駄菓子店でお菓子を買えず、落ち込む子供 店主の『行動』に、目頭が熱くなる
とワタシ。
「ほな、家戻って取ってくる?」とトモダチ。
女手一つで働く母に、二十円の「追加融資」を言い出す気にはなれず、私は、その場で立ちすくんでいた。
気まずく思ったのか、友達も次々と店の外に出て、おしゃべりを始めた。私はただ一人、店の天井に飾られた風船を無意味に眺めていた。
すると、山が動いた。いや、正確には、山バアの口が動いた。
「裏にあるラムネ瓶の箱、持ってきて」
どう見ても、店には私しかいない。
山バアが、駄菓子の値段以外の日本語を発していることに驚きつつ、私は頷いて、店の裏へ行った。
訝しげな友達を横目に、十数本の空のラムネ瓶が入った箱を、やっとの思いで店の中へ運び込んだ。
「ココ、置いときます」
こわごわ報告した私に、手招きをする山バア。
「これで手ぇ拭き」
そう言って、山バアから渡されたタオルの上には、十円玉が二枚、のっていた。
戸惑う私の顔を見ながら、「手伝い賃や」と短く呟く山バア。「でも…」と言いかけると、彼女は、そっと私のポケットに、その二十円を入れた。結局、戻ってきた友達の話題は、「お揃いのガムを買う話」から、「明日の給食」へと変わっていた。