2019年10月18日 21:00
阿部和重の新作『オーガ(ニ)ズム』 魅力は「ドタバタ感」
果たして、作家の故郷であり、日本の新首都となった神町で何が起きようとしているのか。
「子どもがいなければ阿部和重とラリーももっと自由が利き、うまくやれたはず(笑)。3歳児の世話や保護、社会や国家の安寧など、枷をはめられながらも困難を解決しようとする懸命さや滑稽さを楽しんでほしい」
しかも物語は<阿部和重>の視点で進んでいくのがキモ。彼らが置かれた状況やラリーの本当の目的などは杳として知れず、反対に<阿部和重>の心中に広がる不安や愚痴はダダ漏れで、次々と飛び出してくるカルチャー造詣はハイレベル。そのドタバタ感が面白いのなんの。
「本人のあずかり知らぬところで書かれたウィキペディアの阿部和重解説を、作中で<阿部和重>が繰り返しつぶやくというのもあります。そこでどんどん生まれてくるズレがまた何かを生むのではないかと」
本作はもとより、これまでも現実の出来事や文献を積極的に取り込み、作品を組み立ててきた阿部ワールド。
「想像の世界を現実とひも付けることで、リアリティや世界観の奥行きを出す。
そういうやり方で書き続けてきた結果、それが自分の作風になってきました。今後も変わらず追求していくのが僕という作家の課題だろうと思います」