【連載小説】この恋は幸せになれない?好きになってしまったのは、奥さんのいる人。
流産してしまった綾香の体を心配するとか、メンタルは大丈夫なのかと思いやる気持ちはどこかに行ってしまった。悠真さんとの電話でも、聞き分けの言い女を演じられない。
『もしもし、千紗』
「悠真さん」
『悪いけど、しばらく連絡できない』
「どうして?」
『綾香の具合が悪いんだ。それに、今は綾香の傍に居てやらないと』
「夜に電話するくらいなら、」
『ごめん!綾香が呼んでるから切るよ』
悠真さんは、綾香が流産してから付きっきりで看病をしているらしい。そのことがさらに私の嫉妬心を煽った。連絡できないと言われていたのを無視して、電話をかける。
「悠真さん、助けて!」
『どうした?』
「部屋に変な人が来たの」
『変な人って?』
「分からないけど、インターフォンを鳴らされて……。怖いから来てくれない?」
『来てくれないって、家に? 今からは無理だよ』
「お願い……」
『僕が行くより警察を呼んだ方が良い。
次にインターフォンが鳴ったら110番するんだ。いいね?』
私がこんなにもお願いしているのに来てくれないんだ。離婚したい気持ちに変わりはないって言っていたくせに、嘘つき!やっぱり綾香の方が大切なんだね。