「東方神起」のチャンミンが、煌びやかなステージの上で歌い、踊るアジアのトップスターの姿とは、ひと味もふた味も違った新たな魅力を魅せるファンタジー・ラブロマンス時代劇「夜を歩く士〈ソンビ〉」。俳優として、妻夫木聡主演の映画『黄金を抱いて翔べ』(’12)で日本アカデミー賞新人俳優賞を受賞した彼は、チョン・ウソン主演ドラマ「ATHENA-アテナ-」へのゲスト出演ほか、初主演ドラマ「パラダイス牧場」ではハマリ役のような御曹司、続く「Mimi」では抜群のルックスを持つ28歳の人気漫画家と初恋を経験する18歳の高校生を一人二役で演じるなど、説得力のある演技で、少しずつ、着実に実績を重ねてきた。そして、入隊前最後の作品となった本ドラマでは、朝鮮王朝の時代劇に初挑戦。口元にヒゲをたくわえ、韓服に身を包んだ姿を披露しながら、一見遊び人で、幼少期につらい過去を持ち、内なる闘志を胸に秘め、弓術に長ける…という萌えポイント満載の王の孫=“世孫”イ・ユンを熱演している。このキャラクターについて、チャンミンは、「イ・ユンは将来、朝鮮の王になる世孫です。王宮の中の権力争いを嫌い、また王である祖父との関係が悪く、王宮の外で放蕩三昧の生活を送っています。しかし、これは好きでそういう生活をしているというよりも、敵を油断させるために意図的に宮中での生活を避けているわけです。実に頭のいい、将来優れた王になれるキャラクターですね」と説明する。劇中では、遊び人として、軽妙で色気のある演技を魅せるチャンミン。男装して本売りをするヒロイン・ヤンソン(イ・ユビ)に、優しい笑顔で積極的にアプローチを仕掛けるお茶目な一面は注目しておきたいところだ。「僕と似ている点を探すなら、僕も若い友人と一緒に外で遊ぶのが好きですが、同時に、イ・ユンがカリスマ性を発揮して仕事をするように、僕も仕事に集中する両面性を持つ部分があります。そこが似ている部分として、あるいはイ・ユンに学びたい部分だといえると思います」とチャンミンは言う。確かにそのカリスマ性は、トップスターとしての彼の姿にも通じるものが。特に本作では、馬上からクールに弓を射るシーンの凛々しさも評判を呼んだ。「撮影が始まる前に乗馬練習をしたのですが、時間がなくて、あまりできませんでした。それで、馬に乗っている姿がぎこちないと、監督にも叱られました(笑)。撮影中にも、時間を見つけては乗馬の稽古を続けました。武術の練習も、時間を作ってアクション監督と一緒にアクションスクールに行き、一緒に練習に取り組みました」と、その裏側を明かす。「ユンは学問と同時に、武術にも長けた多芸多才なキャラクターです。カメラに不出来な姿が映し出される訳にはいかないと思って、自分なりに一生懸命にやりました。幸い、監督と撮影監督が素晴らしい映像をカメラで切り取っていただいて、感謝しています」と、謙遜しながらふり返っている。初めての時代劇には苦労が多かった様子だが、「この作品は真夏に撮影が行われたのですが、屋外のシーンの撮影の場合、分厚い衣装を着て、付け髭を付けて演技をしなければならないので、それが大変でした。汗だくになり、疲れも半端ではありません。そして、時代劇の台詞は、普段使わない言葉を使用するので、ぎこちなくなりがちですが、スタッフのみなさん、監督、先輩俳優のみなさんの助けもあり、無理なく無事に撮影を終えることができたと思います」と真摯にコメント。さらに、「世孫の衣装、王の衣装、それと同時に一般人に変装をするときの衣装まで、多くの衣装を着てみました。僕は個人的に、ユンのカリスマ性に満ちた姿がうかがえる、弓術場での狩りの服装が一番気に入っています」と語り、本人も弓のシーンはお気に入りとなっているようだ。そんな本作で主演を務めるのは、『王の男』「アラン使道伝」など、美しい容姿と圧倒的な演技で数多くの時代劇を大ヒットに導いてきたイ・ジュンギ。王朝を陰で支配する悪の吸血鬼クィ(イ・スヒョク)の陰謀によって吸血鬼となってしまった主人公ソンヨル(イ・ジュンギ)と、チャンミン演じるイ・ユンは、密かにクィを倒すことを画策する、いわば同じ宿命を背負った“同志”であり、ヤンソンをめぐる恋敵でもある。「イ・ジュンギさんは、まさに長兄としてリーダーシップを発揮しながら、ムードメーカーの役割も果たしていらっしゃいました。しかし、いったんカメラが回りはじめると、顔つきが一変し、役に入り込んで演技に没頭するところは、誰が見ても素晴らしい演技者の姿です。本当に俳優として学ぶ点が多いと思いました。また、ムードメーカーとして現場を盛り上げ、リードしていく姿にも、先輩であるイ・ジュンギさんに学ばなければと感じました」と、その姿勢にすっかり心酔した様子。一方、対立するクィを演じたイ・スヒョクについては、「そのイメージから、冷たくて暗くて言葉もあまりしゃべらない、静かで大人しい人だろうという先入観がありました」と、チャンミン。「しかし、実際に撮影現場を共にしてみると、意外に話もたくさんしますし、面白くてクールで男らしいんですよ。また、僕が悲惨な目に遭うシーンを撮らなければならないときは、僕のところにやってきて、どうすればより悲惨に見えるか、一緒に考えてくれました。積極的に僕の手助けをしてくれる同僚であり友人、学ぶことの多い同い年の俳優です。本当に一緒にいて楽しい、いい男だと思いました」と、劇中とは打って変わって仲を深めたことを明かす。撮影では「気に入った台詞や場面はとても多いのですが、なかでも記憶に残るものが2つあります」と言うチャンミン。「1つは、ヤンソンと2人で居酒屋に座り、済州島(耽羅)へと旅立つヤンソンを前に、独り言で自分の思いを吐露する場面です。自分の本心を隠して、ヤンソンにいたずらっぽく振る舞うシーンですね。あと1つは、それとは反対に、宮殿の中で世孫としてのカリスマ性あふれる姿が表現された場面です。弓道場で王に対して、『これが私が追っていた間者です』と告発するシーンですが、ユンの男らしさがよく表現されているかなと思いました。この2つの場面を選びたいですね」と語ってくれた。今後、兵役を経た2017年後半には「東方神起」としての活動再開も予想されているが、「また演技をする機会がありましたら、具体的な目標は何かというよりも、もっともっと演技がうまくなりたいですね」とチャンミン。「再び演技をする機会をいただけたら、自分の成長した姿、上手くなった姿をお見せしたいです。そして、尊敬する演技者の皆さんから学んだことを自分のものにして、さらに成長する演技者になる、これが僕の目標です」と、力強く思いを込める。最後に日本のファンへ、「僕がイ・ユン役を演じているドラマ『夜を歩く士』は、朝鮮時代にもしヴァンパイアがいたら、という想像から始まった物語です。宮廷の中で巻き起こる戦い、そして若い男女のロマンスなど、おもしろいストーリーに満ちたドラマですので、皆さんにたくさん愛していただけたらと思います」とメッセージを贈るチャンミン。謙虚で努力を惜しまず、さらなる成長を目指し続ける男は、やはり、人を惹きつけて離さない唯一無二のカリスマ性を放っている。「夜を歩く士〈ソンビ〉」DVD-SET1/Blu-ray SET1は発売中、DVD-SET2/Blu-ray SET2は9月2日(金)より発売。(text:cinemacafe.net)
2016年09月01日夫婦とはなんだろう。いろいろ考えてみますが、理想の夫婦像はなかなか見えてきません。実際に夫婦のお話を聞いてみれば、自分にとっての理想型が見つかるかもしれない。本インタビューではそんな身近な夫婦にお話を聞いていきます。最初に登場してくれたのは海外でバリバリ働き、現在は山梨で農家を営んでいる水上篤さん。簡単にものを買い与えるのではなく、まずは自分で作ってみることを子どもに教えていると語る、良い意味でこだわりのある子育てをする彼は奥様とはどんなふうに向き合っているのでしょうか。水上篤さん現在の仕事農業生産法人 株式会社hototo 代表取締役農業生産法人株式会社白州郷牧場取締役保健農園ホテル運営アドバイザー勤務曜日と帰宅時間特に決まっておらず、朝は8時~9時に出かけ、18時~19時に帰宅することが多い。子どもを保育園に送っていくこともある。家族構成妻、子供3人(男5歳、女2歳、女0歳)奥様の職業株式会社hototoの事務系の仕事を必要な時のみお手伝いするほか、個人的な活動を平日10時~15時のみ行っている。理屈じゃなく、一生一緒にいても大丈夫な気がした—結婚の決め手になったことは何でしたか?水上:普通、結婚するかしないかって迷うじゃないですか。でも、妻は、「結婚する?」「良いよ!」くらいの即断即決の人。そこがすごいと思いました。性格的には自分とは正反対の人間で、人前に出たがらないですし、空気や場の雰囲気が読めて周りの人のことも考えられる女性です。プロポーズまでは付き合い始めてから1ヶ月ぐらい。根拠はないけど、一生一緒にいても大丈夫だと思いました。収入や学歴を全く気にしないですし、僕が食いっぱぐれたらどうしようってことも考えないような人です。「農業をやってるんだから、食べられなくなったら畑だけやっていけば良いじゃん、ほかの仕事は辞めちゃえば良いじゃん」って感じなんです。–結婚前に人生観や仕事観について何か話をしていましたか?水上:そんなにきちんと話してはいないですけど、妻は、「森とか木が好きだから、そういうものに関わる仕事がしたい」とは言っていました。僕は、「お金お金ばかりじゃなく、“面白い”の多い生きかたができないかな?」という話はしていました。二人ともお金に依存していなくて、お金なんてなくても生きていけると思っているところは似てますね。買う前にまず自分で作ってみることを大事にしているそうです。もちろん水上さんも手伝います。結婚したら自分の時間がなくなると思っていたけど、してみたら楽しかった—奥様と結婚して良かったと思ったエピソードを教えてください。水上:目指しているところがほとんど同じだから、話題も同じなのが良いことです。妻が読んだ子育ての本と僕が読んだ人材育成の本を交換しても、同じことが書いてある。「そんなの面白いの~?」って言いながら交換するんですけど、読んでみたら「超面白かった!」ってなるんです。—では、奥様のどんなところが好きですか?水上:一言では表せません(笑)深い海のような存在です。–深い海とは??水上:「かわいい」とか「ワクワク」も言葉で説明できないじゃないですか。だから、どこかひとつのパーツを言い表そうと思っても難しいし、違和感があります(笑)—なるほど。ちなみに夫婦生活は、独身時代に想像していたものと同じでしたか?水上:もともと想像してませんでした(笑)あんまりあーだこーだと考えると大変だから、明日のことは明日考える。目の前に来たものを楽しもうと思ってるので、先のことはあまり考えてないです。結婚は、してもしなくてもどっちでも良いものだと思うんですが、夫婦として生きていくほうが人生は2倍3倍面白いと思います。自分と違う考えかたに出会えますから。言葉のコミュニケーションだけではなく、もっと同じ体験を—「色々細かく考えてない」水上さんが、夫婦生活を円満に保つために日々の生活の中で実践していることは何かありますか?水上:相互理解ですね。そのための一番簡単な方法は、「共同作業」です。世の中は、相互理解力が弱すぎる人が多いと思います。「あれは自分に合わない」とか、「この人は喋りにくい」とか、「だから嫌だ」って。基本が「自分に合わせてください」っていうスタンスじゃないですか。でも、自分に合う人やモノなんて世の中にないんですよ。違うものを相互に理解して楽しんでいく社会だから、「私にぴったり合う人がいるはず」ではなくて、「合わないから良い」んだと思います。コミュニケーションは口だけじゃ無理なので、一緒に体験しないとだめです。–お出かけするときは、どんなところに行っていますか?水上:妻が行きたいイベントに一緒に行ったり、逆に自分のイベントも見に来てもらったりしています。農業もやるし、同じものを見聞きしていますよ。仲良くいようなんて考えたことがない。お互いに思ったことははっきり言う。—水上さんから奥様に「こうしてほしい」と言うことはありますか?水上:ありますよ。「食事は手作りが良いよね」とか、「子供にジャンクフードは食べさせないでね」って言っているんですけど、妻自身がファーストフードに行くので、子供が「○ッピーセット、○ッピーセット」って言うんです。(笑)しょうがないですよね、そうなったら。そんなに怒ることでもないですし。日々やることが多すぎて、ストレスを感じている暇もないですしね。—いつまでも仲の良い夫婦でいるために、日々の生活スタイルや考えかたなど、結婚してから自ら変えたことは何かありますか?水上:なるほどね~。—なるほど?水上:無理してまで仲良くしていたいと思ってないんです。—こちらが「なるほど」です(笑)水上:「これを言ったらこの人と関係が崩れるであろう」という気持ちがそもそもないんですよ。「この人に嫌われたくない」とか、「この人に好かれたい」っていう想いがない。その人のためを思えば言うべきことは言うし、お互いにこれからも一緒にやっていかなきゃいけないので。だから、仲良くしようって努力していることはまずないです。たぶん、妻にもないと思います。そんなところに気は遣ってないです。—世の中では、惚れた弱みみたいな感じで、どちらかがどちらかに合わせてしまっている組み合わせって実は結婚前も結婚後も多い気がするんですが、お二人の根底にある信頼関係はすごいですね。水上:うーん。たとえば、「子供に嫌われたくないからこれを言わない」って考えることってないじゃないですか。叱るときはしっかり叱るし、その子自身を否定しているわけじゃないので、何か言ったからってお互いの信頼関係は絶対に崩れないっていう中で思っていることをきちんと言葉にすることは必要ですよね。「本当はこうしてほしかった」とか、自分の考えていることを普段から相手にきちんと言わないとズレます。言わないとわからないことはいっぱいあるし、「察してほしい」なんて無理だと思う。「ただいま~」「おっせえよ!」みたいな感じで、思ったことは思った時に言ったほうが良いですよ。自分の人生でもあるし奥さんの人生でもあるから、誰かが無理するっておかしいじゃないですか。合わせるって大変ですよね? どうせ合わないのに。2015年11月に三人目が生まれました。水上さんのご両親も一緒なので、家族は7人になったそうです。うまくいかない夫婦はコミュニケーション不足なんじゃないかな—仲が良さそうだから、これまでに離婚の危機なんてないですよね?水上:ないです。離婚なんて考えたことがない。離婚する・されると思っていたら毎日オドオドになっちゃうと思います。たとえば、「明日クビになるかも」ってオドオドしながら働いている従業員が良いパフォーマンスを出すことはない。仕事の中には査定で評価が上がったり下がったりする制度もありますけど、結婚でいったらそれが離婚なんじゃないかな。そんなこと気にしていたら疲れますよね。うまくいかない夫婦は、コミュニケーション不足なんだと思います。先ほどの話にも出ましたが、都心に住んでいると夫婦の共同作業がないから、一緒にご飯を食べているだけになりやすい。でも、それじゃ相手への理解は深まらないですよ。ホントは、一緒にキャンプに行ったり海に行ったり、一緒にジョギングしたり、マッサージしたり、小さな事でもいいので何かを一緒にやったほうが良いと思います。同じ体験をすることでコミュニケーションが深まるから、「同じことをやってみる」ことは大事です。家事だって、実際にやってみればわかります。世のお父さんたちはやらなすぎる。家事は楽だと思っている男性が多いと思いますけど、家事や子育ては、絶対に仕事より大変です。—水上さん自身がこれからも変わらずにいたいこと、奥様に変わらずにいてほしいことは何かありますか?水上:常に考えは変わるだろうから、変化していく日々を楽しみたいです。そのほうが良いですよね!「独身のときみたいに常に化粧をしていてほしい」って考えかたなんて理解できません。これまでも、今も、これからも、その時々の「今」に注目している—これからの夫婦生活についての希望・目標はありますか?水上:突然来年は海外に行くかもしれないし、沖縄に移住するかもしれない。どうなるかわからないですけど、僕も妻も、どうなっても人生を楽しむ自信はあります。あとは、子供に受けさせたい教育やサービスがないので、それを自分たちがつくらなきゃいけないと思っています。子供はどんどん大きくなりますから、時間も迫っているので「いつか」なんて考えていない。だから、未来にも過去にも注目していなくて、「今」に注目しています。今を楽しめなかったら10年後は楽しくないはず!ライター所感:実は水上さんと私は友人です。このインタビューのやり取りだけを見れば、水上さんを「あっけらかんとしていて、必要以上に人に気を遣わない、ダイナミックな人」だと感じるかもしれません。でも、彼は非常に面倒見が良く、人の気持ちに気づいて細かな配慮ができるタイプです。今回、このインタビューもふたつ返事で受けてくれました。ダイナミックに構えながらも関係が壊れない夫婦でいられるのは、水上さんご夫妻がお互いを信頼し本音で向き合っているからなのかもしれません。理想の夫婦像だけではなく、コミュニケーションってなんだろうってところも深く考えさせられる、良い機会になりました。ライター:藤宮 ありさ
2016年09月01日ミラ・ジョヴォヴィッチが主演する「バイオハザード」シリーズ最終章『バイオハザード:ファイナル』。12月23日(金・祝)の日本最速公開を前に、急ピッチで仕上げ作業が進むなか、シリーズ全作の製作に関わったポール・W・S・アンダーソン監督が取材に応じた。2002年の第1作公開以来、世界中で一大ムーブメントを巻き起こした映画『バイオハザード』シリーズ。その約15年にわたる歴史は、主演女優のミラと夫であるアンダーソン監督がクリエイティブな夫婦愛を貫いた長い歳月でもある。ハリウッドきっての“おしどり夫婦”である2人の関係性について、アンダーソン監督はこう語る。「疑いの余地なく、ミラは僕にとってのミューズだね。これまで彼女とは7本の映画を一緒に撮ってきたし、いまや自分が手がける脚本に登場する女性キャラクターは、どれも大なり小なりミラに影響を受けている。不思議だけど、必然なのかもしれないね。今回はミラの妊娠で、撮影が予定より9か月先延ばしになったけど、おかげで入念な準備ができたんだ」そんな2人を結びつけるのは、ほかならぬ映画への愛情だといい「例えば、自宅で一緒に過ごしていても、つい映画について熱く語り合ってしまうほど。プライベートでは映画のことを忘れた方がいいって言う人もいるけど、我が家ではありえないよ!仕事でも家庭でも、愛する人との時間が続いているというのは幸せなことだと思うね」としみじみ。出演の有無に関わらず、ミラはアンダーソン監督が手がける企画すべてに目を通すそうで、「ミラは思ったことをズケズケ言ってくれるから(笑)、僕としても助かっているよ。『これって、成立していないんじゃない?』なんて言われることもしょっちゅうだし、僕もしっかり意見に耳を傾けている」と全幅の信頼を寄せている。ついに最終章を迎える『バイオハザード:ファイナル』について、ミラ&アンダーソン監督が下した結論は、「ざらざらとしたリアリティを追及すること」だった。「今回は(ミラ演じる)アリスをよりエモーショナルな存在として描き、彼女の体験が観客に響くような作品にしたいと思ったからね。演出面でも、これまで以上に現実味を大切にしたから、仮想空間が舞台になることが多かった過去の『バイオハザード』シリーズと比べて、異質な雰囲気を味わってもらえるはずだよ。具体的にはグリーンバックでの撮影は極力控えて、屋外でのロケーションが増えた。その分、準備は大がかりだったけど、おかげでリアルな映像が撮れたよ」(アンダーソン監督)日本生まれのゲームを原作にした映画『バイオハザード』シリーズは、洋画不振の日本にあって、安定した興行成績を残し、何より多くのファンから熱い支持を集めている。『バイオハザード:ファイナル』は日本最速公開が実現し、有終の美を飾る舞台が整った形だ。「当然、映画のシリーズ全体を通してデザイン性、環境、クリーチャー、カメラアングルなどが、ゲームから強く影響されているのは間違いない。作品によっては、ゲームの設定からかけ離れることもあったけど、それでもゲームファンに『なるほど』と思ってもらえたと自負しているよ」とアンダーソン監督。自身も親日家を公言しており、「映画作家として日本文化に影響を受けた面が多々あるんだ。安藤忠雄をはじめとして、建築やグラフィックデザインの分野で日本は最高峰だと思うし、若い頃に見た『鉄男』(塚本晋也監督)といった日本のSF映画も大好きだよ。それにプロモーションで世界各地を旅するけど、いつも日本版のポスターこそ世界で一番クールだと感じるよ。どうしてほかの国もこういう風にデザインしなかったんだろうと思うくらい。本当に心から日本を愛しているよ」『バイオハザード:ファイナル』12月23日(金・祝)より全国にて公開。(text:Ryo Uchida)
2016年09月01日「調教」「復讐」――そんなキーワードで彩られる主人公。ひとりの女性として、中山美穂は彼女の行動や心理を「理解できない」と突き放すが、一方で女優・中山美穂はこの役にどうしようもなく惹きつけられ、出演を即決したという。WOWOWにて放送中の連続ドラマ「賢者の愛」。かつて親友に初恋の男性を奪われた女性が、その親友・百合(高岡早紀)と初恋の男性(田辺誠一)の間に生まれた息子・直巳(竜星涼)を、復讐のために自分好みの男に調教し、育て上げていくさまを描き出す。そこには妖艶で、深い闇を心の内に抱えた、誰も見たことのない中山美穂がいた――。原作は鋭い感性で数々のベストセラー小説を送り出してきた山田詠美。中山さん自身「20代の頃に、山田さんの本は結構、読んでいたし、憧れもあったので嬉しかった」とのこと。山田さんは、自身が生み出した「賢者の愛」のダークヒロイン・真由子を「中山美穂が演るのか!」と驚きをもって受け止めたという。確かに、最愛の人を奪った親友への憎しみを糧に、20年もの歳月を復讐のために費やす女性を演じる中山美穂というのは、なかなか想像できない。だが、中山さんは、こうした役を演じたいという思いは「以前からずっとあった」と明かす。「どうしても、これまで演じてきたのはいわゆる(典型的な)ヒロインというのが多かったので(苦笑)。ようやく、やらせてもらえるんだなという思いでした」。実際、これまで演じてきた役柄とは全く異なる真由子という役を演じたことで、女優として新たな境地が開けたという実感は?「正直、この役をやることで何か、これまでと変わった一面が出せるかもって思ってたんです。でも、実際に演じながら『あれ? あんまり変わっていないのかな…』と少しガッカリした部分もあり…(苦笑)。それを埋めるべく、どうしたらいいのか? と悩みながら演じていたところはあります。ただ、完成した作品を見て、自分で思っていた以上にちゃんとできていたんだなという実感はあります 」。繰り返しになるが、中山さん自身は20年にもわたる真由子の復讐の炎を「想像も理解もできない」という。親友でありながら、愛憎によって深く結びついた真由子と百合の関係性や、いわゆる女たちのマウンティング争いについても同様。「やっぱり理解できないですね(苦笑)。2人の関係に関しては、“友情”という言い方をしますけど、家族的でもあるなと感じてます。家族って、少しの齟齬で大きくずれちゃうことってあるじゃないですか。そういう関係性なんじゃないかなって」。下世話な言い方かもしれないが、真由子の直面する“女の戦い”を、10代の頃から時に同世代の女性と比べられながら芸能界を渡り歩いてきた“女優・中山美穂”とどうしても重ね合わせて見てしまう視聴者も多いのではないかと思うが…。「そうかもしれないですね(笑)。私自身は、特に何も気にしてないですが…。高岡早紀ちゃんが20代の真由子の登場シーンを見て『中山美穂だ!』と思ったと言ってましたが(笑)、同じように感じながら見る人もいるでしょうね。まあ、それはしょうがないかな(笑)」。「愛」「欲望」「復讐」と真由子を表す要素は複数あるが、中山さんが真由子を演じる上で一番軸となったのは?そんな問いに少し思案し「やはり、愛なんでしょうね…」と漏らす。「そもそも復讐を目的としつつも、どんどん心が動いていくというところに魅力を感じました。どうしようもないという思い。でも、いまさら引き下がれないという思いもあって…。そういう部分はすごく人間的だなと思います」。では、中山美穂にとっての愛とは?「うーん、なんでしょうね…?コミュニケーションというか、自分の一方的な思いだけではやはり成立しないものだなと思います。人を育てようとしたり、理解し、分かり合おうとする――そういう努力をできることが愛なのかな?無関心にならず、突き放さず…でも『想ってる!想ってる!』『好き!好き!』というだけじゃ愛とは言えないですよね。真由子と直巳の関係?まあ、これもひとつの愛ですかね…」。中山さんは真由子の心理が理解できないという点について、自身はそこまで長く復讐心を持続させることができないと語っている。実際、中山さんはネガティブな感情や憎しみが心にわいた時、どのようにしてそれを忘れたり、乗り越えたりするのだろうか?「時間は必要だと思いますけど、大変ですよね(苦笑)。ゆるすしかないかな」。「忘れる」のではなく相手を「ゆるす」?「うん、ゆるしに近いんだと思います。時間とゆるしですね。どんなに心を痛めても、結局、ゆるさなければ前には進めないんじゃないかと思います」。真由子は今後、中山さんが口にするような「ゆるし」の境地にたどり着くのか? それとも…? 改めてこれからの展開を踏まえて、見どころを聞いた。「“共感”とは言わないまでも、わかってもらえる空気感を感じられるんじゃないかと思います。人間の汚さ、醜さがふんだんに出てきますが、そこに人間らしさ、きれいごとじゃ済まない部分を感じていただければ。これから、真由子と百合の過去についてもどんどん明かされていきますし、最後まで…凄いです(笑)!」WOWOW土曜ドラマ「連続ドラマW 賢者の愛」は毎週土曜22時より放送中。9月9日(金)深夜0時より、1~3話を最終話直前に一挙放送。(text:Naoki Kurozu)
2016年08月31日働くママたちの悩み。それは、毎日帰宅後に作る晩ごはんのレシピ。仕事で疲れた身体でお迎えダッシュ!家に着くやいなや、お腹を空かせたこどものために「さぁやるぞ!」とエンジンをかけてキッチンへ直行。こんな時、パパッと手早く、彩り豊かなおいしいごはんが作れたら……。そんな願いを日々抱えつつ、キッチンに立つママたちにぴたりとハマるお鍋が、ホーロー鍋のパイオニア「ル・クルーゼ」から登場した進化系モデル「シグニチャー」シリーズです。そこで、このお鍋を使って帰宅後約20分で作れる「簡単、おいしい、見た目よし!」な愛情レシピを、代々木上原で「chioben(チオベン)」を営む人気料理人・山本千織さんが指南。働くママ必見の晩ごはんレシピを教えていただきました。大切なのは、「料理のストレス」から解放されること千織さんといえば、バラエティ豊かなおかずを軸に、彩り良し、センス良しなお弁当で編集者たちにも大人気。「chioben」を開業して以来、お弁当を1度食べてからハマってしまったというリピーターの口コミでまたたく間に評判となり、一昨年には満を持して著書を刊行。現在、昼夜問わずお弁当やパーティーケータリングで多忙な日々を送っています。「長年料理をしてきた身ゆえに最近特にそう思うのですが、キッチンではできるだけストレスフリーでいることが大切なんですよね。小さなお子さんを抱える働くママたちはただでさえ時間に追われている日々ですから、これ以上ストレスを蓄えたくない、キッチンではストレスからできる限り解放されたいと願っているはず」そんなママたちが抱えるキッチンでのお悩みは「思っている以上に簡単な方法で解決できる」と千織さんは言います。「たとえば、前の晩にパパッと簡単な下準備を仕込んでおく。特に眠っている間の<漬け込み>は時間の有効活用術としてテッパンです。今回ご提案するレシピは、前の晩、夕食の片付けついでにパパッと仕込んでおくだけで、翌日は帰宅後たった20分で、調理の手間やストレスもほとんどなく作れるおいしい煮込み料理。レシピの要となるのは、食材のおいしさを短時間でぐいぐい引き出してくれる鋳物ホーロー鍋『ル・クルーゼ』の進化系モデル “シグニチャーシリーズ” です」帰宅後たった20分で完成! 「鶏肉のスイートスパイス煮」2歳~3歳の小さなお子さんと大人たちが一緒に楽しめる、甘めのカレー風味の煮物。前の晩、夕食の片付けついでに、またはお子さんを寝かしつけたあとに、鶏肉の漬け込みまでを下準備。翌日、帰宅後はその漬け込みタレごと鍋にあけ、パパッとカットした野菜を加えて合計約20分煮るだけ。熱伝導性・蓄熱性が高い「ル・クルーゼ」鍋だからこそ、おいしく簡単に仕上がるレシピです。<材料>(2.5人分)※大人2人とお子さま1人でちょうどよい量です・鶏もも 2枚(460g)A.漬け込みダレ ・酒 1/2カップ ・プレーンヨーグルト 1/2カップ ※脂肪0タイプでもOK ・砂糖 大さじ2弱 ・カレー粉 大さじ1弱 ・ウスターソース 大さじ2 ※とんかつソースでもOK ・醤油 大さじ2 ・酢 大さじ1 ・おろしにんにく 大さじ1弱 ・生姜 一片(スライス)B. 季節の野菜・きゅうり 1~2本・茄子 2~3本・玉ねぎ 1/2個・ミニトマト 10個 <下準備>Aの漬けダレの材料を用意し、よく混ぜたうえでファスナー式の保存袋に入れ、ひとくち大にカットした鶏肉を5時間~ひと晩、冷蔵庫で漬け込む。<作り方>前夜に仕込んでおいた「漬けダレ」ごと鶏肉を鍋に入れて、中火にかける。蓋をして8~10分、鍋全体がぐつぐつするまで煮る。その間、野菜をひとくち大にカットする。(きゅうり、茄子は乱切り、玉ねぎはクシ切り)鍋が煮立ったら蓋を開け、野菜を投入。中火のままさらに約10分ほど煮る。途中、焦げないよう木べらなどで全体をまんべんなく混ぜながら、それぞれの野菜がしんなりする程度を目安に煮つめて完成。【千織さんの4つのTIPS】1. 煮込み方はお子さんの好みに合わせて野菜が苦手であれば、お肉を煮込むタイミングで一緒に野菜を投入。そのまま20分ぐつぐつ煮込めば、野菜とろとろのカレー風煮込みが完成します。2. 野菜のゴロゴロ感をもっと出したいときは?野菜を鍋に投入する前に油をひいたフライパンでサッと火を入れるひと手間を加えれば、野菜のゴロゴロ感がもっと引き立ちます。3. 余裕があれば、トマトは最後にトマトは煮過ぎると煮くずれし過ぎてしまう。甘みと酸味をほどよく引き出すためにも、トマトはできるだけ最後の仕上げ時(完成する3~4分前くらい)に投入するのがベストです。4. 一度で二度おいしい!前日、鶏肉を多めに漬け込んでおけば、スイートスパイス煮を作った翌日は、残しておいた鶏肉でカレー風味の唐揚げに。保存袋から取り出した鶏肉の水分を軽くとり、片栗粉をまぶして揚げるだけ。これもこどもたちに人気です。あの「ル・クルーゼ」が進化した! その魅力とは?千織さんのレシピがおいしく仕上がる秘訣は、新改良された「ル・クルーゼ」の進化系モデル「シグニチャー」シリーズだからこそ。「ル・クルーゼ」本来の魅力と併せて、注目すべきポイントをご紹介します。その1. 高い熱伝導性と蓄熱性「ル・クルーゼ」の魅力は、その高い熱伝導性と蓄熱性にあります。平日夜は特に、じっくり時間をかけて調理する余裕がないママにとって、短時間でも食材の甘みや旨みを最大限に引き出してくれる鍋はとにかく強い味方!その2. 「フタ」はさらに使いやすく改良さらに進化したドーム型のフタは「効率的な蒸気の循環」を叶える従来の機能はそのままに、重さやデザイン性などを新改良。人間工学に基づいた新デザインのツマミもよりふっくらと肉厚なフォルムに新改良され、掴みやすくなりました。その3. 旨みを引き出す「スチームポイント」最大の特徴とも言えるのが、フタの内側3カ所にある小さな突起「スチームポイント」。このスチームポイントが生み出すわずかな隙き間が効果的に蒸気を逃し、食材の雑味を外に逃しながら旨みをぐいぐい引き出します。その4. エナメルコーティングも進化汚れや臭いがつきにくくお手入れも簡単! 進化したエナメルコーティングは美しい色だけでなく耐久性も叶えます。「何度洗っても臭いが取れない」なんてストレスからも解放してくれます。今ならお得な「お鍋買い替えキャンペーン」実施中!千織さんも使い勝手の良さに驚いたという「ル・クルーゼ」の最新モデル「シグニチャー」。ホーロー鋳物鍋のパイオニアとして91年の歴史の中で細部にわたり進化を遂げた「ル・クルーゼ」は、まさに “一生ものの鍋” として働くママたちの毎日を応援します。その「ル・クルーゼ」を手に入れたい! というママたちに朗報です。日常でより長く使いやすく進化した最新モデル「シグニチャー」の発売を記念して、ル・クルーゼでは2016年8月24日(水)より 「鍋買い替えキャンペーン」 を実施中。その内容は、なんとお手持ちの不要になった鍋と引き換えに、「ル・クルーゼ シグニチャー」全製品を10,000円引きの価格で提供するというもの。引き取り対象は、ブランド、種類、材質、購入価格、サイズを問わず、どんな鍋でもOKという、なんとも太っ腹なキャンペーンです。「キッチンでのストレスフリー」を叶えたいと願うママたち、ぜひこのチャンスをお見逃しなく!ル・クルーゼ シグニチャー発売記念鍋買い替えキャンペーン、実施中! 実施期間:2016年8月24日(水)~9月20日(火)対象商品:「シグニチャー・ココット・ロンド」16cm 18cm 20cm 24cm、「シグニチャー・ココット・ジャポーネーズ」 24cm、「シグニチャー・ココット・オーバル」 25cm 27cmキャンペーン実施店:ル・クルーゼ ショップ、オンラインショップ ※百貨店や専門店は対象外お問い合わせ:ル・クルーゼ ジャポン株式会社 (取材・文/松浦明、撮影/林ひろし)
2016年08月31日エディターであり古書店&ギャラリーを営みながら、1歳半の男の子を育てている赤木真弓さん。 <前編>赤木さんの「やさしさのヒミツ」 に続いて<後編>では、息子の温くんのために愛をこめて選んだという、こだわりの「子育てアイテム」をご紹介します。赤木真弓さん / 息子さん:温(おん)くん(1歳半)ライター、編集者。横浜のショップ「greenpoint books & things」店主。旅好きユニット「auk(オーク)」としても、雑誌の記事や本作りを行っている。著書に『ラトビア、リトアニア、エストニアに伝わる温かな手仕事』(誠文堂新光社)、共著に『ブルックリン・ネイバーフッド』、『オランダ・ショート・トリップ』(ともにスペースシャワーネットワーク)ほか。 やさしいママのモノ選び:手づくりや、素朴で安心素材のおもちゃを選ぶ赤木さん夫婦のお部屋にいると、なぜかついついリラックスしてしまいます。足場板を使ったフローリング、ヴィンテージの家具、蚤の市で見つけた置物など、ひとつひとつに二人の“好き”が感じられるからでしょうか。「新品より、味のあるものが好きなんです。アーティストの友人が作った手作りのモノや絵画など、ここにあるのは趣味で選んだものばかり。子どもができてからは、おもちゃも増えましたが、やっぱり手作りのものを与えて、その感覚を伝えたいと思うんです」赤木さんが子どものために作ったというお手玉は、あずきを布で包んだオリジナルのもの。手にした時の感触も、心地よいおもちゃです。「木の積み木は友人からの贈り物。minä perhonenのデザインで、色使いが気に入っています。積み木は子どもの脳の刺激にもよいと言われていますが、ナチュラルな素材ややさしい色彩の感触は、子どもの五感にもよい刺激になるのではと思います。いつか、子どもがもう少し大きくなったら、一緒に美術館にいって、いい刺激をたくさん吸収して欲しいんです」 やさしいママのモノ選び:「せいろとホーローバット」でつくるシンプルなおやつとごはん温くんのご飯は、野菜中心のヘルシーごはん。「せいろを使って、ごはんも野菜も全部蒸して作ります。おかゆもすべて一緒に作れるので、せいろは重宝しています。蒸した野菜は軽く塩をふってオリーブオイルをかけるだけ」 野菜好きの温くんは、お皿一杯の野菜も、ぱくぱく平らげてしまいます。お菓子も、できる限り手作りにしたいと心がけているそう。「最近、よく作るのはホーローバットを使った簡単デザート。バターを使わずに作るホーローバットのショートブレッドなどは、子どもも大好きです。味付けはきび糖と塩だけのシンプルなものですが、全粒粉を使っているので噛みごたえもあります。他にプリン、アイスなど、ホーローバットで簡単に作れるんです」赤木さんが食べ物にこだわるには理由があります。「子どもの健康を考えたら、やっぱりカラダにやさしい食べ物を手作りするのが一番。味覚は子どものうちに育つといいます。工夫次第で簡単に作れますから、仕事しながらでも手作りご飯にはこだわっています」 やさしいママのモノ選び:使うほど好きになる、自然派の「ヤシノミ洗剤」シリーズお子さんの五感を大切にしたり、肌にやさしい自然素材を選んだりと、「やさしさ」にこだわってモノ選びをしている赤木さんに、“人と地球にやさしい” 「ヤシノミ洗剤」シリーズ3点を体験してもらいました。「今まで、自然派洗剤ってあまりきれいに落ちないんじゃないかと心配していましたが、ヤシノミ洗剤は泡立ちがよく、食器もきれいに洗浄できますね。片手でワンプッシュで使えるのも、使いやすいです。キッチンに置いても絵になるボトルデザイン。コレだったら継続して使いたいなと思いますね」子どもたちの集う本屋さんを夢見て「子どもと一緒に過ごすことで、仕事の価値観も変わってきました」という赤木さん。これまでは自分の好みで、本も、雑貨も選んできたけれど、子どもができてからは、「子どもに喜んでもらえるもの」というものの見方をするようになったそう。「子どもがもう少し大きくなったら、私のお店、greenpoint books & thingsも変わっていくと思います。近所の人たちが集う商店街にある本屋ですから、いつか子どもたちが学校帰りに『ただいま』『遊びに来たよ』と立ち寄ってお店にくるようになったら、嬉しいですね。子どものうちにいろんな本を見て、刺激を受けて、視野を広げてくれるようになって欲しいと願っています」取材/文:東ミチヨ 撮影:林ひろし[PR]サラヤ株式会社 【やさしいママのひみつ 一覧】
2016年08月30日人気アニメ「デジモンアドベンチャー」の15周年を記念して製作された、初代「デジモンアドベンチャー」シリーズの続編を全6章で描く最新作『デジモンアドベンチャー tri.』。第1章「再会」、第2章「決意」ともに大ヒット公開を記録し、前半のクライマックスとなる第3章「告白」が、9月24日(土)より公開される。この度、第3章「告白」のEDテーマを歌う劇中バンド「KNIFE OF DAY(ナイフ・オブ・デイ)」のボーカル&ベース担当・石田ヤマト役を演じる声優・細谷佳正が、EDテーマをキャラクターとして歌うことに決まった際の心境や、楽曲の印象などについて語ったインタビューが到着した。声優・細谷さんといえば、「刀語」鑢七花役でテレビアニメ初主演を飾り、以降、「ちはやふる」綿谷新役、「坂道のアポロン」川渕千太郎役、「黒子のバスケ」日向順平役、「ダイヤのA」結城哲也役、「ハイキュー!!」東峰旭役、「亜人」海斗役など数々の話題作でメインキャストを担当。また『トワイライト』シリーズのテイラー・ロートナーの吹き替えをはじめ、『ターミネーター:新起動/ジェニシス』ジェイ・コートニー扮するカイル・リース役、『インディ・ジョーンズ /クリスタル・スカルの王国』のシャイア・ラブーフの声ほか、洋画や海外ドラマの吹き替えでも活躍している。人気・実力共に兼ね備えた細谷さん。今回の起用について「『デジモンアドベンチャー』という長い歴史のある作品の中で、EDテーマを歌わせていただくということは、アニメに関わらせていただいている者として非常に大きな出来事だと思います。石田ヤマトとして僕を選んでいただいたというのは、製作陣の方々、スタッフの方々など、いろんな人の意志があるし、EDテーマを歌うことを想定して選んでいただいたと思いますし、それはすごくありがたいし、感謝しています」と胸の内を明かした。これまでも多くのアニメでキャラクターソングを歌ってきた細谷さんだが、「映画の終わりでテロップとともに曲が流れるんだなと思うと、ちょっと恥ずかしかったですね(笑)」と、特別な思いを感じたそう。「最近は同じ声優の仕事をされている方でもアーティスト活動をされている方がたくさんいらして、その方々の音楽を聴くと、すごく本格的で…。僕は全然そういうことをしていないので、大丈夫かなという不安がありました」。さらに、「長く続いてきた作品で、第1章が劇場上映される際もすごいニュースになっていましたし、キャストが変わったこともあって、僕がヤマトを演じるということに対して、マイナス意見のほうが多いと思っていたんです。だから第1章のアフレコのときは、気を張ってる部分がありました」と、キャスティングについても不安な気持ちがあったそう。「でもその後、参加させてもらったデジフェスというイベントで和田光司さんの手紙が読まれて、会場には色々な年代の方がいらっしゃっていたんですけど、すごく涙している方が多かったんです。そのときに、好きなアニメが最終回になって、泣いていた自分の子どもの頃を思い出して、あぁ、こんな純粋な方たちが見てくれているんだなと思ったら、第2章からプレッシャーに感じ始めました(笑)」。様々な思いを抱いて挑戦したEDテーマ「僕にとって」。細谷さんは本楽曲をこう分析する。「いままで自分が関わらせていただいたキャラクターソングというのは、セリフだったり展開だったりを直接的に歌詞にしたものが多かったんですけど、『僕にとって』はそうではなく、ストーリーの大きな流れを歌詞にしていると思ったし、具体的に語り過ぎてないところが多くの人に共感していただける曲になっていると思います」。「キャラクターソングだけど、劇場のスケールに合わせた音質にもなっていくだろうから、そこは楽しみではありますね」と仕上がりに期待を寄せつつ、「デモを聴いたときにとても楽しい気持ちになったので、ただただ一生懸命歌って、その思いが伝わればいいな、響いてくれたらいいな」と、本楽曲をアピールした。最後に、ファンへメッセージをこう綴った。「エンターテイメントは見られて、そして聴いてもらってなんぼなので、ここからだと思うんですよね。だからその第一歩として、『デジモンアドベンチャー tri. 第3章「告白」』を見ていただいて、EDテーマを聴いたお客さんに喜んでいただけることが、僕を選んでいただいた方が望んでいることだと思うので、まずは劇場で、いい音響で作品の一部としてのEDテーマを楽しんでいただければと思います。そこで僕もやっと胸をなでおろせると思いますので、ぜひ劇場に足を運んでいただけたらと思います!」。KNIFE OF DAY「僕にとって」は9月21日(水)よりリリース。『デジモンアドベンチャー tri.』第3章「告白」は、9月24日(土)より公開。(text:cinemacafe.net)
2016年08月29日「やさしいママのヒミツ」第一回目は、エディターであり古書店&ギャラリーを営みながら、1歳半の男の子を育てている赤木真弓さんです。赤木真弓さん / 息子さん:温(おん)くん(1歳半)ライター、編集者。横浜のショップ「greenpoint books & things」店主。旅好きユニット「auk(オーク)」としても、雑誌の記事や本作りを行っている。著書に『ラトビア、リトアニア、エストニアに伝わる温かな手仕事』(誠文堂新光社)、共著に『ブルックリン・ネイバーフッド』、『オランダ・ショート・トリップ』(ともにスペースシャワーネットワーク)ほか。 悩みながらもたどり着いた自分らしい子育て、愛を込めて選んだわが子のための厳選アイテムとは? <前編>では、赤木さんの「やさしさのヒミツ」に迫ります。■「絵本」がつなぐ、ママと子どもの大切な時間ひだまりで、ほっこり。子どもと一緒に絵本を読みながら過ごす赤木さん。使い古されたテーブルや、木の温もりがやさしい家具、雑貨など、まるで外国のカフェみたいな和み空間は、書店オーナーの赤木さんならでは。「子どもの頃から本が好きでした。いつか自分の店を持ちたいと思っていましたが、ご縁があり、今は横浜の商店街でギャラリーを併設した書店を営んでいます」昔ながらのお店が今も立ち並ぶ商店街、山元町商店街で、国内外の古書と雑貨を扱うお店「greenpoint books & things」を経営する赤木さん。パリの古本屋さんみたいなお店の感性は、お家のインテリアやキッチンにも生かされています。■おやすみ前の「絵本遊び」で、仕事の疲れも癒される「子どもが生まれる前から、絵本が好きだったんです。絵本ならではの独特の色彩感覚や、シンプルな物語は、眺めているだけでも楽しいですよね。でも子どもが生まれてからは、『どんな本だったら喜んでくれるかな?』と選ぶ基準が変わりました。息子は、気に入った本があると、自分から『ママ、読んで』と言わんばかりにカゴから絵本を持ってきてリクエストするんです。まだ文字は読めない年齢ですが、そのときどきに好きな本があるみたいで」うちの猫、どれ? の問いに大はしゃぎしながら、絵本の猫を指さす1歳半の温(おん)くん。猫の絵本はお気に入りのひとつです。「お風呂上がりの、お休み前のちょっとした時間が絵本タイムなんですが、それは息子とコミュニケーションを楽しむ大切な時間。仕事の疲れも癒されます」そんな温くんとの大切な時間に寄り添うのが、やさしい肌触りのベビー服やタオル。「子どもの洋服やタオルに限らず、家族のお洗濯にはできるだけ肌にやさしい洗剤を使いたいと思っていたんです。だから、植物性で余計なものが入っていないヤシノミの洗濯用洗剤と柔軟剤は、発売された時から気になっていました。洗濯用洗剤は、一般的な洗剤となんら遜色ない洗浄力で不満はありませんし、特に気にいったのは柔軟剤です」「ヤシノミ柔軟剤でふっくら仕上げたベビー服やタオルは、無香料でナチュラルな感触が心地よく感じられます。うちには息子のほかに猫もいますので、香料のない柔軟剤をずっと探していたんです。今までの柔軟剤は、香りが強いものばかりで、子どもの洗濯には使えませんでしたから。これは余計な添加物が入っていないので、子どもの肌に触れても安心ですね。子どもにも動物にもやさしい点が、気に入っています」 ■自分の時間を作ると、子どもにやさしくなれる仕事をしながら子育てする赤木さんにとって、温くんと一緒に過ごす時間は、大切な時間。朝8時半に保育園に送り出したあと、9時から4時まで家事、仕事をこなし、夜の5時から8時半までは子どもの時間。一緒にご飯をたべたり、お風呂に入ったり、遊んだり。「以前は子育てに一生懸命になって、子どもとずっと一緒に過ごしていましたが、保育園に預けるようになってから、私自身、変わりました。いくらかわいい子どもとはいえ、ずっと一緒にいると、イライラしたり、疲れたりってありますよね。でも少し離れることで、愛おしい存在に思えて、少々のわがままも受け入れてあげようという心の余裕が生まれました。だっこしたり、愛情を注げるのも今のうちですしね」自分の時間をつくることで、子どもにもやさしくなれる。それが赤木さん流のやさしいママの秘密。「仕事をしたり、映画を見たり、友人とお茶したり。そういう何気ない自分の時間が、心の余裕となって、子育ても変わるということに気づきました」 ■「本」から学ぶ、 “都合のいい” 子育てそんな心の余裕を学んだのも、本から。「いくつもの育児本を読みましたが、本が言ってることはそれぞれ。だから自分にとって都合の良さそうなものだけを選んで、参考にしました」赤木さんが最近よく読んでいる本は、次の4冊。『子どもはみんな問題児』(新潮社)ぐりとぐらの作者、中川李枝子さんの書いた本。「そうか、子どもってみんなこうなんだ!」とおおらかな気持ちになれる本です。『毎日続くお母さん仕事』(後藤由紀子著/SBクリエイティブ)「静岡県・沼津市で雑貨店『hal』を営む、後藤さん流の家事や子育て術。まだ仕事と子育ての両立が上手くいかない私にとって、無理せず、頑張りすぎないという姿勢がとても参考になります。小学6年生まで抱っこして、愛情を注いでいたというエピソードは、私も真似したいと思います」ほかにも『チョッちゃんはもうじき100歳』(黒柳朝、黒柳徹子 著 / 主婦と生活社)、『子どもと一緒にスローに暮らすおかあさんの本』(藤田ゆみ 著 / アノニマスタジオ)などもおススメだそう。子育てに決まりはなく十人十色、自分らしいやり方を試行錯誤しながら楽しむ心の余裕があれば、働くママもいきいき暮らせそうですね。<後編>では、赤木さんが温くんのために愛をこめて選んだ「子育てアイテム」をご紹介します。 ※今回ご紹介した書籍・ 『ねこ ねこ こねこ』 ・ 『こねこのぴっち』 ・ 『ねこが いっぱい』 ・ 『子どもはみんな問題児』 ・ 『毎日続くお母さん仕事』 ・ 『チョッちゃんはもうじき100歳』 ・ 『子どもと一緒にスローに暮らすおかあさんの本』 取材/文:東ミチヨ 撮影:林ひろし[PR]サラヤ株式会社 【やさしいママのひみつ 一覧】
2016年08月29日この夏、新海誠旋風が日本中で吹き荒れる!監督最新作『君の名は。』はそう断言したくなる驚きと感動にあふれた、フレッシュな傑作だ。新海監督本人も「過去作はこの作品のためにあった」、さらに「これが新しいスタートラインになる」と強い手応えを示す。日本アニメ界の次代を担う存在として、国内外で熱い視線を浴びる新海監督が、最新作で選んだ題材は<夢で出会った少年少女の恋と冒険>。山深い田舎町に暮らす女子高校生の三葉と、東京で暮らす男子高校生の瀧が、夢の中で“入れ替わり”互いが生きる世界を通して、次第に惹かれあう。遠く離れた2人が夢の中で出会う意味とは?淡い恋愛ストーリーかと思いきや、後半には予断を許さないめくるめく一大スペクタクルが展開する。「自分の集大成として、ベストアルバムのような作品にしたかった」と新海監督。その言葉通り、『君の名は。』には新海監督の過去作に登場する印象的なモチーフが随所に散りばめられた。<デジタル時代の映像文学>とも評される透明感あふれるビジュアル、繊細なストーリーテリングといった独特な作風も健在だ。「物語を紡ぐという経験を重ね、『いまだからこそできる』と確信した」と複雑な物語構造にも、果敢なチャレンジを仕掛けた。その上で「誰もが楽しめるエンターテインメントのど真ん中を作りたかった。観客への“サービス”を強く意識しました」とも。国内大手の東宝が配給を手がけ、公開スクリーンも新海作品では過去最大になる予定で「今回は僕のことを知らないお客さんが圧倒的に多いわけですし、そういった観客層に向けた作品でもある。ぜひ『アニメでこんなにドキドキできるんだ』『こんな新鮮な表現があるんだ』という感覚を味わってほしいですね」。長年追い続けてきた熱心なファンにとっても、“新海作品初体験”の新たな観客にとっても「絶対に楽しんでもらえる自信がある」と新海監督。「後半はシリアスな展開も待っていますが、それでも切実になり過ぎるのは良くないし、思春期の男女の逆転が生む笑いの要素も手放したくなかった。(先の展開を)予想させず、飽きさせもせず、さらに喜怒哀楽を動かしながら、107分の上映時間をコントロールするのは大きな挑戦でした」と誇らしげに語る。すでに媒体編集者やライターの間では「新海監督の新作、見た?」が挨拶代わりとなるほど、映画業界内で沸騰している本作。その熱狂は必ずや全国に広がるはずだ。「そう言ってもらえるとうれしいです。自分としては今後『君の名は。』と同じように、サービスを詰め込んだ長編を1~2本は作らなければと思っています。僕の40代はそういう時期であるべきだし、そこをクリアして初めて次のステップに進める…。そんな気がします」(新海監督)(photo / text:Ryo Uchida)
2016年08月28日共演した声優たちが「瀧がそこで“息をしている”と感じた」と、口をそろえて評した映画『君の名は。』での神木隆之介の芝居――ところが本人にそのことを伝えると、「本当ですか!そんなことを言っていただいていたんですね。嬉しいです」とまるで無自覚な様子で、「僕は、島崎(信長)さんと石川(界人)さんのお芝居を横で聞いていて、声が良すぎて耳が溶けそうでした」と無邪気に言葉を続けたのだった。「芝居のリアルさはあまり…考えていなかったかもしれないです。ただ今回は…新海監督の作品は、実写により近いアニメーションだと思っています。例えばひとりごとのところとか、“もし自分が実写の現場でひとりごととしてお芝居するなら、どういうふうに話すだろう?”というのは、すごく考えました。掛け合いでは信長さんと石川さんが両隣にいて、僕が真ん中だったのですが、画面を通して話しかけるというよりは…司に話すときは信長さんに話しかけているような感じで、高木に話すときは石川さんに話しかけているような感じで演じていました」。それこそが、芝居のリアルさに繋がってくるのではなかろうかと思ったが、神木さんは「信長さんたちが僕を引っ張って下さったので(笑)、すごく安心しました。本当にすごいです、職人です」と心底感心した様子で、ひとりごとのように小さくつぶやいている。なるほど、神木隆之介という役者は基本的には“感覚の人”なのだろう。特に今回主役を演じた『君の名は。』では、いくつかの理由によって彼のセンスがピタリとはまり、立花瀧というキャラクターがより一層鮮やかに、みずみずしく浮かび上がったのではないだろうか。ひとつは、神木さんが新海誠監督の大ファンだったということ。高校生のときに『秒速5センチメートル』と出会い感銘を受け、ほかの作品も全て観たという神木さんは、新海監督が描く世界を“色彩のイメージ”で捉えたうえで、『君の名は。』はこれまでとは少し違ったものになっていると感じたようだ。「これまでの新海監督の作品は、深い色、もしくは白と黒というようなモノクロのイメージだったんです。それが今回、監督の声でセリフが入っているビデオコンテをいただいて観たときに、“なんてカラフルなんだろう!”と思ったんです。表情が豊かというか…楽しかったり、笑えたり、切なかったり、感情がすごく鮮やかになるような作品だなと思いました。しかし、モノローグの節々には、やはり新海監督の独特な間や表現が折り込まれているので最初は、どのぐらい芝居をカラフルにしていいのか、監督とすごく話しました」。そもそも神木さんは、自分の声が新海監督の世界には合わないと思っていたという。「僕は自分の声を、“特徴のある声だな”と思っているんです。というのも以前、ドラマで周りの声を録ったときに、ふざけて入ったら一発でバレてしまったんです(笑)。そのとき、“僕は人と少し違う声質なのかな?”と思ったからこそ、新海監督が描く日常の、あのモノトーンな感じが絶対合わないと思っていました。前作の『言の葉の庭』を観て、次回作が“早く出ないかな”と、とても楽しみにしていました(笑)。いまだになぜ僕が『君の名は。』にキャスティングしていただけたのか、まったく分からないのですが…今作はモノトーンだけではなくて“色分けだ”と思いました。三葉のときはオレンジや黄色の声です。滝のときは青という感じで、モノローグは黒か白かグレー。でもたぶん僕は、モノトーンな声は出ないと思うので、モノローグはとてもがんばりました(笑)。できるだけモノトーンをイメージしながら」。もうひとつ、神木さんがアニメ好きということも大きかった。共演した声優陣について――それまでの会話よりも、わずかに声のボリュームを上げつつ――楽しそうに語る神木さんを見ていると、現場でもイキイキとした表情で、心から楽しんで芝居していたのだろうなあと容易に想像できる。「声優の方々はすごいです。何十回も同じトーンで声が出せますし、監督の指示にも的確に対応して、そこから絶対ブレないんです。本当に職人だなと思います。横で聞いていて“畑が違うって、こういうことなんだろうな”と思いましたし、勉強させていただくことも本当にたくさんありました。勉強させていただきながら、すごい心地良い時間を過ごさせていただきました(笑)。本当にアニメが大好きなので、幸せの場でした」。一方で、アニメが大好きだからこそ、高度な技術を要する声優という仕事を十分に理解していた神木さんは、彼らと同じ舞台に立つことに戸惑いがあったようだ。「役者が本業の声優の方々と一緒に、声に関わる仕事をするのは本当に緊張します。違う畑にお邪魔しているような。なので最初は、すごく緊張していたのですが、信長さんが話しかけてくださって、石川さんが同い年だということが判明して。同じアニメを好きで観ていて、ほぼ同世代で同じようなアニメを辿ってきたという話をしたら、一気に仲良くなりました(笑)。そうやって距離が近くなって打ち解けてから、3人でのお芝居に入れたので…打ち解けられずに“この場を僕はどうしたらいいんだろう?”というようにならなかったので、信長さんと石川さんには本当に感謝しています」。最後に、たくさんのオススメシーンがあることは承知の上で、神木さんに「ネタバレしない程度に」という条件で、『君の名は。』の見どころや、印象に残っているシーンを聞いてみた。「瀧と三葉が入れ替わったときの上白石さんの声がカッコイイです。『あれ、私のことだよね?』と言って机を蹴飛ばすところとかもカッコイイですし。あと印象に残っているところは、歩道橋での奥寺先輩とのシーンです。憧れの先輩と男の子の、絶妙な、理解しあえていない、少しズレた感じっていうのが、やはりリアルだなと思いました。長澤(まさみ)さんの“先輩っぽさ”もすごく良いので、観ていただきたいです。長澤さんとは初めてお会いしたのですが、役者同士だからという違和感も特になかったです。役を通して、きちんと受け入れていただいていたんだろうというのはすごく思いました。ぎこちない感じでもないし、気持ち良く瀧を演じさせていただくこともできました」。これまでいち(熱狂的!?)ファンとして新海監督の作品を観ていたためだろうか、「公開されてから、新海監督のファンの方にどう思われるか、すごく不安です。自分ではやっぱりまだ…客観的に観れないです」と語っていた神木さんだが、みなさんも観ていただければ分かるだろう。新海誠監督の最新作『君の名は。』には、俳優・神木隆之介の溢れる想いがこぼれ落ちそうなほど、詰まりに詰まっていることを。(text:とみた まい/photo:Nahoko Suzuki)
2016年08月27日エンドロールが流れるなか感じた、胸がしめつけられるような切なさ。そして、自分のこれまでの人生において、そういった類いの切なさが果たしてあっただろうか? と、つい柄にもなく思い返してしまうこの気持ち──『君の名は。』にはなぜ、こうもリアルに自分ごととして入り込んでしまう力があるのだろうか。「今回俳優さんたちとご一緒させていただきましたが、基本的にやることは普段の声のお芝居の現場とあまり変わらなかったので、そんなに戸惑うことはなかったですね。作品の世界観に適合するお芝居をするために、主演の神木さんをはじめ、みなさんが作り上げる空気感に正面から向き合って、同じ場所に立とうとしたら自然とお芝居が出てきたのかなあと思います。でも、普段よりも“同じ場所に立つ”ということはよく考えました」。こう語るのは、神木隆之介演じる立花瀧の友人・藤井司役の島崎信長だ。メインキャストに俳優陣が並ぶ『君の名は。』だが、加えて、島崎信長、石川界人、悠木碧といった、アニメの第一線で活躍している実力派若手声優ががっちりと脇を固めているのも見どころである。なかでも島崎さんの演じる司は、物語が核心へ迫っていく重要なシーンをはじめ、多くの場面に登場する役どころだ。普段は演じるフィールドが異なる俳優と声優が、声の芝居で掛け合いをする際に、現場ではどのような化学反応が起こるのだろうか。島崎さんに尋ねてみたが、“俳優と声優が掛け合う”ということよりもむしろ重要なのは、“新海誠監督の作品を演じる”という部分にあったようだ。「“同じ場所に立つ”というのは…新海監督の作品って、地に足がついているというか、現実に近い感覚のリアリティーがあるように思うんです。そのうえで、アニメにしかできないことや、アニメにおけるファンタジーみたいなものも織り交ぜている。そういったなかで、僕は主人公・瀧くんの同級生というキャラクターで、しかもよく絡む役どころだったから、普段のやり方や常識に囚われすぎると…実際の現実に近い世界観のなかで、急にファンタジーからやってきた人になってしまうかもしれない。だから僕は、『君の名は。』という作品のなかで、同じ世界に住んでいる、同級生で距離感も近い、対等な立場の人間なんだっていうところを、観ていただいた方にきちんと違和感なく伝える必要がある。そういう意味では、ちょっと気は遣ったかもしれませんね」。「新海監督が描くリアリティーを、アニメーションに乗せて違和感なく伝える」というのは、デフォルメされた世界を演じることの多い声優という職業柄、なかなか難しいことのように思えるが、『君の名は。』という作品においては絵の持つ力が大きいため、自然と芝居が引き出されていったと島崎さんは語る。「なにより、絵がものすごく芝居をしてくれているのが大きいですね。キャラクターの表情や動きで十分伝わっているから、説明を盛るような芝居をする必要がない。そこに生きている人間の生のリアクションとして、突き詰めて考えることができるんですね。その場でのやりとりに集中できるんです。神木さんが演じる瀧がいて、彼と会話する司としての僕がいて。瀧に話しかけられて、反応する。もうちょっとこの感情を盛ったほうがいいかな? とか、伝えやすくしたほうがいいかな? とか、そういうのを加味せずに、純粋にそこに生きている司という人間が、実際にこう話しかけられたらこう返事するだろうなってところに集中できました。盛る部分や伝える部分は、絵や演出にお任せできる環境だったから、本当にその場に行って会話してきた感じです。そこでの会話や、“そこに生きている”ことに集中できたのが大きいんじゃないかなあ」。島崎さんが“そこに生きている”ことに集中できたのは、絵の力に加えて、俳優・神木隆之介の力も大きかっただろう。まさに“そこに生きている”ことを演じるプロフェッショナルともいえる神木さんとの掛け合いは、島崎さんにとっても刺激的な体験だったようだ。「声で演じるお仕事のときって、なんとなくのお約束や型みたいのがあって。もちろんそれは紛うことなき必要な技術で、とっても素敵なことなんですけど、『君の名は。』に関しては、神木さんがそういうものに良い意味で染まっていない、等身大のお芝居をされていました。イメージとしては、アニメーションだけど…それこそ日本人が演じている実写映画の声をあてる、と言っても違和感がないくらい、現実世界に近いリアリティーに寄せているんだろうなって思いました。だから神木さんとの会話は、本当に等身大でぶつけてくれるからやりやすかったですし、気持ちがよかったですね」。楽しそうに語る島崎さんの話を聞いて、冒頭に挙げたような、リアルに自分ごととして『君の名は。』の世界に入り込んでしまうような感情をなぜ自分は抱いたのか、分かったような気がした。演者たちの、キャラクターがその場に息づいているような芝居で表現されるリアリティーの上に、新海監督が創造する魅力的なファンタジーが乗り、観客はその生き生きと描かれる物語に共感し、心を動かされるのだろう。「もう“観てください!”ってことが一番ですね。観て、聞いて、絶対に伝わる作品になっていると思います。さらに言えば…解釈の余地がある作品だから、観た方によって、観た年代によって、観た性別によって、もしかしたら感想も解釈も変わってきたりするかもしれません。全部が全部説明しているわけではないし、想像する余地や、考える余地がある作品なんで。ぜひご覧いただいて、自分が感じた感想とか、自分が思った解釈を、大事にしてほしいなあって伝えたいです。それは、あなただけの感想だし、あなたの感性で得た、あなただけのかけがえのない感情だと思うので。だから、最初は変に構えずにフラットな気持ちで観ていただいて、そこからいろんな人と話してみたり、視点を変えてもう一度観てみたり、いろんな楽しみ方をしてもらえたらいいんじゃないかなあって思います」。ところで、インタビューのなかで島崎さんが最も破顔したのが、新海監督について語ったときだった。そこには、芝居や作品について語った際の適度な緊張感はなく、穏やかな表情を浮かべ、とても嬉しそうに話してくれる島崎さんの姿があった。「新海監督は、とっても優しくて…成人男性に使う言葉かどうかわからないんですけど、ちょっと可愛らしいくらい(笑)。あと、作品にも通じる温かみをすごく感じるような素敵な方でしたね。やっぱり、すごい作品をたくさん作られている方だし、ちょっとだけ…初めてお仕事するにあたって身構えてしまう部分とか、覚悟を決めて挑むみたいな気持ちがあったんですけど、“そんなもの必要ないよ”と言わんばかりに、すごく気さくに、柔らかく接していただきました。でも、ものづくりに対する情熱はやっぱりすごいものがありましたし、なにより、楽しんで作ってらっしゃるんだなあって感じました。仕事をご一緒すると“新海監督と一緒に、もっといいものを作りたい、もっと楽しいものを作りたい”ってたぶん…みんなが思うような、そんな方なんじゃないかなあ。だからすごい作品がたくさん作られてきたんだなあって納得させられるような、そんな方でしたね」。さらに島崎さんは、「これ言っていいかわからないんですけど」と前置きしつつ、新海監督の人柄を表すような、とっておきのエピソードも教えてくれた。「僕が主演していた『寄生獣 セイの格率』をご覧になっていたみたいで、“いやあ、信長さんの声好きなんですよ”って直接言われて、すごくビックリしました(笑)。監督に直接“声好きなんですよ”って言われることなんて、なかなかないじゃないですか。それを普通に、改まることもなく素直に伝えてくださる。たぶん、お人柄が成せる技というか…僕はとても嬉しかったけど(笑)、恐縮でもあり、ビックリもしましたね(笑)。とっても素直で、凝り固まったものとか、固定概念とかがないんだろうなって。柔軟な方だと思いました」。まさにその新海誠監督の伸びやかさが随所に散りばめられている最新作『君の名は。』。ストーリーはもちろん、“そこに生きている”キャストたちの芝居にも注目してほしい。(text:とみた まい/photo:Nahoko Suzuki)
2016年08月26日現在放送中のNHK連続ドラマ「とと姉ちゃん」で主人公・小橋常子役を好演している高畑充希。ドラマ初主演にして、名だたるキャストがそろった歴史ある朝ドラの座長に抜擢され、混乱するほどの重責に悩むこともあったというが、やがてプレッシャーをはねのける極意を得たそうで、その表情はなんとも清々しい。亡くなった“とと(父親)”に代わって2人の妹と母を守りながら、戦後一世を風靡することになる雑誌「あなたの暮し」を創刊した小橋常子の激動の人生を描いた同ドラマ。現時点で高畑さん演じる常子はおよそ30歳だが、初登場時はなんと15歳。それも含めて、「すごく変わった感じがします。妹の鞠子(相楽樹)を嫁に出したことに達成感があって、いまも(わたしは編集部の)社長ですけど、現役から退いた感じがします」と率直な思いを口にする。加えて、常子の悩みや経験したこと全てが、役を通して自身の中に植えつけられていることを明かすと、「“おばちゃん”と呼ばれることに違和感はありません。見た目は追いつかないけど、感覚としては繋がる部分があるのかな…」と、24歳の自分が演じる“とと姉おばちゃん”に違和感が無いよう。そして、「ここから大事なシーンがいっぱいあるので、最後までエネルギーを失わずに行きたい」と力を込めると、「常子が大人になってから話が大きくなったり悩みも増えたりして徐々にヒートアップしているので、すごく楽しいです」と笑顔も見せた。にこやかになる理由は共演者にもあり、「すごく楽しい方なので、ちゃんとついていきたい」と、「あなたの暮し」編集長で常子の“魂のパートナー”でもある花山伊佐次役の唐沢寿明に絶大な信頼を寄せる。「たぶん、朝ドラ(「純ちゃんの応援歌」1988年放送)をやっていたのでヒロインを気遣ってくださる」と想像しつつ、「わたしが息切れしかけると、アミノ酸やクエン酸をくださるんです。この前も台本3ページ分くらいの演説シーンのときに、ブドウ糖をくださったので隠し持ちながらやりました(笑)」と知られざるエピソードも披露。また、「ものすごく頼っているし、ものすごくご飯に連れて行ってもらっています」と打ち明けると、「(食事の席では)お芝居の話もしますけど、結局なんだかんだ最後はカラオケに行って一緒に熱唱しています」と唐沢さんのパワフルな一面を暴露した。舞台や映画では主演経験があるが、ドラマ主演が初めての高畑さんは、約10か月にわたる撮影期間のゴールが見えてきたいま、“朝ドラヒロイン”という貴重な体験をふり返り、「次から次へと出てくださる凄い方々を受け止めなければいけないと思い込んでいたから、すごく混乱してしまいました」と述懐する。しかし、監督から「受け止めるのではなく、受けて流せ」、唐沢さんからは「主役はそこにいろ」とアドバイスをもらい、「なるほど」と納得し、実践してからは「より常子に近づけた気がしました」と胸を張る。さらに、「ドラマの真ん中に立つことの極意を、失敗したり、いろんな人に教えてもらったりしながら経験することで知ることができました。こんなにも時間をかけて教えてもらえることはなかなかないから、初主演が朝ドラというのはすごく恵まれていると思います」としみじみ。本ドラマに携わり、役者として何か変わったことがあるかと尋ねたとき、「変わっていないことは絶対にないと思うけど、終わってみないとまだわからなくて…」と語る高畑さんだが、自分自身の変化に大いなる期待を持っていることは手に取るようにわかる。「立ち止まらずに、ギリギリ最後まで進化したいです!」。力強い言葉と輝く目がそれを物語っていた。(text : Rena Nishiki)
2016年08月25日「くじけそうな時もありましたけど、アニメーターにならないっていう選択肢はなかったので。なれるだろうと思ってたし、根拠のない自信みたいなものを持つのは大事だと思うんですよね」。ピクサー・アニメーション・スタジオで働く原島朋幸さんは、ピクサーに入社するまでに、サラリーマンやデジタルハリウッドやアメリカでの大学生活、そして「ドリームワークス・アニメーション」にて『ヒックとドラゴン』に関わるなど、様々な経歴を持つアニメーターだ。「自分が本当にやりたいのは、キャラクターアニメーションだ」という確信と共にアメリカに渡ったという原島さんは、まさに夢を叶えた日本人クリエイターである。シネマカフェが実施したピクサー現地取材レポート最終回の今回は、前回の小西園子さんに引き続き、『ファインディング・ドリー』で活躍している日本人スタッフの原島朋幸さんのインタビューをお届けする。1993年、『ジュラシック・パーク』を観たことをきっかけにハリウッド映画とVFXに興味をもち、エンジニアとして勤めていた会社を退職した原島さん。その後デジタルハリウッド東京本校に入学し、2001年にアメリカへ語学留学、2003年には「Academy of Art University」(サンフランシスコ)の大学院に進学し、通称“ピクサークラス”でピクサー・アニメーション・スタジオのアニメーターからキャラクターアニメーションを学ぶ。2006年より「DreamWorks Animation」にて『ヒックとドラゴン』などの制作に参加し、2015年3月に晴れてピクサー・アニメーション・スタジオへ移籍している。『ファインディング・ドリー』では、キャラクター・アニメーターとして様々なキャラクターの制作に関わったという原島さんは、ピクサーならではの入念なリサーチ活動を経て、ニモやマーリン、ドリーをはじめとする様々なキャラクターたちが水中で動き回る姿を、リアリティと共にキャラクターとして生き生きと表現する過程に大きく寄与している。「『ファインディング・ニモ』の時と同じく、今回も水槽で魚を飼って観察したり、実際に魚が泳いでいる映像を撮ってきて、海の中の物理や魚の動きをキャラクターの動きとして表現するためのアサインメントを実施しました。魚がヒレを動かしているタイミングをはじめ、魚は実は左右のヒレをバラバラに動かしているということや、前に進む時も後ろ向きにヒレを動かしていることなど、実際にちゃんと見てみないとわからないんです。ほかにも、ドリーとマーリンでは魚の動きの質が違うので、アニメーターたちはそういうことにも気をつけて作っています」。制作過程の話を伺う中で印象的だったのは、魚がターンする動きを制作する際に使われたという“ある言葉”に関するエピソードだ。「よく“it looks like fish on a stick(これは魚と棒の動きみたいだね)”という言い方をされることがあるんです。魚がターンする動きを表現するときに、魚がスティック(棒)の上に乗って動いているように見えてしまうことがある。実際の魚は、ヒレを動かして棒の周りを回るようにターンしてるんです。経験のあるアニメーターでも、気にしていないとそういう表現をしてしまいがちなんですよね。実際に魚の動きを見てからじゃないと、何か足りない、違う動きになってしまうんです」。ほかにも、ヒレを動かしていない時に魚たち自らの重みで沈む動きや、生き物たちの大きさや重さの違いを表現することが、全編に渡って海の中の世界が舞台である本作のリアリティへと大きく影響しているのだとういう。「重さっていうのはすごくキーになるので、アニメーターにとってはチャレンジですね。ウミガメのクラッシュとスクワートでも重さが違いますし、デスティニーや、ニモ、ドリーではスケールが全然違うんですね。例えば、デスティニーがヒレを動かすときに起こる対流を受けて、ドリーやニモが動く表現をしなくちゃいけない。だって、波が来たのに魚が流されたり横揺れする表現がないとおかしいじゃないですか。そういった微妙なこだわりが、すごくリアリティに貢献していると思います」。前作『ファインディング・ニモ』に引き続き、アンドリュー・スタントンが監督を務める本作。傑作として知られる『ウォーリー』なども手掛けるアンドリュー監督の仕事ぶりは、アニメーターとして参加した原島さんの目線からはどう映ったのだろうか。「アンドリューがよく言ってたのは、“ナショナルジオグラフィックのようにリアルに”ということでした。演技は当然大事なんですが、キャラクターが演技をした上で、動きはきちんとリアルな魚じゃないとダメだということです。キャラクターが演技しているのはほかのアニメーションでもあると思うんですけど、本作ではキャラクターたちが魚だっていうことが、観客が観ていて疑いのないレベルで説得力がないといけない。そこにすごくこだわりがありましたね」。さらに、『アーロと少年』にて監督を務めたピーター・ソーンとアンドリューの監督としての違いについて、興味深い比較を原島さんは語る。「アンドリューはあるシーケンスを制作する前に、監督の中でキーとなる部分だけ説明して、細かい説明はあんまりしないんですよ。すごく“loose(ゆるい)”な状態で、アニメーターはいろいろ考えながら、ラフなアニメーションを監督に見せるんですね。監督はそれを見てから個別に細かく作り込んでいく。ピーターの時は最初からすごく細かったですね。でも彼はオープンだったので、アニメーターの方から監督に意見を提案すると、受け入れてくれる部分もあるし、『そのアイデアはすごくいいけど採用できない』っていう時もある。アンドリューもそうですね。彼は彼のアイデアがあるので、曲げないときは曲げない」。「諦めたら終わりじゃないですか。壁に当たっても、とにかく好きなことがあるんだったら、それに向かって続けることですね」。そう語る原島さんは、昨年の入社に至る前にも、一度ピクサーの面接を受けたことがあるそう。その時は採用に至らなかったが、「ドリームワークス・アニメーション」のサンフランシスコ郊外のオフィスで7年半の間働いた後、『アーロと少年』の制作スタッフとしてピクサーへの入社が実現。晴れて念願のスタジオでのキャリアをスタートさせた。「“努力すればば報われる”っていう言葉と同じくらい、“努力しても全てが報われるわけではない”っていう言葉を聞くんですけど、どっちも正しいと思うんですよね。でも努力は裏切らない。もし目標にたどり着けなくても、努力したことは自分の血と肉になるし、何をやっても人生損はないんですよね」。脱サラを経て、世界一のアニメーション・スタジオで働く原島さんの言葉には、ずしんとくるものを感じた。観客である私たちにとって、『ファインディング・ドリー』のキャラクターたちの生き生きとした姿の裏に、原島さんをはじめとする夢を叶えたクリエイターたちの表現する喜びがあると思うと、鑑賞後にはまた異なる感動が生まれてくる。これまでも、シネマカフェが実施した現地取材レポートを通して、本作に関わった様々なクリエイターたちの思いを紹介してきたが、本特集を通して、『ファインディング・ドリー』があなたにとって忘れられない作品になってくれることを切に願う。『ファインディング・ドリー』は全国にて公開中。協力:ウォルト・ディズニー・スタジオ・ジャパン(text:cinemacafe.net)■関連作品:ファインディング・ドリー(原題)
2016年08月21日夏休み映画の大本命として大ヒットを記録している『ファインディング・ドリー』。これまで、シネマカフェが実施したピクサー・アニメーション・スタジオの現地取材レポートを通して、本作で活躍している数々のクリエイターのインタビューを紹介してきたが、実は本作には、ピクサーで働く日本人のスタッフも制作に関わっている。現地取材レポート第7弾の今回は、本作でキャラクター・テクニカル・ディレクターを務めた小西園子さんのインタビューをお届けする。「ニモにもう一度会いたい!」――前作『ファインディング・ニモ』への参加後も、長らくニモたちとの再会を待ち望んでいたという小西さん。本作で小西さんは、水中に漂うプランクトンや塵を表現するシミュレーションを担当しており、『ファインディング』シリーズの大部分を占める、水の中の世界のリアルな表現に一役買っている。小西さんがテクニカル・ディレクターのアシスタントとしてピクサー・アニメーション・スタジオで働き始めたのは、世界初の長編CGアニメーションとして公開された『トイ・ストーリー』の、まさに制作真っ只中だったという1994年8月のこと。「その時は、ピクサーがソフトウェアの会社だっていうのはわかってたんですけど、アニメーション作品としては短編『ルクソー Jr.』を作っていたのを知っていたぐらいで、『CGで長編作品?』っていう感じでしたよ」と当時を述懐する。その後、セット美術や照明、コマーシャル制作、キャラクター・モデリング、モデリングの関節制御など、様々な仕事を通して『モンスターズ・インク』『ファインディング・ニモ』『Mr. インクレディブル』『メリダとおそろしの森』『インサイド・ヘッド』といった、ほぼすべてのピクサーの長編作品に関わっている。本作の制作にあたって、13年前となる前作の制作時との技術的な変化について尋ねると、「使っている技術はかなり進歩して変わっているんですけど、続編としての世界観を壊さないようしています。前作よりもキャラクターたちの泳ぎは綺麗になったし、表情も豊かになって、水中や水面の表現も、かなり本物のように見えると思いますよ」と、表現力の向上と複雑さを増したという制作過程について語る。これまでの様々なクリエイターのインタビューにおいても、本作で登場する新キャラクター、ハンクのチャレンジングな制作過程について語られてきたが、小西さんも同じくハンクの制作について、「ぬるぬるとしたタコの皮膚感や、吸盤が吸い付いて離れる様子を表現しています。それぞれが早いショットであまり見えないかもしれないですけど、ちゃんとやってるんですよ」と、その大変さとやりがいについて語った。「私たちシミュレーションの仕事は、『気づかなかった』と言われるのが一番いいんです」と話す小西さん。「パイプの中などの狭いシーンでも、きちんと水が流れていることがわかるような表現や、キャラクターの動きに合わせた水の流れを加えたりしながらも、決して画面上がうるさくならないようにしています」。観客である私たちが、キャラクターやストーリーに夢中になることができるのは、あまりに自然すぎて意識することがないほど繊細な表現を担っているシミュレーションという影の立役者のおかげなのだ。年々フォトリアルと呼ばれる本物と見紛うほどアニメーション表現すらも実現しているピクサーだが、『ファインディング・ドリー』の同時上映作品である『ひな鳥の冒険』でも、実写と勘違いしてしまうほどのリアリティが多くの観客を驚かせている。今後のピクサー作品における表現と技術の関係について小西さんは、「デザインやお話によって世界観が変わっていくので、全部がフォトリアルにはならないです」と語る。「『アーロと少年』の時に本当にリアルな世界を作ったんですけど、それがずっと継続するかというと、そうじゃないんですね、全てストーリー次第なので」。これまでのインタビューでも何度か同様の質問を投げかけてきたが、全てのクリエイターがキャラクターとストーリーの重要性についてまず指摘し、あくまで技術はそれを表現するためにあることを共通して語っており、改めてピクサーで働くスタッフが同じ価値観のもとでチームワークを発揮しているのだという事実に驚かされる。世界初の長編CGアニメーション作品である『トイ・ストーリー』に関われたことを、「おそらく人生で一番の経験です」と語る小西さん。ピクサーで働く上での心意気について尋ねると、「仕事のほかにも、自分の趣味とか興味を必ず持っていないと、燃え尽きちゃう人も多いと思います。自分らしさを持っていないと新しいことにも興味が湧かなかったり、与えられた仕事で満足して、そこから先に進めなくなってしまうと思うので」と話す。そんな小西さんは、もともと裁縫やコスチューム作りが趣味のようで、それがそのまま服の質感などを表現するシミュレーションへの興味へとつながっているようだ。ちなみに最近は3Dプリンターに夢中なのだそう。ピクサーがその歴史的な歩みを刻み始めた『トイ・ストーリー』から、20年以上に渡ってクリエイティブに関わり続けている小西さん。同じ日本人であることにどこか誇らしい思いも感じながら、ぜひ劇場で『ファインディング・ドリー』の美しい世界を体感してみて欲しい。『ファインディング・ドリー』は全国にて公開中。次回で最後となる現地取材レポートでは、ピクサーで働くもうひとりの日本人クリエイター・原島朋幸さんのインタビューをお届けする。協力:ウォルト・ディズニー・スタジオ・ジャパン(text:cinemacafe.net)■関連作品:ファインディング・ドリー(原題)
2016年08月20日同社は2014年10月から小さな子どもがいる社員などが時間に縛られずに働くことができる「専門業務型裁量労働制」を導入しました。実はそれ以外に特別なことはしていません。 「実績さえ出せば自由」という一見厳しい空気が、ママにも子どもたちにも自由を与えてスペースタイムをひとつの家族のようにしてくれた、と中村景子代表取締役社長はお話しして くれました。社員の皆さんとの集合写真。前列左から2番目が中村社長「Women Willレポート」バックナンバー第1回:働くママだけじゃない。Google が目指すのは、誰もがHappy に働ける社会第2回:「子連れ出勤」がもたらすかけがえのない“体験”とはWomenWillサポーター企業「ソウ・エクスペリエンス株式会社」理系女子が活躍できるサイエンス・コミュニケーションという領域中村さん:スペースタイムが手がけている「サイエンス・コミュニケーション」とは、大学や研究機関 の扱っている情報を紙やWeb、イベントなど様々な形で一般の方に分かりやすく届けるという仕事です。そのほか、子どもたちが楽しくサイエンスを学べるようなサイエンス&プログラミング教室も開催しています。いま、社内には9名の社員がいますが、7人が女性。大卒3名、修士4名、博士2名と全体的に高学歴の社員が多いですね。弊社のスタッフには先端的で難解なサイエンスを理解して、それを様々なメディアを使って表現することが求められます。分かりにくい内容を誰にでも理解できるように翻訳できるようなセンスが必要なんです。女性の場合、博士号や修士号をとっても、なかなか研究機関や大学など研究の世界で職を得ることは難しくて、せっかく興味を持って学んだり経験したことを仕事に活かせずにいるのが現状です。そういった女性にとって、サイエンス・コミュニケーターという職業が一人ひとりの学びを活かせる新しい仕事になればと考えました。働きかたを自由にすることで、『いまの自分』にとってベターな時間の使い方を保育園お迎え後にオフィスに戻って仕事することも。専門業務型裁量労働制を導入したのは、2年前。それまでは一般的な会社と同じで勤務時間が決まっていました。でも、どうしても残業問題が発生してしまうのが悩みでした。能力があってテキパキとクオリティの高い仕事をこなしていく人より、長時間働いている人のほうが仕事をしているように見えてしまうことがありますよね。それはおかしい。そう考えて、社員と一緒に裁量労働制について勉強し、自分たちの働きかた、仕事に適した制度にしようと考えたんです。それが、実績に対して評価できる専門業務型裁量労働制でした。裁量労働制は自由な反面、自分で仕事の進捗を管理しなければいけないので個人の努力に委ねられる部分が大きいんですけど、それも仕事のやりがいと感じてもらえたらいいなと思っています。弊社の裁量労働制は、毎月のお給料は固定でみなし残業がついています。極論、1日に1時間 しか働かなくても、10時間仕事しても差がありません。ボーナスだけは実績で評価するので能力によって差がでてきます。自己裁量で自由に仕事をしながら、モチベーションを維持できるという面ではすごく利点が多いですね。極端に言えば、「仕事の実績だけで評価する」。実績が出せるのであれば、決まった時間にオフィスにこなくても構いません。子どもが急に病気になって遅刻したり早退したりしても、労働時間が決まっていないので、連絡さえしてもらえれば問題ないです。小さな子どもがいる人にとっては、育児と両立するために色々なことに折り合いをつけないと良い仕事ができないので、裁量労働制のメリットが大きいと思います。厳しさもありますが、その分、自由でもあり思いっきり働ける制度なんです。自然に大人と子供、子供と子供が関係し合うオフィス弊社では、特にオフィスに育児に関する制度を設けていません。でも、臨機応変に対応できるのが弊社の自慢のひとつ。「あと1時間仕事したいのに子どものお迎えが…」というよう なときは、お迎えに行ってから子どもと一緒にオフィスに戻ってきてもOKです。ハイハイするくらいの小さい子がいても大丈夫なように、オフィスは土足厳禁にして、気兼ねなく子どもを連れてこられるようにしています。家に帰っても一人でお留守番になってしまうような小学生は、学校が終わってからお父さんの仕事が終わるのをオフィスで待っています。会議用テーブルで宿題や工作、ゲームをしながらお留守番をしているような感じです。子どもたちはみなとても良い子。他のスタッフや 来客の邪魔になることはありません。子どもがすごく小さい間は、育児に比重を置きたいという時期があってもいいと思うんで す。子どもから手が離れたらバリバリ働いて、能力や実績をアップさせる。そんなことができるのも裁量労働制の良いところですね。年齢が高い子どもが小さい子どものお世話をしたり、他の社員が相手をしたりするのは弊社にとっては当たり前。時間帯によってはオフィスが児童館のようになっています。年代の違う子ども同士で遊ぶ機会ができるのも良いところだと思っています。サイエンス教室で使っている道具で遊んだり、開発中のものを試しに使ってもらったりすることもあります。スペースタイムをひとつの家族のように、子どもたちと親にとって過ごしやすい環境にしていきたいと考えています。裸足でもOKなオフィス。サイエンスの勉強も自然とできる。会社で働く側、社員を雇う側、しばしば対立してしまうことがありますよね。でも、社員も経営者もひとつの家族として考えてみて欲しいです。家族ならみんなが幸せになるにはどうしたらいいのかを考えていけます。いまの環境は完成形ではない、ひとりひとりの事情を考慮しつつ、柔軟で有意義なスタイルを選ぶことができるんです。みんなが仕事を長く続けら れるように、お互いの状況を思いやれるチームであったら嬉しいです。ライター所感:周りの働くママの多くは、働ける時間に制限があるため、「もっとやりがいのある仕事を任せてほしい」「もっと稼ぎたい」というジレンマを抱えています。反対に、残業バリバリで働いているママは、子どもと過ごす時間がなくて罪悪感を抱えていたり…。スペースタイムのように、時間に縛られない代わりに、実績に応じた評価が得られる職場が増えれば、「子どもがいるとキャリアを積めない」とか「経済的な事情で子どもは生めない」という声も少なくなるかなぁと思いました。(ライター 柏木)お互いの子供の顔を知っていることは一緒に仕事する上でも、自然とお互いに思いやりが生まれそうですね。母であり、妻であり、女であるなんてよく言われることですが、女性に限らず誰もが、あらゆる面を持った存在なのに、働いてるとそのこと忘れられがちです。スペースタイムのようにそんな多面性を受け入れて、従来の働き方に捉われない企業が増えていくといいなと思いました。(編集 村上)株式会社スペースタイム「Women Willレポート」バックナンバー第1回:働くママだけじゃない。Google が目指すのは、誰もがHappy に働ける社会第2回:「子連れ出勤」がもたらすかけがえのない“体験”とはWomenWillサポーター企業「ソウ・エクスペリエンス株式会社」ライター:柏木 真由子
2016年08月20日可愛いを求めに、越境北上中。木綿とテディベアに出会えた会津若松を離れ、福島最後の目的地は福島駅から徒歩10分にある施設「チェンバおおまち」の1階にある小さなお店。「女子の暮らしの研究所」では、福島の伝統工芸品を可愛くアレンジした雑貨やアクセサリーを販売している。「ふくしまのかわいい」がぎゅっと凝縮された空間だ。出迎えてくれたのは代表の日塔マキさん、ショップスタッフの大内清加さん、店長の林崎知実さんの3人。まるで家族のように仲が良いスタッフたちからは、春先の太陽のような暖かさと親しみやすさを感じた。支援の網から抜け落ちた世代「女子の暮らしの研究所」の前身は「peach heart」という任意団体。代表の日塔さんを含む5人の女性が震災後に女の子が話し合える場を作ろうと立ち上げた。「女の子たちが自由に話せる場所」が必要だと考えた裏には支援の網から抜け落ちた世代の存在があった。震災後に様々な支援があった中で「19歳以上お母さん未満の女の子」たちに対する支援がすっぽり抜けていたのだ。18歳以下は甲状腺の検査が無料(震災当時)で、子を持つ母親だったら母子避難をはじめ、メンタルケアなどのサポートがあったのだが、19歳以上お母さん未満のこれからお母さんになる世代に対するサポートは手薄だった。現在メインスタッフ、そしてショップの店長として活躍する知実さんは震災当時19歳。実家が原発事故の避難区域となった。暮らしの中で感じる不安を打ち明けられる場所が見つからずに悩んでいたという。「そういうデリケートな不安を抱えた福島の女の子たちが、気負いせずに気持ちを晒け出せる場所があればいいなと思ったんです」任意団体peach heartは女の子のコミュニティ作りや県外への保養ツアーなどを企画。震災直後、放射能の心配からマスクをつけたくても「そんなの気にしているの?」と怪訝に思われ付けにくかったことがあり、可愛いからつけているんだと言えるようなおしゃれなマスクのデザインなどを行った。その後メンバーは各自の道を進み、日塔さんは2012年12月、株式会社GIRLS LIFE LABOを立ち上げ、女子の暮らしの研究所の運営をはじめた。女の子が自分で選択できる社会「若い女性が自分自身の暮らしについて自分なりに考え見直し、ちゃんと選択して生きていけるような社会を作ろうというコンセプトのもと活動を始めました。『女子の暮らしの研究所』という名前にはそんな思いが込められています」震災以前は遊んでばかりだったという日塔さんは「自分から半径5メートルの世界で生きていた」と震災以前の自分について語ってくれた。震災が起こったのは日塔さんが27歳の時。当時は県内のイベント制作会社に勤務していた。震災・原発事故後、日塔さんの考えは180度変わったと言う。「原発が爆発した時に国や偉い人たちを責めたけど、あるとき19歳の子に『私って見捨てられたんですかね』と言われて、はっとしたんです。18歳まではサポートがあるのに、彼女たちにはケアがなかった。でも彼女たちは選挙権がない。自分たちで選んだ結果ではなく、大人たちが選んで出来た社会で子どもたちが犠牲になっている事実に直面したとき、なんてことをしてしまったんだろうと後悔しました。そこから、自分の身内だけではなく社会全体のことも考え、意識を持って社会に参加していこうと決めたんです」自分たちの投げやりな選択で未来を潰してはいけない。自ら考えて選択できる権利があるのだからしっかりと選んでいこう。そうやって一緒に福島、日本の未来を考えていく仲間が増えればいいな、と日塔さんは優しい口調で語った。立ち上げ当初から始めたラジオ番組も好評だ。毎週火曜日の午後9時から1時間、郡山コミュニティ放送「KOCOラジ79.1MHz」で「LABOLABO♡ラジオ」を放送中。毎月設けられたテーマに沿って研究員がゲストを交えてゆるくトークしていく。恋バナといったガールズトークの一方、選挙の時には政治に関する話もする。「自分たちで選択して生きていこう。というコンセプトなので、若い女の子たちと一緒に社会のことを考えていけたら嬉しいなって。県知事選の時には立候補予定者の方を呼んで話を聞いたりしています」「わたしたちの声に耳を傾けて」木綿とシルクのピアス彼女たちは福島の伝統工芸品を使用したアクセサリーを製作・販売している。FUKUiro Pierce(ふくいろピアス)と名付けられたピアスは、会津木綿をアクリルで挟んだおはじきのような小さなピアスとイヤリング。金属アレルギーの人でも付けられるようにとキャッチは樹脂でできている。使用している会津木綿はあいくーにも使用されていた山田木綿と原山木綿のもの。福島の素材を使ってものづくりをしようと考えていた会社設立当初、会津木綿を使ってストールを作るIIE(イー)の代表、谷津さんの会社に訪れたのが会津木綿と出会ったきっかけだという。「よく見るとめちゃくちゃ可愛い!って気づいてしまって。色も渋いものだけではなくて、女子が好きそうな淡い色彩もあるんですよ」早速これで何を作ろうかというときに、「私たちの声に耳を傾けてください」という意味を込めて耳につけるアクセサリーにしようと決めた。こうして会津木綿を使用した「ふくいろピアス」が誕生した。自然にちなんだ8色で展開されるシリーズには「8つのいろのはなし」というストーリーが込められている。震災直後の女の子たちの率直な気持ちをガールズボイスとして商品それぞれに託した。外で遊ぶのが不安だったり、庭で採れた野菜を食べるのが怖かったり、福島にいる人なら感じたことがあるかもしれない気持ちは、県をまたいでしまえば伝わらなかった。こうした現実と不安の声に耳を傾けてもらいたい。「聞いて!」と押し付けるようにただ主張するのではなく、単純に可愛いと手に取ったことがきっかけで、この声を聞いてもらいたいのだ。「かわいいがキーワード。たくさんのひとに届くように、いかにポップにするかを大切にしています」第一弾の会津木綿のピアス、第二弾の会津漆のヘアアクセサリーに続き第三弾としてジュエリーラインをスタート。「HITOTOKI -kasumi-」は世界中のラグジュアリーブランドからもラブコールが絶えない福島県・川俣町の老舗「齋栄織物」が作るシルク「フェアリーフェザー」を使用している。1本1本の糸が髪の毛の6分の1の細さという世界一薄いシルクを透き通る水晶の中に閉じ込めた。霧をイメージしたというHITOTOKI -kasumi- は、極薄のシルクが光を通すため、水晶の輝き吸い込むかのように布と肌を輝かせる。縦糸と横糸は先染めした違う色の糸を作っているため、見る方向によって色が変わる不思議なジュエリーだ。女子の共感力「わかる〜!」は最強女子の暮らしの研究所が期待しているのは女の子が持つ “共感力” 。女子の会話でよく出てくる「かわい〜!」「わかる〜!」は棒読みの相槌だと感じるかもしれないが、実は無意識のうちに出ている「いいね!」という共感なのだ。共感はそのまま発信の原動力へとつながっていく。現在30名弱の研究員が在籍。福島出身者から他県出身で福島在住の女の子、学生や社会人、ママさんなど様々な個性が集まった。ファッションの好みも性格もみんなバラバラだそう。「様々なタイプの女の子が集まってお互いを認め合えるようなコミュニティです。それぞれがパワーアップしたり、自信を取り戻したりする場所になってほしい。まだまだ研究員募集中です!」個人が生まれ持った魅力を活かしのびのびと活動できるコミュニティが、福島女子たちの心の支えになっている。これは福島に限ったことではないが、自分以外の誰かに些細なことでも相談できる環境はあまりにも希少だ。「自分の悩みなんて小さなもので、言ったとしても認められないんじゃないかって不安が若い子たちにはあると思うんですけど、それを解消できるのが女子の暮らしの研究所です。真面目な話もしょうもない話もできる仲間がここにはいて、彼女たちがいるから自分に自信が持てた。自分のことも大切にしよう、健やかに生きようって思うようになりました」若干24歳ながら店を率いる店長の知実さんは自身も“じょしくら”に救われた福島の女の子の一人。福島ということがコンプレックスになってしまう子もいる中、地元の名産品や伝統工芸など、「ふくしまのかわいい」を届けることで地元である福島に対して自信を持ってほしいという。現在お店が入っているスペースは1年間限定の出店。間も無く、念願の常設店がオープンする。1階はショップ、2階はイベントを行えるようなコミュニティスペースにするそう。かわいいが持つ魔法、選択する勇気、女子たちの原動力、手仕事の尊さ、女性の多様な生き方。ここで学べることは一人一人違うはずだ。個性豊かな糸が織られることで丈夫な木綿になっていくように、空気のように軽やかなシルクが輝く色を変えるように、彼女たちそれぞれが糸となり「ふくしまのかわいい」を編みだすことで、日本中に輝きを届けようとしている。女子の暮らしの研究所さまざまアプローチで「これからの暮らし方」を考えるふくしまの女の子のためのコミュニティ。研究員として所属する女の子たちが商品開発やツアーガイド、イベントなどを企画・運営し、ふくしまの魅力と今を発信している。HP / Facebook / Twitter / Online ShopText. Azu Satoh
2016年08月19日川原和音のベストセラー少女コミックを実写化した『青空エール』で、いまをときめく若手俳優2人が共演。直接の共演シーンは数箇所のみ、役柄同士の関係はちょっと微妙!?それでも、竹内涼真と葉山奨之の間には得難い絆が生まれたという。『青空エール』の物語は、主人公・小野つばさ(土屋太鳳)が高校の吹奏楽部に入部するところから。初心者ながらも自分のトランペット演奏で野球部にエールを送りたい。そんな夢を抱くつばさは、甲子園を目指す野球部員・山田大介と互いを励まし合う関係になる。その大介を演じる竹内さんは、彼のことをこう分析する。「真っ直ぐで、びっくりするほど優しい。意識せず、自然と人に優しくできちゃう人なんです。ちょっと天然で不器用でもあるけど、それが周りの目には優しさに映る。いそうでいない男の子かなと思います」。一方、葉山さんが演じるのは、本人いわく「クールなトランペットの天才」。名門吹奏楽部のエース、水島亜希は、初心者のつばさにつらくあたりつつも厳しさで導いていく。「つばさと水島は、3年間を経て同志になる。“何だコイツ?って最初は思いました”と皆さんによく言われるんですけど、彼も成長するし、弱い面も見せ始める。そういった部分に共感してもらえればいいなと思いました」。かたや野球部、かたや吹奏楽部。つばさを挟んで顔見知り程度の役柄の2人だが、「面白い関係性の2人なんですよね。お互いに嫉妬しているところもあるのかなって」と葉山さん。竹内さんも、その意見に頷く。「嫌いじゃないけど、全く違うタイプ。でも、お互いのことが気になっているし、ちょっと知りたい気持ちもあるんでしょうね。自分にないものを持っている相手だから。2人とも熱いし、考え方は一緒だったりもするんですけどね」。そんな大介と水島が顔を合わせるシーンでは、「普段の僕たちはすごく仲がいいのに、そのときだけは自然と微妙な距離感になっていました(笑)」と口を揃える2人。ちなみに、竹内さんは「カットがかかった後もちょっとだけ役を引きずる」、葉山さんは「カットがかかったらすぐ自分に戻る」タイプだそうで、役に対するそれぞれのスタンスや普段の関係性からの変化すらも楽しんでいたようだ。役同士の関係性と普段の彼らがいかに異なるか。それは、次の発言が教えてくれる。「撮影が終わってからも、涼真くんとは毎日というくらい連絡を取り合っています。いないと寂しい(笑)。好き度がどんどん増していますし、いまや涼真くんのスケジュールは彼のマネージャーさんよりも把握している自信があります!“涼真くんのスケジュールが空いていたら、ご飯に誘おうっと”って日々考えているので」(葉山さん)。「僕の方が年齢は上ですけど、精神年齢は一緒。性格も結構似ていて、“分かる、分かる”っていう部分が多いんです。要するに、両想いですね」(竹内さん)。ということは、つばさと大介以上にストレートな両想い?こう訊くと、「あっ、そうですね。僕たちは遠回りしないですから!話が早いです(笑)」と竹内さん。葉山さんも劇中のつばさの台詞を引用しつつ、「“好きって言ったら困る?”なんて思わないですもん。好き!好き!ってすぐ言っちゃいます」と笑う。とは言え、やがて惹かれ合いつつも、互いの胸に飛び込めないつばさと大介のもどかしい恋模様はもちろん理解できるもの。「野球を純粋に愛している高校生の男の子だからこそ、大介はつばさの告白を断っちゃうんです」と竹内さんが説明する。「それに、冷静に考えると、あれは告白のタイミングが本当によくなかった(笑)。大介は自分が慕っている先輩の代わりに試合に出て、ミスをしてしまう。それによって甲子園に出られず、先輩の高校3年間を終わらせてしまったわけで、あんな状況で野球も好きな女の子も背負うなんてできないですよね。まだ高校1年生で、器も小さいでしょうし」。では、竹内さん、23歳が大介の状況に置かれたとしたら、「普通に付き合うと思います。彼女の存在もモチベーションにすればいいだろうし」。葉山さん、20歳も「“好きになったら困る?”って、困らないよね!“ハイ!”となる(笑)」と同意。ただし、はたと我に返り、「困ってしまう純粋さが大介にはあるんだけど。僕たちはもう純粋じゃないのかな…」と顔を見合わせもするのだが。恋心あり、情熱ありの青春模様に触れ、自身の高校時代もよみがえったという2人。「高校時代って熱いのがこっぱずかしくなる時期でもありますけど、『青空エール』がそんな気持ちを取り払ってくれる」(竹内さん)、「僕は部活をやっていなかったので、やっておけばよかったなって後悔しました」(葉山さん)と口々に語る彼らが、いまの自分に“エール”を送るとしたら?最後となるこの問いに、2人とも表情をキリリと引き締めた。「“がむしゃらに頑張れ!”と言いたいですね。これだけ若手の俳優さんがいて、みんなライバルというよりは仲間だけど、でもどこかで(ライバルだと)意識している部分もありますし、その中で天狗にならず感謝を忘れずがむしゃらにいきたいです」(葉山さん)。「常にイメージを高く持って、あとはそこに向かうだけ。過ぎたことは気にせずポジティブに。ただ、意識を高く持つのと過信するのは紙一重だったりもするから、自信を持ちつつ、けれども過信せず。難しいけど、そんな自分でありたいです」(竹内さん)。(text:Hikaru Watanabe/photo:Nahoko Suzuki)
2016年08月18日“葉っぱのあんちゃん”が帰って来る!ドラマ「とと姉ちゃん」第10週で、ヒロイン・常子にプロポーズするが断られて大阪へと旅立ち、画面から姿を消した坂口健太郎演じる星野武蔵。それにより“武蔵ロス”に陥る女性ファンを世にあふれさせた彼だが、ついに第20週から復帰する。2人の子どもを連れて…。意外にも父親となってカムバックすることとなった坂口さんが、その胸中を語った。亡くなった“とと(父親)”に代わって2人の妹と母を守りながら、戦後一世を風靡することになる雑誌「あなたの暮し」を創刊した小橋常子(高畑充希)の激動の人生を描いた本作前半で、常子に想いを寄せる植物学者を目指す帝大生の星野を演じた坂口さん。約3か月ぶりに現場に戻った坂口さんは、「第10週でいなくなった時は再登場の仕方がわからなかったけど、時代背景から戦争に行くのかな…となんとなく思っていました」と吐露。そのため、徴兵から戻ってきたという経緯はさして驚かなかったものの、妻に先立たれ、2人の子どもがいることについては「想像していなかったです」と目を丸くする。そのうえで、「こんな過去を持つ状態で常子と再会するのはドラマチック。普通のまま再会しても何もなく終わると思うから…」と星野のキャラクター設定に感心した。また、年齢も40歳になり、「以前は“葉っぱのあんちゃん”として好きなことにまい進していれば良かったけど、いまはカメラが回っていない時でも周囲に意識がいくようになりました」と役に引っ張られて自身も成長したことを報告する。しかし、星野特有の母性本能をくすぐるオドオドした可愛らしいしゃべり方は健在だそうで、「要所要所に慌てっぷりみたいなものは出ています。大人になっても昔の星野を感じてほしい思いはあるので、常子さんと話しているところで出てきます」と断言し、期待をあおった。本格的な父親役は今回が初めての坂口さんは、「僕と常子と子ども2人を交えた4人のシーンは本当の家族のようで違和感がありません。何も知らない人からすると普通の家族に見えると思う」と父としての側面にも自信をのぞかせる。そうなったのは撮影外での交流のおかげで、当初、自分から子どもたちと仲良くなることを目標に掲げるが、「2人の方から、わりとガツガツ、アグレッシブに来てくれたので、簡単に親子の色に染まれました」と述懐。そして、「想像の域を出ないですけど、親としてお芝居をしていることはすごく楽しいです。子どもたちに教えてもらうことが多かったり、子どもに対する目線になったりもするし、面白い感覚ですね」と笑みをこぼす。とはいえ、まだ25歳の坂口さんは「親になることに憧れる歳ではないですね」と打ち明けると、「子どもたちと接していても、実際に自分に子どもができた時に、どんな父親になるかはわからないです…」と首をかしげる場面もあった。互いに様々な経験を通して大人になった星野と常子。そんな2人に対して、「いやぁ、結ばれていいんじゃないかなと思いますよね(笑)」と本音を漏らす坂口さん。さらに、「もう2度と会うことはないと思っていた初恋の人との再会ですからね。視聴者が見入って学校や会社に遅れるくらいのシーンを作らないと」と常子とのロマンスに気合も込めると、「遅刻してください!」と笑顔で呼びかけ。いよいよ始まる星野武蔵待望の第2章で恋のリベンジなるか!?坂口さんが奮闘した父親ぶりと併せて、その成り行きに注目してもらいたい。(text : Rena Nishiki)
2016年08月14日「もし実写映画を作る場合なら、この部屋を描くときに、テーブルや椅子などについて考える必要もありません。それらのものはここにあって、ただ撮影すればいいわけです。でも、僕らがアニメーションを作るときには、すべてをデザインして、材料を自分で用意しないといけません。もしそれをやらなければ、全てのものはそこにはないわけです」。海の中の生き物たちの活躍を描いた『ファインディング・ニモ』の待望の続編として公開中の『ファインディング・ドリー』で、セット・アートディレクターを担当したドナ・シャンクがそう語るように、アニメーションの世界では、キャラクターたちが生活を営む世界そのものを生み出さなくてはいけない。これまでに、様々な人気キャラクターを生み出してきたディズニー/ピクサーだが、それらが生き生きとストーリーの中で動き回る姿に私たち観客が夢中になれるのは、美しくデザインされた背景やセットの存在があってのことなのだ。シネマカフェが実施した現地取材レポート第5弾では、『ファインディング・ドリー』の舞台のデザインに関わった2人のアーティストのインタビューをお届けする。本作で、映画の中の世界の撮影セット及び周辺環境を開発していくセット・アートディレクターを務めたドン・シャンクは、TVアニメの製作を経て、フリーランスのアーティストして長編作品『モンスターズ・インク』『Mr.インクレディブル』のデザイン開発に携わり、その後2004年よりピクサーに所属。引き続きデザイン開発班のアーティスト及びアートディレクターなどを務め、アカデミー賞受賞作『カールじいさんの空飛ぶ家』及び『インサイド・ヘッド』ではセットを担当した。シェーディング・リードを担当したロナ・リューは、2011年に美術部門におけるスケッチ&シェーディングアーティストとしてピクサー・アニメーション・スタジオでのキャリアをスタート。『アーロと少年』や『ファインディング・ドリー』などの作品に関わり、主にキャラクターや風景、小道具の色付けやテクスチャーのデザインを担当した。10歳の時にカリフォルニアに引っ越してきたという中国生まれのロナは、小さい頃からディズニー映画のファンだったという。「これから、『ファインディング・ドリー』の世界をデザインすることについて少しお話ししましょう」と、まずはドンがプレゼンテーションを始める。彼の仕事は、リサーチを元にコンセプトアートを描き、それを物語とカメラワークに合わせて洗練させていくことだ。前回ミズダコのキャラクター、ハンクが生まれる過程をご紹介したが、今回のセット作成においても同様に、制作のはじめには緻密なリサーチが実施されたという。「僕らがリサーチ旅行に行ったとき、何千という写真を撮りました。特定の場所にだけにある、独自の、本物のディテールを、出来るだけ集めようとしたからです」。ここでも、モントレーベイ水族館の協力のもと、ケルプの森や人工水槽など様々な写真や映像素材を用意したという。スクリーンに映し出された美しいケルプの森の写真を眺めながらドンは話す。「ほとんど抽象画のようですね」。その後、それらのリサーチをもとに、コンセプト画が作成される。本作のように規模の大きい作品の場合は、いくつかの分野に分けた制作が行なわれるようで、今回は、マーリンやニモたちが暮らすサンゴ礁をはじめ、魚たちにとって恐ろしいところでもある外洋の空間、ドリーたちが冒険していく中で訪れるケルプ(海藻)の森、そしてドリーがハンクと出会うことになる海洋生物研究所の4つにカテゴライズされて制作が進められた。取材陣が眺めるスクリーンには、プロダクション・デザイナーが作成したそれらの場面を描いた美しいグラフィックが映し出された。それらのグラフィック画を元に、アーティストたちは「モデル・パケット」と呼ばれる、作品の中での舞台セットを作成する。コンピュータを使って繰り返し同じ背景が使われたような仕上がりにならないためには、一つのセットに対して、様々なバリエーションが作成されるのだ。「僕らは、ただどういうふうに見えるものになるかとか、それらをどのように作るかとか、どんな色にするかということを考えるだけじゃなくて、映画全体における、アーティスティックな影響を考えるということです」。そうドンが語るように、ディズニー/ピクサーでは、その空間を生きるキャラクターたちとの感情的な結びつきや、実際にストーリーの展開によってセットに変化を加えるという。「たとえば、ドリーがケルプの森で、水面に向かっていくとき、近づいていくにつれて、もっと希望に満ちてくるように感じたいわけです。多分、彼女は、彼女の疑問に対する答えを見つけようとしているんだ、とね」。さらに、アーティストたちは様々なディテールを描くことにも決して手を抜かない。海洋生物研究所にける非常口のサインや、排水溝、天井、さらには、キャラクターの視点から見た世界など、ありとあらゆる細部にまで注意を払っていく。「たとえば、ここで働いている人々は、あの小さなフックに、ホースをかけたりします。そういう小さなディテールを探しているんです。出来る限りこういったアイディアをたくさん集めて、信ぴょう性があって、生き生きと感じさせるようにします」。次に、「コンテクスト・ペインティング」と呼ばれる行程で、デザインするセットの具体的な長さや高さ、幅など、機能的なデザインについて監督や撮影監督らとの話し合いが行われた後に、具体的に映画のシーンの中でどのようにその場面が見えるのかが描かれていく。また、ここで照明が与えるセットへの影響や、描かれるセットの素材がどのように見えるかなどについても議論が交わされる。ディズニー/ピクサーの映画で描かれる舞台は、ワンシーンの中で、キャラクターたちが動き回る背景として必要な分だけが描かれるだけではなく、監督の要請や新たなアイディアに対応するために、そこに実際にカメラを入れて、どんなカットが撮れるかがシミュレートすることができるように、リアルな空間的な広がりのある舞台として描かれていくのだ。さらに、ドンに続きロナから「カラー・スクリプト」についての説明が行われた。あらゆるデザインに対して一旦監督の承認が下されると、ロナたちシェーディングのスタッフによって、デザインされたセットに色や質感が加えられていく。「カラー・スクリプトの主な目的は、そのシーンのムードを確立することです。そのために、照明はどんな色で、どこに照明が置かれているのか、その照明の強さはどれくらいか、という情報をデザインしていきます」。その後、粘土で図形を作るクレー・スカルプチャーが舞台模型を作成し、それをもとにコンピュータ上で3Dモデラーが作成され、そこにペインティングが施されていくという。そこでも、ストーリーの中を生きるキャラクターたちとの感情的な結びつきを忘れないのが、ディズニー/ピクサーのクリエイションだ。「キャラクターたちは生命に満ち溢れているので、環境も生きているというように感じてもらいたいんです。だから、光が通ったり、カメラがパンする時、これらのキラリとした輝いた金色のものが見える。このエリアに命を吹き込むためです」。「多分、スクリーン上にこの部屋自体が出てくるのは3秒だけだと思います」。仕上げられたセットの画像が映し出された画面を眺めながら、ドンは話す。「でも、もし映画の中のすべての部分のために、これらの作業を全部やらなければ、ストーリーから気持ちがそがれたりするんです。そういうことは出来ません」。たった数秒しか出番がないセットだったとしても、決して手を抜くことがないその姿勢を、なんてことないように語るドンとロナの姿には、なんとも眩しい思いがした。「ここでやっているすべてのことは、常にストーリーをサポートするということです」。これまでの現地取材レポートでも、ディズニー/ピクサーの最先端の技術によるクリエイションの行程を見てきたが、それらがある種の技術的なプレゼンテーションに終始してしまう描写になることを、ディズニー/ピクサーは徹底して否定し続けている。あくまでそこにはストーリーとキャラクターがあり、それらにいかに生命を与えるかということ、それがアニメーションスタジオとしての彼・彼女たちの至上命題なのだ。それが見失われることは決してない。「そこでキャラクターが何をしていて、それがセットにどのように影響しているかということを考えるんです。僕らはいつもストーリーについて考えています。すべてが関連していますからね」。『ファインディング・ドリー』で描かれるあらゆる世界は、一見してとにかく美しいものばかりだ。海の中に漂う細かな塵や、海底に差し込む光の揺らめき、さらに海洋生物研究所内の精緻な描写に至るまで、それらはあくまでストーリーの裏側の役目を果たしながらも、ふとした時に私たちの目を奪うほどの存在感をも発揮している。魅力的なキャラクターに感動的なストーリーはもちろんだが、それらを包み込むセットにも、ぜひ注目してみて欲しい。ディズニー/ピクサーが描きたい美しさが、そこには感じられるはずだ。『ファインディング・ドリー』は、全国にて公開中。協力:ウォルト・ディズニー・スタジオ・ジャパン(text:cinemacafe.net)■関連作品:ファインディング・ドリー(原題)
2016年08月13日Sansan株式会社の綱島芳紀さんは2014年、英国発「FQ JAPAN」の「Mr.イクメンコンテスト」でグランプリを受賞。 忙しい毎日を送っていても “仕事と家庭どちらも大事にする”姿勢が評価されました。今回はそんな綱島さんに、仕事と育児の共通点をテーマにお話をうかがいました。※なお、イ“ケ”メングランプリではなく、イ“ク”メングランプリです!仕事と家庭を両立するとは−−イクメングランプリの受賞から1年以上が経過しましたが、仕事や生活に変化はありましたか?綱島さん(以下、綱島):仕事の面では昨年11月に異動があり、顧客対応の多い業務から社内で仕組みを作る業務に変わりました。でも仕事量は変わっていないので、今までと同様に平日はずっと仕事ですし、帰宅時間も遅いです。家事や育児への関わりかたも以前と変わっていません。−−忙しい中、仕事と家庭を両立するために、何か工夫をしているんですか?綱島:仕事の効率化は常に意識しています。「完璧にやろう」とこだわらず、調整できるところは調整し、重要度が高いことに集中する感じです。一方で、家庭だと最優先は子ども。子どもがやることは予測不可能「待ったなし!」、そこに多くの時間を使います。ただ、そこだけに注目すると「(子どもも含めた)家族全体」のことが疎かになるので、それは良くないと考えています。−−具体的にどうやって対応していますか?綱島:週1回土曜の早朝まだこどもが寝ている時間に、ゆっくり夫婦でコーヒーを飲みながら、大きく2つに分けて我が家でやることの棚卸しをしています。1つは保険やお金、幼稚園のことなど、比較的真面目に考えないといけないこと。2つめは純然たるウォンツリスト。行きたい場所や店、やりたいこと、欲しいもの。そこにいつ行くか、何を食べたいかをわくわくしながら出し合います。−−すごいきっちりされていますよね。そこまできっちりやっていると疲れませんか?綱島:むしろこれのおかげで疲れないんです。小さい子どもは最優先だけど、子どものことに追われて家族としてやりたいことができないとそれはそれで残念。だから、更なる家族のHAPPYのためにリストを作成しているのです。勿論それでも予定通り完璧にそのリストが消化されることはありません。項目が追加されたり期日が変わったり。または項目自体が削除されたり。でも、それでいいと思っています。そういう余裕も持って構えることで本当に必要なことや真の優先順位が見えてくる。そして、少しずつ家族としての想いや方向性も見えてくる気もしています。−−仕事を家に持ち込んでしまうことはありますか?綱島:ありますよ。ただ家族と一緒にいるときは家族のことに集中したいので、土日は5時には起きて、奥さんと子どもが寝ている間に仕事をします。そのときは基本的に次週のプランニングだけに留めて、仕事に没頭しないようにしています。本格的にやりはじめると、あれもこれもとエンドレスになってしまい、2人と過ごす時間が減ってしまうので。−−結構難しいですね。綱島:そうですね、難しいです。これだって完璧にはできませんし、そのまま仕事になってしまうこともあります。でも、そう意識しておくだけでも家族との向き合いかたは違ってくる気がします。奥さんとは同じチームである−−仕事に例えると、夫婦は家庭を運営するチームともいえると思います。家族の中で奥さんはどういった存在ですか?綱島:確かにチームのような面はありますね。といっても役割分担の割合は圧倒的に奥さんのほうが大きいです。というよりも、うちのチームは奥さんなしだったら成り立ちません。平日なんて僕はいないも同然ですから。−−子どもに対して「母親には敵わない」と感じることはありますか?綱島:どんなに頑張っても父親としての僕は、母親としての奥さんに敵いません。子どもって、なんだかんだで『お母さんが一番!』なところがありますし。どう気合を入れても、僕はおっぱい出ないですしね(笑)。そして何より、うちの奥さん、策士なんです。−−奥さんが策士とは、どういうことですか?綱島:幸せなことに、うちの2歳の息子は僕のことが大好きです。休日になると僕にべったりくっつき、そして何でも真似をしようとします。で、僕がちょっとしたことをしただけで「うわー、すごい!かっこいい!!」と連呼します(笑)。息子にとっての僕はまるでスーパーヒーローです。そんな息子はここ数ヶ月でだいぶおしゃべりが上手になってきたので、ある日ふと聞いてみたんです。「おとうさん、そんなにかっこいい?」。それを聞いて、息子が言うんです。「おかあさんがいつもいってるよ。おとうさんはすごいんだって。おかあさんができないことでもぜんぶおとうさんはできるんだよって」−−確かに策士ですね(笑)綱島:僕がいなくても、ことあるごとに奥さんは僕のことを息子に伝えてくれていたんです。例えば僕の仕事のことを教える。お昼になると「おとうさんもごはん食べたかな?」と言う。実際は奥さんが買っておいたプリンでも「これ、おとうさんが買ってくれてたよ。嬉しいね!」と息子に渡す。雷がゴロゴロ鳴って息子が怖がっていたら「おとうさんは雷怖くないんだって。すごいね!」と褒め、おもちゃが壊れて息子がべそかいていると「おとうさんなら直せるよ。かっこいいね!」と。ありがたすぎて参りました。奥さんなしでは僕は息子のスーパーヒーローにはなれなかったわけですから(笑)。そんな最強の策士であるうちの奥さんに敵うわけありませんよね。夫婦はチーム、「負担」「平等」なんて思わないし考えない−−仕事、生活を含めて夫婦2人の負担が平等になるよう、綱島さんは奥さんをどのように手伝っているんですか?綱島:実は、「負担」とか「手伝う」という単語は我が家では殆ど使いません。奥さん曰く「負担とか平等とか、そんなこと思うくらいならそもそも結婚なんてしてない」。特に負担という言葉は、自分の人生の足かせみたいな意味のように感じて苦手らしいです。僕も同じチームの仲間がやっていることを「手伝う」「負担する」というのは何か違和感を覚えます。−−同じチームなんだから、同じ目的のために協力するのが当たり前ということですね。綱島:『わたしがちゃんと料理をするから、あなたは掃除をする係です』みたいな分業制はうちにはありません。それでも明確に存在するルールがひとつだけあります。それは「できなかったことを責めない」。例えば、子どもにかかりきりで掃除ができなかった、食事の用意ができなかった、そういうことを責めない。できなかった理由がありますから。そして、その理由、原因は他ならぬ愛する我が子なんです。−−そのルールができたのは?綱島:息子が誕生してからの約1年間は、僕が帰宅するとしょんぼり落ち込んでいる奥さんの姿をみることが結構ありました。キッチンには調理が中断された食材。リビングには息子の大暴走が想像できる痕跡。奥さんがその後始末をしている途中でまた「待ったなし!」の何かが起きたんだろう。家全体から伝わってくるんです。悲惨な状況の中、息子を抱っこして懸命にあやしている奥さんの姿。近くに頼れる人がいなかった奥さんは、まさしく孤軍奮闘でした。どうすれば家族がHAPPYなのか考えて決めたルールが「できなかったことを責めない」でした。これは、奥さんが自分を責めないということ、そして僕も奥さんを責めない(不満に思わない)というふたつの意味があります。こうやって少しずつ我が家ならではのルールができていって、よりHAPPYになっていくといいなと思っています。−−家族というチームのゴールはどこなのでしょうか。綱島:明確には決めづらいですけど、子どもにちゃんと自立した大人に育って欲しい、ですかね。子どもには子どもの人生がある。自立できるように育って、自分で幸せな人生を歩んでくれればいい。そのためにどうしたらいいのか、何をサポートできるのかを考えています。−−夫婦喧嘩でよく聞くワードとして「子どものため」という言葉がありますが、綱島さんはこのワードを聞いてどう思いますか?綱島:「子どものため」と言う言葉が免罪符のような感じになりがちですが、僕自身はちょっと違います。家族みんなで幸せでいたい、「家族のため」です。自分だけでもないし、子どもだけでもない。奥さんと子ども、家族全員が幸せな状態が自分の幸せなので、そうなれるよう努力したいと常に意識しています。−−最後に、綱島さんの“育児”に関する考えかたを教えてください。綱島:「生かす」ではなく、「育てる」。つまり、極端な話、ただ生存のために食事をさせればいいということじゃない。生きていく力をつけるため、成長を促すことだと考えています。僕じゃなくて子ども自身の人生なので、子ども自身が正しく判断できる、きちんと生活できる。その成長のサポートをすることが育児なのかなと。ライター所感:お会いする前は、「綱島さんが凄いからイクメングランプリに輝いたんだろうな」と思っていました。とても真似なんてできないだろう。でも、お話しを聞いているとそうでもない。「完璧でなくてもいいんです。気持ちや考えかた次第で変わるんです」この言葉は印象的でした。「仕事が」「奥さんが」「子どもが」と不満を嘆くのではなく、家族みんなの幸せを大事にし、どうしたらそれができるのかを考えて前向きに実行していくこと。その想いが通じて、イクメングランプリに輝いたのかもしれませんね。ライター:山口聖子
2016年08月12日「主人公以外すべてCG」という革新的な映像技術を駆使し、躍動感あふれる“生命賛歌”をうたい上げ、全世界で大ヒットを記録中のディズニー映画最新作『ジャングル・ブック』。本作を引っさげ来日したジョン・ファヴロー監督、主演のニール・セディが取材に応じた。ウォルト・ディズニーの遺作である名作アニメを、約50年ぶりにディズニー映画が復活させた本作は、生後間もなくジャングルに置き去りになった人間のモーグリが、森の掟に従いながら、動物たちと成長を遂げる感動アドベンチャーだ。子どもの頃に見たアニメ版に、強い印象を受けたというファヴロー監督は、「大好きな作品に敬意を示しつつ、最新のデジタル技術だという事実を忘れてしまうほどの、感情豊かな作品にしたかった」とふり返る。「実は最新技術を用いて、古典に新たな命を吹き込むという姿勢は、ウォルト・ディズニー本人から受け継いだものなんだ。彼も当時の最先端だったセルアニメで『白雪姫』や『シンデレラ』といった昔話を長編アニメにしたんだからね。優れたストーリーを、最善の手法で表現し伝える。それがウォルトの信念だ。だからこそ『ジャングル・ブック』の原作が誕生してから100年以上の歳月が流れ、再び映画化するのは意義あるチャレンジだった」。そんなファヴロー監督の言葉通り、新たに生まれ変わった『ジャングル・ブック』は、実写映画の定義を刷新するほどの、つまり「映画の未来」を指し示す極めて重要な一作に仕上がった。一方で、娯楽の多様化が進むなか、いまこそ映画そのものの存在価値を見直すタイミングを迎えたことも事実だ。『アイアンマン』も手がけたファヴロー監督でさえ「テレビやネット、動画配信など映画のライバルは増えるばかりだね」と危機感を募らせる。それでも「映画に未来があるかと問われれば、もちろんイエスだ」とファヴロー監督。「映画という世界中で楽しんでもらえるエンターテインメントの作り手として、常に時代を見据えた作品づくりをする責任があるし、技術革新を通して、映画の価値をアップグレードするのも重要だ」と熱く決意表明する。「その意味で実験的かつ野心的な『ジャングル・ブック』は大きな役割を果たしたし、多くの人が心から感動してくれたことは誇りだよ」。忘れてはいけないのが、作品に真の生命力をもたらした主人公モーグリを演じるニール・セディの存在だ。演技経験は皆無ながら、オーディションで約2,000人の中から大抜擢。本人は「とにかく、ハッピー、ハッピー、ハッピーな体験だったよ。確かに超大作だから、最初は腰が引けたけど、ジョンも含めて現場のみんなが僕を支えてくれたから、もう怖がっている場合じゃないって思ったんだ」とモーグリ顔負けのエネルギーあふれる少年だ。現在12歳のニールについて、ファヴロー監督は「特別な何かがあるのは一目瞭然だった。カリスマ性があるし、アニメ版のモーグリを彷彿とさせる面もある。何より俳優として、とても聡明だ」と映画の未来を担う新星スターに太鼓判を押す。当のニールも「お芝居は初めてだったけど、とても楽しかったから、これからも挑戦したいし、バスケや野球、フットボールとか体を動かすことも大好きなんだ」と自らの未来に、大きな瞳を輝かせた。(photo / text:Ryo Uchida)
2016年08月09日太陽に向かって全力で咲き誇り成長するヒマワリのように、夢に向かって真っ直ぐに、そしてフレッシュで眩しい輝きを放ちながら成長している若者たちがいる。次世代を担う男性声優の発掘・育成プロジェクトとして開催されたリアルオーディション「ツキプロMusic Grand Prix 2016」で見事合格した13名の新人声優グループ「ツキクラ」。彼らは、架空の2.5次元芸能事務所「ツキノ芸能プロダクション(ツキプロ)」のリアルなアーティスト候補生として、7月からアニメ放送が始まった大人気シリーズ「ツキウタ。 THE ANIMATION」に登場するキャラクターのように、歌って踊れる声優アーティストを目指し、目下活動中。7月18日にはグループ初の単独ホールイベントを開催し、大成功を収めたばかりだ。今後は、選抜メンバー8名によるユニットのCDデビューに加え、「ツキクラ」として13人全員でのCDデビューや、冬には再び単独でのイベント「TSUKINO CROWD FESTIVAL 2016 WINTER」の開催が決定。フルスロットルで躍進する彼らから一瞬足りとも目が離せない!よそ見厳禁の最旬グループだ。そんな彼らが、いま、全力で追いかけるモノは一体何なのか?ヒマワリの如く輝く彼らにとっての“太陽”とは…?ツキクラメンバーの荒一陽、市川太一、井上雄貴、大島尚起、大海将一郎、小松準弥、西野太盛、筆村栄心、古畑恵介、松岡一平にインタビューを実施した。■花火大会から「アニメ」出演まで…この夏の“挑戦”から見えた等身大のツキクラツキクラとして初めて迎えるこの夏。彼らはどんな風に過ごしているのだろうか?「この夏、挑戦したいこと」をテーマに語ってもらうと、彼らの会話や表情から、等身大の飾らない、少年のようなツキクラの姿が見えてきた。――この夏挑戦したいことは何ですか?井上:メンバーで花火大会に行きたいです!小松:浴衣も着たいね!古畑:俺、出身が静岡県熱海なんですけど、熱海って花火大会が年に何回もあって、夏も10回くらいやってるから、ぜひみんな行きたい!荒:俺、こないだその話を個人的にされた…。古畑:ごめん、みんなにしてる(笑)。――やっぱりツキクラのメンバー皆さんでお出かけしたいですか?市川:そうですね、日程合わせて行きたいですね。小松:海も行きたいですね!市川:僕、海に行ったこと無いんです。肌が弱くて潮風にあたるだけでピリっとしちゃって…日焼けしたら火傷しちゃいますし、僕。西野:俺もそうなるで。赤くなんねん、バーって!市川:え、海行って大丈夫なの?西野:逆に行きまくる!真っ黒になっても真っ白に戻るし。海水って肌にいいらしいけどな。無理やり親に連れて行かれてたよ。市川:じゃあいまからお風呂に塩いれて、肌を慣らしておこうかな(笑)。小松:海繋がりで、サーフィンに行きたいなって。ちょっとだけ経験があるんですけど、体力的に「もういいや」って投げ出してしまったので。今度は諦めずにがっつりやりたいなって。松岡:おれは深海に行きたい…。大海:俺もどっちかっていったら深海がいい。古畑:スキューバーダイビングしようよ!市川:でもスキューバーダイビングって資格いるしね。免許取っても何メートルまでしか潜れないっていうのがあるから。一同:へ~。(感心)市川:僕もダイビングに興味があるんです。周りに資格を持ってる人がいるので、僕も今年は挑戦したいなって思ってるんですよ。荒:ほかには何かな…キャンプも(番組で)したしね。井上:僕いま「キャンプしたい」って思った!古畑:もう一回してもいいよね荒:今度はコテージじゃなくて、本格的にテントを張ってキャンプするとか!大海:僕は、花火大会とか海とか…全部“こみこみ”でお泊りがしたいですね!西野:ユニバ(ユニバーサル・スタジオ・ジャパン)とか!?小松:遊園地いいね!古畑:でもお化け屋敷は無理!!市川:絶叫系苦手な人とか班に別れてもいいよね。絶叫苦手な人は?(荒、西野、松岡が挙手)荒:俺、絶叫系はダメ!乗れるけど怖い。泣いちゃうかも…。西野:俺も絶対イカン!あのG(重力)が嫌!“ぐあー”ってなる感じがもう!俺死にそうになってまう、登ってるとき。市川:そんなふうに言われると、逆に乗ってる姿見たくなる(笑)。あとはバンジージャンプもやりたい!小松:だったら思い切ってスカイダイビングだよ!井上:どっちもリスクが怖いよ…。小松:怖がってちゃ何もつかめない!市川:リスクを恐れてたら何もできないんだよ!井上:だったら温泉に行きたいな!筆村:お風呂に一緒に入るのは無理だよ(笑)。ひとりがいい…。――実際に、皆さんでお泊りとかするんですか?小松:仕事ではありますね。お泊まりすると、夜は結構深い話になることが多いんです。キャンプのときもそうだったし。僕は、ツキクラグリーティングツアーのときに福島県いわき市に行ったんですけど、市川くんと2人でホテルに泊まりました。そのときは、一緒に大浴場行ったり、部屋でちょっとお酒を飲みながら深い話もできた。だからやっぱり、“泊まりがけ”でどこか行きたいっていうのはありますね。市川:でも、みんなでがっつり飲みに行く、みたいなことはないね。古畑:レッスン終わりに食事とかにはいくんだけどね!市川:お酒を交えて話したいね。小松:みんなで飲みに行きたいね!一同:ほんとに!古畑:俺は、この夏は仕事でいっぱいにしたいです!仕事で遊ぶ暇が無いくらいになりたい。どんどんみんな個別の仕事も決まってきて、ツキクラとしてもどんどん上を目指せる時期だと思うので。ね!松岡:確かに!ツキクラのメンバーと、ツキクラとは全く別の現場で一緒にお仕事をするっていう経験もしてみたい。メンバーのいつもと違った面が見られると思うので。筆村:ちょうど「ツキウタ。 THEANIMATION」の放送が始まって、僕たちも出演することになっているので、それもこの夏の新たな一歩だなって思います。■メンバーも知らなかった“新たな一面”がちらり…彼らの“原動力”とは?プライベートも仕事も“やりたいこと”がいっぱい!己の夢に突き進んでいるいまが楽しくて仕方がない!と、満開の笑顔で語るメンバーたち。だが、その日々には努力、歓喜、幸福、辛苦、悲涙、焦燥…様々な想いを抱えているのではないか。全ての想いを凌駕して、彼らを突き動かすものとは…彼らを導く“太陽”とは?――みなさんの“原動力”とは何でしょうか?荒:“モテたい”というか…同級生とかに「あ~あいつ頑張ってるな」と思われるのは嬉しくない?「格好良いな」「頑張ってるあいつ!」「活躍してるじゃん!」って思われたい。古畑:素直な言い方になるけど“モテたい”っていうのは確かにありますね。俺も「俳優や芸能人になりたい」と最初に思ったきっかけは、“モテたい”“目立ちたい”という気持ちが大きかったから。ほかのメンバーも同じだと思うけど、やっぱりファンのみなさんの“笑顔”が本当に一番大きなエネルギーになってくれてます。俺が役者を志した理由もそれなので。井上:僕は、僕のことを支えてくださる方への“感謝”の気持ちがあるから。大変な時期があり迷っていたときに、家族やファンの方も然りなんですけど、この業界の中で、僕のことを考えて行動してくださる方がいらっしゃって。そういう方がいてくれたから“いまの僕”がいる、と凄く強く感じているんです。それに、お仕事は自分ひとりでできるものではない。僕たちのお仕事は、作品においてお芝居をすることですが、そのフェーズに至るまでに携わってくれる方、作ってくださる方がいてこその“自分の仕事”。だから、そこへの感謝は絶対に忘れないし、みなさんの気持ちも絶対に考えなきゃいけないと思う。「どうしたらこの作品の人気が上がるかな?どうしたらもっと売れるだろう?」とか「そのために僕ができることは何かな?」と考えられるようになる。それが僕の原動力かな、って思ってます。市川:僕の原動力は“好きであること”“楽しむこと”だと思っています。自分が「楽しい」と思ってないと、お客様に楽しさが伝わらないし、面白いと思っていただけない。だから、最低限、自分が如何にして“いま”を楽しんで、なおかつ、お客様に伝えたいことを伝えつつ、作り手側の意図に沿ってお客様に楽しんでもらえるか…というのを第一に考えてお仕事に取り組んでいます。やはり、厳しい世界なので、僕らがこの業界に居続けるためには、好きという“情熱”がないといけない。荒:僕も、凄く好きでこの仕事をやっているっていうのがありまして。上手くいかないときや不安になることもあるんですけど、実際にお仕事をしてみたり、ステージに立った後とかは、「凄く楽しかったな」「やっぱり俺はこういうことをするのが好きなんだな」って思うことがよくあります。だから、「これからも頑張っていきたい」っていうふうに思えるんだと思います。筆村:僕は小学生くらいから“夢見る男の子”みたいな…ほかの子よりもゲームやアニメが好きで、ずっとゲームやアニメを見ているタイプだったんです。それで、「アニメやゲームの世界のキャラクターに自分がなってみたい」と、“キラキラ”した世界に憧れて、いまこうして頑張れているんです。だから、ツキクラの活動を通して“夢”に近づいているまさにこの瞬間が、凄く原動力になっています。実際に働き始めても、思い描いていた“キラキラ”は消えていません!メルヘンじゃないところなんてないです!小松:僕は、人前に出ることが好きで、自分の身体を使って表現する仕事をしたいと昔から思っていました。とにかく、人生一度切りなので“いろんな人になりたいな”って。いろんな役を演じれば、様々な人の感性やいろんな考え方が入ってきて、そこが面白いし魅力的だと思うんです。それから、僕はこの仕事を通して、小さいころから支えてくれた周りの人たちに“恩返し”がしたいんです。とあるオーディションで賞を取ったときに、周りの皆が喜んでくれたんです。そのときに「ああ、僕がやりたいことをやって活躍する姿を見せることも、恩返しのひとつになるんだ」と気づいた。だから、人前に立つことで「僕はいまこうやって頑張ってるよ」という姿を皆に見せたい。大海:僕も準弥君と同じで、いろんな人に支えられて、いまこうしてここに“大海”がいるので、支えてきてくださった方々に恩返しの思いもありますし、いま応援してくださっているたくさんの方々の思いにも応えたい、という気持ちで頑張っています。西野:自分も、始めはふーくん(古畑)と一緒で、人気者になりたいという気持ちからだったんです。けど、本当にいまはたくさんの人たちに支えてもらったり、応援してもらっている。身近な方から大勢の方まで、いろんな方にお世話になっている。そういう方々の気持ちや、存在そのものが、僕が頑張れる原動力ですかね。…短くまとめちゃったんですけど、でも本当にその思いに尽きるんです。大島:僕の原動力は“憧れ”ですかね!僕はダンスと歌が大好きで、いまはツキクラとして演技を本格的にはじめましたが、ふり返ると小さいときからいろいろ経験してたなって。幼稚園のときは劇でメインの役を、小学生になってからはダンスでセンターポジションをもらったり、音楽の授業で歌うのも楽しかった。本当にダンスと歌と演技が大好きなんです!それ以外をやっている自分っていうのが想像できなくて、生きてる心地がしないんですよ。家に帰っても常に歌ってますし、踊ってないと納得行かない、って感じる…。だから、テレビで見ていた憧れの人に近づきたいって思うんです。もちろん、一生をかけても「このスキル手に入れられないな」って感じる方もいますが、いまは“マイケル・ジャクソンさんさえも超えたい”という思いで頑張ってます!あとは、声優に必要な言語力&トーク力を手に入れるために奮闘してます!松岡:僕の原動力は…“挑戦する気持ち”ですかね。僕は、もともと運動ができたり頭が良いわけではなかったので、「好きだからやりたい」と思っても「どうせできないしな…」とやる前から諦めたり、手を出してもすぐに辞めてしまうことが、昔からいままでずっと続いてきた。そのうちに、好きなこともしなくなって、何が好きなのか自分でもよく分からなくなったんです…。中高生のときはほとんど学校にも行ってなくて…。そんなときに気持ちを明るくしてくれたのが、ラジオやアニメ・ゲームでした。それで、声優という職業に興味を持ち始めたんですが、最初はやっぱり「できるわけないし…」と諦めたし、周りに「やりたいんだ」と言うのも恥ずかしかった。「無理だよ」と言われるに決まってるって思ったんです。だけどある日、家族に軽い気持ちで「(声優)やりたいんだよね、実は」と言ってみたら、「やりたいものがあるんだったら、もっと早く言ってくれればよかったのに!」と、思いがけず受け入れてくれた。親や家族、学校の先生も誰も反対せず、全員が全員、僕の背中を押してくれた。周りの人がこんなにも応援してくれて、しかも自分もやりたいことなのに、やらない理由はないなって。それに、人生で一つくらいは「逃げずにこれやったぞ!」って思えるものが欲しくて。なので、「負けないぞ!挑戦するぞ!」っていうこの気持ちが、いまもずっと原動力だと思います。――これまでもメンバー内でこうしたお話をしたことはあるんですか?小松:今後どうしたらもっと良くなるか?っていう話が結構多いので、「なんでやってるの?」という話は初めて聞いた。市川:ここまでに至る過程とかは、いままで一緒にいたけどあまり話さなかったので、新鮮というか、新たな一面がみれた気がしましたね。■より高みを目指して!ツキクラ13人13色で描く未来予想図それぞれの想いや夢を胸に、真っ直ぐ前進する彼ら。バラバラなようでいて、その結束は固く、想いの方向は同じようだ。まるで“花束”のように、それぞれが全く違う個性で輝きながらもツキクラとして一体感を持ち活動する中で、彼らがこの先に目指すものは?ファン必聴の「ツキクラ大構想(?)」が明かされた。――今後目指すものは何ですか?筆村:7月の七夕のときに短冊にツキクラの願いごとを1枚ずつ書いたんですけど、みんな「大きなステージに立ちたい」とか「みんなでCDデビューをしたい」とか…それぞれが向いている方向は同じだなって感じて。なのでやっぱりツキクラとして大きなステージに立ったり、これから僕たちもキャラクターがついて正式に「ツキノ芸能プロダクション」のタレントになるので、そのときにゲームやアニメで活躍して、ツキクラが大きなコンテンツになっていけたらいいな、と思います。小松:そのためにも、ツキクラとしての強みをこの夏で見つけたい!結構そういう話もしてるんです。13人もいるので、それを活かした強みについて。市川:13人それぞれが、声優・舞台・アイドルと様々な分野で活躍しているメンバーが集まっているので、お互いの進みたいところで活躍して、そこで新たにツキクラにも興味を持ってもらう。そうやって大きく広がっていくコンテンツとして注目してもらいたい。そこが、ほかの2.5次元コンテンツさんとは違うツキクラの強みかな、と思っています。――なるほど。具体的にやりたいことはありますか?井上:ツキクラのファンクラブを作りたい!ファンクラブができることによって、またひとつのグループとして新しい活動ができそうだし、面白いかな、と。出演するテレビ放送がなく、イベントが無い期間でも、会報やメルマガ配信など、ファンクラブ会員限定の何かができたらいいなって!市川:あと、ツキクラでお芝居をもっとやりたい。もちろん今後はキャラクターがついて、ドラマCDなども録ったり。それ以外にも舞台とか、2.5次元というコンテンツを活かして、新たな展開に挑戦してみたいです。松岡:シリアスな舞台がやりたい!一同:へ~!意外!松岡:逆にね!観ている人たちには、ツキクラっていつも仲が良いイメージがあると思うんだけど…ギャップじゃないけど、いつもと違うテンションで「重めの芝居もできるんだぞ!」っていうのを幅として見せられたら「素敵な役者さんだな」って評価にもつながると思う。大島:僕はね、毎週日曜日ツキクラだけの番組がやりたいです!「明日から月曜日だ…憂鬱だわ…」っていう気分を癒せたらいいなって!しかもイッチー(市川)が言ったようにいろんな展開ができると思う。歌とかダンスとか、演技も!それに、ダンスや歌、演技を志す若者たちにも刺激を与えられたら良いよね。そうしたら僕たちもいろんな方向で見てもらえるチャンスが増えるんじゃないかな。夢・情熱・未来について語る彼らの姿は、太陽の光を浴びて力強く咲き誇るヒマワリのように眩しく輝き、もはや太陽そのもののようにさえ感じられた。いまはまだ一人ひとりは小さな花でも、グループとして団結した彼らは花束となり新たな魅力を発揮し、そしていずれはそれぞれが大輪の花となるだろう。エンターテインメントの楽しみ方が多様化している昨今において、多彩な才能が集まったツキクラが、今後どのような煌めきを見せてくれるのか。楽しみで仕方が無い。(text:cinemacafe.net)
2016年08月08日結婚祝いには2人で楽しめる「オーベルジュチケット」、母の日にはエステチケット──。ソウ・エクスペリエンスはシーンに合わせて、大切な人にちょっと“贅沢”で“非日常”な体験を楽しんでもらう「体験型ギフト」を企画・販売しています。同社で2年前に始めた子連れ出勤制度は、子連れで働く社員だけでなく、会社や子どもがいない社員にとっても貴重な体験をもたらしてくれました。社外にも積極的に「子連れ出勤プロジェクト」を発信している同社の取り組みについて、西村琢代表取締役にお話しをうかがいました。「Women Willレポート」バックナンバー第1回:働くママだけじゃない。Google が目指すのは、誰もがHappy に働ける社会自然に始まった子連れ出勤プロジェクト西村さん:子連れ出勤制度は必要に迫られて、自然な流れで始まりました。制度化するきっかけは、約2年前に社員の1人が産休に入ったこと。当時の社員は10人程度。1人抜けてしまうのは会社にとって影響が大きかったんです。そこで、「会社に子どもを連れてきていいので働いてほしい』とお願いしました。本人も快諾してくれて、子どもを連れて出勤してくれることになりました。それまでも自分も含めて、たまに子どもを連れてくる社員がいたので、子連れ出勤が特別という感覚はなかったんです。新たに人員を確保する手間が省け、本人もブランクなく仕事を続けることができました。この経験で子連れ出勤が会社にとっても社員にとっても大きなメリットになると気づけたんです。子連れ出勤が日常化したことで、オフィス環境も徐々に子どもがいることを意識した仕様に変化していきました。現在のオフィスは、奥のスペースが土足厳禁になっていて、仕事をしている親のそばで子どもが裸足で遊べるようになっています。また、テーブルの角を養生するなどして、子どもがケガをしないような配慮もしています。でも、土足厳禁のスペースをつくる以外は特別なことはしていません。ベビーシッターもいないし、子どもが遊ぶおもちゃは親が持参しています。西村琢代表取締役人材不足も職場復帰の壁も解消ちょうど待機児童問題が話題になっていたので、働きたくても働けない女性がたくさんいるんじゃないかなと思いました。フェスブックなどで『子連れで働きませんか』と呼びかけてみたら、すぐに希望者が集まったんです。この時点では、子連れ社員が増えることでどのような問題が起こるのか未知数。でも、とりあえず2ヶ月くらい試しにやってみて、ダメだったらやめてもいいと思っていました。結果的には、色々な課題がでてきましたがどれも解決できるものばかり。子どもの年齢や相性によっては喧嘩をしてしまう。だったらシフトを組んだほうがいい。1歳くらいまでは意外と手がかからないからずっと見ていなくても大丈夫など。さらに子連れ出勤をしやすい環境が整っていったんです。産休をフルに取っても問題ありません。もちろん、会社としては復帰が早ければコストも抑えられますが、働く側もブランクが長くなると復職への壁が高く感じるようで、なるべく早く復帰したいという社員もいます。オフィスの奥側は土足スペース。一角には玩具が集まり、「挨拶をしよう」など子どもたちに向けたルールが張り出されていました。子どもが職場にいることで、子どもがいない社員の意識が変化子どもがいない人にとっては子どもって未知の生き物ですよね。基本的に自分の子どもは親が面倒をみていますが、他の社員が相手をしてサポートすることもあります。そうやって日常的に子どもに触れ合っていると、育児をしたことがなくても子どもってこういうものだっていうことが分かってくるんです。例えば、0歳児はお腹が空いたとき以外は、抱っこするか寝かしておけば大丈夫なので意外と楽だなとか。2歳くらいになると少し自己主張がでてきて大変な時期もあるけど、3歳になると1人で遊べるようになる。そういった子どもの成長過程をそばで見て、それほど仕事の邪魔にもならないということが分かると自然に『子どもっていいな』って思うようになるみたいです。他の社員の子どもに対する意識が良い方向に変化したことは大きなメリットでした。排除せず、受け入れる環境をつくることも会社のミッション子連れ出勤が待機児童問題の解決手段の1つになれば、会社にとっては人材を失うリスクを避けることができます。働きたいのに働けないという辛い思いを抱える人を1人でも減らすためにも、こういう選択肢が増えてほしいです。実は子連れ出勤は雇用以外にもメリットがありました。子連れ出勤社員の「こんなのがあったらいいな」という声を反映させて出産祝いの体験ギフトが生まれました。弊社ではモノのギフトは基本的に扱いませんが、知育や育児も体験の一部として知育玩具の取り扱いも始めました。出産祝いはプレゼントがかぶりやすいのですが、贈られたかたが自分で選べるのでとても喜んでいただけているようです。子連れ出勤のおかげで、出産祝いに最適な体験ギフトが生まれました。「1人でも多くの人に、より楽しい経験をお届けする」ことをミッションにしている会社がギスギスしていたらおかしい。本人が結果をだせるのであれば細かいことにはこだわらず寛容でありたいと思います。子どもに限らず、国や人種が違っても、最初から排除せずに受け入れることが必要な時代になってくると思います。会社にとって子どもは非日常な存在ですが、毎日いると慣れるし、業務に支障がでることはほとんどありません。子どもが床に寝っ転がるなら土足厳禁スペースを作ればいいし、課題に対する解決案を実践すればいいんです。何より子どもがいるとなごむので職場の雰囲気も良くなるんです。子どもたちと大人が自然に溶け込むオフィスライター所感:働く女性が悩むのは、職場を休むことで発生するブランク。ソウ・エクスペリエンスの中には育児制度がないために転職、子連れで出勤をしている女性社員もいらっしゃいました。育児休暇制度もあるそうですが、出産後3ヶ月で職場復帰をする女性社員もいるそうです。特別な設備がなくてもちょっとした工夫で子連れ出勤が実現できることも意外でしたが、子どもを抱っこしながらパソコンに向かっている女性社員、オフィスの中で楽しそうに遊んでいる子どもたちが自然にオフィスに溶け込んでいることが印象的でした。同社では月に一度、子連れ出勤オフィス見学会を開催して、子連れ出勤制度を広める活動をしているそうですが、子連れ出勤が常識になることで、子どもが小さい時期に親が働くことに対する偏見もなくなることを願っています。ソウ・エクスペリエンス株式会社SOW EXPERIENCE BLOG「Women Willレポート」バックナンバー第1回:働くママだけじゃない。Google が目指すのは、誰もがHappy に働ける社会ライター:柏木 真由子
2016年08月08日おもちゃのウッディやネズミのレミー、モンスターのサリーにロボットのウォーリーなど、これまでに様々な種類の魅力的なキャラクターを生み出してきたディズニー/ピクサー。そのどれもがユーモアと個性に溢れ、主人公のキャラクターでなくても、ファンの心を掴む魅力を備えているのが、同スタジオの何よりの手腕と言えるだろう。アカデミー賞長編アニメーション賞を受賞し、ピクサーの数々の名作の中で日本における興行収入No.1の記録を持つ『ファインディング・ニモ』。主人公として描かれるクマノミのマーリンをはじめ、はぐれた息子のクマノミのニモ、アオウミガメのクラッシュ、マダラトビエイのエイ先生など、本作では海の中を舞台に、様々なキャラクターが登場する。待望の続編として公開中『ファインディング・ドリー』では、主人公であるナンヨウハギのドリーをはじめとするお馴染みのキャラクターに加え、ジンベエザメのデスティニー、シロイルカのベイリーなど、海の生物を保護し、治療して海に帰す海洋生物研究所を舞台に様々な生き物たちが登場する。そして、本作で何より新たな存在感を発揮するのは、ドリーが両親の居場所を探しに冒険を繰り広げる海洋生物研究所で出会う新キャラクター、ミズダコのハンクだ。シネマカフェが実施したピクサー現地取材レポート第4弾では、本作で大活躍するハンクが生まれるまでの過程を、キャラクター・アートディレクターを務めたジェイソン・ディーマーと、スーパーバイジング・アニメーターのマイケル・ストッカーのインタビューを通して紹介する。両親の居場所を探して海洋生物研究所までたどり着いたドリーだが、ひょんなことで研究所のスタッフによって捕まえられてしまい、クリーブランドの水族館行きのタグを付けられてしまう。研究所のバックヤードの水槽の中で戸惑うドリー。すると、壁にかかった猫のポスターの目がぎょろりと動き出す…ポスターに擬態して身を潜めていた、ミズダコのハンクの登場だ。「私はピクサーに勤めて18年になりますが、ハンクのデザインは私がこれまでに関わった中で最も誇りに思えるものであると同時に、最も大変な仕事でした」。本作でハンクのキャラクター・アートディレクターを務めたジェイソン・ディーマーはそう語る。フリーランスの編集イラストレーターとして活躍していた彼は、ピクサーに入社後、『モンスターズ・インク』のスケッチアーティストとしてそのキャリアをスタート。その後、『ファインディング・ニモ』『レミーのおいしいレストラン』『ウォーリー』など多くの作品でキャラクターデザインを担当し、『モンスターズ・ユニバーシティ』ではキャラクター・アートディレクターを手掛け、監督とともに、少数のピクサーアーティストからなるチームを率いて、キャラクターデザインを作り上げる役割を担っている。一方、スーパーバイジング・アニメーターとして、ハンクの誕生に大きく寄与したマイケル・ストッカーは、アニメーション業界に入る前は、広告代理店やデザイン会社でのイラストレーター、ボーイング社向けのコンセプト画を手掛けるなど、様々な企業で仕事をこなしてきたという。1992年にディズニーにて『ライオン・キング』の動画マンの研修としての仕事を始め、その後ワーナーブラザース・アニメーションの一部となるターナー&アソシエイツで最初のアニメーションの仕事を手掛けた。その後、ディズニー・アニメーション・スタジオにて10年間勤務し、『ヘラクレス』『ターザン』『ファンタジア2000』などの作品への参加を経て、2002年にピクサーに入社。『Mr. インクレディブル』『カーズ』『レミーのおいしいレストラン』『カールじいさんの空飛ぶ家』にアニメーターとして参加し、『トイ・ストーリー3』『モンスターズ・ユニバーシティ』ではディレクティング・アニメーターを務めている。「キャラクターをデザインする際にいつも最初にすることは、その生き物についてできる限り知るということです」。そうジェイソンが語るように、ピクサーは入念なリサーチを経てから作品制作に入ることで知られている。今回もハンクの制作にあたって、サンフランシスコのモントレーベイ水術館の協力のもと、タコの生態についてあらゆる研究を実施したという。「デザインのインスピレーションとなるビジュアル面での情報を得るようにしています。タコを調べていく中で最も惹きつけられたのは、触手の裏側の白い部分と、マットなグレーの柔らかく丸い部分ですね。そこに魅力を感じたので、こだわりました」。劇中でハンクは、様々な姿に擬態することで人間の目をかいくぐり、ドリーとともに冒険を続けていく。周囲にカモフラージュするハンクの姿はなんともユーモラスであり、いつ見つかるか分からないというハラハラ感が観客を楽しませてくれるのだが、これが映画的な演出というわけではなく、あくまでタコの実際の生態に基づいているというから驚きだ。「ミミック(擬態)・オクトパスは、肌の色を変えられるだけでなく、テクスチャーさえも変えられるのです。この映像のどこにタコがいるかわかりますか?」リサーチにあたって使用されたという実際のタコの映像が披露され、取材陣にジェイソンが語りかける。砂や岩の表面に見事に擬態したタコは、動き出すまではそこにいるとは気づかないほどであり、取材陣からはおもわず声が漏れる。「何度見ても飽きることがありません。信じられないですよね」と笑みを浮かべるジェイソン。「タコが小さな割れ目からでも逃げられるという話を聞いたことがあるでしょう?」とジェイソンは続ける。「タコは小さな瓶の中にも入れるし、自動販売機の後ろにも隠れられる。それからぺったんこになれるのも魅力的でした。パンケーキのように平たくなるかと思えば、真っ直ぐ伸びて細長くもなれます」。これらのタコの生態へのつぶさな観察を経て、ハンクというキャラクターをかたち作るための具体的なアイデアが提案されていく。「そこで、彼は究極の脱出名人だというアイデアを提案したのです。劇中で実際に披露される、ハンクが観葉植物に成りすますというアイデアも、このときに提案しました」。さらに、これらのアクション要素だけでなく、ハンクの口の位置や身体の表面のテクスチャー、色など、キャラクター化するにあたっての細部に至るまでの設計も行われる。なお、リアリティーのある表現をどこまでも突き詰めるというわけではなく、あくまでキャラクターとして仕上げるため、実物のタコの特徴の中からどの要素をデザインするかについても議論が行われるという。「タコは気持ち悪いキャラクターになってしまう部分もたくさん持っていますからね(笑)」とジェイソン。次に、デザインされたキャラクターを実際にアニメーションとして動かしていく舵取りをするのが、アニメーション・スーパーバイザーのマイケルだ。「アンドリューがこのデザイン画をボードに貼り付けたときに、これはものすごい挑戦でエキサイティングだと思いました。それと同時に、とても手強い課題だということも分かっていました」。ジェイソンと同様に、まずはタコをアニメーションとして描くことのやりがいと難しさについて語り始めるマイケル。「とにかく、我々はタコの吸盤がどのように動いているのかを分解していかなければなりませんでした。タコは、それぞれの触手を別々に動かせるだけでなく、吸盤ひとつひとつもバラバラに動かすことができ、意図的にコントロールすることができます。これには驚きますね。その動きをアニメーションで真似ることは、ほんとうに難しい作業です」。タコの動きの入念な観察を経て、スタッフは実際にこの動きをアニメーション化するために手を動かし始める。幾つかのテスト映像の検証を経て、自然な動きが追求されていく。「もし何かアイデアがあったら、そのアイデアをなるべく早くやってみなければなりません。もし2Dでやるなら、すぐに描くことができますが、3Dの場合、このようなモデルを作る際、素早くできるわけがありません。ひとつのポーズを作るのに1時間かかることもあります」。ここで、幾つかテスト段階の映像が取材陣に披露された。シンプルな触手の動きが、少しずつスムーズで伸びのある動きへとブラッシュアップされていく様が段階的に示され、私たち観客が楽しむことができるキャラクターたちの生き生きとした仕草が、いかに多くの行程を経た上で作成されているのかが分かる。そのほかにも、目と眉の動きによって作られる表情や、実際にアニメーターとともに作成したシークエンスの中でのハンクの動きなど、様々なテスト映像が披露される。ハンクは通常のタコよりも1本足が少ない“セクトパス”という設定だが、彼が登場する全てのシーンにおいて7本の触手の動きがアニメーションとしてコントロールされているかと思うと、途方もない思いがする。続けて、キャラクターのコンセプトアートに基づいたアニメーションを作るにあたり、コンピューター上のパペット(人形)を使用してキャラクターの演技を作り出す、キャラクター・スーパーバイザーの仕事について、マイケルが解説した。「自然な動きをコンピューターで作るのはとても難しいのです。我々は、何を作ればいいのかということから考えなければなりません」。この段階でストーリーはまだなくとも、チームのスタッフはキャラクターに要請されるであろう動きを想像しながら、アニメーターたちがその動きを作ることを可能にする正しい装置を設計していく。コンピューター上のインタフェースを設計し、実際に使用したアニメーターのフィードバックを加えながら改良を加えていくというその過程には、科学的であり数学的なアプローチが施される。触手の複雑な動きのほかにも、ハンクの肌の色のテクスチャーをコントロールするシステムなど、コンピューターによるアニメーション表現の洗練化が行われていく。そして、アニメーションの最終的なブラッシュアップの作業をシミュレーションチームが担っていく。ここでは、ハンクの吸盤が地面と接触した際に生じる細かな動きなどが、シミュレーション・ツールよって再現されていく。「ハンクには全部で350個の吸盤があります。ですからこの問題を解決するために、全部を手描きで作業するのは難しいですね。そこで、より良い方法を探していました」。チームのスタッフは個体力学の技術を利用したという特別なシミュレーターを作成し、くっつく、剥がれる、つぶれる、といったひとつひとつの吸盤の動きを実際の物理的な動きとして再現することで、自然な動きをするための加工をアニメーションに施していく。この行程を経ることで、ハンクはより柔らかく肉付きのよいものになり、アニメーターたちが仕上げたハンクの動きがより緩やかで親しみやすいものに仕上げられ、私たちがディズニー/ピクサーのキャラクターたちに感じる、ユーモラスで楽しい印象が生まれるのだ。「最初に取り掛かってから、ここまでで約1年かかっています」。テスト映像とともに話を伺った時間はほんの10数分だったが、その裏にはとてつもない時間と労力が費やされていると思うと、出来上がった数秒のシーンに感じられる重みが随分と変わってくる。実際にハンクを生み出したスタッフの数は、約50人にも上ったという。「あらゆる人たちが、それぞれ違うタイミングで貢献している。テストだったり、表面のペイントだったり、ソフトウェアを描くことだったりね」。「タコの触手の動きには、いろいろなものが混じっています。とても素晴らしく、美しい混沌です」。そう語るマイケルの言葉には、テクノロジーによってさまざまな自然を描写してきたピクサーが、何より自然に対する尊敬と畏怖の念を抱きながらアニメーションという表現に向き合ってきたことがわかる。「自然のものには、私が紙とペンを持って想像して書くよりも、ずっと興味深い部分があります」とジェイソンが語るように、ディズニー/ピクサーのアニメーションは、自然が持つ美しさへの驚きと発見の喜びに満ち溢れている。ピクサーが新たに生み出したハンクの活躍を、ぜひ劇場で目撃して欲しい。『ファインディング・ドリー』は全国にて公開中。協力:ウォルト・ディズニー・スタジオ・ジャパン(text:cinemacafe.net)■関連作品:ファインディング・ドリー(原題)
2016年08月07日フランスでも“ゆとり”世代が現れた?今年2月、セザール賞授賞式の中継で、新人賞にあたる有望男優賞に輝いたロッド・パラドの受賞スピーチを聞いた第一印象だ。初めての映画出演で、生涯一度しか機会のない賞を受賞した喜びを、うれし涙をこらえて声をつまらせながら、「すっげえ感謝します」みたいな口調で語る。子どもの頃から賢そうな話し方を心得ている国の人にはめずらしい、素直な感情のほとばしりを会場は温かく見守った。これまでのセザールで見たことのない新鮮な光景だった。『太陽のめざめ』で彼が演じたのは非行少年、マロニー。奔放で無責任な母親のもとで愛に餓えて育ち、暴行や無免許運転などトラブルを起こしてばかりの少年が裁判所の判事と保護司の尽力を受け、本当の愛を見つけて更生の道を歩んでいく。寂しさを暴力という形でしか表現できず、荒れ狂う少年を全力で演じたロッドは、アラン・ドロンやリヴァー・フェニックスの再来と評される期待の新人。6月にフランス映画祭2016での作品上映に合わせて来日した。リセ在学中、休み時間にたまたまオーディション担当のスタッフに勧められたのをきっかけに、その後30回近いテストを重ねて役を勝ち取った。だが、最初は軽い気持ちで受けたのかというと、「最初から本気だった。受かるわけないって気もしていたけど、やれるだけのことはやろうと、全力で挑戦した」と言う。もともと演技に興味はあったが、経験はゼロ。「学校の劇に出たこともなかった。映画は普通に好きだったけど、俳優になるなんて想像もしてなかった。ただ小さい頃から、みんなを笑わせるのは得意だったんだ。人を楽しませることができるのは自覚していたけど、仕事にするなんて考えたこともなかった」。マロニーを幼い頃から知り、更生させようと寄り添う判事を演じるのはカトリーヌ・ドヌーヴ。そこにいるだけで凄まじいスター・オーラを放つ大女優に気後れはしなかったのか。「全然しなかった。撮影チーム全体が家族みたいな雰囲気だったから」とケロッとしているが、それにしても相手はドヌーヴ。「そうなんだけど」と笑いながら、「すぐに打ち解けられたよ」と言う。最初の対面はカメラテストのときだった。「『あなたいくつ?』と聞かれたので、『18歳です』と答えて、『あなたは?』と返したら、ちゃんと教えてくれたよ。お母さんみたいな雰囲気でいてくれたから、緊張せずにいられたんだと思う」。保護司を演じるのは、本作でセザール賞最優秀助演男優賞を受賞したブノワ・マジメル。「彼とはオーディションのときから会っていたし、友だちみたいな関係。というか本当に友だちになって、いまでも時々会ってるよ」。演技未経験者が映画の主演に抜擢されるのは、素のままでカメラの前に立つことを求められての場合が多い。だが、ロッドは最初から“演じる”ことを求められ、それに見事応えている。そこに到るまでは厳しい道のりだった。まずは2か月半、演技コーチと一緒に脚本を読み込んだ。「ストーリーについて、マロニーの感情について。どうしてそうなるのか?を徹底的に考えて、台詞も頭に叩き込んだ。撮影に入ってからは、エマニュエル・ベルコ監督の望むものを演じられるように全力で食らいついていった」。マロニーについては「愛情深い少年。特に母親に対して」」と分析する。「同時に、愛の欠如に苦しんでいて、だから激しい怒りにかられているんだ」。ロッドはパリ郊外のサン・ドゥニに生まれ育った。やや治安の悪い地域もあり、「マロニーみたいな少年たちは僕の住んでいる界隈にもいる」と言う。ロケで訪れたリヨンの少年院では強烈な体験もした。「本物の施設だから、撮影時にも実際に収容されている少年たちがいて、罵詈雑言を浴びたこともあった。『お前は映画で再現してるだけで、俺らにとってはこれが現実だから』と言われたよ。でも、その経験も糧になった」。暴力的な行動に潜む、怒りだけではない感情。不器用な愛。これだけ複雑な役を迫真の演技で表現しきった。そこには、彼と同じように十代で映画主演デビューを飾ったブノワ・マジメルとの、劇中の関係と重なる交流があった。「撮影中もいろいろアドバイスしてくれた。『集中して、マロニーになり切って、しっかり聴け』って。演じるとき、共演者の言葉を聴くことはとても重要なんだ。台詞を忘れたとしても、相手の言葉に耳を傾けていれば、何を言うべきかが分かる。すると、作られたものじゃなくて自然な流れができて、より真実味が増すんだ」。そして「好きな言葉があるんだ」とスマートフォンを取り出す。「アルバン・ルノワールという俳優のSNSの自己紹介文で“自分じゃない者として生きたい男”とあるんだけど。俳優ってそういうものだと僕は思う」。仕事の本質を理解し、的確なアドバイスをすぐに実践する順応性と、プレッシャーに動じない度胸も備わっている。俳優は天職なのかも、と伝えると「ありがとう」と照れ笑いをしながら、「この仕事、本当に好きなんだ」と言う。「ただ、もて囃されるのはちょっと苦手かな。レッドカーペットでキャーキャー言われて、写真を撮られたりするのは、本当はストレスなんだ。自分のことは、その辺を歩いてる普通の人間だと思ってるから、急にこんなことになっちゃって…」。スターになっても家族は以前と変わらずに接してくれるが、「友だちは2人しかいないことが分かった」と言う。「いや、僕には友だちはいない。友だちっていうのはあいさつするだけの関係で、毎日一緒にいるのが親友。僕には2人いる。彼らとの関係も全然変わらない。彼らにとって僕はただのロッドなんだ。映画祭とか華やかな場所にも行くけど、僕は自分が何者なのか、どこから来ているのかはちゃんと分かってる。それが大切なことだと思う」。素顔のロッドは人懐こく、初めて会った相手にも友だちのように接する。本人も自認しているが、自然と人を喜ばせることのできる真のエンターテイナーであり、警戒心むき出しのマロニーとはかなり違う。「自分でも全然似てないと思う。マロニーと近い点があるとすれば、ちょっと神経質なところかな。気が短いんだ。僕はとても社交的だけど、一方で些細なことですぐイライラする。たとえば、昨日このホテルに着いたとき、これが…」と窓辺のブラインドを指差す。「部屋に着いたら、カーテンが閉まっていて、それは簡単に開けられたけど、ブラインドが全然上がらなくて。1人でイラついてたよ」と身ぶりをまじえて再現する。このサービス精神はまさにマロニーと正反対。「そう。全然違う。でも愛については似ているかな。本当の共通点は…愛情深いところなんじゃないかな」。(text:Yuki Tominaga)
2016年08月05日初めて顔を合わせたのは、イケメンブームの先駆けとも言える2007年のドラマ「花ざかりの君たちへ~イケメン♂パラダイス~」。生田斗真は当時22歳だった。「若かったなぁ…って思います(笑)。同世代の役者さんがワーッと集まるような現場は僕も初めてですごく珍しい経験でした」。そんな言葉で9年前の現場をふり返る。小栗旬、堀北真希、鈴木亮平、溝端淳平…現在も第一線で活躍する俳優たちがズラリと顔をそろえたが、その中にデビューして1年足らずの岡田将生もいた。「キレイな顔をした男の子がフラフラ現場にいまして(笑)。まだ“俳優”って感じでもなくて、かわいかったですねぇ…」と懐かしそうに微笑む。まだ17歳だった岡田さんも当時のことはよく覚えているという。「本当に最初の頃の仕事で、深く考えてなくて『カッコいい人たちがたくさんいるなぁ…』って(笑)。そんな中で生田さんは、すごく面倒を見てくださって、いろいろお話を聞いていただいたりもしました」。それから9年。共にいくつもの映画、ドラマで主演を務め、押しも押されもせぬ人気俳優となった2人が、映画で再共演を果たした。清水玲子の人気同名コミックを映画化した『秘密 THE TOP SECRET』で彼らが挑んだのは、人間の脳内に残された記憶!『るろうに剣心』シリーズで知られる大友啓史監督の下、2人はこの難題にどう臨んだのか――?被害者の脳内に残された記憶を取り出し映像化するという最先端の科学技術を使い、難事件を解明する“MRI捜査”。警察庁の特殊脳内捜査チーム【第九】が、この捜査を用いてある事件の真相に迫るさまを描き出す。生田さんが演じたのは第九の室長で天才的な頭脳を誇るが、過去にMRI捜査によって、親友を失い心に傷を持つ男・薪剛(まき つよし)。最初に脚本を読んだ時点で、決して簡単な仕事ではないだろうことを自覚していた。「一番のカギは、死者の見た記憶が映像化されるというところ。これをどう表現するのか?その出来具合が作品の良し悪しを左右することになりそうだなと思いましたが、ひとの記憶ですからね…。(あくまで脳内の記憶であるため)ある時には人間が悪魔のようにも見えるし、ある時には街が地獄のようにも見える。そういうことを考えるとドッと疲れましたね(苦笑)」。一筋縄ではいかないだろうという思いは、新人捜査官の青木を演じた岡田さんの中にもあった。「すごい話だな…と思いましたが、抱えなくてはいけないことがたくさんありました。大友監督の現場に関しては、かねがねウワサを聞いてはいたので…(笑)、覚悟を決めて臨まないといけないなと思っていました」。撮影に入る前には、脳や記憶に関する講義を受けるなど、知識の面でも“武装”して臨んだという。俳優だけではなく、スタッフも詳しくリサーチを行い、その結果に沿った形で物語やセットなどを構築していく。そんな現場の様子に生田さんは感動を覚えたという。「大友監督から、週に何回か“『秘密』通信”が届くんですよ(笑)。脳や人間の体の構造だったり、第九という組織、それぞれの役のバックグラウンドが書かれていて…。そこまでやっていただくと、逆にこっちも追い込まれます(苦笑)。実際、原作では死者と機械をつなげて映像を映し出すという形だったんですが、スタッフが調べると、どうやらそれは難しいらしく、死者と生きている人間を通して機械に記憶の映像を映し出すってやり方にたどり着いたそうです。そういう部分までリサーチする姿勢に感動しましたし、しっかりみなさんの期待に応えなきゃ!という思いでした」。岡田さんも、撮影前の段階から大友監督やスタッフの熱意に圧倒された。「クランクイン前から、大友監督が思いついたことを連絡してくださるんですよ。一度、『直接会って話したい』と連絡があって、そのときはちょうど僕は仕事で北海道にいたのですが『北海道まで行くから!』って(笑)。『いやいや、大丈夫です。こっちが戻ります』となったのですが。具体的な役づくりに関しても『体を作ってくれ!』と言われて、柔道に通うことになったり、熱量がどんどん上がっていく感じでした」。だが、現場に一度、入ってしまえば、大友監督は「好きなようにやってくれ」と役者の裁量に任せて自由にやらせ、それをカメラに収めていく。だがもちろん、妥協はない。何度でも何度でも同じシーンを繰り返すし、ギリギリを俳優に求め続ける。岡田さんが笑いながら明かす。「本番中に、監督の声がカメラマンさんのイヤホンから漏れて聞こえてくるんですよ。『もっといけんだろっ!』って(笑)。クランクアップのときは、(夜通しの撮影で)次の日の昼まで撮影だったんですけど、血まみれで(笑)。終わってシャワー浴びながら『おれ、何やってるんだ?』って(笑)」。生田さんも「思い返せば思い返すほど、しんどい撮影だったなぁ…」と苦笑まじりにふり返る。「楽しいこともあったけど、心地のよい疲れで満たされてましたね。終わった瞬間は肩の荷が下りたというか、全身の力がふわっと抜けるような感じで『終わったぁ…』って(笑)」。昨今、何かと規制が厳しい中で、チャレンジにあふれた作品となった。映画だからこそ許される、先鋭的な表現や描写が用いられ、その中で2人は躍動している。岡田さんは3か月もの撮影で捜査官・青木として生きられたことの幸せを噛みしめる。「ひとつの作品に集中して3か月もやらせていただけたのは贅沢な時間だったなと思います。精神的に追い込まれていく役ということもあって、3か月でみるみる痩せてしまったんです。スタッフさんからは『大友組ではよくあることです』って言われました(笑)。でも、そうやって負荷が掛かっているくらいの方がいいのかなとも思っていました。他人の脳内を見ることに魅了されていく青木を演じる上では、いい方向につながったんじゃないかと思います」。生田さんも近年、映画で次々とエッジの効いた役柄をこなしているが、映画ならではの面白さ、やりがいについてこう語る。「やはり映画というのは、お客さんがわざわざお金を払って、スケジュールを合わせて観に来るというのが大前提としてあり、それは僕にとってもすごく大きなことだと捉えています。昔から、演劇の世界で頑張ってきた人間として『あいつの作品なら観に行きたい』と思わせたいという思いがあるんですよね。そういう意味で、映画という場所にも勝負のしがいを感じています。大きなスクリーン、すごくいい音で作品の世界にどっぷりと浸かってもらえる環境で、自分がその世界にポンッと入って生きることができることに生きがいを感じますね。もちろん、以前とは違って映画にもいろんな規制もあるけど、その中でこそ生まれる表現があると思う。あきらめずにそれを求めて戦っていきたいし、この作品はそういう意味で攻めることができたかなと思っています」。9年ぶりの共演となったが、実はプライベートでは「一緒に旅行に行ったりする」(生田さん)くらい親しい仲で、だからこそお互いについて話すのは「恥ずかしい(笑)」(岡田さん)。それでも、生田さんは俳優として岡田さんと向き合い、喜びを感じたと嬉しそうに語ってくれた。「やはり、圧倒的に経験を重ね続けて、たくましい背中になったなと感じました。あれ(9年前の『イケメン♂パラダイス』)から互いに頑張ってきて、こうやってまた会えたことに特別な思いがあります」。では後輩・岡田さんが知る、生田さんの“秘密”は?「遊びの達人ですね。普段、忙しいからというのもあるんでしょうが、その日は遊ぶと決めたら全力で遊びますね。僕は意外とのんびりしたい派なんですけど(笑)、斗真くんは細かく時間を決めて、がっちり遊ぶ。『斗真くん、いま楽しいんだろうな』って見ています(笑)。素敵ですよ」。(text:Naoki Kurozu)
2016年08月03日「どうしてもやりたい!」――。『ゴジラ』新作製作の話を聞いたとき、石原さとみは出演を熱望した。だからこそ、正式にオファーが来たときは喜びに打ち震えた。そして、届いた『シン・ゴジラ』の脚本を読んで、その中身の面白さに圧倒された。と同時に、自身の役柄の難しさに絶望と孤独の淵に突き落とされ、「それまでの喜びが一切、吹っ飛んだ」という。ここ数年、舞台、ドラマ、そして映画と次々と挑戦的、挑発的な役柄を引き受け、圧倒的な存在感を示し、見る者を魅了してきた。そんな彼女にとって、30代を目前に控えた20代最後の一大チャレンジと言えるのが、この『シン・ゴジラ』である。完全新作として製作された本作。人々が“ゴジラ”なる存在を全く認識していない現代社会に、突然、まるで自然災厄のように、未知なる怪獣ゴジラが海から現れ、東京に上陸する。主人公の内閣官房副長官の矢口(長谷川博己)をはじめ、この未曽有の危機において、国民・国家を守るべく対応、決断を迫られる政府や各官庁の者たちのドラマが展開する。石原さんが演じたのは、日本人の祖母を持つ日系アメリカ人で、未来の大統領候補とも目される米国国務省の官僚カヨコ・アン・パタースン。独自のルートでゴジラの存在を認識し、管轄下に置こうとする米国と日本を繋ぐ存在でもある。「この物語の中でカヨコという登場人物がどんな立ち位置か、それは映画が完成したいまでも考えさせられます。彼女に課された“役割”や“立場”というのはすごく考えたし、現場に入る前は不安と怖さでいっぱいでした。正直、脚本を読んで『このキャラクター、私じゃないんじゃない?』と思う部分もあったし、プレッシャーもすごく感じてました。一方でスタッフさんに『石原さとみでやりたいんだ』という意味の言葉をいただいて救われて、頑張れた部分もありました。本当にいろんなことを考えて、積み重ねて作り上げていった役柄ですね」。日本にルーツを持ちつつも、米国の利益を代表する立場にある人物。ネイティブの英語を随所に交えた日本語でまくし立てる強烈なパーソナリティを含め、見る者を微妙にイラつかせつつ、外部から日本の政治・官僚機構に風穴をあけていく。一方で矢口とのやり取りや祖母が愛した祖国への思いから、少しずつ彼女自身も変化もしていくという難しい役柄である。「日本チームが情報不足で何をどうしたらいいか分からない状況で、新たな情報を持ってくる存在であり、現場の空気を変えて、事態をものすごいスピードで動かさなくちゃいけない。“日本人じゃない”空気を見せつつ、物語が進む中で、祖国の血や歴史に思いをはせ、日本人の国民性や矢口たちに感化されていく。準備段階で知り合いに海外で働いている政治家の方がいたのでお会いしたり、大統領特使についても深く調べていくことで、カヨコらしい感覚がはっきりしてきました。数少ない、感情を思いきり出す登場人物でもあるので『強くいなきゃ!』という思いで現場にしました」。そもそも、1954年に制作された第1作目の『ゴジラ』は、ビキニ環礁で行われた水爆実験に着想を得たと言われている。怪獣映画というエンターテインメントの中に鋭い社会風刺が挟み込まれているが、この『シン・ゴジラ』も同様に現代社会を反映した描写が数多く登場する。特に、強く感じさせられるのは5年前の東日本大震災のこと。未曽有の危機への対応を迫られる政府の人間を主人公とした設定を含め、見る者の心を大きく揺さぶる。石原さんも庵野秀明監督が脚本に込めたメッセージを強く意識させられたという。「そこは否応なく考えさせられましたね。台本を読み込めば読み込むほど、調べれば調べるほどに…この描写の意味は何なのか? この数字は何を暗示してるのか?そもそもゴジラってどうやって生まれたのか?ゴジラが歩く道筋って何を示してるんだ?とか…。おそらく、私自身もまだわかっていない部分がたくさんあると思います。3.11を経験した人間だからこそ演じられたとも思うし、いま、届けなきゃいけない作品であり、いまの日本だからこそ多くの人の心に刺さると思います。ある意味で、見る者に委ねられ、見る者を試している作品ともいえるのかなと感じてます」。本作だけでなく、昨年の『進撃の巨人』における人気キャラクターのハンジ、2年前のドラマ「失恋ショコラティエ」の“小悪魔”ヒロインのサエコなど、タイプは違えども、ここ数年、見る者の心にクッキリと“爪痕”を残すような強烈なキャラクターを多く演じてきた。もっと言えば、10代、20代前半では演じてこなかったようなタイプの役柄を楽しんでいるようにも見える。石原さん自身、変化は「確実にあった」と自覚している。「女優という仕事をする上で、目的意識がはっきりしたというのは大きな変化ですね。まず何より、多くの人に見てもらうってことを意識するようになったし、連ドラに関しては特に感情表現で、敏感な10代、20代の若い人たちの琴線に触れるような役柄を演じたいという思いが強いです。映画では、この『シン・ゴジラ』はまさしくですが、風刺などで社会を反映しつつ、しかもそれをエンターテインメントとして届けられるような作品に出たいという思いが強くあります。映画はお金を払ってスケジュールをあけて見に来てもらうものなので、それに見合うものを届けたい。それから、世界で見てもらえるということも大事にしていきたいです」。では、そこまではっきりとした意識の変化はどのようにもたらされたのか?「マネージャーさんが変わったり、いろんな人との出会いがすごく大きかったのかな? そこで女優という仕事について以上に、人生に対する意識、人生の中での仕事の在り方を考えるようになったんだと思います。それまで、どこかで他力本願だった自分がいて、誰かのせいにして生きてたところがあった。でも人生、自分で責任持つしかないって思えるようになったり、親との関係もこれまで絶対的な“保護者”だったのが、少し肩の力を抜いて、友達感覚で付き合える関係になった。周りの人間を幸せにするってどういうことなのか? より影響力のある人間になるにはどうしたらいいか? いろいろ考えたし、哲学も学びました。アフリカを訪れたことも大きかったですね」。三池崇史監督の『風に立つライオン』で彼女は初めてアフリカの地を踏んだ。「海外で撮影をしたい」というのも、この数年での彼女の目標のひとつだったそうだが、実際に現地を訪れ「人生観が変わった」とも明かす。「私にとってはものすごい衝撃の連続でしたけど、一方で現地の人々にとっては、私がアフリカに来たことなんて、どうでもいいことなんですよね。当然ですけど、私のことなんて誰も知らないから、ひとの心を変えるには、まずは自分を知ってもらわないといけないんだなと。逆に言うと、日本では少しは私のことを知っている人たちがいるわけで、ドラマや映画を通じてそういう人たちに何かを伝えることができるかもしれない。仕事=人生ではなく、生きていく上で、私には女優という仕事がある。そこで改めて、女優という仕事が大切なものになりました」。演じている瞬間に、楽しさや幸せを感じることは少ないという。「作品が公開され、人々にどう届くか?そこから得られるものの方がずっと大きい」とうなずく。30代を前に『シン・ゴジラ』は石原さとみに何をもたらすことになるのか?楽しみに待ちたい。(photo / text:Naoki Kurozu)
2016年08月03日「なんで僕なんだろう…?」。素直な思いを口にするのは、連続ドラマ「せいせいするほど、愛してる」で、ヒロインの未亜に思いを寄せる宮沢綾役を演じている俳優・中村蒼。一見チャラいが一途に未亜を愛し、優しくて面白く、人気ブランド「ジミー チュウ」の敏腕広報でイケメン。女性なら誰もが憧れるパーフェクトな男を演じる中村さんは、パブリックイメージとは違う本役に胸中は複雑のようだ。中村さんは福岡出身の25歳。主演舞台「田園に死す」(2006)で俳優デビュー。その後、数々の映画やドラマ、舞台に出演し、若手実力派俳優として頭角を現している。甘いルックスからは想像し難いが、映画『東京難民』でのホームレスに転落する大学生役や、医療サスペンスドラマ「無痛~診える眼~」で、髪と眉を剃り落として挑んだ事件のキーマンとなるイバラ役など、物憂げな表情が印象的な役柄も多い。そのせいか落ち着いたイメージを持たれがちで、自身も「普段からそういう感じです」と自覚する。そんな中村さんが、実に自身5年ぶりの民放恋愛ドラマとして出演しているのが、北川みゆきによる同名コミックの実写化ドラマ。ジュエリーブランド「ティファニー」の広報部で働く主人公・栗原未亜(武井咲)と副社長で既婚者の三好海里(滝沢秀明)との禁断の恋愛を軸に、個性豊かな人物たちが複雑に絡み合う人間模様を描く大人の群像劇だ。オファーを受けた時を、「関西人の役だし、自分と似ている部分を見つけられなくて不思議でした」と述懐する中村さん。宮沢のことを「基本はマイペースで強引だけど、社交的で頭の回転が速く、瞬時に物事を察して未亜のために動けるところはすごく良い」と分析すると、「常にテンションが高く、人の懐に入るのが上手なところが自分と全く違う。僕は構えてしまうタイプだから」と打ち明ける。なんとか絞り出した共通点は、「実は宮沢は照れ隠しでいっぱいしゃべっていると思う。そういうシャイな部分かな」と静かに笑った。また、「恋愛ドラマは得意じゃない」そうで、「キスシーンとかしたくないですもんね(笑)。現場の空気が苦手。どんな風にやるか誰にも相談できないし、女優さんに気を遣うし…」と思わず本音をぶっちゃける。しかし、役に没頭すると素の自分を忘れるため、劇中の“バックハグ”のような“胸キュン”シーンでも、「全然恥ずかしくないですね」とサラリと言ってのける。それよりも関西人役として「自分でボケてツッコむシーンとか、笑いを起こすシーンの方が恥ずかしいし難しいです」と顔をしかめる。宮沢役は、ふざけることで真面目さが際立ち、その逆もしかり。中村さんにとって今回は、“笑い”が大きな課題となっているようだ。苦労をにじませる中村さんだが、必死の努力は実を結んでおり、未亜とのシーンでは「武井さんはいつも新鮮に笑ってくれるので支えになっています」と安堵の声を漏らす。一方で滝沢さんについては、「僕が仕事を始める前から第一線で活躍されていて、恋敵役としては大き過ぎる壁。一生懸命アプローチしても未亜がふり向かないことに、そりゃそうだろうな…というオーラや格好良さがあります」と敬服する。とはいえ、「未亜が宮沢にふり向かない理由がないのに、なんでふり向かないんだろ…」と首をかしげる中村さん。そこには自ら作り出した宮沢への絶対的自信が感じられた。そして、本作を通して「自分にテンションが高い役のイメージがないので、こんな役もできると知ってもらいたい」と胸を張る。デビューから10年。新たな武器を手に入れた中村さんの今後の動向は、宮沢の恋の行方同様、注目せずにはいられない。TBS火曜ドラマ「せいせいするほど、愛してる」は毎週火曜よる10時~TBS系にて放送中。(text/photo:Rena Nishiki)
2016年08月02日映画監督の大林宣彦親子、美術家の横尾忠則親子など、多くの著名人親子をはじめ、これまでに約6000組もの親子を撮影してきた写真家のブルース・オズボーンさん。2003年に「親子の日」を提唱して以来、毎年7月の第4日曜日に100組の親子写真を撮るフォトセッションを開催しています。今年で14回目となる親子の日を前に、長年ファインダー越しに親子を見つめてきたブルースさん佳子さん夫婦に「親子の日」をはじめたきっかけや「親子の日」に込められた想いを伺いました。 「親になるってどんなこと?」素朴なギモンから始まった親子撮影オズボーンさんは写真を学び、アメリカや日本で写真家として活動。親子の日のきっかけになったのは、1982年に友人からパンクバンドの若者を撮影してほしいと頼まれたこと。撮影したのは、あの有名なパンクロックバンド「アナーキー」の元ボーカル、仲野茂さんでした。「ちょうど第一子が生まれる直前で、2人でよく『親になるってどんなことなのかな?』という話をしていた頃でした。仲野さんを撮影するとき、パンクロッカーのお母さんってどんなかたなんだろうと思って、ダメ元で『親子の写真を撮らせて』ってお願いしたらあっさりOKをもらえたんです」(佳子さん)実は、お母さんは茂さんの一番のファン。撮影してみて、とても仲の良い親子だということがわかりました。この1枚の写真が親子というテーマで写真を撮り続けるきっかけになったそうです。仲野茂さんとお母さん写真撮影が親子の絆を取り戻すきっかけに最初の頃、オズボーンさんは、親子から日本社会を切り取りたいと考えていました。寿司屋のお父さんと同じく寿司屋になった息子さん、真面目な仕事をしていたお父さんの娘さんがポルノ女優になっている。親子関係から親子の歴史、日本の時代が移り変わっていく様を表現したいと考えていたそうです。でも、どの親子もユニーク。切っても切り離せない「親子」という関係自体に関心が向くようになったと言います。2015年にオリンパスギャラリーで開催した親子写真展覧会には、美智子皇后陛下も来場され、「日本人は表情が乏しいと言われているけれど、みんな生き生きとした表情をしていますね」というお言葉をかけられたそうです。「大人になれば親子で一緒に何かするという機会はなかなかありません。カメラの前に立たされると、みんなどうしていいか戸惑います。こちらからポーズを指示せず、自分たちで話合って決めてもらいます。大人が二人、『どうしよう』って表情で照れている様子も、その親子らしさが現れています。何千組もの親子を撮ってきたけれど、それぞれ個性があって毎回発見があるんです」(ブルースさん)オズボーンさんが撮る親子は年齢も職業も様々。活動を始めてから34年、最初は身体の大きな力士のお父さんと小さい子どもだったのに、2回目の撮影ではお父さんと同じぐらい力強い力士になっている。そんな息子と一緒に誇らしげな表情で写真に写っているお父さん。3回目に撮影したときは、息子さんも引退して、お父さんと一緒にちゃんこ鍋屋さんをやっていました。こうした親子関係の変化が1枚1枚の写真から見えてくるのが面白い、とブルースさんは語ります。「親子写真を撮ってもらいたいという人の動機は様々です。離婚が原因で長い間疎遠になっていた親子の距離を縮めたこともありました。決して仲が悪かったわけではないけれど、撮影がきっかけで自然に会話できるようになったという親子もいます」(ブルースさん)「親子でもうまくいかないのは当たり前。修復しようと頑張ってもなかなか距離が縮まらない。でも親子って本当に些細なことでも仲直りできてしまうんです。写真はきっかけに過ぎないけれど、親子のコミュニケーション手段として役に立っているんだなって感じることも多いです」(佳子さん)オズボーン家の親子写真「“父の日”や“母の日”があるなら“親子の日”があってもいいよね」オズボーンさんの親子写真に世間の注目が集まるようになると、オズボーンさんと佳子さん夫妻は「もっとみんなが親子関係を見直す機会をつくりたい」と考え、「親子の日」のアイデアを思いつきます。「5月の第2日曜日は母の日、6月の第3日曜日は父の日。7月の第4日曜日は『親子の日』にしよう!その日に親子撮影会をするという告知を新聞に掲載してもらったら、たくさん応募がきて100組の親子が集まったんです。こんなに反響があるなら来年も100組撮影しようということになって今日まで続いています」(佳子さん)1年目は自分たちだけの力で開催したので大変でした。でも、2年目からはスポンサーがついて、2005年には日本記念日協会さんが「親子の日」を正式に記念日として認定してくれました。「アイデアを思いついて実行に移すまで2年かかりました。でも、ひとつアクションを起こしたことで、私たちが何をやりたいのか、何をやろうとしているのか伝えることができたのが大きな成果でした」(ブルースさん)親子というベーシックな関係を見直すことが世界平和につながっていくロサンゼルスで友人を介して出会ったオズボーンさんと佳子さん。誰よりも多くの親子に出会ってきたお二人は「親子の日」に様々な想いを込めてこのビッグプロジェクトを推進しています。「共働きの親が増え、みんなケイタイばかり見ている。そんな変化に注目してしまうけど、命を次の世代に受け継ぐ、本質的な親と子の関係は時代や環境が違っても変わっていないと感じています。 “家族”じゃなくて”親子”というテーマを選んだのは、 “親子”が家族や社会のベースとなる最も基本的な関係だからです」(ブルースさん)「世の中には幸せな親子関係だけではありません。みんな自分の親から平等に命を授かっています。“親子”は自分の原点、親子の関係を見つめ直すことで、自分の存在に自信をもって誰もが生まれてきてよかったって思える社会になってほしい。親子関係を大切にすれば、大きな問題も解決できるのではないでしょうか」(佳子さん)現在も変わらず仲睦まじい様子のオズボーンさんと佳子さん。夫婦円満の秘訣は「大きな問題になる前に相手に伝えること」だそう。親子は一番近いからこそ素直になれないことや、ぶつかり合うことも多い難しい関係です。親子関係がうまくいっている人もうまくいっていない人も、今年の親子に日は自分の親や子どもと向き合う時間をつくってみてはいかがでしょうか。7月23日に新宿オリンパスプラザ東京で13:00~「第10 回親子大賞授賞式」を開催。平原まこと、綾香親子やウルトラセブン、ゼロ親子もかけつけます。24日は「親子の日スーパーフォトセッション」も開催、たくさんの応募の中から100組の親子の写真をブルースさんが撮影します。親子の日普及推進委員会公式サイトはこちらブルース・オズボーンProfile公式サイトはこちらArt Center College of Designでコマーシャル写真を専攻。1980年の写真展「LA Fantasies」をきっかけに日本での活動を本格的に開始。1982年から「親子写真」の撮影を始め、撮影した親子の数は6000組を数える。2003年に「親子の日」を提唱。毎年、親子の日に約100組の親子写真を撮る取り組みを続けている。ライター:柏木 真由子
2016年08月01日ディズニー/ピクサーの映画を観た後に飛び出す「おもしろかった!」という言葉。公開作が続々と大ヒットを飛ばしている同スタジオにとっては、もはや「おもしろい」のが当たり前といった前提すら感じさせるが、そのクオリティは年々勢いを増すばかりであり、その“おもしろさ”が並大抵のものじゃないことは、夏休みの公開を毎年楽しみにしている子どもたちだけでなく、大人の映画ファンの間でも広く認識されている。日本でも興行的に大成功を収めた『ファインディング・ニモ』。魚たちをめぐる愉快なストーリーが、子どもたちをはじめ多くの観客を魅了したのはもちろんだが、そこには主人公のニモの成長や、父親であるマーリンの“親ごころ”が描かれており、楽しいだけではなく、人々の心を揺さぶる感動的なテーマがそこにはあった。そして、待望の続編として公開中の『ファインディング・ドリー』においても、観客を魅了するストーリーと感動的なテーマは健在。その“おもしろさ”は、2016年度洋画オープニングNo.1という記録を打ち出し、現在もなおより多くの観客の心を掴んでいる。シネマカフェのディズニー/ピクサー現地取材第3弾では、そんな並大抵じゃない“おもしろさ”の秘密、ディズニー/ピクサー流のストーリーの作り方を、『ファインディング・ドリー』でアンドリュー・スタントンとともに共同監督を務めたアンガス・マクレーンと、ストーリー・スーパーバイザーのマックス・ブレイスのインタビューを通してご紹介する。本作で晴れて長編アニメーション作品の監督デビューを果たすアンガスは、ピクサー・アニメーション・スタジオに1997年アニメーターとして入社後、『トイ・ストーリー2』をはじめ、『モンスターズ・インク』『Mr.インクレディブル』『ウォーリー』『トイ・ストーリー3』など多くの作品に参加。ピクサーにとって初のTV特番アニメーションとなった「トイ・ストーリー・オブ・テラー!」の監督として、国際アニメーションフィルム協会(ASIFA)ハリウッド支部からアニー賞優秀監督賞を受賞している。一方、マックス・ブレイスは、大学卒業直後の1996年7月にピクサー・アニメーション・スタジオに入社し、ストーリー・アーティストとして最初に『バグズ・ライフ』に参加。その後、『トイ・ストーリー2』『モンスターズ・インク』『カーズ』『ファインディング・ニモ』『Mr. インクレディブル』『ウォーリー』『メリダとおそろしの森』などにおいても才能を発揮し、ストーリー作成にあたって、監督とアーティストたちとのビジョンの共有に一役買う存在だ。『ファインディング・ドリー』への参加は、『メリダとおそろしの森』の完成パーティーのときにアンドリューから誘われ、「もちろん!ぜひ!」と答えたことから実現したとのこと。ディズニー/ピクサーのストーリー作りでは、監督や脚本家をはじめとする複数人のスタッフたちが意見を出しながらストーリーを構築していく“ブレイントラスト”と呼ばれる方法がとられている。一人の脚本家が書き上げる脚本を基に、監督をはじめとするスタッフが映画として仕上げていく、そういった一般的な映画作りのイメージとは異なり、ディズニー/ピクサーでは、民主的な空気の中で発揮されるチームワークによって物語が作られていくのだ。今回アンガスとマックスが解説してくれたのは、物語も後半に近づき、両親を探すために水族館の中を巡るドリーとハンクが、「タッチプール」と呼ばれる、子どもたちが海の生きものに触れることができるコーナーで、“恐ろしい目に”遭ってしまうというシーン。実際にどのような制作過程を経てストーリーが構築されていくのか、デモストレーションとともに披露された。「僕が息子を連れて水族館に行ったときに、息子とタッチプールに行ったんだ。そこで僕は、『魚の身になってみたらどうだろう?もしドリーがタッチプールの中に閉じ込められたら?』と考えたんだよ」。まずはマックスが、タッチプールのアイデアの発端を話し始めた。「僕たちは、何事に取りかかるときもまずはリサーチから始めるので、いくつかの水族館に行って、タッチプールの中にどういう生き物がいるのか、子どもたちがどうやってその生き物たちと触れ合っているのかなど、たくさんの写真を撮ってきたんだ。それをストーリー・チームのメンバーに見せ、そこで生まれるギャグや、中にいるキャラクターたちがどういった状況に置かれているのかなど、ブレインストーミングを通してアイデアをどんどん出し合ったんだ」。そして、そこで飛び出したギャグの1つが、「ヒトデの腕がちぎれる」というものだったと語るマックス。さらに、「ほかのキャラクターについてもいろいろとアイデアを出し合ったよ。人間に触られるのが大好きで、『気持ちいい~!』って叫ぶバットレイとかね(笑)」とマックスは続ける。ところどころで大人が笑えるギャグを挟んでいくのも、ディズニー/ピクサー流だ。「最終的に、ヒトデの腕がちぎれるのはちょっとこの作品にはブラック過ぎると思って、採用しなかったよ(笑)」と、ユーモラスにアンガスが合いの手を入れる。「それから、ドリーたちがどうやってここに巻き込まれるのかということを考えていったんだ。ハンクはドリーのパートナーになっているけれど、2匹がここから出られなくなったとしたらどうするか?彼らはどうやってここから出るのか?ハンクは自分の体の色を変えてカモフラージュ出来るので、お客さんの背中にくっついて運ばれていくというのはどうか?」と、マックスは当初のアイデアを次々と明かしていく。これらの様々なアイデアは脚本家に渡され、実際にストーリーとして形作られることになる。次に、書き上げられた脚本を基に、監督と絵コンテを作成するアーティストたちが各シーンの読み合わせを行い、そのシーンでは何を感じ取りたいのかが話し合われる。そして、アーティストたちは脚本に記された様々なアイデアを基に、構図や演技、照明、セット、編集など、あらゆる要素をビジュアル化した“サムネール・テンプレート”を作成する。ここで、最初に仕上がったタッチプール・シーンのサムネール・テンプレートが、マックスによって披露された。「それでは、シーンをプレゼンしてみましょう。この前のシーンでは、ドリーは隔離部屋に自分の家族がいるのではないかと思っていて、ハンクはドリーを隔離部屋に連れて行くことを渋々承諾しました。ハンクは『わかった、じゃあ行こう』と言って出発します。さて、ここからこのシーンに入っていきます」。「ハンクがパイプを通っていきます。ハンク『いいか。先に言っておく。いまから経験することは忘れられない思い出になるさ。たとえお前でもな』、ドリー『え?なんで?』、ハンク『ここが隔離部屋への近道だが、ここを通るのは簡単ではない。離れるなよ』。そしてハンクは上によじ登る。排水溝からハンクの頭が出るのが見える。そこはタッチプールの中。子どもたちの手が生き物の方にあちこちから“ぶしゅー”っと伸びてきている。画面はタッチプールの外に切り替わり、子どもたちがたくさん並んでいる。横にある看板には“タッチプール生き物には優しく”と書かれている。でも子どもたちは優しくなんかない。ヒトデの腕が子どもに引っ張られる。『ああ~!!腕が~!腕が~!』。ハンクはドリーを引っ張り上げて『どんなことがあっても上を見るな』と告げる。子どもたちの手が次々と伸びてくる。バットレイが叫ぶ。『もっと愛して~』(笑)。ハンクは後ろの壁まで来てプールの向こう側を見上げ、『あれが目的地の隔離部屋だ』と言う。プールの中ではドリーが子どもに触られて『あはは~!くすぐったい~』。『おい、彼女に触るな!お嬢ちゃん、しっかり水を吸い込めよー』。そしてハンクが子どもの手を掴むと子どもは『うわ、うわ~~~~~!!』と怖がって、ハンクを放り投げる。ハンクは空中を飛んで、ある男性客の背中に着地。ハンクが男性のシャツの柄と同じ模様にカモフラージュする。男性は気がつかずそのまま歩いて行く。ドリーはハンクに掴まっているが、水の中にいないので息が苦しくなる。そこでハンクは側にいた子どもが持っているジュースのカップを横取りし、ドリーを中に入れる。『あぁ~!冷たい~!』ハンクはドリーを隠して周囲を確認する。『もう少しだぞ~』。ハンクが隔離部屋の方へ飛び降りるが、そこにあった掃除バケツの中に落ちてしまった。ハンク『やったぞ!』、ドリー『なんだか隔離部屋じゃないみたいだけど』、ハンク『こうやって隔離部屋に入るのさ』。これでこのシーンは終わりです」。(取材陣、拍手。)マックスのプレゼンを経て、監督であるアンガスがフィードバックを加えていく。アンガスはここでもユーモラスに、当時の様子を再現してみせる。「とても良かったね。少し気になるところがあるんだけど、絵コンテの中で、ハンクが『たとえお前でもな』と言うセリフがあるね。ここは最後まで上を向いていたままで、下を見ない方がいいな。そしてヒトデが引っ張られているところはもっと暴力的でもいいね(笑)。あと、バットレイが『もっと愛して~』と言ったときにみんな笑ったけれど、ここまでずっと、“危険!”と来ていて、こいつだけが、“良いよ~”と言っていると、面白いかもしれないがペースを遅くしてしまうかもしれない。編集後にもう一度見てみて、残したいか考えてみよう。もうひとつは、ハンクは自分がやろうとしていることにとても慎重になっているのに、ドリーが『くすぐったい』と言っていると、彼女は自分の身の危険を心配していないように聞こえる。彼女は危険な状況を忘れてしまっているとも考えられるけど、もしかしたら身の安全について心配していなさすぎかもしれない」。このように、サムネール・テンプレートのプレゼンに対する監督からのフィードバックを経て、アーティストたちは再びそれぞれ自分の机に戻り、さらなる描き直しを加える。そしてまた、新たなサムネール・テンプレートが作成されるのだ。「我々のチームは10万3,000枚以上の絵コンテを編集チームに渡したよ。こういった絵コンテのアニメーションを3、4か月毎に上映し、ジョン・ラセターをはじめとする重役たちからのフィードバックを得る。この過程を3年半かけて進め、各シーケンスを作り上げ、作品のブループリントを作っていくんだ。だから、かなり長い間、映画はこの絵コンテの中で生きているんだよ」。そうマックスは語るように、先ほど取材陣に披露されたサンプルには、日付が2013年7月19日と記されていた。プレゼンを経てアンガスは、「いまふり返ると、これも作品のひとつのバージョン。後で『なぜこれを削除したんだろう?』と思うセリフやアイデアもあるけど、我々は常に主人公のための物語を追求しているので、物語がきちんと語られることを考えているんだ。だから、面白いギャグやジョークで脱線するのは避けて、それらは物語を引き立たせるものでなければいけない。良いアイデアはたくさんあるけれど、採用されないこともしばしばだよ。残念だけど、DVDに入れられるといいね」とふり返る。こうしてフィードバックが反映された各シーンのサンプルに、音声や音楽、効果音が加えられ、シーケンスが作成される。その後、編集スタッフによってそれらが繋げられ、監督をはじめとするスタッフがチェックし、随時変更を加えていく。また、その場で思いついたセリフやアイデアのスケッチはすぐに絵コンテとして新たに加えられ、再び仕上がりがチェックされる。このように、いかなる行程においても浮かんだアイデアはすぐに試され、実際にそれができる制作環境が整えられているのだ。当初のストーリー案にから劇的とも思えるほどの変化が加えられていく“ブレイントラスト”のプロセスだが、披露された第一稿も、さすがのディズニー/ピクサーだけあって、“おもしろい”ものではあった。しかし、その“おもしろい”をさらにブラッシュアップしていくのが、同スタジオのクリエイティブをさらなる上の次元に推し進めている。「ドリーのストーリーを語るということに注意を払い続けることが、何が必要で、何が必要ないかを教えてくれるんだ」。ストーリーを仕上げていく中で次々と加えられていく変更点について、アンガスは解説する。「どんなアートフォームでもそうだけど、足し算であると同じぐらい引き算が大切で、観客とエモーショナルなコネクションを作ることが、常にゴールなんだ。それを達成するまでは、僕らは何かを捨てることにオープンでいるよ」。「それに、どうしていいかわからなくなったとき、『ヘイ、カモン、これを一緒に解決しよう』と言ってくれる多くの人たちがいるのはナイスだよ」とマックスが続ける。「グループは、ひとりよりもうまくいく。自分の周りに人々がいることは、どんな問題を解決する上でも、常に役立つよ」。このチームワークが、ディズニー/ピクサー作品の並大抵じゃない“おもしろさ”を生み出しているのだ。最後に、タッチプール・シーンの第一稿として披露されたバージョンに対して加えられた、大きな変更点についておさらいしてみよう。■ハンクではなくドリーが主導権を握ること→ハンクが強調されていて、ドリーが脇役になっている。物語の主人公は常にドリーにしなければならない。■バットレイのジョークは削除→ジョークをウリにすることは出来たが、それにはもっとシーンを作り込む必要があり、それによってシーンのペースを遅くしてしまう。■タッチプールをもっと怖いところとして描く→危険な状況を加え、タッチプールが戦場であるかのように描く。これらの変更点を経て、実際にタッチプール・シーンはどのように仕上がったのか?それは是非、劇場で実際に見比べて見て欲しい。きっとピクサーの“おもしろさ”の秘密を覗くことができるだろう。『ファインディング・ドリー』は、全国にて公開中。協力:ウォルト・ディズニー・スタジオ・ジャパン(text:cinemacafe.net)■関連作品:ファインディング・ドリー(原題)
2016年07月30日