2023年6月11日 06:00
アフリカに「医」を届ける医師 内戦スーダンの村人たちとの交流秘話
命が危なかったのですが、医師がいたからこそ助けることができたんです」
女の子の家族は、その恩を忘れなかった。数年後のことだ。
「娘が結婚式を挙げるんです。先生、ぜひ、参列してください」 「苦しくてゆがんだ顔を覚えているけど、すごくきれいなお嫁さんになったね」
そんな再会を喜んだ。
さらに川原は、水の問題にも取り組んだ。
「下痢を訴える患者が多いのは、川の水を飲んでいることが原因。しかも川で子どもが流されて、亡くなる事故も。そのため村にある古井戸を改修しました」
将来、看護師になる人材が欲しかったが、看護学校の前に、小学校の教育も満足に受けられる環境ではなかった。
「とくに女子教育には否定的な地域もあったので、8年ある義務教育で、女子は低学年までしか受けられなかったんです」
こうした思いから、村には女子の学校が誕生した。
また、「ロシナンテス」はワッドアブサーレ区に3カ所の診療所を立ち上げ、医師が常駐できない村には、定期的に医師を派遣する巡回医療の体制を作り、きれいな水がない村には井戸を掘るなど、活動の場を広げた。またスーダン人医師に肝移植を学んでもらおうと、母校・九州大学に招 聘するなど、人材育成にも注力した。