「山崎賢人の芝居は技巧じゃないから凄い」行定勲監督が語る新作映画『劇場』
松岡茉優は「天才」だと思う
――松岡さんの印象は?
僕は昔、NHKの時代劇に出ていた松岡茉優を見たことをあるんですけど、そのときから、この子は巧みだな~と思っていました。
芝居を削ぎ落すこともできるし、ある種のあざとさもちゃんと持ち合わせている。その両方ができるのは巧みだからだし、それはやっぱり優れた女優のひとつの資質だと思います。
――彼女が今回演じた沙希は、特に芝居の幅が広い役ですものね。
振り幅がすごいですよね。でも、その役と向き合った彼女は自分の度量を分かっているし、撮り終わった後に「まだまだだな~」って言っていたけれど、自分の限界も見えているかもしれない。だから、僕は今回の沙希役にすごくいいと思ったんです。
本当に役に合っていたし、完成した映画の中では山崎がちゃんと立っていた。
現場で見ていると、松岡の芝居の方が明らかに強い。彼女の方が最初からガツンと来るから確かに強いんですよ。
でも、松岡は耐久力があるから、山崎の芝居を待つことができる。そこが、このふたりでよかった理由です。
――ふたりはまったく違うタイプの俳優ですね。
そうなんです。松岡は最初のテイクからとんでもないことをやらかしたりするし、山崎はテイクを重ねれば重ねるほどよくなっていく。