そして「どっちから好きになったの?」なんていう質問を、上手にはぐらかすこともできないほど、全身が凍り付いてしまうのだった。
乃莉は、藤田とのことについて、もう誰にも話さないことに決めた。
乃莉にとって、恋愛は楽しいものでもあったが、同時に不安でたまらないものでもあった。ずっと同じ関係が続くとは限らない。相手の気持ちが変わらないとは限らない。
藤田は決して恋多き男ではなかったし、信頼に足る人柄だとも思っていた。
ただ、乃莉は人の心が、変わらないものだとはどうしても思えないのだった。何かを「プレゼントしようか?」と言われるたびに、それが楽しかった日々を思い起こさせる悲しい思い出に変わってしまう未来が頭をよぎった。
自分に自信がない、というのとも、相手を信頼していない、というのとも少し違うような気がした。好きな相手から好かれていることの蜜をたっぷりと味わいながら、どこかで「続くはずがない」と醒めた気持ちで思っている、そんな感覚だった。
二人は夜はよく、乃莉のマンションで過ごした。週末の夜はのんびりできるから、乃莉はいつもより少し良いおつまみ、藤田の好きな黒いオリーブやパルミジャーノ・レジャーノを用意して、藤田は何かお酒を買ってくる、というのが「いつものこと」