2017年8月2日 21:15
すべてを「失った女」の悲しみ…|12星座連載小説#131~蠍座 11話~
12人の女性たちの生き方を、12星座になぞらえて紹介していくショートクロスストーリー『12星座 女たちの人生』。 キャリア、恋愛、不倫、育児……。男性とはまた異なる、色とりどりの生活の中で彼女たちは自己実現を果たしていく。 この物語を読み進めていく中で、自身の星座に与えられた“宿命”のようなものを感じられるのではないでしょうか。
文・脇田尚揮
【12星座 女たちの人生】第131話 ~蠍座-11話~
―――帰宅したのは、夜中の2時半。
何だか、とてつもなく長い時間だったようにも、一瞬の出来事だったようにも感じられる。
「ニャン」
玄関のドアを開けると、ずっと待っていてくれたのか、“チカ”が足元に駆けてきてゴロンと横になる。
『ただいま』
私に“唯一残された財産”とも言える、彼女を抱きかかえ、リビングへと向かう。
『あんまり夜中に食べると、太っちゃうからね……』
そう言いながら、猫用のおやつを1本だけ出す。そして、私自身も棚の中にあるブランデーを取り出す。
『美味しい? ……ねぇ、今夜は少し付き合ってよ』
おやつに喜ぶチカに喋りかける。こういう時、猫がいてくれるとありがたい。