「日本映画が“映画とは何か”を思い出させてくれた」フランスの鬼才が語る日本映画の魅力
今回は、作品が誕生した経緯や死の恐怖を味わった実体験を通して感じたこと、そして日本映画から受けている影響などについて語っていただきました。
―以前から「病」や「死」には興味があったそうですが、このテーマを取り上げようと思ったきっかけを教えてください。
監督数年前から年配の方と一緒に映画を作りたいと思っていましたし、「老い」について描きたいと考えていました。そのなかでも影響を受けた映画は、ヴィットリオ・デ・シーカ監督の『ウンベルト・D』と黒澤明監督の『生きる』。映画を通して疑似体験することができたのも大きかったかもしれませんが、そういったことを通して少しずつこういったテーマを取り上げたいという気持ちになりました。
そんななか、自分の母がアルツハイマーになり、混乱や恐怖心からつねに脳が興奮しているような状況に陥ってしまいましたが、そういう姿を目の当たりにしてこれほど恐ろしいことはないなと。そのときに、老後には生きていくうえで非常に複雑で困難な問題が伴うことに気付いたんです。と同時に、そういった部分はこれまでの映画でも見たことがないとも感じたので、自分が描きたいと思うようになりました。