『コウノドリ』原作者が語る綾野剛、きっかけは戦場のような出産の光景
■思い描いていたのとは違った! 息子誕生エピソード
『コウノドリ』原作者の鈴ノ木ユウ先生は、一児の父。「もう9歳だから産毛が濃くなってきているんですけど、それでもかわいい(笑)」と息子さんへの愛情をにこやかに話していました
―『コウノドリ』からは、分娩時の音や声が聞こえているのかと錯覚するほどの臨場感が伝わってきます。
取材を通して、さまざまな出産を見てきたからかもしれません。状況的に難しいこともあり緊急帝王切開は見学したことがありませんが、先生の話を聞いて写真を見せてもらい、自分でイメージをふくらませて描いています。
あとは、やはり妻の出産のときの印象が強く残っています。妻はどちらかというと難産で、息子が生まれるまでに丸2日かかりました。最後には先生が妻に馬乗りになっていたくらい。これまで自分が思い描いていた出産とはちがい、まさに戦場のような光景。
僕は何もできずに遠くから眺めていたら、突然「バチン!」という音が聞こえて、息子が生まれました。
―赤ちゃんを最初に見たときは、どう思われましたか?
「汚ねえな」でした(笑)。赤ちゃんってもっときれいなものかと思っていたけど、実際には血液や白い膜がついているんですよね。そのうえ、「甲府のガッツ石松」といわれる僕の父と似ていたので、「ああ、こっちか…。ごめんね」と思ったくらいです(笑)。
気持ちが変化があらわれたのは、初めて抱っこしたとき。「ちゃんと育てられるのか」「仕事しなきゃ」という気持ちと同時に「生きているんだ」という実感もわき起こり、体が震えました。分娩時のことや子どもが生まれたときのことは、作品を描くうえですごく大事にしています。
―息子さんに話すこともあるのでしょうか。
「おまえが生まれた日は雨が降っていて〜」と、息子の誕生日には毎年話すようにしています。息子は9歳なので、さすがに「またかよ」という反応はされるものの、うれしそうな顔もしているのでまんざらでもないのかなと(笑)。
―毎年、家族で共有できるのはいいですね。
大事なことなので、忘れてはいけないと思っています。妻は必死だったから覚えていない部分もあるけど、僕は鮮明に覚えている。出産が夜中に終わって、妻がやっと食事ができるとなったときのおかずがチャーハンだったことや、僕が帰りにカツ丼を食べに行ったことまで話します。家族で話をしたあとケーキを食べるのが誕生日の過ごし方ですね。
―最後に「ウーマンエキサイト」の読者にメッセージをお願いします。
作品の中には、鈴ノ木先生ご本人かも(?)と思われるキャラクターが登場します。今回のインタビューをヒントに探してみては?
『コウノドリ』には、扱うテーマによっては読み進めるのがつらくなることもあります。誰もが読める漫画とは思っていないので、「ぜひ読んでください!」とは言えません。ただ、読んだあとに「家族がいてよかった」と感じてもらえたらうれしいですね。
『コウノドリ』には、妻の妊娠・出産に無関心な“ダメ旦那”も何度か登場します。自身も「ダメな旦那だった」という鈴ノ木先生ですが、青年誌で描くことで「自分はこうならないようにしよう」と思ってもらえたらいいと話していました。
命の尊さを再確認するとともに、子どもをより愛おしく感じられる。
『コウノドリ』を読んだあとにそう思えるのは、息子の誕生時の記憶をいまも心に刻み続ける鈴ノ木先生の想いを受け取っているからなのかもしれません。
コウノドリ
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