駄菓子店でお菓子を買えず、落ち込む子供 店主の『行動』に、目頭が熱くなる
帰りがけ、ふと店のほうを振り返った私は、思わず、「あっ」と声を上げた。
さっき私が店に運んだラムネ瓶の箱を、腰を屈めた山バアが、店の裏へ戻していたのだ。
申し訳なさと有難さが心の中でぐるぐると交差する中、私は帰り道の坂を下りて行った。
最近、こんなことを教わった。
「優しいという字はニンベンに『憂う』と書く。人の憂いに気付く人を優しい人と言うのではないか」と。
三十数年前のあの日、小学生の小さな憂いに気付いてくれた山バアは、本当の優しさを教えてくれた、最初の大人かもしれない。
grape Award 2020 応募作品
テーマ:『心に響くエッセイ』
タイトル:『優しき山バア』
作者名:安部 飯駄(アベ パンダ)
エッセイコンテスト『grape Award 2020』の審査員が決定!
2017年から続く、一般公募による記事コンテスト『grape Award』。
第4回目となる2020年の審査員には、grapeでも人気の漫画『犬と猫どっちも飼ってると毎日たのしい』シリーズでおなじみの漫画家・松本ひで吉さんが決定しました。
さらに『Jupiter』などの作詞を手がけた作詞家でエッセイストの吉元由美さんや、映画化もされた『スマホを落としただけなのに』などで人気を博する小説家の志駕晃さんも審査員として作品を読みます。