サカイクがお届けする新着記事一覧 (28/34)
勝ったり負けたりが当たり前の、普通の少年団。最近は楽しませることが大事だとよく目にするので、自分なりにメニューを組んで実施しており、子どもたちには好評だけど、保護者から「もっと厳しくしてほしい」と......。厳しくされている方が「指導されている」感が出るからだと思うけど、どうしたら楽しみながら成長することを理解いただけるのか。どんな伝え方がいい?とのご相談。保護者への伝え方など、指導者の悩みですよね。これまでジェフユナイテッド市原・千葉の育成コーチや、京都サンガF.C.ホームタウンアカデミーダイレクターなどを歴任し、のべ60万人以上の子どもたちを指導してきた池上正さんがご自身が実践していることを踏まえ、保護者の皆さんへの伝え方をアドバイスします。(取材・文島沢優子)池上正さんの指導を動画で見る>>(写真は少年サッカーのイメージです。ご相談者様、ご相談内容とは関係ありません)<<U-8世代にも効率よく理解させる練習メニューが知りたい!いい方法はある?<お父さんコーチからの質問>池上さんこんにちは。私は3年前から地域のスポーツ少年団で指導をしています。地方在住なので情報が都市部に比べると遅かったり少なかったりするのは否めませんが、自分なりに本やネットなども使って勉強しています。指導しているチームはもともと県大会に毎回進出するようなレベルではなく、勝ったり負けたりが当たり前なので、歴代指導者もいわゆる厳しい指導はしておらず、サッカーの基礎を教え、練習最後に行う試合や大会などを通して学んでいくという感じです。よくある地方のチームだと思うのですが、最新のトレンドを抑えたトレーニングや、今現在「良い」とされている指導、チーム運営ができているかというと自信はありません。最近では、楽しませることが何より大事だということをよく目にするので、自分なりにネットや本などで情報を収集し実践しています。子どもたちには楽しんでもらえているようですが、保護者の皆さんに「楽しいのもいいけど、もっと厳しく指導してほしい」と言われます。親御さんたちも楽しむことが大事だと言われていることはわかっているようですが、それが結果や成長につながるかという点で完全に腹落ちしていないようなのです。分かりやすく結果が出ないと親が納得しないということと、厳しく指導されているのが目に見えるほうが「指導されている感」があって満足するようです。厳しい指導の部活などを経験している世代だからこそなのはわかりますが、そんな保護者を納得させるような伝え方や、楽しみながら上手くなることが伝わるメニューの例などがあれば教えてください。<池上さんのアドバイス>ご相談、ありがとうございます。今の親御さんたち自身が部活動などで厳しい指導を経験しているため、厳しく指導されているほうが「指導されている感」があって満足する。ご相談者様がおっしゃる通りだと思います。これは保護者のみならず指導者も同様です。皆さん、「スポーツは勝負事なのだから勝つチームがいい」「強いチームをつくるのが、いいコーチ」という評価になっています。■誰かと比べて上か下かではなく、以前よりどれだけ伸びたかを見てあげよう一方で、教育の現場は一足先に変わり始めています。例えば、子どもへの評価の考え方のひとつが「相対評価」です。誰かと比べて上か下か、そこを見ます。そうなると、わが子が、勉強にしろ、スポーツにしろ、属するグループで一番にならないと満足しません。対岸にあるのが「絶対評価」です。子どもが、以前よりどれだけ伸びたか。サッカーであれば、同じ大会で去年は1回戦負けだったのに、今年は1勝して2回戦に進んだ。それはひとつの成長としてとらえることができます。そのように「絶対評価」に慣れてくると、スポーツや少年サッカーの姿は変わってくるかもしれません。自分たちのチームがどれくらい伸びたか。コーチはそのことをよく知っているはずです。以前はあんな練習しかできなかったけど、いまはこんな練習ができるようになった。ここをもう少し鍛えて、こう変われば、もっとうまくなる――そんなイメージはできているはずです。それは、試合に勝つか負けるかではなく、個々とチーム全体が以前より上手くなる。前の年より進化する。そういうとらえ方の説明を、指導者が保護者に対し具体的な例を挙げて話せるようになるとよいかと思います。■コーチが子どもたちに話す姿を保護者にも見てもらう私は、私自身のサッカー観や指導観を保護者に伝えるために、練習や試合で子どもたちに話す姿を保護者にも見てもらいます。コーチ側がどんなことを大切にしているのか。そのことをどう伝えているのか。話を聴いている子どもたちは、そのことを理解しているのか。そういったことを親御さんに見てもらうのです。また、保護者とも可能な限り話します。私が最近新たに始めたチームで、フニーニョ(※ドイツで発祥したミニサッカー。ミニゴールを4つ使い3対3で行うミニゲーム。近年ドイツサッカー連盟が9歳以下の試合に導入を推奨した)の交流会を開催しました。試合のあと、私は保護者にこう言いました。「真剣に守っているように見えないですね。皆さん、どうですか?」すると皆さん、一斉にうなずいていらっしゃいました。「そうですね。次はもっとしっかり追いかけるようになるといいですね」と話しました。そんなふうに、次のステップが何なのかをしっかり親御さんにも伝えます。それを続けていくと、親御さんたちの姿勢は相当変わります。■楽しむことがモチベーションにつながる、という解説もしてあげるそれと同時に、サッカーを楽しむことが子どもたちのモチベーションにつながるという解説を、保護者にしてあげたほうがいいでしょう。昔から「好きこそものの上手なれ」と言われますね。サッカーが大好きだからこそ、真剣にやる。そうすることで、技術は身につきます。そのことは、スポーツ心理学の学びの中でも証明されています。とはいえ、物事に対する子どものモチベーション(動機付け)は、最初の段階では外発的なものが必要です。楽しくなるために、熱中できるために、コーチがどんな活動環境を提供してあげられるか。そこが問題です。楽しいからこそ真剣に取り組むのですが、そのうち気づけば誰も笑っていません。集中します。■「楽しい」はワイワイキャーキャーすることではない。真剣に楽しむことを教えて「子どもはサッカーを楽しみましょう」そんな価値観が広まってきたのは悪いわけではありませんが、私からすると「楽しい」がまだ甘いように感じます。ワイワイ、キャーキャーと歓声を上げるのが楽しい、というレベルで終わってないでしょうか?さらにもっと楽しくなると、笑うことはなくなります。まさしく集中し、ゾーンに入る。練習の中で白い歯を見せて笑っている子がいなくなります。そこをぜひ目指してほしいのです。徐々に真剣になっていく。そんな空気を作るために、常に勝ち負けのあるメニューを考え、子どもたちと対話し、要求を高めていきます。そこを、「笑っている子をなくす」「真剣に取り組む」といった、姿勢というか「かたち」から入ってしまうと、態度への注意が増えます。集中しよう。真剣にやろう。最後まで頑張ろう――そう指示命令されれば、子どもは真剣にやろうとするでしょう。でも、サッカーも、他のスポーツも、そうやって「真剣にやれ」と叱ってやらせるものではありません。そのような管理され作られた空気は長く続きませんし、委縮させられた子どもは自由にサッカーを考えられなくなります。池上正さんの指導を動画で見る>>次ページ:サッカーが俄然楽しくなるきっかけをつくる■「次は、今日負けたところに勝とう」と言ってはいけない理由(写真は少年サッカーのイメージです。ご相談者様、ご相談内容とは関係ありません)選手が勝ちたいと思うのは当然です。だから、試合に勝ったら「勝ってよかったね」でいい。それなのに大人たちが「次はあそこに勝って優勝しようぜ」と、次の「勝利」を目標に掲げていないでしょうか?負けて悔しい、でいい。そのあとに「次は、今日負けたところに勝とう」と大人は言ってははいけません。負けたら「残念だったね。また頑張ろう。うまくなろうね」でいいのです。そこで「次は勝とう、相手にリベンジしよう、とは私は言いませんよ」と保護者に説明してもいいですね。コーチがあくまでも「絶対評価」で子どもたちをとらえていることを伝えてください。私が最近地元にチームを作ったのは、絶対評価で子どもたちを育てていくとどうなるのか。子どもたちが大きく成長することを証明したいと考えているからです。ぜひ、そんなふうに考えて、保護者とたくさん話してください。池上正さんの指導を動画で見る>>池上正(いけがみ・ただし)「NPO法人I.K.O市原アカデミー」代表。大阪体育大学卒業後、大阪YMCAでサッカーを中心に幼児や小学生を指導。2002年、ジェフユナイテッド市原・千葉に育成普及部コーチとして加入。幼稚園、小学校などを巡回指導する「サッカーおとどけ隊」隊長として、千葉市・市原市を中心に年間190か所で延べ40万人の子どもたちを指導した。12年より16年シーズンまで、京都サンガF.C.で育成・普及部部長などを歴任。京都府内でも出前授業「つながり隊」を行い10万人を指導。ベストセラー『サッカーで子どもがぐんぐん伸びる11の魔法』(小学館)、『サッカーで子どもの力をひきだす池上さんのことば辞典』(監修/カンゼン)、『伸ばしたいなら離れなさいサッカーで考える子どもに育てる11の魔法』など多くの著書がある。
2021年03月05日これからサッカーを始めようと思っている子には、シューズやウエアなどの道具の用意とともにサッカーノートも用意していただくことを勧めます。少しサッカーが上達してからでもいいのでは?低学年では早すぎない?と思っている方もいるかもしれませんが、サッカーノートは考える力をつけてくれるのでプレーの上達にもつながるのです。サッカーノートはサッカーの上達をサポートするもので、元日本代表の中村俊輔選手や本田圭佑選手なども子どものころから書いていました。サッカーノートをつけると、子どもにどんな変化があるのかを、サカイクサッカーノートの開発に携わったしつもんメンタルコーチの藤代圭一さんに話を聞いてみました。(取材・文:前田陽子)サッカーノートを書くことで思考が整理され上達につながるので、サッカーを始めた時からの習慣にしたいものサカイクサッカーノートお得な12冊セットを期間限定で販売中!【3月18日19時まで】>>■サカイクサッカーノートは質問に答えるだけで、自然とサッカーがうまくなるサッカーは自分でその場その場で考え、最善のプレイを選んでそれを実行するスポーツ。監督やコーチから「考えてプレイしろ」と言われることもたくさんあります。ですが、サッカーを始めたばかりで考える経験をしていない子どもにとって、ピッチで瞬時に考えてそれを表現するのは難しいものですよね。その練習のためにサッカーノートが役立ちます。「真新しいノートを一冊用意して、さあ書いてみよう!と思っても、何を書いていいかわからないですよね。サカイクサッカーノートには、質問という形式で書く項目が配置されているので、それに答えるだけ。サッカーを始めたばかりで初めてのノートという子どもにおすすめです」と藤代さんは言います。ノートは「どうしてサッカーをはじめましたか?」という質問から始まります。今の自分を書き出すページが用意されているのです。「サッカーを続けていくと好きで始めたのに、いろいろと評価をされることが増え、誰かから良く思われたい、うまくならなければだめだという感情が生まれ、サッカーをつまらなく感じる子が出てきます。サッカーを好きという気持ちを忘れてしまうんですね。振り返ったときにサッカーを始めた時の新鮮な気持ちを思い出してもらいたいという思いを込めて、最初にこの質問を用意しました」と藤代さんが開発の意図を教えてくれました。サッカーを続けていくと、先発に選ばれる、セレクションに受かるなど誰かに評価される場面も多くなり、サッカーが辛いと感じることも出てきます。ずっと続けるために"好き"は最強のモチベーション。その思いを忘れない工夫がされているのです。今日の「自分」を知るページ※拡大できます■振り返りと目標設定はセットで。練習の質が向上し、技術面でも上達するサッカーでは練習や試合ではたくさんの失敗と成功をします。練習や試合のたびにサッカーノートを使ってなぜ失敗したのか、どうして成功したのかを振り返ることを習慣化すると良いそうです。振り返りをしないと今日は運がなかった、たまたまうまくいっただけで終わってしまい、悪かったプレイを繰り返し、良かったプレイも再現できません。結果、うまくいくこともあれば、うまくいかないこともあるというムラのある選手になってしまうのだと藤代さんは教えてくれました。振り返りをすると、うまくいったことも含めて次に生かすことができます。また人は悪いことを指摘されると何もやりたくなくなりますが、うまくいったことを見つけられるとできなかったことにも目を向けることができるもの。「適切な振り返りをすると気持ちに余裕が生まれ、視野が広がります。サカイクサッカーノートは最初にうまくいったことを探すことを質問として用意しているので、自然とその後に改善点にも気づけるはずです」と藤代さん。練習や試合が終わったらサッカーノートを書いて、次の練習や試合の前にそのノートを見返す習慣が大事です。前回どんなチャレンジをしたのか、どこがうまくいって、何がダメだったのかを整理せずに練習や試合をしても、目的がないままになってしまいます。練習や試合の課題を決めると集中力も高まり、やる気も出て、練習の質も高まり、いいプレイが出来るというサイクルが出来ます。そのためにどんな時にどんなことを感じたのかをノートを見て確認し、課題や目標を考えましょう。サッカーノートを書くことで思考の整理ができ、サッカーにより深く取り組めるようになるのですサッカーノートを書くことで、思考の整理ができると同時に、自分のことがわかります。人は周りの人のことは知ろうとしますが、自分を知ろうとはなかなかしません。特に低学年の子どもでは、普段からご家庭でそのような習慣があればできるかもしれませんが、ほとんどの子はそういった意識はしていないでしょう。自分のことを客観的に振り返ることで頭の中が整理され、新たなチャレンジに向かうことができるようになるのです。■完璧に記入しなくても大丈夫。三日坊主でも継続できればOK練習や試合の後、毎回ノートに記入する習慣ができるのが理想です。そういう習慣になってほしいと願う親御さんも多いでしょう。サッカーノートを使うことで自分がなりたい姿と現在のギャップを感じられ、自分がなりたい姿になるためにどうすればいいか考えて、努力することができます。ですが、ノートを書くことが子どもにとってやらされている、やらなければいけない事(=義務)になると続けられません。「連続と継続は違います。親御さんは連続365日やってほしいと思っていると思いますが、1週間に3日しか書かないけれど、翌週また3日間と三日坊主を繰り返して、1年間続けられればそれでもいいと思います。子どもには日々新しい好奇心が芽生えていきます。その中でやるべき理由がよくわからないものを続けるのは無理なこと。完璧にやろうとせず、1日10分だけなどと時間を区切って、時間内に書けた分だけをやるのでも十分です」と藤代さんが続けるコツを教えてくれました。時間を区切るのは、そうすることで「ここまで書こう」と言うよりゲーム性が生まれるためだそうです。10分間で書けたところまでとして良いのだとか。1日目はたいして書けなくても、続けていくと書ける分量も増えていきます。時間を区切ると集中力もUPするそう。サカイクサッカーノートには、楽しく続けれるようにいろいろな工夫がされていますが、取り組み方にゲーム性を加えるとより継続しやすくなるということです。楽しくサッカーを続けることが何より大切ですが、「何となく」続けるのと常に自分の現在地を知り、思考しながら続けるのでは、取り組みの深さもコーチの指示の理解も変わってくるもの。いきなり真っ白いノートを渡しても、子どもたちが自ら書き出すのは難しいので、思考を引き出すガイドがたくさん仕掛けられたサカイクサッカーノートを使って、お子さんの上手くなりたいをサポートしてみませんか。サカイクサッカーノートお得な12冊セットを期間限定で販売中!【3月18日19時まで】>>藤代圭一(ふじしろ・けいいち)一般社団法人スポーツリレーションシップ協会代表理事。教えるのではなく問いかけることでやる気を引き出し、考える力を育む『しつもんメンタルトレーニング』を考案。全国優勝チームや日本代表選手など様々なジャンルのメンタルコーチをつとめる。2016年より全国各地に協会認定インストラクターを養成。その数は350名を超える。選手に「やらせる」のではなく「やりたくなる」動機付けを得意とする。新刊に「教えない指導」(東洋館出版)がある。「教えない指導」出版感謝企画 2つの特典紹介>>
2021年03月04日サカイクがお届けする『親子で遊びながらうまくなる!サッカー3分間トレーニング』。今回は初心者に多い、「狙ったところに蹴ることができない」という悩みを改善するトレーニングをご紹介します。広大なスペースがなくても公園などのちょっとした場所でできるので、ぜひ親子で遊びながらチャレンジしてみてください。ボールを止める、蹴る、はサッカーの基本中の基本の一つ。ただ蹴るのではなく狙った方向に蹴ることは、初心者には難しいもの。今回は、広いスペースがなくてもできて、遊んでいるうちに狙った方向に蹴れるようになる方法を紹介。ボールのスピードを速くしたりゆっくり転がしたり、緩急をつけることでドリブルが上手くなっていきます。難しくないのでサッカー経験ゼロの親御さんでも「的当て」のようなゲームをして楽しむこともできます。親子で一緒にやるとボールコントロールの練習につながります。ぜひ親子でチャレンジしてみてください!【やり方】1.子どもがボールを持つ2.目印を親の前に置く3.子どもは目印を狙ってインサイドで蹴る4.当てられるようになったら、目印の距離を離して難易度を上げる5.慣れて来たらキックの種類を変えたり、どちらがたくさん当てられるか対戦してみるなどアレンジして楽しむ【ポイント】・狙う場所をよく見る・軸足のつま先をしっかり狙う場所に向ける・インサイド(足の内側)で蹴る時は、蹴る足のつま先を外側に向け、足首を固定する・リラックスして行うこと・慌てずゆっくり、慣れてきたらリズム良く行う・失敗しても気にせず、親子で楽しみながら行う次回もサッカー初心者のお悩みに応えるトレーニングをお届けしますのでお楽しみに!お父さんコーチに役立つ練習メニューを公開中>>
2021年03月04日子どもたちに「将来の夢は?」と聞いたら、多くの子どもたちが「プロサッカー選手!」と答えるでしょう。そしてそのためにサッカーの練習を一生懸命頑張ろうとします。でも残念ながらみんながみんなプロ選手になれるわけではありません。どんなに小さいころは将来を期待された選手であっても、そのまま順調に成長していくかは誰にもわかりません。ドイツではいつ、どのように夢との決別をするのでしょうか。そして健全に夢とともに生きるために育成年代で気をつけておくべきことはなんでしょうか。過去に岡崎慎司選手や武藤嘉紀選手が所属したブンデスリーガのFSVマインツ05(以下マインツ)でU‐23コーチを務めるジモン・ペッシュさんにお話を伺いました。(取材・文:中野吉之伴)「プロになりたい」という子たちにどのタイミングで現実を教えるか、マインツの場合はどうしているか教えていただきました(写真はサッカー少年のイメージ)■アカデミー生でもトップに上がれるのはほんのわずか中野:ペッシュさん。サッカーが大好きな子どもなら誰でも将来はプロ選手になりたいと夢を口にします。そしてそこから将来性があり、才能を認められた選手がブンデスリーガの育成アカデミーに集まってきますよね。でもそこまで来た選手たちでも、みんながプロ選手になれるわけではない。U‐23に残った選手のほとんどは、どこかで次のキャリアを探さなければならない。クラブとしてはどのように取り組んでいるのでしょうか?ペッシュ:選手には個々それぞれにアプローチするのがまず大事になります。我々は選手それぞれにとって最適な進路を探そうとしています。いま僕らのU‐23チームであればU‐19の段階でその年代トップレベルのプレーを見せ、将来性を高く評価されている選手がいます。パウロ・ネーベルとニコラス・タウアーといった選手たちですね。彼らの場合はプロになれる可能性が高いためすでにトップチームで一緒に練習をしながら、試合の時はU‐23でプレーをして、試合経験を積んでもらうようにしています。そのため彼らに対してはU‐23チームの指導者としてそこまで多く影響を及ぼせるわけではない。金曜日の試合前最後の練習に参加して、試合に出て、またトップチームの練習にもどるわけですからね。ではほかの選手はというと、多くは現時点ではトップチームでプレーする目星がついていないという選手たちなんです。そのうち2、3人は数年のうちにひょっとしたら2部か3部ブンデスリーガ、あるいはうまく成長すればブンデスリーガでプレーするチャンスもあるかもしれない。でも、それ以外はどうひいき目に見ても4部~5部が限界というふうになってしまうわけです。■選手に現実を突きつけるのもコーチの役目中野:選手は自分で気づいていくんでしょうか?それとも指導者のほうから言葉がけをするのでしょうか?ペッシュ:マインツのU‐23は成人4部リーグに所属していますが、クレバーな選手はここで実際にプレーしてみて自分で気づきます。「4部でこのレベル。自分はここからさらに上のレベルまで行けるのか?」とね。だから彼らのほうから「コーチ、僕は大学で勉強したいと思います」「○○企業で研修を受けたいと思っています」と自身で判断して次のステップへと進んでいく選手が多いという印象を得ています。ただ中には言い方は悪いかもしれないですが、「夢を見続けようとする選手」もいます。4部リーグでも出場機会を得られていないのに、「俺はここから一流のプロ選手になる!」と信じて疑わない。そうした選手に現実を伝えるのは簡単ではないけど、それもこちらの仕事だと思っています。「君は将来的にどうやって生きていくのか。どうやって生きていけるのか。別の道の可能性を探した方がいい時期に来たんじゃないだろうか」と。■幸せな人生を歩めるか、を考えるにはそれまでどんな情報を得てきたかが大事中野:現状を受け入れるのは簡単なことではありませんし、「ひょっとしたら」にかけたくなる気持ちだって理解できます。個々の性格や心構えが受け止め方も変わってきます。となるとやはり、「自分の人生にとって大切なことは何なのか」「どうすれば幸せな人生を歩めるのか」を考える習慣付けを育成年代からしておくことは大切ではないかと思います。ペッシュ:その通りだと思います。それまでにどのような教育を受けてきたのか、どのような情報を得てきたのかは大きな影響を及ぼすでしょうね。その点で考えると、育成をどのようにとらえるかも重要になってくると思います。例えばドルトムントを見ると、ムココが16歳、ベリンガムが18歳でトップデビューを飾っていますよね。そうした事実があるから育成選手は必ず18歳、19歳でトップチームでプレーできるだけのクオリティを備えていなければならないというのが基準となり、さらに逆算してU‐14、U‐15でその選手の将来性すべてを決めてしまうような傾向が出てきてしまいます。でも選手の成長には個人差があります。U‐19、あるいはU‐23まで見てみることも大切です。そこですごい成長を遂げる選手だっているし、その間に将来のことと向き合う時間だってできるはずではないですか。■楽しさの中で成長することが大事、早い段階でプレッシャーをかけないで中野:早いうちに結果を求めすぎる傾向は日本でも強いと思います。ではU‐13、U‐15の子どもたちに対してはどうお考えでしょうか?ペッシュ:大事なのは結果や順位表だけを見ないことです。育成アカデミーのチームだと二桁得点差で勝つことも普通にあるのですが、でもだからよかった、悪かったではなく、どんなプレーを目的として取り組み、それがどう実践できたのかをしっかりとらえる大切さを伝えなければいけません。特にまだU‐13より若い年代の子どもたちには、あまりに早い段階でプレッシャーをかけるのはよろしくないです。サッカーの楽しさの中で成長をすることがやっぱりすごく大事ですね。楽しいというのは何してもいいよというのではなく、個々の選手と向き合いながら、アプローチすることは欠かせません。例えば一人の選手が2~3点をとったとして、すべてを右足で決めていたら「得点は素晴らしい。でも君には左足もあることを忘れてはだめだよ」と伝えることも必要でしょう。例えチーム内でベストな選手だったとしても、どこに長所があり、どこに弱点があるかは、しっかりと把握していかなければならないし、それを改善していくためにそうしたフィードバックはとても重要です。育成は長期的な視点で取り組むことが本当に大切なんです。今日行ったことが明日できなきゃだめだなんて追い込まないでください。いかがでしたでしょうか。子どものうちは多くの子が「プロになりたい」と口にします。しかし、望めば誰もがプロになれるわけではありません。いつかは夢から覚め、現実と向き合うことになります。プロサッカー選手と言う夢が叶わなくとも、幸せな人生を歩むためにそれまでに受けてきた教育(学歴の高さのことではありません)や得てきた情報が大事だというペッシュさん。保護者の皆さんは、お子さんが選手以外の道へ踏み出すときに、情報収集や他の選択肢の提示などのサポートができるのではないでしょうか。また、昨今の日本では幼少期からその時点のレベル、周囲の子との差を見て「向いている」「向いていない」を判断しがちな親御さんが増えています。神童と呼ばれ将来を期待された選手が、必ずしも順調に成長するわけではありません。短期的な視点で「できている/できていない」だから「向いている/向いていない」とジャッジするのではなく、子どもの「楽しい」を後押ししてあげる方が成長につながるのは間違いありません。中野吉之伴(なかの・きちのすけ)指導者/ジャーナリスト大学卒業後、育成年代指導のノウハウを学ぶためにドイツへ渡る。現地でSCフライブルクU-15チームでの研修など様々な現場でサッカーを学び、2009年7月にドイツサッカー連盟公認A級ライセンスを取得(UEFA-Aレベル)。2015年から日本帰国時に全国でサッカー講習会を開催し、よりグラスルーツに寄り添った活動を行う。主な指導歴:フライブルガーFC(元ブンデスリーガクラブ)U-16監督/U-16・18総監督などを経て現在はフライブルガーFCのU13監督を務める。著書・監修本に「サッカードイツ流タテの突破力」(池田書店 ※監修/2016年)/「サッカー年代別トレーニングの教科書」(カンゼン ※著者/2016年)/「ドイツの子どもは審判なしでサッカーをする」(ナツメ社 ※著者/2017年)などがある。
2021年03月03日サカイクがお届けする『親子で遊びながらうまくなる!サッカー3分間トレーニング』。今回は初心者に多い、「ドリブルが上手くできない」という悩みを改善するトレーニングをご紹介します。自宅や公園などのちょっとしたスペースでできるので、ぜひ親子で遊びながらチャレンジしてみてください。ボールを止める、蹴る、はサッカーの基本中の基本の一つ。ボールを運ぶ時に使うスキルであるドリブルは、最初は難しいものですが、基礎をしっかり身につけることが大事です。今回は、自宅など狭いスペースでもできるドリブル上達につながる遊び方をサカイクキャンプコーチが説明。ボールのスピードを速くしたりゆっくり転がしたり、緩急をつけることでドリブルが上手くなっていきます。このトレーニングは身体を素早く動かしたり細かくボールをタッチするので、コオーディネーション能力が高まることや、ターンと細かいボールタッチの上達につながります。ぜひ親子でチャレンジしてみてください!【やり方】1.目印を3つ並べる2.子どもは目印の横に立ち、親は子どもの横からボールを転がす3.子どもはボールのスピードに合わせて目印の間をジグザグに走りボールをとらえる4.目印の間をジグザグにドリブルしながら戻ってくる5.慣れて来たらボールを早く転がしたり、速く出すと見せかけてゆっくり転がすなど緩急をつけて行う【ポイント】・ボールをよく見る・身体を素早く動かす・たくさんボールを触る・ドリブルで帰って来る時、両足のインサイド・アウトサイドを使うなど工夫をする・リラックスして行うこと・慌てずゆっくり、慣れてきたらリズム良く行う・失敗しても気にせず、親子で楽しみながら行う次回もサッカー初心者のお悩みに応えるトレーニングをお届けしますのでお楽しみに!お父さんコーチに役立つ練習メニューを公開中>>
2021年03月03日サカイクがお届けする『親子で遊びながらうまくなる!サッカー3分間トレーニング』。今回は初心者に多い、「浮き球をダイレクトに足のインサイドでパスできない」という悩みを改善するトレーニングをご紹介します。ボールを止める、蹴る、はサッカーの基本中の基本の一つ。試合中、必ず足元にパスがもらえるわけではありません。浮き球で来たボールをダイレクトで味方にパスしたりする時に使う技術です。試合の中でも使う、飛んできた浮き球をインサイドでダイレクトにパスする方法を初心者が一から身につけるための基本動作、ポイントをサカイクキャンプコーチが説明。ぜひ親子でチャレンジしてみてください!【やり方】1.親がボールを持ち離れて立つ(5メートルくらい)2.親が手で持っているボールを子どもは手でタッチする3.タッチしたら子どもはバックステップで後ろに下がり、親は子どもに向けてボールを投げる4.子どもはそのボールをインサイドで蹴って親に返す5.慣れてきたら足の左右を入れ替えてどちらでも蹴れるように練習【ポイント】・ボールをよく見る・つま先を外側に向け足首固定する・軸足は相手に向ける・膝から下をコンパクトに振ってあてる・蹴ったらすぐ次のプレーに移れるよう意識する・リラックスして行うこと・慌てずゆっくり、慣れてきたらリズム良く行う・失敗しても気にせず、親子で楽しみながら行う次回もサッカー初心者のお悩みに応えるトレーニングをお届けしますのでお楽しみに!お父さんコーチに役立つ練習メニューを公開中>>
2021年03月01日サッカー経験は小学生の時だけ。小2の息子が入団するタイミングでコーチを引き受けたけど、昔と今ではいろんなことが変わっているのを知った。長時間練習を良しとする時代でないので、効率よく理解させたいんだけど何かおすすめはある?というご質問をいただきました。みなさんならどんな練習を組みますか?これまでジェフユナイテッド市原・千葉の育成コーチや、京都サンガF.C.ホームタウンアカデミーダイレクターなどを歴任し、のべ60万人以上の子どもたちを指導してきた池上正さんがこの年代の指導で大事なことを教えます。参考にしてみてください。(取材・文島沢優子)池上正さんの指導を動画で見る>>(写真は少年サッカーのイメージです。ご相談者様、ご相談内容とは関係ありません)<<8人制から11人制への移行。幅とスペースの使い方が分かってない子たちにどう教えればいい?<お父さんコーチからの質問>はじめまして。子どもがサッカーをはじめたことがきっかけでチームの指導に携わるようになりました。サッカーは小学生の頃にやったぐらいで、当時と今ではルールなどもかなり変わっているようでイチから勉強している状態です。指導に関わっているのは2年生以下のチームなのですが、効率よく教えたいと思っています。もちろん年代的にまだまだ理解力などが足りない部分はあるし、個人差も当然あるのですが、自分としては長時間練習すればいいとは考えていなくて、土日なども練習の後に友達や家族と過ごす時間を持ってほしいと思っています。なので、子どもたちが理解しやすく、上達につながる練習メニューがないものがと悩んでいるのですが、何か良い方法があれば教えてください。<池上さんのアドバイス>ご相談、ありがとうございます。長時間練習を課すのではなく、土日など練習の後に友達や家族と過ごす時間を持てるよう指導者が考えてあげるのは、とても良いことだと思います。ただし、「効率よく教える」ことを念頭に置いても、いいものはなかなか出来上がらないと思います。相手は何しろ人間で、しかも個々で発達や成長の度合いがバラバラな子どもたちです。そこを少し考えましょう。■夢中にさせられれば、必ず上手くなるそんなに焦らずに、ゆっくり子どもと一緒にコーチも成長しいこう。そんな心づもりで取り組んでほしいと思います。まだ2年生以下ですから、サッカーが楽しく感じられることを第一目標にしてください。子どもたちが嬉々として取り組める。そんな練習を組み立ててもらえば、夢中にさせられれば、必ず上手くなるはずです。そんなふうに育成をとらえなおしてみてください。例えば、「今日の練習はこれで終わりだよ」とコーチが言ったときに、子どもからブーイングが起きるような楽しい練習、やり過ぎない練習が理想です。子どもたちが余力を残して「ああ、もっとサッカーをしたい!」「コーチ、やらせて」と言ってくるような練習にしましょう。■満足度が高い時間を提供しようジュニア時代は、試合が中心でいつも試合ができることが大事です。私は地元の大阪で「サッカープレーパーク」を週に1回行っています。1年生から中学生までが縦割りで一緒に行う、楽しく夢中になる練習です。90分の中で、60分が試合です。小学6年生にプレーパークの感想を尋ねると「試合がたくさんできるから楽しい」と口をそろえて言ってくれます。満足度が高いのです。試合と試合の間にトレーニングを30分挟みますが、それもみんな楽しそうにワイワイやっています。彼らが自由に自分自身で楽しさを見つけているように見えます。プレーパーク以外の場所でも、私は楽しいサッカーを心がけます。■難しすぎると面白くない、簡単すぎると飽きるそのバランス調整を!先日は小学校に招かれ、2年生の体育の授業を行いました。3対1の鳥かごをやってみました。中には、サッカークラブに入っている子もいれば、女の子も、サッカーをしていない子もいます。最初は、足で蹴らずに、手を使ってボールをパスします。取ったり、取られたりしながらみんなワイワイやっていました。途中で私が笛を吹いたら、手でやっていたのを足に変えます。同じ場所にいてもボールをもらえないので、みんな動き出します。最後までとても楽しそうでした。私の知っている学校では3年生で「ラインサッカー」をやるのですがラインサッカーは、ドリブルをしたらきちんとボールをラインのところで止めなくてはいけません。サッカーをしたことのない子どもがこんなことはなかなかできないだろうなと感じます。そのうえ「八の字ドリブル」もあります。大阪の小学生は「こんなん、サッカースクールやんけ」と言いながらやっていました。つまり、練習の難易度を大人のほうで調整してあげることが肝要です。難し過ぎると面白くないし、簡単すぎるとすぐに飽きます。■子どもたちの意見を聞いてみればいい練習メニューの本はいっぱい出ています。どんなものでもいいので、活用してみてください。子どもがそのメニューを楽しそうにやったなら、またやればいい。でも、食いつかないなと思ったら、やめて原因を考えます。動くグリッド(広さ)を考えるとか、まずは手でやってみるなど、手立てを考えてください。広すぎると疲れてしまい動かなくなるので、動く範囲を狭くしてみればいいのです。グリッドやコートのサイズを変えたり、行う人数を変えたりします。やってみてうまくいかなかったら、そのような微調整をしてください。そういった工夫をしても、なかなか楽しめないメニューもあります。それは「メニューがダメ」なのではなく、チームの成長の度合いにその時は合わなかった、ということ。そのように考えてください。実際のところはどうなのかという判断がつきかねたら、子どもたちに聞いてみればいいのです。「楽しそうじゃないように見えるけど、この練習、どう?」と。子どもがいろいろ教えてくれるはずです。池上正さんの指導を動画で見る>>■サッカーが俄然楽しくなるきっかけをつくる(写真は少年サッカーのイメージです。ご相談者様、ご相談内容とは関係ありません)サッカーが楽しくなる一つの要素として個人技を教えてもいいでしょう。例えば、ドリブルのフェイント。コーチが経験者であれば、やって見せてあげます。体を右左に動かし、相手を揺さぶって抜こうとする技術。横並びでドリブルしながら、相手を抜く。ちょっと止まるふりをして、スピードで抜く。それでも抜けないときはローリングターンがあります。アウトサイド、脚の外側からターンするものです。相手を抜かなくてもよく、視野を確保して他の人にパスができます。ローリングターンを覚えて、仲間にパスを出せば、ボールを相手に奪われず、自分たちでボールをつなげます。ボールがつながると、サッカーは俄然楽しくなります。低学年はサッカーの初心者です。トレーニングメニューを探して色々チャレンジしてみてください。どんどん勉強しましょう。池上正さんの指導を動画で見る>>池上正(いけがみ・ただし)「NPO法人I.K.O市原アカデミー」代表。大阪体育大学卒業後、大阪YMCAでサッカーを中心に幼児や小学生を指導。2002年、ジェフユナイテッド市原・千葉に育成普及部コーチとして加入。幼稚園、小学校などを巡回指導する「サッカーおとどけ隊」隊長として、千葉市・市原市を中心に年間190か所で延べ40万人の子どもたちを指導した。12年より16年シーズンまで、京都サンガF.C.で育成・普及部部長などを歴任。京都府内でも出前授業「つながり隊」を行い10万人を指導。ベストセラー『サッカーで子どもがぐんぐん伸びる11の魔法』(小学館)、『サッカーで子どもの力をひきだす池上さんのことば辞典』(監修/カンゼン)、『伸ばしたいなら離れなさいサッカーで考える子どもに育てる11の魔法』など多くの著書がある。
2021年02月26日上手くなるために自チームの練習だけでなく、自主練も取り組みたいと考えている人は多いのではないでしょうか。この記事では、1人でできるサッカーの練習メニューを紹介しています。1人での練習方法を探している人向けの内容となっているので、ぜひ参考にしてみてください。自主練でサッカーの個人スキルをアップ!サッカーチームに所属している小学生の中には、チームでの活動以外でもサッカーの練習をしたい、という人も多いのではないでしょうか。サッカーのスキルアップのためには、練習の質も重要ですが、練習量を確保することも重要です。そのため、チームの練習日以外でも自主練習をすることでスキルアップを図ることができます。自主練は隙間時間に行おう自主練は、学校が終わった後や休日にチームの活動がないときなど、空いた時間を見つけて行うようにしましょう。1日10分程度でもいいので、継続してコツコツ取り組むのがポイントです。一方で、JFAでは、小学生がサッカーをする時間の合計を300分/週以内にすることを推奨しています。例えばU9やU10であれば1回60分の練習を週2回行い、週末に40分以内の試合を1回行うのが理想だとされています。そのため、自主練のやりすぎには注意してください。1人でできるおすすめのサッカー練習メニューここからは、1人でもできるサッカーの練習メニューを紹介します。特別な練習グッズや用具がなくてもできる練習もあるため、ぜひ試してみてください。リフティングサッカーの基本とも言えるリフティングは、ボールさえあれば1人でどこでもできる練習です。様々な部位でボールを扱うことで、ボールタッチの感覚を養うことができるほか、ボールの芯を捉えなければリフティングが続かないため、継続して行っていると、ボールをしっかりと捉えられるようになります。また、リフティングボールを使えば、家の中など室内での練習も可能です。ドリブルリフティング同様、ドリブルもボール1つで行える練習です。インサイドやアウトサイドなど様々な部位を使い、また緩急をつけるなどして練習してみてください。また、マーカーなどの障害物を置いてそれを避けながらドリブルすることもできます。ボールタッチボールタッチは、足裏やつま先、インサイド、アウトサイドなど様々な部位を使って色々な形でボールを動かす練習です。ボールを様々な部位で扱えるようになれば、ドリブルやフェイントなど実践で必要な個人技を磨くことができます。足裏でボールを転がして前へ進む、左右のインサイド間でボールを行き来させる、などバリエーションも豊富なのでぜひ試してみてください。パス「パスは1人では行えないのでは?」と思う人がいるかもしれませんが、壁を活用すれば1人でもパス練習はできます。壁に向かってパスを出し、跳ね返ってきたボールをトラップして再びパスを出す、といった形で繰り返し取り組んでみてください。また、ただ闇雲に壁に向かって蹴るのではなく、パスをどこに出すのか狙いを定めるようにしましょう。マーカーコーンがあれば、2つ置いてその間にパスを通すようにすることもできます。トラップパスと同じように、壁を使えばトラップの練習をすることもできます。また、壁がない場合でも、ボールを真上に投げ落ちてくるボールをトラップすることもできます。実際の試合では、利き足だけでなく、逆足やふともも、胸など様々な部位でトラップするため、自主練でも様々な部位を使ってみてください。試合を観るサッカーは、実際にプレーするだけでなく、プレーを観ることでも上達します。近年ではインターネットを活用すれば、Jリーグはもちろん海外の試合も簡単に観ることができるため、試合も積極的に観てみてください。なお、試合を観る時は、特定の選手に焦点を当てて、動きやテクニックをチェックすることで、いいプレーのイメージを自分の中に植え付けることができるでしょう。まとめ今回は、1人でできるサッカーの練習メニューを紹介しました。1人であっても工夫次第で様々な練習ができます。パスやトラップ、ドリブルなどサッカーの基礎ともいえるスキルは、1人で十分鍛えられるため、ぜひ積極的に取り組んでみてください。
2021年02月26日サカイクがお届けする『親子で遊びながらうまくなる!サッカー3分間トレーニング』。今回は初心者に多い、ふわっと浮かせた「浮き球を胸でコントロールすることができない(胸トラップが出来ない)」という悩みを改善するトレーニングをご紹介します。ボールを止める、蹴る、はサッカーの基本中の基本の一つ。試合中、必ず足元にパスがもらえるわけではありません。浮き球で来たボールの勢いを和らげて足元に落とし、ドリブルやパスにつなげるときに胸トラップを使います。試合の中でも使う、浮き球を胸で止めてコントロールする方法を初心者が一から身につけるための基本動作、ポイントをサカイクキャンプコーチが説明。ぜひ親子でチャレンジしてみてください!【やり方】1.親がボールを持ち離れて立つ(5メートルくらい)2.親が手で持っているボールを子どもは手でタッチする3.タッチしたら子どもはバックステップで後ろに下がり、親は子どもに向けてボールを投げる4.子どもはそのボールを胸で受けて足元に収め、親に返す5.慣れてきたらボールの高さや速さを変えてより実践に近い状況でやってみる【ポイント】・ボールをよく見て落下地点に入る・腕を広げ息を吐きながらボールの勢いを吸収する・鎖骨の下左右の胸どちらかでボールをコントロールする・胸でコントロールした後もボールをよく見る・足元に収めたらすぐ次のプレーに移れるよう意識する・リラックスして行うこと・慌てずゆっくり、慣れてきたらリズム良く行う・失敗しても気にせず、親子で楽しみながら行う次回もサッカー初心者のお悩みに応えるトレーニングをお届けしますのでお楽しみに!お父さんコーチに役立つ練習メニューを公開中>>
2021年02月25日30年近くに渡るスペインでの指導経験を通じて、育成の大切さ、指導者が変わることの重要性を痛感したと話す、佐伯夕利子さん。インタビュー最終回では、ビジャレアルアカデミー所属時の育成改革の話から、保護者、指導者ができることについて話をうかがいました。(取材・文鈴木智之)ビジャレアルが行った育成改革改革のおかげで、これまで選手をジャッジして来たことに気付いたと佐伯さんは語ります(写真はサッカー少年のイメージ)<<第3回:「ひどい指導者がいる」と批判するだけでは何も変わらない、佐伯夕利子さんが日本の指導現場に提言■少しずつでも前進、進化することが大事――2014年に始まったビジャレアルの育成改革から6年が経ちました。佐伯さんはクラブを離れて一時帰国中に日本で活動されていますが、進み具合はどのように感じていますか?もともと、8年から10年スパンで結果が出るものと考えていました。これは改革が始まってから気がついたのですが、フットボール界は指導者やスタッフの入れ替わりが激しく、毎年のように変わります。ですので、3歩進んだと思ったら2歩下がるような状態です。ビジャレアルに指導者が120人いると、どうしても学びの浸透度に差が出てきてしまいます。足並みをそろえている間にシーズンが終わり、また人が入れ替わる...といったことが起きるので、すごく難しい状況だと感じています。そのため、思ったようなスピードで前進できるものではないというのが、正直な感想です。ただ、クラブとして継続して取り組むことで文化になりますし、求めているスピード感で物事が変わらなくても、一歩一歩前進し、進化することが大切だと思っています。――2014年に育成改革がスタートし、2020年で6年になります。当時15歳の選手が、現在のU-23にいるわけですね。いまのU-23の監督は改革初期にいなかった人なのですが、ご自身がこれまで見てきたチームや選手との違いを、明確に感じたそうです。彼は「今年のU-23の選手たちは、これまで自分が見てきた選手と違う。常に選手同士でフットボールについて会話をしているし、練習への取り組み方、レクチャーを聞く姿勢などは、これまでの指導人生で関わってきた選手たちと違う」と言っていたので、少しずつではありますが、何かが変わってきているように感じています。■選手の育成は数値化できるものではない――育成が難しいのは、「これをやったからこうなりました」と、結果がすぐに、明確に出るわけではないことです。はい。選手の成長は可視化、数値化できるものではないので、ビジャレアルが育成の方針を変えたことに対して、選手の学びにどのような変化が生まれているのかは、本人さえもわからないことがあります。クラブとしても、選手の成長率が何%伸びました、偏差値がいくつ上がりましたと、わかりやすく成果を表すものはないという結論に達しました。その中で私達が「間違いない」と確信を持って取り組むことが、どれだけ効果があるのかはわかりませんが、取り組みを続けることで、選手自身が人として豊かになっていき、その結果、サッカー選手として成長し、選手としての価値も高まっていくと考えています。こうすればいいという正解はありませんが、自分たちが信じて、良いと思うことに取り組むこと、そしてそれに誇りを持つことが、何よりも大切なのではないかと思っています。■より良い選手になってほしいなら...。堅苦しくないようゲーム感覚で――サカイクはサッカーをする子どもを持つ、保護者の方々がたくさん読んでくれています。保護者の立場から、子どもたちとどのように接すればいいのでしょうか?保護者であれ、指導者であれ、選手や子どもに関わる大人は、より良い人間、より良い選手になってほしいと思っているものですよね。ただし、そのためのアプローチを間違っていたり、わかっていなかったり、勘違いしている大人がたくさんいます。指導者レベルでは、かつての私もそうでした。保護者のみなさんは、子どもとより深いところでつながっているので、俯瞰して見るのは難しいことかもしれませんが、私達がやったような、映像を使って......というような堅苦しいやり方ではなく、ゲームのような感覚でやってみるといいのかなと思います。――具体的にはどのようなことでしょうか?うちの息子に自立して欲しい、自分でものを考えて、積極的に取り組むような人間になってほしいと思うのであれば、親である自分自身が、そうなるような取り組みをしているのだろうかと、紙に書き出してみるのもいいと思います。試合のユニフォームやスパイクを、親である自分が用意してはいないだろうかと、ご自身の行動を「子どもが自立する」という視点で考えたときに、どこへ向いているのかをゲーム感覚で確認するのもいいかもしれません。■サッカーに必要なものを子ども自身が考えることが自立につながる――サッカークラブは子どもたちに自立してほしいと考え、そのための取り組みをしているのに、保護者が過保護になってしまっているというのは、指導現場でもよく見聞きします。「明日のサッカーに必要なものはなんだろう?」と、子ども自身が考えて準備することも、自立する上では大切なことですよね。「明日の試合に、お弁当はいりますか?」と、親がコーチに聞いてしまっては、お子さんはお弁当がいるかどうかを気にすることはありません。「今日から、お弁当がいるかどうかはお母さんは聞かないから、自分でコーチに聞きなさい」と言うのも、ひとつの方法です。自分のお子さんにこうなってほしいという最終像があって、それに向かってプラスになることを、自分がやっているのか。そこに意識を向けてみるといいと思います。――子どもの自立のために、クラブと保護者が同じ方向を向くのが理想ですね。子どもは成長の途中なので、良いときもあれば悪いときもあります。指導者や保護者は、彼らと伴走しながらサポートしていくものです。練習中に「なぜ彼はふてくされるんだろう?」という場面があったとして、その裏側には必ず何か理由があります。そこに目を向けず「ふてくされて態度が悪い、○○くん」とダメ出しやネガティブフィードバックをしたり、「そんな態度では試合には出さない」と言って、週末の試合から干したりすることを、私達指導者は繰り返してきました。でもそうではなくて、人間にはいろいろなコンテキスト(前後関係)があり、ファクター(事実)があります。そこに理解を示し、歩み寄り、選手のバックグラウンドを知ろうとすることは、とても大切なことだと思います。罰するのは、その後からでも遅くないからです。■これまでと違う日本人が育っている。大人も進化し続けないと指導の質が上がらない――時代の流れとともに、求められる指導者像や選手へのアプローチは変わってきていると感じますか?はい。時代の流れは早いので、指導者は敏感に感じ取り、変化していく必要があると思っています。フットボール界だけ、指導現場だけで物事は測れません。社会の潮流や教育現場の流れなども鑑みることが大切です。近年、日本は教育方針が大幅に変わりました。いまの子どもたちが大人になる10年、20年後は、これまで私達が知っている日本人とは違ったタイプが育っているでしょう。しかし、それに対応する我々上の世代は、昭和の教育を受けている人が大半です。これまでとは違う日本人が育っているのに、育てる側の人間がついていけないと誤差が生じます。――前提条件が違う人達同士、ミスマッチが生じるわけですね。だからこそ我々上の世代、つまり大人が敏感になること。進化することに貪欲に、エネルギーを注ぐ努力をする必要があります。そうしないと、指導現場の質も上がらないと思います。子どもたち、青少年はその時代に沿った人格形成をされています。いまの子どもたちの価値観を、昭和に戻すのは無理な話です。そうであるにも関わらず、指導者が選手に圧力をかけ、恐怖心で抑え込んできた事実が、スポーツ現場にはあります。そこに対して、どう意識を変えていくか。お話してきたビジャレアルの育成改革もそうですが、勇気を持って、我々大人が取り組むべきだと思います。<<第3回を読む佐伯夕利子(さえき・ゆりこ)1973 年10月6日生まれ/イラン生まれ92 年にスペインに移住し、93 年から指導者の道を歩み始める。レアル・マドリードのスクールをはじめ、スペイン男子3 部リーグ、アトレティコ・マドリッド女子チームなどで監督経験を積む。08 年からビジャレアルに在籍し、男子U19のコーチ、レディースの監督、女子部統括責任者などを歴任。18 年に公益社団法人日本プロサッカーリーグの特任理事(非常勤)に選任され、2020年3月からJリーグ常勤理事。
2021年02月22日サカイクがお届けする『親子で遊びながらうまくなる!サッカー3分間トレーニング』。今回は、初心者に多い「パスを受けるときに浮き球をインステップ(足の甲)でコントロールできない」という悩みを改善するトレーニングを紹介します。ボールを止める、蹴る、というサッカーの基本中の基本の一つ。インステップでのコントロールはスペースの無い状況でボールを足元にコントロールするときに役立ちます。試合の中でもよく使う、浮き球をインステップ(足の甲)で止めてコントロールする方法を初心者が一から身につけるための基本動作、ポイントをサカイクキャンプコーチが説明。このトレーニングは遊びを通して楽しみながら行うことで、パスを受けるときに行う「浮き球」を足のインステップ(足の甲)でコントロールする方法をを身につけることができます。ぜひ親子でチャレンジしてみてください!【やり方】1.親がボールを持ち離れて立つ(5メートルくらい)2.親が手で持っているボールを子どもは手でタッチする3.タッチしたら子どもはバックステップで後ろに下がり、親は子どもに向けてボールを投げる4.子どもはそのボールをインステップでコントロールして親に返す5.慣れてきたらボールの高さを変えたり足を変えて難易度を上げる【ポイント】・ボールをよく見て落下地点を予測しながら動く・足首を固定する・膝をボールに合わせておろしながら・地面に近いところでボールをインステップにあてる・リラックスして行うこと・慌てずゆっくり、慣れてきたらリズム良く行う・失敗しても気にせず、親子で楽しみながら行う次回もサッカー初心者のお悩みに応えるトレーニングをお届けしますのでお楽しみに!お父さんコーチに役立つ練習メニューを公開中>>
2021年02月19日サカイクがお届けする『親子で遊びながらうまくなる!サッカー3分間トレーニング』。今回は、初心者に多い「パスを受けるときに浮き球をアウトサイド(足の外側)でコントロールできない」という悩みを改善するトレーニングを紹介します。ボールを止める、蹴る、というサッカーの基本中の基本の一つ。浮き球はロングパスなどで使うふんわりとした軌道で滞空時間の長い球です。サッカーの動きの中でよく使う「浮き球」のコントロールは、パスを受けるときなど試合の中でもよく使う動作なので基本をしっかり身につけましょう。このトレーニングは遊びを通して楽しみながら行うことで、パスを受けるときに行う「浮き球」を足の外側でコントロールする方法をを身につけることができます。ぜひ親子でチャレンジしてみてください!【やり方】1.親がボールを持ち離れて立つ(5メートルくらい)2.親が手で持っているボールを子どもは手でタッチする3.タッチしたら子どもはバックステップで後ろに下がり、親は子どもに向けてボールを投げる4.子どもはそのボールをアウトサイドでコントロールして親に返す5.慣れてきたらコントロールした後すぐにドリブルする意識をもってやってみる【ポイント】・ボールをよく見て落下地点を予測しながら動く・ボールがバウンドする瞬間をアウトサイドで抑えるようにコントロール・つま先を外側にして固定する・リラックスして行うこと・慌てずゆっくり、慣れてきたらリズム良く行う・失敗しても気にせず、親子で楽しみながら行う次回もサッカー初心者のお悩みに応えるトレーニングをお届けしますのでお楽しみに!お父さんコーチに役立つ練習メニューを公開中>>
2021年02月18日小3の息子が県の強豪チームからスカウトを受けた。体験に行ってみたら本人も楽しいと言い、親も「この環境なら成長する」と感じ移籍に乗り気に。だけど、本人が今のチームの仲間と離れたくないと移籍を決断できずにいる。最終的に決めるのは本人だけど、親としてはより良い環境に導くのも自分たちの役目だと思っている。すでに夫は「1日も早く移籍を!」と急いている。どうしたらいい?とのご相談。今回もスポーツと教育のジャーナリストであり、先輩サッカーママでもある島沢優子さんが、15年以上の取材で得た知見をもとに3つのアドバイスを授けますので参考にしてください。(文:島沢優子)(写真はご質問者様及びご質問内容とは関係ありません)<<気に入らぬなら辞めて結構!?コーチに無視される息子をどう支えるか問題<サッカーママからのご相談>現在小学3年生の息子の進路について助言をいただきたいです。地域のスポーツ少年団に所属しており、夏頃に県の強豪チームから監督を通してスカウトを頂きました。その時は考えた事もなかったので、はっきり答えないまま数か月たち、再度声をかけて頂きました。体験に行ってみた所、息子も楽しいと言い、特に自分の思うところにパスが通る事が凄いと興奮ぎみでした。親から見てもこの環境でやれば大きく成長するだろうなと感じました。しかし、本人がなかなか決断できずにおります。理由は、今のチームの子達と離れるのが嫌だと言う事でした。両方やる事はできないのか?と何度も聞かれます。私からは、楽しくやりたいならスポ少で続ける、もっと上手くなりたいなら強豪チームだよと伝えて、考えてみてと言っています。夫はチーム移籍を希望しており、1日も早く!と言う感じです。監督に相談したところ、先々を考えたら移籍したほうが良いと言われました。最終的には息子が決断することだと思います。ただ、より良い環境に導くのは親の言葉一つだとも思っており、どのように話し、決断させれば良いか迷っています。私自身も成長のためには移籍するのが良いと感じていますが、仲の良い子たちと一緒の今のままでも悪くはないとも思います。子どもに対して、何か良いアドバイスがあれば教えて頂きたいです。<島沢さんのアドバイス>ご相談のメールをいただきありがとうございます。サッカーが上手くなるには移籍するほうがいいけれど、今の仲間と別れがたい息子の気持ちもわかる......。ひとつの分岐点に立つ息子さんとともに揺れ動くお母さんの葛藤が、メールの文章から伝わってきます。■移籍先のことをよく調べたうえで親の意見を伝えることは悪くない私からは三つアドバイスさせてください。ひとつめ。ご両親ともに移籍に前向きのようです。ただ、「なぜ、息子が移籍した方がいいと思うのか?」という理由を、もう少し二人で話し合ってみてはいかがでしょうか。お母さんは「楽しくやりたいならスポ少で続ける、もっと上手くなりたいなら強豪チームだよ」とおっしゃっているようですが、これを息子さんが額面通りに受け取ってしまうとどうでしょうか。「強豪チームでは楽しいサッカーができないのかな」と不安にならないでしょうか。私から見ても、ご両親がもし「強豪ならサッカーが上手くなる」という点のみをお考えであれば、少し心配です。そのチームのことはよく調べられたでしょうか?試合で、ベンチが大声で選手を怒鳴っていないでしょうか?指導者たちに「楽しくサッカーをする」という視点はあるでしょうか?そういった部分が全くなく、長時間練習で選手は同じメンバーが出ずっぱり、一部のうまい選手だけしか活動させてもらえない、指導してもらえないというような危険性はないでしょうか。もっといえば、移籍しても試合に出続けられそうでしょうか。そこはお子さんだけがジャッジできる部分です。上記のような視点で、お子さんとともにチームを研究。「ここならわが子が充実したサッカーライフが送れそうだ」と考えたのなら、なぜそう思うかをきちんと息子さんに説明しましょう。親御さんの意見を伝えることは決して悪いことではありません。ただ、伝えっぱなしではいけません。息子さん自身がどう感じているのかを聴いてあげてください。できれば順序としては、先に息子さんの意見を聴く。そのうえで、お母さんはこう思う。お父さんはこう思うと話してはどうでしょうか。■9歳で大きな決断を下す息子さんの意思を尊重することふたつめ。まだ9歳でこのような難しい選択をしたことを褒めてあげてください。勧誘のあった強豪クラブのことを調べ、家族で話し合ったあとは、息子さんに決めてもらえばいいと思います。そして、彼の決定が自分たちの意に沿わないものであったとしても、そこで難色を示さない方がいいでしょう。「もう一度考え直してごらん」とか「絶対、移籍した方がいいのに」などと誘導しないこと。あくまで彼の意思を尊重しましょう。「なかなか難しい決断だったね。でも、君が決めたことを、お母さんもお父さんも尊重するよ」と言ってあげてください。そのようにして決めたことは、結果が移籍であろうが、今のチームに残ることになろうが、いずれにしても息子さんは「お母さんにも、お父さんにも認められている自分」を感じることができます。これまで以上に自己肯定感が高まるはずです。これとは逆の親子の例を見たことがあります。息子さんは同じ小学3年生。チームでは上手な部類で、足が速かったその息子のチームを指導していたお父さんコーチの男性は、3年生の秋に息子さんを隣町にある当時JFLの下部組織のジュニアチームに入れようとしました。息子さんは「今のチームでやりたい」と泣いて抵抗したそうです。しかし、お父さんは泣く子を引きずるようにして、セレクション会場に連れて行ったそうです。結果的にセレクションは不合格。そのうえ、セレクションを受けたことが他の選手や保護者に伝わり、チーム内はぎくしゃくし始めました。しかし、無理やり連れて行ったお父さんは「今のチームにいても上には行けない」と言うばかり。お母さんは大変困っていらっしゃいました。ジュニアユースに進む6年生になると、他の選手のほうが伸びてきました。結果的にそのお父さんコーチの息子さんはセレクションがうまくいかず、他のコーチの方の口利きでクラブに入ったと聞きました。■親の一声でわが子を動かすのが良しとされたのは昭和まで(写真はご質問者様及びご質問内容とは関係ありません)三つめ。このように子どもが何かの岐路に立たされた時、親の態度が一転、二転しない、ブレないことがとても重要です。お母さんはメールに「最終的には息子が決断することだと思います。ただ、より良い環境に導くのは親の言葉一つだ」と述べておられます。さて、本音はどちらでしょう?私にはわかりませんが、子どもは親がいくら繕っても本音を見破るものです。親がツルの一声でわが子を動かすのが良しとされたのは、昭和までの子育てです。進学も就職もスポーツも選択肢が非常に狭く、社会的にも「上の言うこと素直に聞いて実行できる人間」が重宝された時代には、親が強権をふるっても何とかなったかもしれません。ですが、平成ではすでにそのような子育ては通用せず、すでに時代は令和です。息子さんに大きな救いがあるのは、現在所属しているチームの監督さんが、「先々を考えたら移籍したほうが良い」と言ってくれていることです。有望な子が移籍してしあうのを、日本では多くの指導者が止めてしまいます。とても信頼できる方だと思います。その監督さんとも息子さんが話して、最終的に決めてもよいでしょう。今回の分岐点が、息子さんにとって大きな糧になるよう、サポートしてあげてください。島沢優子(しまざわ・ゆうこ)スポーツ・教育ジャーナリスト。日本文藝家協会会員(理事推薦)1男1女の母。筑波大学卒業後、英国留学など経て日刊スポーツ新聞社東京本社勤務。1998年よりフリー。『AERA』や『東洋経済オンライン』などで、スポーツ、教育関係等をフィールドに執筆。主に、サッカーを始めスポーツの育成に詳しい。『桜宮高校バスケット部体罰事件の真実そして少年は死ぬことに決めた』(朝日新聞出版)『左手一本のシュート夢あればこそ!脳出血、右半身麻痺からの復活』『王者の食ノート~スポーツ栄養士虎石真弥、勝利への挑戦』など著書多数。『サッカーで子どもをぐんぐん伸ばす11の魔法』(池上正著/いずれも小学館)ブラック部活の問題を提起した『部活があぶない』(講談社現代新書)、錦織圭を育てたコーチの育成術を記した『戦略脳を育てるテニス・グランドスラムへの翼』(柏井正樹著/大修館書店)など企画構成も担当。指導者や保護者向けの講演も多い。最新刊は『世界を獲るノートアスリートのインテリジェンス』(カンゼン)。
2021年02月17日20年以上に渡ってスペインで指導者として現場に立ち、アトレティコ・マドリードやビジャレアルのアカデミーなどで活動してきた、佐伯夕利子さん。なかでも2014年にビジャレアルのアカデミーが実行した「育成改革」には、指導者人生を揺るがすほどの影響を受けたと言います。インタビュー第3回では、佐伯さん自身の変化について、話をうかがいました。(取材・文鈴木智之)ビジャレアルが行った育成改革改革のおかげで、これまで選手をジャッジして来たことに気付いたと佐伯さんは語ります(写真はサッカー少年のイメージ)<<第2回:そのコーチングは「指導者が考える正解」では?ビジャレアルが将来を見据えて行った指導者改革■「これまで選手をジャッジし続けてきた」と気づいた――ビジャレアルの育成改革では指導風景を撮影し、映像をもとに指導者間でディスカッションしたとおっしゃっていましたが、佐伯さん自身フィードバックを受けて、どのような変化があったのでしょうか?まず、選手に対するアプローチの仕方が、ガラリと変わりました。なかでも強く感じたのが「私はこれまで、選手をジャッジし続けてきたんだ」ということです。たとえば、「この選手は良い選手」「この選手はそうでもない」というのもジャッジです。誰しも指導者にはお気に入りの選手がいて、どんな状態でもピッチにいてほしい。説明のつかない信頼感を寄せている選手がいます。その子に対するジャッジは、文句なしに「良い選手」です。でもいま振り返ると、それは思い込みだったのではないだろうかと。もしかすると、良い選手であるという先入観のもと、ラベリングをしていたのかもしれません。――ご自身の考えを、客観的に見られるようになったのですね。他に変わったのが、口から出る言葉です。人間は無意識のうちに、習慣化した言葉を使っています。指導中にも、頻繁に口をついて出ます。ビジャレアルの育成改革ではメソッド部門のメンタルコーチたちが、私の近くに影のように寄り添い、練習中にカメラを回し、メモをとりながら「佐伯コーチは練習中、何を言っているのか?」を記録しました。そして、私の口から出てくる言葉を全部「仕分け」してくれるんです。ポジティブな言葉とネガティブな言葉を分け、選手に対してポジティブなフィードバックが多かったのか、ネガティブなフィードバックが多かったのかに分けます。■言葉を可視化したことで、選手が自分の言葉をどう感じるかに気付けた――どんな言葉をかけているか、可視化されるわけですね。そうなんです。たとえば、90分の練習でA君に18回、B君に8回、C君に2回、声をかけたとします。「この数字を見て、佐伯コーチは何を感じますか?」と質問をされます。そこで私は「A君に18回も声をかけている。すごく執着しているな」とわかるわけです。次に、A君にかけたポジティブな言葉とネガティブな言葉を仕分けされた表を見せられます。すると、18回のうち15回がネガティブで、3回がポジティブなワードを使っていたことがわかりました。――A君に対して、ネガティブに執着していたわけですね。そこで私は自分の考えを正当化するんです。「でも、あの子には、これまで何度も注意しているんですよ。それなのに、状況を見ないでボールを受けてしまって、それから何をしようかを考えるから、ボールを奪われることが多くて。何度言っても改善されないんです」というように。指導者というのは自分を正当化させたら天下一品で、いくらでも言葉が出てきます。でも、はたして本当にそうなんだろうか? というところを、メソッド部のコーチが掘り下げてくれるんです。一つひとつ踏み込んで、「この言葉は、A君に対してどのように伝わってったと思う?」「このように言われたら、A君はどのように思ったと思う?」と、あえて指摘せず、質問を投げかけることで私自身にその答えを出させるのです。それを繰り返すことによって、「こんな言葉を使ってしまった」「こんな言い方をしてしまった」「A君は、いまどう思っただろう?」という意識が芽生えるようになりました。自分の指導を俯瞰できるようになったというと、おおげさに聞こえるかもしれませんが、いままでそんなことは思ったことがなかったので、一番の成長だと思います。――すごいアプローチですね。例えば同じシチュエーションで同じミスをした時に「また?」と指導者が言ったとします。その「また?」が、言われた選手に与えるインパクトは、どのようなものがあるだろうか?「また?」と言われた次のアクションで、結局あなたが望むプレーをA君はできた?と聞かれるわけです。同じミスをしたときに、指導者に「また?」と言われたら、次から身体が縮こまってしまい、より良いアクションは起こせないですよね。メソッド部門の人たちはそのような対話を通じて、私を変えてくれました。■スペインでは勘違い指導者の居場所がなくなりつつある――キャリアのある指導者を変えるのは、大変なことだと思います。変える方も、変わる方も。私だけでなく、スペイン国内の大多数の指導者は、多くの勘違いのもとに指導をしてきたのだと思います。幸運なことに、私はそれに気がつくことができました。さらに申し上げると、スペイン国内では指導者のプロファイルが変わってきていると感じています。これまではパフォーマンス系の指導者、例えば吠えるタイプの指導者やミスをした選手がいたら、ピッチサイドで地面にペットボトルを投げつけてみたり、審判に食ってかかったりするような指導者が多くいました。審判にプレッシャーをかけることイコール、チームへのプラスになるという変な信仰があったり。まだまだそのような指導者は少なくありませんが、流れが変わってきて、徐々にそういった指導者の居場所がなくなってきていると感じています。■知識があっても現代のやり方に合わない指導者は求められていない――そのような指導者はかつては「熱心な指導者」と言われていましたが、世の中が変わってきた中で、求められる指導者像も変化してきたのでしょうか?そう思います。先日、スペインの有名なスポーツダイレクターと話をしたのですが、同じことをおっしゃっていました。「○○監督はフットボールの知識があって、4-3-3について語らせたら、自分がいままで出会ってきた中でナンバーワンだ。だけどスポーツダイレクターの立場から考えると、彼を監督して招聘するのはありえない。なぜならもうそういう時代じゃないし、彼のやり方は求められていないんだよね」と言っていました。選手とのコミュニケーション方法やチームの作り方、自分の知識の伝え方など、時代とともに求められるやり方も変わってきているのだと思います。――オールドスタイルの指導者の居場所がなくなってきているのですね。はい。スペインで言うと、1980年代、90年代の指導スタイルから、進化していない人達の居場所がなくなってきているように感じます。そういう人達は、海外に居場所を求めています。なぜならばアフリカやアジアなどは、ヨーロッパと比べて人権への意識が低い地域もあるので、そのような指導がまだ認められるからです。もちろん、アフリカやアジアで仕事をしている指導者全員がそうだと言っているのではありません。そこは誤解なさらないようにしてほしいです。中には実力が認められて、海を渡った指導者もいます。でも、そうでない人がいるのも事実です。■過去にもてはやされた手法をなぞることがイケてると勘違いしていた――日本のスポーツ界にも、指導者のパワハラは根強く残っています。ハラスメント系の指導者というのが、一昔前はイケている指導者だった時期がありましたよね。「あの監督は情熱がある」といったように、色々な言葉で正当化されてきたんです。私もそう思っていた時期もありました。例えば、「メンバーリストは相手のチームよりも後に出せ」とか、色々なことを教えられました。でも時代は変わり、指導者がメンバーリストをいつ出すかに気を取られている間に、そのエネルギーを選手に向けて、選手のことを考える時間に当てたほうがよっぽど良いですよね。――そう思います。試合前というのは、選手が試合に向けてどのような気持ちでいるか。それに指導者は寄り添っていなければいけないはずなのに、つまらない信仰のようなものを、私達はたくさん作り上げてきてしまいました。それをなぞることが、イケている指導者だと勘違いし、そのような指導者をスペインのサッカー界は大量生産してしまったのです。しかし現在、先進的なクラブは、そのようなプロファイルの指導者は求めていません。ビジャレアルが2014年に改革しようとしたのは、まさにその部分で、それが遅かったのか、早かったのかはわかりませんが、私に多くの影響を与えてくれました。■ひどい指導者たちを批判するだけでは何も変わらない。指導環境改善のためにできること――過去の誤った振る舞いに気がついたとき、どのように感じたのでしょうか?私はメソッド部門のコーチに「いままでの自分はひどい指導者だったんだと、恥ずかしく思う」と言いました。すると、「いいんだよ。キミに非があるわけではないんだから。キミは、そのやり方しか知らなかっただけなんだ。それが正しいと思っていただけなんだ」と。さらに、こう言われました。「キミがやってきたことと、違ったアプローチがあることも知ってほしい。こういうやり方もあるんだと知ることで、指導者として豊かになれるはず。指導者をそのように育ててきた、スペインのスポーツ文化にも責任はある。人間は知っていることしか見えない。キミたちはひとつのやり方しか教わってきていないから、見えるものも見えなくなっているんだ。知ることによって、見えるものも変わるはずだから、『知る』を増やそう」と。――深い言葉ですね。日本のスポーツ界には未だにハラスメントがあり、子どものスポーツに対して、ひどい指導をしている人も多いと聞きます。でもそこで、「ここにひどい指導者がいる」「あそこにもいるぞ」と批判を繰り返すだけでは、何も変わりません。なぜならばそのような指導者達は、言い訳でなく、他のやり方を知らないんです。そして、いままではそのやり方で試合に勝ったり、大会に優勝したりと、機能してきてしまったのです。なので、その部分に対する『学びくずし』と言うか、そこに取り組むためのきっかけや、サポートする人がいない限り、指導者は変わることができない。私の経験上、そう思います。(第4回に続く)<<第2回を読む佐伯夕利子(さえき・ゆりこ)1973 年10月6日生まれ/イラン生まれ92 年にスペインに移住し、93 年から指導者の道を歩み始める。レアル・マドリードのスクールをはじめ、スペイン男子3 部リーグ、アトレティコ・マドリッド女子チームなどで監督経験を積む。08 年からビジャレアルに在籍し、男子U19のコーチ、レディースの監督、女子部統括責任者などを歴任。18 年に公益社団法人日本プロサッカーリーグの特任理事(非常勤)に選任され、2020年3月からJリーグ常勤理事。
2021年02月16日子どもも大人も疲労回復のためには良質な睡眠をとる事が大事です。そして良質な睡眠をとるためには何と言ってもお風呂が欠かせません。毎日の習慣なので特にこだわりなく済ませる方も多いかもしれませんが、お風呂の入り方ひとつで睡眠の質が変わって来るのです。しっかり疲労回復をして元気にサッカーをするためにも「正しい入浴法」を習慣にしませんか。前回は、入浴と睡眠の効果についてお話しを聞きましたが、今回は正しい入浴の方法を日本健康開発財団の温泉医科学研究所所長で東京都市大学人間科学部教授の医師・博士の早坂信哉さんに教えていただきました。すぐにできることばかりなので、今夜から実践してみてください。(取材・文:前田陽子)入浴剤も疲労回復効果があります。炭酸系は筋肉疲労に効くそうなので、サッカー少年少女におすすめです<<前編:最近の子どもたちは疲れている!?元気にサッカーするために知っておきたい、疲労回復効果を上げる「正しい入浴と睡眠」の知識■40℃のお湯に10分が基本、汗が出たらいったん湯から上がる正しい入浴のポイントは温度と時間だと早坂さんは言います。温度が表示される機能がある場合は小学校高学年であれば大人と同じ40℃に10分程度入浴するが良いとの事です。40℃で熱いと感じるなら38℃ぐらいに設定しても問題ないそうですが、それより低くなると温熱作用(※)が得られなくなってしまうのだそうです。※温熱作用とはお湯に浸かり体があたたまること。温熱作用により皮膚の毛細血管や皮下の血管が広がり、血流が良くなる。それにより体内の老廃物や疲労物質の除去、コリがほぐれ疲れが取れる。逆に42℃以上では交感神経が刺激されて良質な睡眠につながらなくなるため、熱くても40℃までにしたほうが良いのだとか。お風呂に浸かるときは全身浴が良いそうです。美容やスタイルキープのために半身浴などが良いと思っている方もいらっしゃるかもしれませんが、半身浴は心臓など身体にかかる負担が少ないので全身浴より長時間入っていることができるだけで、ダイエット効果などは無く、体温を上げるためには全身浴の方が手っ取り早く効果的なのだそうです。湯船には10分間連続で浸かっている必要なはく、汗が出たらいったん湯船から上がってもいいのだと早坂さんは言います。湯船に入る、出るを繰り返し、トータルで10分浸かっていれば温熱効果は十分得られるのだと教えてくれました。■入浴中は500~800mlの水分が失われる!入浴「前」も水分補給の習慣をまた、入浴によって失われる水分は500~800㎖と言われているので、入浴前と後に必ず水分補給をした方が良いとアドバイスをいただきました。飲み物は水でもいいそうですが、ミネラル分を含む麦茶、タンパク質を含む牛乳、イオン飲料などでも大丈夫だそうです。それらの水分をコップ1~2杯摂取することで脱水を防ぐのだそうです。脱水予防として「入浴前」の水分補給も大事なのです。夕食はできれば入浴の1時間前までに済ませておくと良いのだそうです。お風呂の水圧で胃腸にかかる負担が軽減されるのと、入浴することで血液の分布が皮膚表面に移ってしまうと、胃腸に行く血液の量が減って消化が悪くなるためだそうです。可能な限り食後、入浴するまでの時間を空けるようにしましょう。前編でもお伝えしましたが、入浴後は、温熱効果を持続させると同時に、睡眠に向かうためにある程度体温が下がることが必要です。ですが、扇風機やクーラーなどで急速に体温を下げてしまうと、せっかく得た温熱効果が失われてしまうことになるので、自然と体温が下がってくるのを待った方がよいのだそうです。■入浴剤は積極的に使いましょう。炭酸系なら疲労回復に効果も「入浴剤は温熱効果を高め、塩素を除去する効果もあるので使うことをおすすめします」と早坂さん。疲労回復には炭酸系がおすすめだそうです。炭酸の効果でぬるめのお湯でも血管を広げて、血流を良くしてくれるためだと教えてくれました。アトピーの子なら保湿系のものを利用するのも良いのでは、との事です。入浴後、保湿クリームやアトピー性皮膚炎の薬などを塗るなら、皮膚が乾燥する前の入浴後10分以内に行うのが良いそうです。お風呂の中では、マッサージやストレッチも疲労回復の助けになります。足首から膝にかけてなど下(末端)から上(体の中心)に向かって血流を促すようにやさしくマッサージするのが効果的です。低学年の子どもではうまくできないかもしれませんが、足をもむだけでも効果はあるそうですので、身体が温まった、入浴後に親子で一緒に行うのもいいのではないでしょうか。■試合後の強い疲労には温冷交代浴も効果あり試合後など、特に疲れを感じるときには温冷交代浴を試してみるといいかもしれません。多くのトップアスリートが疲労回復を目的に行っている入浴法で、文字通り温かい湯船と冷たい湯船に交互に入る方法です。家庭で実践する際は、40℃に3分、ヒヤッと感じる冷たい25℃ほどのシャワー1分を3回繰り返すと温冷交代浴の代わりになるそうです。最後は40℃の湯に3分入浴したら上がります。「インターネットなどでは、最後を冷水にする例が掲載されていますが、それでは温熱効果を得られないので、最後は40℃にしてください」と早坂さん。また、ケガ予防などのために試合の2日前に熱いお風呂に入る、ヒートショックプロテインを増やすという入浴方法もあるのだそうです。・42℃に10分・41℃に15分・40℃に20分(炭酸系入浴剤の併用で15分)いずれかの方法で入浴することで、ヒートショックプロテインと呼ばれる身体を守るタンパク質を生成するのだそうです。体温を1.5度くらい上げることで自身を守るために特殊なタンパク質が作られるという入浴法なのだとか。筋肉の障害を抑える効果や傷を修復する作用などがあり、試合でのパフォーマンスを上げることが期待できるのだと早坂さんは教えてくれました。この入浴法を実践しているアスリートもいるようです。ただし、この入浴法は身体への負荷も強いので、のぼせに注意が必要なことと、毎日行っていては効果が悪くなるそうなので、ここぞという試合の前限定で行ってみるといいかもしれません。正しい入浴方法・40℃にトータル10分入浴する・入浴の前後で水分補給をする・炭酸系入浴剤を使うと疲労回復の手助けになる・入浴中のマッサージやストレッチも効果あり毎日のお風呂の入り方ひとつで疲労回復やパフォーマンスが変わってくるのです。元気な毎日を過ごすためにも、サッカーを思い切り楽しむためにも、今日からできることをみなさんも実践してみませんか。早坂信哉(はやさか・しんや)東京都市大学教授/ 博士(医学)、温泉療法専門医大学医学部卒業後、1998年より自治医科大学大学院医学研究科にて入浴に関する調査研究を開始。現在は東京都市大学人間科学部教授東京都市大学大学院総合理工学研究科教授、総合研究所子ども家庭福祉研究センター長を務める傍ら企業等との協働や講演活動も行っている。テレビ、雑誌など各種メディア出演も多数。著書に「たった1℃が体を変えるほんとうに健康になる入浴法」(KADOKAWA)、入浴検定 公式テキスト お風呂の「正しい入り方」(日本入浴協会)、「最高の入浴法~お風呂研究20年、3万人を調査した医師が考案」(大和書房)がある。
2021年02月15日もうすぐ中学生になるので11人制の準備をさせたいけど、8人制とはコートの大きさも異なるので、どうしても中盤がぽっかり空いたり、自分でスペースを見つけることが出来ない子どもたち。11人制の動きを教えるにはどうしたらいい?とご相談をいただきました。実はこの時期よくある質問なのだそう。みなさんのチームではどうしていますか?これまでジェフユナイテッド市原・千葉の育成コーチや、京都サンガF.C.ホームタウンアカデミーダイレクターなどを歴任し、のべ60万人以上の子どもたちを指導してきた池上正さんがアドバイスを送ります。参考にしてみてください。(取材・文島沢優子)池上正さんの指導を動画で見る>>(写真は少年サッカーのイメージです。ご相談者様、ご相談内容とは関係ありません)<<サッカー初めての子たちに楽しく基礎を教えるメニューが知りたい<お父さんコーチからの質問>こんにちは。小6の子たちを担当しています。11人制への移行段階での指導についてご相談です。私が指導しているのは地域の少年団で、ほとんどの子が同じ中学で部活に進みます。サッカーを続ける子は中学に入ると11人制になるわけで、今のうちから準備をさせたいと思っているのですが、やはり8人制とは勝手が違うのでなかなかうまくいきません。どうしても中盤にスペースができてしまったり、ボールの受けどころなど自分でスペースを見つけることや、スペースを作る動きが難しいようです。11人制のプレーを理解させるためのおすすめの指導などはありますか。<池上さんのアドバイス>ご相談、ありがとうございます。まず最初に申し上げておきたいことがあります。8人制から11人制というように、人数が増えるとサッカーの理解が変わるわけではありません。幅と深さを理解して相手を崩していく、もしくは守る。そこは同じです。■8人制のうちから理解させてほしいこと攻撃にしても、守備にしても、コートのサイズが大きくなれば、動く距離は変わります。パスの長さも変わる。当然のことです。ただ、その成り立ちをきちんとわかっていれば、あとは距離に対応するだけのことです。逆に言えば、8人制のところでちゃんと理解させなくてはいけませんよ、ということです。例えばドイツは、11人の前に9人制でプレーさせます。コートの大きさも、縦はペナルティエリアのライン前まで両方のゴールを出し、サイド(横)も狭くします。コートは11人制とそんなには変わらないうえに、9から11と2人しか増えないので、やるべきことはほぼ変わりません。パスもちゃんとつながります。9人制の前は7人なので、そこも同じようにスムーズです。■味方同士の距離感を保つようにトレーニングする一方の日本では、少年サッカーの8人制が大人のコートの半分サイズになります。大人コートで2面とれて、ゴールも小さいわけです。ところが、11人制になると、コートのサイズが倍になる。練習の中で成り立ちを理解しプレーしてきたのなら問題ないのですが、クローズドスキルが多くなってしまうような練習が多かったのなら、なかなかうまくいかないかもしれません。そうならないためには、8人制で味方同士の距離感を保つようトレーニングする必要があります。例えば、守備。サッカーの世界でいう「アコーディオン」のように、味方との距離が長くなったり、短くなったりするのはよくありません。選手間の距離が伸びるとスペースができて、そこを相手に使われてしまいます。つまり、コンパクトにポジションを取る。これを少年の間に身につけてもらわなくてはいけません。逆に、攻撃では広がって、スペースを生むことが需要です。幅と深さを理解させてあげることです。攻撃では広がって、ボールを奪われたら広がらずにコンパクトに守る。これを8人制でも伝えていきます。■今のやり方は中学に行く前の「塾」のようなもの。先取授業する必要なしただ、いただいたご相談では、もっと大きな問題があるような気がします。11人制に備える練習が、中学に行く前の塾のように見えるのです。そもそも、子どもたちの成長は時間がかかるし、個々でその速度も異なります。大人はそこを理解したうえで、子どもが自由に自分から様々なものを学び取っていく環境を用意するのが最も重要な役割です。どう考えたほうがいいと思う?などと、常に問いかける。例えば試合で、スペースが生まれてしまい、そこを使われて失点したり、ゲームを支配される。そんな体験はすべきです。そのような失敗をしなければ、自分でどうしたらいいかを考える経験ができません。すべて一から十まで教え込んで、成功させるばかりでは、彼らが知らないことがでてきたときに、どうしたらいいかを考える力を養えません。転ばぬ先の杖を立てては、足腰が鍛えられないのです。まずは、6年生ならば、8人制のサイズの幅と深さのトレーニングをやってください。賢くサッカーをする仕組みを理解することが重要です。例えば左サイドにボールが動いたら、相手も警戒する。そうなれば、右に大きなスペースが開く可能性がある。そういう理解を6年生はできるようにしてください。狭いところから広いところに出て行く。守る側もそれが常識で狭い側はタイトに寄せる。広いスペースの選手はぴったりはつかず、間合いを開けておく。そうすれば、サイドチェンジされても、スライドして広くカバーできます。次のステージで困らないように、とご相談者様は考えておられるようですが、次のステージでやるべきことを前もってマスターする必要はありません。今の学年でやるべきことがちゃんとして入れば問題ないのです。■大人が形ばかり追いかけると、選手たちの自分で解決する力が育たない私がジェフの中学生をみたとき、中1は小学生のサッカーしかできなくて当たり前だと話しました。入ったらすぐに2年と試合をします。ジェフに受かった子はみんな小学生時代はエース級の選手なので意気揚々と臨みますが、5分で3点取られたりしました。ここで初めて「中学生のサッカーは小学生と違うよ。これからうまくなろう」と話すのです。ペップ・グアルディオラ(イングランドマンチェスターシティの監督)が2017-18のマンチェスターシティーで成功させた「5レーン理論」という方法があります。縦に5つのレーン、横に3つのゾーンを分けて説明しています。これはチーム戦術としてみんなが理解して、それぞれがこうしよう、ああしようと考えながらプレーするひとつのベースとなる考え方です。これをやったら上手くなるわけではありません。それなのに、日本の指導者には、言葉ばかりにとらわれてしまいがちです。大人が形ばかり追いかけると、選手たちに自分で解決する力が育ちません。基本的な指針はあっても、違う解決法を選手が取るかもしれない。それはそれでいいのです。選手がその時にやったことが、その選手の「正解」だと受け取ってください。それなのに、日本ではコーチが「さっき言ったでしょ」と自分の考えや見方、とらえ方を押し付けてしまう傾向があります。あくまでも、選手が選択したことが「そのときの答え」なのだ、トレーニングは選手を自立させるためにある、ということを覚えておいてください。池上正さんの指導を動画で見る>>■中学に備えて5号球を使うのもリスクがある(写真は少年サッカーのイメージです。ご相談者様、ご相談内容とは関係ありません)この季節、6年生のコーチの方々に「もうすぐ11人制になりますが、なにかやったほうがいいですかね?」とよく尋ねられます。「ちゃんと育てておけば、8人が11人になろうが問題ないですよ」と私は答えます。加えて、この時期、6年生の練習や試合でいきなり5号球を使い出す指導者がいます。これもいいとは思いません。日本はオスグッドになる子が多いです。無理させず、中学生になったら蹴ればいいんだよと伝えましょう。池上正さんの指導を動画で見る>>池上正(いけがみ・ただし)「NPO法人I.K.O市原アカデミー」代表。大阪体育大学卒業後、大阪YMCAでサッカーを中心に幼児や小学生を指導。2002年、ジェフユナイテッド市原・千葉に育成普及部コーチとして加入。幼稚園、小学校などを巡回指導する「サッカーおとどけ隊」隊長として、千葉市・市原市を中心に年間190か所で延べ40万人の子どもたちを指導した。12年より16年シーズンまで、京都サンガF.C.で育成・普及部部長などを歴任。京都府内でも出前授業「つながり隊」を行い10万人を指導。ベストセラー『サッカーで子どもがぐんぐん伸びる11の魔法』(小学館)、『サッカーで子どもの力をひきだす池上さんのことば辞典』(監修/カンゼン)、『伸ばしたいなら離れなさいサッカーで考える子どもに育てる11の魔法』など多くの著書がある。
2021年02月12日元スペイン代表で2018年からは日本のヴィッセル神戸でプレーし昨年1月の天皇杯を最後に現役を引退したダビド・ビジャさんが、この度、著書『ダビド・ビジャのサッカー講座試合で活躍するために大切な11科目』の発売を記念し、オンラインセミナーを開催しました。引退後はプロ選手としての経験を生かした『DV7サッカーアカデミー』を設立。現在は世界7カ国で展開し、2020年から日本でも始動しています。今回のトークショーでは、これまでの選手としての経験とこのプロジェクトで日本の子どもたちと関わって感じていること、選手を伸ばすために大事なことや、親とのかかわり方など日本のサッカーキッズ&保護者に向け、 サッカーがうまくなるために大切なことを、 技術と心得の両面から率直なお話をきかせてくれました。オンラインで日本の子どもたち、保護者へのアドバイスを送ってくれたダビド・ビジャさん■身体が小さくても焦らなかったのは両親の言葉のおかげ小さいころからサッカーが大好きで、家の中でもボールや紙を丸めてボール代わりにしたものを蹴って食器を割ったりして母親に叱られたこともあるというビジャさん。子どもの頃から周囲より身体が小さかったものの、所属していたチームではずっとゴールを量産し、エースだと思っていたといいます。しかし、13~14歳ごろになると周囲が大きくなりフィジカル面で不利になり、モチベーションが下がったこともあるそう。そんな時に救ってくれたのがご両親の言葉だったといいます。「小さい選手がいつまでも小さいわけではない」と常に声をかけてくれて、焦りを感じないようにしてくれたのだそうです。それで「小さくても自分がほかの選手に勝てるものは何か」と考えてプレーするようになり、自信をつけていったのだそう。海外のクラブチームでは、毎年同じメンバーが昇格するわけではなく、何人かはふるいにかけられチームを去ることが珍しくありません。競争が激しくなるほど選手は孤独を感じるのだと語ってくれました。そして「親はグラウンドの外で支えてあげて。頑張る子どもへ愛情をかけてほしい」と保護者へのアドバイスを送りました。また、保護者がサッカーの内容に口を出すと子どもが混乱することにも言及。「指導者はサッカーを教えるためのライセンスを持ち勉強している。親はコーチより上の立場で要求しないでいただきたい」と、コーチへのリスペクトを持ってほしいと参加者たちに訴えかけました。■サッカーは自分だけではできない。ボールを持ってない時間が大事イベントの終盤では読者から事前に募集した質問に答える時間も。その中には技術に関する質問もあり、「ドリブル、パスなど個人技を身につけるためにはどうしたらいいか」という選手からの質問には「ドリブルもパスも大切なトレーニングだけど、それができるからといって試合で活躍できるかは別。試合の中ではボールを持つのは2分、あとの88分はボールがないところのアクションです。メディアではボールを持った時のアクションがフォーカスされるので、選手も父母もそれが大事だと思いがちですが、実際は88分のほうが大事だと気付くことができるか。仲間や相手の位置、ボールとの関係など複合的な動きが重要なのです」とアドバイスを送りました。FWをしている選手からの「裏に抜けるタイミングが難しい」という悩みには、「裏に抜ける動きは自分だけでどうこうできる訳ではないので一番難しい。チームメイトのパスのタイミング、相手DFの動きがある。多くの失敗を繰り返してタイミングを見つけ出すものなのです。そのためにはチームでの練習が大事です」と、サッカーは個人技の繰り返しではなく、チームでの連携が何より大事なのだと語りました。■日本の子どもは個人プレーに走りやすい日本の子どもたちの印象については、ビジャさんだけでなくこの日参加した「DV7サッカーアカデミー」のアレックスコーチも「勤勉でまじめ。指導者の指示をインプットして練習で出そうとする」と称賛。まじめで勤勉、言われたことはしっかりできるけれど、「遊び」がなく相手に読まれやすいのも日本のサッカーの課題とも言えますが、アレックスコーチは「チームプレーの理解が低く個人プレーに走りがち」なのも課題だと指摘。ビジャさんも言っているように、試合の中では一人がボールを持つのは90分中2分程度とすれば、チームメイトと連携して動ける思考や動きを身につけるよう意識するのが大事なのです。また、試合を観ることもサッカー上達につながるので、家でできるサッカー上達の習慣としてあらゆる試合をたくさん観ることだとビジャさん。チームごとに特長があるので「このプレーすごい」「このプレーは自分もできるかも」というプレーを見つけてほしい、試合を見る習慣がある選手は強い。と選手たちにアドバイスを送りました。■夢は子ども自身が叶えること。親はサポートを子ども時代にたくさん両親にサポートしてもらい感謝しているというビジャさん。現在は自身も父親として子どもをどうサポートするか、という質問には「自分は子ども時代に幸せだったので、自分の父母のようになりたい。『子ども時代、幸せだった』と思っているようにしたい」と自身のスタンスを語りました。最後に日本の保護者に向けて、日本の選手の多くが世界で活躍できるポテンシャルがあることや、子どもたちの夢は子ども自身が叶えるものであり、親は(手を出しすぎず)サポートする存在であってほしいことなどのアドバイスを送り、コロナ感染が落ちついたらまた日本に行って子どもたちと会いたい。との希望を語ってイベントを終了しました。送迎などの行動におけるサポートだけでなく、フィジカル差で負けてモチベーションが落ちたり、競争の中で孤独を感じたりしながらも大好きなサッカーを頑張り続けるわが子の心をサポートし続けたビジャさんのご両親のスタンスは、保護者の皆さんも参考にしたいものではないでしょうか。
2021年02月12日フル出場の子は毎回同じ。高学年で試合経験をほとんど積めていない6年生。どうすれば試合に出れるか本人がコーチに聞いて、アドバイス通り努力しても報われず。最近では「辞めたい」と口にしたことも。春からは、今のチームの指導者が中学生のクラブを創設するけど、息子は構想に入っていない。だから別のクラブの体験に参加したら、指導者からの無視が始まった。もうすぐ卒業だし今更波風立てたくないけど、傷ついた息子をどう支えればいい?とのご相談。今回もスポーツと教育のジャーナリストであり、先輩サッカーママでもある島沢優子さんが、15年以上の取材で得た知見をもとにアドバイスを授けますので参考にしてください。(文:島沢優子)(写真はご質問者様及びご質問内容とは関係ありません)<<仲間からの暴言があるうえ試合に出られない5年生。移籍したほうがいいのか問題<サッカーママからのご相談>こんにちわ。もうすぐ卒団する6年の男児ですが、最近初めてサッカーを辞めたい、と口にしました。中学年の頃には試合もよくでていて、生き生きと頑張っていましたが、高学年になり出場時間が減り酷いときは2分位になりました。フル出場している子は毎回決まっていて、高学年になり試合経験というものをほとんど経験させてもらえません。練習時には、次の試合ではお前を......とか次、チャンスあるぞ、などと言われ子どもも「次」に期待し毎日トレーニングに明け暮れていましたが、結局「次」はありませんでした。そして今、息子は指導者に無視されています。以前、息子はどうすれば試合に出れるのか指導者に聞いたそうです。その時はボールを持っていないときの動き等のアドバイスをもらい、意識し取り組んでいました。しかし、出場時間は短くなるばかりか出れないという現実。そして、指導者が中学でクラブチームを設立するそうで今のスタメン組をそのまま引き寄せ指導したい考えだと知って、構想に入っていないであろう息子は最近、別のクラブチームの体験練習に参加したのですが、その事が気に入らなかったようで、あからさまな無視が始まりました。公式戦をあと一つ残している今、親としては荒波を立てたくない一方、子どもが不憫でなりません。息子にはあなたは何も悪いことはしてないのだから、堂々としていていいんだよ、と言っていますが、息子はそういった態度を指導者にとられたショックが大きく、サッカー自体に拒絶反応を示し始めています。以前から「自分の指導が気に入らないなら辞めて結構」というスタンスで親の話など全てクレーム扱いで、何を言っても改善される兆しはありません。早く親子で次のステップへ移行したいと思っていますが、本当に息子がサッカーを辞めてしまうのではないかと不安です。とりとめのないご相談になってしまいましたが、自信を失っている息子をどう支えればいいのかアドバイスをいただけませんでしょうか。<島沢さんのアドバイス>ご相談のメールをいただきありがとうございます。なかなか難しい環境に身を置く息子さんを救いたいというお母さんのお気持ちが、相談文から伝わってきました。まず最初にお母さんにお伝えしたいのは、息子さんにイニシアチブ(主導権)をとらせること。それが何よりも重要です。■主体性のある子なので、好きにさせましょうご相談文を読むと、息子さんは自分から「どうしたら試合に出られますか?」とコーチに尋ねるなどしており、決して主体性のない子どもではなさそうです。自分で考えて自分で決める力を持っているように感じます。したがって、いま息子さんが心の底からサッカーをやめたいというのであれば好きにさせましょう。ただ、今のクラブの練習に行きたくない、活動に参加したくないだけなのであれば、「無理にいかなくていいよ」と退団させて、中学になってサッカーをする場所を探せばいいのです。今もう2月になり、次のサッカーキャリアが始まるまではわずか2か月。サッカーをしなくても、他のことをして体を動かしてもいいですね。そうではなく、本当にやめたいというのであれば「じゃあ、中学になって他に何か見つけられるといいね」と言ってあげてください。「何をしてもいいよ。君が好きなように、やりたいようにしていいよ。お母さんはすべて支持するよ」と言ってあげましょう。■まずはわが子の気持ちに寄り添うこと息子さんが自分で動き出すために、お母さんが考えることを三つアドバイスします。ひとつめは、息子さんの気持ちに寄り添うことです。別のクラブチームの体験練習に参加したことは、何も悪いことではありません。現在所属するクラブのコーチが立ち上げるチームに進んだとしても、試合に出るチャンスはない確率が大きい。そう息子さん自身が判断したことは賢明だし、何より彼には選ぶ権利があります。ところが、コーチは「その事が気に入らなかったようで、あからさまな無視」が始まったわけです。最も自分を認めてもらいたい「コーチ」という対象に、無視をされる。このことの辛さをまずお母さんは心から理解しなくてはいけないと思います。どれだけ辛いか、どれだけ苦しいか。そんな思いを中高の部活動で味わった生徒が自死する案件は、近年もなくなりません。私はそういった案件をいくつも取材してきましたが、彼ら自身、息子さん同様最も認めてもらいたい、褒めてほしい相手に無視されたり、不当な扱いを受けたことに絶望し命を絶っています。もちろん息子さんにその危険性があるよなどと、脅したいわけではありません。「あなたは何も悪いことはしてないのだから、堂々としていていい」という言葉が息子さんを追い詰めないでしょうか。■今回のケースは親が介入してよい。子ども一人に戦わせないこと二つめは、可能であればコーチと話をすることをお勧めします。「公式戦をあと一つ残している今、親としては荒波を立てたくない」のであれば、堂々としていろと息子さん一人に戦わせてはいけないと思います。息子さんと話し合って、息子さんが精神的に活動を続けるのがきついのであれば、すでに申し上げたようにクラブは退団する。その説明をお母さんがしてもいいかと思います。お母さんが何かクレームを発したくらいではコーチの方の考えは変わらないでしょうが、子どもを無視する行為は今後やめてほしいと告げたほうが良さそうです。子どもにもおとな同様に人権があるのですから。不当な扱いをされたときに救ってあげるのは、保護者しかいません。無論、コーチ側の言い分はあるかもしれません。が、お母さんの書いたことがすべて真実であれば、他クラブの体験に行ったことで大事な選手を無視したりする指導者に、サッカーコーチを名乗る資格はないと私は考えます。この大人の理不尽を、わが子に背負わせるのはあまりに酷です。■頑張れ、というだけが親の役目ではない。傷ついているわが子の心のケアを!(写真はご質問者様及びご質問内容とは関係ありません)三つめは、息子さんのこころのケアをお母さんなりにしてあげてください。今、彼はとても傷ついています。苦難をはねのける強さも重要ですが、理不尽に立ち向かえと命じるのはわけが違います。弱い自分を乗り越えるとか、ある意味「正当な苦難」を克服する経験は後でいくらでもできるはずです。彼やお母さんの力でどうにもならないことにエネルギーを費やすのは無駄なことです。闘え、頑張れというだけが親の役目ではありません。戦う相手や、その苦難が乗り越える価値のあるものかを一緒に子どもと考える必要があります。最後に、私からお母さんへのエールです。何も悪いことはしてないのだから、堂々としていてください。島沢優子(しまざわ・ゆうこ)スポーツ・教育ジャーナリスト。日本文藝家協会会員(理事推薦)1男1女の母。筑波大学卒業後、英国留学など経て日刊スポーツ新聞社東京本社勤務。1998年よりフリー。『AERA』や『東洋経済オンライン』などで、スポーツ、教育関係等をフィールドに執筆。主に、サッカーを始めスポーツの育成に詳しい。『桜宮高校バスケット部体罰事件の真実そして少年は死ぬことに決めた』(朝日新聞出版)『左手一本のシュート夢あればこそ!脳出血、右半身麻痺からの復活』『王者の食ノート~スポーツ栄養士虎石真弥、勝利への挑戦』など著書多数。『サッカーで子どもをぐんぐん伸ばす11の魔法』(池上正著/いずれも小学館)ブラック部活の問題を提起した『部活があぶない』(講談社現代新書)、錦織圭を育てたコーチの育成術を記した『戦略脳を育てるテニス・グランドスラムへの翼』(柏井正樹著/大修館書店)など企画構成も担当。指導者や保護者向けの講演も多い。最新刊は『世界を獲るノートアスリートのインテリジェンス』(カンゼン)。
2021年02月10日30年近くに渡ってスペインで活動し、サッカー指導の現場で奮闘してきた佐伯夕利子さん。スペインの指導ライセンスレベル3(日本のS級に相当)を取得し、アトレティコ・マドリードの女子チームやビジャレアルのアカデミーで指導を行ってきました。2020年よりJリーグの常勤理事となり、現在は日本を拠点に活動(11/30-2/1まで一時帰国中)しています。選手の育成について多くの知見を持つ佐伯さんに「子どもたちを伸ばすために、指導者が変わらなければいけない理由」をテーマにインタビューを行いました。第2回はビジャレアルが行った育成改革の内容に迫っていきます。(取材・文鈴木智之)ビジャレアルが行った育成改革改革の第一歩は、指導者が自分を知ることから始まったそう(写真はサッカー少年のイメージ)<<第1回:1人ひとりの個性を見て個別最適化がチーム強化に。スペインの名門ビジャレアルが育成改革に取り組んだキッカケ■育成はすぐに結果が出るものではない。「今」だけ見ていて良いのか――サカイクでは、「子どもを変えるには、大人が変わらなければいけない」というメッセージを打ち出しています。ビジャレアルの育成改革は、まさに大人(指導者)が変わることで、子どもたちの変革をうながしたそうですが、どのような取り組みをしたのでしょうか?それまでの私達はサッカークラブの指導者なので、普段からサッカーの話ばかりをしていました。どんなシステムがいいのか、サイドバックの選手に求める要素は...といった形です。あるとき、ビジャレアルの育成改革を推進したコーチに「そんな話を何十年もしてきて、これから先の何十年も続けていくのか?」と言われたときに、はっとしたのです。指導者として、それはあまりにも貧しいのではないか。そうではなくて、もっと広い視野で選手を育てるべきなのではないかと。ご存知のとおり、育成はすぐに結果が出るものではありません。目の前にいる選手が8年後、10年後にこうなっていてほしいという理想像に向かって、進んでいかなくてはなりません。8年後、10年後に、今いるコーチが引き続き、ビジャレアルにいるとは限りませんが、選手たちの将来にとってプラスになるのであれば、より良いアプローチを模索するべきだということで、まずは指導者に対して様々な取り組みが行われました。■選手には「自分で考える」を求めていたのに、指導者が具体的に指示しすぎていた――どのようなことが行われたのでしょうか?改革の第一歩は、指導者が自分を知ることから始まりました。「理想の選手を育成するにあたって、それに適した指導を、私達指導者が行っているか」に目を向けました。ビジャレアルアカデミーが掲げる理想の選手像は、自ら積極的に考えて、判断して実行できる選手であり、試合中、変わっていく状況に対して適応できる能力を備えた選手です。そう言っている割には、攻撃パターンを3つぐらい作って、それをただ繰り返すドリルのようなトレーニングをさせていたり、「自分で考えてプレーしよう」と言いながら、指導者が「右に蹴れ、左に蹴れ、いまのは違うだろ」と言い続けていました。――多くの指導者にとって、耳の痛い話ですね。ビジャレアルアカデミーでは、私達指導者がどのような振る舞いをしているのか、それを自分たちの目で確かめるところから始めました。具体的には、アクションカメラの「Go Pro」をつけて指導の現場に立ち、いつもどおりトレーニングをします。「Go Pro」は自分の目線と同じなので、選手の反応が撮影されています。その映像を見ると、多くの発見がありました。練習前後に選手を集めて、指導者がトレーニングについての話をするのですが、いつもうなずいて聞いているように見えたA君が、実は聞いている素振りをしているだけだったり、聞いていなさそうに見えたB君が、話を理解しようとしていたりと、指導者が持つ印象と映像に映っている事実が異なっていました。その理由は、指導者が選手にするラベリングにあります。指導者のレッテルや主観が、事実を違うように映していたのです。――映像で見るからこそ、多くの情報を客観的に得ることができるわけですね。もう一つはハンディカムで指導者自身を映し、トレーニング中や試合中にどのような指示出し、振る舞いをしているかを、コーチングスタッフ全員でチェックし、ディスカッションをする場を設けました。これは週に1回、2時間の学びの場なのですが、自分の指導の様子がみんなの前で映し出され、選手とどのようなコミュニケーションをとっているか、どのような言葉を使っているかなどにフォーカスし、ディベートをしました。■そのコーチングは指導者が考える「正解」では?――そこでは、どのようなディスカションがなされるのでしょうか?映像には試合の様子は映っておらず、指導者の姿だけが収められています。そこで試合中、私が選手のあるプレーに対して「いまのはパスじゃなくて、ロングキックでしょ!」と言ったとします。すると進行役が映像を止めて、「いまのコミュニケーションについて、他の指導者はどう思う?」と意見を聞いていきます。そうやって、指導者の振る舞いを一つひとつ検証していくのです。――指導者からするとハードな学びの場ですね。はい。たとえば他のコーチから「この前のスタッフミーティングで、『自主的に物事を考えられる選手になってほしい』という話をしたよね。でも『ロングキックでしょ!』というコーチングは指導者であるあなたが考える正解であって、パスをした選手の判断や選択肢を否定することになっている。結局、あなたが言うとおりのプレーをしないと、ネガティブなフィードバックをされる。つまり、ダメな選手と評価されるわけだ。それは私達の目指す方向性ではないし、言っている事とやっている事が違うよね」といったフィードバックを受けます。それを1年間繰り返しました。■20年の指導歴で初めて自分が成長できる機会だった――指導者のみなさんは、そのフィードバックをすんなりと受け入れることができたのでしょうか?大人になると、誰しも自分をさらけ出すのは嫌ですよね。自分の指導の様子を撮影されて、みんなの前でフィードバックを受けるのは居心地が悪く、怒りや恥ずかしさなど、いろいろな感情が混ざり合います。私達にとっては、すごく難しい時間であり空間でしたが、その経験をしたことで、「使用前、使用後」と呼べるような変化がありました。中にはふてくされて、自分の殻に閉じこもってしまった人もいて、学びという面では残念なことではありますが、そこまで踏み込んで、指導者を改革しようとしてくれたビジャレアルというクラブは勇気があるなと感じました。――佐伯さんご自身は、それらの取り組みによる変化をどのように感じたのでしょうか?ビジャレアルの育成改革がスタートしたのが、2014年です。私はそれまで、20年ほど指導者をしていましたが、これまでの20年間、何をしていたのだろうと思うぐらい、使用前と使用後の変化を感じました。「選手を育成する」ということについて、間違えてとらえていたのだと気がつくことができたのです。時間が経てば経つほどその想いが強くなり、自分の中で整理できなかった思考が、緩やかなスピードではありますが固まってきました。それまで、選手に対するアプローチに違和感を覚えたことはありませんでした。自分のやっていることに間違いはないと思っていましたし、周りから疑問を投げかけられることもありませんでした。つまり20年以上の指導歴で、自分が成長する機会は一度もなかったのです。(第3回に続く)<<第1回を読む佐伯夕利子(さえき・ゆりこ)1973 年10月6日生まれ/イラン生まれ92 年にスペインに移住し、93 年から指導者の道を歩み始める。レアル・マドリードのスクールをはじめ、スペイン男子3 部リーグ、アトレティコ・マドリッド女子チームなどで監督経験を積む。08 年からビジャレアルに在籍し、男子U19のコーチ、レディースの監督、女子部統括責任者などを歴任。18 年に公益社団法人日本プロサッカーリーグの特任理事(非常勤)に選任され、2020年3月からJリーグ常勤理事。
2021年02月09日サカイクがお届けする『親子で遊びながらうまくなる!サッカー3分間トレーニング』。今回は、初心者に多い「パスを受けるときに浮き球をインサイド(足の内側)でコントロールできない」という悩みを改善するトレーニングを紹介します。ボールを止める、蹴る、というサッカーの基本中の基本の一つ。浮き球はロングパスなどで使うふんわりとした軌道で滞空時間の長い球。サッカーの動きの中でよく使う「浮き球」のコントロールは、パスを受けるときなど試合の中でもよく使う動作なので基本をしっかり身につけましょう。このトレーニングは遊びを通して楽しみながら行うことで、パスを受けるときに行う「浮き球」を足の内側でコントロールする方法をを身につけることができます。ぜひ親子でチャレンジしてみてください!【やり方】1.親がボールを持ち離れて立つ(5メートルくらい)2.親が手で持っているボールを子どもは手でタッチする3.タッチしたら子どもはバックステップで後ろに下がり、親は子どもに向けてボールを投げる4.子どもはそのボールをインサイドでコントロールしてドリブルして戻る【ポイント】・ボールをよく見て落下地点を予測しながら動く・ボールがバウンドする瞬間をインサイドで抑えるようにコントロール・つま先を外側にして固定する・リラックスして行うこと・慌てずゆっくり、慣れてきたらリズム良く行う・失敗しても気にせず、親子で楽しみながら行う次回もサッカー初心者のお悩みに応えるトレーニングをお届けしますのでお楽しみに!
2021年02月08日あなたのお子さん、疲れていませんか?毎日しっかり疲労回復できていますか?子どもは元気なもの、学校やサッカーで疲れても一晩眠ればシャキッと元気に起きてくるもの。と思っている親御さんも多いかもしれません。ですが、学校にサッカーに、ほかの習い事や友達との遊ぶ時間など何かと忙しい現代の子どもたち。睡眠時間はしっかりとっているつもりでも、じつは良質な睡眠がとれていなくてしっかり疲労回復していない可能性も。疲れを回復させ良質な睡眠をとるために入浴は欠かせませんが、毎日の習慣とはいえ正しく入浴ができていない人も多いようです。入浴は疲労回復はもちろん免疫力アップにも効果があります。良質な睡眠につなげ、疲労を回復するための入浴について日本健康開発財団の温泉医科学研究所所長で東京都市大学人間科学部教授の医師・博士の早坂信哉さんにお話しを聞きました。(取材・文:前田陽子)入浴は疲労回復効果があります(写真は2017年夏のサカイクキャンプより)■入浴は疲労回復に効く!血流が良くなることで免疫力アップにもサッカーをはじめ、スポーツをする人たちの疲労は筋肉系の損傷が要因のことが多いと思います。筋肉痛の原因は疲労物質がたまることと、筋肉が細かく断裂して筋肉に傷がつくことで、いずれの場合も「入浴によって改善が促進される」と早坂さんは言います。疲労回復には必要なのは、正しい入浴と質のいい睡眠です。早坂さんはどちらかだけでは効果が減ってしまうので、セットで考えるのが良いと教えてくれました。湯船につかり身体を温めることで血管が拡げられ、血流が良くなります。血流が良くなることで疲労回復のために必要な酸素や栄養分を運んだり、いらなくなった老廃物を除去したりしてくれるのだそうです。血流を良くするために一番簡単な方法が入浴なのです。さらに血流が良くなると、免疫力もアップすると早坂さんは言います。骨髄などで作られた免疫細胞は、体内をパトロールしリンパ節で働き、免疫細胞も血液の流れで移動するので、血流が良くなることは免疫力アップにとても大事なポイントなのだと教えてくれました。また、入浴によって唾液の中のIgAというウィルスをやっつける抗体が増えるという研究もあるのだそうです。浴室で湯気を吸うことによって鼻の中の線毛細胞の動きも活発になるのだとか。線毛細胞は異物を外に出すも働きをするので、ウィルスが侵入する入口に近い部分を強化できるというのは風邪などの予防に重要ということなのだそう。入浴のタイミングは、寝る1時間30分から2時間前がおすすめだそうです。睡眠に入るためには「体温を上げて、下げる」必要があり、それにかかる時間から逆算すると、1時間30分から2時間前という事になるのだとか。良い睡眠をとるために、ぜひ入浴のタイミングも意識してみてほしいものです。■良質な睡眠のためには室内温度も大事子どもたちを良質な睡眠にいざなうために大事なのは「まずは家を静かにすること。親がテレビを見ているのに子どもに寝なさいと言っても寝ないですよね」と早坂さん。家全体が寝るモードになることが必要で、そのためには、テレビや電気を消して静かに過ごすことが大事だとアドバイスをいただきました。さらに、室温を暑すぎず、寒すぎない温度を保つことも良質な睡眠のために重要なのだとか。「室温は18℃が目安です。冷えた空気を吸うと眠りは浅くなってしまうので、いくら布団の中が温かくてもダメ。寝ている間に冷たい空気に触れると交感神経が刺激されてしまい眠りが浅くなると考えられます。寒いと睡眠の質が悪くなるので、ヒーターなどを使って室温を18℃以上にキープしましょう」また、眠りに入るためには、入浴によって温まった体温が下がることが必要ですので、電気毛布などを使うのも良くないのだそうです。電気毛布を使用すると体温が下がりにくくなってしまうからなのだそう。寒くて寝付けないので布団を温めたいなら、湯たんぽを使うのがおすすめだと早坂さんは言います。湯たんぽは自然に冷えていくので入眠の妨げにならないためなのだそうです。足が冷たいからと靴下を履いて寝る方もいらっしゃると思いますが、布団に入るときには脱いだ方が良いそうです。手の平や足裏から放熱することで、体温が下がっていくことで入眠するので、履いたままだと足先から熱が放出されず、良質な睡眠がとれないためです。足元が冷たいのが気になる方は、湯たんぽなどでふとんの表面を温めて、靴下を脱いでふとんに入りましょう。<疲労回復のポイント>・入浴と睡眠のセットで疲労は回復する・入浴は寝る1時間30分から2時間前に・寝室の温度は18℃以上を朝までキープ後編では、正しい入浴時間やサッカー少年たちにおすすめの入浴剤の効果などをお送りします。早坂信哉(はやさか・しんや)東京都市大学教授/ 博士(医学)、温泉療法専門医大学医学部卒業後、1998年より自治医科大学大学院医学研究科にて入浴に関する調査研究を開始。現在は東京都市大学人間科学部教授東京都市大学大学院総合理工学研究科教授、総合研究所子ども家庭福祉研究センター長を務める傍ら企業等との協働や講演活動も行っている。テレビ、雑誌など各種メディア出演も多数。著書に「たった1℃が体を変えるほんとうに健康になる入浴法」(KADOKAWA)、入浴検定 公式テキスト お風呂の「正しい入り方」(日本入浴協会)、「最高の入浴法~お風呂研究20年、3万人を調査した医師が考案」(大和書房)がある。
2021年02月04日理学療法士として病院に勤務、順天堂大学大学院にも所属し研究活動を行っており、自身も「お父さんコーチ」として、千葉県松戸市の少年団でコーチをしている臼井直人さん。「サッカーにおけるヘディングの累積曝露と慢性外傷性脳症に関する最近の知見」という論文を発表するなど、育成年代の子どもたちが、ケガなくサッカーを楽しむための知見を提供しています。今回は臼井さんに、ジュニア年代のケガで多い「シーバー病」と「腰椎分離症」を、どうすれば予防できるのかについて、話をうかがいました。(取材・文:鈴木智之)サッカー少年が抱える痛みで多い「かかとの痛み」の原因、昨今増えている子どもの腰痛の原因とは(写真は少年サッカーのイメージ)■かかとが痛くなる原因足のかかとに痛みや腫れが起きるのが「シーバー病」の特徴です。臼井さんはその原因を「遺伝的要因とオーバーユース(使いすぎ)、オーバーロード(高負荷がかかる)があります」と話します。「誰しも、赤ちゃんのときは扁平足です。その後、10歳頃までに足裏のアーチが形成されます。足専門のお医者さんによると、日本人は扁平足が多く、足裏にしっかりとしたアーチができていない状態で骨の成長が始まることが多いそうです。その結果、アキレス腱とくっついているふくらはぎの筋肉が硬くなっていきます」臼井さんはその状態を『真っ平らなスキー板』に例えます。「扁平足は真っ平らなスキー板を履いているのと同じで、その状態でスキージャンプをして着地したら、足に大きな衝撃がかかりますよね。それほど、足裏のアーチは重要なのですが、アーチができていない状態でたくさん走ったり、サッカーのようにスプリントを繰り返すと、かかとに対して局所的に大きな負荷がかかります」■足首、足指が使えるようにしようシーバー病はサッカーをしている子だけでなく、剣道や新体操にも多いそうです。「剣道や新体操になぜシーバー病が多いかというと、つま先で立つ時間が長いからです。サッカーも同じで、シュートを打つときに、足を下に向けてボールにインパクトしますよね。その瞬間、かかとに大きな負担がかかります。そのため、シーバー病になってしまった子は走ることだけでなく、強いシュートを打つことも控えた方がいいと思います」足首の可動性が低い子はシーバー病になりやすいので、臼井さんは「足首を柔らかくしておくことが必要で、足の指を使えるようになるのも大事」とアドバイスを送ります。■近年増えている子どもの腰痛、その理由は?近年は子どもの腰椎分離症が増えているそうで、臼井さんも理学療法の現場でよく経験をされたそうです。「最近は、腰椎分離症が若年化している印象があります。当初これには驚きました。成長期は骨が柔らかく、骨端が成長するための構造をしているので、血管が豊富で脆弱です。そこに局所的に高い負荷がかかると、分離症やシーバー病などのように、様々な部位が骨端症になってしまいます。分離症の原因としては猫背などの生活習慣、股関節の前の筋肉が硬いこと、さらにこれらの要因の影響で股関節や腹筋が上手に使えないことが挙げられます。」シュート練習のしすぎで局所的に負荷がかかり、腰椎分離症の引き金になることもあるそうです。「あとは反り腰ですね。走っている時に顎(あご)が上がってしまったり、シュートを打つときに顎を引けていないのは、腹筋を使えていない証拠です。そのため、反り腰や腹筋が使えていない子が、強くシュートを打つなど、負担の大きいスポーツ動作を繰り返し練習すると分離症になりやすいです」練習のしすぎでケガをするのは避けたいところです。ケガをするとサッカーができなくなるだけでなく、筋力や体力の減少につながります。「1週間の中で、自分の年齢以上の時間はプレーしない方がいい、というガイドラインが国際的にあります。例えば12歳なら、1週間に12時間以上はプレーしない方がいいわけです。ただし、それを超えることは珍しいので、オーバーユースというよりも、局所的に負荷がかかった状態で繰り返しスポーツの動作をすることが原因だと考えています」ほかにも「ひとつの運動を、1年のうち8か月以上するのはよくない」という国際的な認識もあるそうで、サッカーのキック動作を1年(12か月)繰り返すことで、成長途中の子どもの身体に局所的な負荷がかかり、痛みとなって表出するケースもあるそうです。■サッカー上達のポイント、股関節の可動域を広げるために日常で気を付けること股関節は体幹と協力して動く関節です。股関節の前部分が硬いと、腰椎分離症のリスクが高くなるだけでなく、同時にドリブルの時などのボディバランスにも関わります。この修正には、片膝立ちになり、股関節の前面を伸ばすストレッチが効果的です。また、リズミカルに深く大股歩きをするのも、ストレッチ効果だけでなく股関節と体幹の協調性が養われるのでオススメです。この時、深く踏み込んだ際は腰を反りすぎないように、ステップの際は太ももをへその高さまでしっかりと引き上げましょう。ポイントは、「動作中、常に顎を引いておく」、こうすることで、背筋と腹筋が刺激され腰に負担なく運動ができます。日常の中で楽しみながら行うには、鉄棒がいいそうです。「鉄棒の(空中)逆上がりや足掛け前回りなどをすると、腹筋を使うので良いトレーニングになります。反り腰だとできないので、学校や公園の鉄棒を使ってがんばってみてください」■腹筋が使えないと太ももの付け根の痛みにも......股関節が硬いと、腰に負担がかかります。お風呂上がりなど身体が温まっているときに、テレビを見ながらルーティンとしてするのもおすすめです。「ストレッチをして股関節の前面を伸ばすことは、毎日取り組んで欲しいです。腹筋が使えないと、大腿直筋付着部炎などにもなりやすいので、ぜひストレッチに取り組んでみてください」姿勢を意識して生活し、日々のストレッチや身体を上手に大きく使う練習をすることで、ケガをしにくい身体になります。それが結果として、サッカーがうまくなることにもつながるので、ぜひトライしてみましょう!臼井直人(うすい・なおと)理学療法士・腎臓リハビリテーション指導士<所属>医療法人社団嬉泉会 嬉泉病院 リハビリテーション科 科長順天堂大学 大学院 医学研究科 腎臓内科学所属の嬉泉病院 リハビリテーション科では、腎臓病患者のフレイルや、心肺機能と自律神経障害、リハビリテーションなどの臨床研究に取り組んでいる。学会学術集会では優秀賞などを受賞、その他、論文・著書・学会発表など多数2020年9月には論文「サッカーにおけるヘディングの累積曝露と慢性外傷性脳症に関する最近の知見」を発表「サッカーにおけるヘディングの累積曝露と慢性外傷性脳症に関する最近の知見」はこちらで閲覧できます>>
2021年02月03日1992年よりスペインで暮らし、サッカー指導の現場で奮闘してきた佐伯夕利子さん。2003年には日本人女性初となる、スペインの指導ライセンスレベル3(日本のS級に相当)を取得。アトレティコ・マドリードの女子チームやビジャレアルのアカデミーで指導を行ってきました。2018年にJリーグの特任理事に選任されると、2020年に常勤理事となり、スペインより(11/30~2/1まで一時帰国中)帰国することになりました。育成について多くの知見を持つ佐伯さんに「子どもたちを伸ばすために、指導者が変わらなければいけない理由」をテーマにインタビューを行いました。ビジャレアルの育成改革を中心とした、濃密なインタビューを4回に渡ってお届けします。(取材・文鈴木智之)育成の名門ビジャレアルが「ピッチ外」という育成で一番大変な面に目を向けるようになったキッカケとは(写真はサッカー少年のイメージ)■小中学生で親元を離れるのは良いことなのか――佐伯さんが所属していたビジャレアルは、育成に定評のあるクラブです。スペインの年代別代表に選手を輩出し、トップチームにも多数の選手を送り込んでいます。育成に実績のあるクラブが、なぜ改革をしようと決断したのでしょうか?私が所属していたビジャレアルが、アカデミーの指導改革を行ったのが、2014年です。ビジャレアルはご存知のとおり、育成に特化してクラブを運営してきました。アカデミーからトップチームへと選手が昇格し、クラブとしても欧州チャンピオンズリーグなどで上位に食い込む中で、国内外から評価を得るようになりました。ビジャレアルはスペイン全土から選手をスカウトし、寮に入れて育成していきます。一番下は小学6年生です。小学生、中学生という多感な時期に、親元を離れて生活するのが良いことなのか。まずそこに葛藤がありました。スペインは地域性が色濃い国です。ビジャレアルはバレンシア州にあるのですが「バレンシア語」といって、使う言葉も違います。――別の地域から来た子どもは、馴染むのが大変ですね。そうなんです。遠方から来た子達を地元の学校に入れても、授業がバレンシア語なので、何を言っているかわからない。そのため、学校に馴染むことができないといった問題がありました。そのような経緯があり、(小学生年代で越境させる子はほとんどいなくなりました)。やはり、多感な時期は親元で生活するのがいいだろうという結論に達したのです。このように様々なトライアンドエラーを繰り返しながら、選手の育成をしてきました。寮生活をしている子は100人ほどいますが、それだけの数がいると、人間性の部分での指導、アプローチが行き届かないこともあります。そこであるとき、気がついたのです。「私達はプロクラブの指導者と名乗っておきながら、グラウンドの中で行われることだけを指導しているのではないか」と。やれ4-4-2だ4-3-3だという話ばかりで、グラウンドを一歩離れた選手の姿に、どれだけ関心を持って指導していたのだろうかと省みたのです。■アカデミー生の90%以上はプロになれない――ヨーロッパのトップクラブのアカデミーが、そのような観点を持ったことは、非常に興味深いです。ビジャレアルのアカデミー生は"フットボールバブル"と呼ぶべき、恵まれた環境でサッカーに取り組んでいます。全額クラブ負担で衣食住のケアがされていて、寮には栄養士もランドリーサービスもあります。Tシャツにさえ、アイロンをかけてもらえる環境です。学費はクラブが負担し、サッカーをすることで報酬も得ています。一般の中高生ではありえない環境ですが、その状態で長く育ってしまうと、いつしかそれが普通になってしまいます。そして18歳になると高級車を買ったり、iPhoneの最新版を持ったり、ブランド品を身につけたりという感覚になってしまうわけです。――まさにバブルですね。普通の中高生の感覚からかけ離れた状態をクラブが作っておきながら、彼ら全員がプロ選手になれるわけではありません。プロとして契約書にサインできる選手が、アカデミーの中で何人いるかと考えた時に、ビジャレアルのようなエリートアカデミー選手でも6~7%という数字が出てきました。つまりアカデミーの93%の選手は、プロとして生計を立てて行くことができないわけです。クラブもそれを理解しながら、選手に投資をしています。プロになった1%の子だけに目を向けて、その他の 99%の子達に責任を持たなくていいのでしょうか。「トップチームに何人昇格した」「他のクラブに高額で移籍させることができた」というのが私達の勲章ではなく、いま面倒を見ているアカデミーの選手達が、サッカー選手ではなくなった時、もっと言うとビジャレアルというバックグラウンドがなくなった時の姿に責任を持つことが、私達指導者の責務ではないかという反省が、改革のきっかけになりました。■ピッチ外という一番大変な面に向き合うようになったキッカケ――非常に考えさせられますね。ごくまれに、ユース出身の選手が犯罪を犯したというニュースを耳にします。でも、その段階ではもう自分たちのクラブの選手ではないので、大抵が知らん顔をします。「何年か前に、そんな選手いたよね」「ひどい人生を送っているね」と話をするだけで、彼らがビジャレアルのアカデミーにいた時、つまり成長段階で彼らの周りにいたのは、他ならぬ私達です。アカデミーを巣立っていった選手が、そのような状況になっていることに対して、「私達は責任を感じなくていいのだろうか?」といったことを指導者間でディベートし、内省を行いました。――責任感あふれる行動だと思います。指導者として勇気を持って、一番大変でエネルギーを吸い取られるところに、あえて向き合っていく。それがプロフェッショナルクラブの指導者と言えるのではないか。指導者とはそういう仕事なのではないかという考えに基づいて、改革をしました。たとえばAという選手がいたとして、彼は学校では生徒会長であり、彼女の前では恋人であり、クラブではおとなしいキャラクターだけど、親の前ではよく喋る子だったりと、様々な側面をもっています。しかし、私達は「サッカークラブにいるA君」という面でしか見ておらず、判断していませんでした。105m☓68mのグラウンドの中にいるときのA君に対してしか、アプローチしていなかったのです。――サッカー選手としてだけでなく、ひとりの人間として包括的に見ることの大切さに目を向けたのですね。サッカー選手としての価値を高めていくことが、最終的なクラブの目標としてはあるけれども、「価値とは何だろう?」と考えた時に、ボールを上手に扱えることなのか、速く走れることなのか、デュエルでたくさんボールを奪うことができることなのか......。そうではなく、もっと壮大なものではないだろうかという結論に達しました。つまり「人として豊かになれば、ピッチ上でのパフォーマンスにもプラスに現れてくるのではないか」ということです。なぜならばフットボールは、スピードやパワー、持久力など数値で測れるものを競う競技ではなく、様々なファクターの中から瞬時に判断し、たくさんの選択肢を持った中から、最適な行動を自分で選び取ることが必要なスポーツだからです。そこにスキルが加わり、クオリティの高いパフォーマンスに変わっていきます。■学校と連携して選手の日常を知る取り組み――どのようにして、サッカー以外の部分に目を向けていったのでしょうか?ひとつは学校との連携です。勉強に対してどのように取り組んでいるのか、学校ではどのような生徒なのか、先生との関係性はどうかなど、学校に対してクラブの指導者が積極的に関わるようになりました。いまでは学校の職員会議に、ビジャレアルのスタッフが参加する関係性です。さらに「Google Drive」というITソフトを使い、その選手に関わる多くの人と情報を共有し合う仕組みを作りました。Aという選手には、サッカーの指導者、寮の生活指導スタッフ、勉強を担当する先生、掃除や洗濯など身の回りのケアをする人など、たくさんの人が関わっています。そこで「Google Drive」の中に、Aという選手のファイルを作り、その日にあった特筆事項などを共有します。――現代的な仕組みですね。たとえば、学校の先生が「A君は同級生のB君と激しい言い争いをして、気が立っているので、寮に戻ったときの態度が悪いかもしれません」と記入しておけば、寮の生活指導の先生も「なんだこいつは。態度悪いな」となるのではなく、A君を取り巻く環境を理解することで対応も変わり、コミュニケーションも豊かになります。コーチはA君の身に起きた出来事を知っているので、練習場に来る時はふてくされているだろうなと、前もってイメージすることができます。そうすると、A君と接するときの指導者の態度も変わってきます。■一人ひとりが豊かになることがチームの強化につながる――それをチーム全員分するというのは、時間もエネルギーも相当かかりませんか?はい。チームに選手が20人いるとして、それぞれの人格や置かれている状況、バックボーンは全員違います。そうであるにも関わらず、私達はチーム全体にメッセージを発したり、フィードバックを行ってきました。それらの意味のなさに気がつき、すごく反省しました。個々にアプローチをし、個別に最適化を図ること。その結果として、選手一人ひとりが豊かになることが、チームの競技力や強化につながるのではないかと、考えが変わりました。そのような取り組みを行い、一つひとつ改革をしていきました。(第2回に続く)佐伯夕利子(さえき・ゆりこ)1973 年10月6日生まれ/イラン生まれ92 年にスペインに移住し、93 年から指導者の道を歩み始める。レアル・マドリードのスクールをはじめ、スペイン男子3 部リーグ、アトレティコ・マドリッド女子チームなどで監督経験を積む。08 年からビジャレアルに在籍し、男子U19のコーチ、レディースの監督、女子部統括責任者などを歴任。18 年に公益社団法人日本プロサッカーリーグの特任理事(非常勤)に選任され、2020年3月からJリーグ常勤理事。
2021年02月02日1対1が強くなりたい。相手からボールを奪えるようになりたい、と思っている子は多いのではないでしょうか。小学生年代でよく行われる練習でもある1対1。基礎的な練習であり、プロの試合でもあらゆる場面で行われるサッカーの基本ともいえるものです。どんな風に1対1を習得させることが大事なのか。日本と海外では教え方は違うのか。どうしたら自らボールを奪いに行けるようになるのか......。ドイツ・フライブルク在住で長年ドイツで少年サッカーの指導に携わり、様々な情報を発信している中野吉之伴さんが、元ドイツ代表DFルーカス・シンキビッツ氏に育成年代ではどのように1対1を学ぶことが大事なのかをインタビューしました。(取材・文:中野吉之伴)1対1の能力をどう伸ばせばいいのか(写真はサッカー少年のイメージ)■とにかく「抜かれない」こと重視か、不必要に激しいぶつかり合いの両極端になってないか「もっとがつがつボール奪いに行けよ!」「簡単に交わされるんな!」「デュエルを激しく!」子どもたちの試合を見ているとそんな指導者や保護者の声が飛び交うことがありませんか?1対1におけるボールのせめぎあいはサッカーにとってとても大事な要素。でもどうすればその能力を伸ばしていくことができるんでしょう?どのように取り組めば怖からず、激しくなりすぎずに自分からボールを奪う感覚を身につけることができるのでしょう?そこで元ドイツ代表DFルーカス・シンキビッツ氏のお話を伺いました。ケルン育成育ちのシンキビッツ氏はルーカス・ポドルスキ選手の同期で、ケルン、レバークーゼンなどで活躍。現役引退後は指導者の道を歩み、現在はブンデスリーガ2部所属のフォルトゥナ・デュッセルドルフのセカンドチームでアシスタントコーチを務めています。育成年代でも指導者経験のあるシンキビッツの言葉からはとても学ぶものが多いです。個人的な見解ですが、日本の小学生年代の練習や試合を見ていると、1対1の局面で相手と距離をとってとにかく"抜かれない"ことばかりに一生懸命になっているか、あるいは相手がけがするかどうか度外視で不必要に激しいぶつかりで競り合おうとする守り方が目立つような気がするのです。もちろん、正しい守備の技術を身につけて、いつ、どこで、どのようにボールを奪いに行くべきかをわかっている指導者や子どもたちもいますが、印象としてそもそも取りにはいかないか、行くなら相手をつぶしすくらいでいくかという両極端な守備を見かけることが多い気がするのです。■1対1でボールを奪う感覚を身につけるためにどうしたらいいか1対1の競り合いでは激しい体のぶつけ合いも必要にはなりますが、そこでは確かな守備技術が求められます。体の使い方、足の動かし方、間を詰めるタイミング。そのあたりの感覚を経験を重ねるごとに身に着けていかなければならないでしょう。ではどのように取り組むといいのでしょうか。シンキビッツ氏は「子どもたちがボールを奪う感覚を身につけるためにはどうしたらいいのか。僕はいろんな学年の子どもたちが一緒になって遊ぶのが一番いいんじゃないかと思うんだ。ドイツには"ベルトマイスターシャフト"(ワールドカップ)という遊びがあるんだ。ルールは簡単でゴール一つで、あとは子どもたちはみんな2人一組ずつになる。GKがボールをけり上げてそこからはみんなでバトルロワイヤル。ボールを奪い合ってゴールを決めたペアから勝ち残っていくというゲームなんだ」と、とある遊びの存在を教えてくれました。■「あれ?そういえば......」と、遊びの中での気づきが大事そしてそのゲームでどんなことが起こるかというと......。「最初はね、うまい子とか年上の子とやっているとなかなか勝てない。でもそのうちに『どうやったら止められるのかな』『いつ仕掛けたらいいのかな』『どこで取りに行けばいいのかな』というのを考えるようになる。『あれ?あいつそういえばいつも右サイドばっかりに抜いてくるな』というのに気づいたら、これまでとは違った守り方を試してみたりするだろうね。あるいはうまい子や年上の子たちの動きを見て、『あの子、うまくボールをとるよな。どうやってるんだろう?』と観察するようになったら素晴らしいよね。だから1対1をそうやった遊びの中でどんどん繰り返し試すというのがやっぱりいいと思う。うまい子とか強い子、速い子と一緒に遊べて、様々な状況があって、そのなかで子どもなりに考えて取り組める環境が大事なんだ。過程を細かく分けてトレーニングやることも大事だけど、やりすぎはよくない。守り方とか体の向きとか、いつもいつも指導者が理想とする『あるべき姿』ばかりを提示すべきではないんだよ。『外を切って体を半身にして守るんだ!!』とかよく聞くけど、そればかり言われていたら、子どもたちはその通りにしか守れない。でも選手は自分の目で見て、状況を認知して、その局面ではどうやったら守れるのかというのと向き合わないといけないんだ。子どもたちに自分でプレーをさせなきゃいけない。うまくいかないし、気づけないしという子だっているだろう。そういう時は問いかけてあげることがやっぱり大事だ」とシンキビッツ氏。「ちょっとおいで。さっきから見ていると、あの子に5回連続でおんなじ形で抜かれているけど、なんでだろうね?あの子はどこがうまくできているんだろう?」など、子どもたちが自分で気づくような問いかけが大事なのだと教えてくれました。■子どもたちが疑問を持ったり悩む機会を大人が奪ってないか自分で状況を認知してプレーできるようになるためには、考えて取り組める状況が必要だというシンキビッツ氏ですが、最近では大人が子どもたちの疑問を持つ機会を奪っていないか、という指摘も。「子どもたちは普段サッカーをしているときにそこまでのことを考えてはいない。それはいいことなんだけど、そこにちょっと刺激を与えてあげるのが必要な時もある。何度もチャレンジをして無意識下でひらめきがでてくるようになるような取り組みもなきゃダメなんだ。特に最近は子どもたちが自分で疑問に思ったり、どうしようと悩む機会が少なくなっている。全部大人がおぜん立てしようとしてないだろうか。答えが先にないだろうか。お望みの答えを待っていないだろうか」さいごに、子どもたちが自ら考えて判断できるようになるために、大人はどうすればいいのか、1対1で「いつ、どこで、どのように」ボールを奪いに行くのかを身につけさせるためにはどうすればいいのかのアドバイスをいただきました。「子どもたちは8歳くらいになったら自分で何がうまくいって、何がうまくいかなかったかの判断はできるようになる。でも大人が『こうしなきゃいけない』『こうしたらうまくいく』という答えばかりを与えたら、子どもたちは自分たちで考えて挑戦して、その中で貴重な経験をする機会がなくなってしまう。だからA、B、Cというやり方を学んだとして、そのどれもでもうまくいかないときに次のアイディアが出てこないんだ。アイディアを自分で生み出すという機会がないんだから。でも『監督はA、B、Cしかいってないよ』というのが答えではさみしくないだろうか?1対1はピッチエリアや試合の流れでどう守るべきかが変わってくる。『いつ、どこで、どのように』を無視してはいけないし、自分の特徴を生かすためにどう守ればいいかをそれぞれが見出せなければならないんだ。だからこそ、それぞれがいろんなエリアと状況でどんどん積極的に、賢く挑戦できる環境を指導者が作ってあげることが大切だと思うんだ」中野吉之伴(なかの・きちのすけ)指導者/ジャーナリスト大学卒業後、育成年代指導のノウハウを学ぶためにドイツへ渡る。現地でSCフライブルクU-15チームでの研修など様々な現場でサッカーを学び、2009年7月にドイツサッカー連盟公認A級ライセンスを取得(UEFA-Aレベル)。2015年から日本帰国時に全国でサッカー講習会を開催し、よりグラスルーツに寄り添った活動を行う。主な指導歴:フライブルガーFC(元ブンデスリーガクラブ)U-16監督/U-16・18総監督などを経て現在はフライブルガーFCのU13監督を務める。著書・監修本に「サッカードイツ流タテの突破力」(池田書店 ※監修/2016年)/「サッカー年代別トレーニングの教科書」(カンゼン ※著者/2016年)/「ドイツの子どもは審判なしでサッカーをする」(ナツメ社 ※著者/2017年)などがある。
2021年02月02日サッカーを始めたばかりのお子さんをお持ちの保護者の中には、ボールを購入しようとしている人もいるでしょう。サッカーには様々なボールのサイズがあります。この記事では、サッカーボールのサイズについて解説します。小学生はどのサイズが適切なのか、ボールを選ぶときにはどういった点に注意すべきなのか、などについて解説するので、ぜひ参考にしてみてください。ボールのサイズは年齢によって異なるサッカーボールには、1号球から5号球まで5種類のサイズがあります。しかし、1号と2号はサインボールやリフティングボールとして利用するのが一般的であり、試合で使用するのは3号球以上となります。そして、年齢に応じて使用するボールのサイズが異なるため、ボールを購入する際はお子さんの年齢を考慮する必要があるでしょう。引き続き、ボールのサイズと年齢の関係について解説します。3号球3号球は、主に幼稚園児~小学校低学年が使用するボールです。競技用のボールとして最も小さいサイズで、非常に軽いため、小さい子どもでも扱いやすくなっています。なお、規格は以下の通りです。周囲:58〜60cm直径:19cm重量:300〜320g4号球4号球は主に小学生年代で使用されるボールです。普段の練習や公式戦などでもこのサイズが使用されています。これからサッカーを始める小学生のお子さんがいる場合は4号球を購入するといいでしょう。なお、将来的には5号球を使うことになりますが、小さいうちから5号球を使用すると怪我に繋がる恐れもあるため、4号球を購入するようにしてください。なお、規格は以下の通りです。周囲:63.5〜66cm直径:20.5cm重量:350〜390g5号球5号球は、中学生以降で使用するボールです。高校や大学、社会人、プロもこの5号球を使用するため、一般的なサイズのサッカーボールというと5号球のことを指していると考えてください。なお、規格は以下の通りです。周囲:68〜70cm直径:22cm重量:410〜450gサッカーボールの選び方ここからは、サッカーボールを選ぶときのポイントについて解説します。スポーツショップに行くとたくさんのサッカーボールが置いてあります。どれも同じように見えるかもしれませんが使用目的によって違いがあるため、参考にしてみてください。使用するグラウンドを考慮サッカーボールには、大きく分けて土用と芝用があります。このボールはそれぞれ土での使用、芝での使用を想定して作られているもので、土用を芝のグラウンドで、芝用を土のグラウンドで使用すると、ボールが跳ねすぎたり逆に跳ねなかったりするので注意が必要です。なお、土用のボールは衝撃に強い素材を使用しており、固いグラウンドで使用しても傷みにくくなっています。一方の芝用は伸縮性のある素材を使用しており、跳ねやすく作られています。検定球かどうかサッカーボールの場合、サッカー協会やサッカー連盟が規定している規格を満たしているボールには「検定マーク」がつけられています。JFA検定球はJFA(日本サッカー協会)の規格を満たしているボールで、FIFA検定球はFIFA(国際サッカー連盟)の規格を満たしているボールです。JFA検定球でもFIFA検定球でも検定マークがついていれば、ボールの品質が信頼できる証拠になります。そのため、練習や試合などでも安心して利用できるでしょう。公式試合では検定球を使用することが求められているので、購入の際に検定球であることを確認しましょう。今回は、サッカーボールのサイズの概要とボールを選ぶときのポイントについて解説しました。小学生の使用するサイズは4号球です。年齢に応じてボールのサイズが定められているため、5号球を小学生のうちから使用するのは避けるようにしてください。また、ボール選びの際は、使用するグラウンドを考慮し、検定マークの入っているものを選ぶようにしましょう。
2021年01月29日1年の頃からボール拾い。練習したくても一部のメニューにしか入れてもらずチームメイトからも「下手だな」と言われてきた。それが苦痛でやめようとしたことも。それでもあるきっかけで気持ちを持ち直し、上達のためにかけもちで練習を頑張って、試合にも出られるようになっていたのに、県大会でメンバー入りできなかった。それを知ったチームの子たちから暴言が始まり、泣いて帰ってきた。5年生後半だけど移籍させるべき?ほかのチームでも同じことがある?というお悩みをいただきました。今回もスポーツと教育のジャーナリストであり、先輩サッカーママでもある島沢優子さんが、15年以上の取材で得た知見をもとにアドバイスを授けますので参考にしてください。(文:島沢優子)(写真はご質問者様及びご質問内容とは関係ありません)<<努力しないのに根拠のない自信だけはある息子に手を焼いてます問題<サッカーママからのご相談>はじめまして。5年生の息子が市内の強豪クラブチームに通っています。サッカーのレベルはBチームでベンチ頻度が高い子です。大人しくて人見知りが強く、1年生から入部しているのですが似たタイプの子としか仲良くできません。1年の頃からずっとボール拾いで、練習をしたくてもパス回しのメニューしかさせてもらえない事も多々あり、チームメイトからも「下手だな!」などと言われ続けてきました。一時はその環境が苦痛となり、辞めるように話した時期もありましたが、ちょうどそのタイミングで小学校の同級生が入部してきたことで、現在は少しずつまわりとの距離感が縮まりつつありました。今では「下手だと言ってきたみんなより上手くなりたい!」と地元のチームの練習にも行って、掛け持ちで頑張っています。いまだに、クラブチームの練習になると周りからの反応に萎縮してなかなか本来の動きができずにいますが、地元のチームでは、周りの保護者から「この子が1番うまいね」と言われるくらい動きもよくなりました。練習試合でも、Bチームですが試合に長時間出れるようになってきて、本人も自信がついてきたようにも思えました。ですが、最近あった県大会の試合にレギュラー入りできず、ユニフォームさえも与えられませんでした。県大会に選ばれなかったことを知ったクラブチームの子たちから、またもや言葉の暴力が始まったと泣いて帰ってきました。今までそれを乗り越え頑張ってきてましたが、この環境ではやはり能力が発揮できないのでは?このままではサッカーが大嫌いになってしまうのではないか?と感じています。5年生も後半になりましたが、クラブチームの移籍を検討した方が良いでしょうか?高学年だとどのチームでも似た現象があるのではないかと心配してしまい、悩んでおります。何かいいアドバイスを頂けたら大変嬉しく思います。 よろしくお願い致します。<島沢さんのアドバイス>ご相談のメールをいただきありがとうございます。ご相談文を読むと、お母さんが息子さんをどれだけ大切に思っているのかがよくわかります。また、息子さんがどのような環境でサッカーに取り組んでいたかなど、置かれた境遇は私なりに理解しました。5年生の3学期という今の時期に、クラブチームの移籍を検討した方が良いのか。まずは、この質問に答えます。■移籍するかどうかは当事者が決断すること結論から申し上げると、移籍を検討したほうがいいか、しないほうがいいのかは、私には意見できません。なぜなら、それは当事者の息子さんが決めることだからです。他人である私はもちろんのこと、お母さんが検討することではないからです。お母さんの相談文を読むと、息子さん本人が「こうしたい」「こう思っている」などと、彼が意思表明をした話が出てこないのが気になります。それをお母さんがメールに書かなかっただけで、彼が「移籍したい」「チームを移りたい」と自分の意見を述べているのであれば、一緒に考えてあげればいいと思います。■気をつけなければならないのは「移籍までのプロセス」ただし、ひとつ気をつけなければならないのは、移籍までのプロセスです。例えば、彼が移籍したいと希望する理由は、以下のものでしょうか?「試合に出たいから、出場機会を求めたい」「いじめがひどくて、もう我慢できない。いじめてくる友達にはいつも抗議しているし、コーチにも自分から話して相談したけれど、収まらない。違う環境でサッカーをしたい」「自分で移籍先も考えている。一緒に見学に行ってほしい」以上のように、自分自身で状況を打破するためにいろいろ努力していたけれど、変わらない。だから移籍したい。そんなふうに息子さんがしっかり意思を示しているのであれば、彼が率先垂範してチームを探し出してきた情報に対して、一緒に考えて意見を述べるなどして手伝ってあげればいいと思います。一方で、もし、息子さんがそういった意思を表明していないのであれば、特にお母さんが動く必要はないでしょう。あるとすれば、「あんまり辛いなら、チームを変わっていいよ。自分で探しておいで」と、環境を変える方法もあることを伝えればいいと思います。小学5年生とはいえ、最上級生の6年生はすぐそこです。コロナ禍でオンライン授業も受けているでしょう。ネットでも何でも使えるはずです。ここは、自分で道を切り拓く力をつけてほしいと考えます。したがって、お母さんは息子さんの好きにさせておけばいいのです。■今のままではお子さんがこの先嫌な経験をしたとき「お母さんのせいだ」となる可能性も私は、息子さんが移籍したほうがいいか云々よりも、お母さんが綴っている息子さんの身に起きるかもしれないことへの不安の強さが気になります。この環境ではやはり能力が発揮できないのでは?サッカーがこのままでは大嫌いになってしまうのではないか?高学年だとどのチームでも似た現象があるのではないかと心配してしまい、悩んでおります。ご自分で読んでみていかがでしょうか。「この環境」と書かれていますが、さまざまなことを他罰的にとらえてしまってはいませんか。例えば「息子がサッカーを上手くならないのはチームのせい」「楽しめないのは仲間のせい」と、こころの中で思ってはいないでしょうか。どれも、完全に息子さんのサッカーが完全に「自分事(じぶんごと)」になっていませんか。親が子どものネガティブなことに同化してしまうと、ついつい「転ばぬ先の杖」を用意してしまいます。転んでもいないのに杖を渡すので、足腰は鍛えられません。そして、親の選んだ方向にばかり引きずられると、そこで何か嫌なことが起きたときに「お母さんが移籍させたからだ」と、子どももまた"他罰的"になってしまいます。■良かれと思ってやったのちに「自分で考えさせれば良かった」と後悔する親たちサッカーの育成に関する取材を始めて15年以上経ちます。出会った何百組もの親子さんで、親御さんが先に先に杖を用意したり、道をこしらえてしまった人たちは、後でみなさん後悔していらっしゃいました。「自分で考えさせれば良かった」「選ばせればよかった」そうおっしゃるのです。その時は「良かれと思って」親が動いたことはほとんどの場合、子どものためになっていないことのほうが多いのです。子どもが何かに取り組む際のモチベーションに、「外発的動機付け」「内発的動機付け」があります。外発的動機付けは、親に言われたり、コーチに「こうやれ」と命令されること。内発的動機付けは、自分から「こうしよう」「こうしたい」と考えたものです。いわずもがなですが、内発的な動機付けのほうが、子どもは大きく成長します。息子さんのサッカーは「他人事」だと心得ましょう。彼がサッカーを大好きになれる環境はどんなものか。そんな提案をして、本人に選ばせることが重要です。そして、少しずつでいいので自分でさまざまなことを選べる人間にする。それがお母さんの役目だと思います。■子どもの不安で親が一緒に溺れないように(写真はご質問者様及びご質問内容とは関係ありません)最後になりますが、前回の連載はきっと参考になると思います。『努力しないのに根拠のない自信だけはある息子に手を焼いてます問題』わが子の不安の海で、親が一緒に溺れないようにしてください。不安と戦う息子さんに「どうしたら楽しくサッカーができるか考えよう」と誘ってあげてください。島沢優子(しまざわ・ゆうこ)スポーツ・教育ジャーナリスト。日本文藝家協会会員(理事推薦)1男1女の母。筑波大学卒業後、英国留学など経て日刊スポーツ新聞社東京本社勤務。1998年よりフリー。『AERA』や『東洋経済オンライン』などで、スポーツ、教育関係等をフィールドに執筆。主に、サッカーを始めスポーツの育成に詳しい。『桜宮高校バスケット部体罰事件の真実そして少年は死ぬことに決めた』(朝日新聞出版)『左手一本のシュート夢あればこそ!脳出血、右半身麻痺からの復活』『王者の食ノート~スポーツ栄養士虎石真弥、勝利への挑戦』など著書多数。『サッカーで子どもをぐんぐん伸ばす11の魔法』(池上正著/いずれも小学館)ブラック部活の問題を提起した『部活があぶない』(講談社現代新書)、錦織圭を育てたコーチの育成術を記した『戦略脳を育てるテニス・グランドスラムへの翼』(柏井正樹著/大修館書店)など企画構成も担当。指導者や保護者向けの講演も多い。最新刊は『世界を獲るノートアスリートのインテリジェンス』(カンゼン)。
2021年01月27日サカイクがお届けする『親子で遊びながらうまくなる!サッカー3分間トレーニング』。今回は、初心者に多い「足の甲(靴紐の部分)で蹴るインステップキックを使ってボールを狙ったところに蹴ることが出来ない」という悩みを改善するトレーニングを紹介します。ボールを止める、蹴る、というサッカーの基本中の基本の一つ。シュートや長いパスを出すときなど、強いボールを蹴る時に使うインステップキックを初心者が一から身につけるための基本動作、ポイントをサカイクキャンプコーチが説明。サッカーの動きの中でよく使う「インステップ」で蹴る方法を基本からしっかり身につけましょう。このトレーニングは遊びを通して楽しみながら行うことで、シュートやロングパスを出す時に使う強いキックでボールを狙ったところに蹴る技術を身につけることができます。ぜひ親子でチャレンジしてみてください!【やり方】1.子どもがボールを持ち離れて立つ(5メートルくらい)2.足元にセットしたボールをゆっくり足の甲の部分(インステップ)で蹴る3.狙い通り蹴れたら少しずつ離れて蹴る4.上手にできるようになったら、目印の間を通すゲームをやってみる5.慣れてきたら、目印の間を狭くするなど難易度を上げてみる【ポイント】・最初はゆっくり足の外側のどこでボールを触るか確認しながら行う・慣れるまではボールをよく見る・ボールは蹴り足の斜め前に置いて助走を取る・軸足をしっかりおいて、上半身のしなりを使って蹴る・リラックスして行うこと・慌てずゆっくり、慣れてきたらリズム良く行う・失敗しても気にせず、親子で楽しみながら行う次回もサッカー初心者のお悩みに応えるトレーニングをお届けしますのでお楽しみに!
2021年01月26日埼玉県杉戸町にある「アシカラ改善院」には、男の子から女の子、さらにはトップアスリートまで、ケガをしてしまった人から、動きの改善を目指す人まで、多くの人が訪れています。院長の染谷学先生は、「足底からこだわり全身改善」をコンセプトに、歩行動作を改善することでケガを予防したり、ケガからの復帰を導くスペシャリストです。「靴の選び方は、動作改善のベースになります」と語る染谷先生に、前回に引き続き、靴の選び方についての詳しい解説をお願いしました。お子さんのケガ予防、パフォーマンスアップのために、正しい知識を手に入れましょう!(取材・文:鈴木智之)ケガを予防しパフォーマンスを上げるためにも正しい靴の選び方が大事(写真はサッカー少年のイメージ)<<オスグッドはひざの曲げ方に問題が。ケガ、痛み予防のために知っておきたい正しい「蹴り方」とは■靴選びで「横幅」も重視しないとひざの痛みの原因に前回の記事では「足のつま先が1センチ余ること」「インソールの中に、小指がしっかり収まること」「かかとが硬いものを選ぶ」という3つのポイントを教えていただきました。「靴を選ぶ際に、いま履いているものが足に合っているかを確認するときは、まず中敷きを外しましょう。のり付けされているものであればビリっとはがして、中敷きを地面に置いて、その上に足を乗せてみてください。そうすると、中敷に対して指がどれぐらい届いているのか、届いていないのか。横幅も外に出ているか、出ていないかがわかります」サッカー少年・少女の履いている靴をチェックすると、横幅の中に足が収まっておらず、小指が靴の中で浮いてしまっている子も多いそうです。「インソール幅に対して、小指が収まっていない子は多いです。その状態だと、小指が持ち上がったまま靴の中に収まっているので、結果としてひざが内側に倒れた状態になります。その状態で激しく動くと、ひざを痛めることやひどい場合は前十字靭帯断裂につながります」さらに、こう続けます。「ひざが内側に倒れないようにしようとすると、ひざを少し曲げなければいけないので、オスグッドになりやすいんです。その状態で無理やり外側に倒そうとすると、捻挫をしやすくなります。自分の意思で足をひねっているような形なので、自分から怪我をするように動いているようなものなのです」■横幅が合わないからといってサイズを上げるのは間違い靴の選び方によって、ケガのリスクが高まるのであれば、無視することはできません。とくに成長期のお子さんの場合、大人以上に意識を向けた方が良さそうです。「靴の中で足の横幅が収まらないと、サイズを大きくしようとする人が多いのですが、1センチ以上大きな靴を履くと、横幅は合うかもしれませんが、今度は靴の中で足が前後にずれてしまいます。デザイン重視で靴を選びたい子には可哀想だと思いますが、サイズと横幅が合わないものは、現時点では履けない靴、足に合わない靴という捉え方をした方がいいと思います」足の横幅が広い人におすすめなのが「3Eや4Eと表記されている靴」だそうです。「横幅を示す『E』という表記があります。3E、4E、スーパーワイド(SW)、エキストラワイド(EW)といったものがあるのですが、ミズノ、アシックスは足幅の広いモデルが発売されていると思います。私のところに来てくれる選手たちには、『日本人の足型データから作っているアシックス、ミズノは合いやすいのではないか』という話はしています。ただし、同じメーカーでもモデルによって異なることもあるので、実際にお店で試着してみてほしいですね」■じつは「かかとの硬さ」がかなり重要前回の記事で「つま先、横幅、かかと」の3つがポイントだとお伝えしました。つま先と横幅には意識を向けやすいですが、かかとについては見落としてしまいがちです。「かかとは骨なので、硬いイメージがあるかもしれませんが、ほとんど筋肉がついていないんですね。かかとの骨を覆っている脂肪はゼリーのように柔らかいので、しっかり覆っていないと流れてしまいます。個人差はありますが、脂肪には2センチ近く厚みがあるので、かかとをしっかり覆うことができればクッションが利きます。そうすれば、かかとが痛くなったり足首を捻ることも少なくなります」自分の足に合った靴を履くことの大切さについて、染谷先生は「3~6歳、就学前のお子さんに対する靴の選び方に、もっと目を向けた方がいいと思います」と述べます。「ドイツでは3歳から就学まで、健康診断をするそうです。そのときに足の形がどうなっているか、重心がどうなっているかなどの検査項目がたくさんあると聞いたことがあります。日本で『子どものファーストシューズをどう選ぶか?』について、目を向けている人は多くはありません。子どもが将来、履きたい靴を履くためにも『足を作る』という視点から靴を選ぶことが大切だと思います」■正しい靴選びで偏平足は防げる就学前のお子さんの靴は「かかとがしっかりと収まるもの」(染谷先生)が良いそうです。「まずはかかとがずれないように、ヒールの部分が硬くなっているものを選びましょう。靴の中で、足の横幅を合わせるのは難しいので、調整がしやすいベルトタイプ(マジックテープ)もおすすめです。サイズが合っていて、かかとがしっかりしている靴を選べば、中でしっかりと指が使え、必要な足の裏のアーチも出来上がっていきます」足の指をしっかりと使えるようになることが、サッカーで良いパフォーマンスをするための第一歩です。どうしても軽くて柔らかい靴を選びたくなってしまうかもしれませんが、かかとが硬くねじれない靴であることも大事です。■ひざを痛めやすい女子選手の脚には特徴がある染谷先生の元には、ひざを痛めた女子サッカー選手もたくさん診療に来るそうです。これまでの診察経験から、彼女たちの特徴は、腿から足首まで太さがあまり変わらない脚なのだそう。これも多くの場合、身体の使い方によるもので、身体を正しく使えるようになると、必要な個所の筋肉は引き締まりメリハリのついた脚になるのだと教えてくれました。「私は女子選手に『筋肉のつき方が綺麗で、立ち方、歩き方がかっこいい選手は魅力的だよね』という話をしています。それこそがケガをしない足なのです。ヨーロッパの女子選手は、スラッとしていて立ち姿が綺麗ですよね」たしかに、国際試合などでピッチに立っている姿を見ていると、その違いは明らかです。「足の指を使うことができて、すねを倒す角度が適切になって......、と人体構造に合った動き方ができてくると、足首が締り、ひざ周りの無駄な肉がとれて、足の形が綺麗になります。結果として、ケガのリスクもなくなります。そうではない選手は、すでにジュニアの年代から、ケガのリスクがある動き方をしています」足に合った靴を選び、人体構造に適した身体の使い方をすることで、ケガのリスクが減少し、パフォーマンスもアップするのであれば、ぜひとも真剣に向き合いたいところです。「日常生活のときに履く靴はもちろんですが、サッカーのときも足に合ってかかとがしっかりしているものを選んでほしいです。そして、つま先とかかとをつかんでひねったときに、ねじれが少ないこともポイントです」<正しい靴選びのポイント全6項目>1.足長(サイズのこと:22.5cmなど)プラス、先端に1cm余裕がある2.横幅があっているインソールから小指がはみ出ない3.かかとのヒールカウンターが硬いもの4.MP関節(歩行時に屈曲する足指付け根の関節)に合わせてどれだけ屈曲するか5.ねじれが硬い6.紐靴でフィット感を調整できる※ヒールカウンターとは、靴のかかと部分に挿入された半円形の芯のこと。 かかとを安定させ、歩行をサポートしたり、靴の成型を担う足を育てるために、自分の足に合った靴を選ぶこと。これはぜひ子どもの頃から、心がけたいことです。それがきっと、お子さんの将来に良い影響を与えるはずです!染谷学(そめや・まなぶ)鹿屋体育大学卒業学生時代は柔道専攻。自身が多くの怪我を経験し、助けてくれた柔道整復師に憧れ治療家になる。柔道整復師として昨年11月末まで都内で整骨院を営む。選手サポートや外部サポート増加に伴い整骨院閉院。『足底からこだわり全身改善』『人間の足底=土壌』を掲げ、現在は埼玉県にアシカラ改善院(自費診療)を構え、一般~プロアスリート迄、老若男女問わず診ている。院の特徴は①1分以内での超短時間施術。②人体構造上正確な起立と歩行指導。【主な活動】オルカ鴨川FCメディカルサポート(2019)都立高校サッカー部メディカルサポート(2017〜現在)アスリートサポート(パーソナル)チーム向けセミナー(インソール講習会、靴の選び方等)
2021年01月25日職場でU‐8以下の子どもたちを指導することになったけど、自分自身はサッカー経験なし。初めてサッカーをする子たちばかりだけど、楽しんで基本が身に付くような練習はある?とお悩みのコーチよりご相談いただきました。長くサッカーを続けるためにも、サッカーに出会う時期の楽しさは大事ですよね。現在低学年や未就学児に指導されている方も池上さんのアドバイスを参考にしてください。これまでジェフユナイテッド市原・千葉の育成コーチや、京都サンガF.C.ホームタウンアカデミーダイレクターなどを歴任し、のべ60万人以上の子どもたちを指導してきた池上正さんが、この年代への指導で大事なことをお伝えします。(取材・文島沢優子)池上正さんの指導を動画で見る>>(写真は少年サッカーのイメージです。ご相談者様、ご相談内容とは関係ありません)<<何をやっても楽しそうじゃない子のテンションを上げる練習を教えて<お父さんコーチからの質問>こんにちは。職場の幼稚園、小学校低学年でボランティアコーチをしています。自身はプレーの経験は無く、元2級審判員です。今は3級で現役です。これまでも何回も聞かれているかもしれませんが、サッカーが初めてのこの年代に楽しみながら基本を教えるには、どうすれば良いでしょうか?<池上さんのアドバイス>ご相談ありがとうございます。メールに「サッカーが初めてのこの年代に楽しみながら基本を教えるには、どうすれば良いか?」とありますね。ご相談者様がおっしゃる「基本」とは、ボールを蹴る、運ぶ、止めるといった主には個人スキルを想像されていると想像します。しかしながら、サッカーは自分以外の仲間がいますね。その仲間とパスをつなぎながら、相手にボールを取られずシュートまでもっていく。そしてゴールを狙う。それがサッカーです。たとえ幼児だろうと、指導はそこから入ってほしいと思います。ところが、未就学児や小学校の低学年にミニゲームをしてもらうと、団子になります。特定の子どもだけがドリブルをし、他の子が追いかけて行くような場面が多く、ボールを扱う子どもが限られてしまいます。そのため、ボールを扱えるように、止める、蹴るを体験できる対面パスやコーンドリブルの時間が増えていく。そんな傾向があります。■「まだ団子サッカーで仕方がない」ではダメ先日、千葉県柏市サッカー協会からの依頼で、セミナーを開きました。その際に町のクラブの方から、団子サッカーをどう解消したらいいか?といった質問がありました。多くの方が「まだ幼稚園だから団子で仕方がない」と考えているようです。しかし、そのままにしておかないでください。そこからどうサッカーにつなげるか。指導者の方に対策を立ててほしいのです。仲間とつないでいくのが当たり前のこと。それがサッカーだという認識を持てるよう子どもを育てる必要があります。団子サッカーを卒業させようと考えた場合、子どもたちに「団子にならないようにしよう」とか「団子にならないで広がって」と指示することが少なくありません。ところが、言っても、言っても、団子になってしまう。指導者は途方に暮れます。■団子サッカー解消のためにどうすればいいかでは、どうするか。まずは、子どもたちに、自分たちがどんな状況になっているかを理解してもらいます。「いま、どんなふうになってる?」問いかけると、子どもなりの意見が出てきます。「○○君は僕の味方なのに、僕のボールを取りに来る」「人がいっぱいいるから前に行けない」2、3人だけでなく、みんなに尋ねてみてください。そういうことを認識させることが大事です。そのあとで、「なるほど。みんなそんなことを感じているんだね。じゃあ、どうしたらいいかな?」とまた問いかけます。そして、それぞれが「みんな広がってみる」とか「空いてる人にパスする」と、対策が出てきたら、「じゃあ、そこに気をつけてやってみよう」とまたミニゲームをやらせます。子どもですから、もちろんすぐに「自分で気をつける」ことはできません。が、やりながら、コーチからも、考える材料になる問いかけをします。「味方の近くにいるのと、遠くにいるのとでは、どっちが相手からボールを取られないかな?」そんなふうに話し合いながら練習を進めてください。そのとき、決して答えを言わないでほしいと思います。■手取り足取り教えることが指導ではない以前、私が日本人コーチの佐伯夕利子さんが所属するスペインのビジャレアルの5歳児たちのミニゲームの動画を見せた時のことです。幼児でもパスをつなげることを見せて、「ここまでに育てるのに2~3年かかるそうです」と話したら、参加していた方がこうおっしゃいました。「私はそんなに我慢できません」日本の指導者は、どうも早く結果がほしいようです。コーチが我慢する、しないの問題ではないことを理解してほしいものです。子どもたちにサッカーがどんなスポーツかを教えるには、前述したようにやり取りしながら理解を深めていく「時間」が必要不可欠だということをわかってもらえないでしょうか。「コーチがこんなに言ってるのに、どうして君たちはやらないの?」「やらないから上手くならないよね」そんなふうに責めたり、手取り足取りして教えることが指導だと思っていませんか?子どもたちを「一日も早くうまくしなければ」と思っていないでしょうか?何かができたら、次はこれというふうに、進み具合を大人のほうで決めて、そこに当てはめようとしてしまう。そこに追い付けない子どものことを心の中で否定したり、成長をあきらめていないでしょうか?指導に決まったマニュアルはありません。いま、目の前の子どもは上手くできないかもしれません。ただ、大人の目には見えないけれど、前述したように考えさせる指導をしていけば、子どもは日々何かを獲得するはずです。ビジャレアルの子どもたちも、そのようにしてサッカーの認知度を上げたのだと考えます。■サッカー経験がなくてもできる、子どもたちが自分で考えるようになる「問いかけ」また、「上手くなってもらうには、どんな声がけをしたらいいですか?」という質問をよく受けます。すでにお伝えしたように決まったマニュアルはないので、こう声をかければ上達する、という魔法の法則はありません。あるとすれば、いまのどう?うまくいった?というような問いかけです。子どもが自分で考え始めるきっかけになる問いかけは、別にベテランでなくても、サッカー経験者でなくても、誰でも聞けます。考え方を理解してもらえれば簡単なことです。ただし、この問いかけを続けるには、そういうことが必要であることを大人のほうがきちんと理解していなくてはいけません。ミスパスを「それはミスだね」とだれにでも言えますが、それは指導ではありません。そういったことを理解してもらわなくてはなりません。■問いかけと対話を重ねて子どもたちの視野を広げてあげるミスパスがあれば、「いま、誰にパスしようと思ったの?」と聞くことができるコーチになってください。「だってあそこに味方がいたんだもん」「右に味方がいたから」と答えれば、「じゃあ、左にいたのは見えた?」と尋ねる。そうすれば、「じゃあ、右も左も見られるといいね」となります。その次に「両方見ました」と言ってくる日が来ます。そのときは、じゃあ、その選択はどうだった?となります。対話だけをみても、その子どもが進化しているのがわかるかと思います。選ぶのはその子の権利。コーチの役目は、視野を広げてあげることなのです。池上正さんの指導を動画で見る>>■「こっちでしょ」コーチが答えを教えると、ほかの可能性を見逃す(写真は少年サッカーのイメージです。ご相談者様、ご相談内容とは関係ありません)「こっちでしょ」と一つの答えだけをコーチが教えてしまうと、見逃すものがいっぱい出てきます。サッカーをより楽しくするためには、どこがいいかな?と子どもがワクワクしながら考えられること。それができる環境を指導者が保証してあげることが重要です。そうすると、よりサッカーを楽しむためには、視野を広げるんだ、という結論になります。より楽しくなるよね、という考え方をもって子どもに接してください。池上正さんの指導を動画で見る>>池上正(いけがみ・ただし)「NPO法人I.K.O市原アカデミー」代表。大阪体育大学卒業後、大阪YMCAでサッカーを中心に幼児や小学生を指導。2002年、ジェフユナイテッド市原・千葉に育成普及部コーチとして加入。幼稚園、小学校などを巡回指導する「サッカーおとどけ隊」隊長として、千葉市・市原市を中心に年間190か所で延べ40万人の子どもたちを指導した。12年より16年シーズンまで、京都サンガF.C.で育成・普及部部長などを歴任。京都府内でも出前授業「つながり隊」を行い10万人を指導。ベストセラー『サッカーで子どもがぐんぐん伸びる11の魔法』(小学館)、『サッカーで子どもの力をひきだす池上さんのことば辞典』(監修/カンゼン)、『伸ばしたいなら離れなさいサッカーで考える子どもに育てる11の魔法』など多くの著書がある。
2021年01月22日昨今、子どもの「ヘディング禁止」が話題になっています。2020年にイングランドサッカー協会(FA)は「11歳以下は原則ヘディング禁止」を打ち出し、アメリカは以前から、年令によるヘディング禁止(制限)を掲げています。ヘディングが成長期の子どもの頭や身体に及ぼす影響はどれほどなのでしょうか?理学療法士として医療現場でリハビリテーションに携わり、「サッカーにおけるヘディングの累積曝露と慢性外傷性脳症に関する最近の知見」という論文を発表した、臼井直人さんに話を聞きました。(取材・文:鈴木智之)少年サッカーでヘディングは禁止した方が良いのかを伺いました(写真は過去のサカイクキャンプで浮き球のコントロールの練習をする子ども)■ヘディングは健康障害の原因になるのか自身も「お父さんコーチ」として、千葉県松戸市の少年団でコーチをしている臼井さん。小学4年生を担当しており、理学療法士としての知見を活かしながら、サッカーの指導にあたっています。少年期のヘディングの是非について、臼井さんは「大前提として、ヘディングと健康障害の因果関係ははっきりとはわかっていません」と前置きをした上で、次のように話します。「イングランドでガイドラインが出たのは 『The New England Journal of Medicine』という世界一影響力があると言われている臨床医学ジャーナルの中で『プロサッカー選手が高齢になったときに、認知症やパーキンソン病など、脳の神経変性疾患で死亡する頻度が3.5倍高かった』という研究結果が出たことに依ります。明確な因果関係は定かではありませんが、おそらくヘディングが影響しているのではないかと考えられています」■ヘディング後、頭痛が続いたら注意幼少期から繰り返しヘディングをすることで、脳へのダメージが蓄積されることは想像に難くありません。なかでも問題視されているのが、子どものヘディングです。「ヘディングでは、頭部の質量が小さいほど、衝撃が大きくなることが分かっています。子供や女性では、男性に比べ頭部の質量が少なく、頭部を支えるのに十分な筋力が備わっていないため、ヘディング時に頭にかかる衝撃は、大人の男子サッカー選手よりも大きくなります。アメリカの論文によると、中学生や女子サッカー選手の約半分の選手が、ヘディング後に頭痛を経験していることが明らかになりました。選手は『ヘディングをすると頭が痛くなるのは当たり前』と思っているかもしれませんが、そのまま継続してプレーしている現状は問題視する必要があると感じています」転んで頭を地面に打つ、頭同士がぶつかることなどで脳振盪が起きますが、子どもの場合、ヘディングをすることで軽度の脳振盪になることもあるそうです。「子どもの場合、ヘディングによって数日間頭痛が続いたケースや、2、3週間も健忘症が続いたケースも報告されています。そのようなことが起こり得ることは、知っておく必要があると思います。サッカーの試合の後に頭痛やめまいが続く、目がかすむ、家で落ち着きがないという子に関しては、症状が治るまで待ってプレーを再開したり、ヘディングを禁止するといった対応は、少なくとも必要なのではないかと思います」実際のところ、ジュニア年代の子どもに対して「ヘディング禁止」したほうがいいのでしょうか?「練習ではノーバウンドのボールやGKからのキック、クロスボールに対しては、ヘディングをしない方がいいと思います。イングランド(FA)のガイドラインは『18歳頃までは、徐々に回数を増やしながら行う』となっていますが、クロスボールやパントキックを繰り返しヘディングすると、短期的に記憶力が落ちます。記憶のテストをすると、ヘディングをする前と後では明らかに点数が落ちるという研究結果があるんです」実はこのような目に見えた症状が現れない脳振盪は「亜脳振盪」と呼ばれ、日本ではほとんど知られていませんが、アメリカでは10年以上も前にメディアに取り上げられ定着している概念なのだと臼井さんは教えてくれました。ロングキックやクロスボール、シュートに対するクリア時のヘディングの衝撃は大きく、誰しも頭がジーンとしたり、ズキンとした痛みを感じたことがあるのではないでしょうか。「シュートに対するクリアやクロスボールは頭への衝撃が強く、即時的な記憶や注意力、思考スピードの低下が生じます。このヘディング直後の記憶力の変化は、脳の防衛反応とも言われており、このような亜脳振盪を長年繰り返すと、脳の障害に繋がる可能性があると言われています。そのため、そのようなシチュエーションは練習で行わない方がいいと思います。ただし、スローインのボールをヘディングするなど、ワンバウンドしたボールに対するヘディングは OK です。衝撃は小さいですからね」頭部に対する衝撃に目を向けることは、子どもの身体を守ることにもつながります。「ジュニア年代でヘディングの練習をするときは、高学年になるまで待って、柔らかくて軽い3号球を使うと良いと思います。それと、正しいフォームを意識することも大切です。ヘディングは髪の生え際のところにボールを当てて、インパクトの瞬間まで目を開いて、ボールをしっかりと見ます。そのヘディングの仕方をマスターすれば、衝撃は少なくなります。ジャンプヘッドや横から来たボールは難しいのですが、無謀なヘディングにならないように、基本を知っておくことが大切です」■ヘッドギアをつけてヘディング練習をする方が衝撃が増える子どもたちが「ヘッドギア」をつけてサッカーをしている姿を見かけますが、ヘッドギアをつければ、ヘディングの衝撃を受けずに済むのでしょうか?「ヘッドギアはあくまで、硬いものと衝突する際に、頭を保護するためのものです。つまり、ヘディングの衝撃を守ってはくれるものではありません。ちなみに、ヘッドギアを付けてヘディングをする方が、頭にかかる衝撃は増えるというデータもあります。そのことからもわかる通り、ヘッドギアをつけてヘディングをするのはやめたほうがいいと思います」ヘッドギアが効果を発揮するのは、地面や頭同士など、硬いものと接触するときです。試合中にヘディングの機会がほとんどない10歳以下や、フットサルなどのミニゲームなどでの装着は理にかなっており、場面を選んで上手く使用していくと良いでしょう。「アメリカでサッカーの脳振盪に関する国際会議があり、『ヘッドギアはヘディングから頭を守るためにするものではありません』と注意喚起がされています」■大人が知っておくべきヘディングの注意点ジュニア年代はなるべくヘディングをしない。するなら柔らかいボール(3号球など)を使う。ヘッドギアはヘディングから頭部を守ってくれるものではない。脳振盪の症状を教育し、症状が現れた場合はコーチに報告をする。これらをコーチを始めとする大人が理解し、実行することで、子どもたちの身体を守ることにつながるでしょう。次回の記事では、子どもたちに増えている「シーバー病」や「腰椎分離症」にならないためのアドバイスをお伝えします。臼井直人(うすい・なおと)理学療法士・腎臓リハビリテーション指導士<所属>医療法人社団嬉泉会 嬉泉病院 リハビリテーション科 科長順天堂大学 大学院 医学研究科 腎臓内科学所属の嬉泉病院 リハビリテーション科では、腎臓病患者のフレイルや、心肺機能と自律神経障害、リハビリテーションなどの臨床研究に取り組んでいる。学会学術集会では優秀賞などを受賞、その他、論文・著書・学会発表など多数2020年9月には論文「サッカーにおけるヘディングの累積曝露と慢性外傷性脳症に関する最近の知見」を発表「サッカーにおけるヘディングの累積曝露と慢性外傷性脳症に関する最近の知見」はこちらで閲覧できます>>
2021年01月20日