2023年6月11日 06:00
アフリカに「医」を届ける医師 内戦スーダンの村人たちとの交流秘話
「外務省を辞めてお金に困っても、私が働けばなんとかなるとは思って。あんまり考え込んだら行動できなくなりますからね。ただ、上の子が中1になるときだったので、日本の教育を受けさせたいから、私たち家族は日本に帰ることにしたんです」(佳代さん)
川原は06年に「ロシナンテス」を立ち上げ、高校時代のラグビー部の仲間を巻き込み、スーダンでの活動を始めた。
まもなく、東部のガダーレフ州の保健大臣と出会った縁で、医師のいないシェリフ・ハサバッラ村での医療活動を依頼された。
村のリーダーであるハサンさんの家に住み込み、まずは医療設備を整えた。
「これまで外国人はよく通り過ぎていった」
ハサンさんはそう言ったという。
「最初は信頼されてなかったと思います。でも、ハサンと寝食をともにし、医療機材や木のベッドを運ぶよう役所に陳情に行くうちに、徐々に信頼関係が深まっていったんです」
診察、検査、救急車の運転など、1人でこなした。
時間があれば村を歩き、村人と一緒にお茶を飲んだり、車座になって食事をした。
やがて村に溶け込み、いなくてはならない存在となっていった。
「10代の女の子が夜中遅くに急患で運ばれてきたのですが、脳性マラリアでした。