くらし情報『寺越友枝さん「息子を守るためにオルガン、サバ缶も北朝鮮へ…」』

2018年8月26日 11:00

寺越友枝さん「息子を守るためにオルガン、サバ缶も北朝鮮へ…」

それで、『ちょっと額を見せてくれ』言うて、武志に髪をかき上げてもろうた。本物の武志やったら、幼いころにバットがあたった傷が残っとると思うてな」

額にその傷はあった。その瞬間、友枝さんの目から大粒の涙がいくつもこぼれて止まらなくなった。

「『武志!堪忍してくれ!お母ちゃんが漁に行けと言うたばっかりに……』謝っても謝り切れなんだ。なんで北朝鮮に来たんか。なんで今まで連絡できんかったんか。聞きたいことは山ほどあった。けど、いつもそばには監視員が付いとるから親子水入らずで話すこともできん。
叔父が、『漂流しとったら北朝鮮の船に助けられた』と説明してくれたが、信じられん。何度も、武志に『本当か?』と聞いたけど、『信じてください』と言うばかりや。そのあとの訪朝でも何度も尋ねたが、『お母さん、お墓で話しましょう』と。息子の武志がそう言うんやから、母として信じようと決めたんや」

武志さんは、金英浩(キム・ヨンホ)という名で朝鮮人として暮らし、北朝鮮人の妻をもらい、子どもを3人もうけていた。一度会えば、二度、三度会いたい。友枝さんは、掃除のパートで渡航費を稼ぎ、空白の23年を埋めるように訪朝を重ねた。

関連記事
新着くらしまとめ
もっと見る
記事配信社一覧
facebook
Facebook
Instagram
Instagram
X
X
YouTube
YouTube
上へ戻る
エキサイトのおすすめサービス

Copyright © 1997-2024 Excite Japan Co., LTD. All Rights Reserved.