【エルピス 第10話 感想】国家権力や報道責任を描いただけでなかった『エルピス』の本質
言葉に詰まりながらもう一度お願いすると、岸本は享へのインタビュー音声を浅川に差し出した。
だが、彼はもう手を引くつもりだった。
始まりは、ただ勝ち組でいるためだった。だが、浅川をはじめ、周りに助けられていく中で、本当の自分と向き合い、我武者羅に突き進んできた。
諦めかけてもその度に自分の情熱に従い、全てを賭けて挑んできたのだ。
それがいつしか自分よがりの『報道ごっこ』となっていたのだ。希望が見えなくなる先へ足を踏み入れることが、何より怖かった。
そんな様子に対して、浅川は自分で報道すると言い出す。
岸本は「殺されますよ」と忠告をするが、浅川は声を荒げて言い放つ。
「何で殺されなきゃいけないのよ!」
この浅川の叫びは、亨の言葉でもあった。
確かに全部覚悟の上だ。しがらみを捨てた自分に訪れる悲劇を、何処かで感じてもいただろう。
だが、人の命の価値もわからぬ人間のくだらぬ欲望のために殺される以上に理不尽なことはない。真実を伝えることは何も無茶なことでないはずだ。浅川はアナウンサーとして、一人の人間として、真っ当に生きたいだけなのだ。
誰かを信じていたいという願いや『希望』を奪われ続けたこれまでを思い、浅川は息を切らしながら本音をぶつける。