2023年5月5日 11:37
【『ラストマン』感想2話】大泉洋が善悪の境界線で魅せる揺れ
まっとうな正義感を持った、ごくありふれた人間です」と語りかける。
プラスでもマイナスでもなくニュートラルだと、殺人犯の息子であるという要素はどちらにも心太朗の倫理観を変えていないと伝える皆実の言葉は、人たらしの甘さはなくとも、真心に満ちていて心地よかった。
また、兄・京吾(上川隆也)をはじめとする護堂家の面々と心太朗の関係も、互いに愛情はあると分かる一方で、一筋縄でないようで興味深い。
そんな複雑な距離感を、甥の護堂泉(永瀬廉)の「階級は俺の方が上ですよ」という言葉に「誰がキャッチボールを教えてやったと思ってんだ」と憮然と返し、互いに緊張が緩む一連がよく表現していた。
また、今回も事件捜査の過程は、全盲ゆえに皆実が視覚以外の感覚をフル稼働させて、推理を組み立てていく様子に唸らされた。
嗅覚、聴覚を限界まで研ぎ澄ませて、犯人や犯罪の方法を絞り込んでいく皆実の言動に、健常者は『見えて』いるために逆に気づくことのない点と線があるのだと痛感する。
一方、最後に暗闇の中で一人料理をする皆実の姿に、明かりの有無は彼にとって関係ないのだと、全盲であるということの厳しさについて今更のように想いをはせる。