写真提供:チェンマイマラソン日本事務局微笑みの国タイの古都チェンマイで開催される「チェンマイマラソン」。歴史を感じる美しいコースを駆け抜けるこの大会は、2015年12月20日に開催予定。アットホームな雰囲気の大会で、スマイルランニングはいかが?「北方のバラ」チェンマイ写真提供:チェンマイマラソン日本事務局バンコクのスワンナプーム国際空港から飛行機で1時間強、タイ国際航空とバンコクエアウェイズが毎日合わせて10便以上、その他にもLCC各社が乗り入れる、タイ第二の都市チェンマイ。その美しい街並みから、別名「北方のバラ」と呼ばれるこの地は、13世紀末から栄えたその名も「ランナー王朝」の荘厳できらびやかな寺院を現在まで残している。様々な民族が交流する中で生まれ、育まれてきた「ランナー文化」を継承し、工芸や芸術的分野でも有名なチェンマイ。11月~1月の乾季は平均気温が25℃と、タイの中では比較的過ごしやすい気候から、避暑地としても人気が高い。一年で最も気持ちのいい季節が訪れる。コースは全部で4種類。初心者向けコースやキッズランも写真提供:チェンマイマラソン日本事務局チェンマイマラソンでは、フルマラソン、ハーフマラソンに加え、初心者向けの「10kmミニマラソン」や、子供向けの「3kmスマイル&キッズラン」の4コースが用意される。※7歳未満の参加者には大人の伴走が必須旧市街の東の玄関「ターペー門」をスタートし、歴史的な寺院やチェンマイ国際空港を通過、フルマラソンでは、ラーチャブルック公園まで足を伸ばし、再び旧市街へ。チェンマイの見どころがぎゅっと詰まった美しいコースを楽しもう。全体を通して高低差が±10m程度と、比較的緩やかなコースは、初心者にも嬉しいポイント。記念品として、ランニングシャツやTシャツなども用意され、完走者には全員フィニッシャーズメダルが贈られる。※記念品は大会エントリー時に申込み可エントリー方法をチェックチェンマイマラソンへの申し込み方法は以下2通り。・日本事務局への大会申込書の送付(一次締め切りは2015年10月19日(月)必着。)・インターネット申し込み(2015年11月16日(月)まで。)※詳しい申し込み方法はこちら>2014年は参加者5,500名のうち約半数が外国人だったそう。最高に気持ちのいい風を感じながら、歴史的な美しい街並みを走り抜けよう!
2015年10月01日モバイル管制、人工知能、そして日本の固体ロケットの良き伝統――。さまざまな話題と共に、「イプシロン」ロケットの1号機が打ち上げられたのは、今からちょうど2年前の、2013年9月14日のことだった。大勢の人々に見守られながら、内之浦宇宙空間観測所を離昇したイプシロンは、搭載していた衛星「SPRINT-A」(のちに「ひさき」と命名)を無事に予定通りの軌道に乗せ、華々しいデビューを飾った。そして現在、この1号機より能力を高めた「強化型イプシロン」の開発が進んでいる。この「強化型」で、イプシロンはどのように変わるのだろうか。連載の第1回では、イプシロンが先代のM-Vロケットからどう変わることを目指して開発されたのかについて紹介した。第2回では「強化型」でイプシロンはどう変わるのかについて紹介した。最終回となる今回は、強化型の次に予定されている「イプシロン最終形態」の検討と、そしてイプシロンが真にロケットとして成功するために必要な条件について見ていきたい。○イプシロン最終形態イプシロンの高性能化、低コスト化に向けて、段階的に改良が行われていくということは第2回で触れたが、それでは「強化型」の次、最終的な真の姿はどうなるのだろうか。現在はまだ決まっていないが、いくつかの検討が進められている。なお、JAXAはこの機体を「イプシロン最終形態」、もしくは「進化型イプシロン」と呼んでいる。その検討例の一部が、『ISASニュース 2014年7月号』で紹介されている。たとえば「例1」(中央)は、当初計画されていた「E-1」に近い。「例2」(右から2番目)は機体のすべてが大きくなり、M-Vロケットに近い規模になる。「例3」(一番右)は少し冗談のような形をしているが、まず両脇のブースターだけで離昇し、燃焼を終え、分離されると同時に、中央のモーターに点火するという飛行シーケンスを取るという。この検討例は、右に行くほど打ち上げ能力が大きくなる。たとえば「例3」であれば、小惑星探査機「はやぶさ」が打ち上げられた軌道に向けて、800kg以上の探査機を打ち上げることも可能になる。「はやぶさ」の打ち上げ時の質量は510kgだったから、それと比べるとはるかに大きな探査機を打ち上げることができるわけだ。さらに、2014年8月に開催された『28th Annual AIAA/USU Conference on Small Satellites』の発表では、ブースターを3基、4基もつ案も示されている。ただ、2015年1月に発表された、新しい宇宙基本計画の工程表によると、中型(「はやぶさ」などと同クラス、あるいはそれよりも大きな規模)の科学衛星については「H3」ロケットを使用することとし、イプシロンは「公募型小型」と、さらにそれよりも小さい規模の「革新的衛星技術実証」といった、小型の衛星の打ち上げに使用されることとなった。したがって、「例3」ほどの規模にまで進化する可能性はあまりないかもしれない。現在のところ、この最終形態は、2016年度内に開発に着手し、2020年代初頭に打ち上げることを目標にしているという。○H3ロケットとイプシロンイプシロンの今後について忘れてはならないのが、H3ロケットの関係である。現在のイプシロンは、第1段にH-IIAロケットの固体ロケット・ブースター(SRB-A)を流用している。このことはSRB-Aの量産数を増やすことになるため、低コスト化を裏打ちする要素のひとつにもなっていた。だが、すでに周知の通り、H-IIAロケットは2020年代の前半に運用を終え、後継のH3ロケットに切り替わることが計画されている。H3では固体ロケット・ブースターも変わり、現在のSRB-Aではなくなるため、イプシロンのためにSRB-Aを製造し続けるか、あるいはH3のブースターと共通できるように設計を変えるかを選ばなくてはならなくなった。これについて、どちらが得策かの検討が行われ、最終的に後者が選ばれた。文部科学省によると、「新型基幹ロケットの固体ロケットブースタを、イプシロンの1段モータと共用せず、現行のH-IIA/Bロケットの固体ロケットブースタを継続使用とする場合、イプシロンの専用部品として製造することになる部品単価の高騰による機体コストの大幅な上昇に加え、製造治工具についても専用品となることで、共用する場合に比べて維持コストの増加が甚だしく、固体ロケット技術の維持の観点からも非効率になると見込まれる」としている。なお、2013年ごろにも「新型基幹ロケットの固体ロケット・ブースターと、イプシロンの第2段とを共通化する」という話が出たことがある。イプシロンの第2段、というのが少し奇妙に思えるが、これは当時、新型基幹ロケットのブースターがSRB-Aよりも小さくなることが検討されていたためである。その後、検討が進められる中で、H-IIAのSRB-Aと同じ規模、すなわち現在のイプシロンの第1段と同じ規模になったことで、この話は幻となった。ただ、いくらSRB-Aと同規模とはいえ設計は変わるため、イプシロンの第1段として使うには改修が必要となる。特に、SRB-Aにはあったノズルを動かして方向を制御する機構が、H3用のブースターではなくなることになったため、イプシロンのために新しい制御機能を開発しなくてはならない。また、H3のブースターはまだ設計が固まったわけではないので、今後検討や開発が進められる中で計画の変更などがあれば、その影響を大きく受けることになる。たとえば、もしブースターのサイズが再び小さくなることがあれば、第1段ではなく第2段と共有するという案が復活する可能性もある。また燃焼パターン(どのようにしてモーターを燃焼させるか)に変化が出れば、SRB-Aを第1段に使う場合と比べ、打ち上げ能力が多少変化することもあるだろう。(編注:2015年6月発表の資料ではH3と固体ロケットブースターを共有化することで600kg級の打ち上げ能力とする方針を打ち出している。)実質的に主導権をH3が握っている状態で開発を進め、さらにH-IIA/BからH3に切り替わるのと同じタイミングで、イプシロンもH3のブースターに対応したヴァージョンに切り替わらなければならないことは、開発する側にとっては大きな負担になり、その性能や、また最終形態の検討などにも影響が出る可能性がある。○打ち上げ数をどう確保するかH3のブースターを使ったイプシロンや、最終形態が完成したとして、次に目指すべきなのは、安定した数を継続して打ち上げることだろう。特に、当初目標とされた、1機あたり30億円前後という打ち上げコストを実現するには、とにかく数多く量産し、打ち上げなくてはならない。しかし、小型の科学衛星については2年に1回、またさらに小さな規模の革新的衛星技術実証プログラムも2年に1回ほどの頻度しか計画されておらず、これでは少ない。特に革新的衛星技術実証プログラムは、1回の打ち上げで超小型衛星を複数搭載することも考えられているため、純粋に1回につきイプシロン1機を使うということにはならない。小型科学衛星と革新的衛星技術実証プログラムとは別に、2016年度には経済産業省の小型地球観測衛星「ASNARO-2」、さらにその後には、ヴェトナムの小型地球観測衛星「LOTUSAT1」と「LOTUSAT2」の打ち上げも計画されている。LOTUSATはASNARO-2の同型機で、日本がヴェトナムに対して行う円借款によって造られる。ただ、それでも合計3機で、また毎年発生する需要でもないため、打ち上げ数が不足することには変わりない。小型の科学衛星の数が増えたり、ヴェトナムがさらに10機や20機とASNAROを発注してくれれば話は別だが、そんなことは望むべくもない。したがって、ASNAROシリーズを商業衛星として広く展開し、他国や国内外の企業に売り込んでいき、またヴェトナムのような例をさらに別の国でも作り出していく必要がある。さらに、ASNAROとは別の、他の小型衛星の打ち上げも受注できるようにしなければならないだろう。だが、小型衛星がブームと言われたのも今は昔、すでにそのブームは過ぎつつある。米国の小型ロケットも、最近ではNASAや軍関係の小型衛星の打ち上げばかりで、商業衛星の打ち上げはほとんどない。商業ロケットの雄と称されているスペースX社も、かつては「ファルコン1e」という小型ロケットの開発計画をもっていたが、需要なしと判断され、中止されている。もちろん小型衛星の需要がゼロになったわけではなく、また今後盛り返す可能性もないわけではない。しかし、現在ある需要は、インドの「PSLV」ロケットや、ロシアの「ドニェープル」ロケットがそのシェアの大半を握っており、最近では欧州の「ヴェガ」ロケットも登場した。これらはいずれもイプシロンの2倍以上の打ち上げ能力をもつ中型ロケットだが、主となる衛星を2機同時、あるいは複数の超小型衛星と同時に打ち上げるといった方法で、イプシロンがターゲットにしているクラスの衛星打ち上げを行っている。また、今後数年のうちには、中国や韓国も小型、中型ロケットを送り出してくる予定となっている。米国やロシアなどでは、小型ロケットを開発している企業もいくつか出てきている。イプシロンの打ち上げ数を増やすためには、すでに他のロケットがもっているシェアを奪い、そして今後出てくる新しいロケットをも跳ね除け、さらに衛星とのセット販売などで、新しい顧客を開拓していかなければならない。イプシロンの将来は、商業ロケットとして成功できるかどうかにかかっている。
2015年09月18日モバイル管制、人工知能、そして日本の固体ロケットの良き伝統——。さまざまな話題と共に、「イプシロン」ロケットの1号機が打ち上げられたのは、今からちょうど2年前の、2013年9月14日のことだった。大勢の人々に見守られながら、内之浦宇宙空間観測所を離昇したイプシロンは、搭載していた衛星「SPRINT-A」(のちに「ひさき」と命名)を無事に予定どおりの軌道に乗せ、華々しいデビューを飾った。そして現在、この1号機より能力を高めた「強化型イプシロン」の開発が進んでいる。この「強化型」で、イプシロンはどのように変わるのだろうか。連載の第1回では、イプシロンが先代のM-Vロケットからどう変わることを目指して開発されたのかについて紹介した。第2回となる今回は、いよいよ本題となる「強化型」でイプシロンはどう変わるのかということについて見ていきたい。○あくまで試験機だった1号機2010年から開発が始まり、その後わずか3年で開発された「イプシロン」は、こうして無事に初打ち上げを迎えた。しかし、これでロケットとして完成したわけではなかった。もともとJAXAでは、段階を踏んで開発し、徐々に当初の目標に近付けていくという方法を採っていた。まず自己診断機能やモバイル管制といった新しい技術を実証を行う試験機の「E-X」を開発し、続いて高性能化と低コスト化を狙った試験機「E-I´」(イー・ワン・ダッシュ)を開発、そして最終的にその高性能化と低コスト化を実現させた完成形「E-I」(イー・ワン)を開発するという流れである。当初の計画では、2014年9月に打ち上げられた1号機がE-X、続く2号機と3号機がE-I´、そして4号機以降がE-Iになるとされていた。E-Iがどういう形態のロケットになるかは、さまざまな検討がされていたが、おおむねE-Xよりも打ち上げ能力は大きくなり、一方でコストは低くなると見積もられていた。たとえばE-Xでは、地球低軌道へは1200kg、地球観測衛星などが多く打ち上げられる太陽同期軌道へは450kgの打ち上げ能力をもっている。打ち上げコストは約38億円だった。しかしE-Iでは、地球低軌道へは最大1800kgほど、太陽同期軌道へは最大で750kgの打ち上げ能力をもち、コストは30億円前後にまで下がるとされた。○2号機対応と高度化ただ、最近発表される資料などでは、E-X、E-I´、E-Iといった呼び名は使われなくなっている。その代わりに「イプシロン2号機対応開発」と「イプシロン高度化開発」といった言葉が使われるようになった。「2号機対応開発」は2012年度から始まったもので、イプシロンの2号機で打ち上げられる「ジオスペース探査衛星」(ERG)に対応するための改良のことである。ERGがイプシロンの2号機で打ち上げられるということは、ずいぶん前から決まっていたが、同時に試験機(E-X)と同じ能力ではERGが打ち上げられないこともわかっていた。そこで、ERGのために打ち上げ能力を上げるための開発が行われることになったのである。もうひとつの「高度化開発」は2014年度から始まったもので、E-Xから打ち上げ能力を向上させると共に、衛星フェアリングの内部を広くし、より大きなサイズの衛星も搭載できようにするなど、さまざまな改良を加える開発のことである。これは主に、経済産業省が開発している小型のレーダー衛星「ASNARO-2」に合わせたもので、ASNARO-2も試験機の能力では打ち上げられず、またフェアリング内部に収めることすらできないため、その対応のために開発が必要となった。イプシロンにとっては、科学衛星だけでなく、ASNARO衛星も主要な「お客さま」になることが予定されているため、この対応は必要不可欠なものだった。また、ASNARO-2の打ち上げに対応できれば、他の小型衛星の打ち上げも可能であることが確認できているという。2号機対応開発と高度化開発は、「打ち上げ能力の向上」という点で被っているようにも思えるが、事実そのとおりで、「2号機対応開発の打ち上げ能力向上は、3号機以降にも適用する」とされていた。一方で、高度化に含まれる、衛星フェアリングの内部を広くするといったのいくつかの改良点については、ERGの打ち上げでは必要なかったことや、またERGの打ち上げが2015年度中に予定されていたため、高度化開発の完成が間に合わないという事情もあり、両者はこのように別のプロジェクトとして進められていた。ところが2014年8月27日に、JAXAは「ERGの開発中に、事前に予見していなかった技術的課題が発生し、その解決のために、打ち上げ時期を2016年に延期する」と発表する。さらに打ち上げ時期の見直しと共に、ERGの軌道の要求も変わったことで、打ち上げ能力をさらに上げる必要が生じた。そこで高度化開発の内容もイプシロンの2号機から適用されることになった。そして2号機対応開発と高度化開発を合わせ、ひとつのプロジェクトにすることが決定され、2014年10月、新たに「強化型イプシロン・ロケット・プロジェクト」が立ち上げられた。○強化型イプシロン強化型イプシロンが完成すれば、打ち上げ能力が増え、たとえば高度500kmの太陽同期軌道への打ち上げ能力は、試験機の450kgから590kgへとなる。また衛星フェアリング内の広さも増える、これによりERGやASNARO-2を打ち上げることが可能になる。もう少し細かく見ていくと、まず目立つ変化としては、全長が24.2mから26.0mへと少し伸びることが挙げられるだろう。特に、第2段機体のある部分の印象はずいぶん違うはずだ。第1回で触れたように、試験機の第2段機体にはM‐Vロケットの第3段機体を改良したものが用いられたが、第1段(H-IIAロケットのSRB-A)よりも直径が小さいため、衛星フェアリングの内部に収められていた。試験機の写真を見ると、SRB-Aの第1段のすぐ上に、衛星フェアリングが載っていることがわかる。この中に第2段、第3段、そしてPBSと衛星がすべて入っていたのだ。しかし強化型では、2段機体の直径を太くし、フェアリングの外部に出すことでフェアリング内部の広さを拡大させると共に、第2段の推進薬量も増加させる、「2段エクスポーズ化」という改良が行われる。もちろん改良点はそこだけではない。たとえば第3段の機器が搭載されている部分の構造が軽量化され、さらに使用する部品も簡素化されるなど、細かい部分も含めると、とてもここでは取り上げきれないほど数多くの改良が各所に施される。これにより打ち上げ能力の向上と、フェアリング内部の拡大の両方が実現する。また衛星を分離する際の衝撃も小さくなり、衛星にとって乗り心地が良くなる他、内之浦でのロケット組み立て作業や、打ち上げに向けた準備作業などにも手が加えられ、作業時間の短縮や、低コスト化につながるとされる。強化型の開発は順調に進んでおり、JAXAは2015年8月6日、2015年3月末に上段のサブサイズ・モーター(実機よりも小さな試験用のモーター)の地上燃焼試験が実施され、計画どおり終了したこと、そして6月18日にはJAXA相模原キャンパスで衛星分離試験が行なわれ、分離時に発生する衝撃や衛星分離挙動が確かめられたことなどを明らかにしている。このまま開発が順調に進めば、強化型イプシロンの1号機は2016年度に、ERGを積んで打ち上げられる予定となっている。また同年度中にはASNARO-2の打ち上げも計画されている。ただ、この強化型イプシロンは、あくまでASNARO-2など、当面の小型衛星の打ち上げ需要に対応するための、喫緊の技術課題を解決するための開発であり、E-I´として呼ばれていたものに近く、まだ完成形——いわゆる「E-I」——ではない。現在のところ、完成形のイプシロン(ISASは「最終形態」と呼ぶ)の姿はまだ決まっていない。そして、さらにこの先、イプシロンには大きな壁が待ち構えている。(続く)
2015年09月16日●いざ復活へ - 打ち上げ再開と待ち受ける難関2015年5月16日、カザフスタン共和国のバイカヌール宇宙基地から打ち上げられたロシアの「プロトーンM」ロケットが打ち上げに失敗し、搭載していたメキシコ合衆国の通信衛星「メクスサット1」と共に失われた。プラトーン・ロケットは、ロシアにとって大型衛星を打ち上げられるほぼ唯一のロケットで、また世界的な人工衛星の商業打ち上げ市場においても高い存在感を放ち、さらに国際宇宙ステーションの建設でも活躍するなど、ロシアの宇宙産業がもつ技術の高さの象徴でもあった。しかしここ数年は打ち上げ失敗が相次いでおり、今や斜陽化の象徴と化してしまっている。本シリーズの初回では打ち上げ失敗の概要について紹介、また前々回は、プラトーンがどのようなロケットなのかについて紹介した。そして前回は、5月29日にロシア連邦宇宙庁(ロスコースマス)から発表された、今回の事故調査結果について見た。第4回となる今回は、いよいよ発表されたプラトーンMの打ち上げ再開の計画と、プラトーンMの今後について見ていきたい。○8月28日に打ち上げ再開へロシア連邦宇宙庁(ロスコースマス)は7月29日、プラトーンMロケットの打ち上げ再開日を8月28日に設定したと発表した。5月29日に事故原因が発表された後も、ロスコースマスや、ロケットを開発したGKNPTsフルーニチェフ社ではさらに調査が続けられ、また事故の再発防止に向けた、問題箇所の設計や素材の変更、そしてその評価などが続けられていた。そしてロスコースマスはそれらを踏まえた上で、打ち上げ再開の向けた計画を承認した。またプラトーンMの商業打ち上げサーヴィスを担っているインターナショナル・ローンチ・サーヴィシズ社も、この発表と同じ日に、独自の調査委員会による調査を終えて打ち上げ再開に向けた準備を開始すると発表した。この打ち上げ再開1号機では、英国インマルサット社の通信衛星「インマルサット5 F3」が搭載される。この打ち上げは、離昇から衛星分離まで15時間31分間もかかる長時間のミッションで、近地点高度(軌道の中で最も地球に近い点)が4341km、遠地点高度(最も遠い点)が6万5000km、軌道傾斜角(赤道からの傾き)が26.75度の、スーパーシンクロナス・トランスファー軌道と呼ばれる軌道に衛星を投入する。8月25日の時点で、打ち上げ準備は順調に続いており、すでにロケットは発射台に設置された。打ち上げ日時は、カザフスタン時間8月28日17時44分(日本時間8月28日20時44分)に予定されている。この打ち上げに成功すれば、その後は9月から11月にかけて、プラトーンMの打ち上げが続々と行われる予定となっている。打ち上げ予定はまだ公式には発表されていないが、ロシアのインテルファークス紙は8月3日に、ロケット産業筋からの情報として、8月から11月までの間に、6機のプラトーンMが打ち上げられると報じている。記事によると、まず8月28日のインマルサット5 F3の打ち上げを皮切りに、9月14日に通信衛星「エクスプリェースAM8」を、10月6日に通信衛星「トルコサット4B」を、さらに10月中にロシア国防省の軍事衛星、そして11月中に通信衛星「ユーテルサット9B」と「エクスプリェースAMU-1」を打ち上げるという。また、この6機以外にも、12月にはインテルサット社の通信衛星の打ち上げが計画されている。当初、これらの衛星の打ち上げは、今年5月から8月にかけて行われるはずだったが、失敗のあおりを受けて延期されていた。1年間に数機しか打ち上げられない日本のロケットを見慣れていると、約3か月の間に6機が打ち上げられるというのは、かなり忙しいスケジュールのように思えるが、実のところプラトーンMの歴史の中でも相当な過密スケジュールだ。一番最近でも2000年にあったぐらいで、プラトーン・ロケットの運用が始まった1960年代から見ても、数えるほどしか例がない。少しでも遅れを回復しようという焦りが見える。さらに、これらの打ち上げのほとんどには、「ブリースM」という上段が使われるが、エクスプリェースAM8だけに限っては「ブロークDM-03」という上段が使われることになっている。この両者はまったく異なる機体で、ただでさえ忙しい中に、勝手が異なる2種類のロケットが入ってくることになる。2010年には、いつもと違う上段の打ち上げ準備において、作業員がいつもと同じように推進剤を入れたところ、規定値を超えて入れ過ぎてしまい、それが原因で打ち上げが失敗するという事故が起きており、やや不安なところではある。そしてさらに、2016年1月7日から27日の間には、欧州とロシアが共同で開発した火星探査機「エクソマーズ2016」の打ち上げも予定されている。もちろん失敗も許されないが、何よりも他の衛星と違い、火星探査機は地球と火星の軌道の都合上、打ち上げられるタイミングは約2年2カ月ごとにしか巡って来ず、何らかの理由で打ち上げが延び、2016年1月を逃すことも許されない。またエクソマーズ2016は、その2年後に打ち上げられる「エクソマーズ2018」で計画されている火星探査ローヴァーの技術実証も兼ねている。もし失敗や打ち上げ延期となれば、エクソマーズ2018の打ち上げ時期が遅れるだけはなく、計画そのものにも大きな影響が出るだろう。●失われつつあるロシアの宇宙開発技術○失われた信頼は取り戻せるかかつてのプラトーンMは、シリーズ通算で約400機も打ち上げられている実績と、それに裏打ちされた信頼性、またその強大な打ち上げ能力と、ブリースMという稀有な性能をもつ上段のおかげで、衛星打ち上げ市場の中で大きな存在感を示していた。何より、米国や日本の企業の衛星を打ち上げた実績があることがそれを証明している。だが、近年では目に見えて打ち上げ失敗が増えており、その信頼は失われつつある。たとえば2014年は8機中2機が、また2013年は10機中1機が、2012年は11機中2機が、墜落したり、目的の軌道へ衛星を投入できなかったりといった失敗を起こしている。プラトーンは年間10機前後という、他のロケットより比較的多く打ち上げられていることは考慮すべきではあるものの、それにしてもこうして連続しているというのは、明らかに異常だ。プラトーンMのライヴァルにあたる、あるロケットの関係者からは「誰が1年に1機落ちるようなロケットを使いたがるのか。もはやプラトーンに信頼性はない」という声を聞いている。なぜ、このようなことになってしまったのだろうか。その原因として挙げられるのは、ソヴィエト連邦崩壊後の混乱やロシア連邦の財政難による、技術者の頭脳流出や、経験者の不足、後継者の育成失敗などだろう。ロシアの宇宙開発におけるロケットや宇宙機の多くは、ソヴィエト連邦時代に開発された技術を受け継ぎ、少しずつ改良しながら維持されてきた。ロシア連邦が成立してから新しく造られたものは数少なく、そしてその数少ないもののうちいくつか、例えばブリースMや、最新鋭の偵察衛星「ピルソーナ」は、打ち上げ後に故障するといった問題を多く起こしている。そればかりか、プラトーンなど、過去に開発されたロケットや衛星の製造でも、指定された部品が使われていなかったり、部品を取り付ける向きを間違えたりといった理由で失敗や故障が起きてもいる。つまり、現在のロシアの宇宙開発には、新しいものを造り出す技術のみならず、すでに開発済みのものを正しく製造し続ける技術も失われつつあることがわかる。このような状況から立て直すのは至難の業となるだろう。現在ロシアでは、組織の再編などを手始めに、宇宙産業の改革が進められてはいるが、それが完了しても、すぐにロケットの成功率が上がるようなことは起きえず、ようやくスタートラインに立てるということにすぎない。ひとつ、明るい希望があるとすれば、それはプラトーンMが数年以内に引退し、「アンガラーA5」という新しいロケットと入れ替わるということだろう。アンガラーA5はプラトーンMと同等の打ち上げ性能を持っており、またロシアが建設中のヴァストーチュヌィ宇宙基地には、プラトーン・ロケット用の発射台は建設されず、正確な日付はまだ不明だが、今後5年から10年以内の間には完全に代替されることになるはずだ。一般的に、新しく造られたロケットは、最初の数機で失敗が起こりやすいが、これまでにアンガラーはシリーズを通して2機が試験飛行で打ち上げられ、2機とも成功している。多少荒療治にはなるだろうが、プラトーンからアンガラーへの世代交代を通じて、現場の技術者の世代交代も進み、ロケットの運用ノウハウの再構築ができれば、まずは大型ロケットから再興を果たせるかもしれない。
2015年08月26日2014年度から開発が始まった、新型基幹ロケット「H3」。2020年度に試験機1号機が打ち上げられる予定で、現在活躍中のH-IIAロケットやH-IIBロケットの後継機となることが計画されている。H3ロケットは宇宙航空研究開発機構(JAXA)と三菱重工業とが共同で開発を行っており、2015年度からはロケットの基本設計が始まっている。また7月2日には、それまでの「新型基幹ロケット」という呼び名に代わり、ついに「H3」という正式名称が与えられるなど、徐々にその姿が明らかになりつつある。本連載では、H3の開発状況について、新しい情報などが発表され次第、その紹介や解説などを随時、お届けしていきたい。今回は、第2段と、固体ロケット・ブースターについて見ていきたい。一見すると、H-IIAやH-IIBからあまり変わっていないようにも見えるが、その実は大きな進化を遂げる。○第2段にはH-IIAのエンジンを改良、新型エンジンはおあずけH3の第2段には、H-IIAやH-IIBで使われているLE-5B-2を改良したエンジンが使われる。以前の検討では、第1段に新しく開発したロケット・エンジン「LE-9」を使うのと同様に、第2段には「LE-11」という新しいロケット・エンジンを使うことが計画されていた。LE-11はLE-9、またLE-5B-2と同様に、エキスパンダー・ブリード・サイクルを使うエンジンで、LE-5B-2よりさらに高性能なエンジンになる予定だった。しかし最終的には、LE-5B-2を改良したエンジンが使われることになった。岡田プロマネは「LE-11はパワフルなエンジンとして計画していました。しかし、我々にとって大事なのは『2020年にH3を実現させる』ということ。これまで日本では、新型の第1段エンジン(LE-9)と第2段エンジンを同時に開発するということはやったことがありません。そのチャレンジをしても良いのかと考え、今回は確実に開発できる『LE-5Bを改良する』という方法を選びました」と語った。LE-5B-2をH3で使うにあたっての改良点は、エンジンの寿命を延ばす「長寿命化」にある。H3ではH-IIAよりも第2段機体が大きくなっており、その分タンクには多くの推進剤が入っていることから、H-IIAよりも長い時間、ロケット・エンジンを動かす必要があるためである。H-IIAの高度化の技術も継承また、現在開発中のH-IIAの第2段の「高度化」で培われる技術も受け継がれる。高度化とは、打ち上げ能力を向上させたり、振動や衝撃を小さくし、衛星への負担を低減したり、地上のレーダー局に頼らずに飛行できるようにし、地上インフラ設備を少なくしたりといった改良のことだ。詳しくは今後別の記事で触れるとして、このうち打ち上げ能力を向上させる改良について、軽く触れたい。たとえば、通信衛星のような静止衛星を打ち上げるときのことを考えると、現在のH-IIAの打ち上げ能力は世界標準からやや劣っている状態にある。多くの場合、静止軌道を積んだロケットは、最終的に静止衛星が運用される静止軌道の一歩手前の「静止トランスファー軌道」に衛星を投入する。一方、静止軌道は近地点高度(軌道の中で地表に最も近い点)と遠地点高度(軌道の中で地表から最も遠い点)が共に3万5800km、軌道傾斜角(赤道からの傾き)が0度のところにある。つまり静止トランスファー軌道から静止軌道へは、衛星側が持つエンジンを使って乗り移る必要がある。H-IIAは最大で6トンの静止衛星を静止トランスファー軌道に投入することができる。この数値自体は決して悪いわけではない。しかし、H-IIAの「静止トランスファー軌道に6トン」という打ち上げ能力は、厳密には“近地点高度が250km、軌道傾斜角が28.5度の”静止トランスファー軌道に6トン、という前提条件が付く。ここから衛星がエンジンを噴射し、静止軌道に乗り移るためには、秒速1830mほどの増速量が必要となる。ところが、商業衛星の打ち上げ市場の中で一番のシェアを握る欧州の「アリアン5 ECA」ロケットは、この増速量が秒速1500mほどで済んでしまうのだ。アリアン5の発射場はほぼ赤道直下にあることから、軌道傾斜角が静止軌道と同じ、ほぼ0度の静止トランスファー軌道へ打ち上げることができ、その結果、衛星側はほとんど高度を合わせるだけで済んでしまうためである。この格差を改善するために開発が始まったのが、H-IIAの高度化である。主にH-IIAの第2段を改良し、より長時間飛行できるようにし、そしてLE-5B-2を再々着火、つまり合計で3回、点火と停止を繰り返すことができるようにする。これにより、これまでは衛星側が負担せざるを得なかった増速量の一部を肩代わりできるようになる。その代償として、静止トランスファー軌道への打ち上げ能力は最大4.6トンまで落ちることにはなるが、アリアン5などとほぼ同等の条件の静止トランスファー軌道に、衛星を打ち上げることが可能となる。これにより、たとえばアリアン5で打ち上げることを想定して造られた衛星を、H-IIAで打ち上げることができるようになり、衛星の運用者にとって選択肢に入りやすくなるなど、H-IIAの国際競争力が強化される。実は、もともとLE-5BやLE-5B-2は、それが可能なだけの性能を持っていた。しかし、タンクや配管、バッテリーなど、機体側の制約によって、その能力のすべてを発揮することができず、これまでは宝の持ち腐れ状態となっていた。高度化の開発は2011年度から行われており、これまでに地上での試験だけではなく、実際の打ち上げの中でも試験や実証が行われている。たとえば2014年の小惑星探査機「はやぶさ2」の打ち上げでは、その技術の一部が先行的に使われている。高度化された第2段が本格的に投入されるのは、今年の秋ごろに打ち上げが予定されている、H-IIAロケット29号機からとなる。これらの開発で培われた技術はH3にも投じられることになっており、つまりH3もまた、世界標準とほぼ同じ条件で衛星を打ち上げられるということになる。振動環境も低減また「三菱重工技報 Vol.51 No.4 (2014)」によると、エンジンとタンクとの結合部も改良されるという。これにより、ロケットの振動が積み荷である人工衛星に与える影響の度合いが少なくなるとされる。振動環境については、現行のH-IIAやH-IIBで問題となり、対策が必要となったという経緯がある。そこでH3では、設計初期からエンジン取付部の剛性に配慮した設計を採ることにしたという。これにより、ロケット飛行中の衛星への負荷を低減し、また衛星の開発試験の負担も低減される。JAXAによると、振動も含めた衛星への搭載環境条件は、世界標準以上を目指すとしている。これが実現できれば「乗り心地の良いロケット」としてアピールできるようになるだろう。もっとも、世界各国の次世代ロケットでもこの辺りは対応することが予想されるため、「H3ならでは」の強みにはならないかもしれない。○固体ロケット・ブースターも大きく改良H3の両脇に装着されている固体ロケット・ブースターは、H-IIAと同様に、打ち上げに合わせて装着数を2基と4基で選択することができる。またH3は、第1段のLE-9だけでも離昇が可能なので、0本、つまり装着しないということもできる。H3の固体ロケット・ブースターは、H-IIAやH-IIBで使われているもの(SRB-A)とほぼ同じ大きさだが、大きく改良が加えられることになる。一番大きな改良点は、ロケットのコア機体との結合方法を簡素にすることである。H-IIAを見ると、コア機体とSRB-Aとは何本かの白い棒のような部品で結合されている。横向きに付いているものをヨー・ブレス、斜めに付いているものをスラスト・ストラットと呼び、ヨー・ブレスはヨー方向、つまり横方向への動きを伝達し、スラスト・ストラットはロケットを持ち上げる力を伝達する役割を持っている。ただ、世界の他のロケットを見てみても、こうした棒状の部品を用いて結合されているロケットはない。また、H-IIAの先代にあたるH-IIロケットにもない。なぜ、H-IIAやH-IIBでこうした結合方法が使われているのかといえば、SRB-Aのモーター・ケースに、炭素繊維強化プラスチック(CFRP)が使われていることにある。炭素繊維強化プラスチックは高い強度と軽さを併せ持つ材料だが、どこか一点に力が集中することに弱い。たとえばボルトを使って第1段機体と直接結合すると、その部分に力が集中し、壊れてしまう可能性があるのだ。そこで、ブースターの前後にアルミ合金製のアダプターを取り付け、そこにヨー・ブレスやスラスト・ストラットを接続するという方式が採られた。アルミ合金製は結合部にかかる力を十分に受け止めることができるだけの強度を持ち、また一部分にだけ使うことで、他の大部分はCFRP製のままにできるため、軽量化も図れる。だが、H3ではさらなる軽量化のために、CFRP製のモーター・ケースはそのままに、ヨー・ブレスやスラスト・ストラットもなくし、コア機体と直接結合する方法となった。また、ノズルの可動機構もなくなることになった。SRB-Aには推力偏向機構(TVC)が装備されており、ノズルの方向を動かすことで、ロケットのピッチ(縦)方向とヨー方向の制御を行っていた。H3のブースターではこれをなくし、コア機体の第1段にあるLE-9エンジンのみで飛行方向を制御するという。また、SRB-Aのモーター・ケースは、米国のオービタルATK社にライセンス料を支払って製造しているが、H3では国産化される。さらに、推力のパターンを見直したり、振動を少なくしたりといった改良も加えられ、軽量化と低コスト化、信頼性や性能の向上などが一挙に図られることになる。次回は、ロケットの製造や組み立ての工程や、打ち上げが行われる種子島宇宙センターの改良点について見ていきたい。(続く)
2015年08月24日プラスワン・マーケティングは、MVNOサービス「FREETEL SIM」の通信品質を保持するための活動として「回線増速マラソン」を19日より開始した。「FREETEL SIM」は7月15日より開始した通信サービス。データ通信利用量によって、支払額が自動変動し、不足した場合の買い足しやプラン変更が不要となる。同社によると、主要販売先となるヨドバシカメラで、SIMシェアナンバー1を達成したことを受け、今後、ユーザーの増加が予測されることから、毎月投資を行い、データ通信の快適さを保持していくとしている。そのための活動として「回線増速マラソン」を本日よりスタートさせた。現時点において、1年以上は毎月増速する予定としている。今回の活動において、「FREETEL SIM」はMVNOとして独自の回線運用(L2接続)を行っており、回線増速を含めた帯域調整や通信制御など同社が自由に行えるとしている。
2015年08月19日2014年度から開発が始まった、新型基幹ロケット「H3」。2020年度に試験機1号機が打ち上げられる予定で、現在活躍中のH-IIAロケットやH-IIBロケットの後継機となることが計画されている。H3ロケットは宇宙航空研究開発機構(JAXA)と三菱重工業とが共同で開発を行っており、2015年度からはロケットの基本設計が始まっている。また7月2日には、それまでの「新型基幹ロケット」という呼び名に代わり、ついに「H3」という正式名称が与えられるなど、徐々にその姿が明らかになりつつある。本連載では、H3の開発状況について、新しい情報などが発表され次第、その紹介や解説などを随時、お届けしていきたい。今回は、H3の第1段に採用される新型ロケット・エンジン「LE-9」について見ていきたい。○新型ロケット・エンジン「LE-9」ロケットの第1段には、「LE-9」という新しく開発されるロケット・エンジンが装備される。1基あたりの推力は150トンで、前回触れたように、ミッションに応じてこのエンジンを2基装着するか、あるいは3基装着するかを選択することができる。LE-9は、現在H-IIAロケットやH-IIBロケットの第1段エンジンとして使用されている「LE-7A」と同じく、燃料に液体水素、酸化剤に液体酸素を使う。だが、エンジンを動かすための仕組みが、LE-7Aから大きく変更されることになった。これはH3にとって最大の目玉であり、日本の宇宙開発にとっても大きな決断となる。液体ロケット・エンジンの多くは、ターボ・ポンプという強力なポンプで燃料と酸化剤(この2つを合わせて推進剤という)を燃焼室に送り込んで燃焼させ、発生したガスを噴射してロケットを飛ばしている。このターボ・ポンプを動かすために、タービンという羽根車を回す必要がある。このタービンを動かす仕組みとして、LE-7Aでは「二段燃焼サイクル」という方式が使われている。これは、まずプリ・バーナーという小さな燃焼室で推進剤を燃やし、そのガスでタービンを回してターボ・ポンプを動かし、燃焼室に大量の推進剤を送り込み、さらにタービンを回したガスも燃焼室に送り込んで燃焼させるというものである。推進剤を2段階で完全に燃焼させることから、この名がある。この仕組みは、推進剤をいっさい無駄にすることなく噴射の力として使えるため、性能の良いエンジンにできるという長所がある。しかし、エンジンの構造が複雑で、また各所にかかる圧力や温度の条件が厳しく、どこかで不調が起きると途端に爆発する可能性があり、さらにエンジン始動のタイミングの制御も難しいなど、製造や運用が難しいという短所もある。一方、LE-9では「エキスパンダー・ブリード・サイクル」という方式が使われる。この仕組みはプリ・バーナーを持たず、燃料を使ってエンジンの燃焼室やノズルを冷却し、その際に発生したガスを使ってタービンを回す。そしてそのガスは噴射には使われず、そのままロケットの外に捨てられる。これにより、効率や性能は二段燃焼サイクルよりも劣るものの、構造が簡素で造りやすいという特長がある。また壊れにくいため安全性も高く、運用もしやすい、頑丈なエンジンである。エキスパンダー・ブリード・サイクルはすでに、H-IIロケットの第2段エンジンの「LE-5A」や、H-IIA、H-IIBの第2段エンジン「LE-5B」、「LE-5B-2」で採用されており、日本にとっては得意とする技術でもある。○打ち上げ失敗から生まれた希望エキスパンダー・ブリード・サイクルの頑丈さは、過去にH-IIロケット8号機の打ち上げで、期せずして実証されている。H-IIの8号機は1999年11月15日に打ち上げられたものの、失敗に終わったミッションだ。H-IIの第2段には通常LE-5Aを使うが、この8号機のみ、当時開発されたばかりのLE-5Bが装備されていた。ロケットの第1段エンジン「LE-7」は、約6分間燃焼するはずだったが、約4分後に問題が起きて停止してしまい、予定していた飛行経路を逸れはじめた。そんな中、第2段機体が予定よりも早く、しかも不安定に回転した状態で第1段機体から切り離され、その状態でLE-5Bが始動されることになったのである。通常、極低温の推進剤を使用するロケット・エンジンを始動させる際には、ポンプの吸い込み不良を防ぎ、安定して始動させるために、あらかじめ推進剤でポンプを十分に冷却し、推進剤を所定の圧力まで加圧して供給する必要がある。しかし、こうした背景から、8号機のLE-5Bは冷却やタンク圧力が十分でない状態で始動することとなった。しかし、このような悪条件の中でもLE-5Bは正常に立ち上がり、計画通りの性能を発揮し続けることができた。H-IIの8号機は最終的に、飛行を継続すると地上に落下する危険などがあったことから、地上からの指令で破壊された。だが、この一件によって、LE-5Bエンジンと、そしてエキスパンダー・ブリード・サイクルという仕組みそのものが、故障や想定外の状況に強い頑丈さと、高い信頼性を持っているということが実証されたのである。頑丈ということは、たとえば少々不調であっても、H-IIの8号機のときのように飛行を継続できる可能性ができ、あるいはエンジンが壊れるようなことになったとしても、爆発はせず、ゆるやかに停止するようにできる。もしそのとき、ロケットの先端に宇宙飛行士が乗った宇宙船が搭載されていたとしたら、脱出するまでを時間を少しでも多く稼ぐことができるだろう。また構造が簡素ということは、造りやすく、さらに部品の数が少ないこともあって低コスト化や信頼性の向上にもつながることが期待できる。○鍵は大型化ひとつ懸念があるとすれば、それはLE-9が大型のエンジンであるという点だろう。前述のように、エキスパンダー・ブリード・サイクルのエンジンはH-IIのLE-5AやH-IIA、H-IIBのLE-5B、LE-5B-2で採用されており、20年以上の運用実績があることになる。しかし、ロケットの第1段向けエンジンと第2段向けエンジンとでは求められる性能が大きく違う。たとえばエンジンのパワー(推力)は、LE-5B-2の14トンに対して、LE-9では150トンと10倍以上にも増え、エンジンの各部分にかかる熱や圧力なども大きくなるため、LE-5BがあるからLE-9は簡単に造れる、ということではない。JAXAや三菱重工はすでに、LE-9とほぼ同じ性能の技術実証エンジン「LE-X」の開発を終えており、その成果はLE-9の開発に活かされることになっている。だが、実際にロケットに組み込んで飛ばせるエンジンにするためには、まだ多くの関門が待ち受けており、LE-9の開発がどうなるかが、H3が成功するかどうかの鍵となることは間違いない。○二段燃焼サイクルの技術はどうなるのかところで、そもそもH-IIで二段燃焼サイクルのLE-7が開発された背景には、そうしなければH-IIが実現できなかったという事情があった。もちろん性能が若干劣るエンジンを造り、それを束ねて使用するという考えもなかったわけではないが、そもそも当時の日本には国産の第1段エンジン自体が存在しなかったため、どちらにせよエンジンを新しく開発する必要があった。つまり「高性能なエンジンを造り、1基だけ使う」ことと「少し性能が劣るエンジンを造り、それを複数束ねて使う」ということが天秤にかけられた。しかし、当時の日本には、エンジンを束ねて運用する技術もまた存在しなかったため、まだ前者のほうが技術開発がシンプルで、ハードルが低いと判断されたのである。また、二段燃焼サイクルはスペース・シャトルのエンジンにも採用されている技術であったため、近い将来、日本がスペース・シャトルのようなロケットを造る際にも役立つだろうと期待されていた。しかし、二段燃焼サイクルは高コストであったことや、またH-IIBの開発でエンジンを束ねる技術が得られたことなどから、H3ではその技術を使わないことになった。これは日本の宇宙開発にとって、非常に大きな決断だ。LE-7A、特に二段燃焼サイクルの使用を止めることで、その技術はどうなってしまうのだろうか。岡田プロマネは会見で「二段燃焼サイクルについては、いったん使用を止めることになります。きちんとした技術の体系としては残した上で、エキスパンダー・ブリード・サイクルに切り替える、という考えです」と述べた。しかし、技術というものは、造り続けなければ継承はされない。たとえ設計図や実機を完全に保存したとしても、何十年か経ったあとですぐに復活させられるかといえば、非常に難しいだろう。H3が二段燃焼サイクルのエンジンを採用しない理由は、H3に求められるコンセプトに合わないから、という理由が一番大きい。だが、二段燃焼サイクルは本質的に高性能で、致命的な欠陥があるわけでもなく、さらにまだ発展の余地もある。その技術の系譜をむざむざと絶やすことは、日本のロケット技術の将来にとって、大きな損失にはならないだろうか。たとえば二段燃焼サイクルは、水素以外の、ケロシンやメタンなどの燃料を使っても実現でき、高い性能が得られる。実際に、ロシアや米国、中国などは、こうした燃料を使った二段燃焼サイクルのエンジンを開発している。また、二段燃焼サイクルには、「フル・フロウ二段燃焼サイクル」という、LE-7Aなどが採用している二段燃焼サイクルよりも、もっと効率が良くなる技術がある。これまでにこのサイクルの開発に成功したのはソヴィエト連邦だけで、現在は米国でスペースX社が「ラプター」というエンジンを開発している段階にある。日本の経済状況を考えると難しいだろうが、実際にロケットを造るところまではいかなくとも、LE-7Aの技術を活かし、こうしたエンジンの技術開発だけでも行うべきではないだろうか。(続く)
2015年08月18日2014年度から開発が始まった、新型基幹ロケット「H3」。2020年度に試験機1号機が打ち上げられる予定で、現在活躍中のH-IIAロケットやH-IIBロケットの後継機となることが計画されている。H3ロケットは宇宙航空研究開発機構(JAXA)と三菱重工業とが共同で開発を行っており、2015年度からはロケットの基本設計が始まっている。また7月2日には、それまでの「新型基幹ロケット」という呼び名に代わり、ついに「H3」という正式名称が与えられるなど、徐々にその姿が明らかになりつつある。本連載では、H3の開発状況について、新しい情報などが発表され次第、その紹介や解説などを随時、お届けしていきたい。第1回では、7月8日にJAXAが開催したH3ロケットに関する記者会見から、H-IIAロケットと現在の日本のロケット産業が抱えている問題について紹介、また第2回では、そうした背景を踏まえ、H3はどのようなロケットを目指すのか、その狙いについて紹介した。第3回となる今回からは、いよいよH3がどんな姿かたちや性能をもち、どんな技術を使って造られるのかについて見ていきたい。○日本最大のロケット現時点でのH3ロケットの想像図は、H-IIAロケットを拡大したような形をしている。実際、全長は63mと、H-IIAから10mも伸びている。中心のコア機体の直径は5.2mで、これはH-IIBロケットの第1段と同じだ。初期の検討では「直径は4.5mから5mの間で検討中」とされていたが、最終的にそれよりも太くなった。これには、同じタンク容量でも、直径を太くすることで全長を抑えることができるといったメリットや、H-IIBで使っていたジグ(固定用の道具)などの設備を流用できるといったメリットがあると考えられる。また機体が大きくなったことで、打ち上げ時に空気の抵抗や音などから人工衛星を守るための衛星フェアリングも、H-IIAより大きくなっている。なお、H-IIAではロケット本体よりも太いフェアリングや、衛星を2機搭載するためのフェアリングなど、さまざまな種類が用意されているが、あまり多いとコストが上がってしまうため、H3では種類を抑えたいとしている。打ち上げ能力は、高度500kmの太陽同期軌道へは4トン以上、静止トランスファー軌道へは6.5トン以上の打ち上げを目指すとされる。太陽同期軌道というのは地球を南北に回り、なおかつ太陽光の差し込む角度が一定となる軌道のことで、地表の観測に適しているため、地球観測衛星や偵察衛星がよく投入されている。H-IIAは、高度500kmの太陽同期軌道に対して約5トンの打ち上げ能力を持っているが、日本の地球観測衛星「だいち2号」や政府の情報収集衛星などは約2トンほどしかなく、また世界的にも4トン以上もあるような地球観測衛星はあまりないため、やや過剰性能であった。ただ、これはH-IIAの性能設定が間違っていたというわけではない。H-IIAはもともと、後述する静止トランスファー軌道への打ち上げ要求に合わせて設計されたので、太陽同期軌道などへの打ち上げ能力が過剰性能になったのは仕方がないことだった。そこでH3では、打ち上げ能力をH-IIA以上に柔軟に変えられるようにすることで、静止トランスファー軌道以外への打ち上げにも最適化できるようになっている。ただ、「4トン以上」と説明されているように、今後、日本や世界の需要の変化などがあれば、目標値が若干増えることはあるかもしれない。もうひとつの静止トランスファー軌道というのは、通信衛星などの静止衛星が打ち上げられる静止軌道の、ひとつ手前の軌道のことだ。多くのロケットは静止軌道に衛星を直接投入することができないため、まず静止トランスファー軌道に衛星を投入し、その後衛星自身がもつ小型のロケット・エンジンを噴射することで、目的地の静止軌道に乗り移る。現在、H-IIAの標準形態である202型では4トン、最強形態である204型では6トンまでの静止衛星を打ち上げることができるが、第1回で触れたように、近年では7トン近くもあるような、H-IIAでは打ち上げられない衛星も出てきていることから、H3では6.5トン以上の打ち上げ能力を目指すことになっている。また6トン以上であれば、3トン級の中型衛星を2機同時打ち上げることも可能になる。具体的に最大何トンまで対応できるかは、今後の設計を進める中で決定されることになるだろう。○第1段ロケット・エンジンの装着数を変えられる独創的な設計こうした、さまざまな軌道へ多種多様な人工衛星の打ち上げを行うため、H3は打ち上げ能力を柔軟に変えられるような設計になっている。H-IIAでも、機体下部の両脇に装着されている固体ロケット・ブースター(SRB-A)の装着数を変えることで打ち上げ能力を変えられたが、これはH3でも継承された。ただ、以前H-IIAであった固体補助ブースター(SSB)などは設定されず、現在のH-IIAと同じ、2本か4本で選ぶことになる。また、打ち上げ能力が一番小さくなる構成では、固体ロケット・ブースターは装着すらされない。そしてH3ではさらに、ロケット本体の第1段ロケット・エンジンの装着数を2基と3基で選ぶことができるようになる。第1段エンジンの装着数を変えるというのは、古今東西見渡しても例がない、独創的な設計だ。これにより、より打ち上げたい衛星に合わせて、性能を柔軟に変えられるようになっている。ただ、その反面、生産にかかるコストが上がるという問題も生じる。エンジンを2基と3基で変えられるということは、ロケット下部の配管や電線などの配置や、エンジンが装着される部分の構造を、機体によって変えなければならないということになる。ある程度は共通化できるだろうが、製造や組み立てが複雑になることは避けられない。JAXAの岡田プロマネによると「そこは天秤にかけた」という。つまり種類を増やすことによる生産コストの上昇よりも、打ち上げ能力を変えられることによるメリットのほうが大きいと判断されたということになる。こうした種類を用意できるようにすることで、太陽同期軌道に3トンから4トンの衛星の打ち上げから、静止トランスファー軌道に6.5トン以上の衛星の打ち上げまで、H-IIAよりも幅広く対応できるようになる。また、具体的な質量の値は不明だが、たとえば宇宙ステーション補給機「こうのとり」や、あるいはそれをも超える十数トンあるような大型衛星を、地球低軌道に打ち上げるような特殊ミッションも可能だろう。また月・惑星探査機も、H-IIAより効率的に打ち上げられるようになり、またより大型の探査機の打ち上げも可能になるはずだ。○打ち上げ価格は最小構成で約50億円最大の焦点は、はたしてH3はいくらになるのか、ということだ。第1回や第2回で触れたように、現在のH-IIAは世界的に高価であり、2020年代にはさらに安価なロケットが出てくると予想されていることから、H3はそれらライヴァルと対等に戦える価格を目指すとされている。今回の記者会見では、最小構成で「約50億円」を目指すと明言された。最小構成というのは、第1段ロケット・エンジンが3基で、なおかつ固体ロケット・ブースターを装着しない形態のことで、予定されているH3の種類の中では、打ち上げ能力が一番小さい構成である。この構成では高度500kmの太陽同期軌道に4トン以上の衛星を打ち上げることができる。現在のH-IIAの最小構成である標準型、もしくは202型と呼ばれている機体の価格は、約100億円といわれている。よくメディアの報道で「H3はH-IIAの半額」というキャッチーな言葉が使われているが、それはこの最小構成のことを指している。ただ、世界の競合ロケットと比べるのであれば、第1段ロケット・エンジンが2基で、固体ロケット・ブースターを2基、ないしは4基装着する、静止衛星の打ち上げにとって標準となるであろう構成の価格を使わなければならない。しかし、記者会見では「国際競争力の観点から具体的な価格についてはお話しできない」と述べるにとどまった。また「価格の話は三菱さんがこれから決めること」ともされたが、三菱重工は現在のH-IIAの価格も、やはり「国際競争力の観点から」という理由で明らかにはしていないため、最小構成以外のH3の価格が明らかになることはないかもしれない。次回では、H3に使われる技術についてより細かく見ていきたい。(続く)
2015年08月07日ジェイク・ギレンホールが『Stronger』への主演を検討しているようだ。2013年のボストン・マラソン爆弾テロ事件で両脚を失ったジェフ・ボーマンの体験を語るもの。ボーマンは、同名の体験記を昨年出版している。監督はデヴィッド・ゴードン・グリーン。その他の情報ボストン・マラソン爆弾テロ事件に関する映画は、ほかのところでもふたつ企画が進行している。ひとつはマーク・ウォールバーグがプロデュースと主演を兼ねる『Patriot’s Day』、もうひとつはダニエル・エスピノーサ監督の『Boston Strong』。ギレンホールは、現在北米公開中のボクシング映画『Southpaw』に主演。この秋には『エベレスト3D』が控え、9月のトロント映画祭のオープニング作品として上映される『Demolition』にも主演している。また、トム・フォード監督の次回作にも主演が決まっている。文:猿渡由紀
2015年07月30日2015年6月28日に発生した「ファルコン9」ロケットの打ち上げ失敗は、大きく2つの点で大きな衝撃を与えた。一つは、かねてより滞っていた国際宇宙ステーション(ISS)への物資の補給がさらに輪をかけて滞る事態になったこと、もう一つは「新たなる宇宙開発の形」という期待を受け、民間企業の主導によって開発されたロケットが、昨年10月の別のロケットに続いて、ファルコン9も打ち上げに失敗したことだ。はたしてISSの運用と、民間の宇宙開発の今後は大丈夫なのか。そもそも今回の失敗はなぜ起きたのか。本連載では打ち上げ再開までの動きを追っていきたい。第1回では、ファルコン9ロケットの概要について紹介した。第2回では、ドラゴン補給船の概要と、今回の失敗で失われたISSへの補給物資が、ISSの運用にどのような影響を与えたのかについて紹介した。第3回となる今回は、スペースX社のような民間企業が主体となる「新たなる宇宙開発」の今後は大丈夫なのかにということついて、次回の第4回と分けて見ていきたい。○NewSpaceというムーヴメント人工衛星を打ち上げたり、有人宇宙船を飛ばしたりと、宇宙開発が本格的に動き出して以来、宇宙開発は常に国家のものだった。たとえば米国であれば、アポロ計画やスペース・シャトル計画を主導したのは米航空宇宙局(NASA)であり、軍事衛星の計画を主導したのは米国防総省やその下にある軍だった。もちろん実際にロケットや衛星を造ったのは民間企業だったが、それでも人間を月に送り込んだのはどこか、と聞かれると、多くの人は「NASA」と答えるだろうし、スペース・シャトルは「NASAの宇宙船」と呼ばれ続けた。これには、宇宙開発を行うにはとても多くの資金が必要で、なおかつ儲からないという事情がある。つまり宇宙開発は公共事業だったのだ。しかし1980年代になり、NASAで小型ロケットによる小型衛星の打ち上げを、民間企業に主導させてみよう、という計画が始まった。そこに名乗りを挙げたのは、当時まだできたばかりのオービタル・サイエンシズ社(現オービタルATK社)という会社だった。彼らは航空機から発射する「ペガサス」という小型ロケットを開発し、NASAや民間企業などの小型衛星の打ち上げを請け負い、多くの成果を挙げている。そして2000年代に入ると、当時すでに建設が始まっていた国際宇宙ステーション(ISS)への物資と宇宙飛行士の輸送を、民間に任せてみようという動きが始まった。そして2006年に「商業軌道輸送サーヴィシズ」(COTS, Commercial Orbital Transportation Services)と名付けられた計画が立ち上げられ、構想を実現に移す動きが始まった。まずはロケットと無人の補給船を開発する計画が始まり、そこにオービタル・サイエンシズ社を含む多くの企業が名乗りを挙げた。そして審査を経て最終的に残ったのは、オービタル・サイエンシズ社と、2002年に設立されたばかりのスペースX社だった。両社はNASAからの資金提供を受け、ロケットと補給船の開発に挑んだ。その結果誕生したのが、スペースX社の「ファルコン9」ロケットと「ドラゴン」補給船、そしてオービタル・サイエンシズ社の「アンタリーズ」ロケットと「シグナス」補給船だった。これらロケットや補給船の開発には、NASAは資金提供や審査などで関わってはいるものの、主導権はあくまでそれぞれの企業にあった。NASAが主導しないことや、またスペースX社もオービタル・サイエンシズ社もまだ若い会社であることから、本当に任せても大丈夫なのか、という声は少なからずあった。だが、ファルコン9もアンタリーズも、1号機の打ち上げに成功し、その後も順調に成功を重ねつつあったことで、徐々にその声は小さくなっていった。折りしも、当時すでにサブオービタル(軌道に乗らない)宇宙船の開発が熱を帯びており、数年以内に乗客を乗せた運航が始まるかもしれないという機運が高まりつつあった。こうした新たな動きに対し、国が主導する「古い宇宙開発」と対比させる形で、新しい宇宙開発の形を意味する「NewSpace」と呼ぶことが流行り始めた。さらに2009年から始まったオバマ政権は、こうした民間主体の宇宙開発を積極的に支援する方針を示し、NASAも当然それに賛同した。こうしてISSなど地球低軌道の輸送は民間の手に委ね、NASAは月や火星など、より遠くの宇宙の探査に注力するという、現在の路線が確立された。○アンタリーズの失敗の余波しかし2014年10月28日、シグナス補給船を積んだアンタリーズが、打ち上げ直後に爆発し、墜落した。いくつかのメディアは「民間主導の宇宙開発は本当に大丈夫なのか」という部分を論点として採り上げた。とくに、爆発した箇所が、オービタル社がロシアから購入したロケット・エンジンだったことも、そうした風潮に火に油を注ぐ形となった(*1)。民間が開発を担ったために、コストを重視しすぎて安価なロシア製エンジンに頼ることになった、したがって多少高価でも米国製にこだわるべきだ、という主張だ。また、オバマ政権が民間主導という方針を積極的に進めていることも、そうした声が大きくなる要素となった。つまりはロケット云々を飛び越え、単なるオバマ政権への批判材料となったのだ。しかし、その風潮の歯止めとなったのはファルコン9の存在だった。アンタリーズが失敗した時点で、ファルコン9は13機が打ち上げられており、ほぼすべてが成功し、順調に実績を重ねていた(*2)。その実績は、ロケットの信頼性を何よりも重要視する衛星通信会社も認めるもので、多くの会社から打ち上げ契約を取り付け、現在も多くの受注を抱えている。ファルコン9の存在は、アンタリーズが失敗してもなお、民間主導の宇宙開発という道が間違いではないことを示していた。また、今年5月には、米空軍がファルコン9による軍事衛星の打ち上げを認める決定を下している。軍事衛星を打ち上げるには厳しい審査が要求され、ファルコン9は約2年をかけてクリアした。この背景には、米空軍がファルコン9に期待している節が見て取れる。現在、米国の軍事衛星の打ち上げを主に担っているのは、航空宇宙大手のロッキード・マーティン社が開発した「アトラスV」と、ボーイング社の「デルタIV」だが、そもそもこの2機は、米空軍が軍事衛星を打ち上げるためのロケットとして両社に開発させたものだった。にもかかわらず、ファルコン9を同じ土俵に上げる決定を下したということは、過去の経緯にこだわらず、コストや信頼性の面で最良の道を選ぼうとする意図があるのだろう。そして、民間主導という道を鼓舞した当のNASAももちろん、ファルコン9には大きな期待を寄せ、すでにドラゴン補給船によるISSへの物資輸送が6回も成功していたことからも、その期待はほぼ確信へと変わっていた。さらに、現在NASAは、ISSへの宇宙飛行士の輸送をロシアのサユース宇宙船に依存しているが、ファルコン9と、同じスペースX社が開発するドラゴンV2宇宙船によってその依存から抜け出し、米国の地から、米国の宇宙船で、米国人の宇宙飛行士を打ち上げられる時代が復活すると喧伝していた。民間が担うということは米国の宇宙産業にそれほどの力があるという勝利宣言であり、何よりISSの輸送を民間に委ねることで、NASAは他国がまだ足を踏み入れたことがない宇宙への挑戦に集中することができるのだ、とされた。米国内外からの、これほどまでに大きな期待を背負っていたファルコン9が、アンタリーズに続いて失敗したことで、批判の声が堰を切ったように大きくなったのかといえば、しかしそうではなかった。(続く)【脚注】*1 アンタリーズの失敗原因について、現時点ではまだ結論は出ていないが、ロシア製ロケット・エンジンのターボ・ポンプに問題があったのではないかという説が有力視されている。*2 2012年10月8日に打ち上げられたファルコン9の4号機では、9基ある第1段エンジンの燃焼中に、1基のエンジンが止まる問題が起きた。残りの8基を予定より長い時間燃焼させることによって、ドラゴン補給船を予定通りの軌道に投入することには成功したが、副ペイロードとして搭載されていた小型通信衛星は計画から外れた軌道に入ってしまった。ただ、スペースX社では、あくまで主のミッションはドラゴン補給船を送り届けることだったため、打ち上げは成功だったとしている。
2015年07月27日2015年6月28日に発生した「ファルコン9」ロケットの打ち上げ失敗は、大きく2つの点で衝撃を与えた。1つは、かねてより滞っていた国際宇宙ステーション(ISS)への物資の補給がさらに輪をかけて滞る事態になったこと、もう1つは「新たなる宇宙開発の形」という期待を受け、民間企業の主導によって開発されたロケットが、昨年10月の別のロケットに続いて、ファルコン9も打ち上げに失敗したことだ。はたしてISSの運用と、民間の宇宙開発の今後は大丈夫なのか。そもそも今回の失敗はなぜ起きたのか。本連載では打ち上げ再開までの動きを追っていく。第1回では、ファルコン9ロケットの概要について紹介した。第2回の今回は、ドラゴン補給船の概要と、今回の失敗で失われたISSへの補給物資が、ISSの運用にどのような影響を与えたのかについて見ていきたい。○ドラゴン補給船運用7号機今回打ち上げに失敗した「ファルコン9」ロケットには、国際宇宙ステーション(ISS)に物資を送り届ける「ドラゴン補給船運用7号機(CRS-7)」が搭載されていた。第1回で採り上げたファルコン9と同じく、ドラゴンもまた、スペースX社が開発を手掛けた。開発の背景には、やはりファルコン9と同じく、米航空宇宙局(NASA)が進める、ISSへの物資や宇宙飛行士の輸送を民間の会社に担わせるという計画があった。スペースX社は物資を運ぶためのドラゴン補給船と、宇宙飛行士を運ぶためのドラゴン宇宙船、そしてそれらを打ち上げるロケットのファルコン9を、並行して開発した。ちなみに同じ計画の下で、オービタル・サイエンシズ社(現オービタルATK社)も「アンタリーズ」ロケットと「シグナス」補給船を開発している。ドラゴンとシグナスの一番の差は、補給船に再突入能力があるかないかという点で、シグナスはミッション終了時に大気圏に再突入して燃え尽きるが、ドラゴンは再突入に耐え、地球に帰還できるように造られているため、たとえばISSでの実験の成果物などを搭載して、地球に持ち帰ることが可能となっている。また有人版のドラゴン宇宙船を開発する際の基礎にもなっている。今回の失敗までに、ドラゴンは8機が打ち上げられている。試験機1号機(ミッション名「SpX-C1」)は2010年12月8日に打ち上げられ、スラスターや通信機器の試験を行い、地球を2周した後、地球に帰還した。試験は滞りなく進み、船体も無事に太平洋に着水し、ミッションは大成功に終わった。続く試験機2号機(SpX-C2+)は2012年5月22日に打ち上げられ、早くもISSとのランデヴー(接近)と、ISSのロボット・アームによる把持、結合までやってのけた。当初の計画では安全性を重視し、ISSとのランデヴーまで行い、そのまま結合はせずに地球に帰ってくることになっており、把持と結合はこの次の試験機3号機(SpX-C3)で行われる予定だった。しかし、試験機1号機の試験結果が良好だったことなどを踏まえ、SpX-C2+でまとめて行われることになった。SpX-C2+の「+」の記号は、SpX-C3のミッション内容が足された、ということを表している。そして同年10月8日、NASAとの契約に基づいて商業補給を行う、実運用1号機(CRS-1)が打ち上げられた。この打ち上げではファルコン9の第1段が問題を起こしたものの、打ち上げは成功し、ドラゴンは問題なくISSに到着、補給を行った。続くCSR-2は2013年3月1日に打ち上げられたが、ロケットからの分離後にドラゴンのスラスターが故障する問題に見舞われた。その後、問題は解決し、予定は遅れたもののミッションは成功している。その後も2014年にはCRS-3とCRS-4の2機が、また2015年にはCRS-5とCRS-6の2機がすでに打ち上げられおり、いずれも成功している。ドラゴンが「宇宙の宅配便」として大きな成果を挙げていた矢先の、今回の失敗だった。○ドラゴンCRS-7の積み荷ドラゴンCRS-7には合計1867kgの補給物資が搭載されていた。内訳としては、食料品や衣服などの日用品が676kg、ISSで使われるハードウェアが461kg、科学機器が529kg、コンピューターやカメラなどの部品が35kg、船外活動(EVA)用の装置が166kgとなっている。また地球への帰還時には、620kgの物資が代わりに搭載されることになっていた。今回の積み荷の中で最も注目されていたのは、インターナショナル・ドッキング・アダプター(IDA)と呼ばれる部品だった。IDAは新しく開発された宇宙船のドッキング機構で、スペースX社が開発中の宇宙船「ドラゴンV2」や、ボーイング社の「CST-100」などをドッキングさせるために使われる。IDAの取り付けに備えて、5月27日にはISSのモジュールを移設するという大掛かりな作業も行われていた。ただ、IDAは2か所に設置されることになっていたため、今も地上に1つが残ってはおり、またNASAによると再生産も可能とされるため、計画が遅れる以外に大きな影響はないだろう。最も残念だったのは、学生が開発したり、計画に参加したりしている実験機器などが失われたことだ。いくつかの機器については予備機があったり、また再生産したりすることで再挑戦できる機会があるが、すべてがそうというわけではない、また、論文の執筆などに影響も出るだろうし、卒業し、実験にかかわれなくなる人もいることだろう。それを考えると、非常に残念な結果となってしまった。○8か月間で3回の補給失敗今回のドラゴンCRS-7の失敗で最も大きな影響を受けたのは、ISSに滞在している宇宙飛行士たちだった。ISSは、水などの再利用はいくらか行われているものの、基本的には地球からの補給物資に頼って運用されている。それらが届かないということは、ISSが兵糧攻めに遭うようなものである。さらに悪いことに、2014年10月28日にはシグナス補給船運用3号機(Orb-3)が、そして2015年6月28日にはプラグリェースM-27M補給船が打ち上げに失敗しており、8か月の間に7機中3機の補給線が失敗するという前代未聞の事態となった。もちろん、補給がなくともある程度は運用が続けられるように物資は蓄えてあるが、それにも限度がある。ただでさえ蓄えが少なくなっているところに、追い討ちをかけるように今回の失敗が起きたのだ。ドラゴンCRS-7が失敗した直後、NASAは「現時点で、今年10月いっぱいまでは通常通り運用できるだけの蓄えがある」と発表した。補足すると、これは11月1日以降に食べる量を減らすなどの運用に多少の制限が生じる恐れがある、という意味であり、10月いっぱいで食料や水が底を尽く、ということではない。ただ、それでもISSの運用計画を大幅に見直すことになるため、その影響は計り知れない。また、あくまでドラゴンCRS-7が失敗した時点での話であるため、今後打ち上げられる補給船によって、蓄えの量は徐々に回復されていくことにはなる。ただ、言うまでもなく成功すればの話であり、今後も補給船が打ち上げに失敗し、物資がISSに届かないようなことがあれば、ISSの運用に支障が出る可能性が残り続けることになる。7月3日には「プラグリェースM-28M」補給船が打ち上げに成功し、約3か月ぶりにISSに物資が送り届けられた。また8月16日には日本の補給機「こうのとり」5号機の打ち上げも予定されている。その後も、9月21日には「プラグリェースM-29M」補給船、11月21日には「プラグリェースMS」補給船、12月3日には「シグナス補給船運用4号機」(昨年アンタリーズ・ロケットが失敗したため、アトラスVロケットが使われる)の打ち上げが続く予定だ。だが何よりも、ドラゴン補給船とファルコン9が、いつ打ち上げ再開できるのかが重要であろう。ドラゴンがなければ、補給回数は当初の計画よりも少ないままで、またドラゴン以外の補給船の失敗が再び起こらないとも限らず、心許ない状態が続くことになる。何より、プラグリェース、シグナス、こうのとりは、大気圏の再突入に耐える能力はないため、ドラゴンの打ち上げが再開されない限り、ISSから実験装置や成果物などを持ち帰ることができない状態も続き、ISSでの実験計画に影響が出続けることになる。ただ、この記事を書いている7月15日現在も、打ち上げ失敗の調査が続けられており、打ち上げ再開の目処は立っていない。(続く)
2015年07月17日それはあまりにも間が悪いときに起きた失敗だった。米国時間2015年6月28日に打ち上げられた「ファルコン9」ロケットは、離昇から2分19秒後、突如として機体が分解した。ファルコン9の打ち上げは今回で19機目で、失敗は初めてのことだった。ファルコン9の先端には、国際宇宙ステーション(ISS)に物資を輸送する「ドラゴン」補給船の運用7号機が搭載されていたが、この失敗で物資は届けられなかった。間が悪いことに、今年4月にはロシアの補給船が、さらに昨年10月には米国の補給船も打ち上げ失敗で失われており、ISSへの物資補給に滞りが生じていた。少しでも多くの物資が必要とされていた最中に、今回の事故が起きてしまったのだ。さらに間が悪いことがもう一つあった。米航空宇宙局(NASA)は現在、国際宇宙ステーション(ISS)への補給物資や宇宙飛行士の輸送を民間企業に担わせる計画を進めており、ファルコン9はその計画の中で、米国のスペースX社によって開発されたロケットだ。しかし、昨年10月には同様の計画で開発された別会社のロケットが打ち上げに失敗し、「民間に任せて大丈夫なのか」という声が上がりつつあった。そして今回、ファルコン9が失敗したことで、よりその声は大きくなりつつある。はたしてISSの運用と、民間の宇宙開発の今後は大丈夫なのか。そもそも今回の失敗はなぜ起きたのか。本連載では打ち上げ再開までの動きを追っていきたい。○ファルコン9ロケットとはどんなロケットなのかファルコン9ロケットを開発したのは、米国カリフォーニア州に本拠地を置くスペース・エクスプロレーション・テクノロジーズ社、略してスペースX社という会社だ。設立は2002年とまだ若いが、すでに大手のロケット会社から脅威と認識されるほどの実力を持つ会社にまで成長している。創業者はイーロン・マスク氏という人物で、インターネット決済サービスでおなじみのPayPal(正確にはその前身のX.com)の創業者でもあり、そのPayPalを売却して得た資金を基に立ち上げられたのがスペースX社だ。マスク氏はもともと宇宙が好きで、ファルコンというロケットの名前も、映画『スター・ウォーズ』に登場するミレニアム・ファルコン号にちなんだものだという。同社はまず、「ファルコン1」という小型のロケットを開発し、打ち上げ試験を繰り返した。2006年から2008年にかけて行われた最初の3回は失敗に終わったが、2008年9月28日の4号機の打ち上げで成功を収め、続く2009年7月14日の5号機も成功している。そして2005年には、同社は、米航空宇宙局(NASA)が立ち上げた国際宇宙ステーション(ISS)への補給物資や宇宙飛行士の輸送を民間企業に担わせる計画に名乗りを上げ、新たに大型ロケットの「ファルコン9」の開発も始めていた。ファルコン9はファルコン1をそのまま大きくしたような姿をしており、ロケット・エンジンも、ファルコン1の第1段エンジンとして開発された「マーリン1C」を9基まとめて装着するという、手堅いものだった。2010年7月4日に行われたファルコン9の1号機、また同社にとってわずか6機目に過ぎないロケットの打ち上げは、しかし見事に成功した。その後5号機まで連続で成功し、6号機からは改良型のファルコン9に切り替えられた。名前は同じだが、姿かたちが変わり、打ち上げ能力も大きく増えており、ほとんど別物のロケットと言ってよい機体になっている。先代のファルコン9はv1.0、この改良型をv1.1とも呼ぶ。ファルコン9 v1.1は、全長が68.4m、直径は3.66mと、たとえばH-IIAロケットと比べると細長く、華奢な印象を受ける。打ち上げ能力は、ISSなどが回っている地球低軌道に13トン、通信衛星などを打ち上げるための静止トランスファー軌道へは4.8トンと、H-IIAロケットよりも若干大きく、世界のロケットと比べても中の上ぐらいに分類される、比較的大きな能力を持っている。打ち上げ価格は公称で6120万ドル(現在の為替レートで約74億円)と、他のロケットと比べると安く、これが衛星打ち上げ市場からは大きく歓迎されている。なお、以前はもっと安かったが、さまざまな試験や、新しい設備への投資をまかなうためか、近年徐々に上がりつつある。ファルコン9はこれまでに19機が打ち上げられ、そのうち1号機から5号機まではファルコン9 v1.0が、6号機以降はすべてファルコン9 v1.1が使われている。打ち上げに失敗したのは、v1.0、v1.1を通して、今回が初めてのことだった。○ソフトウェア開発のやり方を取り入れたロケット開発ところで、v1.0やv1.1という名前が、まるでソフトウェアのようだと感じた方もおられるかもしれないが、スペースX社やファルコン9の特徴は、まさにソフトウェアのような開発手法を採っている点にある。たとえば旧来のロケットであれば、十二分に時間をかけ徹底的に設計や試験を行い、設計変更があればさらに十二分に時間をかけて変更と試験をし、あるいは打ち上げて問題が出れば、やはりまた十二分に時間をかけて改良と試験をする。開発が始まってから1号機が打ち上げられるまでに、10年以上の歳月がかかることも珍しくはない。一方、スペースX社では、もちろん設計や試験を十分にやることに違いはないが、たとえばロケット全体に影響のない範囲で毎回何らかの改良を加えてみたり、ちょっとした実験機を造って飛ばしてみたり、そのロケットにも毎回改良を加えたりと、さらにその成果を本番のロケットに組み込んでみたりと、これまでのロケットとはおよそ異なる造り方がされている。これはちょうど、作ったソフトウェアをまず走らせてみて、バグがあれば書き直してまた走らせ、また製品として世に出した後でバグや改良したい点が出てくれば、その都度直してヴァージョン・アップする、というのと似ている。スペースX社はそれを、実際にロケットを飛ばしながらやっているのだ。実際、開発から打ち上げまでの期間は、ファルコン1は約3年、ファルコン9も約5年ほどと短い。その一方で、ロケットには大して革新的な技術は使われていない。たとえば大きな推力が必要なファルコン9の第1段には、新開発の大推力エンジンを用いるということはせずに、前述のようにファルコン1で使われたマーリン1Cロケット・エンジンを9基まとめて装着するというやり方が採用された。これはクラスタ化といって、確実に大推力が得られる古典的な技術だ。マーリン1C自体の性能もそこそこといったところで、また機体の構造などに最先端の新素材をふんだんに使っているわけでもない。それでも大型の人工衛星や有人宇宙船を十分に飛ばせるロケットにはなっている。○新たなる希望、初めてのつまずき古いやり方を革新的な手法で回すということが、スペースX社の特徴であり、強みだ。その評価は十人十色で、こうしたやり方を「単に見せかけだけだ」という人もいれば、「こういうやり方を採っていることこそがすごい」という評価もある。また、そうやって造られたロケットがある程度完成し、余裕が出てくれば、新しい技術の取得にも貪欲に乗り出している。たとえば3Dプリンターを使ってロケット・エンジンを造ったり、マーリン1Cも改良されて、世界最高水準の性能を持つマーリン1Dが生み出されたり、またメタンを使う大推力エンジンを開発したり、エンジンの動きを解析するための新しいソフトウェアを自社内で作ったりと、さまざまな新技術の開発を並行して進めている。そして極めつけには、ロケットの第1段機体を打ち上げ後に地上に着陸させ、再使用するという実験だ。これまでに垂直離着陸実験ロケットによる、地上から1kmほどまで上昇した後、そのまま着陸する飛行実験や、実際のファルコン9を使い、打ち上げ後に第1段機体を大西洋上に着水させるといった試みが行われている。また今年からは、大西洋上に浮かべた船の上にピンポイントで着地させる試験が始まっており、これまでに2回実施されたが、2回とも満足には成功せず、今回の打ち上げが成功していれば、3回目の試験が実施されることになっていた。他にも、妙にSFチックな外見をした宇宙船を造ったり、火星への有人飛行や移住を目標として掲げていたりと、とにかく楽しい、面白い技術や構想にあふれた今までにないロケット会社、それがスペースX社だ。アポロが月に降り立ったころ、近い将来誰でも月世界旅行に行ける日が来るといわれていたが、それは叶わなかった。スペース・シャトルが飛び始めたころ、そのうち誰でも宇宙に行ける時代が来るといわれていたのに、ついに来なかった。宇宙開発の歴史に裏切られ続けてきた人々からすると、スペースX社が次々に新しい技術や構想を発表する様は、閉塞間が漂う宇宙開発の現状を打ち砕く、新たなる希望のようにも見えた。次は一体どんな新しい宇宙開発の姿を見せてくれるのか。そんな期待があった中での今回の失敗は、多くの宇宙ファンが衝撃を受けた。さらに今回は、大きく2つの点において、あまりにも間が悪いときに起きた失敗でもあった。(続く)
2015年07月10日宇宙航空研究開発機構(JAXA)は7月2日、現在開発中の指次世代基幹ロケットの機体名称を「H3ロケット(エイチ・スリー・ロケット:H3)」に決定したと発表した。今回の命名についてJAXAでは、日本がこれまで積み上げてきた大型液酸/液体ロケットの技術を受け継ぐロケットであり、これまでのH-IからH-IIA/H-IIBロケットへと続く「H」を継承したとするほか、H-IIA/H-IIBロケットから機体構成を根本から見直した機体であることから、「H3ロケット」としたとする。また、これまでのローマ数字ではなくアラビア数字である「3」としたことについては、「IIと混同しない明確さ」や「報道などでの実質的な認知度・知名度」があるため、としている。なお、呼称(愛称)については、プライムコントラクタである三菱重工業と別途検討していく予定だとするほか、開発スケジュールとしては2020年度に試験機1号機の打ち上げを予定しており、最終的な開発の完了は2021年度の打ち上げを予定している試験機2号機の打ち上げ結果の評価を経てからとなる予定だという。
2015年07月02日フラワーアートユニットのプランティカ(plantica)と、原宿のギャラリー「ロケット(ROCKET)」が手がけるケータリングサービス、ケータリングロケット(CATERING ROCKET)によるハーブティーブランド「ハブ ア ハーバル ハーベスト(Have a Herbal Harvest)」が7月3日から7日まで、夏の新作のお披露目を兼ねた展示会を東京・渋谷のロケットで開催する。葉の形状を残さずに製品化されることの多いハーブティー。「Have a Herbal Harvest」では、生け花や押し花のようにハーブ1本1本の形を生かしたまま乾燥させて茶葉にすることで、インテリアとして飾っても美しく、観賞後にはお茶として美味しく飲むことが出来るハーブティーを展開している。厳選された四季折々のハーブを使用する同ブランドが今年の夏の新作に選んだのは、“夜明けのハーブ”と呼ばれる、紫色の花が美しい「ブルーマロウ」。色鮮やかな“青”が美しいブルーマロウはフルーツシロップとの相性が良く、ハーブとフルーツの化学反応による色の変化が楽しめることも特徴。日差しの強い夏の夜に爽やかな色と安らぎをもたらしてくれる、夏のギフトにぴったりのアイテムとなっている。同展ではこの夏の新作のお披露目や、ハーブティーの試飲、制作者であるケータリングロケットの伊藤維氏によるお茶の入れ方のデモンストレーションなどが行われる。【イベント情報】CATERING ROCKET×plantica 「Have a Herbal Harvest」 Summer Exhibition 2015「LateNight Blue Flower」会場:ロケット住所:東京都渋谷区神宮前6-9-6会期:7月3日~7日時間:17:00~20:00(土日は12:00~20:00)入場無料
2015年07月01日米スペースXは6月28日(現地時間)、国際宇宙ステーション(ISS)へ物資を届ける無人補給船「ドラゴン」を載せた自社のロケット「ファルコン9」の打ち上げに失敗した。「ドラゴン」にはISSへの補給物資のほか、千葉工業大学が開発した流星観測カメラなどの機器が搭載されていた。同ロケットはフロリダ州ケープカナベラル空軍基地から飛び立ったが、打ち上げ139秒後に問題が発生し爆発した。今後、失敗の原因についてスペースX、アメリカ航空宇宙局(NASA)、アメリカ連邦航空局(FAA)による調査が行われる予定だが、現段階ではロケットの2段目に何らかの異常があったと考えられている。なお、ISSには10月までは物資がストックされていることから、NASAは「今回の打ち上げ失敗はISSの運用にすぐに影響を与えるものではない」とコメント。7月3日に予定されているロシアの無人補給船「プログレス」の打ち上げや、7月23日に予定されている油井亀美也宇宙飛行士が搭乗する「ソユーズ」宇宙船の打ち上げにも影響は無いとしている。
2015年06月29日●世界最高性能の再使用ロケット・エンジンの開発に成功ロケットが航空機のように宇宙を飛び交う。そんなSFのような、そしてかつて一度砕かれた未来が、ついに現実のものになるかもしれない。宇宙航空研究開発機構(JAXA)の宇宙科学研究所(ISAS)では、何度でも使用できる観測ロケットを開発する構想を持っており、現在はその前段階として、機体形状の検討をはじめ、再使用ロケット・エンジンや軽量タンクなど、再使用観測ロケットの実現に向けて必要となる技術の実証が行われている。そのうち、最も難しい技術のひとつである、再使用ロケット・エンジンの技術実証試験が完了したことを受け、2015年6月15日に報道関係者向けに説明会が開かれた。今回は、再使用観測ロケット計画や、現在進められている技術実証プロジェクトの概要、そしてこの研究の先に待つ未来について見ていきたい。○再使用観測ロケットISASは現在、超高層の大気の観測や天体観測、微小重力実験などを行う目的で、小型の観測ロケットを年に1機から2機ほど打ち上げている。観測ロケットというのは、H-IIAロケットなどの大型ロケットのように地球の周回軌道に人工衛星を投入するのではなく、高度150kmから300kmほどまで上昇し、観測や実験を行った後、そのまま海上に落下する。この到達高度150kmから300kmというのが絶妙で、気球では高すぎて到達できず、逆に人工衛星にとっては低すぎるため、観測ロケットでしか到達できないという大きなメリットがある。また、システムとして小回りが利くため、実験提案から打ち上げまで短期間で実現可能で、理学・工学それぞれの実験でさまざまな研究成果が挙げられている。しかし、ロケットや観測機器は使い捨てることになるため、打ち上げのたびにロケットと観測機器を新たに製作する必要があり、実験や観測が失敗した場合に修理して再挑戦といったこともできない。また、観測ロケットの需要は高く、現時点でも1年間に10回程度の実験が求められおり、さらにもっと多くの利用需要が眠っているとも考えられている。さらに、観測機器や実験試料の回収をしたい、観測する方向を自在にコントロールしたい、もっとゆっくり飛んでほしい、もっと低く、あるいは高く飛べ……といった多くの要求があるという。そうした需要に応えるために計画されているのが「再使用観測ロケット」である。その名の通り、今までのように1回ごとに機体を使い捨てるのではなく、まるで航空機のように何度も再使用できる観測ロケットだ。観測ロケットが再使用できるようになれば、実験装置を繰り返し使用できるため、今までより高価で精密な装置が積みやすくなり、試料を回収できることで地上の高性能な装置で分析ができるようにもなる。また、今まではロケット内の実験データを電波で地上に送ったりしていたが、機体内の記録装置に保存できるので、大容量のデータが得られるという。そして何より、機体を毎回造り直す必要がないため、高頻度の打ち上げができるようにもなる。現在の検討では、再使用観測ロケットは全長13.5m、直径3.0m、打ち上げ時の質量は11.5tになるという。現在の使い捨て型の観測ロケットと比べると大きくなるが、これは地上に帰還するための推進剤を積む必要があることなどが関係している。ロケット・エンジンは底部に4基あり、そのうち1基が故障しても安全に帰還できるようにするとされる。最大到達高度は100kmから150kmで、打ち上げ頻度は1日に2回以上を目指すとされ、同一の機体で、メンテナンスしつつ、100回以上の再使用を可能にしたいという。開発費は70、80億円ぐらいが見込まれており、また打ち上げ1回あたりの運用費は数千万円ほどで、これは1機あたり数億円かかる現在の使い捨て型観測ロケットからすると約10分の1ほどになる。現時点では再使用観測ロケットそのものには予算は付いておらず、いつ運用が始まるかなどの目処は立っていない。ただ、その前段階にあたる技術実証プロジェクトには予算が付き、2010年度から研究が行われている状況にある。○再使用観測ロケット技術実証プロジェクトところで、宇宙開発が好きな方なら、かつてISASが「RVT」という小さなロケットの飛行実験を行っていたことを憶えておられるかもしれない。RVT(Reusable Vehicle Testing)は1990年代後半から開発が始まり、2000年代の前後に複数回、垂直に離陸して上昇した後、垂直に地面に着陸するという飛行実験を行っている。再使用観測ロケット技術実証プロジェクトは2010年度から始まったが、そこにはRVTで得られた知見が多く活かされており、再使用観測ロケットはまさにこのRVTの直系の子孫にあたる。再使用観測ロケット技術実証プロジェクトでは、再使用観測ロケットの実用化に向けて必要となる、さまざまな技術要素の研究開発が行われている。プロジェクトにはJAXAを中心に、三菱重工業などが参画している。その中で開発されているもののひとつが、再使用ロケット・エンジンだ。再使用観測ロケットでは、まずフルパワーで上昇し、続いてエンジンを止めて慣性飛行を行い、そして着陸のためにふたたびエンジンに点火し、最終的には停止さたりと、何度も始動と停止を繰り返さなくてはならない。さらに、推進力を降下速度や姿勢に合わせて調整する必要もあるなど、通常のロケット・エンジンとはまったく違う動きを要求される。また1回限りではなく、簡単なメンテナンスだけで、何度も使えなくてはならない。成尾助教は「スペース・シャトルのロケット・エンジンの設計寿命は55回とされている。しかし、実際には宇宙から帰ってくるたびに、エンジンを機体から降ろして、全部分解して点検するようなことをしていた。そこで私たちは、簡単な点検だけで100回再使用できるようなエンジンの開発を目指すことにした。スペース・シャトルから得た教訓というのは、単に再使用ができるというだけではだめで、頻繁に運用できなければ、結局はコストを下げることができない。私たちの開発したエンジンでは、航空機のようにロケットを繰り返し運用ができると考えている」と説明した。同プロジェクトで開発されたエンジンは、推進剤に液体酸素と液体水素を使用する。推力は40kNで、また22%から109%の間で自由に可変させる(スロットリング)ことが可能だという。エンジンの開発はプロジェクト開始と同じ2010年度から始まっており、設計や製造、部品単位での試験が繰り返された後、2014年度にエンジンのシステム全体の性能を確認する試験が実施された。この試験は、短時間の燃焼の1回の打ち上げに相当する量の負荷をかけられる「寿命加速試験方法」という手法を使用して行われ、今年2月までに、エンジンの起動と停止の累積回数は142回を記録、累積燃焼時間は3785秒にも達している。これにより、100回の打ち上げに相当する負荷に耐えられることが実証されたという。またその中で、垂直離着陸時や、飛行を中断しなければならない時などに推力を制御する性能と、応答性も実証され、さらに最短で24時間後に再打ち上げが可能な能力を持つことも実証されたという。エンジン以外にも、たとえばタンクの中の推進剤の動きを制御する技術も必要となる。飛行中のタンク内の推進剤はちゃぷちゃぷと揺れ動いており、そのままロケット・エンジンに送り込もうとすると空気が混じってしまい、エンジンが破壊されることもある。そこで推進剤の液面を制御し、推進剤がしっかりエンジンに送り込まれるようにしなくてはならない。またロケット・エンジンのノズルには、高度によって(周囲の大気圧によって)最大の性能が出せる最適な形というのがあるため、飛行中にノズルの大きさを変えられる仕組みも必要となる。さらにエンジンなどが故障した際に、ロケットの判断でミッションを中断し、地上まで安全に帰還させるシステムも必要となる。その他にも、機体の形状をどうするか、軽くて頑丈な推進剤タンクをどうやって造るかなど、いくつもの技術開発が進められている。これらが実際の再使用観測ロケットで採用されるかはまだわからず、別の技術を使うかもしれないし、あるいは運用を続ける中で改良が加えられるため、後々になってから実装するといったことが考えられている。今年度には、新たに着陸脚の試験や、センサー類の試験なども予定されている。また、まだ具体的な日程や場所は未定なものの、実機よりやや小型の模型を使った滑空飛行試験も計画されているという。今はまだ再使用観測ロケットそのものを開発する予算は認められていないが、もし開発が決定され、予算が付けば、最短で4年間で開発できるとしている。稲谷教授は冗談交じりで「2020年の東京オリンピックの会場の上空で飛ばせるようにしたい」と語った。●「ロケットの次のゴール」を迎えるか、または「詐欺師ペテン師の世界」か○再使用観測ロケットにまつわる疑問点この再使用観測ロケットについては、いろいろと疑問点がある。まず、なぜ燃料に液体水素を使うのか、という点だ。水素は密度が低いため、たくさん積もうとするとタンクの大きさがかさばり、機体のサイズや質量がどうしても増えてしまう。また水素エンジンはスピードは出せるが、大きなパワーは出しにくい。最終的に第一宇宙速度(秒速7.9km)ものスピードを出さなくてはならない人工衛星打ち上げ用ロケットにとっては、スピードが出せるという点が大きなメリットとなるが、単に高度100km前後まで飛んでそのまま戻ってくる観測ロケットにとっては不向きだ。しかも帰還のための推進剤も積まなければならないため、タンクの大きさも、衛星打ち上げロケットより割合としては大きくなる。にもかかわらず再使用観測ロケットで採用された理由は、開発した技術を、より将来のロケットに活かしたいためだという。また、最近の世の中が水素社会になりつつあり、液体水素を使うロケットと接点があることから、それらの大学や企業などと共同研究ができるメリットもあるという。再使用することで本当に安くなるのかという疑問もある。スペース・シャトルは安価に運用するために部分的な再使用方式を採用したが、再使用のためのメンテナンスにかかる費用が非常に高くなってしまったという歴史がある。再使用観測ロケットはスペース・シャトルとは異なり完全再使用で、また機体の規模も目的も異なるが、同じ轍を踏まないとは限らない。これについて、小川准教授は「部品レベルで検討した結果、運用費用について、10分の1ぐらいは確実に安くなるという試算が出ている」と、低コスト化への自信を語った。もうひとつ、なぜ垂直離着陸方式を採用したのか、という点だ。米国では「スペースシップトゥ」のように、航空機に吊られて上空まで上がり、そこからロケット・エンジンで高度100kmまで上がり、飛行機のように滑空して帰ってくるという機体がある。またスペース・シャトルも打ち上げは垂直に上がっていくが、帰還時には翼で舞い戻ってくる。これに対しては、1日に複数回飛ばすことを考えると、垂直離着陸式の方が手間がかからないのではないかと考えられていること、また日本には広い場所がないので、滑走路などを確保するのが難しいという問題があり、垂直離着陸方式であればその点を解決でき、また既存の発射施設を使える利点もあることが挙げられていた。○さらにその先の未来へ現在、世界のロケットは、機体を再使用することで打ち上げコストを引き下げようという動きが主流になりつつある。たとえば米国のスペースX社は、ロケットの第1段を再使用することを目指し、「ファルコン9-R」ロケットの試験を繰り返している。また米国のユナイテッド・ローンチ・アライアンス社は、打ち上げ後に第1段のロケット・エンジンのみを分離し、パラシュートで降下させて空中で回収し再使用する「ヴァルカン」ロケットの開発をすると明らかにしている。フランスでも、第1段エンジン部分だけを分離し、プロペラを展開させて飛行機のように帰還し再使用する「アデリン」というシステムの開発が行われている。さらに米国のブルー・オリジン社では、まさにISASの再使用観測ロケットのように、液体酸素と液体水素を推進剤とする垂直離着陸型の再使用ロケットの開発が進められており、今年4月には高度約100kmへの飛行に成功している。一方日本では、現在三菱重工業とJAXAが共同で、H-IIAロケットやH-IIBロケットの後継機となる「新型基幹ロケット」の開発を進めているが、今のところ再使用化の計画はない。はたして、この再使用観測ロケットと新型基幹ロケットが融合し、新型基幹ロケットの第1段が地上に舞い戻ってくるような日はくるのかということは、誰でも期待を抱くところだろう。質疑応答でも当然、そうした質問が飛び出した。それに対して稲谷教授は「スペースX社のように、新型基幹ロケットの1段目を再使用にする可能性はありうるだろう。そのときに、このエンジンでやってきたことは役に立つだろうとは思う。ただ、今のところ新型基幹ロケットはそのような設計開発はされていないと思うし、思考実験としてやったらどうなるか、ということは、(三菱やJAXAで)考えてられているとは思うが、まだ形になるような話にはなっていないと思う。将来とりうるチョイスのひとつとは思うが、これはなかなか難しいところで、スペースX社がやっているから日本も同じことをするのか、あるいはもっと先を行くべきのか、国の税金を使っていることなので、どういう道を行くのかはしっかり議論した上で決めるべきことだと思う」とのことであった。また小川准教授は会見後、「これからのロケットは再使用化が主流になると思われるか」という質問に対して、「たしかに、世界はふたたびロケットの再使用化に向けて動き出しているようだ。ただ、私たちはさらにその先の未来を見据えて、私たちのやり方が世界の主流になるようにやらなければならないと思う」と語った。さらにその先、というのは、完全な再使用ロケットのことだ。ファルコン9-Rやヴァルカン、アデリンは部分的再使用、つまり機体の一部を再使用しているにすぎない(スペース・シャトルも同様)。しかし、本当に航空機のようにロケットを飛ばしたいのであれば、当然ながら航空機と同じように、ロケットの機体すべてを再使用することが望ましい。そうした機体の構想は古くからあり、ロケットの全段をそのまま再使用する単段式ロケットや、2段式ながら上段が別々に帰還して再使用できるロケットなどが考案され、たとえばNASAでは、1980年代から90年代にかけて、X-30やDC-X、X-33、ヴェンチャースターといった機体の開発が行われた。しかし、どれも技術的な障壁にぶち当たり、結局実現することなく消えている。だが、それから技術も発達し、またスペースX社などがロケットを実際に再使用することを試みつつあり、完全再使用の衛星打ち上げロケットの開発に、ふたたび挑むべき時代がやってきているのかもしれない。稲谷教授は「誰でも行ける宇宙旅行や、太陽発電衛星の建設といった事業が経済的に成り立つためには、1日に何十回も飛べたり、機体を1000回ほど再使用できたりできる航空機のようなロケットを実現し、今より打ち上げコストを2桁ほど下げないといけない」と語る。また稲谷教授は「最終的にはスペース・シャトルよりも、もっと良いものを造りたい。たとえば羽田空港では、1日1000回ほど飛行機の離発着がある。再使用観測ロケットが目指しているのは1日10回程度であり、まだ2桁も少ない。それでも飛行機のように運用できるロケットが実現できないはずはない。それをゴールとして、若い人も含めて、そうしたロケットの実現に向けた活動が活発になればと思う」と期待を語った。○『「ロケットの次のゴール」または「詐欺師ペテン師の世界」』ところで、稲谷教授は今から10年前、2005年のお正月に、ISASニュースに『「ロケットの次のゴール」または「詐欺師ペテン師の世界」』と題した記事を寄稿している。その主張は今回の説明会と変わわらず、宇宙旅行や太陽発電衛星の建設などを実現するには打ち上げ費用を安くすることが重要であり、そのためには高い頻度で繰り返し打ち上げができる、使い捨て型のロケットとはまったく異なる思想のロケットが求められることが解説されている。そのユニークな題名は、稲谷教授と、糸川先生の弟子でもあった長友信人名誉教授との間で交わされた、「もし再使用ロケットを造ろうとお金を集めるも、失敗に終わった場合、詐欺師やペテン師の仲間入りをしてしまうことになる」という内容の会話から採られている。ちなみに長友教授もまた、考えが時代の先を行きすぎていたため、山師と呼ばれることがあったという。この記事が書かれた2005年というと、スペース・シャトルの後継機となるはずだった新型シャトルの計画はすべて消え、また2年前にはスペース・シャトル「コロンビア」の事故も起き、スペース・シャトルは失敗作だったという見方が広がり、再使用ロケットというものの実現性に疑いの目が向けられていたころだ。一方でロシアは、半世紀近く形の変わらない古めかしい使い捨てロケットを使い、安価に、そして安定した打ち上げを続けていた。それを背景に、当時は「ロケットを安くするには、使い捨てロケットを大量生産してコストダウンすることが正解」という風潮が強かった。あれから10年が経った今、世界のロケットはふたたび、やり方はさまざまなれど、機体を再使用する方向へ舵を切りつつある。そしてその流れはおそらく止まることはないだろう。もし将来、稲谷教授を詐欺師やペテン師などと呼ばねばならない日が来るとしたならば、それは日本のロケット産業の敗北を意味することになろう。
2015年06月25日平井理央さんの『楽しく、走る。』は、平井さん初の著書であり、ニューヨークシティマラソンに挑戦するための1年を振り返った体験記だ。実は、局アナ時代に番組内の企画で東京マラソンを経験したことがある平井さん。「そのときは、ちょっといいところも見せたい一心でトレーニングに打ち込み、終わった途端に燃え尽きたようになってしまった。けれど、『走るのは楽しかったな』という記憶だけは残っていました。それなら今度は、“世界一の市民マラソン”と称されるニューヨークシティマラソン(NYCM)を、記録を気にせず、マイペースで楽しく完走することを目標にトライしてみたいな、と思ったんです」市民ランナーなら誰でも憧れると いうNYCM。その理由は、時間制限の足きりがないことや、ニューヨーク市の5区すべてを回る観光的なコース設計になっていること、熱狂的な声援を受けられることなど、アガる要素が山盛りだかららしい。「ランナーも沿道の観客も、それぞれのスタイルで楽しんでいて、みな自分が主役なんですよね。チャレンジすることに意味がある、というラフな関わり方が文化だし、いい意味でゆる~く楽しめる大会なんです」NYCMに挑むに際して平井さんが決めたマイルールというのも「無理しない」「ごほうびを作る」「だれかと走る」とかなり甘い(感じがする)。だが、それが「マラソンなんて自分には無理」という思い込みを払拭してくれる。しかもその3か条は、人生を楽しくサバイブするための知恵ともいえそうだ。本書で多くページが割かれているのは、走ることはもちろん、その周辺についての楽しさだ。旅行や出張ついでの“旅ラン”や、親しい人と会話しながら走る“友ラン”など、むしろマラソンからイメージされるストイックさとは無縁の世界。ラン未経験者であっても思わず始めてみたくなるような、タイトルそのままのハッピーさが伝わってくる。「走るとこんな楽しいことがあるよ、と脳にごほうび感をインプットするのがコツ。いま狙っているのは、ブルゴーニュマラソン。青空の下でワインを楽しみつつ走るなんて最高じゃないですか(笑)」◇ひらい・りお1982年生まれ。2005年にフジテレビ入社。『すぽると!』などスポーツ報道に携わる。2012年9月にフジテレビを退社。2013年1月よりフリーで活動中。◇NYCM参加を目標にした、ゆるゆるトレーニングと大会当日までの記録。最低限の練習のコツや装備の注意点など、実際のランのためのアドバイスもしっかり。新潮社1300円※『anan』2015年6月24日号より。写真・小笠原真紀スタイリスト・カワサキ タカフミ(MILD)ヘア&メイク・吉田智絵インタビュー、文・三浦天紗子
2015年06月22日ラグーナ・プーケット国際マラソン 2014年の様子 写真提供:タイ政府観光庁マラソン愛好者ならば、海外のマラソン大会に一度はチャレンジしてみたい!と思ったことのある人は多いはず。毎年日本から1万人以上が参加するハワイのホノルルマラソンと言えば海外マラソン大会の代表格だが、東南アジアでも魅力的なマラソン大会が開催されている。そこで、今回は東南アジアのマラソン大会にフォーカスして、大会出場時の予備知識やオススメの大会、更にはチームで宿泊したいステイ先をご紹介。事前にチェック!東南アジアマラソンの必需品レースで必要なものは、基本的には日本から持参するのが安心。日本では、簡単に手に入る物も現地では中々見つからなかったりすることもしばしば……。到着後に慌てることがないように、持ち物チェックは念入りに。以外と忘れがちなこちらもお忘れなく。・エネルギー補給食品や飴など食品関係(食べ慣れたものが売っていないこともあるので持参するのが安心。)・日焼け止めや薬、絆創膏などの応急手当用品(日本のものが品質がよくて安心。)・虫除け(東南アジアでは一年を通して虫刺されに注意したい。)・うがい薬(砂ぼこりや排気ガスなどが日本よりもきつい場所があるので、レース後に念入りにうがいをしよう。)・ティッシュ(コースに設置されたトイレは紙がないことも……。手洗い場がないこともあるので、ウェットティッシュも合わせて持参すると安心。)海外マラソンの魅力と予備知識by RUN-WALK Style店長・三浦さんシンガポールサンダウンマラソン2014年の様子 ©Sundown Marathon海外マラソン出場時に気をつけたいことを、海外レースにも数多く参加している、RUN-WALK Style 店長の三浦さんにお伺いした。——海外マラソンの魅力とは?海外マラソン大会に参加すると、普通の旅行では見られないような、素の街の姿や風景に出会えることが醍醐味です。もちろんコース上の建造物を見ながら走ることができるのも楽しいですよ。その国によって応援の雰囲気や仕方も違いがあるのも面白いです。——大会何日前に現地入りするのがいいですか?早いに越したことは無いですが、遅くても2日前には現地入りしたいところです。走る距離にもよりますが、走る距離が長ければ特に早めに入りたい。個人的にはその土地の気候に体を慣らすためにも、レース前に疲れない程度に観光をしたりします。東南アジアと日本では暑さの質も違うので脱水症状などにならないようにしましょう。——到着後にやっておきたいことは何ですか?まずは気候に慣れるために、観光を兼ねて体を動かします。また、食糧の手配ができるスーパーやコンビニの場所を確認するのも大切です。そして、大会当日使う腕時計を現地時間に合わせること。当たり前のことなのですが、忘れていると当日慌てて操作するなんてことにもなってしまうので。あとは、水の確認ですね。体にあった水を先に見つけておくと安心です。——日本から持参するグッズでおすすめ品は?エネルギージェル系は必須です。あとは、お湯で簡単に食べられる真空パックのご飯です。まだ間に合う今年開催の東南アジアマラソン大会!アンコールエンパイア・フル&ハーフマラソン ©Angkor Wat International Half Marathonまだ申込み〆切前の注目もマラソン大会5つをピックアップ!■8/9アンコール エンパイア&ハーフマラソン(申込〆切:7/21)■8/30バリ国際マラソン(申込〆切:8/2)■11/15バンコクマラソン(申込〆切:未定)■12/6アンコールワット国際ハーフマラソン(申込〆切:未定)・12/7シンガポールマラソン(申込〆切:未定)(2014年のサイト)チームで大会の拠点にしたいステイ先開放的な気分で満喫できる海外マラソンには、いつものラン仲間と一緒に参加するのもおすすめ。そんな時は、大人数で宿泊できるステイ先を選んでみては?合宿気分で楽しむのもいい思い出になりそう。物件のオーナーと利用者を個人間で繋ぐWebサイト「Airbnb(エアビーアンドビー)」には、マンションの一室やヴィラをまるごと貸し切ることのできる物件も多く紹介されているので、利用してみるのも一つの手。編集部の気になる物件をご紹介。■シェムリアップ(カンボジア)<該当大会>8/9アンコール エンパイア&ハーフマラソン12/6アンコールワット国際ハーフマラソンヴィラタイプの物件には、合計8名宿泊可能!プールやヨガのできる部屋まで完備されていて、レース前の体調を整えるのにも、レース後にリラックスしながらリゾートするにもぴったりだ。ベットルームは4つ。それぞれのプライバシーを守りながら滞在することができるのも嬉しい。詳細はこちら:■バンコク(タイ)<該当大会>11/15バンコクマラソン高級コンドミニアムの30階、31階に位置するメゾネットタイプの物件。3つのベットルームにはそれぞれバスルームが付いている。コンドミニアムの共有施設には、プール、フィットネス、サウナもあるため、コンディションを整えるのにも便利。キッチンや洗濯機も自由に使用することが可能。詳細はこちら:■シンガポール<該当大会>12/7シンガポールマラソンベイフロントにそびえ立つ高級レジデンスの1室。美しい景観が自慢だ。こちらも3つのベットルームにそれぞれバスルーム完備。スタイリッシュなリビングルームの隣にはアイランドキッチンが備わっている。それぞれのベッドルームもクリーンで気持ちのいい空間だ。詳細はこちら:※上記は、各物件のサービスの質や安全性を保証するものではございません。宿泊先は、個人の責任をもってご決定頂けるようお願いします。------------------RUN-WALK Styleスタッフは皆、フルマラソンはもちろんウルトラマラソンやトレイルランニングの経験がある。海外レースにも参加してるので、商品のアドバイスはもちろん、レースの情報などもアドバイスができる、ランニング・セレクトショップだ。エアビーアンドビー)Airbnbは、世界中のユニークな宿泊施設をネットや携帯やタブレットで掲載・発見・予約できる信頼性の高いコミュニティー・マーケットプレイス。
2015年06月05日そのニューズが流れたとき、多くの人々の反応は「またか」であった。2015年5月16日、ロシアのプラトーンM/ブリースMロケットが打ち上げに失敗し、墜落した。ロケットにはメキシコ合衆国の通信衛星「メクスサット1」が搭載されていたが、ロケットもろとも完全に失われることになった。また、つい最近の4月末には、国際宇宙ステーションへの補給物資を積んだプラグリェースM-27M補給船が問題を起こし、ミッションが失敗に終わっており、ロシアの宇宙開発にとって悪夢のような日々が続いている。それでなくとも、プラトーンMはここ数年、頻繁に失敗を起こしていた。最近では2014年10月に、衛星を予定していた軌道に投入することに失敗(衛星側で軌道修正は可能とされる)、さらに奇しくも今回から1年前の2014年5月16日には、今回とよく似た状況の失敗を起こしている。またそれにとどまらず、プラトーンMは2000年代後半からはほぼ年に1機から2機のペースで失敗しており、例えば2014年は8機中2機が、また2013年は10機中1機が、2012年は11機中2機が、墜落したり、目的の軌道へ衛星を投入できなかったりといった失敗を起こしている。かつてプラトーンMは、非常に大きな打ち上げ能力と、高い打ち上げ成功率を武器に、人工衛星の商業打ち上げ市場において、欧州企業とほぼ二分するほどのシェアを誇っていた。米国や日本の企業の衛星を打ち上げたことも一度や二度ではない。ほぼ毎月のように巨大なロケットが飛んでいく様は、かの地においては日常の光景であり、それはロシアの宇宙技術の高さの象徴でもあったが、今や斜陽化の象徴と化してしまった。○ロケットの第3段に異常メクスサット1を搭載したプラトーンM/ブリースMは、バイカヌール現地時間2015年5月16日11時47分(日本時間2015年5月16日14時47分)に、カザフスタン共和国にあるバイカヌール宇宙基地の200/39発射台から離昇した。予定では9時間13分にわたって飛行し、静止トランスファー軌道という、静止軌道に乗り移るための暫定的な軌道で衛星を分離することになっていた。しかし、ロシア連邦宇宙庁(ロスコースマス)の発表によると、打上げから497秒(8分17秒)後、高度161kmの地点で何らかの異常が発生したという。この時点ではまだ軌道速度は出ていないため、加速を失ったロケットと衛星は地球に向かって落下をはじめた。ロスコースマスではすぐに調査委員会が立ち上げられ、原因の究明が始まった。今回の打ち上げを手配した、民間のインターナショナル・ローンチ・サーヴィシズ(ILS)社でも独自の調査委員会が立ち上げられ、調査が行われている。またロシアのインテルファークス通信やイズヴェースチヤ紙などは、専門家の見解として、第3段に装備されている、姿勢制御用の小型ロケット・エンジンに問題が発生した可能性があると報じている。プラトーンMの第3段ロケット・エンジンは「RD-0212」と呼ばれており、メイン・エンジンの「RD-0213」と、4基のノズルからなるヴァーニア・エンジンの「RD-0214」の2種類のエンジンから構成されている。RD-0214は、ロケットの飛行の制御を行う、ステアリング(舵)として使われるエンジンだ。ただ、5月28日現在では、まだ決定的な原因、今後の対策などは、公式には発表されていない。また問題が発生した後に、ロケットや衛星がどのような結末を迎えたかは定かではない。機体の大半は燃え尽きたと考えられているが、燃え残った部品などが地表に落下した可能性もある。実際に、部品が落下すると想定されたロシア連邦南東の、モンゴルと国境を接するザバイカーリスキィ地方の南西にあるクラスナチコーイスキィ地区に向けて、ロシア非常事態省のヘリコプターが飛んだとされる。ただ、今のところ地表に落下したことを示す痕跡は見つかっていないという。ロケットの行方がわからなくなったことと、今回の打ち上げがプラトーン全シリーズ通算404機目であったことに引っ掛けて、Twitterでは「#404RocketNotFound」というハッシュタグが作られ、にわかに盛り上がりを見せていた。無粋なことは承知でネタの解説をすると、「404」というのは「Webページ(のファイル)が見つかりません」ということを意味するエラー・メッセージだ。たとえば昔にお気に入りに入れたページを久しぶりに見に行こうとしたら、「404 Not Found」と表示されて見られなくなっていた、ということを経験した人は多いだろうが、あれがまさにそれである。○メクスサット1今回の積み荷であったメクスサット1は、メキシコの通信・運輸省が運用する通信衛星で、米国の航空・宇宙大手のボーイング社によって製造された。またメクスサット1は別名「センテナリオ」とも呼ばれている。センテナリオ(Centenario)とはスペイン語で「100周年」を意味する単語で、1910年から1920年にかけて起こったメキシコ革命から100周年を記念して打ち上げられた衛星でもあった。無事に軌道に投入されていれば、音声やデータ、映像やインターネットなどの通信サーヴィスを提供することになっていた。打ち上げ時の質量は5325kgという大型衛星で、おまけに直径22mの展開式アンテナを持っているため、より大きく感じられる。設計寿命は15年が予定されていた。計画ではメクスサット1を含めて合計3機の衛星が打ち上げられ、国防や政府機関の通信、災害時の緊急通信などの用途で使われる予定だったが、1号機が失敗したことで計画の見直しは必至だ。米国の宇宙開発ニュース・サイトのSpacePolicyOnlineによると、衛星本体の設計と製造には3億ドル、打ち上げには9000万ドルが支払われたとされる。ただ、これらには保険が掛けられており、ほぼ全額が戻ってくるという。また、どうして最近失敗が続いているプラトーンMで打ち上げることを選んだのかという問いに対しては、ILS社との今回の打ち上げ契約は、まだそれほど失敗が目立って増えてはいなかった2012年に結ばれたものであり、またその解約には6000万ドルの違約金がかかるのだという。したがって、契約締結後の2012年以降にプラトーンMの打ち上げ失敗が増えたからといって、別のロケットに乗り換えるという選択は容易ではなかったようだ。
2015年05月29日©Sundown Marathon常夏のシンガポールならではのナイトマラソン「Sundown Marathon 2015」が2015年7月4日(土)に開催される。その名の通り、太陽が沈んだ後にレースが始まり、毎年多くのランナーが集まる人気マラソン大会の一つだ。 (さらに…)
2015年05月14日多忙なアラフォー女子にとって便利なインターネットショッピングは心強い味方。さまざまなサイトでお買いものを体験し、お得で賢いショッピングライフを楽しんできたはず。そんなアラフォーにもお馴染みのショッピングサイト「楽天市場」では、毎年恒例となった「お買い物マラソン」(2015年5月6日~5月10日)が、創業18周年を記念したスペシャルバージョンで開催中です。全ショップが対象となる今回の「お買い物マラソン 18thアニバーサリースペシャル」では、スペシャルセールに加えて、大型ポイント還元企画も実施。お得なキャンペーン内容をご紹介しましょう。お得な2つのセールが開催!イベント期間中は、タイムセール(合計30回)と1日1商品セールの2種類のセールが開催され、家電からファッションまで、なんと480アイテムの人気商品が、期間限定の特別価格にて販売されています。夏に向けて準備しておきたいビューティーグッズや旬の食材も、お得に購入できるチャンス。未体験の商品をトライしてみるのも、お得な「お買い物マラソン」だからこそできる愉しみ方です。さらにお得!大型ポイント還元も要チェック楽天スーパーポイントも、「お買い物マラソン」期間中の商品購入で、しっかりとためることができます。いつものシャンプー、いつものコスメ、いつもの食材も、この機会にまとめて購入すると、お得感をたっぷりと実感できるかもしれません。■ ショップ買いまわりでポイント10倍通常は購入金額の1%が付与される楽天スーパーポイントの倍率が、購入店舗数に応じて最大10倍までアップ。2店舗で買い物するとポイントが2倍、3店舗なら3倍にアップ!■ 18ショップで買うと、1,800ポイントを全員にプレゼント■ 3ショップ以上で買うと、抽選でポイントプレゼント3ショップ以上で買い物をすると、抽選で最大18,000ポイントをプレゼント。また、マラソン期間中に利用できる100円クーポンも先着1万名様にプレゼントお得で楽しい、18周年のアニバーサリーイベント。まずは「お買い物マラソン」のエントリーから! 今年のスペシャルな「お買い物マラソン」をお見逃しなく。楽天市場「お買い物マラソン 18thアニバーサリースペシャル」詳しくはこちら→ 【期間】2015年5月6日(水) 20:00 ~ 2015年5月10日(日) 23:59※エントリー期間:2015年5月1日(金) 10:00 ~ 2015年5月10日(日) 23:59【内容】1)タイムセールを16枠×30回、最大480アイテムをお値打ち価格で販売する2種類のスペシャルセール2)購入店舗数に応じて楽天スーパーポイントの付与率が最大10倍までアップ18店舗でお買い物すると1,800ポイントプレゼント3店舗でお買い物すると抽選で最大18,000ポイントプレゼント※すべてのポイント還元キャンペーンは事前のエントリーが必要となります。
2015年05月07日楽天は6日から10日にかけ、創業18周年を記念した「お買い物マラソン18thアニバーサリースペシャル」と題したスペシャルセール及び大型ポイント還元企画を開催する。ポイント還元企画は5月1日よりエントリーを開始(エントリー期間:2015年5月1日(金) 10:00 ~ 2015年5月10日(日)23:59)。また期間限定コンテンツとして楽天市場18年の歴史にまつわる「楽天ヒストリーページ」を公開する。スペシャルセールは期間中に30回開催される「タイムセール」と、特定の商品が安く販売される「1日1商品セール」の2種類。「1日1商品セール」では家電・ファッションなど最大480アイテムが期間限定の特別価格で販売されるという。現在セールが判明している商品としては、PC家電では「NECノートパソコンLaVie Direct NS(e)(エクストラホワイト)(Office付き・1年保証・マウス付き)(Windows8.1 Update)」「マイクロSDHCカード 32GB クラス10 microSDHCカード 32GB Class10 最大30MB S」「横開き iphoneカバー 人気 アイホン5sカバー アイホンケース アイフォンケース カード収納」など。インテリア日用品からは「イッタラレンピ4個セット」「イームズDSW パッチワーク」「LEDキャンドルライト3個セット」「卓上やきとりコンロ 屋台横丁」「【viv】 (ヴィヴ) ヴィヴピッチャー 1.1リットル」「鉄道模型ジオラマレイアウト Nゲージ用複線[90cm×60cm]昭和の駅前」などが含まれることが分かっている。大型ポイント還元企画は、楽天スーパーポイントの倍率、購入店舗数に応じて最大10倍までアップするというもの(通常は、購入金額の1%が付与される)。他にも18店舗で商品を購入した全員に1800ポイントが付与されたり、3店舗以上で買い物をすると抽選で最大18000ポイントがプレゼントされるなど「18」に関連したポイント付与キャンペーンも行われる。また期間限定のコンテンツとして、楽天市場の歴史と当時の人気商品を合わせて紹介する「楽天ヒストリーページ」を公開。詳細なアニバーサリースペシャルの実施期間は下記のとおり。<お買い物マラソン18thアニバーサリースペシャル 開催期間>2015年5月6日(水)20:00 ~ 2015年5月10日(日) 23:59(エントリー期間:2015年5月1日(金) 10:00 ~ 2015年5月10日(日)23:59)
2015年05月07日新型基幹ロケットは、現在運用されているH-IIAロケットやH-IIBロケットの後継機として、さまざまな人工衛星や探査機などの打ち上げを担う。初打ち上げは2020年に予定されている。連載の第1回では、新型基幹ロケットがなぜ開発されるのかについて紹介した。第2回では、新型基幹ロケットがH-IIAからどう変わり、どのようなロケットになるのかについて紹介したい。○新型基幹ロケットはH-IIAからどう変わるのか新型基幹ロケットとH-IIAロケットを見比べたとき、最も目立つ違いは背の高さだ。H-IIAの全長は53mだが、新型基幹ロケットでは63mと、実に10mも伸びている。一方、直径もH-IIAの4mから、H-IIBの第1段機体に近い5mへと太くなっている。以前は機体直径は4.5mから5mの間で検討しているとされていたが、最終的に5mで固まったようだ。打ち上げ能力は、固体ロケット・ブースターを装着しない状態で太陽同期軌道に3t、静止トランスファー軌道には2tで、固体ロケット・ブースターを最大の4本まで装着すると、静止トランスファー軌道に6.5tまでの衛星を打ち上げることができるとされる。第1回で触れたように、H-IIAは太陽同期軌道に対しては能力が過剰で、逆に静止トランスファー軌道に対しては不足していたが、新型基幹ロケットではこれが改善されている。また、衛星フェアリングが大きくなっている点も重要な点だ。最近の静止衛星は大型化が進んでおり、他国の新型ロケットも軒並み大型フェアリングを採用しつつある。つまり新型基幹ロケットは、H-IIAよりも多種多様な衛星の打ち上げに対応できるようになっている。次に、ロケットの各部分について見ていきたい。○第1段―新開発のロケット・エンジン新型基幹ロケットの第1段には、新しく開発される「LE-9」というロケット・エンジンが、ミッションに応じて2基、もしくは3基が装着される。第1段エンジンの装着数を変えられるロケットというのはあまり例がない。この仕組みの利点としては、打ち上げたい衛星の質量に合わせて、最も効率の良い構成を選択することができる。しかし、エンジンを取り付ける部分や配管をその都度変えることになるので、設計は複雑になり、また製造や組み立ても手間がかかるようになる。LE-9エンジンは、H-IIAやH-IIBに使われているLE-7Aエンジンとはまったく違う技術が使われる。最も異なるのはロケット・エンジンを動かす方式で、LE-7Aでは二段燃焼サイクルという方式が用いられていたが、LE-9はエキスパンダー・ブリード・サイクルという方式が使われる。液体ロケット・エンジンは、ターボ・ポンプという強力なポンプを使ってタンクから燃焼室に推進剤を送り込み、そこで燃焼させ、発生したガスを噴射して推力を発生させている。多くの液体ロケットは、このターボ・ポンプを駆動させるためのタービンをガスで回しているが、どのような仕組みでこのガスを発生させるのか、またタービンを回した後のガスをどう処理するかで、液体燃料ロケットエンジンは大別される。二段燃燃焼サイクルは、まずプリ・バーナーと呼ばれる小さな燃焼室でガスを作る。そのガスはターボ・ポンプのタービンを回転させ、さらにその後、主燃焼室に送られて燃焼され、推力の発生に使われる。つまりガスを無駄にすることがないため、効率の良いエンジンになる。しかし、その分設計が複雑になり、またエンジンの各部分に高い圧力がかかる、開発や製造、取り扱いが難しい。一方、エキスパンダー・ブリード・サイクルはプリ・バーナーを持たない。主燃焼室やノズルの壁面に推進剤を流して冷却し、その際に発生するガスを使ってタービンを回すのだ。また、タービンの回転に使ったガスはそのまま外部へと捨てられる。これにより、効率では二段燃焼サイクルよりは劣るものの、プリ・バーナーがないためエンジンの構造が簡単になり、構造が簡単ということは造りやすく、信頼性も高いエンジンとなる。エキスパンダー・ブリード・サイクルはすでに、H-IIの第2段エンジン「LE-5A」や、H-IIAやH-IIBの第2段ロケット・エンジン「LE-5B」で使われており、日本にとっては技術も実績もある技術だ。ただ、ロケットの第1段エンジンとして使うためには、エンジンを大型化し、大推力化、つまりパワーをたくさん出せるようにしなければならない。エキスパンダー・ブリード・サイクルの大型・大推力エンジンというのは過去に例がないため、開発が順調に進むかどうかが今後の注目すべき点だ。LE-9の推力は公表されていないが、LE-9の基となった技術実証エンジン「LE-X」の推力は、海面上で1217kN(124tf)、真空中で1448kN(148tf)に設定されているため、これに近い値になると思われる。○固体ロケット・ブースター―SRB-Aを改良第1段の下部の周囲には、固体燃料を使う固体ロケット・ブースターが装着される。ミッションに応じて0から4本を変えられるようになっている。0から4本とはなっているが、ロケットのバランスを考えると、1本や3本はなく、実際は0、2、4本から選択することになる。このブースターについては「改良型」と記載されており、おそらくまったくの新開発ではなく、H-IIAやH-IIBで使われている「SRB-A」を改良したものが使われることになるのだろう。想像図を見る限りでは、H-IIA、H-IIBの外見上の特徴でもあったブレスやスラスト・ストラット(SRB-Aと第1段機体を結合している数本の棒状の部品)がなくなっており、結合方法が見直されている。ブレスやスラスト・ストラットを使う結合方法が用いられた理由は、SRB-Aのモーター・ケースに炭素繊維強化プラスチックが使われていることにあった。炭素繊維強化プラスチックは高い強度と軽さを併せ持つ材料だが、応力集中に弱い。ボルトなどで直接第1段機体と結合してしまうと、その部分に力が集中するため、壊れてしまうのだ。そこでモーターの上部にアルミ合金製のキャップをかぶせ、そこに斜めの支持棒(スラスト・ストラット)取り付けて力を受け止め、ロケット全体を引っ張り上げるようにする方式が採られている。だが、新型基幹ロケットでは「簡素な結合分離機構」を用いることで、ブレスやスラスト・ストラットが不要になったようだ。どのような技術が使われているのか、今後の情報に期待したい。○第2段―LE-5B-2を改良今回公開された概要で、以前までの完成予想図と最も大きく変わっているのがこの第2段だ。従来は第2段に「LE-11」という新開発のロケット・エンジンが使われていることになっていた。LE-11はLE-9と同じエキスパンダー・ブリード・サイクルを採用し、すでに原型エンジン試験の試験も行われていた。だが、今回公開された概要では「改良型2段エンジン1基または2基(検討中)」と記載されていることから、H-IIAやH-IIBで使われている「LE-5B-2」エンジンの改良型であり、新型のLE-11ではないことが示唆されている。実際に、今年3月4日にはJAXAが「新型基幹ロケット上段エンジンの開発」として、LE-5B-2エンジンの改良開発を行う契約を出していることがわかっている。また「1基または2基」というのは、第1段のように打ち上げる衛星に合わせて装着数を変えるということではなく、現時点ではエンジン基数の設定を保留にしている、ということだ。ただ、どちらになるにせよ、影響は限定的であるため、設計の手戻り(やり直し)は回避できるという。これが「LE-5B-2の改良で十分」ということなのか、「LE-11の開発に関して何らかの事情や問題が生じたため」なのか、あるいは「最初はLE-5B-2改良型を使い、開発が完了次第LE-11に切り替える」ということなのかは、今のところ明らかにされていない。(次回は4月25日掲載です)
2015年04月23日宇宙航空研究開発機構(JAXA)は2015年4月10日、「新型基幹ロケット」の開発状況について発表し、ロケットや射場施設に関する概要の最新情報を公開した。新型基幹ロケットは、現在運用されているH-IIAロケットやH-IIBロケットの後継機として、さまざまな人工衛星や探査機などの打ち上げを担う。初打ち上げは2020年に予定されている。今回は新型基幹ロケットの概要や、これまでの経緯、今後の課題などについて、全3回に分けて紹介したい。○新型基幹ロケットとは新型基幹ロケットは、JAXAと三菱重工が中心となって開発が行われている大型のロケットだ。一部のメディアでは「H-III」と呼ばれたりもしているが、公式にはまだ決まっていない。初打ち上げは2020年度に予定されており、いずれは、現在運用されているH-IIAロケットやH-IIBロケットの後継機として、地球観測衛星や情報収集衛星、科学衛星や惑星探査機などの打ち上げを担うことになっている。H-IIAはこれまでに28機が打ち上げられ、そのうち27機が成功し、さらに直近の22機は連続成功を続けている。また、H-IIAを基に開発されたH-IIBは4機中4機すべてが打ち上げに成功しているなど、高い実績を築いており、ロケットとしての信頼性も確立されつつある。であれば、このままH-IIA、H-IIBを使い続ければ良いのではと思われるかもしれないが、そうはいかない事情がある。JAXAや三菱重工では、この新型基幹ロケットの開発目的について、「自律性の確保」と「国際競争力のあるロケットと打ち上げサーヴィスを持つこと」の2点が挙げられている。「自律性の確保」とは、他国に頼ることなく、日本だけの力でロケットを打ち上げる能力を持ち続けるということだ。そのためにはH-IIAやH-IIBを使い続けるだけではなく、ロケットを造る技術を、新しい世代の技術者に継承していかなければならない。H-IIAはゼロから新規に開発されたわけではなく、先代のH-IIを改良したロケットだ。H-IIBもH-IIAの改良型であり、新開発された要素はさらに少ない。H-IIの開発は1980年代から始まっており、当時現役だった技術者たちは、そろそろ現場を離れる時期にきている。技術とは、設計図や部品だけあれば良いというものではなく、人の知識や経験といった要素も欠かせない。それらが継承されないと、いずれ日本から大型の液体燃料ロケットを造る技術が失われてしまうことになる。そこで、H-II開発の経験を持つ人たちが現役である間に新しいロケットを開発し、それを通じて彼らが持つ知識や経験を次の世代に伝えていこうというわけだ。もうひとつの「国際競争力のあるロケットと打ち上げサーヴィスを持つこと」とは、言い換えると「安くて信頼性のあるロケットを造る」ということだ。H-IIAやH-IIBには、打ち上げ価格が高いという欠点がある。三菱重工は打ち上げ価格を公表していないが、H-IIAの標準型で100億円、商業用の静止衛星を打ち上げる際に使われる、固体ロケット・ブースターを4本持つH-IIA 204という構成であれば110億円ほどとされる。しかし他国では、H-IIAとほぼ同じ能力で価格は半額という安価なロケットが登場してきており、国内外の企業から人工衛星の打ち上げを受注する際に不利な状態が続いている。そこで新型基幹ロケットの打ち上げ価格はH-IIAの約半額を目指すとされている。また、H-IIAの打ち上げ能力には、目標の軌道によってやや過剰であったり、また逆に不足していたりという問題がある。H-IIA標準型では太陽同期軌道に4t、最大構成では静止トランスファー軌道に6tの打ち上げ能力を持つ。太陽同期軌道は、地球を南北に回り、なおかつ太陽光の差し込む角度が一定となる軌道で、地球の観測に適しているため、地球観測衛星や偵察衛星がよく打ち上げられている。ただ、日本の地球観測衛星である「だいち2号」や情報収集衛星は約2tほどしかなく、H-IIAの4tという打ち上げ能力はやや過剰である。もうひとつの静止トランスファー軌道というのは、通信衛星などの静止衛星が打ち上げられる静止軌道の、ひとつ手前の軌道のことだ。多くのロケットは静止軌道に衛星を直接投入することができないため、この静止トランスファー軌道に衛星を投入している。静止衛星の質量は、小さいものでは2tほどだが、大きいものであれば7tもある、H-IIAの最強型でも打ち上げられない衛星が出てきている。つまり、H-IIAよりも価格を下げつつ、打ち上げ能力を各軌道に合わせて最適にしたロケットが必要となっているのだ。○これまでの経緯H-IIAの後継機を造るという話は、JAXAが設立された2003年の時点ですでに持ち上がっていた。しかし、その直後の同年11月29日にH-IIA 6号機の打ち上げが失敗し、新型ロケットよりもまずはH-IIAの信頼性を高めることが優先されたこと、またそれと関連し、ロケット・エンジンやブースターの改良に力を注ぐことになったことにより、開発決定は先延ばしにされた。その後もJAXA内で研究が続けられ、2012年度からは概念検討が行われた。2013年6月4日に新型基幹ロケットの開発を行うことが決定された。翌2014年3月25日には、開発を担う企業に三菱重工が選ばれ、2014年4月からロケットの概念設計が開始された。そして2015年2月25日から3月11日にかけて、ロケットや地上設備などの各システムの技術仕様や基本設計以降の開発計画の妥当性について審査する「システム定義審査」が行われ、その結果「基本設計フェイズ」への移行は可能との判断が下された。続いて3月17日から19日にかけて開催された「プロジェクト移行審査」において、「システムの全体仕様が定義ができる段階にあること」が報告され、審議の結果、正式に「プロジェクト」に移行することが決定された。2015年度に入った今現在、新型基幹ロケットのシステム全体としては「基本設計」を行う段階に入っている。また並行して、ロケット・エンジンやブースター、機体構造、電気系統などの、部品や要素単位の試験や、実際にロケットに搭載されるものの設計も2014年度から続けて行われている。さらに、新たに開発されるロケット・エンジンの試験を行うため、試験設備の改修も行われている。(次回は4月23日掲載です)
2015年04月21日米SpaceXは4月14日(現地時間)、国際宇宙ステーション(ISS)に物資を運ぶ補給船「Dragon」を搭載したFalcon9ロケットをフロリダ州ケーブカナベラルより打ち上げた。「Dragon」には約2000kgの物資が積み込まれており、4月17日(現地時間)にISSに到着する予定。一方、注目を集めたロケットの再利用実験は失敗に終わった。ロケットの第1段部分を海上の無人船に着陸させることを目指し、ロケットを船まで誘導することはできたが、着陸の際に横方向の力を受け止めきれず倒れてしまったという。同社は今年1月にも同様の試験を実施しており、その時はロケットが甲板上に激しくぶつかってしまい失敗していた。
2015年04月15日○KSLV-IからKSLV-IIへ2020年に韓国の月周回探査機と月探査ローヴァーを打ち上げることになっているのは「KSLV-II」というロケットだ。しかし、現在KSLV-IIはまだ開発中で、実機は存在していない。KSLV-IIは、韓国航空宇宙研究院(KARI)が2011年から開発を行っているロケットで、名前は「Korea Space Launch Vehicle」(韓国の宇宙ロケット)の頭文字からとられている。KSLV-IIは、2009年から2013年にかけて打ち上げた「KSLV-I」(愛称「羅老号」)の後継機にあたる。また羅老号は第1段にロシア製の機体やロケットエンジンを用いていたが、KSLV-IIはすべて韓国で開発、製造されるという。韓国のロケット開発への取り組みは、1989年10月にKARIが設立されたところから始まる。KARIではまず、KSR-Iと名付けられた固体燃料を用いた小型観測ロケットを開発し、1993年に2機が打ち上げられた。続いて、KSR-Iを2機上下につなげたようなKSR-IIが開発され、1997年と1998年に1機ずつが打ち上げられた。そして1997年、KARIはKSR-IIIの開発に着手した。KSR-IIIはそれまでのI、IIとは違い、液体燃料を使うロケットであった。推進剤に液体酸素とケロシンを使い、ガス押し方式のエンジンサイクルを採用、推力は13トンであった。KSR-IIIの開発は難航し、また性能も低いものであった。結局2002年に1機が打ち上げられたのみで引退している。当初韓国は、このKSR-IIIを発展させ、人工衛星を打ち上げられるようにした「KSLV-I」ロケットを開発するつもりだった。しかし海外から技術を導入するという形に大きく転換され、2004年にロシアのGKNPTsフルーニチェフ社との間で契約が交わされた。その結果KSLV-Iは、同社ロシアが開発、製造する第1段と、韓国が開発、製造する第2段とフェアリングを持つ形状へと変化した。ロシアから提供されることになった第1段機体は、ロシアの最新型ロケットである「アンガラー」の第1段をそのまま流用したものだった。ところが当時、アンガラーはまだ開発段階で、ロケットエンジンの燃焼試験が行われている程度であり、実機は影も形もなかった。実際にアンガラーが初打ち上げを迎えたのは2014年のことであった。当初、KSLV-Iの打ち上げ予定は2007年とされたが、アンガラーの開発が遅れたことで、当然ながらKSLV-Iの打ち上げも遅れることになった。KSLV-Iは羅老号と名付けられ、2009年8月25日に1号機が打ち上げられた。しかし衛星フェアリングの片方が分離できず打ち上げ失敗、2010年6月10日には2号機が打ち上げられたが、今度は第1段ロケットが爆発し、再び打ち上げは失敗した。この2号機の打ち上げ失敗の原因が韓国側とロシア側のどちらにあるかを巡り、両社は揉めることになる。なぜなら、当初の契約ではロシアからのケットの提供は2機まで、ただしロシア側の原因で打ち上げが失敗した場合にのみ、無償で3機目が提供されることになっていたためだ。爆発という突発的に起きる事象に対して、ロケットに搭載されていたセンサーやカメラから分かることは限られており、数少ない手がかりや憶測から、韓国とロシアの両者は責任のなすり付け合いを始めた。例えば韓国側は分離用に使われていたロシア製の爆発ボルトが原因ではないかとし、ロシア側はロケットが飛行経路を外れた際に自壊処理をさせるために搭載されている韓国製の指令破壊装置が原因ではないかと主張していた。2011年になり、ロシアは結局3機目の機体の提供に同意し、2013年1月30日に打ち上げられた。ロケットは順調に飛行し、搭載していた人工衛星STSAT-2Cを軌道に投入、打ち上げは成功した。ロシアから技術を導入することが決定された当時、韓国はKSLV-Iを発展させ、打ち上げ能力を強化したKSLV-IIやIIIを開発することを考えていたようだ。また韓国は、アンガラーの技術を手に入れることを目論んでいたともされる。しかしロシアは、単にロケットの完成品を売り込むことを考えており、組み立てや整備といった作業に韓国側が立ち会うことはできなかったとされる。ロシア側から技術が得られないことが明確になったため、2009年ごろにKSLV-IIを独自開発に切り替える決定が下されている。これが現在開発中のKSLV-IIである。○KSLV-IIKSLV-IIの全長は47.5mで、直径は第1段が3.3m、第2段が2.9m、第3段が2.6mと、徐々に細くなっている。打ち上げ能力は高度700kmの太陽同期軌道に1,500kgほど、また月への打ち上げ能力は550kgほどになるとされる。太陽同期軌道というのは地球の観測に適した軌道のひとつで、多くの地球観測衛星や偵察衛星がこの軌道に打ち上げられており、韓国の「アリラン3号」、「アリアン5号」などもこの軌道に乗っている。アリラン3号は日本のロケットで、アリアン5号もロシアのロケットで打ち上げられているが、両機と同じ1,500kg未満の衛星であれば、KSLV-IIが完成すれば、自力で打ち上げることがができるようになる。総開発費は1兆9,572億ウォンが予定されている。ロケットは3段式で、全段に液体燃料を用いる。第1段には75トン級のロケットエンジンを4基装備し、第2段には第1段と同じ75トン級エンジンを1基のみ装備、そして第3段には7トン級ロケットエンジンを装備する。75トン級エンジンは推進剤に液体酸素とケロシンを使用し、エンジンサイクルはガス発生器サイクルであるという。またノズルの壁面にケロシンを流して冷却し、さらにその後燃焼室に送り込んで燃焼にも使用する、再生冷却方式を採用しているとされる。なお、第2段に装着されるエンジンは、高真空環境に合わせて、ノズルの開口比が第1段用よりも大きくなっている。韓国は羅老号の開発時に、この75トン級と同じ推進剤、同じエンジンサイクルの30トン級エンジンの開発を行っていた。これはウクライナのユージュノエ社からの技術供与があったとされる。この30トン級エンジンは、将来的に羅老号の第2段に搭載し、打ち上げ能力を増したロケットを造ろうという計画があった。もし実現していれば、これがKSLV-IIと呼ばれるロケットになっていただろう。しかし計画は中止され、30トン級エンジンの開発も打ち切られ、この75トン級エンジンへ引き継がれることになった。75トン級エンジンは2009年ごろから開発が始まっており、2017年までの完成を目指すという。現在までに部品単位での試験や、燃焼器のみでの燃焼試験が実施されている。また2015年6月には新しいロケットエンジンを試験設備が完成することから、エンジン全体の燃焼試験も開始される見込みとされる。開発完了は2017年6月に予定されている。一方の第3段用7トン級ロケットエンジンは、推進剤に第1段、第2段と共通の液体酸素とケロシンを使用し、エンジンサイクルはガス押し式を採用している。すでに2014年3月に燃焼器のみでの燃焼試験を実施しており、今年6月にはエンジン全体の燃焼試験を実施するという。(次回は3月12日に掲載予定です)
2015年03月10日「名古屋ウィメンズマラソン 2015」にあわせ、3月6日~8日の3日間、スタートおよびゴールとなるナゴヤドームにおいて、「マラソンEXPO マラソンフェスティバル ナゴヤ・愛知2015」が開催された。会場には、名古屋ウィメンズマラソン 2015のスポンサー企業各社が出展。その1社であるパナソニックは、エアーマッサージャー「レッグリフレ」の体験会を行い、最大30分待ちの列ができる人気ぶりとなった。○レッグリフレとはレッグリフレは、2010年から展開しているリフレシリーズの主力製品の一つ。リフレシリーズは、テレビを見ながら、メイクを落としながら、スマートフォンを操作しながら、など何かと同時並行で行える「ながらマッサージ」を働く女性に提案している。マラソンEXPOに出展されていた「EW-NA84」はレッグリフレの第3世代に当たる。EW-NA84は、足首からふくらはぎをエアーバッグで絞り上げるだけでなく、足裏までエアーバッグでマッサージする「ブーツシェイプ」タイプをレッグリフレで初めて採用した。マッサージコースとして、脚全体をマッサージする4コースと、ふくらはぎメインおよび足メインといった特定の部位を重点的にマッサージする2コースを用意。合計6種類のマッサージコースを選択できるほか、もみの強さは3段階、足先に配置されたヒーターの温度は2段階で調整できる。また、足首からふくらはぎまで絞り上げるコンパクトタイプの「EW-NA34」も揃えている。第3世代のレッグリフレは、2014年9月の発売以来、女性層から高い人気を博した。当初計画の月産5,000台を大きく上回り、計画比の3.6倍となる月産18,000台を生産。その人気は発売から半年を経過した現在まで続いており、2015年1月末に累計出荷が10万台を突破した。購入した人のうち、約7割が女性だ。ちなみに、ローズピンクとシルバーの2色を用意しているが、ローズピンクが売り上げの約7割を占めている。○なぜマラソンEXPOに出展?今回のマラソンEXPOへの出展は、昨今のマラソンブームのなか、ランナーが走った後のケアを重視しはじめていることに着目して決定された。ランニングをはじめとするスポーツ後の脚のケアに、レッグリフレを活用することを提案する狙いがある。パナソニックでは、「ランニングした脚は筋肉に乳酸がたまり、筋肉が中性から酸性へと変化。それが筋肉痛の原因となっている。ランニングした脚をその日のうちにもみほぐして、筋肉の疲れをとることで、走った翌日の筋肉痛を和らげられる。走っているときも楽しい、走った後も楽しい、というランナーを支援するためのツールになる」(担当者)と、レッグリフレの新たな提案に意欲的だ。レッグリフレには「ソフトもみ」というモードが用意されており、脚全体をリズミカルに、やさしくもみほぐすことができるため、スポーツ後に効果的だという。これまでのような日常生活におけるマッサージだけでなく、スポーツ後という新たな用途提案だといえる。マラソンEXPOのパナソニックブースでは、12席が用意され、レッグリフレを1人10分間ずつ試せるようになっていた。運動してきたばかりの人は「ソフトもみ」を弱で、運動していない人は「しぼりあげ」を弱で体験していた。開催初日や2日目には、ナゴヤドームで「名古屋ウィメンズマラソン 2015」参加ランナーの登録が行われていたため、マラソンEXPO会場には数多くの女性ランナーが来場。初日だけで、約400人がパナソニックブースのレッグリフレを体験したという。体験者からは、「下からじっくりともみ上げてくれる感じが気持ちいい」「マラソン本番も軽快に走れそう」といった意見のほか、「レッグリフレの存在は知っていたが、体験する機会がなかった。ぜひ購入してみたい」などの声もあがっていた。同ブースでは、コンパクトタイプのEW-NA34も体験できるようにしていたが、ほとんどの人が足裏までマッサージできるEW-NA84を体験していたという。○発売前の「おうちリフレ」もブース内には、5月1日に発売予定の全身用低周波治療器「おうちリフレ EW-NA65」、移動中にも利用できる低周波治療器「ポケットリフレ EW-NA25」も参考展示し、実際に試用もできるようになっていた。EW-NA65は、従来製品に比べてパッドを2倍に拡大した「密着ワイドパッド」を採用。広範囲のコリを、約41度にまで温まるヒーターとともに、手でもみほぐすようにマッサージする。EW-NA25は全身用でありながらも、W120×D64×H22mm・約83gのコンパクトサイズで、外出先でも使用できる。なお、名古屋ウィメンズマラソン 2015は、19,000人の女性ランナーが参加する女性だけの市民マラソン大会。女性だけのマラソン大会では世界最大規模となる。
2015年03月09日UHA味覚糖は3月9日、同社のキャンディ「ぷっちょ」を燃料とするハイブリッドロケットの打ち上げに成功し、その模様を動画で公開した。「Candy Rocket Project」と名付けられたこのプロジェクトは、UHA味覚糖と秋田大学秋田宇宙開発研究所の和田豊 所長、和歌山大学宇宙教育研究所の秋山演亮 所長、国立天文台チリ観測所の阪本成一 教授が立ち上げたもの。今回打ち上げられたロケットは、「ぷっちょ」約20個が詰まった筒状の燃焼器に酸化剤を入れ、「ぷっちょ」が溶けながら燃えてガス化したものが噴射される力を利用するという仕組みで、3月7日に打ち上げを2回実施し、2回とも成功を収めた。1回目の最高到達点は248mで、2回目は計測不能だった。同社は打ち上げにあたり「Candy Rocket Project」の特設ウェブサイトを開設。同ウェブサイトでは打ち上げの模様を含めた、同プロジェクトの軌跡をまとめた動画のほか、ロケットの仕組みや専門家へのインタビューを見ることができる。
2015年03月09日UHA味覚糖は3月4日、キャンディを燃料として使ったハイブリッドロケットを打ち上げることを目的とした「Candy Rocket Project」を秋田大学、和歌山大学、国立天文台チリ観測所と共同で立ち上げ、3月7日にロケットの打ち上げを実施すると発表した。ハイブリッドロケットとは固体燃料と液体の酸化剤、2種類の推進剤を組み合わせたエンジンシステムを搭載したロケットのこと。一般的なハイブリッドロケットでは、樹脂やゴム、ワックスなどが固体燃料として使用されるが、同プロジェクトでは同社のソフトキャンディ「ぷっちょ」を使用する。その仕組は、「ぷっちょ」が詰まった筒状の燃焼器に酸化剤を入れると、キャンディが溶けながら燃え始め、ガス化したものが勢い良く噴射される力を利用するというもの。1本のロケットでつかう「ぷっちょ」の数は約20個で、ロケットを空高く飛ばすためには「ぷっちょ」を十分に燃やす環境をつくることが重要となる。同ロケットの開発には秋田大学秋田宇宙開発研究所の和田豊 所長、和歌山大学宇宙教育研究所の秋山演亮 所長、国立天文台チリ観測所の阪本成一 教授らが協力した。今回の打ち上げにあたりUHA味覚糖は「Candy Rocket Project」特設ウェブサイトをオープン。ハイブリッドロケットの仕組みや、専門家へのインタビューのほか、打ち上げの模様の映像を随時紹介していく予定となっている。
2015年03月05日2月22日に行われる「東京マラソン2015」の開催に先立ち、BMWジャパンは同大会終了後、大会の先導車を務める「BMWアクティブ ツアラー」にて、自宅までスタッフドライバー付きで試乗して帰ることのできる権利が当たるキャンペーンを実施する。BMWは、2011年から東京マラソンの公式スポンサーを務めており、今回が5年目。「東京マラソン2015」では、先導車や大会車両として同社のBMWアクティブ ツアラーをはじめ、幅広いラインアップの車両を提供するほか、付随して様々なキャンペーンを実施し、ランナーを応援している。「先導車BMWアクティブ ツアラーで帰ろう!!“ご褒美ドライブ”が当たる!」と題して行われる今回の企画。2月19~21日の間、東京・有明にある東京ビッグサイト「東京マラソンEXPO 2015」内のBMWブースでその抽選会が行われる。対象となるのは、東京マラソン2015の参加資格者のあるフルマラソンランナーで、BMWのアンケートに協力した人。その場で抽選し、当選者が決まる。当選は2人で、各当選者は最大大人2名まで同乗させることができる。目的地は1組につき1カ所。会場からおおよそ2時間以内に到着できる場所に限る。また、当選者は、東京マラソン2015の参加後、試乗の前にゴール地点にある「ホテルトラスティ東京ベイサイド」のスイートルームで休憩できる特典までついてくる魅力的なキャンペーンとなっている。さらに、マラソンランナー藤原新氏監修のランナー向けアドバイスマップを、19日から始まる「東京マラソンEXPO 2015」内のBMWブースで配布する。ほか、21日まで参加ランナーへの応援メッセージを募集するキャンペーンも実施中。メッセージは、TwitterまたはFacebookにログインして投稿でき、東京マラソンEXPO会場BMWブースのモニターで紹介されるほか、一部のメッセージは、大会当日にコース区間内にある、新宿・ユニカビジョンと有楽町・外堀通りのマリオンビジョンに表示される。
2015年02月17日