『妻のトリセツ』作者の離婚危機を救った夫との“トリキメ”
ことあるごとに腹が立つので、いよいよ“この人と一緒にいないほうが、人生効率が高い”と、別居に思い至ったわけです」
理系夫婦で、ドロドロの感情のぶつけ合いはなかった。夫も冷静に受け止め、すんなりと離婚協議書を作るまで話が進んだ。離婚への流れができ、新たな住まいを探そうとしたときのことだ。夫から、ふいに「今年の手袋は何色がいい?」と聞かれた。
「私の誕生日は12月半ば。クリスマスも近いし、夫が毎年プレゼントで悩むのがわかっていたので、結婚したとき『これから、私の誕生日には、クリスマスプレゼントと合わせて手袋をちょうだい。これから一生、私の手を冷たい北風から守って』とお願いしました」
手袋なら大ハズレがないし黒、ベージュ、キャメル、差し色の赤や水色、と毎年異なる色を贈ってもらう。そして、黒が汚れてきたころに、また黒をもらえばいい。
「夫は、もう離婚間際というのに、その約束を律義に守ろうとするんです。私が『やめてよ。要るわけがない』と言ったら、夫が『そうはいっても、冬が来れば、北風は冷たいぞ』と。それを聞いて、男性脳の誠実さは、女の期待とは違うということを痛感したんです。彼は彼なりに誠実なんだと。