「生々しい芝居を撮りたい」 月川翔監督が語る『劇場版 そして、生きる』
「そもそもこのシーンは、劇場版ではバッサリ切ろうかと悩んだんです。物語の流れの中で、これだけの長いシーンが前半にあるって、どう見てもいびつですから。それでも入れたのは、『ボランティアたちは良いことをしに来た』という見せ方をしたくなかったから。実際に現地の人にボランティアの存在についてもいろんな話を聞いて、これがこの作品のスタンスなんだと思いました」。
『キミスイ』を含め、世間は月川に対し、“中高生を対象にしたキラキラした恋愛映画の旗手“というイメージを強く抱いていることだろう。そんな月川にとって、本作はひとつのターニングポイントともいうべき作品になると感じているという。
「変な言い方ですが、この作品ができて『自分にもこんな作品が作れるんだ?』と思ったんですね。撮ったのはまぎれもなく自分なのに、シーンを見ると『え? どうやってこんな風に撮ったんだっけ?』と自分でびっくりもしています(笑)。
今後、もう少し大人向けの作品や実話ベースの話を作ってみたいなとも思うようになりました」。
繊細な芝居によって紡がれていく登場人物たちの人生の選択。震災ドラマでも恋愛映画でもなく、観る者の想像力に委ねられる大人のドラマとして楽しんでほしい。