「旅は素晴らしい一瞬一瞬をかき集める、その繰り返し」韓国のベストセラー作家イ・ビョンリュル氏インタビュー
大事なのは、ひとりでじっと座っている時間なんです。そうしていれば誰かが声をかけてくれます。誰かと2人で旅行していたら、2人の時間を邪魔しないように、声をかける人はいないですよね。だからひとりで行くんです。ひとりで心を開いておいてじっと座っていると、声をかけてくれる人がポツポツ現れます。もちろん言葉は聞き取れないけれど、ボディランゲージで話はできるので。日本の方も、積極的に現地の方と接しようとする旅行者を私はたくさん見てきました。
――旅しながら思い浮かぶとりとめのない考えを整理し、文字に記していくという作業はとても大変な労力を必要とするのではないかと思いますが、旅をしながら文章を書くという上でイ・ビョンリュルさんが大切にしていることはありますか?
その時はメモだけして、エッセイという形では書かないですね。
旅から戻ってきて、時が経つと、その時に出会った人の顔とエピソードがふと思い浮かびます。そして、その人に会いたくなるんです。でも、道端で出会った人だから住所も電話番号もわからないし、もう二度と会うことはないのに会いたい気持ち、懐かしい気持ちが湧き上がってくると、文章が思い浮かぶんです。