「ヘリコプターペアレント」というとちょっと耳慣れないかもしれませんが、空からつねに子どもを監視しているような親――つまり「過干渉」の親のことです。親がヘリコプターペアレントだと、子どもにどんな影響があるのでしょうか?欧米で学んだ心理学を子育てに生かし、母親たちをサポートしている公認心理師の佐藤めぐみさんに、ヘリコプターペアレントにならないための方法と併せて教えてもらいました。構成/岩川悟取材・文/清家茂樹「しっかり者」の親に多い「ヘリコプターペアレント」「ヘリコプターペアレント」という言葉を聞いたことがあるでしょうか?これは本来、高校生や大学生くらいの年代の親のうち、ある特徴を持つ人たちに対して使われていた言葉です。「子どもの就活の面接に同行する親がいる」といった話を聞いたことがありませんか?そういう親が、あたかも子どもの頭上でホバリングしながら監視しているようだとして、ヘリコプターペアレントというふうに呼ばれるようになったのです。干渉し過ぎる親のもとで育った子は、のちのち社会に出てからもさまざまな問題を抱える傾向があります。子どもの頃から、なにをするにも「○○くんはこれが好きだよね」「これがいいよね」というふうに、一見意見を尊重しているようで結果的には親が一方的に決めてレールを敷いてしまうため、その子は大人になっても自分の意見を持てないというのはよくあるケースです。いわゆる、「指示待ち人間」になってしまうのです。さらには、打たれ弱いということもその特徴として挙げられます。親が自分のことを過剰なまでに守ってくれ、困難にぶつかる前に手を差し伸べてくれるために、つまずいたり壁にぶつかったりする経験が乏しいまま大人になってしまいます。でも、社会に出れば、親につねに守ってもらうというわけにはいきません。当然、さまざまな失敗を重ねることになります。すると、失敗に対する耐性が弱いために、一度の失敗で心に大きな傷を負ってしまうのです。子どもをそんなふうに育ててしまうヘリコプターペアレントには、心配性であることの他、少し意外かもしれませんが「しっかり者」の人が多いという特徴があります。しっかり者で管理上手だからこそ、子どもに対しても「なにごともうまくやってほしい」と考え、「我が子にはこれがいいんだ」と、子どもにかかわるあらゆることを決めてしまうのです。幼い子どもに対しては、ある程度の干渉が必要ただ誤解してほしくないのは、ヘリコプターペアレントは、あくまでも「高校生や大学生くらいの年代の親」に対しての呼び名だということ。それが、現在はもっと年齢が低い子どもの親に対していわれるようになってきているのですが、幼い子どもに対しては、もちろん親が管理したり干渉したりすることも必要です。なんでも子ども任せで、ただ放置しておけばいいというわけではありませんよね。幼い子どもが外で遊んでいるときには、親はきちんとそばで見守る必要があります。子ども自身や友だちが危険な遊びをしようとしているようなら、親がしっかり止めるべきです。ですが、多くの親御さんとかかわるなかで、わたしが「ヘリコプターペアレント“予備軍”かもしれないな」と感じる人がいるのも事実です。ですから、みなさんには「自分はヘリコプターペアレント予備軍になっていないか」ということを考えてほしいと思います。そうならないために大切なのは、子どもをひとりの人間として尊重することです。「質問をする」「相談をする」「意見を聞く」ということがとても大事になります。先にお伝えしたように、ヘリコプターペアレントは、子どもの日常に過度に干渉するため、その子の決断や判断の機会を失わせてしまうという特徴があります。そうではなく、子どもにかかわることは、まずは子どもにどうしたいかを聞いてほしいと思います。習い事や塾などの重要なことはもちろんですが、なにを食べたいか、なにを着たいか、なにで遊びたいか、そういう日常的なことでも自発的に考える練習になります。そういったことが、子どもの決断力を育むことになり、指示待ち人間ではなく、しっかりした自分の意見を持てる人間に育てるために大切です。子どもの成長に欠かせない、「悔しい」という負の感情また、子どもの「負の感情」を悪いものだと考えないことも重要です。負の感情とは、悔しいとか悲しい、寂しいといった気持ちのことです。もちろん、「友だちにいじめられて悲しい」だとか「お父さん、お母さんとあまり一緒にいられなくて寂しい」といった気持ちを子どもに味わわせることは、親として避けなければなりません。その一方、悔しい気持ちは子どもの成長に欠かせないものでもあります。たとえば、子どもが習い事やスポーツで他の子どもに負けて悔しい思いをしたとしましょう。その悔しい気持ちがあるから、その子は「今度は負けないようにもっと頑張ろう!」と努力をすることができます。その気持ちが、子どもにとってどれだけ大きな成長をもたらしてくれるかは、あらためて考えるまでもないでしょう。ところが、ヘリコプターペアレント予備軍の親たちは、そんな大事な悔しい気持ちすら、「子どもがかわいそうだ」と感じ、手を出したり、代わりにやってあげたりと干渉してしまいます。親の役割として大事なのは、子どもが嫌な思いをしないように先回りして解除することではなく、チャレンジをして悔しい思いをしたときに、「悔しかったね」と、子どもの気持ちに寄り添い、次に進めるように励ましてあげることです。そうすることで、失敗が成長のチャンスになっていくのです。先の「子どもに質問をする、相談をする、意見を聞く」ということにも通じますが、子どもが経験すべきことを親が奪うのではなく、子どもの本当の気持ちをしっかりと見つめることを大切にしてほしいと思います。『子育て心理学のプロが教える 輝くママの習慣』佐藤めぐみ 著/あさ出版(2012)■ 公認心理師・佐藤めぐみさん インタビュー記事一覧第1回:「登園時、毎朝大泣き」問題は、親がコレをしてあげると解決できる!第2回:子どもの「泣き落とし」を収めるテクニック。コツは“ルール作り”にあり第3回:子どもは「甘やかす」より「甘えさせる」!甘えさせてもらえない子は将来こうなる第4回:「過干渉、ヘリコプターペアレント予備軍」親の意外な特徴。もしかしてあなたも?【プロフィール】佐藤めぐみ(さとう・めぐみ)1969年生まれ、東京都出身。公認心理師。オランダ心理学会認定心理士。イギリス・レスター大学大学院修士号取得。欧米で学んだ心理学を日本のお母さんが取り入れやすいかたちにしたポジティブ育児メソッドを考案。現在は公認心理師として、ポジティブ育児研究所でのオンライン子育て心理学講座、育児相談室ポジカフェでのカウンセリング、メディアや企業への執筆活動等を通じ、子育て心理学を活用した育児支援を行っている。HP:megumi-sato.com【ライタープロフィール】清家茂樹(せいけ・しげき)1975年生まれ、愛媛県出身。出版社勤務を経て2012年に独立し、編集プロダクション・株式会社ESSを設立。ジャンルを問わずさまざまな雑誌・書籍の編集に携わる。
2020年04月20日「笑う門には福来る」昔からのことわざにもあるように、笑顔には特別な力があります。最近では、プロゴルファー渋野日向子さんのはじけるような笑顔が話題になりましたよね。緊張した場面でも笑顔を絶やさないその姿に、笑顔の想像以上のパワーを感じた人は少なくないでしょう。今回は笑顔の効果について、改めて検証してみます。卒業アルバムで “笑顔の人” は年を取っても幸せだった笑顔の効果が、私たちの人生にどのような影響をもたらしたのかを検証した実例があります。それは、アメリカ・カリフォルニア大学バークレー校の心理学研究チームが行なった興味深い調査です。卒業生141名の「人生の追跡調査」で、卒業アルバムに写った顔が、“笑顔の人” と “笑顔でなかった人” を比べたところ、“笑顔の人” のほうが、成績優秀で満たされた結婚生活を送り、周りに良い影響を与えるなど、健康で幸せな人生を歩んだというのです。この結果は、「笑顔はさまざまな良いことを引き寄せ、人生を豊かにする」というひとつの実証となりました。ネガティブな気持ちも「笑顔」でポジティブ変換できる笑顔が人生を好転させる仕組みについて、脳科学者の茂木健一郎先生がわかりやすく解説しています。まず、なぜ笑いが起きるのかをみてみましょう。脳の中には「扁桃体」という、感情をつかさどる神経細胞があります。喜怒哀楽のうちの「喜」や「楽」といった快感を得ると、ここが反応して、すぐ近くにある「前帯状皮質(ACC)」を刺激します。その結果として起こる現象が「笑い」です。つまり、笑うということは、その本人が幸せであるというシグナルなのです。(引用元:PHPファミリー|よく笑う子ほど、才能が開花する!〜茂木先生が解説!笑顔の脳科学〜)たしかに、よく笑っている人はハッピーオーラをまとっているように見えますよね。また茂木先生は、活躍中の若手起業家は「明るくてよく笑う」人が多いと話します。「笑い」は、脳の中に備わっている、自分自身の気分を良くしたり癒したりするための装置。ネガティブなことがあっても「笑う」ことで、気分をポジティブに変えられるのです。「笑い」は逆境への対抗策。どんなにつらく苦しいときでも、笑うことでエネルギーを補充し、失敗を糧にできるからこそ、社会で活躍できる人間力がますます育まれるのですね。前を向いて力強く人生を歩んでいくための正しい思考力とメンタル力を身につけられれば、その子の可能性は無限大に広がるでしょう。「笑い」には人生を左右する大きな力があるのです。我が子には、たくさん笑って人生を切り開いていってほしいものですね。「親が笑顔」なら子どもも笑顔になる!では、子どもが笑顔でいられるように親ができることはなんでしょう?脳科学者の西剛志先生は、「親が笑顔でいること」で子どもの笑顔を引き出せると話します。人の脳は、ミラーニューロンという神経細胞を通すことで、自分が見ている人の感情を再現します。つまり、親が笑顔なら、子どももつられて笑顔になるのです。また、子どもの笑顔を引き出す以外にも嬉しい効果がありました。「お母さんの笑顔」には子どもの能力を伸ばす力があるのだそう。子どもに笑顔で勉強を教えると学習能力が10%アップする、笑顔で育てられた子は、そうでない子に比べ、脳の海馬(記憶をつかさどる部分)の成長スピードが2倍早いなど、笑顔が子どもの能力を伸ばすことは、すでに明らかになっています。(引用元:T&Rセルフイメージデザイン|2020年3月10日 山形新聞『笑顔で子どもは伸びる』特集)そして、同じものを見て笑うという感情を共有することも心の成長のためにはとても大切。楽しい体験をできるだけたくさん共有し、笑顔を心がけましょう。子どもの笑顔のためにも、子どもの能力を伸ばすためにも、親はなるべく笑顔でいたいものですね。子どもの笑顔を増やすためにできること「親の笑顔」以外にも、子どもが笑顔でいられるようにできることはあります。小児脳神経外科・発達脳科学のエキスパートである大井静雄先生と茂木先生、そして西先生の見解を中心にご紹介しましょう。■脳の成長期にできるだけ笑顔を引き出す子どもの脳の成長期は0~3歳。この時期に脳の土台をより強いものにするためには、喜びの感情を多く持つことが有効とされます。つまり、まずはこの時期に、子どもがたくさん笑える環境づくりをするのが重要です。子どもが声を発したとき、または親を見ながら何か行動をしたとき、親がニコニコ応答することで、「反応してくれた。嬉しい!」とプラスの感性が働き、子どもは笑顔になります。この「うれしい・楽しい・快い・おもしろい」などのプラスの感情を引き出すべく、親はできる限り子どもの声や行動に笑顔でこたえてあげましょう。■前向きな言葉かけが子どもを笑顔にする初めての登園や遠足のとき、子どもは緊張しますよね。親も「ひとりで大丈夫かしら」など心配していると、子どもはなおさら不安になります。これは、感情は伝染するから。アメリカ・ペンシルベニア大学ウォートン校の研究は、ミラーニューロンが感情にも及ぶことを証明しています。しかも気をつけたいのは、ネガティブな感情ほど伝染しやすいとということ。子どもにかける言葉は、意識的にポジティブを心がけて。たとえば、歌の発表会の前には、ただ「がんばってね」ではなく、「明日みんなとお歌を歌えるの楽しみだね!お母さんも楽しみで仕方ないよ」など、楽しいイメージを先行させる言葉で子どもの気持ちを緩め、笑顔を引き出してあげましょう。■たくさんの「発見と気づき体験」をさせる子どもの脳は、新しい発見や気づきに喜びを感じます。子どもの目がキラキラと輝いて嬉しそう……そんなとき、ありますよね?子どもの好奇心を育てるためにも、興味が湧いたことを自由にできるだけたくさん体験させてあげましょう。体験の幅を広げるために、親の趣味を子どもと一緒に楽しむのもいいですね。プラス体験で脳もどんどん育まれるはずです。逆に「危ない!」「汚れちゃうからダメ」などと、夢中になっている遊びを中断させられてしまうと、脳はマイナスの感情を持ってしまいます。子どもの発見や気づきを遮ってしまわないように、親は安全な遊び場を確保することに気を配りましょう。そして最後に “良い笑顔” について――。「笑い」が大事と言っても、他人を嘲笑するのは “悪い笑い” です。笑顔のパワーとして効果があるのは、自分の失敗を笑い飛ばせる強さを持った “良い笑い”。人間力を高めてくれる “良い笑顔” を子どもの人生最強の武器にするきっかけを作ってあげるのは、大人の役割なのです。***“We shall never know all the good that a simple smile can do.”(笑顔には想像もできないほどの可能性がある)マザーテレサも言っています、笑顔の力は無限大。これからさまざまな出来事に遭遇する子どもたちにも、そのことを脳と心に刻んで、笑顔で人生を歩んでいってほしいですね。(参考)PHPファミリー|よく笑う子ほど、才能が開花する!〜茂木先生が解説!笑顔の脳科学〜Hugkum|【脳科学者監修】気になる「知育」「育脳」って?喜びが脳を発達させる最新の考え方Forbes Japan|感情は伝染する?ポジティブに振る舞うべき理由Forbes|The Untapped Power Of SmilingT&Rセルフイメージデザイン|2020年3月10日 山形新聞『笑顔で子どもは伸びる』特集STUDY HACKER|“笑い”がもたらす7つの効果。究極の『笑顔トレーニング』で人生を好転させろ!
2020年04月19日「甘えさせる」と「甘やかす」――。同じ「甘」という文字が使われているために、つい混同してしまいがちです。でも、子どもの成長にとっては、甘えさせてもらえることと甘やかされることは大違いだというのは、欧米で学んだ心理学を子育てに生かし、母親たちをサポートしている公認心理師の佐藤めぐみさん。そこにあるちがいとはどんなものなのでしょうか。構成/岩川悟取材・文/清家茂樹「甘えさせる」と「甘やかす」とは、それぞれどんな行為?「甘えさせる」とは、子どもが求めてくる愛着行動に対し、温かみを持って受け止める行動を指します。たとえば、「抱っこして」「お膝に乗っていい?」というふうに子どもが甘えてくることがありますよね?そういった欲求を満たしてあげることが、「甘えさせる」ことです。あるいは、子どもの「負の感情」を受け止めることも「甘えさせる」ことに含まれます。子どもが悔しい思いをした、悲しい思いをしたというときに、それらの感情を受け止めて寄り添ってあげることです。大きくは、このふたつのことが「甘えさせる」というものです。一方の「甘やかす」には、大きく3つの行為が含まれます。ひとつは子どもの物質的な要求を無条件に受け入れること。少子化であるいまの時代にはよくある話ですが、子どものおじいちゃんやおばあちゃんが、子どもに求められるままにおもちゃを買い与えるようなことです。ふたつ目の「甘やかす」は、年齢相応に子どもが身につけておかなければならない行動まで親がやってあげてしまうこと。子どもが自分で靴下を履ける年齢になっているにもかかわらず、親が靴下を履かせるようなことです。最後の3つ目の「甘やかす」は、いわゆる「先回り」で、子どもが失敗をしないようにと我が子が通る道をあらかじめ平坦に整えることです。ふたつ目の「甘やかす」とも通じるところがありますが、たとえば荷物の準備などが含まれます。未就学児や小学低学年であれば、幼稚園や小学校に持っていく荷物の準備を親が行ったり、手伝ったりするのはよくあることですが、小学高学年や中学生になってもそうしているようなケースがあてはまります。甘えさせてもらえなかった子どもは、人間関係の壁にぶつかるここまでの話を総括すると、「甘えさせる」ことは大切で、「甘やかす」ことはNGです。「甘えさせる」こととは、「絶対的な愛情で子どもを包み、親子の絆を深める」ことといえます。子どもはそのなかで、良好な人間関係の在り方を知っていくことができる。どういうふうに人とかかわればいいのかを学ぶのです。この学びが少ないと将来的に大きな問題を生んでしまうこともあります。他人と親密な対人関係をうまく築けないために、恋人とどのようにかかわればいいかわからなかったり、結婚して子どもが生まれたとしても、今度は自分の子どもとどうかかわればいいのか難しく感じたり……ということが起こり得ます。また、その問題は「他人に助けを求める」という場面にも出てきます。きちんと親に甘えさせてもらった子どもは基本的に人を信頼していますから、大人になってなにか困ったことがあったときに、素直にまわりに助けを求めることができます。もちろん、それは怠慢などではありません。そういう人は、今度は他人が困っているときには自ら助けてあげようと動けるでしょう。そうして、良好な人間関係を築けるのです。一方、親に十分に甘えさせてもらえなかった子どもは、人を心から信頼することがなかなかできないため、他人にうまく助けを求められず、他人を助けることもできない大人になってしまうことがあります。「手」を差し出すか、「気持ち」を差し出すかこんな話をすると、すべての親御さんが「我が子にはきちんと甘えさせて、甘やかさないようにしたいな」と思ったことでしょう。でも、先に「甘えさせる」と「甘やかす」がどういったものかは解説しましたが、自分ごととして考えると、なかなか見わけがつかないという人もいます。そこで、なにが「甘えさせる」で、なにが「甘やかす」なのか、その判断基準をお伝えしたいと思います。それは、親が子どもに対して提供しているもののちがいです。「甘えさせる」場合、親は「気持ち」を差し出していて、「甘やかす」場合は、親は「手」を差し出しているのです。子どもの要求に応じておもちゃなどを与えるにも、自分で靴下を履ける子どもに靴下を履かせるにも、子どもの荷物の準備を親がするにも、「甘やかす」ときには手を差し出していますよね?一方、「甘えさせる」場合、抱っこをするときにはたしかに手を差し出しているかもしれませんが、子どもを膝に乗せたり子どもの負の感情に寄り添ったりするにも、主に差し出しているのは親の「気持ち」、愛情であるはずです。あとは、共働き世帯が多いいまだからこそ、以下のことにも注意してほしいと思います。毎日、両親ともに忙しく働いていることで、「子どもに寂しい思いをさせている」という罪悪感を持っている親御さんが多くいます。そして、その罪悪感を、子どもが欲しがっていたおもちゃを与えるなどして解消しようとするケースが多いのです。でも、そういう物質的なものは一時的な満足をもらえるだけで、子どもが本当に求めている「甘えたい気持ち」を満たすことはできません。忙しく働き子どもと過ごせる時間が限られているからこそ、その貴重な時間を、子どもたちが真に欲するかたちで満たしてあげてください。『子育て心理学のプロが教える 輝くママの習慣』佐藤めぐみ 著/あさ出版(2012)■ 公認心理師・佐藤めぐみさん インタビュー記事一覧第1回:「登園時、毎朝大泣き」問題は、親がコレをしてあげると解決できる!第2回:子どもの「泣き落とし」を収めるテクニック。コツは“ルール作り”にあり第3回:子どもは「甘やかす」より「甘えさせる」!甘えさせてもらえない子は将来こうなる第4回:「過干渉、ヘリコプターペアレント予備軍」親の意外な特徴。もしかしてあなたも?(※近日公開)【プロフィール】佐藤めぐみ(さとう・めぐみ)1969年生まれ、東京都出身。公認心理師。オランダ心理学会認定心理士。イギリス・レスター大学大学院修士号取得。欧米で学んだ心理学を日本のお母さんが取り入れやすいかたちにしたポジティブ育児メソッドを考案。現在は公認心理師として、ポジティブ育児研究所でのオンライン子育て心理学講座、育児相談室ポジカフェでのカウンセリング、メディアや企業への執筆活動等を通じ、子育て心理学を活用した育児支援を行っている。HP:megumi-sato.com【ライタープロフィール】清家茂樹(せいけ・しげき)1975年生まれ、愛媛県出身。出版社勤務を経て2012年に独立し、編集プロダクション・株式会社ESSを設立。ジャンルを問わずさまざまな雑誌・書籍の編集に携わる。
2020年04月17日スーパーに買い物に行くたびに、子どもがお菓子をねだって駄々をこねてしまう……。いわゆる、「泣き落とし」の行為です。親として大いに悩まされることのひとつかもしれません。欧米で学んだ心理学を子育てに生かし、母親たちをサポートしている公認心理師の佐藤めぐみさんは、子どもの泣き落としを収めるには、「子どもがねだっているものとは『別のよろこび』に目を向けさせることが大切」だといいます。構成/岩川悟取材・文/清家茂樹「泣き落とし」の最大の要因は、子ども自身の「気質」にある子どもの「泣き落とし」のピークは、大体が2歳くらいです。ただ、その頃は、まわりの同年代の子どもも泣き落としをしていることが多いので、「うちの子も一緒、イヤイヤ期だからだよね」と、一時的なものとしてとらえていることが多いものです。ところが、一般的に泣き落としが収まりはじめる5、6歳になっても泣き落としをしていると年齢的にも目立つため、親が悩みはじめることになります。なかには、「自分の育て方が悪かったのかな……」と、自分を責めてしまう人もいるでしょう。でも、子どもが泣き落としをするかどうかの原因は、一概に育て方にあるとはいえません。子どもが泣き落としをするもっとも大きな要因は、子ども自身が持っている「気質」です。もともと、自分の意志を押し通そうという気持ちが強い子どもがいるのです。見方を変えれば、粘り強さがある子どもだといういい方もできます。粘り強さというといい意味でとらえられることが多いですが、それがマイナスの方向に出たのが泣き落としといえるでしょう。もちろん、育て方に原因があるケースもあります。単純な話ですが、子どもに泣き落としをされると、親が根負けしてしまうということを繰り返すケースです。すると子どもは、「泣けば思いどおりになる」と学んでしまいます。この流れになってしまうと、どんなに口では「スーパーではお菓子は買わないよ!」といったとしても、そのルールは子どもに伝わりません。その子にとってのルールは、「泣けば買ってもらえる」というものだからです。「親子が互いになんとか守れるルール」を決めるそう考えると、子どもの気質にかかわらずに、親が「一貫した姿勢を示す」ことが子どもの泣き落としを収めるためのポイントになります。昨日は「いいよ」といってもらえたことが、今日は「駄目」だといわれると、子どもは混乱するからです。それに、子どもは自分に都合がいいほうを優先しますから、「いいよ」といわれたことだけを学んでしまうのです。ただ、「一貫した姿勢を示す」とはいっても、ひたすら厳しいルールを課せばいいというわけではありません。ここで大事なことは、「親子が互いになんとか守れるルール」にすること。スーパーでお菓子をねだって泣き落としをするケースなら、「平日にママとスーパーに行くときはお菓子を買わないけど、週末にパパとスーパーに行くときにはひとつだけお菓子を買っていいよ!」といったようなルールにするのです。そうすれば、子どもにとっても目指すものがあるので取り組みやすく、平日の買い物をスムーズにできるようにもなります。そういった過程を経て、「泣かなくてもいいんだ」ということを子どもに学んでもらうことが大切です。つまり、ゲーム感覚でプログラムを遂行させていくようなイメージですよね。きちんとおねだりを我慢できたら、「よく我慢できたね!」とたくさん褒めてあげてください。もちろん、お菓子を食べること自体を禁止しているわけではありませんから、帰宅したらおやつタイムにします。すると子どもからすれば、泣かなくても結局はお菓子を食べられたし、ママは機嫌がいいし、しかも、褒めてくれたということになります。このようにして、子どもがねだっているそのものとは別の視点でのよろこびに目を向けられるようにしていくのがおすすめです。ゲームや漫画などについても、すべて取り上げてしまうというような家庭もあるかもしれません。しかしながら、ゼロでは子どもは満足できませんし、一方で、遊び放題では親も困ってしまいます。ゼロか100かではなく、互いが折り合えるルールを考える方が現実的であり、実行しやすくなります。泣き落としをする子どもの「粘り強さ」を生かす話は少し本筋からそれますが、先にお伝えした泣き落としをする子どもの「粘り強さ」をいい方向に出せるように導いてあげてほしいですね。粘り強さがある、自分の意思を押し通そうとする子どもの思考のベースには、「疑問を持つ」という姿勢があります。スーパーでお菓子をねだる例なら、「ママはダメだといっているけれど、それは本当なのか?」という疑問が最初にあるのです。その思考をうまく生かすことができれば、これからの時代に必要な強い力となるでしょう。これまで、学校で「いい子」といわれてきた子どもは、先生や親にいわれたことに素直に従っていた子どもたちです。しかし、学習指導要領も変わり、これからの子どもには自分で疑問を持って、自分で考えることが求められます。そんな時代にあって、さまざまなことに「疑問を持つ」思考を持っている粘り強い子どもは、うまく導いてあげれば力を発揮できるはずです。そういう子どもは、ひとつのことにこだわって夢中になる傾向もあります。持ち前の粘り強さをいい方向に発揮できるよう、その子がなにかに夢中になって繰り返しチャレンジしていたら、温かく見守ってしっかりと褒めてあげましょう。子どもの気質は、親の接し方次第でプラスにも向かうこともあればマイナスにも向かうこともあります。きちんとプラスの方向に発揮できるよう、親がしっかり導いてあげたいものですね。『子育て心理学のプロが教える 輝くママの習慣』佐藤めぐみ 著/あさ出版(2012)■ 公認心理師・佐藤めぐみさん インタビュー記事一覧第1回:「登園時、毎朝大泣き」問題は、親がコレをしてあげると解決できる!第2回:子どもの「泣き落とし」を収めるテクニック。コツは“ルール作り”にあり第3回:子どもは「甘やかす」より「甘えさせる」!甘えさせてもらえない子は将来こうなる(※近日公開)第4回:「過干渉、ヘリコプターペアレント予備軍」親の意外な特徴。もしかしてあなたも?(※近日公開)【プロフィール】佐藤めぐみ(さとう・めぐみ)1969年生まれ、東京都出身。公認心理師。オランダ心理学会認定心理士。イギリス・レスター大学大学院修士号取得。欧米で学んだ心理学を日本のお母さんが取り入れやすいかたちにしたポジティブ育児メソッドを考案。現在は公認心理師として、ポジティブ育児研究所でのオンライン子育て心理学講座、育児相談室ポジカフェでのカウンセリング、メディアや企業への執筆活動等を通じ、子育て心理学を活用した育児支援を行っている。HP:megumi-sato.com【ライタープロフィール】清家茂樹(せいけ・しげき)1975年生まれ、愛媛県出身。出版社勤務を経て2012年に独立し、編集プロダクション・株式会社ESSを設立。ジャンルを問わずさまざまな雑誌・書籍の編集に携わる。
2020年04月14日子どもを幼稚園や保育所に預けて仕事に行かなければならないのに、毎朝のように我が子が大泣き……。そんなことに悩んでいる人も多いかもしれません。どうすれば登園時に子どもは泣かないようになるのでしょうか?アドバイスをもらったのは、欧米で学んだ心理学を子育てに生かし母親たちをサポートしている、公認心理師の佐藤めぐみさんです。佐藤さんは、「鍵を握るのは『アタッチメント』」だと語ります。構成/岩川悟取材・文/清家茂樹登園時に子どもが泣いてしまう3つの要因子どもが登園時に泣いてしまうことには、いくつかの要因が考えられます。ひとつは「年齢」が挙げられます。子どもが1歳になったタイミングで仕事に復帰する方は多いですが、ちょうどその頃から1歳半くらいにかけて記憶力が発達し、子どもたちは過去と現在を比較できるようになります。ですから、幼い子どもを幼稚園や保育所に預けると、子どもは「さっきまで一緒にいてくれたお母さんがいまはいない……」と感じて、大泣きするわけです。1歳過ぎから1歳半くらいまでのあいだは、いわゆる分離不安のピークですので、この時期の子どもが登園時に泣いてしまうのは、発達的に見ても「あって当然」のことなのです。このケースでは、「泣かなければラッキーで、泣いても仕方ない時期」と考えて、自分を追い込まないようにしてほしいなと思います。預けなくてはいけない以上、できる工夫はしつつも、「時間が解決してくれる」といういい意味での割り切りも肝心かもしれませんね。しかし、いちばんの要因としては、もともとの「気質」があるでしょう。大人のみなさんでも、行ったことがない場所に行ったり面識がない人に会ったりすることにワクワクする人もいれば、不安を感じる人もいますよね?それは、人生経験の少ない子どもだったら、なおさらのことです。さらには、初めて行った場所や初めて会った人に対する順応のスピードも気質のひとつ。すぐになじむことができる子どももいれば、そうではない子どももいるのです。ただ、気質についても年齢と同じように割り切らなければならないかというと、そうではありません。のちにお伝えしますが、ある方法で解決できる可能性もあります。もうひとつ要因を挙げるとすれば、「家の環境」があります。あまりに家の居心地がいいために、子どもが外に出たがらないのです。もちろん、親子のあいだの愛情にあふれているという居心地のよさであればなんの問題もありません。でも……異なる意味合いで見た場合、居心地のよさが子どもを王子さまやお姫さまのように扱い、なんでも親が世話をして甘やかしていることからであれば問題があります。幼稚園や保育所での集団活動では、我慢しなければならないことが多々あります。そういう場所(幼稚園や保育園)と、とことん甘やかしてもらえる家を比べ、子どもは登園を嫌がるということになるのです。子育てのすべての土台となる「アタッチメント」が鍵ではどうすれば登園時に子どもが泣かないようにできるのでしょうか?その鍵となるのは、「アタッチメント」です。アタッチメントとは、「子どもが特定の人に示す愛着感情」のこと。簡単にいえば、特定の人との「精神的な絆」のことです。そして、小さな子どもにとっての最初の「特定の人」とは、一般的には、もっとも身近に接して世話をしてくれるということで母親というケースが多いと思います。このアタッチメントこそが、子育てのすべてを支える土台なのです。また、子どもは親とのアタッチメントを通じて、人との接し方も学んでいきます。親から「こういうふうにまわりの人とかかわっていけばいいんだな」というテンプレートを学ぶのです。つまり、アタッチメントとは、その子の将来の人間関係の広げ方にも大きくかかわるものなのです。こう表すと、その重要性を強く感じられたのではないでしょうか。そして、このアタッチメントの育み方次第で、気質的には引っ込み思案で幼稚園や保育所で不安を感じるような子どもであっても、しっかり元気に登園できるようにもなります。もちろんその育み方とは、王子さまやお姫さまのように甘やかすことではありません。その育み方とは、親があれこれ手を出すのではなく、子どもが甘えたがっているときにその気持ちをしっかり受け止めること。幼稚園や保育所に子どもをお迎えに行くと、子どもが「抱っこして」といったり手をつないできたりと、子どもに甘え行動が出ますよね。そのときにしっかり甘えさせてあげるのです。もちろん、子どもが望むのなら自宅に帰ってからも膝の上に子どもを乗せて絵本を読んであげたり、一緒にお風呂に入って遊んであげたりすることも、子どもの甘え行動を受け止めることのひとつです。「アタッチメント」で子どもにエネルギーをチャージ!なぜ、こういう行為によって、登園に不安を感じるような子どもでも泣かずに登園できるようになるのでしょうか?それは、アタッチメントによってエネルギーをチャージできるからです。気質が引っ込み思案である子どもの場合、親と離れて幼稚園や保育所で過ごすにも、引っ込み思案ではない子どもと比べ、より多くのエネルギーを使います。だからこそ、翌日も元気に登園できるように、たっぷり甘えさせてエネルギーをしっかりとチャージしてあげることが大切になります。加えて、子どもの気質を無視して、親の主観で言葉をかけることに注意してください。ありがちなのが、自分が子どもの頃には幼稚園や保育所が大好きだったというケース。親子でも気質が正反対ということも珍しくないですよね?それなのに、自分が子どもの頃には幼稚園が楽しかったからと、「大丈夫、大丈夫!元気よく行ってらっしゃい!」「絶対に楽しいから!」と押しつけてしまうのはよくありません。もともとの気質は変わらないものなので、そこを理解したうえのアプローチをしないといい方向へは進みにくくなります。どんな子どもにもアタッチメントは大切なものですが、引っ込み思案の子どもにとってはとくに大切なこと。引っ込み思案の子は、時間をかけてその場所や人々に慣れていくものなので、そのペースに合わせ、日々、子どもにしっかりとエネルギーをチャージしつつ進んでいくことが大事になります。『子育て心理学のプロが教える 輝くママの習慣』佐藤めぐみ 著/あさ出版(2012)■ 公認心理師・佐藤めぐみさん インタビュー記事一覧第1回:「登園時、毎朝大泣き」問題は、親がコレをしてあげると解決できる!第2回:子どもの「泣き落とし」を収めるテクニック。コツは“ルール作り”にあり(※近日公開)第3回:子どもは「甘やかす」より「甘えさせる」!甘えさせてもらえない子は将来こうなる(※近日公開)第4回:「過干渉、ヘリコプターペアレント予備軍」親の意外な特徴。もしかしてあなたも?(※近日公開)【プロフィール】佐藤めぐみ(さとう・めぐみ)1969年生まれ、東京都出身。公認心理師。オランダ心理学会認定心理士。イギリス・レスター大学大学院修士号取得。欧米で学んだ心理学を日本のお母さんが取り入れやすいかたちにしたポジティブ育児メソッドを考案。現在は公認心理師として、ポジティブ育児研究所でのオンライン子育て心理学講座、育児相談室ポジカフェでのカウンセリング、メディアや企業への執筆活動等を通じ、子育て心理学を活用した育児支援を行っている。HP:megumi-sato.com【ライタープロフィール】清家茂樹(せいけ・しげき)1975年生まれ、愛媛県出身。出版社勤務を経て2012年に独立し、編集プロダクション・株式会社ESSを設立。ジャンルを問わずさまざまな雑誌・書籍の編集に携わる。
2020年04月11日ここ10年ほどで、「自己肯定感」という言葉は急激に浸透してきました。親としては、わが子の自己肯定感を伸ばしてあげたいと願うのは当然です。一方で、「もしかしたら私の接し方のせいで、自己肯定感を下げてしまっているかも……」と心配になっている親御さんも少なくないでしょう。今回は、これまでご紹介してきた「自己肯定感」にまつわる記事のなかで、特に人気の高かった6本をまとめました。子どもの自己肯定感を育む方法をたっぷり紹介しているので、ぜひ参考にしてくださいね。「自己肯定感」おすすめ記事1■心が折れて立ち上がれなくなってしまう、自信家なのに自己肯定感が低い人教育ジャーマリストのおおたとしまささんは、「自己肯定感のベースにあるのは “根拠のない自信” である」といいます。「自分は○◯ができるからすごいんだ」「◯○を持っているから自分はすごいんだ」という “根拠のある自信” だけしか持っていない場合、「自信家でありながら自己肯定感が低い人」になってしまうそう。どうしてそのような人間に育ってしまうのでしょうか?おおたさんは、親が子どもに対して過度の勉強を強いる「教育虐待」が要因となっているケースもあると指摘しています。教育虐待を受けて育った子どもが、親の無茶な期待になんとか応え、受験でも就活でも出世レースでも勝ち進んできたとしましょう。(中略)その人間にとっては「結果がすべて」です。すると、たったひとつのつまずきによって「結果」を出せないということが起こると、大人になってからでも、ぽっきりと心が折れて立ち上がれなくなってしまうということもあり得るのです。(引用元:StudyHackerこどもまなび☆ラボ|心が折れて立ち上がれなくなってしまう、自信家なのに自己肯定感が低い人)おおたさんは、「自己肯定感の高低は、チャレンジ精神にも大きな影響を及ぼす」と述べています。自己肯定感が高い人はさまざまなチャレンジをすることができ、たとえ失敗に終わっても「なんとかなるさ」とへこたれずに再び立ち上がることができるそう。反対に、自己肯定感が低い人は、失敗したら自分の価値が無になってしまうという恐怖感があるので、チャレンジすることに二の足を踏んでしまいます。このように、自分を高めるための挑戦をしなくなることで、現状に甘んじ、成長する機会を逃してしまうこともあるのです。子どもの自己肯定感を高めるために、親はなにをしてあげられるのでしょうか。おおたさんによると「子どもの言葉をばかにしないで、まじめに聞くことが大事」とのこと。子どもの発言をつい聞き流したり、「またくだらないこと言って」と相手にしなかったりしていたら要注意ですよ。「自己肯定感」おすすめ記事2■「認める」ことが、子どもの健全な自己肯定感を育む第一歩子どものコーチングにまつわる本を執筆、またコミュニケーションに関する講演活動も行なっているビジネスコーチの石川尚子さんは、「褒める」という行為の危険性について言及しています。一方で、子どもの存在そのものを肯定する「認める」という行為は、健全な自己肯定感を育むのに欠かせないといいます。では、子どもを「認める」とは具体的にどんな言動で行えばいいののでしょうか。それは、とても簡単なこと。ただぎゅっと抱きしめるだけでもいいのです。これが「あなたのことをちゃんと見ているよ、気にかけているよ」という気持ちを伝えることになります。(引用元:StudyHackerこどもまなび☆ラボ|「認める」ことが、子どもの健全な自己肯定感を育む第一歩)「認める」といっても、そんなに大それたことではなく、日常的に名前を呼んであいさつするだけでも十分に効果的だそう。石川さんは、「それだけでも子どもの存在を認めることにつながる」と述べています。この記事では、具体的な声かけの事例をいくつも紹介しているので、ぜひ参考にしてみてください。たとえば、テストで悪い点を取ってきた子どもに対して、どのような声かけをするのが正解なのでしょうか。間違っても、「どうしてこんな点を取ったの!」などと責めてはいけません。このような場合は、「今回、どうだった?」「いま、どう思ってるの?」と淡々と質問するといいそう。大事なのは、その後。「どうすればよかったと思う?」「次に生かせることってなにかな?」と、建設的な対応を心がけることで、子ども自身の成長につながります。親が答えを用意するのではなく、次の機会に生かせる方法を考える “セルフコーチング” ができるようになるといいですね。「自己肯定感」おすすめ記事3■子どもの自己表現力を伸ばし、自己肯定感を高める「親子コミュニケーション」ある調査では、「日本人の自己肯定感の強さは先進国で最低」という結果が出たそう。子ども教育のプロフェッショナル養成に携わる増田修治先生は、その要因のひとつとして「子どもたちに『なんでもしっかりできる子がいい子』だというプレッシャーがかかっていること」が考えられるといいます。親も含めて、多くの大人が暗黙のうちにそういう評価基準を持っていませんか?そうすると、少しでも失敗すると、子どもは「自分はいい子じゃない」と思ってしまう。これでは、自己肯定感が弱くなるのも当然ですよね。(引用元:StudyHackerこどもまなび☆ラボ|子どもの自己表現力を伸ばし、自己肯定感を高める「親子コミュニケーション」)増田先生は、「大事なことは、“なんでもしっかりできるいい子” に育てることではありません」と断言します。大切なのは、きちんと自己分析ができ、困ったときには周囲に助けを求められること。そこで必要になるのは、自分の置かれた状況を自分の言葉で語って助けを求める、いわゆる「自己表現力」です。この記事では、子どもの自己表現力を伸ばすために親ができることを詳しく解説しています。なかでも重要なのは、親子間のコミュニケーションです。どちらかが一方的に話し続けるのではなく、相互が話して聞く、という「応答性」があってこそコミュニケーションは充実します。しかし増田先生によると、最近ではそれができていない親子コミュニケーションが目立つそう。たとえば、お菓子やおもちゃなど「好きなのを選んでいいよ」と言いながらも、子どもが悩んでいるのを見てイライラしていませんか?そこで「まだ決まらないの?じゃあこっちしなさい」などと勝手に決めていませんか?そういった対応こそが、子どもの自己表現力や自己肯定感を育む妨げになっているのです。「自己肯定感」おすすめ記事4■「外遊び」は有能感や自己肯定感を伸ばすーーでも、効果のほどは「親次第」「外遊び」と「自己肯定感」の関連性について、多角的な視点で解説しているこの記事。「外遊びが子どもの情操にいい」と考えて、子どもの意志とは関係なく必死に外遊びをさせようとしている親御さんにとって、非常に耳の痛い内容となっています。しかし、読んだあとはきっと気持ちがラクになっているはずですよ。子どもの自律性の発達を妨げるのなんて簡単ですよ。「ああしなさい」「これしちゃ駄目」「こうしたほうがいいんじゃない?」と言うだけでいい。子どもが「やったー!見て!」と誇らしげに言ってきたときに、「そんなの大したことじゃない」と言えば有能感は育たないし、「後でね」と言ってスマホをいじっていれば関係性が育たない。(引用元:StudyHackerこどもまなび☆ラボ|「外遊び」は有能感や自己肯定感を伸ばすーーでも、効果のほどは「親次第」)「自然体験が子どもの発達に及ぼす影響」を研究テーマにする心理学者・石﨑一記先生は、記事の中で、外遊びによって育まれる子どもの能力をいくつか紹介しています。「自律性」もそのひとつ。自然の中で遊ぶことは、頭を使って試行錯誤し、トライ・アンド・エラーを重ねることになり、自律性が育まれます。そして、自分で考えたことをやり遂げた結果自分を好きになる「自己肯定感」や、遊びという場面においてやるべきこととやらなくてもいいことを決める「自己決定力」なども育まれるでしょう。ただし、子どもに外遊びをさせるにあたって注意すべきは「親の関わり方」だということを忘れずに。先に挙げたように、あれこれ口を出したり、ちゃんと子どもに向き合わなかったり、もしくはただの遊びなのに「なんのためにこれをやるの?」と考えすぎたりするのはご法度ですよ。「自己肯定感」おすすめ記事5■子どもの自己肯定感が低下する「ダブルバインド」。“条件付きの愛”は危険です無意識のうちに子どもを脅すしつけ「ダブルバインド」とは、いったいどのようなものなのでしょうか?この記事では、誰もがやってしまいがちなダブルバインドの例と、それによって引き起こされるいくつかの弊害について解説しています。増田先生は、「ダブルバインド親は、じつは条件付きの愛情を提示している」とも指摘しています。「勉強ができるあなたが好きよ」や「運動が得意なあなたが好きよ」といったメッセージを無意識に送っていることが多く、それに気づいた子どもは「勉強(運動)ができなくなったら見捨てられちゃうかも……」と思い、健全な自己肯定感を持てなくなってしまうのです。(引用元:StudyHackerこどもまなび☆ラボ|子どもの自己肯定感が低下する「ダブルバインド」。“条件付きの愛”は危険です)ダブルバインドの例として、「自分が行きたい高校を選びなさい」と子どもの自由を尊重しているフリをしながらも、いざ子どもが選んだ学校が気に入らないと、「ちょっと偏差値が低すぎるんじゃない?」などと否定する親を挙げています。これこそまさに、子どもの自己肯定感を低下させるダブルバインドの典型です。親は決して子どもを脅しているつもりはなく、むしろ理解を示していると自負しているかもしれません。しかし、子どもが親の矛盾した言動を指摘できず、結果的に従わなければならない状況に追い込まれたら、それはダブルバインドなのです。子どもの自己肯定感を低下させ、間違ったコミュニケーション法を学んでしまうダブルバインド。記事では最後に、ダブルバインドを回避する会話のコツをご紹介しています。ぜひ参考にしてみてください。「自己肯定感」おすすめ記事6■「大好きだよ!」で子どもは育つ。“愛されている自覚”が自己肯定感を高め、勉強姿勢までも変えるこの記事では、「子どもへの愛情の伝え方次第で自己肯定感がぐんぐん育まれる」ということを説いています。ただし、言葉かけには注意が必要。「○○ができてすごいね」という行動に対する承認=「行動承認」では、褒められたほうは「人より優れていないと認めてもらえない」と感じるようになるので注意しましょう。でも、特別な「良くできたこと」や「いいところ」が見つからなくても大丈夫。日頃から「存在承認」による言葉かけをすることで、子どもは自ずと自己肯定感を育むことができるのです。(引用元:StudyHackerこどもまなび☆ラボ|「大好きだよ!」で子どもは育つ。“愛されている自覚”が自己肯定感を高め、勉強姿勢までも変える)「存在承認」とは、存在そのものに対する承認を意味します。「生まれてくれてありがとう」「あなたがいてくれるだけでうれしい」といった、ありのままの相手の存在を認めてあげることで、子どもの自己肯定感はぐんぐん伸びていきます。さらに、親の「大好きだよ」「愛しているよ」という存在承認による声かけは、子どもの勉強に対する姿勢にも好影響を与えます。精神科医の和田秀樹先生によると、「お母さんは僕のことを愛してくれている。僕が勉強すると、大好きなお母さんがもっと喜んでくれるから勉強する」というプラスの感情が動機となり、学習への意欲がわいてくるそう。ストレートに愛情を伝えることに気恥ずかしさを覚えるかもしれませんが、子どもへの愛情を言葉にすることで、親自身もまた親子関係を見つめ直すいいきっかけになるはずです。***「自己肯定感」といっても、大げさに考える必要はありません。子どもの存在そのものを認め、日頃から愛情を伝えるように心がけるだけで、十分自己肯定感は育まれます。親子のコミュニケーションがより充実したものになるよう、ぜひ記事を読んで参考にしてくださいね。
2020年04月07日しつけとは関係ない!夜尿症の治療と対策Upload By 田村 節子治療の原則は「起こさず、焦らず、怒らず、ほめる、比べない」です。夜尿症は、子どもの症状であり、性格やしつけとは関係ありません。「我慢しなさい、気を付けなさい」などの精神論や根性論でどうにかなるものでもありません。お子さんをしかったり、夜尿症は自分(保護者)のせいだと責めないでください。発達障害のあるお子さんは、多動や衝動性、強いこだわりなどから、治療に必要な水分制限や生活リズムの適正化、就寝前にトイレに行く習慣が定着しにくいため、治療には時間がかかる場合もあります。焦らず根気よく治療をサポートしてあげてください[1, 4]。夜尿症の治療には、「生活改善(ダイアリー記録)」、「お薬による治療」、「夜尿アラーム療法」などがあります。詳しくは、おねしょのサイト(おねしょ.comなど)をご覧ください。ポイントいずれの治療法にしても、まずは簡単に達成することができるレベルの目標を設定し、お子さんに分かりやすい言葉で目標を指示することを心がけてください。そして、お子さんが指示した目標を達成したり、夜尿がなかった日は、しっかりと、そのときに褒めてあげましょう。目標達成を繰り返すことと保護者の方の協力が治療を長く継続する秘訣です[1]。おねしょ卒業!プロジェクト実際の治療方法や期間には、個人によって違いがありますが、大まかな流れをご紹介します。Upload By 田村 節子夜尿症治療では、「生活改善」が基本となります。しかし、元来こだわりが強く、嫌なことは絶対嫌と言いがちなお子さんの場合、生活改善を徹底しようとすればするほど、隠れて水を飲んだり、親子げんかが増えるなどで、かえって夜尿症が悪化するケースもあります[1]。また、生活改善だけでは夜尿症の改善がみられないことも少なくありません。そのような場合には、お子さんの発達特性に合わせて、環境整備やお薬による治療を積極的に取り入れることで、治療効果やお子さんの治療意欲が向上する可能性があります[3, 10]。病院の先生と相談しながら進めていきましょう。Upload By 田村 節子規則正しい生活をする夜更かしや不規則な生活は夜尿症を悪化させます。早寝、早起き、決まった時間の食事を心がけましょう。朝食と昼食はしっかり食べましょう。夕食は少し控えめにして早めに取り、夕食後から寝るまでは、可能なら2~3時間あけましょう。水分の取り方に気を付ける寝る前に水分を取り過ぎると、夜尿症につながります。ただし、水分は身体にとても大切ですので、朝食と昼食ではたっぷり取ってください。昼食の後からは水分(ジュース、お茶、牛乳など)を控えめにし、夕食時から就寝まではコップ1杯(200cc)程度までの水分摂取にとどめましょう。塩分を控える塩分のとり過ぎは、のどの渇きから夜尿症の原因となる水分のとり過ぎにつながります。また水分をとり過ぎていない場合でも、夜尿症の原因になります。寝る前にトイレにいくトイレに行ってから寝る習慣をつけましょう。布団に入り30~1時間経っても寝付けないときには、もう一度トイレに行きましょう。夜中、無理にトイレに起こさない夜中に無理にトイレに起こすと、寝ている時間におしっこをする習慣がつき、夜尿症が治りにくくなることがあります。寝ているときの寒さ(冷え)から守る冷えは、尿量の増加や膀胱の縮小につながります。特に冬は、下着を重ね、靴下を履き、体を冷えから守り、温かくして寝ましょう。お薬による夜尿症治療では、抗利尿ホルモン薬、抗コリン薬、三環系抗うつ薬、漢方薬などが使用されます。生活改善を行ってもよくならない場合には、夜尿症を診てくれる病院に相談してみましょう。夜尿をアラームで知らせてお子さんに認識させ、それを繰り返すことにより膀胱が尿をためられるようになります。皮膚感覚や音に敏感なお子さんには不向きかもしれません。Upload By 田村 節子Upload By 田村 節子負担に感じる布団の対策夜尿症のあるお子さんをもつ保護者がもっとも負担に感じるのは、濡れた衣服や寝具の後始末です。特にお布団は、時間がたつほどにアンモニア臭がしみつき、いやな臭いがなかなか取れません。ここではお布団を濡らさないための対策、濡れてしまったお布団の洗い方、乾かし方を紹介します。Upload By 田村 節子オムツ赤ちゃん用のオムツの大きい版、または大人用より一回り小さい版として、多くの商品が売られています。オムツは、夜尿の頻度が減ったら速やかに外すこともあれば、下着やお布団の後始末を考慮して保護者の判断で継続することもあります。オムツをしていた方がよく眠れるとの報告があるため、睡眠の質が低い場合には有用だと考えられます。皮膚感覚が敏感なお子さんには不向きかもしれません。パンツ「おねしょパンツ」でインターネット検索するとたくさん出てきます。消臭素材、吸収素材、防水素材を組み合わせた専用パンツがあります。宿泊行事の際の対策にも有効です。シーツレジャーシートの表面にタオル地を貼り付けたような構造で防水性でないものが多く販売されています。防水機能があるタイプは洗濯が可能か確認ください。「おねしょシーツ」でインターネット検索するとたくさん出てきます。Upload By 田村 節子おねしょした布団にお湯をかける1. おねしょした布団をお風呂場などに持っていき、おねしょの部分にだけ、40度くらいのぬるま湯をろ過する要領でゆっくりかけます。2. 2~3回、臭いが消えるまで繰り返します。3. 乾いたタオルでたたくようにして水分を取っておきます。Point!布団にかけるお湯の温度は40度くらいで。熱湯はNGです。おしっこの成分であるたんぱく質は70度くらいで固まってしまうため、臭いを取るためにはぬるま湯で洗い流します。重曹を利用する1. 重曹をおねしょした布団にふりかけ、尿を吸い取らせます。2. 完全に吸い取ったら重曹を払います。3. ビネガースプレー(スプレーボトルにホワイトビネガー(食用酢)と水を1対4の比率で入れる)を吹き付けながら、乾いたタオルでたたくようにして水分を取ります。Point!おねしょをしてから間もない場合に有効です。クエン酸を利用する1. スプレーボトルに入れたクエン酸水(クエン酸の粉末小さじ2杯と水400ml)を用意します。2. クエン酸水をおねしょした布団にスプレーします。3. 乾いたタオルでたたくようにして水分を取ります。Point!クエン酸水をスプレーすることで、おしっこのアルカリ性が中和されます。オムツを利用する1. 市販のオムツをおねしょした布団に当て、その上で足踏みします。2. 40度くらいのお湯をかけておねしょを洗い流します。3. 洗った布団の上にまた同じようにオムツを当て、その上で足踏みします。Point!オムツを使うことで、おしっこが素早く吸収されて逆戻りもありません。天日干し、時には丸洗い1. 午前10時から午後2時くらいまでの間に両面を干します。2. できれば、3時までには取り込みます。働いているので3時までの取り込みは無理という場合は、室内の日当たりのよいところに干しておきます。3. シーズンの変わり目に布団専門のクリーニング店で丸洗いをすると、よりすっきりします。Point!しっかり乾かすには、天日干しがいちばん。また、太陽の光には殺菌・消臭効果があります。お子さんの心理的ダメージを防ぐためにUpload By 田村 節子発達障害のあるお子さんは、夜尿症を合併することで、さらに自尊心や自信をなくすなどの心理的ダメージが増えると考えられています。その上、夜尿症の治療のため水分制限などが必要となり、お子さんの中にはストレスや不満、怒りなどのマイナスな感情が生じやすくなります。週に1~3回、10~15分、子どもの話を聞くための時間「○○ちゃんタイム」を設け、落ち着いた環境でお子さんと向き合うことで、お子さんを理解し、マイナスの感情から解放してあげましょう。お子さんに話してもらう内容はおねしょのことだけでなく学校生活、家庭生活のことなど何でもかまいません。具体的には、以下のように聞いていきます。「今日、いやだったこと、むかついたことがあったら教えてね。」(導入)「そう、そうだったの。弟にからかわれてとってもいやな思いをしたのね。分かったよ。」(お子さんの話を繰り返し、感情を返す)発達障害のあるお子さんは、嫌なことや疲れがあると夜間の水分制限や寝る前の排泄を行いにくくなり、夜尿が増えることがあります。おだやかな気持ちで就寝できるよう就寝直前の叱責はできるだけ避け(叱責する場合は朝昼夕とする)、夜尿がなかった日にこまめに褒めることを心がけることで、水分制限や寝る前のトイレ習慣のモチベーションを継続できるようにサポートしましょう[12]。病院のサポートを受けましょうこれまで子どもの夜尿症については、「仕方がない」などの認識からあまり注目されてきませんでした。しかし、現在では医療の進歩により、適切な治療を行えば大多数の夜尿症は改善することが分かってきました[11]。発達障害のあるお子さんにとっても夜尿症が改善されることは、単なる排泄行動の改善だけでなく、子どもの自信や行動を向上させ、成長を促す効果があると考えられています[6]。一度、専門医を受診して、お子さんにとって最適な治療法を相談してみましょう。「おねしょ.com」のような夜尿症専門サイトで、相談できる病院を探すことも可能です。おねしょ卒業!プロジェクトUpload By 田村 節子東京成徳大学応用心理学部臨床心理学科教授。東京成徳大学大学院心理・教育相談センター長。学校心理士スーパーバイザー。公認心理師・臨床心理士。学校心理学に基づく研究、および実践の専門家。現在、家庭、教育、医療との連携について夜尿や発達障害の子どもに焦点をあてて研究と実践を行っている。【引用文献】1. 石崎優子. 夜尿症研究 . 2011; 16: 11-152. Robson WL, et al. South Med J. 1997; 90: 503-505 夏苅郁子. 児童青年精神医学とその近接領域. 2008; 49: 336-3534. 夏苅郁子. 夜尿症研究. 2011; 16: 63-665. 平谷美智夫. チャイルド ヘルス. 2011; 14: 1333-13366. 大野友子. 小児看護. 2007; 30: 112-1157. Equit M, et al. Acta Paediatr. 2014; 103: 868-878 Elia J, et al. J Pediatr. 2009; 155: 239-244 田村節子. 小児科臨床. 2016; 69: 1263-127110. 田中幸代. 大阪小児科学会誌. 2011; 28: 1211. 池田裕一. 特別支援教育研究. 2016; 16: 29-3112. 石崎優子. 外来小児科. 2013; 16: 364-367
2020年04月07日はじめにーー最近の研究と活動私は東京成徳大学で心理学を教え、特に学校心理学を研究しています。子どもの自立を促進する・促進しにくい親と子の関わり方の法則・「親と子が幸せになるXとYの法則」を発見し、教師と親が一体となって子どもを援助する“チーム援助”を提唱しています。子どもの気持ちを代弁しながら心理学研究の経験をもとに分かりやすく伝えられるようカウンセリング教育に携わり、“チーム援助”は広く学校現場で実践され始めています。最近では、LD、ADHD等の当事者団体の協力を得て援助方法を研究したり、夜尿症とADHDの疫学調査を学校と協働しながら行っています。小学生になっても続いたら治療の対象に?「おねしょ」というと皆さまはどのようなイメージをお持ちでしょうか。小学生になってもおねしょが続く場合に「おねしょは病気じゃない。子どもが根性を出せば治る」「親のしつけが悪いから治らない」など、このようなイメージをお持ちの方が少なからずいらっしゃると思います。これは間違いです。しかし、「おねしょは小学校を境に夜尿症ととらえられ治療の対象となる」ということを知っていらっしゃる方は少ないと思います。さらに、おねしょは発達障害のあるお子さんにはかなり高確率でみられるということもあまり知られていないことと思います。そこで今回は、おねしょについて理解を深めていただき「おねしょの知識を得ることで気持ちが軽くなり、何をどうしたらいいのか分かる」ことを目指してお伝えしたいと思います。おねしょで悩んでいらっしゃるお子さまやご家族の皆さまはもちろんですが、学校の先生方やスクールカウンセラーなど援助者の方々にもお役に立てたら幸いです。注意:このコンテンツは皆さま方への情報提供のみを目的とするものです。一般的な事項であり、すべてのお子さまに当てはまるものではありません。また、医学的状態やその治療に関する情報が一部記載されていますが、それらの情報は、医師の治療アドバイスの代わりになるものではありません。現在お困りの事象がある場合は、すみやかに病院に相談してください。Upload By 田村 節子生まれて2歳ごろまでの子どもは毎晩おねしょをしますが、その頻度は年齢とともに減っていきます。しかし、5~6歳以降でもおねしょが月に1回以上、3ヵ月続く場合は病気ととらえて、「夜尿症」と呼びます。一般に、ときどきおねしょをしてしまう程度の子どもの比率は、5~6歳で約20%、小学校低学年で約10%、10歳で約5%程度といわれており、成長とともに減少します。また、成人まで続くケースはまれです。発達障害のある子どもでは、発達障害のない子どもに比べて夜尿症の頻度が高いことが知られています。夜尿症との関連についての報告が多いのは注意欠如・多動性障害(ADHD)ですが、ADHDで夜尿症を合併する割合は20~30%に上ると報告されています[1]。カナダで行われた調査では、6歳児の夜尿症の割合は、ADHDのない子どもで7.8%、ADHDのある子どもで20.9%と、ADHDのある子どもの方が2.7倍多いことが示されています[2]。 おねしょ(夜尿症)の原因と発達障害との関係Upload By 田村 節子おねしょ(夜尿症)の原因は、「夜間に尿をためる膀胱のサイズが小さい」や「夜間につくられる尿の量が多い」ことと合わせて、「就寝中に膀胱に尿がたまったときの目覚めの悪さ」だと考えられています[3]。成長に伴って中枢神経機能やホルモン分泌が成熟すると、就寝中の膀胱のサイズが大きくなり、作られる尿の量も少なくなるように調整されるため、夜尿症は徐々に改善します。発達障害のある子どもでは中枢神経機能の発達遅延により尿意切迫や膀胱の過活動などの排泄機能の異常が生じやすいこと[1]、睡眠の質が悪く、成長期に成熟する成長ホルモンや抗利尿ホルモンの分泌の発達が遅延しやすいこと[4]、感触の鈍麻によって下着が濡れても気持ちが悪いと思わない、お漏らししたことに気付きにくいこと[5]などが報告されており、研究段階ではありますが夜尿症に関係する染色体が発達障害とも関連する(夜尿症に関連する染色体8、23、13、22番がADHDでも関与)ことから[1]、発達障害のある子どもは夜尿症になりやすく、高学年まで続くケースも多いと考えられています。夜尿症が子どもや家族に与える影響次に、夜尿症が発達障害のある子どもや家族に及ぼす影響についてです。夜尿症が高学年まで続き、修学旅行などの宿泊が伴うような共同行事が増えてくると、夜尿症は自尊心の低下や劣等感などの心理的ダメージの原因になります[3]。夜尿症は一般に「そのうち、よくなるだろう」とされがちですが[6]、発達障害のある子どもにとっては、発達障害の症状に加えて、夜尿症があることによる心理的ダメージが加わるため、軽視してはいけません[6]。また、夜尿症は発達障害の病態にも影響を及ぼすことが指摘されています。聴性脳幹反応(音を出して脳の活動状況を確認すること)では、夜尿症のみの児やADHDのみの児よりも、夜尿とADHDを併発している児においてもっとも強く反応しており、ADHDのある子どもに夜尿症が合併すると、中枢神経の感情反応が強まり、反抗的な行動をとるなど感情コントロールの悪化を招く可能性があります[7]。また、夜尿症を合併したADHDは夜尿症のないADHDよりも、不注意の度合いが強くなり、夜間覚醒や自分で朝目覚める能力が低下しやすくなる場合があることも分かっています[8]。Upload By 田村 節子こうしたことから、発達障害があるからこそ、夜尿症を積極的に治療する必要性があると考えています[6]。夜尿症は治療することが可能な疾患です。夜尿症を治療することで明るさと自信を取り戻し、発達障害への対処や治療にも取り組みやすくなります[6]。夜尿症は、子ども自身だけではなく、その家族、特に母親の心理状態にも大きな影響を与えます。子どもの夜尿が続くことで、日常のイライラ(デイリーハッスル)が蓄積し、感情的になり子どもを強く叱ってしまうことはありませんか。そして、そうした行動を起こしてしまったことを省みて、深く落ち込んだことはありませんか。子どもは夜尿をなかったことにしようという心理的な防衛機制が働くため、実際は落ち込んでいても平気な顔でとりつくろうとすることがありますが、デイリーハッスルが蓄積してしまった母親は、夜尿をしたのに平気な顔をしている子どもを見ると、夜尿を治す気がない、反省もしていない、親の言うことを聞かないと誤解し、やがて子どもを受容できないという嫌悪感をもってしまうリスクがあります。また、家族や祖父母から子どものしつけ方が悪いと言われてしまうと、より自責感も抱きやすくなります[9]。発達障害のあるお子さんの保護者は、いろいろな事象に加え夜尿があることで、より親の責任であるかのような錯覚に囚われ、悩みが深刻化することがあります。このような嫌悪感、自罰感、自責感は「母親失格」という負の心理的刻印[9]としてお母さんを傷つけています。このように、夜尿症と発達障害の両方があるご家族では、お子さんとその親の両方が負の感情を持ちやすく、お互いの負の感情が連鎖して、より深刻な状況を引き起こすこともあります。この負の感情の連鎖を断ち切るためにも、夜尿症と発達障害の特性(原因や対応法など)を理解することが重要です。Upload By 田村 節子次回は、夜尿症の治療/対策、家族や周囲の望ましい対応、病院のサポートの受け方についてご紹介します。Upload By 田村 節子東京成徳大学応用心理学部臨床心理学科教授。東京成徳大学大学院心理・教育相談センター長。学校心理士スーパーバイザー。公認心理師・臨床心理士。学校心理学に基づく研究、および実践の専門家。現在、家庭、教育、医療との連携について夜尿や発達障害の子どもに焦点をあてて研究と実践を行っている。【引用文献】1. 石崎優子. 夜尿症研究 . 2011; 16: 11-152. Robson WL, et al. South Med J. 1997; 90: 503-505 夏苅郁子. 児童青年精神医学とその近接領域. 2008; 49: 336-3534. 夏苅郁子. 夜尿症研究. 2011; 16: 63-665. 平谷美智夫. チャイルド ヘルス. 2011; 14: 1333-13366. 大野友子. 小児看護. 2007; 30: 112-1157. Equit M, et al. Acta Paediatr. 2014; 103: 868-878 Elia J, et al. J Pediatr. 2009; 155: 239-244 田村節子. 小児科臨床. 2016; 69: 1263-127110. 田中幸代. 大阪小児科学会誌. 2011; 28: 1211. 池田裕一. 特別支援教育研究. 2016; 16: 29-3112. 石崎優子. 外来小児科. 2013; 16: 364-367
2020年04月06日勝ちにこだわりすぎる、負けそうになると勝負を放棄する――。そんな子どもの姿に戸惑ってしまっている親も多いようです。これは「一番病」などとも呼ばれ、競争社会で生き抜くためにはある程度必要な素質とも言えますが、周りを巻き込んでまで一番でないと我慢できない、という状態では困りもの。たとえ負けてしまっても前向きに捉えて立ち上がってもらうために、親はどんなことに気をつけたらよいのでしょうか。勝ちにこだわるのは、その子の気質が基本「一番病」を理解するにあたっては、まず、負けず嫌いな性格はその子の持って生まれた気質によるものであると割り切って考えることが必要かもしれません。アメリカの心理学者であるトーマス博士の研究で見出された9つの気質特徴、これが複雑に絡み合うことで、生まれつき、負けず嫌いだったり、ルールに準じるのが好きだったりという「性分」が出てきます。その子たちは、「できる自分」が好きで、「できない自分」は受け入れがたいと感じ、親や先生からの指摘で、ひどく落ち込んでしまうのです。このタイプのお子さんは、基本的には、「言われてもやらない子」ではなく、むしろ「自分でがんばる子」の場合が多く、「いい子気質」である傾向が高いようです。(引用元:SHINGA FARM|いい子気質に多い!?「間違えるのがイヤ!」その心理と親ができる対策)さらに、気質的に負けず嫌いな子は結果を残すことが多いので、親もつい期待をかけて「できる子」に育てようと突っ走ってしまうパターンが多いんだとか。子どもが運動会で一等を取ったことに親も大喜びで、ご褒美に欲しがっていたおもちゃを買ってあげたりしたことはありませんか?子どももそのときばかりは喜ぶものの、じつは逆に「一番になったり、一等賞をとったりしないと、ママやパパは褒めてくれないんだ」と感じてしまっている可能性も高いのです。負けず嫌いな気質を生かすには「一番病」を克服していくためには、勝ちにこだわる子だからこそ「負けたとき」にどう対応するかがポイントになってくるようです。勝ったときはたっぷりと褒めたりごほうびをあげたりするのに対して、負けたときは「残念だったな。次はがんばれよ!」くらいで済ませてしまっていませんか?教育評論家の親野智可等先生によると、「負けたくない。勝ちたい」という気持ちは、「がんばりたい」という向上心とつながっているのだそう。ですから、勝ち負けにこだわる子どもの気持ちは受け止めつつ、どんなときでもその子の「がんばり」を褒めてあげましょう。結果がよかったときは「結果とがんばった過程の両方を褒める」、逆に、結果がよくなかったときは、「がんばった過程を褒める」ことで、勝っても負けても次にまたがんばることができるはずですよ。ただし、子どもが「勝つまでやりたい!」と何度もゲームを繰り返した結果の勝利については、親が褒める必要はないと、スクールカウンセラーで臨床心理士の福谷徹氏は言います。「それは大人から見てカッコ悪いよ」と子どもに伝えるべきとのこと。自分の都合だけで周りを振り回してまで勝とうとして勝っても、褒めてもらえることはないのだと自覚してもらえればよいのでしょう。勝敗をつける遊びをはじめる前に大阪養護教育振興会によると、幼児期の遊びやゲームなどであれば、「この遊びには勝ち負けがあります。勝つ人がいたら負ける人もいます」と前もって勝敗が分かれることを予告し、「勝ってもいばりません、負けてもおこりません」と遊びのルールを作ったうえで遊び始めるのも有効だそう。負けてしまって悔しがる子には、「勝ちたかったんだね」とその感情を言語化してあげて、自分の気持ちを理解してもらえるという安心感を持たせてあげれば、たかぶった気持ちを抑える一助になります。一緒に大人が遊ぶ場合にも、大人のほうが負けてしまったときに悔しがってばかりいたり、勝ったら踏ん反り返って自慢したりするような態度をとるのは考えもの。「負けちゃった〜、悔しいけれど楽しかったから、まぁいいか。次は勝つぞ〜」くらいの態度で、おおらかな時間を過ごすように心がけましょう。東京学芸大学教育学部特別支援科学講座准教授の小笠原恵氏は、著書『うちの子、なんでできないの?親子を救う40のヒント』の中で、子どもの価値観は大人の価値観を反映していることが多いと言っています。大人が「失敗は成功のもと!」「負けるが勝ちだよ~」と失敗や負けをポジティブに考えていれば、子どももきっと、勝っても負けても楽しい時間を過ごすことができるでしょう。勝ち負け以外でも達成感は得られるどんなスポーツでもボードゲームでも、やっている最中のワクワク感や楽しさはかけがえのないもの。その締めくくりに勝ち負けがあるのであって、たとえうまくいかなかったとしても楽しかった時間や努力した時間がすべて消えてしまうわけではありません。運動会があれば、順位ではなく、一生懸命走っている姿に目を向けてあげてください。最下位だったとしても、去年より今年のほうが速くなっているはずです。その子自身を基準にすれば、どんな子でも絶対に伸びています。ほかの子と比べるのではなく、その子自身の過去と比べて伸びたところを評価するようにすると、確かに成長している子どもの実像が見えてきます。(引用元:高濱正伸・西郡文啓著 (2018年),『ちゃんと失敗する子の育て方』,総合法令出版.)常に成長過程である子どもにとっては、いかなる勝負事も、「結果がすべて」では決してないのです。小笠原氏によると、子どもが勝負に負けてしまった場合は「一生懸命走ったからいいんだよ!次はもっと腕を振ってみよう」というように、がんばった過程をほめたあとに、さらに次に勝てる秘訣を教えるのが有効だといいます。昨日までの自分に勝とうと頑張ることが「自己肯定感」につながる高学年になっても勝ちにこだわるようであれば、勝負の世界のステージを上げてやるとよいそう。そこで、高度な勝負の世界では「相手に勝つ」ことより「自分自身に勝つ」ことが大切であることがわかれば、もう“子ども卒業”です。他者との比較で自分が優れていれば、分かりやすく自分を肯定できますが、もっと優れている子を目の前にすれば簡単に崩れてしまいます。揺るぎのない「自己肯定感」をつくるのは、昨日の自分よりも良くなっているという実感です。「自分はできないことでもがんばって、できるようになってきた。だからまたできないことがあってもなんとかなるだろう」本物の「自己肯定感」を持つ子はそう考えるようになります。(引用元:同上)あのイチローの引退会見でも、「あくまで“はかり”は自分の中にある」「少しずつの積み重ねでしか自分を超えていけない」という言葉がありました。順位や勝ち負けはあくまでもモチベーションを高めるための手段であり、乗り越えていくべきものは自分自身である、ということを親も子も肝に銘じて、小さなゲームから大きな試合まで、「本当の勝ち」を目指して奮闘していけるといいですね。文/酒井絢子(参考)大阪市教育センター|相談事例3.勝ち負けにこだわる子どもへの対応ベネッセ 教育情報サイト|負けず嫌いで何にでも優劣をつけたがる娘[教えて!親野先生]ベネッセ 教育情報サイト|「勝ち」にこだわりすぎる[うちの子、どう接したらいいの?]SHINGA FARM|いい子気質に多い!?「間違えるのがイヤ!」その心理と親ができる対策東洋経済ONLINE|イチロー引退会見に学ぶ超一流の確固たる心得人と比べず己とトコトン向き合う男の引き際AERAdot.|将棋教室がブームの兆し「負けることで心が強くなる」小笠原恵著(2011年),『うちの子、なんでできないの?親子を救う40のヒント』,文藝春秋.高濱正伸・西郡文啓著 (2018年),『ちゃんと失敗する子の育て方』,総合法令出版.
2020年04月06日編集部:学研キッズネット編集部主に未就学の親子に向けた週末の体験活動「ウィークエンドスクールfor kids」を運営する「一般社団法人かもしか」は、5月に出版予定の『子どものときに育む一生もののチカラ(仮)』の一部「子どもを育む遊びの見守り方」を、2020年3月25日から4月12日まで休校や登園自粛、春休みで家で過ごす時間が増えた子どもの活動を大人が見守る際のヒントとして、スマホ閲覧サイズの1枚画像にして無料で提供している。子どものときに育む一生もののチカラ、非認知能力とは?学力やIQなど読み書きや学習到達度などで測定可能な能力を「認知能力」といい、これまでの早期教育ではこの認知能力を意識して行われてきました。しかし近年、一方的に知識や技能をインプットするだけでは育たない、気質や性格的な特徴である「非認知能力」こそが幼児期にとって大切だということが分かりました。非認知能力は心理学的に「社会情動的スキル」とも言われ、忍耐力、社交性、やり抜く力といった気質のことで、2000年にノーベル経済学賞を受賞したジェームズ・ヘックマン氏は、非認知能力が「将来の学歴・年収・雇用」などに大きく影響を及ぼすことを証明しました。「遊び込み」の中で育まれる非認知能力幼児期は特に「遊び込む」ことで非認知能力が育まれるため、保育園や幼稚園などの幼児教育現場での実践をはじめ、教育熱心な家庭で「子どもの遊び」に対する関心が高まっています。「ウィークエンドスクールfor kids」で出版予定のテキストでは、この「非認知能力」についてわかりやすく、そして家庭でも子どもの能力を育めるように大人の役割について解説。今回無料で提供するページは、子どもの非認知能力を育む上で欠かせない、子ども主体の遊びなどの活動を大人がどう見守ったらいいかをまとめたものになっています。【無料提供ページ「子どもを育む“遊び”の見守り方」】【無料提供期間】2020年3月25日(水)〜2020年4月12日(日)【ダウンロード方法】ウィークエンドスクールfor kids公式サイトのトップページのお知らせ欄からダウンロードいただけます。【出版予定のテキストについて】監修:共立女子大学 家政学部 児童学科教授 白川佳子先生著者:ウィークエンドスクールfor kids出版予定: 2020年5月形態: 36ページ、A5サイズ主な内容・非認知能力とは・非認知能力を育む・解説コラム・保育のプロが語る非認知能力他※予告なく変更になる場合がありますウィークエンドスクールfor kidsについて遊びを通じて子どものチカラを育みたいママ・パパと、その子ども、そして地域に住む元・保育士や幼稚園教諭といった子どもの専門家がチームになって活動する、週末の楽しい遊び場です。幼児期に育みたい一生もののチカラ「非認知能力」を重点に置いたプログラムを行っています。まちの商店や農家、食堂、集会所などの協力で、地域を舞台に社会と関わりながら、楽しく子どものチカラを育むことを目指しています。現在、東京都調布市、東京都町田市、埼玉県南西部、愛知県北名古屋市の4カ所に、活動の中心となる子どもの専門家がいます。【公式サイト】学研キッズネット編集部(がっけんきっずねっと)『学研キッズネット』は、1996年にオープンした小・中学生のためのWebメディアです。学研の子ども向け書籍や雑誌の編集ノウハウを活かし、子どもたちが安全に楽しめるサイトとして運営しています。子どもたちのしあわせのために、家族のしあわせのために、有益な情報やサービスをお届けできるよう、いつも精一杯がんばっています。すくすく伸びる子どもたちのために
2020年03月31日StudyHackerこどもまなび☆ラボでは、これまで多くの専門家の意見を参考に、多角的な視点で、効果的かつ実践的な教育法を提案し、子どもたちにとって、また保護者の方々にとって有益な情報を発信してきました。なかでも人気が高いテーマは、「科学的なデータに基づいた効果的な教育法」です。じつは今、個々の経験をベースにした教育法や学習法よりも、さまざまな分析によって導き出された科学的根拠に基づく教育法が注目されています。教育経済学を専門にしている慶應義塾大学の中室牧子教授は、「個人的な経験に基づく主観的な議論を展開しがちな教育界だが、活躍している人と同じことをすればその人のような成果をおさめられるわけではない」と断言しています。その理由は、「人間の成功にはあまりにも多くの要因が影響しているため、一般化することはとても難しい」から。だからこそ中室教授は、データに基づいた分析によって、成功へと導く教育法を科学的に明らかにする必要性を説いているのです。今回は、これまでご紹介してきた「科学的なデータに基づいた教育法」にまつわる記事のなかで、とくに人気の高かった6本をまとめました。どれも納得できる内容ばかりなので、ぜひ参考にしてください。「科学的に正しい教育」おすすめ記事1■科学的に正しい子どもの教育――最高の学習ツールは〇〇〇だった!いま注目を集める「ビッグデータ」。なかでも私たちが気になるのは、子どもの学習にまつわる「教育ビッグーデータ」です。この記事では、教育ビッグデータをもとにした最新の「効果のある早期教育」「効果のない早期教育」について、詳しく解説。精神論ではなく、“科学的に正しい”とされているデータばかりを集めています。「Society 5.0 時代」という新社会が到来するなかで、人々に必要になっていくのは適応していく能力です。適応力のある大人に成長するには、子どもが自分で考え、判断し、行動しながら学んでいけるような環境をつくり、思い切りあそばせることが大切とのこと。(引用元:StudyHackerこどもまなび☆ラボ|科学的に正しい子どもの教育――最高の学習ツールは〇〇〇だった!)さまざまな調査から導き出される教育ビッグデータの結果を紹介しているこの記事。たとえば、「習い事をしている子どもは語彙力が高い」という調査結果をさらに深堀りすると、その習い事は学習系であってもスポーツ系であっても、さほど関係ないということがわかっているそう。またほかにも、「運動する時間をたくさん詰め込んでいる子どもほど、むしろ運動能力が低くなる」など、衝撃の結果が次々と明かされます。私たちが当たり前だと信じて疑わなかった教育法は、じつはそれほど強い根拠に基づいていなかった、ということがわかるでしょう。さらに、有識者が口をそろえて否定していて、かつ大規模な調査などでも否定された“効果のない早期教育”は、ずばり「詰め込み型の早期教育」。子どもたちが遊ぶ時間をなくしてしまうほどの早期教育は逆効果であり、可能性を奪うことにもつながります。就学前の子どもにとって一番いいのは、自由な時間をたくさん過ごすこと。これは、教育ビッグデータの結果を見ても明らかです。「科学的に正しい教育」おすすめ記事2■非認知能力が高い子どもは、「認知能力」も伸びていく。ではその逆は――?この記事では、今注目の「非認知能力」の伸ばし方を、あるデータをもとに詳しく解説しています。子ども教育のエキスパートである増田修治先生によると、世帯年収120万円ほどの相対的貧困層の子どもは、見た目は普通であっても、教育におけるさまざまな機会を奪われているそう。しかし、そういった環境で育ちながら学力が高い子どもは確実に存在します。彼らの共通点は、「非認知能力が高い」こと。これがなにを表しているかというと、「非認知能力が認知能力を発達させる」ということです。2000年にノーベル経済学賞を受賞した経済学者、ジェームズ・ヘックマンらは、40年にわたる長期追跡調査の分析により、「非認知能力がその後の認知能力の発達を促し、その逆は確認できない」と結論づけました。非認知能力が高い子どもはテストの点数もあがるが、テストの点数がいいからといってその子どもの非認知能力が伸びるわけではないのです。(引用元:StudyHackerこどもまなび☆ラボ|非認知能力が高い子どもは、「認知能力」も伸びていく。ではその逆は――?)非認知能力には、生活習慣や学習習慣、コミュニケーション能力といったものも含まれるため、これからは家庭でも「非認知能力を伸ばす教育」を意識する必要があります。増田先生によれば、子どもの非認知能力を高めるヒントは、親子のコミュニケーションに隠されているとのこと。まず大事なのは、「子どもの話をきちんど聞く」こと。教育熱心な親ほど、“子どものために” と勉強や習い事を押しつける傾向が見られますが、先に「なにかやりたいことある?」と子どもに聞いてから一緒に考えるほうが効果的だそう。増田先生は、「子どもに選択権をわたすことで、子ども自身の自発性や意欲、責任感を養うことにつながる」といいます。多くの保護者は、ついその過程を省きがちですが、親と子がお互いに納得できる「一致点」をつくるコミュニケーションを意識すると、子どもの非認知能力がぐんぐん育まれますよ。「科学的に正しい教育」おすすめ記事3■遺伝子か環境か。子どもの “学力と運動能力” はどちらで決まる?――「行動遺伝学」の答え子どもの能力や身体的特徴などは、親からの遺伝でどのぐらいの影響があり、育った環境はどのくらいの割合で影響するものなのか、気にならない親御さんはいないはず。この記事では、子どもの学力や運動能力、芸術的センス、性格、体格といったあらゆる能力と遺伝の関係、また周りの環境からの影響について、詳しく解説しています。安藤先生によると、知的能力を図るIQは17~18歳ごろに向かってだんだんと遺伝の影響が大きくなっていき、ひとりで行動する時間が増えていくにつれて遺伝的な個人差が現れてくると言います。一方で、0~6歳ごろまでは遺伝の影響はまだそれほど見られず、家庭環境の影響が大きいと言えるそう。このように、学力の場合は年齢によって、遺伝の影響が大きい時期と、環境の影響が大きい時期が異なるようです。(引用元:StudyHackerこどもまなび☆ラボ|遺伝子か環境か。子どもの “学力と運動能力” はどちらで決まる?――「行動遺伝学」の答え)では、そのほかの能力に関してはどうでしょうか?「運動能力」の場合、“66%は遺伝要因で決まる”といわれるほど、ほかの要素に比べて遺伝の影響が大きいそう。「芸術的センス」については、科学的な判定は難しいとしながらも、リズム感や絶対音感にいたっては“50%程度の影響がある”といわれています。さらに「性格」に関しては、遺伝的要因は30~40%程度、環境の影響は60~70%ともいわれ、環境的要因のほうが大きいことがわかります。このように、あらゆる能力は遺伝と環境が複雑に絡み合い、それぞれ重要な役割を果たしていることがわかるのではないでしょうか。記事では最後に、「良い環境を整えるためのコツ」をご紹介。早寝早起きといった規則正しい生活はもちろん、ワークショップや自然体験を積極的にさせることや、好奇心を育む本や図鑑をリビングに置いて、いつでも手に取れるようにするなど、子どもの能力を引き出すアドバイスが満載です。「科学的に正しい教育」おすすめ記事4■「勉強しろ」は逆効果!統計でわかった、親が本当にやるべき3つのことこの記事では、子どもに対してつい言ってしまいがちな言葉を、心理学的根拠をもとに分析し、さまざまな統計をもとに確実に効果がある親の対処法を紹介しています。ある調査によると、子どもに「勉強しなさい」と言うのはじつはあまり効果的ではなく、むしろ逆効果な場合もあるそう。それには、ある心理的な要因が深く関わっているといいます。心理的リアクタンスとは、「個人が特定の自由を侵害されたときに喚起される、自由回復を志向した同期的状態」。つまり、人間は「○○しなさい」「○○してはいけません」のような命令・指示を受け、自由に行動できる権利を制限されたと感じると、自分には自由があるのだと確認するために反対の行動をとる傾向があるのです。(引用元:StudyHackerこどもまなび☆ラボ|「勉強しろ」は逆効果!統計でわかった、親が本当にやるべき3つのこと)これが、「勉強しろ」と言われると反発したくなるメカニズムです。では「勉強しろ」と言わずとも、子どものやる気を引き出して、自発的に学習に向かわせるには、どうしたらいいのでしょう。そのヒントは、統計のなかにあるといいます。「子育て生活基本調査」によってわかったことは、親子が将来について話すことと、子どもの勉強時間の関連性です。「子どもと将来や進路について話す」母親と、将来について話をしない母親の子どもを比べると、平均勉強時間に17分もの差が生まれたそう。この結果から、将来について親子で話をすることで、子どもは自分の進路に対して具体的なイメージを抱き、勉強への意欲が増していることがうかがえます。またほかにも、「一緒に勉強の計画を立てる」「夢中になれる体験をさせる」など、今すぐにでも取り入れられる“子どもをやる気にさせる”コツが紹介されています。どれも「勉強しろ」の一言よりも、確実に効果を発揮しますよ。「科学的に正しい教育」おすすめ記事5■「スマホが学力を破壊」は本当?脳に良くない根本理由いまや私たちの生活に欠かせないアイテムとなった「スマートフォン」。小さい子どもたちにとっても例外ではありません。この記事では、科学的根拠をもとに、スマートフォンとの上手な付き合い方について解説しています。また、驚くべきことに「2時間以上勉強していながらスマホを4時間以上使っている子」の平均点が「30分未満しか勉強していないけれどスマホを使わない子」の平均点よりも低いという結果も出ています。せっかく勉強しても、スマホを使う時間が長ければ、勉強した時間がムダになってしまうといっても過言ではありません。(引用元:StudyHackerこどもまなび☆ラボ|「スマホが学力を破壊」は本当?脳に良くない根本理由)学習状況とスマホの利用状況の関連性を調査したところ、少なからず影響を及ぼしていることがわかりました。その最も大きな要因として、「睡眠不足」が深く関わっていることが指摘されています。動画やゲームの時間が長くなると、どうしても睡眠時間が削られてしまいますよね。その結果、学習への意欲低下や集中力の欠如、また記憶にも支障が出るという弊害も。スマホ使用が引き起こす学力低下は、さまざまな要因が絡み合った結果だといえるでしょう。また、子どもの脳の発達や学力向上は、スマホの使用時間の長さよりも、「人とのやりとりがあるかどうか」が大きく関係しているとの意見もあります。やむを得ずスマホを利用する場合も、使い方さえ注意すれば影響を最小限に抑えることができるそうなので、気になる方はぜひ参考にしてください。「科学的に正しい教育」おすすめ記事6■文部科学省や海外の調査から紐解く「本好き」な子どもと学力の深い関係読書が子どもの学力に与える影響を、文部科学省の調査や海外の研究結果から解き明かしているこの記事。「本を読むのはいいこと」だとはわかっているけど、実際に子どもの学力に結びついているのだろうか?と疑問を感じている保護者の方におすすめです。たとえば記事のなかでは、イギリスの調査結果を例に次のような結論を出しています。楽しいから読書をするという本好きな子どもは、そうでない子どもよりも、知能の発達、語彙力、スペリング力、数学の能力すべてにおいて優れていることが明らかになりました。(中略)親の学歴・収入や、遺伝として受け継ぐIQに関わらず、子どもの学力を高める秘密兵器。それが「読書習慣」なのです。(引用元:StudyHackerこどもまなび☆ラボ|文部科学省や海外の調査から紐解く「本好き」な子どもと学力の深い関係)さらに、アメリカ合衆国教育省の調査でも、「余暇に自分の楽しみのために本を読む子どもは、読解問題でより高い点数を取る」「家で多くの本を読む子どもは、英語・数学のテストでより高い点数を取る」ことがわかったそう。日本でも同様に、文部科学省の調査で「読書好きは国語と算数のテストの得点が高い」と報告されています。なぜこれほどまでに、読書が学力の高さに結びついているのでしょうか。教育コンサルタントの松永暢史氏によると、本を読むことで得られる「日本語了解能力=国語力」が大きなカギを握っているとのこと。松永氏は、「国語力がない子は、算数の文章問題が解けないし、社会・理科の授業や総合的な学習において自分の考えをまとめて発表するこができない」と指摘します。このように、学力の基盤となる「国語力」を身につけるには、読書が最も効果的だというわけです。***科学的根拠に基づいた教育法は、どれも納得するものばかりですね。これらの記事を読んで、「勉強しなさい、とガミガミ言わないようにしよう」「習い事を詰め込みすぎないようにしよう」と、お子さんへの接し方を見つめ直すきっかけになりますように。(参考)リクルートマネジメントソリューションズ|日本の教育には科学的根拠が必要
2020年03月31日「ちょっと気になる子」を理解できると関わり方が変わるこの本には、「ちょっと気になる子」を理解するために必要なことが書かれています。1章「ちょっと気になる子の理解」では、「ちょっと気になる子」は、具体的にどんな子どもなのかが見えてきます。発達障害の名称をつけるのではなく、たとえば「こだわり・興味の狭さが気になる子」とか、「ことば(コミュニケーション)が気になる子」として、園でよくある風景の描写から、どんな様子が見える子なのかがこまやかに紹介されています。そして、こういう子に共通して想定される「脳の中のちょっとした不具合」について、感覚統合の考え方から分かりやすく説明されています。Upload By 発達ナビBOOKガイド大脳が働くとは、豆電球がピカピカ光ることなのですが、そのためには、豆電球に向かって電気がスムーズに流れるよう電線を整備しなくてはなりません。「脳の働き方に、ちょっとした不具合があるかもしれない子どもたち」は、電線が細くて電気がうまくながれなかったり、つまりぎみだったりする可能性があります。そういう子どもたちには、意識的に体を動かして元気に遊ぶことで、電気が通りやすいよう電線を整備することができます。これが、感覚統合を進めるかかわりということです。(P66)この「配線」について理解することが、気になる子の理解に通じることになります。2章「子どもを支える配慮と工夫」では、「ちょっと気になる子」に有効な支援「目で見て分かる支援」と「分かりやすい話し方」について、簡潔に説明されています。また、それは「ちょっと気になる子」だけでなく、特に気になるところのない子も含めて、すべての子どもたちにとって、いいことだと述べられています。たとえば、「ひとりへの配慮が、みんなのために」として、こんなエピソードが紹介されています。ちょっと早口なある先生が、難聴の子どもがクラスにいたときに、はっきりゆっくり分かりやすく話すように心がけていたことがあったそう。そのときは「クラス全体が落ち着いて、子どもたちも授業に集中してくれていたような気がします」(P68)と書かれています。また、「目で見て分かる支援」では、いくつもの工夫が示されていますが、「お部屋の中の装飾を見直す」として、こんな例もあります。先生の説明に注目したくても、お部屋の飾りつけやロッカーからはみ出したバッグ、床に散らばっているブロックなどが視野に入って注目を阻害していることもあります。カーテンはひもで固定してはためかないようにする、室内装飾は少なめに、ロッカーの整理かごは色をそろえるなど、過剰な刺激を避ける工夫をします。(P78) By 発達ナビBOOKガイド絵を見ると、一見落ち着いているように見えた子も、部屋がすっきりすると前よりちゃんと先生の方を見ていることが分かります。すべての子どもは「地続き」で、白黒はっきりわかれているのではない、ということも伝わってきます。3章「こんなときどうすればいい?」では、さまざまなシーン別に、対処法が紹介されています。「席から離れてしまうとき」「大人から離れられないとき」「外遊びに出たがらないとき」など、保育の日常の中にありそうな、子どもの姿と、具体的にどうしたらいいか、について書かれています。「登園しぶりがあるとき」では、もしかしたら先生の声かけが元気すぎるのかも、ということから、子どものそばに行って小さな声で「おはよ」と言ってみたり、Upload By 発達ナビBOOKガイド自由遊びは「ほんとうの自由を保障する」時間として、お友だちの輪に入りたがらない子には、無理をさせずに見守ってあげたりといった保育者からのアプローチが提案されています。Upload By 発達ナビBOOKガイド4章「つながりの中で育てる」では、ここまでの3章を受けて、子どもたちの園以外の場にいるときの姿へとつながっていきます。子どもの居場所だけでなく、過去と未来についても考えられています。「子どもたちは成長とともに居る場所が変わる」ということをふまえ、今まで受けてきた支援や配慮、これから入って行く学校生活への見取り図が示されています。ここでは、なんとなく敬遠してしまいがちな、保護者と保育者が、お互いに協力していくための具体的な話し方も示されています。1秒だって気を抜けない息子のことを「まったく疲れちゃうんです」と愚痴った時、保育園の先生は笑顔でこう言ってくださいました。「○○ちゃんの頭の中、開けてみてみたいって、私たちはいつも言ってるんですよ。次々と新しいことを思いついて、ほんとうにおもしろいから!」。(P156) By 発達ナビBOOKガイド同じ子どもでも、保育の場からと家庭からでは、違う角度で見えるものです。子どもの未来、特に就学を考えるときに、「就学までにできるようにしておかなければ」と焦るのではなく、「就学してからも、支援を受けてのびのび育っていけばいいんだ」と思えてくる、希望を持つことができる。この本にはそのためにできる具体的な工夫や例が、たくさん登場するのです。保育と療育の間にいる子どもたちをどう見守るか、という課題ところで、この本の内容はもともと、臨床育児保育研究会発行の隔月刊誌「エデュカーレ」で、特別支援教育をテーマに連載されていたものだそう。実はこの「ちょっと気になる子」というタイトルとも、関連しているそうです。著者の中川信子先生にお話を伺いました。Upload By 発達ナビBOOKガイド発達ナビ編集部(以下――)「気になる子」は、保育と療育の間にいる子どもとして、この本では書かれていますが、もう少し詳しく、「気になる子」はどんな子どもなのか、あらためて教えてください。中川先生:『気になる子』とは『気にしている大人の目から見て気になる』です。はっきりした障害名がつき、『気になる子』が『障害のある子』になると、大人の中では気にならなくなるということもあります。でも、障害名の助けを借りなくても、どういう子なのかが理解でき、どう接してあげればいいのかが分かれば『気にならない、かわいい一人の子』になるのではないかと思います。『気になる子』という名称は、『エデュカーレ』の発行母体である『臨床育児保育研究会』と関係があります。保育の現場から上がってきた『子どもたちにもっと的確な保育ができるようになりたい』という願いから始まった『気になる子研究会(気に研)』が発展して『臨床育児保育研究会』になりました。私はずっと『障害』の側から子どもたちを見てきたので、『気になる子』がいたら、可能性のある障害特性を仮定し、それにもとづいた適切な対応をさぐろうとしました。それに対して、保育者の方たちは、子どもたちの行動を見て『なぜ?』『どうして?』『どうしてあげたらいいの?』と『気になる』様子だったのです。『気になる子研究会』では、『気になる子』について、『あてはまる障害名を探す』『白黒はっきりさせる』ではなく『気になる』行動の背景に想定される、さまざまな行動特性や障害の特徴などを、私からお伝えしました。そのことで、目の前の子どもたちが単に『気になる子』ではなく『こういうふうに対応したらいい子ども』となっていく。連載を依頼されたときには、そのことを読者にお伝えしたいと考えて書きました。「気になる子」には、安心できる環境が必要――現状では、療育は、保育とは別の場所で行われていることが多いと思います。このことについてはどう思われますか。中川先生:本来、障害児保育と一般保育は同じところを目指すはずだと思います。私は発達障害ということばをあまり使いたくないので、「発達系」と呼んでいるのですが、この発達系かも?という子が増えて、今、療育はパンク気味です。これを転換期ととらえ、今後は、保育園・幼稚園などの生活の場で、療育に近い関わりが行われ、わざわざ別の場所での訓練に通わなくてもすむようになればいいと思います。保育園、幼稚園での「療育に近い関わり」「ていねいな配慮のある関わり」をこの本では提案したつもりです。でも、そのためには、集団の人数の問題は避けてはとおれません。どうしても大人数だと配慮は行きとどきにくいし、子どもの側の集中もとぎれがちになるからです。また、『分からない』と声をあげればちゃんと助けてもらえる環境があって、安心して『分からない』『教えて』と言えることが大事なんですよね。そこで子どもの学びは進むのですから。それはやはり、大人数のクラスでは、かなえられないことだと思っています。安心できる環境はとても大切です。『アタッチメント』ということばは、日本語では愛着と訳されて、何だか「母の愛」というようなイメージがありますね。でも本来アタッチメント(attachment)とは、しがみつくという意味。風が強いときに飛ばされないように柱のようなものにしがみつく、そのことがアタッチメント。困ったときや不安なときでも、頼れる人がいれば安心していられます。集団生活の中でも子どもが安心して過ごせるかどうか、園の先生の態度が大きな意味を持つと思います。感覚の違いを理解できたら、「気になる子」の理解は進むはずUpload By 発達ナビBOOKガイド――本の中には、感覚が敏感な子どもへの理解についての話も登場します。過敏さを理解するには、どんな風に考えたらいいですか。中川先生:たとえば、私たちだって、押し入れに頭をつっこんで探し物をしているようなときに、急にうしろから背中をたたかれたりすれば、びっくりして飛び上がりますよね。でも、後ろに人がいることが分かってさえいれば、そんなにびっくりはしないものです。過敏さがある子たちはいつもこんな感じなのでしょう。不安な環境にいるからびっくりして、大人から見ると気になる行動に出てしまう。でも、安心できる環境にいれば、そんなに過敏にはならずにすむ。本の中でふれた、感覚統合の考え方を知ると分かりやすいと思います。保育士さんは、元気な人が多いので、大きな声で『おっはよー!』って挨拶なさいますよね。でも、耳が敏感で音に過敏な子は、その声にびっくりしてしまうわけです。前向きな方には、遊びが嫌いな子、みんなのところに参加したがらない子の気持ちも分かりづらいんじゃないかなと思います。この本を読んでくださる保育者には、『気になる子』はこう感じているかもしれないと気づいていただけたら、と思っています。子育てには正解はないから、保護者がひとりぽっちにならない子育てを――ところで、保護者の方たちは、保育者よりも長い時間子どもと接する中で、どうしていいか分からなくなることも多くあります。そんなときはどうしたらいいでしょうか。中川先生:保護者の方は、子どもの発達について『自分の育て方が悪いのではないか』と悩むことが多いのも事実です。だからこそ、脳の働きについて正しく理解することが、すべての子どもの育ちがよく見える助けになるのではないでしょうか。それでも、こうしたことは頭で理解していても、日々の子育ての中でやっぱりイライラしたり怒ってしまうことはありますね。人間は感情の動物、カッとなることはありますよ。でも、手はあげないでください。もし、つい手が上がってしまったら、その手はそのまま自分の頭にのせておいてくださいね。腹が立ったときは、じょうずに感情を別のところに吐き出して。クッションや枕に口を当てて『もうやだー!』って20回くらい叫んでごらんなさい、だんだんクールダウンしますよ。つらいことは、体で表現すると楽になります。理屈をこねても鎮静しません。『怒っている私』を、子どもに当たる以外の方法で解放してあげてほしいです。子育てには、正解はありません。叱って育てても、その子らしさを受け入れて育てても、結果は親子ごとに違うかもしれない。でもあとになって、できなかったことをいろいろと引っ張り出してもしょうがないことなんです。『みんなとちがう』ことが心配になるのは親であれば誰しもですが、どうか、分かってくれる人や、同じ思いをしている人を見つけて、『ひとりぽっちじゃない』状態で、長丁場の子育てに取り組んでいってほしいと願っています。そして、保護者の方はお子さんのことがよく分かっていても、先生に伝えるのはなかなか難しい場合がありますよね。この本の中に、お子さんにあてはまるような例があったら、コピーを先生に渡していただき、『こんな風に書いてある本がありました。うちの〇〇と似ているので、お持ちしました』と、『さりげなく』お伝えになる助けになればと思います。「気になる子」を理解することが、幸せにつながってほしい――気になる子は、その子自身が困っていることが多いです。どうしたら、気になる子自身も周りのお友だちや大人たちも、困ることがなくなるでしょうか。中川先生:昔から、『いっぷう変わった子』や『元気過ぎる子』や『ひとつのことに熱中すると他のことが目に入らない子』というのは、たくさんいましたし、今もいます。私自身もそうです。私は家族全員がちょっと変わった人たちだったので、特に問題視されない恵まれた環境だったと思いますが、それでも悩み深い少女でした。自分のそういう部分を、もしかしたら心理学を勉強したらコントロールできるかな?と思い、『人の幸せのために役立つ心理学』を学ぶことができたことで、今の私があります。ところが、今はちょっとでも『みんな』から外れていると、親も保育者・先生方も『発達障害ではないでしょうか?』と、心配するようなご時世になってしまいました。『多様性の尊重』とか『一人ずつに合わせた教育(保育)』と言いながら、その一方で社会の規範がどんどん狭まり、そこから少しでもはみ出た子には『障害』のレッテルを貼って『特別な支援』につなげなくては!と焦る風潮が強まっていると感じます。障害は、英語ではdisorderで、これは本来、列の乱れ、列からちょっと外れた状態を意味します。今の日本では、ちょっとでも列から外れると、列に入れようと、ぎゅーぎゅー引っ張るやり方をしていますが、ほんとうは、列には入ったり、戻ったりすればいい。列への参加のしかたはいろいろでいいはずなんです。『全ての子を、こういうふうに見て、こういう配慮をすればいいのね』と『集団の中での個別配慮』についての認識を、子どもを理解することで深めていってもらえたらと願っています。そのために、例えばこの本の中の一つのお子さんの例を題材に、保育の場で先生方同士でお話しいただき、『○○組さんの○○くんのこともこんなふうに見ると分かりやすいね』と共通認識を持つために役立てていただけることもできるのではないかと思います。ある意味『ふつうとは違う』側の中に、人間としての豊かな可能性や、人と協力し合いながら生きていく大切さが潜んでいると思います。これから育っていく子どもたちと、そのご家族が『幸せだなぁ』って思っていただけるといいなと思いながら、この本を書きました。Upload By 発達ナビBOOKガイド絵によっても、子どもへの理解がより深まるこの本には、たくさんの場面についてのイラストが登場します。子どもがどんな風に感じているのか、子どもの表情や、ちょっとした体の使い方に表現され、「こういう子、いるね」「こういうことある!」というリアルさがあります。大人の接し方によって、子どもはこう変わるといった様子も、おおげさではなく描かれています。また、実は表紙には違うイラストが入る予定だったそうです。子どもはニコニコして前を向き、ママもスカートをはいていて余裕が感じられる様子でした。(p148にあります)。でも、中川先生は「ちょっと気になる子は、なかなかこうはいかないでしょう」と提案され、その結果、ちょっと不機嫌そうな子どもの様子と、笑いつつもちょっと困り顔のお母さんの表情の絵となったのだそうです。こういう子いるね、うちの子と似てる、と思ったら、そのページからまずは読んでみてもいいかもしれません。育児する人、保育する人へ、「この子はこんな風に感じているかもしれないから、こうしてみたら?」という温かい提案を、少し先の成長した姿とともに見せて、安心させてくれる「保育園・幼稚園のちょっと気になる子」です。取材・文/関川香織写真/鈴木江実子
2020年03月31日「子どもは嘘をつくもの」そうはわかっていても、わが子の嘘は気になるものです。どうして嘘をつくの?誰かの影響?ひょっとして生まれつき嘘つきなの?「嘘をつくことは悪いこと」だとわかっているからこそ、子どもが嘘をついていると不安になりますよね。今回は、「子どもの嘘」と「親の嘘」の深い関係について調べてみました。「正直さ」を求めてもきりがない自分が子どもだったときを思い出して、「友だちに自慢したくて、つい嘘ついちゃったな」「すごいと思われたくて大げさに言ったこともある」と反省したことがある人も多いのではないでしょうか?また、親に叱られたくないばかりに、宿題をやっていないのに「もう終わった」と言ったり、テストの点数が悪かったときに「まだ返してもらっていない」とごまかしたりなど、一度も嘘をついたことがない人なんていないはずです。それなのに、わが子が嘘をついているのに気づくと、「うちの子が嘘をつくなんて信じられない!」「どこかで悪い影響を受けて嘘つきになったのかも……」などと、過剰に心配したり不安になったりしていませんか?子どもは嘘をつくもの。さらに言うと、大人だって嘘をつくことはあります。ですから、人を傷つけるような深刻な嘘でない限り、あまり神経質にとらえる必要はないでしょう。臨床心理士の井上序子さんは、子どもが嘘をつく原因として次の3つ挙げています。事実と空想の区別がつかない心理的発達が未熟な幼い子どもは、空想や願望を本当のことのように話します。もちろん本人には、嘘をついているという自覚はありません。かまってほしい痛くもないのに「お腹が痛い」と言ったり、学校での出来事を実際より大げさに表現したりと、親にかまってほしいから嘘をつく子も。原因は親子のスキンシップ不足にあるといいます。自分の身を守りたい自分の失敗を「○◯くんのせいでこうなった」と友だちのせいにしたり、まだやっていないのに「宿題はやったよ」と言ったりするのは、親に叱られたくないからです。親としては、子どもに「嘘はダメ」「正直でなければいけない」と教えるべきですが、一方で親自身が子どもの前で矛盾した態度をとってしまうことも。その結果、子どもの「嘘」がますます加速するという驚きの調査結果もあるようです。「子どもの嘘」ひょっとして原因は「親の嘘」?シンガポールにある南洋理工大学の心理学研究者らは、18〜28歳の若者379人に対して「嘘」にまつわる調査を実施しました。その内容は次のとおり。まず、調査対象者に「子どものころに親にどんな嘘をつかれたか」を聞きます。たとえば、なにかをおねだりしたときに「今日はお金を持ってきていないからまた今度ね」と言われたことや、言うことを聞かなかったときに「いい子にしないとおまわりさんを呼ぶよ!」「早く来ないと置いていっちゃうよ!」などと言われたことなど、さまざまなパターンの嘘を例に挙げて、「親に嘘をつかれたことがあるかどうか」を聞き出しました。そして次に、「大人になった今の自分は親にどのくらい嘘をついているか」をたずねたところ、子どものころに親が多く嘘を言っていた人ほど、大人になった現在、親に対して嘘をつく傾向が高いということが明らかになったのです。さらには、攻撃的で規則を破りやすいなど、社会的に好ましくない問題を抱えるリスクも高まると判明しました。調査を行なったセトー准教授は、「親が子どもに『正直でいることが一番』と教えているにもかかわらず、嘘をついて正直でないところを見せてしまうと、子どもに矛盾したメッセージを送ることになる」と指摘したうえで、結果として子どもの正直さを欠いてしまうことにつながったのではと結論づけています。親がつく嘘=「ダブルバインド」もちろん親は、悪意をもって子どもに嘘をつくことはありません。親が子どもに対して嘘をつくときは、「良かれと思って」「しつけのためにしょうがなく」などと、子どものためを思うがゆえに仕方がない場合が多いのではないでしょうか。しかし、心理学に基づいた育児メソッドを提唱している佐藤めぐみさんは「親が良かれと思ってつく嘘であっても、子どもの正直さに影響を及ぼします」と忠告します。悪気があるかないかの判断は子どもには難しく、親の言葉をそのまま素直に受け取ってしまうからこそ、軽い気持ちで嘘をつくことには気をつけなければなりません。親がつい言ってしまうのは、「おもちゃを片づけないなら全部捨てちゃうからね!」「今度またいたずらしたら、もううちの子じゃないよ!」「好き嫌いばかりするなら、もうごはん作ってあげないからね!」など、決して実行に移さない非現実的な内容なのではないでしょうか。これはすなわち “嘘” であり、「ダブルバインド」とも呼ばれます。「ダブルバインド」とは、相反するメッセージの間で板挟みになった相手が、最終的には従わざるをえなくなるコミュニケーションパターンのこと。親は無意識ではあるものの、ダブルバインドによるしつけは、子どもを脅して言うことを聞かせているのと同じです。ダブルバインドを頻繁に行なうようになると、子どもは次第に「お母さんは嘘を言っている」「お父さんは口ではこう言うけど、結局いつも実行しない」と、親を信用しなくなります。「嘘をつく」以外の解決策を用意するすべての発言に嘘がなく、つねに正直であることは難しいものです。しかし、親が子どもに向けた言葉は、思っている以上に子どもの人格形成に大きな影響を及ぼします。だからこそ、子どもの前では「自分の言葉に正直であること」「自分の発言に責任をもつこと」を心がけるようにしましょう。そうすることで、子どもは大人のまねをして自ずと正直になっていきます。南洋理工大学のセトー准教授は、「嘘をつく」以外の方法を考えるべきだと説きます。たとえば、子どもの感情に寄り添って理解を示す、問題を一緒に解決する、情報を提供する、選択肢を与える……。子どもに言うことを聞かせるためにつく嘘のほとんどは、それ以外の解決法があります。お菓子を買ってと言って聞かない子どもに対して、面倒になって「このお店はお菓子置いてないよ」「売り切れだって」と軽い嘘をついてしまうこともありますよね。その場ではその嘘で乗り切れたとしても、ごまかしただけで何の解決にもなっていません。それよりも、「今度の日曜日にお父さんと一緒に買いに行こう」「おうちにまだ食べていないお菓子が残っているよ」と、嘘をつかずに子どもを納得させられる言い方がないか考えてみましょう。***子どもがまだ小さいからといって、嘘をついてごまかし続けていると、いずれ大きくなったときにネガティブな影響が表面化することもあります。子どもに「正直さ」を求めるのなら、まずは親がお手本を見せてあげましょう。(参考)StudyHackerこどもまなび☆ラボ|子どもがウソをついたとき、親はどう対応すればいいの?ニューズウィーク日本版|親に嘘をつかれた子は親に嘘をつく大人に?調査結果GetNavi web|「しつけ」のための嘘が逆効果?親が嘘をつくと子供も嘘つきになりやすいことが判明All About|親の嘘、悪気がなければ子どもに許される?StudyHackerこどもまなび☆ラボ|子どもの自己肯定感が低下する「ダブルバインド」。“条件付きの愛”は危険です
2020年03月16日どんなに子どもを愛していても、自由奔放な子どもに振り回されてイライラしてしまうこともあるのが子育てです。自分のイライラにどう対処していいかわからず、悩んでいる人もいるのではないでしょうか。そこで、「幸福学」の第一人者である慶應義塾大学大学院教授の前野隆司先生に、子育てでイライラせず、かつ幸せになるという欲張りな方法を教えてもらいました。構成/岩川悟取材・文/清家茂樹写真/石塚雅人(インタビューカットのみ)イライラした自分を責めずに認める子育ては本当にたいへんなことの連続です。いうことを聞いてくれない子どもに対してイライラしてしまうことも少なくないでしょう。そのとき、イライラしてしまった自分を責めていませんか?それでは自分が苦しくなるばかりです。子育てにはイライラすることもあって当然なのですから、自分を責めるのではなく、「イライラしたなあ」と、イライラした自分をただ認めることが大切です。というのも、「イライラは完全に悪いものだ」といい切れるものではないからです。親のイライラというものは、子どもにも伝わり、ある程度の教育効果があります。親がイライラしていると、その事実を子どもは察して、「こういうことはしてはいけないな」と感じることもある。あるいは、場合によっては反面教師としての教育効果かもしれません。「イライラしているお母さんみたいな人にはなりたくない、穏やかな人になりたい」と、子どもが思うようなことです。しかしながら、子育てをするうえでは、やはりなるべくイライラしないほうが理想的です。ですから、イライラを抑えるためのトレーニングをしましょう。イライラしたら、まずはその事実を認める。それから、6秒間、深呼吸をしてイライラを子どもにぶつけたくなるのをぐっと我慢する。これは、怒りをコントロールするメソッドであるアンガーマネジメントの手法です。怒りは、6秒間我慢すれば消えるという研究結果があるのです。さらに、イライラしている自分を俯瞰するイメージで客観視してみてください。これら3つのことを続ければ、イライラに対して冷静に対処でき、徐々にイライラを抑えられるようになっていくはずです。子育てをめぐる夫婦の方針がちがってもいいただ、子育てにおいてイライラさせられるのは、子どもの行動だけに限りません。たとえば、どちらかといえば母親に多いことだと思いますが、「夫が子育てに協力してくれない!」ということも、イライラしてしまう大きな要因のひとつです。そういう人のなかで、パートナーに対して「あきらめ」の気持ちを持っている人はいませんか?「夫にいっても、どうせわかってくれない」と思っているようなことです。あるいは、子育てをめぐって夫婦喧嘩をしたときに、解決しないまま、「その話をするとまた喧嘩になるから」と放置してしまう。そしてまた別の理由で喧嘩をして解決しないまま放置する……。そのようにして、夫婦がわかり合えない事実をどんどん蓄積していないでしょうか。これは、子育てのためには完全にNGなことです。いや、最悪といってもいいでしょう。なぜなら、子育てをめぐる父親と母親の方針が食いちがっていると、子どもは混乱してしまうからです。ですから、やはりあきらめることなく夫婦でよく話し合うことが大切です。その場合、夫婦間で子育ての方針が一致することが理想ですが、もしちがっていたとしても、きちんと夫婦で話し合ったうえで「わたしたちは考えがちがうんだね」と認め合うことができていれば問題ありません。これは、先に挙げた、あきらめによって子育ての方針の食い違いを放置していることとはまったくちがうこと。夫婦が互いに認め合っているために、「考えはちがうけど、共存していこうよ」と前向きに子育てに向かうことができるからです。「お父さんとお母さんの考えはちがうけど、お父さんもお母さんもあなたのことをきちんと考えているんだよ」と子どもに伝えられる。そうすれば、子どもも混乱することなく両親の考えのちがいを受け止めてくれるでしょう。夜寝る前に、その日にあったいいことを3つ書き出す最後に、子育て中のみなさんがイライラせずに幸せになれる、とっておきの方法をお教えしましょう。これは、アメリカの心理学者であるマーティン・セリグマンが唱えているもので、「毎晩寝る前に、その日にあったいいことを3つ書き出す」という方法です。人間の脳は、同じ失敗を繰り返さないため、ポジティブなことよりネガティブなことをより強く記憶するようにできています。危機管理能力としては優秀ですが、やはり嫌なことばかり覚えていては、幸せを感じにくいですよね。でも、よく考えてみれば、ごく平凡に思える1日のなかにも見落としているいいことはたくさんあります。それこそ、子育て中の親であれば、いうことを聞いてくれない子どもにイライラさせられることがあったとしても、昼寝している子どもの寝顔を見れば「なんてかわいいんだ」と思うでしょう。親として最高に幸せな瞬間です。その事実を書き出すことで、日々のイライラは減り、幸せを感じられるようになるはずです。この方法が面白いのは、習慣化するといいことに自然に目が向くようになる点です。いいことを書き出したいがために、いいことを見つけられるようになるというわけです。いわば、「幸せ体質」になるといっていいでしょう。わたしの妻なんて、まさにその幸せ体質。朝の9時になる前に、「もういいことが3つ見つかっちゃった!」なんていっていますよ(笑)。『「幸福学」が明らかにした 幸せな人生を送る子どもの育て方』前野隆司 著/ディスカヴァー・トゥエンティワン(2018)■ 慶應義塾大学大学院教授・前野隆司先生 インタビュー記事一覧第1回:“他人との比較”で得た幸せは長続きしない。「幸福学」で分かった、親子で幸せになる方法第2回:目的もなく東大に入っても意味はない。本当に輝けるのは、いい意味での「オタク」だ!第3回:「子どもは宝物だ」という思考が危うい訳。子を思うなら親は“自らの幸せ”を追求すべき第4回:子育てでイライラした時どうすれば?幸福学の権威が教える「幸せ体質な親」の目指し方【プロフィール】前野隆司(まえの・たかし)1962年1月19日生まれ、山口県出身。慶應義塾大学大学院システムデザイン・マネジメント研究科(SDM)教授。1984年、東京工業大学工学部機械工学科卒業。1986年、東京工業大学理工学研究科機械工学専攻修士課程修了。同年、キヤノン株式会社に入社。カリフォルニア大学バークレー校客員研究員、慶應義塾大学理工学部教授、ハーバード大学客員教授等を経て、2008年より現職。2017年より慶應義塾大学ウェルビーイングリサーチセンター長兼任。研究領域は、幸福学をはじめ、ヒューマンロボットインタラクション、認知心理学、脳科学、心の哲学、倫理学、地域活性化、イノベーション教育学、創造学と幅広い。主宰するヒューマンラボ(ヒューマンシステムデザイン研究室)では、「人間に関わる研究ならなんでもする」というスタンスで、さまざまな研究・教育活動を行っている。『感動のメカニズム 心を動かすWork&Lifeのつくり方』(講談社)、『幸せのメカニズム 実践・幸福学入門』(講談社)、『古の武術に学ぶ無意識のちから 広大な潜在能力の世界にアクセスする“フロー”への入り口』(ワニブックス)、『幸せな職場の経営学 「働きたくてたまらないチーム」の作り方』(小学館)、『ニコイチ幸福学 研究者夫妻がきわめた最善のパートナーシップ学』(CCCメディアハウス)、『AIが人類を支配する日』(マキノ出版)など著書多数。【ライタープロフィール】清家茂樹(せいけ・しげき)1975年生まれ、愛媛県出身。出版社勤務を経て2012年に独立し、編集プロダクション・株式会社ESSを設立。ジャンルを問わずさまざまな雑誌・書籍の編集に携わる。
2020年03月14日幸せになりたい――。人間の究極の願いかもしれません。それこそ子を持つ親なら、我が子には絶対に幸せな人生を送ってほしいと願うでしょう。そこで、「幸福学」の第一人者である慶應義塾大学大学院教授・前野隆司先生に、親子そろって幸せになる方法を教えてもらいました。まずは、そもそも幸福学とはどんな学問なのかというお話からはじめてもらいます。構成/岩川悟取材・文/清家茂樹写真/石塚雅人(インタビューカットのみ)他人と比較できるもので得られる幸せは長続きしないわたしの専門のひとつである「幸福学」を、まだ知らない方もおられるかもしれません。幸福学が世界的に広まりはじめたのは1980年代になってからです。ただ、「人はいかにすれば幸せになれるのか?」ということについては、2500年くらい前から哲学者や宗教学者が研究をしてきました。そこに科学の視点が入り、さまざまな説にエビデンスがもたらされ、幸福学という学問として確立されたのが1980年代以降ということなのです。心理学・統計学ベースの幸福学は、哲学でも宗教学でもありませんから、「人の幸せはなにか?」という根本的な問いを扱うものではありません。幸福学の研究では、その問いはさておき、研究対象の人たちにはそれぞれの主観で自分が幸せかどうかを問います。そして、「幸せだ」と答えた人たちにはどういう共通項があるのかを研究し、「人はいかにすれば幸せになれるのか?」という問いに答えを導くのです。また、そういった基礎研究に加えて、応用分野もある。たとえば、基礎研究によってわかった人が幸せになる仕組みを、企業経営やそれこそ子育てなどに応用し、幸せになる方法を広めることも幸福学の範疇に含まれます。さて、その幸福学の研究が進んだことで、ひとつの大きな事実が見えてきました。その事実とは、「お金やモノ、地位など他人と比較できるもので得られる幸せは長続きしない」ということです。たとえば、ある人が昇進して給料が上がったとします。もちろん、その瞬間はうれしいし、幸せを感じるでしょう。でも、もっと給料をもらっている人は世界にはいくらでもいる。上を目指せばきりがありません。そのことに気づき、せっかく給料が上がって得た幸せも、結局は長続きしないのです。長続きする幸せを得るために必要な「幸せの4つの因子」では、長続きする幸せを得るにはどうすればいいのでしょうか?それは、「心と体をいい状態にすることで幸せになる」ということです。そのうち、心の状態に着目すると、幸せな心の状態というものは数え切れないほどあります。それらを因子分析という手法によって整理したところ、4つにわけることができました。つまり、心がその4つの状態にあれば、強い幸福感を得られるというわけです。それらを、わたしは「幸せの4つの因子」と呼んでいます。【幸せの4つの因子】「やってみよう」因子「ありがとう」因子「ありのままに」因子「なんとかなる」因子では、子育て中の親と子どもはどうすれば幸せになれるのでしょうか?4つの因子それぞれをベースにお話しましょう。まずは「やってみよう」因子から。いまの子どもたちの多くは幼いときからたくさんの習い事をしたり、塾に通ったりしています。なかには、「通わされている」といったほうがいい子どももいるでしょう。これが大問題。やりたくもないことをやったところで幸せを感じられるでしょうか?答えは考えるまでもなく「ノー」ですよね。人は、自分の意志で「やってみよう」と思うことをやることで幸せを感じられるからです。親であるみなさんに注意してほしいのは、親自身も「やってみよう」と思っていなければならないということ。「自分は英語が苦手だったから」と、子どもを英語塾に通わせているだけでは、親の「やってみよう」が足りません。「幸せは伝染する」ものですから、親も「やってみよう」ということが日常になければならない。つまり、親は親、子は子で、それぞれが好きなことをやることで互いに幸せが伝染し、親子そろって幸せになれるのです。子どもに感謝し、子どものありのままを認めるふたつ目は「ありがとう」因子です。イメージしやすいことだと思いますが、感謝の気持ちを忘れない人は周囲といい人間関係を築けるので、当然、幸せを感じることができます。ところで、みなさんは子どもに感謝していますか?あるいは、夫や妻に感謝しているでしょうか?子育ては本当に大変なものです。協力が足りないパートナーや駄々をこねる子どもに対して、ついイライラしてしまうこともあるでしょう。でも、それでは幸せはあなたから逃げてしまいます。「わたしのパートナーでいてくれて、わたしの子どもに生まれてくれてありがとう」という気持ちを忘れず、日常的に「ありがとう」と口にするようにしてください。3つ目は「ありのままに」因子です。この因子を潰してしまうのは、「他人との比較」です。このことにも、「やってみよう」因子と同じように、いまの子どもがたくさんの習い事をしていることが悪影響を与えていると感じています。子どもが習い事をしていると、親としてはどうしても他の子どもと我が子の出来を比較してしまいがちです。そうして他人と比較されてばかりいる子どもが幸せを感じられるはずもありません。そもそも、子どもの生育には非常に大きな個人差がありますし、親の希望でやらせている習い事が、その子が得意なことではないかもしれません。親の勝手な理想の子ども像を我が子にあてはめるのではなく、我が子の「ありのまま」を受け入れ、また子ども自身にも「ありのままの自分でいいんだ」と思わせてあげましょう。失敗した子どもに「グッジョブ!」と声をかけるアメリカ人最後は「なんとかなる」因子です。「自信がない」「どうせ自分には無理」とネガティブ思考でチャレンジを恐れる人と、「なんとかなる」とポジティブに考えてさまざまなことにチャレンジしていく人ではどちらが幸せになれるでしょうか?答えはもちろん後者です。そして、子どもをポジティブ思考にするために重要となるのは、親の言葉かけです。ここで、わたしがアメリカに住んでいたときに妻から聞いたエピソードをお話しましょう。その日、妻はまだ幼かった子どもを公園で遊ばせていました。すると、アメリカ人の子どもが転んでしまった。その子の親は、どんな声をかけたと思いますか?日本人なら、「大丈夫?」と心配し、「だから気をつけなさいっていったじゃない」なんて小言をいってしまうかもしれません。ところが、アメリカ人のその母親は、間髪入れずに「グッジョブ!」といったのだそうです。驚きですよね。アメリカ人は、子どもがなにかにチャレンジして失敗するたび、「グッジョブ!」「ナイストライ!」と声をかける。それを何度も繰り返すのですから、仮にもともとは引っ込み思案の子どもだったとしても、どんどんポジティブになっていくはずです。民族性というところもありますから簡単ではないかもしれませんが、みなさんも、もっと前向きな言葉を子どもにかけてあげることを意識してはどうでしょうか。『「幸福学」が明らかにした 幸せな人生を送る子どもの育て方』前野隆司 著/ディスカヴァー・トゥエンティワン(2018)■ 慶應義塾大学大学院教授・前野隆司先生 インタビュー記事一覧第1回:“他人との比較”で得た幸せは長続きしない。「幸福学」で分かった、親子で幸せになる方法第2回:目的もなく東大に入っても意味はない。本当に輝けるのは、いい意味での「オタク」だ!(※近日公開)第3回:「子どもは宝物だ」という思考が危うい訳。子を思うなら親は“自らの幸せ”を追求すべき(※近日公開)第4回:子育てでイライラした時どうすれば?幸福学の権威が教える「幸せ体質な親」の目指し方(※近日公開)【プロフィール】前野隆司(まえの・たかし)1962年1月19日生まれ、山口県出身。慶應義塾大学大学院システムデザイン・マネジメント研究科(SDM)教授。1984年、東京工業大学工学部機械工学科卒業。1986年、東京工業大学理工学研究科機械工学専攻修士課程修了。同年、キヤノン株式会社に入社。カリフォルニア大学バークレー校客員研究員、慶應義塾大学理工学部教授、ハーバード大学客員教授等を経て、2008年より現職。2017年より慶應義塾大学ウェルビーイングリサーチセンター長兼任。研究領域は、幸福学をはじめ、ヒューマンロボットインタラクション、認知心理学、脳科学、心の哲学、倫理学、地域活性化、イノベーション教育学、創造学と幅広い。主宰するヒューマンラボ(ヒューマンシステムデザイン研究室)では、「人間に関わる研究ならなんでもする」というスタンスで、さまざまな研究・教育活動を行っている。『感動のメカニズム 心を動かすWork&Lifeのつくり方』(講談社)、『幸せのメカニズム 実践・幸福学入門』(講談社)、『古の武術に学ぶ無意識のちから 広大な潜在能力の世界にアクセスする“フロー”への入り口』(ワニブックス)、『幸せな職場の経営学 「働きたくてたまらないチーム」の作り方』(小学館)、『ニコイチ幸福学 研究者夫妻がきわめた最善のパートナーシップ学』(CCCメディアハウス)、『AIが人類を支配する日』(マキノ出版)など著書多数。【ライタープロフィール】清家茂樹(せいけ・しげき)1975年生まれ、愛媛県出身。出版社勤務を経て2012年に独立し、編集プロダクション・株式会社ESSを設立。ジャンルを問わずさまざまな雑誌・書籍の編集に携わる。
2020年03月11日みなさんは、お子さんを褒めることが多いですか?それとも叱る回数のほうが多いですか?「子どもの自己肯定感を高めるためにも褒めてあげなきゃ」とプレッシャーを感じている親御さんも多いのではないでしょうか。「子どもは褒めて伸ばすべき」という考えにとらわれすぎて、ちょっとしたことで過剰に褒めるなど、間違った褒め方をしている親御さんが増えているいま、子どもが「褒められ依存症」になっているケースも少なくありません。今回は「褒めることのデメリット」について、詳しく解説していきます。その褒め言葉、本当に必要?近ごろでは、「褒めて伸ばす」子育てが主流になってきています。育児書やメディアなどでは、子どもを褒めることのメリットが盛んに取り沙汰され、効果的な褒め方を指南する専門書もたくさん目にするようになりました。たしかに、叱られるよりは褒められたほうが自己肯定感も上がり、毎日を前向きに過ごせそうです。特に子どもは素直で単純なので、親が上手に褒めてあげることで、本人のやる気を引き出したり、持っている能力を伸ばしてあげたりできるでしょう。しかし、心理学者の榎本博明先生は「なんでも褒めればいいと勘違いしている親が増えている」と指摘します。褒めることで自信がつき、期待に応えようと頑張るようになるというメリットがある一方で、「打たれ弱くなる」「褒めないと機嫌を悪くする」「注意や叱責を素直に受け入れられない」「見返りがないとやる気になれない」などといった弊害をもたらすかもしれないのです。榎本先生は、「褒めることと叱ることのバランスを考えることが大切」と説きます。褒めてばかりいても、子どもにとっては悪影響を及ぼすことも。次に詳しく見ていきましょう。「褒められないとモチベーションが上がらない」人間になる!?「子どもを褒めることによる弊害」には、具体的にはどのようなものがあるのでしょうか。タイプ別に解説していきます。■“褒められること”が目的化する医師・臨床心理士の田中茂樹先生によると、褒められてばかりいると「親に褒められること」を優先的にやろうとするそう。しかも、繊細で大人の顔色をうかがうタイプの子ほど、その傾向が強いといいます。この問題点は、「自分が本当にしたいこと」と「親に褒められるからすること」の境界が曖昧になること。つまり、子どもは「自分で選んだ」と思い込んでいても、根底には「親が喜ぶから」「親が望んでいるから」ということが選択の基準になっているのです。それは、おもちゃや食事といった小さなことから、進路や友人選び、就職や結婚など人生における大きな選択に至るまで、子どもの心を支配します。■褒められないと不安になる些細なことでもすぐに褒めてしまう親御さんは要注意です。公認心理師・産業カウンセラーの大美賀直子氏によると、たとえば「宿題できたの?えらいわね」などと、やって当たり前のことでもいちいち褒められていると、子どもは「褒められる状態」がデフォルトになるそう。すると、「褒められない状態」に不満や不安を感じるようになるといいます。さらには、社会に出てからは「褒められないとモチベーションが上がらない」「上司が命令ばかりしてくるからムカつく」というように、自分は何もしなくても褒められて当然の存在だと勘違いして周囲とぶつかるケースも見られるそう。■失敗を恐れるようになる榎本博明先生は、「褒められてばかりいると、ちょっと注意されただけで自分が全否定されたような気になってしまう」と述べています。そのため、非常に打たれ弱く、挫折することを必要以上に恐れるように。頑張ってもいないのに、むやみやたらに褒められ続けてきた結果、困難に立ち向かったり、失敗を反省したりする経験がないまま大人になってしまうのは本人のためにもなりません。■難しい課題に挑戦しなくなる褒められ続けて「失敗を恐れる」という状態からさらに発展すると、「難しい課題に挑戦しなくなる」傾向が見られるようになります。榎本先生によると、褒められ続けると、その状態を維持しなければならなくなるため、失敗するかもしれない難しい課題には最初から挑戦しなくなるそう。確実に褒められる自信がある得意な課題ばかりに取り組み、自分を成長させるための難しい課題には手をつけなくなってしまうのです。■本番に弱くなる中学受験専門塾ジーニアス代表の松本亘正さんは、「褒めて伸びる子」と「褒めて伸ばすが通用しない子」の違いについて、次のように説明しています。そもそも、聞き分けがよくてかしこい子であれば、親は自然に褒める機会が多くなります。すると本人が勝手に自信をつけて、さらに伸びるようになるそう。一方で、調子に乗ってふざけやすかったり、うっかりミスが多かったりすると、親は叱ったり小言を言ったりする機会が増えます。しかし、親が育児本などを読んで「褒めて伸ばさなきゃ」と叱ることを我慢すると、子どもはますます野放し状態に。松本さんは、「注意されるべきときに甘やかされた子どもは、ここぞというときに実力を発揮することができない」と断言します。叱られずに甘やかされた環境では、いざ勝負というときに結果を出せるタフなメンタリティーは育たないのです。■ズルをするようになる米カリフォルニア大学、カナダのトロント大学、中国杭州師範大学の研究者らによる調査で、子どもを「賢い」「頭がいい」と褒めると不正行為を働きやすくなる可能性があるという驚きの結果が出されたそうです。3歳児と5歳児を各150人ずつ、計300人の子どもたちを対象にしたこの実験では、伏せられた数字カードの数を当てるという簡単な推理ゲームを行ないました。子どもたちが数字を当てたあとに、あるグループには「賢いね」と褒め、またあるグループには「がんばったね」と褒め、さらにはまったく褒めないグループを作ります。その後、「ズルをしないでね」と約束したあとに研究者らが部屋を出て子どもたちの様子を別室で観察しました。すると、「賢いね」と褒められた子どもたちだけ、伏せられたカードを盗み見し始めたのです。研究者らはこの結果を受け、不正行為を働いてしまう原因として、「賢い」という褒め方がプレッシャーになっている可能性を示唆しています。「いいことをした場合に『素晴らしい』とその行為を褒めるのとは異なり、『賢い』というのは自身の能力への評価であることを子どもは理解しています。自分の能力だけでは達成できない問題に直面したときでも他人の期待に応え、『賢い』と評価してもらう必要があると考え、不正行為を行うようになってしまうのです」(引用元:J CAST ニュース|子どもを「賢い」と褒め続ける教育ご用心!インチキする子になりますよ)「頭がいい=賢い」ことを褒められた子どもは、「頭が良くない」結果が出ることを恐れ、期待に応えなければという過度なプレッシャーを感じます。そして、ズルをしてでも結果を残すことに執着してしまうのです。子どもを「褒められ依存症」にしないためにできること子どもを過剰に褒め続けた結果、子どもの人間性や将来の可能性にまで影響を及ぼしてしまうことがおわかりいただけたのではないでしょうか。最後に、子どもが「褒められ依存症」にならないために、親ができることをお伝えします。みなさんは、無意識のうちに「100点満点なんてすごい!」「A判定ばかりでよかったね!」と、テストや成績表の結果にだけ注目する褒め方をしていませんか?認定心理士の中垣俊子さんは、このような褒め方をしていると結果重視になり、結果にこだわって手段を選ばなくなることもあるといいます。この場合、「集中して勉強してたからだね」「苦手を一生懸命克服しようとがんばったからだね」と、子どもが取り組んだことに注目して褒めてあげるといいでしょう。ほかにも「それでこそうちの息子だ」「お母さんも鼻が高いわ」と、子どもと親を一体化したような褒め方も危険です。子どもの行動によって、まるで親の価値が上がるような気持ちにさせると、「お母さんのために○◯しなければ」とプレッシャーを感じてしまいます。子どもの手柄は子どものもの。子どもの成功やいい結果に対しては、共感して一緒に喜ぶだけに留めておきましょう。脳科学者の篠原菊紀先生は、「『気が向いたときに褒める』くらいの適当さが、褒めることの効果を高め、結果的には子どものやる気を維持させることにもつながる」と話します。常に子どもを褒め続けてしまうと、子どもが「こうすれば褒められるんじゃないか」と予測したときに脳の快楽物質・ドーパミンが分泌されるようになるそう。しかし次第に、実際に褒められたときには喜びが薄れてしまうようになるのです。「いつ褒めよう」「どうやって褒めよう」と考えすぎると、親子の関係性にまで影響を及ぼしかねません。だからこそ、親は子どものテストの結果だけに注目するのではなく、ありのままの姿を見て、いい部分を見つけたら認めてあげるように心がけましょう。***わが子がいいことをしたら、めいっぱい褒めてあげたいのが親心。ただし、ここで説明したように、間違った褒め方ばかりをしていると逆効果になることも。「褒めてあげなきゃ」と考えるよりも、お子さんの普段の様子をよく観察して、「成長したな」と思える部分に着目した声かけをするといいでしょう。(参考)榎本博明(2015),『ほめると子どもはダメになる』, 新潮新書.DIAMOND online|「ほめる子育て」の問題点は「命令」が隠れていること。All About|ほめすぎは逆効果?アドラー流・よりよい声かけのコツ東洋経済オンライン|「褒めて育てる」でダメになった日本の若者PRESIDENT Online|「子を褒めて伸ばす」ブームで子が潰れるJ CAST ニュース|子どもを「賢い」と褒め続ける教育ご用心!インチキする子になりますよPHPのびのび子育て 2019年12月号, PHP研究所.StudyHackerこどもまなび☆ラボ|「間違った褒め方」していませんか?子どものやる気を維持させる「ほめ方」メソッド
2020年03月10日ここ数年で目にする機会が増えた「10歳の壁」という言葉。いわゆる「10歳の壁」とは、小学3・4年生になった子どもたちがぶつかる学習面でのつまずきや、精神的に不安定になりがちなこの時期特有の反抗的な態度などを指します。10歳前後は、体も心も急激に変化していく時期。読者の中にも、「まさに今、真っ只中!」とお悩みの方や、過去を振り返って「ああ、あのときのあれがそうだったのか!」と気づく方もいるのではないでしょうか。今回は、これまでご紹介してきた「10歳の壁」にまつわる記事のなかで、とくに人気の高かった6本をまとめました。さまざまな角度から「10歳の壁」問題に切り込んだ内容になっているので、ぜひ参考にしてください。「10歳の壁」おすすめ記事1■「10歳の壁」ではなくて「10歳の飛躍」!親が我が子の10歳の壁をもっと面白がるべき理由「10歳は子どもにとって大きな飛躍の年」そう断言するのは、発達心理学・学校心理学の専門家である渡辺弥生先生です。「壁」と聞くと、乗り越えるために苦労や努力を必要とする困難なものの象徴としてとらえがちですが、実際には子どもが大きく羽ばたくために重要なのだといいます。そもそも、10歳頃の子どもの「飛躍」は、それまでの親による教育、インプットが花となって開きはじめたということの表れに他なりません。その花が開くようすを楽しむことこそ、親としての醍醐味ではないでしょうか。(引用元:StudyHackerこどもまなび☆ラボ|「10歳の壁」ではなくて「10歳の飛躍」!親が我が子の10歳の壁をもっと面白がるべき理由)この記事では、「10歳の壁」に直面した子どもの学習面での変化よりも、むしろ内面的な変化に着目しています。9歳までは困っている人を素直に助けてあげられたのに、10歳になるとなぜか行動を起こさなくなる、9歳までは自然と「みんな仲良く」ができていたのに、10歳になるとそれが難しくなってくる……。また、ニュースを見て、会ったこともない人の気持ちまで想像して考えられるようにもなるともいいます。これらは対人関係の広がりの表れであり、その影響は自分自身へと向いていくそう。たとえば、自分を客観視できるようになり、「自分はこういう良くないところがあるから、直していかなきゃ」といった自己コントロールへと発展していくのです。渡辺先生は、「大きな変化の渦中にいる子どもは、強いストレスも感じている」といいます。それが大人への反抗的な態度につながることもありますが、親はしっかりと子どもを見守り、必要であれば導いてあげるように心がけましょう。「10歳の壁」おすすめ記事2■「10歳の反抗期」に親がすべきこと。子どもは親の思いどおりには育たない!早稲田大学教育学部教授でアンガーマネジメントの専門家でもある本田恵子先生は、この記事の中で子どもの反抗期を段階別に解説しています。いわゆる「イヤイヤ期」と呼ばれる3歳くらいの反抗期、そして14、15歳頃に訪れる思春期特有の反抗期。その中間にある10歳頃の反抗期について、親の接し方も含めて次のように述べています。これはさまざまな試行錯誤をして創造力が伸びる時期だからこそ出てくる反抗期です。この時期にはルールで縛りつけ過ぎないように注意しなければなりません。「こうしたほうがいいよ」と親の理想を押しつけると、お手本どおりの解答はできるけど、独自性がない子どもに育ってしまうからです。(引用元:StudyHackerこどもまなび☆ラボ|「10歳の反抗期」に親がすべきこと。子どもは親の思いどおりには育たない!)「もう10歳」とはいえ、まだまだ子ども。その言動を見ていると、危なっかしくてつい口出ししたくなりますよね。しかし本田先生は、この時期の子どもは、思い切り自由にさせてあげると創造力や個性が伸びるといいます。ではなぜ、この時期に子どもの個性を伸ばすことが求められるのでしょうか。それは、「子どもは親の思い通りには育たない」ことが明白だから。誰しも、自分の子どもには「こうなってほしい」という願望を抱いてしまいますが、ほとんどの場合、子どもは意外な個性を発揮して親を驚かせます。だからこそ、本田先生は「この時期に、きちんと『自分で決められる』子どもに育てることを重視すべき」だというのです。また、「たとえ反抗期がなくても、不安になる必要はありません」とも。本田先生は、「それは子どもの欲求を親が上手に受け止めている証拠」と述べています。この時期は、子どもが反抗してもしなくても、「ひとりの人格をもつ人間」として向き合うことが大切なのです。「10歳の壁」おすすめ記事3■「10歳の壁」「9歳の壁」「小4の壁」とは?子どもの発達段階を意識した4つの対処法この記事では、「10歳の壁」(「9歳の壁」「小4の壁」も同義)にまつわる深刻な社会問題を取り上げながらも、適切な対処法や対策をしっかりと紹介しています。子どもの発達段階において避けては通れない「10歳の壁」。必要以上に恐れたり心配したりせずに、正しい知識と接し方を学んで乗り越えたいですね。10歳ごろになると、「他者意識」が発達し、他人との比較を通じて自分を認識するようになるため、子どもの自己評価や自尊心が低下してしまうのだそう。嫉妬などのネガティブな感情も生まれ、気に入らない相手を無視したり、その人について悪いうわさを流したりといった「関係性攻撃」につながってしまう場合もあるとのことです。(引用元:StudyHackerこどもまなび☆ラボ|「10歳の壁」「9歳の壁」「小4の壁」とは?子どもの発達段階を意識した4つの対処法)子どもが成長していく過程では、他者と自分を比較してネガティブな感情にとらわれるケースが多く見られます。しかし、それは決して悪いことではありません。親が注意すべきことは、余計な口出しをしたり、傷つかないように先回りして守ったりするのではなく、「今はこういう時期なんだ」と見守ってあげること。そのうえで、次のように接すると効果的だそう。■対策1:ほめて自信をつけさせる他者との比較によって自己評価が低下した子には、「自己肯定感の育成」を。コツは“少しおおげさ”に、そして“具体的にほめること”です。■対策2:家事を手伝わせるお手伝いをしてもらってほめる場面をつくりましょう。「家族の役に立てた」と実感することで、自己肯定感が養われます。子どもの能力に応じて、具体的に指示を出すとスムーズです。■対策3:本を読むように仕向ける多くの名作には、「友情の大切さ」や「因果応報」など抽象的な教訓が含まれています。読書することで、他者への共感力や抽象的な物事への理解が深まり、人間関係の問題に直面しても自分で対処できるようになるでしょう。■対策4:体験活動をさせる子どもの自己肯定感を強くするには、キャンプなどの自然体験がおすすめ。自然体験が豊富な子ほど、「勉強は得意なほうだ」「今の自分が好きだ」と考える傾向があるそうです。どれもシンプルなアドバイスばかりなので、ぜひ参考にしてみてください。「10歳の壁」おすすめ記事4■親が知っておくべき「10歳の壁」と自己肯定感の関係「10歳の壁」と呼ばれる時期は自己肯定感が失われやすくなり、その後の人生にも影響を及ぼすそう。自己肯定感が欠如した子どもは、「どうせ頑張ったってできない」と、挑戦することを放棄するようになります。すると、次第に自分から行動を起こさなくなり、将来は人のあとをついていくだけの「指示待ち人間」になってしまうかもしれないのです。そうならないためには、どうしたらいいのでしょうか?一番大切なのは、親が子供を信頼し、行動を見守るということです。子供が行動するとき、失敗しそうで不安になり、あれこれ口を出していませんか?「早く宿題をやりなさい」や「部屋をきれいにしなさい」などと、子供の行動に毎回口をはさみ叱っていると、子供はどんどん挑戦する心を失っていってしますのです。(引用元:StudyHackerこどもまなび☆ラボ|親が知っておくべき「10歳の壁」と自己肯定感の関係)教育評論家の親野智可等先生は、「目先のことばかり見て『○○ができていない』と否定的に叱り続ける親は、子どもの自己肯定感をボロボロにする」と述べています。親ができることは、子どもを信じて、自分の力でやり遂げられるように見守ってあげること。そして、能力や結果ではなく“努力したこと”をほめてあげましょう。これからの時代は、ますます主体性をもって行動することが求められます。主体性を生み出すには、自己肯定感は欠かせません。お子さんの将来のためにも、自己肯定感を失わせないように大切に育んであげたいですね。「10歳の壁」おすすめ記事5■「10歳の壁」は飛躍のチャンス。「壁」を飛び越えるための言葉かけ小学校4年生くらいから学校の勉強はぐんと難しくなり、それまで「なんとなく理解していた子」は、非常に困難な状況に陥ります。勉強が難しくなることで自信が失われ、同級生と比較して劣等感が芽生えてしまうと、自己肯定感の低下につながることも。ここでは、実際に「10歳の壁」に直面したとき、子どものやる気を引き出して自己肯定感を高める言葉かけを紹介しています。お子さんが劣等感や自己否定感で悲しい思いをしているときに、「○○するべき」と理詰めで教えても、より追い詰めてしまうことになりかねません。大人の目線で解決策を教えたくなる気持ちも分かりますが、気持ちに寄り添った言葉をかけ、お子さんを安心させてあげることが大切です。(引用元:StudyHackerこどもまなび☆ラボ|「10歳の壁」は飛躍のチャンス。「壁」を飛び越えるための言葉かけ)まずは子どもの気持ちに寄り添い、受け止めてあげることを心がけましょう。それをふまえると、かけてあげるべき言葉が見つかるはずです。この記事では、NG例とOK例をわかりやすく解説しています。「お姉ちゃんはいつも満点だったよ」→NG「前よりも10点も上がったね!」→OKほかの兄弟や周りのお友だちと比較してしまうと、子どもの自尊心を傷つけます。この場合は、「過去の自分」と比べてほめてあげましょう。「だからダメだって言ったのに!」→NG「お母さんも小さいとき同じ失敗しちゃったんだ」→OK子どもが失敗したときに頭ごなしに叱るのは避けるべき。親自身の失敗談も話してあげれば、「失敗してもいいんだ」と失敗を恐れずにチャレンジする力が育まれます。ほかにも、すぐに役立つ言葉かけをいくつか紹介しているので、ぜひ参考にしてみてください。「10歳の壁」おすすめ記事6■「すごい」「えらい」より効果的!褒めず・怒らずに子どもを自立させるアドラー式子育てとは今注目されている、褒めない・怒らない「アドラー式子育て」についてくわしく解説しているこの記事。アドラー式子育てでは、「勇気づけ」という技法を用いて、子どもに「困難を克服する力」を与えることを目指します。アドラー式子育てでは、子どもの人格や性格は10歳頃までに形成させると考えられています。そのため、10歳前後の関わり方が特に重要視されているのです。これまで勇気づけをしてこなかった方は、これから少しずつでも勇気づけを心がけてみましょう。(引用元:StudyHackerこどもまなび☆ラボ|「すごい」「えらい」より効果的!褒めず・怒らずに子どもを自立させるアドラー式子育てとは)「勇気づけ」とは、子どもが何かしてくれたときに「えらいね」「すごいね」と褒めるのではなく、「ありがとう」「うれしいな」などの気持ちを伝えるようにすること。すると子どもは気分が良くなり、“自分の意思で”相手を喜ばせるような行動をとるようになるそうです。子どもを褒めることは大事ですが、その「褒め方」には注意しなければなりません。些細なことで頻繁に褒めていると、その状況が当たり前になってしまい、褒められない状況に不安を覚えるようになってしまうとか。さらに、褒めてもらうために「大人はどう思うか」を基準に行動するようにもなってしまいます。ここでは、日常のシーン別に具体的な褒め方をくわしく解説しています。読み進めていくうちに、「いままで間違った褒め方をしていた」、もしくは「怒らなくてもいい場面で怒っていた」という気づきにつながるはずです。***「10歳の壁」を語るうえで「自己肯定感」は外せません。自己肯定感が失われがちな時期だからこそ、子ども自身が自分で自己肯定感を手に入れられるように見守ってあげましょう。自分で壁を乗り越える力が身につくことで、大きな飛躍につながっていくのです。
2020年03月05日新型コロナウイルスの感染拡大を防ぐため、全国の小学校・中学校・高校・特別支援学校を臨時休校するよう、安倍晋三首相からの要請がありました。突然の休校――これから始まる長い長い自習学習の時間をどうすればいいのか……不安を抱える親御さまも多いのではないでしょうか。そこで、自宅にいながらさまざまな「学び」を得られるオンライン授業をいくつかご紹介します。【総合力】プレゼン、英語、探究学習、そして体幹トレーニングまで!■オンラインおうち学校のべ20,000人の学校生徒にプレゼンテーション出前授業を提供してきた一般社団法人アルバ・エデュが、「オンラインおうち学校」で親子を応援。ふだんはなかなかお話が聞けない、第一線で活躍する先生方とインタラクティブに行なうオンラインでの「学び」は、かなり貴重です。グローバルな視点や専門的なお話に触れる大きなチャンス!今だからこそ、「楽しい!もっと知りたい!」好奇心をおうちで底上げ!【対象年齢】年長~中高生、学生、大人【学び】プレゼンテーション/英語/探究学習(SDGs、社会課題、政治経済、社会システム、食育等)/作文/書写/食育/体幹トレーニング/ダンスなど【詳しくはこちら↓】【アート】簡単な工作から、きものデザインや本格的な鉛筆画が学べる■どこでもアートきっず教育学、心理学、教育心理学、心理療法などを取り入れた、画期的な指導に定評がある『芸術による教育の会』。その人気コンテンツである美術教育オンラインサービス「どこでもアートきっず」が、無料開放しています。とてもわかりやすい10~15分程度の動画を見てから、実際に作品を作ってみましょう。家にあるもので簡単にできるアートがたくさんありますよ♪【対象年齢】年少~【学び】きもののデザイン/紙コップアート/シャガール作品/立体を描く/光と影を描くなど【詳しくはこちら↓】【国語・算数】東京都教育委員会が提供!学習のつまずきを防ぐ良問ばかり■東京ベーシック・ドリル東京都教育委員会が提供している、基礎的な学習内容を身につけるためにつくられた学習教材。「東京ベーシック・ドリル(電子版)」は、パソコンやタブレット端末を使って学習可能です。各単元ごとに学習することができるので、苦手問題の克服にも向いているでしょう。【対象年齢】小1~中1【学び】小1〜中1までの国語・算数・数学/小3・小4の社会・理科/中1英語(画像引用元:東京都教育委員会|1年 練習 3-1 ひきざん)(画像引用元:東京都教育委員会|1,2年言語 2-8 いろいろな言葉2)また、オンライン学習ではありませんが、「東京ベーシック・ドリル(プリント教材)」もあるので、プリントアウトして学習することもできます。春休みまでに基礎をしっかり固めておけば、4月から気持ちのいいスタートがきれるはず。(画像引用元・左:東京都教育委員会|(10)「は」、「へ」、「を」」)(画像引用元・右:東京都教育委員会|(5)しきにあらわそう)***大好きなお母さんお父さんと、朝からずーっと一緒にいられるから嬉しいな♪子どもたちからは、そんな声が多いかもしれません。せっかくの機会です。時間をたっぷり使った「深い学び」を経験してみませんか?ご紹介したオンライン授業も、受けっぱなしではなく、親子で話し合ったり、もう一度作ってみたり、アイデアを出し合ってみたりしてみましょう。もしかしたら、休み明けからのお子さまは、やる気と好奇心のかたまりになっているかも!?お子さまの「好きなもの」「やりたいこと」が見つかりますように。(参考)芸術による教育の会芸術による教育の会|どこでもアートきっずアルバ・エデュ東京都教育委員会|東京ベーシック・ドリル東京都教育委員会|東京ベーシック・ドリル(電子版)/PDF版目次
2020年03月03日「幼児期から我が子を音楽に触れさせたい」そう考えるお父さん・お母さんの中には、リトミックを習わせることを検討している方もいることでしょう。しかし、いざリトミック教室を探してみると、たくさんあってどこを選べばよいか迷ってしまうかもしれませんね。今回は、リトミック教室を選ぶときのポイントを紹介しましょう。教室に通い始めてからの注意点もお伝えしますので、参考にしてみてください。リトミックにはどんな効果があるの?リトミックとは、スイスの作曲家・音楽教育家であるエミール・ジャック=ダルクローズ(1865~1950)が提唱した音楽教育です。音楽のリズムに合わせて体を動かすことで、ダイナミクス(音の強弱)や音色の違い、表現力など、音楽を学ぶうえで必要な基盤を築くことができます。さらに、国際幼児教育学会常任理事でユリ・リトミック教室主宰の石丸由理氏は、「リトミックは人間教育にもなる」といいます。たとえば、音楽に瞬時に反応して全身を使って表現することが、記憶力や集中力を鍛えるのにつながります。また、ほかの子と一緒に体を動かし、表現をすることで、社会性や協調性も身につくとのこと。幼児期にリトミックを習うことには、さまざまな教育効果が期待できるのです。★リトミックの効果や年齢別のレッスン内容は、「ただの音楽教育じゃなかった!リトミックの効果とレッスン内容を詳しく解説。」で詳しく紹介しています。■リトミック教室に通えるのは何歳から?教室にもよりますが、早ければ0歳の首がすわり始めたころからリトミックのレッスンを受けることができます。多くの教室では5歳ごろまで年齢別にカリキュラムが組まれていて、0~2歳ごろまでは保護者と子どもが一緒にレッスンを受けるのが一般的です。3歳ごろからは、保護者から離れて子どもたちだけでレッスンを受けるケースが増えます。5歳ごろからは、グループ内でリーダーなどの役割を決め、それぞれの立場に合わせた行動ができるような指導も行なわれます。■リトミック教室にかかる費用の相場は?リトミック教室で開催されるレッスンの回数は、少ない所だと月に1回から、多くても月3・4回程度のようです。月謝は2,500円ぐらいから1万円弱までと幅があります。また、教室に通い始めるときに入会金がかかることがあります。その場合の費用は10,000円前後見ておくといいかもしれません。教室によっては「入会金〇%オフキャンペーン」などを実施するところもあるようです。費用やレッスン回数は、教室によって異なりますので、入会を検討する教室の最新情報を必ずご確認ください。リトミック教室の選び方:3つのポイントリトミック教室を選ぶときのポイントは、次の3つです。■1. 体験レッスンを受けて、教室の環境や子どもの様子をチェック多くの教室が、まずは体験レッスンを受けることをすすめています。実際にレッスンに参加することで、「子どもが楽しく続けられそうか」「子どもと講師の相性は良さそうか」などを確認できるためです。たとえば、カワイ音楽教室は次のように説明しています。ご友人からレッスンの内容を事前に聞いて知っていても、実際の雰囲気はその場に行かなければわかりません。お子さまは楽しめそうか、教室は通いやすいか、担当講師はどんな人柄なのかなど、是非一度お子さまとご一緒に体験してみましょう。(引用元:カワイ音楽教室|無料体験レッスン)前出の石丸氏は、体験レッスンでは教室の環境がきちんと整えられているかにも注目するとよいといいます。リトミックでは体を動かしますので、こまめに換気をして適温を保たなければ子どもの体調に影響しますし、遊具などが散らかっているとレッスン中のケガにつながる恐れがあります。子どもの様子を確認しつつ、これらの点も体験レッスンで見ておきましょう。このほかに体験レッスンでチェックするといい点は、次の2つです。■2. 「動き」だけでなく「聴く」ことも大事にしているか音楽教育学・リトミックを専門とする、京都女子大学教授の神原雅之氏は、「リトミックでは動くことが重視されがちだが、聴くことも大切にすべきだ」といいます。さまざまな楽器の音色を聴く、幅広いジャンルの音楽を聴く。こうした聴く力を養うことも、リトミックの役割のひとつだからです。そこで、リトミック教室を選ぶときは、生の音を聴かせてくれるかどうかも確認するようにしましょう。たとえば、EYS-Kidsのリトミックコースでは、生の歌声や楽器演奏の音色に触れられるカリキュラムが組まれているそうですよ。■3. 講師が積極的な「声かけ」でしっかりフォローしているかレッスン中に講師が子どもたちにどんな声かけをしているかにも注目してみましょう。たとえば、「風船をもって浮いているイメージで動き回ろう」というテーマのレッスンのとき。神原氏いわく、講師が風船を渡す身振りをしながら「○○ちゃんは何色が好き?」といった声掛けをしてあげると、子どもはその後もイメージを持ちやすいのだそうです。ほかには、子どもが1列になってリズムを取りながら動き、曲の終わりに列の先頭を交代する……といった高度な内容が盛り込まれたレッスンのとき、「もうすぐ終わりの合図が入るよ」「次は○○ちゃんが先頭だよ」といった具合にフォローを入れるのも、良いレッスンの一例だとのこと。このように、レッスン中に講師が子どもと細やかなコミュニケーションを取ってくれるかどうかは、子どもがリトミックを楽しく続けるための重要な要素です。そういう意味では、レッスン中の講師の体制を見るのもいいかもしれません。たとえばカワイ音楽教室では、子どもへのフォローを行き届かせ、適切な声掛けをすることができるよう、2人体制でレッスンを行なっているそうです。リトミック教室に通い始めてから気をつけることは?子どもにぴったりのリトミック教室を見つけ、習い始めることになったら、次の3点に気をつけましょう。■1. 子どもを指示通りに動かそうとしない石丸氏によれば、リトミックは子ども自身が音楽を聴いて、自分で判断して動くもの。そのため、レッスンに来たからといって子どもに無理やり何かをさせようとするのはNGです。子どもが講師のいうとおりに動かないと、保護者は不安になるかもしれませんが、子どもの音楽の感じ方を尊重しましょう。神原氏も、「子どもをひとりの音楽的な人と認めるべき」と述べています。子どもは子どもなりに、リトミックを楽しんでいるはずですよ。たとえば、両腕をバタバタさせて鳥が飛んでいる様子を表現するとき、ほかの子より腕を動かす動作がゆっくりしているとしても、それは子どもが音楽をゆったりとしたものと捉えている可能性があります。その感覚を受け入れてあげましょう。表現に優劣や正解・不正解はありません。【レッスン中の子どもの様子を見たときの声かけ】NG例:「ほかの子と合わせて腕を動かしなさい」OK例:「鳥がのんびり飛んでいる様子がよく分かるね」■2. 問題が起こっても、なるべく子ども同士で解決させる子どもにはそれぞれ得意・不得意があります。そのため、レッスン中にひとりだけテンポが遅れてしまう、手足を思うように動かせない、といった壁にぶつかることも。しかし、子どもが困っていてもすぐに大人が割って入るのはおすすめしません。石丸氏によると、うまくできない子がいても、見守っていれば子ども同士で解決していることが多いのだそうです。たとえば、フレーズの終わりでジャンプするというレッスンのとき、フレーズの終わりがどこなのか理解できない子がいたとしても、「一緒にやろう」「もうすぐ(フレーズが終わるから)ジャンプだよ」などと助け合い、解決していくケースがよくあるのだとか。こうした経験は、社会性を身につけることにつながります。また、グループレッスンのときに人数が余ってしまい、子どもがひとりぼっちになってしまう場合があります。見ている保護者はやきもきするかもしれませんが、そんなときも大人が中心になって誘導することはしないように。「こう言ってごらん」とアドバイスだけして、その後の経過は見守ってあげましょう。【レッスン中、子どもがひとりになってしまったときの声かけ】NG例:「○○ちゃんを○○ちゃんのグループに入れてあげてね」OK例:「一緒にやろうって言ってみよう」「入れてって言ってみてごらん」■3. 褒めて、子どものやる気を育てる子どもが一生懸命レッスンを受けたときや、できなかったことができるようになったときなどには、積極的に褒め言葉を伝えましょう。日本メンタルヘルス協会公認カウンセラーで、幼児教室運営のコペル代表取締役の大坪信之氏は、子どもを褒めるときのポイントを2つ挙げています。1つ目は「良いことをしたらすぐに褒める」こと。人は褒められると、やる気が高まる「ドーパミン」という物質が脳から分泌されます。子どもの脳内でドーパミンを出させてやる気をアップさせるには、「その場で褒める」のが効果的。いくら後から褒めても、ドーパミンが出るタイミングがずれてしまったのでは仕方がないからです。2つ目のポイントは、「主体的なメッセージで具体的に伝える」こと。「お母さんはこう感じたよ」「お父さんはこう思ったよ」と主語をつけることで、より気持ちがストレートに伝わるという心理学的な効果があるそうです。【子どもを褒めるときの声かけ】NG例:帰宅後に「今日も上手にできたね」と褒めるOK例:レッスン終了後すぐに、「ドレミファソラシドが上手に歌えるようになったね、○○ちゃんがスキップしながら歌っているところ、お母さんすごく好きだな」と伝える***楽しみながら音楽を学び、人間教育にもつながるリトミック。ぜひ、良い教室を見つけて始めてみましょう。文/かのえかな(参考)石丸由理(2003),『リトミック百科 年齢別の基本レッスンから発表会まで』,ひかりのくに.石丸由理(2017),『基礎からわかる リトミック! リトミック!』,ひかりのくに.神原雅之(2019),『こころとからだを育む1~5歳のたのしいリトミック』,ナツメ社.カワイ音楽教室|コース紹介カワイ音楽教室|無料体験レッスンEYS-Kids|リトミックコースのご案内AnNAリトミック教室|レッスンとクラスリトピュアリトミック|リトピュア式教育法幻冬舎ゴールドオンライン|子どものやる気を育てる「最高の褒め方」とは?
2020年03月03日かつてないほどに教育熱が高まっているいま、多くの親が、よりよい子育てをしようとたくさんの教育情報に触れています。でも、そのことの危険性を指摘するのが、スクールカウンセラーの経験も豊富な心理学者である、明治大学文学部教授の諸富祥彦先生。「完璧な子育てをしようとすることなどではなく、親は自分の幸せを追求することがなにより大切」と諸富先生は語ります。構成/岩川悟取材・文/清家茂樹写真/石塚雅人(インタビューカットのみ)親が自己否定に陥りがちな現代の情報化社会現在の情報化社会のなかでわたしが懸念しているのが、親が自己否定に陥ってしまうという問題です。いまは、ママタレントと呼ばれる芸能人の子育てブログなど、あらゆるところから子育てや家庭教育の情報が入ってきます。そうして、「わたしの子育ては不十分じゃないのか……」というふうに不安になってしまう親が増加しています。その根底にあるのが、少しでも他人より優位に立ちたいという心理です。これは、学生時代の学業や部活となんら変わりません。勉強でまわりより少しでもいい成績を残したい、部活でまわりより少しでも活躍したい。そういう願望を多くの人が持っていたはずです。そして、子育てでも同様に、「わたしは他人よりいい子育てをしている」と感じ、安心したいと思うようになるのです。でも、そう感じるためには他人と比較することが必要となってきます。すると、安心するどころか、逆に「わたしの子育ては不十分じゃないのか……」と不安を感じ、自己否定に陥ることになってしまう。そうならないために意識してほしいのは、「完璧な親なんていない」ということ。どんなに完璧に見える親も完璧ではありませんし、そもそも完璧になる必要なんてないのです。これは、『Nobody’s Perfect』というカナダで生まれた親向けの教育支援プログラムの名称にも表れている考え方です。1980年代にはじまったこのプログラムは、親たちがグループのなかで互いの経験や不安を語り合うことで子育てのスキルを高めること、そしてなにより自信を取り戻すことを目的としています。子どもをしっかりと導いていくべき親が自信を失って不安になっていては、いい子育てができるはずもありません。子どもを目一杯愛して、親ばかになってもいいそして、「完璧な親なんていない」ということと同時に、子育てのゴールというものも意識してほしいと思います。子育てとは、とても長い時間を要するものです。子育ての目的は、子どもを、幼稚園児として幸せな幼稚園児にすることでもなければ、小学生として幸せな小学生にすることでもありません。子育てのゴールが、子どもが幸せな人生を歩むことだとするならば、子どもが大人になったときに子ども自身で幸せな人生を送っていけるような基礎能力をつけてあげることが子育ての最大の目的であるはずです。では、その基礎能力とはどんなものでしょうか?それは、子どもが自分でどんな人生を歩んでいきたいのかとプランニングして、やるべきことを自己決定して、自分で自分を幸せにできるような、タフな生きる力です。いくら親が望むとおりの道を子どもに歩ませたところで、親が押しつけた人生を子どもが幸せに感じるとは限りません。そう考えると、親がやるべき重要なことにはふたつのことが考えられます。ひとつは、子どもの自己肯定感を高めてあげること。「僕なんて幸せになっちゃいけない人間なんだ……」と自己否定していては、その子は幸せになれるはずもないからです。子どもの自己肯定感を高めるためには、「僕は僕のままでお父さんやお母さんに愛されている」と子どもに思わせてあげることが大切です。そして、子どもにそう思わせるには、親がしっかり愛情表現をすべきです。「ママはあなたを愛しているのよ」「あなたが大事なんだよ」と言葉で表現することでもいいでしょう。でも、わたしはなによりスキンシップをおすすめします。言葉よりも、肌の触れ合いを通じてのほうが、より多くの愛情が伝わるとわたしは考えています。スキンシップをすることに対して、「子どもを甘やかすことになりませんか?」と心配する人もいますが、そんなことはありません。目一杯、スキンシップをして愛してあげればいい。ですから、親ばかになっていいんです。ばか親になってしまうのは困りますけどね……(笑)。たとえ離婚してでも親が幸せになることが大切そして、子どもが自分を幸せにすることができるようになるために親がやるべき重要なもうひとつのことが、親自身が幸せになること。「人生は楽しいんだ!」「幸せになっていいんだ!」ということを、親の生き方を通じて子どもに伝えるのです。そういうと、「夫婦仲を良好に保つことも大事」というふうに考えるかもしれません。でも、夫婦仲を悪くしないために親が互いに我慢を重ねていいたいこともいわず、うつうつと暮らすようなことは、果たして幸せといえるでしょうか?そんな生活をしていては、子どもに「人生は楽しいんだ!」という大事なメッセージを伝えられません。極端にいえば、離婚したとしてもなんの問題もないということです。たとえ離婚をしてでも「俺は幸せになるぞ!」「わたしは幸せになるぞ!」と、幸せを追求する姿勢、強い生命力を親が示すことのほうがよほど大事なことだからです。完璧な子育てをする完璧な親になどなる必要はありませんし、なれるはずもありません。そんなことを考えるより、もっと自分の願望に素直に従って、親自身が幸せになり、子どもに「僕も幸せになっていいんだ」「わたしも幸せになっていいんだ」と思わせてあげる。それが子育てにおいてもっとも大切なことです。『孤独の達人 自己を深める心理学』諸富祥彦 著/PHP研究所(2018)■ 諸富祥彦ホームページ■ 明治大学文学部教授・諸富祥彦先生 インタビュー記事一覧第1回:“手がかからない子”ほど要注意!「いい子症候群」が怖い理由と、その防止法第2回:「過干渉」育児が招く悲しい結果。“見守るだけでは物足りない”親が危険なワケ第3回:「スマホ依存の親」と「衝動がコントロールできない子ども」の意外な関係第4回:完璧な子育てを目指さなくていい。親はもっとわがままに“自分の幸せ”を追求しよう【プロフィール】諸富祥彦(もろとみ・よしひこ)1963年5月4日生まれ、福岡県出身。心理学者。明治大学文学部教授。「時代の精神(ニヒリズム)と闘うカウンセラー」「現場教師の作戦参謀」を自称する。1986年、筑波大学人間学類卒業。1992年、同大学院博士課程修了。英国イーストアングリア大学、米国トランスパーソナル心理学研究所客員研究員、千葉大学教育学部講師、同大学教育学部助教授を経て、2006年より明治大学文学部教授。日本トランスパーソナル学会会長、日本カウンセリング学会認定カウンセラー会理事、日本生徒指導学会理事、教師を支える会代表等の肩書も持つ。専門は人間性心理学、トランスパーソナル心理学。孤独、むなしさ、生きる意味などをキーワードに、現代人の新たな生き方を提示している。スクールカウンセラーとしての活動歴も長く、学校カウンセリングや生徒指導の専門家でもある。『男の子の育て方』『女の子の育て方』『一人っ子の育て方』(いずれもWAVE出版)、『子育ての教科書』(幻冬舎)、『「本当の大人」になるための心理学 心理療法家が説く心の成熟』(集英社)、『他人の目を気にしない技術』(PHP研究所)、『「プチ虐待」の心理』(青春出版社)、『「すべて投げ出してしまいたい」と思ったら読む本』(朝日新聞出版)、『知の教科書 フランクル』(講談社)など著書多数。【ライタープロフィール】清家茂樹(せいけ・しげき)1975年生まれ、愛媛県出身。出版社勤務を経て2012年に独立し、編集プロダクション・株式会社ESSを設立。ジャンルを問わずさまざまな雑誌・書籍の編集に携わる。
2020年02月27日教育熱心な読者のみなさんなら、「ネグレクト」という言葉を聞いたことがある人も多いかもしれません。ネグレクトとは、子どもを無視して放置するという、虐待の一種のこと。そのネグレクトに含まれるものとして、近年、問題視されているのが「スマホネグレクト」です。それはいったいどんなもので、どんな問題をはらんでいるものなのでしょうか。スクールカウンセラーの経験も豊富な心理学者である、明治大学文学部教授の諸富祥彦先生にお話を聞きました。構成/岩川悟取材・文/清家茂樹写真/石塚雅人(インタビューカットのみ)親のスマホ依存症によって引き起こされるネグレクト近年問題となってきたネグレクトのひとつに、「スマホネグレクト」というものがあります。これは、親のスマホ依存症によって引き起こされるネグレクトのこと。ただ、スマホネグレクトの場合は、子どもを完全に放置しているわけではなく、たとえば食事中に親がスマホばかりを見て子どもとの対話が減るといった、程度としては通常のネグレクトより小さいものといえます。しかしながら、スマホネグレクトも大きな問題をはらんでいることは間違いありません。家族の大切な対話の場である食事中にも、親はスマホばかり見ているのですから、「お父さん、お母さんは自分のことを大事に思ってくれている」という実感を子どもは得にくくなる。そのため、いわゆる愛着、専門用語ではアタッチメントといいますが、親子間における心の絆の形成が弱くなるのです。そうなると、親子関係はうまくいきにくくなる。また、スマホネグレクトを受け続けた子どもは、親から愛されている人間として穏やかに育つということも難しくなるでしょう。数年前に出版された『ママのスマホになりたい』(WAVE出版)という絵本をご存じですか?これは、スマホ依存症のお母さんに対する子どもの心の叫びを描いた作品です。食事中でも、子どもではなくスマホが気になってしまうという人がいれば、ぜひ一度読んでみてください。あなたの子どもも、登場人物の子と同じような寂しい思いを抱いているかもしれませんよ。衝動をコントロールできない子どもが増加中いま、幼い子どものなかに衝動をコントロールできないという子が増えています。小学生になっても、嫌なことがあると寝っ転がって「やだやだやだ!」とバタバタと暴れ、いうことをまったく聞いてくれない3歳児のような子どもが増加中なのです。わたしが小学校の先生から聞いた例を紹介します。ある低学年の女の子が手を洗っていると、水がはねて体にかかってしまったそう。途端に、その子は手足をばたつかせながら、「いますぐ乾かせ!」といったのだそうです。先生が「じゃ、向こうにいって乾かそうね」というと、今度は「いまここで乾かせ!」といって暴れたのだとか……。いま、こういう子どもが増えているのです。わたしは、このことにもスマホネグレクトが関連していると考えています。子どもの情緒の安定には、子どもが親に対して「ママ」と呼べば「なに?」と返してくれるという心のレスポンスが欠かせません。親がすぐそばにいてくれるという安心感のなかで、子どもの心は安定していくからです。それなのに、親がスマホに夢中で、子どもの「ママ」という呼びかけに気づかない、あるいは上の空の返事をしていたらどうですか?子どもはつねに不安を抱えることになり、自分の気持ちを持て余して、先に述べたようなかんしゃくを起こすような子どもになってしまうのです。そういう子どもは、ちょうどスマホが普及しはじめた頃から増加しています。割合を見ても、スマホ依存症の親は10人にひとりくらいで、衝動をコントロールできない子どもも10人にひとりくらいと完全に一致している。この数字からも、スマホネグレクトと衝動をコントロールできない子どもの増加には強い関連があると考えられます。より自覚的になりスマホの利用法を見直すスマホネグレクトの問題を解決するには、親自身がスマホ依存症を断ち切るしかありません。ただ、アルコール依存症と比べると、スマホ依存症を自覚することは簡単ではありません。アルコールの場合は誰もが体に悪いものだとわかっていますし、昼間からお酒を飲むようなことがあれば、完全にアルコール依存症を疑いますよね?でも、スマホの場合、スマホ自体を悪いものだとは考えませんし、スマホ依存症かそうではないかの線引きも非常に曖昧なものです。わたしの調査では、大学生の1日あたりのスマホ利用時間が6時間半でした。それだけ、スマホが生活の深いところまで浸透しています。大学を卒業して結婚し、親になったからといって、スマホの利用時間を減らすということは簡単ではないでしょう。そう考えると、より自覚的に自分自身がスマホ依存症になっていないかと疑い、その利用時間を減らしていくよう考えるべきです。たとえば、スマホを使うのは、トイレに入っているときだけにする。「ちょっとトイレにいってくるね」といって、トイレの中でだけスマホでの用事を済ませるというふうに制限するのです。あるいは、子どもとの関係を思えば、「子どもの前ではスマホを触らない」というルールを自分に課すのもいいと思います。毎日、子どもと接することができるのは、子どもが18歳や22歳になるくらいまでの限られた時間です。そのかけがえのない時間を大切にするためにも、スマホの利用法を見直してみてください。『孤独の達人 自己を深める心理学』諸富祥彦 著/PHP研究所(2018)■ 諸富祥彦ホームページ■ 明治大学文学部教授・諸富祥彦先生 インタビュー記事一覧第1回:“手がかからない子”ほど要注意!「いい子症候群」が怖い理由と、その防止法第2回:「過干渉」育児が招く悲しい結果。“見守るだけでは物足りない”親が危険なワケ第3回:「スマホ依存の親」と「衝動がコントロールできない子ども」の意外な関係第4回:完璧な子育てを目指さなくていい。親はもっとわがままに“自分の幸せ”を追求しよう(※近日公開)【プロフィール】諸富祥彦(もろとみ・よしひこ)1963年5月4日生まれ、福岡県出身。心理学者。明治大学文学部教授。「時代の精神(ニヒリズム)と闘うカウンセラー」「現場教師の作戦参謀」を自称する。1986年、筑波大学人間学類卒業。1992年、同大学院博士課程修了。英国イーストアングリア大学、米国トランスパーソナル心理学研究所客員研究員、千葉大学教育学部講師、同大学教育学部助教授を経て、2006年より明治大学文学部教授。日本トランスパーソナル学会会長、日本カウンセリング学会認定カウンセラー会理事、日本生徒指導学会理事、教師を支える会代表等の肩書も持つ。専門は人間性心理学、トランスパーソナル心理学。孤独、むなしさ、生きる意味などをキーワードに、現代人の新たな生き方を提示している。スクールカウンセラーとしての活動歴も長く、学校カウンセリングや生徒指導の専門家でもある。『男の子の育て方』『女の子の育て方』『一人っ子の育て方』(いずれもWAVE出版)、『子育ての教科書』(幻冬舎)、『「本当の大人」になるための心理学 心理療法家が説く心の成熟』(集英社)、『他人の目を気にしない技術』(PHP研究所)、『「プチ虐待」の心理』(青春出版社)、『「すべて投げ出してしまいたい」と思ったら読む本』(朝日新聞出版)、『知の教科書 フランクル』(講談社)など著書多数。【ライタープロフィール】清家茂樹(せいけ・しげき)1975年生まれ、愛媛県出身。出版社勤務を経て2012年に独立し、編集プロダクション・株式会社ESSを設立。ジャンルを問わずさまざまな雑誌・書籍の編集に携わる。
2020年02月26日ひとりっ子家庭の増加に伴い、教育界において注目度を増している問題が「過干渉」です。子どもを大事にして「いい子に育ってほしい」という気持ちが強いあまりに、親の希望を優先した子育てに走ってしまう――。子どもを大事に思う気持ちは悪いものではありませんが、過干渉気味に育てられた子どもはさまざまな問題を抱えてしまいます。スクールカウンセラーの経験も豊富な心理学者である、明治大学文学部教授の諸富祥彦先生に、過干渉の典型例や、そうしないための方法を教えてもらいました。構成/岩川悟取材・文/清家茂樹写真/石塚雅人(インタビューカットのみ)親が子どもの友だちや遊びを決める、過干渉の典型例自分の子どもを、他人の顔色ばかり伺って自分がなにをしたいかもわからない「いい子症候群」にしないためにもっとも大切なことが、あらゆることを子ども自身に自己決定させることです(インタビュー第1回参照)。逆に、子どもの意志とは関係なく、どんなことも親が決めてしまうことを「過干渉」といいます。過干渉は、いい子症候群とセットのように大きな問題となっています。子どもが幼い場合、典型的に見られる過干渉の例が、親が子どもの友だちを選ぶということ。子どもの友だちに対して、親の勝手な価値観によって、「もうあの子とは遊ぶのはやめなさい」「この子はいい子だから、この子と遊びなさい」というようなことです。いまもむかしもよく見られるケースですから、ドキッとした人もいるでしょう。友だちを選ぶという行為は、絶対に子ども自身にさせるべきものです。そうでないと、子どもが自分自身で人間関係を築いていく力が育たないからです。あるいは、友だちどころか、遊びの内容そのものすら親が決めるというケースもある。子どもが遊びたいことではなく、親が子どもにしてほしい遊びを決めてしまうのです。そんなことをしてしまえば、子どもがどんどん自己決定できない人間になっていくことは明らかですよね。「自分づくり期」に入った子どもを「見守る」意識では、どんな親が子どもに対して過干渉になってしまいがちなのでしょうか?もっとも大きな特徴として、そういう親は子どもに依存しているという点が挙げられます。過干渉になってしまう親は、子どもに対してあれこれと口を出すことが子育てだと思っています。もちろん、小学3年くらいまでの子どもには、そういうことも必要です。それは、小学3年くらいまでは「しつけ期」にあたるからです。子どもが他人に迷惑をかけないため、自分のことを自分でできるようにさせるため、あるいは子ども自身の安全のため、幼い子どもにはあれこれと口を出してしつけることも必要です。でも、子どもが小学4年くらいになって思春期に差し掛かれば、必要以上に子どもに口を出してはいけません。なぜなら、その時期から子どもは「自分づくり期」に入るからです。自分づくり期という名のとおり、この頃から子どもは個性を磨いて自分らしさを身につけ、自分という人間をつくっていく。どんな大人になってどんな人生を歩んでいくのか――そういうことのベースが形成されるとても大事な時期といえます。そして、その時期の子どもに対して親がやるべきことは、それまでのようにあれこれと口を出すのではなく、見守るということ。つまり、子育てにはギアチェンジが必要なのです。ところが、子どもに依存している親は、このギアチェンジができない。あれこれと子どもに口を出して怒鳴っていないと、育児をしている気になれないのです。子どもを見守るだけではむなしいわけです。そういう親の勝手な空虚感を埋めるために、子どもに口を出してしまう。そういう意味で、過干渉の親は子どもに依存しているといえます。「一歩下がる」意識を持ち、自己満足の子育てをしないそうして、過干渉気味に育てられた子どもはどうなるのでしょうか?ひとつは、他人の顔色ばかり伺って自分がなにをしたいかもわからないいい子症候群になってしまうということ。もうひとつが、逆に親に対してものすごく反発して非行に走るようなケースです。非行に走って万引をする子どもたちの多くは、万引が楽しいからやるわけではありません。親が悲しむから万引をするのです。いわば、これは親に対する復讐です。ずっと自分を支配してきた親に対して、親を悲しませることで復讐をしているわけです。いい子症候群になったとしても、非行に走ったとしても、それは親子ともに望んでいなかった結果です。子どもをそんな道に進ませないためにも、子どもが自分づくり期に入ったら、親は子育てのギアチェンジをして子どもを見守ることを考えるべきです。なにより、「一歩下がる」ということを意識してください。自分よがりの子育てを優先してしまうと、ついあれこれと口を出したくなるものです。そんな子育ては、ただの自己満足に過ぎません。自己満足に走ることなく、親は一歩下がって、子どもが自分のことを自分で決めるというプロセスを辛抱強く見守るべきです。そういう姿勢でいられれば、子どもがいい子症候群になったり非行に走ったりするという、悲しい結果を招くことはないはずです。『孤独の達人 自己を深める心理学』諸富祥彦 著/PHP研究所(2018)■ 諸富祥彦ホームページ■ 明治大学文学部教授・諸富祥彦先生 インタビュー記事一覧第1回:“手がかからない子”ほど要注意!「いい子症候群」が怖い理由と、その防止法第2回:「過干渉」育児が招く悲しい結果。“見守るだけでは物足りない”親が危険なワケ第3回:「スマホ依存の親」と「衝動がコントロールできない子ども」の意外な関係(※近日公開)第4回:完璧な子育てを目指さなくていい。親はもっとわがままに“自分の幸せ”を追求しよう(※近日公開)【プロフィール】諸富祥彦(もろとみ・よしひこ)1963年5月4日生まれ、福岡県出身。心理学者。明治大学文学部教授。「時代の精神(ニヒリズム)と闘うカウンセラー」「現場教師の作戦参謀」を自称する。1986年、筑波大学人間学類卒業。1992年、同大学院博士課程修了。英国イーストアングリア大学、米国トランスパーソナル心理学研究所客員研究員、千葉大学教育学部講師、同大学教育学部助教授を経て、2006年より明治大学文学部教授。日本トランスパーソナル学会会長、日本カウンセリング学会認定カウンセラー会理事、日本生徒指導学会理事、教師を支える会代表等の肩書も持つ。専門は人間性心理学、トランスパーソナル心理学。孤独、むなしさ、生きる意味などをキーワードに、現代人の新たな生き方を提示している。スクールカウンセラーとしての活動歴も長く、学校カウンセリングや生徒指導の専門家でもある。『男の子の育て方』『女の子の育て方』『一人っ子の育て方』(いずれもWAVE出版)、『子育ての教科書』(幻冬舎)、『「本当の大人」になるための心理学 心理療法家が説く心の成熟』(集英社)、『他人の目を気にしない技術』(PHP研究所)、『「プチ虐待」の心理』(青春出版社)、『「すべて投げ出してしまいたい」と思ったら読む本』(朝日新聞出版)、『知の教科書 フランクル』(講談社)など著書多数。【ライタープロフィール】清家茂樹(せいけ・しげき)1975年生まれ、愛媛県出身。出版社勤務を経て2012年に独立し、編集プロダクション・株式会社ESSを設立。ジャンルを問わずさまざまな雑誌・書籍の編集に携わる。
2020年02月25日親の立場からすると、自分の子どもには「いい子」になってほしいと思うものです。ところが、一見いい子に見えるのに、心に大きな問題を抱えている子どもたちもいます。それが、親など他人の顔色ばかり伺って自己決定できない「いい子症候群」の子どもたち。いい子症候群にはどんな問題があり、どうすれば我が子がいい子症候群になることを防ぐことができるのでしょうか。スクールカウンセラーの経験も豊富な心理学者である、明治大学文学部教授の諸富祥彦先生にお話を聞きました。構成/岩川悟取材・文/清家茂樹写真/石塚雅人(インタビューカットのみ)「いい子症候群」の原因は、親の子どもとのかかわり方にあるみなさんは、「いい子症候群」という言葉を聞いたことがあるでしょうか?「いい子」というからには、悪くないどころか、いいことのように思うかもしれません。でも、いい子症候群の子どもたちの場合、必要以上にいい子であろうとする傾向があるのです。その大きな特徴としては、自分を抑えて周囲の人の期待に過剰に応えようとする、いま風にいえば、空気を読もうとするあまりに、自分というものがわからなくなっているということが挙げられます。いい子症候群の子どもたちの典型的な行動例を挙げてみましょう。家族と一緒に食事に出かけたとします。ふつうの子どもであれば、たまの外食で、なにを食べようかと大いに興奮している場面ですよね。でも、いい子症候群の子どもたちは、自分がなにを食べたいのかということすらわからない。なぜかというと、なにを食べたいといったら親がよろこぶのかというようなことばかり考えるように、小さいときから強いられてきたからです。つまり、子どもをいい子症候群にさせてしまう最大の要因は、親の子どもとのかかわり方にあります。子どもが子ども自身の気持ちに従って行動できるようなかかわり方をしていないのです。そういう親も、一見すると子どもに対して理解があるようなかかわり方をしていることも少なくありません。たとえば、子どもが高校や大学などの進路を選ぶというとき、そういう親はまずはこういうはずです。「あなたが好きな学校に行っていいのよ」と。でも、子どもがいざ自分の志望校を口にしたら、「でも、その学校だとこういうところが心配だな」「お母さんはこの学校がいいと思うな」というふうにいってしまう。それでは、子どもからすれば、自分の行きたい学校に行っていいとはとても思えませんよね?そして、「親の気持ちに応えないと……」と考えるようになるのです。もちろん、そういう場面で子どもが自分の気持ちに従って反発するケースもあります。頭ごなしに「そんな学校は駄目!こっちにしなさい!」なんていわれれば、子どもも反発しやすいでしょう。でも、先に述べたように、いい子症候群を引き起こす親は、「あなたのためを思っていっているのよ」という態度を取りますから、子どもからすれば反発しづらくもある。そうして、子どもたちはいい子症候群になっていくわけです。「母親と娘」に圧倒的に多い、いい子症候群ここまで、わたしが例に挙げた親の口調が気になった人も多いかもしれませんね。そう、いい子症候群を引き起こす親は、圧倒的に母親が多いのです。加えて、いい子症候群になる子どもには女の子が多いという特徴もあります。男の子に対しては、最初からいい意味で両親ともにあきらめています。「男なんてなるようになる」「好きに生きろ」というように。でも、女の子の場合はちがう。父親からすれば異性のことはわからないですし、性のちがいを尊重しないといけないという意識が働くのでまだ問題は起きません。ところが母親は、「娘は自分のコピーのようなもの」だという認識をするケースが多いのです。「自分がこう思うのだから、娘もこう思うにちがいない」「娘の幸せは、こういうものにちがいない」と、娘だけは自分の期待に応えさせてかまわない存在だと思い込んでしまう。そうして、親である自分の希望を娘に最優先させるような言動をしてしまうのです。いい子症候群の子どもは「アダルトチルドレン」になるいい子症候群が怖いのは、いい子症候群の子どもたちの多くが、いい子症候群であることに無自覚だという点。わたしが過去に会った女性を例にしましょう。彼女は、母親からこんな言葉をかけられ続けて育ちました。「お母さんは英語をきちんと習いたかったから、あなたにはそうしてほしい」「お母さんは、本当は学校の先生になりたかったから、あなたにはそうなってほしい」「そうするのが、あなたにとってもいいことだと思うよ」と。彼女は、母親の期待にしっかり応えて英語の教師になりました。そして、それが母親のためにやってきたことなんて思うこともなかったし、自分にとっての幸せだと信じて疑うこともありませんでした。ところが、35歳くらいになったときに、突然、「わたしの人生って誰のものなのか」「わたしの人生は空っぽじゃないのか」という思いに襲われて、心が不安定になったのです。彼女はもう30代でしたから、厳密にいえばいい子症候群とはいえません。いい子症候群の子どもは、大人になったときに、「アダルトチルドレン」と呼ばれるようになります。アダルトチルドレンとは、子どもの頃に自分らしくさせてもらえない体験を重ねることで、大人になってからも、生きづらさを抱えてしまう大人のことです。アダルトチルドレンの人たちはたくさんの問題を抱えています。先に例に挙げた女性のように、人生自体に空虚感を持ってしまうこともそう。また、職場や家庭などの人間関係においても多くの壁にぶつかります。自分がなにをどうしたいのかということがわからないため、「わたしはこうしたい」という交渉ができないからです。そうして、我慢に我慢を重ねて不満を限界までため込んだ揚げ句に、「わたしを大事にしてくれない!」と怒りを爆発させるということになる。でも、相手からすれば、自分のことをなにもいわない人の気持ちなんてわかりようがありませんよね。子どもに「空気を破る」練習をさせる先に、いい子症候群の特徴として、周囲の空気を過剰に読もうとすると述べました。そう考えると、子どもをいい子症候群にしないためには、子どもに空気を破る練習をさせればいいのです。わかりやすい例なら、先にも挙げた外食の場面など最適でしょう。親の希望など関係なく、子ども自身に自分が食べたいものを真っ先に選ばせてあげればいい。このとき、親の顔色を伺うような素振りを子どもが見せていたとしたら、危険信号と考えていいと思います。いい子症候群の子どもは、親からすれば親のことを考えてくれて、反発もしてこないし、まさにいい子に思えるでしょう。でも、手がかからないいい子というのは、のちのちに手がかかる人間になりやすいのです。「なにを食べればいいかな?」というふうな、指示待ちの言動を子どもがするようなら、いい子症候群の兆候が見られますから、要注意!そして、子どもが自分で決められるまで、親は辛抱強く待ちましょう。ここに、欧米と日本の大きなちがいがあります。パン屋さんでの親子の振る舞いを見ていると、欧米人と日本人のちがいがはっきり感じられます。欧米人の親の場合、「なにを食べたい?」と子どもに聞いたら、子どもが自分で決められるまでずっと待ちます。欧米には、たとえ相手が子どもであっても、自己決定を大切にする習慣があるからです。ところが、日本人の親は待てない。「じゃ、これにしとこうか」「これ好きだよね、これでいいよね?」と、親が決めて押しつけてしまうのです。子どもをいい子症候群にしないため、日本人の親にもっとも必要なものは、なによりも根気、「待つ力」ではないでしょうか。『孤独の達人 自己を深める心理学』諸富祥彦 著/PHP研究所(2018)■ 諸富祥彦ホームページ■ 明治大学文学部教授・諸富祥彦先生 インタビュー記事一覧第1回:“手がかからない子”ほど要注意!「いい子症候群」が怖い理由と、その防止法第2回:「過干渉」育児が招く悲しい結果。“見守るだけでは物足りない”親が危険なワケ(※近日公開)第3回:「スマホ依存の親」と「衝動がコントロールできない子ども」の意外な関係(※近日公開)第4回:完璧な子育てを目指さなくていい。親はもっとわがままに“自分の幸せ”を追求しよう(※近日公開)【プロフィール】諸富祥彦(もろとみ・よしひこ)1963年5月4日生まれ、福岡県出身。心理学者。明治大学文学部教授。「時代の精神(ニヒリズム)と闘うカウンセラー」「現場教師の作戦参謀」を自称する。1986年、筑波大学人間学類卒業。1992年、同大学院博士課程修了。英国イーストアングリア大学、米国トランスパーソナル心理学研究所客員研究員、千葉大学教育学部講師、同大学教育学部助教授を経て、2006年より明治大学文学部教授。日本トランスパーソナル学会会長、日本カウンセリング学会認定カウンセラー会理事、日本生徒指導学会理事、教師を支える会代表等の肩書も持つ。専門は人間性心理学、トランスパーソナル心理学。孤独、むなしさ、生きる意味などをキーワードに、現代人の新たな生き方を提示している。スクールカウンセラーとしての活動歴も長く、学校カウンセリングや生徒指導の専門家でもある。『男の子の育て方』『女の子の育て方』『一人っ子の育て方』(いずれもWAVE出版)、『子育ての教科書』(幻冬舎)、『「本当の大人」になるための心理学 心理療法家が説く心の成熟』(集英社)、『他人の目を気にしない技術』(PHP研究所)、『「プチ虐待」の心理』(青春出版社)、『「すべて投げ出してしまいたい」と思ったら読む本』(朝日新聞出版)、『知の教科書 フランクル』(講談社)など著書多数。【ライタープロフィール】清家茂樹(せいけ・しげき)1975年生まれ、愛媛県出身。出版社勤務を経て2012年に独立し、編集プロダクション・株式会社ESSを設立。ジャンルを問わずさまざまな雑誌・書籍の編集に携わる。
2020年02月24日国連の「世界幸福度報告書」における日本の幸福度は、2017年で51位、2018年は54位、2019年にはさらに4つ順位を下げ58位になってしまったそうです。世界から眺める日本はとても豊かな国ですが、所得水準と幸福度が必ずしも相関しないことは、1970年前後から指摘されているのだとか。そんな背景を踏まえて行なわれたある調査研究では、日本人の幸せに「自己決定」が重要であると示されました。今回は、子どもが幸せになるための「自己決定力」について探ります。所得、学歴よりも「自己決定」が幸福感に強い影響神戸大学社会システムイノベーションセンターの西村和雄特命教授と、同志社大学経済学研究科の八木匡教授は、日本国内の2万人に対するアンケート調査をもとに、次の5つの項目と、幸福感とのかかわり合いを分析したとのこと。所得学歴自己決定健康人間関係ちなみに、3番目にある「自己決定」の評価は、自分の意思で進学や就職(中学→高校への進学、高校→大学への進学、初めての就職)を決めたか否かによって行われました。その結果――健康、人間関係に次いで、「自己決定」が幸福感に強い影響を与えていると明らかになったそうです。つまり、所得や学歴が高いより、「自己決定度」が高いほうが、幸福感が高くなるということ。これを受け、神戸大学社会システムイノベーションセンターは次の見解を述べています。自己決定によって進路を決定した者は、自らの判断で努力することで目的を達成する可能性が高くなり、また、成果に対しても責任と誇りを持ちやすくなることから、達成感や自尊心により幸福感が高まることにつながっていると考えられます。(引用元:国立大学法人 神戸大学 (Kobe University)|所得や学歴より「自己決定」が幸福度を上げる2万人を調査)※太字は編集部が施した国連の世界幸福度報告書では、日本は「人生の選択の自由度が低い」国であると述べられているのだとか。そうしたことからも同センターは、今回の分析結果が注目に値すると述べています。この調査研究からわかるのは、自分の子どもを将来幸せにするためには、ただ勉強して学力をつけさせればいいというわけではなく、「自己決定力」も育んであげるべきだということ。では、「自己決定力」とはどういうものでしょう?児童における「自己決定力」とは?子どもの判断や決断は、ほんの些細なことから始まります。どのおもちゃで遊ぶか、何を買ってもらうか、どの宿題から始めるか……。この些細な決断の繰り返しが、とても重要です。なぜならば、「ほんの些細なことを考える・判断する・決める」ことができなければ、とうてい進路や就職先といった「大きなことを考える・判断する・決める」ことなどできないから。当然「自分の考え」も定まらないでしょう。岩手県立総合教育センターによる「小学校キャリア教育の推進に関する研究(2005年)」では、小学校からのキャリア教育(=自らの生き方を考える力を育む教育)で目指す児童の理想像のなかに「自己の考えを確立できる人間」を挙げています。その理想像に近づくためには、「人生や進路を、主体的に選択できる力を培うこと」が必要なのだそう。進路を自分で決められるということと、自分なりの考えをしっかり深められるということは、表裏一体だということです。玉川大学の大豆生田啓友教授いわく、子どもの「自分で決める力」を育てるためには、「子ども自身が自分で考えて、自分で物事を決める経験」を重ねることが必要。つまり、幼いころから小さな自己決定を重ねていけば、自分の考えを打ち立てられるようにもなるし、ゆくゆくは大きな自己決定も可能になるのです。もしも、その経験が不足したまま成長してしまったら、自分で考えられない、判断もできない、決めることもできない「困った人」になってしまうかもしれません。そんな人では、自分の進路について満足の行く決断を下すことなど、きっとできないでしょう。「自己決定力のある子ども」を育てるためにすべきことでは、我が子を「自分で考え自分で決められる子ども」にするために、親はどんなことをするべきでしょうか。専門家や有識者の言葉を参考にしながら、3つ紹介していきます。1. 小さなことを自分で決めさせる子どもに「自己決定する経験」を積ませるために、「小さな決断の機会」をたくさん用意してあげましょう。就学前~小学4年生の子どもを持つ保護者に向けた、茨城県教育委員会の『子育てアドバイスブッククローバー』によれば、「服を選ぶ」「おもちゃを選ぶ」などの場面は小さな決断に最適だとのこと。その際、子どもの決断が親の考えと多少違っていても、口出しせず見守るようにするといいそうですよ。ちなみに、日本小児学会会長で医学博士の高橋孝雄氏によると、子どもはだいたい2歳になるころには、二者択一できるようになっているそうです。ですから、小さな子どもが着る服で迷っている様子なら、「どれを着る?」ではなく「青のお洋服と黄色のお洋服、どっちがいい?」と聞くようにすることで、決断力が養われるでしょう。子どもがもう少し大きければ、親が判断に役立つ条件を子どもに伝えてあげるといいでしょう。家庭教育の専門家・田宮由美氏いわく、なかなか子どもが決断できない場合、頭の中の決断材料が整理しきれていない可能性があるのだとか。たとえば、「半袖のシャツと長袖のシャツ、どっちを着る?」だけではなく、「今日は少し寒くなるみたいよ」と条件を加えると、子どもは「寒くなるなら長袖にする」と、自分なりに条件をクリアして決断することができます。また、前出の大豆生田教授のアドバイスは、ちょっとした応用編になるかもしれません。単に「どっちの服を選ぶか」ではなく、たとえば、その日の服のコーディネートを考えるその日の気温を自分で考慮し服を選ぶといったことにチャレンジさせるのです。「このスカートに何を合わせる?」「今日の温度はどうかなぁ?」などと言葉をかけ、きっかけを与えてあげましょう。こうした経験を重ねて「自己決定力」が育つと、同時に自信や自己肯定感も育つそうですよ。2. 宿題に手出し口出ししない子どもに「自己決定力」をつけさせたければ、宿題を手伝ってあげるのはやめましょう。元新聞記者で臨床心理士の西脇喜恵子氏は、たとえば夏休みの宿題で子どもが困らないようにと親が先回りしてやってあげるなどしていると、子どもが自分で考えたり感じたりする力を弱めてしまう、と注意を促します。また、社会学者キース・ロビンソン氏とエンジェル・ハリス氏らによれば、小学生時代に親がつきっきりで宿題を手伝っているほど、年齢が上がるにつれ学業成績が低下してしまうのだとか。その理由は、「親が手伝ってくれることに慣れてしまい、自分で考えたり工夫したりする力が培われないため」。子どもを案じるあまりあれこれ手出し口出ししていたら、かえってよくない結果を招いてしまうようです。だからといって、子どもの宿題を全くもって放置していいわけではないと、子育ち研究家の長岡真意子氏はいいます。いつもギリギリまで宿題をしない子どもであれば、常に締め切りの段階で徹夜をするなど、勉強内容が身につかない行動を繰り返しかねないからです。長岡さんいわく、大切なのは宿題を手伝うことではなく、足場づくりをすること。たとえばこうです。【宿題をする理由を伝える】→「なーんだ、そうだったのか」「なるほど」「あ、これ知ってる」が増えて楽しいよ!【宿題の計画を一緒に立てる】→おやつタイムを加味した、宿題スケジュールを一緒に考えてみる【宿題をする環境を整える】→気分を尊重し「今日はどこでやる? このテーブル? それともあっちの机にする?」と聞いてみる【宿題の答えは教えず思考を促す】→たとえば「これをママに説明してみてくれる?」などと、子どもが自ら答えにたどりり着くのを助けるこうした宿題への取り組み方が、「自己決定力」を養うことにつながるのですね。3. 子どもの意見に「どうして?」と尋ねる2019年3月まで筑波大学附属小学校の副校長を務め、卓越した算数指導や教員指導の実績からカリスマ教師とも呼ばれる田中博史氏は、子どもならではの口癖に「どうして?」というものがあるけれど、じつは大人が子どもに向かって発するべき言葉でもあると述べます。いくら子どもに考えさせたいと思っても、「しっかり考えなさい」といくら子どもにいい聞かせたところで、実際に子どもが考えているかどうかはわかりません。しかし、子どもの発言に親が「どうして?」と声をかけることで、より深く考えさせることができるとのこと。たとえばAとBのぬいぐるみがあり、子どもに「どっちが好き?」と聞けば、子どもはAかBかを選ぶはず。あるいはどちらも選ばないかもしれません。いずれにせよ、その時点で子どもはまだ深く考えていないでしょう。そこで親が「どうして?(それを選んだの?)」と聞いてみれば、子どもは「なぜその選択をしたのか」「なぜ選ばなかったのか」と考える機会を得ます。たとえ「好きだから」「嫌いだから」といった単調な答えが返ってきたとしても、「そっかぁ、じゃあ、どんなところが好き(嫌い)?」と聞いてみましょう。こうした「どうして?」の繰り返しが、子どもの「自分で考え、決める力」を伸ばすのです。***「自己決定力」が高ければ幸福感も高まることを背景に、「自己決定力」を育むために親ができることなどを紹介しました。イエール大学で心理学を教えるローリー・サントス教授によると、幸福感は仕事のパフォーマンスや寿命などにも影響するそうです。子どもが幸せになれるよう、小さな決断の機会をたくさん与え、時には「どうして?」と言葉をかけながら、あとはあれこれ手出し口出しせず、やさしく見守ってあげてくださいね。(参考)ハフポスト|「世界幸福度ランキング」2019年版が発表。日本の順位はどうなった?国立大学法人 神戸大学 (Kobe University)|所得や学歴より「自己決定」が幸福度を上げる2万人を調査エキサイトニュース|日本の低い“幸福度”…原因は「選択の自由度」の低さ?現代ビジネス|「夏休みの宿題を全部やってあげる親」が子どもの思考を止めていた茨城県教育委員会|子育てアドバイスブッククローバー前川岳詩(2005),「将来を見つめ自らの生き方を考える力を育てる小学校キャリア教育の推進に関する研究- 進路発達にかかわる諸能力の育成を軸とした特別活動の指導計画を中心として -(第1年次)」,岩手県立総合教育センター.All About|小学生の宿題をつきっきりで手伝うのはNG!自主性を育む親サポートStudyHackerこどもまなび☆ラボ |子どもが着る服、自分で選ぶと「自己肯定感が上がって頭も良くなる」!?StudyHackerこどもまなび☆ラボ |富裕層の家庭はやっている “ある習慣”。「決められない大人」にならないためにStudyHackerこどもまなび☆ラボ |“考える力”を伸ばす、子どもの「どうして?」と親の「どうして?」
2020年02月15日「毎日、感情的に子どもを怒ってばかりで嫌になる」「子どもを褒めてあげたいのに、どこを褒めればいいかわからない」子育てをしていると、子どもの褒め方や叱り方についての悩みは尽きないですよね。そうであれば、思い切って褒めるのも怒るのもやめてみてはいかがでしょうか。……というのも、今、褒めない・怒らない「アドラー式子育て」が注目されているのです。いったいどのような子育て法なのか、ご紹介しましょう。アドラー式子育てとは?アドラー式子育てとは、フロイト、ユングに並ぶ心理学の3大巨匠とされる、アルフレッド・アドラーの心理学を取り入れた子育てのことです。ベースとなっているアドラー心理学は、その思想を解き明かした書籍『嫌われる勇気』(ダイヤモンド社)がベストセラーとなったことがきっかけで、今では多くの人に知られています。アドラー心理学において、特に大事にされているのが「共同体感覚」というもの。共同体感覚とは、一言でいうと、「一人ひとりが自分らしくいられ、お互いに協力し合える関係を周囲の人たちと築けている状態」のこと。メンタルコーチの平本相武氏は、「人が人を支配しないヨコの関係」と説明しています。この感覚を高めるには、自分が自分のことを好きになり(自己受容)、他者のことを仲間と認め(他者信頼)、人の役に立っていると実感する(他者貢献)という3つの条件を満たすことが必要です。また、これらの条件は「人間の幸せの条件」ともされています。子どもの共同体感覚を高め、最終的に「自立」させることがアドラー式子育ての目標です。アドラー心理学に詳しい株式会社子育て支援代表取締役の熊野英一氏の著書『育自の教科書〜父母が学べば、子どもは伸びる〜』(アルテ)では、自立の意味を下記のように定義づけています。<自立とは>1. 保護者(通常は親)の保護から精神的に独立して2. 自分のことを信頼しながら3. 社会(他者)との適切で建設的な関係を構築して生きていくこと(引用元:日経DUAL|アドラー心理学入門周りを「勇気づけ」できる人になる)この定義からわかるように、アドラー式子育てにおける自立は、単に独り立ちすることではありません。独り立ちしたうえで、社会と調和して暮らすことを目指すのです。褒めず、怒らず、やる気を引き出す方法では、こうした目標に向かって、具体的に何をすればよいのでしょうか。アドラー式子育てでは、「勇気づけ」という技法を使います。勇気とは「困難を克服する力」のこと。勇気づけとは、子どもの気持ちに寄り添い、共感する態度で接することで、子どもに「困難を克服する力」を与えることを指します。たとえば、子どもが何かしてくれたとき、「えらいね」「すごいね」と褒めるのではなく、「ありがとう」「うれしいな」などの気持ちを伝えるようにするーーこれが勇気づけです。「ありがとう」「うれしいな」などの気持ちを受け取った子どもは気分が良くなり、「自分の意思で」相手を喜ばせるような行動をとるようになります。ポイントは、この「自分の意思」という点。勇気づけは、子どもに自信を与え、「自らやってみよう」というやる気を引き出してくれるのです。こうした例を見て、「褒めたらダメなの?」と疑問に思う方もいらっしゃるでしょう。もちろん、子どもを褒めることがいけないわけではありません。しかし、ちょっとしたことでも褒めてばかりいると、子どもにとって逆効果です。公認心理師・産業カウンセラーの大美賀直子氏によると、子どもを些細なことで頻繁に褒めていると「褒められる状況」が当たり前になってしまい、褒められない状況に不安を覚えるようになるのだとか。そうすると、進学や習い事、就職などで「褒めてもらえない環境」に属したとき、適応できなくなってしまいます。また、「自分がどうしたいか」ではなく、「大人はどう思うか」を基準に行動するようになり、「自分の意思で」行動する力が身につかなくなってしまうことも。また、子どもに感情的に怒ったり、嫌味を言ったりすることも逆効果です。たとえば、子どもが部屋の片付けをしないとき、「片付けなさいって言ったじゃない!なんでできないの?」と怒鳴ったり、怒りながら親御さん自身が片付け始めたりするのは、アドラー式子育てでは、「勇気くじき」と呼ばれている行動。子どものやる気を失わせ、学ぶ機会を奪ってしまいます。10歳になるまでに実践しようここまでの内容を読んで、「これまで毎日のように怒ってしまっていた……」「勇気づけなんて全くしてこなかったから手遅れなのでは……」と不安に思った方もいらっしゃるかもしれません。アドラー式子育てでは、子どもの人格や性格は10歳頃までに形成されると考えられています。そのため、10歳前後の関わり方が特に重要視されているのです。これまで勇気づけをしてこなかった方は、これから少しずつでも勇気づけを心がけてみましょう。では、これまで褒めたり怒ったりしていたシーンで、どうすれば勇気づけに変換できるでしょうか。具体的な例をいくつかご紹介します。褒める→勇気づける褒める行為は、基本的に上から目線です。当たり前ですが、上司などの目上の立場の人を「褒める」ことはまずないですよね。前出の熊野氏によると、褒める行為は、相手との間のタテの上下関係を前提に、立場が上の人が下の人を評価する行為だそう。これまで褒めていたシーンで勇気づけるときは、子どもの気持ちにいっそう寄り添って、自分の気持ちを伝えることがポイントです。●子どもが部屋を掃除してくれたとき「掃除してえらいね!○○ちゃんはきれいにするのが上手だね!」と褒める↓「きれいになって気持ちいいね!ありがとう!」と勇気づける●子どもがテストで100点をとったとき「すごい!さすが○○ちゃん!」と褒める↓「○○ちゃん嬉しそうだね。お母さんも嬉しいわ」と勇気づける 怒る→勇気づけるこれまで怒っていたシーンの多くは、子どもに「してほしいこと」があるときでしょう。前出の平本氏いわく、子どもを叱って行動させるのは、親が子どもを支配している状態にある「タテの関係」。子どもに行動を促したいときは、命令口調で伝えるのではなく、自分の気持ちを伝えてお願いしたり、どうすればできるようになるか子ども自身に考えさせたりすることがポイントです。●子どもが洗濯物をかごに入れないとき「ちゃんと洗濯物をかごに入れなさいよ!」と怒鳴る↓「○○ちゃんの洋服が洗えなくて困っているの。脱いだものをかごに入れてくれると助かるんだけど」と気持ちを伝え、お願いして勇気づける●子どもが門限を守らない「○時までに帰ってきてって言ったじゃない!なんで守れないの?」と怒鳴る↓「遅くなると、お母さん心配なの。どうすれば時間を守れるようになると思う?」と気持ちを伝え、子ども自身に考えさせて勇気づけるこのように、コツさえつかめば、あらゆる場面で勇気づけが行なえるのです。***アドラー式子育てで重要と言われていることのひとつに、「完璧を目指さないこと」があります。「失敗してしまう自分自身にも、勇気づけを行なえるようになろう」という考え方です。時には、子どもに対して、感情的に怒ってしまうこともあるでしょう。そういうときは、「自分はイライラしていたんだな」「どうすれば怒らないですむかな」と反省し、できるときにまた、子どもに寄り添うようにしましょう。(参考)原田綾子(2014),『子どもの「自信」と「やる気」をぐんぐん引き出す本』, マイナビ.日経DUAL|子どもの将来の幸せを願うなら、結果を早く求めない日経DUAL|「勇気づけ」と似ているようで違う「ほめる」の弊害ママスタセレクト|アドラー式子育てってどんなもの?子育ての「目標」を持って“ブレない軸”を手に入れよう #アドラー式子育て術から学ぶAll About|ほめすぎは逆効果?アドラー流・よりよい声かけのコツITmediaエンタープライズ|自分が好き?居場所はある?「幸せ」を実感するための3つの条件
2020年02月13日子どもに「早寝早起き朝ごはん」を定着させようといろいろな運動が広がっている現代ですが、多忙な親の生活に合わせ、おのずと就寝が遅くなってしまっている現代っ子はまだまだ多いようです。しかし、早寝早起きが脳の発達にも影響すると聞けば、どうにか早寝をさせたくなるもの。夜遅くまで勉強机に向かっている姿に感心している場合ではないようです。ここでは、早寝のメリットと早寝をさせるためのコツについてまとめてみました。幼児期から遅寝の習慣がついている子も国立精神・神経医療研究センター病院の医師、三島和夫氏によると、現代っ子の4、5人に1人は、睡眠習慣の乱れや睡眠障害など何らかの睡眠問題を抱えていると言います。財団法人日本小児保健協会が実施した調査によると、「夜10時以降に就寝する子ども」の割合は、1歳6ヶ月・2歳・3歳で半数を超えており、子どもの生活時間の夜型化の実態が明らかになってきました。これは10年20年前に比べて、顕著に増加しています。また小・中・高校と学年が進むにつれて就床時刻が遅くなること、睡眠時間が少なくなり「睡眠不足を感じている児童生徒」の割合が増加していることなどが示されています。(引用元:厚生労働省e-ヘルスネット|睡眠不足や睡眠障害、子どもへの大きな影響)また、厚生労働省が行なっている21世紀出生児縦断調査では、4歳6ヶ月時点での最も多い就寝時刻は21時台(50.1%)、次いで22時台(21.9%)であり、21時前に就寝する子どもは5人に1人以下しかいなかったというデータも。これには、親が残業などで帰宅が遅いことも少なからず影響していると思われ、大人側のライフスタイルのほうを問題視する見方もあるようです。また、小・中学生となると、テレビ・ゲーム・勉強などに遅寝の原因を探しがちですが、「なんとなく夜更かししてしまう」子どもが最も多いことがわかっていると三島氏は言います。だからこそ、夜更かしは改善の余地があると言えるでしょう。遅寝・夜更かしが生む悪循環毎朝学校に行く時間は決まっているわけですから、遅寝をすれば寝不足になるのは当たり前。寝不足になると気分が悪く集中力がなくなります。それでも大人であれば、多少の寝不足状態でも理性が働き、ある程度抑えて取りなすことができますよね。しかし、未成熟な子どもは眠気をうまく意識することができず、そのせいで、イライラする、友だちと仲良くできない、多動・衝動行為などの心の問題が表面化してしまうことも少なくないのです。そして、睡眠時間の不足は、学力や記憶力にも悪影響を与えるようです。記憶のコントロールや、考えたり、学んだりと、脳の中でも、とても大切な働きをする「海馬」の体積が、睡眠時間によって変わってくる、ということが明らかになってきました。具体的には、8,9時間寝ている子どもたちは、5,6時間しか寝ていない子どもたちに比べて、海馬の体積が大きく、海馬による働きの能力が高いということがわかったのです。睡眠時間に関しては、寝る時間の遅い子どもや、睡眠時間の少ない子どもは、学校の成績がよくない、あるいは、記憶力があまりよくない、ということも、世界中から報告されています。(引用元:瀧靖之 (2019年),『最新の脳医学でわかった!こんなカンタンなことで子どもの可能性はぐんぐん伸びる!』, ソレイユ出版.)それに加えて、睡眠不足は成長の遅れや食欲不振・注意や集中力の低下なども引き起こします。また、将来の肥満の危険因子になることも示されているとあれば、睡眠時間を削ることは百害あって一利なし。では、早寝の習慣をつけさせるには、どのような工夫が必要なのでしょうか。まずは「早起き」から始めよう眠くないと言っている子どもを無理に寝かすのは難しく、親も子どももプレッシャーとなってストレスを抱えてしまっては本末転倒。まずは、起きる時間のほうを少しずつ早めるのが効率的のようです。「早寝・早起き」ではなく「早起き・早寝」から始めましょう。まず1週間、頑張って早起きをさせましょう。そして歯磨きでもしながらベランダに出て日光を浴びる。それが無理なら窓辺で顔を戸外に向けるのでも結構です(室内方向を見てしまうと体内時計の時刻合わせには不十分です)。1~2週間ほども続けると子どもたちの体内時計は徐々に朝型に変わり、早起きの辛さは減ってきます。早起きさせた分の睡眠時間は早寝になった分で取り返せるでしょう。早起きから始めることで、太陽と朝食を効果的に使って体内時計の時刻合わせを行うわけです。(引用元:厚生労働省e-ヘルスネット|子どもの睡眠)ただし、起きる時間をいきなり1時間単位で早めてしまうとお子さまの心身の負担も大きくなるので、15~30分単位で段階的に早めてあげましょう。早く起きたぶん、その夜は早く眠くなるはず。この好循環から規則的な生活につなげていければベストです。早寝を定着させるためにできること早起きするという取り組みとあわせて、早寝に向けてできることもたくさんあります。実践できれば気持ちよく早寝早起きができるようになるはず。明治薬科大学で心理学の教鞭をとる駒田陽子准教授によるお話を中心に、早寝のコツをまとめてみました。■日没後は白熱灯色の照明の部屋で過ごし、寝る前のスマートフォンやゲームも避けるスマートフォンやゲーム、パソコンなどから出るブルーライトを寝る前に見るのがよくないことは、広く知られています。それは、眠りを促すための「メラトニン」というホルモンの分泌を妨げ、体内時計を狂わせることにつながり、寝つきに影響が出てしまうため。また、子どもの目の水晶体は大人より澄んでいるため透過性が高く、光の影響をより強く受けてしまうことから、寝る直前に蛍光灯や明るい白色LEDの下で過ごしてしまうと体内時計が夜型化しがちになります。家では、日没後はできるだけオレンジ色がかった白熱灯色の光の間接照明やダウンライトなどを利用するのがおすすめです。■お風呂を夕食の前にしてみるヒトの1日の体温のリズムとしては、夕方に体温が高く、だんだん下がってくると眠くなってきます。そんなとき、熱いお風呂に入ると、下がりかけた体温がまた上がって眠りにくくなることも。寝つきが悪い場合は、夕食とお風呂の順番を逆にしてみるとうまくいくこともあります。寝る前のお風呂は、お湯の温度はぬるめにしましょう。■親も一緒に早寝をする夕食後は親と子どもが一緒に居間でテレビを見て過ごすことも多いかと思いますが、親が寝ないでテレビを楽しんでいれば、子どもも「まだまだ寝たくない」となるのは当然です。また、寝かしつけをしようとして親も一緒に寝てしまって、慌てて起き出して深夜に残りの家事を片付ける……ということもあるかと思いますが、ばらばらに分断された睡眠はかえってつらいもの。思い切って子どもと一緒に早く寝て、がんばって朝早く起きたほうが、まとまった睡眠時間が確保できてよいでしょう。■週末や長期休み期間中も夜更かししない週末や長期休暇中ならいいだろうと、夜更かしをしたり朝になってもダラダラと寝ていたりすると、時差ボケと同じような状態になってしまいます。体内リズムの乱れは翌週の前半まで続き、日中のパフォーマンスを低下させてしまいます。また、子どもの学習に影響が及ぶことも。休日だからと言って遅くまで寝ているのではなく、平日朝と同様の時間に起きて活動を始めるように心がけましょう。ただし、人は1時間程度であればその日のうちに体内時計の誤差を修正できると考えられているので、どうしても……というときは、1時間以内の寝坊に留めておけるといいですね。また、何かのきっかけで学校を休みがちになった場合でも、朝起きて、夜寝るというリズムを大切にするべきと言うのは、江戸川大学社会学部人間心理学科教授で同大学睡眠研究所所長の福田一彦氏。学校に行かないとなると、夜遅く寝て朝遅く起きるという生活になりがちですが、そうした生活が続くと、だるさが強くなり無気力になっていき、ますます学校に行けなくなってしまうそう。学校に行く日も行かない日も、生活リズムをなるべく変えないように気をつけましょう。****子どもの睡眠習慣は、大人のライフスタイルを映す鏡とも言われます。予定のない日も平日と同じ生活リズムで過ごしたり、早寝早起きのお手本を見せたりするなど、大人が率先して習慣作りをすることが一番の成功のコツ。家族みんなで意識を高めていけるといいですね。文/酒井絢子(参考)StudyHackerこどもまなび☆ラボ|「昼寝のせいで夜なかなか寝ない」問題の解消法。朝のグズグズ防止にも効果大!StudyHackerこどもまなび☆ラボ|“世界一寝不足” な日本の子ども。「11時間37分」が示す、眠りにまつわる切実な問題StudyHackerこどもまなび☆ラボ|「起きる時間」を意識させるだけ!子どもの早起きを楽にするちょっとしたコツベネッセ 教育情報サイト|子どもに早寝早起きの習慣を定着させるコツベネッセ 教育情報サイト|親と子、両者のために!早寝早起きのススメ【後編】規則正しい生活のポイント厚生労働省e-ヘルスネット|子どもの睡眠厚生労働省e-ヘルスネット|睡眠不足や睡眠障害、子どもへの大きな影響東京都生涯学習情報|早起き・早寝が大切なわけ東京都生涯学習情報|子どもの生活リズム改善作戦瀧靖之 (2019),『最新の脳医学でわかった!こんなカンタンなことで子どもの可能性はぐんぐん伸びる!』, ソレイユ出版.
2020年02月08日常に親が「先回り」して、子どもにとって障害になるものを片づけたり排除したり、手を差し伸べたり、口出ししたりする育児のことを、カーリング育児というそうです。投げたストーンが氷の上をスムーズに進むよう「先回り」し、ブラシでゴシゴシとリンク表面をこするスポーツ、カーリングとかけているわけですね。名前はなんだか楽しげですが、カーリング育児は、子どもに対して必要以上に干渉する「過干渉育児」を指しています。親が何かにつけ「先回り」して手出し口出ししていると、子どもの成長の大きな妨げになってしまうのだとか。先回りをする親の心理や、そのリスクと、親がとるべき行動などを紹介します。先回りしてしまう親の心理プロ家庭教師集団「名門指導会」代表の西村則康さんによれば、何でもかんでも先回りしてしまう親が増えているそう。たとえば「〇〇をやっておくといいらしいので、早いうちから子どもに〇〇を習わせておく」といったことです。こうした傾向は、特に、子育てのプレッシャーを感じている親に見られるのだとか。「わが子を成功させたい」「わが子に失敗をさせてはならない」といった心理が、親を先回りさせるのです。一方で、「子どもの先回りをして手出し口出しするほうが、じつは親として楽」だという見解もあります。これは、ベストセラー『嫌われる勇気』(ダイヤモンド社)の共著者で、哲学者の岸見一郎さんが述べていること。その理由について岸見さんは、先回りしてあれこれやってあげると、「わたしは育児をしている」という気分になれて、周囲からも「子どもの面倒をちゃんとみている」と思われやすいからだといいます。つまり、先回りしてしまう親の心理には、わが子を成功させたいわが子に失敗をさせてはならないちゃんと育児したいちゃんと育児していると思われたいといった思いがあるのだと考えられます。先回りする親に育てられた子どもの未来しかし、子育て心理学を発信する公認心理師の佐藤めぐみさんは、何でも先回りして、わが子が進む道を地ならししてしまう親のもとで育った子どもは、ほんのちょっとした困難でさえも乗り越えられなくなる、と注意を促します。何の障害もない真っ平らな道しか知らないと、初めてのことや難しいことに挑戦して失敗する経験、ここで頑張らなきゃとプレッシャーに耐える経験、失敗やできなかったことのつらさ、不安などを乗り越える経験、そして自分で考えることの経験が欠如してしまうからです。それらを経験せずに育った子どもは、次の状態に陥ってしまう可能性があるのだとか。我慢できない待てない踏ん張れないすぐにあきらめる自分で考えないだからこそ、YSこころのクリニック 院長の宮島賢也さんは、親の先回りが子どもの「生きる力(危機管理力や問題解決力など)」を弱めかねないと警鐘を鳴らします。明治大学文学部教授で、教育・心理関係の著書がある諸富祥彦さんも、過干渉育児が子どもの「主体性」を奪うと述べます。加えて心理学者の根本橘夫さんいわく、典型化して言えば、過保護は「お前は無力だ」という暗黙のメッセージを送り、過干渉は「お前のままでは駄目だ」というメッセージを送る。このために、過保護は子どもを無力化することで無価値感をもたらし、過干渉は子どもの自我を奪い取ることで無価値感をもたらす。(引用元:ダ・ヴィンチニュース|「自分には価値がない」と考えてしまうメカニズム―親の過保護や過干渉から解放されるには?)※太字は筆者が施したとのこと。つまり、先回りする親に育てられた子どもは、忍耐力も、粘り強さも、主体性も、危機管理能力も、問題解決力も、自立心も、自主性も、意欲も、自信もない大人に成長してしまう可能性があるわけです。親は、先回りするよりもこうすべき!先述のとおり、何でも先回りして子どもに “あれこれ” やってあげることは、決していい未来を子どもに与えません。そこで、今日からさっそく気をつけられるよう、親はどんなシチュエーションで先回りしてしまいがちなのか、さらに、先回りする代わりにどうするべきなのか、探っていきましょう。1.子どもに何かを選ばせるときお店などで、子ども自身に洋服やおもちゃを選ばせようとしているときこそ、じつは非常に先回りしやすいシチュエーションです。子どもがなかなか決められない様子を見かねて、「これがいいんじゃない?」などといってしまったことはありませんか? あるいは子どもの選択に対し、「こっちがいいんじゃない? 前もあとで『ピンクが良かった』って、いってたじゃない」「こっちのほうが絶対に似合うよ」などと、ついつい口出ししてしまったことはないでしょうか。常にこんなふうでは「子どもの決断力や自立心が育たない」と諸富祥彦さんはいいます。どんなに時間がかかっても、子どもの決断をじっと待つことが大切なのだそう。それに、たとえ子どもが洋服やおもちゃ選びに失敗したとしても、それがいい教訓となり、次回は子どもなりにリスクをシュミレーションし、自分で判断していくようになるはずです。子どもが自分で選ぶ経験を、しっかりと与えてあげましょう。2.子どもに「どんな感じ」か聞くときたとえば「寒いでしょ? もう一枚着なさい」「暑いでしょ? 一枚脱ぎなさい」「お腹空いたでしょ? これ食べなさい」といったり、あるいはプレゼントをもらった子どもに「うれしいでしょ? すごく欲しかったんだよね」といったり、もしくは、アニメを鑑賞した子どもに「おもしろかったでしょ? 〇〇だからおもしろいよね」などといったことはありますか?じつはこれ、子どもに「どんな感じ」か聞いておきながら、結局は親が先回りして、子どもの感情や感覚を言語化してしまう状況を表しています。根本橘夫さんによれば、こうした先回りは子どもから「感じたことや欲求の体験」――いわゆる感覚を奪ってしまうため、子どもの身体感覚や、感情、好みまで希薄化させてしまうのだとか。もちろん、子どもを不快感や危険から守り、社会のルールに従うよう導くことは必要ですが、大切なのは、子どもの欲求や感情、意思、願望などを尊重しつつ、守り導くことだと根本さんはいいます。子どもが自分自身で、感覚や感情を言葉にするまで、「〇〇でしょ?」などと先回りせず、根気強く待ってあげましょう。3.子どもが遊んでいるとき子どもが目の前で遊んでいるときも、親が先回りしやすいシチュエーションです。もちろん、子どもが気づかずにぶつかってケガをしかねない突起物や鋭利なもの、倒れ落ちそうなものなど、明らかに危険な因子は取り除いたり、子どもを安全なほうに導いたりすることは必要です。しかし、たとえば子どもが何かをつくって遊んでいるとき、「こっちから組み立てると早くできる」「この道具を使うと上手にできる」などと、親が先回りして物事の因果関係を考え、子どもを手助けするのは避けるべきです。その理由は、子どもがあまり失敗を経験できなくなり、自分の頭で考えなくなってしまうから。一般社団法人TOKYO PLAYの代表理事である嶋村仁志さんは、子どもの “遊び” に大人が関わりすぎるべきではないと説きます。「へー、そんなふうに遊んでもいいんだ」「こうするとおもしろいんだ」と子ども自身が気づけるよう、「あ、あっちにもおもしろいのがあるねぇ」などとヒントを与える程度がいいのだそう。自分で “遊び” をコントロールできてこそ、子どもは “遊び” を存分に楽しめると嶋村さんはいいます。それに、“遊び” は子どもが試行錯誤を重ねる大きなチャンス。「こうしてみようかな、ああしてみようかな」「さっきは失敗したから、今度はこっちにしてみよう」といった思考やチャレンジが、子どもの成長において重要な学びとなるのです。それらがないと、子どもの自主性や意欲、自立心に好奇心が育たず、能力開発の機会まで失われてしまいます。諸富祥彦さんいわく、子どもが失敗しようが何をしようが、余計な手出し口出しをせずに、じっと根気よく見守り、自由に遊ばせておくことが大切とのこと。もちろん、だからといって子どもから目を離し、スマートフォンをいじっていいわけではありません。遊んでいる子どもが振り返り、親の姿を確認したとき、「しっかりと見守っているからね」と表情や視線で示すことも大切です。それにより子どもは安心して、自分の感性を豊かにする “遊び” に、再び没頭できるでしょう。***先回りをする親の心理や、そのリスクと、親がとるべき行動などを紹介しました。「先回り」をやめて、どんどん子どもを成長させてくださいね。(参考)PRESIDENT Online(プレジデントオンライン)|子供を潰してしまう、高学歴な親の口グセ日経DUAL|「過干渉育児」の恐ろしい弊害子育ては根気が一番All About|「カーリングペアレント」とはどんな親?東洋経済オンライン|「普通の家庭の子」の精神が追い詰められるワケStudyHacker こどもまなび☆ラボ |過干渉していませんか?子どもの「自主性」を伸ばすための4つの声かけStudyHacker こどもまなび☆ラボ |危険にも種類がある。挑戦が達成感に変わる「リスク」と「ハザード」はどう違うのか?StudyHacker こどもまなび☆ラボ |「本当に自由に」試行錯誤する機会を子どもたちに――“本気の遊び場”プレーパークダ・ヴィンチニュース|「自分には価値がない」と考えてしまうメカニズム―親の過保護や過干渉から解放されるには?根本橘夫著(2007),『なぜ自信が持てないのか―自己価値感の心理学』,PHP研究所.
2020年01月25日「誰からも好かれる子になってほしい」そう思わない親御さんはいないのではないでしょうか。“クラス1の人気者”とまではいかなくても、できるだけたくさんのお友だちに好かれる子に育ってほしいと願うのが親心です。今回は、「なぜか人に好かれる子」の特徴を解説していきます。さらに、子どもが「人に好かれる力」を身につけるために親ができることについてもお伝えします。小さいころから「人に好かれる力」がある子は、大人になってからも人間関係に恵まれて、社会的に成功しやすい傾向が。ぜひお子さんにも「人に好かれる力」を身につけてもらいたいですね。人に好かれる子は「友だち力」が高い子どものころ、クラスの中に「リーダータイプじゃないけどみんなから信頼されている子」や、「目立つタイプじゃないけどいつもニコニコしていて好かれている子」がいたことを覚えていますか?このように “なぜか人に好かれる子” というのは、何年経っても私たちの心の中に残っているものです。そして自分が子どもをもったとき、漠然と「うちの子もみんなから好かれていた○○ちゃんのように育ってほしいな」と考えるようになります。いまは「自分の個性を発揮すること」や「大勢の前で自分をアピールできるプレゼン力」が求められる時代ですが、学校や社会で人と関わり合う以上、人から好かれる魅力が備わっていることも大切であると子どもたちに伝えるべきではないでしょうか。心理学博士の榎本博明先生は、「社会でうまく生き抜けるようにするには、思いやりや協調性を身につけさせることが大切」とし、「思いやりや協調性をもちながら、自分のいい部分、個性を伸ばしていける子こそが人から好かれる」と述べています。個性を磨くことも大事ですが、その前に周囲の人たちと良い関係を築く力を身につける必要があるのです。いわゆる「友だち力」とも呼ばれるその力、いったいどのようなものなのでしょうか。教育評論家の親野智可等先生は、「『友だち力』がある子とは、友だちとなかよくできる力と、ひとりでいる力、両方のバランスがうまく取れる子のこと」と述べています。どんなに友だちが多くても、「友だちが一緒じゃないとダメ」という子は友だちに依存する傾向があるので、クラスでいじめや仲間はずれが勃発すると、「いじめないと自分も仲間に入れてもらえない」と考えてしまいます。ひとりでも充実した時間を過ごせるけれど、友だちともうまく付き合っていける、そんなバランス感覚に優れたタイプが「友だち力」が高いといえるでしょう。自己肯定感と柔軟さが人に好かれる素地になる世界で活躍するスポーツ選手や成功者には、「人に好かれる魅力」が備わっています。最近では、“シブコブーム” を巻き起こした女子プロゴルファーの渋野日向子選手が記憶に新しいのではないでしょうか。弾ける笑顔で瞬く間に人気者になった渋野選手の魅力を、精神科医の和田秀樹先生は次のように分析しています。持って生まれた性格もあるのでしょうが、渋野さんは、勝ったときに自分が喜ぶタイプというより、勝ったときに周りの人間が幸せになるタイプですよね。つまり、「勝ってよかったね」と周りに思わせるかわいさがある。全英で勝って帰国し、「賞金女王になりたい」と言っても、「なんだよ、いきなり天狗かよ」とは思わせない。そういう発言すらかわいく見えるところが、彼女の強みですよね。(引用元:web Sportiva|渋野日向子が愛される理由。精神科医「周りの人間を幸せにするタイプ」)和田先生によると、渋野選手が周囲の人を幸せにできる理由は、「自分を信じることができているから」だそうです。自分を信じていない人間はプレッシャーに弱く、周りに左右されがち。そしてなにより、自分の実力を信じる強さが根底にあるからこそ、人の意見を聞き入れて取り入れる“柔軟性”も発揮できているといいます。明るく楽観的な印象を与える渋野選手ですが、根っこにあるのは、強い自己肯定感や柔軟な対応力であるといえるでしょう。「好かれる子」は将来成功する!?これまでに約4,000人の生徒・学生を指導してきた獨協大学名誉教授の永井伸一先生は、「なぜか好かれる子」が人生で成功している例をいくつも見てきたといいます。クラスの中で誰からも好かれる子は、「言動が楽しく」「誰とでも気さくに話ができて」「いつも生き生きと目を輝かせて」「毎日を楽しんでいる」という特徴が見られます。そういった子たちは、社会人になってからも良い友人に囲まれ、困難な局面でも自然と誰かが助けてくれるバックアップがあるそう。さらに永井先生は、“人に好かれる力”につながる気質として、いくつかの特徴を挙げています。たとえば、「優しい性格で、人の気持ちを思いやれる」「素直な性格で人なつこく、柔軟性がある」「我慢する力があり、地道に努力ができる」「ユニークな発想に富み、話がおもしろい」などです。幼い頃からこのような性質を持ち合わせている子は、往々にして周囲の人たちからかわいがられます。すると、良い性質はますます伸びて、“人に好かれる力” もぐんぐん高まっていくというわけです。その中でも最も重要なのが「素直である」ということ。永井先生は、「物事をあるがままに素直に受け入れ、人のアドバイスを聞き入れられる耳を持つ子どもは、人に好かれる力につながる性質を獲得していける素地がある」と述べています。先ほどの渋野日向子選手も、もともと素直だからこそ、周囲の人たちの意見を聞き入れて、柔軟に対応できる力をつけていったのではないでしょうか。人間関係の基礎は親子関係。親子の会話が「好かれる子」をつくる!最後に、「人に好かれる子」になるにはどうしたらいいか、また親が心がけることについてお伝えします。■思いやりの心が育つように導く前出の榎本先生によると、日常の何気ないやりとりのなかでも、相手の気持ちを想像するように導くことができるといいます。たとえば、子どもが話すエピソードから、「お友だちの○○ちゃん、嬉しいだろうね」と気持ちを代弁したり、散歩中に「このお花、おひさまが当たらなくて寒そうにしているね」と人間以外の生き物の気持ちを想像させたり、絵本の登場人物を題材にしたりしてもいいでしょう。■読書を通じて視野を広げる『わが子が「お友達」関係で悩まない本』(フォレスト出版)の著者で、小学校教師歴38年の風路京輝先生は、「人に好かれる子とは、相手の立場、状況、そして感情を想像して寄り添ってあげることができる子です」と述べています。その力をつけるのに効果的なのは「読書習慣」です。風路先生によると、「文字を通して頭の中で情景をイメージする能力は、相手の気持ちを推し量る能力にもつながる」とのこと。そして、さまざまな本を読むことで視野が広がると、違う価値観に遭遇しても柔軟に受け止め、対応できる力が養われるといいます。■子どもを問い詰める聞き方をしない風路先生は、子どもに対して「どうして○○なの?」という聞き方をしている親御さんには、「どうしたら△△になるかな?」という表現に置き換えることをすすめています。「どうして片づけしないの!」と注意したところで、子どもは黙るか言い訳をするしかなくなってしまいます。そうではなく、「どうしたら、ちゃんと片づけることができるかな?」とこれからの行動を問うことで、子どもは頭を働かせ、問題が起きたときの対処法を学ぶことができます。こうした会話を普段から心がけていると、友だち関係でトラブルになったときにも、「どうしたら、あの子と仲良くできるかな?」とスムーズに対応できるようになるでしょう。■親への不信感を助長する3つのNGワード前出の親野智可等先生は、「人に好かれる子に育てたいなら、人間関係の基礎となる親子関係を大事にすること」と述べています。その際に親が注意すべき点は次の3つ。「○○しなきゃだめでしょ!」と否定語でとがめる。「あなたが△△しなかったからこうなったんでしょ!」と自業自得であると追い込む。「勉強しないとゲームを捨てるよ!」など罰で脅す。以上の言動を続けると、子どもの自己肯定感が低下したり、困っているときに救ってもらえない寂しさやつらい気持ちが募ったりします。すると「親への不信感」が増して、いずれ親以外の他人に対しても不信感を抱くようになるので注意が必要です。「子どもは、親にされたことと同じことを友だちにするようになります。否定的な言葉を浴びせる、困っている友だちに“自分が悪いんだろ!”と言って助けない。“○○しないと遊んであげない!”と脅す…など。こういう子が好かれるはずがありません。どうか、日々のお子さんへの言動には十分注意してください」(引用元:ママテナ|人に好かれる子にしたいなら、親がやってはいけない3つのこと)このように、親野先生は「親子の会話がそのまま友だちとの会話につながる」ことを危惧しています。強い口調で叱っていないか、親の都合を押しつけていないか、理性を保てずに感情をぶつけていないか、子どもとの向き合い方について改めて見直してみましょう。***「人に好かれる子」は、持って生まれた気質だけではなく、成長の過程において徐々に形成されていきます。「素直さ」と「自分を信じる心」、そして「自己肯定感」を持ち続けていられるようにサポートしてあげたいですね。(参考)PHPファミリー|頭のいい子、性格のいい子の土台は家庭がつくるママテナ|友達とうまく遊べない子どもが増えている!その背景にあるものとは?web Sportiva|渋野日向子が愛される理由。精神科医「周りの人間を幸せにするタイプ」ダ・ヴィンチニュース|「なぜか人に好かれる子」に備わっている“7つの気質”とは風路京輝(2017),『わが子が「お友達」関係で悩まない本』,フォレスト出版.ママテナ|人に好かれる子にしたいなら、親がやってはいけない3つのこと
2020年01月24日現代人は多くのストレスを抱えていると言われていますが、子どもも例外ではありません。株式会社セガトイズが行なった「7歳〜12歳のストレスの実態とライフスタイル調査」では、7歳〜12歳の子どもたちの67%が癒しを求めているという結果が出ました。こうした現状を知り、「我が子にはなるべくストレスと無縁でいてほしい」と考える親御さんも多いことでしょう。しかしながら、その考え方は見直したほうがいいかもしれません。じつは、子どもにとってストレスは必要不可欠なものなのです。なぜ、子どもにストレスが必要なのでしょう。また、親として子どものストレスにどう向き合えばいいのでしょうか。今回は、子どもとストレスの関係性について詳しくご説明します。人間はストレスがないと生きられないストレスとは、心身に何かしらの負荷がかかって生じるゆがみのこと。また、その負荷のもととなる刺激を「ストレッサー」と呼びます。ストレッサーは暑い・寒いなどの物理的なものから、疲労や睡眠不足といった肉体的なもの、友人とのトラブルをはじめとした人間関係的なものなど、さまざま。単純に考えれば、ストレスと無縁の生活を送るには、これらのストレッサーをすべて排除すればよいのです。では、実際にすべてのストレッサーを排除し、ストレスをなくすとどうなるのでしょうか。それを試した、アメリカの心理学者による興味深い実験があります。温度が一定で、匂いや音もなく、薄暗い個室——つまり、まったく刺激(ストレッサー)のない環境で一定時間過ごすという内容です。結果、被験者たちの多くは、しばらくの間「寒いところでは鳥肌が立つ」「暑いところでは汗をかく」といった体温調整がうまくできなくなったといいます。また、暗示にかかりやすくなり、「あなたは転ぶ!」と大声で叫ばれたら転んでしまう被験者もいたそうです。この実験からわかったのは、人間はストレスを失うと、生命を維持するのに必要な機能に支障をきたすということ。日常に置き換えてみれば、もっとよくわかるでしょう。たとえば、「お腹がすく」というのも日常によくある小さなストレスですが、これがあるからこそ人間はご飯を食べようとします。逆に言えば、「お腹がすく」というストレスがなければ、必要なエネルギーが摂取できないということ。つまり、ある程度のストレスは、「自分が生きていくために、するべきことをしないといけない」という危機感を与えてくれる、非常に大切なものなのです。良いストレス・悪いストレスとは?ストレスは生きていくのに必要不可欠であるとお話しました。しかしながら、読者の皆さんもご存知のとおり、ストレスはイライラや胃痛などの困り事を引き起こすこともあります。長期化すれば、深刻な病気につながることも。生きていくのに必要でありながら、不要な事態を引き起こす原因にもなりうる——こうした矛盾が生じるのは、なぜなのでしょうか。多摩大学大学院客員教授の水木さとみ氏は、ストレスについて、「良いストレス」と「悪いストレス」のふたつが存在すると説明します。まず、「良いストレス」とは、どんなものなのでしょう。水木氏いわく、ひとつは、先ほどご紹介した「お腹がすく」などの日常的に感じる小さなストレス。もうひとつ、何かをやり遂げようと目標を持ち、挑戦するときに感じる適度なストレスも、その人のエネルギーを高めたり、成長につながったりする良いストレスと言えます。一方、自分の意思とは無関係に、過剰な行動を続けた延長線に生じるストレスは、「悪いストレス」です。「やらなくてはいけない」「頑張り続けなくてはならない」と自分を追い込むような状況が続くと、心身が悲鳴をあげ、腹痛や胃痛、不眠、肌トラブルなど、さまざまな症状となって現れてしまいます。こうした現象は、カゴに入れられた輪の中をクルクル走り回るネズミを使った実験でも証明されています。そのネズミは、自らの意思で走っているぶんには、1日8キロメートル走っても問題ありませんでした。しかし、こちらが動かした輪の中を強制的に走らせると、わずか2キロメートルの時点で高血圧を起こしたのだそう。人間も同じです。たとえば、「残業」を例に挙げてみましょう。自ら達成可能な目標を持って仕事に取り組み、その達成のために残業しているときは、多少ストレスを感じても平気な人が多いでしょう。しかし、「不当にやらされている」「自分にはこの仕事をこなす能力がない」と感じている場合はどうでしょうか。「やりたくない。でも、やらなくてはならない」という状況のなかでの残業が続けば、体調を崩すのも無理ありません。子どもの「受験勉強」などにも置き換えられます。自分の行きたい、かつ能力に見合った受験校を設定し、その合格に向けて勉強をしているなら、多少のストレスを感じてもヘッチャラでしょう。しかし、「本当は行きたくない」「自分には絶対無理だ」と感じながら、長時間の勉強に耐えている状況であれば、心身のバランスを崩してしまう可能性が大いにあるのです。ストレスとの付き合い方を教えてあげよう!では、子どもを悪いストレスから守るために、親として何ができるでしょうか。それは、子ども自身が自分のストレスに対処できるよう導いてあげることです。子どもがストレスを感じた際、親にできることをご紹介しましょう。「こう言えば伝わるよ」と教えてあげるみなさんは、ストレスがたまったら自分で対処しているのではないでしょうか。日本ストレスマネジメント学会事務局長である桜美林大学の小関俊祐氏は、それは対処法が身についているからこそできることだと言います。たとえば、大人は、他人から嫌なことを言われても反論する知恵がありますよね。一方、子どもは、お友だちから嫌なことを言われても、語彙が足りなかったり、すぐに言葉が出なかったりして、上手に対応できません。そういうときは、「こうしたらいいんだよ」「こう言えば伝わるよ」と保護者が教えてあげましょう。小関氏は例として、“お友だちのおもちゃで遊ぼうとしたら「ダメ!」と言われ、どうしたらいいのかわからずお友だちを叩いてしまった” なんてことがあれば、「そういうときは、ちゃんと『貸して』って言うんだよ」と何度も教えることが大切だと述べています。また、お友だちに悪口を言われて落ち込んでいるとしたら、「○○ちゃんは自分のこと、そんなふうに思う?思わないでしょう?それなら気にする必要ないよ」と丁寧に伝えましょう。大人であれば、当然のように解決できる些細ないざこざでも、子どもにとっては大きな問題になりかねないもの。上記のように、大人ならではの視点で対処法を教えてあげることが大切です。ストレスの発散法を提案するたまったストレスを発散するにも、初めは親のガイドが必要です。たとえば、子どもが勉強に煮詰まってストレスをためているようなら、「ちょっと一緒に散歩しない?」「休憩がてらおやつ食べたら?」といった声かけをしましょう。このとき、子どもの好き嫌いに合わせて提案してあげるのがポイント。当然ですが、運動が嫌いな子に、「気分転換に走りに行こう」と提案しても意味がありません。「気分転換にしたいこと、ある?」と聞いてみるのもひとつの手ですよ。また、日常的にできることを提案するのも重要です。子どもが喜ぶからといって、「高級なチョコレートを食べる」「遊園地に行く」などといった行為は、日常的なストレスを発散するのに適切ではありません。加えて、選択肢を複数用意することも大切なポイント。「散歩してリフレッシュしよう」と考えていても、雨が降ってしまうこともあります。そんなとき、「じゃあ家の中でゲームしよう」など、代案に切り替えられると良いですね。小関氏は、子どもが中学生になる頃までに「自分はイライラしているとき、こうすると楽になるんだ」と自覚できるようになることを目指すべきと述べています。大切なのは、ストレスをなくすことではなく、ストレスとうまく付き合うスキルを身につけることなのです。***大人であれば、誰もが多くのストレスと戦ってきた経験をお持ちでしょう。そのストックが、お子さんへのガイドに役立つはずです。人生の先輩として、ストレスとの付き合い方をぜひ一緒に考えてあげてくださいね。(参考)株式会社セガトイズ|イマドキの小学生は疲れている!?67%が癒されたいと回答藤元メディカルシステム|先端医療講座「ストレス(第2回)…ストレスとは何か日経ビジネス|良いストレスと悪いストレスStudyHacker こどもまなび☆ラボ|ストレスと無縁の人生を送ることは不可能。教えるべきは「転んだときの起き上がり方」StudyHacker こどもまなび☆ラボ|高学年までに身につけさせたい、ストレスに対抗する“セルフコントロール”の力StudyHacker こどもまなび☆ラボ|子どものストレスを軽減させる“ストレスコーピング”。選択肢は多ければ多いほどいいベネッセ教育情報サイト|友だちから悪口を言われたと落ち込む子どもには、こんなフォローがベター
2020年01月20日人間は周囲の環境から影響を受けながら成長します。そう思えば、「子どもが賢く育つ家」もあれば、そうではない家もありそうです。お話を伺ったのは、2010年に上梓した著書『わが子を天才に育てる家』(PHP研究所)が高く評価された一級建築士の八納啓創さん。そのままずばり、「子どもが賢く育つ家というものはあるのでしょうか」と聞いてみました。構成/岩川悟取材・文/清家茂樹写真/玉井美世子(インタビューカットのみ)「時間泥棒」になるツールの扱いに要注意「賢い」とひとことでいっても、そのとらえ方は人それぞれでしょう。子どもが社会に出たときにストレスフリーで過ごせて、楽しく生きていくために必要な力を身につけていることを「賢い」というのなら、これまでの記事で述べてきたように、その賢さは家の使い方次第で大きく伸ばすことができます。リビング学習やダイニング学習では、社会で生きていくために重要なさまざまな社会性を伸ばせますし(インタビュー第2回参照)、子ども部屋の使い方によって、子どもに自立を促す訓練をさせることもできます(インタビュー第3回参照)。では、他に子どもの成長のためにできる家やインテリアの使い方などについて、わたしがおすすめするものをいくつか紹介しておきましょう。まずはテレビの扱いです。テレビというものは、無意識に観ているとどんどん時間を奪ってしまうものです。人生を無駄にさせるものだといっても大げさではないでしょう。ですから、本当に観たい番組だけを観るという習慣をつけることが大切です。そのための方法は、テレビを観ないときには画面に布をかけておくというもの。また、リモコンの電池をつねに抜いておいて、使うときだけ入れる。そうすると、無意識にテレビを観ることがなくなります。これらのことは、ゲーム機やパソコンなどの扱いにもいえます。ゲーム機をテレビにつなぎっぱなしにせず、遊ばないときはしまう。パソコンもタイマーをセットして決まった時間でスリープモードになるようにする。そのようにして、「時間泥棒」になるツールが子どもの時間を奪ってしまわないようにしましょう。また、ファミリーライブラリーとでもいうような、家族でひとつの本棚を共有することもおすすめです。むかしからずっとある良書はやはりいい本です。そういった、親が好きな本、あるいは子どもが大人になったら読んでほしい本を本棚の高い位置に置いておく。小さいうちは下の棚を使っていた子どもも、成長するうちにそれらの本に興味を持ちはじめるでしょう。「そろそろ読めるかな」と挑戦して「やっぱりまだ読めない」とあきらめても、またいずれ挑戦するはずです。そうした、より高みを目指す姿勢が、賢い子に育つための下地となってくれるのです。家の使い方に対する夫婦間の価値観の共有が重要そして、まずなによりも夫婦で家の使い方に対する価値観を共有することが大切であり、大前提となります。リビング学習やダイニング学習をどうするのか、子ども部屋の扱いはどうするのか、そういったことについて夫婦で話し合って、できるだけ価値観を一致させることが理想です。たとえば、母親は「わたしは小さい頃にひとり部屋で育って寂しかったから、子ども部屋はいらない」、父親は「俺はきょうだいと同部屋だったから、子どもに個室を絶対与えてあげたい」というように、両親の意見が完全にバラバラだと、子どもは混乱してしまいます。もちろん、子ども自身に注目することも大切です。夫婦で話し合って、「小さい頃はダイニングで勉強をさせて、中学生になったら個室で勉強させる割合を半々くらいにしようか」といった方針になったとしても、子どもがダイニング学習でしっかり成果を出し続けていればそのままでもいい。子どもの様子を見ながら夫婦で話し合って、家や個室の使い方の方針をつねに更新していきましょう。子育ては親が思っている以上に大変で当然それから、これは直接的に家の使い方についての話ではありませんが、もうひとつつけ加えるなら、子育てそのものに対しての認識を夫婦で改めてほしいと思います。いま、共働き家庭が増えているとはいえ、やはり家庭での子育ての中心を担うのは母親でしょう。その母親のなかには、「子育てが難しい」「きちんと子育てできないわたしは駄目な人間だ」と思っている人も多いものです。でも、きちんとできなくて当然なのです。そもそも、日本の家庭の歴史を振り返ると、戦前までは大家族で住んでいて、子育てを担うのは子どもの祖父母でした。子どもの両親は働きに出ていたわけです。しかも、心理学的にも子育てをするための最適年齢は50歳以上といわれています。そう考えると、戦前の日本では理想的な子育てができていたといえます。ところが、1950年代以降にアメリカのライフスタイルを取り入れた結果、核家族化が進んで子どもと祖父母との関係性は希薄になり、子育ては主に母親の仕事になりました。それまで祖父母のふたりでしていた子育てを、突然、若い母親がひとりで行うようになった。そのための文化やノウハウなんてできていません。ですから、うまくできなくて当然なのです。では父親のほうはどうでしょうか。いまでこそこんな夫は減ったかもしれませんが、妻に対して「俺は必死に働いているのに、家でゆっくり過ごしながらの子育てがなんでうまくできないんだ」なんて考える夫もなかにはいます。でも、しっかりやり取りができる大人を相手にする仕事と、勝手の利かない子どもを相手にする子育てでは、後者のほうが比較にならないほど難しいものです。まずは、夫婦ふたりで、子育てとは本当に難しいものだと認識することが大切です。そのうえで、どうやって子育てのサポート体制を整えるのかを考えてください。子どもが賢くすくすくと育つには、子どものいちばん身近にいるお母さんの精神状態が安定していることがなによりも大切です。『なぜ一流の人は自分の部屋にこだわるのか?』八納啓創 著/KADOKAWA(2015)■ 一級建築士・八納啓創さん インタビュー記事一覧第1回:子どもの人格形成への影響力大!リビングとダイニングが極めて重要な場であるわけ第2回:一級建築士が語るリビング学習のメリット。「子ども部屋で勉強」ではなぜいけないの?第3回:「日本の子ども部屋」に欠けている大事な思想。子どもの個室が持つ本質的な役割とは第4回:子どもが賢く育つ家はどうつくる?一級建築士がアドバイスする家とインテリアの使い方【プロフィール】八納啓創(やのう・けいぞう)1970年6月15日生まれ、兵庫県出身。一級建築士。株式会社G proportionアーキテクツ代表取締役。「孫の代に誇れる建築環境をつくり続ける」を100年ビジョンに、一般建築ではデザイン性と省エネ性能、快適性を追究。住宅設計では、「笑顔があふれる住環境の提供」をコンセプトに、年齢層は20代から80代、会社員から経営者、作家など幅広い層の住宅や施設設計に携わる。また、現在では、これまで携わってきた公共・商業建築設計の経験と住環境ノウハウを生かして、商業建築プロジェクトや建物環境再生による商業施設の活性化プロジェクト等にもかかわっている。著書に『「住んでいる部屋」で運命は決まる! 心も空間も、スッキリさせる方法』(三笠書房)、『住む人が幸せになる家のつくり方』(サンマーク出版)、『わが子を天才に育てる家』(PHP研究所)がある。【ライタープロフィール】清家茂樹(せいけ・しげき)1975年生まれ、愛媛県出身。出版社勤務を経て2012年に独立し、編集プロダクション・株式会社ESSを設立。ジャンルを問わずさまざまな雑誌・書籍の編集に携わる。
2020年01月18日4人の子ども育ててます
子育て楽じゃありません
良妻賢母になるまでは。