2020年10月より、館内施設整備のため休館していた国立西洋美術館が、4月9日(土)にリニューアルオープン。ル・コルビュジエの設計をもとに、デザイン上も大きな意味を持つ目地や、西門の位置、柵などを、1959年に創建した当時の姿に近づけた前庭もいよいよ完成する。4月9日(土)からは小企画展として、国立西洋美術館本館を設計したモダニズム建築の巨匠ル・コルビュジエの芸術を紹介する『調和にむかって:ル・コルビュジエ芸術の第二次マシン・エイジ ―― 大成建設コレクションより』が開催される。同展は、世界有数のル・コルビュジエのコレクションを所蔵する大成建設株式会社からの寄託作品を中心に、《牡牛XVIII》のような大作と、制作の過程を示す約10点の素描による合計約20点(展示替含め約30点)から構成。ル・コルビュジエの円熟期の絵画制作の展開を辿ることができる、貴重な機会となる。リニューアルオープン後初の企画展は、6月4日(土)から。ドイツ・フォルクヴァング美術館と国立西洋美術館のコレクションから、印象派とポスト印象派を軸にドイツ・ロマン主義から20世紀絵画までを紹介する『国立西洋美術館リニューアルオープン記念自然と人のダイアローグフリードリヒ、モネ、ゴッホからリヒターまで』が開催される。【開催概要】小企画展『調和にむかって:ル・コルビュジエ芸術の第二次マシン・エイジ ―― 大成建設コレクションより』会期:2022年4月9日(土)~9月19日(月・祝)※会期中展示替えあり会場: 国立西洋美術館新館1階第1展示室時間:9:30~17:30、金土は20:00まで(入館は閉館の30分前まで)休館日:月曜(5月2日、7月18日、8月15日、9月19日は開館)、5月30日(月)~6月3日(金)、7月19日(火)料金:一般500円、大学250円※5月18日(水)は国際博物館の日のため観覧無料
2022年03月28日国立文化財機構 文化財活用センター〈ぶんかつ〉が作品輸送費等を支出し、東京国立博物館・京都国立博物館・奈良国立博物館・九州国立博物館の4つの国立博物館が収蔵品を貸し出す「国立博物館収蔵品貸与促進事業」において、2022年度事業の実施対象館が決定いたしました。これにより国立博物館が所蔵する地域ゆかりの文化財113件が、愛知、島根、栃木、鹿児島、滋賀、沖縄の6つの施設で順次公開される予定です。■2022年度 国立博物館収蔵品貸与促進事業 実施対象館(会期順)美術館・博物館名:刈谷市歴史博物館(愛知県)展覧会名 :伊勢物語とかきつばた会期(予定) :2022年4月23日(土)~2022年6月5日(日)貸与予定件数 :3件美術館・博物館名:島根県立古代出雲歴史博物館(島根県)展覧会名 :ハニワの世界へようこそ会期(予定) :2022年7月1日(金)~2022年8月28日(日)貸与予定件数 :9件美術館・博物館名:足利市立美術館(栃木県)展覧会名 :あしかがの歴史と文化再発見!会期(予定) :2022年7月30日(土)~2022年10月10日(月・祝)貸与予定件数 :16件美術館・博物館名:鹿児島県歴史・美術センター黎明館(鹿児島県)展覧会名 :茶の湯と薩摩会期(予定) :2022年9月22日(木)~2022年11月6日(日)貸与予定件数 :30件美術館・博物館名:滋賀県立安土城考古博物館(滋賀県)展覧会名 :大岩山銅鐸里帰り展(仮称)会期(予定) :2022年10月8日(土)~2022年11月20日(日)貸与予定件数 :6件美術館・博物館名:沖縄県立博物館・美術館(沖縄県)展覧会名 :琉球 ―美とその背景―会期(予定) :2022年10月14日(金)~2022年12月4日(日)貸与予定件数 :49件注目は、本土復帰50年の節目を迎える沖縄県で開催予定の「琉球 ―美とその背景―」展(会場:沖縄県立博物館・美術館)。東京国立博物館からは、「黒漆葡萄栗鼠螺鈿箙」や「三線」など28件、九州国立博物館からは、「浅葱地窓絵枝垂桜文紅型衣裳」や「鳳凰螺鈿七弦琴」など21件、合計49件の文化財を貸し出します。左:黒漆葡萄栗鼠螺鈿箙 沖縄本島 第二尚氏時代・18世紀末~19世紀 東京国立博物館蔵、右:浅葱地窓絵枝垂桜文紅型衣裳 第二尚氏時代・19世紀 九州国立博物館蔵(沖縄県立博物館・美術館で展示予定)また、開館30周年を記念する滋賀県立安土城考古博物館では「大岩山銅鐸里帰り展(仮称)」が開催されます。滋賀県野洲市の大岩山遺跡から出土した、現存する日本最大の銅鐸(重要文化財、総高 約135cm)をはじめ、竜王町高塚山出土の銅鐸など、東京国立博物館から6件の考古資料を貸し出します。さらに2021年に市制100年を迎えた足利市では、100周年記念に続く取り組みのひとつとして、足利市立美術館において「あしかがの歴史と文化再発見!」展が開催されます。東京国立博物館から、 熊野山古墳や十二天塚古墳(いずれも足利市)などから出土した考古資料16件を貸し出します。■2022年度 国立博物館収蔵品貸与促進事業 展覧会概要(会期順)◆刈谷市歴史博物館「伊勢物語とかきつばた」 貸与予定件数:3件「伊勢物語」に登場する三河の「かきつばた」が広く受容された歴史を紹介する展覧会会期 : 2022年4月23日(土)~2022年6月5日(日)URL : 公式Twitter: みどころ : 愛知県刈谷市をはじめとする西三河地域は、かきつばたの名所として知られます。これは、平安時代の歌物語「伊勢物語」第九段の「東下り」で、在原業平といわれる主人公が八橋(現・愛知県知立市)で「かきつばた」を歌に詠んだことに由来します。公家の教養であった「伊勢物語」は、江戸時代には尾形光琳(1658~1716)や乾山(1663~1743)といった琳派によって八橋のかきつばたが描かれ、出版文化の隆盛とともに庶民にも活字で読まれるようになりました。本展では、「伊勢物語絵巻(模本)」などを東京国立博物館から、「伊勢物語絵巻 上巻」を京都国立博物館から貸し出し、江戸時代に焦点をあて、伊勢物語やかきつばたが広く受容された歴史を紹介します。伊勢物語絵巻(模本) 巻第一(部分) 古藤養成(他)模 江戸時代・天保9年(1838) 東京国立博物館蔵◆島根県立古代出雲歴史博物館「ハニワの世界へようこそ」 貸与予定件数:9件山陰地域出土品を中心に、形象埴輪の魅力に迫る展覧会会期 : 2022年7月1日(金)~2022年8月28日(日)URL : みどころ: 古墳上に埴輪を立て並べる習慣は、前方後円墳が全国的に築造されはじめるのにあわせて各地に広まりました。古墳時代後期には、古墳の一角を区切り、人物や動物、武具等の様々な器物を表現した埴輪を並べ、被葬者の生前の活躍や首長継承のまつりを再現するようになります。こうして埴輪は、より表情豊かで多彩なものへと変化していきました。本展では、東京国立博物館から「馬形埴輪」(重要文化財)をはじめとする考古資料を貸し出し、そのほか山陰地域出土の形象埴輪を中心に、人物や動物をかたどった様々な埴輪を展示します。制作時期や地域ごとの特徴や違いといった考古学的な比較だけでなく、個々のハニワが持つデフォルメの妙や豊かな表情など、形象埴輪の魅力を紹介します。重要文化財 馬形埴輪 古墳時代・6世紀 埼玉県熊谷市上中条出土 東京国立博物館蔵◆足利市立美術館「あしかがの歴史と文化再発見!」 貸与予定件数:16件足利ゆかりの文化財から市の歴史と文化を辿る展覧会会期 : 2022年4年7月30日(土)~2022年4年10月10日(月・祝)URL : 公式Twitter: みどころ : 2021年に市制100周年を迎えた足利市では、100周年記念に続く取り組みとして、郷土を見つめ直す企画展を開催します。本展では、東京国立博物館が所蔵する、熊野山古墳や十二天塚古墳(いずれも足利市)などから出土した考古資料を貸し出します。そのほか、足利ゆかりの文化財等を一堂に集め、これらを受け継いでゆく子どもたちにもわかりやすく、足利市の歴史と文化の源流を紹介します。埴輪 童女 古墳時代・6世紀 栃木県足利市 熊野山古墳群出土 山田宗治氏他寄贈 東京国立博物館蔵◆鹿児島県歴史・美術センター黎明館「茶の湯と薩摩」 貸与予定件数:30件薩摩の茶の湯文化の歴史について紹介する展覧会会期 : 2022年9月22日(木)~2022年11月6日(日)URL : 公式Twitter: みどころ : 日本の伝統文化のひとつである茶の湯は、中国から伝来した喫茶法をもとに育まれました。室町時代には将軍家を中心に権威の象徴となり「唐物」が愛好されましたが、安土桃山時代に千利休(1522~1591)が侘茶を大成すると、新たに価値づけされた「和物」が登場し、政権者から大名、町衆へと広がりました。本展では、東京国立博物館から、薩摩焼を代表する文琳形茶入として名高い「黒釉文琳茶入 銘 望月」をはじめとする23件、九州国立博物館からは「油滴天目」(重要文化財)を含む7件を貸し出し、侘茶との出会いや大名茶への展開など、歴史の動向や様々な文化交流によって拡がる薩摩の茶の湯文化の歴史について人的交流を軸に紹介します。左:黒釉文琳茶入 銘 望月 薩摩 江戸時代・17世紀 松永安左エ門氏寄贈 東京国立博物館蔵、右:重要文化財 油滴天目 中国・建窯 南宋時代 九州国立博物館蔵◆滋賀県立安土城考古博物館「大岩山銅鐸里帰り展(仮称)」 貸与予定件数:6件開館30周年を記念し、日本最大の銅鐸が里帰りする展覧会会期 : 2022年10月8日(土)~2022年11月20日(日)URL : みどころ: 開館30周年を記念し、日本最大の銅鐸が里帰りをします。弥生時代後期の大岩山銅鐸は、滋賀県野洲市の大岩山遺跡から明治14年(1881)、昭和37年(1962)の調査によって計24個が出土しました。本展では、東京国立博物館所蔵の、大岩山遺跡から出土した現存する日本最大の銅鐸(重要文化財)をはじめ、「扁平鈕式銅鐸」や「三角縁二神二獣鏡」など、地域ゆかりの考古資料6件を貸し出します。重要文化財 突線鈕5式銅鐸 弥生時代(後期)・1~3世紀 滋賀県野洲市小篠原字大岩山出土 東京国立博物館蔵◆沖縄県立博物館・美術館「琉球 ―美とその背景― 」 貸与予定件数:49件王都・首里や村々で花開いた琉球文化の美を紹介する展覧会会期 : 2022年10月14日(金)~2022年12月4日(日)URL : 公式Twitter: みどころ : 2022年に本土復帰50年を迎える沖縄県は、古くから海を通じて様々な国と交流し、独自の文化を発展させてきました。王都・首里を中心として発展したもの、島々で花開いたもの、各地域によって多様な文化を見ることができます。本展では、東京国立博物館から「黒漆葡萄栗鼠螺鈿箙」や「三線」など28件を、九州国立博物館からは「浅葱地窓絵枝垂桜文紅型衣裳」や「鳳凰螺鈿七弦琴」など21件を貸し出します。島々・村々で享受された「美」を地理的・歴史的な視点のみならず、民俗的な視点も含めて紹介します。キンカブ 奄美大島 第二尚氏時代・18世紀 東京国立博物館蔵※上記6つの展覧会の概要・貸与予定作品は2022年3月22日現在のものです。今後、変更になる場合があります。最新情報は各美術館・博物館の公式ウェブサイトなどでご確認ください。■2023年度「国立博物館収蔵品貸与促進事業」募集予定2022年4月1日(金)から、2023年度国立博物館収蔵品貸与促進事業実施対象館の申請受付が開始されます。申請受付期間:2022年4月1日(金)~6月30日(木) [17時必着]貸与促進事業の申請、展覧会情報に関する詳細は、以下の〈ぶんかつ〉公式ウェブサイトでご確認いただけます。URL: 全国の美術館・博物館からのご応募をお待ちしています。2023年度国立博物館収蔵品貸与促進事業 募集チラシ■国立博物館収蔵品貸与促進事業とは国内各地の美術館・博物館に対し、〈ぶんかつ〉が作品輸送費等を支出し、東京国立博物館・京都国立博物館・奈良国立博物館・九州国立博物館の4つの国立博物館が収蔵品を貸し出すこの事業は、各地ゆかりの文化財を展示に活用し、日本とアジアの歴史・伝統文化の発信ならびに地方創生・観光振興、次世代への文化財の継承に寄与することを目的としています。■文化財活用センターとは文化財活用センターは、国内外のさまざまな人が日本の文化財に親しむ機会を拡大するため、2018年7月、国立文化財機構のもとに設置された組織です。愛称は〈ぶんかつ〉。貸与促進事業のほか、文化財を通じて豊かな体験と学びを得ることができるよう、文化財を活用した新たなコンテンツやプログラムの開発、文化財のデジタル情報の公開、また文化財の保存環境に関する相談窓口を開設、文化財の保存と活用を目的とした寄付金の募集を行っています。▼ぶんかつSNSYouTubeチャンネル : Instagram @cpcp_nich: Twitter @cpcp_nich : 詳細はこちら プレスリリース提供元:@Press
2022年03月22日展覧会「国立国際美術館コレクション 現代アートの100年」が、2022年4月2日(土)から5月29日(日)まで、広島県立美術館にて開催される。20世紀から現在まで“現代アートの100年”を辿る名品「国立国際美術館コレクション 現代アートの100年」は、20世紀の絵画に多大な影響を与えたポール・セザンヌや、西洋美術の価値観を大きく変化させたマルセル・デュシャンから、アンディ・ウォーホルや草間彌生、森村泰昌、奈良美智に至るまで、国内外の現代美術作家達の名品約70点を、国立国際美術館収蔵のコレクションから紹介する展覧会。従来の美術の見方や価値観を揺るがし、常識を覆すアートが次々と登場した20世紀は、美術界が大きく変容した時代。近代から現代をめぐる100年のアートの動向を、作品の数々を通して辿っていく。“近代絵画の父”セザンヌなど20世紀美術のはじまり会場には、近代絵画から2000年代、現在にかけてのアート作品まで、多彩なアートが集結。「すべての自然は球、円筒、円錐に基づいて肉付けされている」という考えた“近代絵画の父”ポール・セザンヌの、後のキュビスムに通じる表現が見て取れる《宴の準備》や、抽象絵画を生み出したヴァシリー・カンディンスキーの《絵の中の絵》などは、“20世紀美術のはじまり”を感じさせる作品だ。ポップアートやミニマリズムなど戦後美術また、第二次世界大戦以後の“戦後美術”にもフォーカス。アートの中心地がパリからニューヨークへと移動し、1950年代後半には「ネオ・ダダ」、1960年代以降は、アンディ・ウォーホルを筆頭としたポップ・アートが一世を風靡する。一方で、ドナルド・ジャドらによる「ミニマリズム」の気運も高まり、コンセプチュアル・アートの誕生へと繋がっていく。さらに、写真や映像といったメディアの登場以降における「絵画」「写真」といったジャンルを横断した表現や、その反対に絵画や彫刻の独自性を追求する動き、1980年代以降の、歴史や伝統を踏まえつつ不特定の人物や物語、個人的な体験や感情に訴えかける傾向などについても、その流れを辿る。奈良美智や森村泰昌など日本の現代作家もさらに、現代にかけて活躍する日本の現代美術作家による作品にも注目だ。時代の空気をまとったポップな感覚で、ユニークな佇まいの少女を描く奈良美智や、ゴッホの自画像に扮するセルフポートレイト《肖像(ゴッホ)》をはじめ、“自画像的作品”を追求する森村泰昌などによる、バリエーション豊かな表現を間近に目にすることができる。【詳細】国立国際美術館コレクション 現代アートの100年会期:2022年4月2日(土)~5月29日(日)会場:広島県立美術館住所:広島県広島市中区上幟町2-22休館日:月曜日(5月2日は開館)開館時間 : 9:00~17:00(金曜日は20:00まで)※4月2日(土)は10:00開館 ※入場は閉館30分前まで料金:一般 1,400円、高・大学生 1,000円、小・中学生 700円※前売り・20名以上の団体は当日料金より200円引き。※学生券を購入・入場の際は学生証の提示が必要。※身体障害者手帳、療育手帳、精神障害者保健福祉手帳及び戦傷病者手帳の所持者と介助者(1名まで)の当日料金は半額。手帳の提示が必要。前売券販売所:広島県立美術館、セブンチケット(セブンコード:093-024)、ローソンチケット(Lコード:61416)、チケットひあ(Pコード:685-953)、広島市・呉市内の主なプレイガイド、画廊・画材店、ゆめタウン広島、中国新聞社読者広報部など※開館情報に変更が生じる場合あり。最新情報は広島県立美術館ホームページなどにて告知。※来館者が多い場合は、入場制限を行う場合あり。※本展入館券の提示により、100円で縮景園に入園可能。【問い合わせ先】広島県立美術館TEL:082-221-6246
2022年03月14日アメリカ・ニューヨークにあるメトロポリタン美術館所蔵の絵画を紹介する『メトロポリタン美術館展 西洋絵画の500年』が国立新美術館(東京都港区)で開催中だ。1870年に創立されたメトロポリタン美術館は、先史時代から現代まで5000年以上にわたる世界各地の文化遺産を包括的に所蔵している。今回は、同館を構成する17部門のうち、ヨーロッパ絵画部門に属する2500点あまりの所蔵品から、珠玉の絵画65点を展示。うち46点は日本初公開作品となる。展示は3章構成。まず「信仰とルネサンス」では、イタリアと北方のルネサンスを代表する画家たちの名画17点を紹介。初期ルネサンスのイタリアを代表する画家フラ・アンジェリコ(本名 グイド・ディ・ピエトロ)の《キリストの磔刑》(1420-23年頃)、ルネサンスの巨匠であるラファエロが20〜21歳の時に描いた《ゲッセマネの祈り》(1504年頃)、ティツィアーノ・ヴェチェッリオ《ヴィーナスとアドニス》(1550年代)などが日本初公開となる。続いては「絶対主義と啓蒙主義の時代」と題し、君主が主権を掌握する絶対主義体制がヨーロッパ各国で強化された17世紀から、啓蒙思想が隆盛した18世紀にかけての美術を、各国の巨匠たちの名画30点により紹介。20世紀に再評価された画家であるジョルジュ・ド・ラ・トゥール《女占い師》(おそらく1630年代)、17世紀オランダの画家フェルメールによる異例の寓意画《信仰の寓意》(1670-1672年頃)、生命や現世の富・名声のはかなさの寓意を伝える「ヴァニタス(虚栄)」静物画の典型である、ピーテル・クラース《髑髏と羽根ペンのある静物》(1628年)などが見どころとなっている。最後は「革命と人々のための芸術」。市民社会の発展を背景に、絵画に数々の革新をもたらした19世紀の画家たちの名画18点が並ぶ。オーギュスト・ルノワール《ヒナギクを持つ少女》(1889年)、エドガー・ドガ《踊り子たち、ピンクと緑》(1890年頃)、フィンセント・ファン・ゴッホ《花咲く果樹園》(1888年)、ポール・セザンヌ《リンゴと洋ナシのある静物》(1891-92年頃)、クロード・モネ《睡蓮》(1916-19年)といった名画を見ることができる。会期は5月30日(月)まで。開館時間は10:00-18:00(毎週金・土曜日は20:00まで、入場は閉館の30分前まで)。休館日は火曜日。ただし、5月3日(火・祝)は開館。取材・文・撮影:五月女菜穂
2022年03月11日京都市京セラ美術館で、4月21日(木)より『ポンペイ展』が開催される。紀元後79年、イタリア南部・ナポリ近郊のヴェスヴィオ火山の噴火により、一瞬にして全てが死に絶えた古代ローマ帝国の都市「ポンペイ」。本展では、2000年前の古代都市の繁栄と、豊かな生活を謳歌した市民の暮らしを5章立てで紹介する。「ポンペイ展」チケット情報質・量ともに世界屈指、膨大なポンペイの遺物を所蔵するナポリ国立考古学博物館の協力を得て開催される今回。同館が誇る第一級のモザイク画、フレスコ画、彫像が並ぶほか、調度品や宝飾品、仕事道具など、本邦初公開の名品を含む約120点の至宝を公開する。また、ポンペイ遺跡でも著名な邸宅の一部の再現展示や、複数の名家から出土した作品群のハイライト展示も。中でも、「葉綱と悲劇の仮面」などのモザイク画の傑作や、「踊るファウヌス」「竪琴を弾くアポロ」などのブロンズ像に注目だ。さらに、18世紀から行われてきたポンペイの“発掘”の歴史を紹介。今、現地ではどんな発掘が行われているのか。発掘作業や作品修復の様子を複数の映像素材を用いて案内する。2000年前の古代ローマ都市の人、街、風景。見どころたっぷりの「ポンペイ展」で、ひとときのタイムトリップを楽しみたい。会期は4月21日(木)から7月3日(日)まで。前売チケット発売中。
2022年02月25日「スイス プチ・パレ美術館展 花ひらくフランス絵画」が、静岡市美術館にて2022年4月9日(土)から6月19日(日)まで開催される。フランス近代絵画65点、30年ぶりに一挙来日「スイス プチ・パレ美術館展 花ひらくフランス絵画」では、スイス・ジュネーブに1968年に創設されたプチ・パレ美術館の所蔵コレクションを、30年ぶりに日本で一挙に紹介する展覧会。これまで、滋賀や鹿児島などでも開催されてきた、巡回展だ。プチ・パレ美術館では、“平和に奉仕する芸術”という理念のもと作品を収集。コレクションは19世紀後半から20世紀初頭にかけてのフランス近代絵画を中心に構成されており、カイユボットやシュザンヌ・ヴァラドンなど、当時正当な評価を得られていなかった画家の作品も含まれている。1998年以降は休館しているが、充実した所蔵コレクションから、国内外の大規模美術展に継続的に出品協力を行っている。展覧会では、65点の油彩画を展示。オーギュスト・ルノワールやモーリス・ドニ、ラウル・デュフィ、アンドレ・ロート、モーリス・ユトリロ、藤田嗣治といった38作家が手がけた名品の数々が一堂に集結する。印象派からエコール・ド・パリまで、フランス近代美術の潮流を辿る移ろいゆく自然を活写した印象派にはじまり、科学と美術を融合させた新印象派、平坦な色面で神秘的な世界を表したナビ派、色彩の表現性を追求したフォーヴィスム、幾何学的形態で画面を構成したキュビスム、そして各々が個性豊かな具象絵画を追求したエコール・ド・パリに至るまで、様々な芸術運動が生み出された19世紀後半から20世紀前半にかけての、フランス近代美術の軌跡を辿っていく。中でも注目は、印象派を代表する画家・ルノワールの《詩人アリス・ヴァリエール=メルツバッハの肖像》。親しい友人や画商の制作依頼しか受けなくなっていた晩年のルノワールが描いた貴重な肖像画であり、薄い絵具の層を重ねてみずみずしい色調を作る、ルノワールの晩年に特有な独自の手法が見て取れる。【詳細】スイス プチ・パレ美術館展 花ひらくフランス絵画会期:2022年4月9日(土)~6月19日(日)会場:静岡市美術館住所:静岡県静岡市葵区紺屋町17-1葵タワー3階休館日:毎週月曜日※ただし5月2日(月)は臨時開館開館時間:10:00~19:00(展示室入場は閉館の30分前まで)観覧料:一般 1,400(1,200)円、大高生・70歳以上 1,000(800)円、中学生以下無料※( )内は前売および当日に限り20名以上の団体料金※障がい者手帳等持参者および介助者原則1名は無料※一般前売ペアチケットは2枚1組2,200円※前売券・前売ペアチケットは2月26日(土)~4月8日(金)まで販売※静岡市美術館ホームページにて日時指定予約が可能※来館の際は、最新の開館状況および注意事項を静岡市美術館ホームページ、または電話で確認【問い合わせ先】静岡市美術館TEL:054-273-1515(代表)
2022年02月17日ニューヨーク発のティーブランド、ハーニー&サンズ(HARNEY & SONS)は、東京にて開催の展覧会「メトロポリタン美術館展 西洋絵画の500年」を記念して、メトロポリタン美術館とのコラボレーションティーを、国立新美術館内特設ショップをはじめ、ハーニー&サンズ表参道、ジェイアール名古屋タカシマヤなどにて発売。ハーニー&サンズとメトロポリタン美術館が共同開発ニューヨークを本拠地とするハーニー&サンズは、同じくニューヨークに位置し、世界屈指のコレクションを所蔵しているメトロポリタン美術館と様々な交流があり、美術館の魅力や芸術性を表現するティーを共同開発した。今回、東京にて「メトロポリタン美術館展 西洋絵画の500年」が開催されるのを記念し、ハーニー&サンズとメトロポリタン美術館によるオリジナルティーが満を持して本格的に日本上陸する。茶葉を入れる缶には絵画のプリントを施し、アートな佇まいに仕上げている。甘くスパイシーなフレーバーティーなど3種コラボレーションティーは3種類を用意。ハーニー&サンズのシグネチャー「ホット・シナモン・スパイス」にアップル・ピースをブレンドした「HOT APPLE SPICE BLACK TEA」は、甘さとスパイシーな風味の両方を感じられるフレーバーティーだ。また、カモミール、ペパーミント、バーベナをブレンドしたハーバルティー「GARDEN THERAPY HERBAL TEA」は、1800年代後半のモネが描いた風景画の情景を思わせる風味に。紅茶と緑茶をベースに、ベルガモットオイルをプラスした「TASTE OF BRITISH HISTORY BLEND」は、メトロポリタン美術館ブリティッシュ・アート・ギャラリーのリニューアル・オープンを記念して作られた、ベーシックなフレーバーを楽しめる。表参道で期間限定スペシャルメニューもさらに、ハーニー&サンズ 表参道では、「メトロポリタン美術館展 西洋絵画の500年」開催を記念した期間限定スペシャルメニューを2022年2月16日(水)から提供。桜のアイスクリームや桜のバームクーヘンといった春を感じるスイーツや、華やかな彩りのサラダ、クロワッサンサンドイッチなどを、ハーニー&サンズのティーとともに味わうことができる。【詳細】ハーニー&サンズ「メトロポリタン美術館展 西洋絵画の500年」コラボレーションティー「HARNEY & SONS×THE MET」発売日:2022年2月9日(水)販売場所:国立新美術館 企画展示室1E メトロポリタン美術館展会場内特設ショップ(東京都港区六本木 7-22-2)、ハーニー&サンズ 表参道、ジェイアール名古屋タカシマヤ 地下2階、ハーニー&サンズ 公式オンラインショップ※ジェイアール名古屋タカシマヤでは2022年3月1日(火)~発売。・HOT APPLE SPICE BLACK TEA 20サシェ入り 3,240円・GARDEN THERAPY HERBAL TEA 20サシェ入り 3,240円・TASTE OF BRITISH HISTORY BLEND 20サシェ入り 3,240円■スペシャルメニュー「ハーニー&サンズ スプリング スペシャル」提供期間:2022年2月16日(水)~場所:ハーニー&サンズ 表参道住所:東京都渋谷区神宮前4-2-14メニュー:トマトと生チーズのミニガーデンサラダ、3種類のクロワッサンサンドイッチ、ハーニー&サンズ スウィーツお重~2022年春バージョン(ダージリンゼリー&ムース、桜のアイスクリーム、桜のバームクーヘン、チョコケーキ、アールグレイマカロン)、好みのハーニー&サンズティー
2022年02月13日『メトロポリタン美術館展 西洋絵画の500年』東京展が2月9日(水)より国立新美術館でスタートした。世界屈指の質と量を誇るメトロポリタン美術館のコレクションで西洋絵画の歴史をたどることができる豪華な展覧会だ。5月30日(月)まで開催されている。展覧会場入口ニューヨークにあるメトロポリタン美術館(通称:MET)は、150万点以上のコレクションを持つ世界最大規模の美術館だ。近年は世界中のセレブや有名人が集うファッションの祭典「METガラ」の開催場所としても知られている。同展は、このMETが持つ西洋絵画のコレクションのなかから厳選した65点を紹介するもの。このうち46点もが日本初公開。初期ルネサンスからポスト印象派まで、どの作品も名作揃い。展覧会をひと通り見るだけで、500年の西洋絵画史を一挙にたどることができる。展示風景より展覧会は3章構成。第1章「信仰とルネサンス」では、ルネサンスを代表する画家たちの作品17点を紹介する。イタリアを中心に15世紀から16世紀に勃興したルネサンスは、古代ギリシアやローマにおいて盛んだった人間中心の文化に立ち戻る「再生(ルネサンス)」を目指したもの。フラ・アンジェリコやフィリッポ・リッピなど初期ルネサンスから、クラーナハ(父)などの北方ルネサンスの画家まで幅広くルネサンスを紹介する。左:ダヴィデ・ギルランダイオ(本名 ダヴィド・ビゴルディ)《セルヴァッジャ・サセッティ(1470年生)》ティツアーノ・ヴェチェッリオ《ヴィーナスとアドニス》1550年代ルカス・クラーナハ(父)《パリスの審判》1528年頃続く第2章「絶対主義と啓蒙主義の時代」は、権力者たちによる絶対主義体制が確立、強化された17世紀から、啓蒙思想が進んだ18世紀までの絵画が並ぶ。冒頭で紹介したカラヴァッジョの《音楽家たち》とジョルジュ・ド・ラ・トゥール《女占い師》は、同展の目玉ともなる作品。2点が隣り合って展示される空間は圧巻だ。このほか、プッサンやレンブラント、ルーベンス、ブーシェなどバロック、ロココの巨匠たちの作品が並ぶ。ペーテル・パウル・ルーベンス《聖家族と聖フランチェスコ、聖アンナ、幼い洗礼者聖ヨハネ》1630年代初頭/中頃ニコラ・プッサン《足の不自由な男を癒す聖ペテロと聖ヨハネ》1655年レンブラント・ファン・レイン《フローラ》1654年頃4そして、フェルメールの作品も初来日している。《信仰の寓意》は、これまでに発見されている三十数点のフェルメール作品のなかで唯一の寓意画だ。寓意画とは、抽象的な概念や教えを神話や聖書の登場人物などを用いて表現したもの。キリストの磔刑の絵の前に座る女性は、信仰を擬人化したものと考えられており、地球儀を踏む動作は世界を支配するカトリック教会を示唆していると考えられている。そのほかにも、十字架や杯、床のリンゴやヘビなど、画面のなかには何かをなぞらえたものに溢れている。それらをひとつひとつ紐解いていくのもまた絵画鑑賞の楽しみのひとつだ。ヨハネス・フェルメール《信仰の寓意》1670–72頃ちなみに現在、東京都美術館で開催中の『ドレスデン国立古典絵画館所蔵フェルメールと17世紀オランダ絵画展』でもフェルメールの作品《窓辺で手紙を読む女》が展示されている。東京で2点のフェルメールが展示されているというまたとない機会だ。近年の研究により、この時代のフランスでは女性画家が活躍していたことがわかってきたという。本章ではマリー・ドニーズ・ヴィレーヌ、ならびにエリザベート・ルイーズ・ヴィジェ・ル・ブランの作品の展示も見逃せない。左:エリザベート・ルイーズ・ヴィジェ・ル・ブラン《ラ・シャ第3章「革命と人々のための芸術」は、市民が力を持つようになった19世紀から20世紀にかけての作品18点が紹介される。時代は進み、市民の持つ力がどんどんと増すようになる。目まぐるしい社会情勢の変化は、美術にも強く影響を及ぼすようなっていく。作品のなかで理想を高らかに謳いあげるロマン主義、徹底的に事実を掘り下げる写実主義は、その後の画家たちに大きな影響を与えた。ジョゼフ・マロード・ウィリアム・ターナー《ヴェネツィア、サンタ・マリア・デッラ・ サルーテ聖堂の前廊から望む》1835年頃左:エドゥアール・マネ《剣を持つ少年》1861年右:フランシスコ・デ・ゴヤ・イ・ルシエンテス《ホセ・コスタ・イ・ボネルス、 通称ぺピート(1870年没)》1810年頃そして、モネやルノワールを始めとする印象派と呼ばれる画家たちが台頭していき、彼らに影響を受けたセザンヌやゴーギャン、ゴッホらがポスト印象派と呼ばれるようになる。西洋絵画の世界は、絶えず変化し続けてきたのだ。ポール・セザンヌ《ガルダンヌ》1885-86年フィンセント・ファン・ゴッホ《花咲く果樹園》1888年エドガー・ドガ《踊り子たち、ピンクと緑》1890年頃クロード・モネ《睡蓮》1916-19年メトロポリタン美術館の作品で辿る500年の美術の歴史は非常に重厚だ。さまざまなジャンル、画題、画家のなかから、ぜひ新たなるお気に入りを見つけてみよう。取材・文:浦島茂世【開催情報】『メトロポリタン美術館展 西洋絵画の500年』2月9日(水)~5月30日(月)、国立新美術館にて開催※事前予約制
2022年02月11日株式会社ハーニーアンドサンズジャパン(本社:東京都文京区、代表取締役:渡邊 貴美)は、「メトロポリタン美術館展 西洋絵画の500年」(国立新美術館)の開催を記念して2022年2月9日より「HARNEY & SONS×THE MET」のコラボレーションティーを販売いたします。HARNEY & SONS×THE MET コラボレーションティー世界屈指のコレクションを所蔵している「メトロポリタン美術館」とニューヨークが本拠地のハーニー&サンズは様々な交流があり、美術館の魅力や芸術性を表現するティーを共同開発しました。今回、「メトロポリタン美術館展 西洋絵画の500年」の開催を記念して、これらオリジナルティーが本格的に日本に上陸します。アートを日常に身近に感じながら、ハーニー&サンズの想いが詰まったティーをお楽しみください。◆商品詳細HOT APPLE SPICE BLACK TEA 税込¥3,240(20サシェ入り)■HOT APPLE SPICE BLACK TEA《遊び心あふれるフレーバー紅茶》HARNEY & SONSのシグネチャー・ブレンド、「ホット・シナモン・スパイス」にアップル・ピースをブレンドし、甘さとスパイシーさの2つの表情を持つフレーバー紅茶です。美術館に飾られる壁画を鑑賞している時のような心地よさを感じられる、至極の一杯。GARDEN THERAPY HERBAL TEA 税込¥3,240(20サシェ入り)■GARDEN THERAPY HERBAL TEA《ノンカフェイン》カモミール、ペパーミント、バーベナをブレンド。1800年代後半のモネが描いた美しい風景画の情景を思わせるハーバルティーです。TASTE OF BRITISH HISTORY BLEND 税込¥3,240(20サシェ入り)■TASTE OF BRITISH HISTORY BLEND《ベーシックなフレーバー紅茶》メトロポリタン美術館ブリティッシュ・アート・ギャラリーのリニューアル・オープンを記念して制作したオリジナル・ブレンド。紅茶と緑茶をベースに、ベルガモットオイルを加えています。◆HARNEY & SONS OMOTESANDOにて期間限定スペシャルメニューをご提供2022年2月9日より国立新美術館での「メトロポリタン美術館展」開催を記念して、2022年2月16日よりハーニー&サンズ表参道にて期間限定のスペシャルメニューをお楽しみいただけます。HARNEY & SONS Spring Special◇HARNEY & SONS Spring Special・トマトと生チーズのミニガーデンサラダ・3種類のクロワッサンサンドイッチ・HARNEY & SONSスウィーツお重~2022年春バージョン(ダージリンゼリー&ムース、桜のアイスクリーム、桜のバームクーヘン、チョコケーキ、アールグレイマカロン)・お好みのHARNEY & SONSのティーひと足早く、春の訪れをスペシャルメニューとともにお届けいたします。【コラボレーションティー販売場所について】「メトロポリタン美術館展 西洋絵画の500年」東京展会期 :2022年2月9日(水)~5月30日(月)会場 :国立新美術館 企画展示室1Eメトロポリタン美術館展会場内特設ショップ所在地:〒106-8558 東京都港区六本木7-22-2・HARNEY & SONS 公式オンラインショップ ・HARNEY & SONS OMOTESANDO所在地:〒150-0001 東京都渋谷区神宮前4-2-14・ジェイアール名古屋タカシマヤ所在地:〒450-6001 名古屋市中村区名駅1-1-4 地下2階グルメストリート(2022年3月1日より販売予定)●公式Instagram: ●公式Twitter : ●公式Facebook : ◆株式会社ハーニーアンドサンズジャパン所在地 : 東京都文京区湯島一丁目6番3号 湯島一丁目ビル3階代表 : 代表取締役 渡邊 貴美設立 : 2007年11月事業内容: 卸・小売URL : 詳細はこちら プレスリリース提供元:@Press
2022年02月10日2月10日(木)より、東京・上野の東京都美術館で、「ドレスデン国立古典絵画館所蔵 フェルメールと17世紀オランダ絵画展」が開催される。ドイツ東部・ザクセン州にあるドレスデン国立古典絵画館は、世界有数の西洋絵画コレクションを誇る絵画館。今回は、その数あるコレクションのなかから、17世紀オランダ絵画の名品約70点が集結した。今回の目玉となるのは、ヨハネス・フェルメール『窓辺で手紙を読む女』の修復プロジェクトと、その修復後の姿である。同作は、ドレスデン国立古典絵画館にて19世紀初頭から早くも一般公開されており、同館の至宝のひとつとして親しまれてきた。1979年、サンフランシスコでの展覧会で、初めてX線調査が行われ、女性の背後の壁にもともとキューピッドの画中画が描かれていることがわかった。その後、2017年から始まった大規模な調査・修復プロジェクトにおいて、この上塗りの手直しが、作者であるフェルメールの没後に行われたものであることが判明。これを受け、所蔵館は上塗りを除去することを決め、約4年もの歳月をかけて、2021年9月、フェルメールが描いた当初の姿がお披露目された。修復後、同作が所蔵館以外で公開されるのは、今回が世界初となる。本展覧会では、修復前(複製)と実際の修復後の作品を並べて展示しているだけでなく、綿棒でニスをぬぐったり、顕微鏡とナイフで上塗りの部分を削ったりした修復作業の様子が、パネルや映像などでわかりやすく紹介されている。これらを見れば、4年もの月日を費やした修復作業が、どれだけ神経をとがらせる途方もないものだったかが、手に取るようにわかる。そうした修復過程を見た後に、実際の作品を見たときの感動といったら――。目の前に立ち尽くし、ため息をつくほかない。「光の画家」フェルメールによる暖かな光が、手紙を読むのに夢中になっている女性を照らす。修復によって現れたキューピッドの画中画は、女性の読む手紙がラブレターであることをわかりやすく示唆する。このキューピッドが塗りつぶされた頃は、レンブラントの作品だとされたというのだから、時の移り変わりというのは面白いものである。長年“自省のキャンバス”と化していたその大きな空間に現れ、ようやく本来の姿を見せたフェルメールの「幻のキューピッド」。一度その目で見て、心の中で「おかえり」と声をかけに来てみてはいかがだろうか。1枚の絵画が、長い歴史とその深みを映し出している。「ドレスデン国立古典絵画館所蔵 フェルメールと17世紀オランダ絵画展」会場:東京都美術館会期:2月10日(木)~4月3日(日)取材・文/飯塚さき
2022年02月10日日本一高いビル「あべのハルカス」16階の「あべのハルカス美術館」では、日本美術や西洋美術、現代アートなど多彩な展覧会を開催しています。2022年度前半は4月より「庵野秀明展」、7月より「出版120周年 ピーターラビットTM展」の開催を予定しております。(既報のとおり。詳細は別紙参照)上記2本の展覧会に続き、新たに2022年度後半に開催する展覧会が決定しましたのでお知らせします。今後もより魅力的な都市型美術館として多くのお客様にお越しいただけるよう運営してまいります。 「楳図かずお大美術展」会 期 :2022年9月17日(土)~11月20日(日)共 催 :読売テレビ、読売新聞社開 催 趣 旨 :傑出した漫画作品を多く世に送り出した楳図かずお。その作品には漫画という既存の分野だけでは語りきることができない先見的な世界観、幻視的なビジョンが至るところに発揮されています。本展は27年ぶりとなる新作を公開するとともに、「楳図かずおの世界」を気鋭のアーティストらによるインスタレーションで読み解こうとする今までにない展覧会です。「アリスーへんてこりん、へんてこりんな世界ー」会 期 :2022年12月10日(土)~2023年3月5日(日)共 催 :ヴィクトリア・アンド・アルバート博物館、朝日新聞社、関西テレビ放送開 催 趣 旨 :ルイス・キャロルの『不思議の国のアリス』は、1865年に初版本が発行されて以来、今もなお世界中の人々を魅了し続けています。本展は、英国ヴィクトリア・アンド・アルバート博物館(V&A)発の国際巡回展です。V&Aが所蔵するジョン・テニエルの貴重な原画をはじめ、物語をモチーフにした映画やデザイン、舞台やファッションなど、約300点の作品をとおして、150年以上の長きにわたり愛され続ける『不思議の国のアリス』の魅力を紐解きます。 詳細はこちら プレスリリース提供元:@Press
2022年01月28日1870年創立、アメリカ最大の美術館のひとつであるメトロポリタン美術館は、先史時代から現代まで5000年以上にわたる世界各地の考古遺物・美術品 150万点余りを所蔵。そのヨーロッパ絵画部門に属する2500点余りの所蔵品から、珠玉の名画65点(うち46点が日本初公開!)を紹介する『メトロポリタン美術館展 西洋絵画の500年』の東京展が、2月9日(火)より国立新美術館にて開催される。フラ・アンジェリコ、ラファエロ、クラーナハ、ティツィアーノ、エル・グレコから、カラヴァッジョ、ジョルジュ・ド・ラ・トゥール、レンブラント、 フェルメール、ルーベンス、ベラスケス、プッサン、ヴァトー、ブーシェ、そしてゴヤ、ターナー、クールベ、マネ、モネ、ルノワール、ドガ、ゴーギャン、ゴッホ、セザンヌまで、15世紀の初期ルネサンスの絵画から19世紀のポスト印象派まで、西洋絵画の500年の歴史を彩った巨匠たちの傑作が一挙来日。3章構成で西洋絵画の変遷をたどる。今回、日本初公開として注目されるのが、ヨハネス・フェルメールの《信仰の寓意》。抽象的な概念を擬人化した「寓意画」で、「信仰」を擬人化した女性の姿が描かれている。 そのほか、エル・グレコ《羊飼いの礼拝》、カラヴァッジョ《音楽家たち》、ジョルジュ・ド・ラ・トゥール 《女占い師》など実に46点が日本初公開。珠玉の名画に会いにいきたい。フラ・アンジェリコ (本名 グイド・ディ・ピエトロ)《キリストの磔刑》 1420-23年頃 ニューヨーク、メトロポリタン美術館 Maitland F. Griggs Collection, Bequest of Maitland F. Griggs, 1943 / 43.98.5カラヴァッジョ(本名 ミケランジェロ・メリージ)《音楽家たち》1597年 ニューヨーク、メトロポリタン美術館 Rogers Fund, 1952 / 52.81ジョルジュ・ド・ラ・トゥール《女占い師》おそらく1630年代 ニューヨーク、メトロポリタン美術館 Rogers Fund, 1960 / 60.30ポール・セザンヌ《リンゴと洋ナシのある静物》1891-92年頃 ニューヨーク、メトロポリタン美術館 Bequest of Stephen C. Clark, 1960 / 61.101.3【開催概要】会場:国立新美術館 企画展示室1E会期:2022年2月9日(水)~5月30日(月)時間:10:00~18:00、金土は20:00(入場は閉館の30分前まで)休館日:火曜日(ただし、5月3日(火・祝)は開館)料金:一般2,100円、大学生1,400円 高校生1,000円※事前予約制(日時指定券)を導入展覧会公式サイト:
2022年01月25日国立文化財機構 文化財活用センター〈ぶんかつ〉は、令和5(2023)年度「国立博物館収蔵品貸与促進事業」実施対象館を募集します。本事業では、東京国立博物館・京都国立博物館・奈良国立博物館・九州国立博物館(いずれも国立文化財機構)が全国の美術館・博物館に対し、地域ゆかりの収蔵品を貸し出し、〈ぶんかつ〉が作品輸送費等を支出します。※令和5(2023)年4月下旬から令和6(2024)年3月末までに開催される展覧会が対象です。本事業によって、立地条件等により、これまで国立博物館の収蔵品に親しむ機会が限られていた地域に対し、文化財が広く公開されること、日本とアジアの歴史・伝統文化の発信、地域文化の創生、次世代への文化財の継承、観光振興につながることをめざします。募集チラシこれまでに23施設16都府県で貸与促進事業の展覧会が開催過去の事業実績(展覧会)はこちらから ◆事業内容<主な展覧会開催費用について>本事業では、次の費用を〈ぶんかつ〉が支出します。(1)国立博物館貸与品の梱包・開梱および展示・撤収作業にかかる費用(2)国立博物館から貸与先へおよび貸与先から国立博物館への本事業の貸与品の輸送にかかる費用(3)国立博物館貸与品の保険にかかる費用※詳細につきましては必ず申請要項をご確認ください。<以下のいずれかのカテゴリーへの申請が可能です。>(1)【大規模貸与】1申請につき21~50件の国立博物館収蔵品を貸与/各年度1~2か所を選定予定(2)【小規模貸与】1申請につき20件以内の国立博物館収蔵品を貸与/各年度4~5か所を選定予定<申請にあたっては、以下のいずれかの方法で借用希望作品リストを作成してください。>(方法1)国立博物館の収蔵品の中から申請館が自ら設定したテーマに沿って作品を自由に選択してリストを作成。(方法2)貸与可能作品が掲載されたリスト(a. 【日本考古】およびb. 【黒田】)を活用し、必要に応じてその他の国立博物館の収蔵品を加えてリストを作成。a. 【日本考古】東京国立博物館所蔵の各時代や地域を代表する日本考古資料の優品28件。(『申請要項』別紙1-(1)参照)貸与可能作品例左:深鉢形土器(縄文時代〔中期〕・前3000~前2000年、長野県伊那市宮ノ前出土)、中央:みみずく土偶(縄文時代〔晩期〕・前1000~前400年、埼玉県鴻巣市滝馬室出土)、右:埴輪 馬(古墳時代・6世紀、群馬県伊勢崎市下触町出土)※いずれも東京国立博物館所蔵b. 【黒田】東京国立博物館所蔵の黒田清輝の代表作12件。(『申請要項』別紙1-(2)参照)貸与可能作品例左:読書(明治24年〔1891〕)、中央:重要文化財 舞妓(明治26年〔1893〕)、右:重要文化財 湖畔(明治30年〔1897〕)※いずれも黒田清輝筆、東京国立博物館所蔵◆本事業の対象となる美術館・博物館について文化庁長官の承認を受けた公開承認施設および博物館法で定められた登録博物館、博物館相当施設であれば、公私立を問わずにご応募いただけます。貸与条件や事業内容の詳細ならびに申請方法につきましては、<ぶんかつ>WEB掲載の「2023(令和5)年度 国立博物館収蔵品貸与促進事業実施対象館申請要項」を必ずご確認ください。<ぶんかつ>WEB 2023年度 国立博物館収蔵品貸与促進事業 申請要項URL: 全国の美術館・博物館からのご応募をお待ちしております。◆これから開催される令和3(2021)年度「国立博物館収蔵品貸与促進事業」展覧会「やまと絵のしらべ ―帆山花乃舎と復古大和絵―」展 会場 : 桑名市博物館(三重県)会期 : 2022年1月22日(土) ~ 2022年2月27日(日)貸与件数 : 18件公式サイト: 見どころ : 桑名出身の帆山花乃舎(1823~1894)は、復古大和絵派の絵師として活躍した画僧です。花乃舎は内国勧業博覧会への作品出品で全国的に名声を高めた一方で、桑名萬古焼の再興に挑んだ初代森有節(1808~1882)に絵を教えるなど、地域文化と芸術の発展に大きな貢献を果たした人物でした。花乃舎が師事した浮田一けい(草かんむり+惠)(1795~1859)や渡辺清(1778~1861)、そして復古大和絵の祖である田中訥言(1767~1823)の作品など18件の文化財を、東京国立博物館ならびに京都国立博物館からお貸し出しし、花乃舎の画風の源流とその功績を紹介します。桑名市博物館「やまと絵のしらべ ―帆山花乃舎と復古大和絵―」展チラシ(令和3年度国立博物館収蔵品貸与促進事業)※最新情報は博物館の公式サイトなどでご確認ください。▼ぶんかつSNSYouTubeチャンネル : Instagram @cpcp_nich: Twitter @cpcp_nich : 詳細はこちら プレスリリース提供元:@Press
2022年01月11日西洋音楽史大図鑑[目次]■はじめにケイティ・ダーハム■イントロダクション■初期の音楽1000~1400年■ルネサンス1400~1600年■バロック1600~1750年■古典派1750~1820年■ロマン派1810~1920年■ナショナリズム1830~1920年■近代1900~1950年■現代[本書について]はじめて真の「オペラ」を書いたのは誰だろう?記譜法のシステムの起源はどこにあるのだろう?作曲家はどのように交響曲を作曲するのだろう?本書はこのような疑問をはじめとする多数の疑問に答えるべく、重要な音楽作品と、それが西洋のクラシック音楽の発展に与えた影響を探って分析し、初期の単旋聖歌の誕生から現代のミニマリズムの発展とさらにその先を追う。本書は、伝説的な作曲家、そしてあまり知られていない作曲家による90以上の作品をわかりやすい言葉で詳しく解説し、図表やイラストも交えながら、クラシック音楽の創造と受容の背後にある鍵となる概念と壮大な思想を一歩ずつ解き明かしていく。質の高い図鑑や事典で有名なイギリスのDorling Kindersleyが発刊する「BIG IDEAS SIMPLY EXPLAINED」シリーズの一冊。クラシックをたまに聴く程度の人も、熱烈なクラシック・ファンでも、本書を読めば興味をひかれ、クラシック音楽に対する理解が深まるだろう。ページサンプル(40~41ページ)ページサンプル(130~131ページ)商品詳細西洋音楽史大図鑑定価:4,840円(10%税込)仕様:B5変型判/352ページ発売日:2021年12月27日ISBN:978-4-636-97833-9商品コード:GTB01097833 amazonにてご予約受付中! : お求めは、全国ヤマハ特約楽器店・書店または弊社オンラインショップ >まで。【本商品に関するお問い合わせ】(株)ヤマハミュージックエンタテインメントホールディングス ミュージックメディア部問い合わせフォーム: 詳細はこちら プレスリリース提供元:NEWSCAST
2021年12月15日日本初のタロットカード美術館「東京タロット美術館」が、東京・浅草橋に誕生。2021年11月16日(火)よりオープンする。日本初!タロットカード専門の美術館「東京タロット美術館」は、日本で最初にタロットカードの輸入販売をはじめたニチユーが手掛ける、日本初のタロットカード専門美術館だ。ニチユーの直営施設としてオープンする美術館は、同社が保有する約3,000種類のタロットカードのコレクションをもとに、企画展示を実施。普段はなかなか出会えない希少なタロットカードの公開をはじめ、絶版品を含む約500種類のタロットカードの展示販売も常時実施する。ライブラリースペースを併設また併設のライブラリースぺースでは、約1,000種類のカードの絵柄をオリジナルのカタログで閲覧できるほか、カードサンプルや関連書籍も自由に読むことが可能。そのほか手土産にもぴったりなオリジナルグッズや、セレクト商品の販売も行われる。原画展示や占星術のセッションなどなお「東京タロット美術館」では、今後タロットカードの原画展をはじめ、タロットや占星術を用いた対面セッションなど、タロットにまつわる様々な企画を計画中。来館の際は日時指定の予約制となっているため、気になる人は是非チェックしてみてほしい。【詳細】「東京タロット美術館」オープン日:2021年11月16日(火)住所:東京都台東区柳橋2-4-2 Ubase浅草橋6階営業時間:平日 10:00~20:00、土曜日 9:00~18:00 ※公式ウェブサイトから予約制。入館料:500円定休日:日曜日(イベント開催日は除く)、祝日、年末年始、他季節休業有
2021年11月18日世界三大美術館のひとつで、創立150年の歴史を持つ、ニューヨークにあるメトロポリタン美術館。そのヨーロッパ絵画部門に属する2500点余りの所蔵品から、珠玉の名画65点(うち46点は日本初公開)を見ることができる『メトロポリタン美術館展 西洋絵画の500年』の大阪展が、大阪市立美術館で開幕した。大阪市立美術館外観大阪展展覧会場入口本展は、メトロポリタン美術館のヨーロッパ絵画部門が所蔵する2500点以上の中から、選りすぐりの作品で構成されている。古代や中世に多かった神話を描いた絵画や宗教画が、近世から近代に向かっていくと少なくなっていき、代わりに風景画、肖像画、静物画といったものが増えていった、という西洋絵画500年における絵画の主題の移り変わりを見ることができる。(左)エル・グレコ(本名ドメニコス・テオトコプーロス)《羊飼いの礼拝》1605-10年頃ニューヨーク、メトロポリタン美術館 Rogers Fund, 1905 / 05.42(右)ルカス・クラナーハ(父)《パリスの審判》1528年頃ニューヨーク、メトロポリタン美術館 Rogers Fund, 1928 / 28.221展覧会は3章で構成される。「第I章信仰とルネサンス」では、イタリアのフィレンツェで15世紀から16世紀にかけて隆盛したルネサンスを代表する名画が並ぶ。当時、油彩画が発明され、髪の毛の一本一本まで細かく描くことができるようになった。画家たちは、注文主からの依頼に加えて、自分たちに身近なものも描くようになった。作品をよく見ると、暗喩のように隠されたテーマが含まれていて、興味深い。(左)ハンス・ホルバイン(子)《ベネディクト・フォン・ヘルテンシュタイン(1495年頃-1522年)》1517年ニューヨーク、メトロポリタン美術館 Rogers Fund, aided by subscribers, 1906 / 06.1038(右)ピエロ・ディ・コジモ(本名 ピエロ・ディ・ロレンツォ・ディ・ピエロ・ダントニオ)《狩りの場面》1494-1500年頃ニューヨーク、メトロポリタン美術館 Gift of Robert Gordon, 1875 / 75.7.2「第II章絶対主義と啓蒙主義の時代」では、ヨーロッパ各国で絶対主義体制が強化された17世紀から、啓蒙思想が隆盛した18世紀にかけて、各国で活躍した巨匠たちの作品を紹介する。(左)ベラスケスと工房(1623-60年)《オリバーレス伯公爵ガスパール・デ・グスマン(1587-1645年)》1636年頃/以降ニューヨーク、メトロポリタン美術館 Fletcher Fund, 1952 / 52.125(中)ペーテル・パウル・ルーベンス《聖家族と聖フランチェスコ、聖アンナ、幼い洗礼者聖ヨハネ》1630年代初頭/中頃ニューヨーク、メトロポリタン美術館 Gift of James Henry Smith, 1902 / 02.24 (右)グイド・カニャッチ《クレオパトラの死》1645-55年頃ニューヨーク、メトロポリタン美術館 Purchase, Diane Burke Gift, Gift of J. Pierpont Morgan, by exchange, Friends of European Paintings Gifts, Gwynne Andrews Fund, Lila Acheson Wallace, Charles and Jessie Price, and Álvaro Saieh Bendeck Gifts, Gift and Bequest of George Blumenthal and Fletcher Fund, by exchange, and Michel David-Weill Gift, 2016 / 2016.63世界中に30数点しかないフェルメールの作品のうち、《信仰の寓意》が日本初公開。当時プロテスタントを公認宗教としたオランダ共和国で、結婚を機にカトリックに改宗したフェルメールがこの作品を描くことで、信仰を擬人化したのであろう。そのフェルメールの右隣には、レンブラントが新妻を女神にたとえて描いたといわれる《フローラ》が並び、オランダ絵画の到達点を感じることができる。(左)ヨハネス・フェルメール《信仰の寓意》1670-72年頃ニューヨーク、メトロポリタン美術館 The Friedsam Collection, Bequest of Michael Friedsam, 1931 / 32.100.18(中)レンブラント・ファン・レイン《フローラ》1654年頃ニューヨーク、メトロポリタン美術館 Gift of Archer M. Huntington, in memory of his father, Collis Potter Huntington, 1926 / 26.101.10展覧会フライヤーにも使われている、カラヴァッジョの《音楽家たち》。カラヴァッジョの最初のパトロン、デル・モンテ枢機卿の館で開かれていた音楽や演劇の集いや、そこに集まる若者たちをモデルに描いたと思われる。右から2番目はカラヴァッジョの自画像と言われているが、左端には羽根の生えたキューピッドが描かれているところを見ると、これは現実を表現したものではなさそうだ。(左)カラヴァッジョ(本名 ミケランジェロ・メリージ)《音楽家たち》1597年ニューヨーク、メトロポリタン美術館 Rogers Fund, 1952 / 52.81(右)シモン・ヴーエ《ギターを弾く女性》1618年頃ニューヨーク、メトロポリタン美術館 Purchase, 2017 Benefit Fund; Lila Acheson Wallace Gift; Mary Trumbull Adams and Victor Wilbour Memorial Funds; Friends of European Paintings and Henry and Lucy Moses Fund Inc. Gifts; Gift of Julia A. Berwind, by exchange; Charles and Jessie Price, Otto Naumann, Mr. and Mrs. Richard L. Chilton Jr., and Sally and Howard Lepow Gifts; Charles B. Curtis Fund; and Theodocia and Joseph Arkus Gift, 2017 / 2017.242そして「第III章革命と人々のための芸術」では、近代化の波が押し寄せた、19世紀の画家たちの作品を見ることができる。当時の画家たちは、光にあふれた風景を描き、世界の見方を変えた。(左)ポール・ゴーギャン《タヒチの風景》1892年ニューヨーク、メトロポリタン美術館 Anonymous Gift, 1939 / 39.182(右)フィンセント・ファン・ゴッホ《花咲く果樹園》1888年ニューヨーク、メトロポリタン美術館 The Mr. and Mrs. Henry Ittleson Jr. Purchase Fund, 1956 / 56.13(左)ポール・セザンヌ《リンゴと洋ナシのある静物》1891-92年頃ニューヨーク、メトロポリタン美術館 Bequest of Stephen C. Clark, 1960 / 61.101.3(中)ポール・セザンヌ《ガルダンヌ》1885-86年ニューヨーク、メトロポリタン美術館 Gift of Dr. and Mrs. Franz H. Hirschland, 1957 / 57.181(右)エドガー・ドガ《踊り子たち、ピンクと緑》1890年頃ニューヨーク、メトロポリタン美術館H. O. Havemeyer Collection, Bequest of Mrs. H. O. Havemeyer, 1929 / 29.100.42セザンヌは、観察から得た生き生きとした感覚をカンヴァスに再現することに挑み続けた。また、ドガは好んで踊り子を多く描いた。クローズアップや切断されたような構図は、当時人気のあった浮世絵や19世紀に発展した写真の影響が感じられる。(左)オーギュスト・ルノワール《ヒナギクを持つ少女》1889年ニューヨーク、メトロポリタン美術館 The Mr. and Mrs. Henry Ittleson Jr. Purchase Fund, 1959 / 59.21(右)オーギュスト・ルノワール《海辺にて》1883年ニューヨーク、メトロポリタン美術館 H. O. Havemeyer Collection, Bequest of Mrs. H. O. Havemeyer, 1929 / 29.100.125西洋絵画の500年を壮観できるというぜいたくさだけでなく、作品ひとつひとつが持つ魅力を大きく感じ取ることができる、とても見ごたえのある展覧会だ。2022年2月9日(水)~5月30日(月)、東京の国立新美術館に巡回予定。ぜひ美術館に行って、作品を味わってほしい。取材・文:藤田千彩【開催概要】●大阪展大阪市立美術館2021年11月13日(土)~2022年1月16日(日)●東京展国立新美術館 企画展示室1E2022年2月9日(水)~5月30日(月)●公式サイト:
2021年11月16日2017年に約30年間活動した旧八戸市美術館が閉館し、生まれ変わった八戸市美術館が11月3日(水・祝)にオープンした。新しい美術館は、建築家の佐藤慎也館長のもとに「種を蒔き、人を育み、100年後の八戸を創造する美術館〜出会いと学びのアートファーム〜」をコンセプトとしている。「もの」としての美術品展示を中心とした従来の美術館とは異なり、アートを介した人の活動に焦点を当て、「もの」や「こと」を生み出す新しい形の美術館となる。同館では、美術館活動に主体的に関わる人を「アートファーマー」、美術館活動を一緒に行う市民や団体、教育機関、企業などを「共創パートナー」と呼ぶ。アーティストや美術館スタッフ、市内外から訪れる多様な人々がともに活動し、新たな文化が創造され、八戸市全体の活性化にもつながることを目指している。テープカット。手前が佐藤慎也館長、隣が開館記念「ギフト、ギフト」のディレクター、吉川由美。老朽化していた建物は、西澤徹夫建築事務所・タカバンスタジオ設計共同体によって全面的に建て替えられた。美術館を象徴する面積約834㎡、天井高約17mの巨大空間「ジャイアントルーム」では、プロジェクトで話し合ったり、つくったり、ライブイベントが行われたりと、多様な動きが同時多発的に起こる。9mのカーテンや家具で自在に空間を仕切ることができるジャイアントルーム。また、展覧会を行う「ホワイトキューブ」やコレクションを展示する「コレクションラボ」、映像展示に適した「ブラックキューブ」、パフォーミングアーツや展示、講演を行う「スタジオ」など、それぞれの機能に特化した「個室群」が並ぶ。その時々でこれらの部屋を自由に組み合わせることも可能だ。開館記念「ギフト、ギフト、」は、アートプロデューサーの吉川由美をディレクターに迎え、八戸のシンボル「八戸三社大祭」を出発点として企画された。9組のアーティストと、共創パートナー「八戸クリニック街かどミュージアム」の浮世絵コレクションからなる展覧会、向井山朋子によるパフォーマンスプロジェクトで構成されている。八戸では、お年寄りから子どもまでが山車造りに参加するなど、世代を超えて祭りが受け継がれている。そうした創造活動を、過去から未来へ、人から人へと循環する「贈与」=ギフトとして展覧会が構想された。大西幹夫「八戸三社大祭絵巻」展示風景切り絵作家、大西幹夫が八戸三社大祭300年の歴史を描いた「八戸三社大祭絵巻」の切り絵とアニメーション映像から始まり、写真家の浅田政志が祭りを支えるコミュニティを撮影した写真群へと続く。山車からイメージを膨らませた桝本佳子の陶器や半磁器。田附勝が八戸発祥といわれるデコトラ(電飾で飾ったトラック)を撮影した写真。いずれも八戸を賑わす音や声が聴こえてくるようだ。浅田政志の新作写真14点と膨大なスナップ写真(市民より提供)を展示桝本佳子《波濤/皿》2021年田附勝が撮影したデコトラ写真の展示風景三社大祭に使われた山車彫刻を、市民から集めた柄毛布で包み、彩った江頭誠のインスタレーションは圧倒的だ。また、美術館を建築した西澤徹夫、浅子佳英、森純平がアーティストとしても参加。八戸の文化をリサーチして制作した「八戸文化資源相関図」では、漁業や遊郭、消防屯所などの解説の合間に、八戸市美術館の所蔵作品が組み込まれている。また、田村友一郎、KOSUGE1-16が現代社会の中のギフトのありように問いを投げかけてもいた。江頭誠《おやすみのあと》2021年西澤徹夫、浅子佳英、森純平《八戸文化資源相関図》展示風景KOSUGE 1-16《インバウンドおじさん》2021年八戸を知ることから、日本及び世界にも通じる問題や提案が、明るさやユーモアを交えて表現された展覧会だった。今後、美術館にどのような景色が繰り広げられていくのか楽しみだ。取材・文・撮影(外観以外):白坂由里【開催情報】『八戸市美術館開館記念「ギフト、ギフト、」』11月3日(水・祝)~2022年2月20日、八戸市美術館にて開催
2021年11月15日19世紀後半、日本からやってきた美術工芸品はヨーロッパに衝撃と熱狂を巻き起こし、「ジャポニスム」と呼ばれる流行のスタイルが誕生した。パナソニック汐留美術館で12月19日(日)まで開催されている『ブダペスト国立工芸美術館名品展 ジャポニスムからアール・ヌーヴォーへ』では、ジャポニスムとアール・ヌーヴォーをテーマに、ブダペスト国立工芸美術館のコレクションを紹介する。古くからヨーロッパでは日本や中国の工芸品を憧憬の的として扱ってきた。漆器類は16世紀後半から盛んに輸出されていたし、繊細で色鮮やかな有田焼は17世紀からはじまり、装飾や形状などヨーロッパの多くの窯が手本としてきた。そして19世紀後半、各地で開催された万国博覧会などをきっかけに日本の美術工芸品がヨーロッパに大量に流入。人々は熱狂し、工芸品やデザインに日本の影響が色濃く出た、いわゆる「ジャポニスム」、そしてアール・ヌーヴォーの源泉となっていく。展覧会エントランス本展は、日本の美術工芸品が西洋にどのような影響を与えたのかを、ブダペスト国立工芸美術館の名品でたどっていくものだ。ブダペスト国立工芸美術館は、ハンガリーの首都ブダペストに1872年に創立された美術館。国内外の第一級の工芸品を収集していることで知られ、アール・ヌーヴォーのコレクションは1900年のパリ万国博覧会や、館内で毎年開催されていたクリスマス展覧会で買い上げた作品によって築かれている。(左)イギリス ミントン社《葡萄に蝶蜉蝣文飾皿》1877年頃(中)イギリスミントン社 デジレ・ルロイ《鼻に燕と蝶文飾皿》1877年頃(右)フランス ジョセル=テオドール・デック《菊花に蝶文皿》1877〜1878年展覧会は6章構成。「第1章自然への回帰 -歴史主義からジャポニスムへ」では日本や東洋の影響を強く受けた工芸品を、「第2章日本工芸を源泉として -触感的なかたちと表面」では、東洋の陶磁器で用いられている釉薬や顔料の使い方に影響を受けた工芸品を、それぞれ紹介している。窯の中で偶然起こった変化を尊ぶ東洋の陶磁器の価値観は、意匠や装飾に合わせ釉薬や顔料を配合した完全な仕上がりのものを高く評価するヨーロッパの人々の目にはとても新鮮に映ったようだ。作陶家や窯は、東洋の陶磁器の色や斑紋の組み合わせなどを参考に、さまざまな釉薬の実験を重ねていく(左)フランス グラティニー製陶所 銀製台:リュシアン・ガイヤール《銀製台付き花器》1899〜1900年 (右)花器:日本の茶入(瀬戸、17世紀)台:フランス ポール&アンリ・ヴェヴェール《銀製葉形飾付き花器》(左)ハンガリー ジョルナイ陶磁器製作所《結晶釉花器》1902年(右)ハンガリー ジョルナイ陶磁器製作所《結晶釉飾坪》1900年続く「第3章アール・ヌーヴォーの精華 -ジャポニスムを源流として」は展覧会のメインとなるセクション。ジャポニスムを源泉のひとつとして発展したアール・ヌーヴォーの作品群を丁寧に紹介していく。3章は花、鳥と動物自然をモチーフにした作品のほか、独自の製法で鮮やかな輝きを見せるガラス作品、伝統的な装飾モチーフなど、アール・ヌーヴォーという様式のなかにさまざまなバリエーションがあることが見てとれる。(左)ルグラ・ガラス工場 デザイン・制作:フランソワ=テオドール・ルグラ 《野蔓葡萄枝文花器》1900年頃(右)ルグラ・ガラス工場 デザイン・制作:フランソワ=テオドール・ルグラ 《苺枝文花器》(2点とも) ハンガリー ジョルナイ陶磁器製造所 成形デザイン:シャーンドル・アパーティ・アブト図案デザイン:ラヨシュ・マック《レリーフ飾水差》1903年本展は、ミントン社やエミール・ガレ、ドーム兄弟にルイス・カンフォート・ティファニーなど名だたる陶磁器、ガラス工房の作品が出展されているほか、ハンガリーの名窯、ジョルナイ陶磁器製造所の作品も多数出品されているのが見どころのひとつ。《葡萄新芽文花器》などに使われた玉虫色に輝くエオシン彩は本製造所が開発した装飾技法で人気を博した。(右)ジョルナイ陶磁器製造所 絵付け:ユーリア・ジョルナイ《蔦蔓葡萄文花器》1910年頃(左)ジョルナイ陶磁器製造所《葡萄新芽文花器》 1898年-1899年下の写真の花器もジョルナイ陶磁器製造所の制作。右が日本趣味文様花器、左がハンガリー民芸文様花器と銘打たれている。日本美術のさまざまな文様を取り入れ、自分たちのものにしているところが非常に興味深い。(2点とも)ジョルナイ陶磁器製造所 成形デザイン:シャーンドル・アパーティ・アブト《花瓶 右:日本趣味文様花器 左:ハンガリー民芸文様花器》1903年そして、日本の美術工芸の影響は、陶磁器やガラスだけにとどまらない。壁を装飾するタイルもまた日本の影響を受け、意匠や釉薬の使い方などに変化が現れていた。「第4章建築の中の装飾陶板 -1900年パリ万博のビゴ・パビリオン」では、1900年開催のパリ万国博覧会のために作られた装飾陶板を展示する。(上)フランス ビゴ社《蔓葉図台座フリースタイル(ビゴ・パビリオンの一部)》1898年〜1900年(下)ハンガリージョルナイ陶磁器製造所 デザイン:ヤーノシュ・バッハ《蔓花図フリースタイル-建築用陶器》アール・ヌーヴォーが植物の有機的な動きを文様にした一方で、植物を用いながらも直線的、幾何学的な様式に発展させたのが、ドイツ語圏で発展したユーゲントシュティールだ。「第5章もうひとつのアール・ヌーヴォー -ユーゲントシュティール」では、アール・ヌーヴォーとは趣きが異なる様式を紹介する。(左) 《樹文花器》ビレロイ&ボッホ製陶所 1903年 (右)ビレロイ&ボッホ製陶所デザイン:ヨーゼフ・マリア・オルブリッヒ《オルガ・ブラウエ食器セット》 1906年頃日本の影響を強く受けて生まれたアール・ヌーヴォーに続く様式がアール・デコだ。最終章となる「第6章アール・デコとジャポニスム」では、このアール・デコ様式も日本の影響を受けていることをガラス器などから検証していく。(左)フランスドーム兄弟《フローティングペイント鉢》1925〜1930年(中)フランス ガブリエル・アルジー=ルソー《蝶文鉢》1915年(右)フランスドーム兄弟《金箔付花瓶》1925〜1930年本展は約170件の作品をもって19世紀から20世紀までのヨーロッパ工芸における日本の影響を辿ることができる貴重な展覧会。日本の美の概念を、ヨーロッパの人たちがどのように受け入れ、発展させていった道のりを楽しんでみよう。取材・文:浦島茂世【開催情報】『ブダペスト国立工芸美術館名品展 ジャポニスムからアール・ヌーヴォーへ』2021年10月9日(土)~12月19日(日)、パナソニック汐留美術館にて開催※日時指定予約制
2021年10月22日新国立劇場で上演される『イロアセル』(作・演出:倉持裕)と『あーぶくたった、にいたった』(作:別役実/演出:西沢栄治)の合同取材会が開催され、新国立劇場芸術監督の小川絵梨子、倉持、西沢の3名が出席。『イロアセル』は「フルオーディション企画」の第4弾、『あーぶくたった、にいたった』は「こつこつプロジェクト─ディベロップメント─」第一期から生まれた作品で、ともに小川が芸術監督就任の際に打ち出した三つの柱の一つ、「演劇システムの実験と開拓」を実践する企画だ。3名がこの2つの企画について語った。2018年に新国立劇場の演劇芸術監督に就任した小川だが、フルオーディションによるキャスティング、1年間を通して少しずつ作品を育てていく「こつこつプロジェクト」は、どちらも「(芸術監督への)就任の理由」と語るほどの強い思いをもって、進めてきた企画である。小川絵梨子小川自身、アメリカで演劇を学んだこともあって「(欧米では)オーディションが日常茶飯事。『やりたい』と思った方が受けて、作り手は作品に合った方と作ることができる。シンプルで健康的なものの作り方だと思います」と、演じる側、作り手双方にとってのメリットを強調。実際に進めていく中で「試行錯誤の連続です」と語りつつも、「稽古が始まると稽古場が非常にフラットで、気後れや遠慮がなく、風通しが良いし、よいチーム感がすぐに立ち上がる感じがしています。贅沢で豊かな、創造性の高い現場を作れていることを実感しています」と手応えを明かす。役を役者に寄せるのではなく、役者が役に寄っていく作り方『イロアセル』作・演出の倉持は、現状の商業演劇におけるキャスティングが「知名度や集客力」という基準で行われていることが多いとし、「でも、そういう方法に偏ってしまうと、その時に旬な俳優を選ぶことになるので、結果、(どの作品も)似た俳優ばかりになってしまう」と指摘。元々、フルオーディションに興味を持っていたという倉持は、フルオーディション企画の第1弾として新国立劇場で上演された『かもめ』を鑑賞し、「役を役者に寄せるのではなく、役者が役に寄っていく作り方をしているのを感じました。余計なことを考えず、フラットに作品を観ることができて、それは当たり前のことなんだけど、新鮮に感じました。普段、有名な役者の芝居を観ることが多くて、(自身が)役者への批評みたいな目線で見ることが多かったと気づきました」と自省を込めつつ、フルオーディションだからこその“作品本位”による作り方のメリットを口にする。倉持裕一方で、実際のオーディションでは選考に頭を悩ませる部分も多かったよう。「やってみたら大変でした(苦笑)。死ぬ気で役を獲りに来ている人間のエネルギーはすごいです。普段は頭の中で決めるんですが、オーディションだと役者が発信してくれるので、想定外のことがたくさん起こって楽しい経験でした。最終審査になるにつれて、甲乙つけがたい役者が増えて、『どっちもいい。でもどっちか決めないと……』となってくる。この人を選ぶなら、(こっちの役は)この人も……という組み合わせが出てきて、作品の方向性をオーディションの段階で決めないといけなくなるんですね」とつらい決断を振り返った。『イロアセル』チラシ(4種類)物語の舞台はある島。そこで暮らす人々が発する言葉には独自の“色”がついており、誰が何を話したかがすぐに特定されてしまう。ところが、島民たちが自分の言葉に色がつかない手段を手に入れたことで、これまで覆い隠されてきた人々の本音や人間性が露わになっていくさまが描き出される。10年前に新国立劇場での上演のために倉持が書き下ろした戯曲であり(※10年前は鵜山仁が演出を担当)、SNSをはじめとする匿名の書き込みが持つ特異性を鋭く問う本作。倉持は「(初演から)10年が経って、コロナもあって匿名の言葉が塊になって一方向にドンと進んだりして、偏りがすごいし、“敵”を見つけたらそこを攻めていくという現象も激しくなっている。権力の側も、その匿名の言葉の塊を利用するようになっているのを肌で感じますし、これはいま、やることで感じることがあるんじゃないかと思いました」と物語が持つ“現代性”についても言及した。演劇という文化の未来のために、公共劇場だからこそできること「こつこつプロジェクト」は「作り手が、通常の1か月の稽古ではできないことを試し、作り、壊して、また作る場にしたい。」という小川の意を受けて発足した、1年を通して作品を育てていくというプロジェクト。第一期として『あーぶくたった、にいたった』、『スペインの戯曲』(演出:大澤遊)、『リチャード三世』(構成・演出:西悟志)の3作が2019年3月にスタートし、リーディング公演、1st試演会、2nd試演会、3rd試演会と、途中でコロナ禍の影響を受けつつも、1年にわたってトライ&エラーを積み重ねてきた。『あーぶくたった、にいたった』2020年3月3rd試演会より小川は「通常、プロデュース公演の場合、(稽古期間が)約1か月という制約があり、どうしても『何とか初日を迎えるために』という意識になっているんじゃないか? と思っていました。1年を通して稽古を積み重ねていくことで、作品の強度や豊かさを高めていくという作業は贅沢ですが、そこから学ぶこと、知ることが多く、作品への理解度が圧倒的に変わっていくんです」と時間をかけて、作品を作っていくことの意義を語る。西沢栄治西沢は実際に1年にわたってひとつの作品に取り組み、「稽古と発表を重ねていくうちに芝居の強度が上がっていくし、毎回発見もあり、1回目の発表ではわからなかったところに到達できた気がします」と充実した表情を見せる。今回、その成果を観客の前で上演することになったが、もし新国立劇場で上演することができなかったとしても「絶対に別の場所で上演していたと思います」と語り、公共の劇場だからこそ可能な同プロジェクトであるが、「新国立劇場だけに還元されるのではなく、演劇界全体に幅広く貢献していくことになると思う」と目先の利益にとらわれず、じっくりと作品を作り上げていく、こうした企画の必要性を訴えた。小川は西沢の言葉に深くうなずき、演劇という文化の未来のために、「場所」「空間」「時間」「お金」をきちんと提供することの重要性を改めて強調。「すぐに成果につながらないと難しいのはわかるんですけど、焦り過ぎて失うものもたくさんあります」と語った。『あーぶくたった、にいたった』チラシ『あーぶくたった、にいたった』は、別役実が昭和の“小市民”の姿を鮮やかに描写した傑作。西沢は今回の企画で初めて同戯曲に触れ、「不条理と言われるけど、アクロバティックな迷宮が潜んでいて、これは迷い甲斐があるなと思いました。『風が出てきた』『運動会が終ったんだよ』というセリフがあるんですが、オリンピック、パラリンピックが終わって、我々は何を見るのか? 何を置き去りにしてきたのか? 僕なりの“日本人論”みたいなものにたどり着けたらと思っております」と本格的な稽古の開始を前にしての意気込みを口にした。取材・撮影(会見写真)・文:黒豆直樹■『イロアセル』作・演出:倉持裕出演:伊藤正之東風万智子高木 稟永岡 佑永田 凜西ノ園達大箱田暁史福原稚菜山崎清介山下容莉枝2021年11月7日(日)プレビュー公演2021年11月11日(日)~2021年11月28日(木)会場:東京・新国立劇場 小劇場★9月26日(日)10:00よりチケット先行発売!■『あーぶくたった、にいたった』作:別役実演出:西沢栄治出演:山森大輔浅野令子木下藤次郎稲川実代子龍 昇2021年12月7日(火)~2021年12月19日(日)会場:東京・新国立劇場 小劇場チケット情報
2021年09月24日10月の「アジア オーケストラ ウィーク」でセントラル愛知交響楽団を振るのは常任指揮者・角田鋼亮。東洋と西洋を複眼的に対照するプログラムだ。[7日(木)東京オペラシティ]取り上げるのは、山田耕筰の《序曲》、貴志康一の《ヴァイオリン協奏曲》、アルヴォ・ペルトの《東洋と西洋》、そしてドビュッシーの《海》。「山田耕筰の《序曲》は、どのフレーズも上行型で始まり、ポジティブな雰囲気があります。日本人初の管弦楽曲という事で、ニ長調の明るい響きに祝祭性を込めたのだと思います。貴志康一の《ヴァイオリン協奏曲》は、当初は和楽器を入れた編成だったらしいのですが、最終的には西洋の楽器だけで和の響きを追求、再現した作品です。独奏は辻彩奈さん。旋律を完全にご自身の言葉や歌として、叙情的に演奏して下さる素晴らしいヴァイオリニストです。」日本の洋楽黎明期と普及期、2世代ほど年齢の違う二人の作曲家。西洋音楽と対峙するスタンスも異なるのが興味深いという。「二人ともベルリンで、その前の時代の音楽に影響を受けているんですけれども、山田耕筰はとにかくそれらの音楽に近付こうとしていた。ベートーヴェン、シューベルトやR.シュトラウスなどの書法を真似る事で、一度自分の言語として、そこからどう自分の個性を出していくか考えた。貴志康一は、日本の感情を西洋の人の心に寄せていく事が大事だと言ってはいるのですが、むしろ西洋音楽を自分の慣れ親しんだ音楽に引き寄せている感じがあります。私もベルリンに留学していましたが、彼らの両方の面を大事にしたいと思いながら、過ごしていました。ヨーロッパの文化を学ぶと同時に、そこにないものはなんだろうとも考えていました。」プログラム後半のペルトやドビュッシーは、西洋音楽から離れようとしていたのではないかと語る。「それまでの西洋音楽の流れの中で作曲していても新しい表現は生まれないと考えて、伝統的な音楽表現に則るのとは別の方向を探した。ドビュッシーの場合は東洋的な五音音階が入ってきたり、ペルトの場合は西洋音楽が形作られる前の時代に戻って、もっと人の心の深いところに入っていったり。ペルトの楽譜には西方教会、東方教会でも用いられているニカイア信条(クレド)のテキストが書き込まれています。東も西もなく、ひとつに融合できるというマインドが背景にあったのではないでしょうか。今回の4つの作品は、西洋音楽に対するアプローチがそれぞれ異なるという事が感じられる、興味深いプログラムかと思います。」(宮本明)
2021年09月17日日本一高いビル「あべのハルカス」16階の「あべのハルカス美術館」では、日本美術や西洋美術、現代アートなど多彩な展覧会を開催しています。2021年度後半は9月より「tupera tupera のかおてん.」、11月より「コレクター福富太郎の眼」、1月より「イスラエル博物館所蔵 印象派・光の系譜」の開催を予定しております。(既報のとおり。詳細は別紙参照)上記3本の展覧会に続き、新たに2022年度前半に開催する展覧会が決定しましたのでお知らせします。「庵野秀明展」会 期 :2022年4月16日(土)~6月19日(日)開 催 趣 旨 :総監督を務めた最新作「シン・エヴァンゲリオン劇場版」が、興行収入100億円を突破し、今なお記録を伸ばし続けている庵野秀明。本展は、アニメーター時代に参加した過去作品や、監督、プロデューサーとして活躍する最新の仕事までを網羅し、創作活動の秘密に迫ります。自身の原点となった「アニメ」「特撮」作品の貴重な原画やミニチュアなどをはじめ、アマチュア時代から現在までの直筆の膨大なメモやイラスト、独自の映像作りに欠かせない脚本、設定、イメージスケッチ、画コンテ、レイアウト、原画からミニチュアセットに至るまで多彩な制作資料を余すところなく展示する世界初の展覧会です。「出版120周年 ピーターラビット展」会 期 :2022年7月2日(土)~9月4日(日)共 催 :朝日新聞社、関西テレビ放送、東映開 催 趣 旨 :今なお世界中で愛され続けるいたずらなうさぎ、ピーターラビット(TM)。作者のビアトリクス・ポターTMによって紡ぎ出され、ロンドンのフレデリック・ウォーン社から出版された物語は、2022年に出版120周年を迎えます。本展は、ピーターラビット誕生前夜から今日に至るまでの歩みを作品や資料合わせて約170点から振り返るものです。物語の原点である絵手紙と、『ピーターラビットのおはなし』の彩色原画全点が一堂に展示されるのは日本初の機会となります。 詳細はこちら プレスリリース提供元:@Press
2021年09月03日日本でも屈指の西洋絵画コレクションを誇るポーラ美術館から、特に人気の高いモネ、ルノワール、シャガールといったフランスで活躍した画家たちを紹介する展覧会『ポーラ美術館コレクション展 甘美なるフランス』が、9月18日(土)よりBunkamura ザ・ミュージアムにて開催される。同展は、時代を映すファッショナブルな「女性像」、近代化によって大きく変貌する「パリ」、画家たちが旅先で出会った風景や、南仏など重要な制作地をめぐる「旅」の3つをテーマに構成。フランスが芸術的に輝いていた19世紀後半から20世紀前半にかけて、甘美なるフランス(La Douce France)は、絵画のなかでどのように表現されたのか?印象派からエコール・ド・パリの時代にフランスで活躍した画家28名による絵画74点が紹介されるほか、アール・ヌーヴォーとアール・ デコの化粧道具12件を展示。都会的洗練による上質な生活や豊かな日常、そして風光明媚な土地が描かれ作品群で、画家たちに時代や様式を超えて受け継がれる美意識を浮き彫りにしていく。クロード・モネ≪睡蓮≫1907年アンリ・マティス≪襟巻の女≫1936年エミール・ガレ≪女神文香水瓶≫1884年【開催概要】会期:2021年9月18日(土)~11月23日(火・祝)会場:Bunkamura ザ・ミュージアム時間:10:00~18:00、金土は21:00(入館は閉館30分前まで)※金・土の夜間開館につきましては、状況により変更になる可能性あり。休館日:9月28日(火)、10月26日(火)料金:当日一般1,700円、大高1,000円、中小700円/前売一般1,500円、 大高800円/ 中小500円公式サイト: ※会期中のすべての土日祝および11月15日(月)~11月23日(火・祝)は【オンラインによる入場日時予約】が必要
2021年08月25日熊本市現代美術館は、展覧会「こわいな!恐怖の美術館」を2021年9月25日(土)から12月5日(日)まで開催する。“恐怖や不安”をアートを通して受け止める「こわいな!恐怖の美術館 展」は、無意識を揺さぶる恐怖や不安を理知的に受け止め、「それ(恐怖や不安)」をテーマにした作品を紹介する展覧会。本展では、天災や疫病など、日常生活の様々なところに偏在する多様な“恐怖と不安”を、人間の持つ自然な感情の1つとして捉え、作品として昇華したアーティスト達の独自のセンスとユーモアを体感できる。作品を通して、恐怖や不安に対する発想の転換や、“こわい”ことに向き合って新たなアイデアを促すポジティブな内容となっている。“恐怖”から“安心”までのお化け屋敷体験迷路のような「お化け屋敷」に象徴されるように、出口がどこかわからない“恐怖”を体感できるのが、会場入口に登場する「南無サンダーの演劇お化け屋敷@大學湯」。恐怖と不安を抱えながら出口を目指し、最後に「あー怖かったね」と安心するまでの“お化け屋敷体験”をセットで楽しめる。尚、「お化け屋敷」が苦手な人には回避ルートも用意する。また、屋敷という場所そのものが悪しき場所であり「化け物」だととらえる西洋型お化け屋敷を見て取れる、オディロン・ルドンが描いた幽霊屋敷の絵画作品、出口の見えなさを“行き止まり”で表現した浜田知明の《行き止まり》なども登場する。恐怖の対象を可視化する「お化け」人々は、得体のしれない“恐怖の対象”に不安を感じ、「お化け」という可視化された存在を求める心情を持っている。実際に、江戸時代から伝わる怪談「百物語」や、都市伝説上の口裂け女、人面犬、人面魚、疫病除けのアマビエなど、数々の「お化け」を定義することで、不可解な存在を受け止めて理解しようしてきた。そんな人々の心情に共鳴するかのような、“得体のしれないもの”に形を与えた田名網敬一や浜田知明の立体作品などが登場する。恐怖と結びつく暗闇、夜の時間さらに、恐怖をあおる暗闇や、ホラー映画で恐怖の出来事が起こる“夜の時間”に着目した作品も展示。薄暗いタッチで描かれた暗闇の作品を紹介する一方で、恐怖とは対照的な“夜の楽しさ”を思わせる田名網敬一のカラフルアートや夜をモチーフにしたコーダ・ヨーコの「ヨルのキオク」シリーズなども登場。様々な真夜中のイメージを目の当たりにすることができる。【詳細】こわいな!恐怖の美術館開催期間:2021年9月25日(土)~12月5日(日)会場:熊本市現代美術館 ギャラリーⅠ・Ⅱ住所:熊本県熊本市中央区上通町2-3 びぷれす熊日会館 3階休館日:火曜日、11月24日(水) ※ただし11月23日は開館開館時間:10:00~20:00(展覧会入場は19:30まで)観覧料:一般 1,100(900)円、シニア(65歳以上) 900(700)円、学生(高校生以上) 600(500)円、中学生以下 無料※( )内は前売/20名以上の団体/各種障害者手帳を提示した人と付き添い1名(身体障害者手帳、療育手帳、精神障害者保健福祉手帳、被爆者健康手帳等)、電車・バス1日乗車券、JAF会員証、緑のじゅうたんサポーター証/美術館友の会証を呈示した人。前売の販売は9月24日(金)まで。※10月10日(日)は熊本市現代美術館開館記念日を祝して入場無料。チケット取扱い:熊本市現代美術館、イープラス(e+)、ローソンチケット“ローチケ”[Lコード:81992]、セブンチケット[セブンコード:090-328]※開催内容の変更、入場制限の実施などの可能性あり。最新情報は、公式ホームページを確認。【問い合わせ先】熊本市現代美術館TEL:096-278-7500
2021年08月13日展覧会「WHO ARE WE 観察と発見の生物学国立科学博物館収蔵庫コレクション|Vol.01 哺乳類」が、大分県立美術館にて、2021年7月22日(木・祝)から9月12日(日)まで開催される。動物の剥製をめぐる“観察と発見”国立科学博物館の収蔵庫には、約480万点もの標本が保管されているものの、その多くは普段は公開されていない。本展では、そのうち世界屈指の動物標本コレクションとして知られる「ヨシモトコレクション」を中心に、選りすぐりの哺乳類の標本を紹介する。生物の形は長い進化の歴史の成果である。その歴史の「ある一時」を切り取った動物の剥製を観察することで、環境の適応による動物の生き様や多様性の複雑さ、そして自然が創り出した美しさを知ることができる。本展では、「観察の眼、発見の芽」をテーマに、動物の剥製1点1点を“美術作品のように観察する”という方法で展示。標本についての解説でなく、観察の「視点」を提示することで、ほかの動物との共通点や、現代の人びとの日常とのつながりの発見を促す構成となっている。展覧会概要展覧会「WHO ARE WE 観察と発見の生物学国立科学博物館収蔵庫コレクション|Vol.01 哺乳類」会期:2021年7月22日(木・祝)〜9月12日(日)会場:大分県立美術館 3階 コレクション展示室住所:大分県大分市寿町2-1開館時間:10:00〜19:00(金・土曜日は20:00まで)※入場は閉館30分前まで観覧料:一般 300円、小・中・高校生 200円※大分県芸術文化友の会 びびKOTOBUKI無料、TAKASAGO無料※障がい者手帳などの提示者と付添者(1名)は無料※学生は入場時に学生証を提示【問い合わせ先】大分県立美術館TEL:097-533-4500
2021年07月16日特別企画展「スイス プチ・パレ美術館展―珠玉のフランス近代絵画―」が、滋賀の佐川美術館にて、2021年9月14日(火)から11月7日(日)まで開催される。なお、鹿児島市立美術館では9月5日(日)まで開催される予定であったが、8月19日(木)をもって終了。フランス近代絵画の充実したコレクションスイス・ジュネーブに1968年に開館したプチ・パレ美術館は、19世紀後半から20世紀前半にかけて芸術の都・パリを中心に制作された、フランス近代絵画を主としたコレクションを所蔵する美術館。1998年以降は休館しているものの、充実した所蔵コレクションから、国外の大規模美術展に継続的に出品協力を行っている。日本では30年ぶり、鹿児島では初となるコレクション展「スイス プチ・パレ美術館展―珠玉のフランス近代絵画―」は、プチ・パレ美術館の主要コレクションが来日する、日本では30年ぶり、鹿児島では初となる本格的なコレクション展だ。印象派のルノワールからナビ派のモーリス・ドニ、フォーヴィスムのヴラマンク、キュビスムのアンドレ・ロート、エコール・ド・パリのユトリロ、スタンラン、藤田嗣治まで、38作家による油彩画65点が一堂に集結する。19世紀後半に“光の描写”に挑んだ印象派が現れて以来、フランスでは画家たちによって次々と革新的な絵画が生み出されてきた。「プチ・パレ美術館」では、時代を象徴する巨匠の作品のみならず、その他多数の優れた周辺作家の作品も所蔵。実験的な精神に満ちた画家たちによる多彩な作品を通して、時代の活況を見て取ることができる。印象派からナビ派/ポン=タヴァン派、新印象派、フォーヴィスム、キュビスム、そしてポスト印象派やエコール・ド・パリに至るまで、フランス近代絵画の全体像とダイナミックな時代の潮流を体感できそうだ。【詳細】特別企画展「スイス プチ・パレ美術館展―珠玉のフランス近代絵画―」会期:2021年9月14日(火)~11月7日(日)場所:佐川美術館住所:滋賀県守山市水保町北川2891開館時間:9:30~17:00 ※最終入館は16:30まで。休館日:月曜日(9月20日は開館)、9月21日入館料:一般 1,200円、高大生 800円(要学生証提示)、中学生無料 ※ただし保護者の同伴が必要。※専門学校・専修学校は大学に準じる。※障害者手帳の持参者(手帳の提示が必要)、付添者(1名のみ)は無料。■終了した会場・鹿児島市立美術館会期:2021年7月23日(金・祝)~8月19日(木)※当初は9月5日(日)までの会期を予定していたものの変更(チケットの払い戻しについては、後日美術館ホームページにて案内)住所:鹿児島県鹿児島市城山町4-36問い合わせ先TEL:099-224-3400
2021年07月09日フランス・シャンパーニュ地方にあるランス美術館は、ルーヴル美術館に次いでカミーユ・コローの作品を多く所蔵するなど、19世紀の風景画が充実していることで有名。本展『ランス美術館コレクション 風景画のはじまり コローから印象派へ』では、このランス美術館のコレクションから厳選した約80点の名作を通して、印象派の中核ともいうべきフランス近代風景画の歴史をたどる。18世紀以前の西洋美術において、風景画は崇高な神話や歴史画の背景にすぎなかった。けれど18世紀末から19世紀初頭にかけて、その風景画に注目が集まり始める。この動きは革命後の社会の変化、新興ブルジョワジーの台頭、産業革命と都市化による田園風景への憧れなど、当時新しく生まれた価値観を受けて引き起こされたもので、画家らはアトリエを出て屋外で風景をスケッチし始めた。そんな風景画家の中でも特に注目を集めたのは「バルビゾン派」と呼ばれる画家たち。彼らはパリ郊外にあるフォンテーヌブローの森に隣接するバルビゾン村に滞在し、大作を生み出してゆく。その写実的な作風がモネやルノワール、シスレーなど19世紀後半に活躍する印象派の画家たちに受け継がれていったのだ。こうしたフランス印象派の成り立ちを余すところなく紹介したのが本展。近代画家の先駆者であるミシャロンやベルタンに始まり、コローやクールベ、ブーダン、さらに印象派のモネやルノワール、ピサロまで、19世紀フランス絵画の巨匠の作品が一堂に会する。会場では時系列に章が展開し、関連する資料も数多く登場。例えばチューブ式絵の具や、エッチング(腐食銅版画)の発明が風景画の発展を加速させたことなど、文明が美術に大きく影響を及ぼしている様子がよくわかる。いま話題となっているデジタルアートも、過去の名作も、技術の発展が新しい芸術を生んでいるという事実は変わらない。心が洗われるような異国の美しい風景画とともに、そんな普遍性にも気づかせてくれる、発見のある内容だ。コンスタン・トロワイヨン《ノルマンディー、牛と羊の群れの帰り道》1856年Inv. 907.19.234ランス美術館©MBA Reims 2019/Photo : C.Devleeschauwerジャン=バティスト・カミーユ・コロー《湖畔の木々の下のふたりの姉妹》1865‐70年Inv.887.3.82ランス美術館©MBA Reims 2019/Photo : C.Devleeschauwerクロード・モネ《べリールの岩礁》1886年Inv. 907.19.191ランス美術館©MBA Reims 2019/Photo : C.Devleeschauwerピエール=オーギュスト・ルノワール《風景》1890年頃Inv. 949.1.61ランス美術館©MBA Reims 2019/Photo : C.DevleeschauWer『ランス美術館コレクション 風景画のはじまり コローから印象派へ』SOMPO美術館東京都新宿区西新宿1‐26‐16月25日(金)~9月12日(日)10時~18時(入館は17時半まで)月曜休(8/9は開館)一般1500円ほかTEL:050・5541・8600(ハローダイヤル)※『anan』2021年6月30日号より。取材、文・山田貴美子(by anan編集部)
2021年06月29日日本を代表する建築家のひとり、隈研吾。彼のこれまでの活動を「公共性」を軸に振り返る展覧会、『隈研吾展新しい公共性をつくるためのネコの5原則』が、東京国立近代美術館で9月26日(日)まで開催されている。これまでにない大規模な個展だ。隈研吾は1954年生まれ。1964年開催の東京オリンピックの際に見た丹下健三の国立屋内総合競技場(現・国立代々木競技場)に衝撃を受け、幼少期より建築家を志した。コロンビア大学客員教授を経て、90年に隈研吾建築都市設計事務所を設立した後は、20か国を超す国々でその土地の環境や文化に溶け込む建築を手掛けている。国立競技場の設計への参画はもちろんのこと、根津美術館やサントリー美術館、角川武蔵野ミュージアムに富山市ガラス美術館など数多くの美術館建築を手掛けていることから、美術ファンにも知られた存在だ。本展は、彼の手掛けた建築の「公共性」という部分に着目。隈自身がピックアップした建築と映像作品、前庭に展示されるトレーラーハウスを合わせ、合計74件を5つのキーワードで読み解いていく。第一会場エントランス本展は、有料の第1会場と入場無料の第2会場からなる2部構成。第1会場では、序論として、隈も参画した国立競技場のディテール模型が並ぶ。国立競技場ディテール模型国立競技場ディテール模型以降は彼が手掛けた68件の建築が怒涛のように並んだ展示が続く。本展は、時系列ではなく、自身が考える建築の5つの原則「孔」「粒子」「斜め」「やわらかい」「時間」で分類され、構成されている。「孔」のセクションで紹介されている「V&Aダンディー」は、日本の鳥居に着想を得て、街と川をつなぐ孔を作っている。スコットランド《V&Aダンディー》2018年の模型栃木県に建設された《那珂町馬頭広重美術館》は、建物内にトンネル状の孔を明けて、街と建物の背後にある里山をつなげようとしている。《那珂町馬頭広重美術館》2000年の模型《那珂町馬頭広重美術館》2000年の模型「粒子」の項目では、細かいパーツを組み合わせて全体を形作る建築物を紹介している。国立競技場はこの粒子の概念を象徴した建物だ。青山《サニーヒルズジャパン》部分 2013年代々木《国立競技場》2019年の模型このほか、「斜め」や「やわらかい」、「時間」のカテゴリーで隈研吾の建築が語られている。キャプションに添えられた作品解説も隈本人によるものだ。なお、展覧会のタイトルにちなみ、会場内にはネコが時々出現しているのでお見のがしなく。浅草《浅草文化観光センター》2012年の模型よく見ると…浅草《浅草文化観光センター》2012年の模型(部分)かわいいネコがいる注意書きにもネコ第2会場では、人間ではなく、「ネコ」の視点から都市のあり方を見直すリサーチプロジェクト《東京計画2020(ニャンニャン)ネコちゃん建築の5656(ゴロゴロ)原則》(Takramとの協働)とVR展示が行われている。ネコにGPSをつけた記録や、ネコの習性、生態を取り入れた新しい都市の考え方だ。国内外に数多くの建築物を残してきた隈研吾。彼の建物の魅力と本質に迫ることができる重厚な内容の展覧会だ。『隈研吾展新しい公共性をつくるためのネコの5原則』6月18日(金)~9月26日(日)、東京国立近代美術館にて開催取材・文:浦島茂世
2021年06月22日2006年、写真集『IN MY ROOM』(2005年刊行)によって第31回木村伊兵衛写真賞を受賞した鷹野隆大(1963-)の美術館では初となる大規模展覧会が、6月29日(火)より国立国際美術館にて開催される。ジェンダーやセクシャリティをテーマとする写真家として認知されている鷹野だが、1998年から毎日欠かさず写真を撮るプロジェクト「毎日写真」を実践し続け、写真という媒体の特性とその限界について、考察を重ねてきた。同展では、鷹野の芸術活動の根幹を成すその「毎日写真」を主軸としながら、ジェンダー・セクシャリティ系の出世作や、「毎日写真」から派生した日本特有の無秩序な街並みの写真「カスババ」、定点観測的な「東京タワー」など、約130点を時系列に紹介。鷹野隆大の思索の変遷をたどる。また、東日本大震災後の混乱した日々のなかで、自分の足元にまとわりついてくる黒いもの=影が気になりだし、シリーズとして発表している「影」の作品を実体験できるコーナ―も登場。作品と同じセッティングを使って、自分の影をスマホで撮影することができる。《2018.11.14.#05》2018 年 ©Takano Ryudai, Courtesy of Yumiko Chiba Associates《赤い革のコートを着ている》2002 年 ©Takano Ryudai, Courtesy of Yumiko Chiba Associates《2011.03.11_T》2011 年 ©Takano Ryudai, Courtesy of Yumiko Chiba Associates《2018.03.03.D.#02》2018 年 ©Takano Ryudai, Courtesy of Yumiko Chiba Associates【開催概要】『鷹野隆大毎日写真1999-2021』会場:国立国際美術館会期:2021年6月29日(火)~9月23日(木・祝)時間:10:00~17:00(金土は21:00まで、入場は閉館30分前まで)休館日:月曜(8月9日、9月20日は開館、8月10日休)料金:一般1200円、大学生700円※金土は夜間割引あり公式サイト:
2021年06月18日第二次世界大戦後から現在までのファッションの歴史をたどる展覧会、『ファッション イン ジャパン 1945-2020-流行と社会』が、6月9日(水)より国立新美術館で開催されている。世界でも注目されている日本のファッションについて包括的に紹介する大規模なものだ。本展は日本の洋装文化を紐解く大展覧会。洋服を基本とした歴史について、衣服はもちろんのこと写真や雑誌、映像などを通して検証していく。従来のファッション展はデザイナーやメーカーの視点に立つことが多かったが、本展は実際に衣服を着用し、ときには流行を自ら作り出していった消費者の視点でもファッションを俯瞰することも試みている。展示風景第8章 未来へ「未来へ向けられたファッション」より第二次世界大戦が終わり、国民はもんぺや国民服以外の服も自由に身に纏えることとなった。そのため、戦後日本は洋裁学校で仕立てた自前の服を着ることが大流行。『装苑』や『私のきもの』、『ソレイユ』、『スタイルブック』に『ドレスメーキング』など、型紙が掲載された洋裁雑誌は大人気となる。また、文化服装学院やドレスメーカー女学院をはじめ、全国に多くの洋裁学校が設立されていく。展示風景第1章 1945〜1950年代「花開く洋裁文化と若者の台頭」より展示風景第1章 1945〜1950年代「花開く洋裁文化と若者の台頭」より高度経済成長に入り、既製服が大量生産されるようになっていくと、洋服は仕立てるものから、購入するものへと人々の意識は変わっていく。また、ロンドンやアメリカの若者文化の流行が日本にも伝播し、戦後から僅かな時間で日本人の服装はまたたく間に多様化されていった。展示風景 第2章 1960年代「消費拡大!モーレツ社員たちによる高度経済成長はとまらない」より展示風景 第2章 1960年代「消費拡大!モーレツ社員たちによる高度経済成長はとまらない」よりそして、1970年代に入ると、KENZOやISSEY MIYAKE、山本寛斎など日本人デザイナーたちが海外で活躍し始め、日本のファッション全体が注目されるようになっていく。その一方、大川ひとみの「MILK」や、菊池武夫、稲葉賀恵による「BIGI」、荒牧太郎の「マドモアゼルノンノン」など若者を引きつけるファッションブランドが原宿に誕生、流行の発信地となっていく。展示風景 第3章 1970年代「カジュアルウエアのひろがりと価値観の多様化、個性豊かな日本人デザイナーの躍進」より展示風景 第3章 1970年代「カジュアルウエアのひろがりと価値観の多様化、個性豊かな日本人デザイナーの躍進」より1980年代に入ると、川久保玲や山本耀司が海外で活躍。「黒の衝撃」とも呼ばれるデザインはそれまでのファッションの価値観を揺るがす大胆なものであった。いっぽう、デザイナーの個性をより強調した「DCブランド」も流行した。第4章 1980年代「DCブランドの流星とバブルの時代」より左 トップ、ドレス 川久保玲 コム デギャルソン 1983年春夏 京都服飾文化研究財団(株式会社コム デギャルソン寄贈)右 コート、トップ、パンツ川久保玲 コム デギャルソン 1983年春夏 京都服飾文化研究財団(株式会社コム デギャルソン寄贈)展示風景第4章 1980年代「DCブランドの流星とバブルの時代」よりしかし、1991年のバブル崩壊後、ファッションの表舞台は裏原宿や渋谷などの「街」に移っていく。ギャルや渋谷系、裏原系など流行は細分化し、等身大の着こなしをする読者モデルたちがファッションリーダーとして憧れの対象となっていく。展示風景第5章 1990年代「都市から発信されるスタイル、ストリートファッションの時代へ」より展示風景第5章 1990年代「都市から発信されるスタイル、ストリートファッションの時代へ」よりそして、ファッションの歴史は2000年代から現在、未来へと続いている。「kawaii」という日本語が万国共通語として広く認知され、ゴシック系やロリータなどが人気に。また、2011年の東日本大震災以後は、サステナブル(持続可能)な社会のあり方が、ファッションにも影響を及ぼすようになっていった。シンプルで無理なく生活をできるスタイルを目指す服、暮らし方に共感が集まるようになっていく。展示風景第6章 2000年代「ンターネットで繋がる社会と『kawaii』ファッションの台頭」より展示風景第6章 2000年代「インターネットで繋がる社会と『kawaii』ファッションの台頭」より展示風景第8章 未来へ「未来へ向けられたファッション」より1945年から70年強にわたり、変化し続ける日本のファッション。作る側、着る側の双方向の視点で長い歴史を見つめることで、過去と現在、未来に思いを馳せることができる刺激にあふれる展覧会だ。構成・文:浦島茂世【開催情報】『ファッション イン ジャパン 1945-2020-流行と社会』6月9日(水)~9月6日(月)、国立新美術館にて開催
2021年06月09日東京都世田谷区にある、『世田谷美術館』。砧(きぬた)公園内にある同美術館は、豊かな自然とアートを楽しむことができ、近隣住民の憩いの場となっています。そんな憩いの場に訪れるのは、どうやら人間だけではないようです。美術館に現れた『小さな訪問客』が話題に!ある日の夕方、美術館の職員用通用口の前では、警備員と客の攻防が行われていました。何かの侵入を必死に防ぐ警備員。中に入ろうとしていたのは…!通用口の前にいたのはなんと、赤ちゃんタヌキ…!出典:世田谷美術館母親とはぐれてしまったのでしょうか。ちょうどスタッフが通用口を行き来する時間帯だったため、ドアが開く度に侵入を試みようとしていたそうです。まだ体の小さな赤ちゃんタヌキは、階段を下りるのが怖い様子。その後、スタッフに見守られながらゆっくりと階段を降り、最後は茂みへ帰っていきました。美術館に現れた珍客に、ネット上ではこのような声が寄せられています。・かわいい…!無事お母さんの元へ帰れるといいな。・きぬた公園に、『たぬき』が現れたのか!・なんてかわいいお客様…。ずっと見ていられる。美術館に現れる珍しい客といえば、広島県尾道市の『尾道市立美術館』へやって来る猫も有名ですよね。美術館にやってきた『珍客』警備員とのやり取りに、心がポカポカどうやら美術館には、人間だけではなく動物も引き寄せる不思議な力があるようです…![文・構成/grape編集部]
2021年06月04日