「今の時代に能楽は絶対に必要」観るのは“舞台”ではなく、“自分の人生”だ
「伝統芸能」そして「能楽」──それは人生を円熟させた一部の教養人のためだけにあるのでしょうか。
実は能楽の舞台へ足を運ぶ人の中には、上演にはまったく目を向けず、仕事のアイデアや自分の人生について考えたことを紙に書いている方もいるんです。
「忙しい日々を過ごす人ほど、自分に向き合う場として能楽を利用してほしい」
そう話すのは、現役の能楽師である宝生和英(ほうしょう・かずふさ)さん。
宝生流という流派の宗家に生まれ育ち、幼い頃から能楽に慣れ親しんできた彼に、現代における能楽の存在意義とはいったい何なのか、お話を伺いました。
宝生流の第二十世宗家である宝生和英さん。22歳のときに家元を継ぎ、現在32歳の若き能楽師(能役者)だ。
■エンターテインメントにはない能楽の魅力
──宝生さんは「和の会」という自演会を主宰していらっしゃいますね。その「和の会」が今年10年を迎えられるということですが、発足のきっかけは何だったのでしょうか。
10年前はちょうど私が家元となった初年度でした。そのきっかけとして、何か今までとは違うことをしたいという思いがあったんです。
これまで宝生会(※)で行っていた定期公演とはまた別に、能楽の公演自体がひとつのビジネスとして成立するのか。