2015年6月9日 20:00
内面から壊れていく「主婦病」 R‐18作家が恐ろしさ描く
各編にちらちらと現れるこの青年が、後半にいくにつれ大きな存在感を放っていく。特に、青年とヒロインとが体温さえ感じるような男女として、切なく熱く、読者を揺さぶる最終話「月影の背中」にはある種のカタルシスがある。
「実は私が住んでいるマンションの目の前が男子寮で、洗濯物を干す金髪の青年がいたのも本当のこと。たった一日ですぐいなくなったんですけれど、よけい、この作品集のために出てきてくれたのではと思えて」
各編の語り手は主に主婦。だがその娘や、少女時代の本人もいる。
「主婦より少女のほうが、よほど目線はドライですよね。2編に登場する絵子は、子どもだけどすでに女でもある。書いてていちばん怖い存在でした。
けれど友達に読んでもらったら、『あなたって、こういう子どもだったんじゃない?』と言われてぎくりとしました(笑)」
6つの収録作は、“主婦病”という表題でつないだ。
「明確な症状があるわけではないのに、周囲はもちろん自分さえ気づかないうちにじわじわとむしばまれ、内面から壊れていくところが病気に近いなと。買い物依存症のようにはっきり見える問題ではないから、よけい根が深く治りも悪そうです」