自然と向き合うヴォールト天井の家 植物や虫や動物たちと境界なく暮らす
異彩を放つ池の前の家
石神井公園内の池に面して建てられたこの住宅の前を散歩をする人たちが途絶えることなく通り過ぎていく。多くの人がこの家をじっくりと眺めながら。中からその様子を見ていると、住宅ではあまりないだろうその光景にちょっと不思議な気分になる。
思わず視線が向いてしまうのも無理のないほど周囲の中で異彩を放つこの住宅の1階に建築家の武田清明さんの一家が住んでいる。もとは1階にお施主さんの鶴岡さんとお母様が、2階に鶴岡さんのお姉さん一家が住む計画だったという。
「実施設計が終わるという頃にお母様が亡くなられ、かつまた、鶴岡さんが長年の夢をかなえて京都に住むということになって、1階に“自分のかわりに住んでくれますか”ということになったんです」
ヴォールトの形状がそのまま特徴的な外観デザインとなっている鶴岡邸。コンクリートは洗い出し仕上げで表面には細骨材が見える。経年変化で価値が下がるのでなく汚れや風化などにより時間が刻み込まれることで価値が上がるような建築を目指した。
ドームからヴォールトへ
設計は確認申請のできる段階まで進んでいたが、将来の生活の変化や世代交代時などにも対応できる可変性のある住宅として計画していたため、武田さん一家が住むに際しては間仕切りを取るなどをしたほかは大きな変更は行わなかったという。