そのお手紙の文字がとても美しかったので、私もお手紙で応えなくては、という気になって、上司に万年筆を借りて、お詫びと改善策などを書いて先様に送りました。そうしたら、「手紙に感動した。解約はやめる」とお返事がきたんです。この手紙は今も、宝物として大切にしています。
――そのお手紙を受け取ったのは何歳頃ですか?
29歳頃です。その頃から「せっかく銀行で働いているのだから、数字に携わる仕事をしたい」と考えるようになっていました。シティバンクでそういった仕事をしているのは、MBAの資格をもつなど、輝かしい経歴の持ち主ばかり。でも、このお手紙に勇気をもらって上司に掛け合ってみたら、「関下さんにはクレーム処理は向いていないと思っていました。
経理の方に推薦しましょう」と。どうも、クレームのお客さまと話し込んでしまい、ノルマが果たせていなかったようです(笑)。――外資系の銀行で、その中枢に関わる業務を任されたのですね
そうなんです。とはいえ、実は経理の知識はまったくなかったので、異動してすぐに大パニックに陥りました。例えば「借り方・貸し方」の意味さえまったくわからないというレベルです。でも、今さら仕事ができないとは言えません。