2023年2月19日 06:00
91歳の現役記者 赤ちゃんをおんぶして取材にいそしみ、今年で40年
「はい、2月10日号の予定です」 「みなさ〜ん、10日の『週刊とうきょう』に注目ですよ」
参加者たちから拍手が湧き起こり、その笑顔を逃すまいと、またカメラをかまえる涌井さんだった。
■夫は中野区のローカル新聞の記者結婚の翌日に新聞の集金に行ってくれと頼まれて
涌井さんは、1931年(昭和6年)4月、静岡県藤枝市に生まれた。
幼いころから文学少女だった涌井さんは、
「東京の大きな短歌の会にも参加するようになったんです。その場所が、中野でした」
そこの会員だった新聞記者を通じて知り合ったのが、夫となる啓権さんだった。
’58年、中野区の鷺宮に引っ越し、新婚生活が始まった。
「新聞の集金に行ってくれ」
夫の啓権さんから突然言われたのは、結婚の翌日だった。
「そりゃ、驚きましたよ。仲人だったローカル紙の社長にすれば、社員を雇うより記者の家族を使ったほうが安く上がるので、『新妻をタダ働きさせよう』と(笑)」
実際は歩合制のアルバイトで、これは涌井さんにとっても、いわば天の助けだった。
「すごく安月給でしたから、少しでもバイト代をいただけるのは、ありがたかった。当時、1軒集金すると8円もらえたんです。