2021年3月21日 11:01
老いていく自分をどう支えるか それは、「生ききる」ための覚悟なのかもしれない
吉元由美の『ひと・もの・こと』
作詞家でもあり、エッセイストでもある吉元由美さんが、日常に関わる『ひと・もの・こと』を徒然なるままに連載。
たまたま出会った人のちょっとした言動から親友のエピソード、取材などの途中で出会った気になる物から愛用品、そして日常話から気になる時事ニュースなど…さまざまな『ひと・もの・こと』に関するトピックを吉元流でお届けします。
伊勢丹に香水を
「伊勢丹に香水を買いに行きたい」
母が脳梗塞で倒れる前、何度もこんなことを言っていました。その頃すでに一人で歩くのが難しく、介護老人ホームでお世話になっていました。
耳下腺あたりに悪性リンパ腫ができ、骨を1センチほど切除しました。そのために顔が少し歪んでしまいました。整形手術をしたい。入れ歯を作り直したい。高齢の母が再度手術をするのは負担が大きすぎます。
顔のバランスが左右で違ってしまったので、入れ歯を作り直しても合わないのです。
本当にかわいそうだったのですが、母の希望を叶えることはできませんでした。
一つ一つの願いをあきらめていったのだと思います。そんな母が倒れる前に言い始めたのが「伊勢丹に香水を買いに行きたい」