2018年9月15日 06:00
脚本家・北川悦吏子さん『ロンバケ』後の闘病20年明かす
良性の腫瘍で、切除しなくても『10分の9は大丈夫』と言うのですが……」
そう言われても、大病ばかり続いた北川さんは、不安になる。
「私のこの運の悪さを考えると、残りの10分の1に入るんじゃないかと考えてしまうんです」
大腸の経過も順調ではなかった。
「ほとんどの方は元気になるんですが、私は残った直腸に穴が開いた。しかも、そのオペができるのは、日本に3人しかいないという恐ろしい状態になったんです」
これが失聴の翌年、’13年のこと。
「私は死ぬのは全然、怖くない。でも、病気のつらいのや痛いのや怖いのや、苦しいのが、もう本当に嫌です。体は壊したけれど、結果、治ってよかったねってわけにはいかず、いつもこの辺りにヤツ(病い)はいるわけですよ」
と、北川さんは周囲を差す。
「で、ときにブワッと大きくなって私をのみ込もうとする。
私は病気と対峙してはいけない、と思う。負けてしまう。それなら、それ以外に気持ちを持っていける、光になるものを見つける。それが仕事なんです」
『半分、青い。』を思いついたのは、失聴した直後のことだった。傘を差して半分だけ雨音が聞こえるという鈴愛のシーンは、そのまま北川さんの体験だ。