「山崎賢人の芝居は技巧じゃないから凄い」行定勲監督が語る新作映画『劇場』
『劇場』には雷が鳴っているときに部屋で沙希がパッと顔を上げるシーンがありますが、あの松岡の顔を見て欲しい。
あの場面は彼女の演技に息を飲みました。泣き腫らした、腫れぼったい顔を晒し、その表情に鳥肌が立ちました。女優がひとつの映画の中で見せることはあまりないですよ。
あれはたぶん、控室で何度か泣いてきたんでしょうね。
――そうなんですね。
間違いないです。部屋のセットがあるステージに入ってきた瞬間、すぐにそこにあった毛布をかぶりましたからね。
見せたくなかったんですよ。
見せたら、山崎の芝居が予定調和になってしまいますからね。
それを僕も察知したので、段取りを1回だけやって、ブレイクを挟んでから、いきなり本番に入った。それはやっぱり山崎の芝居にも反映されましたよね。
山崎と松岡の演技で印象的だったこと
――松岡さんは「ダメ男を好きになる周りの友だちはみんなロングヘアーだから、監督と相談してエクステをつけたし、ラストの衣裳は彼に夢を見させてあげたかったから、出会ったころの服と髪で彼が好きな沙希を私も演じたんです」って言われていました。
ああ、永田の部屋を最後に訪ねてきたときですね。