスのほかに、市町村にて障害者の方々の生活を支援・サポートを行う事業として、「地域生活支援事業」があります。この事業によって運営されている施設もあり、施設の名称や種類はさまざまです。いくつかのお支援やサービスを同じ施設は多機能型事業所と呼ばれています。施設名称から支援やサービスを判断することは難しいので、現在、自分に必要な支援やサービスを知ることが施設選びには重要になります。参考:厚生労働省サービスの体系・自立訓練(1)生活訓練障害者支援施設もしくは障害福祉サービス事業所などと呼ばれる施設で受けられる支援になります。入所施設を退所された方や、特別支援学校を卒業した方、継続した通所によって生活能力の向上のための支援が必要な方が対象になります。働くための第一歩をこのサービスで受けることが多いようです。簡単な作業やソーシャルスキルの練習などがあります。さらには、「自分らしい生活」を考えるためにヨガやダンスなどのプログラムを提供している施設もあります。自分にあった施設を選ぶことで、本人の自立につながるよりよい支援を受けることにつながります。(2)機能訓練知的障害と身体障害を合併している場合、リハビリなどの支援を受けることができます。それらの理学療法を含みながら本人の自立訓練を行うときには、この機能訓練を利用します。自宅で受けられる訪問サービスもあるので自身の症状にあわせてサービスを選ぶことができます。・地域活動支援センター職業訓練と地域との交流をメインとした施設がこの地域活動センターです。芸術品の作成などの文化的な創造活動などを行っている施設も多くあります。先ほど紹介した自立訓練や下記で紹介する就労支援を目的としているわけでなく、あくまでも相談支援やコミュニケーション活動を目的とした施設になります。・通所型生活介護自宅から通い、日中の入浴・排せつ・食事などの介護といった必要な日常生活上の支援や、創作的活動・生産活動の機会の提供のほか、身体機能や生活能力の向上のために必要な援助を行います。安定した生活を送るため、常時介護などの支援が必要な方を対象としており、障害支援区分が区分3以上(年齢が50歳以上の場合は、障害支援区分が区分2以上)に該当する場合利用できます。・日中一時支援普段、支援やサポートをしている方が何らかの理由で介助を行えなくなった場合に、一時的に預かってくれる支援があります。日中の時間を対象に行っているサービスです。年齢制限もなく、18歳以上でも利用することができます。詳しい受け入れ先の施設に関しては各市町村の窓口にお問い合わせください。参考:厚生労働省地域活動支援センターの概要参考:日中一時支援事業と児童デイサービス|厚生労働省・宿泊型自立訓練宿泊型自立訓練事業所は、障害者総合支援法に定められた自立訓練(生活訓練)の対象者のうち、日中、一般就労やほかの障害福祉サービスを利用している人を対象に、夜間の居住場所を提供します。この中には同じ敷地内の日中活動サービスを利用している人も含まれます。地域での自立した生活を目標に、食事や家事等の日常生活能力を向上するための訓練や、 日常生活に関する相談支援などを受けることができます。日中のサービスと併用すれば、昼夜を通して、自立に必要なさまざまなサポートを受けることができます。利用者ごとに、標準利用期間が決められていて、原則2年間(長期入院者等の場合は3年間)とされています。お住まいの市町村で利用者の現状に合わせて、施設の利用継続が可能かどうかが決められるので更新が必要になります。詳しくはお住まいの市町村の障害者福祉課などの窓口にお問い合わせください。・共同生活援助(グループホーム)日常生活に関する支援や訓練ではなく、入浴・食事などの介護や家事をしてもらいながら生活していく施設としてグループホームがあります。日中は地域の生活介護事業所を利用したり就労したりしながら、主に夜間の生活介護を受け、グループホームで暮らす人が多いようです。宿泊型自立訓練事業所と同じように、お住まいの市町村の障害者福祉課などの窓口にお問い合わせください。・施設入所支援主に夜間の生活介護の支援を行います。暮らしの場の提供、入浴、排せつ、食事、着替えなどの介助、食事の提供、生活等に関する相談、助言、健康管理などを行います。障害者総合支援法では日中の生活介護と別のサービスですが、同じ施設で生活介護、自立訓練または就労移行支援の対象者に対し、日中活動とあわせて、一体的に夜間のサービスを行う事業所が多いようです。・短期入所日中一時支援では日中のみでしたが、短期入所の場合は夜間でも必要な支援や介護を受けることができます。介護者の休息にもなる一面もあるので、様々な事情を踏まえた上で一度短期入所を利用することも可能です。参考:地域相談支援(地域移行支援・地域定着支援)の利用者数実績等 | 厚生労働省知的障害の方が受けられる仕事に関する支援には、本人の特性を生かすために職場に近い環境で自立訓練などを行ったり、職場を見つけ働き始めてからも周りの方からの理解を得るための支援が含まれています。就労支援の対象者は障害のある65歳未満の方で、就労を希望されている方になります。「障害者総合支援法」における就労支援は大きく分けて就労継続と就労移行の2つがあります。働くために必要な知識や能力を養ったり職場体験を行うのが就労移行支援です。就労移行支援を利用したけれども就労に繋がらなかった場合は、就労継続支援サービスを利用することによって、福祉事業所で仕事をすることができます。・就労移行支援事業所就労移行支援の利用者は、就労移行支援事業所に通所してサービスを利用します。そこでは、スタッフとともに個別の支援計画を作成し、働くために必要な知識・能力を身につけるトレーニングや、その人に合った職場探しのサポート、就労後の職場定着までのアフターケアなどを受けることができます。詳しくは以下の記事をご参照ください。・就労継続支援A型/B型事業就労継続支援A型とは支援を受けながら、施設と利用者で雇用契約を福祉作業所と結び働くことを指します。就労継続支援B型は、就労移行支援や就労継続支援A型の利用経験をした上で、年齢や体力の面で雇用が困難な方を対象としたサービスです。施設との雇用契約は結びませんが、生産性にこだわらず自分のペースで働くことができます。サービスの体系|厚生労働省それぞれの「知的障害者施設」に関する申請方法出典 : すべての施設において、市区町村に申請を行うことが必要です。受けたい支援に関する相談や申請に関する相談などを行える窓口として「障害者相談支援センター」が設置されている市区町村もあります。相談者の悩みに応じて支援計画を考えてもらうこともできるので、一人で悩まずに専門家に相談しましょう。障害者児対象の施設は以下の記事をご参照ください。その他の施設は障害者福祉サービスに含まれますので以下の記事をご参照ください。それぞれの「知的障害者施設」にかかる費用出典 : これまで紹介してきた施設は一定の金額を負担すれば、すべての必要な支援を受けることができます。年収によって負担する額は決められています。グループホームなどの特定の施設を利用する場合には負担額が変更になる場合もあるので、自身が利用したい施設とサービスにかかる費用をそれぞれの市町村の窓口で確認することをおすすめします。障害者の利用者負担|厚生労働省障害者福祉:障害児の利用者負担|厚生労働省まとめ出典 : 法律の改正によって変更された施設の名称が、世間一般には浸透していないことも多く、施設の名前から利用できるサービスを想像することが難しいこともあります。子どもの成長に合わせて、利用できる施設も変わりますし、必要になるサービスも変わっていきます。本人に必要な支援は医師からの診断などで知ることができますが、必要な支援を正しく行ってくれる施設を見つけることも重要になります。施設を見つける際には、本人がどんな支援やサービスを必要としているかを考え、お住まいの自治体の福祉担当窓口で受けられる支援・サービスを確認することをおすすめします。支援・サービスごとに施設がまとめられている場合が多いので探す手間が省けることもあるかと思います。実際に必要な支援を受けられる施設を探し、利用するまでの道のりは大変なときもあるかもしれません。周りの方や市町村の窓口にも相談しながらよりよい支援を見つけることにつなげていただければと思います。
2017年07月13日臨床発達心理士とは?出典 : 臨床発達心理士とは、人の発達・成長・加齢に寄り添い、発達心理学等の専門的な知識を生かして健やかな育ちを支援する専門家です。また、赤ちゃんからお年寄り、子育て中の保護者や障害のある人など、幅広い世代、状況の人たちを支援対象としていて、人の生涯発達に関する臨床に携わる幅広い専門家に開かれた民間資格です。人は年齢を重ねていくなかで、自分自身や家族関係、友人関係、学校生活や就職などさまざまな悩みや問題に直面します。それらの問題は環境や時間の経過、またその時々の支援の在り方によっても変化していきます。したがって、生涯発達の中で出会うさまざまな問題の解決にあたっては、まず問題を正しく理解し、それに基づいて適切な支援を行う専門家が求められます。そこで誕生したのが「臨床発達心理士」の資格です。現在、「~心理士」「~カウンセラー」などの名がついた心理士の関連資格は70以上にものぼると言われています。そのうち「臨床」という名称を持つ資格はいくつかありますが、「発達」という名前が付いているのは臨床発達心理士だけです。つまり、さまざまな心理職のうち発達を専門とする資格ともいえるでしょう。参考:一般社団法人臨床発達心理士認定運営機構[編] 臨床発達心理士わかりやすい資格案内[第3版](金子書房.2017)参考:本郷一夫「臨床発達心理士の専門性と果たすべき役割」臨床発達心理士になるには?出典 : 「臨床発達心理士」資格は、学会連合資格「臨床発達心理士」認定運営機構が認定している民間資格です。臨床発達心理士の資格を取得するには、受験資格を満たしたうえで年に1度、9~12月にかけて行われる資格審査に合格しなければいけません。資格取得までの流れとしては、申請書類の購入、申請手続き、一次審査(書類/筆記/業績等)、二次審査(口述審査)、資格認定といったステップがあります。1. 発達心理学を中心とした心理学諸分野の科学的・理論的な知識2. 人間が実際に発達する場に関する社会的・実践的な知識3. 人間の発達をアセスメントし支援する臨床的な知識・技能これらを習得するための基礎となる学問領域は「発達心理学」または「発達心理学隣接諸科学」です。具体的には発達心理学、その他心理学、教育学、保育学、福祉学、小児科学、医学、看護学、リハビリテーション学、発達障害学、保健体育学、体育心理学、スポーツ健康科学、人間社会学、人間学、児童学、応用人間科学、コミュニケーション学、児童教育学社会学などです。2017年度から資格申請制度が新しくなり、申請タイプが5つにまとめられました。1. 発達心理学隣接諸科学の大学院修士課程在学中または終了後3年未満2. 臨床経験が3年以上あり、かつ発達心理学隣接諸科学の大学院を修了している3. 臨床経験が3年以上あり、かつ発達心理学隣接諸科学の学部を卒業している4. 大学や研究機関で研究職をしている5. 公認心理師を取得している変更点としては以下の2つがあげられます。・国家資格である「公認心理師」資格取得者が申請できること。・「公認心理師」資格が心理学系大学卒業以上を前提としていることから、発達心理学諸科学の大学や、短期大学や専門学校を卒業した人が申請できるタイプを廃したこと。ただし、公認心理師資格は2018年度以降習得可能であるため、経過措置として2019年度までは旧制度での申請も受け付けています。資格申請をするにあたって、自分の受けた教育歴と臨床発達支援に関する実践の経験年数に合わせて、以下に示す申請タイプの中から最も自分にあったタイプを適切に選びましょう。また、資格を取得すると、「日本臨床発達心理士会」に入会するとともに全国に20ある支部のどこかに所属することが義務づけられます。さらに、資格の有効期間は5年で資格更新をすることも義務付けられています。資格更新は、試験ではなく資格取得後に十分な研修を積んだか、高い専門性を保持することに努めたかがポイントに換算され審査されます。出典:資格取得までの流れ|一般社団法人臨床発達心理士認定運営機構出典:資格申請新制度のご案内|一般社団法人臨床発達心理士認定運営機構出典:資格更新ガイドライン|一般社団法人臨床発達心理士認定運営機構参考:一般社団法人臨床発達心理士認定運営機構[編]わかりやすい資格案内(金子書房.2017)p18~41臨床発達心理士スーパーバイザーとは、臨床発達心理士になろうとしている人や臨床発達心理士になった人(スーパーバイジー)に対して、スーパービジョン(指導者から教育を受ける過程)を通して支援し、育成する役割を担う人のことです。申請要件は以下の3つになります。1. 臨床発達心理士の有資格者2. 臨床発達心理士資格取得後、5年以上関連する業務・活動を継続3. 臨床発達心理士資格を1回以上更新している出典:臨床発達心理士スーパーバイザーとは|一般社団法人臨床発達心理士認定運営機構臨床発達心理士はどのような人を支援するの?出典 : 臨床発達心理士は赤ちゃんから高齢者までの年代の人を対象として発達を支援する人の資格です。そのため、支援の対象はとても幅広いです。具体的に以下のようなケースが支援の対象となることが多いです。・新生児、乳幼児と保護者・自閉症スペクトラム、知的障害、LD(学習障害)、ADHD(注意欠陥・多動性障害)などの発達障害・知的障害の診断を受けた人・育児不安、虐待、不登校、引きこもりなどの現代的問題を抱える人・「気になる子」、障害の有無/グレーゾーンかの判断に対して悩みを持つ人・社会適応や成人期・老年期の悩みを持つ人臨床発達心理士の活躍の場と具体的な支援出典 : 「臨床発達心理士」資格のある人が特定の職場にいるわけではありません。赤ちゃんから高齢者を対象として発達を支援する人のための資格であることから、資格を持つ人の活躍する場は多岐にわたります。以下では、支援対象の年代別に具体的な職場やどのような仕事をしているのかを紹介していきます。・新生児医療の場:育児不安の解消、愛着形成への援助など・保育所/幼稚園:保育者、保育カウンセラー、特別支援教育コーディネーターとしての業務など・家庭支援センター:親子広場スタッフ、子育て講座の講師、家庭相談スタッフなど・保育巡回相談:主に行政からの委託で保育所、幼稚園を巡回・乳児院/児童養護施設:カウンセリング、セラピーの実施など・保健所/保健センター:妊娠中に両親学級の講師やグループワークのスタッフ、乳幼児健診および発達が気になる子どものフォローなど・小中学校/高校/大学:教師として特別支援教育コーディネーターの業務など・スクールカウンセラー:校内相談業務、保護者支援、校内研修会講師など・教育委員会:教育相談、就職相談等の相談業務、心理検査の実施など・発達支援センター:障害児童やグレーゾーンの子どものアセスメント、相談、療育など・放課後デイサービス:指導員へのコンサルテーション、保護者支援など・学童保育所:指導員へのコンサルテーション、保護者支援など・学童相談室:大学等での学生相談室でのアセスメント・児童相談所:心理判定、相談、指導業務など・特別支援学校:教育のアセスメント、指導評価の実施、保護者支援、教育機関への巡回相談など・特別支援学級/通級指導教室/言葉の教室:教育のアセスメント、教育支援計画作成、校内特別支援コーディネーター業務など・障害者施設/作業所:セラピー、カウンセリング、家族支援など・高齢者施設:カウンセリング、セラピー、心理検査の実施など・企業:企業内相談業務、心理調査など・病院・クリニック(小児科・精神科・診療内科等):患者・保護者へのカウンセリング、患者へのセラピー、心理検査の実施など上記の職種以外に、臨床発達心理士以外の資格を保持しているひとは、職種の幅にも広がりがあります。臨床発達心理士の中には、他の資格や免許も有しながら職務に就いている場合も多いので、純粋に心理職として働いているケースばかりではありません。例えば、家庭裁判所で調査官として仕事をする人、震災時に現場に赴いて支援をする人、研究者として働く人の中にも、臨床発達心理士の資格を生かして仕事をしている人が多くいます。臨床発達心理士の視点を持って、両者の領域で培われた専門性を活かして活動しているのです。しかし、医師免許を有している場合でない限り、臨床発達心理士は医療行為全般(薬を用いた治療や障害かどうかの確定診断をすること)はできません。また医師にかかる場合は、健康保険が適用されますが、臨床心理士に相談する場合は基本的には健康保険が適用されません。参考:一般社団法人臨床発達心理士認定運営機構[編]わかりやすい資格案内[第3版](金子書房.2017)p89.90臨床発達心理士による発達障害に対するアセスメント出典 : 有効な支援を行うためには、その問題を解決するために情報を集め、それをもとにその人にあった支援の方法を計画していく必要があります。これをアセスメントと言います。ここでは、一つの例として発達障害の支援計画を立てるための代表的なアセスメントについて具体的に説明していきます。◇対象の支援ニーズに関する情報収集聞き取りや観察によって生育歴や育児についての情報や、発達の経過、現在の行動や状況など日常生活に関する情報を集め、支援ニーズを知ることから始まります。これは、保護者や保育者、家族などと共同で行うことが望ましいです。◇対象を取り巻く環境に関する情報収集園や施設に通っている場合は、それらの環境に関する情報を収集する必要があります。また、家庭環境や地域環境についての情報の収集も、支援を考える際に重要になっていきます。これらの情報をもとに問題の暫定的な把握をしたうえで、発達状態の情報を収集します。◇知能検査知能検査ではおもにIQ(知能指数)の値を指標とすることが多いです。従来は、精神年齢と生活年齢をもとにもとめる比例IQを用いることが多かったですが、最近では、同年代の平均との隔たりをもとにもとめる偏差IQが中心になってきています。知能検査を行う目的は認知発達の水準を科学的・客観的に評価することで、その人の得意分野、不得意分野を分析することです。知能検査の結果からわかるその人の得意、不得意分野から療法の方向性を決定するために使われます。代表的な知能検査に以下のようなものがあります。・ウェクスラー式知能検査・田中ビネー知能検査◇発達検査発達検査では日常生活や対人関係などにおける子どもの発達基準を数値で表したDQ(発達指数)を算出します。子どもが成長していくには、発達段階に適したアプローチが必要になります。そのため、発達段階を客観的に知るための手段として発達検査は使われます。ただし、発達指数の値だけで子どもの発達状態を判断をすることはありません。あくまでものさしの一つであり、発達検査から分かる能力のバランスや日常生活の様子などを総合して子どもの発達状態を把握します。代表的な発達検査には以下のようなものがあります。・新版K式発達検査・乳幼児精神発達診断法◇スクリーニング検査発達障害に関するスクリーニング検査は、どの精密検査を行うべきかの判断や潜在的な発達遅れや発達障害の可能性を検査するために行われます。スクリーニング検査は、たくさんある発達障害のうち、その子どもに当てはまる可能性がある障害を絞り込むためのものです。スクリーニング検査には網羅性が重要視されるため、正確性はそれほど高くはありません。仮に検査で陽性が出たとしても精密検査するかどうかの判断基準になるだけで、発達障害であることが確定するわけではないということに注意が必要です。スクリーニング検査は乳児健康診査、1歳6ヶ月健康診査、3歳児健康診査などの場でも活用されています。代表的なスクリーニング検査には以下のようなものがあります。・STRAW・M-チャート・ADHD-RS・LDI-R・PARS◇行動観察臨床発達心理士は言葉をかけた時の子どもの反応や、話し方、質問を正しく理解しているのかなどのさまざまな反応をできるだけ詳細に観察して、子どもの特徴やくせを見つけようとします。日常場面における観察だけでなく、臨床発達心理士が状況設定した場面における観察も行うこともあります。上記の生活情報と発達状態の情報をふまえて、それぞれの特徴にあった支援計画を立てていきます。本人に対する支援や保護者への支援だけでなく、施設との連携体制を確立させたり、担当保育者などへの支援計画を立てたりすることもあります。参考:藤崎 真知代「育児・保育現場での発達とその支援 (シリーズ臨床発達心理学) 」(ミネルヴァ書房.2002)p66-70臨床発達心理士と臨床心理士との違いは?出典 : これまでの説明にあるとおり、「臨床発達心理士」とは、赤ちゃんからお年寄り、子育て中の保護者や障害のある人など、幅広い世代、状況の人たちの発達・成長・加齢に寄り添い、人の健やかな育ちを支援する専門家です。それに対して、「臨床心理士」とは、同じ心理系の民間資格ですが、不登校や二次障害、精神障害などのこころの問題をかかえた人に対する心理療法や、こころの問題を予防するための研究にもとづいて、人のこころにアプローチする専門家です。つまり、得意とする支援対象やケースに違いがあります。しかし、どちらの資格も、医療・教育・保健・福祉分野においては活躍の場が同じこともあり、両方の資格を取得することでより広い視点でより広い職域において活躍することができます。支援を受ける人は、一人ひとりの発達の特徴に寄り添った支援をしてくれる専門家を見つけることが大切になってきます。出典:臨床心理士とは|日本臨床心理士資格認定協会臨床発達心理士と公認心理師出典 : いままでは、心理学系の国家資格はありませんでした。そのため近年、心理学系の国家資格をつくろうとする動きがありました。その結果、公認心理師法という法律が平成27年9月9日に成立して、9月16日に公布されました。公認心理師法は、公認心理師という国家資格を定めるとともに、国民の心の健康を増進させていくことを目的にした法律です。公認心理師法の大部分は公布の日から2年以内に施行されることになっています。厚生労働省によれば、平成29年9月15日までに施行される予定になっています。また、第1回国家試験は、平成30年までに実施する予定と発表されています。公認心理師はさまざまな分野にまたがる領域横断的な汎用性のある資格です。それに対して、臨床発達心理士は、臨床発達心理学・発達臨床支援の専門性を有する資格です。公認心理師の資格取得には以下のいずれかに該当する必要があります。1. 「公認心理師になるために必要な科目」を心理学関係の大学と大学院を出て修了する2. 大学で公認心理師になるために必要な科目を修めて卒業し、文部科学省令・厚生労働省令で定める施設で、規定の期間以上心理関係の仕事に従事するまた、公認心理師の職域としては、保健医療、福祉、教育、司法・法務・警察、産業・労働の5領域があげられています。この資格は、医師免許や法曹資格同様に、国家試験に合格し一度取得してしまえば終身その身分が保障されるという考えも多く、臨床発達心理士をはじめとした心理系の取得と併せて資格を取得する人が多くなることが予想されています。参考:公認心理師について|厚生労働省参考:一般社団法人臨床発達心理士認定運営機構[編]わかりやすい資格案内[第3版](金子書房.2017)p10-15まとめ出典 : 臨床発達心理士とは、人の発達・成長・加齢に寄り添い、発達心理学などの専門的な知識を生かして幅広い年代、状況の人たちの健やかな育ちを支援する専門家です。発達支援を必要としている方の困りごとにあった相談先や、サポートを受けられる場の選択肢のひとつとして、臨床発達心理士があるということを知っていただき、よりよい支援を受けられるきっかけになれば幸いです。また、資格制度の変更があったり、新しく公認心理師という国家資格が認定されたりと、手続きや選択が複雑に感じられますが、だからこそ今後より一層発達領域の専門資格として、臨床発達心理士の技能がとても重要な役割を担います。発達支援の仕事をしたいと考えている方が、その専門性の高さを活かしてご活躍されることを願います。
2017年07月12日発達障害の話をするのって、やっぱりハードル高いUpload By かなしろにゃんこ。育児の話などをしていると話の流れで「うちの子は発達障害があるから~」と話すことがあります。息子が発達障害と分かった頃は、私は単なる「発達障害がある子の新米お母さん」でした。知識も浅く自信もなかったため、発達障害のことを伝えるのって難しいな~と思ってわざわざ話すことは少なかったです。まあ、改めてカミングアウトするまでもなく、周りは息子が落ち着きのない子で短気だとわかっているだろうと感じていましたし。何年か経って、私自身も発達障害の知識がある程度身についてきた頃からは、ママ友で仲の良い人には我が子のことは伝えるようにしていました。でも、発達障害の話をしてもほとんど人はウワサ話程度にしか知らないようでした。息子の話を引き合いに出しても、なかなか根本的に理解してもらうところまでには至らないことがほとんどだったのです。暗にわが子を責められているみたい。グチを真摯に受け止めきれず…。Upload By かなしろにゃんこ。ママ友に息子の発達障害の話をしたら、そのエピソードをきいて思い出したのか、突然少し怒り出して無関係な人のグチを言われたことが2回ほどあります。ママ友のお子さんのクラスに落ち着きがなくて、いつも先生を困らせて自由に振るまう男の子がいて大変なんだから!!!という話や、図工の時間に肌に絵具を塗られた!!!という突発的な話までバラエティに富んでいました。軽い世間話のつもりでグチったのでしょうけれど、正直私は「暗にうちの子が怒られているみたいだな~」と感じていました。我が子がそのママさんや先生やお子さんたちに迷惑をかけたわけじゃないのですが、発達障害がある子のグチは何故か我が子の話のように申し訳ない気持ちになってしまいます。迷惑かけられた人の気持ちをまずは受け止めないと、その後きちんと発達障害の話はできません。本当は「うちの子も落ち着きないんだけど…。そんな他人事とも思えないグチをたらたら私に話さないでよ」と言いたいのですが、万年周りに迷惑かけてる子の母は弱いです…何も言えません(笑)。ただ、そのママ友の怒りが落ち着いてきたのを見計らって、誤解されている部分に対して「発達障害って実はそうじゃないのよ~」と伝えたら、「そういうものなんだ、知らなかったー」と溜飲を下げてくれたように見えました。発達障害の話がきっかけで深まる仲もある!Upload By かなしろにゃんこ。あまり発達障害の知識が無い人のグチに対して、怒りを押し殺しさなければならない時はちょっとツライですが、発達障害がある子の親も困っているし、落ち着いて話せば相手に「誤解してた、ちゃんと知らなきゃ」と考えてもらえる機会も作れるんじゃないかとは思っています。発達障害がある子に迷惑かけられたから許せない!と思われたままはイヤですから、まずは許してもらえるように相手の言い分も受け止めていかないとな~、とわかってきたこの頃です。でも我が子に発達障害があると伝えたおかげで、同じ境遇のママ友も何人かできました。そのママ友と話すときはイヤな話題は一つもありません、障害のある子を育てている人はどこか神々しい感じがするんです。いつも明るくて暗い話題やゴシップネタは話さないしステキな人ばかりです、そういう人に近づけるようになりたいと思うのでした。
2017年07月11日「正しい発達障害理解」を追求しつづける当事者たちの戦いUpload By 宇樹義子ここ数年、世間での発達障害についての認知は高まりつづけているように感じる。今年に入るとついにNHKが1年がかりの発達障害特集を開始し、当事者界隈はたいそうざわついた。NHKは「とにかく当事者の声を届けたい」という熱意を前面に出していたので、私も本気になった。特に第1弾のNHKスペシャル生放送時には、ブログで事前の情報記事を用意し、当日はTwitterで実況。後日、感想をやはりブログでまとめた。そもそもテレビが苦手な私が、仕事そっちのけでかじりつくようにテレビを見つめ、仲間といっしょに、放送される内容の正誤やニュアンスについてTwitterで意見する。「えっ? 正しくは『自閉症スペクトラム』だよねえ?」「これは誤解を招くからやめてほしいなあ…」「取り上げられた人たちばかりが当事者なわけではない。もっとこういうケースにもフォーカスを!」タイムライン上をいつ終わるともしれず流れ続ける、「もっと完璧な、正しい発達障害理解を!」という叫び。よく考えたらあたりまえだけど、発達障害者についてであろうがなかろうが、私が100%満足できる番組なんて世の中に存在するわけないんだし、仲間たちにとってもそれはそうだったと思う。私自身も皆も、どこか「どこでやめたらいいのか」「こうする代わりにどうしたらいいのか」をつかめずに困っているようにも思えた。「敵」と戦った日々と、「敵」と手をつなぐまでの日々Upload By 宇樹義子そこからの私は、いま振り返ってもずいぶん必死だったと思う。テレビやネットの発達障害特集の内容に誤りがあれば指摘し、親や当事者の不安につけ込むニセ医学を批判し、成人発達障害当事者の生きづらさを理解してくれない社会にブログで警鐘を鳴らし…そうやって毎日、戦っていた。「自分と同じような思いをする人たちを一人でも減らしたい」。先に述べた思いの通り、これまで発信してきたこと自体は後悔していない。だけど、そうして戦いつづけている間、いつもどこか虚しさのようなものを感じていた。…いまここで告白すると、この記事を書かせてもらっているLITALICO(りたりこ)も大嫌いだった。過去に、LITALICOが運営する就労移行支援「LITALICOワークス」を利用したことがある。結論としては、当時の私が納得できる支援は受けられず、私の心には大きな傷が残った。ここ「LITALICO発達ナビ」でも、サイト立ち上げ当初にライターに立候補したものの断られたことがある。保護者向けのコンテンツが多く、私たち成人発達障害当事者が無視されているような気がして、悔しかった。それで私はますます、LITALICOに負けるものかと、たったひとりでの「戦い」に必死になった。「絶対に発達ナビよりもいいコンテンツを作ってやる。彼らが見捨てた成人当事者の益となるコンテンツを」… そんな気持ちを原動力に猛然と仕事した。だけどそのうち、そんなやりかたも限界だと思った。きっかけは、NHKの発達障害特集だ。Upload By 宇樹義子私が必死にNHKの番組を実況しているとき、当然発達ナビも大きなリソースを注いで実況していた。今や発達ナビは、世間の発達障害者へのイメージを左右するような影響力と、それを実現できる経済的人的資源を持ったメディアに成長していた。発信するコンテンツも、大人の発達障害者をもカバーするようになってきており、質も日々上がってきている。私がずっと望んできた、発達障害者が一般の人たちに広く理解される大きなチャンス。私がこの期に及んで発達ナビに対してそっぽを向き続けるなんて、バカバカしいし不自然じゃないか。もうこんなことはやめよう…ある夜突然、発達ナビの編集長の鈴木さんに連絡をとった。そしていま、こうしてここで書いている。たったひとりで「発達障害者代表」の看板を背負う必要なんてない以上は、「いち成人発達障害当事者としての宇樹義子」のごくごく個人的な物語だ。けれど、私と同じように、自分が「マイノリティ」であることへの意識が大きくなりすぎて、かえって自分を追い詰めたり、苦しめたりしている発達障害当事者は少なくないんじゃないかと思う。だからこそ伝えたい。仮にあなたが発達障害当事者であったとしても、たったひとりで当事者全体を「代表」して戦う必要なんてないんだ、と。社会の発達障害への関心が高まったことはいいことなんだと思う。誰もが生きやすい社会のために当事者として声を上げること、誤った情報に対して批判を加えていくことにも、ある程度の範囲内であれば大きな意味がある。けれど、最近までの私がそうだったように、自分自身がその狂乱に飲み込まれ、もしかすると手をつなぐことができるかもしれなかった人たちを「敵」として、24時間戦闘状態に陥ってしまっては本末転倒だ。Upload By 宇樹義子誰かが何かの属性の看板を背負い、「お前はここが違うから仲間じゃない」「お前にわかってもらえるはずがない」などと声を枯らして叫びつづけることは、皮肉にもコミュニティをバラバラにしていってしまうことがある。なぜって私たちは、何かの属性を持つ者たちである前に、バラバラな違った個人の集まりだから。戦闘的になって違った属性を指摘しつづけていったら、最後には誰も残らなくなってしまう。たまねぎの「皮」を剥き続けたら最後には消えてしまうのと同じだ。言葉づかいの丁寧さの問題じゃない。発信に向かうときの心の態度の問題だ。私はこの点で、長いこと間違ったことをしていた、と思う。言葉は丁寧なものの、私は間違いなく「看板を背負って戦っていた」からだ。私がこよなく尊敬する精神科医・臨床心理士であり、日本におけるPTSD治療の第一人者である白川美也子先生の本がある。この本ではまず、トラウマを抱えた人は「3つのF」と呼ばれる症状を示すようになると説明される。・Fight(戦う)・Flight(逃げる)・Freeze(固まる)Fight(戦う)の項ではこんな説明がされている。私は上のくだりを読んだとき、ああ、これは私と仲間たちにそっくりだと思い、ひとしきり涙が止められなかった。そして、そのあとに出てくるこんなメッセージに、とても楽になった。やがて自分の苦しさをそっちのけにして、同じような被害に遭う人をなくすため、果敢に立ち上がり、戦い始めます。その戦いによって自分の身近にいる人を暴力や虐待から守ることができたとしても、世界にはたくさんの傷ついた女性や子どもたちがいて苦しんでいることに気づきます。戦いには終わりがありません。大切なことは、被害者にも加害者にも、そしてそれを傍観する人にもならない、三角形の3つの角の真ん中にしっかりと立つことなんだよ回復の過程において、あなたが誰かに過去のトラウマ体験を語ることだけが、誰かを救うメッセージになるのではありません。それを生き延びたあなたの身体の動きや声や、あなたの創る詩や奏でる音楽や描く絵が、人に何かを伝えます。あなたが生きているだけで本当に十分なのです。私たち発達障害者は、生きてきた中でたぶん、人よりも少し多くの傷を抱えてきた。だから、つい戦いに身を投じてしまうこともある。もちろん、それは本当に切実な情熱と願いのこもった行動だ。だけど、もしそれがつらいとか、虚しいとか、疲れたとか思う瞬間があるのなら… ときどき、ゴールがあまりに遠く感じられたり、ますますゴールから遠ざかっていくような気がするのなら…私は、あなたは、重たい戦士の鎧を脱いでもいいはずだ。Upload By 宇樹義子そして、どこかに傷を抱え、それをなんとか乗りこなしている「ひとりの人間」として、もっと自由に、軽やかに生きたとき、きっといつか、私やあなたが、そして仲間たちが願った「ゴール」が近づいてくるんだと思う。
2017年07月10日学習障害(LD)とは?主な症状と3つの種類出典 : 学習障害とは、全般的な知的発達に遅れがないものの、「聞く」「話す」「読む」「書く」「計算・推論する」能力のうちいずれかまたは複数のものの習得・使用に著しい困難を示す発達障害のことです。英語ではLearning Disabilityと呼ばれ、LDと略されることも多いです。文部科学省は、学習障害を以下のように定義しています。基本的には全般的な知的発達に遅れはないが、聞く、話す、読む、書く、計算する又は推論する能力のうち特定のものの習得と使用に著しい困難を示す様々な状態を指すものである。学習障害は、その原因として、中枢神経系に何らかの機能障害があると推定されるが、視覚障害、聴覚障害、知的障害、情緒障害などの障害や、環境的な要因が直接の原因となるものではない。学習障害は、基本的には知的発達に遅れが見られない発達障害であるため、知的障害とは全く別の障害となります。また、医学的な学習障害の診断基準と、文部科学省が定める学習障害の定義の間には、若干の違いがあります。ここでは、文部科学省の定義に近い、世界保健機関(WHO)の『ICD-10』(『国際疾病分類』第10版)とアメリカ精神医学会の『DSM-Ⅳ-TR』(『精神疾患の診断・統計マニュアル』第4版テキスト改訂版)での3つの分類に従って、学習障害の特徴を解説します。なお、アメリカ精神医学会の新しい診断基準である『DSM-5』では、これら3つの分類はすべて限局性学習症/限局性学習障害という診断名に統合されています。こちらは後ほど詳しく説明します。学習障害の種類は主に■読字障害(ディスレクシア)・・・読みの困難■書字表出障害(ディスグラフィア)・・・書きの困難■算数障害(ディスカリキュリア)・・・算数、推論の困難の3つに分類されます。苦手分野以外の知的能力に問題が見られないことが多いため、学習障害は発達障害の中でも判断が難しい種類の障害でもあります。読み書きや計算能力は、ほとんどの子どもが就学前には学んでいません。そのため、本格的な学習に入るまで判断が難しく、障害に気づかないことも少なくありません。中にはその人の学習困難が発達障害によるものではなく単なる苦手分野だと判断され、大人になるまで気づかれないことも多くあります。学習障害の人は「聞く」「話す」「読む」「書く」「計算する」という5つの能力の全てに必ず困難があるというわけではなく、一部の能力だけに困難がある場合が多いです。読む能力はあっても書くのが苦手、他の教科は問題ないのに数学だけは理解ができないなど、ある特定分野に偏りが見られます。また、同じ「読む」ことの障害でも、ひらがなは問題なくても漢字が苦手など、その状態はさまざまです。一方、読字と書字の障害など、複数が併せて現れる場合も多く見られます。種類別の学習障害の特徴出典 : 学習障害で大きく分類される「読字障害」「書字障害」「算数障害」の3つの学習障害の特徴を紹介していきます。それぞれの学習障害の人に見られる主な特徴を紹介しますが、学習障害の特徴は人それぞれであり、同じ障害に分類されていても、その中の全ての特徴があてはまるわけではありません。また、他の発達障害がある人は、その特徴が合わさって出ることもあります。Upload By 発達障害のキホン読む能力に困難がある読字障害は、学習障害と診断された人の中で一番多く見られる症状であり、別名でディスレクシア(dyslexia)と呼びます。欧米では約10~20%の人がこの症状があると言われています。ディスレクシアは、ギリシャ語で「読むのが困難」という意味です。読字障害があると、結果として文字を書くことにも困難を感じる場合が多いため、読み書き障害と呼ばれることもあります。読字障害の人の中には「見た文字を音にするのが苦手」という症状があります。その原因は、情報を伝達し処理する脳の機能がスムーズに働いていないことだと考えられています。文字の見え方にも特徴があり、文字がぼやける、黒いかたまりになっている、逆さまに見える、図形に見えるなど違った見え方になってしまい、認知の仕方が異なります。また音韻認識が弱く、ひらがなやカタカナのひとつずつは理解していても、漢字(単語)になると理解できなくなってしまうこともあります。漢字の音読みと訓読みの使い分けができなかったり、単語や文節の途中で区切った読み方をするなど、変わった読み方をしてしまいます。【読字障害の特徴】・形態の似た字である「わ」と「ね」、「シ」と「ツ」などを理解できない・小さい文字「っ」「ゃ」「ょ」を認識できない・文章を読んでいると、どこを読んでいるのかわからなくなる・飛ばし読み、適当読みをするなど文章をスムーズに読めず、読み方に特徴がある・音声にするなど耳から情報は理解しやすい場合が多いなど英語圏ではディスレクシアの発現率は10%から20%といわれているが、日本ではディスレクシア単独の調査がない。(障害保健福祉研究情報システム) By 発達障害のキホン「文字が書けない」「書いてある文字を写せない」などの書く能力に困難がある学習障害を書字障害・ディスグラフィア(dysgraphia)と呼びます。文字が読めるのにもかかわらず書けない場合も書字障害に分類されます。書字障害の人は、自分では文字を正確に書いているつもりなのに鏡文字になってしまうなど、文字を書くという動作が苦手です。原因としては、脳内で身体に指示を出し手を動かすという伝達機能がうまくいっていないからだという説が有力です。そのため、文字が書けなかったり、文字を書く速度が遅くなってしまうのです。【書字障害の特徴】・鏡文字や雰囲気で「勝手文字」を書く・誤字脱字や書き順の間違いが多い・黒板やプリントの字が書き写せない、時間がかかる・漢字が苦手で、覚えられない・文字の形や大きさがバラバラになったり、マス目からはみ出したりするなどUpload By 発達障害のキホン数字や数式の扱いや、考えて答えにたどり着く推論が苦手な学習障害を算数障害・ディスカリキュリア(dyscalculia)と呼びます。数字に関する能力にのみ障害がある人が多いため、算数の学習を始めてから発見される場合がほとんどです。「1」「2」「3」などの基本的な数字や、「x」「+」などの計算式で使う記号を認識することに困難をもっています。算数障害の人は数字そのものの概念、規則性、推論が必要な図形の領域を認識するのが難しいです。また、視覚認知の機能が弱く、数字を揃えて書く、バランスを考える、文字間の距離感を取るなどが苦手です。そのため、筆算を書く際に桁がずれることも多くなります。【算数障害の特徴】・簡単な数字、記号を理解しにくい・繰り上げ、繰り下げができない・数の大きい、小さいがよく分からない・文章問題が苦手、理解できない・図形やグラフが苦手、理解できないなど年齢別に見た学習障害の症状の現れ方出典 : 学習障害は、本格的な学習に入る小学生頃まで判断が難しい障害です。子どもの成長速度は人それぞれ。「なかなか歩かない」「全然しゃべらない」といった子どもの行動の一つ一つは気になりますが、ただ成長がゆっくりである可能性もあります。学習障害の人の中にはADHDや自閉症などの他の発達障害の合併症状を持っている人も多く、その場合は、乳幼児期に特徴があらわれる場合もありますが、合併が無い場合は、この時期にはっきりと判断をするのは難しいと言えます。ある程度知能が育ち、行動に特徴が現れやすい学習を始める小学生頃にならないと、学習障害とは判断しにくいのです。特に乳児期は学習障害の特徴は見分けにくいといえます。他の発達障害の特徴として、抱っこされるのを嫌がる、視線を合わせない、言葉を真似する行為が見られないなどの症状がみられるなど、他の発達障害の症状を目安にし、学習障害の確実な診断は学習を始める年齢以降にするしかありません。以下では年齢別に見られる学習障害の特徴を紹介します。幼児期の目安もあくまで他の発達障害を合併している場合です。出典 : 就学前なので学習障害の特徴はまだ現れにくいですが、この頃から子どもは言葉を話し始めたり、学習を始めます。少しずつ学習障害の子の多くが持つ特徴が見えてきます。【幼児の学習障害の特徴】・言葉、文字を覚えるのが遅い・折り紙が折れない、ボタンがとめられないなど手先が不器用・身体の使い方がぎこちないなど出典 : 小学生になると本格的に学習が始まります。勉強において特定の科目が苦手な場合や読み書きに困難がある場合、学習障害の可能性があります。同年代の子どもと比べて学習の習得が著しく遅い場合、学校の先生や専門機関で相談してみることをおすすめします。ここからは就学期に入るため、「読字障害」、「書字障害」、「算数障害」ごとに特徴を分けて書いていきます。【小学生の学習障害の特徴】・授業を真面目に聞いていても勉強が苦手、ついていけないなど■読字障害・ひらがな・漢字が読めない・たどり読み・推測読みになってしまう・行を飛ばして読んでしまう・文章を読むのを嫌がるなど■書字障害・うまく文字を書くことができない(線を抜かしたり、鏡文字を書いてしまう)・板書ができない、時間がかかる・行やマス目からのはみ出しが大きい・文字を書くのを嫌がるなど■算数障害・数が数えられない、とばして数えてしまう・時計が読めない、時間が分からない・計算ができない・筆算をするときに数字がずれて間違えてしまう・計算を嫌がるなど出典 : 中高生になるとはっきりと学習能力の偏りが見えてきます。何かの能力が極端に低い場合には、単なるなまけや得意・不得意だとは判断せず、学習障害である可能性も考えましょう。英語の学習が始まると、国語にはあまり不自由しなかった子どもも、英単語の読み書きなどに極端に困難さを感じる場合もあります。【中高生の学習障害の特徴】■読字障害・小学生で習うような漢字であっても読めない場合がある・英語の単語が読めないなど■書字障害・卒業作文などの長い文章がかけない・英単語が書けないなど■算数障害・計算はできるが、文章題が解けない・図形関連の問題が解けないなどこれらの特徴も、発達障害の合併症として現れることもあります。出典 : 最近では、大人になってから学習障害だと診断される人も少なくありません。もし大人になってから様々な学習困難に直面したら、学生時代や子どもの頃を振り返ってみて、学習障害と疑われる特徴があった場合には、一度、発達障害者支援センターなど、専門機関に相談しましょう。また、学習障害以外の発達障害との合併症を持っている可能性も考えられます。早めに診断を受けに行きましょう。【成人の学習障害の特徴】・上司の注意を聞いてもうまく理解できず同じ失敗をする・電話で聞きながらメモを取れない・話がうまくまとめられず企画案を作成できない・集団で指示されるのが苦手で会議で辛い思いをする・レポートが書けない・お釣りの計算や金銭管理ができないなど学習障害の特徴チェックUpload By 発達障害のキホン学習障害を早期発見することで子どものやる気の低下、自信喪失などの二次障害を避けることができます。参考までに「読字障害」「書字障害」「算数障害」ごとの特徴を以下に記載します。特徴が当てはまるかチェックをしてみてください。チェックする大切なポイントは「年齢に見合った動きができているか」です。年齢相応の習得の度合いと比較してチェックしましょう。また、これはあくまで学習障害の可能性があるかどうかという参考程度のチェックリストであることに注意してください。多く当てはまる場合は、診断を受けてみることをおすすめします。診断は子育て支援センターなどの専門機関の窓口に相談した上、専門医師によるものを受けてください。■読字障害□漢字の訓読みと音読みを使い分けるのを苦手とするように見受けられる。□単語の単位をつかむのを苦手とする。一文字ずつ読んでしまい、まとまりのない読み方をすることが多い。□文字や行を飛ばして読むことが多い。□特殊音節(拗音・長音・促音)であらわされる文字を発音できない。■書字障害□漢字を書く際に、鏡文字を書くことが多い。□文字を書く際に、余分に線や点を書いてしまうことが多い。□年相応の漢字を書くことができないことが多い。□間違った助詞を使ってしまうことが多い。□文字の大きさや形がバラバラ・マス目からはみ出る。■読字・書字障害の合併(読み書き障害)□上記の読字・書字障害のチェック項目に当てはまるものが多い□ひらがなの読み書きを苦手とする。例えば「ね」「れ」「わ」が一緒に見えてしまうように見受けられる。□カタカナの読み書きを苦手とする。例えば「ソ」「ン」、「シ」「ツ」が一緒に見えてしまうように見受けられる。□特殊音節(拗音・長音・促音)の読み書きを苦手とすることが多い。■算数障害□数を覚えるのに時間がかかることが多い。□数の大小の概念を理解できていないように見受けられる。□九九を習得している年齢なのにも関わらず、九九を覚えられていない。九九を暗記しても計算に応用できない。□繰り上がり繰り下がりの筆算ができないことが多い。学習障害の診断方法・基準出典 : 医療機関での診断は、アメリカ精神医学会の『DSM-5』(『精神疾患の診断・統計マニュアル』第5版)や、世界保健機関(WHO)の『ICD-10』(『国際疾病分類』第10版)による診断基準に基づいて診断されます。医療機関では脳の異常はないか、知的な部分に障害がないか、困難な能力に偏りがないかを調べます。『DSM-5』の1つ古いバージョンである『DSM-IV-TR』では学習障害は「読字障害」「書字表出障害」「算数障害」の3つに分類され診断されていました。最新版である『DSM-5』では、すべて「限局性学習症・限局性学習障害」とひとくくりにされ診断されます。以下が『DSM-5』の診断基準です。A.学習や学業的技能の使用に困難があり、その困難を対象とした介入が提供されているにもかかわらず、以下の症状の少なくとも1つが存在し、少なくとも6ヶ月間持続していることで明らかになる:(1)不的確または速度が遅く、努力を要する読字(例:単語を間違ってまたゆっくりとためらいがちに音読する、しばしば言葉を当てずっぽうに言う、言葉を発音することの困難さをもつ)(2)読んでいるものの意味を理解することの困難さ(例:文章を正確に読む場合があるが、読んでいるもののつながり、関係、意味するもの、またはより深い意味を理解していないかもしれない)(3)綴字の困難さ(例:母音や子因を付け加えたり、入れ忘れたり、置き換えたりするかもしれない)(4)書字表出の困難さ(例:文章の中で複数の文法または句読点の間違いをする、段落のまとめ方が下手、思考の書字表出に明確さがない)(5)数字の概念、数値、または計算を習得することの困難さ(例:数字、その大小、および関係の理解に乏しい、1桁の足し算を行うのに同級生がやるように数字的事実を思い浮かべるのではなく指を折って数える、算術計算の途中で迷ってしまい方法を変更するかもしれない)(6) 数学的推論の困難さ(例:定量的問題を解くために、数学的概念、数学的事実、または数学的方法を適用することが非常に困難である)B.欠陥のある学業的技能は、その人の暦年齢に期待されるよりも、著明にかつ定量的に低く、学業または職業遂行能力、または日常生活活動に意味のある障害を引き起こしており、個別施行の標準化された到達尺度および総合的な臨床消化で確認されている。17歳以上の人においては、確認された学習困難の経歴は標準化された評価の代わりにしてよいかもしれない。C.学習困難は学齢期に始まるが、欠陥のある学業的技能に対する要求が、その人の限られた能力を超えるまでは完全には明らかにはならないかもしれない(例:時間制限のある試験、厳しい締め切り期間内に長く複雑な報告書を読んだり書いたりすること、過度に思い学業的負荷)。D.学習困難は知的能力障害群、非矯正視力または聴力、他の精神または精神疾患、心理社会的逆境、学業的指導に用いる言語の習熟度不足、または不適切な教育的指導によってはうまく説明されない。これらの判断基準をもとに心理専門家など複数の専門家が慎重に判断してくれます。この診断が出た上で、以下の基準から「読字障害」「書字障害」「算数障害」のうち、どれが強いかが特定されます。315.00(F81.0) 読字の障害を伴う:読字の正確さ読字の速度または流暢性読解力315.2(F81.81) 書字表出の障害を伴う:綴字の困難さ文法と句読点の正確さ書字表出の明確さまたは構成力315.1(F81.2) 算数の障害を伴う:数の感覚数学的事実の記憶計算の正確さまたは流暢性数学的数理の正確さ診断の流れは、医療機関などによっても異なりますが、まずは問診で現在の症状や困りごと、赤ちゃんの時から今までの生育・養育歴、既往症や家族歴などを調べていきます。脳波検査、頭部のCT、MRIなどでてんかんや脳の器質的な病気といった異常がないかを検査します。そして知能検査や認知能力検査などの心理検査を行います。知能検査では「WISC-Ⅳ」が代表的です。「WISC-Ⅳ」では本人のもつIQ水準をチェックし、言語理解、知覚推理などを検査します。(3歳10ヶ月〜7歳1ヶ月の幼児の場合は「WPPSI」、5歳から16歳11ヶ月の子どもは「WISC」、16歳以上の成人の場合は「WAIS」という知的検査を受けることによって検査結果がでます。)認知能力検査では日常生活や学校で習得できた知識や情報を認知的に処理する能力を調べ、認知処理能力と習得度を比較できる「KABC-Ⅱ」などを行います。これら様々な情報を元に、総合的に学習障害であるかを判断するのです。また、こうした過程でADHDや高機能広汎性発達障害などが合併していないかも確認します。学習障害の疑いを感じたらどうすればいい?Upload By 発達障害のキホン学習障害は専門家でさえも判断するのが難しい障害です。そのため、チェック項目で当てはまる症状が多いからと言って個人で決めつけず、まずは専門家に相談をしてみましょう。就学児であれば担任の先生に相談してみても構いません。学校へ相談すると学校での生活の様子などを配慮し、それらを考慮した専門家を紹介してくれます。また、障害だとわかりにくいため、周りから理解も得られず、本人がつらい思いをしていることも多いと言えます。できるだけ早期に、小さい頃から学習障害に対する教育方法や療育などの対処法を始めると、その後の発育に大きな違いがみられます。はじめの一歩を踏み出すのには勇気がいるかと思いますが、一歩を踏み出すことによって色々な悩みが軽減されます。学習障害ではないと診断された場合でも、困難を乗り越えるための様々なアドバイスをしてもらえることが多いので、一度相談してみることをおすすめします。診断を受ける前に、まずは専門期間で相談を出典 : 発達障害なのかな、と疑問を持った場合、いきなり専門の医療機関に行くのは難しいので、まずは身近な専門機関の相談窓口で相談するようにしましょう。発達障害の疑いがある場合には専門医を紹介してくれます。子どもか大人かによって、行くべき専門機関が違うので、以下を参考にしてみてください。【子どもの場合】・保健センター・子育て支援センター・児童発達支援事業所・発達障害者支援センターなど【大人の場合】・発達障害者支援センター・障害者就業・生活支援センター・相談支援事業所など知能検査や発達検査は児童相談所などで無料で受けられる場合もありますし、障害について相談することも可能です。その他、発達障害者支援センターで障害についての相談ができます。自宅の近くに相談機関が場合には、電話での相談にものってくれることもあります。以下は小児神経学会が発表している、発達障害診療医師の名簿です。この他にも、児童精神科医師や診断のできる小児科医師もいます。日本小児神経学会 「発達障害診療医師名簿」まとめ出典 : 学習障害は軽度、重度によって発見時期が異なります。さらに、軽度な場合は本人や周りが気づかずに成長する場合も少なくはありません。知能には問題がなく、学習面である「聞く」「話す」「読む」「書く」「計算する」といったある特定の能力の困難を「苦手な分野」と判断されてしまうため、発見しづらい障害なのです。また、学習障害の症状は人それぞれです。学習障害のある人の中でも文章を構成するのが得意な人もいれば、算数が得意な人もいます。学習障害の早期発見は子どもの健やかな未来を創り上げます。そのためにもお子さんのサインを見逃さず、成長過程を優しく見守っていきましょう。
2017年07月08日いつしか息子の障害のことを隠すようになっていた私出典 : 発達障害児を育てていると、外野からのさまざまな意見に心をえぐられてしまうことが多々あります。往々にして語られる、特別支援学級と通常学級の選択に関する意見や、薬の服用に関する意見などもそうです。答えが見えないなかで、必死に選んだ選択肢。それでも、その選択をした自分を100%信じることができないからこそ、他者の意見が辛く感じるのでしょう。そうかといえば、他人事のような励ましの言葉も心に傷をもたらします。息子が発達障害だと診断を受けてから、「全然そんな風に見えない」「普通の子じゃん」「え~、全然そんなことないのに可哀想」「天才児ってこと??」というような言葉に、何度辛い思いをしたか分かりません。私は段々と、カミングアウトすることすら億劫になり、どこに行っても息子の障害のことは隠すようになっていました。息子が発達障害であることを父に知られた入学式出典 : 息子の障害を隠す。それは私の父に対しても、例外ではありませんでした。父はADHDの特性を強く持ち、今も落ち着きのなさとお喋りの止まらなさで、家族に毎日叱られています。そんな父が、息子の発達障害に気づいたのは小学校の入学式のことでした。先生がずっと息子の隣についている様子や、他の子と違った扱いを受けていることを見て、父自ら「アスペルガー症候群なのか?」と私に問いかけました。これを機に、息子が特別支援学級に在籍していることについても、私は父にカミングアウトしました。そして父は、否定も肯定もせず話を聞いてくれたのです。父の「否定も肯定もしない」という態度は、本当に救われました。父は「そうだったんだね」とただ真実を受け止め、「診断をもらっていて良かったじゃないか」と私たちの方向性を認めてくれたのでした。そして、入学式の後、私のもとに1通のメールが父から届きます。そのメッセージには、自分の特性ゆえに経験したことが、最初に綴られていました。父のメッセージに書かれていたこと出典 : 「僕の経験からの話ですが、僕は年を取れば取るほどどんどん幸せになっていきました。周囲に合わせられずに叱られていた幼少期が一番つらかった。年を取って、自分に合った友人を選び、自分を認めてくれる先生が現れ、自分に合った仕事を選ぶ喜びを知りました。大丈夫、僕と同じで、息子くんは後咲きなんだと思います。これから幸せな未来しか待っていないと信じて、子育てをしてください。あなたが思っているより人生は長いです。そう思って、希望を持って子育てに取り組みなさい。」私にとってこのメッセージは、これまで言われたどんな言葉よりも嬉しく、涙をおさえることができませんでした。息子を育てていて辛いのは、息子の将来の姿が見えないことでした。「将来自立できるよう」という言葉ばかりを周囲に畳みかけられていましたが、自立とは具体的にどのような姿を指すのか、想像することができなかったのです。ですが、父のメッセージを読んで分かったのです。自立とは、息子が幸せに楽しく暮らすことなのだと。結婚しているとかしていないとか、仕事に就いているとかいないとか、そんな小さなことは関係なく、息子が「僕は今とても幸せです」と言っているかどうかだったのです。この父のメッセージを読んで以来、幸せな大人になった息子をイメージしながら育児に取り組むことができるようになり、なんだか肩の力が抜けたのでした。人生は長い。息子は年を重ねれば重ねるほどきっと幸せになっていく。そう信じて育てることの大切さを、私は父に教えてもらった気がします。
2017年07月06日息子が診断を受けた当時と「今」、時代は着実に変わっている出典 : 次男が診断を受けた3年前、私は発達障害についてほぼ無知でした。周囲でその言葉を聞くこともほとんどなく、取り寄せる専門の書籍を漁るしかないような状態。それが最近はテレビで「発達障害」という言葉を聞く機会がどんどん増えています。書店にも大人向けや支援者向け、子供向け、さまざまな書籍が増え、ネット上でも色々な取り組みが始まり、情報を得やすくなったなぁと感じています。先日からNHKでも年間を通した「発達障害プロジェクト」がスタートし、「NHKスペシャル」や「あさイチ」など色々な番組で取り上げられ始めました。言葉すら知られていなかった頃と今と、そしてそれよりもっと前の、配慮どころか診断につながることすら難しかった過去と、発達障害の当事者や保護者を取り巻く環境はここ数年でどんどん、目まぐるしいほどに変わっていっているのだろうと思います。NHKの特集を見て湧いた、相反する2つの感情出典 : スペシャルの中で流れたADHDやLDの子の感じ方を表現した再現VTRに、あぁこんな風に当事者の困難を可視化する方法があるんだ、と感心しました。色々な手法やスタジオの当事者の方の声から、これまであまり表に出ることのなかった当事者の抱えている困難が語られていく…妖怪「ペラペラノドン」に支配されちゃうんだと語っていた男の子は、どこか次男に似ていました。言葉が溢れてきてどんどん喋ってしまう彼の映像を見ながら、次男は「僕とそっくりだ」と笑っていました。同じ、そっくり、そうそうこんな感じ…番組を見ながら次男の言動に近いものが見えるとそう感じて、どこか安心したり、そこからヒントを得られたらと画面に食い入る自分がいました。でも、同時に違う、ぜんぜん違う、そんなんじゃない…という全く逆の感情がわく場面も。「違う」「うちはそうじゃない」同じ診断名でも、“ピタリ賞”の事例にはなかなか出会えない出典 : 「アスペルガーの●●さん」と紹介されている方の困難は、同じような診断名がついている次男のそれとは全く違っている、ということはよくあります。例えば幼少期の自閉症スペクトラムの子によくある特徴とされている・目線を合わせない・人の話したことをオウム返しする・呼んでも反応しない・言葉を話すのが他の子と比べて遅い・予定が狂うと混乱する・強いこだわりを持つなどは、うちの次男にはほぼありませんでした。(それが診断に至るのが遅れた要因でもあったわけですが)テレビで紹介されるADHDの特徴については割と似てるなぁと感じることはありますが、併発している事例はあまり紹介されていませんし、次男の抱えている困難をそのまま表現しているものに出会うことはまずないんだろうなぁ、と思いながらテレビを眺めていました。伝えたいことが、多すぎる ー ひとくくりにできない発達障害のリアル発達障害、とひとことで言っても、伝えたいことが本当に多すぎると思うのです。発達障害というと「ASD-自閉症スペクトラム」「ADHD-注意欠如・多動性障害」「LDー学習障害」の3つがあり、それぞれに併発する事例もある、と重なり合う3つの円で紹介されることがよくあります。Upload By イシゲスズコでも、この3つだけじゃない。この3つの重なり具合だけじゃない。知的障害を併発しているケースにはそこにしかない困難があるし、同じような特性でも環境によって困難の度合いは著しく変わっていく。次男も学級の環境の変化によって特性が強く出て困難が増えることもあればとても穏やかに過ごせることもあります。100人いれば100通りの困難がある、それが発達障害。テレビで誰かが紹介されればされるだけ、「自分に近い」と感じる人よりもはるかに多くの、「同じ診断名だけど自分は(子供は)違う、そうじゃない」「こんなケースもある」という気持ちが当事者の中に湧くのではないか、と感じています。諦めず、息長く、わたしの言葉で出典 : テレビで発達障害について放送されるたびに、「足りない」、「もっとこんなことも伝えて欲しい」、という声が出てくる。私も最初は、足りないことに対してモヤモヤしていた一人です。でも、もしかしたら「足りないこと」それこそが、周知という大きな目的の陰にある、この特集のもうひとつの成果なのかもしれない、とも思うのです。1つの番組には伝え切れる情報量には限りがある。でも放送を見て、発達障害について知る機会を得た人、知ろうと思った人はきっとたくさんいると思います。私が自分のブログでちまちま何かを発信しても、発達ナビがどんなにアクセスが増えても、人気番組での1回の特集の与えるインパクトにはとても敵わない。NHKが1年間という長いスパンで、かつEテレだけではなく広い視聴者層に訴える人気番組の中で特集を組んでいってくれる、これはすごいチャンス。一方で、そうやって関心を持ってくれた人に対して、1回の番組だけでは伝えきれない情報を補うことが、私たち一人ひとりがネットでの発信で担える役割なのだと思います。彼らの目に留まるところに「それだけじゃないんだよ」「こんなケースもあるよ」「こんな風に支援を受けている人もいるんだよ」と、当事者や家族として、個々に経験してきた困難を発信していくこと。また、テレビやネットのメディアでは見えてこない、「言葉を持たない」当事者の困難も、それ以上にたくさん存在しているのだと伝えていくこと。ブログで、twitterで、Facebookで、この発達ナビの上で…いろんな形で、息長く続けていく。それが、発信することのできる当事者家族としての今自分にできることなんじゃないか、と感じています。これまでたくさんの当事者やその家族の方たちが切り開いてきてくれたおかげで、今の支援体制があり、その恩恵を受けてきていること。その過去に想いを馳せながら、テレビの力が開けてくれた小さな風穴を、自分たちが切り開く。「発達障害プロジェクト」がすべての放送を終える1年後に発達障害のある人たちを取り巻く感情がどんな風に変わっているか。現実を変えていくたくさんの鍵の中の小さなひとつが、いま、私の手の中にあるような気がしています。きっと、あなたの手の中にも…
2017年07月05日適応障害とは出典 : 適応障害とは、その名の通りストレスに適応できないためにさまざまな心身症状が表れ、日常生活をうまく送れなくなってしまう疾患です。ある特定の状況や出来事が、その人にとってストレスとなり、耐えがたく感じられることで、気持ちや行動にいつもとは違う症状が現れます。ストレスの感じ方やそのとらえ方は人それぞれです。大きなストレスを感じていても、気持ちの問題だなどと我慢し、知らず知らずのうちに適応障害になっている人も少なくありません。さらに、ストレスを我慢したり、耐え続けたりすると重症化し、うつ病や不安障害などの深刻な疾患を発症してしまうことがあります。気持ちや体に不調が出てきたら、我慢や無理をせず、早めに病院に行くことが大切です。適応障害は、他の精神疾患の基準を満たしていないこと、すでに存在する精神疾患の単なる悪化でもないことが分かって初めて診断されます。例えば、うつ病などの気分障害や不安障害などの診断基準を満たす場合はこちらの診断が優先され、適応障害とは診断されません。つまり、気分障害や不安障害ほど重い症状ではないけれど、健康な状態とは言えない場合、適応障害となるのです。なお、この記事ではアメリカ精神医学会の『DSM-5』(『精神疾患の診断・統計マニュアル』第5版)に準拠して、適応障害を説明していきます。適応障害の症状って?出典 : 適応障害に見られる症状として、大きく分けて、精神症状・身体症状・年齢や社会的役割に不相応な行動の3つがあります。■精神症状精神症状には主に、憂うつ感や気分の落ち込みなどの抑うつ症状と不安症状があります。例えば、次のような症状が現れます。・強い憂うつ感、涙もろさ、落ち込み、絶望感を感じ、思考力・集中力・判断力が低下する・感情がコントロールできない時があり、泣き叫ぶことがある・出来事や環境に対して神経質になり、漠然とした不安感を感じたり、心配になったりするなど■身体症状適応障害による身体症状には、以下のようなものがあります。・肩こり・頭痛・疲労感・不眠・激しい動悸、発汗・めまいなど■年齢や社会的役割に不相応な行動適応障害の人の中には、社会的に禁止されていることや、良しとされていないことをしてしまう人もいます。例えば、以下のような行為です。・万引き・行き過ぎた暴飲暴食・危険運転・友達や家族への暴力・無断欠席・公共施設への落書きなどこのような、年齢や社会的役割にふさわしくない行動がみられます。また、子どもが適応障害になった場合、指しゃぶりや赤ちゃん言葉といった「赤ちゃん返り」が見られることもあります。適応障害 | 豊中市 千里中央駅直結の心療内科「杉浦こころのクリニック」厚生労働省みんなのメンタルヘルス-適応障害-適応障害の原因適応障害の原因には、ストレス(外的要因)と個人の資質(内的要因)があると考えられています。外的要因であるストレスとはどのようなことでしょう。出典 : 私たちは日頃、さまざまなストレスに囲まれて生活しています。一般的にストレスとは、外部から刺激を受けたときに生じる緊張状態をいいます。例えば、結婚のように一般的に良いとされることであっても、その変化によりある種の緊張を私たちは感じます。こうした日々の緊張のとらえ方や、ストレスを受けた時の対応方法によって、ストレスは私たちに良い影響を与えることもあれば、悪い影響を与えることもあります。適応障害は、ストレスが私たちの心身に悪い影響をもたらした場合に発症します。そのストレス源が一つの出来事であるとは限らず、さまざまな状況が重なって原因を形成することがあります。また、大きな出来事からくる単発的なストレスだけでなく、長年にわたり続いていたり、反復したりするストレスもあります。では、例えばどんなことが私たちのストレスとなりうるのでしょうか。以下に代表的なものをご紹介していきます。・家庭での問題家族内における病気、介護、別居、子育て、子どもの反抗期、過干渉・過保護など・友達・恋人との関係上の問題浮気の発覚、離別、喧嘩、絶交など・学校、職場、近所関係上の問題いじめ、パワハラ、セクハラ、不信など・心理社会的問題家族や友人などの親しい人との死別、一人暮らし、異文化を受け入れる(留学など)、転校、仕事上の問題(失業・復業、勤務条件、業務量が過度に多い、決定権のなさ、業務の目的が不明)など・大きな節目や行事結婚、妊娠・出産、就職、昇進、卒業、子どもの独立、クリスマスなどの行事など・本人の健康の問題病気、リハビリ、禁酒、禁煙、重病の疑いなど・環境的な問題引っ越し、経済状況、天災や戦争に遭遇など出典 : 人生において上記のようなストレスに遭遇することはよくあることでしょう。ストレスに遭遇した時、重く受け止めるか、さらっと受け流すか、心がそのストレスをどのようにとらえるかは本人の気質によっても変わります。また、ストレスを感じた時に、そのストレスにどのように対応、対処していくかも人それぞれです。ストレスの捉え方・受け止め方である気質と、ストレスへの対応・対処法の2つを合わせて、本人の資質であると言えます。適応障害の発症を左右する原因の一つにその資質が関係しています。では具体的にどんなことがあるでしょうか。・感情の揺れ幅が大きい喜怒哀楽の表わし方、処理の仕方が分からず、感情の起伏が激しいなどです。・傷つきやすい周囲に言われた些細なことを気にしすぎて傷つきやすい気質です。プライドが高すぎる場合も傷つきやすいと言われています。・自立神経のコントロールがうまくいかないストレスは自律神経を介して脳に影響します。もともと自律神経のバランスが乱れやすい人は適応障害になりやすいと言われています。・0か100かで判断してしまう別名、白黒思考や悉無律思考(しつむりつしこう)などといいます。物事を白か黒で判断し、グレーゾーンを認めない気質です。・頼みごとなどを断れない相手に悪印象を与えると思い、頼みごとなどを断れない人はストレスをため込みやすい傾向があります。・まじめだが頑固まじめにコツコツ仕事や勉強を進めるため、いい加減が許せずなかなか許容ができないという気質です。この他には、ストレス経験が不十分なために、ストレス耐性が弱かったり、ストレスへの対処能力が低かったりする場合も考えられます。適応障害はどのぐらいの期間続くの?出典 : 適応障害は、ストレスのもとである明確な出来事や状況の始まりから3ヶ月以内に気持ちの面または行動面の症状が出現します。しかしそのような出来事や状況が終わったり離れることができれば、6ヶ月以内に症状は治まると言われています。つまり、適応障害の期間は、ストレスの原因と状況次第であると言えます。その期間が6ヶ月未満の場合には急性、6ヶ月以上の場合には持続性と呼ばれます。・急性(6ヶ月未満)ストレスの原因が急に起こった場合はすぐ発症し、その原因がなくなれば比較的短い間(数ヶ月以上は続かない)で症状は消えます。・持続性(6ヶ月以上)ストレスの原因またはその結果として起こった出来事が長引く場合、障害も長期間存在し持続性の病型となります。日本精神神経学会/監修『DSM-5 精神疾患の診断・統計マニュアル』2014/医学書院/刊他の疾患との違い・関わりは?出典 : 先に説明したように、適応障害は、他の精神疾患の基準を満たしていない・すでに存在する精神疾患の単なる悪化でもないという条件に当てはまった場合に診断されます。以下で紹介する疾患の中には、適応障害とよく似た症状が見られる疾患もありますが、その疾患の診断基準を満たしている場合、適応障害ではなくその疾患の診断がつきます。うつ病とは、繰り返し気分が落ち込んだり、意欲がなくなることが特徴の精神疾患です。とくに適応障害の精神症状はうつ病の症状によく似ていると言われています。うつ病という診断を下すほど重症ではない場合、適応障害の診断がされます。しかし一度適応障害と診断されても、5年後には40%以上の人がうつ病などの診断名に変更されていることから、適応障害はより症状の重い疾患に至る前段階とも言えます。適応障害ではストレスの原因から離れると症状が改善することが多くみられますが、うつ病の場合ストレスの原因から離れても気分は晴れず、持続的に憂うつ気分は続き、何も楽しめなくなります。厚生労働省みんなのメンタルヘルス-適応障害-パーソナリティ障害とは、一般の人と比べて著しく偏った考え方や行動パターンのために家庭生活や社会生活、職業生活に支障をきたした状態を指します。パーソナリティ障害は、回避性パーソナリティ障害、境界性パーソナリティ障害、自己愛性パーソナリティ障害などをはじめ10のタイプに分類されるほど、人によってかなり違いが見られます。適応障害との鑑別に関しては、一般的に、適応障害発症以前から、どのような症状が見られていたかによって、パーソナリティー障害との区別や、合併の有無を判断します。例えば、感情が不安定であり些細なことでも大きく反応してしまう場合、急に怒ったり反社会的な行為が見られたりする場合などは、パーソナリティー障害との合併が考えられます。不安障害とは、状況や具体的なものに対して、過剰に不安、恐怖心を感じ、それによりさまざまな影響が身体と精神に現れ、社会生活を送ることに支障が出てしまう疾患です。症状も適応障害ととてもよく似ていて、憂うつな気分、不安感、意欲や集中力の低下、イライラ感などといった精神的な反応や、頭痛、動悸、汗が異常に出るなどの身体的な反応が現れます。適応障害との違いは、症状の持続する期間が一番わかりやすいかもしれません。急性適応障害の場合、6ヶ月未満であるのに対し、不安障害は6ヶ月以上症状が確認されることが診断基準の1つでもあります。ただ、6ヶ月以上症状が続いても持続性の適応障害であると判断されることもあるため、自分がどちらに当てはまるかわからない場合は専門家の判断に従いましょう。日本精神神経学会/監修『DSM-5 精神疾患の診断・統計マニュアル』2014/医学書院/刊発達障害とは、生まれつきの脳機能の発達のアンバランスさ・凸凹(でこぼこ)と、その人が過ごす環境や周囲の人との関わりのミスマッチから、社会生活に困難が発生する障害のことです。発達障害の特性から生きづらさを感じたり、生活を送る上で困難が生じたりすることがあります。そんな困り感からストレスを多く感じ、適応障害になることもあります。友達とのコミュニケーションがうまくとれなかったり、自分の居場所を見つけられず孤独感を感じたりといった、発達特性と周囲の環境との不適応経験が、本人にとっての強いストレスとなる場合があります。そのため、発達障害の二次障害として適応障害が発生することは考えられます。適応障害かもしれないと思ったら?出典 : もしかしたら適応障害かも?と思ったら、早めに専門家に相談することが重要です。どこに相談すればよいのかについて解説します。まずは、全国精神保健福祉センターや身近な精神科、心療内科へ行き相談しましょう。病院へ行くことに抵抗を感じる方は、電話での相談もおすすめです。相談できる時間帯は自治体によりますが、全国精神保健福祉センターには相談ダイヤルが設置されており、電話で相談できる環境が整っています。全国の精神保健福祉センター一覧l厚生労働省心療内科、精神科、プライマリーケアクリニックなどの総合的な診断ができる病院、メンタルクリニックなどを受診しましょう。適応障害は、頭痛や倦怠感、体の部分的な痛み、かぜの症状などの症状が表れるので、はじめは内科や整形外科に相談へ行くこともあるかもしれません。しかし、適応障害ゆえの身体症状である場合、内科や整形外科では数値的異常が認められず、問題ないといわれてしまうことがあります。内科や整形外科で問題ないといわれても症状が続き、またストレスの原因となることが思い当たる場合は、心療内科などを受診することをおすすめします。適応障害の治療方法出典 : 適応障害の治療は、ストレスの原因を突き止めることから始まります。ストレスの原因を取り除く、または解決することができれば、適応障害は6ヶ月以内に回復することがほとんどです。中には、ストレスの原因を特定できても、それを除去できないケースも存在します。たとえば、身近な人の死別や離婚などは、原因となるその出来事自体を無かったことにすることはできません。そのような場合は、本人のストレスに対する考え方、捉え方を変えていきます。精神療法により、ストレスの受けとめ方を変えていく一方で、薬物療法により現在現れている症状を軽減していきます。薬物療法は必ず行うわけではありません。カウンセリングなどを中心とした精神療法とともにストレスへの対処を中心に治療します。とくに、支持療法を中心に行うことが多いです。支持療法とは、医師が本人の話を聞いて、医師と信頼関係を築きながら、自尊心や自信、適応力を身につけていくことを目指す治療法です。その他にも補助的に認知療法や暴露療法、生活療法を取り入れる場合があります。薬物療法では、不安、抑うつ、気分、興奮、睡眠を安定させるために薬を使用します。ストレスによって起こるつらい精神症状を軽減することが目的の薬を、向精神薬といいます。主な向精神薬としては、抗不安薬、抗うつ薬、気分安定薬、抗精神病薬、睡眠薬の5つがあります。これらの薬は脳に直接作用するため、医師の指示通りに用法用量を守った正しい服用を心がけましょう。また体質によっては副作用が起こることもあるため、こまめに医師に相談しながら服用することをおすすめします。適応障害のある人のために、周囲の人はどう対応すべき?出典 : 適応障害のある人は、ストレスを自覚せずに考えすぎてしまうことがあります。ストレスでないと思い込み、頑張りすぎてしまうことがありまうす。周囲の人は、本人の相談や話を聞き、抱えている問題やストレスに気づいてあげましょう。適応障害は、それ自体が重い精神疾患ではありませんが、重症化するとうつ病や不安障害を発症します。そうならないために、休みを十分とり、本人が主体的にストレスに適応できるように環境を調整・支援することが大切です。「気持ちの問題だ」、「甘えではないか」、「元気を出して頑張れ」、「薬ばっかり飲んで」などの言動を避けましょう。適応障害は疾患です。本人がストレスに感じていることをしっかり考え言葉がけをしましょう。そのほかにも、過剰な同情、支援、配慮をすることは本人の主体性を奪い、社会的責任を回避させることとなり現実逃避を助長させることになります。注意しましょう。まとめ出典 : 適応障害とは、ストレスに適応できないためにさまざまな心身症状が現れ、日常生活をうまく送れなくなってしまう疾患です。よく健康状態と病気の中間と表現されますが、適応障害をそのまま放置しておくと重症化し、うつ病や不安障害、またパーソナリティー障害などといった精神疾患へと発展してしまうことも少なくありません。適応障害の原因であるストレスは普段だれもが感じるものです。だからと言って我慢したり、無理をせず早めに周囲の人たちや専門家に相談しましょう。
2017年07月04日知的障害のある人を支える年金制度、障害年金とは出典 : 障害年金とは、障害によって生活の安定が損なわれないように、働いたり、日常生活を送ったりする上で困難がある人に支払われる公的年金の総称です。この記事では、知的障害のある人が受給できる障害年金について説明します。(広義の障害年金について知りたい方は下の関連記事をご覧下さい)障害年金は、就労していても受給資格があります。国のデータによれば65歳未満の障害年金受給者のうち、3割以上の方が障害年金を受給しながら働いています。出典:年金制度基礎調査(障害年金受給者実態調査)平成26年|政府統計の総合窓口出典:中井宏ほか『誰も知らない最強の社会保障 障害年金というヒント』p.33参考:『国民年金・厚生年金保険精神の障害に係る等級判定ガイドライン』の策定及び実施について |報道発表資料|厚生労働省知的障害における障害年金の種類と等級出典 : 障害年金を理解するためには、公的年金の種類を知る必要があります。公的年金には国民年金と厚生年金の2種類があります。国民年金とは、日本に住んでいる20歳以上、60歳未満のすべての人が加入するものです。国民年金には、第1号(自営業者、学生、無職の人など)、第2号(会社員など、厚生年金保険の適用を受けている事業所に勤務する人)、第3号被保険者(専業主婦など、第2号被保険者の配偶者で20歳以上60歳未満の人)の3種類があります。厚生年金とは、会社(法人)に勤める70歳未満の会社員や公務員などが加入するものです。国民年金に加入中の人は障害基礎年金を受給することができ、厚生年金に加入中の人は障害厚生年金を障害基礎年金に加算するかたちで受給することができます。知的障害がある人が障害年金を受給する際には、一定の障害の状態であることを示す「障害等級」に該当している必要があります。障害等級とは、障害の状態を分けたもので、重いものから1級、2級、3級とされています。障害の等級については以下のようにまとめられ、障害基礎年金の人は1級、2級まで、障害厚生年金の人は1級、2級、3級まで障害年金が給付されます。等級に応じて受給金額も変わってきます。・1級知的障害があり、食事や身のまわりのことを行うのに全面的な援助が必要であって、かつ会話による意思の疎通が不可能か著しく困難であるため、日常生活が困難で常時援助を必要とするもの・2級知的障害があり、食事や身のまわりのことを行うのに一部援助が必要であって、かつ、会話による意思の疎通が簡単なものに限られるため、日常生活にあたって援助が必要なもの・3級知的障害があり、労働が著しい制限をうけるものここで注意しなければならないのは、障害基礎年金の場合は、3級と判定されると年金を受給することができないということです。一方、障害厚生年金の場合、3級でも受給できます。知的障害のある人が取得できる障害者手帳である療育手帳にも等級が定められていますが、療育手帳と障害年金とは全く別の制度で、療育手帳と障害年金の等級は必ずしも一致するわけではないことにも、注意が必要です。また、年金とは一般的には65歳以上の方が受給対象ですが、障害年金に関しては20歳の誕生日になった時点で受給対象者に含まれます。参考:宇佐見和哉「精神・知的障害にかかる障害年金認定の最近の動向について」知的障害の等級判定のガイドライン出典 : 先に述べた障害等級の審査主体は、障害基礎年金、障害厚生年金それぞれの場合で異なります。まず、障害厚生年金の場合は、日本年金機構の本部が一括して申請書類の審査を行います。そのため、等級判定の基準に関する地域差は生じていませんでした。一方、国民年金に加入している受給者は、障害年金のなかでも障害基礎年金に申請するのですが、都道府県別に各地の日本年金機構が申請書類を審査します。その審査には全国共通のガイドラインがなく、地域によって支給・不支給の差が出ており、格差が大きいという問題が指摘されていました。こういった障害基礎年金審査の地域格差問題を受けて、平成27年2月に「精神・知的障害に関わる障害年金の認定の地域差に関する専門委員会」が厚生労働省内に設置され、都道府県別の地域差を改善しようと動き出しました。合計8回の専門家委員会における議論を踏まえて、平成28年6月に地域差を是正する目的で「等級判定のガイドライン」を制定し、運用を開始しました。平成28年9月から運用が始まり現在、日本年金機構は、障害基礎年金の認定において、ガイドラインを活用しながら支給・不支給の是非、等級を決定しています。これにより、国民年金における地域差は改善の方向に向かっています。参考:国民年金・厚生年金保険 精神の障害に係る等級判定ガイドライン参考:宇佐見和哉「精神・知的障害にかかる障害年金認定の最近の動向について」参考:青木聖久「精神・知的障害に係る障害年金の認定の地域差に関する専門家検討会」に至る背景と今後」障害年金の支給金額出典 : 日本年金機構によると、障害年金は以下のように計算され毎月支給されますが、支給額はその年度の経済状況で変動があります。また、子どもの数による加算額は児童手当との兼ね合いで支給額が調整されます。下記は2017年度の金額です。現段階でいくら支給されるのか、目安として参考にしてください。■障害基礎年金1級の場合の年額:779,300円(老齢年金の満額)×1.25(=974,125)+子の加算2級の場合の年額:779,300円(老齢年金の満額)+子の加算※子の加算…第1子・2子は一人につき224,300円。第3子以降は一人につき74,800円。この時の子どもは下記の要件を満たしている必要があります。・18歳到達年度の末日(3月31日)を経過していない子・20歳未満で障害者1級または2級の障害がある子Upload By 発達障害のキホン出典:障害基礎年金の受給要件・支給開始時期・計算方法|日本年金機構■障害厚生年金1級の場合:(自分の老齢年金) × 1.25 + 〔配偶者の加給年金額(224,300円)〕2級の場合:(自分の老齢年金) + 〔配偶者の加給年金額(224,300円)〕3級の場合:自分の老齢年金額または最低保障額 584,500円※1級・2級の場合障害基礎年金も加わるUpload By 発達障害のキホン出典:障害厚生年金の受給要件・支給開始時期・計算方法|日本年金機構知的障害における障害年金受給のための要件出典 : 知的障害のある人が障害年金を受給するためには、以下の条件を満たす必要があります。■初診日要件は無し年金に加入している間に初診日があること(20歳未満、60~65歳未満で国民年金に加入していない場合を含む)。ただし、知的障害に関しては先天的な障害とされているので、初診日の証明は必要はありません。■保険料納付要件◇初診日のある月の前々月までの公的年金の加入期間の3分の2以上の期間において、保険料が納付または免除されていること。◇初診日において65歳未満であり、初診日のある月の前々月までの1年間に保険料の未納がないこと。■障害状態要件一定の障害の状態にあること(初診日から1年6か月経過した後に障害の程度が定められた基準以上である)。参考:国民年金・厚生年金保険 障害認定基準|日本年金機構参考:宇佐見和哉「精神・知的障害にかかる障害年金認定の最近の動向について」厚生労働省の報告によると、平成26年度の国民年金保険料の納付率が63.1%とのことから、4割近い人が年金を納付していないことになります。年金を払っていないと、障害年金が必要な時に受給要件を満たせなくなるため注意が必要です。出典:平成26年度の国民年金保険料の納付状況と今後の取組等について|厚生労働省・日本年金機構障害年金の手続き出典 : 国民年金の場合は、市町村区の年金課の窓口で、厚生年金の場合は、日本年金機構の窓口で申請書類を入手します。申請書類には、年金請求書、診断書、受診状況等証明書、受診状況等証明書が添付できない申立書、病歴・就労状況等申立書といったものがあります。申請書類や手続きの詳細は以下の関連記事をご参照ください。知的障害における障害年金の受給認定更新出典 : 知的障害における障害年金の新規申請では、永続的な障害年金の受給認定がでるとは限らず、数年単位の認定となることが多いようです。これを有期認定と言います。また、最初と2回目以降の審査で有期認定の年数が変わることがあります。傾向としては、短期の有期認定から長期の有期認定になることが多いようです。しかしながら、手足の切断、完全盲目など、症状が固定しているといえる障害に関しては、永久認定となる可能性が高く、知的障害においても、重度なものに関しては永久認定になる可能性があります。原則としては、障害年金は有期認定であり、更新年度に合わせて、「障害状態確認届」が日本年金機構から郵送で送付されてきます。医師の診断を受け、これを郵送にて返送し、更新する必要があります。知的障害における障害年金の遡及請求出典 : 障害年金を請求するときの診断書から、障害認定日の障害状態が判断できる場合は、20歳のときに遡って障害年金を請求することができます。これを遡及請求といいます。しかしながら、20歳から相当な期間が経ったのちに、障害年金の制度を知って申請、請求をする場合、障害認定日の診断書を取得できないことがあります。とくに知的障害の場合、継続的に医療機関に通院する必要がないため、通院していないときの診断書を医師に作成してもらうことができないケースがあるようです。そこで厚生労働省は、平成27年に「障害年金制度の運用に関する対応状況」を再確認し、仮に障害認定日以後3ヵ月以内の診断書が得られなくても、障害認定日の障害の状態が確認できると判断した過去の事例を整理し、申請者に対応することにしました。現状においては、現症状から障害認定日の障害の状態等が明らかに判断できる場合にあたっては、遡及請求して差支えない、とされています。参考:障害年金制度の運用に関する対応状況 | 厚生労働省障害年金の申請で困ったら出典 : 障害年金を利用したくても、申請などの手続きが大変なことから申請を諦めてしまう人もいます。その複雑さを軽減してくれる人が、社会保険労務士(通称、社労士)です。社労士とは、労働・社会保険に関する法律や人事・労務管理の専門家として、私たちの採用から退職までの労働・社会保険に関する諸問題、さらに年金の相談に応じる人のことです。障害年金についての無料相談や申請書作成の代行も行っています。まずは各地域の社労士会に無料相談をしてみましょう。参考:社労士会リスト|全国社会保険労務士会連合会まとめ出典 : 障害年金の申請には、障害年金に理解のある医師を探すことが、はじめの作業となります。申請書類の作成は専門知識のない人にとっては大変な作業です。何かわからないことがあったり、挫折しそうになったら、社労士の無料相談などを活用し、相談するといいでしょう。今までは都道府県別の地域差や遡及請求に関する問題などがありましたが、ガイドラインの制定や、専門家会議の設置などにより、それも改善の方向に向かっていっています。複雑な制度ではありますが、この制度を積極的に活用しましょう。
2017年06月30日精神障害とは出典 : 日本語の「精神障害」という言葉には統一された定義がなく、診断基準や法律などの文脈によりそれぞれ意味が異なりますが、大きく分けて医療的意味(disorder)と福祉的意味(disability)の2つに分類できます。disorderもdisabilityも日本語では「障害」と訳されていますが、医療的意味の精神「障害(disorder)」と診断されたからといって、必ずしも福祉的な意味の精神「障害(disability)」があるとは限りません。例えば、軽い症状があり医療の介入が必要でも、服薬などにより障害がない人と同じように働くことができている場合、医療的意味の精神障害(disorder)であっても福祉的なサービスを必要とする精神障害(disability)があるわけではないといえます。また、福祉の対象としての障害disabilityは、環境を変えることにより軽減することもできます。以下それぞれの意味を説明します。医療的な側面からみた「精神障害(disorder)」の意味は、 狭義には、ある特定の生体機能の乱れや個人的苦痛があるが、その病態がはっきりと特定されていないものをいいます。ここで言う精神障害とは精神の不調一般を指すものと考えると分かりやすいかもしれません。参考文献:大野裕/著『精神医療・診断の手引き―DSM-IIIはなぜ作られ、DSM-5はなぜ批判されたか』2014年 金剛出版/刊福祉的な側面から見た精神障害は、精神の不調により継続的に 日常生活または社会生活に相当な制限を受ける方のことを指します。精神の不調そのものへのアプローチは医学的なものになりますが、精神の不調と密接に関係する日常生活や社会生活での困難は行政などによる福祉的なアプローチが必要になります。福祉的な意味で「障害」を捉えると、その障害(disability)から生じる困りごとは、周囲の環境が整っていないために起っている、ともいえるのです。参考文献: 野中猛/著 『心の病 回復への道 (岩波新書) 』 2012年 岩波書店/刊参考文献: 精神保健福祉研究会/監 『精神保健福祉法詳解3訂』 2007年 中央法規出版/刊行政における精神障害者と支援出典 : 行政における精神障害者の意味は、大きく分けて2つに分けられます。1.医療の介入を必要とする、いわゆる精神疾患がある者(医療的意味)2.精神疾患の影響で日常生活面で問題を抱える状態である者(福祉的意味)これらの精神障害者に医療面と福祉面それぞれからの支援を行うため、下記のような法律や制度が定められています。参考文献: 精神保健福祉研究会/監 『精神保健福祉法詳解3訂』 2007年 中央法規出版/刊◇精神保健福祉法(正式名称: 「精神保健及び精神障害者福祉に関する法律」)精神保健福祉法は、精神障害がある人の医療と保護や、社会復帰、自立の促進のための援助などにより、精神障害者のための福祉の整備や精神保健の向上を目的とした法律です。精神障害者保健福祉手帳制度や、措置入院、医療保護入院などの入院形態の規定、精神保健福祉センターの設置などが定められています。リンク:精神保健福祉法について|厚生労働省HP◇障害者基本法障害者基本法は、障害がある人の法律や制度についての基本的な考え方を示した法律です。障害があろうとなかろうと、全ての人が互いに尊重し合い共生する社会の実現のために、障害のある人の自立と社会参加を支援する法律や制度に関する基本的な計画(障害者基本計画)を立てることや差別の禁止、療育や職業、雇用、住宅における支援制度を整えることなどが定められています。また、障害者基本法第4条の「差別の禁止」をより具体的に規定した法律に、障害者差別解消法というものがあります。この法律では、障害があるという理由で障害者への商品やサービスの提供を拒否することを「不当な差別的扱い」とし、障害者から配慮を求める意思表明があった場合は過度な負担になりすぎない程度な個別の調整ー「合理的配慮」を行うことが義務付けられています。詳しくは以下の記事をご参照ください。◇障害者総合支援法(正式名称: 「障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律」)障害者総合支援法は、障害がある人が基本的人権を享受する個人としての尊厳にふさわしい日常生活・社会生活を送ることを目的とし、障害福祉サービスの充実や地域生活支援事業、その他の必要な支援を行うことが規定されている法律です。全国の障害福祉サービス事業所の一覧です。是非ご活用ください。リンク:障害福祉サービス事業所情報|WAM NET HP参考:「障害者総合支援法」制定までの経緯と概要について|WAM NET HP精神障害にはどんな種類があるの?出典 : 精神障害にどんな障害が含まれるのかは診断基準や使用される文脈や制度によっても異なります。ここでは、国で採用している国際的な疾病分類『ICD-10』のなかで、いわゆる心の不調について記されている第五章「精神及び行動の障害」の分類を紹介します。障害者手帳や自立支援医療(精神通院医療)の申請の際に必要な診断書にICDの診断コードの記載が必要となるなど、現在の日本の行政における精神障害の概念として用いられることが多い分類です。ICDでは、身体疾患から精神障害にわたって網羅的な分類を設定し、「ICDコード」と呼ばれるコードを付与しています。以下の表は2003年改訂版ICD-10における「ICDコード」と中間分類項目の名称の対応リストです。F00-F09症状性を含む器質性精神障害F10-F19精神作用物質使用による精神及び行動の障害F20-F29統合失調症,統合失調症型障害及び妄想性障害F30-F39気分[感情]障害F40-F48神経症性障害,ストレス関連障害及び身体表現性障害F50-F59生理的障害及び身体的要因に関連した行動症候群F60-F69成人の人格及び行動の障害F70-F79知的障害〈精神遅滞〉F80-F89心理的発達の障害F90-F98小児期及び青年期に通常発症する行動及び情緒の障害(引用:第Ⅴ章 精神及び行動の障害(F00-F99) |厚生労働省HP)以上の中間分類の概略などや、下位分類については以下のリンクで確認できます。参考:ICD-10(2013年版)準拠内容例示表|厚生労働省HP参考ページ:第5章 精神及び行動の障害 (F00-F99)|医療情報システム開発センターHP精神障害と知的障害・発達障害との関係は?出典 : 知的障害とは、発達期までに生じた知的機能障害により、認知能力の発達が全般的に遅れた水準にとどまっている状態を意味します。発達障害とは、先天的な脳機能の障害で、想定される時期に年齢相応の発達が見られない、または年齢相応のスキルが獲得できないことで日常生活に様々な困難が生じ、それらが持続する状態を意味します。ICDやDSMなどの国際的な診断基準においては、知的障害も発達障害も、精神障害(mental disorder)の枠組みに入っています。精神障害は精神の不調一般を指す広い概念であるのに対し、知的障害と発達障害は範囲が限定されているのです。一方、行政や福祉などの場面においては、法律や支援サービスごとに対象となる範囲が異なります。例えば、上述の精神保健福祉法での「精神障害」には知的障害が入っていますが、この法律の手帳制度である精神障害者保健福祉手帳の対象者には知的障害は入りません。行政、福祉面ではそれぞれの法律やサービスごとに、自分が対象であるかどうか見極める必要があります。精神障害者保健福祉手帳出典 : 精神障害者保健福祉手帳とは、所持している人が一定程度の精神障害がある状態であることを認定するものです。精神障害のある方が自立し、社会参加を積極的に行えるよう、様々な制度やサービスの利用をしやすくすることを目的にしています。取得することで様々なサービスや割引・給付が受けられるようになるほか、教育を受けたり就労するにあたり配慮や支援を受けやすくもなる、とても便利な制度です。詳しくは以下の記事をご参照ください。精神障害の等級出典 : 精神障害の程度を定める等級には、精神障害者手帳の等級と障害年金の等級があります。精神障害者保健福祉手帳は1級、2級、3級の3つの区分があります。・1級....精神障害であって、日常生活の用を弁ずることを不能ならしめる程度のもの・2級....精神障害であって、日常生活が著しい制限を受けるか、又は日常生活に著しい制限を加えることを必要とする程度のもの・3級....精神障害であって、日常生活若しくは社会生活が制限を受けるか、又は日常生活若しくは社会生活に制限を加えることを必要とする程度のもの出典:精神障害者保健福祉手帳障害等級判定基準|厚生労働省HP精神の障害による障害の程度は、国民年金の場合は1級と2級、厚生年金の場合は1級から3級に加え障害手当金という等級もあります。・1級…日常生活の用を弁ずることを不能ならしめる程度のもの・2級…日常生活が著しい制限を受けるか又は日常生活に著しい制限を加えることを必要とする程度のもの・3級…労働が制限を受けるか又は労働に制限を加えることを必要とする程度の障害を有するもの・障害手当金…労働が制限を受けるか又は労働に制限を加えることを必要とする程度の障害を残すもの詳しくは以下のリンクをご参照ください。参考:第8節/精神の障害|日本年金機構HP同じ「等級」という言葉から混同しがちですが、精神障害者手帳の等級と障害年金の等級は別物です。障害年金の等級も、重いものから1級、2級、3級とありますが、制度が異なるので認定基準も異なります。とはいえ、概ね手帳の等級と障害年金の等級は重なるようです。参考:治療や生活に役立つ情報|みんなのメンタルヘルスHP詳しくは以下の記事を御覧ください。以上の等級の他にも、障害者総合支援法に基づく障害福祉サービスの種類や量を市町村が決定するための障害支援区分という基準もあります。精神障害のある人が受けられる福祉サービス出典 : ここでは、総合支援法に基づく障害福祉サービスの一部をご紹介いたします。◇行動援護その方が何らかの行動をする際に生じうる危険を回避するために必要な援護を行うサービスです。外出時における移動中の介護や排泄、食事などの介護、その他日常生活での行動の援助が行われます。精神障害による行動上の著しい困難があり、常時介護を必要とする場合に利用できます。詳しくは以下のサイトをご参照ください。参考:行動援護|独立行政法人福祉医療機構HP◇生活介護生活介護では、介護を常に必要としている方に対し、入浴や排泄、食事などの日常生活の援助や、創作的活動や生産活動の機会の提供、各種相談などを、主に日中において行います。参考:生活介護|独立行政法人福祉医療機構HP◇精神障害者居宅介護等事業(ホームヘルプサービス)家庭など、居住している場所にホームヘルパーを呼び、食事や入浴、その他日常生活の援助を受けることが出来ます。利用対象者は、原則として、精神障害者保健福祉手帳の保持者あるいは、障害者年金を受けている方で、かつ、日常生活に支障がある人です。◇施設入所支援施設入所支援では、主として夜間において、食事や排泄などの日常生活の援助や相談が行われます。日中の訓練などサービスも同じ施設で行われます。障害福祉サービスの内容|厚生労働省HP◇共同生活援助(グループホーム)共同生活援助とは主に夜間において少人数での共同生活を援助するサービスです。個別の支援計画を立てた上で、相談や入浴、排泄などの日常生活の援助を行います。共同生活援助|独立行政法人福祉医療機構HP◇短期入所(ショートステイ)在宅の精神障害者を対象に、介護者の事情で一時的に介護困難の場合利用することができます。夜間を含め施設で、入浴や食事などの日常生活の援助が行われます。利用が可能な期間は基本的に7日以内で、事情がある場合は必要最小限の範囲で延長可能です。グループホームなどの夜間のサービスは、自立訓練や就労移行支援、地域活動支援センターなどの昼間のサービスと組み合わせて利用するのが一般的です。◇相談支援相談支援にはサービス利用支援、継続サービス利用支援、地域移行支援、地域定着支援の4種類あります。障害福祉サービスを利用するには、「サービス等利用計画」を立てる必要があります。この計画を作成するのを支援するのがサービス利用支援で、利用したサービスが効果的かどうかの見直しを行う継続サービス利用支援です。地域移行支援では施設や病院から地域への移行の支援を行い、地域定着支援では地域生活の継続のための支援が行われます。その他の福祉サービスは以下のサイトをご参照ください。参考:サービス一覧/サービス紹介|WAM NET HP障害年金出典 : 障害年金とは、病気やケガにより生活や仕事が制限されている方が受け取れる年金のことで、国から委託を受けている日本年金機構により運営されている制度です。障害年金を受ける条件は、その障害の原因となった病気やけがについて初めて医師の診療を受けた日(初診日)に、国民年金あるいは厚生年金に加入していることです。初診日に国民年金に加入していた方は障害基礎年金、厚生年金に加入していた方は障害厚生年金が受け取ることが出来ます。詳しくは以下の記事をご参照ください。生活保護の障害者加算出典 : 生活保護制度とは、資産や能力など全てを活用しても生活が困難な方を対象としたもので、健康で文化的な最低限度の生活ができるような保護を行い、自立を奨励する制度のことです。障害の程度にもよりますが、精神障害者の方が生活保護を受給した場合、受給費に加算される可能性があります(障害者加算)。加算額は、現在住んでいる場所と障害の程度で決められます。Upload By 発達障害のキホン◇現在住んでいる場所現在住んでいる場所は、在宅の場合と入院や社会福祉施設・介護施設に入所している場合に分けられ、在宅の場合はご自身がお住まいの場所がどの級地に当たるのか調べる必要があります。以下のリンクにて全国の級地区分が調べられます。リンク:級地区分(H.29.4.1)|厚生労働省HP◇障害の程度障害の程度は原則、国民年金法(昭和34年政令第184号)別表に定められる等級により決まるとされていますが、この等級は精神障害者手帳における等級と重なるとされています。参考:精神障害者保健福祉手帳による障害者加算の障害の程度の判定について|厚生労働省法令等データベースサービスHP参考:国民年金・厚生年金保険障害認定基準平成28年6月1日改正|日本年金機構HP参考:第8節/精神の障害|日本年金機構HP参考:国民年金・厚生年金保健精神の障害に係る等級判定がガイドライン|日本年金機構HP精神障害者の雇用・就労支援出典 : 日本において、全ての事業主は一定の割合(法定雇用率)以上の障害者を雇う義務があります。この「障害者」は今まで身体障害者と知的障害者に限られていましたが、平成28年改正障害者雇用促進法により、2018年4月からは精神障害者(発達障害を含む)も加わることになりました。障害者の雇用の促進等に関する法律の一部を改正する法律の概要 |厚生労働省HP現在の法定雇用率は以下の通りです。民間企業:2%国、地方公共団体等:2.3%都道府県等の教育委員会:2.2%障害者の法定雇用率が引き上げになります|厚生労働省HP◇就労移行支援事業者就労移行支援は障害がある方の就労をサポートする障害福祉サービスです。就労を希望している障害・難病がある方に対して、働くために必要な知識・能力を身につけるトレーニングや、その人に合った職場探しのサポート、就労後の職場定着までのアフターケアを行います。企業などでの就労または開業を希望する方で、就労が可能であると見込まれる65歳未満の方が対象です。利用期間は原則2年となっています。◇公共職業安定所(ハローワーク)公共職業安定所とは、職業紹介や就労支援のサービスを行う無料で利用できる行政機関です。障害者を対象とした求人情報の提供が受けられます。仕事の探し方など、就職に関する様々な相談に乗ってもらえるだけでなく、職業訓練の仲介なども行っているので、お気軽に御相談ください。全国ハローワークの所在案内|厚生労働省HP◇障害者就業・生活支援センター就業や、それに伴う日常生活上の支援を必要とする障害者を対象に、相談や職場・家庭訪問などを行い支援する機関です。就労支援の面では就職に向けた準備支援や、求職活動支援、職場定着支援から関係機関との連絡調整などをし、生活支援の面では生活習慣の形成、健康管理、金銭管理などの日常生活の自己管理に関する助言、関係機関との連絡調整などをします。参考:障害者就業・生活支援センター事業について|厚生労働省HP◇地域障害者職業センター各都道府県に設置されています。障害者の就労を支援するために、ハローワークや病院、福祉施設などの関係機関との連携を行いながら、地域に密着した職業リハビリテーションを行う施設です。具体的には、職業能力などの評価や支援計画の作成、就職活動の相談、短期間の作業体験や事業所見学などが行われます。参考:地域障害者職業センターの精神障害者総合雇用支援のご案内|独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構HP◇障害者職業能力開発校障害者職業能力開発校は、一般の職業能力開発施設において職業訓練を受けることが困難な重度障害者などにを対象し、その障害に対応した訓練を実施しています。参考:障害者を対象とした職業訓練|厚生労働省HP◇ジョブコーチ支援実施機関職場適応援助者(ジョブコーチ)が、利用者の職場に訪問し、職場への適応・定着を支援します。障害者本人への支援だけでなく、障害者を雇用する事業主や障害者の家族に対する助言などの支援も行います。地域障害者職業センターや、障害者の就労支援をする社会福祉法人や、障害者を雇用する企業に在籍していることがあります。参考:職場適応援助者(ジョブコーチ)支援事業について|厚生労働省HP◇就労継続支援A型事業者就労移行支援を利用したが企業への一般就労に結びつかなった等の理由があり、ある程度の支援があれば就労することができる方を対象としたサービスです。施設と利用者で雇用契約を結び、働くことができます。利用期間に制限はありません。◇就労継続支援B型事業者就労移行支援や就労継続支援A型の利用経験がありますが、年齢や体力の面で雇用が困難な方を対象としたサービスです。施設との雇用契約は結びませんが、生産性にこだわらず自分のペースで働くことができます。利用期間に制限はありません。ケースごとの以上の施設を利用する際の流れなどについては以下のサイトをご参照ください。参考:障害者が就職・定着するまでの標準的な支援|厚生労働省HP精神科訪問看護/精神科デイ・ケア(通院以外の治療)出典 : ここでは、通院・入院以外の治療である精神科訪問看護と精神科デイ・ケアを紹介いたします。いずれも在宅での生活を支えるサービスで、自立支援医療(精神科通院医療)制度を利用すると医療費が原則1割負担になります。◇精神科訪問看護自宅などの居住している場所で保健師、看護師、作業療法士、精神保健福祉士などにより行われる療養上の世話または必要な診療の補助を行うことを指します。具体的には病状の観察と情報収集や日常生活の維持、対人、家族関係の調整や精神症状の悪化の予防、社会資源活用の補助等が行われます。詳細は以下のリンクでご確認ください。訪問看護について|厚生労働省HP◇精神科デイ・ケア精神科デイ・ケアは、社会で生活するために必要な能力の回復を目的として、グループでの治療をおこなうものです。利用時間や利用開始時間に応じてデイ・ケア、ショート・ケア、ナイト・ケア、デイ・ナイトケアなどの種類があります。統合失調症やうつ病などの疾患別プログラムや、高齢者や思春期、青年期などの年代別プログラム、家事能力や復職支援などの目的別プログラムなど、様々な内容があります。施設により内容が異なります。保健所で行っている場合は費用がかかりませんが、その他の場合はかかります。とはいえ、自立支援医療(精神通院医療)を利用すれば、自己負担額は減ります。参考:精神科デイ・ケア等について|厚生労働省HP精神障害について悩んだときは出典 : ◇精神保健福祉センター…各都道府県及び政令指定都市に設置されている精神保健や精神障害者の福祉に関する機関です。こころの悩み全般に専門家がこたえてくれますので、気兼ねなく連絡してみましょう。以下のリンクで全国の精神保健福祉センターを検索できます。全国の精神保健福祉センター一覧|厚生労働省HP◇いのちの電話 …一般社団法人いのちの電話連盟では、無料でインターネット相談や電話相談を実施しております。詳しくは以下のリンクをご参照ください。リンク:いのちの電話の相談方法|一般社団法人いのちの電話連盟HP◇地域生活支援センター …身体障害者、知的障害者、精神障害者及びその他の障害者の自立と社会参加や家族の精神的サポートを行うための支援施設で、医療とは異なる視点で解決策を考えてくれます。◇勤労者の相談窓口 …勤務先の保健師や産業医や、産業保健推進センターの相談事業が利用できます。産業保健推進センターでは精神科医や心理士が専門的な相談に乗ってくれます。◇保健室、保健管理センター、教育センター …教育の場でのいじめなどの問題に個別対応してもらえます。◇家族会 …家族会とは、精神疾患に苦しむ身内がいる家族が集まり、悩みを共有したり情報交換をする会です。大きく分けて、病院を基盤とするものや、地域を基盤とするもの、ほかにもたくさんの種類の家族会が存在します。孤立感をなくすという意味でも、参加には価値があります。◇患者会 …同じ病気や障害に苦しむ人たちが集まり、情報交換や交流などの活動を行います。悩みの共有や症状への対処法などを伝えあえる場は、精神的な支えにもなります。参考:Q. 精神科の医療機関以外に、こころの問題の相談に乗ってくれる場所はあるのですか?|日本精神神経学会HP◇こころもメンテしよう厚生労働省で行われた「今後の精神保健医療福祉のあり方等に関する検討会」報告(平成21年9月)を受けて開設された10代、20代向けのメンタルサポートサイトです。こころもメンテしよう|厚生労働省HP◇みんなのメンタルヘルス総合サイト厚生労働省で行われた「今後の精神保健医療福祉のあり方等に関する検討会」報告(平成21年9月)や「自殺・うつ病対策プロジェクトチーム」のとりまとめ(平成22年5月)を受け開設された一般市民向けのサイトです。病気や症状の説明や、医療機関、相談窓口、各種支援サービスなどの紹介がされています。みんなのメンタルヘルス|厚生労働省HP◇こころの耳厚生労働省の委託事業として一般社団法人日本産業カウンセラー協会が開設した働く方向けのメンタルヘルスサイトです。ストレスチェックやこころの病克服体験記、ストレス対処法まで詳しく、分かりやすく紹介されています。ページ下部にある「コンテンツ一覧」から探すとわかりやすいです。こころの耳◇日本精神神経学会公式HP一般の方向けのページでは、一部の精神疾患についての解説や、市民公開講座などの募集がされています。一般の方へ|日本精神神経学会HP◇悩み別相談窓口などの支援情報検索サイト以下のリンクでは、悩み別に相談窓口などの支援情報を検索出来ますのでご活用ください。支援情報検索サイト|厚生労働省HP悩みや状況を選ぶ|いのちと暮らしの相談ナビHPまとめ出典 : 精神障害にかかってしまうと、自ら支援を求めたり、探したりすることはとても難しく思ってしまうこともあるのではないでしょうか?しかし、福祉サービスなどの支援制度を知り、活用すれば、より生きやすくなるかもしれません。ご自身で探すことが難しい場合は、精神保健福祉センターなどの相談窓口に連絡してみることをおすすめします。自分だけでは分からなかった解決策が見えてくるかもしれません。
2017年06月30日メディアで話題の心理カウンセラー、心屋仁之助さんとその一門があなたの相談に答える「凍えたココロが ほっこり温まる、心屋仁之助 塾」。今回は、「発達障害の息子の将来が心配」という、きょんちーさん(43歳・パート)に、心屋塾上級認定講師の福田とも花さんからアドバイスをいただきました。■きょんちーさんのお悩み高校一年の息子は、発達障害があり対人不安が強く学校が嫌いです。幼稚園からずっと友達も作れず、言葉がでませんでした。そして小学五年生から不登校を繰り返しており、現在もまた不登校です。病院や相談室などを転々としてきましたが、どこも具体的な解決策が見つかりません。話すことができるのは、母である私と妹、小学五年生のときに優しくしてくれた支援員さんのみです。父親に対しても苦手意識が強いほうです。心配なのは、将来社会参加できるかどうかです。毎日、家事手伝いや散歩、家庭学習をさせてはいますが、本人は外にひとりで外出することができません。母子分離不安も強いので、就職活動もできるかどうか、社会参加できるかどうか心配でなりません。どうしていけば良いのでしょうか。学校の先生たちも病院の先生も手探り状態でどうしたらいいかわからない状態です。父親は他人ごとのようで、もう何もあてにはできません。誰か助けて下さい。※一部、質問内容を編集しています。■心屋塾上級認定講師の福田とも花さんよりきょんちーさん、ご相談ありがとうございます。息子さんのこと、幼稚園の頃からずっと心配で、今は将来についての不安が強くなっているのですね…。突然ですがきょんちーさん、幼稚園生くらいの小さな自分に戻ったつもりで、次の言葉を口に出して言ってみてくださいね。「私、一人で居るのが不安だよ」「お母さんとずっと一緒にいたかったよ」「学校なんて行きたくなかったよ」「お母さん、助けてよ」言ってみて、どんな感じがしていますか? 子どもは、あなたの鏡です。もしかしたら、きょんちーさん自身が、子どもの頃からずっと、一人でいるのが不安だったのではないでしょうか? 誰にも助けてもらえず、ひとりぼっちを感じて来たのではないでしょうか?本当は上の言葉を言いたかったけれど、言ってしまったら、お母さんに迷惑をかけてしまいそうな気がして、怖かったのでしょうか。もしくは、お母さんに話しかけたけれど聞いてもらえず、いま旦那さんに対して感じているように「どうせわかってもらえないんだ」と諦めて、心を閉ざして来たのでしょうか。そのような経験を繰り返して、きょんちーさんは自分のことを、「どうせ誰にも助けてもらえない、ひとりぼっちの人」「どうせひとりでちゃんとできない人」「どうせ他の人と同じようにできない人」「どうせ普通の人より劣っている人」と思い込み始めたのかもしれませんね。そのセルフイメージ通りに、目の前の子どもが、問題を見せてくれているだけなのです。発達障害のわが子が、ペラペラお喋りできて、どんどんお友達を作ろうとしてしまったら、どうなりそうで怖いですか?伝えても伝えても、誰にもわかってもらえない悲しみを、感じてしまいそうですか?発達障害のわが子が、普通に登校してしまったら、何が怖いですか?他の子と同じようにできない劣等感を感じて、傷ついてしまいそうですか?発達障害のわが子が社会に出てしまったら、どうなりそうで怖いですか?誰にも助けてもらえず、一人で困って、悲しい思いをしてしまいそうですか? その不安や怖さは、全部きょんちーさん自身が体験してきたこと。「思い出し笑い」ならぬ、「思い出し怖い」なのです。 では、どうしたらいいのか?今まで信じこんできた「どうせ誰にも助けてもらえない、ひとりぼっちの人」という自分のセルフイメージを疑ってみませんか?ほら、ここで「誰か助けて」と言えたことで、私にはちゃんと伝わりましたよ! 喋ることで、伝えたいことを、伝えることができますね。わかってもらえないこともあるけれど、わかってもらえることもありますね。傷つくこともあるけれど、傷つかないこともありますね。お母さんに話したとき、わかってもらえたと感じたことはありませんか?「どうせひとりでちゃんとできない人」「どうせ他の人と同じ様にできない人」「どうせ普通の人より劣っている人」 自分ひとりでできなかったとき、他の人と違ったとき、「そんなあなただからいいんだよ」と近くにいてくれた人はいませんでしたか?そんなあなただから、選ばれたことはありませんか?そんなあなただからこそ、できていることはありませんか?怖がりで傷つきやすいきょんちーさんがママだからこそ、わが子の繊細な心に、目を向けてあげられているのかもしれませんね。もう、自分で自分を許してあげませんか? あのときのお母さん以上に、実は、自分が自分を一番責めていたりします。「他の人と同じようにできなくてもいい」「ひとりでちゃんとできなくてもいい」「社会や学校に行くのを、怖がってもいい」「怖がりの自分でもいい」どんな自分も自分で許して上げていくと、どんな子どもでも大丈夫! と、信じて見守ることができるようになりますよ。きょんちーさん、怖がりながらも「助けて」と伝えてくれて、ありがとうございました。きょんちーさんを、心から応援しています。 ・このカウンセラーのサイトを見る
2017年06月29日悩みはみんな同じ、それは「偏食」!出典 : 息子が幼稚園の頃、同じ発達障害の子どもを持つお母さんたちと園で会うたびに話した共通の話題は「偏食」についてでした。発達障害のある子どもの多くは、食にこだわりがあったり、初めての食べ物に対する恐怖感が強かったりで、偏食傾向があります。うちの息子は味覚過敏もありましたので、「混ぜ込んで食べさせる」ということも通用しませんでした。苦手な食材の、ほんの少しのかけらが舌に当たった瞬間に、嘔気を催してしまうのです。同じ幼稚園で出会った、他の発達障害のお子さんたちもそれぞれ偏食には悩まされていましたが、その現れ方は様々でした。なかには、「パンの固さ」や「ごはんの温度」にまでこだわりがあるお子さんもいて、それぞれのお母さんは毎日のお弁当作りに、それはそれは苦労していました。息子の場合は、食べられる食品の種類は両手で数えられる程度。混ぜ込みは受け付けないので、おかずのバリエーションも増えません。ごはんにかけるふりかけさえ、こだわりがありました。息子の幼稚園は毎日お弁当でしたので、両手で数えられる程度のおかずを毎日順番に詰めるだけの毎日。結局幼稚園の3年間で、そのバリエーションが増えることはありませんでした。ある日幼稚園の先生から言われた意外な一言出典 : 世の中には「キャラ弁」や「食育」という言葉が「母の愛情」の象徴としてあちらこちらで語られています。我が家はそんな「母の愛情」とは無縁のお弁当。全く頭を使わせることのない、同じ食品のオンパレードでした。そんな味気のないお弁当を作って楽しい気持ちになるわけもなく、「食育」という言葉を聞くたびに責められているような気持ちになりました。ある日、私はふと妙なことを思いつきました。「もしかしたら、みんなが一緒に食べていることに触発されて、嫌いなものでも食べるかもしれない」それまでは息子の食べられるものだけをお弁当に詰めていた私ですが、ある日を境に息子の苦手な物を1~2品入れるようになりました。ある日はプチトマト、ある日はブロッコリー、ある日は野菜炒め…。しかし息子は見事にそれだけは残して帰ってきました。それでも私は毎日、息子の嫌いなものを一品ずつ入れました。「いつか食べられるようになる」という気持ちと、「私だって食育に無関心なわけじゃないんだよ…好きなものだけ食べさせればいいと思って手を抜いているわけじゃないんだよ…」という、後ろめたい気持ちに、私は勝てなかったのでした。祈るような気持ちで息子の苦手な食べ物をお弁当に詰めていたある日、幼稚園の先生から突然お電話がかかってきました。そして、こう言われたのです。「お母さん、お弁当は、お母さんと息子さんとの信頼関係の一つです。息子さんの嫌いなものはお弁当に入れなくて大丈夫です。食べられるものだけを入れてあげてください。息子さんの大好きなものだけを詰めてあげてください。後になってその意味が分かると思います。」幼稚園の先生からの電話を受けて、私は呆気に取られてしまいました。それまで言われていた「食育」とは真逆のことを言われたからです。本当にいいのだろうか、栄養のことは考えなくていいのだろうか、このまま偏食を治さなくていいのだろうか…。幼稚園の3年間、私は迷いながらも息子の好きなものだけをお弁当に入れ続けたのでした。小学校に入って分かった、先生の言葉の意味出典 : そして息子は小学校に入学しました。小学校に入学して、私が一番嬉しかったことと言えば、給食が始まったことです。毎朝毎朝、同じような食材を詰めるだけの幼稚園のお弁当は、私にとっては本当に苦痛でした。しかし、そんな私の喜ばしい気持ちとは裏腹に、息子にとっては小学校生活で一番頭が痛いことが「給食」だったのです。バランスを考えていろいろな食材が混ぜ込まれて作られている給食は、息子にとっては食べられない物のオンパレードです。息子いわく、「僕はクラスでお残しナンバーワン」だそうです。前日に給食のメニューや食材を見せて、予告はしていますが、それを食べられるかと言われれば全く別問題です。お腹が空けば、そのうち食べられるようになるだろう、と周囲は楽観視していますが、どんなにお腹がすいても息子は初めての食べ物が怖いのです。何が出るのか分からない、どんな味か分からないものが毎日提供される給食。一口手をつけようと頑張ってみはするものの、固まってしまう息子。「こんなに残すのはあなただけ」と周囲にたしなめられ、がっくり肩を落として帰宅します。そんなある日、小学校が1日だけお弁当の日がありました。毎日給食のことでがっくりとして帰ってくる息子のために、息子の好きなものだけてんこ盛りのスペシャル弁当を作って持たせました。今思えば、幼稚園時代はそれがスペシャル弁当だという認識はありませんでした。息子の好きなものだけを詰めるということは、苦痛でしかなかったからです。久しぶりのお弁当デー。息子は目をキラキラ輝かせて帰ってきました。帰ってきて一言。「お母さんのお弁当には、僕の嫌いなものは絶対入ってないんだ。幼稚園の頃はいつも、安心しきってお弁当箱を開くのが当たり前だと思ってたんだ。給食みたいに、出てくるときに怖い気持ちにならなかったんだ。お母さんのお弁当は、安心できたんだ。」この言葉を聞いて、かつて幼稚園の先生が「息子くんの好きなものだけを入れてください。それは信頼関係なんです」とおっしゃってくださった意味が分かり、私は幼稚園時代が懐かしくて、涙が出てきてしまいました。出典 : 初めてのものが怖い息子にとって、いつも安心して弁当箱の蓋を開くことのできた3年間は、宝物のような時間だったのです。そして、その安心感を親が与えずに、誰が与えられるでしょうか。「食育」とは、栄養をバランスよく与えることではなく、「食べる」ということを楽しいことだと感じられるようになる教育だと私は思っています。そう考えれば、偏食の多い発達障害児が、安心感を持って食事をできるようにすることも、立派な「食育」ではないかと私は思います。
2017年06月22日2020年度末には障害者の法定雇用率が2.3パーセントに出典 : 厚生労働省は、2017年5月30日、民間企業に義務付けている障害者の法定雇用率を段階的に引き上げていくことに決めました。現在の障害者法定雇用率は2.0%ですが、2018年4月には2.2%に、2021年3月末までには2.3%にまで引き上げていく計画とのことです。また国や地方自治体、独立行政法人の障害者法定雇用率は2018年4月までに2.5%、2018年4月までには2.6%に引き上げられ、各都道府県の教育委員会の障害者法定雇用率は、まずは2.4%に、その後、2.5%にまで引き上げられます。民間企業の障害者雇用率を段階的に2.3%に引き上げることを了承(平成30年4月1日から2.2%、3年を経過する日より前に2.3%)障害者の法定雇用率が引き上げられることになった背景は?Upload By 発達ナビニュースこれまでも、障害者の雇用の促進等に関する法律(以下、障害者雇用促進法)に基づき、障害者雇用率制度として、事業主は一定数以上の障害者を雇用しなければならないということが厚生労働省によって義務付けられていました。(対象障害者の雇用に関する事業主の責務)第三七条全て事業主は、対象障害者の雇用に関し、社会連帯の理念に基づき、適当な雇用の場を与える共同の責務を有するものであつて、進んで対象障害者の雇入れに努めなければならない。(一般事業主の雇用義務等)第四三条事業主(常時雇用する労働者(以下単に「労働者」という。)を雇用する事業主をいい、国及び地方公共団体を除く。以下同じ。)は、厚生労働省令で定める雇用関係の変動がある場合には、その雇用する対象障害者である労働者の数が、その雇用する労働者の数に障害者雇用率を乗じて得た数(その数に一人未満の端数があるときは、その端数は、切り捨てる。第四十六条第一項において「法定雇用障害者数」という。)以上であるようにしなければならない。しかし、この法定雇用率に基づき雇用義務が課せられる障害者は、これまで身体障害者または知的障害者のみでした。精神障害者については、2006年以降は雇用義務の対象ではないものの、雇用した場合は雇用している障害者の数に入れることができる、という位置付けだったのです。障害者雇用率制度の概要しかし2013年の障害者雇用促進法改正に伴い、2018年4月からこの法定雇用率の対象となる対象障害者に、身体障害者と知的障害者に加え精神障害者も含めることとなりました。ここでの精神障害者とは、精神障害者保健福祉手帳を持っている方です。第三十七条2 この章、第八十六条第二号及び附則第三条から第六条までにおいて「対象障害者」とは、身体障害者、知的障害者又は精神障害者(精神保健及び精神障害者福祉に関する法律(昭和二十五年法律第百二十三号)第四十五条第二項の規定により精神障害者保健福祉手帳の交付を受けているものに限る。第三節及び第七十九条を除き、以下同じ。)をいう。どういうことかというと、これまで労働市場にいる障害者の数は、身体障害者と知的障害者の数によって定められていたのです。上の図の分子の部分に当たります。しかしこの度、精神障害者が法定雇用率算出の対象になることによって、分子の部分の障害者とされる人の全体数が多くなります。結果、この度の障害者法定雇用率の引き上げにつながり、障害者の雇用が増えるということです。2018年4月以降、各企業において精神障害者の雇用が義務化されるわけではないですが、法定雇用率自体が引き上げられることにより、社会全体として、精神障害のある方の雇用機会も広がっていくことが期待されます。発達障害者の雇用はどうなる?出典 : 障害者雇用促進法において、発達障害は、精神障害の一部として定義付けられています。(用語の定義)第二条障害者身体障害、知的障害、精神障害(発達障害を含む。第六号において同じ。)その他の心身の機能の障害(以下「障害」と総称する。)があるため、長期にわたり、職業生活に相当の制限を受け、又は職業生活を営むことが著しく困難な者をいうしかし一方で、障害者雇用の対象となる「対象障害者」である精神障害者とは、精神障害者保健福祉手帳を公布されている方とされています。もちろん、手帳を取得せず、通常の雇用枠での就職を目指すことも可能ですが、発達障害のある方が障害者雇用枠での就職を目指す場合は、精神障害者保健福祉手帳の取得が必要になります。発達障害に関しては、世界保健機関(WHO)の『ICD-10』(『国際疾病分類』第10版)において精神疾患のカテゴリーに含まれていることもあり、精神障害者保健福祉手帳の交付対象となっています。しかし、二次障害による精神症状の有無など、交付判定に細かい基準が設けられているため、詳しいことはお住まいの市区町村に相談することをおすすめします。企業は法定雇用率を満たさないとどうなるの?出典 : 現在の企業の障害者法定雇用率は2.0%ですが、この法定雇用率を達成している企業は2016年6月時点で48.8%にとどまっており、過半数の企業は法定雇用率が未達成となっています。平成28年障害者雇用状況の集計結果法定雇用率が未達成であり、常時雇用している労働者数が100人を超える企業は、障害者雇用納付金制度に基づき、法定雇用障害者数に不足する障害者数に応じて、1人につき月額50,000円の障害者雇用納付金を納付しなければならないこととされています。逆に、法定雇用率を達成しており、常時雇用している労働者数が100人を超える企業は、障害者雇用調整金として、法定雇用障害者数を超えて雇用している障害者数に応じて、1人につき月額27,000円が支給されます。また、常時雇用している労働者数が100人以下の事業主で、各月の雇用障害者数の年度間合計数が一定数(各月の常時雇用している労働者数の4%の年度間合計数又は72人のいずれか多い数)を超えて障害者を雇用している場合は、障害者雇用報奨金として、その一定数を超えて雇用している障害者の人数に21,000円を乗じて得た額が支給されます。今後、法定雇用率の引き上げを見越して、障害者雇用をより積極的に行っていく企業も増えていくのではないかと予想されます。しかし、障害者雇用枠であろうとなかろうと、働く上での障害や困難がある方には、その方が力を発揮できるような業務上の配慮や調整ー「合理的配慮」を各企業で推進していくことが重要です。法定雇用率の変更を契機に、障害のある方も含めた多様な人々が働ける環境作りに積極的になる企業が増えていくことを願います。障害者雇用納付金制度の概要
2017年06月13日