2021年4月25日 13:23
たくさんの思い出は、生きていく力の一つ いま、この一瞬を大切に過ごしていくこと
「ママの七回忌の法要は自分の手でやりたい。十三回忌はできないだろうから」
あるときふと漏らした父の言葉に淋しさを感じたと同時に、人生を生ききる矜恃を感じたのです。その矜恃に寄り添うこと。それが90歳の父が安心していられることだと思いました。
思い出してみると、母が元気だった頃、母と出かけるたびに『限りある時間』を感じていました。
もう30年前ですが、母と上高地へ行き、梓川沿いを歩いたことがあります。その頃母はまだ50代だったか。うれしそうな笑顔の写真を見返してみると、あの時間がかけがえのないものだったことを思います。
人生、楽なことばかりでない。次々と困難を乗り越えていくこの人生という流れの中で、ささやかなことにも感動し、うれしく思い、大切にできる時間を過ごせること。そんな思い出たちは、生きていく力の一つなのかもしれません。
今月の父の付き添いの帰り、父の大好きなうなぎを食べ、サントリー美術館で開催されている『日本絵画の名品』展を観ました。
日頃芸術に触れることのない父は、ゆっくりと、一枚一枚の絵をじっくりと鑑賞していました。その後ろ姿を眺めながら、私と父の時間を思い出が刻んでいくのを感じました。