もうすぐ3月11日。あの東日本大震災から5年が経過しようとしている。忘れもしない2011年の3月11日の午後、個人的には東京・新宿西口の路上で地震に遭遇した。持っていたスマホですぐに自宅に電話をしたがつながらなかった。だが、データ通信は大丈夫だった。たまたま加入していたIP電話を使って自宅に連絡をとり無事を確認することができた。データ通信は強いと実感した瞬間だ。地震については当初たいしたことがないと思っていたが、帰途につくための電車はストップしたままで、仕方なく、とぼとぼと自宅への道を歩き始めた。大津波が東北を襲ったのを知ったのは、その途上だった。○LTE強化で災害に備える先週、ドコモがプレス向けの説明会を開催し、今後のネットワーク信頼性の強化施策を発表した。同社によれば災害時は一人一人の情報伝達が重要で、移動体通信事業者のネットワークが社会インフラであることの重要性を認識し、その信頼性を強化していくという。なかでもLTEネットワークをさらに強化し、安心/安全に貢献するネットワークにしていくと宣言した。ドコモによれば3GよりもLTEのほうが周波数の利用効率を高めることができるという。通信容量にして3倍に拡大することができるというのが同社の試算だ。その恩恵を得られるように、大規模災害時に備えて通常の基地局とは別に、広域エリアをカバーする大ゾーン基地局を2017年3月末を目処に全国106局でLTE化する予定だ。さらに、電源喪失後24時間以上運用が可能で、複数の伝送路で冗長化され、アンテナ角度をリモートから変更可能な中ゾーン基地局を展開していく。こちらは2018年3月末までに展開予定となっている。同時にLTEネットワークの高速化施策も発表された。ポイントは既存3バンドを束ねたキャリアアグリゲーション(CA)と、新たに認可された3.5GHz帯を使ったTD-LTE方式の追加だ。前者は既存3バンドを束ねることで受信時最大375Mbpsを実現、後者は既存のFD-LTEの1波と新TD-LTE2波を束ねた3波CAによって370Mbpsをたたき出す。FD-LTEのもう1波はアップロード専用に使われ、50Mbpsという送信速度を実現するようだ。これらの環境はこの6月から提供が開始されるが、まずは、都心部に重点展開される。とはいえ、誰もがこの恩恵を受けられるわけではない。当たり前だが、無線機を使う以上、その周波数に対応した端末が必要だ。当然、これらの高速化に対応した端末は、まだ発売されていない。おそらくは、サービス開始時には入手可能になると思われるが、現時点では入手は不可能だ。○端末の対応バンドは明確に自分の使っている端末が、どの周波数に対応しているのかを深く考えたことがあるだろうか。いや、そもそもキャリアが端末のスペックとして積極的に対応周波数を明示していないのはよくないことだと思う。たとえば、このページは、ドコモの端末紹介だが、スペックには、受信時最大225Mbps 送信時最大50MbpsPREMIUM 4GTMとしか書かれていない。本来、LTEの割り当て周波数は3GPPが標準化しているバンド番号で表記するべきだ。たとえばドコモであれば、Band 1(2.1GHz帯 FD)Band 3(1.8GHz帯 FD)Band 19(800MHz帯 FD)Band 21(1.5GHz帯 FD)Band 28(700MHz帯 FD、ごく一部地域でのみ運用)Band 42(3.5GHz帯 TD、サービス開始は6月)が割り当てられている。別のバンドで同じ周波数帯を使うこともあるので、バンド番号で表記するのが確実なのだ。世界中のキャリアと端末ベンダーが、すべて対応バンドを明確にしてくれれば、自分の端末が、どのような通信環境でどのような能力を発揮するのか一目でわかるのだが、そうなっていないのが現実だ。ちなみに個人的に常用しているメインのスマートフォンは2年前に入手したものだが、その対応バンドを調べたところ1, 3, 19, 21となっていた。CAにもVoLTEにも対応していないし、当然、TDによる新Band42や予定されているBand28は使えないということがわかる。無線機なのだから、そのくらいのことがエンドユーザーにわかるように明確にしておくのは当たり前ではないだろうか。これがわかれば、SIMフリー端末を購入したり、最近増えてきたLTE対応PCを購入するときも、どの程度つながるのかが一目瞭然だ。たとえば、最近NECパーソナルコンピュータから発売された話題の軽量2-in-1 PC、LAVIE Hybrid ZERO HZ330や、VAIO S11は、きちんと仕様表に対応バンドが明記されている。それを見ると、1、3、19、21に対応してることがわかる。この傾向はとてもいいことだ。ぼくの使っている2年前の端末と同じで、SIMフリーだがドコモのネットワークを考慮していることがわかるが、バンド3、8を使う台湾や3、7、20を使うヨーロッパ、北米の特殊なバンド事情では不安があることがすぐに理解できる。ネットワークの高速化はもちろん大切なことだ。だが、既存のエンドユーザーが、どのような恩恵を得られるのか、仮に、新しい端末を購入しようとしたときに、それによって対応バンドはどのように増え、何ができるようになるのかといったことくらいは、明解にしておいてほしいと思う。TVでいうなら、NHKは大丈夫だが、フジテレビは非対応といったことがあるのに、それがよくわからないようではダメなのだ。6月のサービスインまでには、新端末の発表会も開催されユーザーの期待をあおることになるのだろう。報道資料やカタログではきちんとこれらのことを明確に記してほしいと思う。(山田祥平 @syohei)
2016年03月07日日本のレノボの勢いが鮮烈だ。ThinkPadでもなく、LAVIEでもないもうひとつのレノボが着実に階段を登りつつある。先日、東京の国立新美術館で開催された「Lenovo X1 Premier Collection」では、ThinkPad X1シリーズとして、TABLET、YOGA、Carbonなどが一気に発表され、同社代表取締役の留目真伸氏はレノボが26四半期連続でシェアを伸張し、利益においても過去最高を達成していることを明らかにした。日本でも過去最高のシェアを更新し、成績はワールドワイドと同様に好調であり、まさに、ハードウェアビジネスの基盤を確立していることを数字が物語っている。もちろん、1992年に一号機ができたThinkPadはレノボの中でも主力製品だ。この製品は日本人の手によってエンジニアリングされて世に出され、究極のツールとしての進化をとげてきた。レノボの製品群の中でもThinkPadが特別な存在感を持って受け入れられているのはそのためだ。誤解を怖れずにいえば、ThinkPadは「レノボ製品であってレノボ製品ではない」と消費者に受け入れられている雰囲気もある。○拓ける市場はまだまだある留目氏は、日本のものづくりの強さを今も信じていると述べるものの、ThinkPadが累計出荷台数1億台を2014年に突破しているにもかかわらず、現状には満足していないという。留目氏は壇上で「パーソナルコンピューティングはまだまだ実現していない。パソコンは普及しているが、コンピューティングパワーが人々をサポートしている時間はまだまだ短い。これから第2章が開けていく」と宣言した。そしてそれは、コンピューターメーカーだけでできるわけではなく、他の業界、スタートアップ、生活者とのコラボレーションが必要で、そこでの共創を目指さなければならないというのだ。そこに留目氏の狙いがある。これからのデジタルワークは、常時、コンピューティングパワーが人をサポートするようになる。さらに、これから団塊ジュニアが両親の介護をしなければならなくなる。そのとき、オフィスでしか働けないのは問題だと留目氏。さらに、イノベーションのためには、ひとつの企業の中だけにとどまっていてはならない。発想のタネ、ビジネスのタネは、他者とのコラボレーションの中でこそ生まれる。IoTの進化によって、そのスピードは高まる一方だ。今こそ自分自身のアップデートが必要であり、そのためのモビリティだと留目氏はいう。つまり、これから拓ける市場はまだまだあるはずだと氏は確信している。○ThinkPadのレノボからの脱却ここのところの留目氏は、コンピュータメーカーの社長らしからぬプレゼンスを見せ続けている。ありとあらゆる業界に対してアプローチし、レノボの製品を売り込むというよりも「レノボ」という形のないブランドの認知度を上げるために、そのブランドが人々の暮らしや働き方を豊かにすることをコミットしようとしているように見える。ThinkPadは特別でも、他のレノボ製品は違うというイメージを払拭するには、これまでリーチすることができていなかった新たな市場に対して、日本のレノボを強く印象づけることが必要だ。若者向けにスノーゲレンデやビーチでイベントを開催するなど、その方面での活動にも熱心なレノボ。新たな市場を拓き、ThinkPadのレノボを知らなかった層にレノボを知らしめる。そのためにはなりふり構わず何でもやる。その崖っぷち感が危ないようでこれから先の世の中を見据えてもいる。(山田祥平 @syohei)
2016年02月22日VAIO株式会社がWindows 10 Mobile搭載スマートフォン「VAIO Phone Biz」を発表した。4月の発売が予定され、法人に対してはドコモとダイワボウ情報システム、個人向けには直販サイトのVAIOストアをはじめ、MVNO各社のほか、一部の量販店で入手できるようになるという。同社社長大田義実氏は、PCとしてのVAIOに付加価値を提供するためにスマホは欠かせないとし、Windows OSとともに歩み続けてきたVAIOとして、Windows 10 Mobileを採用することで、Windowsの世界を拡大するとした。日本は、Windows 10 Mobile搭載機が8社(ACER、FREETEL、geanee、NuAns、VAIO、ドスパラ、マウスコンピューター、ヤマダ電機)ものベンダーから提供されるという世界でも希有な国になる。なかでもVAIO Phone Bizは、一般的なブランドの知名度としては真打ち登場といったところだろうか。発表会には日本マイクロソフトから平野拓也代表執行役もゲストとして登壇、協業の喜びと法人市場盛り上がりへの期待を語った。また、ドコモの高木一裕法人ビジネス本部長(「高」の字ははしごだか)は、この6月に同社の企業向けサービス「ビジネスプラス」においてMicrosoft Intuneをラインアップすることを表明、ドコモの4バンドにフル対応し、CAもサポートするVAIO Phone Bizを自信を持っておすすめするとした。今のWindows 10 Mobileを取り巻く状況は、NECのPC-9800シリーズパソコンが国民機として普及していた1990年代に、多くのホワイトボックスベンダーが登場した当時を彷彿とさせる。最終的にホワイトボックスベンダーは、安いPCではなく、そこにソリューションを組み合わせることで活路を見いだしたわけだが、そんな状況で、大手ベンダーは模索の中で、差異化されたPCを高付加価値商品として提供するという道をたどった。ソニーのVAIOやパナソニックのLet’s noteは、その代表的なパターンではなかっただろうか。○独自のワンモアシングも欲しかった今回のVAIOは、あの当時とちょっと違う。もちろん、ソニーからスピンアウトしたという事情もあるが、最初から企業向けソリューションを前面に打ち出した製品訴求は、今後、同社がビジネス路線へ向かうことを示すもののように感じられる。まだ、海のものとも山のものともわからないWindows Mobileという新参OSを、AndroidやiOSといった既存OSが猛威をふるうなかで企業向けに提案していくためには、きちんとしたソリューションをあわせて提供する必要がある。8社もの参入ベンダーがひしめく中で、他社との差別化をアピールするには、その部分が重要だということを同社はわかっている。ただ、VAIOならではの技術的付加価値など、ハードウェア的な訴求、提案がもっとなくてもよいのだろうかという疑問も残る。発表会でアピールされた提案は、Windows 10 Mobileそのものの可能性を訴求するものばかりで、同じセリフをマウスコンピューターの発表会で繰り返されてもまったく違和感がないようなものにも感じられた。もちろんドコモのお墨付きや、Office 365サービスでのMicrosoftとの強力なタッグは他のベンダーとは一線を画する。Windowsとともに歩み続けてきた20年はさすがだ。でも、それに加えたVAIOならではのワンモアシングが欲しかったところ。より多くのVAIO PCを売るためには、Continuumを声高にアピールしている場合ではないとも思うのだ。(山田祥平 @syohei)
2016年02月08日MVNO大手のIIJの契約数が100万回線を突破したそうだ。順調にそのビジネスを進める同社だが、その概況や最新市場動向を含めた記者説明会が実施された。同社サービスを含め、いわゆる「格安SIM」の認知度は向上の一途をたどっている。ご存じの通り、MVNOというのは大手携帯電話事業者、日本でいえばドコモ、au、ソフトバンクからモバイルネットワークを借り受け、それを使って一般消費者にサービスを提供する事業だ。自前でモバイルネットワークを持たないことから「バーチャル」の「V」がついて、Mobile Virturl Network Operatorと称されている。逆にドコモ等のキャリアは自前でモバイルネットワークを持っているため、「V」がなくMNOと呼ばれる。逆にいうと「V」のつく事業者は、どんなにがんばっても「V」のつかない事業者を超えることはできない。借り受けているのだから当たり前だ。限りなく近づける、あるいは同じにすることはできるかもしれないが、それがせいいっぱいだ。だからこそ、真正面からキャリアに挑むのではなく、価格やサービス、利便性といった面の付加価値で勝負する。MVNO各社は「格安SIM」といわれることにそれほど抵抗はないようでもある。実際、IIJでも、外部に対するコミュニケーションとして「MVNOサービス(格安SIM)」と名乗っているくらいだ。○MVNOが再び盛り上がる?その格安サービスを揺るがしかねないトレンドがある。それが加入者管理機能(HLR、HSS)の開放だ。個々のキャリアが有する加入者のデータベースをMVNOに開放し、より柔軟なサービスを提供できるようにしようというチャレンジだ。これによって、MVNO各社は自前のSIMを発行できるようになり、キャリアをまたいだサービスを提供できるようにもなる。日本国内においては今のところドコモのネットワークがもっとも廉価なのであまり意味が見出せないが、たとえば、海外の現地キャリアを使って格安ローミングのようなビジネスが実現可能になる。たとえばGoogleは、米国向けにProject Fi(と呼ばれるサービスを提供している。これは、一種のMVNOであり、米国内において複数のキャリアをまたいでネットワークが使われる。さらに、米国外に出たときも、現地のキャリアを使って接続される。価格的にもリーズナブルで魅力的なサービスになっている。○価格とコストとアイデンティティそれなら日本でもと期待したいところだが、こうしたサービスを提供するためには、どうしても加入者管理機能を使う必要がある。仮に開放が実現されたとしても、そのためには馬鹿にならない数十億円単位のコストという問題が降りかかる。総務省の調べによると現在のMVNOサービスの契約数は1,063万回線ある。そのうち格安SIMは4割程度と推定されるそうだ。高い成長率で推移しているもののその程度の数字だ。仮にHLR、HSSの開放に30億円かかるとしよう。単純に30億円を1,000万契約でワリカンすれば300円、こうした付加価値が必要のない契約をのぞいた格安SIM契約だけで負担すると、約4割の400万契約でのワリカンとして750円になる。つまり、それだけの金額を上乗せしないとビジネスが破綻する可能性があるわけだ。今後、ワリカンの母数がどんどん増えて、無視できる負担額になることもあるかもしれないが、それがゼロになるわけではない。ユーザーがMVNOに対して何を求めるか。今のところは価格であることは明白だ。大手キャリアより安いというのが現時点でのMVNOのアイデンティティだ。IIJも、多額の投資が必要となるHLR、HSSは、必ずしもMVNOビジネスとは親和性が高くないと説明会では漏らしている。ただ、格安SIMにとどまらず、大手キャリアが取り組むのが難しい新たな事業領域へのチャレンジは、MVNO各社にとっての絶好のビジネスチャンスでもある。各社が今年、どの方向に舵を取り、どのような動きをするのかには、よく注目しておく必要がありそうだ。例年、4月頃には大手キャリアへのMVNO向け接続料金が公表される。値下がりは必須と予想されるが、昨年のように予測よりも下げ幅が低くMVNO業界全体が影響を受けた例もある。大手キャリアの接続料金の下げ幅がMVNOの料金にどう反映されるのか。そのあたりに注目すれば、水面下で何が動いているのか想像できるかもしれない。(山田祥平 @syohei)
2016年01月25日NECパーソナルコンピュータが「LAVIE Hybrid ZERO」の新モデルを発表した。11.6型スクリーンの2-in-1で、タブレットとキーボードが分離するデタッチャブルタイプのフォームファクタだ。発表といってもプレスリリースによる開発表明と、米ラスベガスで開催されたCES 2016のタイミングでの参考出品という名目で、一部のプレスに対して実機がお披露目されたのみにとどまる。同社によれば、タブレット部分は500g以下、キーボードを装着した場合でも1kg以下を達成する見込みだという。プロセッサには、第6世代インテル Core mを搭載、キーボード部分にはセカンドバッテリーを搭載、WebカメラとしてインテルのRealSence 3Dカメラを装備する。2016年春モデルとして発売が予定されているそうだ。○ひょっとすると800g以下?実際に実機を手に取ると、キーボードと合体させた状態では、それほど軽さを感じないのだが、スクリーンを取り外し、タブレットとして構えてみると、おそらくは400グラムを切っているのではないかと思われるくらいに軽い。今、軽量タブレットとしてはソニーのXperia Z4 Tabletが10.1型スクリーンで約389グラムを実現しているが、それに匹敵する軽さに感じた。しかも、XperiaはAndroidだが、11型の「LAVIE Hybrid ZERO」はフルWindowsだ。実機を見る限り、Core m3搭載のようだが、実用に十分なパフォーマンスを見せているように思われる。タブレット部分とキーボード部分は同じくらいの重さに感じられるので、ひょっとすれば800グラムを切る、あるいはもっと軽いかもしれない。あくまでも軽量大型クラムシェル形状にこだわってきたZEROシリーズだが、それをデタッチャブルにしたのはちょっとした冒険かもしれない。実際、クラムシェルにしておけば、もっともっと軽くできたはずだからだ。それをあえてしなかった。そしてキーボード部分にタブレット部分と同容量のバッテリを装備して長時間駆動を実現している。バッテリは合体した状態でタブレット側に先に充電され、フルになるとキーボード側のバッテリ充電に切り替わる。キーボード側からタブレット側への充電は効率のことを考慮し見送られたという。その合体機構はかなりしっかりしたもので、キーボード部分をつかんで振り回しても、ちょっとやそっとで脱落することはない。これならクラムシェルとして膝の上に代表される不安定な場所で使う場合も安心だ。難をいえば16:9のアスペクト比で、タブレットを縦方向で使うときの使用感が気になるところだ。当然InstantGo対応、また、LTEスロットを装備したモデルも想定されている。スクリーンはタッチ対応だがノングレアだ。ここはポイントが高い。表面をガラスにして光沢感を高める選択肢は、軽量化のために見送られたが、それが功を奏している。天井の灯りなどが映り込みにくいことは重要だ。○8型では小さすぎる、13型では大きすぎるNEC関係者によれば、13型と11型の市場はまったく異なるのだという。だから、これまでの13.3型ZEROに魅力を感じていたユーザーには今回の11型「LAVIE Hybrid ZERO」は響かないこともわかっているという。つまり、11型ZEROは、これまでの同社の軽量モバイルラインアップへのアドオンとなり、新たな市場を開拓することになるはずだとのことだ。同社は、コンシューマー向け市場に対してこの11型ZEROを訴求していくようだ。会社から提供されるモバイルノートではなく、よりパーソナルな市場において、さまざまなシーンで使われることが想定されている。このクラウドの時代になっても、人々は、1台のデバイスにオールインワンを求めることが多いようで、大は小を兼ねるといわんばかりだ。13型ZEROは、そうしたニーズをうまくキャッチアップして人気機種として受け入れられた。だが、モバイルシーンにおける機動性や、とりまわしのしやすさなどを考えたときはちょっと大きすぎる。日本においては「新幹線テーブル需要」という事情もある。新幹線の前座席背中にあるテーブルの上においても普通に使えることが求められるわけだ。もちろん航空機のエコノミークラステーブルも同様だ。8型では小さすぎる、13型では大きすぎる。その中間を求めるニーズは確実に存在する。○足し算でできたモバイルノートある意味で11型ZEROはオールインワンを目指したモバイルノートだ。クラムシェルの機動性、タブレットのカジュアル性、持ち運びやすさ、取り回しやすさ、それなりにまともなキーボードによる生産性、重量増を覚悟してもキーボード側にバッテリを内蔵した長時間駆動など、あらゆる欲張りを集約したオールインワンだ。つまり、足し算でできたモバイルノートだ。実際に、日常的に使ってみないとその実力はわからないが、かなり魅力的な製品に仕上がっているように思う。しかも、11型ZEROで採用された各種の軽量化技術が、13型ZEROに反映されれば、今よりもさらに魅力的なモデルに生まれ変わる可能性も示唆している。あるいは引き算で作った11型ZEROのバリエーションも期待できそうだ。いろいろな意味でエポックメーキングな製品として実際の発売を楽しみにしたい。(山田祥平 @syohei)
2016年01月12日年末になるとあちこちで、ボーナスシーズンのベストバイやら今年買ったモノの特集が組まれているのを目にする。それをここでそのままやるというのもつまらないので、今年(2015年)は「あえて買わなかったもの」というテーマで話をしよう。○満2年を迎える愛用スマホこういう商売をしているので、各分野、典型的な製品についてはとりあえず所有することにしている。スマートフォンでいえば、iPhoneとAndroidスマホについてはそれなりの知識を持っていないと話にならない。iPhoneについては選択の余地がないが、Androidスマホはよりどりみどりだ。ただ、世界シェアという点ではなんといってもサムスンなので、Androidについてはずっとサムスンの製品を使ってきた。その一方で、ファーウェイの伸びも著しく、ここもきちんとチェックしておく必要がある。もちろん、Windows 10 Mobileにも注目しなければならない。今、日常的に愛用している端末はドコモのGalaxy Note 3。ご存じの通り2年を経過した製品だ。予約して購入したので2013年秋の発売日に入手している。2015年秋のタイミングで2年目を迎えるにあたり、代替端末をいろいろ考えたが、とうとう決めることができなかった。ずっとNoteシリーズのファンで、初代、Note 2、Note 3を続けて使ってきたので、順当にいくと、Note 5が欲しかったのだが、日本の市場ではこの世代のNoteが出なかった。ちなみに昨年(2014年)、Note 4世代をスキップしたのも、Note Edgeしか出なかったからという言い訳をしておきたい。たぶん、同じような理由で Note 3を使い続けているユーザーは、それなりにいるんじゃないだろうか。このNote 3、10月頭にはAndroid 5.xことLollipopへのバージョンアップも実現されたし、2年が経過したとはいえ特に大きな不満がない。どうしても次世代AndroidのMarshmallowについて調べたければ、手元にある、これまた次世代をスキップしてしまったNexus 5をリファレンスにすればいい。こちらはGoogleのリードデバイスだから、とっくの昔にMarshmallowにアップデートされている。○ついに本体エラーが出はじめたが……実は、つい先日、出先で、Note 3に本体エラーが出るようになり、ついカッとなって初期化した。データは全部クラウドにあるので失ったものはLINEのトーク履歴だけだ。結局買い換えかとも思ったのだが、初期化したら正常に戻り、以前にもまして快適そのものになったので、OSバージョンアップのあとは面倒でも初期化した方がいいと再認識したところだ。外観については、ケースさえつけずにハダカで2年間使ってきたが特に問題はない。ガラス面にも目立った傷は皆無だ。心配があるとすればバッテリだ。たいていの端末はバッテリ内蔵でエンドユーザーが取り替えることができない。バッテリ劣化が機種変更の動機になるケースもありそうだ。だが、Note 3は交換バッテリがオプションで用意されている。ぼくは、2つのバッテリをとっかえひっかえ使ってきたので、バッテリの劣化もあまり感じない。オプション供給が終わる前にもうひとつ確保しておくかどうかを思案中である。この端末は2年前のハイエンドだ。プロセッサはクワッドコアのQualcomm Snapdragon 800 2.3GHz、メモリも3GBを積んでいる。現在のミッドレンジの端末と比べ、ハードウェアスペック的にはそれほど遜色がない。もちろんより高速なCA対応といったことは望めないが、実感としてはあと1年くらいは使ってみるのも悪くない。どこまでいけるか試してみようという決断をしたわけだ。スマホに限らず、パソコンなどでもハイエンド製品を選ぶことは多い。もちろん最新の技術を体験したいというのもあるが、結果として長期にわたって実用的に使えるのでお得な面もあるのだ。もし、ミッドレンジの端末だったら、2年目の使用感は格段に落ちるにちがいない。○誰がどうトクをするか?さて、この端末、2年前の購入以来、24カ月にわたってドコモの月々サポートとして1,780円/月が戻ってきていた。普通は、それが分割支払い金と相殺されるといったことで、端末の「実質料金」が決まるわけだ。ぼくの場合は、一括支払いで購入しているので、単純に月々サポート適用額は通信費からの減額となっていた。この「実質料金」というシステムが、端末代とサービス代の区分けをややこしくして価格を不透明にしているといった論調もあるが、普通に利用内訳をチェックすれば、何にいくらかかっているのかは一目瞭然なので、そんなに大騒ぎするほどのことなのかとも思う。どっちにしても、24カ月経過で、この月々サポート適用がなくなり、ぼくの場合は、しっかりと支払い額が増えてしまう。ドコモに貸していたカネが完済されたということなので当たり前のことなのだが、普通ならこれで機種変更のモチベーションが上がることになるのだろう。ぼくもまた例外ではなく、従来はSIMフリーのものを買っていたiPhoneをドコモで機種変購入した。その結果、月々サポートは1,998円に増額されたが、ケータイ補償サービス料金が値上がりしたのでほぼ同額だ。もちろん、Note 3はそのまま使い続けている。おサイフケータイなしでの生活は考えられないので、こうするしかない。来年は、総務省の意向もあり、携帯電話料金については、少し状況が変わることになるかもしれない。その一方で、結局何も変わらないのではないかという論調もある。個人的には、MNPで2年ごとにキャリアを往来するのがいちばんトクというのはどうにかならないものかなとは思う。もちろん、そのことで競争が激化し、サービス向上につながるのは確かなのだが、20年以上同じキャリアに留まっている身としては複雑な気分ではある。そういう意味では、キャリアが端末を売る時代というのは、そろそろ終わってもいいのかもしれない。(山田祥平 @syohei)
2015年12月29日Microsoftの女子高生AI「りんな」がTwitterを始めた。これまでLINEアカウントを取得して活動していたが、そのステージを拡張したかたちだ。日本マイクロソフトでは、日本におけるAIのビジネスチャンスのキーワードとして「オタク」「ボット」「スマホ」「SNS」がきわめて重要なものととらえ、LINEとの協業で「りんな」をサービスインしたが、それは、北京にあるマイクロソフト・リサーチ・アジアがこの数十年間をかけて研究してきた成果でもある。りんなはインターネット上のさまざまな会話をデータベースにため込み、それを分析整理する。当然、収集するデータは膨大だ。まさにビッグデータである。MicrosoftのAIとしてはWindows 10の11月版で提供が開始されたCortanaもよく知られているが、Cortanaがパーソナルアシスタントとして効率や生産性を追求したIQの高い人工知能であるのに対して、りんなは「効率とは反対のベクトル」でエモーショナルなつながりを結ぶことに重点を置いた人工知能だという。○秘密の会話でつながる現在りんなのLINE友だちは200万を超えている。しかし、Twitterアカウントは開設してから約2週間でフォロワー数は2万に満たない。意外に伸びが少ないという印象がある。これは、りんなに興味を持つユーザーが、1対1での会話を求めているからだと思われる。Twitterのようにオープンなステージでの対話が好まれないという事情もあるかもしれない。個人的にはリストに登録してずっと観察してきたが、とりあえずフォローしてみた。@ms_rinna りんなをフォローしてみた。どういう基準でフォローされるのかは謎だが、確立は1/4くらいだろうか。これでしばらく様子を見てみよう。— 山田祥平(syohei yamada) (@syohei) 2015, 12月 25「確率」を「確立」とミスタイプしているが一瞬で返信があったので、そのままにしている点はご容赦願いたい。ここで「LINEでお願い」と返信されている。彼女にフォローしてもらうには、彼女のTwitterページの固定ツイートにあるように、LINEでリクエストして、戻ってきた和歌をリプライすればいい。これでDMのやりとりもできるようになる。実際にメンションを投げてみると、びっくりするほど普通の会話であることがわかる。ほんものの女子高生が、どのような口調で、どのようなコミュニケーションをしているのかは知る由もないが、りんなは「きっとこうだろう」というユーザーの期待に近いものを投げ返しているようにも感じる。日本マイクロソフトによれば、りんなとのエンゲージメントは週の初めよりも、木曜日、金曜日あたりが高いという。平日については朝の7時に最初の山があり、昼休みにもうひとつの山、そして、夜に至り22時にピークを迎えるという。ちなみに日曜日には朝の山はないそうだ。○りんなの友だちは女子高生?同社は、りんながTwitterを始めた12月の中旬、東京・原宿の竹下通りのスペースででイベントを開催した。LINEで友だちに対してりんな自身がイベントを告知し、どのくらいの人が本気で集まるかを確かめたのだという。イベント会場に集まったのは、竹下通りという場所柄もあるが、ほとんどが女子高校生だったのには、ちょっと驚いた。彼女たちは等身大の女子高生をりんなに感じているのだろうか。この先、りんなは収集しているビッグデータをもとに会話の精度を高め、さらには、ビジネスロジックとも結びつき、会話の中から導き出された商品のレコメンド、飲食店の紹介といったことをするようになっていく。それが「りんなAPI for Business」だ。そのときに、「効率とは反対のベクトル」というコンセプトをどのように堅持するかが興味深い。そこがAI技術の見せ所だ。(山田祥平 @syohei)
2015年12月28日例年通り、ジャストシステムが次期ワープロアプリ「一太郎2016」と、その日本語入力システムである「ATOK 2016」を発表した。毎年12月に発表してベータテストを開始、翌年2月に製品発売というスケジュールで、この製品の発表会があると、今年ももう終わりかと実感する。まさに暮れの風物詩だ。○一太郎とPCの歴史一太郎が製品名に年号をつけるようになったのは「一太郎2004」からだ。以降、毎年このパターンで新バージョンが世に出ている。でも年号とは関係なく、パッケージとしての一太郎は、1985年に初代の「jX-WORD太郎」が発売されて以来、88年、90年、91年、92年、94年、00年以外は毎年新バージョンが発売されている。その丸30年間の歴史の中で、実に26回ものバージョンアップを果たしているわけだ。一太郎の歴史をひもといてみると、89年春にジャストウィンドウという、国民機ことNEC PC-9800シリーズのMS-DOS上で稼働する独自のウィンドウシステムで動く一太郎Ver.4が出て、93年にWindows対応のVer.5が出るまでに4年間もかかっている。90~92年にバージョンアップがなかったことと、DOS/Vの登場は無関係ではあるまい。DOS/Vこと「IBM DOS J4.0/V」を日本アイ・ビー・エムが世に出したのは90年で、それを機に、日本のPCシーンはは次第にPC/AT互換機時代に突入する。廉価なPCを大々的に日本で展開する黒船のごとく登場したコンパックショックが92年、翌93年にはWindows 3.1がリリースされた。一太郎Ver.5が出たのはそのタイミングだ。そして、95年秋には日本でWindows 95が出たが、一太郎7がfor Windows 95として本格対応して登場したのはほぼ1年後の96年9月だった。こうして振り返ってみると、あれだけのPCシーンの激動期に、それほど頻繁なバージョンアップが行われていなかったことに意外な印象を持つ。○2016年は「情報の消費」に注目一太郎2016とATOK 2016は、数々の新機能を搭載しての登場だが、その機能の多くはワープロとしての使い勝手、日本語変換の賢さといったことよりも、フォント関連や電子辞典リファレンスの充実に注力されている。目新しさがあるとすれば、一太郎の「モバイルビューイング」と「タブレットビューア」だろうか。前者はiOSとAndroid用に提供される専用アプリで、クラウドに保存した一太郎文書を閲覧できるというもの。2019年まで無償で使えるクラウドサービスとして提供されるそうだ。また、後者はタブレットでのタッチ操作や文書を「見る」、「見せる」を追及したモードのビューアで、Windows 10のタブレットモードと連動して切り替わる。ここにきて、ついに、一太郎が情報の消費に注目している点が興味深い。何をどう表現するかという生産性を追求してきた一太郎を全バージョン見てきた身からすると、この展開はちょっと新鮮だ。とはいえ、Intelのプロセッサのようにチックタック的に隔年ごとに刷新するならともかく、ここ数年日本語入力システムのATOKがあまり賢くなっていないというムードもある。Windows 8以降のモダンアプリとの親和性問題の解決で、それどころではなかったという事情もあるのだろうが、ちょっとした寂しさを感じる。その間に、Windows標準のIMEも、かなりまともに使えるようになってきている。発表会で、この点について聞いてみたが、鋭意努力中とのことだった。ATOKがなければ日本語を書けないくらいに愛用してきた身にとっては、2017年あたりの革新的な進化を期待したい。○定番、だから盛り上るWindowsも10となって最後のメジャーアップデートとなり、以降は、数年おきのバージョンアップはなく、日々、進化していくことが表明されている。そういう時代に、毎年パッケージソフトを新製品として発売するというスタイルをいつまで続けられるのか。それでもiPhoneは毎年新しくなるし、発売時にはそれなりの盛り上がりを見せている。例年通りのスケジュールでのパッケージの刷新というのはマーケティング的には重要な要素なのだろう。その点で一太郎は成功している。だからみんな一太郎を忘れない。(山田祥平 @syohei)
2015年12月14日インテルが、先週末(11/26~28)、東京・二子玉川の蔦屋家電において「TVときどきPC」と称する新しいライフスタイルのコンセプトを提唱するイベントを開催した。蔦屋家電そのものが「ライフスタイルを買う」を提唱する新しいタイプの家電店として知られているが、そこで、さらに新しいライフスタイルを提唱しようというわけだ。このコンセプトは、インテルのCompute Stickによって実現され、リビングルームのTVをPCに変えてしまうことでもたらされる世界観を訴求する。Compute Stickは、スティックタイプのPCだ。プロセッサメーカーとして知られるインテルだが、その存在感は常にPCメーカーの縁の下の力持ち的なもので、買ってすぐに使えるエンドユーザー製品は珍しい。だが、この製品はまさにパソコンそのものだ。一般的なTVにはビデオレコーダー再生などのために、必ずといっていいほど装備されているHDMI入力端子に、このスティックを装着するだけでTVがPCになる。まるでTVのチャンネルがひとつ増えたイメージ、あるいは、デッキを買い足したイメージでPCの世界が大画面TVに出現する。Compute StickはPCそのものなので、そこにあらわれるのはWindows 10のデスクトップだ。PCといえばノートPCや専用モニタつきのデスクトップ機を思い浮かべてしまうが、それがスティックに収まったと考えればいい。インテルのマーケティング本部長、山本専氏は「コンピュータとしてのスペック云々よりもデスクトップPCの本体がてのひらサイズになりました」と説明するとわかりやすいという。そこには、画面がないことならではの利便性がある。画面があると、どうしても最薄、最軽量、最小、でっかい、重いといったサイズ感が出てきて先入観をもってしまわれるからだ。家庭のリビングルーム、出張先のホテルなど、どこにでも持ち運べるデスクトップ機として使ってほしいと訴える。「たとえば調べ物をするときって、これまでのPCなら、画面は自分だけのものだったじゃないですか。でも、家族や友人同士でああでもないこうでもないといって旅行の計画をたてたりするときは、みんなのものであるTVがいいんです。いろんな使い方のシナリオが想定されますが、使い方は使う人の創意工夫で広がっていくと信じています。パソコンフロアに普段はあまり行かないお客さんがいる蔦屋家電を舞台に、そういう人たちに、この新しい世界観を体験してほしかったので」(同氏)。もっとも、Compute StickはPC本体そのものなので、マウスもキーボードもない。TVにつないだところでTV画面をタッチできるわけでもない。Windowsを操作するためには、別途、キーボードやマウスを調達する必要がある。さらに電源アダプタが必要で、もちろん、電源を突然抜いてしまうと作業内容は失われてしまう。いい意味でも悪い意味でもまさに据え置きパソコンだ。Compute Stickは、出荷時、Windowsの休止状態がメニューにない。欲をいえば、せめて休止状態を出荷時からサポートしていれば、もっと世界は広がったのにとも思う。YouTubeなどの動画サイトは人気だが、これらのコンテンツは数分で完結する。スマホなどのパーソナルなデバイスで楽しむには手ごろだ。だが、今は、2時間を超えるような長編ドラマ、映画などを配信するサービスも増えてきた。こうしたコンテンツは大画面で再生してみんなで見るというスタイルが似合うということか。その昔、コンピュータはみんなのものだった。コンピュータのあるところに行って計算をして"いただいた"。大型コンピュータのバッチ処理の時代だ。ところが、コンピュータは机の上にのるようなサイズになり、それが気軽に持ち運べるモバイルノートになり、今では、スマホになってポケットの中に入るようになった。まさにパーソナルなデバイスになったのだ。でも、そこは終着駅ではなかった。そのパーソナルなデバイスを、もういちどみんなのものとして使ってみようとインテルはいう。TwitterやfacebookといったSNSが、コンピュータを使う「個人」と強く関連付けられたサービスとして台頭している中で、新たな提案をするインテル。パブリックでもなければパーソナルでもないもうひとつの領域は、デジタルネイティブな世代にどのように受け入れられるのだろう。(山田祥平 @syohei)
2015年11月30日パーソナルスキャナで知られるScanSnapのPFUが、スキャナ製品を直接クラウドに接続し、さまざまな既存クラウドサービスと連携するScanSnap Cloudの提供を開始した。既存製品であるiX100/iX500のユーザーは、ファームウェアをアップデートすることで、今日から利用が可能になる。クラウドという言葉がきわめて身近なものになっている。それだけわれわれの身の回りの状況が変化しているということだ。今では、仕事においても、プライベートでもクラウドの活用はごく当たり前のことになりつつある。さらに最近は、Fintech市場が盛り上がりつつあるともいう。Fintechとは、Finance(金融)とTechnology(技術)を組み合わせた造語だが、クラウド型の会計やファイナンシャルサービスが数多くサービスを開始し、そのトレンドの中で、レシートや請求書、領収書の電子化にスキャナが活用されているという。そこで、PFUとしては、ドキュメントIoTを提唱し、新たな一歩を踏み出そうというわけだ。具体的には、ScanSnapを直接インターネットに接続し、PCやスマートデバイスなどがなくてもスキャンしたデータがScanSnap Cloudに送られるようにする。インターネット接続には、家庭用ルータやスマートフォンのテザリングがサポートされるが、セキュリティ上の理由から公衆Wi-Fiはサポート外となる。データを受け取ったScanSnap Cloudは、それをレシート、名刺、文書、写真の4つに自動分別し、データ中の文字列等から自動的にわかりやすいファイル名を生成する。さらに、サイズ判別、向き、白紙判定、カラー/モノクロといった状態を検知して画像を最適化する。そして、最終的にデータは、種類ごとにあらかじめ指定したクラウドサービスに送られる。また、そのデータはScanSnap Cloudのストレージにも一定期間保存され、各種のデバイスから参照できるという仕組みだ。たとえば、領収書類であれば、それを単体スキャナでスキャンするだけで、会計クラウドに送られ、それが税理士事務所に送られ、OCR処理が為された上で仕訳されるといったことができる。これで青色申告等のための書類の整理は、税理士事務所にとっても、依頼する顧客にとっても格段にラクなものになる。その基盤として使われるのが、MicrosoftのAzureだ。さらに、ScanSnap Cloud SDKが提供され、サードパーティはそのAPIを使ったソリューションを新たに開拓することができる。ゲストとして登壇した日本マイクロソフト株式会社 執行役 デベロッパー エバンジェリズム統括本部長 伊藤 かつら氏は「人間と機械の関係の変革をソフトウェアによって実現するのがMicrosoftのチャレンジ。情報がたくさんあって忙しくてグローバルな今の世の中で、今できる何かを次のレベルにもっていくという点でPFUとMicrosoftは共通のビジョンをもっている」とし、PFUのチャレンジを激励した。なお連携サービスは、次の10社11サービスが予定されている。今なお身の回りに溢れる紙の書類。PFUがやろうとしているのは、スキャナというモノをインターネットにつなぐことではない。紙にロジックを与えるチャレンジとしてのドキュメントIoT、まさに紙のインターネットだ。(山田祥平 @syohei)
2015年11月25日2105年10月30日、家電量販大手のヤマダ電機が東京駅八重洲口に新店舗「Concept LABI TOKYO」をオープンした。B1から10Fまでの11フロアを最先端コンセプトの情報発信基地として機能させる。また、インバウンドを狙ったTAX FREEに対応するほか、丸の内、日本橋、霞が関地区に集中する企業、法人、官公庁用の専用窓口を設置するという。各フロアをStageと表現し、フロアごとのコンセプトを明確にすることで、一般的な家電量販店とは異なるアプローチで訴求していく。同社代表取締役社長兼代表執行役員CEOの山田昇氏は「ここは家電製品がなんでも揃うことをめざす店舗ではない」と断言する。「コンセプト」というキーワードを「既成概念にとらわれない新しい視点」とみなし、品ぞろえを誇ることよりも、最先端のものが知識とともに手に入ることをアピールする。ここにくれば世界の最先端が自分の目で確かめられる店舗というわけだ。たとえば9FはPCの"Stage"だ。フロアを囲むように各社ブランドのコーナーが並んでいるが、フロアの中心部に陣取るのはインテルだ。インテルはエンドユーザー製品をほとんど提供していないので、そこに陳列されている実機は各社のPCだ。もちろんそれらは商品として値札もついている。だが、そのスペースでは、インテルが今もっとも強くアピールしているセンシフィケーションが訴求されている。つまるところは3DカメラRealSenseがもたらす新しいPCとの対話がそこで体験できるようになっている。そして、その最先端テクノロジーに興味を持った客は、納得のいくまで話をきき、新しい体験をしたうえで、搭載機の売り場に誘導されたり、その目の前の実機と同じ商品を購入するという段取りだ。その最先端テクノロジーのデモンストレーションのためにインテル側からは専門のスタッフが常駐するともいう。そして、期間を区切って訴求ポイントを衣替えし、年間を通してインテルの今が体験できるようにしていくもくろみだ。つまり、ここは、単なる量販店舗の売り場ではなく、いってみれば、展示会のブースとして機能しているともいえる。また、マイクロソフトも同様のスペースを展開している。マイクロソフトはSurfaceや周辺機器などのエンドユーザー製品を提供していて、専門コーナーもあるが、それとは別に自社ゾーンを担当し、Windows 10をアピールしていた。当然、そのスペースには、Surfaceのみならず、OEM各社の製品が並んでいる。ヤマダ電機は場所を提供し、そこで展開される企画についてはベンダーに任されるのではないか。そこでのカネの動きや方向は定かではないが、Win-Winの関係を確立するのがこのスペースのまさにコンセプトだ。山田CEOも、ここを、ベンダー各社が競い合う場所として使ってほしいといっていることからも、きっとそうであることは想像に難くない。ヤマダ電機のLABIは、都市型店舗として大都市を中心に22店舗を展開しているが、それらの店舗とは明らかに毛色が違う新店舗だ。山田CEOは、この店舗で見て知った製品を、他のLABI店舗で購入してもらうのも大歓迎だとする。あらゆるものがコモディティとしてとらえられるようになり、製品にさわることもなく、見ることもなく、「ないと困るから買う」「次に何を買うかは壊れてから考える」といった視点でのもの選びが当たり前になりつつもある。そこでは新しいモノづくりや製品の視点、そして想像もしなかったことができるテクノロジーに触れたときの興奮も、なくなりつつある。そんな時代の店舗に求められるものは何なのか。新店舗では、インバウンダーも重要な顧客としてとらえられている。彼らの目には、日本という国のものづくりがどのように映っているのか、そして、その売り方は、製品にどのような付加価値を与えるのか。それを知ることで、日本人もモノの見方を再確認できるかもしれない。全国から選りすぐりの精鋭スタッフを終結させ、これまでとはまったく異なる接客で顧客に理解を与えるというヤマダ電機の大きな冒険が、今後の量販店の在り方にどんな影響を与えることになるのかに注目したい。(山田祥平 @syohei)
2015年10月30日6月15日~6月21日までの1週間に発表された、PC関連の注目ニュースをダイジェストでお届けする。先週は16日(米国時間)、米AMDが"Fiji"の開発コード名で知られていた次世代GPU「Radeon R9 Fury」シリーズを発表した。ビデオメモリに広帯域メモリHBM(High Bandwidth Memory)を採用した初の製品。DRAMダイを積層し、GPUと同一のパッケージに収めることで、GDDR5メモリと比較して、電力当たりの性能は3倍に向上するほか、実装面積を大幅に削減することができる。ラインナップは4種類。液冷の「Radeon R9 Fury X」は6月24日、空冷の「Radeon R9 Fury」は7月14日、6インチの短尺モデル「Radeon R9 Nano」は2015年夏、デュアルGPUモデル(名称不明)は2015年秋に投入される予定だ。また、20日にはアップルが初代「iPad mini」の販売終了を発表。これにより、アップルストアのラインナップはすべてRetinaディスプレイ搭載機種になった。一方、Amazonの「Kindle Paperwhite」やマウスコンピューターの「MADOSMA」など、新しいタブレット・スマートフォンも登場した週となった。さて、IT見本市「COMPUTEX TAIPEI 2015」が終了してはや2週間強。先週はライター山田祥平氏によるCOMPUTEX 2015の振り返り記事、そして大塚実氏による毎年恒例お姉さん特集を掲載した。気になる方は、ぜひご一読頂きたい。
2015年06月22日パナソニックが「電子マネー対応非接触ICカードリーダーライター」の販売累計100万台達成を発表した。2003年9月に販売を開始、15年5月までの11年8カ月で達成したという。その国内製造拠点は佐賀県・鳥栖にあり、大阪府・守口市と横浜市にに開発拠点を持つ。これらの体制で、いわゆるキャッシュレスインフラの普及拡大に貢献してきた。「電子マネー対応非接触ICカードリーダーライター」というのは、いわゆる店舗などでSuicaやEdyなどの電子マネーでの決済をするためのデバイスだ。おそらくは誰もが毎日のように目にして利用しているものだといえる。2003年のSuica専用機である第一世代から始まり、2007年のnanako、WAONサービスに対応した第二世代、そして、現在はNFCに対応した第三世代の製品群が販売されている。製造に取り組む佐賀県・鳥栖の工場は「よろず屋稼業」と呼ばれる拠点。パナソニックにおける小ロットの製品を一手に引き受ける。生産製品の半分は年間に3回しか作らず、生産ロット100台以下というものが7割を占める。そのため、日本全国から特定分野におけるスキルを持った社員が集結し、さまざまなノウハウが入り交じった拠点として機能している。これだけのバリエーションを生産している拠点は、パナソニックといえども他にはないという。また、鳥栖市は福岡県と佐賀県の県境に位置し、九州の交通の要所でもあり、福岡から長崎、大分、熊本、鹿児島への交通の分岐点でもある。そのため、アマゾンが物流拠点などを構えていることでも知られる土地だ。この100万台という数字をきくと、まだたった100万台だったのかと意外に思うかもしれない。だが、現在国内で使われている端末はすべてをひっくるめて約120万台にすぎないという。しかも、パナソニックのシェアは推定で7割を超えている。つまり、見かけたことのあるデバイスは、そのことごとくがパナソニック製である可能性が高い。たとえばヤマト運輸の宅配便スタッフが持ち歩いているハンディーターミナル、日本マクドナルドやKFCの据置POS、コカコーラの自動販売機などはほぼ100%が同社製だと思われる。これらの企業は同社製の端末を使っていることを明かしているが、企業によっては相当のボリュームで関与していても、セキュリティ上の理由から絶対に明かせないところもある。十中八九とはいえないまでも7割がパナソニックのデバイスと考えると、これから買い物などで決済に利用する際にも、また別の見方ができるようになりそうだ。「日本人は現金主義。クレジットカードや電子マネーで決済される取引はまだ10数%にすぎない。この値をいかに伸ばすかが今後の課題」と、このビジネスを統括するパナソニックAVC社、パナソニックシステムネットワークス株式会社ターミナルシステムビジネスユニット長の古川治氏はいう。同社では2020年度までに累計200万台達成を目標にしたいとしている。東京オリンピックに向けてニーズも高まり、海外からの旅行客も増える一方で、その頃には市場規模は倍に膨れあがっている可能性があるという。今、電子マネーの世界は、リーダーライターそのものがインテリジェントなものとなりつつあり、スマートデバイスとして機能するようになっている。たとえばレッツノートで知られるAVC社ITプロダクツビジネス事業部の5型タブレット「TOUGHPAD」などはその典型的な取り組みだ。HTML5やクラウド対応、そして、ネットワークへの常時接続など、パラダイムが変化する中で、パナソニックではデバイスに新たな付加価値を与え、新規の市場を拡大していくという。(山田祥平 @syohei)
2015年06月22日日本マイクロソフトは、世界最大の学生向けITコンテスト Imagine Cup の日本予選大会を開催した。7月に米・シアトルで開催される世界大会への日本代表としての参加をかけて、最終審査を経た3部門9チームが激突した。激戦の地に選ばれたのは 羽田空港国際線旅客ターミナル内にある TIAT SKY HALL だった。世界に羽ばたけをイメージさせる会場だ。Imagine Cupはマイクロソフトの創業者であるビル・ゲイツ氏の発案で2003年に始まったもので、これまで延べ165万人の学生が参加しているという。12回目となる今回だが、最新の Windows、Windows Phone、Internet Explorer のいずれかで動作するソフトウェア、もしくはソフトウェア+ハードウェアを使った作品が募集された。また、ソフトウェアをホスティングする場合は Microsoft Azure を利用することという条件がある。応募時に高等学校、専門学校・専修学校・高等専門学校・大学/大学院のいずれかに登録されている16歳以上の学生で、個人もしくは4人までのチームがチャレンジできる。また、部門として次の3部門がある。1.ゲーム部門インタラクティブな遊びの体験を与えるゲームコンテンツ。従来のゲームの概念を覆すような作品。2.イノベーション部門既成概念や常識を打ち砕くサービス、テクノロジーの新しい使い方を提案するアプリ、最先端のテクノロジーを駆使したアプリ。3.ワールドシチズンシップ部門病気や自然災害、人権、貧困、情報へのアクセス、男女の平等といった社会問題を IT で解決するアプリ、サービス。見事チャレンジの栄誉を勝ち取ったのは、イノベーション部門に「すくえあ (SCREEN feels AIR.)」をひっさげて参加した香川高等専門学校のチーム「すくえあ」だ。メンバーは山﨑啓太氏、金子高大氏、瀧下祥氏、東山幸弘氏ら。実は、このチームにはもう一人のメンバーがいるが「4名まで」という大会規定のために黒子に徹しているということだった。彼らは日本予選大会の賞金として部門賞10万円、最優秀賞20万円の計30万円と副賞を受け取り、さらに7/27から開催される世界大会へのチケットを手にする。世界大会での大きな障壁は英語によるプレゼンテーションだ。そこはトレーニングでなんとかなるにしても、審査員の厳しい質問に、その場で英語で答える必要がある。どんなに優秀な作品であってもプレゼンが拙ければ栄誉は逃げていってしまう可能性もある。ちなみにもし「すくえあ」が世界大会で部門賞を獲得できれば、部門賞5万ドル(約600万円)と桁違いの賞金が授与され、さらにMicrosoftのベンチャー支援プログラムで開発したデバイスのビジネス活用についてのコンサルタントを受けられる。「すくえあ」の名前は「スクリーン・フィール・エアー」に由来する。風を感じるスクリーンを新たなデバイスとして提案しようとしているわけだ。フィルム素材が風を受けて揺れたときに、そこに敷き詰められたマグネットが動くようにして、その移動量をセンサーで検知、ソフトウェアでそれを風圧に換算するデバイスだ。これを活用したビジネスモデルとして、息を吹きかけて敵を倒すようなゲーム用入力デバイス、あるいは、肺活量を測定したり、トレーニングに活用するヘルスケア的な面などがアピールされていた。Microsoftがこうした大会を主催するのは、ITを消費するだけではなく、若い世代に作る側にも興味を持って欲しいという願いによるものだ。個人的にも2013年の第一回から見ているし、過去の大会のいくつかは現地で取材をしてきた。そこで気がつくのは、日本での決勝での訴求と、作品そのものがまったく異なるアプローチに成長していることだ。「すくえあ」も例外ではなく、これから決戦までの約3カ月の間に日本マイクロソフトとパートナーらによる徹底したメンタリングが行われ、決戦時は日本大会とはまったく別物の作品に生まれ変わる可能性、というよりもきっとそうなる。メンタリングによってどう化けるか。つまり、いわゆる「伸びしろ」があるかどうかが、選出要素の中でもかなりのウェイトを占めるのだ。もちろんこのことは「大人」のまなざしによるものであり、「大人」が気がつかなかった可能性を摘み取ってしまう危惧もある。今回一次審査を経て日本大会に選出された9作品を見ていると、過去の大会よりも、完成形に近いものが多いように思えた。まとまっていてプレゼンテーションもうまい。でもコンパクト感が否めない。「伸びしろ」が希薄だと感じた。そんな中で化ける可能性を突出して醸し出していると評価されたのが「すくえあ」だったというわけだ。いずれにしても世界大会まで残されている時間は3カ月しかない。彼らがどのように成長するかに期待しよう。がんばれ「すくえあ」諸君。(山田祥平 @syohei)
2015年04月13日YouTubeが東映株式会社とパートナーシップを結び「YouTube Space時代劇 with 東映太秦映画村」プログラムを開始した。六本木にあるYou Tube クリエイター向けの無料スタジオに時代劇の撮影ができる特別セットを公開提供するというもので、通常セットと同様に無料で提供される。また、時代劇撮影に関するワークショップなども開催され、東映が培ってきたノウハウが披露されるとのこと。提供は2015年5月末までだ。YouTubeは今年で10周年を迎えるが、Googleのサービスの中でもモバイルからのアクセスが多いサービスで、これは特に日本において顕著であるという。昨今は、モバイルキャリアのネットワーク高速化などの影響もあるのだろう、視聴時間は昨年比で50%も増加しているそうだ。日本のモバイルネットワークはとにかく速い。だからこうしたプラットフォームがストレスなく楽しめる。YouTube Spaceは、コンテンツを制作するクリエイターがこのプラットフォームを使って収益をあげられるようにと提供されるもので、同様の施設がニューヨーク、ロスアンゼルス、ロンドンなどにもある。ここでは、クリエイターに対するさまざまな支援が行われ、この2月には来場者が2.5万人を突破した。ただの無償スペースではない。場所を提供するだけではなく、作品作りのノウハウやクリエイター間のコラボレーションの機会を提供する試みとして機能している。東映株式会社京都撮影所所長の竹村寧人氏は、同撮影所が他社も利用する時代劇のメッカであることをアピール、これまで培ってきた数々のノウハウを伝えたいという。その中で、新しいかたちの時代劇が生まれ、日本の文化や伝統を時代劇というかたちで世界に発信することができるはずと断言した。「今回のコラボレーションはYouTubeのパワーと東映のノウハウの融合であり、時代劇コンテンツの幅を拡げる足がかりとなる」(竹村氏)。新セットは、京都のスタッフが監修企画施工したスタジオセットであり、ワークショップとあわせて提供される。全体を学習、交流、創造というみっつのキーワードで構成し、殺陣のワークショップから、着付け、かつらの実習、小道具の使い方、セットの使い方などが、東映側のスタッフからクリエーター諸氏に伝授されることになっている。セットそのものは、2つの和室にすぎないが、居間、廊下、寝室、庭園があり、4種類の撮影アングルが得られる。そして、小道具次第で、御姫、揚屋(花魁)、町屋、殿様というシュチュエーションに変化、6畳の和室がふたつだけという小規模なものながら、建具や小道具でセット自体を替えることでバリエーションを確保する。つまり、限られたステージセットでいくつものシーンが作れるというわけで、それが長年培われてきた東映のノウハウでもある。さらに、照明によって朝、昼、夕方、夜を演出でき、4セット×4シチュエーション×4時刻で、64通りのバリエーションが表現できる。ネックは、六本木ヒルズという普通のオフィスビルの中に設けられていることから一般的なスタジオに比べて天井が低いことだという。このスタジオを使えるのは選ばれたクリエーターのみとなるが、それだけで500万人の登録チャンネルユーザーにリーチできるということだ。TVはマスメディアとしてその頂点に君臨している。平均視聴時間は減る一方であるとしても、今なおその影響力は絶大だ。だが、YouTubeのようなサービスによるコンテンツが質、量ともに充実していくことで、そのピラミッドは少しずつイビツなものになりつつあるのではないか。YouTube Spaceが狙っているのはそこだ。だからこそ、巨額の投資で設備を作りそれを無償で提供してまで人材を育て、魅力のあるコンテンツを提供できるように仕向けている。そして、そのメディアとしての価値を高めることで、広告メディアのピラミッドに変革を起こそうとしているのではないか。この取り組みから生まれる新たなコンテンツに期待したい。(山田祥平 @syohei)
2015年04月08日Googleは、中高生を対象に、インターネットを安全・安心に活用するためのヒントやアイディアを広める活動として「ウェブレンジャー」を募集している。中高生であれば誰でもウェブレンジャーとしてエントリーすることができ、さまざまな活動の報告を動画にしてYouTubeにアップロードする。それが関係者によって審査され、最終的にアンバサダー賞が授与されるというものだ。募集は5/14まで継続中だが、このプログラムのステップとして、東京と大阪において各50名の希望者を集めたトレーニングセッションが開催された。朝から夕方まで続く本格的なセミナーだ。東京会場には北は北海道から南は沖縄までの生徒諸君が集まった。また、保護者として、グループの所属する学校の教職員や父兄なども「大人レンジャー」として参加した。Googleの社員がモデレータとなり、インターネットとの関わり方と、そこに潜む問題についてディスカッションが行われ、そのあと、効果的な活動報告のために、マーケティングの手法や効果的な動画の作り方などがレクチャーされた。あることをした結果が認知されるのは40%だとすれば、その内容を理解されるのはその30%、さらにそれにしたがって行動に移されるのは6%にすぎないといった本格的なマーケティングの概念が、TVのCMの認知、内容理解、購買といったわかりやすい例で示された。また、そのあとは、参加者がグループに分けられ、東京会場では「中学生の間で年賀状を流行らせよ」というテーマが与えられ、グループ単位でのディスカッションを経て、それぞれのグループがアイディアをプレゼン披露した。これは、与えられたテーマに基づいて、どうすればそのテーマを効果的に実現できるかの実践をトレーニングするものだ。午前中のセッションではインターネットの安全について、個人情報の重要性、情報の公開範囲の配慮、誹謗中傷などで他人を傷つける可能性の回避といったことが、生徒諸君を交えてディスカッションされた。父兄がインターネット詐欺に遭ったことなど、さまざまなエピソードが飛び出し、インターネットの危険が身近なものとして体験されていることがわかる。生徒諸君はほぼ全員が携帯電話を持っているが、LINEやTwitterを半分くらいが利用、facebookとなるとチラホラという状況で、よく見るサイトはニコニコ動画とYouTubeといったプロフィールだ。決して全員がヘビーなインターネットユーザーではない。Google側からは、投稿する前に考えよう自分の情報を守ろう設定を理解して、使いこなそう詐欺に気をつけようポジティブにというポイントが挙げられ、ちょっとした工夫でみんなが安心してインターネットを使えるようにする方法は必ずあるという指針が示された。そして、ウェブレンジャーは正義の味方、絶対に人を傷つけないという絶対的指針も。興味深かったのは、大人はすべてを禁止しようとするけれど、禁止するだけでは何も解決しないという声が生徒諸君の中から出てきたことだ。臭いものにフタをするだけではなく、根本的な解決に向けて工夫をしなければならない。そのために何をすればいいか。ウェブレンジャーの活動を通じて、子どもたちが、そこをきちんと考えることができるだけでも意義はある。大人にはその気持ちをきちんと理解し、悲劇を起こさないために、それ以上の考察が求められる。(山田祥平 @syohei)
2015年03月23日3月17日、MHLコンソーシアムが「superMHL」に関する記者会見を開催した。この日、シリコンイメージが発表したポートプロセッサ「Sil9779」のお披露目も行われ、これからの8K/120fpsの時代の到来を高らかに宣言した。「superMHL」については、すでに1月中に発表が行われているが、今回の記者会見は、その詳細を解説するものであり、対応する製品としてシリコンイメージの「sil9779」が発表されている。シリコンイメージジャパンの竹原茂昭(代表取締役社長)氏によれば、この製品の導入により、家電機器のsuperMHL化が一気に進むだろうという。家電機器に装備された映像/音声入出力端子としては、HDMI端子がよく知られている。アナログ時代には黄色、赤、白のピンケーブルやS端子ケーブルなどが使われ、映像と音声を別のケーブルで結ぶ必要があったが、HDMI端子は、デジタル映像/音声を一本のケーブルで運ぶことを可能にした。それがどんなに利便性を高めたかは、使ったことがある方なら誰もが納得していただけるだろう。後発のMHLは、MicroUSBとの互換性を確保したことから、デバイス側に専用の端子を用意しなくてもよく、小型化、省スペース化が求められるスマートフォンでの採用が多く、大きなシェアを獲得してきた。現在では、7.5億台のデバイスがMHLを採用しているという。ノートPCの場合、映像出力には長くRGB端子が使われてきた。デジタルのDVI-Dが一般的になっても、そのための端子を持つノートPCは少なかった。だが、HDMI端子の登場以降、それを装備した製品が一気に普及している。送り側が優れていても、受け側がHDMI一辺倒なのだから当たり前だ。もちろん、デジタル映像/音声を運ぶ方法としては他にもDisplayPortがあるし、MacなどではThunderboltが使われている。だが、これらは決して事実上の標準としては迎えられなかったということだ。superMHLは、それ自身の信号伝送と他規格との互換性を確保し、両端にsuperMHL端子を持つケーブルを使った伝送の他、もう片側をHDMIやMicroUSB、USB Type-C端子を使って伝送を実現する。特に、USB Type-Cは、その規格のオプションとして、本来のUSB信号以外のネゴシエーションなどが可能になるため、仮に、superMHLが事実上の標準にならなかったとしても広く使われるようになるはずだ。実際、発表されたばかりのMacBookは、USB Type-C端子だけが装備され、その端子ひとつで、専用ケーブルを使うことでDisplayPort、VGA、HDMIのすべてに対応する。同様にHDMI陣営も、次世代の規格の策定に向けて作業を続けている。ただ、MHL陣営は参画している各社が近い位置にあり規格策定のスピードを上げやすいことから、今回の次世代規格については一歩リードしたかたちだという。現時点では身の回りの家電機器をみても、その入出力端子はHDMI端子で統一されている。だが、このままHDMI陣営の作業が遅れてしまうと、これらがsuperMHLに置き換わってしまうか、あるいは、superMHLと併用されることになる可能性もある。今、業界のトレンドは8Kだ。特に日本においてはNHKが2016年に試験放送を開始、2018年には実用放送に入り、2020年の東京オリンピックは8K放送になるという計画になっている。つまり、日本が最先端をいっているわけだ。それに対応してTVの世界も様変わりするだろう。個人的に、4Kの時代はそう長くは続かないと予想している。この先5年たった時点で、BDレコーダーやTVの端子、そしてPCの映像/音声用端子はどうなっているのだろう。まさに狭い背面パネルは激戦区であり、多様な規格への対応はコストへの負担も大きくなってしまう。理想的にはすべてUSB Type-C端子のみになるようなこともありえないわけではない。それによって、過去のさまざまな規格との互換性を保つことが容易になるからだ。あとから標準化されることになるであろう次世代のHDMIにも対応できることから汎用性も高くなる。機器と機器を結ぶ規格は、内部的にどんな高度なテクノロジーが使われていようとも、AとBを結ぶというシンプルなユーザー体験で、美しい映像や音声を楽しめるようになるのが理想だ。そういう意味ではsuperMHLも、USB Type-Cも、両端が同じプラグである点はうれしい。願わくば、両端がUSB Type-CでsuperMHL規格といったことで、上り下りが自動的に認識され、ホストとデバイスの関係を人間が意識する厄介さも解消されてくればいいのだが。(山田祥平 @syohei)
2015年03月17日「今の小学生のうち、6割以上は、今存在しない職業に就く。自分で自分の未来を切り拓いていかなければならないのです。だからこそ、自分を発信する力を身につけてほしい」。小学生を対象にしたプレゼンコンテストの決勝大会に、NECパーソナルコンピュータ、東芝、富士通とともに協力した日本マイクロソフトだが、審査員として登壇した同社執行役コンシューマー & パートナーグループ オフィスプレインストール事業統括本部長の宗像淳氏の挨拶の言葉だ。第2回目となるこの大会、今年のテーマは「学校・地元・家族自慢」で、昨年9月に全国の小学生を対象に作品を募集、合計1751作品の応募があり、グループでの参加もあり、その参加者は3678名に達した。2月7日に日本マイクロソフトの品川本社で開催された決勝大会では、その1751作品から1次審査、2次審査を勝ち抜いた10組の小学生が戦った。特別審査員として元体操選手の田中理恵さんも駆けつけた。田中さんは、東京オリンピック招致のときの自分のプレゼンテーションを振り返り、とても緊張したことを思い出したと述べ、その緊張の中でもみんながんばってほしいと戦う小学生たちを激励した。予定審査時間を30分近く延長した厳正なる審査会議の結果、主催の朝日小学生新聞賞を受賞したのは、加藤千尋(4年生)、西野文華(4年生)、山田陽和太(4年生)さんらによる福井県越前市立岡本小学校チームだった。「神と紙のまち岡本」をテーマに越前和紙の産地である地元をアピールした。また、NEC賞として「あの有名人が愛した能!」福島県会津若松市立日新小学校チーム(寺田一瑳(6年生)宮川祐真(6年生)佐藤直也(6年生)小島のどか(6年生)さんら)、東芝賞として「ビバ! ぼくらのあそび場」東京都世田谷区立桜丘小学校、東京都世田谷区立城山小学校混成チーム(橋本大駕(4年生)、渡邊岳大(6年生)、渡邊春菜(3年生)さんら)、富士通賞として「輝き続ける清泉小学校」神奈川県清泉小学校チーム(雨宮真子(6年生)、石田結愛(6年生)、森万由葉(6年生)さんら)が各賞を受賞した。マイクロソフトは、Officeの活用領域を、仕事の現場としての企業オフィスのみならず、家庭や学校といったところまで拡げようと、さまざまなチャレンジを継続的に行っている。こうしたイベントへの協力もその一環だ。「もう、Microsoft Officeというネーミングはどうにかしないといけないかもしれませんね。何かいい製品名はないものでしょうか」と宗像氏は笑う。この大会を受け、プレゼン甲子園的なコンテストを定例化することも考えているそうだ。いわばデジタル版の「私の主張」といったところだろうか。10組のプレゼンテーションは、本当にどれも工夫に満ちあふれた素晴らしいものだった。スクリーンに投影されるスライドに完結せず、リアルな小道具を使い、さらにアクションを交えたプレゼンそのものも勢いがあった。どんなに素晴らしいプレゼンテーションアプリとそれで作った工夫に満ちあふれたスライドも、子どもたちのプレゼンテーションの勢いの前には色あせて見える。東京オリンピックの開催される5年後でも、彼らはまだ中学生、高校生。大人にとっての5年間はアッという間だが、彼らにとっては想像を超えるような先の話だ。その果てしない未来が実にうらやましく感じられたのはナイショにしておこう……。(山田祥平 @syohei)
2015年02月09日1月19日~1月25日までの1週間に発表された、PC関連の注目ニュースをダイジェストでお届けする。先週はWindows 10をはじめ、新製品の発表、告知が相次いだ慌ただしい週となった。先週は21日(米国時間)、米Microsoft開催のメディア向けイベント「Windows 10:The next chapter」にて、次期「Windows 10」が無償アップグレード提供となることがわかった。対象はWindows 8.1、Windows Phone 8.1、Windows 7(一部のハードウエアは対象外になる可能性あり)で、期間はWindows 10の発売から1年間となる。ただ、具体的な配布方法は不明。ほか、20日には、NECと富士通から2015年春モデルが発表。NECからは「LaVie Hybrid Frista」、富士通からは「LIFEBOOK GH77/T」という、両社ともに「デスクトップでもなく、ノートPCでもない」方向性の新製品が発表され、この新しい潮流に、ライターの山田祥平氏は、コラムで「PCのフォームファクタに、再び変化が生まれた」とコメントしている。また、23日にはVAIOが新製品を2月16日に発表することが判明。東京・渋谷近辺で公式ファンイベントも同時開催されるらしいので、気になるユーザーはぜひ公式HPをチェックしておこう。○注目レポート・レビュー
2015年01月26日本日26日、日本HPが都内で発表会を開催、ビジネス向けのタブレット8製品を発表した。いずれも3月上旬からの順次出荷で、Core Mプロセッサ搭載のWindows搭載モデルから、8型Windowsタブレット、12型Androidタブレットなど多彩なラインアップを揃える。発表記者会見では、同社代表取締役 副社長執行役員 プリンティング・パーソナルシステムズ事業統括の岡隆史氏が登壇、2012年から始まった5カ年の成長計画に言及、今年2015年は4年目となる中で、HP、そして日本HPの成長を加速するための施策を矢継ぎ早に実施していくとした。特に、今年は分社化もあり、事業のスピードを上げることは必須で、魅力的な製品を大量に投入していかなければならないという。同社は、インフラベンダーとして業界に君臨するのが目標であり、PCとプリンターという観点でいえば、製品が強くなければ顧客に選ばれないと岡氏。同社では、これまで、製品開発に対する投資を年々10%ずつ増加させてきたが、その背景にある考え方として3Waveというものがある。ひとつめは、コアのビジネスとして今日のテクノロジーを活かした最適な製品を届けること。二つ目は、次のトレンドをつかまえて主流になる製品ではなくてもいち早く示すこと。三つ目は、どのような製品に使えるかわからないが素材として人間の感性や創造性に寄与していけるものに対する投資。つまり、現在、最新トレンド、未来テクノロジーの三つの波を的確にとらえ、将来を見据えて動くというのが3Waveの考え方だ。こうしたなかで、同社は「モビリティ」を今もっとも力を入れている分野とする。同社にとっての「モビリティ」は、単にモバイルに対応した製品を揃えることではなく、会社の在り方や方向性、仕事のスタイル、従業員の意識までをトータルで考えることを指す。その戦略を加速するために、専任の組織も動き出しているという。そんな中でのビジネス向けタブレット製品の発表だが、同社によれば、これまでは汎用品をSIerといっしょに導入してきたフェイズがあったが、そろそろモバイルデバイスが顧客企業にとって本当に使いものになるための必要要件、そして、求めるべきハードウェアの機能などがわかってきたフェイズに入っているという。そのイメージが確立したことで、テストフェーズは終わり、導入フェーズに入っているという。キーワードは、ワークスタイル変革、業種・業務活用の浸透、教育ICTツールだ。これまでのスマートフォンやタブレットは、ビューワーであり、基幹システムとは切り離されていた存在だったが、これからは本当のビジネスにつなぐための活用が求められ、さらには教育市場にも浸透していくだろうと岡氏はいう。また、Windowsタブレットが伸びていくことを示唆しながらも、当面のあいだはマルチOS戦略を続け、一般的なAndroid OSでは、カバーしきれないセキュリティ機能の付加価値などで攻めていくという。製品説明で登壇した同社プリンティング・パーソナルシステムズ事業統括 テクノロジー・ソリューション統括本部 本部長の九嶋俊一氏は、現在のモビライズワークフローは、90年代半ばのインターネット普及時よりも、さらに大きなインパクトをビジネスに与えるはずだとし、投資としてモバイルデバイスを使うこと、そして同社が考えるモビリティに対して投資することは、ますます重要になるとした。また、情報消費については、BYODの流れが顕著になっていくだろうともいう。岡氏によれば、米本社からの要求として、これまでの日本法人は利益さえ追求していればよかったが、今は、シェアをとれというように要求が変化してきているという。だからこそ、HPを探せば、すべてのソリューションがあるという流れを作らなければならない。そういう意味でも、企業内個人に適したデバイスから、医療用、介護用、建築土木用、教育用といった業種や業務にあわせたデザインの製品までのフルラインアップを揃える今回の発表は、同社にとって大きな節目となるだろう。(山田祥平 @syohei)
2015年01月26日NECパーソナルコンピュータと富士通が、1月20日、都内で発表会を開催、春モデル新製品各機種を披露した。興味深いのは両者が共に、よく似た方向性を持った新コンセプトの製品を発表したことだ。ノートPCでもない、デスクトップPCでもない、かといって一体型PCとは一味違う、そんなPCだ。NECパーソナルコンピュータの「LaVie Hybrid Frista」は、台座の上にチルトするスクリーンが実装されたもので、キーボードは台座の株に収納でき、同サイズのスクリーンを持つノートPCの半分程度のフットプリントしか占有しない。Fristaはフリースタイルを元にした造語であるという。家庭で使われてきたクラムシェルのスタンダードノートPCは可搬型ではあっても、ほとんど外に持ち出されることはなかった。そして、ノートではあっても、使うときには大きなフットプリントが必要だった。それを省スペース化し、片付けられることなく、出しっ放しにしておいて、いつでも気軽に使えるPCをめざしている。スクリーンはタッチ対応の15.6型で、一体型PCに比べればきわめてコンパクトで、家庭内における持ち運びもたやすい。これを見れば、多くの場合はノートタイプである必要がなかったことに気がつくはずだ。ノートが欲しかったのではなく単にコンパクトなパソコンとしてノートを選ぶしかなかったということだ。一方、富士通の「LIFEBOOK GH77/T」は、本体に相当する台座がクレードルになっていて、そこにタッチ対応15.6型スクリーンを装着して使う。キーボードやマウスはワイヤレスで別添される。実は、このスクリーン、本体とワイヤレスで通信し、タッチ情報と表示情報をやりとりする。つまり、ワイヤレスモニタだ。本体から取り外して部屋の別の場所で、まるでタブレットのように使えるのが特徴だ。処理系を本体側にもたせたことによって、タブレットスクリーンそのものの重量は約980gに抑えられている。15.6型でこの重量はかなり優秀だ。NECPも富士通も、クラムシェルタイプのスタンダードノートPCが、必ずしも、一家に一台のスタンダードコモディティとしてふさわしいと考えていない点で共通している。ならば、新たなプラットフォームを提案しなければならないと考えるのは当然の戦略だ。NECPのLaVieは誕生から今年で20年になるそうだが、実は、20年前からPCの使い方はそれほど大きく変わってはいないという。そこに大きな課題があり、デジタルライフは一般消費者の中にまだまだ浸透してはいないというのが同社の考えだ。また、富士通では、パーソナル商品に求められる価値は拡がる一方であるとし、法人顧客と個人顧客のニーズが次第に重なるトレンドにあるという。確かに今回のLIFEBOOKにしても、オフィスのデスクでは本体に装着して使い、10メートル程度離れたテーブルでのちょっとしたミーティングにはスクリーン部分だけを持って行くような使い方もできそうだ。家庭においてリビングに本体を置いて、キッチンや寝室にはスクリーンだけを持って行くようなスタイルと同じだ。こうした製品の登場によって、この20年間、本当に代わり映えしなかったPCのフォームファクタに、再び変化が生まれることになる。買い替えようにも前とどこが変わったのかさっぱりわからず、どうにも新しみが感じられないのでは、なかなか購入に踏み切れない。だが、これなら暮らしが変わりそうだという予感が芽生えるかもしれない。確かにスマートフォンは、これまでパーソナルコンピューター的なものを使わなかった、あるいは使えなかった場所でのコンピューティングをかなえたことで、人々の暮らしに大きな影響を与えた。それまでは、コンピュータを外に持ち出すのは、ごく限られた人々だけだったからだ。でも、それを実感しているのは、まだ、国民の半分に満たないといってもいい。残りの半分はどうなのか。実はコンピュータはとても便利だということへの気づきを与えることは重要だ。残りの半分の人たちを支えるのは、スマートフォンではなく、こうしたフォームファクタなのかもしれない。国内において大きな影響力を持つ両社が、同時にこうしたパソコンを提案してきたことは、それがたとえ偶然であったとしても興味深い出来事だ。
2015年01月20日ヤフーが「Yahoo!検索大賞2014」を発表、ソチオリンピックで金メダルを獲得したフィギュアスケートの羽生結弦選手がパーソンカテゴリーのアスリート部門と大賞を受賞した。この大賞は、2014年に検索数がもっとも上昇した人物、作品、製品を表彰するアワードで、今年が第一回目となる。通常の検索ランキングの値とは違い、「2014年の一日あたり平均検索回数」と「2013年の一日あたり平均検索回数」の差を今年の検索急上昇指数とし、その値をもとにした結果によって競われた。まさに、うなぎのぼりの要素が必要となる。各受賞者のコメントなど、詳細は同社特設サイトをご覧いただきたい。冒頭で挨拶にたった同社代表取締役社長の宮坂学氏は、検索窓は社会の窓として、リアルタイムで世間の興味を反映するものだとし、検索行動というビッグデータが日本人の興味関心を示すバロメーターであるとした。つまり、自らキーワードを入力して検索するというのは、国民の能動的な意思であり、この大賞の審査員は国民そのものであるという。賞は、人物に与えられるパーソンカテゴリ、アニメやドラマ、小説などに与えられるカルチャーカテゴリー、モノや商品に与えられるプロダクトカテゴリーがあり、個々のカテゴリに複数の部門が設けられ、それぞれに部門賞が与えられた。授賞式には部門賞を獲得した関係者が来場して賞に華を添えた。各カテゴリと部門賞は下記の通りだ。残念ながら羽生選手はビデオでの出演となったが、自分でも、「羽生結弦 フィギュアスケート」いったキーワードで普段から検索をするという。また、パーソンカテゴリー俳優部門賞の市川海老蔵氏は、会場に駆けつけ、自分で検索して「ディスられ」ているのを見つけても、まったく気にしないとコメントした。多くの受賞者は自分で自分のことを検索しているようだ。Yahoo!では、今、毎秒4000万件弱の検索が行われているそうだが、この「急上昇」という切り口は、その年のトレンドを示すある種の指標として興味深いものだといえる。(山田祥平 @syohei)
2014年12月09日マカフィーがAndroidスマートフォンに向けた詐欺電話、迷惑電話対策アプリ「マカフィーセーフコール」の提供を開始する。auスマートパスの契約者向けを皮切りに、ドコモでの提供も予定されている。警察庁の調査では、今年の10月までに振り込め詐欺を含む被害総額は450億円を超え、すでに、過去最悪だった昨年のペースを上回るペースで増加しているという。今回提供されるアプリは、パートナーとしてトビラシステム社と協業、同社のデータベースを使ったブラックリスト方式での対策となる。同社は固定電話を対象とした迷惑電話着信拒否システムで実績のある企業だ。具体的には、かかってきた電話番号と同社が蓄積しているブラックリストやユーザー自身の電話帳などの許可リストを照合し、安全、迷惑、危険、不明などを判別、それに応じて緑、黄色、赤、グレーのカラー表示を着信画面に出すといったことができる。また、設定に応じて迷惑電話、危険電話を着信拒否することもできる。マカフィーとしては、これまでデバイスを守るということをやってきたが、このアプリによって、さらに踏み込み、ユーザーを守るというスタンスに立つことができるとしている。今年は、携帯電話各社が音声定額システムをスタートさせたことから、迷惑電話や詐欺電話をかける側のコスト構造もこれから変わっていく可能性があるという。名簿業者などから入手した電話番号に片っ端から電話をかけるにしても、1回8円のコストがかかるのとかからないのとでは大きな違いがあるからだ。それが迷惑電話の温床となるのは間違いなく、それを今からブロックする体制を整えることは重要だという。今回のアプリの実装では、個々のユーザーが独自にブロックした電話番号を収集するようなことはない。その情報があれば、リストの精度は上がっていくはずだが、現時点では、個人情報であるとして見送られている。ただ、将来的にはユーザーの同意を得て、同意したユーザーのみ、そのブロック情報を収集するようになる可能性もあるということだ。これらの詐欺に遭いやすい高年層が、スマートフォンにアプリを入れて対策するということは難しいという課題もある。そもそも高年層が使っている端末は、まだ、ガラケーというケースも多い。本当なら、キャリア側でブロック等を行うほうが効果がありそうなものだが、通信事業者がそんなことをやってもいいのかどうかといった問題が出てくる。現時点ではできることをできるところからやるという判断なのだろう。メールには迷惑メールフィルタの仕組みがあって、それをはじき出すことができていたが、音声通話ではそれができていなかった。今回のマカフィーの取り組みは、そこをなんとかしようというものだ。ちなみに、警察が悪徳業者を特定した場合、キャリアにその電話番号の本人確認が行われるが、その回答が出てくるまでには数日かかるのだという。その数日の間に増える新たな被害を防ぐためにも有効だということだ。テクノロジーが人を救う方法論がまたひとつ増えたということか。年老いた親にスマートフォンを持たせる理由がまた増えそうだ。なお、同等のアプリをiPhoneで提供することは、システム的にまだ難しいとされている。(山田祥平 @syohei)
2014年12月03日GoogleがGoogleロゴの落書きデザインコンテスト「Google 4 Doodle」の第6回目のグランプリを選出した。見事、栄冠を勝ち取ったのは、岐阜県立大垣北高等学校1年生の長谷川ゆいさんによる「卒業」だ。このコンテストは日本では2009年から始まり、第6回目となる今回は、92,294作品の応募があった。小学1~3年生、小学4~6年生、中学生、高校生の4部門からなり、5地区×4部門×2作品、合計40作品があらかじめ選出され、11月19日まで特設サイトで一般投票が行われていた。11月30日に六本木ヒルズの同社本社で開催された表彰式イベントには、この40名が招かれ、各賞の表彰を受けた。長谷川ゆいさんの作品は、ペン画で中学卒業のときの思い出を表現したもので、卒業証書筒のリボンや校章、そして桜の花びらなどがあしらわれたもので、Googleの「G」は制服につけていたコサージュになっている。冒頭にあいさつにたったGoogle執行役員CMOの岩村水樹氏は、最終に残った40名の子どもたちに対して、とにかく感動する心を持ってほしい、さらに、その感動した理由を考え抜く力を持ってほしいとし、応募作品にはそれを伝えたい熱い思いがつまっていたとコメント、これからも忘れられない瞬間をいっぱい作ってほしいと述べた。Doodleは落書きの意味で、いわゆるホリデーロゴとして知られ、ことあるたびにGoogleのトップページがその日にちなんだものに変わっていることでご存じの方も多いはずだ。それを自分で作ってみようというのがこのコンテストだ。長谷川ゆいさんの「卒業」は、12月1日のGoogleトップページを飾っているはずだ。彼女は副賞としてノートパソコンを受け取り、彼女の学校に対しては、PC助成金として100万円が贈られる。おそらくはデジタルネイティブだと思われる彼、彼女たちの創造力が、こうしたアートで表現され、それをGoogleが称えるというのも興味深い。願わくば、この子どもたちが、検索結果の行間を読めるリテラシーを身につけてほしいと思う。(山田祥平 @syohei)
2014年12月01日11月6日、米マイクロソフトが公式Blogで、モバイルOS向けOfficeに関する刷新を発表した。日本向けの発表はまだだが、すでに日本のアカウントでもiOS用のWord、Excel、PowerPointがダウンロード、インストールできるようになっている。iPad用のOfficeアプリは、米国ですでに公開されていたが、米国アカウントがなければダウンロードすることができなかった。日本マイクロソフトでは、2014年内のリリースを案内していたが、それが実現したかたちだ。プレスリリースも公開されている。発表内容の要点としては、iPhone用にOfficeアプリが提供されたことiPad用のOfficeアプリが刷新されたことAndroidタブレット用のOfficeアプリのプレビューが始まり、2015年早期に提供されることこれまではOffice 365ユーザーに限定されていた編集機能がすべてのユーザーに開放されること具体的には、iOS用のアプリはユニバーサルアプリとして提供されるようになり、日本のアカウントであっても従来のOffice Mobileアプリを開くと、これらのアプリへのリンクが表示され、それぞれをダウンロード、インストールすることができるようになっている。米国アカウントでインストールしたものがデバイスにある場合は、いったんそれを削除して、日本のアカウントで再インストールするといいようだ。各アプリで、Microsoftアカウントを追加することで、編集も可能だ。さらに、先に発表のあったDropboxとの連携機能も実装されている。ユニバーサルアプリとなったため、iPhoneでも、単独のアプリとしてWord、Excel、PowerPointが使えるようになった。また、このBlogにおいて、Android Previewの参加者の募集もアナウンスされている。サーベイページにアクセスし、必要事項を記入して申し込むと、後日、なんらかの連絡があるようだ。なお、登録にはGoogleアカウントが必須となっている。(山田祥平 @syohei)
2014年11月07日その日の東京・品川にある日本マイクロソフト本社ビル。月曜日だというのに、案内されたフロアはガランとして、まるで休日のオフィスであるかのように人がいなかった。普段なら何百名もの社員が活気にあふれて働いている姿のあるフロアだ。10月27日からのこの週は「テレワーク推奨強化週間2014」として、できるだけオフィス以外の場所で仕事をするとされていたからだ。日本マイクロソフト執行役常務、パブリックセクター担当の織田浩義氏(テレワーク推奨強化週間2014担当役員)は、本社ビルの会議室に一部のプレスを呼んだこの日の説明会で「今日、この本社各フロアの中でいちばん人口密度が高いのはここでしょうね」と前置いて説明を始めた。新しい働き方にもっともパッションをもって取り組んでいるという日本マイクロソフトだが、テレワークはイコール在宅勤務ではないと織田氏。いつでもどこでも働けて、さらに最適な形で働けることがテレワークであるという。それは、いつでもどこでも誰でもが活躍できるということでもあるという。テレワークというと、すぐに育児と仕事が両立できるような事例がイメージされがちだが、そうした特別な人の働き方ではなく、全社員にとっての働き方をさす。同社がテレワークに取り組み始めて今年で3年目になる。今年は、マイクロソフトだからこそできるのかということを立証するために、マイクロソフト以外の企業といっしょにできないかが議論され、賛同の企業をつのったら32社が集まったという。強化週間の目的は、社内のさらなる経験蓄積とデータ収集だ。そして、テレワークの外部への波及をもくろみ、日本のテレワークの推進に貢献しようというのがマイクロソフトの姿勢だ。今週のマイクロソフトは、社長室から全社員に、部門単位で月曜日か火曜日のどちらかを全員出勤しないコア日として設定、その他の日も「できる限りオフィスに出勤しない」を呼びかけた。本来はかなり忙しい時期であるともいう。もちろん休日ではないので、どこかに働く場所を探す必要がある。もちろん自宅だってかまわないのだが、そうもいかない職種もある。そこで、賛同企業と交換するかたちで、連携チャレンジ企画をたて、ワークプレース交換によって、マイクロソフト社員はパートナーのオフィスで、パートナーはマイクロソフト本社のスペースで働けるような融通も組み立てた。今後の展開として、この1週間をそれで終わりにするのではなく、活動結果の報告や意識調査などを経て、政府への提案提言の準備をすすめるという。そして、個人の働き方のみならず、思いもかけないビジネスが生まれてくる可能性を探る。たとえば、自宅にオカムラの高級事務椅子を買っている人が意外に多いといった状況も把握できた。高級椅子を買うのは、自宅でのデスクワークをオフィスと同じくらい快適に行うためだ。あるいは、外で携帯電話を使って連絡をとるときにどうしてもまわりの人に聞かれたくない話は、個室やカラオケボックスが便利と、そんな場所で仕事をしている社員もいる。今回の賛同企業の中には第一興商といった名前もあり、昼間のカラオケボックスとテレワークのビヘービアを観察しながら、その場所で何かできないかといったことを模索しているのだそうだ。同社代表執行役社長の樋口泰行氏は立場上この日も出勤していた。記者説明会に社長室から会議ソフトのLyncで出演し、強制的に会社にこれない状況を作り、それでもきちんと仕事が動くという実感をもってもらいたいし、災害、家庭の事情などがあっても、こうしたことができるのだという練習ができればという。マイクロソフトがめざすのは、新しいテレワークのカルチャーを作ることだ。今は笑い話にすぎないが、一昔前に電子メールを各社が導入し始めときに、そんなものが役に立つのかといった時代があった。テレワークも同じだとマイクロソフトはいう。「アッという間に市民権を得て、ど真ん中の一般名詞になっていくのではないか(織田氏)」。こうした取り組みを経て、テレワークリテラシーを推進していきたいということだ。ぼく自身は、個人的にテレワーク的な仕事のスタイルを始めて30年以上がたつ。当たり前だ。フリーランスのライターの仕事は、アポイントと取材、そしてそれを原稿にまとめることだからだ。紙の時代はどこでも原稿は書けたが、何軒もの取材先のアポどりは、比較的静かな場所で、じっくりとダイヤルを繰り返す必要があった。電話ボックスを占有するわけにもいかず、自宅で電話機に向かうしかなかった。〆切間際は編集部に泊まり込み、デスクを借りて原稿を書き入稿した。書く道具がコンピュータに代わってからは、原稿がどこでも書けるのはもちろん、アポどりも電子メールになり、どこでも仕事ができるという点ではフレキシブルになった。それでも、もっとも仕事をしやすいのは、ネットワークやデバイス、モニタといったコンピュータリソースがもっとも充実している自宅兼オフィスであるというのは紛れもない事実だ。ここで原稿を書くのがもっとも効率がいい。公共交通機関での移動中、取材と取材の間の空き時間をつぶすコーヒーショップ、出張先のホテルなど、どこでも仕事はできるが、小さなモニタのノートパソコン一台だけでは効率がよくない。会社員も同様だろう。会社が望む装備を供給してくれず、自分の必要な装備を自前で揃えてでも自宅の方が効率よく仕事ができるというケースもあるにちがいない。このテレワークという取り組みは、オフィスのありかた、そこでの働き方という漠然としたものが抱える問題点やニーズをあぶり出すことができるだろう。マイクロソフトでは今の日本の生産性を高めるには、ホワイトカラーのそれを高めることが急務だと考えている。2020年の東京オリンピックまであと6年。半世紀前、1964年の東京オリンピックを機に日本が大きく変わったように、再び日本は変わろうとしている。その変革に、テレワークのコンセプトがどのような影響を与えるのかを見守りたい。(山田祥平 @syohei)
2014年10月29日UQコミュニケーションズが提供中の「WiMAX2+」を、来春からキャリアアグリゲーションに対応することを発表、それにともない、現行の周波数帯域を切り替えることを発表した。現在、同社が持っている周波数は全部で50MHz分あるが、そのうち30MHzをWiMAX、20MHzをWiMAX2+で使っている。今回は、WiMAXが使っている30MHzのうち、20MHz分をWiMAX2+に移行し、キャリアアグリゲーションに対応させるわけだ。結果として、WiMAXは10MHz分、WiMAX2+は40MHz分となる。これに伴って、来春以降はWiMAXの理論上の最大速度が、40Mbpsから13.3Mbpsに減速することになる。つまり、同社では、WiMAXのサービス規模を縮小し、WiMAX2+への完全移行をもくろんでいるということだ。デジタルサイネージや駅のキオスクといったM2Mの通信手段としても使われているWiMAXが完全に停波することは当面なさそうだが、既存のWiMAXユーザーは、さっさとWiMAX2+に乗り換えた方がよさそうだ。UQコミュニケーションズでは、既存WiMAXユーザーにむけて、WiMAX2+対応ルーターへの無償交換プログラム「WiMAX2+ 史上最大のタダ替え大作戦」を11月1日から展開する。このプログラムでは、手元のWiMAX端末を、同社の現行WiMAX2+対応端末である「Wi-Fi WALKER WiMAX 2+ HWD15」、「NAD11」のどちらかに無償で交換してもらえるというものだ。WiMAXサービスについては、モバイルルータのみならず、WiMAX内蔵パソコンでの利用も少なからずあるはずだ。今回のプログラムは、そうしたユーザーにも適用される。つまり、今、WiMAXを契約して使用中のユーザーは、すべてWiMAX2+対応ルータを無償で入手できるわけだ。また、MVNO各社でも同様のプログラムが開始されるという。対応ルータへの交換後は、その時点から2年間、3,696円で速度制限なしのWiMAX2+利用が可能となる。ただ、継続期間のしばりがないプランで利用している場合も、2年しばりのプランへの移行が必要になる点には注意が必要だ。WiMAX2+はSIMを必要とするサービスであることで、機器追加オプションもなく、困るユーザーもいるかもしれない。WiMAXにあえて留まることもできるが、2年間の契約ということを考えれば、来春のキャリアアグリゲーション導入時に発売されるであろう対応ルータを待つのではなく、少しでも早くWiMAX2+に移行して契約期間をスタートさせるてしまうのが得策だ。期間に応じて契約解除料を払うにしても、満期まで待つとしても、より早く移行した方が最終的なコストは安くなるだろうからだ。今のところ、モバイルネットワークサービスで、速度制限なしを謳うのはWiMAX2+しかない。UQとしてもWiMAX2+への移行を促進することで、速度制限なしを2年間といった期間限定ではなく、ずっと続けることを望んでいるようにも見える。早期の移行に協力することが、最終的にはユーザーメリットとして戻ってくる可能性は高い。WiMAX2+への移行は、有限の資源としての電波を有効に使うことでもある。それによって、速度制限なしのサービスが延命されるのであれば、そこに乗っからない手はないのではないか。(山田祥平 @syohei)
2014年10月27日レノボ・ジャパンが「YOGA」シリーズの刷新に伴い、東京・六本木のミッドタウンで発表イベントを開催した。ロンドンで開催されたワールドワイド向けのイベントから一夜明けた平日のランチタイムに、複合ビルの屋外スペースを借り切っての開催だ。「YOGA」を連想させるダンスパフォーマンスで始まったイベントには、ゲストとしてタレントの小島瑠璃子さんも登場、行き交う人々の注目を集めていた。発表されたのは13.3型スクリーンのCore M搭載パソコン「YOGA 3 Pro」、そして、8型、10型スクリーンの「YOGA Tablet 2」(Android)、「YOGA Tablet 2 with Windows」、また、13.3型スクリーンのプレミアムAndroidタブレット「Yoga Tablet 2 Pro」だ。一部の機種をのぞきSIMフリーLTE版の発売も予告されている。■関連記事・レノボ、「YOGA Tablet」に新モデル - Windows搭載モデルも新たに追加・レノボ、より薄型軽量になったCore M搭載13.3型ノートPC「YOGA 3 Pro」イベントでステージに登場したレノボ・ジャパン 執行役員専務の留目真伸氏は、新興国でも先進国でも受け入れられているレノボの強みはイノベーションそのものであり、最先端のテクノロジーにとどまることなく、コンピューターと人との関係性の本質を探究していくとし、生活に欠かせないコンピュータをアピールした。そして、家の中から外へと、コンピューターを使う場所が広がっていることを指摘、かつてのように、コンピュータを使うことが主目的ではなく、今は、何かをするためにコンピュータを使うようになったからこそ、その変化に対応するためにYOGAスタイルを提案すると述べ、変化していく状況に対応する筐体を持ち、人間の一部であるかのように使えるパソコンとしてのYOGAを紹介した。留目氏によれば、パソコンのマーケティングは大きな転機を迎えているという。かつてのようにマスマーケティングをしているだけでは誰にも振り向いてもらえない時代であり、そんななかで、人から人へと伝わるコミュニケーションの中で商品のよさをアピールしていかなければならないようだ。大新聞に全面広告を出したり、テレビスポットを打つ予算があれば、そのコストで、もっと工夫したイベントやSNSでの活動ができるはずだとも。以前、ここで紹介したレノボの海の家などはその一環としてのマーケティング活動だ。レノボは行動する人をサポートする会社でありたいとし、そのことをスノボゲレンデや海水浴場で表現してきた。今回もご多分にもれず、10/31に渋谷の街のハロウィンをジャックする「Lenovo Presents SHIBUYA HALLOWEEN 2014」(シブハロ2014)を展開する。主要な渋谷のポイントとして渋谷109、PARCOに特設ステージを設置、さらに、夜は夜で主要なクラブ10箇所、それぞれにスペシャルゲストなどを招いてYOGAの存在をアピールするということだ。詳細は、レノボのTwitterアカウントやフェイスブックなどを参照してほしい。実際、今のパソコンは、その存在自体があまりにも普通になりすぎて、人々の興味をひく対象ではなくなりつつもある。冷蔵庫やエアコンの新製品が出ても、誰にも響かないのと同じような状況になってきているわけだ。製品そのものにどんなに魅力があったとしても、クチコミを起こすきっかけは必要だ。いわばロングテール的といってもいいレノボのこうした活動は、どのようなムーブメントを起こすのか。すぐに結果が出るものではないが実に興味深い。そのなりゆきを見守りたい。(山田祥平 @syohei)
2014年10月10日全国津々浦々のキャリアショップが携帯電話事業者のビジネスを支えている。一方で、パソコンは、まれにIntelやMicrosoftと共催でイベントを開いたりするようなことはあるにしても、どちらかというと量販店に頼りっぱなしという状況だ。だが、ベンダーによっては積極的に自社製品をリアルな場でアピールするチャレンジに取り組むところもある。以前、紹介したレノボの海の家などもそのひとつだ。今回は、業界初と言われる「Let’s note ステーション」を例にパナソニックの取り組みを見てみよう。大阪駅。というよりも阪急梅田駅と阪急百貨店の間を抜け、JR高架下ショッピングモールESTを過ぎて新御堂筋をわたった梅田センタービルのB1に位置するLet’s note ステーション大阪。梅田駅からは約6分の道のりだ。B1といっても、広い吹き抜けの屋外広場となったスペースを囲むように並ぶショップの中のひとつであり閉塞感はない。昨年の9月に仮オープン、正式オープンは12月からだ。主な業務は、メーカー直の持ち込み修理、対面での購入相談、困りごとの相談など、購入前、そして購入後のショールーム的な機能を提供している。パナソニックとしては、電話での相談だけではなく、顧客の声を直接聞けるサービス拠点をもちたいということもあり、2010年に秋葉原にオープンした「LUMIX & Let’s note修理工房」が先行してサービスを開始している。「Let’s note ステーション」は、関西圏における、さらに積極的な試みとして事業部直営というパナソニックとしては初の取り組みとなる。ここに持ち込まれたLet’s noteは、即日修理対応を含むメーカー直の持ち込み修理となる。ほとんどの場合は翌営業日の引き渡し、3,000円の特急料金を払えば即日修理も可能だ。量販店などを経由した場合、少なくとも4日程度は要することを考えれば、1泊2日、あるいや当日修理ができるのはユーザーにとってかなりの安心感だ。Let’s noteの開発拠点であり全国規模の修理拠点でもある守口市のITプロダクツ事業部とこのステーション間には、一日3便の定期便が運行されている。クルマで30分間はかからない距離だ。また、守口と隣接する門真市にはパーツセンターがあり、そちらにも5便の定期便がある。基本的にこのステーションでは修理はしないが、修理拠点との頻繁な往来の中で迅速な修理体制が実現されている。持ち込まれる中でもっとも多い故障は「起動しない」というものだが、ひとことで「起動しない」といっても、その状況はさまざまだ。持ち込んだユーザーと対面した状態で、その原因をその場で的確に判断し、修理拠点に引き継ぐ。店長の今中孝氏は、「持ち込まれるLet’s noteは大事に扱われていることがわかります。かと思えばはっきりいってボロボロの状態のものもあります。いろいろな使われ方があることがこの目で確認できますね。しかも、実際に使ってこられたお客様が目の前にいるので、リアル感はハンパではありません。その対話が製品作りにいろいろなかたちでフィードバックできるのです。ここでの修理は行いませんが、お客様と対面で故障の状況を確認している中で、その場でカンタンに対処できるようなことも少なくありません。電源アダプタの不良などは、ほとんどの場合、交換や追加の購入ですみますから」という。さらに、このステーションには、約15名を収容できるセミナースペースが用意され、その場所を使って月に一度の頻度でセミナーを開催している。各回のテーマは多岐にわたり、技術情報から、商品開発のこだわり、頑丈設計の秘密など、実際に製品を担当している開発技術者や各部門の担当者を講師としてプレゼンテーションをするのだ。彼らにとっても、実際の顧客の反応を直接聞けることは、今後の製品作りにおいて多くのヒントを得られる場でもある。少人数の会話形式で進行されるセミナーは、聞きたいことがその場で聞けると好評だという。ちなみに、このステーションは年会費1,800円でメンバーシッププログラムを実施、会員に対しする各種特典が用意されている。スペアのバッテリや電源アダプタなどのオプションを購入する場合、量販店での購入よりも安くなる。また、修理に要したのパーツも2割引だ。そして、セミナーの参加は会員限定のサービスとなっている。現在の会員数は約150名。年間で30万円といったところだ。利益のための会費であるとは思えない。「ここではLet’s noteは売りません。でも、やはり聞こえてくるのはLet’s noteは高いという声です。法人向けのアウトレット販売を実施するなどしてお応えすると同時に、ご愛用いただいているパソコンの無料点検サービスを実施するなど、たとえ高い価格でも満足していただき、またLet’s noteを選びたいと思っていただけるサービスを継続して提供していきたいと考えています」(今中氏)。半日コースや一日コースの「無料愛情点検」では外観清掃や簡易ハードウェア検査が無償で受けられる。また、「Windows 8.1あれこれ無料相談会」といったマンツーマンの相談会も実施されている。「ウェブでしか受け付けていなかったカラー天板交換もここで行います。写真ではイメージがわきにくいのですが、ここには実物がありますから、好みのものを選んでいただくことができます」(今中氏)このように、売りっぱなしではなく、売ったあとの市場が製品をどのように受け入れたのかを知り、それをさらに次の製品に活かしていくためのスパイラルが期待される。ユーザーのためでもあり、売る側、作る側のためでもある場の提供。それがパナソニックのチャレンジだ。(山田祥平 @syohei)
2014年07月22日(画像は山田優オフィシャルブログ「Yu」より引用)「夏肌」山田優その秘密は?夏は肌が勝負のシーズンでもありますよね。腕や足の露出が増えて、健康的な「夏肌」が注目を浴びる季節です。疲れて元気のない肌は格好悪く見えてしまいます。しかし、そうはいっても、そろそろ肌に疲れが見え始めてきたのではないでしょうか。気付けばお盆は過ぎ、夏休みは後半戦へと突入しています。ここらで、一度肌に元気をチャージしてみてはいかがでしょうか。夏肌の代表格ともいえる山田優さんの肌の魅力にせまってみました。まずは彼女のブログをチェック。8月14日付けで、角質ケアの記事がアップされていました。ハワイブランド「BELLE VIE」の角質ケア彼女の肌は、ただ美しいというだけではなく、いつ見ても健康的でパワーが感じられます。まさに「夏肌」と呼ぶにふさわしいエナジー肌ですよね。疲れたお肌には、保湿や美容クリームも大事ですが、まずは夏の紫外線で傷ついた古い角質を落とすことが重要。彼女はブログで、愛用の角質ケア商品を掲載しています。ハワイのブランド「BELLE VIE」シリーズの「LAKI」です。コスメフリークであれば一度は耳にしたことのある人気の商品ですよね。「LAKI」は、ハワイ原産のハイビスカスやパイナップルのエキスを配合した角質除去ジェル。その効果は絶大で古い角質がボロボロとれるとネットや口コミでも話題です。山田優さんもブログで「これ優秀です!!!」と大絶賛。日本でもオンラインストアで購入可能な「LAKI」。「LAKI」はハワイ語で「幸福」という意味だそうです。あなたも「LAKI」を手に入れて、「幸福」な肌をゲットしてみては?【参考リンク】▼山田優オフィシャルブログ「Yu」元の記事を読む
2013年08月19日