12人の女性たちの生き方を、12星座になぞらえて紹介していくショートクロスストーリー『12星座 女たちの人生』。 キャリア、恋愛、不倫、育児……。男性とはまた異なる、色とりどりの生活の中で彼女たちは自己実現を果たしていく。 この物語を読み進めていく中で、自身の星座に与えられた“宿命”のようなものを感じられるのではないでしょうか。文・脇田尚揮【12星座 女たちの人生】第142話 ~魚座-10話~“フラワーエッセンスの資格を取ろう”自分の中で、「これだ!」と思えるものが見つかった矢先……すぐに、次の難関がやってきた。資格認定してくれる団体、多すぎ! 一体どの団体が良いのか分からないわ……。講座自体も様々。びっくりするほど高いものから、拍子抜けするほど安いものまで色々ある。1回の講義で済むものもあれば、20回も受講しなくちゃいけないものも。『う~~ん』悩む。あっ……と、いけない。占いの館に連絡しなくちゃだ!電話機を取って、館に電話する―――……相談したところ、今日から私は“電話占い師”になった。あっけないものだった。待機の仕方や、電話鑑定での注意事項なんかを簡単に教えてもらい、WEBページの作成方法など基本的なことは、後ほどメールで連絡くれるとのことだった。『もう少し引き止めてくれても良いのに……』まぁ、私は中堅どころだし、他に凄い先生も一杯いるしね。ブースの数だって限られてる。“替えはいくらでもいる”とは思わないけど……。実際、占い師の世界は“実力社会”だ。本当は、主婦が片手間にできる仕事ではないだろう。プロとしてトップを走り続けたいのであれば尚更だ。でも、良いんだ。私は私なりのやり方で、人の役に立ちたいんだもの!『さてと。どの講座にするかな……』それから1時間ほど様々な講座を見比べたけど、結局選ぶことはできなかった。『う~ん、選べないなぁ……誰か教えてくれないかなぁ……』―――と、そこで閃いた夢叶と同じ幼稚園に子供を預けている“ママ友”の安岡さん、確かお花の講座をやっているって聞いたわ……。善は急げ。すぐに電話で聞いてみよう!『やすおか………あった!』スマホのコールボタンをプッシュした―――私は思いつきで行動してしまうところがある。子供の頃からいつもこんな感じ。夢ばかり見て、直感のままに動いちゃうのよね。でも、それが正しい選択ということも少なくなくて……。てっちゃん……今の旦那サマとの、恋のキッカケもそうだった。当時、私は社会人吹奏楽団に入っていて、“和辻君”……てっちゃんもそこに所属していた。とは言っても顔見知り程度の関係で、異性として意識したことなんて全然なかった(これはてっちゃんには内緒だけどね)。その時は、ちょうど合コンで知り合った“タケルさん”って人に、猛アタックされていたわ。あまりにも一生懸命押してくれるから、もうこの人と付き合っちゃおうかなって思ってたのよね……。でも、その矢先のことだった。あの日はどしゃ降り雨だった。演奏会前日、ホールの下見をした後“なんとなく”寄り道をしようと思って、普段は行かない花屋さんに向かっていた。そしたら途中の公園で、雨の中、傘もささずに突っ立っている人が。ジッと見てみると、知り合いの“和辻君”でビックリしちゃった。彼は、いつも冗談を言って周りを楽しませる“盛り上げ役“”で、ひょうきん者。友だちとしては良いけど、恋人としてはちょっと……という感じの人だったわ。飲み会なんかでは下ネタを連発してたしね。そんな彼が、びしょ濡れで虚ろな目をして立っている……。私には衝撃だったわ。心配になって声を掛けたら、彼、泣いていたの。『あれっ、どうしたの和辻君?』「彼女と別れて……」いつもの彼からは絶対に想像もつかない、絶望に打ちひしがれた翳りのある表情。胸がズキュンとしちゃった。『風邪引くよ?』「いいよ、放っておいて……」『放っておけないから言ってるの!』私は可哀想な人に弱いの。そして、こうと決めたら自分でも驚くくらい強引になる。彼を自宅まで連れて行って、お風呂を沸かしてあげて……。今まで家に男の人を入れたことなんてなかったのに、アッサリ陥落。その時、ピンときたの。この人は、きっと“未来の旦那サマ”だ……って。結果、その通りになった。―――コール音が鳴っている。そして「はい、もしもし」安岡さんの声。『あっ、どうも……和辻です』「まぁ、和辻さん、どうなさったの?」安岡さんはいつも上品で、とてもおっとりした人。『突然すみません、確かフラワーエッセンスを学んでいらしたと思って……』「ええ、だいぶ前ですけど、受講していましたよ」『今回私も受けてみたいなと思いまして』「まぁ! そうなの! お仲間ができて嬉しいわ!」『でも、どの講座が良いかわからなくて……』「和辻さん、それならオススメの講座があるわ! 知り合いが講師をされているの」―――やった! ドンピシャ! やっぱり私、冴えてるぅ~!『本当ですか!? ありがとうございます! ご紹介いただけませんか!?』「ええ、もちろん! 良ければ今から私の自宅にいらっしゃいません? 主人もいないし、今ひとりなの」『ご迷惑でなければ、是非!』こうして、私の“第一歩”は始まった―――【今回の主役】和辻花子(フレイア華) 魚座33歳 占い師既婚者であり、夫に和辻哲夫、子供に和辻長輝(9歳)と和辻夢叶(5歳)がいる。家庭と仕事の兼ね合いで悩みつつも、占い師としてそこそこの人気を得ている。しかし、あるお客の鑑定をきっかけに、占いの限界を感じて心理カウンセラーの資格を取ろうと考える。(C) Champion studio / Shutterstock(C) Dragon Images / Shutterstock
2017年08月18日12人の女性たちの生き方を、12星座になぞらえて紹介していくショートクロスストーリー『12星座 女たちの人生』。 キャリア、恋愛、不倫、育児……。男性とはまた異なる、色とりどりの生活の中で彼女たちは自己実現を果たしていく。 この物語を読み進めていく中で、自身の星座に与えられた“宿命”のようなものを感じられるのではないでしょうか。文・脇田尚揮【12星座 女たちの人生】第141話 ~射手座-最終話~―――半年後大きな講義室にズラリと並んだ机。その前には教壇と部屋いっぱいの、大きな黒板。基礎薬学入門の講義が終わり、座っていた学生たちが一斉に退室していく。私は、黒板に書かれてある内容を全てノートに写している最中だ。どんなに小さなことでも、漏れなくメモしておきたいのは、もはや性分としか言い様がない。『よし……っと』だんだんと日も落ちてきた。ひとり残った講義室に差す夕日は、どこかノスタルジック。不思議と高校時代を思い出す。大学生活が始まって、もうすぐ3ヶ月が経とうとしている。履修方法、講義内容、学生食堂……。何もかもが新鮮で、驚きの連続だ。友達は……まだ出来ていないけど……。―――恋人はいる。講義室を出てLINEを確認する。「6時に迎えに行くね」とメッセージが入っていた。6時まであと5分。急がなきゃ!茜色のキャンパスでは、青春真っ只中の学生たちが“サークル棟”へと向かい、ゾロゾロ歩いている。その流れに反するかのように、小走りで正門前へと向かう。―――いた!見覚えのあるBMWが、ハザードランプを点滅させて停まっている。駆け寄るとドアが空いた。『ごめんなさい、真司さん! 講義内容を書き写すのに手間取っちゃって……』ハアハアと息を切らせながら喋る私に、「大丈夫だよ。さぁ、乗って」と優しい言葉をかけてくれた。そう、彼、真司さんが“私の恋人”―――半年前、鍵を取りに行くという名目で、真司さんの家にお邪魔した“あの日”。あの日から私たちは、“本当の意味で”恋人になれたんだ。「わざわざ取りに来てもらって、申し訳ないね……ハイ、これ。」ウサギのマスコットがついた鍵を、真司さんが差し出してきた。だけど、私はそれを受け取らない。『あの……真司さん……私、間違っていたわ』「……どういうこと?」『夢のためには、何かを我慢したり、切り捨てたりしないといけないって思っていたの。でも、人に迷惑を掛けながらでも、欲しいもの全部手に入れたい!』「…………」『だから、私と“付き合い直して”下さい!』我ながら、意味不明なことを言ったと思う。しかも相当自分勝手。だけど、頭に浮かんできた言葉を、そのまま彼にぶつけることができた。「……初めて、ホンネで話してくれたね」そう言って、彼は抱きしめてくれた。「沙耶、俺って、そこまで甲斐性なしじゃないよ? もっと甘えて、頼ってくれていいんだから……」『真司さん……、私…、私……』言葉が出てこない。今まで、心に浮かんだことは全て、頭の中で考え直して、結局ほとんど飲み込んできた。でも、今回はそれとは違う。言いたいことが沢山ありすぎて、詰まっている感覚。ただ一言、全てまとめて、『ありがとう』そう言えた。―――それから彼は、私のためにいろんな約束事を決めてくれた。私が、恋と仕事と学業を、“両立”するための決めゴト。効率化を考えて、一緒に住むこと。学業を最優先して、卒業を目指すこと。仕事はムリをしない範囲でシフトを組んでもらうこと。忙しくてもできる限り一緒に食事すること。月に2回はデートすること。金融庁に勤めている彼だけあって、情報処理能力は抜群。アッサリと私の求めているものを提案してくれた。お陰で、こうして大学生活が始まった今でも、何の問題もなく毎日を過ごせている。私もかなり、彼に頼ることができるようになった。夜の方も……甘え上手になってきたと思う。結局、私が、考え過ぎていただけなのよね―――今も彼は、こうして私を勤務先の病院まで送り届けてくれている。こんな人……多分、日本中探しても、きっといやしないわ。「今日の予定はどんな感じですか、お嬢様?」ハンドルを握りながら、彼が冗談めかしてきいてくる。『そうね……到着後、患者さんの容態管理とカルテ整理、並行して急患が入れば手術サポート。終わりは……夜中の3時かしら』「沙耶って、ホント、“マイ・ルール”大好きだよね。自分を追い詰めることに快感覚えてるんじゃない?」『もう! そんなことないよ~』真司さんの肩をペシッと叩く。このやりとりが、たまらなく楽しい。半年前にはなかった感覚。心の底から泣いたり、怒ったり、笑ったりできる。この人となら、あらゆる感情を共有していける。私は、“自己完結の人生”からは、もう卒業したんだ。これからは、彼と、周りの人たちに甘えながら、色んな夢を叶えていけるだろう。―――勤務先の救急病院が見えてきた乙女座の女の人生は、“I analyze.” ~私は分析する。~自分の掲げた目標に対しての責任。決して破綻することのないように組み込まれた行動原理は、機械プログラミングのよう。だけど、ひとつボタンをかけ違うと、全てが崩壊し無駄になってしまう危うさも内包している。自分ひとりで完結させるというのは、そういうこと。だからこそ、周囲の人々との調和を大切にし、最適化を図ってもらうことが大事なの。視野が狭くなってしまわないためにも……。“目的のために手段を選ばない”なんて考えは、もう捨てたわ。“手段が目的を正当化する”ことだってあるんだから。今、私は助けられています―――。乙女座の女の人生 ~Fin~【今回の主役】鈴木沙耶 乙女座30歳 看護師眼鏡の似合うクールビューティーだが、理想が高くいわゆる完璧主義者なところが恋を遠ざける。困っている人を助けたいという思いから、看護師として8年間働いている。しかし、理想と現実のギャップに悩んでおり、さらに自分を高めるために薬学部に行こうと考えている。結婚願望はあるのだが、仕事や夢が原因で彼(辻真司)とうまくいかない。(C) Africa Studio / Shutterstock(C) Jacob Lund / Shutterstock
2017年08月17日12人の女性たちの生き方を、12星座になぞらえて紹介していくショートクロスストーリー『12星座 女たちの人生』。 キャリア、恋愛、不倫、育児……。男性とはまた異なる、色とりどりの生活の中で彼女たちは自己実現を果たしていく。 この物語を読み進めていく中で、自身の星座に与えられた“宿命”のようなものを感じられるのではないでしょうか。文・脇田尚揮【12星座 女たちの人生】第140話 ~乙女座-11話~重たい足取りで自宅へと戻る。ドアを閉めてカチャリと鍵をかける。統制の取れていた“自分の世界”が、少しずつ壊れていく。だけど、頭では理解できても、実際にそれができるかと言えば別問題。『もしも、私がもう少し柔軟だったら……』“真司さんと上手くいったかも”とは、声に出せなかった。声にすると、一気に何かが溢れ出してきそうで怖かったから―――彼は、いつも言っていた。「仕事、忙しいだろうから合わせるよ」「いつでも頼ってね」「たまには俺に甘えて」それなのに、自分ひとりで勝手に背負い込んで、上手くやろうとして……。―――大切な人を傷つけ、捨てた。身体が重たい……。考えががまとまらないと、こうも怠いのか。弱いな、私は……。メイクも落とさずシャワーも浴びないまま、ベッドに横になる。いつもなら絶対にしないこと。“マイ・ルール”を破る。これまで私は、何を大切にしてきたんだろう。形式? 表層? 自分の弱い心……?そう、私は強くなんてない。弱い自分を守るために、先に起こるであろう不確定要素を全て排除してきた。……そういうことだったんだ。本当に強いのは、真司さんや三浦さん。自分のことだけでも大変なのに、人に合わせて融通を利かせて……優しい人。私は自分のことで精一杯。だから冷たく切り捨てた。最低だ……私。ごめんなさい、真司さん。失ったものの大きさと、自分の不甲斐なさを呪いながら、私は浅い眠りに落ちた―――良い子で在りたかった。良い子じゃないと、嫌われるから。お母さん、私、良い子だよ。だから独りにしないで。もっと構って……そうして締まる扉。『……ハッ!』―――夢小さい頃の夢を見た。父は大学で教鞭をとり、母は女医として働く。姉はとても優秀で、いつも成績はトップだった。でも、私は……薬学部に落ちた私に、母は心底失望していたようだった。私は期待に応えられなかった……悪い子。だから、一生懸命頑張った。看護学校に通いながら、受験勉強をした。―――薬学部に入りなおすために。恋人もつくらず、誰とも馴れ合わない毎日。看護学校にいるのに、隠れるように大学受験のテキストを開く“仮面浪人”生活。でも、それでも働き始めて、現場に出るようになって、やり甲斐を感じてきたことは確かだ。「人の役に立ちたい」この気持ちだけは、確かだった。そして、私の願いは叶った―――でも、それって正しかったの?目的のために殻に閉じこもって、私を愛してくれる人を散々傷つけてきた。これじゃあ、まるで……お母さんと一緒じゃない―――今日も出勤はゆっくり。午後3時からだ。まだ、11時……起き上がりたくない。ベッドに横たわったまま、スマホの電源を入れる。きっともう、真司さんから連絡はないのだろう。このまま、本当に終わってしまうんだ……。スマホの画面が淡く光る。LINE2件か……。タップすると……そこには―――真司さん!? どうして……?急いで本文を確認する。「お疲れ様。うちにそっちの自宅の合鍵を忘れていたままだったよ」「送っても良いけど……どうしたらいい?」―――これは……!これは私にとって、もう一度やり直す本当に“最後のチャンス”になるかもしれない……!どうしよう……どうすれば良い?会うこと……直接会って話をする。でも、何を?私は彼を振っているのよ……、何を今更。“完璧にやろうとしたら、家庭か仕事か、あるいは自分のどこかが壊れちゃう。だから、どれも不完全にバランスをとりながらやっていくの……”三浦さんの言葉が思い出される。筋を通さなくて良い。自分の今の気持ちを正直にぶつけるだけでも良い。あとは、結果を受け止めるだけ。「こんにちは。わざわざ連絡ありがとう。送ってもらうのは悪いし、今から支度して13時にそっちに行ってもいい?」これが、今の私なりの“最適解”。真司さんが私の名前を書いてない以上、私も真司さんの名前を出さず、鍵を直接取りに行く理由付けもできた。そして、鍵を取りに行くとも明言していない。……って、こういうところが、ダメなのよね。素直に、“会いたい”って言えたら良いのにね。小賢しい自分に辟易する。LINEはすぐに既読になり、「分かった。待ってるよ」とだけ返信が帰ってきた。まるで待ってくれていたかのように。これで、準備はできた。私にとっての“ラスト・チャンス”。真司さんとやり直すことだけじゃない。自分の人生……生き方に関しても、変われる最後のチャンスなんだ……。―――私はバスに乗っていた。いつも通りの服装。メイクも気合を入れず。全力で“さりげなさ”を演出した装い。緊張する。こんなふうに緊張したのは、いつぶりだろう。学生時代? 病棟で重症患者を看たとき以来? いや違う、この緊張の感覚は……、恋をした時以来―――バス停で降りて、一歩一歩真司さんのマンションへと向かう。何度も来たはずの道なのに、どうしてこんなに新鮮なんだろう。これまで気がつかなかった植え込みや、小さい公園に気づく。彼に会ったら言おう。昨日一日のことこれまでのことこれからのことと……そして、“自分の気持ち”。エントランスに到着する。一瞬、躊躇したけれど、心を決めて彼の部屋番号を押した。【今回の主役】鈴木沙耶 乙女座30歳 看護師眼鏡の似合うクールビューティーだが、理想が高くいわゆる完璧主義者なところが恋を遠ざける。困っている人を助けたいという思いから、看護師として8年間働いている。しかし、理想と現実のギャップに悩んでおり、さらに自分を高めるために薬学部に行こうと考えている。結婚願望はあるのだが、仕事や夢が原因で彼(辻真司)とうまくいかない。(C) Syda Productions / Shutterstock(C) ginger_polina_bublik / Shutterstock
2017年08月16日12人の女性たちの生き方を、12星座になぞらえて紹介していくショートクロスストーリー『12星座 女たちの人生』。 キャリア、恋愛、不倫、育児……。男性とはまた異なる、色とりどりの生活の中で彼女たちは自己実現を果たしていく。 この物語を読み進めていく中で、自身の星座に与えられた“宿命”のようなものを感じられるのではないでしょうか。文・脇田尚揮【12星座 女たちの人生】第139話 ~乙女座-10話~「鈴木さん、お疲れ様。305号室の高村のおばあちゃん、大変だったでしょう」先輩ナースの三浦さんが、心配そうにこちらを見ている。『あ、いえ……これも看護師の仕事ですから』「そっか。鈴木さんは、強いのね」“強い”か―――「でも、今日の鈴木さん、顔が曇っているように見えるけど……何かあった?」『えっ……』……真司さんのこと。自分では割り切ったつもりだけど……、やっぱり割り切れていないんだろうなぁ、私。でも、後はもう時間が解決してくれるのを待つしかない。『ちょっと、色々ありまして……』「色々あるわよね、人間だもの……。この仕事についてるとね、プライベートでの人間関係が疎かになっちゃうからなぁ」少し溜め息混じりに三浦さんが呟く。独り言とも取れるような、その口調の裏にはどんな想いがあるんだろう。前から疑問に思っていたことを聞くなら、今がチャンスかも……。『あの……三浦さん』「ん?」『三浦さんはご結婚しているのに、この救急病棟で働いていらっしゃるじゃないですか。どうやって両立させているのかなぁって……』「両立……ねぇ……」苦笑しながら三浦さんが、イスをこちらへと寄せてきた。「両立なんてできてないのよ……私。家じゃあケンカも絶えなくてね。ダンナはいつも今の仕事を辞めろ! って言うんだよね……」―――そうなんだ。「でね。ダンナ、空手の有段者だから、ケンカになるとモノを壊しちゃうの。この間も、壁を思い切り殴って穴を空けちゃって大変だったわよ……うちのチビは怖がって泣き出すしさ」『そうだったんですか……』「そうよ、救急病棟で働きながら、家事も育児もダンナの相手も完璧にするなんて、そんなスーパーウーマンみたいなこと、出来るわけないじゃない」『そう……ですよね……』「そうそう。だけどね……」少し三浦さんが、優しい顔になる。「それでも、家族の絆があるから“ガンバロウ”って気持ちになれたりするものなのよ。矛盾しているけど……家族の存在が仕事の、そして、仕事が家族生活の活力になってるって思うの」意外な言葉だった。私にはない発想。「あはは! 驚いたって顔、してるわね」『え、あっすいません』「いやいや、気にしないで。鈴木さんは完璧主義じゃない? 見ていていつも思っていたわ。でも、私にはそれはムリ。どこかで必ず歪みが出てきちゃうもの」『歪み……』「そ。完璧にやろうとしたら、家庭か仕事か、あるいは自分のどこかが壊れちゃう。だから、どれも不完全にバランスをとりながらやっていくの……あっ! また高井さんだわ……ちょっと行ってくるね!」そう言って、三浦さんは廊下を駆けて行った。―――衝撃だった。何事も計画立てて、それを遂行していく。100%とは言わずとも、ほぼ100%に近づけるように努力する。それが私の信念だった。それなのに、三浦さんは“不完全”であることが、仕事とプライベートを両立させるコツだと言う。何だか、これまで自分が信じていたものが崩れていくような感覚。その日、私の頭の中はショートした―――夜勤が終わり、更衣室で私服に着替える。これから帰宅だ。今日はミスをして、ドクターから怒られてしまった。何だか、一日中ずっと心がモヤモヤしていた。少しボヤけた頭の中に喝を入れるべく、冷たいミネラルウォーターで喉を潤す。―――モヤモヤの原因は、何?地下鉄に向かい歩き始める。明け方4時は、まだ真っ暗。街中が寝静まっている。『夜明け前か……』私は“もしも”という言葉が好きじゃない。だって、今起きて、目に見えることが“全て”だから。“仮のこと”を考えても無意味だし、無価値。でも―――今、少しその“もしも”について考えている自分がいる。もし、もしも……私が完璧主義でなければ……仕事をしながら、学校に通いつつ……恋もできるの……?そういえば―――私の父は、大学院に通いながら不動産会社で働いて……そして、母を射止めたらしい。その話を聞いたとき、私は小説を読んでいるような気分だった。別次元の話過ぎて……。でも、こう言っていた。「職場に恵まれた。上司が理解ある人だったから、相談して大学に通えるような勤務形態にしてもらえたんだよ」と。そして照れながら、「お陰で、大学院で知り合った“お母さん”と結婚できたんだ」って、頭を掻きながら語ってくれたっけ。父は私とは正反対の性格で、どこかいい加減で抜けているところがある。でも、何ていうか……いつも周囲の人から助けられていると思う。これまで、私は父のことを“運のいい人”だとしか思っていなかった。でも、そうじゃないんだ。周りの人達に協力してもらえる環境を作れるか、会社や上司に交渉できるか、日頃から周囲の人と信頼関係を築けるか、自分のワガママのために融通を利かせてもらえるか。こういった“交渉力”や“人の良さ”が、父のあらゆる“両立”を可能にしたのだ。そう気づいた。自分ひとりで抱え込むことなく、誰かに頼ったり甘えたりしながら柔軟に生きる。私にも、そんな器用なことができるだろうか。東の空から、太陽が昇ってきた。街が目覚め始めたようだ―――【今回の主役】鈴木沙耶 乙女座30歳 看護師眼鏡の似合うクールビューティーだが、理想が高くいわゆる完璧主義者なところが恋を遠ざける。困っている人を助けたいという思いから、看護師として8年間働いている。しかし、理想と現実のギャップに悩んでおり、さらに自分を高めるために薬学部に行こうと考えている。結婚願望はあるのだが、仕事や夢が原因で彼(辻真司)とうまくいかない。(C) Byjeng / Shutterstock(C) Jose AS Reyes / Shutterstock
2017年08月15日なんだか過去の恋が妙に懐かしく思えたり、今の恋のアラ探しばかりしてしまったりする時ってありませんか?それは水星の逆行が影響しているのかも。水星が逆行している時期は、恋を積極的に進めるのはNG。過去を振り返り、問題点があれば修正するチャンスを与えてくれるのが「水星逆行」。あなたの気持ちが後ろ向きになるのは自然なことなのです。◆水星逆行から得られる気づき水星はコミュニケーションを扱う天体です。その水星が逆行すると、意思の疎通がうまくいかなくなる、誤解が生じやすい状況になる、といったことが考えられます。この期間に悲観的にならず、無事に乗り切るには、過去に失敗したことに再度取り組んだり、うまくいかないことを通して自分の内面に向き合ったりすることが大事。そうすれば、新しい気づきを得られ、恋にも余裕が生まれるでしょう。◆今回の水星逆行のテーマ8月13日から9月5日まで、水星は乙女座から獅子座に向かって逆行していきます。これは細かい気遣いができて周りのために尽くす乙女座から、自分に正直に、理想的な恋がしたいと望む獅子座へとシフトチェンジしていく流れです。今まで自分の中で効果的だったものが崩れ、「私って本当はどうしたかったの?」という気づきがあなたの中にもたらされるでしょう。今回の水星逆行がどんな気づきを与えてくえるのか、星座のクオリティ(3区分)別にご紹介します。※クオリティとは12星座を4つずつ、3種類に分けたもので、「活動宮・不動宮・柔軟宮」の3種類に分けられ、基本的に行動傾向を表しています。クオリティ(3区分)【活動宮】牡羊座・山羊座・天秤座・蟹座【不動宮】獅子座・牡牛座・水瓶座・蠍座【柔軟宮】射手座・乙女座・双子座・魚座◆活動宮に与える影響~距離感→牡羊座・山羊座・天秤座・蟹座◎牡羊座彼のために尽くしても、今までよりも感謝されなくなったと感じるかもしれません。それは無理をしすぎていたことが原因のよう。できる・できないの境界線を明確にするといいでしょう。◎山羊座関係を進めようと思っても足止めをくらうかも。彼の気持ちを確認せず、突っ走るのは得策とは言えません。彼が何を考え、感じているのか気持ちに寄り添うと、パートナーとして再認識されるでしょう。◎天秤座一人の時間を過ごすことで見えてくるものがありそう。あなたを束縛する相手や関係から離れてみることにより、改めてお付き合いの距離感がわかりそうです。◎蟹座わかってくれているだろうという思い込みからすれ違いに発展しそう。言葉にしなくてもわかるというのは水の星座ならではの勝手な解釈。必要なことはきちんと説明していくことがこの時期、重要になってくるでしょう。◆不動宮に与える影響~バランス→獅子座・牡牛座・水瓶座・蠍座◎獅子座お似合いのカップルなのかどうか考えてしまうかも。彼の外面だけでなく、内面もしっかり見ていく必要があるでしょう。真実から目を背けず、向き合うことが大切です。◎牡牛座自分がやりたいことと、相手の要求との間にギャップが生じるでしょう。意固地になるとこじれてしまいそう。楽しさとは?を再認識してみると、妥協点が見つかりそうです。◎水瓶座気持ちがザワつきがち。せっかくわかり合えたと思ったのに、突き放されるような経験をしてしまうかも。初心に立ち返り、彼を一から理解していくことが大切です。◎蠍座彼自身の周辺での評判が気になるようです。自分で確かめ、妥協できるか見極めて。話し合いは優位に進められるので腹を割って話してみるといいでしょう。◆柔軟宮に与える影響~思い込み→射手座・乙女座・双子座・魚座◎射手座この恋愛が自分を高みに連れて行ってくれるものなのか悩んでしまうかも。条件で選ぶことの難しさ、信頼関係について考えさせられるでしょう。◎乙女座今回の水星逆行の影響を最も強く受けるのは乙女座です。権力を伴う関係に疑問が生じ、楽しかった過去や昔のパートナーへと気持ちが向かいやすくなります。ギブアンドテイクの大切さや等身大の自分がわかるきっかけを得られるでしょう。◎双子座あなたの基盤が揺るがされるようなことが起こりやすくなります。絶対に正しいと信じていたことが思い込みであったと気づくのかもしれません。良好な関係を築くには相手の価値に合わせる必要があるようです。◎魚座この人ってこんな人だったの?とある意味、期待を裏切られるでしょう。それはあなたの理想の高さが原因であり、生活に根づいた恋愛を考えるよい機会にもなりそうです。◆終わりに足止め期間のように思える水星逆行も、逃げずに問題を修正すれば、より確かな未来のために必要な停滞だと実感できるでしょう。みなさんが立ち止まらなければ見えなかったことに向き合い、恋に必要な気づきを得られますように。ライタープロフィールAlma/アルマ小さい時から星占い好きで2010年から占星術を本格的に勉強。2013年より対面、メール鑑定、新聞やアプリ等の占い執筆。得意分野は相性占い。赤坂のBARで星座カクテルを提供しながら占い中。
2017年08月13日12人の女性たちの生き方を、12星座になぞらえて紹介していくショートクロスストーリー『12星座 女たちの人生』。 キャリア、恋愛、不倫、育児……。男性とはまた異なる、色とりどりの生活の中で彼女たちは自己実現を果たしていく。 この物語を読み進めていく中で、自身の星座に与えられた“宿命”のようなものを感じられるのではないでしょうか。文・脇田尚揮【12星座 女たちの人生】第137話 ~射手座-11話~―――1ヶ月後……白い岩壁の出窓から見える、一面スカイブルーの海々。カモメの鳴く声と寄せては返すさざ波の音が入り混じって、耳に優しい。私はシチリアの爽やかな風を浴びながら、ワインを飲んでいる。そして、その横ではクリスが何やら本を読んでいる。今回の仕事場はイタリアのシチリア島。クリスのお爺様が彼に遺した別荘を拠点に、コーラルやデマントイドなどの買い付けに行くのが、ミッション。……っていうのは、表向きで、今回の目的は“クリスとのイタリア旅行”なの。「Hey, beautiful. Come over here. (こっちにおいでよ)」クリスが本をパタンと閉じ、メガネを外してこちらを見ている。『クリスぅ~~』後ろからクリスに抱きつく。「Haha……princess, 気に入ってくれたかい?」『Perfect! んもう、最高! クリスがこんな別荘を持っていたなんて、驚きよ!』「Umm……まぁ、正しくは“僕の”ではなくて“お爺さんの”なんだけどネ……」クリスは一人っ子らしく、お爺様が遺した財産の一部を、母親の許可をもらって管理しているとのこと。ま、いわゆる“ボンボン”ってヤツ。私は仕事が好きだからあまりピンとこないけど、お金はあって困るものじゃないからそれはそれで良いわ。クリスはそんな私を好きだって言うし。『ん……ねえクリス? 今日はどこにいこうかしら?』クリスに熱いキスと抱擁をお見舞いし、今日の予定を尋ねる。「そうだネ……pizzaとワインを楽しまないかい?」『Oh! 良いわね! ショッピングもしたいわ!』「遊んでばかりだけど、仕事は……大丈夫なの?」『It’s all right! もう手はずは整えてあるわ。明日の13時にパレルモでジュエリーの買い付けよ』「I’m no match for you.(君にはかなわないよ)」クリスが“やれやれ”ってポーズをしてる。カワイイ……!イタリアって、本当に素敵……ジュエリーを見ても、デザインや色使いの良さは、日本が頑張ってもなかなか追いつけないだろう。世界的にも評価の高いイタリアン・ジュエリーなんかを見ても、ほとんどミラノから世界に発進されているしね。ま、イタリアン・ジュエリーが世界的に高い地位にあるって言っても、イタリアで宝石がたくさん採れているワケじゃないんだけどね。いつか……私も……、ミラノで通用するようなジュエラーになりたいものね。―――2階のラウンジから1階に降りて、シャワールームに入る。ガラス張りの空間の中に陶器製のユニットバス……、これ一体どれくらいかけてリノベーションしたんだろう……?クリスが管理している資産は、想像もつかない。クリスは自分の資産を目当てにやってくる女性がイヤになって、日本に来たって言ってた。働いて輝いている女性が好きなんだ、って。私は、常に動き回っていないと死んでしまう“サメ”のような女だから、ピッタリってワケ……。コックをひねってシャワーを浴びる。昨夜は素敵だった―――キングサイズのアイアンベッドに私を押し倒して、身体全体に熱烈なキスの嵐……。内腿についたキスマークをなぞる。いつもの彼とは思えないくらいに、本能的で官能的で、野性的だった。思い出すと、身体の芯がゾクゾクと疼く。やだ……。“あの日”以来、私のクリスを見る目は大きく変わった。それまで気がつかなかった、男らしさと感性。あの時、ガングロ男に言い放った“ドスの利いた声”……。―――あれはきっと、お爺様譲りのものね。クスっとなる。私は何も分かってなかったんだなぁ。この世の中は、自分の知らないことで溢れている。一番身近にいるはずの彼のことだって、私は何も分かっていなかった。でも……、ひとつひとつ経験していくことでしか、そんなの分かんないじゃん。最初から、完璧に分かっていたら、それこそつまんない。シャワーを止めて、バスローブに身を包む。髪を乾かして、後ろ髪をポニーテールに結ぶ。リビングでは、クリスがオレンジジュースをグラスに注いでくれていた。「サッパリしたかい?」『ええ、とっても』窓から見えるシチリアの太陽は、とても眩しく輝いていた―――射手座の女の人生は、“I understand.” ~私は理解する。~ひとつひとつの経験から、生きていることの意味を体感し実感していく。時にはヘマしたり、大失敗もあるけど……、それすらも、輝かしい私だけの特別な体験。そう、まるでジュエリーのように輝きを放つ、私だけの……。美味しいもの、楽しいこと、好きな人、そういったものに囲まれて暮らすのは幸せかもしれない。でも、一番大切なことは、常に刺激的な毎日を送るというコト。それこそが、いつも極上の光を放つための、私のストラテジー私は今、楽しんでいます―――。射手座の女の人生 ~Fin~【今回の主役】戸部淳子 射手座28歳 ジュエリー卸業ヨーロッパ圏でのホームステイなど、学生の頃から海外経験が豊富で、英語がそこそこ堪能。国外から宝石を買い付けて、ブティックやウェデイング業界に卸している。若さの割に目利きであると評されるところも。イタリア人の彼氏・クリスがいるが、性に奔放で何かとトラブルが起こりやすい。(C) Anna Lohachova / Shutterstock(C) Romas_Photo / Shutterstock
2017年08月11日12人の女性たちの生き方を、12星座になぞらえて紹介していくショートクロスストーリー『12星座 女たちの人生』。 キャリア、恋愛、不倫、育児……。男性とはまた異なる、色とりどりの生活の中で彼女たちは自己実現を果たしていく。 この物語を読み進めていく中で、自身の星座に与えられた“宿命”のようなものを感じられるのではないでしょうか。文・脇田尚揮【12星座 女たちの人生】第137話 ~射手座-11話~手持ちとカードの支払限度額を合わせても支払える金額じゃない……。料金が払いきれない場合は、“売り掛け”をすることになるんだけど……。それをやっちゃうと、またこのお店に返済のために来る羽目になる。そうなると、店側の思うツボ。きっとまた飲むことになるわ。もう、こんなお店、懲り懲りよ。何とか、今日払って帰りたい―――クリスはAmexのプラチナカードを持っているから、それで支払いを立て替えてもらうしかない。『ちょっと待ってて……今、迎えが来るから』「……承知しました」情けないな……私……。クリスが来るまで、あと5分。祈るような気持ちで待つ。ああ、クリス……。お願い、早く来て。スマホの着信音が鳴る―――クリスからだ!トイレに向かい、急いで電話に出る。『もしもし、クリス!?』「お待たせ、今店の前に着いたヨ」『クリス、ありがとう……あの、よく聞いて欲しいの』「どうしたの?」『あのね……私、今日すごく飲んじゃって、料金が払えないの……』「フゥ……」電話の向こうで、彼の溜め息が聞こえる。当然よね……。『それで……ゴメンなさい。クリス、立て替えて欲しいの……』「Jun、キミはいつもそう。ボクの気持ちを考えてくれたことなんてあるのかい?」『こんなお願いをするなんて、本当に悪いと思ってるわ……』「そうじゃない。……ボクはJunにとって何なんだい? 帰国してから、クラブに行ったりホストの店で飲んだり……ボクと一緒にいてくれた時間はほとんどないじゃないか?」『…………』返す言葉もない。クリスはいつだって私のことを考えてくれていたわ。空港に迎えに来てくれたり。酔っ払った私を介抱してくれたり。そして、愛してくれた。でも、私はそこにあぐらをかいて、彼のことをないがしろにしていた。いつでも、クリスは私だけの味方だと思っていたから―――『私……クリスを大切にできていなかったわ……』「Jun、約束して欲しい……せめて日本にいる時は、ボクとの時間を大事にして欲しいんだ」『……うん』「別にキミを束縛することはしないヨ。フットワークの軽さは、Junの“持ち味”だからね」寛容さは、あなたの“持ち味”よ……クリス……。「じゃあ、今からお店に行くから、待ってて……」『あ、あの! クリス!』「ん?」『ありがとう……』「No worries!(気にしないで)」電話はそこで切れ、数分後クリスが店にやってきた。『クリス!』「待たせたね……支払いは?」『こっちよ……』入口近くのテーブルに、ガングロ男が足を組んで座っている。「お支払いですね……ありがとうございます」クリスがプラチナカードを差し出す。ガングロ男が二度見する。おそらく大柄な外国人に驚いたのだろう。突然、クリスが大声でガングロ男をまくし立てる。イタリア語な上にスラングも混じっていて、私も驚いてしまう。独特の巻き舌が、まるでケンカ腰のようにドスを効かせている。簡単に言うと「お前たち、あまりにもやり方が汚いぞ! こんなビジネスがいつまでも成り立つと思うなよ……!」という趣旨のようだ。それ以降は聞き取れなかったが、彼の口調からしてかなりハードなことを言っているに違いない。最後に、ガングロ男の胸を人差し指でトンと押した。店は騒然となり、男はクリスに圧倒されたのか、ポカーンとしている。「OK! 出ようかJun!」私の手を取って、クリスが出口へと引っ張ってくれる。ホスト達の見送りも無い。何だろう……。まるで“シチリア・マフィア”のような凄み。日本のチンピラホストなんて目じゃないわ……。「Hahaha! 見たかい、Jun。奴らビビって声を上げることも出来なかったネ!」嬉々としてクリスが話す。クリスの顔を見上げると、いつものようにブラウンの瞳が輝き、たくわえたヒゲの奥に白い歯が見えている。『驚いたわ……』「僕のgrandfatherは、旧マンガーノのファミリーだったのさ」旧マンガーノ……今で言うガンビーノ一家……五大ファミリーのひとつじゃない!『えええっ!』「いや、それはお爺ちゃんの代の話で、ボクは無関係サ。……まぁ、お爺ちゃんが残した財産や芸術品を管理してはいるけどネ……。お爺ちゃんには、とても良く可愛がってもらったよ。いつもウチに来る人達を、さっきみたいに叱っていたけどね……」全然知らなかった。絵を描いたり、古物商のようなことをしたりしているとは知っていたけど、クリスにそんな背景があったなんて……!「Jun、人は見かけによらないものサ。表面的なものに捉われていたら、本当に大切なことを見失ってしまうヨ」ああ……このイタリア人は……なんてセクシーなんだろう!改めて、私はクリスに惚れ直した。『クリス!』―――ひと目もはばからず、私は歌舞伎町のど真ん中でクリスとディープなキスをした「Jun、キスがブランデー風味だヨ……何年ものなんだい?」そして、もう一度、今度はクリスが熱い口づけを私にくれる。私の身体は、濡れに濡れ、心臓はバクバクと大きな鼓動を刻んでいる。ああ……クリスに抱かれたい……!『ね……クリス、帰ったら私を抱いて……』「Of course!(もちろんさ)」クリスの愛車・ターコイズブルーのプジョーに乗り込み、光と影の境界へと消えていった―――【今回の主役】戸部淳子 射手座28歳 ジュエリー卸業ヨーロッパ圏でのホームステイなど、学生の頃から海外経験が豊富で、英語がそこそこ堪能。国外から宝石を買い付けて、ブティックやウェデイング業界に卸している。若さの割に目利きであると評されるところも。イタリア人の彼氏・クリスがいるが、性に奔放で何かとトラブルが起こりやすい。(C) Svitlana Sokolova / Shutterstock(C) AS Inc / Shutterstock
2017年08月10日12人の女性たちの生き方を、12星座になぞらえて紹介していくショートクロスストーリー『12星座 女たちの人生』。 キャリア、恋愛、不倫、育児……。男性とはまた異なる、色とりどりの生活の中で彼女たちは自己実現を果たしていく。 この物語を読み進めていく中で、自身の星座に与えられた“宿命”のようなものを感じられるのではないでしょうか。文・脇田尚揮【12星座 女たちの人生】第134話 ~双子座-11話~「はい、もしもし」この声は……、義久さんの声だ。思わず息を呑む。良かった……。『あの……私です……』「……ああ」『あの……今、どうされていますか?』「うん、自宅にいる。これからはフリーとしてやっていくつもりだよ」『二人のこと、知られてしまったの……?』あえて、“二人”と言う。向こうで誰かに聞かれているかもしれないから。「……そうだね」もうすぐ切れちゃう……急いで100円玉を追加する。心臓がバクバクと音を立てているのが、自分でも分かる。『もう、会うことはできないんでしょうね……』「難しいだろうね」そうか……、難しいのか。そうだよね、もう会えないよね。『二人が結びつくようなことって、もうないのかな……?』「あるかもしれないけど……」ある……! 可能性はあるんだ……!「でも、とても苦しい道なんじゃないかな……」『苦しい道……』「うん、例えば……“仕事がない中で、数千万円の借金を背負いながら二人一緒に生きていく”とかね」―――それを聞いて、私の意識の中の何かがパチリと音を立てて入れ替わった。仮に、数千万円の借金があったとしても、二人に仕事があれば何とか返済しながら生きていくことはできる。あるいは仕事がなくても、借金さえなければ色んな生き方はあるだろう。でも、“借金”と“干される”の両方が揃ったら―――「だから、難しいと思うよ」私は、それ以上何も言えなかった。自分の人生全てを投げ捨ててまで、添い遂げたいというモチベーションは……、悲しいけど、私にはない。これが私の限界。これが私の“人間性”なのだと、そこで悟った。「そういうわけだから……じゃあ、これで……」『待って!』今さら、何を言うことがあるのだろう。何も言うことなんて、ないのに……。受話器を持つ手が震えている。私はこれまで自分が“損”をするような選択は、一切してこなかった。どんな時も、どんな状況でも。……そう、小狡い女だったのだ。だけど……、「もう、良いんだよ」『えっ……』「短い間だったけど、二人は愛し合っていて幸せだった。その事実があれば、また強く生きていけるんじゃないかな」『………』「人生は、一瞬の星の輝きみたいなものでさ、忘れられないくらいに大きく光った思い出は、その後の人生も照らしてくれるものなんだって、僕は思う」『……ううっ……』嗚咽が漏れる。彼が“最後の言葉”を口にするのが怖い。「だから、僕たちの輝かしい思い出を忘れなければ、強く生きていけるはずだよ……」彼は、“私のために”終わらせようとしてくれているのだ―――「これから二人が別々になったとしても」最後の選択。ここで私が「Yes」と言えば、これで終わり。「No」と言えば……『待ってても良い……ですか……?』一番狡い選択をした。選択を先延ばしにしたのだ。「…………」二人の無言の時間は、刹那のようで永遠にも感じられる。この瞬間、まるで時が止まったかのように。行き交うサラリーマンたちだけが、時計の針のようにせわしなく時を刻んでいる。「覚悟……できてる?」『いいえ』私の口は、私の意識と連動していないのかもしれない。でも、その時私は、ハッキリと口にした。「分かった……」義久さんとの会話が終わる。もう、彼の声が聞けなくなるんだ……。最後に……最後に、伝えなくちゃ……!『幸せでした』「ありがとう」プツッという音がして、そこで電話は切れた。後には「ツーツー」という電子音が聞こえるだけ。『私……最低だ……!』人目もはばからず、電話ボックスの中で泣き崩れる。これほどまでに、自分を“汚い”と思ったことはない。彼は最後まで優しくて、私のことを何一つ貶めるようなことを言わなかった。でも、私は最後まで狡くて……。―――子供の頃を思う。キラキラした綺麗な石が目の前にあった。おぼろげな記憶だけど、そこはパワーストーンのお店だったんだろう。私は、欲しいもの全部を両手の中に収めて、パパに言った。『これ全部!』って。パパは少し困った顔をして、「しょうがないな……良いよ」って言ってくれたっけ。でも、その後、私はつまずいて……綺麗な石を全部こぼしてしまったのよね。石たちは、ばら蒔かれて、床の上で散り散りになって……私は泣いちゃった。結局、それで貰えず終い。パパが店員さんに、申し訳なさそうにしていて、私がこぼした石を一生懸命拾い集めていた。欲しいもの全てを、手の中に収めることなんてできないんだ―――私は、知っていたはずだった。それなのに、またつまずいて、こぼしてしまった……。喜久さんは、あの時のパパみたいに、今、拾い集めてくれているのだ。私はただ泣いているだけ。狡い。本当に狡い女―――まるで風見鶏のようにくるくると。その時の風向きに合わせて、自分をコロコロ変える。そんな自分が、心底嫌になる。変わらなければ、ずっとこのまま。そんなの……みっともない。涙を手で拭って、電話ボックスを出る。一歩一歩足を動かして、会社へと向かう。彼との……義久さんとの出会いに意味を持たせたい。そうでなかったとしたら、寂しすぎる……。「思い出があれば、強く生きていける」彼の最後の言葉が耳にこびりついている。―――サラリーマンの波は、もう引いていた。【今回の主役】江崎友梨 双子座25歳 アナウンサー23歳の時にアナウンサーとしてTV局に入社。有名大学出身だが1年浪人している。ハイソサエティな世界に憧れを抱いており、自分を磨く努力も怠らない。現在、同じアナウンサーでもあり、上司である新垣義久と不倫関係にある。当初は踏み台にしようと考えていたが、だんだんと彼に惹かれキャリアと恋の間で、悩み揺れる(C) Evgeny Atamanenko / Shutterstock(C) Chepko Danil Vitalevich / Shutterstock
2017年08月10日12人の女性たちの生き方を、12星座になぞらえて紹介していくショートクロスストーリー『12星座 女たちの人生』。 キャリア、恋愛、不倫、育児……。男性とはまた異なる、色とりどりの生活の中で彼女たちは自己実現を果たしていく。 この物語を読み進めていく中で、自身の星座に与えられた“宿命”のようなものを感じられるのではないでしょうか。文・脇田尚揮【12星座 女たちの人生】第136話 ~射手座-10話~ヴーヴ・クリコが運ばれてくる。銀色のワインクーラーの中に黒いボトルが鎮座するその様は、いかにも“ホストクラブに来ました”という体だ。「じゃあ、乾杯しましょう」マサシが満面の笑みで耳元に囁く。微かに香るいい香り……。これは“ブルガリ・ブラック”ね……。シャンパングラスを傾けて、アルコールが私の体内に入っていく。この小悪魔のような男の世界に一歩一歩足を踏み入れていることに気づきながらも、理性がどんどん言うことを聞かなくなる。「結構、お強いんですね」『そんなことないけど……飲めない方じゃないわ』「へぇ、すごい! 淳子さん、飲むのはいつもシャンパンなんですか?」『う~ん、そうね……』国外で仕事をすることもあってか、ビジネスの席では大抵ワインかシャンパンを飲んでいる。たまにビールもあるけど、個人的にはそんなに好きじゃない。「そっかぁ……じゃあさ、ちょっと“冒険”してみませんか、淳子さん?」『え……?』「ブランデーとか、飲んでみましょうよ」流石に、「これはヤバイ」と私の中で警報が鳴る。ブランデーなんて、そうそう飲まないし、何よりホストクラブで飲むと金額が跳ね上がる。ここは見栄を張るところじゃないわ。そう思って、断ろうとしたその時―――「マサシ……お前、“俺の”淳子ちゃんに何やってんだよ」純が戻ってきた。「何って、普通に飲んでるだけだよ」ややこしい展開……でも、何だか悪くない。「お前、クリコまで入れさせて、今度はブランデーかよ! ヘルプの癖に、ちょっと図々しいんじゃないか?」「僕はただ、淳子さんと楽しく飲んでいただけじゃないか。そんなこと純に言われる筋合い無いな」二人のイケメンが、私をめぐって争い合っている……、なんだろう、この優越感。しかも、ここのクラブのナンバー同士。まず、こんな状況になるなんてことはないわ。『ちょっと待って、二人とも!』二人が同時に私を見る。私の中の何かに火が付いた。『この前、仲良く飲んだ間柄じゃない……今夜は私が二人にご馳走するから、ケンカなんてやめてよ……』つい、言ってしまった。「ゴメン、淳子ちゃん……せっかく来てくれたのに……」「淳子さん、すみません……」二人とも急にしおらしくなる。そうそう、それでいいの。「じゃあ、ブランデーで乾杯と行こうか、マサシ」「そうだね……淳子さん、VSOPあたりが飲みやすいと思うんだけど、どうかな?」VSOPか……値段的には手頃よね……?「そうそう淳子ちゃん、1本入れるよりも“飲み放題”コースにした方が、安く済むよ」『え……そうなの?』「うん、その方がコース制だから、それ以降何杯頼んでも料金変わんないんだよ」そっか。それなら安心だわ……。流石にこう何本も入れられたら、たまったもんじゃないしね。コース料金も2万円なら、まぁ妥当なところか。『じゃ、飲み放題コースで!』その時、マサシと純がニヤリとしたような気がした。でも、私の意識はもう、ショートしかけていた―――マサシと純のどちらかが隣にいる状態で、次々とヘルプが入れ替わりブランデーを飲んでいく。飲み放題だから安心だわ……。フワフワした意識の中、スマホの音に気が付く。“クリス”からだ……!『ハイ、クリス…どうしたのぉ?』「Jun、今どこにいるんだい?」『あは、あたし?……今ね、歌舞伎町で飲んでんの』「ummm……大丈夫かい、迎えにいこうか?」『あ、助かる~お願い~住所はね……』マッチに書かれてあるクラブの住所を読み上げる。「分かったよ……じゃあ、あと30分後に」そう言って、クリスは電話を切った。ああ……こういう時、クリスがいてくれると助かるなあぁ……。どのくらい飲んだだろうか。スマホで時間を確認すると、もう2時を回っていた。「淳子ちゃん、大丈夫?」『うん、“らいじょうぶ~”』上手く、言えてない。それが自分でも面白くてケタケタ笑う。「じゃあ、そろそろお会計しようか?」『うん、よろしく~』何だかんだで楽しかった。仕事も上手くいったし、イケメンに囲まれて飲んだし。ちょっと贅沢しちゃったけど、これでまた頑張れる。来週は、イタリアでまたジュエリーを仕入れてこよう……。そんな夢見心地で、シャンデリアの光をボーッと眺めていると……、この間六本木で出会った“ガングロ男”がテーブルに歩いてきた。「どうも、今夜はわざわざお越しいただき、ありがとうございます」言葉遣いが、やけに恭しい。『こちらこそ、先日はどうもぉ』「こちら、本日のお会計になります」差し出された革張りの伝票ホルダーを開ける。―――絶句した。酔いが一気に覚める。そこに書かれていたのは112万8640円という文字。『あっあの……え~と……』「すいません、こちら料金の説明がまだでしたね……テーブルチャージに、シャンパンのボトル2本、純、マサシの指名料、そして飲み放題が12人分、それにTaxが40%……」何を言っているのか分からない。飲み放題12人分……って……?私の顔色を察したのか、ガングロ男が「ああ、飲み放題はヘルプにも適応されるんですよ」と一言。私……財布の中身で、払いきれない……!自分の浅はかさを痛感した―――【今回の主役】戸部淳子 射手座28歳 ジュエリー卸業ヨーロッパ圏でのホームステイなど、学生の頃から海外経験が豊富で、英語がそこそこ堪能。国外から宝石を買い付けて、ブティックやウェデイング業界に卸している。若さの割に目利きであると評されるところも。イタリア人の彼氏・クリスがいるが、性に奔放で何かとトラブルが起こりやすい。(C) donfiore / Shutterstock(C) Svitlana Sokolova / Shutterstock
2017年08月09日12人の女性たちの生き方を、12星座になぞらえて紹介していくショートクロスストーリー『12星座 女たちの人生』。 キャリア、恋愛、不倫、育児……。男性とはまた異なる、色とりどりの生活の中で彼女たちは自己実現を果たしていく。 この物語を読み進めていく中で、自身の星座に与えられた“宿命”のようなものを感じられるのではないでしょうか。文・脇田尚揮【12星座 女たちの人生】第135話 ~双子座-最終話~―――半年後……『今シーズン、久保選手の活躍が楽しみですね! ……以上、横浜スタジアムより江崎がお送りいたしました!』カメラワークの後、“OK”のサインが出る。『ふぅ……』今日も無事終わった。スポーツキャスターになって、もうすぐ3ヶ月か……。インタビューは、選手個人を相手にしながら、視聴者に情報を届けなくちゃいけない。これまでやってきた、ニュースを読み上げる仕事とは勝手が違うから、まだ慣れないわ。もう一度、選手達に挨拶をして、スタジアムを後にする。―――半年、かぁ……広がる青空に、義久さんを思い浮かべる。今となっては、何だか全てのことが夢だったんじゃないかと思える。“あの日”以来、彼には連絡していないし、彼からも連絡はない。たまに思い出してはチクリと胸が痛む。一緒に食事をしたこと、愛し合った時間、それらは風化することなく、今でも私の中に眠っている。“ケンゴ”と名乗る男の正体は、結局分からずじまいのまま。彼からも半年前の電話以降、何の音沙汰もない。今の私に残っているもの……。それはスポーツキャスターとしての立場と、この胸の痛みだけ。それだけが、確かに感じられるもの。「フリーとしてやっていく」そう言っていた義久さんを、毎日色んな番組でさがしているけど、まだ見かけてはいない。せめて何をしているか知ることができたら……。義久さんとの未来に対する“覚悟”すらない私が、そんなこと思う資格なんてないんだけどね……。どこまでも広がる青い空に、義久さんのことを思いながら、スタッフと会社に戻る。それは“青天の霹靂”だった。帰社して一息つき、いつものようにキャスターが出演している番組をスマホでチェックする。これが私の日課。こうして毎日、義久さんの動向をチェックしているのだ。すると……。茨城県の地方ニュースのフィールドキャスターに“新垣義久”の名前。『う……そ……』義久さん、復帰したのね……!スマホを持つ手が震える。彼が今、どんな生活をしているかは分からない。でも、こうしてキャスターという仕事を続けてくれていることが、ただただ嬉しかった。何でもいい。彼が出演していることを、この目で確かめたい。確か……。報道部署なら、各局のニュース番組をチェックできるはず!義久さんの出る番組は……、夕方4時からね…!私の足は、報道部署に向かっていた―――彼の番組開始まで、あと5分。時間がない。テレビ局の“顔”として、将来を有望視されていた彼の人生を、私がつまずかせてしまった。そういう後ろめたさが、私の心に影を落とし、こびりついて離れなかったのだ。早く……早く……、彼の姿を見たい……!『すみません! キャスター事業部の江崎です……失礼します!』報道部のドアを勢いよく開けると、各局のニュースがズラリと画面に並んでいた。そこから、『茨城ニュース』を探す……。報道部スタッフ達はきっと、“鳩が豆鉄砲をくらった”ようにポカーンとした顔をしているだろう。でも、今、確認しなきゃ……私……―――あった!まだ、今、コマーシャル中だけど、確かに彼が出演する番組。開始まで、あと30秒。間に合った。間に合ってくれた。食い入るように、画面を見つめる私。そして番組は始まった―――……義久さんだ。半年ぶりに見る彼の姿。少し痩せたかしら。でも、確かに義久さん本人。爽やかな笑顔と朗らかな口調は変わっていない。グレーのスーツに紺のネクタイも、懐かしい。場所は違えど、今こうして、彼もTV局で仕事をしている。それが、たまらなく嬉しい。それから私は10分間、ずっと釘付けだった―――もう私たちは、会って話したり、食事したり、愛し合うことはできないかもしれない。だけど、こうしてお互いの姿、声を確認し合うことはできる。―――いつでも、繋がっていられるその思いが、私を奮い立たせる。報道部を出る。何だろう、この清々しい感覚。仕事をしたい。とにかく、仕事をしたいと思う。私が働いている姿も、義久さんに見てもらいたい。私が今、ここに在るということを知ってもらいたい。それだけが唯一、私たちに“赦された逢瀬”なのだから……。襟を正して、キャスター事業部に戻る。私はこれからも、このTV業界で“女子アナ”として上を目指し続けていこう。でも、その志は以前とは違う。もう、つまらない自己顕示欲を満たすためだけに生きるのは止めよう。これからは、義久さんに“輝く自分”を見てもらうために、頑張るんだ……!いつか、また彼と顔を合わせた時、胸を張っていられるように。双子座の女の人生は、“I think.” ~私は考える。~好奇心のままにいろんなことに手を出して、痛い思いをするかもしれない。でも、経験に裏打ちされた、確かな“生きている感覚”を掴んでいる。失ったものに、思いを馳せながら、自分と世界との境界線を知って、洗練された自分になっていく。それは他の何ものにも変わりえない、私だけの特別な体験……。銀座で買ったネックレスを握り締め、私は誓う。私は今、輝き始めます―――。双子座の女の人生 ~Fin~【今回の主役】江崎友梨 双子座25歳 アナウンサー23歳の時にアナウンサーとしてTV局に入社。有名大学出身だが1年浪人している。ハイソサエティな世界に憧れを抱いており、自分を磨く努力も怠らない。現在、同じアナウンサーでもあり、上司である新垣義久と不倫関係にある。当初は踏み台にしようと考えていたが、だんだんと彼に惹かれキャリアと恋の間で、悩み揺れる(C) Champion studio / Shutterstock(C) Minerva Studio / Shutterstock
2017年08月08日8月8日は水瓶座で満月が起こります。月食を伴った今回の満月は、みなさんの恋愛にも少なからず影響を与えるでしょう。水瓶座は理知的であり、12星座では革新を扱うサインです。恋愛において枠に捉われていたことがあるなら、新しい気づきを得られるでしょう。■月食の影響満月が起こる際に、太陽と月の間に地球が入り込むと月食になります。月がちょうど陰になって見えなくなる現象で、占星術では月の表す要素=感情において、過去を手放し、前に進む出来事が生じやすいと言われています。人生の新しい面が見え、それに向かってスタートを切る瞬間です。今回は水瓶座で食が起こることから、恋愛面ではクールに前を見据え、方向転換するようなことが起こりやすいと言えます。それでは12星座別に月食が恋に与える影響を見ていきましょう。■牡羊座のあなた今回の月食は、あなたの友情面に変化を与えるでしょう。友人が恋人に昇格するのかもしれないし、逆に恋人だった関係が友人に戻るのかもしれません。未来を見据えた前向きな決断になりそうです。■牡牛座のあなた社会的な体裁といったものが恋愛にも影響しそう。今の彼では物足りないなら、もっとステータスのある相手に乗り換えることも可能。シングルの人も自分に合ったパートナー探しを始めるのによい時期。■双子座のあなた今までのお付き合いにおいてマンネリ化していたことがあるなら、打開する大きな出来事がありそう。待ちわびていた返事、暗礁に乗り上げてしまったことに結果が出るでしょう。主張を怠らないで。■蟹座のあなた古い関係が未来につながるものなのか、考えさせられるでしょう。義理や人情ばかりでは付き合いきれないと判断を下すのかもしれません。腐れ縁になっている相手とは一旦距離を置いてみて。■獅子座のあなたパートナーとの関係がクローズアップされます。婚約や結婚などにケリをつけたい気持ちになりますが、時期尚早なようです。もう少し粘って。シングルの人は相手選びの基準を見直してみるといいでしょう。■乙女座のあなた今まで努力してきたことへの対価を得られているか、考えてしまうかも。尽くしすぎたり、相手の世話ばかり焼いたりしていると、なんだか損しているような気分になりやすいでしょう。少し自分軸で動いてみて。■天秤座のあなた恋愛において前向きな変化がありそう。運命的な出会いがあったり、恋人がいる人も関係を一歩先に進めるきっかけが起こったりしそうです。ここからしばらくは恋愛を思いっきり楽しんで。■蠍座のあなた家に関することで変化があるでしょう。彼と新居を構えるのかもしれないし、あなた、もしくは彼が引越しするのかもしれません。いずれにしても、家族構成や居場所の変化がこの先の恋愛に影響を与えそう。■射手座のあなた今回の食はあなたの知的好奇心を刺激するでしょう。男性に対しても、おざなりな会話や知識では満足しないかも。学びや旅から刺激を得られる時なので、恋人との旅行では相手の新たな魅力を発見できそう。■山羊座のあなた一度決めたことは守り通す山羊座ですが、あなたの恋愛観に穏やかな変化が訪れるでしょう。付き合いとはこういうものだとか、デートでの金銭負担について不満があるなどするなら、交渉してみる価値あり。■水瓶座のあなた変わりたいと思う気持ちが加速するでしょう。自由を好む水瓶座ですが、あなたを縛りつけていた関係や、メリットを感じられない相手とは決別したいと思うかもしれません。逆にプラスなら結婚も視野に。■魚座のあなた自分の本当の気持ちをわかってくれる相手、パートナーといったものに焦点が当たります。人に言えない悩みや問題を抱えているのなら、話せる相手は誰なのか?を考えてみると今後の恋愛の指針になるでしょう。■終わりに今回の食はこの先1ヶ月ほどの間、あなたの人生や恋愛に影響を与えます。自分の新しい感情に素直に反応しつつも、何事も冷静に進めるのがおすすめ。月食の神秘的なパワーを受け、未来を感じられる恋に踏み出しましょう。ライタープロフィールAlma/アルマ小さい時から星占い好きで2010年から占星術を本格的に勉強。2013年より対面、メール鑑定、新聞やアプリ等の占い執筆。得意分野は相性占い。赤坂のBARで星座カクテルを提供しながら占い中。
2017年08月08日12人の女性たちの生き方を、12星座になぞらえて紹介していくショートクロスストーリー『12星座 女たちの人生』。 キャリア、恋愛、不倫、育児……。男性とはまた異なる、色とりどりの生活の中で彼女たちは自己実現を果たしていく。 この物語を読み進めていく中で、自身の星座に与えられた“宿命”のようなものを感じられるのではないでしょうか。文・脇田尚揮【12星座 女たちの人生】第131話 ~蠍座-11話~―――帰宅したのは、夜中の2時半。何だか、とてつもなく長い時間だったようにも、一瞬の出来事だったようにも感じられる。「ニャン」玄関のドアを開けると、ずっと待っていてくれたのか、“チカ”が足元に駆けてきてゴロンと横になる。『ただいま』私に“唯一残された財産”とも言える、彼女を抱きかかえ、リビングへと向かう。『あんまり夜中に食べると、太っちゃうからね……』そう言いながら、猫用のおやつを1本だけ出す。そして、私自身も棚の中にあるブランデーを取り出す。『美味しい? ……ねぇ、今夜は少し付き合ってよ』おやつに喜ぶチカに喋りかける。こういう時、猫がいてくれるとありがたい。独り言が“独り言でなくなる”から。トクトクと、ウイスキーをダブルでグラスに注ぎストレートのまま一気に飲み干す。『う……っ、ゲホッゲホ……』身体の中の血液が、突然沸騰したかのように熱くなる。お酒はそこまで好きじゃないけど、今夜はもう飲まれてしまいたい……。『チカ……もう、私、あんただけになっちゃった……』銀座のママとしての技量は、私にはそこまでなかったかもしれない。でも、自分なりに一生懸命やってきた。苦しいことも、悲しいこともあった。それでも、お店に来て下さるお客様と、一緒に働く仲間達がいてくれるから、続けてこられた。私の半身とも言える、“雪月華”での時間は、無駄だったのだろうか。何もかもを失い、夜の世界で生きることもできなくなった私は、まるで翼をもがれた鳥と同じね……もう二度と羽ばたけやしない。二杯目のウイスキーをグラスに注ぐ。ダメね、私って……。今度はゆっくり口に含む。私は会長を癒すこともできず、倫子を止めることもできなかった。なにもかも自分勝手に思い込んで、結局何もできなくて。お酒が回ってきたのか、泣けてきた。ポロポロ、ポロポロ……。これまでの“銀座ママ”としての思い出が流れ出すかのように、涙が頬を静かに伝って手元を濡らす。「ニャァーン」おやつを食べ終えたチカが、私の足に鼻先を擦りつける。『ごめんね……もう、ないのよ……何にも……ないの……』そのまま机に突っ伏して大泣きし、意識はそこで途切れた。―――黒い砂の渦の中に、飲み込まれそうになっている自分がいる。自分のことなのに、まるで映画を見ているかのように、もうひとりの自分を眺めているのだ。蟻地獄の巣のようなそこには、奥に異形の醜い化物がいる。「助けて!」と叫びたくても、喉から声が出ない。ズルズルと奥に落ちていく私に、異形の化物がにじり寄り……、カマキリの鎌のような触手で、私の身体をズタズタに刻んでいく。そして、食べられちゃった……。不思議と気持ち悪くも、怖くもない。どこか清々しいのはどうして……?『私……』―――自分の声で目が覚めた。『イタッ……』頭が少し痛い。強いお酒を煽ったからね。時計を見ると、11時。「支度しなくちゃ!」……と一瞬思って、「もう自分のお店はないんだ」と気づく。何だか寂しいような、安堵したような不思議な感覚。もう時間に追われることはないのね。幸いにも、貯蓄はかなりある。無駄遣いをしなければ、普通に生活していくには困らないだろう。―――でも、私にはそんなことどうでも良かった。チカに餌をあげた後、家の中で、洗い物をしたり洗濯をしたり……。ダラダラと無為な時間を過ごす。普段やらないようなところまで掃除機をかけて、家中を綺麗にする。何でそうしたいのか分からない。ただ、何かをしていないと気が変になってしまいそうなのだ。それでも、2時間しか経っていない―――。なんだろう、この頭の中がただれたような感覚。やることがないって、辛い。何かにすがるようにスマホを手に取る。そこには、「本日より、“雪月華”のママは“倫子”となりました。お店の名前も今月中に変わる予定です。どうぞよろしくお願い致します」と1通だけメールがあった。他のお客様達から私に連絡がないところを見ると、相当な圧力がかかっているのだろう。もう私は、名実ともに“銀座のママ”ではなくなったのだ。『手が早いわね……』戦ったって勝てないことは、十分承知している。これからお店の名義が変更され、契約関係が更新されていくのだ。お店の子達も、多分私に連絡を取ることを禁止されているはず。やるなら徹底的にやるというのが、真田会長の信条だ。私はそれをよく知っている。“雪月華”への未練も、半ば強制的に断ち切られ、私がメールをするのはあの人。―――“フレイア華”先生。先生に占いの予約を入れる。「フレイア先生、こんにちは。突然で申し訳ないのですが、本日の夕方以降で、予約をとることのできる時間はありますか?」送信……と。紅茶を入れて、少し物思いにふける。前回のタロットカードの結果。“ストレングスの正位置”……か……。強さ。強さってなんだろう……。私は会長を手懐けることができなかった。つまり、占いは外れたってことなのかしらね……。フフッと自嘲気味に笑って、紅茶を啜る。「ヴーン」スマホのメール着信音が鳴る。「本日、6時半でしたら大丈夫ですよ。お待ちしております。フレイア華」先生からメールが来た。さて、真偽のほどを確かめに行こうかしら……。グラスに残っている液体を飲み干した―――【今回の主役】須藤由紀(絢芽) 蠍座30歳 クラブホステス豊満な肉体を持つセクシーな女性。貧しい幼少期を経て、自分の身体一つを武器に若い頃から水商売の世界でトップを取り続けてきた。さまざまな男性と情事を重ねる日々の中で、自分の生き方に疑問を感じ、男と女の化かし合いに疲れている。このまま、夜の世界の女帝となるか、それとも……。(C) FRANCISGONSA / Shutterstock(C) AlexMaster / Shutterstock
2017年08月02日12人の女性たちの生き方を、12星座になぞらえて紹介していくショートクロスストーリー『12星座 女たちの人生』。 キャリア、恋愛、不倫、育児……。男性とはまた異なる、色とりどりの生活の中で彼女たちは自己実現を果たしていく。 この物語を読み進めていく中で、自身の星座に与えられた“宿命”のようなものを感じられるのではないでしょうか。文・脇田尚揮【12星座 女たちの人生】第130話 ~蠍座-10話~暗い部屋の奥から、女の嗚咽のような声が漏れている。―――遅かったか……。一歩、一歩と歩みを進めていく中で、様々なことが頭をよぎる。会長との食事。初めてお店を持たせてもらった時のこと。スイートルームで二人きりの夜。楽しかったこと、嬉しかったことだって沢山ある。私は、彼を癒せる“何者か”になりたかった。おそらく私はこの後、“銀座のママ”ではなくなるだろう。でも、もう“夜”へのこだわりはない。“普通の女”に戻ってでも、彼に進言しなくては―――覚悟を決めて、部屋のドアを開けた。案の定の光景。まるで虫のように縛り上げられた倫子が、男達数人に道具で嬲られている。苦痛に歪んだ顔には生気がなく、涙でメイクも崩れ、見るも無残な姿だ。いつも強気だった倫子とは思えないくらいに弱く、か細い声で呻いている。そして、その奥で眼を異様にギラつかせた老人が、耳まで裂けそうなくらい大きな口を開け笑っている。『会長……!』「ぐふふ……遅かったな、由紀」『もう、良いでしょう……! 倫子を返して下さい。この子は“うちの子”です!』「うちの子? 由紀、お主は何か勘違いをしていないか? ……そもそも、あの店も服も酒も、私が全部買い与えたもの。何もかも全てだ!」『それでも私はあの店の……、“雪月華のママ”です!』足が震えるのを精一杯堪えながら、真田会長に向かって言い放つ。反論したのは、これが初めてのことだ。でも、分かって欲しい、私の気持ち。会長の愚行は私で“最後”にしてもらいたい……。「お主、いつから私に口答えするようになった? 私が与えたものである以上、どうしようと私の勝手というもの。お主に全てを与えたように、お主から全てを奪うこともできるのだぞ」―――会長の口から最後の審判が下される。今ならまだ戻れるだろう。でも、銀座のママとしての輝かしい栄光も何もかも、私は失ったって良い。ただひとり、真田会長の乾いた心を救えたら。『構いません。倫子を返して下さい』「言うたな、お前! 吐いた唾は飲めんぞ!」会長の気色がみるみる変わり、怒気を帯びる。でも、私にとっては……。まるで、玩具を取り上げられそうになっている子どものようにしか見えない。『あなたは、子どもです。小さい頃に満たされなかったものを、こうして不健全な形で今、満たそうとしている。でも、それは間違っています。私は……私たちは人形じゃない!』「何を言うかぁぁぁッ!」怒号と共に会長が立ち上がる。『倫子は連れて帰ります』“恐れ”に勝る感情は、“愛”なのだろう。この人になら殺されても、私はそれで良いと思った。「では、このおなごを連れて帰るといい。ただし、お主は今から“ただの女”じゃ。今日以降、どの店でも働くことはできん。二度とな……」『承知の上です……』唇を噛む。悔しいからじゃない。悲しいから。分かって欲しいから。「おい、下ろせ」会長の号令とともに、吊るされていた倫子が床に崩れ落ちる。『倫子、帰ろう……?』息も絶え絶えな彼女に駆け寄り、声を掛ける。しかし、彼女から帰ってきた返事は予想外のものだった。「余計なことしないでよっ!」縄でギツギツに縛られた彼女は、キッと私を睨みつけ、そう言い放った。『え……?』「私は、今、会長の寵愛を受けているの……! 私から望んでやってることに、あんたからどうこう言われる筋合いはないわ!」―――ああ。もう全てが狂っているんだ私はその時、思った。“会長の欲”と“倫子の欲”。……それらはグズグズになって癒着し、ひとつの醜い肉塊として、ここに在るのだ。「……分かったかぁ! 帰れぃ!」『会長!』会長の最後の言葉と共に、黒服が私を囲む。勝ち誇ったような倫子の眼差し。そうか。最初から全てが狂っていたんだ。これが“標準”ってこと。もしかしたら私も、狂っているのかもしれない。黒服に促され“人形部屋”から追い出される。きっと今の私は、泣き笑いのような顔をしているのだろう……。『あはは……』マンションの廊下で、ひとり乾いた笑い声が響く。泣かない。泣くもんか……。泣けば、会長の思うツボ。―――私は奥歯をギリと噛んで、エレベーターに乗りこんだ。占いで出た“ストレングス”のカードが思い浮かぶ。凛とした女性が、獅子を手懐けているあのカード。あの二人には信頼関係があるのだろう。だから女と獅子として成立し得るのだ。でも、私と会長との間には、初めから信頼関係などなかった。何もなかったんだ……。狂気に愛は通用しない。初めから、私のしようとしていたことは、おこがましいことだったのだろう。自分を納得させるかのように、あれこれ考えを巡らす。白昼夢を見ながら徘徊する病人のように、フラフラとエントランスを出る。会長との食事。初めてお店を持たせてもらった時のこと。スイートルームで二人きりの夜。これら全ては、高く持ち上げておいて一気に叩き落とすための、“会長のシナリオ”だったのだ。私はそれを“ホンモノ”だと思い違いしていただけのこと。そう、誤解していただけのことなんだ。新宿の夜は、いつまでも明るかった―――。【今回の主役】須藤由紀(絢芽) 蠍座30歳 クラブホステス豊満な肉体を持つセクシーな女性。貧しい幼少期を経て、自分の身体一つを武器に若い頃から水商売の世界でトップを取り続けてきた。さまざまな男性と情事を重ねる日々の中で、自分の生き方に疑問を感じ、男と女の化かし合いに疲れている。このまま、夜の世界の女帝となるか、それとも……。(C) Kalcuttax / Shutterstock(C) PopTika / Shutterstock
2017年08月01日12人の女性たちの生き方を、12星座になぞらえて紹介していくショートクロスストーリー『12星座 女たちの人生』。 キャリア、恋愛、不倫、育児……。男性とはまた異なる、色とりどりの生活の中で彼女たちは自己実現を果たしていく。 この物語を読み進めていく中で、自身の星座に与えられた“宿命”のようなものを感じられるのではないでしょうか。文・脇田尚揮【12星座 女たちの人生】第129話 ~天秤座-最終話~―――1ヶ月後……私の横には“ウィッシュ”という名のゴールデンレトリバーが大人しく座っている。『お利口さんね……』“ウィッシュ”の頭を優しく撫でる。とても穏やかな気持ち。「恭子さん、夕食の準備できたって」彼の声だ。そう、私の大切な彼、薫さんの声。今日、私は代官山の彼の実家の、ファミリーパーティーにお呼ばれしている。『はーい』庭付きのベランダで、“ウィッシュ”と戯れていた私は、リビングに戻る。『……また、後でね』小声で“ウィッシュ”に囁く。一戸建ての家の中は整然としているけど、いかにも質の良いインテリアで、落ち着いたカラーで統一されている。高い天井にはシーリングファンが回り続けている。「まぁ、リラックスしてよ。自分の家だと思って」薫さんが、私を気遣ってくれる。カウンターキッチンの向こうから、知的な雰囲気の女性と私より少し若い女の子が料理を運んできてくれた。薫さんのお母様と薫さんの妹さんだ。「お待たせしました、ゆっくり食べていってね」そう言って“お母さん”が高そうな白ワインをワインセラーから出してきた。『あ、いえ……とんでもありません。こちらこそお招きありがとうございます』食卓には、色とりどりの食材が並んでいる。そして、その横で一生懸命コルクを抜こうとしている薫さん。「もう、お兄ちゃん、下手なんだからー!……貸して!」“妹さん”が薫さんの手からワインを奪い、ポンという音と共にあっという間にコルクを抜く。「いやぁ、ハハハ……」照れくさそうな彼。「恭子さん、ゴメンなさいね、こんなアニキで……。でも、ビックリしちゃった! アニキにこんな綺麗な彼女ができたなんて、我が家始まって以来のビッグニュースでしたよ!」飲んでもいないのに饒舌な彼女は、薫さんとは正反対の性格のようだ。「僕だって、やる時はやるんだからな! ほら、返して」私の横で薫さんが、少しだけムキになっている。―――可愛い。彼って、意外とムキになりやすい性格なのよね……。彼が私のグラスを白ワインで満たしてくれているのを見て、ふと思った。“あの時”もそうだったな―――。恵比寿で裕太と私、そして薫さんとで待ち合わせたあの夜。私は、しばらく何も言えなかった。色々言うべきこと、言いたいことを考えていたのに、いざ薫さんを目の前にすると、何も言えなくて。空気を察してか、裕太が一生懸命盛り上げようとしてくれた。最初に口を開いたのは、薫さんだった。「僕、気にしてますから……この間のこと……」いつになく、ハッキリと、静かに彼は言った。『ゴメンなさい……』私には謝る事しかできなかった。彼が気にしていることの理由がわからなかったから。「いや、そうじゃなくて! ……何で謝るんですか!?」少し大きな声を出す彼。『……だって、薫さん、嫌だったんでしょ?』消え入るような私の声。「ちょ、ちょ、あのさ……全然わかんねーんだけど」あの時、裕太が間に入って、整理してくれたのよね。ホント、あいつイイ奴。裕太は私たちのキューピッドね……。私は、てっきり薫さんから嫌われたものだと思っていた。薫さんの反応があまりに予想外だったから。でも、薫さんは私に、からかわれているって思って、真意を確かめたかっただけみたい。裕太が間に入ることで、事の本質が分かったの。誤解してた……お互いに。あのときの薫さんは、まるで今みたいにムキになっていた……。「好きでもないのに、キスなんて……そんなことしないで下さい。僕は、本気で恭子さんのことが好きなんですから!」彼の目は真剣そのもの。私はこれまでの自分の経験だけで彼を測っていたのだと、その時始めて分かった。―――そう、彼は心から“純”な人だったの。あの時は、違った意味で自分が恥ずかしくなっちゃったわ。「ああ、私って、これまで本気で恋したことなかったんだ……」って。いつもどこかで逃げていたのかもしれない……“恋愛”から。―――「じゃあ、オマエら、もう付き合っちゃえば?」しびれを切らしたように裕太が一言。そこから、私たちの関係が始まったのよね……。そう、ステータスなんて関係ない。一緒にいたいと思えるキモチ。それこそが大切なんだって、やっと分かったの。―――薫さんの華奢で綺麗な指が、ワインボトルから離れる。「じゃあ、いただきましょうか……もうすぐお父さんも帰ってくる頃だし」“お母さん”の一言で、私は我に返る。『はい! それでは……いただきます!』天秤座の女の人生は、“I balance.” ~私は調和する。~人と人との関わりの中で、自分の立ち位置を知り、少しずつ自分を変えていく。それって本当はずるいことなのかもしれない。でも、常に最適化してバランスを取っていくことこそが、恋、仕事、そして……人間関係だと私は思うわ。人は人の中でしか磨かれない。常に変わっていく世界の中で調和を保ち、美しくあろうとする。それが私の美学。だけど、その美学を壊してくれる人と、私は出会った。矛盾してるけど、それこそが“喜び”なの。今、私は“幸せの意味”を感じています―――。天秤座の女の人生 ~Fin~【今回の主役】佐々木恭子 天秤座27歳 アパレル店員センスがよく整った容姿の女性。男に困ったことがなく、広く浅く男性と付き合う、いわゆる“リア充”である。将来の夢は玉の輿に乗ることで、毎週タワーマンションで催される会員制パーティー『ロイヤル・ヴェイル』に参加している。仕事仲間からは陰口を叩かれているようである。(C) KieferPix / Shutterstock(C) conrado / Shutterstock
2017年07月31日月の満ち欠けと星の動きから、あなたの運命を読みとく、12星座のフォーチュンアドバイス! 真夏の太陽に負けないほどキラキラした恋をしたい、8月。あなたの出会いは、運勢は、どうなる?【#anan占い・2017年8月】占い監修・橋本ミシェル占いと美容に精通している橋本ミシェルが月の満ち欠けと星の動きから、あなたの運命を読みとく、フォーチュンアドバイス! ホロスコープとビューティの両面からのアドバイスを致します♪ あなたの星座をクリックしてみて!【2017年8月】12星座占い まとめ【8月全体の星の動き】特別な月(月食・日食)がインパクトのある8月の空模様。天王星が牡羊座で逆行する8月3日頃は、体験こそが重要に。はじめに多くの失敗をしたとしても、失敗も成功も含め、自ら体験したという自信は、誰にも奪うことはできない。それが未来を生き抜く力になるはず。水瓶座で特別な満月(月食)が起こる8月8日頃は、誰に対してもフレンドリーな気持ちで話しかけると、良いことがありそう。上下関係を意識しすぎないほうが、物ごとがスムーズに進んでいくでしょう。水星で乙女座が逆行する8月13日頃は、相手に向けられた怒りや言葉の暴力は、回りまわって自分に返ってくるのだと心得て。人との接し方に注意が必要なとき。獅子座で特別な新月(日食)が起こる8月22日頃は、インパクトのある出会いがありそうな予感。良くも悪くも驚くような事が起きる可能性も。太陽が乙女座に入る8月23日頃は、神経が研ぎ澄まされ、疲れやすくなるので、適度に休憩を。土星が射手座で順行に戻る8月25日頃は、抑圧や葛藤など、ストレスの元となるようなことが降りかかってきそう。真の強さで立ち向かうことが求められそう。金星が獅子座に入る8月26日頃は、遊び心が活力源となり、底力を発揮させそう。8月のあなたの運勢は?星座をクリック!【牡羊座】プライベートでは甘えさせてあげて【牡牛座】束縛しすぎると去られてしまうかも【双子座】コロコロ変わる豊かな表情がモテに必須【蟹座】相手をすぐに切り捨てずに補い合って【獅子座】心に余裕を持つことでうまくいく流れ【乙女座】自分から動いていくことで切り開いて【天秤座】ピュアでオープンマインドでいこう【蠍座】月の中旬に復縁のチャンスがありそう【射手座】離れるべきかどうかはアレで見極めて【山羊座】実は見られているアレの乱れに注意【水瓶座】我慢の多い関係性は見直したいとき【魚座】下旬はオーラを放ち魅力が増す時期に【あわせて読みたい超絶人気記事♪】(C) anyaberkut/Gettyimages#anan占い【2017年8月の運勢】占い監修・橋本ミシェル占いと美容に精通している橋本ミシェルさんに2017年8月の運勢を全体運、恋愛運、美容運別に予測してもらいました。あなたの星の動きはどうなる?いますぐチェックして幸運をつかみましょう!【牡羊座】プライベートでは甘えさせてあげてラッキーカラー:ピンク全体運★★★☆☆ある意味ストイックになった方が、うまく乗り切られそうなとき。天王星が牡羊座で逆行する8月3日頃は、好きなことに打ち込むためには、何かを犠牲にしなくてはならないということを痛感するかも。水瓶座で特別な満月(月食)が起こる8月8日頃は、期待していなかったことで、良い評価が聞こえてきそうなとき。水星で乙女座が逆行する8月13日頃は、体や心のメンテナンスが必要に。ストレスを溜め込まないで。気分転換に軽い運動をしよう。獅子座で特別な新月(日食)が起こる8月22日頃は、夢中になれそうな趣味が見つけて。習い事などを新しく始めるのに良いタイミング。太陽が乙女座に入る8月23日頃は、規則正しい健康的な生活を意識して過ごして。土星が射手座で順行に戻る8月25日頃は、日頃の地道な努力を認めてもらえそう。金星が獅子座に入る8月26日頃は、発想力が高まる時期。でも、常識や固定観念を強く持ってしまうと、凝り固まり、柔軟性を失ってしまいそう。柔軟性を持つためには、常識や固定観念だけに拘らない柔軟な考えや、他人とは違う見方をすることも時には大事。恋愛運★★★☆☆天王星が牡羊座で逆行する8月3日頃は、自由を求めたくなる気持ちが高まりそう。浮気に注意。水瓶座で特別な満月(月食)が起こる8月8日頃は、「うわぁ〜嬉しい!」、「すご〜い!」など、感嘆詞をうまく使って、五感をフル稼働して感じたポジティブな言葉を口から出す練習をして。表現力がアップすることで、褒め言葉がダイレクトに伝わり、相手ともっと仲良くなれそう。水星で乙女座が逆行する8月13日頃は、お互いの考え方に葛藤が生まれてきたり、ひずみが出てきそうなとき。根本的な解決が必要に。獅子座で特別な新月(日食)が起こる8月22日頃は、心からぴったり合うような人と出会えそうな予感。太陽が乙女座に入る8月23日頃は、部屋の片付けや自炊など、基本的なことがしっかりとできる点をアピールしてみて。土星が射手座で順行に戻る8月25日頃は、仕事で頑張っている意中の人を、プライベートでは甘えさせてあげることも大事。大きな包容力で男性を包んであげて。金星が獅子座に入る8月26日頃は、オーラが輝き魅了するモテ期に。美容運★★★☆☆天王星が牡羊座で逆行する8月3日頃は、トレンド感のあるロゴトップスが吉。キッチュでインパクトあるデザインを選ぶのがオススメ。水瓶座で特別な満月(月食)が起こる8月8日頃は、星のようにキラキラしたグリッターをメイクの仕上げにのせてあげると輝きオーラが増しそう。水星で乙女座が逆行する8月13日頃は、デニムやチノパンツにサンダルをプラスした、ヘルシーな夏スタイリングがオススメ! 獅子座で特別な新月(日食)が起こる8月22日頃は、リップにもアイシャドウにもチークピンクカラーを使ったメイクに合わせて、ネイルもピンクで統一させて。華やかな雰囲気で、周囲の視線を独り占めしそう。太陽が乙女座に入る8月23日頃は、アサイーやチアシードなどのスーパーフードを取り入れて、カラダの内側から美しさを目指して。土星が射手座で順行に戻る8月25日頃は、デオドラント対策を抜かりなく。金星が獅子座に入る8月26日頃は、繊細なグリッターの入ったパウダーで、デコルテと腕にキラキラ光り輝く演出を。【あわせて読みたい超絶人気記事♪】#anan占い【2017年8月の運勢】占い監修・橋本ミシェル占いと美容に精通している橋本ミシェルさんに2017年8月の運勢を全体運、恋愛運、美容運別に予測してもらいました。あなたの星の動きはどうなる?いますぐチェックして幸運をつかみましょう!【牡牛座】束縛しすぎると去られてしまうかもラッキーカラー:グリーン全体運★★★★☆運気の流れは良い方向へ。突然の変化も起こりやすいとき。天王星が牡羊座で逆行する8月3日頃は、「現状を変えたい」という気持ちが高まりそうなとき。水瓶座で特別な満月(月食)が起こる8月8日頃は、努力が実を結び、スポットライトを浴びそう。水星で乙女座が逆行する8月13日頃は、途中で諦めてしまったことやもう一度やり直してみたいと思っていたことに、再チャレンジするのに良いタイミング。獅子座で特別な新月(日食)が起こる8月22日頃は、身近で小さな変化が起こりそうなとき。誰かをサポートしてあげなくてはならないかも。感情的になりすぎず、冷静な対応を心がけて。太陽が乙女座に入る8月23日頃は、小さな嬉しいことが増えそう。土星が射手座で順行に戻る8月25日頃は、衝突しがちだった相手と、うまく調整ができて、良い感じにまとまっていきそう。金星が獅子座に入る8月26日頃は、LINEやメールのメッセージに工夫を凝らしてみると、良い反応が期待できそう。恋愛運★★★☆☆天王星が牡羊座で逆行する8月3日頃は、特別感に弱く「君だけだよ」といったフレーズにすぐにくらくらしてしまうかも。相手の性格をよく知るまでは慎重になって。水瓶座で特別な満月(月食)が起こる8月8日頃は、束縛し過ぎず、自主性を尊重して。パートナーを束縛しようとすれば、相手は反射的に、離れようとするかもしれません。恋愛はタイミングが大切だと肝に銘じて。水星で乙女座が逆行する8月13日頃は、幼なじみの紹介で良縁の暗示。復活愛の可能性も。獅子座で特別な新月(日食)が起こる8月22日頃は、意中の人の「注目され、話を聞かれ、感謝されたい」という思いをくすぐると、あなたの思いのままに。太陽が乙女座に入る8月23日頃は、「一緒にいて楽しかった」というようなことを、デートの終わり際などに伝えてあげると、その後の良い展開が期待できそう。土星が射手座で順行に戻る8月25日頃は、金星が獅子座に入る8月26日頃は、自信を持ってアピールするとうまくいきそう。気になる人がいたら、密かにアプローチをしてみて。美容運★★★★☆天王星が牡羊座で逆行する8月3日頃は、ざっくりとしたオーバーサイズのシャツが吉。首下のV字のラインが小顔効果に◎。格好良くさわやかに「大人ハンサム」な魅力を引き出してくれそう。水瓶座で特別な満月(月食)が起こる8月8日頃は、ストライプ柄・プリーツ・タック入りなど、縦ラインを意識したアイテムやコーディネートで、スッキリした印象に。水星で乙女座が逆行する8月13日頃は、かごバッグやジュードサンダルなど天然素材のアイテムが、ラッキーアイテム。獅子座で特別な新月(日食)が起こる8月22日頃は、グリーンカラーをアクセントに取り入れたネイルで注目の的になりそう。太陽が乙女座に入る8月23日頃は、ハーブサラダで内側からキレイになれそう。土星が射手座で順行に戻る8月25日頃は、毎日食べたものを記録する「レコーディングダイエット法」がオススメ。周りにダイエット宣言すると、モチベーションも高まりそう。金星が獅子座に入る8月26日頃は、背中が大きく開いていたり、透け感のあるデザインのトップスが、ゴージャスな雰囲気を高めてくれそう。【あわせて読みたい超絶人気記事♪】#anan占い【2017年8月の運勢】占い監修・橋本ミシェル占いと美容に精通している橋本ミシェルさんに2017年8月の運勢を全体運、恋愛運、美容運別に予測してもらいました。あなたの星の動きはどうなる?いますぐチェックして幸運をつかみましょう!【双子座】コロコロ変わる豊かな表情がモテに必須ラッキーカラー:シルバー全体運★★★☆☆話をよく聞いて、ポイントを重視して進めていくことで効率がアップ。天王星が牡羊座で逆行する8月3日頃は、普段のルートのひと駅分でも歩いてみると、いつもとは違う景色の中で、良いアイデアが浮かんできそう。水瓶座で特別な満月(月食)が起こる8月8日頃は、SNSでの発信力が増しそう。海外ニュースもチェックしておくとGood! 水星で乙女座が逆行する8月13日頃は、家族や親しい友人とゆっくりと時間を過ごしたいとき。ホームパーティーをするのも良さそう。獅子座で特別な新月(日食)が起こる8月22日頃は、勉強を始めると良い成果につながる暗示。太陽が乙女座に入る8月23日頃は、自分の空間を効率的に整理したいとき。土星が射手座で順行に戻る8月25日頃は、人の話をよく聞くようにしよう。状況が日々刻々と変化している場面では、相手の言うこともコロコロ変わる。その中で相手が一貫して変化させていないものがあれば、それは相手にとって極めて重要なテーマだということがわかるはず。金星が獅子座に入る8月26日頃は、優しさを言葉にして伝えてみて。恋愛運★★★★☆天王星が牡羊座で逆行する8月3日頃は、いつも無表情でいるとモテません。よく笑う、笑顔になる、悲しい顔をする、怒った顔をする、なんでもよし。喜怒哀楽を表情に出すのが大切。水瓶座で特別な満月(月食)が起こる8月8日頃は、SNSで良い出会いがありそう。水星で乙女座が逆行する8月13日頃は、昔の友達から素敵な人を紹介してもらえる可能性が。獅子座で特別な新月(日食)が起こる8月22日頃は、自分の手に入れたい未来を想像してみて。例えば「結婚して子供ができて、高層タワーマンションに住んでいる。両親とも仲良くしてホームパーティーをしている。ベランダにでると、夏風が肌をかすめて心地よい」など、頭の中に描かれた良いイメージがあなたをより良い現実へ導きます。太陽が乙女座に入る8月23日頃は、繊細になり、気持ちが傷つきやすくなりそう。静かに自分の心の中を整理したいとき。土星が射手座で順行に戻る8月25日頃は、あなたの未来のために重要な人と会話ができるチャンス。金星が獅子座に入る8月26日頃は、日頃の感謝を言葉にして伝えると愛が深まりそう。美容運★★★☆☆天王星が牡羊座で逆行する8月3日頃は、コーディネートを華やかにしてくれるだけではなく、華奢な印象にしてくれるのも嬉しい太めのバングルをチョイスして。水瓶座で特別な満月(月食)が起こる8月8日頃は、センスをアップさせてくれる「かごバック」が吉。小物に気を遣うだけで一気にこなれ感のあるコーディネートへと変身。水星で乙女座が逆行する8月13日頃は、きっちりとしたイメージのポニーテールを三つ編みして、少し崩してアレンジすると一気にこなれ感が出て◎。獅子座で特別な新月(日食)が起こる8月22日頃は、全体のコーディネートを明るくしてくれる優秀カラーのホワイトやシルバーを意識した、明るい配色のファッションで、モテ度アップ。太陽が乙女座に入る8月23日頃は、就寝前のリラックスタイムにハーブティを。土星が射手座で順行に戻る8月25日頃は、ごてごてしたファッションよりシンプルなファッションがGood! デキ女をイメージさせるすっきりとしたコーディネートが好印象に。金星が獅子座に入る8月26日頃は、ラメ入りのミストで肌に潤いと輝きを与えて。【あわせて読みたい超絶人気記事♪】#anan占い【2017年8月の運勢】占い監修・橋本ミシェル占いと美容に精通している橋本ミシェルさんに2017年8月の運勢を全体運、恋愛運、美容運別に予測してもらいました。あなたの星の動きはどうなる?いますぐチェックして幸運をつかみましょう!【蟹座】相手をすぐに切り捨てずに補い合ってラッキーカラー:ゴールド全体運★★☆☆☆他人の成功ばかりを見ていると、自分の成し遂げたことやこれからやるべきことを忘れてしまいがち。天王星が牡羊座で逆行する8月3日頃は、やり終える前に諦めて逃げ出すのではなく、発想の転換で切り抜けて。水瓶座で特別な満月(月食)が起こる8月8日頃は、あなたの味方になってくれる人が現れそう。水星で乙女座が逆行する8月13日頃は、過去のトラブルと同じようなことを繰り返してしまいそう。行動は慎重に。獅子座で特別な新月(日食)が起こる8月22日頃は、投資の勉強を始めてみるのにも良さそう。太陽が乙女座に入る8月23日頃は、他の人と比べすぎないで。お金や名声だけが「成功」ではないはず。自分の成し遂げたことや、乗り越えたことを考えてみて。他人の人生に影響を与えたこともあったのでは? それこそが成功なのだということを忘れないで。土星が射手座で順行に戻る8月25日頃は、苦労していた仕事のコツがつかめて、少しずつ慣れてきそうな時期。金星が獅子座に入る8月26日頃は、上昇志向が高まりそうなとき。豊かさのための努力をスタートすると未来の宝になりそう。恋愛運★★★☆☆天王星が牡羊座で逆行する8月3日頃は、嫌な面が見えてきて減滅してしまうかも。いつもポイントをマイナスしていくのではなく、自分の人間性との相性を考えて。魅力も欠点も、まずはそのまま受け止めて、補い合えそうならば問題視しなくても大丈夫。水瓶座で特別な満月(月食)が起こる8月8日頃は、あなたを支えてくれる人が現れそう。水星で乙女座が逆行する8月13日頃は、相手をすぐに「判断」してしまいがち。結論を急ぎすぎず、少し長い目で見て関わってみる姿勢も大切。獅子座で特別な新月(日食)が起こる8月22日頃は、パーティーや飲み会でドラマティックな恋の始まりの予感。太陽が乙女座に入る8月23日頃は、ジェラシーが強まってしまいそう。ジェラシーは憎しみの種となりネガティブを生みだす、美しさとは真逆の感情。誰かと比べたり何かと比較したりするのは無意味です。土星が射手座で順行に戻る8月25日頃は、一人に決めないといけないと、負担に感じてしまうかも。いろいろな異性をみることもまだ可能な状況なのに慌てる必要はなし。金星が獅子座に入る8月26日頃は、リッチな人と良縁の暗示。美容運★★☆☆☆天王星が牡羊座で逆行する8月3日頃は、縦ボーダー柄のファッションアイテムが幸運を引き寄せそう。水瓶座で特別な満月(月食)が起こる8月8日頃は、アシンメトリーな着こなしに挑戦してみて。オフショルトップスを片方だけ落として、キャミソールやタンクトップのインナーをチラ見せするというアイディアは、カジュアルなコーデにも使えるオシャレ上級者の着こなし。水星で乙女座が逆行する8月13日頃は、生活習慣の乱れが、肌に現れやすいとき。紫外線ダメージも受けやすいので対策を。獅子座で特別な新月(日食)が起こる8月22日頃は、サッシュベルトやコルセットベルトなどの太めのベルトでウエストをマークして。ボリューミーなトップスに合わせれば、さらに上半身が細く、ウエストがくびれてみえて◎。太陽が乙女座に入る8月23日頃は、洗顔時やタオルでふくときに、顔をゴシゴシこするなどの摩擦は肌に刺激を与えて炎症の原因に。やさしく行うことを意識して。土星が射手座で順行に戻る8月25日頃は、。金星が獅子座に入る8月26日頃は、甘すぎない大人の大柄フラワープリントのアイテムをコーディネートにプラスしてみて。【あわせて読みたい超絶人気記事♪】#anan占い【2017年8月の運勢】占い監修・橋本ミシェル占いと美容に精通している橋本ミシェルさんに2017年8月の運勢を全体運、恋愛運、美容運別に予測してもらいました。あなたの星の動きはどうなる?いますぐチェックして幸運をつかみましょう!【獅子座】心に余裕を持つことでうまくいく流れラッキーカラー:ブラック全体運★★★★☆風の流れが切り替わり、ターニングポイントになる人も。自分の持ち味を活かして。天王星が牡羊座で逆行する8月3日頃は、不要なものを整理しよう。モノを減らすことで、暮らしはシンプルに過ごしやすくなっていくのを実感するはず。水瓶座で特別な満月(月食)が起こる8月8日頃は、人から良くも悪くも影響を受けやすいとき。すぐに決めずに2、3日位はよく考えてから行動しよう。水星で乙女座が逆行する8月13日頃は、ムダな出費がないかチェックしておこう。獅子座で特別な新月(日食)が起こる8月22日頃は、あなたにとって大事な決断をしなければならないとき。太陽が乙女座に入る8月23日頃は、まずは基本をきっちり固めて。土星が射手座で順行に戻る8月25日頃は、勉強でも、何かの技能を磨くのでも、他の人よりそれが得意かどうかを考えるべき。人より短時間ですっとできてしまうとか、どれだけ長い時間やっていても全然疲れを感じないとか、自分はどう考えても「これが得意だ」と言える能力を伸ばしていくほうが賢明かも。金星が獅子座に入る8月26日頃は、才能が認められやすいとき。恋愛運★★☆☆☆天王星が牡羊座で逆行する8月3日頃は、周りが助けてあげられるような抜けたところや、完璧ではない「隙」を作るようにして。全てが完璧な人よりも、どこか危なっかしい面があるほうが安心して近づきやすく、恋愛運アップにつながるはず。水瓶座で特別な満月(月食)が起こる8月8日頃は、別れたくても別れられなかった人との縁を切るなど、「腐れ縁」から抜け出せるとき。水星で乙女座が逆行する8月13日頃は、相手の批判をしてしまいがち。美点を探すより先に欠点を探してしまったりしないように。獅子座で特別な新月(日食)が起こる8月22日頃は、新たな恋の出会いの可能性が。太陽が乙女座に入る8月23日頃は、神経質になりがちなとき。きれい好きも自分がキッチリ掃除をすればいいだけの話。それをいちいち、人に強制したりイラつくのが悪い神経質。心に余裕を持てるように心がけて、つまらないことで喧嘩しないように。土星が射手座で順行に戻る8月25日頃は、焦らずひとつひとつ理解を深めることが大切。金星が獅子座に入る8月26日頃は、華やかなモテ期に突入!美容運★★★★☆天王星が牡羊座で逆行する8月3日頃は、ショートパンツ×Tシャツで、動きやすいカジュアルなコーディネートを楽しんで。メイクもナチュラルメイクのほうが、本来のあなたの魅力を引き立てます。水瓶座で特別な満月(月食)が起こる8月8日頃は、海外ブランドの水着やビーチウエアがラッキーアイテム。水星で乙女座が逆行する8月13日頃は、メイクで自然な陰影のある目もとを演出して。あまり色みを使わずナチュラルにベージュアイとブラウンラインで辛口の中にやさしい印象を入れるのがポイント。獅子座で特別な新月(日食)が起こる8月22日頃は、背中やデコルテの開いたトップスを、コーディネートにチョイスすると良さそう。太陽が乙女座に入る8月23日頃は、日焼け止めクリームをしっかり塗り直して、紫外線対策を。土星が射手座で順行に戻る8月25日頃は、スポーティなファッションが吉。金星が獅子座に入る8月26日頃は、ゴージャスな大ぶりのアクセサリーが幸運を引き寄せそう。【あわせて読みたい超絶人気記事♪】#anan占い【2017年8月の運勢】占い監修・橋本ミシェル占いと美容に精通している橋本ミシェルさんに2017年8月の運勢を全体運、恋愛運、美容運別に予測してもらいました。あなたの星の動きはどうなる?いますぐチェックして幸運をつかみましょう!【乙女座】自分から動いていくことで切り開いてラッキーカラー:ホワイト全体運★★★☆☆気持ちばかり焦って先に進もうとしがちだけど、しっかりと立ち止まることも必要なとき。天王星が牡羊座で逆行する8月3日頃は、人に頼るのではなく、自分で考えて前に進んだほうが良い結果に結びつきそうなとき。水瓶座で特別な満月(月食)が起こる8月8日頃は、知らないうちに自分自身を追い込んでいってしまうかも。過度なストレスに注意して。水星で乙女座が逆行する8月13日頃は、少し休憩したいとき。走り続けてきたことは、そのまま進むのではなく、方向性の変化や見直さなければならないところが出てくるかも。ストレスを、感じやすいときでもあるので、しっかりと体調を管理して。獅子座で特別な新月(日食)が起こる8月22日頃は、心の中の葛藤が少しずつ楽になっていくとき。太陽が乙女座に入る8月23日頃は、今までと違う価値観が生まれそう。土星が射手座で順行に戻る8月25日頃は、自分のミッションを再確認したいとき。金星が獅子座に入る8月26日頃は、ひとりでゆっくり考えると良いアイデアが生まれそう。恋愛運★★★☆☆天王星が牡羊座で逆行する8月3日頃は、相手に依存心を改める必要があるかも。自立した大人の女性になれるように意識して。水瓶座で特別な満月(月食)が起こる8月8日頃は、何らかの結果が出そうなとき。水星で乙女座が逆行する8月13日頃は、二人の関係を立ち止まって考えたいとき。お互いに理解し合えるように歩み寄って。獅子座で特別な新月(日食)が起こる8月22日頃は、現状を受け入れることができるようになり、新たな一歩がスタート。太陽が乙女座に入る8月23日頃は、恋の行方に悩んでしまうかも。ひとりで悩んでないで、論理的に考えることが得意な友人に相談するのが良いかも。土星が射手座で順行に戻る8月25日頃は、面倒なことに巻き込まれそうな暗示。金星が獅子座に入る8月26日頃は、大恋愛のチャンスに恵まれそう。でも、向こうからの愛情表現や許可を待っていたら、他の誰かに、あなたの好きな人は奪われてしまいます。早いもの勝ち、手にしたもの勝ちと心得て。美容運★★☆☆☆天王星が牡羊座で逆行する8月3日頃は、くるぶしソックスなどの靴下とスニーカーのコーディネートがGood! 水瓶座で特別な満月(月食)が起こる8月8日頃は、個性的なデザインのものがラッキーアイテム。個性抜群の斜めデザインのスカートをチョイスしてみるのがオススメ。スカートならば足が細く見えて、美脚効果も嬉しいデザイン。斜めにデザインされていると視線が流れているほうになるので背が高くみられスマートな印象になり一石二鳥。水星で乙女座が逆行する8月13日頃は、オーガニックのハーブティーが吉。獅子座で特別な新月(日食)が起こる8月22日頃は、大ぶりのアクセサリーをファッションのアクセントにしてみて。太陽が乙女座に入る8月23日頃は、ヘアスタイルをアレンジしたり、ファッションのテイストを変えてみたりして、思い切りイメージチェンジしてみると良さそう。土星が射手座で順行に戻る8月25日頃は、背中のニキビに注意信号。ケアを怠らないで。金星が獅子座に入る8月26日頃は、シースルーのアイテムをコーディネートにプラスして肌を少し見せることでいやらしさではない「抜け感」を作りあげて。【あわせて読みたい超絶人気記事♪】#anan占い【2017年8月の運勢】占い監修・橋本ミシェル占いと美容に精通している橋本ミシェルさんに2017年8月の運勢を全体運、恋愛運、美容運別に予測してもらいました。あなたの星の動きはどうなる?いますぐチェックして幸運をつかみましょう!【天秤座】ピュアでオープンマインドでいこうラッキーカラー:オレンジ全体運★★★★★褒められたり、高く評価される機会がありそう。今後のために、何が良かったのか振り返っておいて。天王星が牡羊座で逆行する8月3日頃は、今までとは違う視点で考えると良さそう。違う視点で物事をとらえると、違う結果が得られます。思い込みが変わると物事のとらえ方が変わり、人生までが変わっていくことに。水瓶座で特別な満月(月食)が起こる8月8日頃は、穏やかな気持ちで過ごせそうなとき。周りへフォローをしてあげて。水星で乙女座が逆行する8月13日頃は、ふとしたことから疑問が出てきそうだけど、考えすぎず流すことも大切。獅子座で特別な新月(日食)が起こる8月22日頃は、友達からの影響を受けて、新しい目標が見つかりそう。太陽が乙女座に入る8月23日頃は、未来へのインスピレーションが湧きそう。土星が射手座で順行に戻る8月25日頃は、コミュニケーションを活発にすることで、仕事がスムーズに進みそう。金星が獅子座に入る8月26日頃は、イベントやセミナーなどへの参加が◎。恋愛運★★★★★天王星が牡羊座で逆行する8月3日頃は、フランクに付き合える男友達と過ごすのがオススメ。趣味の合う人と充実した時間が過ごせそう。水瓶座で特別な満月(月食)が起こる8月8日頃は、最新スポットへデートに出かけてみると、盛り上がって楽しく過ごせそう。水星で乙女座が逆行する8月13日頃は、「どうせ自分には無理な相手だし……」と諦めてしまいがちかも。失敗を恐れすぎないで。獅子座で特別な新月(日食)が起こる8月22日頃は、明るい笑顔を欠かさずに、オープンマインドでいるだけで、周りの異性から何かと人気を集めそう。太陽が乙女座に入る8月23日頃は、二人の愛がワンランクアップしたものに変わっていきそうなとき。土星が射手座で順行に戻る8月25日頃は、今の状況や環境に素直に感謝できたり、満たされた気持ちを保てるようにいつも心をピュアにしておくことが大切。金星が獅子座に入る8月26日頃は、華やかな装いでパーティに参加してみて。美容運★★★★★天王星が牡羊座で逆行する8月3日頃は、デスクワーク中も定期的に机を離れ、同じ姿勢を取りすぎないように気を付けよう。腕や肩を中心にストレッチをトライしてみて。水瓶座で特別な満月(月食)が起こる8月8日頃は、ほんのり甘いフルーティなフレグランスが吉。水星で乙女座が逆行する8月13日頃は、ガムやマウスウォッシュなどで、お口のエチケット対策を心がけておくと良さそう。獅子座で特別な新月(日食)が起こる8月22日頃は、コスメカウンターで新しい紫外線対策の化粧品をチェックしておいて。太陽が乙女座に入る8月23日頃は、スタイルを手に入れるために、一食置き換えダイエットにチャレンジしてみると良いかも。土星が射手座で順行に戻る8月25日頃は、部屋の中でキャンドルを灯して過ごすと◎。癒しの時間でエレガントな魅力がアップしそう。金星が獅子座に入る8月26日頃は、濃厚な美容液で潤いをたっぷり与えて、エアコンや紫外線のダメージを受けた肌をよみがえらせて。【あわせて読みたい超絶人気記事♪】#anan占い【2017年8月の運勢】占い監修・橋本ミシェル占いと美容に精通している橋本ミシェルさんに2017年8月の運勢を全体運、恋愛運、美容運別に予測してもらいました。あなたの星の動きはどうなる?いますぐチェックして幸運をつかみましょう!【蠍座】 月の中旬に復縁のチャンスがありそうラッキーカラー:ベージュ全体運★★★★☆周りに対して、話を聞く耳を持つことが、うまくいくためのポイントに。天王星が牡羊座で逆行する8月3日頃は、頑固になりすぎて、周りから孤立してしまいやすいので、気を付けて。周りの意見もきちんと聞くと、案外すんなりと進みそう。水瓶座で特別な満月(月食)が起こる8月8日頃は、何か変化がありそう。水星で乙女座が逆行する8月13日頃は、過去の失敗した出来事から、大切なポイントを学んでおくと良いかも。獅子座で特別な新月(日食)が起こる8月22日頃は、やりたいことがたくさん出てきて、慌ただしくなりそうなとき。長いスパンでじっくりと取り組み、将来的な結果を出すことを考えて。太陽が乙女座に入る8月23日頃は、友達のアドバイスから問題解決の糸口がみつかりそう。土星が射手座で順行に戻る8月25日頃は、「保険」や「貯蓄」を見直したいとき。専門家のアドバイスを受けるのがオススメ。金星が獅子座に入る8月26日頃は、着々と成果が見えてきて、頑張りがいがありそう。恋愛運★★★★☆天王星が牡羊座で逆行する8月3日頃は、柔軟な対応で、お互いの意識をすり合わせると良さそう。水瓶座で特別な満月(月食)が起こる8月8日頃は、お互いが尊敬できて、感謝し合える相手と良縁の暗示。水星で乙女座が逆行する8月13日頃は、昔の恋人と復縁のチャンスがありそう。獅子座で特別な新月(日食)が起こる8月22日頃は、特に理由がなくても「うまくいく!」と自分に言い聞かせて自信をもって挑戦することが大事で、その自信が努力につながり結果となりやすいとき。太陽が乙女座に入る8月23日頃は、「愛」の絆が強めるために、ギブアンドテイクを意識して。「相手のために何ができるか?」を考えて、あなたが与えるものに、相手が感謝してくれることで、良い循環が。土星が射手座で順行に戻る8月25日頃は、相手や物事のある一面だけを見て全体を決めつけやすい傾向が強まりそう。信頼できる人から、客観的な視点で、アドバイスしてもらうと良いかも。金星が獅子座に入る8月26日頃は、嬉しい出会いのチャンスがありそう。美容運★★★★☆天王星が牡羊座で逆行する8月3日頃は、普段使いできる「ブラキャミソール」で、着心地バツグンの楽ちんキレイを手に入れて。水瓶座で特別な満月(月食)が起こる8月8日頃は、食生活の乱れが心配なとき。ドリンクに「チアシード」を入れて、美容とダイエットの対策に取り組もう。水星で乙女座が逆行する8月13日頃は、ヘアスタイルを上品にまとめるハーフアップ アレンジが吉。清楚で洗練された雰囲気が演出できて、周りからの人気が高まりそう。獅子座で特別な新月(日食)が起こる8月22日頃は、洗顔で重要な「泡立て」を見直して。たっぷりきめ細かい泡を作ってやさしく洗顔すれば、肌をゴシゴシこすらずにすむので、摩擦による刺激や色素沈着も防止。毛穴やキメの間に入った汚れを、しっかりと泡でからめとることができて◎。太陽が乙女座に入る8月23日頃は、コスメカウンター巡りで良い発見がありそう。土星が射手座で順行に戻る8月25日頃は、ベージュのネイルがオススメ。金星が獅子座に入る8月26日頃は、コテ(ヘアアイロン)を使った、「ゆるふわ」なヘアスタイルが幸運を引き寄せそう。【あわせて読みたい超絶人気記事♪】#anan占い【2017年8月の運勢】占い監修・橋本ミシェル占いと美容に精通している橋本ミシェルさんに2017年8月の運勢を全体運、恋愛運、美容運別に予測してもらいました。あなたの星の動きはどうなる?いますぐチェックして幸運をつかみましょう!【射手座】離れるべきかどうかはアレで見極めてラッキーカラー:ホワイト全体運★☆☆☆☆ストレスに負けないように。あまり考えすぎない方がうまくとき。天王星が牡羊座で逆行する8月3日頃は、「縛られたくない」、「自由でいたい」という気持ちが高まり、爆発してしまう人も。水瓶座で特別な満月(月食)が起こる8月8日頃は、ユーモアのある切り返しが、良い展開に導いてくれそう。水星で乙女座が逆行する8月13日頃は、対人関係を見直したいタイミング。「その人といるとなぜかイライラする」と感じたり、グッタリと疲れるような感覚がある場合には、その人とは離れるべきというサインかも。獅子座で特別な新月(日食)が起こる8月22日頃は、何か強いインパクトのあるような出会いがありそう。太陽が乙女座に入る8月23日頃は、さらなる成長への旅立ちのとき。土星が射手座で順行に戻る8月25日頃は、進むべき方向性が定まっていきそうなとき。とはいえ、考えすぎると心がキツくなり、身動きが取れなくなってしまいがち。完璧じゃなくても、今できることだけやれていればそれで良いと思って動いてみて。金星が獅子座に入る8月26日頃は、出張や旅行先で、ラッキーなことがありそうな予感。恋愛運★☆☆☆☆天王星が牡羊座で逆行する8月3日頃は、大人数でワイワイ騒げるカジュアルなパーティーにツキがありそう。水瓶座で特別な満月(月食)が起こる8月8日頃は、一緒にいておもしろいと思える人と恋のチャンスが。水星で乙女座が逆行する8月13日頃は、相手の身勝手やわがまま、自己中心的な態度によって、苦しめられてはいないか、振り返ってみて。あなたが何らかの利益を運んでくれること “しか” 期待していないような恋人の場合、あなたが苦しみ続けるよりも、その人と縁を切ってしまったほうが良さそう。獅子座で特別な新月(日食)が起こる8月22日頃は、感情などの複雑な要素は、一度頭の中で切り離して「この人は私にとって本当に必要なのか?」と問いかけてみて。離れてみるほうが気が楽だと感じたり、一緒に居ないほうが楽しい時間が過ごせそうだと感じたなら、それはその人と離れるべきタイミングかも。太陽が乙女座に入る8月23日頃は、神経質になりすぎないで。土星が射手座で順行に戻る8月25日頃は、パートナーがあなたの世界に関心が薄いと感じられたら、後々、自分が孤独な思いをさせられる危険性があるので、慎重に見極めて。金星が獅子座に入る8月26日頃は、遠い世界の人だと思っていた人と仲良くなりそう。美容運★☆☆☆☆天王星が牡羊座で逆行する8月3日頃は、アクティブな外出時にも楽ちんで、とにかくどんなスタイルにも合わせやすちスニーカーが、ラッキーアイテム。水瓶座で特別な満月(月食)が起こる8月8日頃は、スキンケアやエステも効果的ですが、何よりも食べる物をきちんと管理することが大切なとき。甘い物やお酒などの誘惑もありますが、自分にとってプラスかマイナスかを考えてコントロールして。水星で乙女座が逆行する8月13日頃は、ダイエット中は不足しがちな栄養素を補いながら、置き換え食としても飲めるような、スムージーがオススメ。獅子座で特別な新月(日食)が起こる8月22日頃は、レモングラスなどの柑橘系の爽やかな香りで、モチベーションがアップ。太陽が乙女座に入る8月23日頃は、ウエストのラインがキレイに見えるワンピースがオススメ。土星が射手座で順行に戻る8月25日頃は、どうしても食べたいときは、ダイエットサプリメントを味方につけて。金星が獅子座に入る8月26日頃は、保湿成分たっぷりでツヤ肌に仕上げてくれる、新しいファンデーションをGetしておくと良い時期。【あわせて読みたい超絶人気記事♪】#anan占い【2017年8月の運勢】占い監修・橋本ミシェル占いと美容に精通している橋本ミシェルさんに2017年8月の運勢を全体運、恋愛運、美容運別に予測してもらいました。あなたの星の動きはどうなる?いますぐチェックして幸運をつかみましょう!【山羊座】実は見られているアレの乱れに注意ラッキーカラー:パープル全体運★★★☆☆再チャレンジにツキがありそうなとき。意外なところにチャンスが転がっていそう。天王星が牡羊座で逆行する8月3日頃は、何か「やめてしまいたい!」と思っていたことがあった人は、「もう一度頑張って見ても良いかな」と思えてくるかも。水瓶座で特別な満月(月食)が起こる8月8日頃は、あなたが願っていた形とは少し違うかもしれないけど、成功への道につながっていくはず。水星で乙女座が逆行する8月13日頃は、「あの時に戻ってもう一度やり直したい」と思ったり、後悔することがあるかも。あまり神経質になって考えてしまわないように気をつけて。獅子座で特別な新月(日食)が起こる8月22日頃は、今までの凝り固まった考え方や古い慣習を転換させていくような、刺激や衝動を感じそう。新しい可能性を切り開いて。太陽が乙女座に入る8月23日頃は、頑張ってきたことの成果が出てきそう。土星が射手座で順行に戻る8月25日頃は、謙虚に自らを振り返ることが大切。金星が獅子座に入る8月26日頃は、主張が強くなりすぎないように。恋愛運★★☆☆☆天王星が牡羊座で逆行する8月3日頃は、相手によって態度を変えたりしないように。平等に接することが、周りからの信頼を得られそう。水瓶座で特別な満月(月食)が起こる8月8日頃は、タイプではないと思うような人から想いを寄せられそうなとき。水星で乙女座が逆行する8月13日頃は、恋人と過ごす時間を増やしてみて。そばにいてよく観察することで、良いところを再発見できそうなとき。元彼と復活の可能性も。獅子座で特別な新月(日食)が起こる8月22日頃は、くだらない話にも軽く乗って一緒に笑ってあげられる、ノリの良さがポイントに。フランクで明るい雰囲気を出して。太陽が乙女座に入る8月23日頃は、SNSの言葉づかいや書き文字の美しさも、実はしっかりチェックされています。くれぐれも評価を落とさないように注意して。土星が射手座で順行に戻る8月25日頃は、フォローをいれたり、飲み会の席ではお酒を注いだり、率先して気配りをすることで好感度アップ。金星が獅子座に入る8月26日頃は、自己中心的な態度に気をつけて。美容運★★★☆☆天王星が牡羊座で逆行する8月3日頃は、「帽子」が幸運の鍵に。水瓶座で特別な満月(月食)が起こる8月8日頃は、カジュアルな「ロゴTシャツ」を取り入れてみて。水星で乙女座が逆行する8月13日頃は、女の子らしいふわっとしたスカートに、トップスも清潔感のある優しい色合いのものを合わせてみて。あまり派手すぎず、シンプルなものをちゃんと着こなすことを意識すると良いとき。獅子座で特別な新月(日食)が起こる8月22日頃は、インパクトのある「アニマル柄&モチーフ」を使ったアイテムをチョイスして。小物やバッグ、サンダルなどに部分使いするとコーディネートもピリッとしまりそう。太陽が乙女座に入る8月23日頃は、天然ミネラルパウダー配合のフェイスパウダーで、透明感のある肌に。土星が射手座で順行に戻る8月25日頃は、シンプルな薄青のブリーチデニムがラッキーアイテム。柄物のトップスを合わせて、無地×柄物のバランスの良いおしゃれな仕上がりもGood! 金星が獅子座に入る8月26日頃は、オフショルダーのトップスでセクシーな魅力がアップ。【あわせて読みたい超絶人気記事♪】#anan占い【2017年8月の運勢】占い監修・橋本ミシェル占いと美容に精通している橋本ミシェルさんに2017年8月の運勢を全体運、恋愛運、美容運別に予測してもらいました。あなたの星の動きはどうなる?いますぐチェックして幸運をつかみましょう!【水瓶座】我慢の多い関係性は見直したいときラッキーカラー:レッド全体運★★☆☆☆人間関係で好不調の波がありそうなとき。良くも悪くも人から影響を受けそう。天王星が牡羊座で逆行する8月3日頃は、ライバルから良い刺激を受けそう。水瓶座で特別な満月(月食)が起こる8月8日頃は、相手の反応に物足りなさを感じてしまうかも。親切心は、相手の気持ちを察してこそ。それを、一方的に押し付けてくるのは考えもの。相手が、応えないからといって、がっかりしないで。水星で乙女座が逆行する8月13日頃は、口が達者で、自分の成功を手にするために手段を選ばないような存在とは、縁を切ったほうが良さそう。獅子座で特別な新月(日食)が起こる8月22日頃は、ひとりよりも、誰かとタッグを組んで挑戦した方が良いとき。太陽が乙女座に入る8月23日頃は、強くぶつかることも避けられないかも。土星が射手座で順行に戻る8月25日頃は、関係を深めようと努力しているにも関わらず、嘘をついてくるような人が現れて翻弄されてしまうかも。そんな人と付き合う時間があったら、もっと信頼できる人と過ごすために時間にまわしたほうが賢明。金星が獅子座に入る8月26日頃は、人間関係に恵まれる暗示。恋愛運★★☆☆☆天王星が牡羊座で逆行する8月3日頃は、互いに認め合い、良いところを伸ばしあえる関係を築いて。水瓶座で特別な満月(月食)が起こる8月8日頃は、愛情の高ぶりを感じそう。水星で乙女座が逆行する8月13日頃は、無理に恋人を楽しませようと必死になってしまいがち。そんなに我慢して、自分を犠牲にしてまで、恋人を楽しませる必要があるのかどうかを考えてみて。あなたが、もっと伸び伸びと楽しめる付き合い方ができるパートナーがベストなはず。獅子座で特別な新月(日食)が起こる8月22日頃は、パーティーで素敵な出会いが期待できそう。太陽が乙女座に入る8月23日頃は、パートナーにイライラしてしまいそう。大好きな人と時間を共に過ごせば、エネルギーが充電されて喜びが満ちあふれるもの。それなのに、「最近彼と一緒にいると疲れるかも」「エネルギーを消耗しているかも」と感じてしまう人は要注意。土星が射手座で順行に戻る8月25日頃は、あまり欲張りにならないように。金星が獅子座に入る8月26日頃は、魅力が高まり注目を集めそう。美容運★★★☆☆天王星が牡羊座で逆行する8月3日頃は、スポーツジムでマンツーマンのパーソナルトレーニングがオススメ。水瓶座で特別な満月(月食)が起こる8月8日頃は、外出時には、日傘や帽子、サングラスなどで紫外線ダメージを防いで。水星で乙女座が逆行する8月13日頃は、ベッドに入る前に、プリメリアなどのトロピカルな南国の花の香りをまとうと、心を解放してリラックス。至福の眠りと開運を手に入れられそう。獅子座で特別な新月(日食)が起こる8月22日頃は、ネイルのデザインを一新してみるとラッキーを引き寄せそう。太陽が乙女座に入る8月23日頃は、ベースメイクは厚塗りにならないように気をつけよう。急いで仕上げた肌は “雑な雰囲気” が表れて運気もマイナスに。ベースメイクをなるべく薄づきに、丁寧に仕上げて。土星が射手座で順行に戻る8月25日頃は、日焼け止めの塗り忘れがないように。首の辺り、耳の周辺、まぶたの上下、目尻、小鼻のわき、口元などにもきちんと塗っておこう。金星が獅子座に入る8月26日頃は、食生活が乱れると肌荒れしそう。野菜や玄米中心のヘルシーな食事を心がけて。【あわせて読みたい超絶人気記事♪】#anan占い【2017年8月の運勢】占い監修・橋本ミシェル占いと美容に精通している橋本ミシェルさんに2017年8月の運勢を全体運、恋愛運、美容運別に予測してもらいました。あなたの星の動きはどうなる?いますぐチェックして幸運をつかみましょう!【魚座】下旬はオーラを放ち魅力が増す時期にラッキーカラー:ブルー全体運★★★☆☆風の流れも自分の気持ちも、小さな変化が起こりやすいとき。前向きな行動が良い結果に導きます。天王星が牡羊座で逆行する8月3日頃は、忙しくなり、多くのタスクを同時に進めていかなければならないこともありそう。水瓶座で特別な満月(月食)が起こる8月8日頃は、積極的に人脈を広げ、意見交換をしよう。人と会う時間は、未来への投資。出会いが、アイデアを思いつくきっかけになり、ビジネスチャンスにつながりそう。水星で乙女座が逆行する8月13日頃は、あえて今までのやり方と違う方法を選択してみると良い発見が。獅子座で特別な新月(日食)が起こる8月22日頃は、不節制な生活を変えて、新しい健康的なライフスタイルへ。太陽が乙女座に入る8月23日頃は、人との関係性を見つめなおして。土星が射手座で順行に戻る8月25日頃は、周りからの大きな期待がプレッシャーになってしまうかも。上手に気分転換して切り抜けて。金星が獅子座に入る8月26日頃は、解決に向かって行動を取ることで、風向きが変わり、明るい気持ちになれそう。恋愛運★★★☆☆天王星が牡羊座で逆行する8月3日頃は、イライラをパートナーぶつけてしまいたくなるかも。キツイ言葉で相手を傷つけないように。水瓶座で特別な満月(月食)が起こる8月8日頃は、こだわってきたことを、あえて手放してみると良いとき。水星で乙女座が逆行する8月13日頃は、あなたの価値観と違っていても、否定せずに話を聞いてあげることが大切。会話が広がるような相槌をうったりするのも◎。獅子座で特別な新月(日食)が起こる8月22日頃は、新しいことを取り入れたいとき。デートは最新スポットがオススメ。太陽が乙女座に入る8月23日頃は、一緒にいる人によって、よくも悪くも変わりやすいとき。その人と一緒にいると自分のイヤな面が強調されると感じたら、その人と離れたほうが良いというサインかも。土星が射手座で順行に戻る8月25日頃は、相手の理想に自分を近づけようと、無理をしすぎないように。金星が獅子座に入る8月26日頃は、異性を魅了するオーラを放ちそう。あなたの魅力が増す時期なだけに、恋の誘惑も多くなりそう。たとえ恋人がいたとしても、プラトニックな恋心は害がないはず。でも、知らずのうちに、本気になってしまうと “それ以上” を求めてしまうのが危ないところ。美容運★★★☆☆☆天王星が牡羊座で逆行する8月3日頃は、暑すぎたり、エアコンで寒過ぎたり、寝苦しい環境で寝ていると、代謝が滞りやすくなり、むくみの原因に。寝具の機能性にも気を配って選んだほうが良いかも。水瓶座で特別な満月(月食)が起こる8月8日頃は、抗酸化力が高く、肌の老化を防ぐ、ビタミンCが豊富な食品を取り入れて。水星で乙女座が逆行する8月13日頃は、紫外線からの影響が強くなりそう。この時期にお手入れをさぼると、肌のダメージが大きくなってしまいそうなので、塗り忘れのないように、日焼け止めをしっかりつけて。アロエベラのエキスが入った化粧品でスキンケアがオススメ。獅子座で特別な新月(日食)が起こる8月22日頃は、新技術のコスメを試してみると良い方向へ。太陽が乙女座に入る8月23日頃は、断捨離要らない洋服を処分!コーディネートしやすくなるように、クローゼットの中の洋服をスッキリさせよう。土星が射手座で順行に戻る8月25日頃は、金星が獅子座に入る8月26日頃は、お部屋にシュッとひと吹きするだけで好きな香りが楽しめるルームスプレーで、上手に気分転換を。【あわせて読みたい超絶人気記事♪】
2017年07月29日12人の女性たちの生き方を、12星座になぞらえて紹介していくショートクロスストーリー『12星座 女たちの人生』。 キャリア、恋愛、不倫、育児……。男性とはまた異なる、色とりどりの生活の中で彼女たちは自己実現を果たしていく。 この物語を読み進めていく中で、自身の星座に与えられた“宿命”のようなものを感じられるのではないでしょうか。文・脇田尚揮【12星座 女たちの人生】第128話 ~天秤座-11~一日の仕事が終わる。なんだろう、この充実感……。仕事って、こんなに楽しいものだったっけ……?ロッカールームのドアを開けると、鈴森さんがいた。「お疲れ様」『お疲れ様です』「最近の佐々木さん、輝いてますね」『え……?』「私、佐々木さんのこと、カン違いしてました……それじゃあ、また」鈴森さんから意外な言葉を掛けられて、私は一瞬何が起きたのか分からなかった。鈴森さんは、私がここで働き始めた時から、私のことを“いけ好かない”と感じていたのだと思う。事あるごとに、チクチク嫌味を言われてきたもの。確かに、彼女は仕事熱心でいつも丁寧だったわ。だけど、私はそんな彼女を“要領の悪い人”という目で見ていた。“要領の悪い人”―――あ。薫さんも……だ。あの人は、どんなに小さな事でも、丁寧に丁寧に対応する。これまで彼が私にしてきてくれたことを想う―――。ショップのHPのこと。トラブルのこと。……私が訊いたことに対して、全て“望むもの以上のこと”を準備し、与えてくれた。『私……』彼のそんな優しさに全然気づいていなかった。値踏みしたり、遊び半分でからかったりして……。―――ひと筋、ふた筋と涙がこぼれ落ちる。私は、スマートに器用に生きているつもりだったけど、全然カッコ悪い……。オトコ達に囲まれて、チヤホヤされて、手抜きの仕事をして。頑張る人を疎ましく思って。“中身”が全然なかった。一生懸命過ぎると、傍からは“要領が悪い”ように見えるのかもしれない。でも、そういった熱意や意欲こそが人の心を動かすものなのね。ハンカチで目を押さえる。着替えて、バッグの中からスマホを取り出す。あれ、裕太からLINEが入ってる……。「おつかれ、恭子。なんかさ、こないだの飲み会で紹介した薫が、悩んでるみたいなんだけど……。思い当たるフシ、ある?」―――え。薫さんが、悩んでる……? 一体、どうして?考えられるのは、ひとつ。私が原因だ。この前、ウチに来てくれた時のことだ。よっぽど、イヤだったのかな……。帰り道、LINEをどう返すかしばらく悩み……。「お疲れ、裕太。もしかしたら、それ、私が原因かも。良かったら、悪いんだけどもう一回飲み会を開いてもらえない?」思い切って、裕太に返信する。これまでの私は、面倒なことを全て避けてきた。でも、そこに向き合わないと、何も解決しないんだ―――。帰宅して着替え終えた頃、裕太から返信が入っていた。「そっか……。よくわかんねーけど、了解。薫、ああ見えて繊細なヤツだからさ、ヨロシクな近々で悪いけど、明日って大丈夫?21時に恵比寿とか」『良かった……』また、薫さんに会えるんだ。キチンと“あの時”のこと、謝ることができる。「私は大丈夫。わざわざゴメンね。ヨロシクお願いしますm(_ _)m」裕太のLINEに返して、お風呂に入る。シャワーを浴びながら、少し弱気になっている自分に気づく。何て謝ったら良いんだろう……。「あの時は、急にキスしてごめんなさい」かな。それとも「好きです」?……そんなこと、言えない。私のことを嫌いになっている可能性だってあるんだから。薫さんのことが分からない。本当は、直接薫さんに連絡した方が良いのは分かってる。でも、そこまでの勇気はない。―――シャワーの蛇口を締めた。雨だ。お風呂上がり、髪をとかしていると雨音が聞こえてきた。薫さんがお店のウェブを良くしてくれた時も、雨降ってたなぁ……。彼には、“雨のイメージ”がよく似合うと思った。一滴一滴、柔らかくシトシトと降る雨。たいした力はなさそうに見えるけど、時に激しく降り注ぐ。雨には強い力がある。どんなに大きな川だって水源は雨だ。降り続けると洪水にもなる。鍾乳洞の岩にだって雨水が落ち続ければ、やがて穴が空くほどだ。周りから見たら、小さなことをチマチマやっているように見えても、その積み重ねが大きな結果を生む。私にないものを、彼は持っている。―――その夜は、少し早く眠りについた。雨音を聞きながら。朝には雨もやんで、空は晴れていた。いつもより目覚めも早く健やかだ。『今夜9時か……』ゆっくりベッドから起き上がり、ぬるま湯に口をつけながら静かな時間を過ごす。こんなに清々しい朝は、いつぶりかな……。支度を済ませ、家を出る。心の準備は出来ている。『おはようございます!』主任の来栖さんに元気よく挨拶する。「あ、ええ、おはよう……何だか最近、佐々木さん、生き生きしてるわね。何か良い事あったの?」『ええ……そんな感じです……!』私は、変わった。薫さんに“気づき”をもらったんだ。―――仕事が終わった。今日も接客とネット対応の一日だった。やってみると、意外と楽しい。昨日のお昼に発送したお客様からも、「迅速丁寧な対応、有難うございます」ってコメントをもらえていたしね。『今は……20時か』ロッカールームのドアを閉め、いつもより少しだけ早く歩く。そう、恵比寿へと―――!【今回の主役】佐々木恭子 天秤座27歳 アパレル店員センスがよく整った容姿の女性。男に困ったことがなく、広く浅く男性と付き合う、いわゆる“リア充”である。将来の夢は玉の輿に乗ることで、毎週タワーマンションで催される会員制パーティー『ロイヤル・ヴェイル』に参加している。仕事仲間からは陰口を叩かれているようである。(C) Voyagerix / Shutterstock(C) ngorkapong / Shutterstock
2017年07月28日12人の女性たちの生き方を、12星座になぞらえて紹介していくショートクロスストーリー『12星座 女たちの人生』。 キャリア、恋愛、不倫、育児……。男性とはまた異なる、色とりどりの生活の中で彼女たちは自己実現を果たしていく。 この物語を読み進めていく中で、自身の星座に与えられた“宿命”のようなものを感じられるのではないでしょうか。文・脇田尚揮【12星座 女たちの人生】第127話 ~天秤座-10~―――マズかった……?彼は硬直したまま、私の方を見ている。「どういうこと……ですか?」自分の顔がみるみる内に火照ってきたのが分かる。おそらく真っ赤になっているだろう。これまで“この作戦”で失敗したことは一度もない。ほとんどのオトコが落ちたわ。この気まずい空気、何とか誤魔化さなきゃ……。『あの、ホラ、遅くにわざわざ来てくれて、HP直して下さったから……その……お礼のつもり……的な……』「…………」―――また、しばしの沈黙のあと。「……佐々木さんは、“そういう方”なんですね……」一言、彼がポツリと呟いた。“そんな人”……?それってどういうこと……?すぐにキスしたり、身体を許したりするような“軽い女”って思われた……?「もうすぐ作業終わりますので……」そう言って彼は、PCに向かって修復作業を始めた。『あの……ごめんなさい』「どうして謝るんです?」PCから目を離さずに彼が答える。『突然、あの……』「謝るようなことなら、しなけりゃいいじゃないですか……」『…………』エンターキーをパチンと叩いた音が、“終わりの合図”だった。「修復、終わりました。一応チェックもしてあるので大丈夫かと思います」『……ありがとうございます』「それでは、私はこれで……」薫さんがスクッっと立ち上がって、バッグを肩にかける。「次からは、こんな夜遅くにお邪魔するのは、控えさせて頂きますね」そう言って玄関へ向かう。今の私には彼を引き止めるだけの理由も気力もない。ただ、黙って見送ることしかできない。『あ……下までお送りします……』「いえ、ここで大丈夫ですよ。それではお邪魔しました」見送りすら拒否された私は、ドアの隙間から彼が見えなくなるのをただ見ているだけ。ドアがカチャンと音を立てて閉まった後には、物音ひとつしない空虚な部屋にひとり。ティーカップに彼は口をつけていなかった。『何よ……!』これまでオトコからこんな対応をされたことはなかった。キャバ嬢だった頃も、いつもオトコは私を“特別扱い”してくれたのに。『童貞のクセに……』“オンナとしてのプライド”を傷つけられた私は、ベッドに突っ伏す。『呼ばなきゃ……良かった』オンナが勇気を出して誘惑したというのに、邪険にするなんて……。ここ最近、舞い上がっていた自分が恥ずかしい。柄にもなく、仕事なんかにも一生懸命取り組んじゃってさ……。『バカ……』―――その日の夜は眠れなかった。そして翌朝、私は“また”遅刻した。前のように、けだるげな勤務態度に逆戻りだ。せっかく仕事、楽しかったのにな……。ドキドキしていて、頑張れて、評価されたりなんかもして。一生懸命頑張る自分は嫌いじゃない。でも、何だか必死みたいで、カッコ悪い。だからいつも、頑張らないようにしてきた。全力を出して上手くいかないなんて、私の美学に反するから。いつも余裕があって、オトコたちにチヤホヤされて……。幸せな結婚をして、美しいものに囲まれて……“マダム”になるのが夢。……でも、それで良いのかな……。私のテンションに反して、サイトの方は好調―――。今日も新作が2着、アクセサリーに加えてパンプスまで売れている。主任も、「サイト販売担当者も必要かしらね……梱包や発送、メッセージのやり取りなんかも今後、増えてきたら手間だしね」なんてことを言っている。私……、薫さんのお陰で、夢中になれた。薫さんと親しくなれば、もっと何か“違う自分”を見つけていけると思っていたのに。―――気がついた。私、恋をしていたんだ―――。いつから……?期待したり、呆れたり、感謝したり、悲しかったり……。こんなに私の感情を振り回すなんて。薫さん……大人しそうな外見に反して、頑ななこだわり。優秀で仕事ができるのに、女性慣れしていない。なんだろう、このアンバランス……。これまで私が関わってきた、どんなオトコとも違っている。『……頑張ってみようかな』つい声に出た。私、変わりたい……!『あの、主任!』「どうしたの?佐々木さん」『私、サイト販売担当、やらせて頂けないでしょうか?』「え……でも、お給料変わらないから仕事量が増えて大変よ」『いいんです。私、やってみたくって』カッコをつけずに、どんな小さいことにも一生懸命な薫さん。私も、そんな薫さんみたいになりたいと思った。―――接客の合間に、裏でお客様とメールをやり取りして、売れた商品を丁寧に梱包する。HPはクレジットカード決済だから、すぐに発送手続きに移ることができるんだけど……発送システムがまだ確立されていないから、直接郵便局から送るしかない……か。洋服を買った時って、すぐに商品を着てみたいと思うわ。すぐに着てみて、鏡の前に立ってイメージ通りかチェックするのよね。このくらいの数なら、私にでも持っていけるはず……。『すいません、発送しに郵便局、行ってきます!』売れた商品を手に取り、駆け出す。お店から郵便局は、小走りなら5分で着くわ。薫さん……。私を変えてくれたオトコ……。店の外に出ると、太陽が燦々と輝いていた―――。【今回の主役】佐々木恭子 天秤座27歳 アパレル店員センスがよく整った容姿の女性。男に困ったことがなく、広く浅く男性と付き合う、いわゆる“リア充”である。将来の夢は玉の輿に乗ることで、毎週タワーマンションで催される会員制パーティー『ロイヤル・ヴェイル』に参加している。仕事仲間からは陰口を叩かれているようである。(C) Ollyy / Shutterstock(C) Best Photographer / Shutterstock
2017年07月27日12人の女性たちの生き方を、12星座になぞらえて紹介していくショートクロスストーリー『12星座 女たちの人生』。 キャリア、恋愛、不倫、育児……。男性とはまた異なる、色とりどりの生活の中で彼女たちは自己実現を果たしていく。 この物語を読み進めていく中で、自身の星座に与えられた“宿命”のようなものを感じられるのではないでしょうか。文・脇田尚揮【12星座 女たちの人生】第126話 ~牡羊座-最終話~―――2ヶ月後……。私は自分が手がけた番組を会社で観ていた。完璧な出来ではないが、精一杯やったという自負はある。如月、木田さんをはじめチーフプロデューサーの吉岡さん、今回の企画に異を唱えた飯田達もいる。2時間番組という枠の中で、自分が表現したかったことを全て詰め込んだ。この作品が、私の中でずっと消化不良だった“夏希”への想いを昇華させるものになったことは確かだ。「貧困女子の本質は、女性であるが故の“寂しさ”にあるのかもしれない―――」ナレーターが、締めのコメントを告げ、番組は終わった。「終わりましたね」如月が涙目で微笑んでいる。『お疲れ様。助かったわ……ありがとう』彼女にとっても、ADとして初めてのドキュメンタリー番組の完成だ。感無量だろう。私もAD時代に初めて番組作りに携わらせてもらったときは、感動したもの。こうして電波に乗って、全国の人たちに視聴されていると思うと、何とも言えない気持ちになる。後ろから肩をポンと叩かれる。「タイトなスケジュールの中、よくやったな。ま、及第点ってところか」木田さんだ。『ありがとうございます!』「ただ……マイクが少しこもっているのと、カメラの回し方はもう少し勉強しておいたほうがいいぞ」チクリとアドバイスを受ける。『はい……気をつけます』メンタルがボロボロの中での番組作り、注意が足りなかったところも多々ある。流石に“あれ”は堪えた―――。取材を終え、帰宅したあの日、祐也が女を連れ込んでいて……。だけど、その時私は意外と冷静だった。電気をつけると、祐也も女も最初は何が起きたのか分からないようで、“目が点”になっていたわ……そして祐也の弁明。「劇団仲間と打ち上げをしていたんだよ」女は急いで服を着ながら、「飲み過ぎちゃって……ゴメンなさい」……そんな言い訳、通るわけがない。『裸の男と女が同じ布団で寝ているのって、普通じゃないこと、分かるよね?』祐也と女を正座させて、明け方まで説教をした。その後、祐也とは別れて、すぐに引越すなどバタバタだった……。今回の番組作りでは、私も女として学ぶことが沢山あった。私は寂しさゆえに、祐也のような“ダメ男”を作り出してしまった。だけど、男女の不健全な状況の悲しさを、番組作りを通して、私はまざまざと見せつけられたの。“美智子さん”と“さゆりさん”から教わったと言ってもおかしくないだろう。彼女たちが特別なわけじゃない……。誰しも彼女たちと同じ状況になる可能性は秘めているんだから。でも、それは女であることの性(さが)でもあって、何かひとつボタンをかけ間違っただけ。祐也との別れは辛かった。頭では理解していても、心が追いついていかない……。きっとこの感覚は、取材させてもらった“あの二人”も、もっているものだと思う。でも、そんな“割り切れなさ”をいつまでも見て見ぬフリしていちゃダメなのよ―――。夏希にも、それを気づいて欲しかったな……。後ろ髪引かれる思いを残しながら、どこか清々しく社内のラウンジを歩く。何かの終わりは、同時にまた何かの始まりでもある。今、私が担当しているのはバラエティー番組。タレントに気を遣いながら、何が“ウケるのか”を考えながら、毎日を過ごしている。『正解はないのかも……』独り言を呟いて、自販機にコインを入れようとした時。「奢ってやるよ」木田さんが先に硬貨を入れた。『そんな、悪いですよ』「なんで俺があの時お前を推したか、分かるか?」『え……?』突然の言葉に、戸惑う。「お前の“負けん気”こそが、モノ作りをする上では欠かせないからだよ」『……』「反骨精神っていうのは、既存のモノに満足しきっている奴らをぶち壊してくれる。俺は見ていて、気持ちよかったよ」『そういうものですか……』「だけど、リスクもあることを覚悟しておかなきゃならないんだがな」そう言って、木田さんはコーヒーのボタンを押した。『あ……!』「ん?」『いえ、私、お茶が飲みたかったんですけど……』「え……まぁ、お前、あれだ。カフェインで目を覚ませって話さ」『プッ……アッハハ!』私は、今の自分に満足している。いつも自分が正しいと思うことをやってきた。間違っていることもあるのかもしれないけど、自分が“間違いだと思わなければ、それは正しいことになる”。―――『ありがたく頂きますね』牡羊座の女の人生は、“I am.” ~私は存在する。~自分が感じること、どうしたいか。それを突き詰めた先にある、“何か”を知ること。結局は自己満足なんだけど、でもそれでいいの。人生はそもそもが“自己満”で成り立っているんだから。私はこれからも未知のモノに挑んでいくだろう。その過程で傷ついたり、落ち込んだりすることもあるかもしれない。でも……。それこそが学びであり、自分が生きているってことの証明なの。今、私は充実感でいっぱいです―――。牡羊座の女の人生 ~Fin~【今回の主役】竹内美恵 牡羊座32歳 駆け出しディレクター熊本県から状況し、都内でADとして下積みの後、最近ディレクターに。年下の男(吉井祐也・劇団員)と3年近く同棲をしている。性格は姐御肌で面倒見がよく、思いついたらすぐ行動するタイプ。反面、深く物事を考えることが苦手でその場の勢いで物事を決めてしまうきらいがある。かなりワガママだが、テレビ局内での信頼はあつい。(C) fizkes / Shutterstock(C) Bogdan Sonjachnyj / Shutterstock
2017年07月26日12人の女性たちの生き方を、12星座になぞらえて紹介していくショートクロスストーリー『12星座 女たちの人生』。 キャリア、恋愛、不倫、育児……。男性とはまた異なる、色とりどりの生活の中で彼女たちは自己実現を果たしていく。 この物語を読み進めていく中で、自身の星座に与えられた“宿命”のようなものを感じられるのではないでしょうか。文・脇田尚揮【12星座 女たちの人生】第125話 ~牡羊座-11~―――バンのハンドルを握る。私はどちらかというと、他の女性と比較して気持ちの切り替えが早い方だ。職業柄、そうじゃないと務まらないこともあるし。だけど、私だって女だ。いざこれからって時に、彼氏からあんなことを留守電で伝えられると、気持ちが挫かれる……。「先輩、収録が終わったら、打ち上げしましょう! パーッと」私の不穏な空気を察してか、如月が気を遣ってくれる。はぁ……。後輩に気を遣わせるなんて、私、TVウーマンとして失格だわ……。『そうね! 焼肉食べよ! 木田さんあたりを誘って、全部奢ってもらっちゃう!』気合いを入れなおして、精一杯の強がりを見せた。新宿は、夜中でも明るい。車をコインパーキングに停めて、“さゆりさん”の待つネットカフェへ向かう。ネットカフェの店長さんに、アポイントは取ってあるから安心ではあるけど……。どうして彼女はネットカフェを待ち合わせ場所に選んだのだろう。その答えは、彼女に会うとすぐに分かった。ネットカフェのブースに入ると、今しがたメイクを落としたのか、“すっぴん”姿の女性がいた。そして、そこにはメイク道具やらハンガーにかかった服やらが所狭しと並べられていた。一瞬、普通の家の、女の子の部屋に足を踏み入れたかのような錯覚に陥った。「どうも~」『初めまして。ご連絡させて頂いた竹内です。よろしくお願い致します』名刺を差し出す。さゆりさんは、少しぽっちゃりしているけど、出るとこ出ている、いわゆる“オトコ好き”する体型で、顔は童顔だった。「顔出しNGなんで、よろしくお願いしますね~」まだどこかあどけなさの残る彼女は、そう言ってタバコを吸い始めた。部屋が狭いため、如月にカメラを渡してもらうよう促す。この部屋に3人はムリだろう。自分でカメラをまわしながらのインタビュー形式に切り替える。『今回、“貧困女子”というテーマのドキュメンタリーにご協力下さり、有難うございます。早速なんですが、さゆりさんは今、どういった生活をされてるんですか?』“紋切り型”だが、まずは質問を振ってみる。「あたしは“ウリ”しながら生活してるよ」“ウリ”……つまり、売春ってことか……。「だから、365日毎日セックス漬けってワケ」どこか遠くを見ながら、乾いた声でアハハと笑う彼女。『家は持たないんですか? ご家族は?』「ああ、ママがいるよ。でも、家には帰りたくないの。かと言って、私の収入じゃ、どこも借りられないからここに“住んでる”の」『どうして、家に帰りたくないの?』そう訊ねると、彼女は一瞬曇った表情になり、「ん……ママが私とAVに出ろって言うから……」驚くようなことを口にした。「ママはAV嬢やってるの。パパに捨てられてから。で、昔私が19の時に一緒にAVに出たのね。私は嫌だったけど、ママがどうしてもって言うから」『……』「それが、私の初体験で……。私、高校を中退してから、働かないで家にいたから、断れなかったのよ。生活苦しいって知ってたし」何も言えなかった。19歳で母親に頼まれて、裸姿を世間に晒されるなんて、どんな気持ちだろう……。想像を絶する現実を突きつけられた気分だ。「で、結構売れたらしくって、そのAV。ママがまた一緒に出ようってしつこいの。だから家を出て“ウリ”しながらネカフェで生活してるのよ」『1日の売上はどれくらいなんですか?』「う~ん、お金持ってる人とかは、一回5万くれたりもするけど、平均で2万ってとこかな。ホテル代は相手にもってもらって。ただ、“ヤリパク”されることもあって、あれだけはカンベンだわ。まぁ、本当にお金に困ったら、避妊なしで3万とかもらうこともできるけど……、でも病気とか妊娠怖いし」さゆりさんはやたらと饒舌だ。きっと孤独で、寂しくて、人に話すことで自分を正当化したいのだろう。“私は間違っていない”そう誰かに認めてもらいたいのかもしれない。それから30分ほど、彼女の仕事内容や生活のこと、そして生い立ちについてインタビューした。話の途中、彼女がポツリと呟いた、「おうちに帰りたい」という言葉に、胸が痛んだ。謝礼を渡し、如月とネットカフェを出る。―――二人とも無言のまま、バンを会社まで走らせる。私は平凡ながら、幸せな少女時代を過ごしてきた。人生は時として避けられない出来事が待ち受けていたりもする。でも、それが多感な時期に起こったとしたら―――。“歪み”が生じても仕方ないのかもしれない。社内は人の気配がない。私も如月も、疲弊しきっている。続きは、後日ってところかな。『お疲れさま。良い画が撮れたね。取材はあと1件だっけ。編集しながらやっていこうか』「はい、そうですね~。明日の夜までには、今日分を終わらせときます~」意外とタフなヤツ。頼もしいわ。『じゃあ、今日は解散。また明日の夕方にね』「はい、先輩もゆっくり休んでくださいね」そう言って、私たちは別れた。ひとりになると、裕也のことが急に気になり始める。スマホを確認してみても、裕也からの連絡はあれからない。寝ている運転手を起こし、私はタクシーに乗り家へと急ぐ。帰宅してドアを開けると、知らない女と裕也が裸で寝ていた―――。【今回の主役】竹内美恵 牡羊座32歳 駆け出しディレクター熊本県から状況し、都内でADとして下積みの後、最近ディレクターに。年下の男(吉井祐也・劇団員)と3年近く同棲をしている。性格は姐御肌で面倒見がよく、思いついたらすぐ行動するタイプ。反面、深く物事を考えることが苦手でその場の勢いで物事を決めてしまうきらいがある。かなりワガママだが、テレビ局内での信頼はあつい。(C) Graphs / PIXTA(ピクスタ)(C) Vikulin / Shutterstock
2017年07月25日12人の女性たちの生き方を、12星座になぞらえて紹介していくショートクロスストーリー『12星座 女たちの人生』。 キャリア、恋愛、不倫、育児……。男性とはまた異なる、色とりどりの生活の中で彼女たちは自己実現を果たしていく。 この物語を読み進めていく中で、自身の星座に与えられた“宿命”のようなものを感じられるのではないでしょうか。文・脇田尚揮【12星座 女たちの人生】第124話 ~牡羊座-10~“寂しい”か……。夏希も、そうだったのかもしれない。身近に頼れる人がいなくて、友達にも会えなくなって、きっと独りで生きていたのだろう。そう思うと、目の前の“美智子さん”についつい感情移入してしまう。『ホストクラブに通われているとのことですが、週に何回くらい通っていて、どれくらい使うんですか?……もし、差し支えなければ……きっかけも教えて下さい』「通い始めたのは1年半前です。たまたま仕事上がりに声をかけられて、ドキドキしてフラっと入ったのが最初でした。初めは憂さ晴らしのつもりで月に2回のペースで通っていたんですが、お気に入りの子ができてから……今は、週2回は通っています」『週2ですか……けっこうお金もかかりますよね』「はい……ナンバーに入れてあげたくて……一回10万位使います」週2で一回10万。単純計算すると、120万……。美智子さんの収入を超えている。「それで、サラ金からお金を借りて、今借金が200万円あります……そして、ホストクラブに売り掛けが100万……来月からは、熟女ソープを掛け持とうと思っています」―――隣の如月が息を飲む。『それでも、ホストクラブ通いは止められない?』「だって、私がいないと“ユーキ”が困るって……それに私、友達いないし。ホストクラブにいるときだけが、“本当の私”だって思えるんです……」『……お子さんは? 夜は一緒にいてあげられていますか?』「私は朝~夕方出勤なので、託児所に迎えに行って寝かしつけたあと、夜からホストクラブに行くようにしています。だから実質子供と一緒にいるのは、一日3時間くらいですね……」……ああ、これが現実なんだな、と思った。寂しさが作り出す“負のスパイラル”。つい2年前まで、平和に暮らしていた子持ち30代主婦が、離婚を機に風俗に落ち、その寂しさを癒すためにホストクラブで貢ぐ……人付き合いや家庭生活が壊れ、さらに渇望感は増していく……。私個人、彼女に思うところはある。本当は「今すぐホストクラブに通うのやめな!」と言いたい。しかし、今の私はあくまでドキュメンタリーを作る立場。この人の人生とは無関係なんだと言い聞かせる。すべての人を救えるほど、私は力も能力もない。『……インタビューはこれで終了です。ありがとうございました』如月が、私の声を合図にカメラを止める。「ええ、こちらこそ……あの……」美智子さんが、何か言いにくそうにしている。おそらく謝礼のことだろう。『はい、こちら本日の謝礼を些少ですがお渡しいたします。こちらに印鑑を押してください』……この人を救える人は現れるのだろうか。―――彼女に茶封筒を渡し、私たちはその場を後にする。駐車場からバンを移動させ、会社に戻る。車の中で一息つく私たち。……重たい。同じ女として胸が痛い。如月も、何とも言えない表情をしている。幸せな女と不幸な女。その境界線は、実はすごく曖昧で、誰もが転落する可能性を潜在的に持っているのだ。その原因が“寂しさ”にあるのなら。考えさせられる……。でも、次が待っている。気持ちを切り替えよう。『如月、取り敢えず2時まで時間があるから、今から10時まで編集お願い。私は、次のアポイントとテロップ内容案を打ち込んどく』「了解しました!」こんな時、余計なことを何も言わない如月に好感が持てる。私たちはプロなんだから―――。会社のデスクで作業を続ける。何時間くらいたっただろうか、木田さんが差し入れを持ってきてくれた。「よう!やってるねぇ~。良い画は撮れたか?」『ええ、かなりリアルな内容を頂きました』「そうか、良かったな。ほれ、コレ」ビニールで包まれた箱を私に差し出してくれる。箱の中にはシュークリームとエクレアが2個ずつ!『ありがとうございます!』「ま、後半もがんばれよ~」甘いものを差し入れしてくれるなんて、木田さんニクい!早速、如月と分け合う。「おいし~い!」如月が目をキラキラさせている。いつの世も、女は甘いものに弱いのだ。『これ食べ終えたら、準備して出ようか』「そうですね。新宿のネットカフェで待ち合わせの予定です」『OK』そう言って、スマホの電源を入れる。メールの確認だ。電源を入れると、着信が8件。留守電が2件。全部、祐也からだ。恐る恐る留守電を聞く。「おまえさあ、俺を何日ほったらかしてると思ってんの? 金がなくてコンビニの弁当も買えないんだけど! もうマジでムカつくわ」「そんなに朝から晩まで働くような女と付き合った覚えなないよ、俺。早く帰ってきてくれないと困るんだけど!」……せっかく上がっていたテンションが悲しいくらいに萎んでいく。私、言ってたはずなんだけどなぁ。番組任されたから、忙しくなるって。帰れなくなるかもって。その時、祐也はテレビを見ながら「うん、分かった」と生返事だったのを思い出す。自分の都合ばっかり……私のことなんて、考えてくれてないんじゃない!私も、“美智子さん”と同じなのかもしれない。頭では分かっているのに、独りになるのが寂しくて祐也と別れられないんだもの。悲しい気持ちのまま、バンに乗り込み夜の新宿へ向かう―――。【今回の主役】竹内美恵 牡羊座32歳 駆け出しディレクター熊本県から状況し、都内でADとして下積みの後、最近ディレクターに。年下の男(吉井祐也・劇団員)と3年近く同棲をしている。性格は姐御肌で面倒見がよく、思いついたらすぐ行動するタイプ。反面、深く物事を考えることが苦手でその場の勢いで物事を決めてしまうきらいがある。かなりワガママだが、テレビ局内での信頼はあつい。(C) Feng Yu / Shutterstock(C) Boryana Manzurova / Shutterstock
2017年07月24日12人の女性たちの生き方を、12星座になぞらえて紹介していくショートクロスストーリー『12星座 女たちの人生』。 キャリア、恋愛、不倫、育児……。男性とはまた異なる、色とりどりの生活の中で彼女たちは自己実現を果たしていく。 この物語を読み進めていく中で、自身の星座に与えられた“宿命”のようなものを感じられるのではないでしょうか。文・脇田尚揮【12星座 女たちの人生】第123話 ~水瓶座-最終話~―――半年後カーテンから差し込む強い日差しで、自然と目が覚めた。『10時半か……』半年前なら、こんな時間に起きたら大遅刻で大目玉を食らっていただろう。個人事業ってのは、つくづく気楽で良いもんだな。隣で寝ている好美が、口を半開きにして幸せそうだ。今日は私たちのサイトがオープンしてからちょうど1ヶ月。何度も試行錯誤し、ようやくSEOも最適化したところだ。3か月前、「キュート・キッチュ」を退職する時には流石に不安もあったけど、今の仕事に慣れてからは、それはもう楽しくて―――。退職なんて、あっという間だった。お見送りもなければ、送別会もない。ただただ、自分のデスクが空っぽになるだけだ。三橋だけが、一緒に飲んでくれたっけ。あいつは、今も頑張ってるんだ……。……結局、社長とは顔を合わせることすらなかった。従業員のひとりがやめたところで、組織に影響はないんだろう。退職に向けて引き継ぎを進める中で、私は好美とのビジネスの中身を練っていった。販売するものは、好美がオリジナルで制作する情報商材。あいつはゴスロリ系の女子に向けてファッションやメイク、仕草なんかをレクチャーするのが上手いんだよな……。何ていうか、才能だと思う。最近では動画を撮って、DVDにしたりYouTubeなんかにも“さわり”の部分をアップしていたりする。それまでは顔出しする勇気が出なかったらしい。けど今回、私と二人でやることになってから、吹っ切れたようだ。これから、各専門家の人たちと協力して、ゴスロリ女子向けのトータルコーディネートを企画していくつもりみたいだ。セミナーの展開なんかも考えているのかもしれない。部屋の中には、ゴシックロリータファッションの服が所狭しとかけられている。もしかしたら、年内に引越しもあるかもしれないな……。私はというと、HPの製作と並行して、LP作りに追われている。好美が作ったコンテンツをより多くの人達に見てもらうように、コマーシャルしていくのが私の仕事だ。どうやら、裏方の方が性にあっているらしい。誰にも何にも指図されることなく自分でやることを決めていくっていうのは、自由で良いや。好美も毎回、「すご~い!レナレナ、こんな事もできちゃうんだ~!」とかって感激してくれるしね。やり甲斐もあるってもんだわ。負けず嫌いな性格が幸いして、私はプログラム言語やウェブの解析方法を勉強している。いずれ資格も取っていこうと思う。仕事は大きな会社でするだけが全てじゃない。個人で小さく動くとしても、ムーブメントは起こしていけると信じている。「……おはよ、レナ。ご飯作るから、ちょっと待っててね」眠たそうな目をこすりながら、好美が起きてきた。『ああ、ゆっくりでいいからね。ありがとう』そう言って、私は大きいホワイトボードに今日の自分のタスクを書き込んでいく。隣には、好美の書き込むスペースもある。こうしてお互いのやるべきこと、やった内容を把握し合うのだ。そして、一番上には二人の共通目標が掲げられている。「楽しむこと、楽しませること!」「目指せ!年商2000万!」「毎週ミーティングを欠かさない」この3つが当面の目標だ。二人とも自分の技術を持ち合って働くから、資金が要らないのが有難い。おまけに在宅でルームシェアしてるから、家賃もそうかからない。パソコンが一人一台あれば十分なんだから、こんなにコスパの良いビジネスも他にないんじゃない。(まぁ、好美の洋服代はバカにならないけど、趣味も兼ねてるから黙認している)私は楽しいコンテンツを作って行きたかった。だから「キュート・キッチュ」に入社したんだ。でも、結局組織というのは、ひとつの生き物でもある。所属する人間がやりたい事をやっていたんじゃ、まわっていかない。私は“飼われる”のは合っていなかった、ただそれだけのことだ―――。美味しそうなパンの香りと焼けた卵、ベーコンの脂の匂いが鼻をくすぐる。そろそろ“遅めのモーニング”ができ上がる頃だろう。「は~い、できたよ~!ヨッシー特性ベーコンエッグトースト!」『有難う、美味しそうだね~。……いただきまーす』はむはむと口にトーストを頬張りながら、コーヒーを注いでくれるビジネスパートナー。こいつとなら、やっていけそうな気がする。自分の、自分たちだけの仕事を―――。水瓶座の女の人生は、“I know.” ~私は知っている。~自分の個性を活かし、独特のスタイルでそれを形にしていく。時には学びながら、理論武装をしながら。枠にとらわれない、型にはまらない。そんな姿勢を崩さずに貫いていくからこそ、そこに生産的なインスピレーションが生まれる。多くの革命家・発明家を輩出した星座だけに、周囲から理解されないこともあるけど、常に未来を見据えて楽しさを模索していく。自由の身となった今の私なら、それができるはずよ。今、私は心からやり甲斐を感じている―――。水瓶座の女の人生 ~Fin~【今回の主役】中野怜奈 水瓶座26歳 IT開発事業部個性的で変わり者、我が道を行くタイプ。協調性に欠けているが、時代の先を読む“先見の明”があるため、社内での評価は高い。女子向けアプリ会社『キュートキッチュ』の新作指揮を任される。アイディアウーマンであるが、縛られることを嫌う一匹狼。後輩の三橋奈美は良い相談役。実はバイセクシュアルの性向があり、出会い系アフィリエイトで知り合った池谷好美と同棲している。(C) Dejan Stanic Micko / Shutterstock(C) VGstockstudio / Shutterstock
2017年07月21日12人の女性たちの生き方を、12星座になぞらえて紹介していくショートクロスストーリー『12星座 女たちの人生』。 キャリア、恋愛、不倫、育児……。男性とはまた異なる、色とりどりの生活の中で彼女たちは自己実現を果たしていく。 この物語を読み進めていく中で、自身の星座に与えられた“宿命”のようなものを感じられるのではないでしょうか。文・脇田尚揮【12星座 女たちの人生】第122話 ~水瓶座-11~『チクショウ……!』声にならない声が喉から漏れる。狭いトイレの中で反響し、虚しくこだまする。しばらくトイレの中から動くことができなかった。悲しいからじゃない、悔しいからだ。私の作品がつまらないっていうんなら、仕方ない。私の才能がないんだろう。でも、社長の好み……しかも女の好みってんのは、許せない。なにが「キュート・キッチュ」だよ……。こんな会社こっちから願い下げだ!呼吸を整えて、トイレから出る。エレベーターに乗り、一度自分のデスクへ向かう。そこには、“無断退社の件について”と書かれた紙が乗っかっていた。……本当に“素敵な会社”だよ、ここは! 無意味な紙っきれをグシャグシャに丸めて、その勢いで退職届を殴り書く。書きながら思う。短いようで長く、長いようで短かった。“愛社精神”なんてものは、これっぽっちもないけど、私は私なりにできることをやってきた。別に会社から守ってもらおうなんて思ってないけど、こんな仕打ちはあんまりなんじゃない……!?いろんな思い出が頭の中をめぐる。社内では、“一匹狼”で通ってた私だけど、チームプロジェクトが成功したときは本当に嬉しかったし、友達は少ないけど、飲み会には顔を出していた。もうこのデスクからの景色が見られなくなるかと思うと、少し……寂しい。なんてね、感傷にひたるなんて、私には似合わない、か……。書き終えた退職届を封筒に入れ、そのまま階下へ。そこで思い出した。営業の三橋のことだ。『あいつ……大丈夫かな』今回の件で、一番苦しい状況に立たされているのは三橋だ。届けを出す前に、営業課へ寄って顔見とかなくちゃな。違う部署に行くのは、どうも慣れないもんだけどね……。営業課入口の内線にコールする。「はい、受付です」『あ、どうも。コンテンツ部の中野です。三橋さんに用事があるんですが……』「了解いたしました。少々お待ち下さい」何だってこう、おカタいのかねぇ、受付ってのは……。数分後、ドアが開いて三橋が顔を覗かせる。……かなり憔悴している。『おい、三橋……大丈夫か?』「せ、先輩……」それから三橋は、この二日、各所への謝罪メールや電話対応に追われていることを語った。幸いにも、テレビ局の竹内さんは、CM製作に着手してはおらず、お金の動きはなかったとのこと。ただ、ウチとの信頼関係は地に落ちただろう。三橋にコーヒーを一杯奢ってから、退職する旨を伝えた。「そうですか……悔しかったでしょうね。先輩、すごく入れ込んでたから……ただ、私としては先輩がいなくなると寂しくなります……」『で……お前はどうするのよ?』「私、ですか……?そうですね……私は残ります。どういう結果であれ、私が任された仕事ですから……。続けていれば、また良いこともあると思いますし……」『そうか、頑張れよ!』「退職後、先輩はどうされるんですか?」『あ、あぁ、親しい奴とネットビジネスでもしようかなって』「そうですか、上手くいくことを願ってます。退職後も、仲良くして下さいね」『もちろんだよ!』三橋の肩をポンと叩き、振り返らずにバイバイと手を振る。その足で、退職届を提出しに行くためエレベーターに乗る。会社を辞める者、会社に残り続ける者。思惑は様々だな。だけど私は、辞めることを選んだ。これからは自分の責任で働いていかなくちゃならない。事務課の窓口に、無言で退職届を出す。―――待つ事、ものの数分。あっけないほど簡単に受理された。こんなもんか……。19歳の時、そんなに好きでもない年上の男と“初体験”したのを覚えている。その時も「こんなもんか……」って印象だった。『ははっ、笑える……』廊下を歩きながら、乾いた笑いが漏れる。でも、これで良い。これからは自分の責任で、好美と新たに仕事を初めていくんだ―――。それから私は無味乾燥な書類や、引継ぎのためのデータ作成に取り掛かった。いつもより時間が長く感じられた。ここの会社は、出社時間は決まっているが、退社は17時以降なら自由だ。こんなに帰りが待ち遠しいのは初めてのことだよ、まったく。時計の短針が5時を指すと同時に、会社を出る。タクシーに乗ろうかと一瞬思い、止めた。これからは出費も抑えていかなきゃな……今日は電車に乗って帰ろう。5時上がりの電車は満員だ。皆、本当はこうして大変な思いをしながら通勤していたんだな……。―――しばし意識を飛ばす。自宅近くの駅に到着する頃には、空の色がオレンジに変わっていた。『きれい……』心からそう思った。この数年間、空を眺めるような余裕はなかった。会社という組織の鎖から解放された今、見るもの全てが新鮮に感じるのはなぜだろう……? 私自身は何も変わってないってのにね……。私の足は、自宅のマンションへと向かう。ビジネスパートナーの好美がいるあの部屋へ。そうだ、ワインを買って帰ろう。きっと好美も喜んでくれるはず。別に悲しくないはずなのに、涙が頬を伝っていた―――。【今回の主役】中野怜奈 水瓶座26歳 IT開発事業部個性的で変わり者、我が道を行くタイプ。協調性に欠けているが、時代の先を読む“先見の明”があるため、社内での評価は高い。女子向けアプリ会社『キュートキッチュ』の新作指揮を任される。アイディアウーマンであるが、縛られることを嫌う一匹狼。後輩の三橋奈美は良い相談役。実はバイセクシュアルの性向があり、出会い系アフィリエイトで知り合った池谷好美と同棲している。(C) fizkes / Shutterstock(C) Juta / Shutterstock
2017年07月20日12人の女性たちの生き方を、12星座になぞらえて紹介していくショートクロスストーリー『12星座 女たちの人生』。 キャリア、恋愛、不倫、育児……。男性とはまた異なる、色とりどりの生活の中で彼女たちは自己実現を果たしていく。 この物語を読み進めていく中で、自身の星座に与えられた“宿命”のようなものを感じられるのではないでしょうか。文・脇田尚揮【12星座 女たちの人生】第121話 ~水瓶座-10~『仕事を……一緒に……?』好美と仕事を一緒にできるのは嬉しいけど、一体私はどんなことをすれば良いのか想像ができない。「そう。私とレナで。私は主にブログで商品紹介をしていて、そこで仲良くなったお友達に商材を販売しているの。……つまり、コンテンツといった“ソフト”の部分を作るのは得意なのね」フンフンと好美の話に聞き入る。「だけど、ホームページだとか、LPといった外側の“ハード”を作るのは得意じゃないの。というか、知識がないからできないんだよね」―――そこまで聞いて、ピンときた。『なるほど、そしたら私がその“ハード”の部分を作るってわけね!』私だって、腐ってもIT企業に勤めている身だ。Webデザインからシステムエンジニアの真似事くらいならできる!「うん、私はブログだけしか販売経路がないから限界を感じてたの。本当はメルマガとか流したいし、リストも欲しかったんだよね」テヘッと可愛く舌を出す。そっか……私はソフトを作るのはあんまできないけど、好美はコンテンツ作りが天才的に上手いからな……。こりゃあ、もしかしたらもしかするかも!『さっすが、好美ちゃん!』ギュウと好美を抱きしめて軽くキスをする。「だけど、ひとつだけ!」好美が真面目な顔をする。「ずっと、私とだけ一緒に仕事して欲しいの」『え……?』「いや、あの、ほら別に変な意味とかじゃなくって」手を小さくブンブン振って焦っている。「私かレナ、もしかしたら両方に彼氏ができても、結婚しても、仕事だけは私としていて欲しいの。私、別にレナを独り占めしたいわけじゃなくて……レナといつまでも一緒にいたいの……」少し涙ぐんでいる。『うん、分かったよ。ずっと一緒に仕事しよ……』男と女のかりそめの誓いよりも、さらに深く強固な“女同士の絆”がそこにはあった。―――退職を決心した夜だった。それからいつものように、二人でお風呂に入って“酒盛り”タイムだ。今回は、二人だけのネットビジネス立ち上げに「乾杯!」だ。「ねぇ、レナ。私たち二人だと規模は小さいけど、キチンとターゲットを絞ってやっていけば、イイ線行くと思うの」『おうよ! 好美と一緒なら、何だってできるわ! アホ社長をギャフンと言わしてやる!』「そうだ、そうだ~!」好美と将来の夢を語り合う。理不尽なうちの会社の社長の顔が浮かんだ。よくも私の案を潰して、さらには外部の人たちの顔にも泥を塗ってくれたわね。きっと、営業の三橋はあれこれ奔走して平謝りしていることだろう。売れる・売れないを判断する“先見の明”ってのも大事かもしんないけど、人の心を無視したやり方で上手くいくとは思えないね。『明日にでも、退職届を出してくるよ。ただ……』「ただ?」『届けを出してから三ヶ月経つまでは辞められないから、その間準備をしながら通うよ、一応』「へぇ~、レナにしては殊勝な心がけだこと」好美が私の二の腕をツンツンつつく。『もう! 私だってちゃあんと社会人やってます!』残っているプロジェクトの引き継ぎと……三橋のことも心配だ。貯蓄もそこそこあるし、お金にはそう困りゃしないけど、ハードを構築するのはちと時間がかかるしな……。残り三ヶ月、社内で学べることは今のうちに学んでおこう。……で、時間を見て二人のサイトを構築すっか。『ねぇ、好美……早速簡単なサイトの製作準備に入って行きたいんだけど』「ええっ! レナレナ早いよぅ~。どこでスイッチが入っちゃったの!?」そう言いながらも、好美は嬉しそうだ。「待っててね、明日レナが仕事から帰ってくる頃までには、お家でまとめておくからね!」『はは、頼りにしてるよ、相棒!』「はぁい!」二人でキャッキャしていると、時間が経つのも早い。もう二時を回っていた。部屋の明かりを消す―――。『お休み、好美』小さく呟く。行き場のない私を助けてくれて、ありがと。意識のブレーカーも落ちる―――。今朝は、大忙しだ。案の定、寝坊してしまった。ただ、昨日途中退社している手前、遅刻は絶対にできない。好美は夜型だから起こさないでおく。途中LINEでも入れておいてやろう。メイクもせず、朝ごはんのパンを口にくわえながら、適当に服を選ぶ。心の中で「行ってきます!」と言い、家を飛び出た。社内に到着して時計を見ると、遅刻スレスレ始業2分前だった。急いでトイレに駆け込み、“クイック”メイクをする。ついでに用も足しとくか……そう思って、ドアを開けて便座にしゃがんだ時、女子社員の話し声が聞こえてきた。「ねぇ、聞いた? 新規ゲームアプリがダメになったって話」「うん、聞いた。あの、コンテンツ部の中野さんが担当してたやつでしょ?」「そうそう。お気の毒さまだったわよねぇ……社長の思いつきで」「うん、でさ、そのアプリの引き継ぎなんだけど……」―――息を飲む。「今年、新卒で入ってきた若い女の子が抜擢されたんだって……」唇を噛み締める。「中野さん、社長の好みじゃないからねぇ……若くてフレッシュな子の方がお好みなんでしょ」「あはは……ひっど~い」ダンッ!声が遠ざかるのを確認して、私は思い切り目の前のドアを蹴飛ばす―――。【今回の主役】中野怜奈 水瓶座26歳 IT開発事業部個性的で変わり者、我が道を行くタイプ。協調性に欠けているが、時代の先を読む“先見の明”があるため、社内での評価は高い。女子向けアプリ会社『キュートキッチュ』の新作指揮を任される。アイディアウーマンであるが、縛られることを嫌う一匹狼。後輩の三橋奈美は良い相談役。実はバイセクシュアルの性向があり、出会い系アフィリエイトで知り合った池谷好美と同棲している。(C) Look Studio / Shutterstock(C) TeeRoar / Shutterstock
2017年07月19日12人の女性たちの生き方を、12星座になぞらえて紹介していくショートクロスストーリー『12星座 女たちの人生』。 キャリア、恋愛、不倫、育児……。男性とはまた異なる、色とりどりの生活の中で彼女たちは自己実現を果たしていく。 この物語を読み進めていく中で、自身の星座に与えられた“宿命”のようなものを感じられるのではないでしょうか。文・脇田尚揮【12星座 女たちの人生】第120話 ~獅子座-最終話~―――2ヶ月後今夜は弁護士の木村先生と、顧問税理士の茂木ちゃんと3人で食事会だ。19時からお台場のレストランバーを予約してある。先日、アタシの会社「アリアンロッド」の顧問弁護士として木村先生と契約を済ませ、そのお祝いを催してみたの。……まぁ、内心は木村先生と会いたかったンだけど。茂木ちゃんにはダシになってもらったみたいで、なんだか申し訳ないわ。今度お礼しとこ。『そろそろ時間ね……』夕暮れの台場駅に降り立った。しっかし、人のご縁や繋がりっていうのは、どこでどう結びつくものか、全くもって予測がつかないものね。あの時、もし目黒駅で菜摘ちゃんと知り合ってなかったら……。きっと今頃私は、木村先生と再度接点を持つことはできずに、悶々と日々を過ごしていたことだろう。あの“ハゲの痴漢オヤジ”に、ちょっとだけ感謝してあげる。流石に、菜摘ちゃんママから改めて木村さんを紹介された時は、緊張しまくりでガチガチだったけどね―――。菜摘ちゃんママ(と、尾田ちゃん)の計らいで、菜摘ちゃんパパの会社で木村先生にお会いするその日、私は遅刻しちゃったのよ。緊張のあまり前日眠れなくて、つい深酒してしまって、次の日起きれなかったのよね……だって、朝早いんだもん。そして着いた時、ハァハァ息を切らせている私を見て、木村先生がニコッと一言。「昨日は何本飲んだんですか?」あれは恥ずかしかったわ~。もうアタシが“飲んべえ”だってこと、知られちゃってるからね……。でも、こうしてまた会うことができた喜びに、アタシの心は踊っていた。絶対表には出さなかったけど。終始、木村さんは穏やかで、ニコニコしながら菜摘ちゃんパパや尾田ちゃんの話を聞いてくれていた。太陽の下でよく見ると、意外と木村さん、良い男でドキドキしちゃった。スーツは男の魅力を3割増してくれるっていうけど、本当ね。それから、モジモジして何も言えないアタシを見るに見かねてか、尾田ちゃんが“仕事の話”をしてくれたのよ。顧問税理士の茂木ちゃんのこと、これから会社の規模を大きくしていきたいこと、そしてウチには顧問弁護士がいないということ。―――そう、尾田ちゃんが木村さんにアクションをかけてくれたのよ。そしたら、木村先生「明日にでも三人でお食事でもしましょうか」って提案してくれたの。でも、そこで尾田ちゃんが「あいにくその日は所用があり、私は最初しか参加できないのですが大丈夫ですか?」とナイスアシスト!結局、次の日にほぼほぼ二人きりで食事をすることになって、顧問弁護士になってもらう契約を結ぶ約束をしたのよね。その時は、不思議と緊張しなかったのを覚えているわ。おそらく、“仕事の話”をするっていう意識が私の中にあったから。あぁ、自分は憧れの人を前にしても、仕事のこととなるとスイッチが入るんだって、その時実感したわ。尾田ちゃんはかなり心配していて、LINEで何度も「がんばってよ!」「飲み過ぎないようにね」と、仕事以外のことに気を遣ってくれたっけ。私が仕事にプライドを持っていることを、彼女は十分承知してくれているから。そして、もちろん契約は成立。「やはり、黒木さんは面白い人ですね」木村さんが別れ際、私に掛けてくれた言葉。できれば「綺麗」とか「素敵」とかって言われたかったんだけど、まぁ、いつものことだから仕方ないわね。もし「可愛い」なんて言われたら、鳥肌が立っちゃうしね(笑)。―――そこからの今日。レストランバーは今日も盛況の様子。テーブルには木村さんと茂木ちゃんが。二人とも5分前だっていうのに律儀なんだから……! 挨拶もそこそこに、茂木ちゃんと木村さんをお互いに紹介する。談笑していると、目の前にトマトとバジル、モッツァレラチーズの色が眩しいイタリアンが並んでいく。もちろん乾杯はいつも通り、シャンパン。音頭を取るのはアタシだ。『木村先生の顧問弁護士就任に、かんぱーい!!』「アリアンロッドの今後の発展にも、乾杯!」今日は飲みすぎてしまいそうな予感だ―――私の恋は、結局こういう形になっちゃう。素直になれなくて、言いたいことも言えなくて。でも、こうして同じ目標に向かっていける仲間としてなら、これから……あるいは……。終始笑顔の木村さんを、チラりと見る。今に仕事も恋も、思い通りにしてあげるんだから。待ってなさいよ……!獅子座の女の人生は、“I create.” ~私は創造する。~自分に誇りをもって、“特別な何者か”になっていく努力を惜しまない。何もないゼロの状態から自分だけの世界を創り上げていく中で、自身の周りに多くの人たちが集まり、さらに大きなうねりとなっていく。アタシはそのことをよく分かっているわ。流行や人の感情は移り変わり、色あせていくけど、スタイルや積み重ねてきたものは変わらないまま残り続ける。だから、私はこれからも走り続けるの。みんなが魅力を感じて、楽しい!と思ってくれる何かを、これからも生み出していこう。今、アタシは大きな一歩を踏み出した―――。獅子座の女の人生 ~Fin~【今回の主役】黒木真利子 獅子座31歳 経営者女性向け下着ブランド『アリアンロッド』の経営者。プライドが高く、自分の力で今の会社を立ち上げ軌道に乗せたことに誇りを持っている。しかし、恋愛はあまり得意でなく、強気な性格ゆえに男性との関わり方について悩んでいる。顧問税理士の茂木篤史は心を許せる存在。(C) sergey_sfoto / Shutterstock(C) Andrey_Popov / Shutterstock
2017年07月18日12人の女性たちの生き方を、12星座になぞらえて紹介していくショートクロスストーリー『12星座 女たちの人生』。 キャリア、恋愛、不倫、育児……。男性とはまた異なる、色とりどりの生活の中で彼女たちは自己実現を果たしていく。 この物語を読み進めていく中で、自身の星座に与えられた“宿命”のようなものを感じられるのではないでしょうか。文・脇田尚揮【12星座 女たちの人生】第119話 ~獅子座-11~「それじゃあ、そろそろ出ようか」私が、飲み過ぎてベロベロになりつつあるのを察したのか、尾田ちゃんが“今夜はもう帰ろう”と促してきた。まだ22時をまわったくらいじゃない。せっかくいい気分になってきたっていうのに!アタシがもう一杯注文しようとすると、「ダメよ」尾田ちゃんが制止する。……こいつ、全然酔ってない。「ほら、真利子、行くわよ。あなた恋愛頑張るんでしょ? お酒の飲み方にも気をつけなくちゃ」あー、もう! 尾田ちゃんはいっつも正論。半ば強引に店から連れ出される。そして、タクシーに押し込められた。「いい、ちゃんと帰るのよ?」『言われなくても、帰るわよ!』「じゃあ、すみませんがよろしくお願いします」丁寧にタクシーの運ちゃんに頭を下げる尾田ちゃん。思えばこの子は、会社立ち上げ当初から、ずっとアタシの面倒をみてくれていた。大変な時期は励ましてくれて、上手くいっている時は「調子に乗っちゃダメよ」って諌めてくれたっけな……。『尾田ちゃん』「何?」『……ありがとう』「何言ってんのよ、早く帰って寝なさい! ……それじゃあね」二軒目に行きたい気持ちをグッと堪えて、そのまま帰宅する。タクシーから見える、夜の街灯りがキラキラと眩しい。恋愛ねぇ、ガラじゃないんだよなぁ……。木村さんのことは気になるけど、こっからどうやって進めたら良いのか、分かんないのよね。なんでもスパッて決めるタイプなのに、珍しくクヨクヨグズグズしている。―――自宅に到着。カードで支払いを済ませて、領収証を運ちゃんから受け取る。千鳥足でエントランスへ。バッグからキーケースを取り出して、オートロックを解除する。ついでにスマホもチェック。尾田ちゃんからLINEが入っている。「真利子、お疲れ。ちゃんと帰れた?」「今日、お店に来て下さった菜摘ちゃんのお母様にお礼の連絡を入れておいたから、明日あなたからも連絡しておいて」……なんなのよ、この“段取り力”は。昔から、いっつもそう。私の至らない部分を、尾田ちゃんが補ってくれる。「アリアンロッド」が軌道に乗ったのも、彼女あってこそなのよね。『分かってるわよ……』エレベーターの中で、そのまま「分かってるわよ」と返信する。取り敢えず、今日はもう色々考えたくないのよっ!自室に到着し、そのままベッドに倒れこむ。シャワーは明日でいいや……。そのまま眠りについた―――朝。目覚めは悪くない。頭もガンガンしてない。昨夜そこまで飲まなかったからな。ベッドから起き上がり、冷蔵庫のジャスミンティーをコップに注いで飲んで、喉の乾きを潤す。『ふぅ……さて、今日もやるか!』スイッチが入る―――少しぬるめのシャワーを浴び、普段通り支度を始める。このリズムを維持することが、大切なのよね。どんなに前日飲んで騒いでも、次の日はキッチリ起きて動く。それがマイルール。今日もビシッと決めるわよ!お気に入りの下着を身につけ、タイトなスーツに身を包み、シャネルのN°5の霧をくぐっていざ出勤ね。今日も、お店にはアタシが一番乗り。自ら掃除をすることで、運が向いてくるの。せっせとモップをかけていると、「おはよ!」尾田ちゃんだ。『おはよ~』「朝から良い心がけね」『まぁね、ゲン担ぎみたいなもんよ』一日が始まる―――お昼休憩中、お店の奥でコーヒーを飲んでいる時にふと思い出した。昨日の尾田ちゃんからのLINE。菜摘ちゃんママに、私もお礼の連絡を入れておかなくちゃ。会員名簿をチェックし、電話番号を確認する。『あったあった』番号をメモして、お店の電話機から電話する。プルルルルルプルルルルル「はい、もしもし内田です」『こんにちは、“アリアンロッド”代表の黒木真利子でございます! 先日はお店まで足をお運び下さり、ありがとうございました!』「まぁ、黒木社長……わざわざご連絡、ありがとうございます。菜摘も、そちらで購入させて頂いた下着を喜んで着けてますのよ」『お気に召されたようで、私も嬉しい限りです……!』「それで、ええと……昨日、尾田さんからもご連絡頂いたのですが、木村先生とのお顔合わせの日程をいつにしましょうか?」―――ええっ!尾田ちゃん、何をしてくれたの!? もしかして、木村さんと会えるように、菜摘ちゃんママにお願いしておいてくれた?今は取りあえず、話を合わせておこう。内ポケットから手帳を取り出し、スケジュールをチェックする。『あぁ! はい! ありがとうございます。えぇと、再来週の土日でしたら、何時でも大丈夫です』「分かりました。では、木村先生にもそのようにお伝えして、日程調整させて頂きますね!」菜摘ちゃんママは、かなり“話し好き”なようで、その後15分ほど話は続いた。「それでは、またご連絡差し上げますわね、ウフフ」ようやく受話器を置くことができた。しかし、木村さんと、また会うことができるなんて―――平静を装ってはいるものの、私の心は踊っていた。【今回の主役】黒木真利子 獅子座31歳 経営者女性向け下着ブランド『アリアンロッド』の経営者。プライドが高く、自分の力で今の会社を立ち上げ軌道に乗せたことに誇りを持っている。しかし、恋愛はあまり得意でなく、強気な性格ゆえに男性との関わり方について悩んでいる。顧問税理士の茂木篤史は心を許せる存在。(C) MarcinK3333 / Shutterstock(C) Antonio Guillem / Shutterstock
2017年07月14日12人の女性たちの生き方を、12星座になぞらえて紹介していくショートクロスストーリー『12星座 女たちの人生』。 キャリア、恋愛、不倫、育児……。男性とはまた異なる、色とりどりの生活の中で彼女たちは自己実現を果たしていく。 この物語を読み進めていく中で、自身の星座に与えられた“宿命”のようなものを感じられるのではないでしょうか。文・脇田尚揮【12星座 女たちの人生】第118話 ~獅子座-10~眼鏡男子が物凄い勢いで飛び出してきた、店に入る。『へぇ……なかなか雰囲気があるお店ね』「ね、良いわよね」尾田ちゃんは、良いものを見極める能力に長けている。忘年会や打ち上げの時なんかも、お店選びはすべて尾田ちゃんに任せている。私と尾田ちゃんは、奥から二番目のテーブル席に案内され、思い思いにお酒を注文する。「ふぅ。ようやく落ち着いたわね」『今日も色々あったなぁ。何だか、あっという間の一日だったわ』世間話とも何とも言えないような会話をしているうちに、お酒が運ばれてきた。私は朱色のカンパリオレンジ、尾田ちゃんはほぼ透明なモスコミュール。まるで、対照的な私たちの性格が反映されているようだ。「……で、どうなのよ?」『どうって……』「もう! 分かってるくせに。あなたのハートを奪った“誰かさん”についてよ」『………』黙って、カクテルを一口飲む。苦味と酸味が一気に口の中に広がる。『まぁ、その、話していて楽しい人だったかな』「へぇ~、真利子がねぇ。珍しい。いつものあなたなら、“くっだらないことばっか言ってくる男がいたから、言い負かしてやったわよ!”なんて言ってるのにね」『そんなこともないわよ』「もう、急にしおらしくなっちゃって」尾田ちゃんが泡の弾ける炭酸カクテルに口をつけながら、聞いてくる。「で、どんな人なの? その人。真利子のお眼鏡にかなうなんて、なかなかじゃない」『いや、別に、身長も低いし、これと言って特徴もない、ただの―――』言いかけて、そこから言葉が出なくなった。そう、ただの男じゃないんだ。言葉ではうまく言い表せないけど、“特別な何か”を持った人。「……ただの?」『弁護士さん、かな』「ヒュー! 弁護士なの!? やるじゃん、真利子!」『ちょ、ちょっと……あんまり大きな声出さないでよ!』「あっ、ごめん」尾田ちゃんがペロリと舌を出す。「で、連絡先は交換したんだよね?」『い、いやぁ、それが……』「は? あんた、連絡先知らないの? 何しに行ったのよ、もう!」尾田ちゃんが納得のいかない表情をして、プンプンしている。冷静そうに見えて、意外と熱くなるんだよな……コイツ。『いや、完全に知らないってワケじゃないよ。横浜の“アヴァンス”っていう事務所で働いてるってことは知ってる』「横浜? ねぇ、それって!」コクンとうなづく。「すごい偶然じゃない!!今日お店にいらした女の子のお母さんが話していた弁護士さんでしょ!? ……ええと、確か」『木村。木村秀一。』「そう! その先生! やったじゃない、真利子! あんた“持ってる”わよ」それはそう、なんだけど。ここからどうやって繋げればいいのか分からない。「ねぇ、真利子」突然、尾田ちゃんが真剣な顔になる。眼鏡の奥の瞳が光る。「あなた、仕事に関しては天才的な手腕と、図々しいほど気の強さを発揮するくせに、恋愛となると全然ダメじゃない」図星だ。ちょっとムッとする。「原因、なんだと思う?」『原因?』尾田ちゃんからの想定外の言葉に、つい聞き返してしまった。「そう、原因。私の見立てだと……」『うん』つい身を乗り出して、聞いてしまう。「“甘えられない”ところにあるんじゃないかな」―――ッ!確かに……。幼い頃から男勝りで、ケンカでも負けたことがない。バカにされるのが嫌いで、いつも突っ張って生きてきた。身長もどんどん高くなってきて、いつの間にか、男子たちからも怖がられるようになってた。まぁ、女子には異常に好かれていたけどさ。その“癖”っていうか“スタイル”が、今も抜け切らないんだよなぁ。あの時、木村さんに対してもう一歩踏み込むことができていたら、こんなにややこしいことには、ならなかっただろうな。「あのお母さん、あなたに木村さんを紹介するって言ってたわよね。もちろん、OKするんでしょ?」『分かんないわよ、そんなの』「もう、じれったいわね! いい? あなた、今回のチャンスを逃したら、本当にただの寂しい女社長になっちゃうわよ!?」いつになく厳しい口調で、尾田ちゃんが詰め寄ってくる。普段なら反論するのだが、今回ばかりは何とも言えない。『うん』「なら、早く紹介されちゃいなさい!」なんでここまで、私の恋愛に関心があるんだろう。『尾田ちゃん、何でそんなに私に構ってくれるの?』「そんなの簡単よ。……真利子に幸せになって欲しいからに決まってるじゃない!」―――幸せになって欲しい、か。どうして、こうもアタシの周りにはお節介な女が集まるのかしらね。『分かったわ』“えっ”という顔で、尾田っちが私を見る。『今回は本気で頑張ってみる!』尾田ちゃんの迫力に負け、私は、“らしくない”宣言をしてしまった。―――空のグラスの中で、溶けかけた氷がカランと音を立てた。【今回の主役】黒木真利子 獅子座31歳 経営者女性向け下着ブランド『アリアンロッド』の経営者。プライドが高く、自分の力で今の会社を立ち上げ軌道に乗せたことに誇りを持っている。しかし、恋愛はあまり得意でなく、強気な性格ゆえに男性との関わり方について悩んでいる。顧問税理士の茂木篤史は心を許せる存在。(C) Monkey Business Images / Shutterstock(C) wrangler / Shutterstock
2017年07月13日12人の女性たちの生き方を、12星座になぞらえて紹介していくショートクロスストーリー『12星座 女たちの人生』。 キャリア、恋愛、不倫、育児……。男性とはまた異なる、色とりどりの生活の中で彼女たちは自己実現を果たしていく。 この物語を読み進めていく中で、自身の星座に与えられた“宿命”のようなものを感じられるのではないでしょうか。文・脇田尚揮【12星座 女たちの人生】第117話 ~山羊座-最終話~カッカッカッ……キュッ―――黒板を白いチョークが走る。今日も私は教師として生徒たちに英語を教えている。普段と変わらない1日。ただひとつのことを除いては―――北野先生との最初のデートから3ヶ月が過ぎた。あのフードコートでの食事からもうそんなに経つんだ……。あの時は、面白かったわ。北野先生ったら、担々麺とコロッケとサラダを注文して、それを平らげ、「また注文してきてもいいですか?」だって。こんなに食べる人だって思ってなかった。細身だから、意外でビックリしたのを覚えている。初デートだっていうのに、気取らずにいられて一緒にいてすごく楽。そこから私たちの関係は始まった。「僕が山崎先生を幸せにできるかは分かりません。でも……山崎先生といると、僕が幸せなのは確かです……交際して下さい!」北野先生の、あの時の告白には、“度肝を抜かれた”わ。バカ正直というか何というか、明け透けな性格が、逆に愛おしい!って感じられたのよね。私も、「交際するからには、幸せにしてもらわないと困ります。約束してくれるの?」なんて彼を困らせてみて……、意外と意地悪な自分に気づいちゃった。そして“指きりげんまん”してもらったの。「幸せにする」って。交際後も、あのルールは変わらない。学校では絶対に二人きりで会わないこと。仮に話すとしても挨拶程度。外で会うとしても、生徒や他の先生たちがいないような場所にすること。そして……このことは誰にも絶対に言わないこと。今のところ、彼はきちんと守ってくれている。最近もお台場にレインボーブリッジを見に行ったり、北区の飛鳥山公園を散歩したりと健全なお付き合いを続けている。キスは許したけど、それ以上は……まだ。きっとこれから、二人で沢山の思い出を作っていくのだろう。お付き合いの中で、私は彼のことを深く知っていった。岩手県出身だということ。昔、剣道で県大会優勝したってこと。私と同じく、大学時代は塾のバイトをしていたってこと。そして、三人兄弟の末っ子だってこと。私の心の傷を癒し、過去のトラウマを克服させてくれたのは、彼だった。彼は教育者としてとても優れていると思う。……オトコとしてはまだまだ未熟だけど(笑)。そこはこれから“お姉さん”である私が、しっかり指導していこうと思っている。いつか“さあや”にも報告できたらいいな。彼女は今、大学の薬学部に通っている。また時間を合わせて、新小岩あたりでお茶しよう。そして、お互いの近況を報告し合うんだ。私が新しい彼の話をしたら、彼女は、きっと自分のことのように喜び、安心するだろう。―――授業終わりのチャイムが鳴り響く。今日も放課後は英語サークルだ。職員室で資料をまとめ、視聴覚室へ向かう。途中、廊下で北野先生とすれ違った。軽く会釈をして……その後、一瞬だけウインクをする彼。私は苦笑しながらも、ウインクを返す。これが私たちの学校内でのコミュニケーション。彼はこれから剣道部の指導へ向かうのだ。北野先生の袴姿、意外とサマになっているのよね。前に体育館での朝練を覗いたときのことを思い出す。紺の袴と、彼の凛々しい横顔に、不覚にもキュンとしたのは内緒だ。私と彼の関係が、学校内の誰かに知られるのも時間の問題だろう。でも、それはそれで良いと今は思っている。いつも形から入る私だから。必要以上に怖がって身構えてしまうけど、意外と人生なんとかなるものなのよね。(そんなこと、絶対に北野先生には言わないけどねっ!)キーンコーンカーンコーン……終業のチャイムが夕暮れの校内に響き渡る。茜色に染まったグラウンドでは、野球部員たちが今日も練習に勤しんでいる。そんな姿を、窓から眺めるのが私は好きだ。『私も、青春してるぞっ』誰もいない廊下で、あたたかなオレンジ色の光に包まれながら、つい独り言を呟いてしまう。スマホを見てみると、「お疲れさま」と、彼からLINEが入っていた。私も、「ガンバってね」と送る。変化のない日常の中で、私は何かが少しずつ変わってきたのを、ゆっくり、でも確かに感じていた。山羊座の女の人生は、“I use.” ~私は使役する。~自分自身を取り巻く世界と、そして人々。日々変化していく社会の中で、しっかりと人生の手綱を握り締めコントロールしていく。それが私の美学であり、私の生き方。私の愛する学校、生徒たち、そして北野俊一。決して刺激的ではないけれど、穏やかで平和な毎日。でも、それこそが私の求めていたものなのかもしれない。私は今、満たされています―――。山羊座の女の人生 ~Fin~【今回の主役】山崎千尋 山羊座30歳 高校教師(英語)生徒からの信望も厚く、仕事ができる「良い先生」。ただ、他人に甘えるのがヘタなので誤解されることも。大学時代にアルバイトをしていた塾で、塾長にセクハラを受け続けた過去がトラウマになっている。自分に恋をする資格が無いと思っており、結婚願望はある一方、身動きできない。後輩の北野俊一から好意を持たれているが、気づいていない様子。(C) conrado / Shutterstock(C) zummolo / Shutterstock
2017年07月12日12人の女性たちの生き方を、12星座になぞらえて紹介していくショートクロスストーリー『12星座 女たちの人生』。 キャリア、恋愛、不倫、育児……。男性とはまた異なる、色とりどりの生活の中で彼女たちは自己実現を果たしていく。 この物語を読み進めていく中で、自身の星座に与えられた“宿命”のようなものを感じられるのではないでしょうか。文・脇田尚揮【12星座 女たちの人生】第116話 ~山羊座-11~北野先生と一緒に坂を下る。……このシチュエーション、なんだか懐かしい。高校時代、部活終わりに同じクラスの男子とたまたま一緒になって帰った以来、かな……。「山崎先生、すみません、付き合ってもらっちゃって……」『北野先生、意外と強引なんですね?』少し意地悪っぽく聞いてみた。嫌味を1割くらい含んで。「す、すみません! どうしても朝の返事が聞きたくて。あの、朝礼で遮られたままだったから。食事の約束。」『えっ!プッ、アハハッ!』そんなことで、私のこと追いかけ回してたの? 私てっきり、“告白”でもされるのかと思ってた。何だか拍子抜けして、身体の力が抜けた―――坂を下り、突き当たりを曲がると喫茶店「もみの木」がある。何十年続いているんだろう……と思わせるレトロな外観だ。目で『ここにしましょう』とサインを送る。満面の笑みでうなづく北野先生。子どもみたい。年下の男性って、こんな感じなんだ。前に、女性誌で読んだことがある。男性は女性と比較して精神年齢が3歳くらい幼いって。年下男子だと、なおさら幼く感じるのかな……。あれこれ考えながら、喫茶店に入る。あと1時間で閉店ということもあり、店にはマスターしかいない。『コーヒー2つでいい?』「はい!」北野先生に尋ねる。ふぅ、やっと落ち着けた……。『北野先生!』「はい、なんでしょう?」『なんでしょう? じゃありません!』北野先生がビクッとなる。『学校であんなことしちゃダメじゃないですか!? もし生徒に見られたらどうするんです! 大体ですね……』―――その後、私の説教は15分以上続いた。「すみません……」筋骨隆々とした青年が、怯える子犬のように小さくなっている。――意外と素直なのね。そろそろ良いかしら。『まぁ、それはそれとして……。週末のお食事の件、行きましょう』「……え?」『いや、ですから! デパ地下のフードコートがあるんでしょ!? そこ、行きますよ』ポカーンとしている北野先生。そして数秒後。「あ……あぁ、はい! 行きましょう!」これが、“母性”というものだろうか。“子どもっぽい”青年と、つい食事の約束をしてしまった。「では、今週末の何時にしましょう!?」『その前に、ちょっと待って』釘を刺すように、私は彼に言った。学校では絶対に二人きりにならないこと。仮にそういうシチュエーションになったとしても、挨拶程度で済ましましょう。外で会うのは、生徒や先生たちがいないような場所。そして、このことは誰にも絶対に言わないこと。これが守れないのであれば、お断りします。――そう言った。彼はコクンとうなづいて、「守ります」とだけ答えた。それからはデートの日時を決め、ちょうど閉店時間になったので、それぞれ家路についた。―――帰宅。今日は何だかすごく疲れた。でも、なんだろう。心地良い疲れ。嫌な感じはしない。自分でも驚いている。男の人とあんな話をしたのは初めてだった。大学時代の“あの一件”以来、私は男の人と話すのが苦手になっていた。でも不思議だな、北野先生は平気だった……。―――年下の男の子っていうのも、悪くないのかもしれない私の話をちゃんと聞いてくれる。ルールを守る努力をしてくれる。もしかして、私……、ブンブンと頭を振り、余計なことを考えるのはやめる。その後、シャワーを浴び、夕軽く夕食をとりそのまま横になった。学校で彼は、これまで通りでいるよう努めてくれた。(とは言うものの、緊張は十分伝わってきたけど……)もちろん、あの日した4つの約束はきちんと守ってくれた。私も、彼と顔を合わせるのが楽しみになっていて、彼が傍にいるときは口元がほころんでいたかもしれない。学校が楽しい。いや、彼に会えるのが嬉しいのかな。ついに土曜日。今日は学校で彼に会うことがないかわりに、プライベートで一緒に過ごす。普段通り、小テストの添削やサークルの資料作りを午前中に済ませ、彼と約束しているデパ地下のフードコートへと向かう。新鮮な気持ち。洋服を選んだり、メイクをしたり。プライベートでこんなこと久しぶり過ぎて、すっかり忘れていた……。『どう頑張っても、地味めな格好になっちゃうなぁ』つい、独り言が漏れる。今度“さあや”にオシャレについて教えてもらおうと思った。待ち合わせ場所は電車で9駅。ちょっと離れたところだ。ここなら、生徒たちと鉢合わせることはないだろう。待ち合わせ場所に近づくと……、北野先生が大きく手を振って待っているのが見えた。『もう、バカみたいじゃない……』そう呟く私の口元はほころんでいる。もしかして、私って……“年下が好きなのかもしれない”私は彼の元へ走った―――【今回の主役】山崎千尋 山羊座30歳 高校教師(英語)生徒からの信望も厚く、仕事ができる「良い先生」。ただ、他人に甘えるのがヘタなので誤解されることも。大学時代にアルバイトをしていた塾で、塾長にセクハラを受け続けた過去がトラウマになっている。自分に恋をする資格が無いと思っており、結婚願望はある一方、身動きできない。後輩の北野俊一から好意を持たれているが、気づいていない様子。(C) Y Photo Studio / Shutterstock(C) Minerva Studio / Shutterstock
2017年07月11日12人の女性たちの生き方を、12星座になぞらえて紹介していくショートクロスストーリー『12星座 女たちの人生』。 キャリア、恋愛、不倫、育児……。男性とはまた異なる、色とりどりの生活の中で彼女たちは自己実現を果たしていく。 この物語を読み進めていく中で、自身の星座に与えられた“宿命”のようなものを感じられるのではないでしょうか。文・脇田尚揮【12星座 女たちの人生】第115話 ~山羊座-10~体育館の裏で、男女が二人―――本来なら“ときめく”シチュエーションなんだろうけど、私たちは教師同士だから誰かに見られちゃ困る……。話の内容もデートについてだから、なおさらまずいというか……。「山崎先生、どうして逃げるんです? 私、何か気に障ることしましたか?」真っ直ぐに疑問を投げかけてくる。私もこれぐらいハッキリものが言えたら、気苦労も少ないんだろうけど……。『いえ、別に気に障ったとかではなくてですね……』しどろもどろに言い訳する私。なんとか、ごまかしてこの場を終わらせたい。「では、どうして?」この人は、疑問が生まれると徹底的にその原因を突き止めるタイプね。さすが数学教師……。『いや……学校内で、教師同士がする話じゃないのかなと思いまして』これで彼を黙らせることができるだろう。北野先生はハッとした表情を浮かべた。そして、彼の顔はみるみるうちに真っ赤になった。「すみません……つい……失礼いたします!」そう言って、彼は走り去った。……ふぅ、なんとかこの場は乗り切れた。正論よね。なんだかんだ言って私のほうが年上だし、教員歴も長いから。ただ、きっと傷つけちゃったわよね、北野先生のこと。後でどんな顔して会おう。―――お弁当箱の包みを再び開く。でも、あんなに“熱くなれる”なんて、羨ましいな。職員室からここまで、私の後を追って走ってきたんだ。すごいなぁ。基本的に、“去る者追わず”なスタンスの私には、考えられない。あそこまで必死になるってことは、それってもしかして―――いやいや、そんな自分に都合の良い解釈はしないでおこう。違っていたら、すっごく恥ずかしいしバカみたいだし。こうやって体育館裏でひとりお弁当を食べていると、新任の頃を思い出す。最初は右も左も分からなかったのよね。教頭先生から怒られた時なんかも、ここへ来て泣いたっけ。熱意はあるんだけど、それが間違った方向に向いてしまうのは新任によくあることだって、先輩から教えられたわ。……ん?“熱意が間違った方向”か。何だか少し、北野先生にも当てはまるような気がして、可哀想になった。お昼休みの終了を告げるチャイムが構内に響いていた。校内清掃の時間。職員室の向かいデスクには北野先生はいない。多分、体育館の掃除をしているんだろう。年下かぁ。午後の授業が終わったら、声を掛けてみよう。午後の授業は不思議と冷静だった。いつものように生徒たちの前でテキストを読み上げる。黒板にチョークを滑らせ、例文を書き、小テストをする。6限目が終わり、今度はサークルの支度。階段を下り職員室に戻ると……、また北野先生はいない。タイミングが悪かったわね。別に私を避けてるわけじゃないだろうけど。サークルの子達と、前回の課題について話をしている間に夕方に。結局、今日は北野先生と話せそうにない。まぁ、こうして同じ学校にいるから、必ずまた会うことになるだろうけど。サークル活動が終わり、鍵を閉めようとしたとき、「せんせ~、今日は何かあったの?」飯山さんから声を掛けられた。『え、どうして?』「だって、午前と午後とで全然雰囲気が違うから」私って、そんなに顔に出るタイプなのかしら。弱ったな……。『別に何もないわよ、ほら、遅くなるから早く帰りなさい!気をつけてね』「はぁ~い」飯山さんは、つまらなそうに返事をして帰っていった。校舎の3階から外を眺めると、まだ体育館のライトが点いている。剣道部はまだやっているのね。北野先生、今どんな気持ちなんだろう。落ち込んでなきゃ良いけど。人気のない職員室に戻り、視聴覚室の鍵を元の場所に返す。今日も一日が終わった。ドキドキしたり、ビックリしたり、冷静になったり、なんだかとても忙しい一日だったなぁ。帰り支度を済ませて、職員出口から専用駐輪場まで歩く。そして、校門を出ていつも通り帰ろうとしたその時。「山崎先生~!!」聞き覚えのある声が、後ろから聞こえて振り返る。よく見えないけど、あのシルエットは……北野先生。スーツ姿でカバンをブンブン振り回しながら走って近づいてくる。『本当に、この人は……』“呆れ”とともに、“愛おしさ”を感じている自分がいる。「ハァハァ……ハァ」あっという間に、私の目の前にやってきた。『どうされたんです? そんなに息を切らせて……』「先生、学校の中で話す内容ではないと仰っていたので、学校外でお話したいと思いまして!」なっ……この人! これってストーカーに近い何か……。でも、悪意がないし真っ直ぐだし。もう良いわ、私の負けね。『そうですね、そしたら降りた角の喫茶店にでも入りましょうか』その言葉に、顔がパアァァ……と明るくなる彼。本当にこれでいいのかなぁ。何とも言えない気持ちで、自転車を押しながら坂道を下る。横には北野先生。星がやたらと綺麗に見える夜だった―――【今回の主役】山崎千尋 山羊座30歳 高校教師(英語)生徒からの信望も厚く、仕事ができる「良い先生」。ただ、他人に甘えるのがヘタなので誤解されることも。大学時代にアルバイトをしていた塾で、塾長にセクハラを受け続けた過去がトラウマになっている。自分に恋をする資格が無いと思っており、結婚願望はある一方、身動きできない。後輩の北野俊一から好意を持たれているが、気づいていない様子。(C) michaeljung / Shutterstock(C) Maria Savenko / Shutterstock
2017年07月10日カレンウォーカー(KAREN WALKER)から12星座を表現したネックレスコレクションが登場。2017年6月末より、カレン・ウォーカー 銀座シックス店で発売される。シルバーネックレスには、それぞれギリシャ神話になぞらえた各星座のマークがあしらわれている。細いチェーンに光り輝く星座シンボルのデザインは、お守りの感覚で毎日身に付けたくなりそう。恋人や友達の星座のものをプレゼントして一緒に身につけるのおすすめ。ぜひチェックしてみて。【詳細】星座ネックレス発売時期:2017年6月末価格:各18,000円+税取り扱い:カレンウォーカー 銀座シックス店【問い合わせ先】カレンウォーカー 銀座シックス店TEL:03-3572-6155
2017年06月15日