2023年1月12日 18:00
【レビュー】『SHE SAID/シー・セッド その名を暴け』女性たちの勇気ある語りは未来のために
女性記者たちの背景を盛り込んだ見事な脚色
ハリウッドの大物プロデューサーだったハーヴェイ・ワインスタインの数十年にわたる性暴力・性犯罪は、ニューヨーク・タイムズ紙の記事はもちろん、本作の原作となった「その名を暴け―#MeTooに火をつけたジャーナリストたちの闘い―」や、2017年10月10日「ニューヨーカー」誌に寄稿されたローナン・ファローによる記事、彼の著書「キャッチ・アンド・キル」などで再三暴かれてきた。
あまりに卑劣、残酷で非道な行為と、映画ファンを裏切る彼のもう1つの顔。さらに告訴の取り下げ要求、示談金の支払いとともに女性たちの口を堅く閉ざさせる、性被害者を守ることのない法の構造的問題点や隠蔽する映画界の“慣習”にも、本作は斬り込む。
本作は、その一連の出来事を追跡し、最初に報道したニューヨーク・タイムズ紙のミーガン・トゥーイー、ジョディ・カンターらジャーナリストたちと勇気を持って立ち上がった女性たち(有名女優だけではない、当時のアシスタントやスタッフも含めた)の声によって語られていく映画だ。ワシントン・ポスト紙がウォーターゲート事件を暴いた『大統領の陰謀』、ボストン・グローブ紙がカトリック教会神父による性的虐待を追及した『スポットライト 世紀のスクープ』といった調査報道の実録映画にまた1つ傑作が加わった。