【連載小説】この恋は幸せになれない?好きになってしまったのは、奥さんのいる人。
「そうだよね、ごめん。じゃぁ、行くね」
「待て、これを持っていけ」
仲西さんが私に渡したのは、名刺だった。
「不倫問題に強い弁護士さんだから、相談しな」
「ありがとう。でも、」
「でもじゃねぇよ、持ってて損はないだろ。返品すんな」
「うん……」
「顔色悪いな、家まで送ってやろうか」
仲西さんの優しさに、ちょっと泣きそうになった。
「大丈夫、1人で帰れるから」
「気を付けろよ。それから、」
「それから?」
「その、なんだ、確かにお前は悪いことをしたかもしれないけど、だからってお前の価値が下がるわけじゃないから。堂々と胸を張れ」
「うん……ありがとう」
堂々と、か。
自分がしたことに胸を張れる日なんてこない気がする。いや、こない方がいいだろう。
でもじゃぁ、どうやってこれから生きていけばいいのだろう。恋人、友達、仕事、信用、信頼、自業自得とはいえ何もかもを無くして、一体どうすれば……。
◆
涙
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悠真さんからの連絡は、やっぱりこなかった。きっともう、何もかもが終わってしまったのだろう。彼と一緒なら例え地獄に落ちても良いと思ったけど、結局は1人ぼっちになってしまった。