堺雅人インタビュー 「幕末の負け側ばかり演じてきて、勝手に三部作って呼んでます」
でも、僕自身が一番惹かれたのは、借り物の価値観ではなく、自分の頭で判断して責任を取っていく、ということ。武士だから、我が家は代々こうだから…ではなく、自分たちの範囲のことを自分たちで決めて答えを出すというその姿が、非常にかっこよかったんですね。そこに大人の成熟した男というものを感じました」。
父親を演じること自体はこれが初めてではない。にもかかわらず「父であることを強く考えさせられた」と堺さん。先にも述べた「自分の価値観」、「責任」という言葉を使ってこう説明する。
「僕は父親じゃないからまだ分からないけど、おそらく実際に父親になっても『父親とは何で、どうあるべきか?』なんてさっぱり分からないと思うんですよ。特にいまの世は、これまであったものを否定し続けて、参考にするお手本があまりにもなくなり過ぎてて、正しい父の形なんて、誰も分からなくなっている。
それでも、そのときの材料で自分で考えて責任とっていくしかない。それでダメだったら謝るしかないんですよね。少なくとも誰かの価値観で“父親”であろうとするのではなく、自分で家族のあり方を決めるしかない。そういう部分での直之の毅然とした態度は憧れましたし、それはなかなかできることじゃないな、と。