2012年2月7日 20:57
渡辺謙インタビュー 「夢とリスク、どちらが勝つかなんです」
そういう意味でひとつひとつのセリフから、はやぶさを見つめる視線に至るまでいろんな瞬間において、あの3月に僕らが『映画を作ろう』と思いを固めたところから派生している全てのものが、影響を受けていると思います。当然ですが、映画で描ききれない様々な情報やエピソードがあるわけで、それらを捨てながら脚本を練っていきました。例えば研究者たちの日常生活――妻や子供たちとのやり取り――を描くべきか?というところもすごく悩みました。ただ、震災を経て『この映画は、困難にあきらめずに立ち向かった研究者たちの話なんだ』というこの映画の存在意義が僕らには見えてきた。だから、あえて管制室でのドラマに特化し、それ以外の部分は捨てるという選択をしたんです」。
渡辺さんは「この映画は言うなればボレロ。壮大な交響曲のように第1楽章、第2楽章…と盛り上がるというよりは、同じリズムで淡々と幾つかの旋律が奏でられる。時に不協和音を挟みつつ楽器が折り重なる。
同じ旋律を聴き続けているはずが最後にはものすごい高揚感があるんです」と深いドラマを内包しつつも淡々と描かれる本作を分析する。それは決して激することなく、かといって妥協することもなくプロジェクトを推し進めていく渡辺さん演じる山口教授の姿とも重なる。