「好不調の波はありますが、母の認知症は少しずつよくなってきています」 こう語るのは、ブログ「婚活しながら両親介護」の筆者で、認知症の母親(74)の介護をしている映像ディレクター・黒澤うにさん(38)。 黒澤さんの母親に異変が現れたのは’15年10月ごろ。病院でアルツハイマーの薬を処方してもらうが、副作用がひどく中断。なすすべもないまま、昨秋には食卓の用意や買い物も難しくなり、手に持っていたものを忘れることも。連日、母親は泣きながら黒澤さんに電話を入れるようになった。 仕事に支障が出るようになったことで、黒澤さんはアメリカで医師をしている友人に相談。すると、認知症の世界的権威であるデール・ブレデセン医師の著書を薦められたという。 同書は全米で20万部を突破。日本でも2月に翻訳本『アルツハイマー病真実と終焉』(ソシム)が出版され、わずか2週間で2万5,000部というベストセラーになっている。 「さっそく本に書かれていた『リコード法』を、やれることから取り組みました。まず、野菜と天然の魚が中心の食事にし、できるだけ炭水化物を減らしました。また、ココナツオイルをコーヒーやサラダなどにかけ、夕食から朝食まで12時間は絶食。積極的に歩く習慣を11月下旬から始めたんです」(黒澤さん) 気がつくと、母からのSOSの電話も減り、食事も1人で作れるように。買い物でパニックになることもなくなったという。 「今や、4人に1人が認知症になる時代。うち6割がアルツハイマー型認知症です。今までは進行を抑えることはできても回復ができないということが、患者や家族を脅かしていました。しかし、ついにブレデセン医師がアルツハイマー型認知症発症の原因を突き止めたのです。世界で初めて、症状が回復することを、この本で明言しています」 こう語るのは、同書の日本語版の監修を務めた白澤卓二先生だ。 「これまでアルツハイマー型認知症は、アミロイドβという異常なタンパク質が脳にたまることで神経細胞が死に、記憶をつかさどる海馬から脳の萎縮が始まることで発症すると考えられてきました。しかし、ブレデセン医師の研究により、アミロイドβはむしろ脳を守る物質ということが判明したのです。ただし、このアミロイドβが過剰に蓄積されることで暴走し、守るべき脳細胞を破壊するということがわかりました」(白澤先生) そしてアミロイドβが過剰に蓄積される原因が、次の“NG生活習慣”。1つでも当てはまれば、アルツハイマー型認知症になる可能性大! □炭水化物や甘いものが好き□胃酸を抑える薬をよく飲む□夕食時間が遅い、または夕食後に間食をする□定期的な運動習慣がない□睡眠時間が7時間未満□家にカビが生えている 炭水化物や甘いものを食べると、糖分などが血糖値を上げることで、脳の炎症を誘導する。 そして胃酸を抑える薬には亜鉛やマグネシウム、ビタミンB12など、認知機能にとって重要な栄養素の吸収を阻害する働きがあるという。 また、不規則な食習慣は糖尿病の発症を促すが、この糖尿病こそがアルツハイマー型認知症の最大の原因の1つ。さらに、カビや金属などの有害物質の摂取も、アルツハイマー型認知症のリスクを高めるという。 このような生活習慣により、脳のなかで増えすぎたアミロイドβを取り除くために考案されたのが「リコード法」だ。昨年12月の時点で500人以上の患者が実践し、効果が認められているという。そこで、白澤先生に教えてもらった今すぐ実践できる「リコード法」を紹介。 【1】炭水化物を極力減らす【2】1日45mlのMCTオイル、または15ml×3のココナツオイルを取る【3】夕食から朝食まで12時間以上絶食する【4】睡眠は1日7〜8時間【5】1週間で150分以上の運動をする 「肝臓が脂肪を分解してケトン体と呼ばれる物質を生み出すプロセスのことを“ケトーシス”と言います。そして、軽いケトーシス状態を維持することが認知機能を高めるのに最適の状態だとわかったのです。ケトーシス状態にするためには、低炭水化物食、適度な運動、1日に12時間以上の絶食、中鎖脂肪酸100%のMCTオイルなどの摂取が効果的で、これがリコード法のベースです」(白澤先生) できることから、さっそくトライしてみよう!
2018年03月19日2017年4月28日に渋谷にオープンした複合施設、「SHIBUYA CAST.」。都会のど真ん中にあるこの場所で、血縁にも地縁にもよらない「拡張家族」になることを目的に、共に暮らし、共に働く集団がいる。名前は「Cift(シフト)」。現在のメンバーは39名。半数以上が起業をしていたり、フリーランスのような形で働いている。ファシリテーター、弁護士、映画監督、美容師、デザイナー、ソーシャルヒッピー、木こり見習いなどなど、全員の肩書きを集めると100以上に。大多数のメンバーがCift以外にも、東京から地方都市、海外まで、様々な場所に拠点を持っていてその数も合わせると100以上になる。メンバーのうち約半数は既婚者で、何人かは離婚経験者。2人のメンバーはパートナーや子どもも一緒にCiftで暮らしている。そうした“家族”も含めると、年齢は0歳から50代にわたる。バックグラウンドも活動領域もライフスタイルも異なる39人が、なぜ渋谷に集い、なぜ「拡張家族」になることを目指しているのか。本連載では、CiftのメンバーでありこれまでにBe inspiredで記事の執筆もしてきたアーヤ藍が、多様なメンバーたちにインタビューを重ねながら、新しい時代の「家族」「コミュニティ」「生き方」を探っていく。アーヤ藍Photo by Jun Hirayama第3回目は、対話の場でみんなの意見を引き出したり、整理してコミュニケーションを円滑にしたりするサポートをするファシリテーターの丹羽 妙(にわ たえ)さん。最近は特に、企業内のコミュニケーションを活発化するためのワークショップ等を行っている。Ciftでもメンバーが集まって対話をする際にファシリテーションをしたり、アクティブブックダイアローグ(通称ABD)という読書法を用いた読書会を開催したりしている。また、Ciftのなかでも一番、人との物理的距離が近く、日常からメンバーにハグをしたり、マッサージをしたりと、身体的にふれあうことをよくしているのが丹羽さんだ。丹羽妙さんPhoto by Ai Ayah一人ひとりが意見を持ち寄り、世界を広げるファシリテーションアーヤ藍(以下、アーヤ):たえちゃん(丹羽妙さんのこと)はファシリテーションを仕事にしているけど、ファシリテーターとしてのキャリアを積み始めたきっかけは? 丹羽妙(以下、丹羽):10年前、学生のときに出会った「京都市未来まちづくり100人委員会」っていうプロジェクトがきっかけだね。京都でいろんな活動をしている市民、大学生から、地域の経営者やお坊さん、研究者、80歳のおじいさんまで、様々な立場・バックグラウンドの148人が集まって、京都の未来のために今したいことは何かを対話したの。そして、与えられた議題を決まり切ったスタイルで議論するのではなくて、参加者が自ら重要だと思うアジェンダをあげて、関心のある人同士で仲間を作り、実際にプロジェクトを起こして行く…っていう、参加者の主体性を最大限引き出すように考えられた形式の会なの。アーヤ:もともと拡張家族みたいなテーマは、たえちゃんにとっても大事だったんだ? 丹羽:「居場所」っていうのは私の人生のテーマだと思う。生まれてからしばらく、父母兄とイギリスで幸せに過ごしていたんだけど、2歳10ヶ月くらいのときに父親の病気がわかって急に日本に帰り、約1年の闘病生活ののちに死んじゃったんだよね。母親は2日に1回病院にいっていて、その間、祖父母に面倒をみてもらっていたんだけど、子どもながらに大変な状況だって分かっているから、母親が病院に行くときも「寂しい」とか「行かないで」って言わずに我慢してたみたい。 そのあと、そうやって育ててくれたおばあちゃんが、私が高校生ぐらいの時に認知症になったの。野菜炒めにクッキーを入れるとか、笑えることもあるんだけど、家族の間に不穏な空気が流れることも増えて…。大好きで尊敬している人が、別人に見えてくることはショックだったし、人間の脆さや不確かさを痛感させられた。それを家族に言うことが「できない」っと思って一人で抱えていたんだよね。 そういう原体験があったから、ずっと「世界は孤独で、誰も信用しちゃいけない」って心のどこかで思ってたみたい。中高生の頃から、張り切りガールな一方で、家では甘えたり、心の悲鳴を伝えられず、代わりに女子友達にベタベタくっつくみたいなアンバランスさがあったなあ。今もCiftでもよく人にくっついているけど(笑)。安心できる人に触れることで充電したり、何かを交流させたりすることを覚えたんだと思う。Ayah Ai(アーヤ藍)1990年生まれ。慶應義塾大学総合政策学部卒業。ユナイテッドピープル株式会社で、環境問題や人権問題などをテーマとした、社会的メッセージ性のあるドキュメンタリー映画の配給・宣伝を約3年手掛ける。2017年春にユナイテッドピープルを卒業し、同年夏より「ソーシャル×ビジネス」をさらに掘り下げるべく、カフェ・カンパニー株式会社で精進中。
2018年03月13日資格といえば、“キャリアアップ”や“昇給”のために取得するもの、と考えている人は多い。しかし、資格はもはや、“いまの仕事”でステップアップするためだけに取るものではなくなってきている。生活のなかで直面する“ピンチ”を解決するヒントになるような、役立つものにあふれている。 高齢者の4人に1人が認知症と“予備群”という時代。認知症について正しい知識とケア方法を勉強して取得できるのが、「認知症介助士」だ。50代でこの資格を取得した花井育代さん(62)が、取得のいきさつを話してくれた。 「4〜5年前に、自宅の前の掃除をしていたとき、不安げに歩いている70代後半の女性がいました。声をかけたら、ホッとした顔をして、いろいろ話をしてくれましたが、あとで近隣に住む人が、軽い認知症によって迷子になっていたということがわかって……。会話もできて、普通に社会で暮らしているのに認知症を抱えている人たちが身近にいることがわかり、もっと認知症について深く知りたいと思ったんです」(花井さん・以下同) 「認知症介助士」は、セミナーに参加すれば、最短1日で取得可能。しかし、単にマニュアルを覚えるだけではない。 「一口に認知症といっても、発症がわかりにくいものがあります。普通に散歩しているようでも、実は徘徊だったり、スーパーでお金を払わずに商品を食べてしまったりと症状もさまざま。ケア方法を間違えると、認知症が進行してしまうこともあるのです。認知症の方へは、マニュアルでは対応できません。その人の尊厳を傷つけないように、相手の気持ちに寄り添うことが大事です」 航空会社で国際線の客室乗務員だった花井さん。資格取得前は悠々自適なシニアライフをイメージしていたという。現在は「認知症介助士」の知識を活かし、講演やセミナーなど忙しく走り回る。 「スーパーや百貨店、銀行の窓口などで、認知症の無理解によるトラブルが今後も増えていくでしょう。認知症に対する知識を身につければ、そういった場所に勤めていても、お客さんの症状に気づきやすくなります。大事なことは、地域社会での認知症支援が広がること。これからの人生は、自分の生きがいとして、認知症の支援活動を続けていきたいと思っています」
2018年03月08日’73年2月に『天使も夢見る』で歌手デビューした桜田淳子(59)。今年はデビュー45周年にあたり、3月27日には、東京・銀座博品館劇場で記念イベント『マイ・アイドロジー スペシャル〜ありがとうのかわりに』を開催する予定だという。 桜田といえば、’92年に統一教会(現・世界平和統一家庭連合)の国際合同結婚式に参加。それから20年以上も、事実上の“芸能界引退”状態にあった。 ’13年には、デビュー40周年イベントで20年ぶりにステージ復帰したことが話題になったが、全国霊感商法対策弁護士連絡会は彼女の活動復帰に対して反対声明を出している。桜田の統一教会入信はファンや仕事関係者のみならず、家族にも深い傷跡を残した。 「秋田に住む母・ワカさんは合同結婚式には参列したものの、ずっと『私は母として娘の結婚を祝福に行っただけで、統一教会には反対しています』と語っていました。また桜田の実兄も、脱退するように長年説得を続けていたのです」(ベテラン芸能記者) そのワカさんもすでに90歳。数年前から患っていたという認知症もかなり進行し、いまは施設に入っているという。桜田家と古くから親交がある知人は言う。 「淳子さんは以前と比べると、頻繁に故郷・秋田に戻ってくるようになりました。昨年からは、ボランティアで秋田県内の介護福祉施設を回っているそうです。中学時代の同級生がボランティア団体を主宰していて、その縁もあり、お年寄りのために読み聞かせをするようになったと聞いています。お母さんのワカさんに親孝行できなかった分、少しでもその埋め合わせをしたいという気持ちもあるのではないでしょうか」 帰郷のたびに、数カ所の施設を回っているという桜田。彼女が昨年8月に訪れた秋田市内の介護施設の担当者は次のように語る。 「ボランティア団体からのご紹介で、桜田淳子さんの読み聞かせの会が実現しました。詩『手紙〜親愛なる子供たちへ』を秋田弁で読んでくださいました。桜田さんが秋田県の出身であることは、皆さんご存知ですからね。特に高齢の方たちからは好評でした。またこちらに来てくださると嬉しいですね」 桜田が続けているという“贖罪”ボランティア。だが必ずしも温かな声ばかりではない。桜田の実兄の妻に、義妹の活動について聞くとーー。 「いまも(秋田の実家では)淳子さんの宗教活動は認めていません。もちろん(夫にとっては)実の妹ですから、交流がないわけではありません。彼女が読み聞かせボランティアを始めたことも人づてに聞いてはいますが、その理由についてはわかりませんね。淳子さんと会う機会はほとんどありませんし……」 意外にも反応は冷ややかなものだった。前出の桜田家の知人は言う。 「いまもワカさんの面倒を見ているのは、お兄さん夫婦です。彼らからしてみれば、『さんざん迷惑をかけておいて、今さらボランティアとか言われても……』という気持ちなのかもしれません」 季節は春をむかえつつあるが、桜田と秋田の家族の間のわだかまりは、まるで溶けきらない雪のように残されているようだ。
2018年03月08日「“生涯現役社会”といわれるいま。50代の女性にも、仕事や人生のクオリティを上げるアイテムとして『資格』が注目されています。人気を集めているのは受験の際、実務経験や学歴、年齢などの条件がなく気軽に挑戦できるもの。そして家族を介護するうえで役立つ『認知症介助士』や、食を扱う『薬膳コーディネーター』や『食生活アドバイザー』など、生活に直結したものに関心が高まっていますね」 そう語るのは、資格講座などの通信教育を手がけるユーキャンのDMマーケティング部・富田恵美さん。資格といえば、“キャリアアップ”や“昇給”のために取得するもの、と考えている人が多いだろう。 しかし最近は、手軽に取得できるうえ、その後の人生を豊かにしてくれる資格が増えているのだ。そこで、50代女性に人気の役に立つ資格を紹介。 【食生活アドバイザー】ここで役立つ:飲食店、食品会社 「栄養」「食文化と習慣」「食品学」などから食生活を総合的にとらえ、健康的な生活をおくるための提案ができる“食のスペシャリスト”と認められる。食品メーカーや飲食店、スーパーやデパート以外にも、病院、介護施設などでは「食」に関わる立場として就職も有利に。昇給や昇格などのチャンスも。 【薬膳コーディネーター】ここで役立つ:飲食店、福祉施設 健康や美容に効果がある薬膳の知識が身につくだけでなく、飲食店で薬膳料理のメニュー開発などにも応用できる。資格は「本草薬膳学院」が認定するが、ユーキャンが講座を運営。在宅でも取得可能で、主婦の人気が高い。 【食育実践プランナー】ここで役立つ:飲食店、食品メーカー 「日本味育協会」認定の資格で、食育に関する知識、調理の実践力や指導力を示すもの。食育教室や講演会などでの活動、食品メーカーでの商品開発や飲食店でのメニュー作成などキャリアアップも可能に。 【終活アドバイザー】ここで役立つ:介護施設、高齢者施設 葬儀、お墓、遺産相続、保有資産の管理、医療などに対してアドバイスを行い、総合的なライフプラン設計をサポートする資格。取得後は、シニア向けのセミナーや相談、専門家とつなぐコーディネートなどを行うことも。介護職員、葬祭業関係者、金融業者は取得することで、キャリアアップのチャンスが生まれやすくなる。 【介護予防健康アドバイザー】ここで役立つ:フィットネスクラブ、福祉施設 中高齢者の身体的な特徴や安全管理を学び、適切な運動ができるようにアドバイスできる資格。「NESTA JAPAN」が認定し、3カ月間の受講中ならいつでも受験可。介護予防や健康維持に役立つエクササイズも身につく。 【認知症介助士】ここで役立つ:病院、介護施設 認知症の知識、認知症の人と接したときの心構えやコミュニケーションの取り方など適切な対応方法を身につけることができる資格。病院や介護施設にとどまらず、ホテルや駅、デパート、スーパーなど多くの人と接する職場でも活用できる。講師による講義やディスカッションなどのセミナー後に受験し、1日で取得することも可能。 【介護事務】ここで役立つ:介護施設、医療施設 資格取得で、介護に関する費用の請求手続きやケアマネジャーのサポート業務が可能に。体力を求められないため、長く安定して働くことができるのが魅力。正社員やパートタイム、派遣など、働き方のバリエーションも多彩。 【レクリエーション介護士】ここで役立つ:介護施設、福祉施設 フラワーアレンジメント、料理、編み物など趣味や特技を活かして、高齢者にレクリエーションを提供できるスキルが身につく。介護業界に興味ある人や、すでに介護資格を持っている人の“プラスアルファ資格”として人気が高い。 50代女性を活かす資格について、キャリアコンサルタントの松本すみ子さんはこう語る。 「気をつけてほしいのが、資格を取ったことで満足しないことです。資格を活かしてボランティアをするのもいいでしょうが、お金を稼ぐことで、ステップアップできます。資格名を入れた名刺を作って“営業”することも大切。弁護士でさえ、待っているだけではお客さんは来ません」 松本さんは49歳のときに「シニアライフアドバイザー」の資格を取得。それを活かして起業し、大学や研究機関、自治体での講座を受け持っている。 「50代女性には、若い女性には太刀打ちできない経験と実績があります。さらには細かい気遣いや、ささいなことでも気づけるようなホスピタリティも備わっています。そんな50代女性をより輝かせるのが資格です」 あなたの人生経験が、家計と社会を助ける「資格」に形を変えるかもしれないのだ。
2018年03月08日昨年発表された厚生労働省の調査結果によると、日本人の平均寿命は女性が約87.14歳、男性が約80.98歳で過去最高を更新した。 だが、一方で、健康な日常生活を送れる期間を示す平均健康寿命は、女性が約75歳、男性が約72歳と、平均寿命より10年前後も短い。つまり、多くの高齢者が約10年もの間、医療や介護を必要としながら暮らしているのだ。 そういった背景もあり、近年では病気を未然に防ぐ予防医学が重要視されてきているが、なかでも「環境要素」という視点が注目を集めているという。これは簡単に言えば、温度や湿度、光、空気といった環境を構成するさまざまな要素のこと。これまで健康に影響を与えると考えられていた運動、食事、メンタルの3つの要素に付加された新しい要素で、「住環境」と密接に関係している。 実際、温度や空気といった住環境を適正に保つことにより健康寿命が延びることは、多くの研究や調査からも明らかになっているという。つまり、毎日多くの時間を過ごす住まいを安全・快適なものにすることが、結果的に健康長寿にもつながるというのだ。 快適で健康的な住まいの実現のためには、工事をともなうリフォームも視野に入れる必要があるが、悩ましいのはその費用。どうせ数十万円から100万円単位までのお金がかかるのなら、キッチンやバスルームといった、見た目にわかりやすい箇所を最新のものに替えたくなるが、健康のことを考えるなら、まず優先すべきは断熱工事だという。 「日本の場合、冬季の死因は心筋梗塞、脳卒中、肺炎などが6割を占めていて、部屋の寒さが大きな要因になっています。意外に思うかもしれませんが、寒冷な北海道や東北では死亡率が低く、温暖な県のほうが高いというデータがあります。理由は、寒冷地ほど住まいの断熱化が行き届いているからなのです」 こう語るのは慶応義塾大学の伊香賀俊治教授。住宅の断熱化と居住者の健康の関係についての第一人者だ。ヨーロッパでも同様のデータがあり、北欧諸国では冬の死亡率が低く、温暖なポルトガルなどが高い値となっているそうだ。 このように住宅の高断熱化は、予防医学の見地から欠かせない要素として海外では以前から注目されていたが、日本では断熱に対する意識はまだまだ低い。 「寒い家が健康に及ぼす悪影響は、日本ではほとんど知られていませんが、イギリスでは寒さによる健康リスクが重視され、居間は21度、寝室は18度以上に室温を保つよう義務づけられています」(伊香賀教授・以下同) さらに健康や安全性の劣る住宅は改修、解体を命じられるのだそう。 「家の中が寒いと実感していても、コスト面から床暖房やペアガラスの導入を後回しにしてしまう人が多いのが現状です。たとえ工事費が100万円かかったとしても、冬場に集中する病気の発生リスクを減らし、将来負担する医療費や介護費を削減できると考えれば決して高くはないと思います」 また、伊香賀教授によれば、室温が3度暖かくなることで脳年齢が6歳若く保てるという調査結果もあり、認知症の予防効果も期待されているという。さらに介護施設の調査でも、暖かく湿潤な環境の施設では、要介護度が悪化しにくいことが明らかになっているというから、まさにいいことずくめだ。 さらに、高断熱住宅は高齢者だけでなく、子どもの健康にもよい影響があるという。 「複数の幼稚園で床材と園児の活動量の関係を調査したところ、無垢材+二重床の園舎はコンクリート+複合フローリングに比べ園児の活動量が多く、病欠が少ないという結果が出ています」 国土交通省も平成26年度からスマートウェルネス住宅等推進事業をスタート。断熱リフォームに利用できる補助金や減税制度も増えてきた今こそ、健康長寿のためのリフォームを検討するチャンスかもしれない。
2018年03月07日昨年発表された厚生労働省の調査結果によると、日本人の平均寿命は女性が約87.14歳、男性が約80.98歳で過去最高を更新した。 だが、一方で、健康な日常生活を送れる期間を示す平均健康寿命は、女性が約75歳、男性が約72歳と、平均寿命より10年前後も短い。つまり、多くの高齢者が約10年もの間、医療や介護を必要としながら暮らしているのだ。 そういった背景もあり、近年では病気を未然に防ぐ予防医学が重要視されてきているが、なかでも「環境要素」という視点が注目を集めているという。これは簡単に言えば、温度や湿度、光、空気といった環境を構成するさまざまな要素のこと。これまで健康に影響を与えると考えられていた運動、食事、メンタルの3つの要素に付加された新しい要素で、「住環境」と密接に関係している。 実際、温度や空気といった住環境を適正に保つことにより健康寿命が延びることは、多くの研究や調査からも明らかになっているという。つまり、毎日多くの時間を過ごす住まいを安全・快適なものにすることが、結果的に健康長寿にもつながるというのだ。 温熱環境の悪化がヒートショック(急激な温度差による健康被害)や熱中症の原因となるのをはじめ、風通し、日当たり、見晴らし、騒音といった環境要素が健康に及ぼす影響は計り知れない。我慢を重ねると知らないうちにストレスがたまり、病気の要因にもなりかねない。 そんな健康に悪影響を及ぼす環境要素は、リフォームやちょっとの工夫で改善されるものもあるそう。そこで、快適な住環境を整えるためのポイントを紹介。 ■落葉樹の家具や建材でシックハウス症候群を回避 室内の空気中の化学物質などによって引き起こされるシックハウス症候群。その原因は、人気の無垢のフローリング材などの中にも潜んでいるという。常緑樹の建材には、高濃度になると目や呼吸器を刺激する天然成分が多く含まれているので、使用するなら落葉樹の建材のほうがおすすめ。 ■部屋の断熱性をUPすれば認知症の予防にも効果が! 冬場に多い心筋梗塞や脳卒中による死亡事故は、ヒートショックが原因とされ、家の断熱性を上げることで防止効果が期待できるという。さらに、断熱性を高めることで冷えや肩こり、腰痛、高血圧にも改善が見られるほか、脳の萎縮を抑え、認知症予防にもつながるという研究結果が報告されている。 ■就寝前の照明の色を変えて発がんリスクも低減 乱れがちな睡眠リズムの調整に重要なのが照明の調節。生体リズムに合わせ、昼は100ルクス程度の明るく白っぽい光、夕方以降は50ルクス以下の暗めで赤っぽい光に調整することで、快眠が得られるという。夜更かしや不規則な生活で睡眠リズムが乱れると、発がんリスクが高まるという研究報告もあるので気をつけたいところだ。 ■ベッドの配置を変えるだけで自律神経も整えられる 疲れを取る特効薬といえば睡眠だが、自律神経のバランスが崩れると生体リズムが乱れて睡眠の質も低下する。良質な睡眠を確保するためには寝室の環境を整えることもお忘れなく。ベッドを窓際に配置し、カーテンを少し開けておくだけで、朝の光で心地よく目覚めることができる。エアコンの風が直接当たらない位置がベター。■床暖房は暖かいだけでなく運動不足も解消してくれる 人は暖かい環境のほうがよく動き、活動量が増えるという報告がある。とくに、床の暖かさが活動量に影響していることは、複数の幼稚園での調査でも検証されている。さらに、高断熱無垢フローリングの床材を使った園舎にいる園児はインフルエンザの罹患率も低いという。床暖房の効果は単に暖かいだけではないのだ。 環境要素については次のような調査報告も。 全国の自治体の中から人口規模が一定以上の市を抽出し、平均寿命を調査したところ、標高が高い地域に住む人は低い地域に比べて平均寿命が長いという結果に。データによると、男性では標高が1,000メートル高くなると約2歳寿命が延びているという。
2018年03月07日15日、警察庁は’17年に認知機能検査を受けた75歳以上の高齢ドライバー196万2,149人中、2.8%に当たる5万4,072人が“認知症の恐れがある”と判定されていたことを発表した。 また、昨年に交通死亡事故を起こした75歳以上のドライバー385人を調査したところ、「認知症の恐れ」があるが28人。「認知機能低下の恐れ」があるが161人だったことも同時に発表。じつに死亡事故を起こした運転者のほぼ半数が、認知機能が低下していたのだ。 連日報じられる高齢者の交通事故をみて人ごとではないと思っても、自分が、家族がどのタイミングで運転をやめるべきかわからない人が多いはず。そんな人に知ってほしい免許返納のこと。 長年、自動車を日常の足としてきた人は、MCI(軽度認知障害)の疑いがあるからといって、免許返納に抵抗があることも多いだろう。また免許証は身分証として使う機会も多い。 だが、じつは免許返納者は希望すれば「運転経歴証明書」が交付され、公的な身分証明書として生涯有効に使える。 さらに運転経歴証明書を持っていると、各自治体で受けられる“特典”があるのだ。多くの自治体で導入されているのが、バスなどの公共機関やタクシーの割引。運転ができなくなっても、安価に移動手段を確保できる。 また、自治体と提携した企業などがさまざまな特典を用意していることも。そんな、全国のユニークな「返納特典」を紹介(警視庁、各都道府県警の特典リストを基に本誌が抜粋、各種条件がありますので、詳細は当該団体にご確認ください)。 ■東京都【東京シティ信用金庫】「免許証返納定期」(スーパー定期預金)があり、店頭金利+0.15%優遇(1,000万円未満)。 【帝国ホテル東京】帝国ホテルの直営レストラン・バーラウンジにて10%引き。 【浅草ROXまつり湯】大人2,700円を50%引きの1,350円に(※土日祝・特定日はプラス324円)。 【コムウェルグループ】患者移送サービスのケア・サービス料50%引き。婚礼衣装などを20%引き。 【IMSグループ(池袋ロイヤルクリニックほか)】全額自費による人間ドックを3万6,000円(税別)で受診可。 【アシックスジャパン株式会社】一部の商品を除き、シューズの購入代金が15%引き。 ■神奈川県【観音崎京急ホテル】宿泊料が20〜50%引き。レストランが10%引き、温浴施設の日帰り入浴料50%引き。 【協進印刷】年賀状等はがきの宛名印刷が50%引き。 【ドミノ・ピザジャパン】店舗での購入金額が10%引き。 【特定非営利活動法人遺言NPO】遺言・相続セミナー受講料(3時間)、遺言・相続個別相談会(1時間)、相続税試算が無料。 ■愛知県【トヨタすまいるライフ】新築住宅、新築マンション成約時にインテリアチケット20万円分プレゼント。 【平安閣グループ】葬儀関連費用15%引き。 【メガネの愛眼】メガネ商品は10%引き、補聴器は5%引き。 ■大阪府【新橋カメラ】遺影などの写真撮影、プリントなどが10%引き。 【ミナト整骨院】足ツボマッサージ(2,160円)を50%引き。 【スポーツショップログ】グランドゴルフ用品、ノルディックウォーキングボール、卓球用品等を20%引き。 【高島屋(大阪店、堺店、泉北店)】自宅への配送無料。 【シンエンス】電動車いす新車購入で1万3,700〜5万7,800円引き。 【通天閣】一般展望料金(大人)を100円引き。 ■兵庫県【ホテルニューアワジ(洲本市)】一部繁忙期を除き、入浴料が通常料金が50%引き。宿泊料金が20%引き。 【お墓見守隊シマンドはりま(加古川市)】墓石の洗浄やお墓参りの同行、代行などの料金が20%引き。 また、ほかにも自治体と提携した企業がさまざまな特典を用意していることも。ぜひ、自分が住む自治体の特典を調べてほしい。 警察庁によると、昨年1年間で、運転免許証を自主返納したドライバーは、約42万2,000人。そのうち75歳以上が約25万2,700人となり、過去最多を更新した。運転免許返納を悲観的にとらえず、老後を楽しむチャンスとしよう!
2018年03月01日15日、警察庁は’17年に認知機能検査を受けた75歳以上の高齢ドライバー196万2,149人中、2.8%に当たる5万4,072人が“認知症の恐れがある”と判定されていたことを発表した。 また、昨年に交通死亡事故を起こした75歳以上のドライバー385人を調査したところ、「認知症の恐れ」があるが28人。「認知機能低下の恐れ」があるが161人だったことも同時に発表。じつに死亡事故を起こした運転者のほぼ半数が、認知機能が低下していたのだ。 「認知機能の低下によって、クルマの運転時に起こりやすい事象をまとめたのがこのリストです。まずは自分の状況を把握して、早期に予防と対策をすることが肝心です」 そう語るのは、認知症研究の第一人者で、『運転を続けるための認知症予防』(JAFメディアワークス)の著者、鳥取大学医学部・浦上克哉教授(61)。 認知機能とは、記憶力や判断能力など、物事を正しく理解し、適切に実行するための知的機能のこと。この機能が低下した状態が、認知症や“認知症予備軍”と呼ばれるMCI(軽度認知障害)だ。 そしてこれを早期発見するために役立つのが、浦上教授が作成した次の「運転時の認知障害早期発見チェックリスト」。運転者だけでなく、家族の目からもチェックしてみよう。 【1】車のキーや免許証を探しまわることがある【2】今までできていたカーステレオやカーナビの操作がわからなくなることがある【3】スーパーなどの駐車場で自分の車を止めた位置がわからなくなることがある【4】運転中にバックミラー(ルーム、サイド)をあまり見なくなった【5】アクセルとブレーキを間違えたことがある【6】曲がる際にウインカーを出し忘れることがある【7】反対車線を走ってしまった(走りそうになった)【8】右折時に対向車の速度と距離の感覚がつかみにくくなった【9】車間距離を一定に保つことが苦手になった【10】車庫入れで壁やフェンスに車体をこすることが増えた【11】駐車場所のラインや、枠内に合わせて車を止めることが難しくなった【12】急発進や急ブレーキ、急ハンドルなど、運転が荒くなった(と言われるようになった)【13】交差点での右左折時に歩行者や自転車が急に現れて驚くことが多くなった【14】同乗者と会話しながらの運転がしづらくなった【15】以前ほど車の汚れが気にならず、あまり洗車をしなくなった 「年に1度はチェックしてください。15項目中、3項目以上チェックが入った場合は要注意。7項目以上該当する人は、専門医の受診をお勧めします」(浦上教授・以下同) 浦上教授が、ぜひ運転者の家族にも注意してもらいたいと語るのが(10)だ。 「車庫入れのミスは“視空間認知機能(目から入った情報のうち、物の位置や向きを認識する能力)”と呼ばれる能力の低下で起こります。自分のクルマと車庫の位置関係がわかっていないと、うまく駐車できない。たとえば自宅の車庫など、慣れた場所でクルマを壁にぶつけたり、こすったりするようになったら注意が必要です。クルマに傷やへこみがないか?ふだんから家族が確認しましょう」 【3】と【11】にあてはまる人も、“視空間認知障害”の可能性があるので気をつけてほしい。 「認知症になった人は、自分が忘れているということを忘れてしまう。そのため自分が危険運転をしているということも忘れたり、気づいていないことがあるので、家族のチェックも重要です。高齢者だから必ず事故を起こすわけではありません。早期にMCIの兆候に気づき、予防する。そして能力の低下に応じた安全運転を心がけることで、長く運転を続けることもできるんです」
2018年03月01日18日、東京都港区内で、元東京地検特捜部長で弁護士の78歳男性が運転する乗用車が暴走し、歩道を歩いていた30代の男性をはねて死亡させた。原因はアクセルとブレーキの踏み間違いとみられる。 このような高齢者ドライバーによる死亡事故が、連日のように相次いでいるーー。 前記事故の3日前の15日、警察庁は’17年に認知機能検査を受けた75歳以上の高齢ドライバー196万2,149人中、2.8%に当たる5万4,072人が“認知症の恐れがある”と判定されていたことを発表した。 また、昨年に交通死亡事故を起こした75歳以上のドライバー385人を調査したところ、「認知症の恐れ」があるが28人。「認知機能低下の恐れ」があるが161人だったことも同時に発表。じつに死亡事故を起こした運転者のほぼ半数が、認知機能が低下していたのだ。 認知機能とは、記憶力や判断能力など、物事を正しく理解し、適切に実行するための知的機能のこと。この機能が低下した状態が、認知症や“認知症予備軍”と呼ばれるMCI(軽度認知障害)だ。 認知症研究の第一人者で、『運転を続けるための認知症予防』(JAFメディアワークス)の著者、鳥取大学医学部・浦上克哉教授(61)が、運転時の認知障害について解説してくれた。次のクルマの運転時に起こりやすい事象は非常に危険だという。 ・運転中にバックミラー(ルーム、サイド)をあまり見なくなった・アクセルとブレーキを間違えたことがある・曲がる際にウインカーを出し忘れることがある・反対車線を走ってしまった(走りそうになった)・右折時に対向車の速度と距離の感覚がつかみにくくなった 「認知症に多いのが、“同時に2つのことができなくなる”ということ。『運転中にバックミラー(ルーム、サイド)をあまり見なくなった』、『曲がる際にウインカーを出し忘れることがある』は、運転をしながらバックミラーを見たり、ウインカーを出したりすることができない、やらないというケースです。これは2つのことを同時にやりにくくなる場合と、そもそもウインカーを出すことすら忘れてしまっている場合もある。本人は運転のみに集中しているので、ほかに注意が向かなくなるんです」(浦上教授・以下同) 「右折時に対向車の速度と距離の感覚がつかみにくくなった」が当てはまる人は判断力が低下している可能性があるそう。 「右折するとき、対向車のスピードと、自分のクルマとの距離感を計算しながらタイミングを計りますが、判断能力が低下しているとこれが難しくなる。昔の感覚で右折しているつもりでも、ブレーキからアクセルへの踏み替え、ハンドル操作などが遅くなっていることがあるのです。とくに大きな交差点などでの事故に気をつけてください」
2018年03月01日2018年がスタートして早いもので1カ月が経ちました。いろいろな目標を立てて、夢を叶えるべく新年のスタートを切った方も多いと思います。でも、その勢いを1年間継続するのはなかなか難しいもの。気分転換をしながらペースを保てるときは良いのですが、いつも上手くいくとは限りません。「疲れた」と、つい呟きたくなる日もあります。今日はそんなとき使ってほしい精油をご紹介します。「疲れた」とつぶやきそうになる人へ、おすすめの精油3選心の疲れには、太陽のように温かい香りのオレンジ・スイートストレスマネージメントについて、元プロアスリートの友人と話をしたことがあります。彼らは、試合のプレッシャーや「なんで上手くいかなかったのだろう」という落ち込み・イライラなどを、翌日に持ち越さないように徹底しているそうです。前向きな気持ちで眠りにつくことが、勢いを維持するには大事なのだとか。オレンジ・スイートは、不安や緊張を和らげ、安眠を促す効果があるといわれる精油です。リラックスとリフレッシュの両方を叶える香りで、シトラス系の中でも温かみと甘さがあります。消化促進機能もあると言われているので、ストレスで食欲がなかったり、胃腸が弱ったりしたときにもぴったりです。デトックスが必要な凝り固まった体の疲れには、ジュニパーベリー外回りで脚がパンパン、パソコン仕事で肩がガチガチ……毎日の疲れはしっかり体を休めて回復をはかりたいものです。なかなか休息がとれないとき、疲れがたまってしまったときにおすすめなのが、ジュニパーベリーの精油。ジュニパーベリーはホッとする爽やかな香りで、森の中にいるような気分になります。ハーブとして古くから利用されているので、精油よりも食べものや飲みもので馴染みのある方の方が多いと思います。そのひとつが、ジンの香味付けです。ジュニパーベリーの解熱・利尿作用に着目して、薬用酒として作られたのが起源だと言われています。体の余分な水分や老廃物の排出を促してくれるのです。その他にも、血行促進効果や肝臓の働きを高めるといわれる精油なので、むくみや肩こり、筋肉痛など、疲れた体を癒してくれますよ。心の疲れにも体の疲れにも、万能なティーツリー私が最もおすすめしたい精油がティーツリーです。オーストラリア原産の植物で、先住民のアボリジニによって昔から万能薬として利用されてきました。オイルを吸入して感染症や風邪の治療にあてたり、怪我などの患部に葉を直接貼ったり、葉を煎じて飲んだりと、幅広く利用されていたそうです。最近では、インフルエンザ予防や認知症予防に対する効果の報告もあがっています。精油は全般的に、「なぜ効くのか?」というところまでわかっていないものの、「どんな効果があるの?」というのは実証されつつあります。そこで結果が出てきている精油のひとつが、このティーツリーです。スッとした清涼感があり、ユーカリの香りに似ています。力強いイメージの香りなので、高いリフレッシュ効果が期待できます。心身を強壮する効果や、慢性的な疲れやストレスの解消効果があると言われ、アクティブに過ごすDRESS読者の皆さまにぴったりの精油です。精油の楽しみ方精油の楽しみ方はいろいろです。お風呂に入れて半身浴に使ったり、薄めてトリートメントオイルとして体に塗ったり……。精油をティッシュペーパーやハンカチに1~2滴垂らして置いておくだけでも、空間に香りが広がって楽しむことができます。精油の配合された化粧品で香りを取り入れるのもひとつの方法です。肌のトリートメントやマッサージを通して心身共に元気になれたら、一石二鳥ですよね。1年間、目標に向かって精力的に活動し続けるには自己管理が欠かせません。食事・休息・思考……すべてをバランスよく整えていく努力が必要です。香りはそんな皆さまの頑張る毎日を強くアシストしてくれるはずです。日々の生活に取り入れてみてください。
2018年02月07日「子どもや家族に迷惑をかけたくないから、将来は高齢者施設に――。そう考えている人は多いです。しかし、そのほとんどの人たちが、実際にどのくらいの総額費用がかかるのかイメージできず、不安をかかえていらっしゃいます」 そう語るのは、『介護施設&老人ホームのさがし方・選び方』の著書もある、齋藤直路さん。そこで今回、齋藤さんにグループホームの月額使用料や、介護度ごとの月額介護サービス費用(介護保険自己負担額が1割の場合)を算出し、生涯の総支払額をシミュレーションしてもらった。 「介護費用は各自治体によって若干変化します。今回の設定では、首都圏のベッドタウンを想定していますが、都心部の場合はさらに1割ほど高くなることが考えられます。また、介護施設の利用料金、要介護度の変化、入居期間は、複数の施設を調査して、一般的なケースを想定しました。死亡年齢は現在の女性の平均寿命87歳よりも4~5年延びることが予想されますので、92歳(93歳の誕生日の前日)に死亡すると仮定しています」(齋藤さん) 例:娘夫婦と同居している85歳のDさん。要介護1で在宅での介護生活が可能と思われていたが、認知症の症状が重くなり、娘の意向で、看取りまでしてくれるグループホームに入居した。介護費用として月に2万2,400円(要介護1)~2万5,000円(要介護5)、月額利用料には家賃と食費を含めて16万3,000円かかった。89歳時点で病気のため入院したが、病状は安定し間もなく退院。そして要介護5の寝たきり生活を4年間続けて亡くなった。 【グループホームの場合での介護費用シミュレーション】 (1)要介護1の場合(85歳~86歳)介護費用の目安:約2万2,400円月額利用料:約16万3,000円合計:約18万5,400円 (2)要介護2の場合(87歳~88歳)介護費用の目安:約2万3,400円月額利用料:約16万3,000円合計:約18万6,400円 (3)要介護5の場合(89歳~92歳)介護費用の目安:約2万5,000円月額利用料:約16万3,000円合計:約18万8,000円 85歳から92歳までの8年間で合計:1,794万7,200円(内訳:18万5,400円×24カ月+18万6,400円×24カ月+18万8,000円×48カ月) グループホームの正式名称は、認知症対応型共同生活介護。その名のとおり、認知症と診断された入居者が、スタッフに援助を受けながら共同生活を送る形態だ。 「平成26年の厚生労働省の研究機関が出したレポートによると、80~84歳の認知症有病率は約25%でした。今後、グループホームのニーズが高まるでしょう。すでに全国には1万2,000カ所の施設があり、空き室がないケースも多いです」(齋藤さん・以下同) グループホームは1ユニット最大9人で共同生活を送る。通常の施設では、2ユニット18人が定員だ。アパートを借り上げたり、古い民家をリフォームした施設までさまざま。入居者に個室が割り振られ、台所や食堂、浴室は共同。家庭的な雰囲気で生活できる。 「認知症の方は、食事ができ、体も元気なことが多いため、介護度が低く認定される傾向があります。そのため実際の介護は、介護度以上に大変で家族の負担も大きい。特別養護老人ホームは基本的には要介護3以上でなければ入所できないため、要介護2以下の認知症の方のご家族にとって、この施設はニーズが高いです」 施設での生活は、簡単な計算をしたり、昔のことを思い出す回想療法など、認知症に対応した機能訓練などを行う。一方で、入居者同士が助け合い、車いすを押したり、家事を分担する。それがリハビリにつながるという。認知症の女性の場合、これまで毎日行ってきた料理なども「火の元が心配」と家族から禁止され、家事をする機会をなくしている。 「グループホームでは、禁じられていた家事もでき、人の役に立てる。それが認知症による不安や混乱を抑えます」 看取りを行う施設も多いが、認知症が悪化して共同生活が困難になると、退去を迫られることもあるので要注意だ。
2018年01月31日「高齢ドライバーによる事故が後を絶ちません。今月9日にも、前橋市で85歳男性の運転する車に、女子高生2人がはねられ重体になるという痛ましい事故がありました。実は、交通事故による死者数自体は減っています。昨年は3,694人と、統計データのある’48年以降で、最少記録を更新しました。しかし、昨年1月から11月までに死亡事故を起こしたドライバーを年齢別にみると、65歳以上が約3割を占めます。しかも、高齢ドライバーの割合は、年々増加傾向にあるのです(警察庁)」 こう語るのは、経済ジャーナリストの荻原博子さん。「うちの親は大丈夫かしら」と心配な人も多いのでは?家族が免許を自主返納するよう勧めても、それに応じない高齢者も多く、悩みの種だという声もよく聞く。そんな免許返納に抵抗のある人も、これなら受け入れやすいかも。荻原さんが高齢者の運転を見守る保険を解説してくれた。 「三井住友海上の『GK見守るクルマの保険』は、通信機能を持つ車載器と、スマホの専用アプリを用いて保険会社とデータをやりとりし、ドライバーの運転状況を見守るというものです。たとえば、急なハンドル操作や車のふらつき、また高速道路での逆走などがあれば、『逆走していませんか』などと警告します。事故の衝撃を感知したときは、保険会社からドライバーに電話が入り、安否確認と事故の初期対応などをサポートします。アラート情報や、運転を100点満点で評価した毎月のレポートは、本人だけでなく見守る側にも送られます。特に、親と離れて暮らす子ども世代には、親のふだんの運転状況がわかるので、安心できるのではないでしょうか。自動車保険の特約として付帯しますので、特約料は月300円。年払いだと、3,480円が保険料に上乗せされます」(荻原さん・以下同) ほかにも、同様の見守り自動車保険がある。 「損保ジャパン日本興亜の『DRIVING!』は、専用のドライブレコーダーを用います。ドライブレコーダーが運転データを記録し、車間距離が短くなるなど危険を察知すると、アラート音で警告します。事故の際は、自動的に保険会社に通報し、警備会社が駆け付けます。ドライブレコーダーには画像が記録されているので、証拠としても活用できます。特約料は、月850円。年払いだと9,720円です」 政府も、高齢ドライバーの交通事故削減に向けた取り組みを始めている。すでに昨年3月から、運転免許を更新する75歳以上の人への認知症テストを強化した。さらに「80歳以上のドライバーによる交通事故の死亡者数を、’20年には200人以下にする」という目標を立て、5年ごとに見直される「高齢社会対策大綱」のなかに盛り込む方針を固めた。’16年の死亡者数は266人。約25%の削減を目指す。 「交通事故は、被害者はもちろんですが、加害者とその家族の人生も変えてしまいます。心配だと思いますが、いきなり免許返納を勧めるより、今回紹介した保険への加入や、運転レポートなどをもとに、冷静に話し合うほうが賢明かもしれません」
2018年01月26日人気バンドCNBLUEのギターリスト、イ・ジョンヒョンさんが1月24日、2枚目となるソロアルバム『METROPOLIS』を発表!アルバムのことはもちろん、おすすめの映画や本、初主演した日本映画の現場や、韓国バラエティ番組『ジャングルの法則』で感じたことと、たくさんのトピックについて、流暢な日本語でお話してくださいました。写真・小笠原真紀 動画・千葉 諭 文・小泉咲子【ペンになってもいいですか!?】vol. 49CNBLUEでいちばん “スタイリッシュ” なのは?――アルバムタイトル『METROPOLIS』はどういったイメージでつけたんですか?最近、クラブっぽい感じのするハウスが好きなんです。どうも近頃、CNBLUEのライブでも、重低音のズンッズンッっていうのがないと寂しいんですよねえ(笑)。今の気分がアルバムの収録曲にも反映されているんで、いろんなタイトル案からいちばん洗練されていて、スタイリッシュな感じがした『METROPOLIS』に決めました。――ジョンヒョンさんも、やっぱりスタイリッシュ?いや、僕は昔から見た目を気にしないタイプなんです。ファッションにもあまり興味がなくて、普段はジャージばかり着ています。今回の来日もジャージしか持ってきてませんしね。もう少し時間的に余裕があれば、着飾ってもみたいですけど、あまりに忙しすぎて……。朝、服を選ぶくらいなら、そのぶん長く寝ていたい(笑)。仕事上、剃らなきゃいけない時以外は、ヒゲも剃りません。ファンのみなさんから「ライブでは剃って」と怒られるんですが、面倒で……。すみません!――(笑)。CNBLUEのメンバーだと、いちばんスタイリッシュなのは誰?ジョンシンかなあ。毎日、一生懸命オシャレしてます。高い服もたくさん持っていますしね(笑)。曲作りは楽しく。仕事にしないのがモットー。――曲作りについて教えてください。アルバムを出す、出さないにかかわらず、曲はコンスタントに作り続けています。ストックの中から選んで、パズルのように組み合わせてアルバムにしていくんですけど、作った時はよくても、今は入れたくないとか、うまくはまらないことがあるんです。そうすると、何十曲とストックがあっても、新しい曲を作るしかなくて、もう大変。作ろうと思ってすぐに出きるものではないですから。『METROPOLIS』の中だと、リード曲の「Starry Places」がいちばん苦労しました。作りながら「リード曲になりそう」と思った瞬間から、ブラッシュアップしていくのが大変でした。――曲は、どのくらいのペースで作っているんですか?1か月に、3、4曲は作っています。もう、僕にとって、曲作りは趣味! 「アルバムを出すから作ろう」となると、“仕事” になっちゃうじゃないですか。そうすると、全然楽しくないし、ツラくなる。だから、スタジオもなくしました。スタジオがあるとどうしても「行って、作業しなきゃ」って思うんじゃないですか。その時点で、曲作りが “仕事” になっちゃう。それはよくないと思って、機材は全部なくして、家でひとり、ギター1本で作っています。僕、根本的に仕事が好きな人じゃないんですよ(笑)。――家だとテレビを見ちゃったり、寝ちゃったりしませんか…?その通り(笑)。なので、いつもちゃんと作っているわけじゃないですよ。いい曲が浮かばなかったら、「もうや~めた!」ってすぐ寝ちゃいます。でも、いい曲ができる時って、ぶわ〜っと出てくるもの。アルバムに収録されている「ひかりの街で」が、そのタイプの曲。5分くらいで書けました。――ジョンヒョンさんが出演された映画『生きる街』の劇中歌ですね。温かくて、希望を感じられる歌詞が胸に響きました。歌詞は、メロディを作るのより100倍難しいです。言葉はどうやっても出てくるけど、自分で満足できるところにまで持っていくのが大変ですね。――初めて日本映画に出演してみて、現場はいかがでしたか?演者がベストコンディションでいられるようにサポートしてくれる現場でした。韓国もずいぶん変わってきてはいるんですが、スケジュールをしっかり組み、時間をしっかり守って進む日本の現場が、羨ましくもありました。ジョンヒョンさんの感性を刺激した本&映画。――ミュージシャンとして、俳優として、日頃どんなふうに感性を磨いていますか?いい本を読んだり、映画を観たりしています。最近では、于娟(ウィジ・アン)という中国人女性が書いたエッセイ『私が今日生きていく理由』という本に感動しました。彼女は30歳で世界的に有名な大学の教授となり、明るい未来が待っているはずだったのに、突然、ガンで余命宣告を受けてしまったんです。それから亡くなるまで綴ったエッセイをまとめた本。いろんな人にすすめているんですが、読んだ人は全員泣いています。僕も3回以上泣きました。映画では『未来よ こんにちは』というフランス映画に衝撃を受けました。女性の哲学の先生が主人公で、教科書を書くくらい頭のいい人なんです。でも、認知症にかかったお母さんを遠ざけたり、浮気した夫を恨んだり、子どもも離れてしまって……。うわべだけ見れば完璧な人生なんだけど、本質的には魂が傷ついている人。そのことを隠して生きているんです。「自分は賢い」と思っている人が観たら、ガツンとくる映画だと思いますね。僕も、自分なりに勉強をしているつもりですし、しっかりしているほうだと思っていたので、そうした気持ちが改まったというか、正直、2週間くらい落ち込んでしまいました……。そのくらい “ヤバい” 映画です。――まったく話が変わるんですが、韓国のバラエティ番組『ジャングルの法則』に出演されましたね。過酷なジャングルでサバイバルする人気リアリティ番組ですが、いかがでしたか?あれも、ヤバいです! ほんとうに!! いっしょに行った方はみなさんいい人でしたし、空がキレイで流れ星をたくさん見られたり、たくさんいい経験もできたんですけど、ほんとうにあり得ないヤバさなんですよ。まず、昼は暑く、夜は寒く寝られない……。それと、番組側が本当に何も用意してないし、携帯から何から持ち込めないので、自分たちで確保しない限り、何も食べられないんです。ジャングルに行って初めて、あんなにも速く魚が泳ぐことを知りました(笑)。――CNBLUEの中で、いちばんサバイバル能力が高いのは?4人だったら、僕ですね。それなのに、何もできなかったんです。いかに人間は弱く、ひとりじゃ何もできないか、教えられました。でも、帰国して1週間経ったら、ジャングルで感じたことを忘れて、すっかり元に戻ってしまって……。そんな自分に腹が立ちました。それでも、些細なことでも幸せだと再認識できた番組だったので、メンバー全員、1回は行ってほしい。ただ、ジョンシンは、生きて帰ってこられるか、ものすごく不安ですが(笑)。イ・ジョンヒョン1990年5月15日生まれ。’10年、バンドCNBLUEとして韓国デビュー。翌年、「In My Head」で日本メジャーデビュー。同作の売り上げは10万枚を突破。日本でも人気を博す。’12年、初出演した韓国ドラマ『紳士の品格』がアジアで大ヒット。俳優としても活躍する。メッセージ動画はこちら!Information・ソロアルバム『METROPOLIS』が1月24日リリース。新作をひっさげてのソロコンサートも開催。2月1日、2日 パシフィコ横浜国立大ホール2月12日、13日 グランキューブ大阪・主演ドラマ『ランジェリー少女時代(原題)』が、DATVにて放送中。・物語のキーマンを演じた日本初出演映画『生きる街』が、3月3日より全国公開に。
2018年01月24日「昨年末、利用者さんが『要介護3』から『要介護1』に格下げされました。うちの施設では、この半年で3人目。“認定更新”の審査が、厳しくなっているんです!」 関東エリアの介護施設で働く女性ケアマネジャーはこう訴える。要介護状態の重篤度を表す「要介護度」の認定は、原則1年ごとに行われる。この認定更新で、格下げされるケースが続出しているという。 「ある80代の女性は、2年前に“脊柱管狭窄症”で手術を受け、入院中に『要介護3』の認定を受けました。退院後、毎日自宅に訪問介護のヘルパーが入り、週に2回デイサービスでリハビリを受けていた。会話はそこそこで、歩行はつえをついてゆっくり歩ける程度。ところが、1年後の認定更新で一気に『要支援2』まで格下げされ、生活が一変したんです」(前出・ケアマネジャー) 「要支援2」になったこの女性は、介護保険支給額が大幅に減ったために、訪問介護が週3に減り、リハビリのサービスは受けられなくなった。 「それからすぐ、女性は歩行中に転倒し頭を強打。MRI検査したところ、脳が萎縮していることがわかり、再度自治体に要介護認定を申請して『要介護2』と認定されました。すでに認知症も進んでいたんです。いったいあの格下げは何だったのかと……」(前出・女性ケアマネジャー) 介護保険からの給付総額は、年々増え続けるいっぽうである。団塊の世代が75歳以上となる’25年には、20兆円を超えるとも……。そのため、国は介護区分を格下げすることで、給付額の負担を抑えようとしている--。そういう声が、いま介護の現場で広がっている。 そんなさなか、さらに要介護度の格下げに拍車をかける「改正介護保険法」が、4月1日から施行される。国は介護保険利用者の“自立支援”“重度防止化”というフレーズを掲げて、利用者の要介護度を格下げした自治体に対し、インセンティブの付与、つまり報奨金を出す制度をスタートさせる。じつはかなり危険な制度だと警鐘を鳴らすのは、生活情報サイト「All About」ガイドの介護アドバイザー・横井孝治さんだ。 「このインセンティブ制度は、利用者の要介護度を格下げし、負担額を減らすことを目的にしていることは明白です。4月以降、格下げは全国でより拍車がかかるでしょう。実際、高齢の利用者の心身の状態をよくして、元気にするということは楽なことではありません。それよりも“この人は元気な人です”と、格下げ認定したほうが楽。それで国から報奨金がもらえるわけですからね」(横井さん) 介護認定が格下げされれば、巨額の介護費用を負担したり、介護のための離職を強いられて、家族全員が困窮することも。実態を無視した格下げは、“介護地獄”を生み出すのだ。また8月からは一定以上の収入のある利用者の自己負担率が3割に引き上げられる。親の介護をしている家族にとって、次の認定更新で格下げを防ぐための手段はないのだろうか。 認定更新は、主治医の意見書と、自治体の認定調査員による利用者の面談によって一次判定が行われる。調査員が作成する調査票には特記事項という項目があり、認定調査員がそのときに感じた印象を書き込むようになっている。つまりどう判断するか、認定調査員の主観で決められるのだ。その後、介護認定審査会の二次判定で「要介護度」が決定する。 「必ず調査員との面談に家族が立ち会うこと。そして、ふだんからできるだけ夜間の行動や、問題行動を起こしたときのことを写真に残し、メモを作って調査員に渡す。“面談のときは元気でもふだんはこういうこともある”と、しっかり伝えることが重要です。さらに特記事項に必ず記載してもらえるように言うこと。うるさい家族だと思われるほうがいいんです。これからは利用者本人、その家族も理論武装しておかないと負けてしまいます。自治体は基本前提として“格下げ認定をしに来ている”という姿勢で面談に臨むことですね」(横井さん) 仮に格下げとなった場合、自治体に対して“区分変更申請”をすれば再調査を受けられる。さらに、情報公開請求をすれば、格下げ時の認定調査票を入手できるので、調査員がどのようにチェックしたか確認して、戦術を練ったうえで、再調査に臨もう。 もはや介護認定は受け取る時代ではなく、勝ち取る時代になったようだ!
2018年01月19日「具体的な統計データはありませんが、格下げされた家族からの相談や悩みを聞くことが非常に増えました。実際、私の母親も『要介護3』から『要介護2』になりました」 そう語るのは、生活情報サイト「All About」ガイドの介護アドバイザー・横井孝治さん。要介護状態の重篤度を表す「要介護度」の認定は、原則1年ごとに行われる。この認定更新で、格下げされるケースが続出しているという。国や自治体は、要介護度を軽くすればするほど、負担する支給額を減らすことができるのだ。 「アルツハイマーと脳血管型認知症の2つの症状がある『要介護3』の80代の女性は見守りが必要でしたが、つえをついて歩ける状態でした。ところが、次の認定更新のときには車いすでの生活に。認知症の症状も悪くなっていたのですが、『要介護2』に格下げ認定されたんです。利用者の家族は納得がいきませんでしたが、認定が覆ることはなかった。このケースは意識的に下げたとしか思えなかった典型的な例です」(横井さん) 認定更新は、主治医の意見書と、自治体の認定調査員による利用者の面談によって一次判定が行われる。その後、介護認定審査会の二次判定で「要介護度」が決定するのだ。北陸エリアの介護関係者は、こう話す。 「『要介護2』のひとり暮らしの85歳の女性がいました。ふだんは、妄想や幻覚の症状があって、会話が飛んでしまうこともしばしば。しかし、調査員との面談のときは、たまたま状態がよく、そこそこ受け答えができた。その結果、『要支援2』に格下げされました。たった一度の面談で、決まってしまったのです」 調査員が作成する調査票には特記事項という項目がある。 「認定調査員がそのときに感じた印象を書きます。つまりどう判断するか、認定調査員の主観で決められるんです」(関東エリアの介護施設で働く女性ケアマネジャー) 要介護度に応じた支給限度基準額内で、利用者は1割~2割負担で介護サービスを受けられる。要介護度が格下げされると、その額も減らされてしまうのだ。 たとえば、前出の「要介護3」から「要支援2」に引き下げられた80代女性のケース。支給限度基準額は「要介護3」であれば月額26万9,310円(負担割合が1割の場合、自己負担額は2万6,931円)だが、「要支援2」に格下げされると月額10万4,730円(同1万473円)と半額以下になる。 もし、この女性が格下げ前と同じサービスを受けようとした場合、差額の約16万円を全額負担しなければならない。金銭的な余裕がない場合、これまで受けていた介護サービス(生活援助、身体介助など)が利用できなくなったり、回数を減らさざるをえない。利用者はもとより、家族にも負担がのしかかるのである。 東海エリアの介護事業所の責任者は次のように語る。 「格下げにより、施設を退所させられた男性は、自宅での介護を余儀なくされました。その結果、同居する娘さんが離職してお父さんの介護をすることに……。結局、格下げのシワ寄せは家族に降りかかるのです」
2018年01月19日「今後、年金の受給開始を70歳に引き上げることが予想されます。一人あたりの医療や介護費は年々増加しています。国を頼りにすることはできないのかもしれません。シニアの生活防衛を考えると、働くことは最善の手段でしょう」 こう語るのは、ファイナンシャルプランナーの八ツ井慶子さん。医療や介護費などの負担増の結果、手取り収入はここ数年、減り続けている。老後のための貯蓄もままならない状況で、いまや死ぬまで働くことが求められているようだ……。 「そんな時代には働くことを前向きに考えることが大切です。シニアには時間がたっぷりあります。女性の平均寿命は87歳。60歳から25年以上の時間を余暇だけで持て余してしまわないでしょうか。働くことで“幸福度”が上がるという研究データもあります。そもそも人間には周りに認められたい、どこかに属していたいという願望があるのです。自分の幸せのためにも、60歳を過ぎてからも、働くことを積極的に考えてみては」 老後の資金に不安を抱える人は少なくない。そんな人も働くことで心配は軽減していくと八ツ井さん。 「老後の資金がいくら必要かよく問われますが、いくら足りないかと考えて不安を感じるよりも、働けるうちはしっかり仕事をして、生活費や老後資金を稼ぐほうが前向きになれます。長く働くことで、完全にリタイアしたあとの生活がラクになります」 年金がもらえる年齢が後ろ倒しになることも予想されるし、さまざまな負担増があることを見越すと月8万円は稼いだほうが安心できると考えられているという。 肝心の求人だが、60歳以上の女性に関しては、先行きは明るいようだ。 「団塊世代が定年退職し、働く現場は人手不足。仕事が円滑に回らないなか、シニアの求人が増えています。とくにコンビニ、ファストフード、飲食店などのサービス業は、シニア女性の“仕事力”が求められているのです」 そう話すのは、シニアライフアドバイザーの松本すみこさんだ。 「お金を稼げるだけでなく社会に出て人と接することで元気になるし、さまざまな刺激があるので認知症にもなりにくくなる。第二の人生として生きがいを見つけている人も多い。シニアの男性の場合はプライドが邪魔をして“こんな仕事できるか”と選びすぎてなかなか就職できなかったり、コミュニケーションが取れずに、職場で苦労したりすることもあります。その点、女性の場合は、柔軟で協調性もあるので、60歳以降の女性が活躍できる職場は増えているのです」
2017年12月20日「身体の限界というか、エネルギーが切れてしまっている瞬間があって。その瞬間以外で食べるとお腹がモタモタしちゃうので……」 11月28日放送の『スッキリ』(日本テレビ系)でそう語ったのは、高橋一生(36)。スレンダー体型のイケメンで知られる彼だが、なんと約15年間も1日1食の生活を続けていると明かしたのだ!そこで気になるのは「いったい、いつ何を食べているのか」ということ。その“秘密”について、高橋を知る芸能関係者がこう明かす。 「撮影期間中の高橋さんはロケ弁などには手をつけず、いつもスタジオ内にある食堂で“野菜たっぷりのタンメン”を食べていました。夕方ごろにきて『今日は何も食べていない』と言っていましたね。しかも彼はいつも、お酢やコショウなどの調味料を独自の比率で入れるんです。その“高橋スペシャルブレンド”を、必ず守っているようでした。普段、自宅では自炊もしているようです。1日1食とはいえ、かなりこだわりがあるみたいですよ」 食に強いこだわりのある芸能人といえばディーン・フジオカ(37)が有名だが、高橋もまたおディーンさまばりのポリシーがあるようだ。 「彼は『あまり食べると眠くなるし頭もさえない。1日1食のほうが体調もいい』と言っていました。それに彼は役作りのため短期間で体重を増減させることが多々ありました。それもあって体重をコントロールしやすい状態にしているのでしょう」(前出・芸能関係者) 実際のところ、1日1食の生活は高橋の言うような“いい影響”を体に及ぼすのだろうか。自身も1日1食生活を25年間続け、著書『超一流は無駄に食べない』(海竜社刊)を上梓している「イシハラクリニック」の石原結實院長(69)はこう語る。 「現代人は明らかに食べ過ぎです。食べ過ぎると、消化や吸収を行おうとして胃に血液が集中してしまいます。逆に大腸や小腸、腎臓や膀胱などへ供給される血液は不足してしまいます。その結果として排泄力が低下してしまうため、老廃物が体内に溜まってしまうのです。老廃物が排出されるとシミが薄くなり、肌がきれいになります。また浄化された血液が全身に行き届くことで、疲れやだるさがなくなります。脳の血流が良くなれば頭も冴えるし、集中力もアップ。認知症の予防や改善などにもつながります」 来年70歳になる石原院長だが、今もベンチプレスで90kgを持ち上げるという。 「空腹時には、細胞内の“サーチュイン遺伝子”が活性化するといわれています。別名“長寿遺伝子”といわれるもので、これがオンになることでさまざまな病気を治してくれるのです。さらに血液中の白血球や免疫細胞も働くため免疫力もアップし、がん細胞や病原菌を退治してくれます。このように1日1食は、まさにいいことづくめなのです!」 高橋の大躍進は、こうした1日1食生活効果が支えているようだーー。
2017年12月13日58年に創刊され、多くの芸能人が登場してきた『女性自身』が2800号をむかえた。彼らは今、何をしているのか。“意外なその後”を大追跡! 13年に映画『ペコロスの母に会いに行く』で88歳の初主演を果たし、ギネス認定された赤木春恵(93)。 娘の野入泉さんにそんな彼女の現況を聞いた。 「15年に大腿骨を骨折し、手術でしか治らないと言われたのですが、高齢なので手術しませんでした。現在は車椅子生活で、施設に入っています。一部で認知症とかパーキンソン病とか言われていますが、そんなこともなく元気ですよ」 また今年3月の『ノンストップ』(フジテレビ系)では、赤木が福山雅治(48)と文通していることも明かされていた。 「昔のお友達と文通するのが楽しみですが、今は指先が震えて字が書けず、私が代筆することも多いですね」
2017年12月01日サービス付き高齢者向け住宅『そんぽの家・姪浜』(福岡市)の集会場。毎週水曜日は「脳を若返らせる『みつおか式脳若トレーニング』」の日。入居者は午前10時半から1時間、参加費300円で利用できる。 11月1日の参加者は11人。脳若コミュニケーター(講師)の指導の下、それぞれ手にしたiPadで「反射年齢」トレーニングに興じていた。画面中央に表示されたイラストの手で、落ちてくる棒をつかむゲームだが、落とさずキャッチする反応の速さで、反射年齢が出る。 会場内は和気あいあい。みんな楽しそうだ。その様子をトレーニングの開発者で、株式会社サムライト社長の光岡眞里さん(52)が、ほほ笑みながら見守っていた。身長153センチ、ショートカットがよく似合う。通る声で、滑舌よく、ハキハキと話す。 「男性の参加者が多いでしょう?iPadを巧みに操れることは、男性の自尊心をくすぐるみたいですね。男性やご夫婦での参加が多いのが、脳若の特徴のひとつです」(光岡さん・以下同) 光岡さんが独自に開発したみつおか式脳若トレーニング(以下・脳若)のプログラムは800種類以上。その日、どんなメニューで行うかは、参加者の顔ぶれを見て、講師が現場で、興味を引きそうなものを判断し、提供していく。 姪浜では、「反射年齢」のほか、講座開始時に覚えたキーワードを、終了時にみんなで復唱する「遅延記憶」、6分割画面に写真表示された卵やメガネなど、6つの物を記憶して、iPad上の黒板に指で文字を書いて答える「短期記憶」、体と脳を鍛える「BB体操」など、6種類のトレーニングが行われていた。 専用のアプリと教材がインストールされた端末を個人で購入することもできるが、光岡さんは、開発当初から、姪浜のような高齢者住宅や介護施設、自治体などが主催する認知症予防講座での導入に力を入れてきた。 「なぜなら、脳若は単なる脳トレゲームではないからです。大切なのは、ゲームではなく、iPadを通じたコミュニケーションなんですね。一人の部屋から、集会場に出てきて、みんなで会話したり、助け合いながらトレーニングをする。それが脳を若く保ついちばんの秘訣なんです」 日本の高齢化率は年々、上昇を続け、「2025年問題」が深刻に取り沙汰されるようになっている。団塊の世代が全員75歳以上になる’25年。厚労省の推計では、’15年に500万人だった認知症患者数が、’25年には最大730万人になるという。政府は、’25年に向けて、高齢者が住み慣れた地域で、最後まで暮らせる「地域包括ケア」の構築を目指している。それは、まさに光岡さんが脳若を通して、目指してきたものでもあった。 「脳若を通じて出会った高齢者たちの手で、地域のコミュニケーション作りが進んでいます。お互いに助け合い、元気を維持する輪が広がっているんです。高齢者が自主的に、しなやかに生きる。そのためのお手伝いをするのが脳若です」 光岡さんは元専業主婦。パソコンを覚えたのは、子育てが一段落して派遣会社に登録をした’01年からだ。 「当時は、起業なんて、まったく考えてもいませんでした。大学卒業後、田舎の堅実な会社に就職し、単純な経理の仕事だけして、2年弱で寿退社。それからずっと専業主婦。その経歴で、起業なんてありえないと思うのが普通でしょ」 派遣の仕事で、パソコンの使い方を覚えた光岡さんは、近くの公民館でパソコン教室を始めた。’03年のことである。そのとき集まった7人が、全員シニアだったため、最初からシニア向けの教室として定着。現在の脳若トレーニングの原点になっている。 「生徒さんたちと話すうちに、パソコンの操作技術はもちろんだけど、講師や仲間とまた会いたくなるような、楽しい教室を目指そうと考えるようになりました。『覚えたことを忘れてもいいんです。みんなでワイワイやりましょう』と、話していました」 テキストは、当時から、オリジナルの手作りだった。シニア生徒の反応を見ながら、わかりやすく、楽しめることを重視したテキスト作りの経験は、後の脳若の独自プログラムの基礎となっている。 ’05年ごろから、光岡さんは、ただパソコンを使うだけではなく、元気な高齢者を増やす「介護予防」にならないかと考えるようになる。きっかけは、教室で、70代の男性がいきなり立ち上がり、ズボンを下ろすという事件が起きたことだった。 「認知症の始まりでした。このことから、高齢者の尊厳を守りながら、認知症を予防できないか。そのためのツールを開発できないかと、真剣に考えるようになったんです」 ’06年、光岡さんは、女性起業家塾で経営を一から学び、’09年12月、資本金300万円で株式会社サムライトを立ち上げた。iPadの日本販売開始はその翌年の5月。 「これだ!と思いました。高齢者にはマウスの操作って、難しいんです。でも、iPadなら指で簡単に操作できる。高齢者も使いやすいと、飛びつきました(笑)」 こうしてiPadを使った認知症予防ツール「脳若」が誕生する。脳若の特徴は、なんといっても、受講者が楽しみながらできること。姪浜の講座でも、「ああ、できん!」と、頭を抱える受講者がいると、講師がすかさず声をかけていた。 「間違ってもいいんですよ。『あっ、間違えた』と思った瞬間、脳は活性化するといわれていますから」 失敗してもいい。できなくてもいい。ワイワイガヤガヤ、みんなで楽しく笑い合うことで、脳は若返る。短期記憶のトレーニングなどでも、答えが出てこない受講者がいたら、両隣の人が、ヒントを出して助け合うのが脳若だ。講師もヒントを出すことを積極的に勧めていた。 「どうやってヒントを出そうかと頭をひねるのも、すごい脳への刺激になるんですよ」
2017年11月19日「男性の参加者が多いでしょう?iPadを巧みに操れることは、男性の自尊心をくすぐるみたいですね。男性やご夫婦での参加が多いのが、脳若の特徴のひとつです」 そう語るのは、「脳を若返らせる『みつおか式脳若トレーニング』」の開発者で、株式会社サムライト社長の光岡眞里さん(52)。サービス付き高齢者向け住宅『そんぽの家・姪浜』(福岡市)の集会場。毎週水曜日は「脳を若返らせる『みつおか式脳若トレーニング』」の日。入居者は午前10時半から1時間、参加費300円で利用できる。 11月1日の参加者は11人。脳若コミュニケーター(講師)の指導の下、それぞれ手にしたiPadで「反射年齢」トレーニングに興じていた。画面中央に表示されたイラストの手で、落ちてくる棒をつかむゲームだが、落とさずキャッチする反応の速さで、反射年齢が出る。 会場内は和気あいあい。みんな楽しそうだ。光岡さんが独自に開発したみつおか式脳若トレーニング(以下・脳若)のプログラムは800種類以上。その日、どんなメニューで行うかは、参加者の顔ぶれを見て、講師が現場で、興味を引きそうなものを判断し、提供していく。 姪浜では、「反射年齢」のほか、講座開始時に覚えたキーワードを、終了時にみんなで復唱する「遅延記憶」、6分割画面に写真表示された卵やメガネなど、6つの物を記憶して、iPad上の黒板に指で文字を書いて答える「短期記憶」、体と脳を鍛える「BB体操」など、6種類のトレーニングが行われていた。 専用のアプリと教材がインストールされた端末を個人で購入することもできるが、光岡さんは、開発当初から、姪浜のような高齢者住宅や介護施設、自治体などが主催する認知症予防講座での導入に力を入れてきた。 「なぜなら、脳若は単なる脳トレゲームではないからです。大切なのは、ゲームではなく、iPadを通じたコミュニケーションなんですね。一人の部屋から、集会場に出てきて、みんなで会話したり、助け合いながらトレーニングをする。それが脳を若く保ついちばんの秘訣なんです」(光岡さん・以下同) 光岡さんは元専業主婦。パソコンを覚えたのは、子育てが一段落して派遣会社に登録をした’01年からだ。 「当時は、起業なんて、まったく考えてもいませんでした。大学卒業後、田舎の堅実な会社に就職し、単純な経理の仕事だけして、2年弱で寿退社。それからずっと専業主婦。その経歴で、起業なんてありえないと思うのが普通でしょ」 派遣の仕事で、パソコンの使い方を覚えた光岡さんは、近くの公民館でパソコン教室を始めた。’03年のことである。そのとき集まった7人が、全員シニアだったため、最初からシニア向けの教室として定着。現在の脳若トレーニングの原点になっている。 「生徒さんたちと話すうちに、パソコンの操作技術はもちろんだけど、講師や仲間とまた会いたくなるような、楽しい教室を目指そうと考えるようになりました。『覚えたことを忘れてもいいんです。みんなでワイワイやりましょう』と、話していました」 テキストは、当時から、オリジナルの手作りだった。シニア生徒の反応を見ながら、わかりやすく、楽しめることを重視したテキスト作りの経験は、後の脳若の独自プログラムの基礎となっている。 ’05年ごろから、光岡さんは、ただパソコンを使うだけではなく、元気な高齢者を増やす「介護予防」にならないかと考えるようになる。’06年、光岡さんは、女性起業家塾で経営を一から学び、’09年12月、資本金300万円で株式会社サムライトを立ち上げた。iPadの日本販売開始はその翌年の5月。 「これだ!と思いました。高齢者にはマウスの操作って、難しいんです。でも、iPadなら指で簡単に操作できる。高齢者も使いやすいと、飛びつきました(笑)」 こうしてiPadを使った認知症予防ツール「脳若」が誕生する。最近では、パソコン教室や介護事業者、地域コミュニティなどでも脳若講座を開くところが増え、受講者は、延べ2万人を超える勢いだ。なぜ、光岡さんはここまで頑張れるのだろう? 「なんとなくですが、77歳までは社会のなかで働いていたいという思いがあります。母は74歳まで、現役で保険の外交をしていましたから」 50代で運転免許を取り、外を回って、人と会い、家にいたことなどなかった母は、常に光岡さんの人生のお手本だった。 「母は90代になるまで元気で、新しいことにチャレンジするバイタリティのある人でした。’14年に、倒れたのですが、その前日までメールをしていましたからね」 脳梗塞だった。約1年半の闘病の末、昨年2月17日、92歳で亡くなった。入院して、まだ、意識があったときに、母が書いたメモ《大変だとおもいます。ありがとう》の写真を、光岡さんは携帯に大切に保存している。倒れた直後から、話すことも難しくなっていた母の直筆は、乱れてはいたが、最後まで、娘にメッセージを伝えようとする強い意志のこもった文字だった。 「まだ、元気なころ、母は『命をいただいて長生きするのは、それなりの使命があるから。あなたも、使命感を持って、世の中の役に立って、生きなさい。頑張りなさい』と、言っていましたね……」 光岡さんは、母から受け継いだ使命感に支えられ、今日も全国を駆け回る。 「脳若を通じて出会った高齢者たちの手で、地域のコミュニケーション作りが進んでいます。お互いに助け合い、元気を維持する輪が広がっているんです。高齢者が自主的に、しなやかに生きる。そのためのお手伝いをするのが脳若です」
2017年11月19日*画像はイメージです:近時、高齢者の資産管理に関する相談が増えていると感じます。それもそのはず。国立社会保障・人口問題研究所の調査によれば、50歳まで一度も結婚をしていない方の割合は2015年時点で男性が23%(概ね4人に1人)、女性が約14%(概ね7人に1人)と上昇の一途を辿っています。また、配偶者がいたとしても子がいなければ場合によっては単身者となってしまいます。その意味で、今後誰しもが直面する可能性のある問題といえます。このような悩みを抱えた方の死亡や認知症にまつわる問題につき、法律上、どのような対処方法があるのかにつき考えてみましょう。 ■伝統的な対処方法としての遺言自らの考えどおりに相続をさせたい場合、真っ先に浮かぶのは遺言だと思います。この方法のメリットは比較的自由に資産承継させることができる点にあります。特に、特定の人に特定の財産を「相続させる」旨の遺言があれば、不動産であってもその相続人が確定的に権利を有し、単独で所有権移転登記手続をすることもできます。また、法的なことにはなりますが、子の認知等の身分に関することも遺言ですることができます。ただし、遺言はそれ自体が法律行為なので、遺言をする方の判断能力がなければその有効性が争われる可能性もあります。また、ご自身で作成しようとすると気付かないうちに内容が矛盾していたりして「相続させる」旨の遺言と解釈できなくなってしまったり、法的な形式を満たさなくなる等、せっかく作成したのにいざという時に使えなくなってしまうおそれもあります。このような観点から、近頃は公正証書遺言が増えていますが、公正証書にしたからといって内容にお墨付きがもらえるわけではないことには注意が必要です。 ■法定後見制度と任意後見制度について遺言の他に、現在活用されることが多い対処法として、法定の成年後見制度と任意後見制度があります。法定後見制度はご本人の判断能力が常に欠けた状態になってからでないと利用できず、原則として後見人は財産の保存行為しかできません。任意後見制度は逆にご本人の判断能力が欠ける前に後見人を指定せねばならず、必ずしも指定した者が後見人に就任するとは限りません。たとえば、懇意にしている姪が近時破産していたりすると、後見人に指定しようとしても、裁判所の判断によっては他の者が後見人に指定されます。また、いずれの制度もご本人が亡くなった場合、後見人ができることはありません。そのため、基本的にはご本人が生存中に限り、財産を管理・維持してもらえるだけです。 ■新たな対処方法としての民事信託制度そこで、近年新たに活用され始めた対処法が民事信託制度です。民事信託とは、不動産や金銭等の資産を一定の目的に沿って信頼できる者に託し、その目的の範囲内で管理、運用及び処分を可能にする制度です。その最大のメリットは、委託した方が亡くなった後も効力を残すよう取り決めることによって、相続の手続をすることなく、スムーズな資産継承が可能となる点にあります。また、民事信託後、委託した方が認知症になった場合であっても変わらず管理、運用及び処分ができます。デメリットとしては専門性が高いので専門家の関与が必要不可欠である点と、子の認知等の身分行為はできない点が挙げられます。このように、民事信託制度は、遺言によって対処できない問題と後見制度によって対処できない問題のそれぞれを解決する画期的な制度と評価できます。もっとも、民事信託制度は未だ十分に認知されておらず、活用例も多くないのが現状です。今後、高齢者の資産管理に関する問題が一層社会問題化していくことが予想され、広く周知されていくものと考えられます。本稿をお読みになられた方は民事信託制度につき頭の片隅に置いていただければと存じます。 *著者:弁護士 中川 翔伍(丸の内ソレイユ法律事務所の弁護士。離婚、相続、労務まで幅広く多様な案件を扱う)【画像】イメージです*xiangtao / PIXTA(ピクスタ)
2017年11月16日朝晩の肌のケアや、ジム通い……。女性なら頭のてっぺんからつま先まで、美しくなるためにやらなければならないことがたくさんありますよね。しかし、私たちの生活の中には、「やってはいけないこと」もたくさん潜んでいるんですよ。そこで今回は、美しくなりたいなら、絶対にやってはいけない「NGな行動」をまとめてみました。大丈夫なつもりで意外とドキッとすることが多いです。まずは“気づく”ことが大切ですね!あなたが思っている以上に、私たちは塩分過多さて、私たちが一番やりがちで、最もやっていけないものがこれ、「塩分の摂りすぎ」です。「私は気を付けているから大丈夫!」と思っている人はいませんか?10歳以上の女性が1日に必要な塩分量は7.0g未満ですが、実際、現代の女性が摂取している平均塩分量は9.2gほどにものぼるそうです。自分がどれくらいの量を摂っているか計算している人はきっといませんよね。塩分を摂りすぎていると、リンパ排液がうまく行われなくなり、水分をため込むように体が働きます。すると、いわゆる水太りの状態になってしまい、セルライトの原因になることも!日本の食事は塩分が多く、普通に暮らしていても欧米人に比べて6倍ほどの量を摂取することになるそうです。なかなか食生活をガラッと変えることはできないと思うので、その時は塩分の排出を促すカリウムが豊富に含まれている食品を積極的に摂りましょう。バナナやカボチャ、アボカドなどが挙げられます。逆に控えるべきものはお菓子やインスタント食品です。インスタントラーメン1つに含まれている塩分量は5.9~6.9g、即席みそ汁1杯が2.4gなので、1つ食べるだけで一気に塩分量が上がりますね。睡眠不足は、4~7歳の老化を招く!?忙しくて睡眠不足が続いている人はいませんか?十分に睡眠がとれないと、日中にあくびが出て疲れるだけではありません。なんと睡眠不足はあなたを4~7歳老けさせるそうです。その理由は寝ることで取り除かれる予定の老廃物が取り除かれないから。本来は寝ている間に脳細胞が体にいらないものを排出するように指令を出すのだそう。睡眠不足になると、その指令もうまく働かないということなんですね。アンチエイジングに理想的な睡眠時間は7時間と言われています。毎晩同じ時間にベッドに入って、正しい睡眠時間を確保しましょう。そして食べ物と同様、睡眠の質も重要です。寝る前にスマホを見ないようにしたり、部屋の湿度を管理したりして、良く眠れる環境を作ってください。寝ないだけで4歳の老化は痛すぎます。忙しさを理由にせず、きちんと寝ることを習慣づけましょう!高級美容液を無駄にする、横向きで寝ることあなたは寝る時、どのような体勢で寝ていますか?私はいつも右を下にして寝てしまうのですが、実はこれもやってはいけないことだったようです。横向きで寝ると顔に圧力がもろにかかり、ほうれい線がどんどん深く長くなっていくそうです。確かに私も右のほうれい線だけ、長いような……。これではどんなに高い化粧品を使っても、ほうれい線が消えません。また、横向きで寝ると片側の骨盤だけに負担がかかり、血行が悪くなってしまうそうです。ではどんな姿勢で寝るのがいいのでしょうか。それは「仰向け」一択です。まず顔に圧力が平等にかかるので、顔をゆがめる心配がありません。もちろんほうれい線対策にもなりますね。私も仰向けに寝るようになってから、腰痛が少なくなり、朝、ほうれい線が目立ちにくくなりました。「おばさんだから」の一言が、おばさん化させる自分では気づかないけれど、意外とやってしまっているのが、ネガティブな口癖を言うことです。「もうおばさんだし」だなんて面白がって言ってはいませんか?それを発するとよりおばさんに近づいていきます。というのも、脳は聞こえた言葉に合わせて頭を変えていく傾向にあり、頭で受け取られた情報に合わせて体が反応していきます。ということは、言った言葉に体が近づいていくということです。もっともNGな言葉を挙げると、「もう若くない」「歳だから」「疲れた」など。ここ最近、言った覚えがあれば、ちょっとだけ反省してみましょう。これからは言わないことが一番です。しかし、どうしても口から出そうになったら、ポジティブな言葉に変換して言うようにしましょう。例えば、若くない→大人になった、疲れた→よく働いたなどです。自分を褒めてあげているみたいで、心も元気になっていきますよ。美しさを手に入れるために、私たちはやるべきことばかりに目を向けがちですが、やってはいけないことにも注目しなければならないんですね。ネガティブな口癖はついつい自虐で言ってしまう時もありますが、その言葉通りになっていくと思うと、今からでも正そうとしみじみ思います……。気づいていないことも多いですが、冷静に思い返してみると当てはまる部分もあると思います。今一度自分の生活を見直して、意識を変えていきましょう!参考:公益財団法人塩事業センター、『食品・料理の塩分量早わかりハンドブック』主婦の友社/忍田 聡子、認知症で要介護にならない脳トレ予防の老年若脳、シンメトリー美人革命、『人は“口ぐせ”から老化する』青春出版社/佐藤富雄
2017年11月13日発達障害支援研究・実践の最前線を学ぶシンポジウム出典 : 発達障害の原因や治療法、支援方法に関する研究は、様々な分野の専門家が取り組んでいる領域です。発達障害のある子どもを育てている保護者や、その周辺の支援者にとって、最新の研究成果は今と未来の生活にどのような影響をおよぼすのでしょうか?誰もが多様で豊かな人生を送ることのできる社会を形成していくためにできることとはなんでしょうか?そんな疑問に応えるシンポジウムのお知らせです。11月26日(日)、「うちの子、少し違うかも...II~エビデンスに基づく発達障害支援をみんなで考える~」と題されたシンポジウムが、東京・お台場のテレコムセンターで開催されます。(主催:国立研究開発法人科学技術振興機構(JST) 社会技術研究開発センター(RISTEX))家庭・学校・地域・行政等における支援のしくみや最新の取り組みを紹介しながら、様々な支援の場面に横たわる障壁を乗り越え、改善していくための具体的方法について、分野・領域を超えて考えるシンポジウムです。サイエンスアゴラ2017 公開シンポジウム11月26日(日)「うちの子、少し違うかも...II~エビデンスに基づく発達障害支援をみんなで考える~」シンポジウム概要出典 : 日時2017年11月26日(日)10:15~12:30 (開場 10:00)場所テレコムセンタービル 8階 会議室B※新交通ゆりかもめ「テレコムセンター駅」直結参加費無料対象発達障害療育・子育て支援等に携わる方(医療・福祉関係等)学校・教育機関関係者の方行政(国・地方自治体)関係者の方発達障害児支援に関心をお持ちの一般の方、保護者・ご家族の方プログラム:10:00受付開始10:15開始10:20講演■神尾 陽子 氏(国立精神・神経医療研究センター 精神保健研究所 児童・思春期精神保健研究部 部長)■船曳 康子 氏(京都大学大学院人間・環境学研究科/総合人間学部 准教授)■山野 則子 氏(大阪府立大学大学院人間社会システム科学研究科 教授/スクールソーシャルワーク評価支援研究所 所長)11:15パネルディスカッション■モデレーター:熊 仁美 氏 (特定非営利活動法人ADDS 共同代表)■パネリスト :上記講演者3名、外岡 資朗 氏(鹿児島県こども総合療育センター 所長)12:20フロアとの対話(質疑応答)、まとめ12:30終了出典 : 京都大学医学部卒業、ロンドン大学付属精神医学研究所児童青年精神医学課程終了。京都大学医学部精神神経科助手の後、米国コネティカット大学(フルブライト研究員)で自閉症研究に従事した後、九州大学大学院人間環境学研究院助教授を経て、2006年より国立精神・神経医療研究センター精神保健研究所児童・思春期精神保健研究部部長、2010年より山梨大学客員教授、2017年よりお茶の水女子大学客員教授を併任。出典 : 年京都大学医学部卒業。京都大学医学部付属病院、京都市立病院にて研修後、京都大学大学院医学研究科に入学し、認知症の臨床研究を行った。2000年からは、カリフォルニア工科大学行動生物学教室に留学し、小鳥の歌を用いた音声発達の臨界期の研究に従事。2003年に帰国し、こころの発達、発達障害の分野の臨床と研究に従事。日本学術振興会特別研究員、京都大学医学部付属精神科助教を経て、2015年より現職。出典 : 関西学院大学社会学研究科後期博士課程修了、博士(人間福祉)。内閣府:子どもの貧困対策検討委員会委員・有識者会議委員、文部科学省:中央教育審議会生涯学習分科会委員、企画調整部会委員、家庭教育支援の推進方策に関する検討委員会座長、教育相談等に関する調査研究会議委員、厚生労働省:社会保障審議会臨時委員、ほか国の委員多数。大阪府子ども施策審議会会長、子どもの貧困部会部会長、大阪府スクールソーシャルワーク配置事業スーパーバイザー、ほか多数。出典 : 年、慶應義塾大学大学院社会学研究科修士課程修了。2011年、自閉症児に効果的な早期療育が届くことを目指し、NPO法人ADDS設立。2013年、同大大学院後期博士課程を単位取得退学、同大先導研究センター研究員。自閉症児のコミュニケーション研究や、早期療育の実践研究に携わる。NPO法人では、保護者が家庭療育に取り組むためのペアレントトレーニング、セラピスト認定制度等を実施し、現在までにセラピストを約100名養成、ペアレントトレーニングを約200家庭に提供してきた。出典 : 小児科医師。1988年、熊本大学医学部卒業、熊本大学大学院医学研究科へ入学後、同大医学部附属病院発達小児科にて勤務し、1996年、熊本大学大学院単位取得終了。1999年より鹿児島市立病院小児科(小児神経科)で医師、医長、科長を歴任後、2007年より鹿児島県児童総合相談センター療育指導部長、2010年より現職。鹿児島県こどもの虐待問題研究会副会長を併任。主催者からのメッセージ「国立研究開発法人科学技術振興機構(JST)の社会技術研究開発センター(RISTEX)では、「社会のなかの科学・社会のための科学」の理念のもと、社会の具体的な問題の解決を目指す研究開発を推進しています。今回のシンポジウム(入場無料)では、RISTEXにおける関連プロジェクトの成果も踏まえながら、家庭・学校・地域といった場面での発達障害支援における課題を改善し、のりこえていくための具体的なとりくみ等についての情報提供・共有や議論を行うことを目的としています。」昨年度も実施し、好評を博したシンポジウムの第2弾。様々なプロジェクトの成果の紹介や、必要とされる支援についての議論が行われます。本人や保護者はもちろん、教育や支援に関わる方に幅広く、足を運んでいただきたいシンポジウムです。イベント申し込みはこちら以下のリンクから申し込みが可能です。定員200名(予定)、氏名の登録は必須ではありません。お問い合わせは、下記のページの「主催・お問い合わせ」に情報が記載されておりますので、そちらからお願いいたします。サイエンスアゴラ2017 公開シンポジウム開催(入場無料) - 社会技術研究開発センター
2017年11月11日食べることが苦痛な子どもたち出典 : 私は大学附属病院小児科で「思春期やせ症」(神経性無食欲症)の子どもたちを見てきた経験があります。思春期やせ症というのは、思春期の子どもに起こるいわゆる拒食症のことで、栄養不足によって、無月経、低血圧、内臓の障害、骨粗しょう症など、様々な異常が生じるだけではなく、時には死亡することもあります。患者は小学生から高校生までいました。私が出会った「思春期やせ症」の保護者、特にお母さん方はとても子ども思いの方々でした。お母さん方は、子どもの健康のために様々な努力をしていました。例えば、子どもが見て食べたくなるように、色どりや形を豊かにした食事を作っていました。それでも子どもは、食べることにまったく興味を示さないのです。また、おもちゃを買ってあげるなどのご褒美を示しながら少しでも食べさせようとしますが、子どもは口を開こうとしません。食べることが苦痛なようです。何も食べないと激しい空腹感に襲われ、食べられるものはなんでも口にしたくなる健康な食欲とは大違いです。食べなければ年齢相応の食事量を満たすことができずやせていきます。体重が一定の水準を切ると入院する必要も出てきます。重症になるとトイレも自力で行けません。歩くという行為だけでも心臓が止まる可能性があるからです。自力で食べられなければ鼻からチューブを入れて栄養物を胃に流し込まなければなりませんが、子どもたちはこの処置を嫌がります。発達段階の若い女性に起こる、思春期やせ症出典 : なぜ子どもたちはこんなにも食べることを拒否し続けるのでしょうか。そして、思春期やせ症が男性ではなく女性に多発するのは、なぜなのでしょうか。私は、ちょうど発達段階にある若い女性の母性に、その原因があるのではないかと考えています。私は、視覚系の研究に従事していた頃、出産前後の母子ネズミを扱っていました。そこで、母性を強く感じる出来事がありました。ある時、母ネズミと生まれたての子ネズミたちを放置してしまったことがありました。ネズミの乳首は10個ですので子の数は10匹程度が適切ですが、生まれた子ネズミは20匹ほどいました。子はかわるがわるお乳を吸い、すくすくと育ちました。一方、母ネズミは徐々にやせていき死んでしまいました。半面、子育て中の母ネズミは防御本能が強く、巣に不用意に手を入れると噛みつかれて大けがを負うこともあります。子を守るためにはわが身を顧みず渾身の力で闘う一方、お乳を吸いつくされても決して子を襲わず、なすがままにされて命までも落としたのです。母性とはこのように、母体の生死に関わるほどの力を持っています。子どもを守るためには、自分の体を犠牲にさえします。そして思春期の女性は、この母性を獲得していく途上にあるのです。思春期やせ症を発症するメカニズムとは出典 : 思春期やせ症の原因は、今のところ分かっていません。「太りたくない、自分を美しく見せたい」とか「大人になりたくない」という深層心理で説明する人もいます。しかし思春期やせ症をすべてそのような深層心理で説明するには無理があると思っています。若い女性には過食が生じることも知られています。人を含め動物は子を宿すとよく食べるようになります。過食もまた、母性と関係するのかもしれません。私は、大人の摂食障害の病態と、早期に発症する思春期やせ症とはメカニズムが少し異なるのではないかと考えています。思春期やせ症の場合は、脳神経系の発達になんらかのトラブルがあり、アンバランスな状態になっているのではないでしょうか。性ホルモンの分泌が盛んになる思春期に、母性に関わる脳神経系も発達していくと考えられます。また、食事行動をコントロールするのは脳なので、食事行動がうまくいかないということの背景に、脳神経系の発達上のトラブルがあるのではないでしょうか。思春期やせ症は、生理学、病理学などの専門家によっていずれそのメカニズムが明らかにされるでしょうが、私は、母性が発現し維持されはじめる若い時期の女性に多発するという現実から、母性の発達との関係を否定することはできないように思います。大きな変化を迎えた思春期の体は、時にバランスを崩すこともあるからです。今後、こうした神経系の働きや影響について究明できれば、よりよい治療方法が見つかるかもしれません。思春期やせ症への対応方法出典 : ただ現在は、思春期やせ症に対しては対症療法的に対応するしかありません。ご褒美や罰を用いて食べることへの動機づけを高める行動療法的やり方を取ったり、場合によっては、医療的処置で命をつなぐことも必要でしょう。ある思春期やせ症を患った女性は就職先にケーキ屋を選び自分自身を食べることに興味を持たせようとしました。食欲がわかなくても薬を飲むように一定量の食事をとり、体重の増加や維持を確認することが自分へのご褒美となるようにしている人もいます。周りの人は、深層心理の問題だと片付けず、患者にとって適切な支援を行っていくことが大切だと思います。
2017年11月05日「うちの親、年をとって頑固になったし、ボケてきたのか、よくわからない行動をとるし。ホントに困るわ……」。そうストレスを募らせながら、家族の介護に当たっているかたも少なくないのでは? 「実は、こうした高齢者の“困った行動”は、性格や認知症のせいだけでなく、ほとんどの原因が“老化”にあります。だから、改善や予防ができるんです」と明かすのは、彩の国東大宮メディカルセンター眼科部長の平松類先生。 平松先生は、眼科医として、のべ10万人の高齢者を診察してきた経験から、高齢者の“困った行動”の原因を分析。今年9月に『老人の取扱説明書』(SB新書)という本まで出版した高齢者のエキスパートだ。そこで今回、お年寄りのよくある困った行動のワケと、改善&予防法をうかがった。 【都合の悪いことは聞こえない、聞かない】 「82歳の義母は、私が『薬飲んだ?』と聞いても知らんフリなのに、往診に来たイケメン医師に、『具合どうですか?』と聞かれると『今日はいいね〜』って即答。私は気に入らないってこと?」(50代女性) あるあるな話だが、「お母さんは“聞こえないフリ”しているのではなく、そもそもお嫁さんの話が聞こえていないのです」と、平松先生。 「70代では半数近くが、80代以上では70%以上が難聴というデータがあります。60歳以上になると、とくに女性が発する高音域の音は、“低い音”に比べて約1.5倍大きくないと聞き取れません」(平松先生) 私のことが気に入らないのね、と気を悪くすることなかれ。耳の老化で難聴になっているだけなのだ。では、お年寄りに聞こえるように話すコツはあるのか。 「低い声で、ゆっくり、正面から話すこと。補聴器をつけるのも効果的です。ただし、メガネとちがって、補聴器をつければすぐ聞こえる、というものではなくて、慣れるまでに時間がかかります。自分の耳に合うまで、5〜6回は購入したところで調整してもらいましょう」(平松先生) 【信号が赤でも、ゆっくり渡る】 「うちの母(85)は、信号が途中で赤に変わっているのに、堂々とゆっくり歩くんです。危なくて、何度手を引っ張ったことか……」(50代女性) そもそも日本の横断歩道にある信号は、お年寄りに優しくないという。 「85歳を超えると歩幅が狭くなるので、平均で男性は1秒間に約0.7メートル、女性は約0.6メートルしか歩けなくなります。でも、日本の横断歩道にある信号は、1秒間に約1メートル歩くという前提でつくられているんです」(平松先生) これでは、お年寄りが渡り切れないのも仕方がない。さらに、「そもそも信号機自体が見えていない」ということもあるようだ。 「高齢者は“眼瞼下垂”という、まぶたが下がる病気になっていることが多いので、上方に設置されている信号機がよく見えないのです。まぶたの下がりがなければ、上が45度以上見えますが、年齢を重ねてまぶたが下がると視野が狭くなる。上方視野が30度になると、7メートル離れないと信号機が見えず、20度では10.5メートル離れないと見えません」(平松先生) 眼瞼下垂を予防するためには「まぶたをこすらない」「コンタクトを長時間つけない」などのほか、目をぎゅっとつぶってから大きく開けるというトレーニングを1日10回程度行うとよいそうだ。 【夜中に何度もトイレ】 「83歳の父は、夜中に何度もトイレに行き、結局まだ外が真っ暗な4時ごろ起床します。ちゃんと眠れているのでしょうか。こちらも目覚めてしまって大変です」(60代女性) 深刻な夜中のトイレ問題。平松先生は次のように語る。 「高齢になると尿を濃縮するホルモンが低下し、尿が薄くなるので、悪い成分を体外に排出するために尿の量が増えるのです。“2時間に1回”といった頻度で、すぐにトイレに行きたくなるのは、このためです」(平松先生) じつは「トイレに行けば行くほどトイレは近くなる」のだとか。 「ちょっとおしっこがたまっただけで、尿意をもよおすクセが膀胱につくからです。我慢のしすぎはよくありませんが、ある程度、膀胱におしっこがたまってからトイレにいくクセをつけましょう。また、夜は就寝4時間前には水分を控え、ノドが渇いたときにはがぶがぶ飲まずに少しずつ水分を摂取するのがベター」(平松先生) 頭を悩ませていたお年寄りの困った行動も、理由を知れば、優しい気持ちになれる。“老人のトリセツ”をマスターして、年老いた親ともうまく付き合おう!
2017年11月03日女性にとって髪の悩みは深刻です。女性に多いといわれるびまん性脱毛症で悩んでいる方は少なくありません。びまん性脱毛症はどのようにしておこり、また、どのような対策があるのでしょうか。びまん性脱毛症とは「びまん」とは、病変が広がっていくことを意味します。びまん性脱毛症とは、薄毛の症状が広範囲に広がっている症状のことをいいます。男性の場合は、頭頂部がまるく禿げてしまうといった症状が多いのですが、女性の場合は、全体的に広く薄毛になってしまうことが多く、分け目が広がり、髪のボリュームがなくなってしまい、地肌が透けるようになることがあります。中年期以降の女性によくみられる症状です。びまん性脱毛症の症状女性の脱毛症の中でもっともよくみられるといわれる「びまん性脱毛症」は、男性の脱毛症のように部分的に脱毛が進行するわけではなく、頭全体の髪が薄くなるのが特徴です。全体が徐々に薄くなってしまい、気づいたときには症状がかなり悪化していたということも少なくありません。別名は「女性男性型脱毛症(FAGA)」とされています。最初は、髪が細くなることから始まり、コシやハリが失われて分け目が目立ち始め、頭頂部のボリュームが減少し、地肌が透けて見えてしまうようになります。少しずつ症状が進んでも、多くの方は美容院に相談してシャンプーを変えるといった対策で終わらせてしまうようです。びまん性脱毛症の原因びまん性脱毛症の原因にはさまざまなものが考えられます。加齢加齢などの要因で閉経を迎え、女性ホルモンが減少してくると、ホルモンバランスが乱れ、男性ホルモンが優位となり脱毛しやすくなります。血管の老化も重なり、毛根まで栄養を届けられなくなるといったことも、要因の一つと考えられます。新陳代謝の低下も加わり、頭皮を健康な状態に保つことが難しくなり脱毛が進行してしまいます。ストレス人間の身体は、強いストレスを受けるとさまざまな不調を引き起こします。その一つが脱毛です。ストレスで自律神経のバランスが崩れると血行不良を起こし、頭皮に運ばれる栄養が不足してしまうことがあります。ストレスに対する許容範囲は人によって異なりますが、その人の許容範囲を超えてしまうと脱毛につながってしまうことがあるといわれています。出産、経口避妊薬(ピル)女性は、妊娠している間は、女性ホルモンが維持されます。女性ホルモンは、髪を保つ作用があるため、出産により女性ホルモンが一気に減少すると、髪が異常に抜けてしまうことがあります。これは「分娩後脱毛症」と呼ばれています。一時的なものでほとんどの場合、自然に治るため心配には至らないといわれています。経口避妊薬(ピル)を使用している方は、服用中は女性ホルモンが増加し、止めると減少するという変化に合わせて脱毛が減ったり増えたりします。食生活の乱れ過度なダイエットが原因で、びまん性脱毛症になることもあります。ダイエットは摂取する栄養を制限してしまうため、髪に必要な栄養が不足し、脱毛を引き起こします。また、動物性脂肪の多い食品は、血液の質を悪くする原因となり、頭皮の血行不良を起こしやすくします。間違ったヘアケア頭皮には皮脂が必要ですが、洗浄力の強いシャンプーの使用や、一日に何度もシャンプーをすることで必要な皮脂までも洗い流してしまうと、頭皮のトラブルが起きやすくなってしまいます。シャンプーの成分が頭皮に残っていても脱毛の原因となるため注意しましょう。シャンプー後のすすぎはしっかりと行い、頭皮を健康に保ちましょう。びまん性脱毛症の治療びまん性脱毛症は、少しずつ進行していきますが、原因を取り除き、対策を施せば症状が改善されやすくなるといわれています。そのため、できるだけストレスを取り除き、食生活を見直しましょう。髪に悪いといわれているファストフードなどの動物性脂肪が多く含まれている食品を控え、バランスのとれた食事を心がけてください。適度な運動も大切です。禁煙も症状改善が期待できるといわれています。また、こめかみから頭頂部にかけて頭皮マッサージを行い、頭皮の血行を改善し、睡眠時間を十分確保することも脱毛症対策には有効です。ただし、心配し過ぎてしまうと反対にストレスとなりますので、気持ちに余裕を持つことも大切です。近年では、効果が高いとされている育毛シャンプーや育毛剤が販売されているため、利用したり幹細胞再生治療といった最新の治療法を試してみたりすることも、選択肢としてもよいのではないでしょうか。監修:福岡大太朗
2017年10月31日韓国の傑作ドラマ“復讐3部作”といわれる「魔王」「復活」「サメ」を生み出した監督と脚本家が再タッグを組んだ「記憶~愛する人へ~」。このたび、若年性アルツハイマー病を宣告された敏腕弁護士の人生を懸けた闘いを描く本作の日本版が、中井貴一主演で製作されることになった。若年性アルツハイマー型認知症を宣告された50代の弁護士・本庄英久(中井貴一)は、憶えなければならないことは忘れ、忘れたいことはしきりに思い出すようになる。忘れたいこととは、息子を自動車事故で亡くした過去。未だに息子を死に追いやった犯人は捕まっていなかった。いままで過去と向き合わず、新しくできた家族を顧みずに仕事だけを考えてきたが、徐々に記憶を失くしていく中、残りの人生全てを懸けて、過去を暴き、最後の弁論に挑む。韓国ドラマ「記憶~愛する人へ~」は、パク・チャンホン監督×脚本家キム・ジウという“復讐3部作”を手がけたコンビが再タッグを組み、韓国tvN10周年記念特別ドラマとして生まれた壮大な人間ドラマ。若年性アルツハイマー病を宣告され、自分の尊厳を守るために闘う弁護士の姿と家族の愛を描き出した。「ミセン-未生-」をはじめ、数々の映画やドラマに出演しているベテラン俳優イ・ソンミンが主人公を演じ、そのバディの弁護士役として超人気グループ「2PM」のジュノが初のドラマ出演を果たしたことでも話題を呼んだ。この同作をフジテレビとJ:COMの共同制作で日本版としてリメイク。主演を務めるのは、誰もが認める日本を代表する名優・中井さん。製作にあたり、「日本流の新しいドラマを作るつもりで取り組みたいと思います。骨太な大人のドラマなので、自分たちの世代にも楽しんでいただけたらと思っています」とコメント。忘れたい悲しい過去から逃れ、忘れてはいけない日々の仕事に忙殺される毎日を送っていた敏腕弁護士が、徐々に記憶を失くしていく中、残りの人生を懸けて過去の事件を暴き、家族と向き合っていこうとする姿に挑む。制作スタッフには、「HERO」「5→9~私に恋したお坊さん~」などを手掛けた平野眞がチーフ監督を務め、なんとオリジナル版のパク・チャンホンが総監督として日本で初メガホン。日韓名監督のコラボレーションが期待できる。なお、本作は4K映像でも撮影しており、J:COM動画配信サービス「J:COMオンデマンド」で4K版も独占配信を予定。また、日本版リメイク作品の放送・配信に先駆けて、11月1日(水)よりCS放送「フジテレビTWO ドラマ・アニメ/フジテレビTWOsmart」にて、オリジナル版ドラマを日本語字幕版で放送・配信する。フジテレビONE/TWO/NEXT×J:COM共同制作 連続ドラマ「記憶」は2018年3月よりフジテレビNEXT ライブ・プレミアム/J:COMプレミアチャンネルにて同時放送予定、4K版はJ:COMオンデマンドにて配信予定(全12話)。(text:cinemacafe.net)
2017年10月31日「主婦にとって、いちばん“身近な犯罪”が万引きだと思います。データには『主婦』というくくりはないので、『成人女性』で見てみると、ブランド物など高額な品を盗むという傾向がみられます。しかも近所ではなく、家からなるべく遠いところで盗むことが多い。さらに、防犯カメラや警備員が存在しない店舗を調べたうえで、犯行に及んでいるケースも。高齢者であれば認知症の場合もありますし、子どもなら善悪の判断がまだついていないこともありますが、成人女性は“確信犯”が多いです。さらに言えば、万引きに手を染める女性のなかには、『家族と暮らしている』『家族を生きがいにしている』という人が多いというデータもあります」 こう話すのは、弁護士・菊間千乃さん(45)。『めざましテレビ』やバレーボール中継のMCなどで活躍する人気アナウンサーだった彼女が、フジテレビを退社したのは10年前の’07年。’10年には司法試験に合格し、さらに現在は、NPO法人「全国万引犯罪防止機構(以下・万防機構)の理事兼広報・政策委員長として万引き防止活動に力を注いでいる。 万防機構には小売業界の多くの店舗、協会のほか、警備会社なども加盟。地域の警察との連携も図りながら、万引きされない店作りや転売防止対策の働きかけなどを行っているという。 「被害弁償を行って謝罪すれば許してもらえて警察沙汰にならない、被害金額が軽微であれば不起訴になる、せいぜい罰金刑で済むと考えている方もいるかもしれません。しかし、転売目的であったり、手法が悪質な場合は、初犯であっても懲役刑となり、事案によっては実刑となることもあります。また窃盗罪を行った際に、追いかけてきた店員さんを振り払おうと暴力をふるえば、強盗と同様に扱われ、事後強盗罪という重い犯罪になることもあります。また、当然家族には知られてしまいますが、大切な家族からの信頼を失うのは、主婦の方にとって、いちばん大きな代償ではないでしょうか」(菊間さん・以下同) なかには、あまりに悲惨な結末を迎えたケースも……。 「2歳の子を持つ主婦が万引きで実刑判決を受け、2年に満たない刑期を受ける前日に自殺してしまったという事案があります」 ここまでのケースはまれとしても、自己犠牲が美徳とされる日本女性は誰もが罠に陥ってしまう可能性があるという。 「主婦の方は、皆さん頑張っていますよね。家族が疲れて帰ってくるのを全部受けとめて、慰めて……。そこにママ友やPTA、近所との付き合い、パートをしていれば、仕事のストレスまで加わって、もう本当に大変ですよね。しかも現代の女性って、『母としても、妻としても、職場でもいい女』であることがもてはやされています。でもそれが成立するのは周囲にたくさん手伝ってくれる人がいる一部の人だけで、一人で何もかもというのは絶対無理です。何もかも完璧にやろうとしてストレスをためこんで、犯罪に手を染めてしまったら元も子もありません。追い詰められそうになったら、どんどん手を抜く。どうか自分で自分を甘やかしてほしいですね」 万引きの罠に陥らないためには、家族だけではなく自分自身を大切にすることが必要なのだーー。
2017年10月18日「最近、政策委員長も兼ねることになりまして……。やることが増えましたねぇ(笑)」 そう語るのは、弁護士・菊間千乃さん(45)。『めざましテレビ』やバレーボール中継のMCなどで活躍する人気アナウンサーだった彼女が、フジテレビを退社したのは10年前の’07年。’10年には司法試験に合格し、さらに現在は、NPO法人「全国万引犯罪防止機構(以下・万防機構)の理事兼広報・政策委員長として万引き防止活動に力を注いでいるという。菊間さんが、万引きの実態について解説してくれた。 「万引きの再犯率は約50%と、非常に高いのです。国選弁護などで窃盗犯の担当となれば、本人に反省を促すいっぽうで、なんとか罪が軽くなるように活動をします。しかし、弁護により罪を軽くすることが、再犯につながっているのかもしれないとも感じていました。万防機構は『万引きそのものをなくす』ことを目指していますので、犯罪そのものを減らしたい、という私の弁護士としての信念と同じだと思いました」(菊間さん・以下同) 万防機構には小売業界の多くの店舗、協会のほか、警備会社なども加盟。地域の警察との連携も図りながら、万引きされない店作りや転売防止対策の働きかけなどを行っているという。 「日本では殺人や傷害なども含めた刑法犯罪全体の件数が減少しているなか、窃盗罪である万引きは、ほとんど減っていません。そのため割合としては増え続けていて、’00年が4.6%だったのに対し、’16年には倍以上の11.3%になっています。フリマアプリやインターネットオークションが普及したことで、個人情報を明かさず転売しやすくなったことが、原因のひとつかもしれません」 そしてもう1つの傾向は、高齢者の万引きが増えていること。’12年に、万引きで捕まる人の割合が少年と高齢者で逆転したのだ。 「『東京万引き防止官民合同会議』の資料によると、高齢者の犯行は、近所のお店で1000〜2000円程度の食料品を盗むケースが多いんですよ。でも、貧しいからではなく、みんなそれを買えるだけのお金を持っていることが多い。特に高齢男性の場合は交友関係がなく、一人暮らしの方が多いというデータがあります。ずっと家にいて会話をする相手もいなくて寂しかったから万引きしてしまった、ということ言う人もいます」 では、主婦と万引きは無関係かというと、決してそうではないという。 「むしろ主婦にとって、いちばん“身近な犯罪”が万引きだと思います。データには『主婦』というくくりはないので、『成人女性』で見てみると、ブランド物など高額な品を盗むという傾向がみられます。しかも近所ではなく、家からなるべく遠いところで盗むことが多い。さらに、防犯カメラや警備員が存在しない店舗を調べたうえで、犯行に及んでいるケースも。高齢者であれば認知症の場合もありますし、子どもなら善悪の判断がまだついていないこともありますが、成人女性は“確信犯”が多いです。さらに言えば、万引きに手を染める女性のなかには、『家族と暮らしている』『家族を生きがいにしている』という人が多いというデータもあります」
2017年10月18日