【連載小説】この恋は幸せになれない?好きになってしまったのは、奥さんのいる人。
「はぁ? 冗談じゃない! 離婚は絶対にしない」
「お願い、悠真さんを自由にしてあげて」
「ちょっと何言ってんのか分かんないんだけどぉ。自分の立場ってのを考えなさいよ」
ドンッ、と肩を強く押される。衝撃で体が一歩後ろに下がった。
「千紗、あんたは相手が既婚者と知ってて関係をもつ最低な女」
綾香が距離を詰める。
「親にもご近所にも、もちろん職場にも言いふらしてあげる。慰謝料もたっぷり取るから覚悟してて」
綾香はそう宣言すると、踵を返してホテルを後にする。悠真さんは、綾香が従えていた男性2人に両脇をガッチリ掴まれた。
「何をする、離せ!」
「悠真さん!?」
抵抗も虚しく悠真さんは、男性2人によってホテルの出入り口へと引っ張られて行った。
その様子を私はただ茫然と見送るしかなく、彼が口パクで言った『あとで必ず連絡する』は、永遠に叶わないことのように感じた。
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代償
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「覚悟していて」といった綾香の本気を知るのは、そう時間のかかることじゃなかった。まずは私が住むマンションの掲示板や私の部屋のドアに『〇〇号室の藤川千紗は不倫女』と書いたビラを貼られた。