コロナで日常が壊れた保育所 余裕のない日々で、保育者が学んだことは…【きしもとたかひろ連載コラム】
特別に車好きというわけではない祖父にとって知っている高級車がベンツだったのだろうか、それとも若い頃に男の憧れとして抱いたのを思い出したのだろうか。理由は聞かなかった。
ガーデニングが趣味でばあちゃんと毎日デートしている、そんなぼくが知っている祖父のイメージとは違っていて意外だった。他にも、ハワイに行ってみたいとか大きなガーデニング庭園が欲しいとかそんなことを言っていたような気がする。
いや、もう10年も前の話だから、言っていないことを僕が勝手に記憶に加えているだけかもしれない。
どちらにせよ、どれも、ニートのような生活をしていた僕には叶えてあげられそうにないものだった。
いや、宝くじが当たって叶う夢は全部お金にものを言わすものなんだから、そもそもの質問が間抜けだったのだ。じいちゃんは、ガンが治らないまま、そして孫の宝くじは当たらずベンツに乗れないまま、黄泉の国に旅立ってった。
その頃何度も「もっともっとやりたいことも僕ができることもあったんじゃないか」って後悔した。
けれど、最近思うのが、きっとじいちゃんにとっては満点の人生だったんじゃないかってこと。もっと、って思うのは残ったぼくが勝手にじいちゃんの人生を足りてないものにしているだけで、それって傲慢で失礼なことだよね。