2022年2月14日 11:03
【『ファイトソング』感想・5話】何度でもスタートを切りなおす・ネタバレあり
曲を書けなくなって、いろんなものを失いながらずるずると落ちていく春樹に、依存にも同情にもならない方法で寄り添おうとした時に、お金と食事を介せば、春樹のプライドを傷つけず、より細く長く寄り添えると薫が考えた結果なのではないか。
岡田惠和脚本が描くドラマの登場人物の姿
花枝にずっと片思いしている幼なじみの夏川慎吾(菊池風磨)、花枝を守ろうとしている、同じく幼なじみの凜(藤原さくら)、常に春樹の現状に寄り添って最善を尽くそうとするマネージャーの弓子(栗山千明)。
徐々に花が開くように、二人の周囲の描写も厚みを増してきている。
それは柔らかなガーゼを次々と重ねていくような、いかにも岡田惠和の脚本らしい優しい厚みである。
岡田惠和は、2021年のテレビドラマ『にじいろカルテ』(テレビ朝日系主演・高畑充希)でも、病を抱えながら生きていくヒロインと、それぞれに欠落を抱えながら生きていく人物群を独特の距離感で描いていた。
岡田の描く病気や人生の欠落は、戦ったり乗り越えるというよりも「ただ傍らにある」「時折のしかかってくるが共存する」、そんな感覚で、今作でも花枝の視野を広げる人物として、中途失聴者である杉野葉子(石田ひかり)