心神喪失なら無罪?「刑事責任能力」を弁護士が徹底解説
無罪になった容疑者はどうなる?
櫻町弁護士:「また、無罪になった容疑者ですが、被告人が心神喪失のため無罪となった場合等においては、『心神喪失等の状態で重大な他害行為を行った者の医療及び観察等に関する法律』(医療観察法)に基づき、対象となる者に医療・観察を受けさせるべきかどうかの判断を求めて、検察官が地方裁判所に申立てを行います。
検察官からの申立てがなされると、鑑定を行う医療機関での入院措置等が講じられるとともに、裁判官と精神保健審判員(必要な学識経験を有する医師)の各1名からなる合議体による審判で、処遇の要否と内容の決定が行われます。
審判の結果、医療観察法に基づく入院による医療の決定がなされた場合は、厚生労働大臣が指定した医療機関(指定入院医療機関)において、対象者に対して、医療の提供が行われるとともに、この入院期間中から、法務省所管の保護観察所に配置されている社会復帰調整官により、退院後の生活環境の調整が実施されます。
このほか、心神喪失者による犯罪被害にあった場合に、不法行為に基づく損害賠償請求ができるか、という点が問題となります。
民法713条は、
『精神上の障害により自己の行為の責任を弁識する能力を欠く状態にある間に他人に損害を加えた者は、その賠償の責任を負わない。