写真提供:タイ国政府観光庁タイでは年間を通して200以上のマラソン大会が開催されるマラソン大国、タイ。世界遺産の中を走ったり、ビーチリゾートを走ったりなど、日本ではなかなか味わえない非日常のコースが楽しめるのも、タイで走る魅力の一つ。2016年開催の大会も続々とエントリー開始!カオヤイ・ハーフマラソン2016年3月6日世界自然遺産にも登録される「カオヤイ国立公園」内のコースを走る大規模な大会。約80か国から集まった45,000人もの参加者が、大自然を駆け抜ける。種目は、ファンラン(5km)、ミニマラソン(10km)、ハーフマラソン(21km)。カオヤイ国立公園は、全体の約85%が樹木に覆われ、野生の像やトラも生息しているというから驚き。少々起伏があるコースだが、雄大な自然と動物たちがパワーをくれそう。大会前日には、ローカルフードが提供され、イベントブースも設置。・大会詳細はこちら>・大会エントリーはこちら>ラグーナ・プーケット国際マラソン2016年6月4日、5日写真提供:タイ国政府観光庁プーケットを代表するビーチリゾート「ラグーナ・ビーチ」を走る、アットホームな大会。2015年大会では約50か国から約6, 000名が参加し、2016年大会は約7, 000名を見込んでいる。昔ながらの街並みとビーチラインの美しい景色が楽しめるコース。フルマラソン、ハーフマラソン、10.5 kmラン、5 kmラン、5 kmウォーク、2 kmキッズランと種目も多いので、自分に合ったコースを無理なく走れるのも魅力。レース前夜に開催されるパスタパーティでは、 スタート/ゴールラインとなるOutrigger Laguna Phuket Beach & Resortのシェフが腕を振るう。・大会詳細はこちら>・大会エントリーはこちら>スコータイマラソン2016年6月26日予定写真提供:日本アセアンセンター世界遺産「スコータイ遺跡公園」内を走るスコータイマラソンは、今年で第6回目を迎える。約4,000人が参加する大会。種目はフルマラソン、ハーフマラソン、クオーターマラソン(10.5km)、キッズラン(5km)。かつてタイの首都として栄えたスコータイに今でも残る、荘厳な遺跡群を駆け抜けるコースは神秘的。・大会詳細はこちらに随時掲載予定>パタヤ国際マラソン2016年7月17日予定写真提供:タイ国政府観光庁今年で25回目を迎える本大会は、日本からの参加者も多数。バンコクから車で約2時間の一大リゾート地「パタヤ」が舞台。アップダウンの多いスクンビット通りを走るコースは、「タイで最も過酷なレース」と言われる所以。コース後半は、ジョムティエンビーチ、パタヤビーチと、疲れも吹き飛ばしてくれそうな美しいビーチラインが広がる。フルマラソン、ハーフマラソン、クオーターマラソン(10km)、キッズラン(3.5km)の4種目。・2015年の大会の様子は>日中は気温が30℃以上まで上がることが多い南国タイでは、まだ気温が低い早朝、もしくは夜明け前にスタートする大会がほとんど。お昼にゴールした後は、ゆっくりとタイ古式マッサージやエステ、グルメなどで疲れを癒すのもいいかも。旅行×マラソンで、一味違った旅を楽しもう!
2016年01月21日丸紅は1月19日、北海道に本社を置くロケット開発会社であるインターステラテクノロジズ(インターステラ)と、ロケット開発に関する研究費用の拠出およびロケットの販売支援に関する業務提携、並びにインターステラの新株予約権付与について合意したと発表した。インターステラは観測ロケットおよびその技術を応用した超小型衛星を地球周回低軌道に投入するロケットの開発を行っているほか、人工衛星や実験用機器の宇宙空間での打ち上げを受託する。1月16日には推力約1トンを有するロケットエンジンの地上燃焼実験に成功しており、今後1月から2月にかけてサブオービタル機体の飛行条件に基づいてより長時間の燃焼を実証する実験を行っていく予定だ。丸紅は「宇宙ビジネスにおいて、これまでの米国の衛星製造会社、衛星機器製造会社の対日販売代理店としての事業に加え、今後はこれまでに培った宇宙ビジネスにおける実績や国内外のネットワークを活かし、宇宙関連産業の発展に一層寄与していきます。」とコメントしている。
2016年01月19日●再挑戦は民間で始まった宇宙に向けて打ち上げられたロケットが、役目を終えた後にまっすぐ地上に帰ってくる。そんなSFでしか見られなかった光景が昨年、米国の宇宙開発企業「ブルー・オリジン」と「スペースX」の手によって、ついに現実のものになった。彼らは飛行機のように飛ばせるロケット、「再使用ロケット」を開発することで、ロケットの打ち上げコストを大きく引き下げることを狙っている。再使用ロケットの構想は古くから存在したが、挫折の連続だった。しかし、近年になり再び熱を帯び始めている。前編では、再使用ロケットの概要の歴史について取り上げた。今回はその現状と将来、そして再使用ロケットによって、本当にロケットの打ち上げコストは下がり、宇宙が身近な場所になるのかについて見ていきたい。○再使用ロケットの再興米航空宇宙局(NASA)や米国防総省、ロシアや英国でさえ一度は諦めた再使用ロケットの復権に向けた動きは、意外なことに民間から始まった。1996年5月、実業家で技術者のピーター・ディアマンディス氏は、個人でも団体でも企業でも、とにかく国のお金を一切使わず3人乗りの宇宙船を造り、高度100kmの宇宙空間に到達することを達成したチームに賞金1000万ドルを与える、「Xプライズ」というコンテストを立ち上げた。そしてこのXプライズではまた、もうひとつの条件として「再使用の宇宙船で、2週間以内に2回の飛行を行うこと」という項目も定められていた。この挑戦には世界中で30近い数のチームが参戦し、最終的に天才的な航空機設計者として知られるバート・ルータン氏が率いる「スケールド・コンポジッツ」が開発した「スペースシップワン」が、2004年9月29日と10月4日にこの条件を達成。賞を勝ち取った。スペースシップワンはサブオービタル機といって、人工衛星を打ち上げることはできず、単に高度100kmを超えて戻ってくることしかできない。それでも再使用ロケットの実現に向けた大きな一歩にはなった。スケールド・コンポジッツをはじめ、このXプライズに参戦したチームのうちのいくつかは現在も活動を続けており、再使用型のサブオービタル機による科学実験や宇宙観光をビジネスにしようとしている。さらに2000年には、Amazon.comの設立者として知られるジェフ・ベゾス氏が「ブルー・オリジン」を、また2002年には電子決済サーヴィスのペイパルを設立したことで知られるイーロン・マスク氏が「スペースX」という宇宙開発企業を立ち上げ、活動を開始した。両社はそれぞれ独自に技術を積み重ね、ブルー・オリジンは2015年11月23日に「ニュー・シェパード」という小型のロケットを打ち上げ、まっすぐ上昇して高度約100kmに達した後、そのまままっすぐ降下し、着陸することに成功。そして同年12月21日にはスペースXが、人工衛星を打ち上げた「ファルコン9」ロケットの第1段機体を、発射台にほど近い陸上に垂直着陸させることに成功する快挙を成し遂げている。ニュー・シェパードのように単に高度100kmまで飛んで帰ってくるだけの飛行と、ファルコン9のように人工衛星を打ち上げるために水平方向の加速が付いた状態のロケットを地上に着陸させるのとでは、技術的に後者のほうが圧倒的に難しい。ブルー・オリジンは技術的にスペースXに抜き返された形となったが、ブルー・オリジンも再使用型の衛星打ち上げロケットの開発を進めており、今後数年のうちに、両社の直接対決が見られることになるだろう。こうした民間発の、再使用ロケットの実現に向けた新たな動きに呼応するかのように、一度は諦めかけた宇宙機関や大企業なども、再び再使用ロケットに挑みつつある。たとえば米国の軍事衛星などを打ち上げる基幹ロケット「アトラスV」や「デルタIV」を運用するユナイテッド・ローンチ・アライアンス(ULA)は、次期基幹ロケットとなる「ヴァルカン」で、第1段ロケット・エンジンのみの再使用を検討している。同社によると、スペースXのファルコン9のように、第1段機体を丸々回収して再使用するのは無駄が多く、最も高価で複雑な第1段エンジンのみを回収するほうが良いという。ヴァルカンは打ち上げ後、エンジン部分のみを分離する。エンジン部分はパラシュートで降下し、それをヘリコプターで引っ掛けて回収する。一見奇抜にも思えるが、米国はかつて、偵察衛星が撮影した写真のフィルムをカプセルに入れて地球に落とし、それをヘリコプターで引っ掛けて回収するということをやっており、前例がないわけではない。またフランス国立宇宙研究センター(CNES)でも、ロケットの第1段エンジンのみを回収する「アデリン」という計画が始まっている。アデリンはヴァルカンのエンジン回収計画とは少し違い、エンジンと電子機器が収められたロケットの下部が無人の飛行機となり、タンクと分離された後単独で飛行し、地上に着陸する。この他、ESAや英国の民間企業、米空軍や米国防総省の国防高等研究計画局(DARPA)、さらにインドや中国でも研究が進んでおり、そして日本でも再使用観測ロケットの開発に向けて準備が進みつつある状況にある。そう遠くないうちに、ファルコン9やブルー・オリジンの再使用型衛星打ち上げロケットを筆頭に、世界中で再使用型のロケットが見られる日が来るかもしれない。●マスク氏はコストを100分の1にすると豪語○再使用ロケットで本当に宇宙は身近になるのかニュー・シェパードやファルコン9の成功で、ロケットが宇宙に行った後、地球に帰って来られるということは証明された。しかしまだ、本当にロケットを再使用することで打ち上げコストを安くできるのかという課題が残っている。スペースXのマスク氏によれば、ファルコン9の再使用化が軌道に乗れば、打ち上げコストは今の100分の1にまで下がるという。現在の使い捨て型のファルコン9は1機あたり6120万ドル(現在のレートで約72億円)であるため、これが約60万ドル(約7100万円)ほどになるということになる。実現すれば、宇宙ははるかに身近となり、これまで宇宙とは関係のなかった企業も宇宙利用を始め、さらに宇宙旅行や、宇宙ステーションや他の星への移住なども実現するかもしれない。実際マスク氏やスペースXは、有人火星探査や、火星への移住を最大の目的として掲げており、彼らにとって再使用ロケットは目的ではなく、その目標に向けた手段に過ぎない。マスク氏が2013年に語ったところによれば、ロケットのコストのうち、推進剤の費用が占める割合はわずか0.2%、また材料費も多く見積もっても2.0%ほどしかないという。つまりロケットのコストのほとんどは、ロケットを建造するための行為――材料を切り出したり、曲げたり、溶接したり、部品を組み立てたりなど――から発生しているということになる。これを無くすことができれば、ロケットのコストはグッと下げられるということになる。もちろん2回目以降の打ち上げでは、ロケットの建造費の代わりに整備費が新たに掛かってくることになるが、それは建造費を上回るほどのものにはならないという。マスク氏はその例として旅客機を挙げているが、同様の理屈で再使用化に挑み、そして敗れた宇宙機がすでに存在する。スペース・シャトルである。シャトルも飛行機のように運用できるロケットを目指して開発されたが、実際は再使用するために必要なコストが膨れ上がり、当初の目標を達成することはできなかった。ただ、シャトルとファルコン9には大きな違いがいくつもある。たとえば、シャトルは地球周回軌道からオービターが帰ってくるが、ファルコン9は高度80~100kmから第1段機体が帰ってくるだけなので、減速などの制御に必要な推進剤の量や、大気との抵抗で受ける加熱はずっと小さい。またスペースシャトルの固体ロケット・ブースターは、大西洋に着水させて船で回収し、洗浄して推進剤を詰めた上で再度打ち上げられていたが、ファルコン9の第1段機体は陸上の発射台の近く、もしくは整備や補給施設、発射台をも兼ねた海上のプラットフォームに降ろすため、輸送や整備はずっと簡単になる。マスク氏は「スペース・シャトルのコンセプトは間違っていなかったが、要求の変化によって機体が複雑になり、効率的な再使用ができなかった。私たちなら、迅速に再打ち上げができる、完全再使用ロケットは開発できると考えている」と語る。だが、本当にマスク氏の目論み通り事が進むかは、専門家の間でもまだ意見は分かれている。たとえば打ち上げコストを100分の1にするのであれば、同じ機体を少なくとも100回以上は再使用しなければならないことになるが、それだけの回数の飛行に耐えられるロケットを造るのは難しいだろう。もっとも、たとえ50分の1でも、10分の1でも、現在のロケットのコストから考えると、破格の安さになる。昨年末のファルコン9の着陸成功は、ひとまず「衛星打ち上げロケットの第1段を着陸させることは可能」であることを証明した。また、その後マスク氏は「着陸後の機体を検査したところ損傷は見つからず、エンジンの再始動も可能な状態である」と明らかにしている(これは「再打ち上げが可能な状態」と言い換えても良いだろう)。次に彼らは、実際に一度打ち上げに使ったロケットが再び打ち上げに使えること、そして、それによりコストが安くなることを証明しなければならない。マスク氏の計画は正しいのか間違っているのか。あるいは正しいものの、ヴァルカンやアデリンのようなエンジンのみの再使用のほうがより効果的なのか。それとも、現代の技術でもまだ再使用ロケットは成立し得ないのか。これら諸々の結論は、今後数年のうちに出ることになるだろう。そして結論が見えてきたころ、日本や世界のロケットはどういう方向に向かうのか。私たちは今、その分かれ道に立っている。【参考】・Background on Tonight’s Launch | SpaceX・Falcon 9 | SpaceX・Spaceflight Now | Falcon Launch Report | SpaceX achieves controlled landing of Falcon 9 first stage・Liveblogging Tech Renaissance Man Elon Musk at D11 - Liz Gannes - D11 - AllThingsD・SpaceX Grasshopper Makes Record Hop : Discovery News
2016年01月15日●「再使用ロケット」構想は古くから存在した宇宙に向けて打ち上げられたロケットが、役目を終えた後にまっすぐ地上に帰ってくる。そんなSFでしか見られなかった光景が、ついに昨年、現実のものになった。米国の宇宙開発企業「ブルー・オリジン」は2015年11月23日に、「ニュー・シェパード」という小型のロケットを打ち上げ、まっすぐ上昇して高度約100kmに達した後、そのまままっすぐ降下し、着陸した。続いて12月21日には、米国の宇宙開発企業「スペースX」が、人工衛星を打ち上げた「ファルコン9」ロケットの第1段機体を、発射台にほど近い陸上に垂直着陸させることに成功した。さらにこうした流れに呼応するように、他の国や企業でもロケットを何度も繰り返し打ち上げようとする動きが始まりつつある。まるで飛行機のように、一度打ち上げたロケットを着陸させ、再び飛ばすことができる「再使用ロケット」のアイディアは、打ち上げコストを大きく引き下げ、宇宙を身近な場所にする手段として、古くから考えられていた。一度は限定的ながら実現したものの挫折し、姿を消したが、近年になり再び熱を帯び始めている。今回は再使用ロケットの歴史と現状および将来について、そして本当にロケットの打ち上げコストは下がり、宇宙が身近な場所になるのかについて見ていきたい。○再使用ロケットとは何か現在、世界中で運用されている人工衛星を打ち上げるためのロケットはすべて、タンクやエンジンなど機体のすべてを海や陸、宇宙空間に捨てる「使い捨て型」という形式をとっている。人工衛星を打ち上げるためには莫大なエネルギーが必要なため、使い終わったタンクやエンジンを次々に捨てて飛んで行かなければ、ロケットとしての設計が成立しづらい、つまり飛べないロケットになってしまうためである。しかし、機体を毎回捨てるということは、ロケットを打ち上げるたびに新しい機体を造らなければならないということになる。その結果、宇宙に行くには膨大なエネルギーと同時に、莫大なお金も必要になるというのが現在の常識となっている。そこで、性能に多少無駄が出ることは承知の上で、宇宙に打ち上げたロケットを何らかの形で地上へ回収し、点検や整備、推進剤の再補給などを行った後に再び飛ばせるロケットが造れれば、宇宙に行くために必要なお金はぐっと安くなるのではないか。そんな飛行機のように何度も飛ばせるロケット、「再使用ロケット」の発想が出てくるのは、ある意味では自然なことだった。再使用ロケットの構想は古くからあり、近未来を描いたSF小説や映画では定番のように出てきた。たとえば『サンダーバード』では、宇宙ステーション「サンダーバード5号」との往復につかうロケットとして「サンダーバード3号」が出てくるし、映画『2001年宇宙の旅』では、パンアメリカン航空が運用しているという設定のスペースプレーン「オライオンIII」が登場し、「美しく青きドナウ」の音楽に乗せて、宇宙を優雅に飛び、宇宙ステーションに到着する様が描かれている。しかし、使い捨てロケットを造るので技術的に精一杯だったこともあり、なかなか実現には至らなかった。1970年代に入ると、高性能なロケット・エンジンを造る技術や、軽くて丈夫な材料ができたこともあり、主に米国とソヴィエト連邦で研究が本格化した。○再使用ロケットへの希望: スペース・シャトルその成果のひとつが、かの有名な「スペース・シャトル」である。シャトルはさまざまな検討が重ねられた後、「オービター」と呼ばれる人が乗る宇宙船部分と、人工衛星が載る貨物区画を兼ねた機体と、そこに装着されたロケット・エンジン、そしてロケット・ブースターを再使用し、唯一オービターのエンジンで使う推進剤を満載した外部タンクだけは使い捨てる、という形式が選ばれた。シャトルが開発された当時は、ロケット・エンジンと、コンピューターなどの精密な電子機器が特に高価だったため、これらを使いまわすことができれば、飛行機ほどではないにしても、運用コストを安くできるのではと見積もられたのだった。ところが大きな誤算があった。ひとつは、エンジンを再使用するというアイディア自体は間違いではなかったものの、エンジンを再使用するために必要な点検や整備に莫大なコストがかかってしまったこと。もうひとつは、電子機器が徐々に安くなり、再使用する意味が薄れていったことだった。また、そもそもシャトルは人が乗らないと飛ばせないため、人がいらない人工衛星の打ち上げであっても、わざわざ人を乗せる必要があった。当初は機体を再使用することによって、その短所が霞んでしまうほどの低コスト化と多くの打ち上げ需要が待っていると期待されていたが、結局は「無人の衛星は、素直に無人のロケットで打ち上げたほうが安い」という結果になってしまった。もちろんシャトルがなければ、巨大な「国際宇宙ステーション」の建造はできなかっただろうし、「ハッブル宇宙望遠鏡」の修理もできなかっただろう。しかし、それはシャトルのもつ強大な打ち上げ能力があればこその話であり、再使用そのものとはあまり関係がない。当初ほどの低コストが達成できなかった以上、再使用ロケットとしてのスペース・シャトルは失敗であった。ただ、スペース・シャトルの存在は、さらに次の段階の再使用ロケットへの挑戦の発端となった。●『2001年宇宙の旅』はほど遠く…○再使用ロケットの蹉跌: DC-XとX-331983年、米国のロナルド・レイガン大統領は、ソヴィエトからの核攻撃に対して、人工衛星からミサイルやレーザーを発射して核ミサイルを迎撃するなどといった大胆な計画を盛り込んだ「戦略防衛構想」(SDI)を発表した。SDIを実現するには、衛星軌道にミサイル迎撃衛星を安価かつ大量に、そして必要とあらば早急に打ち上げられるロケットが必要であり、そのためには機体を繰り返し再使用できるロケットが必要とされた。スペース・シャトルの存在は、そんなロケットが実現できそうだという期待を抱かせるのに十分だった。そこで国防総省は米国内の企業に開発を呼びかけ、1991年8月、それに応えた数社の中からマクドネル・ダグラスの案「デルタ・クリッパー」が採用され、開発が始まった。同社はまずデルタ・クリッパーの3分の1ほどの大きさの試験機「DC-X」を開発。1993年8月18日、米国ニュー・メキシコ州にあるホワイトサンズ・ミサイル実験場で打ち上げが行われ、垂直に上昇した後、空中で横に移動を始め、その後徐々に降下し、やがて地上に舞い戻った。到達高度はわずか50m、飛行時間もわずかに59秒間という短いものであったが、そのロケットは宇宙輸送の革命に向けた確かな第一歩を記したのである。その後も開発や試験が繰り返され、また国防総省が興味を失ってからは米航空宇宙局(NASA)に移管されて開発が続けられた。1996年には、26時間の間隔を置いて2回の飛行を実施し、その2回目の飛行では高度3140mにまで到達している。しかし、7月31日の飛行試験において着陸に失敗し、機体は爆発。このとき計画は資金不足に陥っており、機体を修復することもできず、計画は終わりを迎えた。またNASAでは、デルタ・クリッパーとは別に、1996年からスペース・シャトルの後継機となる「ヴェンチャースター」の開発を始めていた。ヴェンチャースターは高い性能を出せる新型ロケット・エンジンと、複合材料を使った軽くて丈夫な推進剤タンクなど、数多くの新技術が投入される計画だった。開発を担ったのはロッキード・マーティンの、先進的な試作機などを得意とする部門「スカンク・ワークス」で、まずヴェンチャースターを小さくした試験機「X-33」の開発から始めた。しかし複合材料の推進剤タンクの開発に難航するなど、技術的な問題と予算超過が原因で、2001年3月に開発は中止となっている。この他、米国の「NASP」や英国の「HOTOL」といった、ジェット・エンジンとロケット・エンジンを切り替えられるエンジンをもつスペースプレーンや、垂直に打ち上げられ、帰還時には内蔵したローターを広げてヘリコプターのように着陸する「ロトン」など、さまざまな再使用ロケットの研究、開発が行われたが、どれも実現しないまま終わりを迎えた。映画『2001年宇宙の旅』では、オライオンIIIに乗ったフロイド博士が、宇宙ステーションを経由して月に行き、さらにボーマン博士らとHAL9000が乗った探査船「ディスカヴァリー」は木星へと向かう。しかし現実の2001年の世界では、ディスカヴァリーはおろか、劇中では序盤の脇役に過ぎないオライオンIIIですら造れないでいた。このころに開発された新しいロケットは、その多くが再使用を考えず、大量生産することで低いコストと高い信頼性を確保することを狙ったロケットばかりだった。もちろんパンアメリカン航空のスペースプレーンなど影も形もなかった。さらに付け加えるなら、当時世界で最も安く、さらに信頼性も高いロケットは、ロシアが半世紀前に開発した「R-7」、いわゆるサユース・ロケットだったのである。【参考】・DC-X - Home・Mystery - NASP X-30・HOTOL・Roton・松浦晋也. スペースシャトルの落日~失われた24年間の真実~. エクスナレッジ, 2005, 239p.
2016年01月15日米国の宇宙開発企業「スペースX」は1月18日(日本時間)に、地球観測衛星「ジェイソン3」を搭載した「ファルコン9」ロケットの打ち上げを、カリフォーニア州にあるヴァンデンバーグ空軍基地から実施する。昨年末のファルコン9の打ち上げでは、ロケットの第1段機体を発射台にほど近い陸地に垂直着陸させることに成功したが、今回の打ち上げでは飛行経路の下の太平洋上に浮かべた船への着地に挑む。打ち上げ日時は日本時間1月18日3時42分18秒(太平洋標準時1月17日10時42分18秒)に予定されている。すでに12日には、打ち上げ前の最終確認として行われる静的燃焼試験も終えており、打ち上げに向けた準備は順調に進んでいる。ジェイソン3は米航空宇宙局(NASA)や米海洋大気庁(NOAA)、フランス国立宇宙研究センター(CNES)、欧州気象衛星機構(EUMETSAT)が共同で開発した衛星で、搭載しているレーダー高度計やマイクロ波放射計を使い、海面高度や波の高さ、大気中に含まれる水蒸気量などを観測することを目的としている。設計寿命は3年が予定されている。米国とフランスの共同による衛星を使った海洋観測は、1992年に打ち上げられた「TOPEXポサイドン」に始まり、2001年の「ジェイソン1」、2008年の「ジェイソン2」と続いている。ジェイソン3はジェイソン2の後継機となる。なお、ジェイソン2の設計寿命も3年だが、約8年経った現在も動き続けており、2017年まで運用が続けられる見通しとなっている。○今回はロケットを船で回収、陸への着陸との違いはスペースXはロケットの打ち上げコストを大幅に引き下げることを目指し、数年前からロケットを再使用する研究や試験を続けている。そして昨年12月21日に、同社は打ち上げに使ったファルコン9ロケットの第1段機体を、発射台の近くの地上に、垂直に着陸することに成功した。同社によると、着陸後の機体には目立った損傷は見られず、再びエンジンに点火することも可能だという。そして今回の打ち上げでは、打ち上げ場所であるヴァンデンバーグ空軍基地から南に約300kmの太平洋上に浮かべた、大きな甲板をもつ船の上に降ろすことを計画している。ロケットを発射台の近くまで戻す場合、機体を上空で反転させ、さらにそれまで飛んできた飛行経路を戻るようにして飛ばさなければならない。発射台近くの陸上まで戻すことで、その後の機体の点検や整備がやりやすいという利点はあるものの、ロケットに必要な推進剤量が多くなるため、打ち上げ能力が下がってしまう、あるいは打ち上げる衛星の質量や目標軌道などの関係でミッションによっては回収する余裕がなくなる、という欠点もある。そこで同社では、陸上回収と並行して、分離後のロケットが落下する先の海上に船を用意し、その上にロケットを降ろす構想も進めている。船で回収したあとは、そのまま船で陸にある基地まで戻すか、あるいは船の上で、ロケットの点検、整備を行い、衛星を搭載して再打ち上げを行うという計画だ。これにより、陸まで戻る分の推進剤が不要になるため、ロケットの打ち上げ能力をそれほど落とすことなく運用ができ、また回収できるミッションの幅が広がることになる。しかし、船の上に降ろす場合、波や海流の影響で船が安定していないことや、海上は風も強いこともあり、陸上に降ろすよりロケットの制御が難しい。同社はすでに、無人で海上の指定した場所にとどまり続けることができるドローン船(Autonomous Spaceport Drone Ship)の「指示をよく読め」号と、「もちろんいまもきみを愛している」号を建造し、2015年の1月と4月の打ち上げで回収試験も行っているが、2回とも船の上までたどり着くことはできたものの、甲板に接地した後に倒れて破壊されるなどし、完全な成功には至っていない。船での回収試験は今回で3度目となるが、前回の打ち上げで陸上への着陸に成功していることもあり、今回の成功への期待が高まっている。参考・"Full-duration static fire complete at our California pad. Preliminary data looks good in advance of Jason-3 launch. "・"Aiming to launch this weekend and (hopefully) land on our droneship. Ship landings needed for high velocity missions "・Offshore barge landing targeted after next Falcon 9 launch | Spaceflight Now・SpaceX To Land at Sea after Launching Jason-3 - SpaceNews.com・OET Special Temporary Authority Report
2016年01月13日米国の宇宙開発企業「スペースX」は12月21日(現地時間)、人工衛星を打ち上げた「ファルコン9」ロケットの第1段機体を、打ち上げ場所のすぐ近くに、垂直に着陸させる試験に成功した。これまでSFの中では何度も描かれてきた光景が、歴史上初めて、現実のものになった。本稿では、この成功の意義と、これまでの挑戦の歴史、そしてスペースXの狙いとは何かについて解説する。○人工衛星を打ち上げたロケットが帰ってきた人工衛星を打ち上げたロケットが地上に帰ってくる―それは長い間、夢物語だった。多くのロケットは打ち上げごとに使い捨てているが、ロケットが地上に帰ってくることができれば、整備し、推進剤を補給すれば再度飛ばすことができる。そんな飛行機のように運用できるロケットが実現できれば、宇宙飛行にかかるコストが大幅に削減できると言われていた。だが、技術的な困難さから、世界中の宇宙機関が半ば諦めた構想でもあった。しかしスペースXは「打ち上げコストを従来の100分の1にする」という目標を掲げ、その困難に果敢に挑み、そして実験と試験を着実に進め、わずか4年ほどで着陸まで成し遂げた。スペースXは、ロケットの回収と再使用を行うという構想を2011年に明らかにした。そんなことが本当にできるのかと、当時は多くの人が訝しんだものだった。だが、そんな大方の見方をよそに、同社は動き始めたのだった。○着実に進められた試験まず同社は2012年に、ファルコン9の初期型の機体を流用した「グラスホッパー」いう実験機を開発し、地上から垂直に上昇し、上空で横移動したりしつつ、地上に垂直に降り立つという飛行試験を繰り返し行った。2014年からはファルコン9のv1.1と呼ばれる改良型の機体を流用した「F9R-Dev」を開発、グラスホッパーの跡をついで試験を繰り返した。さらにそれと並行し、2013年9月29日から、衛星を打ち上げたあとの第1段機体を太平洋上に着水させる試験が始まった。この最初の試験では、着陸のためのエンジンの再点火には成功したが、その後スピン状態に陥りエンジンが停止し、着水は果たせなかった。2014年4月18日と7月14日にも大西洋上への着水試験に挑戦、さらに着陸脚も装着された。エンジンの再点火と制御、そして着陸脚の展開にも成功したが、海が荒れていたことから、着水後に機体は破壊された。9月21日にはロケットの問題で着陸脚は装備されなかったが、エンジンの再点火、着水などには成功しており、またNASAの協力で再突入時の機体の挙動や温度変化などが観察された。その後同社は、ファルコン9の第1段機体が着陸するための広い甲板をもつ無人の船を開発した。甲板はサッカー場とほぼ同じ広さがあり、推進器とGPSを使用した位置制御システムにより、嵐の中でも安定して自分の位置を保ち続けることができる。そして2015年1月10日、国際宇宙ステーションに物資を運ぶ「ドラゴン」補給船運用5号機の打ち上げで、この船への着陸が試みられた。第1段の分離後、ロケットエンジンに再点火し、高度約80kmから大西洋上に浮かぶ船を目指して下降した。そして第1段機体は甲板上にはたどり着いたが、激突し、着陸そのものは失敗に終わった。同年2月11日にも船への着陸が試みられたが、このときは天候が悪く断念され、着水に切り替えられた。そして4月14日に実施された試験では、ふたたび甲板上にはたどり着いたものの、着陸直後に機体が倒れて爆発、失敗に終わった。続く6月28日には3度目となる船への着陸試験に挑む予定だったが、ロケットが打ち上げに失敗したため、実施できなかった。○2015年12月21日このあと同社は約半年間をかけ、失敗した箇所の改修を行うと同時に、ロケットの性能向上と、そしてより確実に、安定した着陸を実現するための改良を行った。この新たなファルコン9の、着陸技術に関する改良点がどのようなものであるかは、今のところ具体的には明らかにされていない。公開されている写真を見る限り、姿勢を制御するための窒素ガスの噴射装置の形と取り付け位置が変わっており、空力フィンも多少形が変わっている。また着陸脚も改良されたといわれている。さらにロケット機体の改良と並行し、ロケットを船の上ではなく、陸上に降ろすための準備も進められた。同社は今年2月、ファルコン9が打ち上げられるケイプ・カナヴェラル空軍ステーションの第40発射台から10kmほど南に位置する、第13発射台の土地を米空軍から借り受けている。ここはかつて、アトラス・ロケット発射場として使われていた場所であるが、スペースXは「第1着陸場」と新たに名付け、改装した上でロケットの着陸場所として使うことになった。実際に着陸ができるかどうかは米連邦航空局(FAA)の審査結果待ちだったが、12月に無事に許可が下り、そして12月21日を迎えた。6月の失敗以来初にして、さまざまな改良を施されたファルコン9は、日本時間12月22日10時29分(米東部標準時12月21日20時29分)、米国のフロリダ州にあるケイプ・カナヴェラル空軍ステーションの第40発射台から離昇した。ロケットは順調に飛行し、約15分後から、搭載していた11機の衛星を順次分離し、すべてを所定の軌道に投入した。その一方で、離昇から2分24秒後に分離された第1段機体は、まず機体を反転させ、逆噴射をかけた。そして今来た航路を戻るように飛び始め、約5分後に大気圏に再突入。ここでもエンジンを噴射して速度の上昇を抑制する。そして突入後は空力フィンと窒素ガスの噴射を使って機体の姿勢を制御しつつ地表に近付いていき、さらにエンジンを噴射しながら、第1着陸場に舞い戻った。着陸に成功した瞬間、スペースXの管制室は喜びに沸き、宇宙開発のフォーラム・サイトやSNSも賞賛の声で埋め尽くされた。かくして歴史は作られたのであった。○その歴史的意義飛行機のように運用できるロケットを造るという挑戦に挑んだのは、もちろんファルコン9が初めてではない。その夢物語の実現を目指し、これまでに多くの青写真や実験機が生み出されている。たとえば1990年代には米国防総省やNASAが「DC-X」という実験機で垂直離着陸飛行を実施しており、また今年11月にはスペースXのライヴァルでもあるブルー・オリジンが「ニュー・シェパード」も実施している。日本も「RVT」という実験機を開発した。ただ、DC-Xの最大到達高度は約3000m、RVTも約40mと、宇宙には到底満たない高度までしか到達していない。ニュー・シェパードは高度こそ100kmの、一般的に宇宙空間と呼ばれる高さにまでは達したが、ニュー・シェパードは人工衛星を打ち上げるためのロケットではないため、単純に真上に向かって上昇し、そのまま真下に向かって降下しただけである。一方、ファルコン9は人工衛星を打ち上げるためのロケットなので、打ち上げ後に徐々に機体を傾け、水平方向への速度を稼ぐ。そこからロケットを地上に着陸させるためには、高度の制御だけではなく、水平方向の速度を打ち消し、場合によっては飛んできた航路を戻るように飛行する動作も必要になる。ファルコン9の飛行経路はさまざまなので決まった条件ではないが、第1段の分離時点でおおよそ高度は80から100km、水平方向には時速約6000kmも出ている。ここから機体を制御し、エンジンを噴射して速度を落とし、さらに地上の狙った地点に着陸させるのは至難の業である。さらに、人工衛星を打ち上げるためのロケットは、とにかく軽く造らなくてはならない。しかし一方で、ロケットを着陸させるためには着陸脚や姿勢制御装置、追加の推進剤などが必要になる。ニュー・シェパードのようなロケットであれば、頑丈な着陸脚を装備したり、推進剤を十二分の余裕をもって積んだりすることもできるが、ファルコン9の場合はそうすると衛星を打ち上げられなくなるため、できる限り軽く、それでいて着陸できる程度には十分という、ぎりぎりの線を狙った設計をしなければならない。これらの点で、ファルコン9の成功は空前の偉業と言える。○再使用による低コスト化は実現できるのか今回のファルコン9の着陸成功が、歴史に残る大成果であることは疑いようもない。しかし、そもそもロケットの再使用が本当にコスト削減につながるのかはまだ未知数であり、その意味では今回の成功でようやくスタートラインに立てたに過ぎない。たとえば、今回着陸に成功した機体は外見からは無傷なように見えるが、本当に無傷なのか、また再打ち上げに耐えられるかどうかは検証しなければわからない。そして再打ち上げのための整備も含めた打ち上げコストは、ロケットを大量生産するよりも安価なるのかどうかも、今後実証を重ねなければわからない。ファルコン9とは技術的に大きく異なるものの、かつてスペース・シャトルは、再使用にかかるコストが莫大なものになり、当初の「再使用による低コスト化」という目標は達成できなかった。ファルコン9が同じ轍を踏まないという保証は今のところない。ただ、スペースXは楽観的な将来を描いている。たとえば、打ち上げ後に陸上まで戻ってくるのは再打ち上げまでの輸送や整備の面で利点は多いものの、ロケットにとっては大きな負担になるため、より近い海上の船に降ろす試験も継続するとしている。さらに、2016年中には打ち上げに使ったロケットをもう一度打ち上げたいとも語られている。また、ロケットの再使用に挑戦しようとしているのはスペースXだけではない。ブルー・オリジンもニュー・シェパードより大型の、人工衛星を打ち上げられるロケットで再使用をやろうとしている。また米国の基幹ロケットを運用するユナイテッド・ローンチ・アライアンス(ULA)や欧州では、第1段エンジンのみの回収・再使用を行うことを計画している。今後は、陸上や船上への着陸が頻繁に行われ、一度打ち上げに使われたロケットが再び飛び立つ光景が当たり前になるかもしれない。その中で、再使用ロケットによる低コスト化という概念が、本当に成立するのかどうかも自ずと見えてくることになるだろう。○三兎を追い、三兎を得たしかし、着陸に成功したこと以上に、スペースXにとって最大の収穫は、「三兎を追い、三兎を得た」ことだろう。今回の打ち上げは、今年6月の失敗以来初となるものであった。従来の宇宙開発の常識から考えると、再開1号機の打ち上げでは、前回の問題が再発せずに打ち上げが成功するかどうかに主眼が置かれるはずで、着陸試験をやろうという発想は出てこないだろう。おまけに、今回打ち上げられたファルコン9は、エンジンから機体の構造、推進剤に至るまで、全体的に大きな改良が加えられた実質の新型機でもあった。打ち上げ失敗からの再開1号機で、新型機を使い、さらに着陸もやるというのは、従来の常識からは大きくかけ離れている。それでも、スペースXはその三兎を追いかけ、そして三兎すべてを得ることに成功した。これは同社だけではなく、発射場を提供している米空軍、安全審査を行うFAA、さらにロケットにとってのお客であったオーブコム社も同意した上で行われたものであり、彼らが全員この挑戦を支持し、支援した結果、初めて実現した。すでに米国の宇宙開発の世界では、それが可能な体制ができあがっている。たとえ再使用ロケットの概念が夢物語に終わったとしても、この風土は、ライバルである欧州やロシア、日本などのロケットにとっては脅威であり、しかし人類の宇宙進出にとっては大きな希望になるだろう。【参考】・spacex_orbcomm_press_kit_final2.pdf・Background on Tonight’s Launch | SpaceX・SpaceX | Webcast・Live coverage: Falcon 9 rocket launches, and lands, at Cape Canaveral | Spaceflight Now・SpaceX Makes History with Successful Booster Return to Onshore Landing | Spaceflight101
2015年12月24日米国のスペースXは12月21日(現地時間)、通信衛星「OG2」11機を搭載した「ファルコン9」ロケットの打ち上げに成功した。ファルコン9の打ち上げは、今年6月の失敗以来初となった。また、ロケットの第1段機体の地上への着陸にも成功し、世界初の快挙を成し遂げた。同ロケットは日本時間12月22日10時29分(米東部標準時12月21日20時29分)、米国のフロリダ州にあるケイプ・カナヴェラル空軍ステーションの第40発射台から離昇した。ロケットは順調に飛行し、約15分後から11機のOG2を順次分離し、すべてを所定の軌道に投入した。OG2は米国のオーブコムが運用する衛星で、シエラ・ネヴァダによって製造された。オーブコムは地球低軌道を多くの衛星を展開し、山や海などの通信インフラが整っていない場所などを対象にした通信サービスを展開している。OG2はその次世代機となる。各衛星の質量は172kg、設計寿命は5年強が予定されている。スペースXは米国カリフォーニア州に本拠地を置く会社で、2002年に立ち上げられた。これまでとは大きく異なる手法で、安価で高性能なロケットや宇宙船を開発し続けており、宇宙開発の革命児として知られている。○ロケットの第1段機体の着陸にも成功今回ファルコン9は、衛星の打ち上げ成功だけではなく、ロケットの第1段機体の地上への着陸にも成功した。スペースXはロケットの運用コストを下げるため、機体を何度も繰り返し再使用することを目指している。これまで実験機を使った垂直離着陸飛行の実験や、打ち上げ後の第1段機体を海上や船の上に降ろす試験を行っていたが、地上への着陸は今回が初だった。これまで、高度数百mから数kmまで上昇したロケットが着陸したことは何度もあり、また今年11月23日には、米国のブルー・オリジンが開発した「ニュー・シェパード」ロケットが、高度100kmまで到達した後に、地上への着陸に成功している。しかし、人工衛星を打ち上げたロケットの第1段機体が、地上への着陸に成功したのは、今回が世界初のこととなった。着陸には成功したものの、機体が再使用できる状態にあるかどうかは検査を行う必要がある。同社では今後1年以内に、一度打ち上げに使ったロケットを再度打ち上げたいとしている。○6月の失敗以来の打ち上げ、ロケットは大幅に改良ファルコン9の打ち上げは、今年6月28日の打ち上げ失敗以来初となった。この打ち上げでは国際宇宙ステーションに物資を補給する「ドラゴン」補給船運用7号機が失われた。その後の調査で、ロケットの第2段タンク内にある、ヘリウム・タンクを固定する支柱が破損したことが原因である可能性が高いとされている。この事故を受けて、同社ではこの支柱の使用を止め、またハードウェアの品質検査をより強化する対策がとられた。また今回の打ち上げでは、機体やエンジンなどを大幅に改良した、新型のファルコン9が使われた。この改良は6月の事故前から行われていたもので、従来型と比べ、打ち上げ能力が約30%も向上している。改良点はロケット全体に及んでおり、ロケット・エンジンの性能向上、第1段機体の構造の改良、第1段と第2段をつなぐ段間部の構造と分離機構の改良、第2段機体の延長とそれに伴う推進剤の搭載量の増加、さらに推進剤をこれまで以上に冷却して高密度化し、より多く充填できるようにするなど、多岐にわたっている。ファルコン9は今回を含めて20機目の打ち上げとなり、前号機の失敗以外はすべて成功している。【参考】・spacex_orbcomm_press_kit_final2.pdf・SpaceX(@SpaceX) | Twitter・Elon Musk(@elonmusk) | Twitter・Live coverage: Falcon 9 rocket launches, and lands, at Cape Canaveral | Spaceflight Now・SpaceX | Webcast
2015年12月22日ハーブティーブランド・Have a Herbal Harvestの冬のエキシビションが、12月18日から23日まで原宿のギャラリー・ロケット(ROCKET)にて開催される。Have a Herbal Harvestは、フラワーアートユニットのプランティカ(plantica)とロケットのケータリングサービス・ケータリング ロケット(CATERING ROCKET)によるハーブティーブランド。植物の枝ぶりや鮮やかさを保ったままドライ加工した、観葉植物を飾るようにインテリアとしても楽しむことが出来るハーブティーを提供している。15年には「自然を味わうハーブティー」として食品パッケージが話題を呼び、GOOD DESIGN賞も受賞した。今回の展示会では、クリスマスギフトにも最適なハーブティーのセット(5,400円)などを販売する。また、12月23日の15時から17時まで、18時から20時までは、購入者特典としてチョークアートで知られるアーティスト・CHALKBOYが、ハーブティーのパッケージにオリジナルメッセージを手描きしてくれるサービスも実施。12月19日、20日、23日の15時から、18時からは、ケータリング ロケットの伊藤維のアドバイスを聞きながら、自分の好きな配置で飾れるハーブティーを作るワークショップ(3,000円※ドリンクとハーブのお菓子付き)も開催される予定だ。【イベント情報】Have a Herbal Harvestの冬のエキシビション会場:ロケット住所:東京都渋谷区神宮前6-9-6会期:12月18日~23日時間:12:00~20:00会期中無休
2015年12月19日阿部寛が主演を務めるドラマ「下町ロケット」最終回の撮影現場に、原作者の池井戸潤が訪問。出演者を激励した。佃航平(阿部さん)は、宇宙科学開発機構の研究員だったが、自分が開発したエンジンを載せたロケットの打ち上げ失敗の責任を取らされ退職。父親が遺した「佃製作所」を継いで社長として第二の人生をスタートさせ夢に向かって突き進む――。「人々の希望を繋ぐ爽快な作品」と評され第145回直木賞を受賞した池井戸氏の同名小説を映画化した本作。朝日新聞にて連載された「下町ロケット2」とほぼ同時進行にドラマが放送され、原作本はシリーズ累計で200万部を超える大ベストセラーを記録。今週放送の最終回に向けて、さらなる注目を集めている。このほど池井戸氏が訪問したのは、帝国重工・財前が執務をする部屋のシーンを撮影中のつくば市の撮影現場。阿部さんをはじめ、吉川晃司、安田顕、高島彩らキャスト陣は、終始和やかに池井戸氏との会話を楽しんだそう。「半沢直樹」でも監督を務めた福澤克雄監督の現場にも足を運んだという池井戸氏は、今回の報恩を経て「久し振りに福澤組の現場を拝見しましたが、相変わらず熱があり、緊張感のある現場でした。こういうところで役者さんの力が引き出され、そしてそこにリアリティーがあるから、働いている人たち・ものづくりに 携わっている人たちの心に響く熱いドラマができあがったのだと思います」と絶賛。さらに、「夏に書き始めた本が、こんなに早く映像化されること、その事自体が奇跡だと思います。佃製作所という小さな会社が、ロケットエンジンのバルブシステムをつくり上げるというストーリーも奇跡ですが、ドラマを作っているこのチーム自体もある種の奇跡の中にいる、という二重構造になっていると思います。このようなミラクルはもう二度とないのではないでしょうか」と、感慨深く語った。いよいよ目前に迫った最終回は25分拡大での放送。どのような結末が訪れるのか、放送を楽しみに待ちたい。「下町ロケット」最終回は、12月20日(日)21時よりTBSにて放送。(text:cinemacafe.net)
2015年12月17日主演に阿部寛を迎え、「半沢直樹」シリーズなどヒット作を連発する池井戸潤の小説を原作とするTBS日曜劇場「下町ロケット」。いよいよ20日(日)に最終回を迎える本作だが、今回その最終回が25分拡大スペシャルとして放送されることが決定。さらに本放送に先駆けて「超緊急特別ドラマ企画下町ロケット~最終章」を放送することも明らかとなった。主人公の佃航平(阿部さん)は、宇宙科学開発機構の研究員だったが、自分が開発したエンジンを載せたロケットの打ち上げ失敗の責任を取らされ退職。父親が遺した「佃製作所」を継いで社長として第二の人生をスタートさせ、夢に向かって突き進む。すべての働く人たちにお送りする、感動のエンターテインメント巨編だ。今回放送の最終回には、神谷弁護士役の恵俊彰をはじめ、原作では描かれていなかった中川弁護士役の池畑慎之介や帝国重工・藤間社長役の杉良太郎も再び登場し、超豪華キャストで放送される。そして、19時からの「超緊急特別ドラマ企画」では、1話から9話までの感動シーンを再編集して放送。「ロケット編」で佃製作所の危機を救った神谷弁護士が再登場するなど、新撮映像も含めて盛りだくさんでお届けするという異例の試みを行うようだ。緊急の決定となったため収録は今週行われる予定で、新撮ドラマにはレギュラーキャストに加え白水銀行の柳井役として話題をさらった春風亭昇太や、まさかの再登場となった池畑慎之介も出演が決定している。また本編では明かされなかった、殿村(立川談春)が白水銀行へ辞表を提出する場面や、水原本部長(木下ほうか)が帝国重工で暗躍する様子も描かれ、佃利菜(土屋太鳳)の彼氏とうわさされる「マサヒコくん」も登場?との情報も。ついにクライマックスを迎える本作。最終回は25分の拡大に加え、いつもより2時間早くドラマの世界を楽しめる1日となりそうだ。「超緊急特別ドラマ企画下町ロケット~最終章」は12月20日(日)19時より放送。「下町ロケット」は毎週日曜日21時~放送。(最終回25分拡大)(cinemacafe.net)
2015年12月14日ミュージカル界のプリンスとして不動の地位を誇り、来週最終回を迎えるTBS系「下町ロケット」のキーマン・真野賢作役でもおなじみの山崎育三郎が、世界を舞台に活躍を続ける宮本亜門による演出でアカデミー受賞作『プリシラ』(’94)のミュージカル版に主演。ドラァグクイーン役として、ド派手な女装に身を包むことになった。主演に山崎さん、演出に宮本さんという夢のタッグが実現し、日本に初上陸するミュージカル「プリシラ」。原作は、3人のドラァグクイーンたちのドタバタ珍道中を描いたオーストラリア映画。『マトリックス』『ホビット』シリーズのヒューゴ・ウィーヴィング、『スター・ウォーズエピソード1/ファントム・メナス』にも出演する英国の名優テレンス・スタンプ、『アイアンマン3』のガイ・ピアースという個性派俳優たちが三者三様のドラァグクィーンを好演し、世界中で大絶賛を浴びた。少ない予算で製作されたにもかかわらず、その奇抜でオリジナリティ溢れる衣裳はアカデミー賞「衣裳デザイン賞」を受賞。日本でも劇中の音楽とともに一大ブームが巻き起こった。2006年には、待望のミュージカル版が本国オーストラリアにて誕生。ヒット・ソングを散りばめたディスコ・ミュージック、豪華絢爛な衣裳で歌って踊るエンターテイメント満載の舞台は、これまでロンドン・ウエストエンド、NY・ブロードウェイを含む15か国以上の国で上演されている。宮本さんは、「リオのカーニバルとオリンピック開会式をシェイクしてカクテルにしたような、ゴージャスでド派手なショーです!」と本作を説明。「三者三様の背負った過去にホロりとして、元気になれる人間讃歌。ドラァグクイーンたちが目指す先は、誰もが幸せになれる華麗なるステージ!16年の冬は、名曲の数々にノって、キッチュなコスチュームで身を包む『砂漠の花』たちとエンジョイしてください!」と語った。また、映画ではヒューゴが演じたバイセクシュアルのティック(ミッチ)役に挑む山崎さんは、「笑いあり涙ありの脚本、名曲揃いの歌、派手なダンスシーン、そして、ロンドン版と同じ奇抜でオリジナリティ溢れる色鮮やかな衣裳とヘアメイク、これぞエンターテイメント!」と本作を語り、「亜門さんは、太陽の様に明るくて、常に前向きなエネルギーに溢れ、周りを幸せな気持ちにされる方。そんな亜門さんと、こんなハッピーな作品『プリシラ』を一緒に作れることを本当に嬉しく思います」と、宮本さんとの初タッグに喜びのコメント。さらに「僕自身は、初のドラァグクイーンに挑戦になります。2008年に同じく日生劇場で上演された、鹿賀丈史さんと市村正親さん主演『ラ・カージュ・オ・フォール』で、女性として生きる市村さん演じるザザを、息子ジャン・ミシェルとして毎日目の前で見てきました。ここで育った経験も活かし、ありのままの自分をさらけ出し、プリシラの世界を生きたいと思っています。今回は露出もあるらしいので、身体もしっかり鍛えて、美しいラインを目指します。やっと出逢えた念願のコメディミュージカル作品、全身全霊で役に挑み、新たな壁をぶち破ろうと思っています!」と意気込みを語った。ミュージカル「プリシラ」は2016年12月、日生劇場にて上演。(text:cinemacafe.net)
2015年12月14日日曜劇場「下町ロケット」で阿部寛演じる主人公の元・部下役として、民放連続ドラマ初出演を果たしている“ミュージカル界のプリンス”山崎育三郎が、その美声でナレーションに初挑戦。12月12日(土)15時から放送の「下町ロケット」ダイジェスト番組にて、役柄の“真野賢作”としてこれまでの物語をふり返っていることが分かった。半沢直樹シリーズや「空飛ぶタイヤ」「ルーズヴェルト・ゲーム」などヒット作を連発する池井戸潤の第145回直木賞受賞作を原作に、主演を2010年4月期の「新参者」以来、5年ぶりに日曜劇場に帰ってきた阿部寛が務めている本作。阿部さんや魅力的なキャスト陣の演技合戦もあり、原作「下町ロケット」は、ドラマ開始後も増刷を重ねて155万部を突破。ドラマ後半部分の原作となる「下町ロケット2 ガウディ計画」も45万部に到達し、シリーズ累計で200万部を超える大ベストセラーとなっている。阿部さんが演じる主人公の佃航平は、宇宙科学開発機構の研究員だったが、自分が開発したエンジンを載せたロケットの打ち上げ失敗の責任を取らされ退職。父親が遺した「佃製作所」を継いで社長として第二の人生をスタートさせ、仲間たちとともに新たな夢に向かって突き進んでいく。そんな本作で、民放の連ドラ初出演の山崎さんが演じている真野賢作は、いま大反響を呼んでいることもあり、今回は“ミュージカル界のプリンス”といわれるその美声でナレーションに挑戦。クライマックスに向けて激動の展開が待ち受ける13日(日)放送の第9話の放送を前に、「下町ロケット」のスペシャルダイジェストと9話の見どころを、“真野”としてお届けする。山崎さんは、「医療やロケットの専門用語が出てくるので、やってみて難しかったですし、また緊張もしました。やはり役の真野として読んだほうが気持ちが入るので、その点を意識して収録させていただきました。ただ気持ちが入りすぎ、懐かしいシーンを見て、自分でぐっときてしまいました(笑)」と明かしており、その気持ちの入り方が伺える。いよいよ最終回まで残すところあと2回となった「下町ロケット」に、引き続き注目だ。「下町ロケット」スペシャルダイジェストは12月12日(土)15時より放送。第9話は12月13日(日)21時よりTBS系列にて放送(15分拡大)。(text:cinemacafe.net)
2015年12月12日主演に阿部寛を迎え、毎回様々な俳優がゲスト出演することでも話題の「下町ロケット」。ついに物語も佳境を迎える本作だが、この度、13日放送の9話より元フジテレビアナウンサーの高島彩が出演することが明らかとなった。佃航平(阿部さん)は、宇宙科学開発機構の研究員だったが、自分が開発したエンジンを載せたロケットの打ち上げ失敗の責任を取らされ退職。父親が遺した「佃製作所」を継いで社長として第二の人生をスタートさせ、夢に向かって突き進む――。原作は、第145回直木賞を受賞した池井戸潤の同名小説。受賞時には「人々の希望を繋ぐ爽快な作品」と評され「オレたちバブル入行組」をはじめとする半沢直樹シリーズや「空飛ぶタイヤ」、「ルーズヴェルト・ゲーム」などヒット作を連発する池井戸氏の著書の中でも代表作との呼び声が高い作品。またドラマ開始後、増刷を重ね、直近でシリーズ累計155万部を超え、先月に発売となったドラマ後半部分の原作となる「下町ロケット2ガウディ計画」は、当初30万部で販売開始したものの、好調のためたちまち15万部の重版が決定し、早くも45万部に到達。シリーズ累計で200万部を超える大ベストセラーとなっている。そして今回高島さんが演じるのは、元毎朝新聞の記者で、現在は医療関係の事件を専門にしているフリージャーナリスト・咲間倫子。夫の死に疑問を持ち、病院側に訴訟を起こしたことをきっかけに、医療事件のフリージャーナリストに。ノンフィクション作家としても注目を集めており、医療機関の闇を切り裂くような著作を次々と発表。ある事実を確かめるために、佃製作所へやってくるのだ。本作が連続ドラマ初出演で、本作のキーとなる咲間を演じる高島さんは「毎週楽しみにしている『下町ロケット』出演のお話をいただき正直震えております。新たな挑戦ではありますが、ひとつまみのアクセントになれるよう、みなさまの中に身を投げて全身全霊で取り組みます。ガウディ計画から感じている命の大切さを丁寧に伝えられるよう、鋭く、芯のある咲間倫子を演じられればと思っております」と本作への意気込みをコメントしている。またプロデューサーの伊與田英徳は「いつも他局ながらも“うまい”と思っていました。笑いの突っ込み、しっとりとした泣かせのナレーション、はちゃめちゃな現場のまとめ方…などなど、どの部分を切り取っても完璧な仕事をされていました」と高島さんを絶賛し、また「そんな方と、縁あってお仕事できるのは嬉しい限りです。高島さんが、旅番組に出演したとき、体当たりでレポートをしているのを拝見して、感情を全面に表現する演技も必ずできると確信してオファーしました」と今回の抜擢の経緯について語った。プロデューサーも絶賛の高島さん、初の連ドラ出演で重要な役どころをどう演じるのか、ますます見逃せない。「下町ロケット」は毎週日曜日21時~TBSにて放送。(cinemacafe.net)
2015年12月03日主演に阿部寛を迎え、すべての働く人たちに贈る、感動のエンターテインメント巨編「下町ロケット」。先月22日放送の6話から後半パート「ガウディ計画編」が放送され、いよいよ佳境に突入する本作だが、この度新たに歌舞伎役者の中村歌昇が出演することが決定した。佃航平(阿部さん)は、宇宙科学開発機構の研究員だったが、自分が開発したエンジンを載せたロケットの打ち上げ失敗の責任を取らされ退職。父親が遺した「佃製作所」を継いで社長として第二の人生をスタートさせ夢に向かって突き進む――。原作は、第145回直木賞を受賞した池井戸潤の同名小説。受賞時には「人々の希望を繋ぐ爽快な作品」と評され「オレたちバブル入行組」をはじめとする半沢直樹シリーズや「空飛ぶタイヤ」、「ルーズヴェルト・ゲーム」などヒット作を連発する池井戸氏の著書の中でも代表作との呼び声が高い作品だ。また、ドラマ開始後に増刷を重ね、先月に発売となったドラマ後半部分の原作となる「下町ロケット2ガウディ計画」は、当初30万部で販売開始したものの、好調のためたちまち15万部の重版が決定し、早くも45万部に到達。シリーズ累計で200万部を超える大ベストセラーとなっている。今回が初のドラマ出演となる中村さんは、世良公則演じる貴船が教授を務める「アジア医科大学」の研修医・葛西役を演じる。中村さんは、「今回初めてのドラマ出演で、このような素晴らしい作品に出演させて頂き、とても光栄に思っております。また、原作の下町ロケットのファンで、ドラマもずっと拝見していて、その中に自分が参加するという現状がまだよくわかっていません。研修医葛西は、これからのお話のきっかけになる出来事を起こす人物なので、色んな方々のお話を伺いながら一生懸命演じたいと思います」と、出演への喜びと意気込みを語っている。そして中村さんが出演する6日放送の第8話では、貴船がかねてより開発を推し進めてきた人工心臓・コアハートの念願が臨床試験がついにスタート。しかし、突然患者の容態が急変。たまたま担当医が不在だったため、研修医の葛西が応急処置をすることに。言わば貴船の“夢”が詰まった患者を、絶対に死なせてはならない…。そんな極限な状況が求められる葛西という役を、中村さんがどのように演じるのか、放送を楽しみにしていて。「下町ロケット」は毎週日曜日21時~TBSにて放送。(cinemacafe.net)
2015年12月02日セイコーウオッチは12月11日に、スポーツウオッチシリーズ「セイコー プロスペックス」の「スーパーランナーズ」から、2016年2月26日に開催される「東京マラソン2016」を記念した限定ランニングウオッチを発売する。本体カラーの違いによって、「赤×白モデル(SBEH007)」と「ゴールドカラーモデル(SBEH009)」を用意。各1,500本限定、税別価格は17,000円だ。今回の限定モデルには、新機能「スマートラップ」を搭載した。マラソン大会のコース上に敷設されたマットからの電波を受信し、自動でラップを取得する機能だ。正確なラップを得られるだけでなく、ラップ取得の操作が不要で取り忘れる心配がないといったメリットもある。裏ぶたには、新しくなった東京マラソンのロゴマークが入り、柔らかく装着感の良いシリコンバンドにも「TOKYO MARATHON 2016」の文字をプリント。大会ロゴマーク入りの限定専用ボックスには、デジタル計時板をイメージした表示部を設けた。ここには、完走タイムなどを切り出して表示できる。大会ロゴマーク入りのオリジナルピンバッヂ(非売品)も付属。そのほか主な仕様は、ケース素材がプラスチック、ケースサイズが縦52.4×横46.3×厚さ3.6mm、バンド素材がシリコン、裏ぶた素材がステンレススチール、防水性能が10気圧。ムーブメント「キャリバーS620」の主な機能は以下の通り。時間精度 : 平均月差±20秒(気温5℃~35℃において腕につけた場合)ストップウオッチ機能(1/100 秒計測、100時間計)スマートラップ機能(マラソン大会計測用マットと連携するラップ機能)マラソンモード(大会スタート時刻30分前からのカウントダウンタイマー)ラップメモリー機能(最大300メモリー)ダブルリピートタイマー機能アラーム機能(デイリーアラーム3チャンネル)ワールドタイム機能(44都市)フルオートカレンダー機能(2064年12月31日まで)LEDライト機能(タップ方式)電池寿命 : 約2年(パワーセーブ機能)また、限定モデルのほか、スマートラップ機能を搭載したレギュラーモデル(3モデル)も同時に発売される。こちらの価格も税別17,000円だ。
2015年11月27日阿部寛を主演に迎え現在放送中の日曜劇場「下町ロケット」。今月22日放送の第6話から後半パート「ガウディ計画編」がスタートしている本作だが、この度、新たにバカリズムが出演することが明らかとなった。主人公の佃航平(阿部さん)は、宇宙科学開発機構の研究員だったが、自分が開発したエンジンを載せたロケットの打ち上げ失敗の責任を取らされ退職。父親が遺した「佃製作所」を継いで社長として第二の人生をスタートさせ、夢に向かって突き進む。すべての働く人たちにお送りする、感動のエンターテインメント巨編だ。原作は、「直木賞」を受賞した池井戸潤の同名小説。受賞時には「人々の希望を繋ぐ爽快な作品」と評され、ドラマ開始後、増刷を重ね、直近でシリーズ累計155万部超、11月5日に発売となった、ドラマ後半部分の原作となる「下町ロケット2ガウディ計画」は、当初30万部で販売開始したものの、好調のためたちまち15万部の重版が決定し、早くも45万部に到達している。シリーズ累計で200万部を超える大ベストセラーとなっている。ドラマでは、後半パート「ガウディの計画編」が始まっており、そこに新たな人物としてバカリズムさんが、小泉孝太郎演じる椎名直之が社長を務めている「サヤマ製作所」の社員・横田信生として登場する。横田は元開発部員だったが、現在は閑職に追いやられ、無味乾燥の日々を送っている。そんな横田を演じるバカリズムさんは、「オファーをいただいたときはまだ役が固まっておらず、正直なんの役をやるんだろうって不安でした(笑)。ただ、僕が演じる横田という男が完全に後半の物語の鍵を握ります!最後は主演の阿部さんを食うぐらいの勢いで横田が掻っ攫っていきます」と意気込みを語っている。さらに本作のプロデューサー・伊與田英憲は「横田という男は一見謎に包まれた役どころです。後半のキーとなる役でもあり、この役ができるのは懐の深いお芝居をされるバカリズムさんしかいないと思い、お願いしました」と今回のオファーについて語った。「ロケットから人体へ」、佃製作所の新たなる挑戦を描く“ガウディ計画編”。幅広い分野で活躍するバカリズムさんがどんな演技をみせてくれるのか、ますます目が離せない。「下町ロケット」は毎週日曜日、21時~TBSにて放送。(cinemacafe.net)
2015年11月26日米国のブルー・オリジンは2015年11月24日、開発中の再使用ロケット「ニュー・シェパード」の打ち上げと着陸に成功したと発表した。同ロケットの打ち上げ成功は初のことで、宇宙空間に到達したロケットがそのまま垂直に着陸することに成功したのも史上初のこととなった。なお、ニュー・シェパードは有人飛行を目標として開発が進められているが、今回の飛行は無人で行われた。ブルー・オリジンは2000年9月に設立された会社で、ネット通販大手のAmazon.comを設立したことで知られるジェフ・ベゾス氏によって立ち上げられた。ニュー・シェパードは単段式のロケットで、垂直に打ち上げられ、高度100kmの宇宙空間まで上昇した後、そのまま垂直に着陸し、整備と推進剤の補給を行い再び打ち上げることができる能力をもっている。ロケット・エンジンには液体酸素と液体水素を使う「BE-3」を使う。ロケットの先端には人や実験装置などを積んだカプセルを搭載することができ、地球をまわる軌道には乗れないが、宇宙観光や簡単な宇宙実験などを行うことはできるようになっている。今年4月に初の試験飛行を行っており、その際は高度93kmまで到達したものの、ロケットの着陸には失敗した。今回の飛行は11月23日に実施され、4月のときと同じ、西テキサス地方にある同社の試験場を使って行われた。ロケットは垂直に上昇し、最高速度マッハ3.72で高度100.5kmに到達した後、カプセルを分離。そしてロケットは安定翼を展開し、上空の強い風の中を安定して降下し、発射台から上空約1.5kmのところでエンジンに再点火し減速。そして機体を制御しながらさらに降下を続け、最終的に着陸脚を展開し、着陸施設に降り立った。一方のカプセルもパラシュートで着陸している。ニュー・シェパードは今回が2回目の飛行で、初めての完全な成功となった。さらに宇宙空間に到達したロケットが、そのまま垂直に着陸することに成功したのも史上初めてのこととなる。次の試験飛行の予定は明らかにされていないが、今回成功した機体を再使用するものと見られている。ブルー・オリジンでは今後もニュー・シェパードの試験飛行を繰り返し行い、2年以内にも同ロケットを使った宇宙観光や宇宙実験をビジネスとして展開したいとしている。○開発競争激化のきっかけとなるか再使用ロケットの構想は古くからあり、今回のニュー・シェパードのように垂直に打ち上げられ、垂直に着陸できるロケットもいくつかの実験機が開発されている。近年では特に、ブルー・オリジンと同じ米国の宇宙企業であるスペースXも、人工衛星を打ち上げた後の「ファルコン9」ロケットの第1段機体を、海上の船で回収し、再使用する試験に挑戦し続けている。同社はこれにより、ロケットの打ち上げコストの大幅な低減を目指している。今回の成功で、ブルー・オリジンはスペースXに先んじたようにも見られるが、ニュー・シェパードは高度100kmに到達することのみを目的としているため、地上からまっすぐ空に向けて打ち上げ、高度100kmに達した後、そのまままっすぐ帰ってくるだけで良い。しかし、ファルコン9は人工衛星を打ち上げるロケットであるため、衛星を打ち上げられないニュー・シェパードよりも要求される技術が高く、開発も難しい。また、第1段機体は高度80kmの高さから、さらに水平方向への速度もついている状態で、機体を制御して着陸させなければならない。技術的な難易度はファルコン9のほうが高く、今回のニュー・シェパードの成功により、ブルー・オリジンがスペースXに勝ったというわけではない。ただ、ブルー・オリジンも、人工衛星打ち上げ用の再使用ロケットを開発することを明らかにしており、今後、両社の間で再使用ロケットの開発競争が激化することが予想される。参考・Blue Origin | Historic Rocket Landing・Blue Origin launches, lands New Shepard booster・Blue Origin Flies — and Lands — New Shepard Suborbital Spacecraft - SpaceNews.com
2015年11月25日H-IIAロケット29号機の現地レポート・H-IIAロケット29号機現地取材 - "高度化初号機"の打ち上げを現地からレポート! 今回の注目点は?・H-IIAロケット29号機現地取材 - 打ち上げ前のY-1ブリーフィングが開催、気になる天候は?・H-IIAロケット29号機現地取材 - 機体移動が完了、高度化H-IIAロケットがついに姿を現す!・H-IIAロケット29号機現地取材 - リフトオフ! 快晴の打ち上げを写真と動画で振り返る宇宙航空研究開発機構(JAXA)と三菱重工業(MHI)は11月24日、種子島宇宙センターで記者会見を開催し、同日打ち上げたH-IIAロケット29号機の結果について報告した。詳細なデータの解析は今後となるものの、ロケットは計画通りに飛行し、打ち上げの4時間27分後に衛星を正常に分離したことが確認されている。H-IIAロケットはこれで29機中28機の成功となり、成功率は96.6%に上昇。連続成功の記録は23機連続まで伸びた。今回、警戒区域内への船舶の進入があったため、打ち上げが27分遅れてしまったものの、それ以外には全く問題なく、JAXA/MHIがアピールする「信頼性の高さ」「オンタイム打ち上げ率の高さ」を改めて示した形になった。初の商業衛星の打ち上げとなったMHIにとって、順調な出だしを切れた意義は大きい。MHIの阿部直彦・宇宙事業部長は「これは非常に大きな一歩」とコメント。「今回の顧客であるカナダTelesatは世界ビッグ4の大手オペレータ。衛星を製造したAirbus Defence and Spaceもメジャーなメーカーだ。日本のロケットがグローバルなスタンダードに対応できることを世界に示すことが出来た」と述べる。とはいえ、これはようやく第一歩を踏み出したに過ぎない。商業打ち上げ市場で大きなシェアを占める欧州のアリアン5や、価格破壊を進める米国のファルコン9など、強力なライバルは多い。世界のマーケットに食い込むことができるかどうか、まだ決して楽観できるような状態ではない。今回の打ち上げは、高度化H-IIAの技術実証ということでJAXAが一部費用を負担しており、"正規価格"で戦っていけるのかは未知数だ。だが、それでも理想的な形でその一歩を踏み出せたこともまた事実。阿部氏は「高度化なくして静止衛星の打ち上げ市場には参入できなかった。今回実証できたので、自信を持って市場に入っていける。いま進めている商談にとっても、大きな味方になるだろう」と評価した。価格の高さという大きな問題は依然としてあるものの、1つ1つ実績を重ねて、衛星オペレータや衛星メーカーからの評価を上げていくしかない。今回、記者会見にはTelesatやAirbusの関係者は見当たらなかったのだが、Telesatは同日のプレスリリースで、MHIに対する感謝を表明。阿部氏は「種子島は地元の人のもてなしが非常に厚い。来日した海外スタッフの歓迎会も開催してもらい、非常に喜んで帰っていただいた。そうした面もこれから伝わっていけば」と期待した。また今回の打ち上げの注目ポイントである高度化について、詳細については今後の解析待ちとなるが、長時間飛行(ロングコースト)における推進剤の蒸発への対策や、推力を60%に抑えたスロットリングによる再々着火などは、ほぼ想定通り機能したとみられている。JAXAの川上道生・基幹ロケット高度化プロジェクトマネージャは「正直ほっとしている」と安堵の表情を見せ、プロジェクトを支えたメンバーをねぎらった。今後、高度化仕様はH-IIAロケットのオプションの1つとして提供される見通しで、顧客によっては、従来通りのノーマル仕様を選ぶことも可能とのこと。それは高度化によるコストアップがあるためだが、ただMHIの二村幸基・打上執行責任者によれば、その金額は「さほど大きなものではない」ということだ。なお高度化プロジェクトで開発したロングコースト技術については、今回のような静止衛星の打ち上げ以外にも応用が期待される。まだ決まった計画は特に無いものの、たとえば主衛星と副衛星(相乗り衛星)を異なる軌道へ投入するようなことが可能だという。これにより、相乗り相手をより柔軟に選ぶことができるようになるわけだ。
2015年11月25日●原因はソ連製ロケット・エンジンだったのか?今から1年前の2014年10月28日、米国ヴァージニア州にあるウォロップス島から打ち上げられた「アンタリーズ」ロケットは、その直後に爆発を起こし、大きな火の玉となって地上に落下した。その劇的な映像や写真は、SNSなどを通じて広く拡散され、多くの人に衝撃を与えた。もちろん衝撃を受けたのは外野だけではなかった。アンタリーズ・ロケットを開発、製造したオービタルATK社。爆発したと考えられているロケット・エンジンを供給したエアロジェット・ロケットダイン社。そしてこの打ち上げを発注した米航空宇宙局(NASA)。失敗への対応と、原因の調査、そして対策に、この3者は揺れに揺れた。本稿ではまず、アンタリーズ・ロケットの打ち上げ失敗とその原因調査の経緯から見ていきたい。○アンタリーズの失敗アンタリーズ・ロケットは米国のオービタルATK社が開発したロケットで、主に国際宇宙ステーション(ISS)に補給物資を運ぶ「シグナス」補給船を打ち上げることを目的に開発された。NASAは長らく、ISSへの物資補給にはスペース・シャトルを使っていたが、2000年代に入り、これを民間企業に任せてはどうか、という動きが出始めた。民間に任せることでコスト削減が図れ、また米国の宇宙産業の振興も期待された。そしてNASAは2006年に、民間企業に資金を提供してロケットと補給船を開発させ、さらにその企業に補給任務を委託することを狙った「COTS」という計画を立ち上げた。この計画には何社かが名乗りを挙げ、その中から近年民間宇宙開発の雄として知られるスペースX社と、そしてオービタルATK社の2社が選ばれた。両社はNASAからの資金提供を受け、スペースX社は「ファルコン9」ロケットと「ドラゴン」補給船を、オービタルATK社はアンタリーズとシグナスを開発した。同じ計画の下で開発されたロケットでも、ファルコン9とアンタリーズは大きく異なる。ファルコン9はタンクやロケット・エンジンといった部品の自社製造にこだわった造りをしているが、アンタリーズは自社製にこだわらず、第1段ロケット・エンジンはロシア製、第1段タンクはウクライナ製を採用している。両方のやり方にはそれぞれ長所と短所があり、どちらが優れているというわけではない。実際に両者は、NASAが発注した補給ミッションを順調にこなしていた。しかし2014年10月28日、アンタリーズとシグナスにとって4機目となった打ち上げで、アンタリーズが打ち上げから15秒後に爆発、失敗に終わることになった。(余談だが、2015年6月28日にはファルコン9も打ち上げに失敗し、ドラゴンが失われている)。○旧ソ連製ロケット・エンジンが爆発アンタリーズの失敗理由については、早い段階から第1段ロケット・エンジンの「AJ26」にあると見られていた。AJ26は今から40年ほど前に、ソヴィエトで設計、開発、そして生産された「NK-33」というエンジンを、アンタリーズ用に改修したものである。アンタリーズはこのNK-33あらためAJ26を2基、第1段に装備している。にわかには信じにくいこともあって誤解されることも多いが、このAJ26は昔に設計されたエンジンを再生産したものではなく、設計も生産も昔に行われ、その後使われないまま倉庫に保管されていたものを掘り出して使っている。かつてソヴィエトは米国に対抗し、有人月着陸を目指し、巨大な「N-1」というロケットを造っていた。NK-33はその第1段として使われる予定だったが、N-1の開発が頓挫したことで使われず、生産済みだったNK-33はそのまま倉庫にしまい込まれることになった。それを1990年代に米国のロケットダイン社(現在のエアロジェット・ロケットダイン社)が発見し輸入、試験などを行い、優れた性能をもつエンジンであることが判明。そしてオービタル・サイエンシズ社(現在のオービタルATK社)が採用を決定し、アンタリーズ向けに改修が施された。この改修は、単にアンタリーズに装着するために電気系統などに手を入れ、またエンジンを振って推力の方向を変えるためのジンバル機構が装着されるなどしただけで、たとえば米国の技術でエンジンの性能を向上させるようなことは行われていない。エンジン名こそAJ26に変わったが、実際のところはNK-33をそのまま使っていると言ってもよい。○原因はエンジンか、ロケット機体か打ち上げ失敗がエンジンの爆発によるものであることはほぼ間違いなかったが、なぜエンジンは爆発したのか、という原因をめぐり、調査は揉めることになった。たとえばエンジンそのものに原因があり、その結果爆発したのであれば、それはエアロジェット・ロケットダイン社の責任になる。しかし、もしロケットの機体側に原因があり、その結果としてエンジンが爆発し、続いてロケット全体も爆発したということであれば、それはオービタルATK社の責任になる。事故調査の過程は公開されなかったが、当初はおおむね、エンジンそのものに原因があったという見方が濃厚だった。実際、当時の映像を見てもエンジンから爆発が起こったことは火を見るよりも明らかで、エンジンを供給したエアロジェット・ロケットダイン社の責任である可能性が高いとされた。しかし、エアロジェット・ロケットダイン社側からは「タンク内にあったゴミがエンジンに入り込み、その結果エンジンとロケットが爆発したのではないか」という説が出された。どの段階からこの説が出始めたかは不明だが、今年2月に調査チームの1人がロイター通信に対し、「タンク内のゴミが原因の候補のひとつに挙がっている」と明らかにしている。製造後のタンクには、湿度から品質を守るための乾燥剤が入れられている。通常、この乾燥剤は組み立て時に取り除かれることになっているが、それが忘れられたまま打ち上げられ、そして乾燥剤がエンジンに入り込み、爆発を引き起こしたのではないか、というのだ。実際に、事故後にエンジン部品を調べたところ、結晶化した乾燥剤の粒子が発見されたという。こうしたゴミのことをForeign Object Debris(外部由来の異物)の頭文字から「FOD」と呼ぶ。実はこうしたFODが原因での事故は珍しくはない。過去にはウクライナ製のジニート・ロケットが、やはりFODが原因でロシア製エンジンが爆発し、失敗したとされる事故が起きている。フランスも1990年に、アリアン4ロケットの配管に布が入り込んでいたことで打ち上げに失敗している。もしこれが原因だとすると、責めを負うべきはロケットを組み立てたオービタルATK社ということになる。もっとも、状況証拠しかない状態ではFODが原因とするには根拠が弱く、調査結果がまとまるにはさらに時間を要した。今年5月には、オービタルATK社側から「やはりエンジン側に原因があったのではないか」という説が再び出されるなど、オービタルATK社とエアロジェット・ロケットダイン社との論争は続いた。結局、今年9月24日に、エアロジェット・ロケットダイン社がオービタルATK社に5000万ドルを支払うことで、この論争は決着した。ただ、両社の間でどのような合意があり、この結論が下されたか、その詳細は不明となっている。エアロジェット・ロケットダイン社がお金を払うということは、エンジン側に原因があったと見ることができる。しかし、これ以上調査を続けても原因が見つかる見込みはなく、また論争を続けてもお互いのためにならないので和解した、と見ることもできる。エアロジェット・ロケットダイン社は事故の分析結果を明らかにする予定はなく、今回の詳細も発表しないと表明しており、オービタルATK社からもやはり結果などは発表されていない。○NASAの見解一方、両者とは別に、NASAも独自の調査チームを組織し、調査を行っていた。アンタリーズの開発にはNASAも資金提供をしており、この失敗した打ち上げを委託したのもNASAだったため、独自に調査するだけの責任があった。NASAの調査結果は今年10月9日にまとめられ、10月30日に公表された。この事故でアンタリーズは、E15とE16というシリアルのAJ26を装着しており、離昇から15秒後に出火、爆発したのはE15だったとしている。しかし、単一の根本的な原因を特定することまではできなかったとしている。NASAの調査では、事故の原因として3つの可能性が提示されている。1つ目は液体酸素ターボ・ポンプのベアリングの設計不良である。先に述べたように、AJ26はもともと40年以上前に設計、製造されたエンジンであることから、現在の基準で見ると、十分に堅実なつくりにはなっていなかったという。2つ目は、かねてよりエアロジェット・ロケットダイン社が主張していたFODによるものである。墜落後の残骸から痕跡が発見されたとしているが、ただし完全に原因として断定することは難しいとしている。3つ目は液体酸素ターボ・ポンプのベアリングの製造や組み立て時の欠陥である。オービタルATK社とNASAが法科学による調査を実施したところ、ベアリングに欠陥があったことが判明した。また、2014年5月にAJ26(E17)が地上での燃焼試験中に失敗しているが、このときの調査でも、今回に似た欠陥が見つかったという。しかし、これが製造時の欠陥なのか、それともエンジンが燃焼した結果生じたものであるかの結論を出すことは不可能であるとしている。NASAでは、この3つのうちのどれかが正解かもしれないし、あるいは2つ以上の組み合わせで起こったかもしれないとしている。また、AJ26の地上試験プログラムは、設計上の問題なのか、あるいは製造時の技術的な問題なのかを見極めるのに十分ではなかった、要するに「試験が不十分だった」とも指摘している。また、これらの調査結果を踏まえ、さらなる事故を未然に防ぐため、エンジンなどに対する技術的な観点と、また計画の進め方や体制といった観点の両面から、NASAやオービタルATK社に対して多くの改善策の提言が行われた。参考・・・・・●失敗を乗り越え、アンタリーズはさらにタフになる○改良型アンタリーズアンタリーズの失敗原因をめぐって、ロケットを製造、運用するオービタルATK社と、エンジンを供給したエアロジェット・ロケットダイン社は、1年間ゆれ続けた。その最中の2014年12月にオービタルATK社は、まだ失敗の原因が確定していないにもかかわらず、AJ26の使用を止め、新しいエンジンに替えた「改良型アンタリーズ」の開発を進めると発表した。ただ、オービタルATK社はもともと、AJ26の使用はいずれ止めるつもりだった。前頁で触れたように、AJ26は今から40年前に製造されたNK-33の在庫を使っている。つまり在庫限りということになるため、いつまでもAJ26を使い続けるわけにはいかない。そこでかねてより、別の新しいエンジンが模索されていた。その新しいエンジンの候補はいくつかあり、たとえば米国の基幹ロケットである「アトラスV」に使われているRD-180や、ロシアの新型ロケット「アンガラー」に使われているRD-191などが挙がっていた。また、NK-33が再生産されるという話もあったため、もし昨年10月の失敗がなければ、引き続きAJ26/NK-33を使い続けるという選択肢もあったのかもしれない。最終的に改良型アンタリーズで使用されることになったのは「RD-181」というエンジンである。このことが報じられたのは2014年12月ごろだったが、RD-181という型番と、それがアンタリーズで使われる可能性があるという話は、2013年ごろから出ていた。○RD-181このRD-181エンジンの起源は、かつてソ連で開発された大型ロケット「エネールギヤ」の第1段(西側ではブースターと見なされている)に使われている「RD-170」というエンジンにまでさかのぼる。RD-170は燃焼室を4つもつエンジンで、世界で最も強力な推力を出せるエンジンのひとつである。エネールギヤ・ロケットそのものは2回の打ち上げで運用を終えたが、RD-170の技術は受け継がれ、現在もウクライナ製の「ジニート」ロケットに使われている。また、燃焼室の数を半分の2つにした「RD-180」という派生型も開発され、米国へと輸出され、基幹ロケット「アトラスV」の第1段エンジンとして活躍している。さらに燃焼室が1つのRD-191は、ロシアの新型ロケット「アンガラー」に採用されている。ロシアでは現在、そのRD-191から派生したRD-193というエンジンを開発しており、アンタリーズに採用されることになったRD-181は、このRD-191とRD-193からさらに派生したエンジンである。ただ、その正体については諸説あり、たとえばRD-191とRD-193では、エンジンの寸法や質量が変わっていることがわかっているが、RD-181の詳細についてはまだ不明な点が多い。なお、アンタリーズが失敗した直後には、AJ26/NK-33がロシア製であることが批判材料にもなった。RD-181もロシア製ではあるものの、ただしAJ26/NK-33とは違い、ごく最近になって開発、生産された新しいエンジンであり、製造会社も違う。また、ほぼ同型のエンジンはこれまでにアンガラーの打ち上げで使われており、地上での燃焼試験も何度も行われていることから、信頼性もAJ26より高い。さらにRD-181はAJ26よりも推力(パワー)が大きいため、換装することでより多くの物資などを打ち上げられるようになるという利点もある。ただ、形も推力も違うエンジンをそのまま載せ替えることはできないため、ロケット機体にも、エンジンの取り付け部分の設計を変えたり、より大きな推力に耐えられるよう補強するなどの改修が必要となる。2015年11月現在、RD-181はすでに米国に輸入され、またエンジン取り付け部分の改修も行われ、装着する作業が完了している。なお、AJ26はエアロジェット・ロケットダイン社による改修を経由して供給されていたが、RD-181はオービタルATK社が、製造しているNPOエネルガマーシュから直接輸入する形となる。今後、2016年の初頭ごろにRD-181を装着したアンタリーズの地上燃焼試験が行われる予定で、同年3月ごろにも実際に打ち上げられることになっている。また失敗によって損傷した発射施設の修復も進められ、すでに完了している。また、第1段を拡張し、RD-181のもつ性能をフルに発揮できるようにした「アンタリーズ300」シリーズの開発も進められているが、登場は当面先のこととになる予定である。○改良型アンタリーズ登場まではアトラスVがつなぎにところで、アンタリーズが飛行停止している間も、国際宇宙ステーション(ISS)への物資の補給は行わなければならない。そこでオービタルATK社は、米国の基幹ロケットとして活躍中の「アトラスV」に、シグナス補給船の打ち上げを委託することにした。現在のところ、この打ち上げは今年12月3日に予定されている。さらに搭載されるシグナスもこれまでと違い、「改良型シグナス」(enhanced Cygnus)となる。補給物資を搭載する部分の全長が延び、物資の搭載量が従来の2トンから、最大3.5トンにまで増え、それに伴い大型の太陽電池が搭載されるなどの改良も施され、より多くの物資をISSに届けることができるようになっている。アトラスVは従来型アンタリーズよりも打ち上げ能力が大きいため、この改良型シグナスの最大能力である、3.5トンいっぱいの補給物資を運ぶことができる。またアンタリーズも改良型によって同等の打ち上げ能力になるため、今後はこの改良型シグナスが主流となる。オービタルATK社はまた、今年8月にアトラスVによるシグナスの補給船をもう1回分発注し、2016年中に打ち上げることを計画している。これにより、仮に改良型アンタリーズの開発が遅れたり、あるいは打ち上げに失敗したとしても、シグナス自体は飛び続けることができるようになる。○宇宙開発の商業化の先駆、立て直せるか米国の宇宙産業を振興させるために始まった、民間企業にISSへの物資補給を任せるCOTS計画は、2014年10月のアンタリーズの失敗、そして今年6月のファルコン9の失敗により、大きなつまずきを経験することになった。もちろん、こうした失敗が起こることを前提に計画は立てられており、実際にISSから食料や酸素がなくなるといった事態にはならなかったものの、一方で「本当に民間に任せて大丈夫なのか」という声が少なからず上がり、事実アンタリーズは1年以上の飛行停止となり、ファルコン9も失敗からすでに半年が経過しようとしているなど、COTS計画は大きな打撃を受けている。しかし、アンタリーズはエンジンを改良して再起を図りつつあり、またファルコン9も大幅な改良が加えられた新型機が登場しようとしている(詳細はいずれまた解説したい)など、両社の歩みは止まることを知らない。この機敏さは民間企業ならではであり、また1度や2度の失敗では倒れない強靭さは、米国において民間主導の宇宙開発が着実に根付きつつあることを示している。無事にこの失敗から立ち直ることができれば、その経験はさらに両社を強くするだろう。もちろんこの先、彼ら以外の宇宙を目指す会社が、あるいは両社が再び、今回のような悲劇を経験することは起こりうる。けれども、そうした苦難を乗り越えた先にこそ、人類の本格的な宇宙進出が待っているのである。参考・・・・・
2015年11月25日H-IIAロケット29号機の現地取材記事・【レポート】H-IIAロケット29号機現地取材 - "高度化初号機"の打ち上げを現地からレポート! 今回の注目点は?・【レポート】H-IIAロケット29号機現地取材 - 打ち上げ前のY-1ブリーフィングが開催、気になる天候は?・【レポート】H-IIAロケット29号機現地取材 - 機体移動が完了、高度化H-IIAロケットがついに姿を現す!既報のように、H-IIAロケット29号機が11月24日15時50分、種子島宇宙センターより打ち上げられた。前日まですっきりしない天気の種子島であったが、この日は予報通り回復。ロケットは青空の中へ飛び立ち、固体ロケットブースタ(SRB-A)の分離まで見ることができた。ロケットは18時現在、第2段エンジンの2回目の燃焼まで無事に終了しており、衛星とともに、慣性飛行で静止トランスファー軌道(GTO)の遠地点へと向かっているところだ。まさに高度化の成果を発揮しているフェーズであり、無事に再々着火を行い、所定の軌道に衛星を投入できるかどうか注目される。打ち上げが当初の予定より27分遅くなったため、第2段エンジンの再々着火は20:12ころ、そして衛星分離は20:16ころになる見込みだ。その後、21:45より記者会見が開催される見通しなので、詳報についてはしばらくお待ち頂きたい。
2015年11月24日H-IIAロケット29号機がついにその姿を現した。種子島宇宙センターにおいて、大型ロケット組立棟(VAB)から射点への機体移動は11月23日22:33に開始。ロケットは500mほどの距離を約20分かけて移動し、22:56に完了した。あとはいよいよ、打ち上げを待つのみだ。関連記事・【レポート】H-IIAロケット29号機現地取材 - "高度化初号機"の打ち上げを現地からレポート! 今回の注目点は?・【レポート】H-IIAロケット29号機現地取材 - 打ち上げ前のY-1ブリーフィングが開催、気になる天候は?機体移動は当初、23日21:00開始を予定。当日昼頃の天候判断により1時間前倒しされ、20:00開始に変更されたのだが、屋久島方面に雷が観測されているということで、20:00を過ぎても機体が出てこない。最初は、遠方で雷光が見えていただけであったが、そのうち音まで聞こえるようになってきて、センター内に雷警報が発令。我々プレスも、撮影場所から一旦退避することになった。多少の遅れであれば、その後の進行でカバーできる。だが、カバーしきれないほどになると、「打ち上げ当日の天候は良いのに機体を出せなくて延期になる」ということもあり得る。雨も本降りになってきて、打ち上げが予定通りいくのか懸念されたが、その後警報が解除。22:00ころになって「機体移動を22:30より開始」というアナウンスがあり、慌ただしく撮影場所へと移動した。当初の計画より、機体移動は1時間半ほど遅くなったものの、今のところ打ち上げ時刻の変更は特に発表されておらず、予定通りに進行している模様だ。打ち上げ予定時刻は15時23分。宇宙航空研究開発機構(JAXA)では、打ち上げ時と衛星分離時にそれぞれネット中継を実施する予定なので、ご覧になると良いだろう。
2015年11月24日TBSにて放送中の阿部寛が主演ドラマ「下町ロケット」の後半パートとなる「ガウディ計画篇」にこの度、俳優・小泉孝太郎と世良公則が出演することが決定した。佃航平は宇宙科学開発機構の研究員だったが、自分が開発したエンジンを載せたロケットの打ち上げ失敗の責任を取らされ退職。父親が遺した「佃製作所」を継いで社長として第二の人生をスタートさせる。第145回直木三十五賞を受賞した池井戸潤の同名小説を実写ドラマ化した本作。本ドラマは、朝日新聞にて連載中の「下町ロケット2」と同時進行でドラマが進行。後半パートの「ガウディ計画篇」には、すでに今田耕司が出演することが決定し大きな注目を集めている。このほど小泉さんと世良さんの出演が決定したのは、同じく今田さんが出演する「ロケットから人体へ」と移り変わる後半パート。小泉さんが演じるのは、NASA出身の技術者で、現在は父親が興した精密機器メーカー、サヤマ製作所社長を務める椎名直之。ロケット工学が専門で、父親の会社を継ぐ際にMBA(経営学修士)まで取得したという異色の経歴を持つ人物で、佃製作所のライバルとして登場する。一方で世良さんが演じるのは、アジア医科大学心臓血管外科部長の貴船恒広教授。日本の心臓外科でトップクラスと言われるアジア医科大学で、長年にわたって心臓血管外科を率いてきた看板教授という役どころであり、貴船もまた椎名と同じく佃製作所と敵対する関係として描かれる。今回の出演決定に際して小泉さんは、「この作品に携われることが嬉しく、プライベートの予定すべてキャンセルしてお引き受けしました(笑)。ただ、佃製作所と親密に関わる役かと思いきや、あ、そっち側(敵役)かと。僕が演じる椎名という役は、得体の知れない、掴みどころのない人間として阿部さん演じる佃と対立します。『下町ロケット』の魅力は佃の“人間臭さ”だと思うので、その佃としっかり対峙し、椎名という役を通して、ちょっとしたエッセンスを加えていけたらと思います」と、出演への期待と見どころについてコメントしている。さらに世良さんは「私自身、珍しい『ヒール』での登場ということで楽しみにしています。『人の命との関わり』という大きなテーマの中で闘い、もがいて来た男の一辺を大切にしつつ、主人公の熱き男たちの対立軸として存分に、軽やかに、この『貴船』なる人物を演じてみたいと思っています」と語り、悪役への意気込みを語っている。11月15日(日)の放送で、前半パートは終了し、11月22日(日)より今田さん、小泉さん、世良さんが出演する後半パート「ガウディ計画編」がスタート。まだ明らかにされていないストーリーと合わせて、俳優陣の好演に期待したい。「下町ロケット」は毎週日曜21時~TBS系にて放送。(text:cinemacafe.net)
2015年11月11日2015年11月24日の打ち上げに向け、鹿児島県種子島にある種子島宇宙センターで現在、H-IIAロケット29号機の打ち上げ準備が着実に進んでいる。H-IIAの打ち上げは今回で29機目となる。一昔前と比べると、ずいぶん早いペースで打ち上げが続いており、少しずつではあるが、H-IIAの姿が日常の光景となりつつある。しかし今度のH-IIAは、今までのH-IIAとは一味も、あるいは二味も違う。外見からはあまり目立たないが、しかし実はとても大きな、「高度化」と呼ばれる改良が加えられている。○H-IIAが抱えていた問題H-IIAロケットは宇宙航空研究開発機構(JAXA、当時は前身の宇宙開発事業団)と三菱重工業が開発したロケットで、2001年に初めて打ち上げられた。それ以来、探査機「はやぶさ2」、「あかつき」や、東日本大震災のときに被災地を観測した「だいち」、そして今日や明日の天気予報にとって欠かせないデータを提供する「ひまわり8号」といった、数多くの人工衛星を打ち上げてきた。H-IIAの打ち上げ数は、2015年10月の時点で28機にもなる。これは日本で開発されたロケットの中では最も多い数だが、ほぼ同時期に登場した他国のロケットと比べると少ない。米国やロシア、中国などは、同じロケットを1か月のうちに2機、3機も打ち上げたりしている。H-IIAが打ち上げた衛星の多くは、政府や省庁、JAXAが運用する、いわゆる「官需」の衛星で、一方で国内外の民間企業が運用する衛星の打ち上げは、今回の29号機の積み荷であるテルスター12ヴァンテージの打ち上げを受注するまで、ほとんどゼロだった。H-IIAを運用する三菱重工は世界に向けて売り込んではいたが、いつも世界の他のロケットに奪われ続けていたのだ。人工衛星を使った商売をしている民間企業はいろいろあるが、市場として最も大きいのは、人工衛星を使った通信を事業として行っている会社である。人工衛星は宇宙にあるから、地球の裏側で起きていることでも、衛星を中継することで、世界中どこへでも映像や音声を伝えることができる。皆さんの中にも、衛星放送でドラマやスポーツ中継などを楽しんでおられる方は多いかもしれない。こうした通信衛星が多く打ち上げられる軌道を「静止軌道」、またその軌道に乗る人工衛星のことを「静止衛星」と呼ぶ。そしてこの静止衛星の打ち上げ能力において、H-IIAは他のロケットと比べて大きな格差を抱えていた。○H-IIAは静止衛星の打ち上げが苦手だった静止軌道は、地球の赤道の上空約3万5800kmのところにある。人工衛星というと、地球のまわりをものすごい速さで回っているというイメージがあるが、上空約3万5800kmだと、この速さがちょうど、地球が自転する速度と同じになる。すると、地球から衛星を、あるいは衛星から地球を見ると、相手が止まっているように見えることから、"静止"軌道と呼ばれている。相手が静止している(ように見える)ということは、衛星から通信や放送の電波を発信するときや、逆に地球で受信するときに、アンテナを動かさなくても良いため、通信がしやすくなることから、通信衛星の大半はこの静止軌道を利用している。この静止軌道に向け、ロケットで衛星を打ち上げるのはとても難しい。たとえば赤道上からロケットを真東に打ち上げたとすると、静止軌道と同じ傾きの軌道に衛星を入れることができる。あとは高度だけ合わせれば良いので、ロケットの負担も小さく、またロケットから分離されたあとの衛星の負担も小さくできる。ただ、それができるのは、赤道に近い南米のギアナにロケット発射場をもつ欧州ぐらいである。ギアナはかつてフランスの植民地で、現在もフランス領であるため、この地にロケットの打ち上げ場をもつことができている。しかし、日本や米国、ロシアの場合は、ロケット発射場が赤道よりも北にしかないため、そのまま打ち上げても、赤道から大きく傾いた軌道にしか衛星を入れることができない。そのため、高度だけでなく、その傾きを静止軌道に合わせるため、欧州のロケットに比べて余計にエンジンを噴射しなければならない。そこでロシアや米国のロケットは、ロケットの能力を上げることで、従来は衛星側が負担していたエンジン噴射の一部、場合によってはほとんどすべてを肩代わりすることで、衛星側の負担を軽くするということが行われている。最近では中国も同じ能力を手に入れている。しかしH-IIAは、ロケット発射場が北緯約30度の種子島にしかない上に、ロシアや米国のロケットのように、衛星の負担を肩代わりできるほどの能力はなかった。そのため、欧州のロケットはもちろん、米国やロシアのロケットで打ち上げたときと比べても、より多くの負担を衛星に強いることになっていた。その結果、たとえば他のロケットで打ち上げることを前提に造られた衛星は、H-IIAでは打ち上げられないということもあった。また、H-IIAで打ち上げるために造られた衛星は、他のロケットに合わせた場合よりも若干割高になってしまう。このことが、国内外の衛星通信会社から衛星の打ち上げを受注しようとした場合に、H-IIAにとって大きな足枷となっていたのである。○高度化でロケットはより長く飛ばせるようにこの格差を埋め、H-IIAでも他のロケットと同じ条件の軌道まで衛星を運ぶことができるようにするために、JAXAと三菱重工は2011年度から「高度化」と呼ばれる改良開発を始めた。この高度化では、主に第2段機体に大きく手が加えられている。第2段は宇宙空間を航行し、最終的に衛星を分離する役目を担っており、この改良により、ロシアや米国、中国のロケットが行っているのと同じように、H-IIAでも衛星が負担していた分の一部を肩代わりできるようになる。しかし、それは簡単なことではない。衛星の肩代わりをするということは、ロケットの第2段が衛星のように長時間宇宙を飛び、またこれまでより地球から遠く離れたところでエンジンの噴射などをできるようにしなければならない。たとえばロケットが長時間飛行すると、太陽の光が当たり、温度が徐々に上がってしまう。そこで、第2段のタンクを白く塗り、太陽光を反射させることで、機体の温度が上がり過ぎないようにしている。従来のH-IIAでは、この部分はタンクに塗られた断熱材の地の色である黄土色だったので、一番目立つ改良箇所かもしれない。他にも、バッテリーを増やしたり、搭載している機器の改良などで、長時間の飛行を可能にしている。そして、ロケット・エンジンの噴射と停止を繰り返しできるようにし、さらに精度良く軌道に投入できるよう、小さなパワーで動かせる能力も追加されている。これらの改良策の一部は、これまでの打ち上げの中で試験されたこともあるが、すべてが適用されるのは今回の29号機が初めてとなる。さらに、単に静止衛星をより条件の良い軌道に運べるようになるだけではなく、人工衛星を切り離す際の衝撃を小さくし、衛星にとって乗り心地の良いロケットにするための改良や、ロケットが自律的に飛行できるようにし、地上の設備の一部をなくすといった改良も行われている。こうした改良点も、今回の打ち上げや、また今後の打ち上げの中で試験が進められ、いずれは本格的に採用されることになっている。○高度化のその先へこの高度化によって、従来は衛星側が負担していたエンジン噴射の一部を、ロケット側で肩代わりすることができるようになる。その代償として、打ち上げ能力は少し落ちてしまうことにはなるが、しかしH-IIAの設計を大きく変えることなく、世界水準のロケットとほぼ同等の性能をもらせ、これまで打ち上げることすらできなかった衛星を扱えるようになった意義はとても大きい。そして2013年には、衛星通信大手のテレサット社から、同社の通信衛星テルスター12ヴァンテージを打ち上げる契約を取ることができた。こうした大手の企業はロケットの信頼性を何よりも重視するが、当時も今も、高度化はまだ完成しておらず、信頼性は未知数だったはずである。それでも契約が取ることができた背景には、これまでのH-IIAが培ってきた実績や信頼、そして期待があったのだろう。このテルスター12ヴァンテージを載せた、そして高度化H-IIAの1号機でもある、今度のH-IIAの29号機の打ち上げが成功すれば、H-IIAはいよいよ本格的に、衛星打ち上げの市場に乗り込むことができるようになる。そして今後も安定して国内外から商業打ち上げを受注できるようになれば、ロケットの打ち上げ回数が増え、信頼性が上がるとともに、コストを下げることにもつながるだろう。また、この高度化の技術は、現在開発が進む新型ロケット「H3」にも活かされることになっている。単にH-IIAの改良というだけではなく、次世代に向けた投資でもあるのだ。H-IIAロケット29号機の打ち上げは、2015年11月24日15時23分(10月2日現在)に予定されている。いつもと同じようで、実は大きく進歩した、新しい「高度化H-IIA」と、そして日本のロケットの新たな夜明けの瞬間を、種子島の現地で、あるいはインターネット生中継で、ぜひ見届けていただければと思う。なお、今回取り上げた、これまでのH-IIAの問題点や、他のロケットとの比較、また高度化における改良点などについては、拙稿「世界に追いつけるか 「高度化」H-IIAロケット、ここに誕生す」でより詳細に紹介しているので、興味がある方はそちらもご一読いただきたい。
2015年11月04日2015年9月20日、中国は新型ロケット「長征六号」の初打ち上げに成功した。長征六号に使われている技術は、世界的にも実用例が少ないきわめて高いものであり、またその技術を共有する、中型、大型のロケットの実用化に向けた先駆けとして、今回の打ち上げ成功は大きな意味をもっている。第1回は長征六号を含む、次世代の長征ロケットが開発されるまでの経緯について、また第2回では、長征六号に使われている新開発のロケット・エンジンについて紹介した。そして第3回では、決まった部品の組み合わせだけで様々なロケットを造る「モジュール化」という技術の概要と、その技術が次世代長征ロケットにどのような形で取り入れられたかについて紹介した。連載の第4回では、長征六号の性能や実力、今後の展望をはじめ、ロケット・エンジン以外の新しい技術、そして長征六号の先にある超大型ロケットについて紹介したい。○長征六号の実力かくして開発された長征六号の打ち上げ能力は、高度700kmの地球を南北にまわる太陽同期軌道に最大1080kgとされる。これは日本の「イプシロン」ロケットや、インドの「PSLV-CA」ロケット、ロシアの「ローカト」ロケットに近い性能である。ただ、中国の内陸部から打ち上げる場合は、500kg前後にまで落ちるという。おそらく、地上局などの関係から、エネルギーのロスが多い飛行経路を取らざるを得ないためと思われる。第2回、3回で紹介したように、第1段にはYF-100、第2段にはYF-115という、液体酸素とケロシンを推進剤とするエンジンを使用している。一方で第3段のみ、過酸化水素とケロシンを推進剤に使う、小型のエンジン「YF-85」を4基装備しているといわれている。ただし、このことはロケットを開発した上海航天技術研究院などが発表している資料からは確認できないため、実際は違う可能性がある。事実、第3段には液体酸素・ケロシンの小型エンジンが使われているという説もあり、また今年9月に出回った、長征六号の第3段とされる機体の写真には、大きなノズルが1つ付いていることがわかっており、そもそも「小型のエンジンが4基」というのも間違いである可能性もある。現段階では、どの情報が正しく、あるいは間違っているのかは不明である。あるいは何種類かあり、ミッションに応じて使い分けができるようになっているといった可能性もある。本件に関しては、新しい情報があり次第、またお伝えしたい。過酸化水素とケロシンを使っていると仮定した場合、この組み合わせは触媒を介することで、混ぜ合わせるだけで自然に着火する性質(自己着火性)をもっている。そのため点火装置が不要になり、エンジンの軽量化、低コスト化が図れるほか、確実に点火することができるという利点がある。またエンジンの点火と停止を繰り返すことも比較的簡単にできるため、微調整によって軌道への投入精度を上げたり、複数の小型衛星をそれぞれ異なる軌道に投入したりといった、高い柔軟性、汎用性を実現することができる。この自己着火性は、従来の長征ロケットで使われていた、四酸化二窒素と非対称ジメチルヒドラジンの組み合わせにもあるが、この組み合わせは推進剤自身にも、また燃焼ガスにも高い毒性がある。だが、過酸化水素とケロシンであれば、自己着火性はそのままに、環境や人体にやさしいロケットにすることができる。この過酸化水素とケロシンという組み合わせは、過去に英国の「ブラック・アロウ」ロケットぐらいでしか実用化されたことはない。また過酸化水素は反応性が強いため、取り扱いも難しい。中国にとっては、従来の長征ロケットと同じヒドラジン系の推進剤を使い続けるほうが、多くの面で都合が良かったはずだが、あえて過酸化水素を選択したとしたら、そこには環境や人体への配慮と、新しい技術を積極的に取り入れる貪欲さがあると見て良いだろう。新技術を積極的に取り入れるという点は、他にもさまざまなところで目にする。たとえば第1段の下部には、ガスを噴射することで機体の姿勢を制御する装置が付いているが、この噴射ガスは、YF-100のターボ・ポンプのタービンを駆動させたあとの、酸素リッチのガスの一部を抜き出すことで得られているとされる。また、酸素タンクの加圧も、多くのロケットではヘリウムが使われているが、長征六号ではエンジンで加熱された酸素ガスをタンクに戻し、その圧力を使って加圧させているという。こうした技術は、長征六号を造り上げるために必要不可欠だったわけではない。たとえば、わざわざエンジンからガスを抜き出してこなくても、専用のガス・ジェット装置を積めば良かっただろうし、タンクの加圧もヘリウムを使えば十分である(*1)。しかし、これらの新技術がもし本当に導入されているのであれば、中国はあえて、難しいながらも、部品点数の削減により軽量化と信頼性の向上が見込める、合理的なやり方を採用していることになる。また、打ち上げ準備や発射管制といった点にも新しい技術が投じられている。たとえば打ち上げは「TEL」と呼ばれるトレーラー型の車両から行うことができるため、専用の大規模な発射台を必要としない。TELとはTransporter Erector Launcherの略で、その名の通り、ロケットを積んで目的地まで輸送(Transporter)でき、かつ発射角度に向けて立て(Erector)、発射(Launcher)まで行える車両のことである。TELはロシアや中国の弾道ミサイルの発射システムとしてはごく普通のもので、軍事パレードなどでもよく目にすることができる。また発射や追跡の管制も、移動式の小規模な設備で可能だとされる。これら打ち上げシステムの省力化は、弾道ミサイルの技術から採られたものと考えられるが、こうした地上設備の簡素化により、打ち上げ準備にかかる期間は最短7日間という、即応性の高いロケットに仕上がっている。小型衛星を即座に打ち上げられ、そして最適な軌道に正確に投入できることは、長征六号の最大の特長である。近年、電子機器の小型化、高性能化などのおかげで、小型の衛星でも大型衛星とそん色のない性能を出すことができるようになった。また、小型衛星は比較的安く、短期間で造れることから、新しい技術の実証機として、大学や研究機関で小型衛星が積極的に活用されつつある。新技術をふんだんに使った小型衛星を、長征六号を使って頻繁に打ち上げることができるようになれば、新しい技術の宇宙実証が進み、その成果は大型衛星にも活かされることになり、さらに若手の技術者の育成にも役立つなど、中国の宇宙産業全体が大きく発展することになるだろう。○そして人類は2つの火星行きロケットを手に入れる第2回で触れたように、長征六号に使われているロケット・エンジンは高い性能をもっており、また長征五号のブースターや、長征七号のメインとブースターのエンジンとしても使われることになっている。今回の長征六号の打ち上げが成功したことで、2016年に予定されている長征五号と七号の初打ち上げに向けた関門も、またひとつ開かれたことになった。そしてまた、中国は現在「YF-460」と呼ばれる、推力500トン級の、さらに強力なロケット・エンジンを開発しているとも伝えられる。公開されている系統図からは、二段燃焼サイクルで、1つのターボ・ポンプで2基のエンジンを動かす仕組みを採用していることがわかる。おそらくロシアのRD-180を参考にしたと思われ、また実際にロシアからRD-180が輸入されたという話もあるが、RD-180の推力は4MNほどなので、やはりこれも単なるコピーではなく、推力を増す改良が加えられていると考えられる。ただし、現時点では情報があまりないため、その性能や、ロシアからの輸入が本当にあったのかなど、詳しいことはわかっていない。この500トン級エンジンは、中国が計画中の超大型ロケット「長征九号」に使われるという。長征九号は、長征五号よりもさらに巨大なロケットで、かつてアポロ計画で使われた「サターンV」や、現在NASAが開発中の「スペース・ローンチ・システム(SLS)」に匹敵する能力をもつという。これが実用化されれば、有人の月探査や火星探査も視野に入ってくる。長征九号は、現時点ではまだ検討段階で、正式なプロジェクトとして動いてはいない。また月や火星への有人飛行も同様に、構想の域を出てはいない。しかし、もし長征九号が実現すれば、人類はSLSと同時に、火星まで人類を飛ばせる超大型ロケットを2つも手にすることになる。そう遠くないうちに、人類が火星の地面を踏みしめる日が来るかもしれない。あるいは両者が協力すれば、もっと遠くの世界に行くこともできるだろう。中国のもつ技術にはそれだけの実力があり、その技術を正しい方向に発展させることさえすれば、それは可能なのである。【脚注】*1 ただ、ヘリウムの生産量の90%近くは米国が担っているため、入手が困難になることを見越して、ヘリウムをなるべく使わない仕組みを選択する必要があった可能性もある。
2015年11月02日「半沢直樹」シリーズなどヒット作を連発する池井戸潤原作のTBS日曜劇場「下町ロケット」。主演に阿部寛、ヒロインに土屋太鳳を迎え話題となっている本作だが、この度、帝国重工の審査担当者として、戸次重幸が出演することが明らかとなった。原作は「第145回直木三十五賞」を受賞した池井戸潤の同名小説。受賞時には「人々の希望を繋ぐ爽快な作品」と評され、文庫版を含め累計130万部を超えるベストセラーを記録した。主人公の佃航平(阿部寛)は、宇宙科学開発機構の研究員だったが、自分が開発したエンジンを載せたロケットの打ち上げ失敗の責任を取らされ退職。父親が遺した「佃製作所」を継いで社長として第二の人生をスタートさせ、夢に向かって突き進む。先週放送の第2話では、訴訟を起こされたナカシマ工業との和解が成立。佃製作所は大きな試練を乗り越えたが、第3話からは帝国重工という新たな敵との対決が待っている。そして11月1日の第3話では、ナカシマ工業との訴訟において事実上の勝利を手に入れた佃製作所。多額の和解金も入り、そのうえ帝国重工に特許を譲ればさらに大金が入ってくるとあって、社内は大いに盛り上がるが、ひとり佃だけは別の可能性を探っていた。特許売却か、使用契約かを帝国重工に返答する当日。いずれにしてもバルブシステムの使用権利を手に入れ、「スターダスト計画」の遅れを取り戻そうとしていた財前(吉川晃司)と富山(新井浩文)だったが、佃の口から「部品供給」という予想だにしなかった提案をされる。バルブシステムは自分たちにとって死活問題ということもあり、一度持ち帰って検討すると答えた財前だったが――。今回、帝国重工の企業審査担当者・田村役として「ヤメゴク」や『桜蘭高校ホスト部』に出演していた「TEAM NACS」の戸次重幸が第4話に出演することが決定。そんな戸次さんは「私個人も、視聴者として大変楽しませていただいている作品に出演させていただけること になり、喜びを隠せません。同じ劇団メンバーである安田の肩を借りて、精一杯演じさせていただきました(笑)」とコメント。戸次さんも言っていたように、佃製作所サイドには技術開発部長の山崎を演じる安田顕が出演しており、“TEAM NACS対決”という側面からも楽しめるようだ。また安田さんは「同じTEAM NACSの戸次重幸くんが、下町ロケットに新しい風を持ってきてくれます。佃製作所と対峙し、審査する帝国重工マンとしての役柄と演技に注目です。そして、佃製作所が4話以降どうなっていくのかますます目が離せない展開になっていきますので、是非御覧ください。」とこれからの展開に期待が膨らむコメントを寄せた。物語も序盤のクライマックスに向けて、益々目が離せない展開となってきた本作。「TEAM NACS対決」が物語に拍車をかけること間違いなし。本作の今後も見逃せない。「下町ロケット」は毎週日曜日21時~TBSにて放送。(cinemacafe.net)
2015年10月31日2015年9月20日、中国は新型ロケット「長征六号」の初打ち上げに成功した。長征と名の付くロケットは、1970年代から改良を重ねることで進化し、数多くの人工衛星、有人宇宙船を打ち上げ続け、中国を最盛期の米ソに勝るとも劣らないほどの宇宙大国へと押し上げた。打ち上げ数は200機を超え、成功率も信頼性も、高い水準を維持している。その長征が今、その誕生以来初めて、まったく新しいロケットへと生まれ変わろうとしている。長征六号に使われている技術は、世界的にも実用例が少ないきわめて高いものであり、またその技術を共有する、新しい中型、大型のロケットの実用化に向けた先駆けとして、今回の打ち上げ成功は大きな意味をもっている。この長征六号にはどんな意義があるのか、そこに使われている技術はどんなものなのか、そして、その未来には何が待っているのだろうか。前回は長征六号を含む、次世代の長征ロケットが開発されるまでの経緯について紹介した。連載の第2回では、長征六号に使われている高性能ロケット・エンジン「YF-100」について紹介する。○「酸化剤リッチ二段燃焼サイクル」のケロシン・エンジン長征六号の、第1段には液体酸素とケロシンを推進剤とする強力なロケット・エンジン「YF-100」を1基、第2段も同様に液体酸素とケロシンを使う「YF-115」を1基装備している。このYF-100とYF-115こそ、長征六号の、そして長征七号と長征五号を含む、次世代長征ロケットすべてにおける肝となる部分で、「酸化剤リッチ二段燃焼サイクル」と呼ばれる、きわめて高度な技術を採用している。「酸化剤リッチ二段燃焼サイクル」という言葉のうち、まず「二段燃焼サイクル」というのは、液体ロケット・エンジンを動かすための、いくつかある仕組みのうちのひとつである。液体ロケットの多くは、ターボ・ポンプという強力なポンプで燃料と酸化剤(この2つを合わせて推進剤という)を燃焼室に送り込んで燃焼させ、発生したガスを噴射してロケットを飛ばしている。このターボ・ポンプを動かすために、タービンを猛烈な勢いで回転させる必要がある。そのために二段燃焼サイクルは、まずプリ・バーナーという小さな燃焼室で推進剤を燃やし、生成された高温高圧のガス(*1)でタービンを回してターボ・ポンプを動かし、それによって推進剤を燃焼室に送り込み、さらにタービンを回したガスも燃焼室に送り込んで燃焼させる。推進剤を2段階で完全に燃焼させることから、二段燃焼という名が付けられた。この仕組みは、推進剤をいっさい無駄にすることなく噴射に使えるため、性能の良いエンジンにできるという長所がある。しかしその反面、エンジンの構造が複雑になり、また各所にかかる圧力や温度の条件が厳しく、どこかで不調が起きると途端に爆発する可能性もあり、さらにエンジン始動のタイミングの制御も難しいなど、製造や運用が難しいという短所もある。もうひとつの「酸化剤リッチ」というのは、このプリ・バーナーの燃焼によって生成されたタービン駆動用ガスに、酸化剤(酸素)が多く含まれているということを指している。酸化剤リッチがあるからには、もちろん燃料リッチもあり、こちらは燃焼ガスにケロシンや水素などの燃料が多めに含まれているということである。酸化剤なり燃料なりが豊富に含まれているから、リッチ(rich)というわけである。リッチにしなければならない理由は、タービン駆動用ガスの温度が上がりすぎないように抑える必要があるためである。もし、燃料と酸化剤を最適な比率で燃やしたとすると、配管などの金属部品が耐えられないほど燃焼ガスが高温になってしまう。一部の部品だけであれば、その周囲に推進剤を流すなどして冷却することができるが、エンジン全体を取り巻く配管や、また特に回転するタービンなどの部品は冷却ができない。そこで、酸化剤か燃料かを多めに足して燃やし、わざと未燃ガスが残るようにすることで、タービン駆動用ガスの温度を下げているのだ。燃料リッチにすべきか、酸化剤リッチにすべきかは、使う燃料によって変わる。たとえば液体水素を使うエンジンの場合は、理論的に水素リッチのほうが性能が上がることから、日本のH-IIAロケットや、米国のスペース・シャトルで使われているエンジンは水素リッチで動いている。一方、ケロシンを燃料に使うエンジンの場合は、酸化剤リッチのほうが高い性能が出せる。またケロシン・リッチにすると、高温の中でケロシンが分解されてススが発生し、配管やタービンに付着してしまうため、実用には向かないことから、必然的に酸化剤リッチにするしかない。しかし、酸素はただでさえ反応性が強い上に、プリ・バーナーで加熱されることで、さらに反応性はより高くなり、金属を簡単に腐食させてしまう。それからエンジンの部品を守るためには、特殊なコーティングを施すなどの、高い冶金技術が必要となる。これまで、酸化剤リッチ二段燃焼サイクルのケロシン・エンジンの実用化に成功したのは、ソヴィエト連邦/ロシアだけだった。米国は1990年代に、ソ連/ロシアで開発された酸化剤リッチ二段燃焼サイクルのケロシン・エンジンの技術を入手し、米国内で生産しようとしたが、現実的な予算や人員の範疇では難しいことがわかり断念。結局、ロシアから完成品を輸入し、ロケットに装着して打ち上げている。では、中国はどのようにしてこの難しい技術を手にしたのだろうか。○中国はロシアからRD-120を手に入れた中国で液体酸素とケロシンを使う高性能エンジンの開発は、1985年にはすでに提案されていたという。ただし、このときは開発までには至っていない。その後、1990年にソヴィエト連邦から2基の「RD-120」というエンジンを輸入して分析し、1995年には燃焼試験も行ったとされる。RD-120は現在も運用中の「ジニート」ロケットの第2段に使われているエンジンで、酸素リッチ二段燃焼サイクルのケロシン・エンジンである。なぜ中国がこのエンジンを入手することができたのかは不明だ。ただ、RD-120は高い性能をもつエンジンではあるものの、当時のソ連にはより高性能なエンジンがあったことや、また当時中国とソ連の関係は好転しており、さらにソ連は崩壊寸前で資金難に陥っていたことから、輸出されたとしてもおかしな話ではない。また1995年には、米国のプラット&ウィットニー社もRD-120を手に入れ、燃焼試験を行っており、中国に渡っていたとしてもおかしくはない。中国はその後、このRD-120を下敷きに、1998年ごろから独自のエンジンの研究を始めた。そして1999年には正式にプロジェクトとなり、後にYF-100となるエンジンの開発が始まった。RD-120を基にしているとはいえ、前述のように酸素リッチ二段燃焼サイクルのケロシン・エンジンは技術的に難しく、たとえ手元に実物や設計図があるからといって、すぐに真似して造れるようなものではない。また、RD-120の真空中推力は約834kNであるのに対して、YF-100は約1340kNと大幅に向上していることから、単なるコピーではなく、中国独自の改良も加えられたことがわかる。前述のようにRD-120はジニートの第2段エンジンであり、ロケットの第1段エンジンとしては少し非力であるため、推力を向上させる改良は必須だったのであろう。YF-100は2001年には形になるも、初期は失敗の連続で、大きな爆発事故も経験したという。だが、中国は粘り強く開発を続け、2005年に燃焼試験の成功にこぎつけた。その後も燃焼時間を延ばしたりしつつ試験が繰り返され、2012年には開発完了が宣言された。この時点までで、製造されたエンジンは61基にも上ったという。その後も燃焼試験は行われており、2013年時点での燃焼時間は累計で4万秒を超えるという。これは新型エンジンの燃焼試験の時間としては十分な数字である。最終的に完成したYF-100は、海面上推力1200kN、真空中推力1340kNで、比推力は海面上で300秒、真空中で335秒という性能をもつとされる。これはソ連が開発した世界最高性能のエンジン「RD-170」や「NK-33」よりは若干劣るものの、かなり高い性能である。また推力を65%から100%で可変できる、スロットリング能力ももっているという。ただ、65%から100%の間を連続的に変えられるのか、あるいはあらかじめ設定した作動点のみなのかは不明である。長征六号の第2段のYF-115もまた同様に、液体酸素とケロシンを使う、酸素リッチの二段燃焼サイクルを採用している。YF-100とは姉妹のような関係で、ほぼ同時期に並行して開発されたようだ。YF-115のほうが造りやすいため、おそらくYF-100の開発に向けた習作という意味合いもあったのかもしれない。構想から数えると20年以上、実質的な開発開始から数えても10年以上の歳月をかけ、中国はついに、酸化剤リッチ二段燃焼サイクルのケロシン・エンジンの実用化に成功した。そして今回の長征六号の打ち上げ成功で、YF-100は実際の飛行にも耐えられることも証明された。これにより、同じエンジンを使用する長征七号と長征五号の打ち上げへの関門も、またひとつ開かれたことになる。何より、米国ですら一度は音を上げたエンジンの開発に成功したことは、この分野に限ったことではあるが、しかし確実に、中国が米国に一歩先んじたことを意味する。また、ロシアにしか存在しなかったロケット・エンジンの技術が、中国に受け継がれ、独自の進化を遂げたことは、世界のロケット開発史にとっても大きな意味をもつ。なお余談だが、米国では現在、ケロシンではないものの、同じ炭化水素系のメタンを燃料とする酸化剤リッチ二段燃焼サイクルのエンジンの開発が進んでいる。また、フル・フロウ二段燃焼サイクルという、通常の二段燃焼サイクルよりももっと効率の良い、しかし難しい仕組みのエンジンの開発も進んでいる。さらに、RD-120系の技術は、ウクライナを経て、インドにも渡ろうとしている。現時点ではまだ、中国が成し遂げた成果は際立って見えるものの、そう遠くないうちに、酸化剤リッチ二段燃焼サイクルのケロシン・エンジンの技術は、ロケットの世界ではごくありふれたものになるかもしれない。***かくして開発されたYF-100だが、長征六号の開発は、次世代長征のもうひとつの肝である、モジュール化でさらに難航することになる。【脚注】*1 正確には、超臨界という液体でも気体でもない状態にある。(続く)
2015年10月27日ミキオサカベ(MIKIO SAKABE)とジェニーファックス(Jenny Fax)が10月31日、11月1日に東京・原宿のロケット(ROCKET)で16SSコレクションの受注会を開催する。10月17日にラフォーレミュージアム原宿にて初の合同ショーを行ったミキオサカベとジェニーファックス。今回行われる初の個人受注会では、ファッションショーで打ち出されたイメージやショーピースなどを展示する他、ウェアラブルなアイテムも用意した。新作コレクションの全ピースを一堂に見ることの出来る貴重な機会となっている。【イベント情報】「MIKIO SAKABE & Jenny Fax 2016ss collection showroom『Mr.&Mrs. WHITE』」会場:ロケット住所:東京都渋谷区神宮前6-9-6会期:10月31日、11月1日時間:12:00~20:00
2015年10月22日2015年11月24日に打ち上げが予定されているH-IIAロケット29号機には、「高度化」と呼ばれる改良が初めて施されている。この高度化により、これまでH-IIAが抱えていた問題が解決され、世界のロケットとほぼ同じ地位に立つことができるようになった。連載の第1回では、従来のH-IIAが抱えていた問題について紹介した。第2回では、その問題を解決する代表的な3つの方法と、そして高度化が選ばれた理由について紹介した。第3回となる今回は、高度化で開発された技術と、今後の展望について紹介したい。○高度化で使われている技術第2回で触れたように、H-IIAで世界標準の静止トランスファー軌道に衛星を打ち上げられるようにするためには、ロケットの第2段機体をより長時間宇宙を飛行できるようにし、またロケット・エンジンの着火と停止が繰り返しできるようにしなければならない。具体的には、従来の第2段は7200秒(2時間)しか飛行できなかったが、これを最大2万秒(5時間半)まで延ばし、そしてエンジンの着火と停止の回数は1回増え、計3回の着火と停止に耐えられるようにしなければならない。それらを実現するために、高度化H-IIAでは、次のような改良が加えられている。白くなったタンク高度化が施されたH-IIAを見て、まず目に留まるのは、第2段の液体水素が入った燃料タンクが、白く塗られていることだろう。通常、この部分は断熱材の地の色である黄土色だった。液体水素は放っておくとどんどん気体になってしまうため、長時間宇宙で運用するには、これを少しでも防がなくてはならない。そこで高度化では、タンクを白く塗り、太陽光を反射させることによって、温度が上がり過ぎないようにするという対策が採られている。なお、この白い塗料は、従来見えていた黄土色の断熱材の上に塗っているため、その分第2段自体の質量は増えているが、その増えた分が具体的にどれぐらいなのかは答えられないとのことだった。この白く塗られた第2段は、2013年に打ち上げられたH-IIA 21号機で実際に飛行し、試験がおこなわれ、その結果液体水素の蒸発量が予想通りだったことが確認されている。また、2014年の「はやぶさ2」の打ち上げでも使われており、後述の他の改良点と合わせ、5000秒の飛行に成功している。熱制御とバーベキュー・ロール太陽光による温度上昇は、燃料だけではなく搭載機器にも影響する。もし、ある一面にのみ太陽光が当たり続けた状態で長時間飛行すると、温度変化に耐えられなくなった機器が故障してしまう。そこで高度化では、第2段をロール軸(機軸)周りにゆっくりと回転させ、機体の側面にまんべんなく太陽光が当たるようにして飛行する機能が追加されている。こうした、機体を回転させて熱を制御する技術は多くのロケットや衛星でも採用されており、ちょうどバーベキューで串に刺さったお肉を、焦げないように回しながら焼く様子に似ていることから、一般的に「バーベキュー・ロール」や「バーベキュー・マニューヴァー」と呼ばれている。また、逆に太陽光の当たらない部分はとても冷えてしまうため、ヒーターも新たに搭載されている。蒸発する水素を使った小型スラスターところで、いくらタンクを白く塗っても、液体水素が蒸発することを完全に防ぐことはできない。そこで高度化では、この蒸発した水素をロケットの下部から噴射し、ロケットに若干の加速度を与える機能が追加された。無重量状態では、液体は常に「ちゃぷちゃぷ」、あるいは「ふわふわ」といった感じの、なんともいえない動きをする。そのままの状態でエンジンを動かそうとすると、推進剤を正常に送り込めず、エンジンが動かないか、壊れることもある。そのため、ロケットを少しだけ加速させ、液体をタンクの下側、つまりエンジンへ向けた出口があるところに向けて、押し付けてあげる必要がある。これまではヒドラジンという燃料を使う、小型の噴射装置(ガス・ジェット装置と呼ぶ)させておこなわれていたが、長時間航行し続けるためには、追加で燃焼を積まなくてはならず、質量が増えてしまう。そこで、軌道を航行している間は、蒸発した水素を噴射に使うガス・ジェット装置を搭載することで、ヒドラジンの搭載量を増やさずに、推進剤を押し付けられる時間を延ばすことができるようになった。トリクル予冷また酸化剤の液体酸素にも改良が加えられている。液体酸素はエンジンを燃やす際の酸化剤としてだけでなく、エンジンを再始動する際に、エンジンのターボ・ポンプを冷却する役目ももっている。冷却をしないと、温度が上がったターボ・ポンプによって推進剤が気体になってしまい、正常にエンジンへ送り込めなくなってしまう。これまでの第2段では、エンジン着火前に液体酸素を大量に流し込んで冷却していたが、それでは無駄が多い。そこで高度化では、少しずつ流すことで冷却する「トリクル予冷」という技術が使われる。これにより液体酸素の消費量を抑えつつ、十分な冷却を実現している。電子機器の改良ロケットの航行時間が延びると、当然コンピューターや通信機器などを動かすための電力も増える。そこで新たに、大容量のリチウムイオン電池が搭載されている。また、ロケットの第2段も高度3万5800kmまで飛行し、さらにそこでエンジンの噴射もおこなうことから、その様子を確認したり、指令を出したりといったことができるよう、長距離通信ができる装置が搭載された。第2段エンジンの再"々"着火とスロットリング技術これまでの打ち上げでは、第2段エンジンの「LE-5B」、もしくは「LE-5B-2」は、点火と停止を2回だけおこなえば良かったが、高度化によって遠地点でもう1回噴射するため、合計3回の点火と停止をおこなう必要がある。ただ、LE-5Bは設計時点から再々着火ができるように造られており、これまでの打ち上げの中で実証試験もおこなわれている。したがって、高度化ならではの改良というわけではなく、隠されていた本領がついに発揮される形になる。また、第3回の噴射時には、エンジンの推力を60%ぐらいにまで絞った状態の、弱い推力で噴射される。これは、第3回の噴射で必要な増速量が秒速300mと小さいため、最大パワーで動かすと軌道投入精度が落ちてしまうことから、パワーを抑え、その分燃焼時間を長くすることで、必要な増速量と十分な精度の両方を確保するようにしたためである。実は、この推力を変えられる能力も元からLE-5Bに備わっていたもので、2002年のH-IIA試験機2号機の打ち上げ時に実験もおこなわれている。ただ、今回高度化で実際に使うにあたり、あらためて開発がおこなわれ、また地上での試験もおこなわれている。さらに、再々着火ができることで、たとえば2機の衛星を同時に打ち上げて、それぞれを高度の異なる軌道に投入するといったことも可能だ。こうした技術はすでにロシアなどで実用化されており、日本も同じ芸当をおこなうことができるようになる。○使いやすく、やさしいロケットにするための改良高度化ではまた、打ち上げ能力を上げるだけでなく、使いやすく、また搭載する人工衛星にとってやさしいロケットにするための改良もおこなわれている。ひとつは、ロケットが自律して、安全に飛行できるようにすることだ。これまでは地上にあるレーダーを使って追尾し、ロケットの飛行を見守っていたが、高度化では新たに、ロケットに飛行安全用の航法センサーが搭載される。これにより、地上のレーダーが不要になり、地上設備の簡素化、そして作業員の少人数化やコストダウンにもつながる。この改良は、今回の29号機で初めての技術実証がおこなわれることになっており、また今後も何度か試験を繰り返した後に、正式採用される予定となっている。もうひとつは、ロケットから衛星を分離する際の衝撃を小さくするための改良である。これまでは火工品と呼ばれる、火薬を使った部品を使って、ロケットと衛星との結合部分を分離させていた。しかしこれでは衛星にかかる衝撃が大きくなってしまうため、火工品を使わない、機械式の分離機構が開発された。ただ、この改良点については、今回の29号機の打ち上げでは使われず、次の「ASTRO-H」の打ち上げで初めて実証がおこなわれる計画だという。これ以外の改良点は基本的に、静止衛星や、衛星の複数打ち上げ、また科学衛星などの特殊な軌道に打ち上げる場合にのみ役に立つ技術だが、この2点は、すべての衛星の打ち上げにとって役に立つ改良となる。(後編に続く)
2015年10月02日「半沢直樹」「ルーズベルト・ゲーム」など、大ヒットを記録したドラマ化作品が相次ぐ池井戸潤原作となる10月スタートの日曜劇場「下町ロケット」に、今田耕司の出演が決定した。「池井戸潤氏絶対の代表作」とも評される直木賞受賞作が原作の本ドラマ。すでにキャストには、父親が遺した「佃製作所」の二代目所長となった主人公・佃航平役に『エヴェレスト 神々の山嶺』の公開を控える阿部寛、その娘である利菜役を『orange』の土屋太鳳と、豪華出演陣が発表されているが、このほど追加キャストとして今田さんの出演が決定。今田さんは、フジテレビ系「シバトラ~童顔刑事・柴田竹虎~」以来7年ぶりの連続ドラマ出演となる。本ドラマは、10月3日(土)から朝日新聞にて連載スタートする「下町ロケット2」と同時進行でドラマが進行していくという仕組みになっており、今田さんは後半パートの「ガウディ計画篇」にて重要な役どころを演じることが決定している。今田さんは今回の出演決定に際して、「このチームの作るドラマのファンだったので、参加できてとても光栄です。嫁探しは来年に回します」と、ドラマへの意気込みを語ると同時に、先日、結婚報道があった芸人の千原ジュニアを意識したコメント。プロフーサーの伊與田英徳氏は「役に関しては、後半の内容をお伝えできないのでまだ公表できませんが、キーになる重要な役どころです。どんな演技をしていただけるのか今から楽しみです」と期待のコメントを寄せた。「下町ロケット2」では、ロケットで培った佃製作所の技術が、最先端の医療技術に転用されるというストーリーであり、今田さんは医者として登場するのか、もしくは技術者として登場するのかも注目だ。今田さんの熱演と続報に期待したい。日曜劇場「下町ロケット」は、TBSにて10月18日(日)21:00より放送。(text:cinemacafe.net)
2015年10月01日2015年11月24日に打ち上げが予定されているH-IIAロケット29号機には、「高度化」と呼ばれる改良が初めて施されている。この高度化により、これまでH-IIAが抱えていた問題のひとつが解決され、世界の他のロケットと、ほぼ同じ地位に立つことができるようになった。連載の第1回では、従来のH-IIAが抱えていた問題について紹介した。第2回となる今回は、その問題を解決する代表的な3つの方法と、その中から高度化で採用された方法が選ばれた理由について紹介したい。○格差を埋める3つのやりかた前回触れたように、H-IIAは静止衛星を打ち上げる際、世界の他のロケットと比べると条件の悪い静止トランスファー軌道にしか投入できないという問題を抱えている。そのため、静止軌道へ乗り移るのに必要な衛星側の負担がより大きくなってしまっており、H-IIAが商業打ち上げ市場で苦戦している理由のひとつとなっていた。H-IIAが世界水準のロケットになるためには、どうにかしてこの世界との格差を埋めなくてはならない。そのためには大きく3つの方法がある。そもそも赤道直下から打ち上げる1つ目は「ロケット発射場を赤道近くに造る」ことである。種子島宇宙センターから打ち上げられた衛星が、静止軌道から大きく傾いた静止トランスファー軌道に入ってしまうのは、種子島が北緯30度にあるためである。そこで、そもそも最初から赤道近くからロケットを打ち上げれば、その傾きは最初から静止軌道とほぼ同じになるため、傾きを修正するために必要や増速量が減らせるということになる。この方法は、欧州の「アリアン」ロケットと、国際合弁企業のシー・ローンチ社の「ジニート」ロケットなどで採用されている。アリアンは赤道に近い、南米のギアナに発射場がある。ジニートはウクライナとロシアのロケットだが、大きな船の上に発射台を造り、赤道直下の太平洋上までロケットを運んで、そこから打ち上げている。しかし、アリアンの場合は、ギアナがフランス領だからできることであり、日本が同じことをするのは難しい。ちなみに、かつて日本は1990年代に、南太平洋にあるキリバス共和国の東端にあるクリスマス島の土地を借り、ロケット発射場を造る検討をおこなったことがある。クリスマス島には当時からロケットの追跡局が設けられていたが(現在も使われている)、これを拡大し、ロケットの打ち上げや、当時計画されていた日本版スペース・シャトル「HOME-X」の着陸場所として使おうとしたのである。2000年には島の南半分を借りる契約が交わされ、波止場の新設、道路や空港の補修工事がおこなわれた。しかし、その後HOPE-Xが計画中止になったことで、現在では土地貸借契約も解消されている。もし、クリスマス島にロケットの打ち上げ場所を新たに建設するとなると、たとえば日本で製造したロケットを運ぶのにお金がかかり、かといって現地に工場を造るのも大変である。作業員の移動や滞在にもコストがかかる。それに見合うだけの需要があれば良いが、当時も今も見込めないため、実現には至っていない。またジニートのように船から打ち上げるとなると、たとえば推進剤の貯蔵、運搬をどうするかといった問題や、ロケットや衛星に問題が起きたときに対処できる範囲が小さくなり、事と次第によっては港に逆戻りしなければならなくなる。また塩害への対策なども必要になり、運用が難しくなるという問題がある。両案とも、日本がやるのは不可能というわけではないが、今のところは実現性に乏しい。スーパーシンクロナス・トランスファー軌道2つ目は「もっと地球から遠く離れる軌道に衛星を乗せる」ということである。通常の静止トランスファー軌道は、遠地点高度が静止軌道と同じ約3万5800kmだが、ロケットのエンジン噴射をさらに続け、これをもっと上げ、6万kmや10万kmといった、ぐんと高い軌道に衛星を乗せる。すると、遠地点で衛星がもつ運動エネルギーの多くが位置エネルギーに変換されるため、軌道傾斜角の変更が、通常の静止トランスファー軌道からおこなうよりも少ない燃料でできるようになる。最終的に遠地点高度を静止軌道と同じ高さまで下げる必要はあるものの、トータルで見ると燃料の消費量は少なく済む。こうした軌道のことを「スーパーシンクロナス・トランスファー軌道」と呼ぶ。世界的に見れば、赤道の近くに発射場をもっている国のほうが少ないため、種子島と同様、あるいはさらに北に発射場をもつ米国やロシアのロケットは、スーパーシンクロナス・トランスファー軌道への打ち上げをたびたび行っている。しかし、この方法はロケット側の負担が大きくなるため、その分打ち上げ能力が落ちてしまうという代償を伴う。現行のH-IIAでも、スーパーシンクロナス・トランスファー軌道への打ち上げは可能で、その際に必要な残りの増速量を世界標準の秒速1500mに合わせることもできるが、その場合SRB-Aを4基装着する最強の204型でも、打ち上げ能力が2トン強にまで下がってしまう。現在、多くの静止衛星は4トン以上あるため、これではあまり役に立たない。また、衛星の最大到達高度が非常に高くなることで、ロケットや衛星の追跡や通信が難しくなり、運用が大変になるという問題も新たに生まれることになる。○大きな荷物を玄関先から部屋の中までそして3つ目、またH-IIA高度化で採用された方法が、ロケットの第2段機体を使い、これまで衛星が負担していた分のエンジン噴射を肩代わりするというものである。第1回で触れたように、静止衛星が静止トランスファー軌道から静止軌道に乗り移るためには、遠地点でエンジンを噴射して近地点高度を上げ、そして軌道傾斜角を赤道上と同じ0度に変更する必要がある。そこでもし、ロケット側がその噴射のいくらか肩代わりすることができたならば、その分衛星の負担を軽くすることができる。これが高度化の考え方である。例えるなら、今まで大型家具のような大きな荷物を注文しても、玄関先までしか届けてくれなかったけれども、それが部屋の中まで運んでくれるようになる、といった感じだろうか。組み立てや設置はこれまで通り自分でやらなければならないものの、全体的な負担はかなり軽減される。同様の打ち上げ方法は、ロシアや米国、中国のロケットでも採用されている。特にロシアのロケットは、スーパーシンクロナス・トランスファー軌道と組み合わせることでより衛星の負担を小さくすることができ、また3.3トン以下の衛星に限られるものの、静止軌道に衛星を直接投入することもできる。H-IIAの場合、これまでは遠地点高度が静止軌道と同じ約3万5800kmに達したところで衛星を分離していたが、高度化ではこの時点では分離せず、そのまま衛星といっしょに慣性飛行し、軌道を約半周する(この慣性飛行の間を「ロング・コースト」と呼ぶ)。そして軌道の遠地点に達したところでまたエンジンを噴射し、軌道傾斜角を変え、同時に近地点高度を上げてから、衛星を分離する。これにより、分離後の衛星はアリアン5などで打ち上げられた場合と同じ、秒速1500m分の増速量だけで静止軌道にたどり着けるようになる。もちろん、この場合でも代償として打ち上げ能力は落ちるものの、スーパーシンクロナス・トランスファー軌道に打ち上げた場合ほどではなく、4.6トンから5トンほどまでに止まる。最近では6トンや7トンもある大型の静止衛星が出てきているため、少し心もとないが、中型の静止衛星の需要はまだ多い。だが、この打ち上げはロケットにとって大きな負担になる。軌道を半周するということは、ロケットの第2段機体はそれだけ長時間の宇宙航行に耐えなければならない。また、ロケット・エンジンの点火と停止を繰り返すのは難しく、たとえば無重量状態でタンクの中の推進剤がどういう動きをするのか、その動きをどうやれば制御でき、そしてどうやればエンジンに確実に送り込めるのか、といった知識や技術は、一朝一夕で得られるものではない。高度化が実現できた背景には、JAXAと三菱重工が長年、液体酸素と液体水素を使うロケットを運用し続けてきたことによるノウハウの蓄積がある。まさに日本の液体ロケット技術の集大成と言えよう。では、高度化を実現するために、H-IIAにはどんな改良が加えられたのだろうか。(続く)
2015年10月01日