【連載小説】この恋は幸せになれない?好きになってしまったのは、奥さんのいる人。
「そっか……」
「落ち着いたら、綾香を励ます会をしようよ」
「うん、そうだね」
◆
最低な人間
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綾香が流産したと聞いた時、正直ホッとした。その反面、命が1つなくなったというのに安堵するなんて最低だと自己嫌悪をする。私ってこんなにも自分勝手で冷たい人間だった……?
「あ、丁度良いところに帰って来た」
玲子と連絡先を交換してから別れ、家に帰ると部屋で母が荷物をまとめていた。家にいる間はずっとノーメイクにジャージ姿だったくせに、今日は水商売の女のように濃いメイクを施し、体のラインを強調した服を着ている。
「お母さん、出て行くの?」
「あぁ、世話になったね」
「また男の人のところ?」
「そうだよ、あんたなんかよりもずっと優しくて尽くしてくれる男のところに行くんだよ」
悪びれることもなくそう言った母は、クローゼットの上にある私の腕時計やアクセサリーを鞄に投げ入れた。情けないやら悲しいやら、やるせない気持ちでいっぱいになる。
「私だってお母さんに十分優しくしてるでしょう」
「優しいもんかい、小遣いの1つもくれやしないで」