さよなら、「フィーレイ」 - 史上初の彗星着陸に挑んだ小さな探査機の物語 (2) フィーレイは舞い降りた
また機体の上部には、彗星表面に向かって機体を押さえつけるように噴射するための小さなスラスターも付いている。さらに機体下部には銛も装備されており、スラスターで機体が浮かび上がらないようにしつつ、さらにすかさず銛を撃ち込んで、機体を彗星に固定することができるようになっている。
2004年3月2日、ロゼッタと、それに抱きかかえられたフィーレイは地球を飛び立った。そして約10年の長旅を経て、2014年8月6日にチュリュモフ・ゲラシメンコ彗星に到着した。
ロゼッタはさっそく観測機器を駆使し、彗星の周囲を回りながら探査を開始した。同時に、得られたデータからフィーレイの着陸地点も選定された。この場所は公募によって「アギルキア」と命名された。アギルキアはナイル川に浮かぶ島の名前で、かつてフィーレイ島がアスワン・ハイ・ダムの建設によって水没することが決まった際に、島にあった古代エジプト王朝のイシス神殿遺跡を移設する先となった場所である。
そしてフィーレイと、その関係者にとって最も長い一日となる、2014年11月12日が訪れた。
○フィーレイ、発進
11月24日、フィーレイがロゼッタから分離され、彗星に降り立つ日がやって来た。